説明

導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体

【課題】導電性粒子に大きな力が付与されても、導電層に大きな割れが生じ難い導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供する。
【解決手段】本発明に係る導電性粒子1は、基材粒子2と、該基材粒子2の表面2a上に設けられた銅−錫層3を備える。銅−錫層3は銅と錫との合金を含む。銅−錫層3全体における銅の含有量は20重量%を超え、75重量%以下であり、かつ錫の含有量は25重量%以上、80重量%未満である。基材粒子2は、樹脂粒子、無機粒子又は有機−無機ハイブリッド粒子である。本発明に係る異方性導電材料は、導電性粒子1と、バインダー樹脂とを含む。本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備える。上記接続部が、導電性粒子1、又は導電性粒子1を含む異方性導電材料により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電極間の接続に使用できる導電性粒子に関し、より詳細には、基材粒子と、該基材粒子の表面上に設けられた導電層とを有する導電性粒子に関する。また、本発明は、上記導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂中に導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続、及びICチップとITO電極を有する回路基板との接続等に使用されている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧することにより、これらの電極を電気的に接続できる。
【0004】
上記異方性導電材料に用いられる導電性粒子の一例として、下記の特許文献1には、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に設けられた銅層とを備える導電性粒子が開示されている。特許文献1では、このような導電性粒子は、具体的な実施例では開示されていないが、対向する回路の接続において良好な電気的接続が得られることが記載されている。
【0005】
特許文献1に記載の実施例で多用されているように、従来、ニッケル層を有する導電性粒子が主流である。しかしながら、ニッケル自体は電気抵抗が高く、接続抵抗を低くすることが困難であるという問題がある。これに対して、銅は電気抵抗が低いために、接続抵抗を低くする観点からは、導電性粒子の導電層として銅を適用すると有利である。しかし、銅はニッケル等と比較して柔らかい性質を持つ。従って、銅によって形成された導電層が柔らかすぎて、導電性粒子に大きな力が付与されると、導電層に割れが生じやすい。例えば、従来の導電性粒子を電極間の接続に用いて、接続構造体を得た場合に、導電層に大きな割れが生じることがある。このため、電極間を確実に接続できないことがある。
【0006】
また、銅を含む導電層を有する導電性粒子として、下記の特許文献2には、錫−銀−銅の三元系の合金被膜を有する導電性粒子が開示されている。特許文献2の実施例では、導電性粒子を得るために、銅金属粒子の表面に錫めっき被膜を形成し、次いで、銀めっき被膜を形成し、240℃以上に加熱することにより金属熱拡散を起こさせ、錫−銀−銅の三元系合金被膜を形成している。
【0007】
上記特許文献2では、錫−銀−銅の三元系の合金被膜における組成の含有割合は、錫が80〜99.8重量%、銀が0.1〜10重量%、銅が0.1〜10重量%であることが記載されている。具体的には、上記特許文献2の全ての実施例では、錫が96.5重量%、銀が3重量%、銅が0.5重量%である合金被膜が形成されている。この導電性粒子は、銀と銅とを比較的少なく含みかつ錫を比較的多く含むので、錫−銀−銅の三元系の合金被膜の融点が比較的低くなる。融点が低い導電層を有する導電性粒子を含む異方性導電材料は、接続構造体を形成するための加熱圧着時に、熱によって導電層の流動が起こり、必要以上に流出することがあるために、更に電極との接している導電層の厚みが薄くなりすぎるために、接続不良が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−323813号公報
【特許文献2】WO2006/080289A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、導電性粒子に大きな力が付与されても、導電層に大きな割れが生じ難い導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。
【0010】
また、本発明の限定的な目的は、銅−錫層の融点が高く、接続構造体を形成するための加熱圧着時に銅−錫層の過度の熱変形及び流出を抑制できる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、基材粒子と、該基材粒子の表面上に設けられた銅と錫とを含む銅−錫層とを備え、該銅−錫層が銅と錫との合金を含み、該銅−錫層全体における銅の含有量が20重量%を超え、75重量%以下であり、かつ錫の含有量が25重量%以上、80重量%未満である、導電性粒子が提供される。
【0012】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、上記銅−錫層の融点が550℃以上である。
【0013】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、上記銅−錫層全体における銅の含有量が40重量%以上、60重量%以下であり、かつ錫の含有量が40重量%以上、60重量%以下である。
【0014】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、該導電性粒子は、表面に突起を有する。
【0015】
本発明に係る導電性粒子の他の特定の局面では、上記銅−錫層の表面上に配置された絶縁性物質が備えられる。
【0016】
本発明に係る導電性粒子のさらに他の特定の局面では、上記絶縁性物質が絶縁性粒子である。
【0017】
本発明に係る異方性導電材料は、本発明に従って構成された導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。
【0018】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備えており、該接続部が、本発明に従って構成された導電性粒子により形成されているか、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料により形成されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子の表面上に銅と錫とを含む銅−錫層が設けられており、該銅−錫層が銅と錫との合金を含み、更に該銅−錫層全体における銅の含有量が20重量%を超え、75重量%以下であり、かつ錫の含有量が25重量%以上、80重量%未満であるため、導電性粒子に大きな力が付与されても、導電層に大きな割れが生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【図4】図4は、図1に示す導電性粒子を得る方法を説明するための断面図である。
【図5】図5は、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の第4の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0023】
図1に示す導電性粒子1は、基材粒子2と、該基材粒子2の表面2a上に設けられた銅−錫層3とを備える。銅−錫層3は導電層(第1の導電層)である。導電性粒子1は、銅−錫層3の表面3a上に配置された絶縁性物質をさらに備えていてもよい。さらに、銅−錫層3の表面3a上に、パラジウム層などの他の導電層(第2の導電層)が積層されていてもよい。上記絶縁性物質は、銅−錫層3の表面3a上に、パラジウム層などの他の導電層を介して間接に配置されていてもよい。
【0024】
銅−錫層3は、銅と錫との合金を含む。本実施形態では、銅−錫層3は、銅−錫合金層である。銅−錫層の一部の領域は錫を含んでいなくてもよく、銅−錫層の一部の領域は銅を含んでいなくてもよい。例えば、銅−錫層の内側部分が銅のみを含み、銅−錫層の外側部分が錫のみを含んでいてもよい。銅−錫層3全体における銅の含有量は、20重量%を超え、75重量%以下であり、かつ錫の含有量は、25重量%以上、80重量%未満である。
【0025】
本実施形態の特徴は、基材粒子2の表面2a上に設けられた銅−錫層3が、銅と錫との合金を含み、銅−錫層3全体における銅の含有量が20重量%を超え、75重量%以下であり、かつ錫の含有量が25重量%以上、80重量%未満であることである。このような銅−錫層3の形成によって、導電層に大きな力が付与されても、導電層に大きな割れが生じ難くなる。これは、銅と錫との合金化によって、銅−錫層3の硬度が適度に高くなるためであると考えられる。従って、導電性粒子1を電極間の接続に用いて、接続構造体を得た場合に、導電層に大きな割れが生じ難く、電極間の導通信頼性を高めることができる。なお、上記大きな割れとは、導電層が基材粒子から剥離し脱落して、電極間の接続不良が生じる程度の割れを意味する。さらに、銅−錫層3は銅を比較的多く含むので、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0026】
なお、銅はニッケルよりも導通性が高い。従って、導通性を高めるためには、ニッケルではなく銅を用いる方がよい。本発明では、導電層に銅を用いている。また、本発明では、一般的にはんだと呼ばれている導電物質とは異なり、銅を比較的多く用いている。
銅−錫層3全体における銅の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、好ましくは70重量%以下である。銅−錫層3全体における錫の含有量は、好ましくは30重量%以上、好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下、更に好ましくは60重量%以下である。
【0027】
銅−錫層3全体における銅の含有量は、30重量%以上、70重量%以下であり、かつ錫の含有量は、30重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。銅−錫層3全体における銅の含有量は、35重量%以上、65重量%以下であり、かつ錫の含有量は、35重量%以上、65重量%以下であることがより好ましい。銅−錫層3全体における銅の含有量は、40重量%以上、60重量%以下であり、かつ錫の含有量は、40重量%以上、60重量%以下であることが更に好ましい。
【0028】
特に、銅−錫層3全体における銅の含有量が40重量%以上、60重量%以下であり、かつ錫の含有量が40重量%以上、60重量%以下である場合には、導電層に大きな力が付与されても、導電層に大きな割れがより一層生じ難くなる。
【0029】
なお、本発明における銅及び錫などの金属の各含有量は、導電層の金属の総重量に対する銅又は錫の分量を重量%で示した値である。この測定方法としては、導電層の金属を王水で溶かし、該金属が溶解した溶液をICP(誘導結合プラズマ、堀場製作所製「ULTIMA2」)を用いて計測し、得られた金属イオン濃度から導電層の金属の重量及び各金属の分量を計算する測定方法が挙げられる。
【0030】
図1に示す導電性粒子1は、例えば、図4に示す導電性粒子を用いて得ることができる。
【0031】
基材粒子2の表面2a上に銅を含む銅層52を形成する。次に、銅層52の表面52a上に錫を含む錫層53を形成し、加熱前の導電性粒子51を得る。次に、導電性粒子51を加熱し、銅と錫とを合金化する。銅と錫とを効率的に合金化するためには、上記加熱の温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。銅と錫とを効率的に合金化するためには、200〜220℃で18〜24時間、導電性粒子を加熱することが特に好ましい。銅−錫層3は、銅と錫との合金を含むように、150℃以上に加熱処理された銅−錫層であることが好ましい。
【0032】
導電性粒子51において、銅層52と錫層53との各厚みを調整することにより、銅−錫層3全体における銅の含有量と錫の含有量とを調整できる。
【0033】
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子の表面上に銅層が設けられており、かつ該銅層の表面上に錫層が設けられている導電性粒子を加熱することにより得られた導電性粒子であることが好ましい。
【0034】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0035】
図2に示す導電性粒子11は、基材粒子2と、該基材粒子2の表面2a上に設けられた銅−錫層12を備える。銅−錫層12は導電層である。導電性粒子11は、基材粒子2の表面2aに複数の芯物質13を備える。導電層である銅−錫層12は、芯物質13を被覆している。芯物質13を導電層が被覆していることにより、導電性粒子11は表面11aに複数の突起14を有する。導電性粒子11は、銅−錫層12の外側の表面12aに複数の突起14を有する。突起14は、銅−錫層12の表面12aに形成されている。芯物質13により銅−錫層12の表面12aが隆起されており、突起14が形成されている。突起14の内側に、芯物質13が配置されている。銅−錫層12の表面12a上に、パラジウム層などの他の導電層が積層されていてもよい。
【0036】
導電性粒子11は、銅−錫層12の表面12a上に配置された絶縁性粒子15を備える。絶縁性粒子15は絶縁性物質である。銅−錫層と絶縁性粒子との間にパラジウム層などの他の導電層が存在していてもよい。本実施形態では、銅−錫層12の表面12aの一部の領域が、絶縁性粒子15により被覆されている。このように、導電性粒子は、銅−錫層などの導電層の表面上に付着された絶縁性粒子15を備えていてもよい。ただし、絶縁性粒子15は、必ずしも備えられていなくてもよい。さらに、絶縁性粒子15にかえて、絶縁性樹脂層が備えられてもよい。導電性粒子は、銅−錫層などの導電層の表面上に付着された絶縁性樹脂層を備えていてもよい。銅−錫層などの導電層の表面は、絶縁性樹脂層により被覆されていてもよい。該絶縁性樹脂層は絶縁性物質である。
【0037】
図5に、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を断面図で示す。
【0038】
図5に示す導電性粒子61は、基材粒子2と、銅−錫層3と、第2の導電層62とを備える。第2の導電層62は、導電性粒子1における銅−錫層3の表面3a上に設けられている。第2の導電層62は、銅−錫層3とは異なる。また、導電性粒子11における銅−錫層12の表面12a上に第2の導電層を設けてもよい。さらに、基材粒子の表面上に第2の導電層を設け、該第2の導電層上に銅−錫層を設けてもよい。すなわち、基材粒子と銅−錫層との間に、第2の導電層が配置されていてもよい。
【0039】
図6に、本発明の第4の実施形態に係る導電性粒子を断面図で示す。
【0040】
図6に示す導電性粒子71は、基材粒子2と、該基材粒子2の表面2a上に設けられた銅−錫層72とを備える。銅−錫層72は、第1の領域と第1の領域よりも厚みが薄い領域とを有する。銅−錫層72は厚みばらつきを有する。
【0041】
上記基材粒子としては、樹脂粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。
【0042】
上記基材粒子は、樹脂により形成された樹脂粒子であることが好ましい。電極間を接続する際には、導電性粒子を電極間に配置した後、一般的に導電性粒子を圧縮させる。基材粒子が樹脂粒子であると、圧縮により導電性粒子が変形しやすく、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、種々の有機物が好適に用いられる。上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が用いられる。例えば、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させることにより、導電材料に適した任意の圧縮時の物性を有する樹脂粒子を設計及び合成することができる。
【0043】
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合させて得る場合、該エチレン性不飽和基を有する単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
【0044】
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
【0045】
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
【0046】
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、及び非架橋の種粒子をラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
【0047】
上記基材粒子が無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である場合に、基材粒子を形成するための無機物としては、シリカ及びカーボンブラック等が挙げられる。上記シリカにより形成された粒子としては特に限定されないが、例えば、加水分解性のアルコキシシル基を2つ以上持つケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる粒子が挙げられる。
【0048】
上記基材粒子が金属粒子である場合に、該金属粒子を形成するための金属としては、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金及びチタン等が挙げられる。但し、基材粒子は金属粒子ではないことが好ましい。
【0049】
上記基材粒子の平均粒子径は、1〜100μmの範囲内であることが好ましい。基材粒子の平均粒子径が1μm以上であると、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。基材粒子の平均粒子径が100μm以下であると、電極間の間隔を狭くすることができる。基材粒子の平均粒子径のより好ましい下限は2μm、より好ましい上限は50μm、更に好ましい上限は30μm、特に好ましい上限は5μmである。
【0050】
上記平均粒子径は、数平均粒子径を示す。該平均粒子径は、例えばコールターカウンター(ベックマンコールター社製)を用いて測定できる。
【0051】
上記銅−錫層は、外表面が平滑な球状であってもよく、鱗片状又は板状の金属小片が形成する凹凸のある形態で外表面が略球状であってもよい。また、上記銅−錫層は、単層の導電層であってもよく、鱗片状又は板状の導電性物質が複数積層された導電層であってもよい。
【0052】
上記銅−錫層のビッカース硬度(Hv)は、好ましくは100以上、好ましくは500以下である。上記銅−錫層のビッカース硬度が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電層の割れがより一層生じ難くなり、かつ接続構造体における導通信頼性がより一層高くなる。
【0053】
上記銅−錫層の融点は、好ましくは550℃以上、より好ましくは600℃以上である。上記銅−錫層の融点の上限は特に限定されない。上記銅−錫層の融点が上記下限以上であると、銅−錫層の過度の熱変形及び流出を抑制できる。
【0054】
上記銅−錫層の融点は、DSC(示差走査熱量測定、SII社製「EXSTAR X−DSC7000」)にて計測した値である。
【0055】
上記銅−錫層は、第1の領域と該第1の領域よりも厚みが薄い第2の領域とを有していてもよい。上記銅−錫層における最大厚みは、最小厚みの1倍を超えていてもよく、1.1倍以上であってもよく、1.5倍以上であってもよく、2倍以上であってもよい。上記銅−錫層の厚みばらつきが大きいと、導電性粒子とバインダー樹脂を含む異方性導電材料を用いて接続構造体を得る際に、導電性粒子と電極との間のバインダー樹脂とが効果的に排除される。このため、得られる接続構造体における導通信頼性が高くなる。なお、後述する物理的又は機械的ハイブリダイゼーション法により上記銅−錫層を形成することで、厚みばらつきを大きくすることが容易である。
【0056】
上記銅−錫層の平均厚みは、10〜1000nmの範囲内であることが好ましい。銅−錫層の平均厚みのより好ましい下限は20nm、更に好ましい下限は50nm、より好ましい上限は800nm、更に好ましい上限は500nm、特に好ましい上限は300nmである。銅−錫層の平均厚みが上記下限以上であると、導電性粒子の導電性をより一層高めることができる。銅−錫層の平均厚みが上記上限以下であると、基材粒子と銅−錫層との熱膨張率の差が小さくなり、基材粒子から銅−錫層が剥離し難くなる。
【0057】
上記銅−錫層を形成するために、基材粒子の表面上に銅層を形成する方法としては、無電解めっきにより銅層を形成する方法、並びに電気めっきにより銅層を形成する方法等が挙げられる。銅−錫層を形成するために、例えば銅層の表面上に錫層を形成する方法としては、無電解めっきにより錫層を形成する方法、並びに電気めっきにより錫層を形成する方法等が挙げられる。また、上記銅−錫層を形成する好ましい方法として、物理的又は機械的な形成方法を用いてもよく、物理的又は機械的ハイブリダイゼーション法を用いてもよい。物理的又は機械的ハイブリダイゼーション法では、ハイブリダイザー等が用いられる。
【0058】
上記銅−錫層は、本発明の目的を阻害しない範囲で、銅及び錫以外の他の金属を含んでいてもよい。上記他の金属としては、例えば、金、銀、パラジウム、白金、パラジウム、亜鉛、鉄、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、タングステン、ケイ素及び錫ドープ酸化インジウム(ITO)等が挙げられる。
【0059】
上記銅−錫層が上記他の金属を含む場合に、銅−錫層全体における上記他の金属の含有量は好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
【0060】
上記導電性粒子は、上記第2の導電層を有していてもよい。該第2の導電層は、銅−錫層とは異なる導電層である。第2の導電層は、金層、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は錫と銀とを含む合金層であることが好ましく、パラジウム層又は金層であることがより好ましく、パラジウム層であることが更に好ましい。上記第2の導電層は、銅−錫層の表面上に設けられていることが好ましい。
【0061】
上記第2の導電層の平均厚みは、5nm以上であることが好ましい。上記第2の導電層の平均厚みが5nm以上であると、上記第2の導電層による均一な被覆が容易である。上記第2の導電層が上記銅−錫層の表面上に設けられている場合には、導電性粒子の外部環境に対する耐性が高くなり、銅−錫層が酸化し難くなり、銅−錫層中の銅と上記第2の導電層を構成する金属(パラジウムなど)との間のガルバニック反応による銅の腐食が起こり難くなる。このため、導電性粒子における導電層全体の導電性をより一層高めることができる。
【0062】
上記第2の導電層の平均厚みは、500nm以下であることが好ましい。上記第2の導電層の平均厚みが500nm以下であると、導電性粒子のコストが安くなる。さらに、上記第2の導電層を構成する金属の使用量を低減できるので、環境負荷を低減できる。
上記パラジウム層の平均厚みの好ましい下限は10nm、より好ましい上限は400nmである。パラジウム層の平均厚みが10nm以上であると、導電性粒子の導電性をより一層高めることができる。
【0063】
導電性粒子11のように、本発明に係る導電性粒子は表面に突起を有することが好ましい。上記銅−錫層のビッカース硬度(Hv)は、好ましくは100以上であり、かつ上記導電性粒子が表面に突起を有することが好ましい。導電性粒子は、導電層の表面に突起を有することが好ましく、更に銅−錫層又は上記第2の導電層(パラジウム層など)の表面に突起を有することが好ましい。上記突起は複数であることが好ましい。導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。突起を有する導電性粒子を用いた場合には、電極間に導電性粒子を配置して圧着させることにより、突起により上記酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子の導電層とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、導電性粒子が表面に絶縁性物質(絶縁性樹脂層又は絶縁性粒子など)を備える場合に、又は導電性粒子が樹脂中に分散されて異方性導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0064】
上記導電性粒子の表面に突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきにより導電層を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきにより導電層を形成する方法等が挙げられる。
【0065】
上記基材粒子の表面に芯物質を付着させる方法としては、例えば、基材粒子の分散液中に、芯物質となる導電性物質を添加し、基材粒子の表面に芯物質を、例えば、ファンデルワールス力により集積させ、付着させる方法、並びに基材粒子を入れた容器に、芯物質となる導電性物質を添加し、容器の回転等による機械的な作用により基材粒子の表面に芯物質を付着させる方法等が挙げられる。なかでも、付着させる芯物質の量を制御しやすいため、分散液中の基材粒子の表面に芯物質を集積させ、付着させる方法が好ましい。
【0066】
上記芯物質を構成する導電性物質としては、例えば、金属、金属の酸化物、黒鉛等の導電性非金属及び導電性ポリマー等が挙げられる。導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン等が挙げられる。なかでも、導電性を高めることができるので、金属が好ましい。
【0067】
上記金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム等の金属、並びに錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金及び錫−鉛−銀合金等の2種類以上の金属で構成される合金等が挙げられる。なかでも、ニッケル、銅、銀又は金が好ましい。上記芯物質を構成する金属は、上記導電層を構成する金属と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、上記金属の酸化物としては、アルミナ、シリカ及びジルコニア等が挙げられる。
【0068】
導電性粒子11のように、本発明に係る導電性粒子は、上記銅−錫層又はパラジウム層の表面上に配置された絶縁性物質を備えることが好ましい。この場合には、導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡を防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁性物質が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。導電性粒子がパラジウム層の表面に突起を有する場合には、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質をより一層容易に排除できる。上記絶縁性物質は、絶縁性樹脂層又は絶縁性粒子であることが好ましい。該絶縁性粒子は絶縁性樹脂粒子であることが好ましい。
【0069】
上記絶縁性物質の具体例としては、ポリオレフィン類、(メタ)アクリレート重合体、(メタ)アクリレート共重合体、ブロックポリマー、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の架橋物、熱硬化性樹脂及び水溶性樹脂等が挙げられる。
【0070】
上記ポリオレフィン類としては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート重合体としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート及びポリブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ブロックポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、SB型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びSBS型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ビニル重合体及びビニル共重合体等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及びメチルセルロース等が挙げられる。本発明に係る導電性粒子は、上記導電層の表面に付着された絶縁性粒子を備えることがより好ましい。この場合には、導電性粒子を電極間の接続に用いると、横方向に隣接する電極間の短絡をさらに一層防止できるだけでなく、接続された上下の電極間の接続抵抗をさらに一層低くすることができる。
【0071】
上記導電層の表面に絶縁性粒子を付着させる方法としては、化学的方法、及び物理的もしくは機械的方法等が挙げられる。上記化学的方法としては、例えばWO2003/25955A1に開示されているように、ファンデルワールス力又は静電気力によるヘテロ凝集法により、金属表面粒子の導電層上に絶縁性粒子を付着させ、さらに必要に応じて化学結合させる方法が挙げられる。上記物理的もしくは機械的方法としては、スプレードライ、ハイブリダイゼーション、静電付着法、噴霧法、ディッピング及び真空蒸着による方法等が挙げられる。なかでも、絶縁性物質が脱離し難いことから、上記導電層の表面に、化学結合を介して絶縁性物質を付着させる方法が好ましい。
【0072】
上記絶縁性粒子の粒子径は、導電性粒子の粒子径の1/5以下であることが好ましい。この場合には、絶縁性粒子の粒子径が大きすぎず、導電層による電気的接続がより一層確実に果たされる。絶縁性粒子の粒子径が導電性粒子の粒子径の1/5以下である場合、ヘテロ凝集法により絶縁性粒子を付着させる際に、導電性粒子の表面上に絶縁性粒子を効率よく吸着させることができる。また、上記絶縁性粒子の粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下である。上記絶縁性粒子の粒子径が上記下限以上であると、隣接する導電性粒子間の距離が電子のホッピング距離よりも大きくなり、リークが起こり難くなる。上記絶縁性粒子の粒子径が上記上限以下であると、熱圧着する際に必要な圧力及び熱量が小さくなる。
【0073】
上記絶縁性粒子の粒子径のCV値は、20%以下であることが好ましい。CV値が20%以下であると、導電性粒子の被覆層の厚さが均一になり、電極間で熱圧着する際に均一に圧力をかけやすくなり、導通不良が生じ難くなる。なお、上記粒子径のCV値は、下記式により算出される。
【0074】
粒子径のCV値(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
【0075】
粒子径分布は、金属表面粒子を被覆する前は粒度分布計等で測定でき、被覆した後はSEM写真の画像解析等で測定することができる。
【0076】
なお、導電性粒子の導電層を露出させるためには、絶縁性物質による被覆率は、好ましくは5%以上、好ましくは70%以下である。上記絶縁性物質による被覆率は、金属表面粒子の表面積全体に占める絶縁性物質により被覆されている部分の面積である。上記被覆率が5%以上であると、隣接する導電性粒子同士が、絶縁性物質によってより一層確実に絶縁される。上記被覆率が70%以下であると、電極の接続の際に熱及び圧力を必要以上にかける必要がなくなり、排除された絶縁性物質によるバインダー樹脂の性能の低下が抑えられる。
【0077】
上記絶縁性粒子として特に限定されないが、公知の無機粒子及び有機高分子粒子が適用可能である。上記無機粒子としては、アルミナ、シリカ及びジルコニアなどの絶縁性無機粒子が挙げられる。
【0078】
上記有機高分子粒子は、不飽和二重結合を有する単量体の一種又は二種以上を(共)重合した樹脂粒子であることが好ましい。上記不飽和二重結合を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;ビニルエーテル類;塩化ビニル;スチレン、ジビニルベゼン等のスチレン系化合物、アクリロニトリル等が挙げられる。中でも(メタ)アクリル酸エステル類が好適に用いられる。
【0079】
上記絶縁性粒子は、ヘテロ凝集によって導電性粒子の導電層に付着させるために極性官能基を有することが好ましい。該極性官能基としては、例えば、アンモニウム基、スルホニウム基、リン酸基及びヒドロキシシリル基等が挙げられる。上記極性官能基は、上記極性官能基と不飽和二重結合とを有する単量体を共重合することによって導入することができる。
【0080】
上記アンモニウム基を有する単量体としては、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、及びN,N,N−トリメチル−N−2−メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。上記スルホニウムを有する単量体としては、メタクリル酸フェニルジメチルスルホニウムメチル硫酸塩等が挙げられる。上記リン酸基を有する単量体としては、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、及びアシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。上記ヒドロキシシリル基を有する単量体としては、ビニルトリヒドロキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリヒドロキシシラン等が挙げられる。
【0081】
上記絶縁性粒子の表面に極性官能基を導入する別の方法として、上記不飽和二重結合を有する単量体を重合する際の開始剤として、極性基を有するラジカル開始剤を用いる方法が挙げられる。上記ラジカル開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシ−ブチル)]−プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、及び2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)及びこれらの塩等が挙げられる。
【0082】
(異方性導電材料)
本発明に係る異方性導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、一般的には絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0083】
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂又は湿気硬化性樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0084】
上記異方性導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0085】
上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法としては、例えば、上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、上記導電性粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、上記バインダー樹脂中に添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、並びに上記バインダー樹脂を水又は有機溶剤等で希釈した後、上記導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
【0086】
本発明に係る異方性導電材料は、異方性導電ペースト及び異方性導電フィルムとして使用され得る。本発明に係る異方性導電材料が異方性導電フィルムである場合には、導電性粒子を含む異方性導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。
【0087】
接続構造体における接続部にボイドが発生するのを抑制し、導通信頼性をより一層高める観点からは、上記異方性導電材料は異方性導電ペーストであることが好ましい。上記異方性導電材料は、異方性導電ペーストであり、かつペースト状の状態で接続対象部材の上面に塗工される異方性導電材料であることが好ましい。
【0088】
上記異方性導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は10〜99.99重量%の範囲内であることが好ましい。上記バインダー樹脂の含有量のより好ましい下限は30重量%、更に好ましい下限は50重量%、特に好ましい下限は70重量%、より好ましい上限は99.9重量%である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限及び上限を満たすと、電極間に導電性粒子を効率的に配置でき、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。
【0089】
上記異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は0.01〜20重量%の範囲内であることが好ましい。上記導電性粒子の含有量のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は10重量%である。上記導電性粒子の含有量が上記下限及び上限を満たすと、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。
【0090】
(接続構造体)
本発明に係る導電性粒子又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
【0091】
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、該接続部が本発明の導電性粒子により形成されているか、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料により形成されている接続構造体であることが好ましい。導電性粒子が用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。すなわち、第1,第2の接続対象部材が導電性粒子により接続される。
【0092】
図3に、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に正面断面図で示す。
【0093】
図3に示す接続構造体21は、第1の接続対象部材22と、第2の接続対象部材23と、第1,第2の接続対象部材22,23を接続している接続部24とを備える。接続部24は、導電性粒子1を含む異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。なお、図3では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。導電性粒子1にかえて、導電性粒子11,61,71を用いてもよい。
【0094】
第1の接続対象部材22は上面22aに、複数の電極22bを有する。第2の接続対象部材23は下面23aに、複数の電極23bを有する。電極22bと電極23bとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材22,23が導電性粒子1により電気的に接続されている。
【0095】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例としては、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記異方性導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。
【0096】
上記加圧の圧力は9.8×10〜4.9×10Pa程度である。上記加熱の温度は、120〜220℃程度である。本発明に係る導電性粒子の使用により、このような圧力が加えられても、銅−錫層に大きな割れが生じ難い。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0097】
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
【0098】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0099】
本発明に係る導電性粒子の別の使用形態を挙げると、液晶表示素子を構成する上下基板間の電気的な接続をするための導通材料として導電性粒子を使用することもできる。導電性粒子を熱硬化性樹脂又は熱UV併用硬化性樹脂に混合し、分散させて、片側基板上に点状に塗布し、対向基板と貼り合わせる方法、並びに導電性粒子を周辺シール剤に混合し分散させて線状に塗布して、封止シールと上下基板の電気接続を兼用する方法等がある。このような使用形態のいずれにも、本発明に係る導電性粒子は適用できる。また、本発明に係る導電性粒子は、基材粒子の表面に導電層が設けられているので、基材粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能である。
【0100】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0101】
(実施例1)
(1)樹脂粒子形成工程
ポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製「GH−20」)を3重量%含む水溶液800重量部に、ジビニルベンゼン70重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート30重量部と、過酸化ベンゾイル2重量部とを加え、攪拌し、混合した。窒素雰囲気下にて撹拌しながら80℃まで加熱し、15時間反応を行い、樹脂粒子を得た。
【0102】
得られた樹脂粒子を蒸留水及びメタノールで洗浄した後、分級操作を行い、平均粒子径4.1μm及び変動係数5.0%の樹脂粒子を得た。以下、樹脂粒子Aと記載することがある。
【0103】
(2)無電解銅めっき工程
得られた樹脂粒子A10gをエッチング処理した後、水洗した。次に、樹脂粒子に硫酸パラジウムを加え、パラジウムイオンを樹脂粒子に吸着させた。
【0104】
次いでジメチルアミンボラン0.5重量%を含む水溶液に、パラジウムイオンが吸着した樹脂粒子を添加し、パラジウムを活性化させた。この樹脂粒子に蒸留水500mLを加え、粒子懸濁液を得た。
【0105】
また、40g/Lの硫酸銅(5水和物)と、100g/Lのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と、50g/Lのグルコン酸ナトリウムと、25g/Lのホルムアルデヒドとを含み、かつpH10.5に調整された無電解めっき液を用意した。上記粒子懸濁液に、上記無電解めっき液を徐々に添加し、50℃で攪拌しながら無電解銅めっきを行った。このようにして、銅層(厚み約40nm)が表面上に設けられた銅めっき粒子を得た。
【0106】
(3)無電解錫めっき工程
塩化錫5gとイオン交換水1000mLとを含む溶液を調製し、得られた銅めっき粒子15gを混合して水性懸濁液を得た。この水性懸濁液に、チオ尿素30g及び酒石酸80gを入れ、めっき液を得た。このめっき液を浴温60℃にし、20分間反応させた。更に、このめっき液中に、塩化錫20g、クエン酸40g及び水酸化ナトリウム30gをさらに入れ、浴温60℃で20分間反応させることにより、錫層(厚み約72nm)が銅層の表面上に設けられた粒子を得た。
【0107】
(4)合金化工程
得られた錫層が銅層の表面上に設けられた粒子を、220℃で20時間加熱した。加熱後に、銅と錫層とが合金化していた。このようにして、樹脂粒子の表面上に銅−錫層(厚み約100nm)が設けられており、かつ該銅−錫層が銅と錫との合金を含む導電性粒子を得た。得られた導電性粒子において、銅−錫層全体に含まれている銅と錫との含有量を評価した結果、銅の含有量は40重量%であり、錫の含有量は60重量%であった。
【0108】
(実施例2)
無電解銅めっき工程において、銅層の厚みを約50nmにしたこと、並びに無電解錫めっき工程において、錫層の厚みを約60nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上に銅−錫層(厚み約100nm)が設けられており、かつ該銅−錫層が銅と錫との合金を含む導電性粒子を得た。得られた導電性粒子において、銅−錫層全体に含まれている銅と錫との含有量を評価した結果、銅の含有量は50重量%であり、錫の含有量は50重量%であった。
【0109】
(実施例3)
無電解銅めっき工程において、銅層の厚みを約60nmにしたこと、並びに無電解錫めっき工程において、錫層の厚みを約48nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上に銅−錫層(厚み約100nm)が設けられており、かつ該銅−錫層が銅と錫との合金を含む導電性粒子を得た。得られた導電性粒子において、銅−錫層全体に含まれている銅と錫との含有量を評価した結果、銅の含有量は60重量%であり、錫の含有量は40重量%であった。
【0110】
(実施例4)
(1)芯物質付着工程
実施例1で得られた樹脂粒子A10gをエッチング処理した後、水洗した。次に、樹脂粒子に硫酸パラジウムを加え、パラジウムイオンを樹脂粒子に吸着させた。
【0111】
パラジウムが付着された樹脂粒子をイオン交換水300mL中で3分間攪拌し、分散させ、分散液を得た。次に、金属ニッケル粒子スラリー(三井金属社製「2020SUS」、平均粒子径200nm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着された樹脂粒子を得た。
【0112】
(2)導電性粒子の作製
芯物質が付着された樹脂粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、無電解銅めっき工程、無電解錫めっき工程及び合金化工程を行い、樹脂粒子の表面上に銅−錫層が設けられており、かつ該銅−錫層が銅と錫との合金を含む導電性粒子を得た。得られた導電性粒子は、銅−錫層の表面に突起を有していた。得られた導電性粒子において、銅−錫層全体に含まれている銅と錫との含有量を評価した結果、銅の含有量は40重量%であり、錫の含有量は60重量%であった。なお、銅及び錫の含有量を求める際には、芯物質として含まれているニッケルは除外されている。
【0113】
(実施例5)
樹脂粒子Aを、1,4−ブタンジオールジアクリレートと、テトラメチロールメタンテトラアクリレートとの共重合樹脂粒子(1,4−ブタンジオールジアクリレート:テトラメチロールメタンテトラアクリレート=95重量%:5重量%、以下樹脂粒子Bと記載することがある)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして導電性粒子を得た。得られた導電性粒子は、銅−錫層の表面に突起を有していた。
【0114】
(実施例6)
(1)絶縁性樹脂粒子の作製
4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブが取り付けられた1000mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル100mmolと、N,N,N−トリメチル−N−2−メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド1mmolと、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩1mmolとを含むモノマー組成物を固形分率が5重量%となるようにイオン交換水に添加した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下70℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、表面にアンモニウム基を有し、平均粒子径220nm及びCV値10%の絶縁性樹脂粒子を得た。
【0115】
絶縁性樹脂粒子を超音波照射下でイオン交換水に分散させ、絶縁性樹脂粒子の10重量%水分散液を得た。
【0116】
実施例5で得られた導電性粒子10gをイオン交換水500mLに分散させ、絶縁性樹脂粒子の水分散液4gを添加し、室温で6時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターでろ過した後、更にメタノールで洗浄し、乾燥し、絶縁性樹脂粒子が付着された導電性粒子を得た。
【0117】
走査電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、導電性粒子の表面に絶縁性樹脂粒子による被覆層が1層のみ形成されていた。画像解析により導電性粒子の中心より2.5μmの面積に対する絶縁性樹脂粒子の被覆面積(即ち絶縁性樹脂粒子の粒子径の投影面積)を算出したところ、被覆率は30%であった。
【0118】
(実施例7)
樹脂粒子Aを、樹脂粒子Bに変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0119】
(実施例8)
実施例5で得られた導電性粒子を実施例1で得られた導電性粒子に変更したこと以外は、実施例6と同様にして絶縁性樹脂粒子が付着された導電性粒子を得た。
【0120】
(実施例9)
実施例5で得られた導電性粒子を実施例4で得られた導電性粒子に変更したこと以外は、実施例6と同様にして絶縁性樹脂粒子が付着された導電性粒子を得た。
【0121】
(実施例10)
実施例5で得られた導電性粒子を実施例7で得られた導電性粒子に変更したこと以外は、実施例6と同様にして絶縁性樹脂粒子が付着された導電性粒子を得た。
【0122】
(実施例11)
実施例1で得られた導電性粒子を用意した。この導電性粒子を用いて、以下の(1)及び(2)の工程を実施した。
【0123】
(1)無電解パラジウムめっき工程
得られた銅めっき粒子10gを、超音波処理機により、イオン交換水500mLに分散させ、粒子懸濁液を得た。
【0124】
また、4g/Lの硫酸パラジウム(無水物)と、2.4g/Lのエチレンジアミンと、4.0g/Lの硫酸ヒドラジウムと、3.5g/Lの次亜リン酸ナトリウムとを含み、かつpH10に調整された無電解めっき液を用意した。上記粒子懸濁液を50℃で攪拌しながら、上記無電解めっき液を徐々に添加し、無電解パラジウムめっきを行った。無電解めっき液の添加量は、パラジウム層の厚みが10nmになるように調整した。得られたパラジウムめっきされた樹脂粒子を蒸留水及びメタノールで洗浄した後、真空乾燥した。このようにして、樹脂粒子の表面に銅層が設けられており、かつ銅層の表面にパラジウム層が設けられた導電性粒子を得た。
【0125】
(2)塩素洗浄除去工程
得られた導電性粒子1gを蒸留水1000mL(比抵抗18MΩ)に分散させ、撹拌機付オートクレーブに入れて0.1MPaの加圧下、121℃で10時間攪拌洗浄した。その後、ろ別し、乾燥した。
【0126】
このようにして、樹脂粒子の表面上に銅−錫層(厚み約100nm)が設けられており、かつ該銅−錫層が銅と錫との合金を含み、更に銅−錫層の表面上にパラジウム層(厚み10nm)が設けられた導電性粒子を得た。
【0127】
(実施例12)
実施例1で得られた樹脂粒子Aを用意した。また、銅粉(粒子径3.0〜7.0μm)と錫粉(粒子径3.0〜7.0μm)を用意した。
【0128】
樹脂粒子Aと銅粉と錫粉とを用いて、ハイブリダイザー(奈良機械製作所社製)を使用して、物理的/機械的ハイブリダイゼーション法により、樹脂粒子の表面上に銅−錫層(厚み100nm)を有する粒子を得た。
【0129】
次に、得られた樹脂粒子の表面上に銅−錫層を有する粒子を220℃で20時間加熱した。加熱後に、銅と錫層とが合金化していた。このようにして、樹脂粒子の表面上に銅−錫層(厚み100nm)が設けられており、かつ該銅−錫層が銅と錫との合金を含む導電性粒子を得た。得られた導電性粒子において、銅−錫層全体に含まれている銅と錫との含有量を評価した結果、銅の含有量は40重量%であり、錫の含有量は60重量%であった。上記銅−錫層における最大厚みは、最小厚みの2倍以上であった。
【0130】
(実施例13)
実施例1で使用した樹脂粒子Aを用意した。また、銅錫合金粉(銅の含有量40重量%、錫の含有量60重量%、粒子径3.0〜7.0μm)を用意した。
【0131】
樹脂粒子Aと銅錫合金粉とを用いて、ハイブリダイザー(奈良機械製作所社製)を使用して、物理的/機械的ハイブリダイゼーション法により、樹脂粒子の表面上に銅−錫層(厚み100nm)を有する粒子を得た。
【0132】
得られた導電性粒子において、銅−錫層全体に含まれている銅と錫との含有量を評価した結果、銅の含有量は40重量%であり、錫の含有量は60重量%であった。上記銅−錫層における最大厚みは、最小厚みの2倍以上であった。
【0133】
(比較例1)
実施例1で得られた樹脂粒子Aを用意した。この樹脂粒子A10gをエッチング処理した後、水洗した。次に、樹脂粒子に硫酸パラジウムを加え、パラジウムイオンを樹脂粒子に吸着させた。
【0134】
次いでジメチルアミンボラン0.5重量%を含む水溶液に、パラジウムイオンが吸着した樹脂粒子を添加し、パラジウムを活性化させた。この樹脂粒子に蒸留水500mLを加え、粒子懸濁液を得た。
【0135】
また、40g/Lの硫酸銅(5水和物)と、100g/Lのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と、50g/Lのグルコン酸ナトリウムと、25g/Lのホルムアルデヒドとを含み、かつpH10.5に調整された無電解めっき液を用意した。上記粒子懸濁液に、上記無電解めっき液を徐々に添加し、50℃で攪拌しながら無電解銅めっきを行った。このようにして、銅層(厚み100nm)が表面上に設けられた銅めっき粒子(導電性粒子)を得た。比較例1では、銅層の表面上に、錫層を設けなかった。
【0136】
(比較例2)
実施例1の無電解錫めっき工程後に得られた錫層(厚み約72nm)が銅層(厚み約40nm)の表面上に設けられた粒子を、導電性粒子とした。比較例2では、合金化工程を行わなかった。
【0137】
(比較例3)
無電解銅めっき工程において、銅層の厚みを約80nmにしたこと、並びに無電解錫めっき工程において、錫層の厚みを約20nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上に銅−錫層(厚み100nm)が設けられており、かつ該銅−錫層が銅と錫との合金を含む導電性粒子を得た。得られた導電性粒子において、銅−錫層全体に含まれている銅と錫との含有量を評価した結果、銅の含有量は80重量%であり、錫の含有量は20重量%であった。
【0138】
(比較例4)
無電解銅めっき工程において、銅層の厚みを約14nmにしたこと、並びに無電解錫めっき工程において、錫層の厚みを約96nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上に銅−錫層(厚み約100nm)が設けられており、かつ該銅−錫層が銅と錫との合金を含む導電性粒子を得た。得られた導電性粒子において、銅−錫層全体に含まれている銅と錫との含有量を評価した結果、銅の含有量は15重量%であり、錫の含有量は85重量%であった。
【0139】
(実施例14)
無電解銅めっき工程において、銅層の厚みを約30nmにしたこと、並びに無電解錫めっき工程において、錫層の厚みを約84nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上に銅−錫層(厚み約100nm)が設けられており、かつ該銅−錫層が銅と錫との合金を含む導電性粒子を得た。得られた導電性粒子において、銅−錫層全体に含まれている銅と錫との含有量を評価した結果、銅の含有量は30重量%であり、錫の含有量は70重量%であった。
【0140】
(評価)
(1)導電層の割れ
L/Sが100μm/100μmの銅電極が形成された2枚の基板を用意した。また、導電性粒子10重量部と、バインダー樹脂としてのエポキシ樹脂(三井化学社製「ストラクトボンドXN−5A」)85重量部と、イミダゾール型硬化剤5重量部とを含む異方性導電ペーストを用意した。
【0141】
基板の上面に異方性導電ペーストを導電性粒子が銅電極に接触するように塗布した後、他の基板を銅電極が導電性粒子に接触するように積層し、3MPaの圧力をかけて圧着し、積層体を得た。その後、積層体を180℃で1分間加熱することにより、異方性導電ペーストを硬化させ、接続構造体を得た。
【0142】
得られた接続構造体において、導電性粒子の導電層に割れがあるか否かを評価した。導電層の割れを下記の基準で判定した。
【0143】
[導電層の割れの判定基準]
○:導電層に大きな割れがなく、樹脂粒子が露出していない
△:導電層に大きな割れがあり、樹脂粒子がわずかに露出している
×:導電層に大きな割れがあり、樹脂粒子が大きく露出している
【0144】
(2)導通信頼性
上記(1)の評価で得られた100個の接続構造体の対向する電極間の接続抵抗を四端子法により測定し、電極間が導通されているか否かを評価し、導通信頼性を下記の基準で判定した。
【0145】
[導通信頼性の判定基準]
○:100個の接続構造体の全てが導通されている
△:100個の接続構造体の内の導通されなかった数が1個又は2個
×:100個の接続構造体の内の導通されなかった数が3個以上
【0146】
(3)ビッカース硬度
得られた導電性粒子における銅−錫層のビッカース硬度を、ビッカース硬度計(島津製作所社製「DUH−W201」)を用いて測定した。ビッカース硬度を下記の基準で判定した。
【0147】
[ビッカース硬度の判定基準]
A:ビッカース硬度が500を超える
B:ビッカース硬度が100以上、500以下
C:ビッカース硬度が100未満
【0148】
(4)融点
アルミパンに導電性粒子0.2〜0.5mgを入れ、ティー・エー・インスツルメンツ製「DSC2920」を用いて、昇温速度10℃/分の条件で走査し、Heat−Flow曲線を得た。この曲線において融解と見られるピークの頂点が示す温度値を融点とした。
【0149】
(5)金属含有量の分析
ガラス製三角フラスコにて、導電性粒子0.5gと王水(35%塩酸溶液15mL、70%硝酸5mL)20mLとを混合し、70℃の温水バスで15分間、加温しかつ放置した。ウォターバスからフラスコを取り出した後、フラスコ中の液温が40℃以下ならように自然冷却させた。冷却後に、金属イオンと樹脂粒子とを含む酸性溶液を、ガラス漏斗及びろ紙(アドバンテック製濾紙、No.5C)を用いてろ過した。固液分離を行い、金属イオンを含む酸性溶液を100mL取り出した後、1mLをマイクロピペットで分取し、純水にて100倍に希釈して、希釈液を得た。得られた希釈液を用いて、ICP(誘導結合プラズマ、堀場製作所製「ULTIMA2」)で計測し、得られた金属イオン濃度から導電層の金属の重量及び各金属の分量を計算した。
結果を下記の表1に示す。下記の表1において、「−」は評価していないことを示す。
【0150】
【表1】

【符号の説明】
【0151】
1…導電性粒子
2…基材粒子
2a…表面
3…銅−錫層
3a…表面
11…導電性粒子
11a…表面
12…銅−錫層
12a…表面
13…芯物質
14…突起
15…絶縁性粒子
21…接続構造体
22…第1の接続対象部材
22a…上面
22b…電極
23…第2の接続対象部材
23a…下面
23b…電極
24…接続部
51…導電性粒子
52…銅層
52a…表面
53…錫層
61…導電性粒子
62…第2の導電層
71…導電性粒子
72…銅−錫層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と、該基材粒子の表面上に設けられた銅と錫とを含む銅−錫層とを備え、
前記銅−錫層が銅と錫との合金を含み、
前記銅−錫層全体における前記銅の含有量が20重量%を超え、75重量%以下であり、かつ錫の含有量が25重量%以上、80重量%未満であり、
前記基材粒子が、樹脂粒子、無機粒子又は有機−無機ハイブリッド粒子である、導電性粒子。
【請求項2】
前記銅−錫層の融点が550℃以上である、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項3】
前記銅−錫層全体における銅の含有量が40重量%以上、60重量%以下であり、かつ錫の含有量が40重量%以上、60重量%以下である、請求項1又は2に記載の導電性粒子。
【請求項4】
表面に突起を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項5】
前記銅−錫層の表面上に配置された絶縁性物質を備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項6】
前記絶縁性物質が絶縁性粒子である、請求項5に記載の導電性粒子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、異方性導電材料。
【請求項8】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性粒子により形成されているか、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料により形成されている、接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−94532(P2012−94532A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−288560(P2011−288560)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2011−541004(P2011−541004)の分割
【原出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】