説明

封止用エポキシ樹脂成形材料および電子部品装置

エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、およびピッチを含有する封止用エポキシ樹脂成形材料、ならびに、この成形材料で封止された素子を備えた電子部品装置を開示する。この成形材料は、着色性が良好であるとともに、パッド間やワイヤー間距離が狭いパッケージに用いた場合でも、導電性物質であるカーボンブラックを含まないので、導電性物質に起因するショート不良を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品装置の封止用材料として好適に用いられ、特にパッド間やワイヤー間距離が狭い半導体装置等の電子部品装置においても、導電性物質によるショート不良が発生しない封止用エポキシ樹脂成形材料、および、この封止用エポキシ樹脂成形材料で封止した素子を備えた電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の素子封止の分野では、生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。これは、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性などの諸特性において、バランスがとれているためである。
【0003】
近年、電子部品装置のプリント配線板への高密度実装化に伴い、電子部品装置の形態は従来のピン挿入型のパッケージから、表面実装型のパッケージが主流になっている。表面実装型のIC、LSIなどは、実装密度を高くし実装高さを低くするために、薄型、小型のパッケージになっており、素子のパッケージに対する占有体積が大きくなり、パッケージの肉厚は非常に薄くなってきた。
【0004】
さらなる小型軽量化に対応すべく、パッケージの形態も、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)といったものから、より多ピン化に対応しやすく、かつより高密度実装が可能なCSP(Chip Size Package)を含めたBGA(Ball Grid Array)等のエリア実装パッケージへ移行しつつある。これらのパッケージでは、近年、高速化、多機能化を実現するために、フェースダウン型、積層(スタックド)型、フリップチップ型、ウェハーレベル型等、新しい構造のものが開発されている。それらの多くは、素子搭載面側の片面のみをエポキシ樹脂成形材料等の封止材料で封止した後、裏面にはんだボールを形成して回路基板との接合を行う、片面封止型パッケージの形態を有している。
【0005】
このようなパッケージの小型化、多ピン化にともない、インナーリード間やパッド間、ワイヤー間等のピッチ間距離が加速的に狭くなってきている。そのため、従来から着色剤として使用されているカーボンブラックは、それ自体が導電性であるため、その凝集物がインナーリード間やパッド間およびワイヤー間に入り込み、電気特性不良を引き起こす問題が生じてきた。
そこで、カーボンブラックの代わりに有機染料、有機顔料および無機顔料を用いる方法が検討されている(特開昭60−119760号公報、特開昭63−179921号公報、特開平11−60904号公報、特開2003−160713号公報)。
しかし、着色性の低下、硬化性の低下および高コスト化等の問題があり、満足のいくレベルには達していない。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、着色性が良好で、パッド間やワイヤー間距離が狭いパッケージに用いた場合でも、導電性物質によるショート不良が発生しない封止用エポキシ樹脂成形材料、およびこれにより封止した素子を備えた電子部品装置を提供しようとするものである。
【0007】
そこで、本発明の第一の側面によれば、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、およびピッチを含有する封止用エポキシ樹脂成形材料が提供される。
本発明の第二の側面によれば、上記本発明の第一の側面による封止用エポキシ樹脂成形材料で封止された素子を備えた電子部品装置が提供される。
【0008】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、着色剤としてピッチを含んでいるので、着色性が良好であるとともに、導電性物質によるショート不良が発生せず、信頼性、電気特性に優れる封止材である。したがって、これを用いて、信頼性、電気特性に優れる電子部品装置を得ることができるので、その工業的価値は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において用いられるピッチは、コールタールやアスファルトをはじめとする石油工業における高沸点の副産物等を、360℃以上の温度で乾留した際に得られる残留物の総称である。化学組成的には、芳香族構造を主たる構造要素とする化合物からなる混合物であり、溶融性があり、常温で固体状態を示す。ピッチの種類としては、原料の種類により、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、ナフタレンピッチ、アセチレンピッチ等がある。さらにそれらの処理温度および処理時間の程度によって、光学的等方性ピッチ、メソフェーズ(中間相)ピッチ、液晶状ピッチに分類される。
メソフェーズピッチの中には小球状の炭素質が形成されている。この小球体は、メソフェーズピッチをキノリン等に溶解した際の不溶分として分離することができる。このメソフェーズピッチから分離された小球体が、メソフェーズ小球体である。
【0010】
ピッチは、上記したいずれのピッチを用いてもよいが、封止用エポキシ樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」と記す場合がある。)中での分散性および着色性の観点から、粉砕して微粒子化したピッチが好ましく、メソフェーズ小球体がより好ましく、石炭系メソフェーズピッチから分離したメソフェーズ小球体がさらに好ましい。このようなメソフェーズ小球体は、市販品として、大阪ガスケミカル株式会社製商品名「MCMBグリーン品」が挙げられる。
【0011】
ピッチの平均粒子径は、30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。平均粒子径の測定は、レーザー回折法等の公知の方法を用いて行うことができる。ピッチの粒径が小さいほど、その着色性能が向上することが認められる。
【0012】
この成形材料で封止された素子を備える電子部品装置におけるショート不良の発生を防止する観点から、ピッチの電気比抵抗は1×10Ω・cm以上が好ましく、1×10Ω・cm以上がより好ましく、1×10Ω・cm以上がさらに好ましい。電気比抵抗は、JIS K1469「アセチレンブラックの電気抵抗率測定法」に従って求めることができる。
さらに、ピッチの炭素含有率は88重量%〜96重量%であることが好ましく、90重量%〜94重量%がより好ましい。炭素含有率が88重量%より低いと着色性が低下する傾向にあり、96重量%より高いと電気比抵抗が小さくなる傾向がある。
【0013】
成形材料には、本発明の効果が達成される範囲内であれば、さらに別の着色剤(ピッチを含まない着色剤)を併用することが好ましい。併用できる着色剤としては、アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系等の染料;アジン系、アゾ系、アントラキノン系、ジイモニウム系、ジイミニウム系、フタロシアニン系、金属塩系等の有機顔料;Al、Mg、Fe、Ti等の金属酸化物系無機顔料;Cu、Cr、Mn等の複合金属酸化物系顔料;カーボンブラック等が挙げられる。これらのなかで、着色性の観点からはフタロシアニン系染料またはフタロシアニン系顔料、アニリンブラック、ペリレンブラック、黒色酸化鉄、および黒色酸化チタンから選ばれる1種以上を用いることが好ましく、レーザーマーク性の観点からは黒色酸化チタンがより好ましい。
酸化チタン(TiO)は通常、隠ぺい性に優れる白色顔料として知られるが、これを高温中で還元し酸化チタン中の酸素を一部取り除くことで黒色酸化チタンとすることができる。このような黒色酸化チタンとしては、市販品として株式会社ジェムコ製商品名「チタンブラック」が挙げられる。
【0014】
ピッチおよびピッチを含まない着色剤(ピッチ以外の着色剤)の合計配合量は、成形材料を黒色に着色できれば特に制限は無いが、エポキシ樹脂に対して2重量%〜15重量%が好ましく、3重量%〜10重量%がより好ましい。
ピッチの添加量は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、着色性とショート不良の観点から、ピッチおよびピッチを含まない着色剤中に(ピッチおよびピッチを含まない着色剤の合計量に対して)30重量%以上含有することが好ましく、45重量%以上含有することがより好ましく、60重量%以上含有することがさらに好ましい。
【0015】
成形材料に用いられるエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2個以上含有する化合物であればよく、特に制限ない。
たとえば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類および/またはα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合または共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂等);アルキル置換、芳香環置換または非置換のビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、チオジフェノール等のジグリシジルエーテル;スチルベン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール類との共縮合樹脂のエポキシ化物;ナフタレン環を有するエポキシ樹脂;フェノール類および/またはナフトール類とジメトキシパラキシレンまたはビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;テルペン変性エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;脂環族エポキシ樹脂;硫黄原子含有エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
なかでも、流動性と硬化性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換または非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂を含有していることが好ましい。流動性と難燃性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換または非置換のビスフェノールFのジグリシジルエーテルであるビスフェノールF型エポキシ樹脂を含有していることが好ましい。流動性とリフロー性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換または非置換のチオジフェノールのジグリシジルエーテルであるチオジフェノール型エポキシ樹脂を含有していることが好ましい。硬化性と難燃性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換または非置換のフェノールとビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物を含有していることが好ましい。保存安定性と難燃性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換または非置換のナフトール類とジメトキシパラキシレンから合成されるナフトール・アラルキル樹脂のエポキシ化物を含有していることが好ましい。
すなわち、エポキシ樹脂として、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、チオジフェノール型エポキシ樹脂、フェノール・アラルキル型エポキシ樹脂、およびナフトール・アラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0017】
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、たとえば、下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【化1】

(ここで、R〜Rは水素原子および炭素数1〜10の置換または非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0または1〜3の整数を示す。)
【0018】
上記一般式(III)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂は、ビフェノール化合物にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得ることができる。一般式(III)中のR〜Rとしては、たとえば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素数1〜10のアルケニル基;などが挙げられ、なかでも水素原子またはメチル基が好ましい。
【0019】
このようなエポキシ樹脂としては、たとえば、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニルまたは4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂;エピクロルヒドリンと4,4’−ビフェノールまたは4,4’−(3,3’,5,5’−テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂;等が挙げられる。なかでも、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂としては、市販品として、ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名「YX−4000」が入手可能である。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するために、エポキシ樹脂全量に対して20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。
【0020】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、たとえば、下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0021】
【化2】

(ここで、R〜Rは水素原子および炭素数1〜10の置換または非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0または1〜3の整数を示す。)
【0022】
上記一般式(IV)で示されるビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールF化合物にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得ることができる。一般式(IV)中のR〜Rとしては、たとえば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素数1〜10のアルケニル基;などが挙げられ、なかでも水素原子またはメチル基が好ましい。
【0023】
このようなエポキシ樹脂としては、たとえば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)のジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂;4,4’−メチレンビス(2,3,6−トリメチルフェノール)のジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂;4,4’−メチレンビスフェノールのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂;等が挙げられ、なかでも、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)のジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂としては、市販品として、新日鐵化学株式会社製商品名「YSLV−80XY」が入手可能である。
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するために、エポキシ樹脂全量に対して20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。
【0024】
チオジフェノール型エポキシ樹脂としては、たとえば、下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0025】
【化3】

(ここで、R〜Rは水素原子および炭素数1〜10の置換または非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0または1〜3の整数を示す。)
【0026】
上記一般式(V)で示されるチオジフェノール型エポキシ樹脂は、チオジフェノール化合物にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得ることができる。一般式(V)中のR〜Rとしては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素数1〜10のアルケニル基;などが挙げられ、なかでも水素原子、メチル基またはt−ブチル基が好ましい。
【0027】
このようなエポキシ樹脂としては、たとえば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂;2,2’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂;2,2’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−t−ブチルジフェニルスルフィドのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂;等が挙げられる。なかでも、2,2’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−t−ブチルジフェニルスルフィドのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂としては、市販品として、新日鐵化学株式会社製商品名「YSLV−120TE」が入手可能である。
上記チオジフェノール型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。
【0028】
フェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物(フェノール・アラルキル型エポキシ樹脂)としては、たとえば、下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0029】
【化4】

(ここで、R〜Rは水素原子、炭素数1〜12の置換または非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0または1〜3の整数を示し、nは0または1〜10の整数を示す。)
【0030】
上記一般式(VI)で示されるフェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物は、アルキル置換、芳香環置換または非置換のフェノールとビス(メトキシメチル)ビフェニルとから合成されるフェノール・アラルキル樹脂にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得ることができる。一般式(VI)中のR〜Rとしては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基;メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アルキル基;水酸基置換アルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の無置換アリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アリール基;水酸基置換アリール基;などが挙げられる。
なかでも、R〜Rとしては水素原子またはメチル基が好ましく、たとえば、下記一般式(VII)で示されるフェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物が挙げられる。
【0031】
【化5】

(ここで、nは0または1〜10の整数を示す。)
上記において、nは平均で6以下であることがより好ましい。
そのようなエポキシ樹脂としては、市販品として、日本化薬株式会社製商品名「NC−3000S」および「CER−3000L」(一般式(VII)のフェノール・アラルキル樹脂と4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニルの混合物(混合重量比8/2))が入手可能である。
上記フェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物の配合量は、その性能を発揮するために、エポキシ樹脂全量に対して20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。
【0032】
ナフトール・アラルキル樹脂のエポキシ化物(ナフトール・アラルキル型エポキシ樹脂)としては、たとえば下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0033】
【化6】

(ここで、Rは水素原子、炭素数1〜12の置換または非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0または1〜3の整数を示し、Xは芳香環を含む二価の有機基を示し、nは0または1〜10の整数を示す。)
【0034】
上記一般式(VIII)で示されるナフトール・アラルキル樹脂のエポキシ化物は、アルキル置換、芳香環置換または非置換のナフトールとジメトキシパラキシレンまたはビス(メトキシメチル)とから合成されるナフトール・アラルキル樹脂にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得ることができる。一般式(VIII)中のRとしてはたとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基;メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アルキル基;水酸基置換アルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の無置換アリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アリール基;水酸基置換アリール基;などが挙げられる。
なかでも、Rとしては水素原子またはメチル基が好ましく、たとえば、下記一般式(IX)または(X)で示されるナフトール・アラルキル樹脂のエポキシ化物が挙げられる。
【0035】
【化7】

(ここで、nは0または1〜10の整数を示す。)
【0036】
【化8】

(ここで、nは0または1〜10の整数を示す。)
上記一般式(IX)または(X)において、nは平均で6以下であることがより好ましい。
上記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂としては、市販品として、新日鐵化学株式会社製商品名「ESN−375」が挙げられる。上記一般式(X)で示されるエポキシ樹脂としては、市販品として、新日鐵化学株式会社製商品名「ESN−175」が挙げられる。
上記ナフトール・アラルキル樹脂のエポキシ化物の配合量は、その性能を発揮するために、エポキシ樹脂全量に対して20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。
【0037】
これらのビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、チオジフェノール型エポキシ樹脂、フェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物およびナフトール・アラルキル樹脂のエポキシ化物は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合の配合量は、その性能を発揮するために、エポキシ樹脂全量に対して合計量で20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。
【0038】
この成形材料は、硬化剤を含有する。用いられる硬化剤は、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されているものであり、特に制限はない。
たとえば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、チオジフェノール、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類および/またはα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合または共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;フェノール類および/またはナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレンおよび/またはメタキシリレン変性フェノール樹脂;置換または非置換のメラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;などが挙げられる。これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0039】
なかでも、難燃性の観点からは、フェノール・アラルキル樹脂およびナフトール・アラルキル樹脂の1種または2種以上を含有していることが好ましい。
フェノール・アラルキル樹脂としては、たとえば、下記一般式(I)で示される樹脂が挙げられる。
【0040】
【化9】

(ここで、Rは水素原子、炭素数1〜12の置換または非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0または1〜3の整数を示し、Xは芳香環を含む二価の有機基を示し、nは0または1〜10の整数を示す。)
【0041】
上記一般式(I)中のRとしては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基;メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アルキル基;水酸基置換アルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の無置換アリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アリール基;水酸基置換アリール基;などが挙げられる。
なかでも、Rとしては水素原子またはメチル基が好ましい。
【0042】
上記一般式(I)中のXは、芳香環を含む基を示し、たとえばフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基;トリレン基、キシリレン基等のアルキル基置換アリーレン基;アルコキシル基置換アリーレン基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;アラルキル基置換アリーレン基;などが挙げられる。
なかでも、難燃性、流動性と硬化性の両立の観点からは、Xは置換または非置換のフェニレン基が好ましく、たとえば下記一般式(XI)で示されるフェノール・アラルキル樹脂が挙げられる。
難燃性と耐リフロー性の両立の観点からは、Xは置換または非置換のビフェニレン基が好ましく、たとえば下記一般式(XII)で示されるフェノール・アラルキル樹脂が挙げられる。
【0043】
【化10】

(ここで、nは0または1〜10の整数を示す。)
【0044】
【化11】

(ここで、nは0または1〜10の整数を示す。)
上記一般式(XI)および(XII)において、nは平均で6以下であることがより好ましい。
上記一般式(XI)で示されるフェノール・アラルキル樹脂としては、市販品として、三井化学株式会社製商品名「XLC」が挙げられる。上記一般式(XII)で示されるフェノール・アラルキル樹脂としては、市販品として、明和化成株式会社製商品名「MEH−7851」が挙げられる。
上記フェノール・アラルキル樹脂の配合量は、その性能を発揮するために、硬化剤全量に対して20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。
【0045】
ナフトール・アラルキル樹脂としては、たとえば、下記一般式(II)で示される樹脂が挙げられる。
【0046】
【化12】

(ここで、Rは水素原子、炭素数1〜12の置換または非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0または1〜3の整数を示し、Xは芳香環を含む二価の有機基を示し、nは0または1〜10の整数を示す。)
【0047】
上記一般式(II)中のRとしては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基;メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アルキル基;水酸基置換アルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の無置換アリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アリール基;水酸基置換アリール基;などが挙げられる。なかでも、Rは水素原子またはメチル基が好ましい。
【0048】
上記一般式(II)中のXは、芳香環を含む二価の有機基を示し、たとえばフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基;トリレン基、キシリレン基等のアルキル基置換アリーレン基;アルコキシル基置換アリーレン基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;アラルキル基置換アリーレン基;などが挙げられる。
なかでも、保存安定性と難燃性の観点からは、Xは置換または非置換のフェニレン基およびビフェニレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましく、たとえば下記一般式(XIII)および(XIV)で示されるナフトール・アラルキル樹脂が好例として挙げられる。
【0049】
【化13】

(ここで、nは0または1〜10の整数を示す。)
【0050】
【化14】

(ここで、nは0または1〜10の整数を示す。)
上記式(XIII)および(XIV)において、nは平均で6以下であることがより好ましい。
【0051】
上記一般式(XIII)で示されるナフトール・アラルキル樹脂としては、市販品として新日鐵化学株式会社製商品名「SN−475」が挙げられる。上記一般式(XIV)で示されるナフトール・アラルキル樹脂としては、市販品として新日鐵化学株式会社製商品名「SN−170」が挙げられる。
上記ナフトール・アラルキル樹脂の配合量は、その性能を発揮するために、硬化剤全量に対して20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。
【0052】
上記一般式(I)で示されるフェノール・アラルキル樹脂、一般式(II)で示されるナフトール・アラルキル樹脂は、難燃性の観点から、その一部または全部がアセナフチレンと予備混合されていることが好ましい。アセナフチレンはアセナフテンを脱水素して得ることができるが、市販品を用いてもよい。
あるいは、アセナフチレンの代わりに、アセナフチレンの重合物、または、アセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物を用いることもできる。アセナフチレンの重合物またはアセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物を得る方法としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等が挙げられる。この重合に際しては、従来公知の触媒を用いることができるが、触媒を使用せずに熱だけで行うこともできる。その際、重合温度は80〜160℃が好ましく、90〜150℃がより好ましい。
得られるアセナフチレンの重合物またはアセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物の軟化点は、60〜150℃が好ましく、70〜130℃がより好ましい。60℃より低いと成形時の染み出しにより成形性が低下する傾向にあり、150℃より高いと樹脂との相溶性が低下する傾向にある。
【0053】
アセナフチレンと共重合させる他の芳香族オレフィンとしては、スチレン、α−メチルスチレン、インデン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニルまたはそれらのアルキル置換体等が挙げられ、これらを単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、上記した芳香族オレフィン以外に、本発明の効果に支障の無い範囲で、脂肪族オレフィンを併用することもできる。脂肪族オレフィンとしては、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸、フマル酸およびそれらのエステル;等が挙げられる。これら脂肪族オレフィンの使用量は、重合モノマー全量に対して20重量%以下が好ましく、9重量%以下がより好ましい。
【0054】
硬化剤の一部または全部とアセナフチレンとを予備混合して、予備混合物(アセナフチレン変性硬化剤)を製造する方法としては、硬化剤およびアセナフチレンをそれぞれ微細に粉砕し固体状態のままミキサー等で混合する方法;両成分を溶解する溶媒に均一に溶解させた後、溶媒を除去する方法;硬化剤および/またはアセナフチレンの軟化点以上の温度で両者を溶融混合する方法;等で行うことができる。
なかでも、均一な混合物を得ることができて不純物の混入が少ない溶融混合法が好ましい。溶融混合温度は、硬化剤および/またはアセナフチレンの軟化点以上であれば制限はないが、100〜250℃が好ましく、120〜200℃がより好ましい。溶融混合時間は、両者が均一に混合すれば制限はないが、1〜20時間が好ましく、2〜15時間がより好ましい。硬化剤とアセナフチレンを予備混合する場合、混合中にアセナフチレンが重合あるいは硬化剤と反応しても構わない。
【0055】
成形材料中には、難燃性向上の観点から、前述の予備混合物(アセナフチレン変性硬化剤)が硬化剤中に50重量%以上含まれることが好ましい。アセナフチレン変性硬化剤中に含まれるアセナフチレンおよび/またはアセナフチレンを含む芳香族オレフィンの重合物の量は、難燃性の観点から5重量%以上が好ましく、成形性の観点から40重量%以下が好ましく、8〜25重量%がより好ましい。成形材料中に含まれるアセナフチレン構造の含有率は、難燃性と成形性の観点からは、0.1〜5重量%が好ましく、0.3〜3重量%がより好ましい。
【0056】
エポキシ樹脂と硬化剤との当量比、すなわち、エポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する硬化剤中の水酸基数の比(硬化剤中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために、0.5〜2の範囲に設定されることが好ましく、0.6〜1.3がより好ましい。成形性に優れる成形材料を得るためには、0.8〜1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0057】
成形材料は、好ましくは硬化促進剤を含んでいる。用いられる硬化促進剤は、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されているものであれば特に制限されるものではないが、たとえば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物とその誘導体;およびこれらに無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂などのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類およびこれらの誘導体;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類およびこれらの誘導体;トリブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン等のジアルキルアリールホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等のアルキルジアリールホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン等のトリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィンなどの有機ホスフィン類とその誘導体;およびこれらにキノン化合物、無水マレイン酸、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモリホリンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩およびこれらの誘導体;有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体;などが挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも流動性と硬化性の観点から、第三ホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物が好ましく、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物およびトリブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物がさらに好ましい。
【0058】
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限はないが、硬化性および流動性の観点から、エポキシ樹脂および硬化剤の総量に対して0.2〜10重量%が好ましい。
【0059】
成形材料は、好ましくは無機充てん剤を含んでいる。用いられる無機充てん剤は、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上および強度向上のために成形材料に配合されるものであり、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されているものであれば特に制限されるものではない。
たとえば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、またはこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナがそれぞれ好ましい。充てん剤の形状は、成形時の流動性および金型摩耗性の点から、球形が好ましい。
【0060】
無機充てん剤の配合量は、難燃性、成形性、吸湿性、線膨張係数低減および強度向上の観点から、成形材料全量に対して70〜95重量%が好ましく、吸湿性、線膨張係数低減の観点から85〜95重量%がより好ましい。70重量%未満では、難燃性および耐リフロー性が低下する傾向があり、95重量%を超えると流動性が不足する傾向がある。
【0061】
成形材料には、IC等の半導体素子の耐湿性および高温放置特性を向上させる観点から、必要に応じてイオントラップ剤をさらに配合することが好ましい。イオントラップ剤としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、たとえば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられる。これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、下記組成式(XV)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
【化15】

【0062】
イオントラップ剤の配合量は、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉するのに充分な量であれば特に制限はないが、流動性および曲げ強度の観点から、エポキシ樹脂に対して0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましく、1〜5重量%がさらに好ましい。
【0063】
成形材料には、樹脂成分と無機充てん剤との接着性を高めるために、必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物;チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することが好ましい。
【0064】
具体的には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤;などが挙げられる。これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
上記カップリング剤の配合量は、無機充てん剤に対して0.05〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2.5重量%がより好ましい。0.05重量%未満では各種パッケージ構成部材との接着性が低下する傾向があり、5重量%を超えるとボイド等の成形不良が発生し易い傾向がある。
【0066】
成形材料には、必要に応じて難燃剤を配合することが好ましい。難燃剤としては、従来公知の臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモンを用いることができるが、従来公知のノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤を用いることが好ましい。
たとえば、赤リン、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等で被覆された赤リン、リン酸エステル、酸化トリフェニルホスフィン等のリン化合物;メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物;シクロホスファゼン等のリンおよび窒素含有化合物;ジシクロペンタジエニル鉄等の金属錯体化合物;酸化亜鉛、錫酸亜鉛、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の亜鉛化合物;酸化鉄、酸化モリブデン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;下記組成式(XVI)で示される複合金属水酸化物;などが挙げられる。これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化16】

(ここで、M、MおよびMは互いに異なる金属元素を示し、a、b、c、d、p、qおよびmは正の数、rは0または正の数を示す。)
【0067】
上記組成式(XVI)中のM、MおよびMは、互いに異なる金属元素であれば特に制限はないが、難燃性の観点からは、Mが第3周期の金属元素、IIA族のアルカリ土類金属元素、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族およびIVA族に属する金属元素から選ばれ、MがIIIB〜IIB族の遷移金属元素から選ばれることが好ましい。さらに、Mがマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛からなる群から選ばれ、Mが鉄、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛からなる群から選ばれることがより好ましい。流動性の観点からは、Mがマグネシウム、Mが亜鉛またはニッケルであって、r=0のものが好ましい。p、qおよびrのモル比は特に制限はないが、r=0で、p/qが1/99〜1/1であることが好ましい。
なお、金属元素の分類は、典型元素をA亜族、遷移元素をB亜族とする長周期型の周期率表(出典:共立出版株式会社発行「化学大辞典4」1987年2月15日縮刷版第30刷)に基づいて行った。
上記した難燃剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
なかでもノンハロゲン、ノンアンチモンであり、かつ安定性、耐加水分解性の観点からは、環状ホスファゼン化合物が好ましい。環状ホスファゼン化合物としては、下記一般式(XVII)で示される化合物が挙げられる。
【化17】

(ここで、nは3〜5の整数を示し、RおよびR’は互いに同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基またはアリール基を示す。)
【0069】
上記一般式(XVII)で示される化合物としては、3量体(n=3)の6員環、4量体(n=4)の8員環および5量体(n=5)の10員環のものが挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも流動性の観点からは、3量体のホスファゼン化合物を主成分として用いることが好ましい。
上記一般式(XVII)中のn個のRおよびR’は、炭素数1〜4のアルキル基またはアリール基であり、両者は互いに同一でも異なっていてもよい。たとえば、nが3である3量体6員環のホスファゼン化合物の場合には、RおよびR’の数(置換基数)は合計で6個となり、これらは全て同じでも異なっていてもよい。耐熱性、耐湿性および成形性の観点からは、RおよびR’のうちの少なくとも一方はアリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましく、ヒドロキシフェニル基であることが一層好ましい。
ヒドロキシフェニル基を導入する場合は、導入されるヒドロキシフェニル基の数は1〜10であることが好ましく、1〜4個であることがより好ましく、1〜3個であることが一層好ましい。ヒドロキシフェニル基の数が1個未満の場合は、エポキシ樹脂硬化物の架橋構造に取り込まれない成分が出てくるため、成形性、耐熱性が低下しやすく、10個を超える場合は硬化物が脆くなる傾向がみられる。
ヒドロキシフェニル基のフェニル基には、ヒドロキシ基の他に、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルアミノ基等の任意の置換基が存在していてもよい。
【0070】
環状ホスファゼン化合物の好ましい構造としては、たとえば、三量体である下記一般式(XVIII)などが挙げられる。
【化18】

(R〜Rは互いに同一でも異なっていてもよい水酸基または水素原子を示し、水酸基が0〜6個で、水素原子が6〜0個である。)
【0071】
さらに、環状ホスファゼン化合物として、環状ホスファゼン化合物が架橋されてなる化合物(すなわち(共)重合物)を含んでいてもよい。このような架橋構造を有する環状ホスファゼンとしては、主鎖骨格中に次式(XIX)および/または次式(XX)を繰り返し単位として含む環状ホスファゼン化合物、あるいは、ホスファゼン環中のリン原子に対する置換基の置換位置が異なる次式(XXI)および/または次式(XXII)を繰り返し単位として含む環状ホスファゼン化合物等が挙げられる。
【化19】

【0072】
式(XIX)および式(XXI)において、mは1〜10の整数であり、R〜Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示し、全てが同一でも異なっていてもよい。Aは置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、または、置換基を有していてもよいアリーレン基を示す。
式(XX)および式(XXII)において、nは1〜10の整数であり、R〜Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示し、全てが同一でも異なっていてもよい。Aは炭素数1〜4のアルキレン基、または、アリーレン基を示す。
さらに、各式中m個のR、R、R、Rは、m個全てが同一でも異なっていてもよく、n個のR、R、R、Rは、n個全てが同一でも異なっていてもよい。
【0073】
上記式(XIX)〜式(XXII)において、R〜Rで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基としては、特に制限はないが、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、メシチル基等のアルキル基置換アリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基などが挙げられる。これらのアルキル基またはアリール基にさらに置換する置換基としては、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルアミノ基等が挙げられる。
これらのなかで、エポキシ樹脂成形材料の耐熱性、耐湿性の観点からは、R〜Rのうちの少なくとも1個はアリール基であることが好ましく、フェニル基またはヒドロキシフェニル基であることがより好ましい。
【0074】
上記式(XIX)〜式(XXII)中のAで示される炭素数1〜4のアルキレン基としては、特に制限はないが、たとえばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基が挙げられ、アリーレン基としては、たとえばフェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基およびビフェニレン基等が挙げられる。これらのアルキレン基、アリーレン基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルアミノ基等により置換されていてもよい。
これらのなかで、エポキシ樹脂成形材料の耐熱性、耐湿性の観点からは、Aはアリーレン基が好ましく、さらにフェニレン基およびビフェニレン基がより好ましい。
【0075】
環状ホスファゼン化合物が架橋構造を有し、(共)重合物である場合、上記式(XIX)〜式(XXII)のいずれかの各単独重合物、または、上記式(XIX)と上記式(XX)との共重合物、上記式(XXI)と上記式(XXII)との共重合物等が好適な例として挙げられる。共重合物の場合、ランダム共重合物でも、ブロック共重合物でも、交互共重合物のいずれでもよい。その共重合モル比m/nは、特に限定するものではないが、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性や強度向上の観点から1/0〜1/4が好ましく、1/0〜1/1.5がより好ましい。重合度m+nは1〜20であることが好ましく、より好ましくは2〜8、一層好ましくは3〜6である。
【0076】
環状ホスファゼン化合物の重合物として、より具体的には、次式(XXIII)の重合物、次式(XXIV)の共重合物等が好例として挙げられる。
【化20】

(ここで、式中のnは0〜9の整数で、R〜Rはそれぞれ独立に、水素または水酸基を示す。)
【0077】
【化21】

(ここで、上記式中のmおよびnは、それぞれ独立に0〜9の整数を示し、R〜Rはそれぞれ独立に水素または水酸基を示す。)
上記式(XXIV)で示される環状ホスファゼン化合物は、次に示すm個の繰り返し単位(a)とn個の繰り返し単位(b)を交互に含むもの、ブロック状に含むもの、ランダムに含むもののいずれであってもかまわないが、ランダムに含むものが好ましい。
【化22】

【0078】
以上の例示のなかでも、上記式(XXIII)においてnが3〜6の重合体を主成分とするものや、上記式(XXIV)でR〜Rが全て水素または1つが水酸基であって、n/mが1/2〜1/3、n+mが3〜6の共重合体を主成分とするものが好ましい。
市販のホスファゼン化合物としては、SPE−100(大塚化学製商品名)、SPH−100(大塚化学製商品名)が入手可能である。
【0079】
成形材料中の環状ホスファゼン化合物の配合量は、充填剤を除く他の全配合成分の合計量に対するリン原子の量として、難燃効果の観点からこのリン原子の量が0.2重量%以上であることが好ましく、耐湿性の観点から5.0重量%以下であることが好ましい。
【0080】
さらに成形材料には、その他の添加剤として、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、エステル系ワックス、アミド系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、ポリエチレン、酸化ポリエチレン等の離型剤;シリコーンオイル、シリコーンレジン、液状ゴム、ゴム粉末、熱可塑性樹脂等の応力緩和剤;などを必要に応じて配合することが好ましい。
【0081】
成形材料は、各種原材料を均一に分散混合できるのであればいかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、その後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。成形条件に合うような寸法および重量でタブレット化すると使いやすい。
【0082】
上記本発明に係る封止用エポキシ樹脂成形材料により封止した素子を備えた、本発明に係る電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明に係る成形材料で封止した電子部品装置などが挙げられる。
【0083】
このような電子部品装置としてより具体的には、たとえば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、上記成形材料を用いてトランスファ成形等により封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−leadpackage)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、上記成形材料で封止したTCP(Tape Carrier Package);配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子および/またはコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、上記成形材料で封止したCOB(Chip On Board)モジュール;ハイブリッドIC;マルチチップモジュール;マザーボード接続用の端子を形成したインターポーザ基板に半導体チップを搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより半導体チップとインターポーザ基板に形成された配線を接続した後、上記成形材料で半導体チップ搭載側を封止したBGA(Ball Grid Array);CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などの片面封止パッケージが挙げられる。
なかでも、本発明に係る成形材料は、ショート不良の原因となる導電性物質を含まないため、インナーリード間、パッド間およびワイヤー間距離が狭いファインピッチな半導体装置等の電子部品装置に好適である。さらにこの成形材料は、流動性や硬化性等の成形性にも優れた組成とすることができる。
【0084】
本発明に係る成形材料を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【実施例】
【0085】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜19、比較例1〜9)
以下の成分をそれぞれ、表1〜表3に示す重量部で配合し、混練温度80℃、混練時間10分の条件でロール混練を行い、各実施例および比較例の各封止用エポキシ樹脂成形材料を製造した。
【0086】
〈着色剤〉
平均粒子径3μm、炭素含有率92.5%、電気比抵抗1.7×10Ω・cmのメソフェーズ小球体(大阪ガスケミカル株式会社製商品名MCMBグリーン品);平均粒子径70nm、電気比抵抗4.1×10Ω・cmの黒色酸化チタン(株式会社ジェムコ製商品名チタンブラック);平均粒子径22nm、炭素含有率97.4%、電気比抵抗1.5×10−1Ω・cmのカーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名MA−100)を使用した。
【0087】
平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製LA−700)を用いて求めた。
炭素含有率は、有機元素分析装置(Carloerba製EA−1108)を用いて求めた。
電気比抵抗は、JIS K1469「アセチレンブラックの電気抵抗率測定法」に従って求めた。すなわち、試料3gを中空の絶縁性円筒容器の中で断面積4.9cmの真ちゅう製電極の間に入れ、4.9MPaで加圧した際の試料厚み(cm)を測定し、次いで電極を抵抗計(株式会社アドバンテスト製TR8601)に接続後、DC100Vでの抵抗値(Ω)を測定した。電気比抵抗(Ω・cm)は、断面積(4.9cm)×抵抗値(Ω)/試料厚み(cm)から算出した。
【0088】
〈エポキシ樹脂〉
エポキシ当量187、融点109℃のビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名エピコートYX−4000);エポキシ当量188、融点75℃のビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2:新日鐵化学株式会社製商品名YSLV−80XY);エポキシ当量241、軟化点95℃のフェノール・アラルキル型エポキシ樹脂/4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル混合物(混合重量比8/2)(エポキシ樹脂3:日本化薬株式会社製商品名CER−3000L);エポキシ当量265、軟化点66℃のβ−ナフトール・アラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂4:新日鐵化学株式会社商品名ESN−175S);エポキシ当量242、融点110℃の硫黄原子含有エポキシ樹脂(エポキシ樹脂5:新日鐵化学株式会社製商品名YSLV−120TE);エポキシ当量397、軟化点69℃、臭素含有量49重量%の臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂6:東都化成株式会社製商品名エポトートYDB−400)を使用した。
【0089】
〈硬化剤〉
水酸基当量176、軟化点70℃のフェノール・アラルキル樹脂(硬化剤1:三井化学株式会社製商品名ミレックスXLC);水酸基当量209、軟化点81℃のアセナフチレン含有β−ナフトール・アラルキル樹脂(硬化剤2:新日鐵化学株式会社製商品名SN−170−AR10);水酸基当量200、軟化点80℃のフェノール・アラルキル樹脂(硬化剤3:明和化成株式会社製商品名MEH−7851);水酸基当量103、軟化点86℃のフェノール樹脂(硬化剤4:明和化成株式会社製商品名MEH−7500);水酸基当量156、軟化点83℃のフェノール樹脂(硬化剤5:住金エアー・ウォーター・ケミカル株式会社製商品名HE−510)を使用した。
【0090】
〈硬化促進剤〉
トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤1)、トリブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤2)を使用した。
【0091】
〈難燃剤〉
融点105℃のヒドロキシフェニル基を含有しないフェノキシ型環状ホスファゼン化合物SPE−100(大塚化学株式会社製)(環状ホスファゼン化合物1)、水酸基当量242のヒドロキシフェニル基含有フェノキシ型環状ホスファゼン化合物SPH−100(大塚化学株式会社製)(環状ホスファゼン化合物2)を使用した。
【0092】
〈その他〉
無機充てん剤として平均粒径17.5μm、比表面積3.8m/gの球状溶融シリカ、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製商品名A−187)を使用した。その他の添加剤として、カルナバワックス(クラリアント社製)を使用した。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
製造した実施例および比較例の各成形材料を、次の各試験により評価した。結果を表4〜表6に示す。成形材料の成形は、トランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。後硬化は180℃で5時間行った。
【0097】
(1)流動性
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、各成形材料を上記条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。
(2)熱時硬度
各成形材料を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちに、ショアD型硬度計を用いて熱時硬度を測定した。
(3)保存安定性
各成形材料を25℃/50%RHの条件で48時間放置後、上記(1)と同様にしてスパイラルフローを測定し、放置前後の流動距離の保持率から求めた。
【0098】
(4)難燃性
厚さ0.16mmの試験片を成形する金型を用いて、各成形材料を上記条件で成形して後硬化を行い、UL−94試験法に従って燃焼試験を行い、試験片5本の残炎時間の合計を総残炎時間として評価した。
(5)耐リフロー性
8mm×10mm×0.4mmのシリコーンチップを搭載した外形寸法20mm×14mm×2mmの80ピンフラットパッケージを、各成形材料を用いて上記条件で成形および後硬化して銅リードフレーム上に作製し、85℃、85%RH、168時間加湿後、245℃、10秒の条件でリフロー処理を行い、クラックの有無を観察した。試験パッケージ数(10)に対するクラック発生パッケージ数で耐リフロー性を評価した。
【0099】
(6)着色性
各成形材料を、上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、分光式色彩計SE−2000(日本電色工業株式会社製)を用いて、C光源、視野角2度、反射方式でLを求め、黒色度の指標とした。
(7)電気特性
各成形材料を用いて、8mm×8mm×0.4mmのシリコーンチップを搭載した外形寸法20mm×20mm×1.4mmの176ピンフラットパッケージを、上記条件で銅リードフレーム上に作製した。試験パッケージ数(1000)に対するショート不良が発生したパッケージ数で、電気特性を評価した。
【0100】
【表4】

【0101】
【表5】

【0102】
【表6】

【0103】
ピッチを含有していない比較例1〜9の成形材料は、いずれも電気特性に劣っていた。これに対し、実施例1〜19の成形材料は、電気特性に優れ、同樹脂組成の比較例と比べて流動性、熱時硬度等の成形性、保存安定性、難燃性、耐リフロー性、着色性の点で同等以上の性能を有していた。特に、黒色酸化チタンを併用し、メソフェーズ小球体と黒色酸化チタンとの合計量がエポキシ樹脂に対して2〜15重量%で含有した実施例3および実施例16の成形材料は、成形性と着色性のバランスに優れていた。
【0104】
本願の開示は、2003年12月11日に出願された特願2003−413229号および2004年9月8日に出願された特願2004−260963号に記載の主題と関連しており、それらの開示内容は引用により援用される。
既に述べられたもの以外に、本発明の新規かつ有利な特徴から外れることなく、上記の実施形態に様々な修正や変更を加えてもよいことに注意すべきである。従って、そのような全ての修正や変更は、添付の請求の範囲に含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、およびピッチを含有する封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項2】
ピッチがメソフェーズピッチから分離したメソフェーズ小球体である請求項1記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項3】
ピッチの電気比抵抗が1×10Ω・cm以上である請求項1または2記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項4】
ピッチの炭素含有率が88〜96重量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項5】
ピッチを含まない着色剤として、フタロシアニン系染料、フタロシアニン系顔料、アニリンブラック、ペリレンブラック、黒色酸化鉄、および、黒色酸化チタンからなる群から選ばれる1種以上をさらに含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の封止用エポキシ樹脂。
【請求項6】
ピッチを含まない着色剤およびピッチの合計含有量がエポキシ樹脂に対して2〜15重量%である請求項1〜5のいずれか1項記載の封止用エポキシ樹脂成形材料
【請求項7】
ピッチを含まない着色剤およびピッチの合計含有量に対してピッチの含有量が30重量%以上である請求項1〜6のいずれか1項記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項8】
エポキシ樹脂として、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、チオジフェノール型エポキシ樹脂、フェノール・アラルキル型エポキシ樹脂、および、ナフトール・アラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜7のいずれか1項記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項9】
硬化剤として、下記一般式(I)で示されるフェノール・アラルキル樹脂、および、下記一般式(II)で示されるナフトール・アラルキル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含む請求項1〜8のいずれか1項記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【化1】

(ここで、Rは水素原子、炭素数1〜12の置換または非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0または1〜3の整数を示し、Xは芳香環を含む二価の有機基を示し、nは0または1〜10の整数を示す。)
【化2】

(ここで、Rは水素原子、炭素数1〜12の置換または非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0または1〜3の整数を示し、Xは芳香環を含む二価の有機基を示し、nは0または1〜10の整数を示す。)
【請求項10】
さらに環状ホスファゼン化合物を含有する請求項1〜9のいずれか1項記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項11】
環状ホスファゼン化合物が下記一般式(XVII)で示される化合物を含む請求項10記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【化3】

(ここで、nは3〜5の整数を示し、RおよびR’は互いに同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基またはアリール基を示す。)
【請求項12】
RおよびR’のうちの少なくとも一方がヒドロキシフェニル基であり、ヒドロキシフェニル基の数が1〜10である請求項11記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項13】
架橋された環状ホスファゼン化合物を含む請求項10〜12のいずれか1項記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項記載の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止された素子を備えた電子部品装置。

【国際公開番号】WO2005/056676
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516103(P2005−516103)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018144
【国際出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】