説明

平版印刷版現像廃液削減装置

【課題】現像廃液の排出量を削減することができ、廃液の処理過程で生じる水を容易に再利用できる平版印刷版現像廃液削減装置を提供する。
【解決手段】
平版印刷版現像廃液削減装置1は消泡剤を貯蔵する消泡剤タンク40と、ポジ型の平版印刷版現像廃液を貯蔵する処理液タンク10と、消泡剤タンク40と処理液タンク10と接続され、廃液を加熱・濃縮するための加熱コイル60を備える第1容器20と、第1容器20からの蒸発した水蒸気を冷却・凝縮するための冷却コイル64を備える第2容器22と、ヒートポンプシステムを構成するよう加熱コイル60と冷却コイル64とに接続された圧縮機61及びキャピラリー管68と、第1容器20と第2容器22を減圧するための、水流タンク80、アスピレーター81及び水流ポンプ82を備える減圧手段と、第2容器22で冷却・凝縮された水を回収し、水流タンク80と接続された洗浄水タンク90と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版材料の現像処理で生じる処理廃液の処理方法に関し、廃液の蒸発濃縮により廃液量を削減する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版材料を自動現像機で現像処理する場合は、処理や経時で失われる成分の濃度やpHを一定に保ち、現像液の性能を維持するために補充液を各工程の現像液に供給する手段が採られている。このような補充を行っても、現像液の性能が許容限度外になるような場合には、現像液の全てが廃棄処分される。現像廃液はアルカリ性が強い為、近年、公害規制の強化により、廃液をそのまま下水道に流すことは実質的に不可能で、製版業者が自ら公害処理設備を設置するか、廃液処理業者に処理を委託するしかなく、いずれも高コストである。
【0003】
このような問題に対して、例えば特許文献1では廃液貯蔵タンクに温風を吹き込み濃縮する方法が、特許文献2では処理廃液を中和し、凝集剤を添加して凝集成分を凝集させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−341535号公報
【特許文献2】特開平2−157084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、蒸発量が多くないので、現像廃液を濃縮するのに長時間を必要とする。そのため廃液量減少の効果は充分ではない。また、蒸発した水分の処理について検討されていない。
【0006】
特許文献2の技術では、凝集剤を必要とするため廃液の処理にコストがかかるという問題があった。また、ポリマーを含有する現像廃液の場合、蒸発釜内に残った固形物が飴状で蒸発釜の壁面に付着し、汚れやすく、また廃液処理装置の配管が詰まり易い問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、現像廃液の排出量を削減することができ、廃液の処理過程で生じる水を容易に再利用できる平版印刷版現像廃液削減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、消泡剤を貯蔵する消泡剤タンクと、ポジ型の平版印刷版現像廃液を貯蔵する処理液タンクと、前記消泡剤タンクと処理液タンクと接続され、廃液を加熱・濃縮するための加熱コイルを備える第1容器と、前記第1容器からの蒸発した水蒸気を冷却・凝縮するための冷却コイルを備える第2容器と、ヒートポンプシステムを構成するよう前記加熱コイルと前記冷却コイルとに接続された圧縮機及びキャピラリー管と、前記第1容器と前記第2容器を減圧する水流タンク、アスピレーター及び水流ポンプを備える減圧手段と、前記第2容器で冷却・凝縮された水を回収し、前記水流タンクと接続された洗浄水タンクと、を備える。
【0009】
従来、ポジ型の平版印刷版現像廃液の処理について十分な検討がなされていなかった。そこで、発明者らは、ポジ型の平版印刷版現像廃液、特に、アルカリ性の強い現像廃液の処理について鋭意検討した。その結果、(1)廃液を加熱・濃縮することで廃液量を削減できること、(2)廃液の加熱・濃縮中に消泡剤を添加することで泡の発生を抑制でき不要な成分が水蒸気に付随しないので冷却・凝縮された水を容易に再利用できること、を見出して本発明に至った。
【0010】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記第2容器が前記第1容器の外周を囲み、前記第1容器と前記第2容器とで二重構造を構成することである。
【0011】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記第1容器と前記第2容器とが連通路を介して分離されることである。
【0012】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記消泡剤がシリコーン系の消泡剤である。
【0013】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記シリコーン系消泡剤が、CAS NO.7732−18−5を含む。
【0014】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記平版印刷版現像廃液がアルカリ性の現像廃液である。
【0015】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記現像廃液がD−ソルビトールカリウム塩、クエン酸カリウム塩、及び水を含む。
【0016】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記第1容器から排出される濃縮された廃液に酸性の水溶液を供給する手段をさらに備える。
【0017】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記処理液タンクの廃液より先に前記消泡剤タンクの消泡剤を前記第1容器に供給する運転シーケンスを実行する制御手段をさらに備える。
【0018】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記水流タンク内にエアポンプと接続された気泡発生手段が設置され、かつ前記エアポンプと前記消泡剤タンクとが接続される。
【0019】
エアポンプと気泡発生手段により、水流タンク内の水のpH値を調整することができる。エアポンプからの空気により消泡剤タンク内を攪拌することができる。これにより、消泡剤の沈殿等を防止でき、適正量の消泡剤を第1容器に供給することができる。
【0020】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記エアポンプに接続され、前記水流タンク内に設置されたエア検出センサーをさらに備え、前記エア検出センサーは、上面と底面と側面を有する中空構造のケースと、前記ケースに形成され前記エアポンプと接続される開口と、前記ケースの上面、底面、及び側面のそれぞれに形成された少なくとも一つの貫通孔と、前記ケース内に設置されたレベルセンサーと、を有する。
【0021】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記水流タンクにはエアポンプと接続された気泡発生手段が設置され、かつ前記エアポンプに接続され、前記水流タンク内に設置されたエア検出センサーを備え、前記エア検出センサーは、上面と底面と側面を有する中空構造のケースと、前記ケースに形成され前記エアポンプと接続される開口と、前記ケースの上面、底面、及び側面のそれぞれに形成された少なくとも一つの貫通孔と、前記ケース内に設置されたレベルセンサーと、を有する。
【0022】
水流タンクにエアポンプと接続されたエア検出センサーを設置することで、エアポンプが正常に動作しているか検知することができる。これにより、水流タンクにエアポンプからの空気が供給されているかを検知することができる。
【0023】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記洗浄水タンクの水を自動現像装置に供給する配管を含む再利用システムをさらに備える。これにより平版印刷版現像廃液削減装置からの水を自動現像装置に再利用することができる。
【0024】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記再利用システムは、前記配管内の圧力を測定する圧力計とポンプを備え、前記圧力計で測定された圧力値に応じて、前記ポンプの駆動を制御し、前記洗浄水タンクから前記自動現像装置への水供給を制御する。
【0025】
本発明の平版印刷版現像廃液削減装置は、好ましくは、前記再利用システムは、前記配管と接続された循環用の配管とポンプをさらに備え、前記ポンプを周期的に駆動することにより、前記洗浄水タンクから前記自動現像装置への水供給を制御する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、廃液の排出を削減することができ、また、廃液の処理過程で生じる水を容易に再利用できる。廃液の排出量を削減することができるので、廃液の処分に伴うCOやエネルギーを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態の平版印刷版現像廃液削減装置の構成を示す説明図。
【図2】第2の実施形態の平版印刷版現像廃液削減装置の構成を示す説明図。
【図3】エア検出センサーの概略構成図。
【図4】エア検出センサーとレベルセンサーの動作を説明する図。
【図5】エア検出センサーとレベルセンサーの動作を説明する図。
【図6】エア検出センサーとレベルセンサーの動作を説明する図。
【図7】第3の実施形態の平版印刷版現像廃液削減装置の構成を示す説明図。
【図8】再利用システムの概略構成図。
【図9】他の再利用システムの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行なうことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0029】
〔第1の実施形態〕
以下、図1を参照して、好ましい第1の実施形態について説明する。一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と印刷インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
【0030】
この平版印刷版を作製するため、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。図示しない、例えば平版印刷版原版の自動現像装置により、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層を強アルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。この自動現像装置から不要になった廃液が排出される。
【0031】
なお、自動現像装置で用いられる現像液はpHがアルカリ性の水溶液で、主成分として珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸塩水溶液や、非還元糖と塩基とを含む水溶液等が好ましい。上記非還元糖として好ましい物は糖アルコールとサッカロースであり、非還元糖に組み合わせる塩基として好ましいのは水酸化ナトリウム、同カリウムである。これらのアルカリ剤は現像液のpHを9.0〜13.5の範囲になるように添加され、より好ましいpHの範囲は10.0〜13.2である。本発明に用いられる現像液には、現像性の促進や現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々界面活性剤や有機溶剤を添加でき、さらに必要に応じて、防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤及び硬水軟化剤などを含有させることもできる。例えば、現像液としてDT−2(富士フイルム社製)を使用することができる。DT−2はD−ソルビトールカリウム塩、クエン酸カリウム塩、及び水を含んでいる。なお、ポジ型平版印刷版用の現像液はpH12以上の強アルカリで、しかも多数の平版印刷版を処理すると廃液中に多量の樹脂を含むことになる。
【0032】
図1は、自動現像装置から排出された廃液を処理するための平版印刷版現像廃液削減装置の基本構成を示す。平版印刷版現像廃液削減装置1は、廃液が一時的に貯蔵される処理液タンク10、廃液を加熱・濃縮するための第1容器20、第1容器20からの蒸気を液体化するための第2容器22、第1容器20に供給される消泡剤を貯蔵する消泡剤タンク
40を有する。
【0033】
処理液タンク10は液面センサー12を備え、処理液タンク10内の廃液の量をモニターすることができる。本実施の形態では一つの処理液タンク10を示すが、複数の処理液タンク10を設置することができる。自動現像装置から処理液タンク10への廃液の送液は、自動で行なうことができる。複数の処理液タンク10の場合、液面センサー12で廃液量をモニターリングしながら、自動的に次の処理液タンク10への切り替えを行なうことができる。
【0034】
消泡剤タンク40は液面センサー42を備え、消泡剤タンク40内の消泡剤の量をモニターすることができる。消泡剤は、例えば20倍に希釈され、消泡剤タンク40内に供給される。消泡剤として、シリコーン系の消泡剤、例えば、AF−A(富士フイルム社製)を使用することができる。但し、消泡剤はこれに限定されず、X−50−1011、KM−98(信越化学工業株式会社)を使用することができる。
【0035】
処理液タンク10は配管P1によりY型ジョイント50と接続される。配管P1には処理液タンク10側から処理液入口14、処理液バルブ16、処理液電磁弁18が配置される。処理液バルブ16と処理液電磁弁18と制御することにより、処理液タンク10内の廃液が、処理液入口14とY型ジョイント50を通して第1容器20に送液される。
【0036】
消泡剤タンク40は配管P2によりY型ジョイント50と接続される。配管P2には消泡剤タンク40側から消泡剤入口44、消泡剤電磁弁46が配置される。消泡剤電磁弁46を制御することにより、消泡剤タンク40内の消泡剤が、消泡剤入口44とY型ジョイント50を通して第1容器20に送液される。
【0037】
第1容器20が配管P3によりY型ジョイント50と接続される。第1容器20は廃液を濃縮するために使用される。第1容器20は、例えば、円筒状の形状を有している。第1容器20の容量は、処理する廃液に応じて適宜決定される。第1容器20の容量は6〜8リットルが好ましい。
【0038】
第1容器20内にデミスター21が設置される。第1容器20で廃液を加熱して濃縮する間、デミスター21により濃縮された廃液が第2容器22に進入するのを防止することができる。第1容器20は開閉自在にヒンジで取り付けられた蓋23を備える。これにより、第1容器20内を容易に洗浄することができる。蓋23には、正常液面センサー24と異常液面センサー25が取り付けられる。2つの液面センサー24,25により第1容器20内の廃液量をより正確にモニターリングすることができる。第1容器20は、蓋23に取り付けられた配管P4により大気開放電磁弁26と接続される。なお、第1容器20は減圧に耐えうるよう構成され、例えば30mmHg以下となるまで減圧することができる。
【0039】
第2容器22が連通路27を介して第1容器20と接続される。第2容器22は、第1容器20で廃液を加熱するときに発生する蒸気を凝縮するために使用される。第2容器22は、例えば、円筒状の形状を有している。第2容器22の容量は、処理する廃液に応じて適宜決定される。第2容器22の容量は6〜8リットルが好ましい。なお、連通路27にミストセパレータ(不図示)を設けることで、蒸気に含まれる不要な成分を除去することができる。これにより、第2容器22内が不要な成分が侵入するのを防止できる。なお、第2容器22は減圧に耐えうるよう構成され、例えば30mmHg以下となるまで減圧
することができる。
【0040】
なお、ミストセパレータはデミスター21を通過するミスト、蒸気に対して圧力損失の少ない通過部を設けることでミストセパレータ内部にミストを蓄積してデミスター21の汚れを防止すると共に、蓄積したミストは水分が多いため自重で第1容器20に落下する。したがって、デミスター21の汚れは大幅に低減し、デミスター21の洗浄メンテナンス期間は大幅に伸びることになる。また、デミスター21通過するミスト量も大幅に削減することになるので、蒸留液へのミスト混入は大幅に低減して蒸留液の水質はより向上することになる。
【0041】
第1容器20は配管P5を介して残渣タンク28と連通される。配管P5には第1容器20側から濃縮液排出電磁弁29と濃縮液排出ポンプ30が設置される。濃縮液排出電磁弁29と濃縮液排出ポンプ30を制御することにより、第1容器20内に貯蔵された濃縮廃液が残渣タンク28に送液される。上述したように本実施の形態で処理される廃液は強アルカリ性である。そのため、第1容器20から排出された濃縮廃液にクエン酸等を添加することにより、濃縮廃液のpH値を下げることが好ましい。
【0042】
加熱コイル60が第1容器20内に設置される。加熱コイル60は第1容器20内の廃液を加熱する。加熱コイル60は、例えば、導管を螺旋状に曲げて形成される。この加熱コイル60内に高温にされた冷媒を上(入口)から下(出口)に通過させることにより、廃液が加熱される。これにより、廃液に含まれる水分を蒸発することができ、廃液を濃縮することができる。最終的に排出される廃液の量を減少することができる。
【0043】
第1容器20内は、例えば30mmHg程度まで減圧されるので、廃液に含まれる液体の沸点を下げることができる。これにより、少ない加熱量で液体を気化することができ、また、廃液に含まれる成分が分解・反応するのを防止することができる。
【0044】
廃液を蒸発濃縮するときに泡が生じると、第1容器20から泡が漏れ出したり、泡の破裂より不要な成分が蒸気に付随して第2容器22に進入したりする問題がある。そこで、本実施の形態では、消泡剤タンク40から消泡剤が廃液に添加され、その廃液が加熱・濃縮される。これにより泡の発生が抑制され、上述の問題が解決される。
【0045】
配管P6を介して、加熱コイル60の入口と圧縮機61とが接続される。つまり、圧縮機61は加熱コイル60の上流側に設置される。ここで上流側とは冷媒の流れと反対方向を意味し、下流側とは冷媒の流れる方向を意味する。圧縮機61は加熱コイル60に送液される冷媒を圧縮し、加熱する。配管P6の途中に、複数の排熱フィン62と、排熱ファン63が設けられる。排熱ファン63と複数の排熱フィン62とにより、圧縮機61で加熱された冷媒が適切な温度まで冷やされる。
【0046】
冷却コイル64が第2容器22内に配置される。冷却コイル64は、第1容器20から連通路27を経由して移動する水蒸気を冷却する。冷却コイル64は、例えば、導管を螺旋状に曲げて形成される。この冷却コイル64内に低温にされた冷媒を上(入口)から下(出口)に通過させることにより、水蒸気が冷却され凝縮される。水蒸気には不要な成分が含まれていないので、第2容器22内で凝縮された水(蒸留水)をそのまま再利用することができる。例えば、現像液の希釈液として、また、第1容器20を洗浄するときの洗浄水として使用することができる。
【0047】
配管P7を介して、冷却コイル64の出口と圧縮機61が接続される。つまり、圧縮機61は冷却コイル64の下流側に配置される。配管P7の周囲に保冷材65が配置される。配管P8を介して、加熱コイル60の出口と冷却コイル64の入口が接続される。配管P8には加熱コイル60の出口からドライヤー67、キャピラリー管68と冷却管69を備える。ドライヤー67とキャピラリー管68、冷却管69は加熱コイル60の下流側に配置される。冷却管69は水流タンク80内に設置され、水流タンク80内の水を冷却する。
【0048】
第2容器22は配管P9を介してアスピレーター81に接続される。配管P10を介して水流タンク80と水流ポンプ82が接続され、配管P11を介して水流ポンプ82とアスピレーター81が接続され、配管P12を介してアスピレーター81と水流タンク80が接続される。水流ポンプ82を駆動することによって、水流タンク80内の水が、配管P10、水流ポンプ82、配管P11、アスピレーター81、配管P12、水流タンク80を循環する。水がアスピレーター81を通過することにより、ベンチュリ効果によって減圧状態が作り出される。第1容器20と第2容器22とは連通路27により接続され、一つに密閉空間を形成する。したがって、配管P9を介して第1容器20と第2容器22の中の気体が外部に排出され、第2容器22と第1容器20内を減圧することができる。また、第2容器22内を減圧すると同時に、冷却コイル64により第2容器22内で凝縮された水を水流タンク80に送液することができる。
【0049】
配管P16を介してエアポンプ83に接続されたストーン94が水流タンク80内に設置される。ストーン94を介してエアポンプ83からの空気(気泡)が水流タンク80内の水に供給され、水が曝気される。なお、ストーン94に換えて散気管を使用することができる。
【0050】
水流タンク80内の水を曝気するのは次の理由からである。廃液が強アルカリの現像廃液であるため、廃液から蒸留された水のpHがアルカリ側にシフトしている。この曝気により、水流タンク80内の水のpHを中性にすることができる。
【0051】
水流タンク80には水流タンク80内の液面を検知するためにレベルセンサー95が設置されている。水流タンク80にはオーバーフロー口97が設けられている。
【0052】
水流タンク80は配管P13を介して洗浄水タンク90に接続される。洗浄水タンク90には水流タンク80をオーバーフローした水を貯える。洗浄水タンク90は配管P14を介して第1容器20と接続される。配管P14には洗浄水バルブ91が設置される。洗浄水バルブ91を制御することにより、洗浄水タンク90の水が第1容器20に送液される。例えば、洗浄水タンク90内の水を、第1容器20を洗浄するための洗浄水として使用できる。配管P15を介して洗浄水タンク90が排水溝92に接続される。必要に応じて洗浄水タンク90内の水を排水溝92に送液することができる。
【0053】
本実施の形態の平版印刷版現像廃液削減装置1において、冷媒の流れ方向に沿って、加熱コイル60、配管P8、キャピラリー管68、冷却コイル64、配管P7、圧縮機61、配管P6の順で閉ループが形成される。この閉ループがヒートポンプシステムを構成する。加熱コイル60がヒートポンプシステムの凝縮器に相当し、キャピラリー管68がヒートポンプシステムの膨張弁に相当し、冷却コイル64がヒートポンプシステムの蒸発器に相当し、圧縮機61がヒートポンプシステムの圧縮器に相当する。
【0054】
次に、本実施の形態に係る平版印刷版現像廃液削減装置1の動作について説明する。第一に、水流ポンプ82を駆動することでアスピレーター81に減圧状態を形成し、第1容器20と第2容器22を減圧する。例えば、20分から30分間掛けて、第1容器20と第2容器22を内部の圧力を30mmHgとなるまで減圧する。次いで、消泡剤電磁弁46を開ける。第1容器20が減圧されているので、消泡剤タンク40から所定量の消泡剤が第1容器20に供給される。次いで消泡剤電磁弁46を閉じ、処理液バルブ16、処理液電磁弁18を開け、処理液タンク10から現像に使用された廃液が第1容器20に供給される。このとき、廃液より先に消泡剤を第1容器20に供給することが好ましい。現像廃液の泡立ちを抑えるためである。
【0055】
第1容器20内では加熱コイル60により廃液が加熱され、廃液中の水分が蒸発される。これにより、廃液が濃縮される。廃液からの水蒸気は連通路27を介して第2容器22へ送られる。廃液が濃縮され、廃液の量が減少すると、消泡剤タンク40から所定量の消泡剤が第1容器20に供給される。続いて処理液タンク10から廃液が第1容器20に供給される。一方、第2容器22に供給された水蒸気は冷却コイル64に冷却され凝縮される。凝縮された水は配管P9、P12を介して水流タンク80に送液される。減圧手段を構成する水流タンク80、アスピレーター81、水流ポンプ82は、凝縮された水を回収するためにも利用される。廃液が所定の濃度になるまで、繰り返し廃液の加熱・濃縮、水蒸気の冷却・凝縮が繰り返される。本実施の形態に係る平版印刷版現像廃液削減装置1では、廃液に消泡剤を加えて加熱・凝縮しているので、廃液からの泡の発生を防止することができる。それにより、水蒸気に不要な成分が付随しない。第2容器22から回収される水は、他の処理を行なうことなく再利用することができる。
【0056】
水流タンク80内で曝気され、pH値が調整された水が配管P13を介して洗浄水タンク90に送液される。洗浄水タンク90内の水は、第1容器20を洗浄するための洗浄水として使用される。洗浄水タンク90内の水はpH値が調整されているので、排水溝92へ排出することができる。
【0057】
廃液が所定濃度、例えば8倍程度に濃縮されると、第1容器20内での加熱・濃縮を停止する。次いで、大気開放電磁弁26を開け、第1容器20と第2容器22内を大気圧に戻す。濃縮液排出ポンプ30を駆動し、濃縮液排出電磁弁29を開ける。第1容器20から濃縮された廃液が配管P5を介して残渣タンク28に送液される。第1容器20から濃縮された廃液は強アルカリ性であるので、残渣タンク28に達する前にクエン酸等の酸性液を添加することが好ましい。廃液のpH値を下げることができるからである。
【0058】
平版印刷版現像廃液削減装置1を所定時間稼動した後、第1容器20の内壁、加熱コイル60を洗浄する。廃液の加熱・濃縮に伴い、第1容器20の内壁や加熱コイル60には固形物が付着するからである。平版印刷版の現像に使用される現像液に含まれる成分が水溶性であるため、容易に水洗いをすることができる。洗浄時には、洗浄水バルブ91が開けられ、洗浄水タンク90に貯えられた水が配管P14を介して第1容器20に送液される。廃液中に含まれる水を有効に再利用することができる。
【0059】
次に、第1容器20の洗浄シーケンスを説明する。第1容器20の付着物の洗浄を行なうために浸け置き洗浄(いわゆる、定期的にユーザが実施するメンテナンス)を行なう際、処理液タンク10の処理液バルブ16を閉め、蒸留再生水の洗浄水タンク90の洗浄水バルブ91を開ける。その状態で本体のスタートスイッチをオンすると、予め、洗浄水タンク90に一定量の蒸留水がストックされた水は第1容器20に負圧で吸引されデミスター21の一定レベルまで蒸留水が満たされる。その状態で本体の電源をオフして一晩浸置きして付着物を溶解させる。翌日、その汚水は、濃縮液排出ポンプ30を駆動させることにより、残渣タンク28に排出される。処理液バルブ16を開け、洗浄水バルブ91を閉じ、現像廃液の処理を再スタートさせる。
【0060】
〔第2の実施形態〕
図2は、第2の実施形態の平版印刷版現像廃液削減装置の基本構成を示す。なお、第1の実施形態と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略する場合がある。第2の実施形態ではエアポンプ83が配管P17を介して消泡剤タンク40に接続される。空気がエアポンプ83から消泡剤タンク40に供給される。空気により消泡剤タンク40内の消泡剤が自動的に攪拌され、消泡剤の沈殿が防止される。したがって、適正量の消泡剤を第1容器20に供給することができ、第1容器20内で突沸が生じるのを防止できる。
【0061】
さらに、エアポンプ83から空気が供給されているかを検知するため、配管P18を介してエアポンプ83と接続されたエア検出センサー100が水流タンク80に設置される。エア検出センサー100を利用して、エアポンプ83から空気が供給されているかを検知する。
【0062】
第1の実施形態で説明したように水流タンク80内には強アルカリ性の水が貯えられる。この水はエアポンプ83からの空気で曝気され、pH値が調整される。pH調整後の水は、配管P13、洗浄水タンク90を経由して排水溝92に送液され、放流される。放流される水は所定のpH値を満たすことが要求されている。言い換えれば、所定のpH値を満たさない場合、水を放流できないことを意味する。
【0063】
故障等によりエアポンプ83が空気を水流タンク80に供給できない場合、所定のpH値を超えた水が放流されることになる。したがって、水流タンク80内の水は、常に曝気により、pH値が調整されていることが重要となる。
【0064】
第2の実施形態ではエア検出センサー100が、配管P18を介してエアポンプ83に接続されている。エア検出センサー100がエアポンプ83から空気が供給されているかを検知して、エアポンプ83が正常に駆動しているかを検知する。エア検出センサー100が、エアポンプ83が駆動していることを検知している間は、エアポンプ83の空気がストーン94を介して水流タンク80内に供給される。
【0065】
一方、エア検出センサー100が、エアポンプ83が駆動していないと検出した場合、エアポンプ83の空気がストーン94を介して水流タンク80内に供給されていないことになる。エア検出センサー100が、エアポンプ83が駆動していないと検出したとき、平版印刷版現像廃液削減装置は運転を停止する。したがって、水流タンク80から洗浄水タンク90への水の送液が停止される。
【0066】
次に、図3を参照してエア検出センサー100の構成を説明する。エア検出センサー100は、外径が略円柱状で中空構造のケース102と、ケース102の上面に取り付けられた軸104を備える。ケース102は、高さが約50mm〜200mm、底面の直径25mm〜100mm、上面の直径25mm〜100mmの大きさを有する。底面には直径約2mm〜50mmの孔106が形成されている。孔106によりケース102の内部と外部が連通する。ケース102は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)ポリエチレン(PE)等の樹脂材料から構成される。ケース102の側面には直径約2mm〜30mmの孔108が形成されている。孔108によりケース102の内部と外部が連通する。
【0067】
ケース102の内部にはフロート式のレベルセンサー110が取り付けられている。レベルセンサー110は、ガイドシャフト112と、ガイドシャフト112に沿って上下に移動するフロート114を備えている。図3に示すように、フロート114は、ガイドシャフト112に沿って、約8mm〜150mm(距離L)移動する。
【0068】
ケース102の上面に取り付けられた軸104は中空構造で形成される。軸104の上端には軸栓116が取り付けられる。軸104内部には電線(不図示)が挿入され、電線によりレベルセンサー110と外部機器とが電気的に接続される。
【0069】
ケース102の上面には、中心に孔120が形成された金属製のネジ118が取り付けられている。孔120の直径は約0.7mm〜20mmである。孔120によりケース102の内部と外部が連通する。孔120は金属製のネジ118に形成されているので、樹脂とは異なり、孔120の大きさは、ほとんど経時変化しない。
【0070】
ケース102の上面にはホースニップル122が取り付けられる。後述するように、ホースニップル122には、エアポンプに接続された配管が取り付けられ、エアポンプからの空気が、配管、ホースニップル122を経由して、ケース102の内部に供給される。
【0071】
次に、図4〜6を参照してエア検出センサーの動作を説明する。
【0072】
図4は、エアポンプが正常に動作している状態を示す。エアポンプ83とストーン94が配管P16を介して接続される。エアポンプ83から空気がストーン94に供給される。ストーン94から空気(気泡)が水流タンク80内の水に与えられ、水が曝気される。
【0073】
消泡剤タンク40とエアポンプ83が配管P17で接続される。エアポンプ83から空気が消泡剤タンク40に供給され、消泡剤タンク40内の消泡剤が攪拌される。
【0074】
エア検出センサー100とエアポンプ83が配管P18により接続される。水流タンク80内の水圧により、水が底面の孔106からケース102内に浸入する。一方、エアポンプ83の空気がホースニップル122を経由してケース102内に供給される。その結果、ケース102内の液面が空気圧により下方に押し下げられる。ケース102内に空気が継続して供給されるので、ケース102内の空気を側面の孔108を介してケース102の外に排出する。
【0075】
ケース102内に供給された空気とケース102内に浸入する水が平衡状態に達し、この平衡状態が維持される。レベルセンサー110のフロート114が、空気圧により水からの浮力が低減され、ガイドシャフト112に沿って下降する。フロート114がガイドシャフト112内のスイッチを動作させて、検知信号が出力される。外部機器がこの検知信号を検知し、外部機器は、エアポンプ83が正常に動作していることを検知する。
【0076】
レベルセンサー95は水流タンク80内の水の浮力により上昇し、検知信号を出力する。外部機器はレベルセンサー95の検知信号を検知し、水流タンク80内の液面が正常位置にあることを検知する。
【0077】
図5は、エアポンプが正常に動作していない状態を示す。エアポンプ83から空気が送り出されていない。したがって、水流タンク80内の水は曝気されない。同様に消泡剤タンク40内の消泡剤は攪拌されない。その結果、消泡剤が沈殿する。
【0078】
エア検出センサー100にも空気が供給されない。そのため水流タンク80内の水圧により水が孔106,108を経由してケース102内に浸入する。ケース102内の空気は、水の浸入により、孔120を経由してケース102の外に排出される。やがてケース102内は水で満たされ、液面が上昇する。
【0079】
レベルセンサー110のフロート114が、水の浮力により、ガイドシャフト112に沿って上昇する。フロート114がガイドシャフト112内のスイッチを切り、検知信号は出力されなくなる。外部機器は、検知信号が出力されていないことを検知すると、エアポンプ83が正常に動作していないことを検知する。エアポンプ83が駆動していないことを検知したとき、平版印刷版現像廃液削減装置は運転を停止する。したがって、水流タンク80から洗浄水タンクへの水の送液が停止される。つまり、pH値の調整されていない水が放流されるのを防止することができる。
【0080】
図6は、水流タンク内の水が減少した状態を示す。最初に、水流タンク80内の水が減少する状況について、図2を参照して説明する。第1容器20で何らかの原因で発泡が発生する場合がある。発泡により汚れを含んだ蒸留された再生水蒸気が第2容器22に送られる。水蒸気は第2容器22内の冷却コイル64で冷却され、水滴となる。水流ポンプ82により汚水を含んだ水滴が水流タンク80内に送られる。水流タンク80内に微細な空気がストーン94を介して供給されている。微細な空気により汚水に含まれる汚物が発泡する。この発泡現象により水流タンク80内の水がオーバーフロー口97から排出し、水流タンク80内の液面が下がる。
【0081】
図6に示すように、エアポンプ83は正常に駆動している。したがって、エア検出センサー100から検知信号が出力される。一方、レベルセンサー95は、液面の低下による浮力の減少により、下降する。レベルセンサー95から検知信号が出力されなくなる。外部機器は、検知信号が出力されないことを検知し、液面が正常位置にないことを検知する。液面異常を検知すると、平版印刷版現像廃液削減装置は運転を停止する。したがって、水流タンク80から洗浄水タンクへの水の送液が停止され、汚水が放流されるのを防止できる。
【0082】
〔第3の実施形態〕
図7は、第3の実施形態の平版印刷版現像廃液削減装置の基本構成を示す。なお、第1の実施形態、及び第2の実施形態と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0083】
第3の実施形態では、洗浄水タンク90に貯えられた水を自動現像装置300に供給するための再利用システムを備える。再利用システムは、洗浄水タンク90の水が供給される貯留タンク202、貯留タンク202の水が供給される希釈水タンク204を備える。貯留タンク202と希釈水タンク204は、配管P19により接続される。配管P19には、バルブ206、ポンプ208、バルブ210が貯留タンク202から希釈水タンク204に向けてこの順で設置される。配管P19の圧力を測定するため圧力計212が設置される。希釈水タンク204に、配管P19と接続するバルブ214、バルブ214の開閉を制御するフロート216が設置される。
【0084】
自動現像装置300は、現像槽302、水洗槽・BR>R04、フィニッシャー槽306、乾燥機308を有する。例えば、帯状の印刷版が自動現像装置300に搬送される。印刷版は現像槽302で現像処理され、現像処理された印刷版画水洗槽304で水洗いされ、水洗いされた印刷版はフィニッシャー槽306で版面保護用のガム液が塗布され、ガム液が塗布された印刷版が乾燥機308で乾燥される。現像槽302、水洗槽304、フィニッシャー槽306、及び乾燥機308は、印刷版を搬送するための搬送ローラ(不図示)を備える。現像槽302は、さらにガイド、ブラシローラ等を有する。乾燥機308はファンを有する。
【0085】
現像槽302、水洗槽304、フィニッシャー槽306は配管P20を介して希釈水タンク204と接続される。希釈水タンク204の水を現像槽302、水洗槽304、フィニッシャー槽306に供給するため、ポンプ218、220,222が設置される。フィニッシャー槽306では、希釈水タンク204からの水は、希釈水として利用されるのに加え、搬送ローラ(不図示)を洗浄するために使用される。
【0086】
洗浄液タンク90の水が、配管P19,P20を経由して自動現像装置300に供給される。つまり、平版印刷版現像廃液削減装置から排出された水が再利用される。また、現像槽302からオーバーフローした廃液は、送液装置400により配管P21を介して処理液タンク10に送液される。したがって、平版印刷版現像廃液削減装置1、希釈水タンク204、及び自動現像装置300により循環経路が形成される。
【0087】
図7では、1つの自動現像装置300、1つの希釈水タンク204を示した。これに限定されず、複数の自動現像装置300、希釈水タンク204を適用することができる。
【0088】
図8は、平版印刷版現像廃液削減装置に適用される再利用システムの概略構成図である。平版印刷版現像廃液削減装置1から排出された蒸留再生水が貯留タンク202に送液される。貯留タンク202には、蒸留再生水の低い液面を検知する第1フロートスイッチ230と、高い液面を検知する第2フロートスイッチ232を備える。第1フロートスイッチ230と第2フロートスイッチ232は電磁バルブ240と電気的に接続される。第1フロートスイッチ230は水が10リットルのときの液面を検知する。また、第2フロートスイッチ232は水が40リットルのときの液面を検知する。第1フロートスイッチ230について、液面が10リットルの位置を超えているとき、第1フロートスイッチ230はOFFとなり、液面が10リットルの位置を下回るとき、第1フロートスイッチ230はONとなる。第2フロートスイッチ232について、液面が30リットルの位置を超えているとき、第2フロートスイッチ232はONとなり、液面が30リットルの位置を下回るとき、第2フロートスイッチ232はOFFとなる。
【0089】
電磁バルブ240は、水道水を貯留タンク202に供給するための配管P22に設置される。配管P22には、バルブ242が設置される。さらに、電磁バルブ240とバルブ242をバイパスする配管P23と、バルブ244が設置される。貯留タンク202に水垢防止剤を添加する水垢防止剤添加装置250が設けられる。貯留タンク202に、オーバーフロー配管234が設置される。
【0090】
貯留タンク202の働きを説明する。貯留タンク202から蒸留水が希釈水タンク204に供給されると、貯留タンク202内の水の液面が低下する。液面が10リットルの位置を下回ると第1フロートスイッチ230はONとなる。電磁バルブ240が開き、水道水が貯留タンク202に供給される。液面が10リットルの位置を超える第1フロートスイッチ230はOFFとなる。さらに、水道水が供給されると液面が上昇する。液面が30リットルの位置を越えると、第2フロートスイッチ232がOFFからONに切り替わる。これにより、電磁バルブ240が閉じ、水道水は貯留タンク202に供給されない。平版印刷版現像廃液削減装置1から水が貯留タンク202に供給され、液面が40リットルの位置を越えると、オーバーフロー配管234から水が貯留タンク202から排出される。なお、電磁バルブ240が故障等した場合、バルブ242が閉じられ、バルブ244が開かれる。配管P23を経由して水道水が貯留タンク202に供給される。
【0091】
貯留タンク202の水が配管P19を経由して複数の希釈水タンク204に供給される。貯留タンク202から希釈水タンク204への水の供給方法について説明する。
【0092】
配管P19にはポンプ208と圧力計212が設置される。圧力計212は配管P19内の圧力値を測定できる。圧力計212とポンプ208とは電気的に接続される。圧力計212の測定値に応じて、ポンプ208の駆動が制御される。
【0093】
3台の希釈水タンク204には、フロート216、バルブ214がそれぞれ設置される。バルブ214は、フロート216の位置に応じて、その開閉が制御される。希釈水タンク204内に水が充分に満たされていると、フロート216が液面に応じて上昇する。フロート216が高い位置のあるとき、バルブ214は閉じられる。一方、フロート216が低い位置のあるとき、バルブ214は開かれる。
【0094】
配管P19の圧力が圧力計212により測定される。測定された圧力値が所定の値以上のとき、希釈水タンク204が水で満たされていると判断される。ポンプ208は駆動されず、貯留タンク202の蒸留水は希釈水タンク204に供給されない。
【0095】
希釈水タンク204内の水が自動現像装置300に供給されると、希釈水タンク204内の液面が低下する。それに応じてフロート216が低下し、バルブ214が開く。バルブ214が開くと配管P19内の圧力が低下する。検出された圧力値が所定の値より小さいとき、ポンプ208が駆動される。蒸留水が貯留タンク202から配管P19を介して希釈水タンク204に供給される。バルブ214が開かれている希釈水タンク204にのみ蒸留水が供給される。希釈水タンク204の液面が上昇するとバルブ214が閉じられる。
【0096】
図9は、平版印刷版現像廃液削減装置に適用される他の再利用システムの概略構成図である。なお、図8の再利用システムと同様の構成には同様の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0097】
図9の再利用システムは圧力計を備えていない。その代わりバルブ210の下流に配管P24が設置される。配管P19を流れる蒸留水が配管P24を介して貯留タンク202に循環される。貯留タンク202から希釈水タンク204への水の供給方法について説明する。
【0098】
ポンプ208が1分周期で5秒から10秒駆動される。各希釈水タンク204のバルブ214が閉じているとき、蒸留水は配管P24を介して貯留タンク202に循環される。一方、何れかの希釈水タンク204のバルブ214が開いているとき、蒸留水は液面の低下した希釈水タンク204に供給される。
【符号の説明】
【0099】
1…平版印刷版現像廃液削減装置、10…処理液タンク、20…第1容器、22…第2容器、40…消泡剤タンク、60…加熱コイル、61…圧縮機、64…冷却コイル、68…キャピラリー管、80…水流タンク、81…アスピレーター、82…水流ポンプ、83…エアポンプ、90…洗浄水タンク、94…ストーン、95…レベルセンサー、100…エア検出センサー、102…ケース、104…軸、106,108,120…孔、110…レベルセンサー、112…ガイドシャフト、114…フロート、P1〜P24…配管、202…貯留タンク、204…希釈水タンク、212…圧力計、208,218,220,222…ポンプ、300…自動現像装置、400…送液装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消泡剤を貯蔵する消泡剤タンクと、
ポジ型の平版印刷版現像廃液を貯蔵する処理液タンクと、
前記消泡剤タンクと処理液タンクと接続され、廃液を加熱・濃縮するための加熱コイルを備える第1容器と、
前記第1容器からの蒸発した水蒸気を冷却・凝縮するための冷却コイルを備える第2容器と、
ヒートポンプシステムを構成するよう前記加熱コイルと前記冷却コイルとに接続された圧縮機及びキャピラリー管と、
前記第1容器と前記第2容器を減圧する水流タンク、アスピレーター及び水流ポンプを備える減圧手段と、
前記第2容器で冷却・凝縮された水を回収し、前記水流タンクと接続された洗浄水タンクと、
を備える平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項2】
前記第2容器が前記第1容器の外周を囲み、前記第1容器と前記第2容器とで二重構造を構成する請求項1記載の平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項3】
前記第1容器と前記第2容器とが連通路を介して分離される請求項1記載の平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項4】
前記消泡剤がシリコーン系の消泡剤である請求項1又は2記載の平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項5】
前記シリコーン系消泡剤が、CAS NO.7732−18−5を含む請求項4記載の平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項6】
前記平版印刷版現像廃液がアルカリ性の現像廃液である請求項1〜5の何れかに記載の平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項7】
前記現像廃液がD−ソルビトールカリウム塩、クエン酸カリウム塩、及び水を含む請求項6記載の平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項8】
前記第1容器から排出される濃縮された廃液に酸性の水溶液を供給する手段をさらに備える請求項1〜7の何れかに記載の平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項9】
前記処理液タンクの廃液より先に前記消泡剤タンクの消泡剤を前記第1容器に供給する運転シーケンスを実行する制御手段をさらに備える請求項1〜8の何れかに記載の平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項10】
前記水流タンクにはエアポンプと接続された気泡発生手段が設置され、かつ前記エアポンプと前記消泡剤タンクとが接続される請求項1〜9の何れかに記載の平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項11】
前記エアポンプに接続され、前記水流タンク内に設置されたエア検出センサーをさらに備え、
前記エア検出センサーは、上面と底面と側面を有する中空構造のケースと、前記ケースに形成され前記エアポンプと接続される開口と、前記ケースの上面、底面、及び側面のそれぞれに形成された少なくとも一つの貫通孔と、前記ケース内に設置されたレベルセンサーと、を有する請求項10記載の平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項12】
前記水流タンクにはエアポンプと接続された気泡発生手段が設置され、かつ前記エアポンプに接続され、前記水流タンク内に設置されたエア検出センサーを備え、
前記エア検出センサーは、上面と底面と側面を有する中空構造のケースと、前記ケースに形成され前記エアポンプと接続される開口と、前記ケースの上面、底面、及び側面のそれぞれに形成された少なくとも一つの貫通孔と、前記ケース内に設置されたレベルセンサーと、を有する請求項1〜9の何れかに記載の平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れかに記載の平版印刷版現像廃液削減装置であって、
前記洗浄水タンクの水を自動現像装置に供給する配管を含む再利用システムをさらに備える平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項14】
請求項1〜13の何れかに記載の平版印刷版現像廃液削減装置であって、
前記再利用システムは、前記配管内の圧力を測定する圧力計とポンプを備え、前記圧力計で測定された圧力値に応じて、前記ポンプの駆動を制御し、前記洗浄水タンクから前記自動現像装置への水供給を制御する平版印刷版現像廃液削減装置。
【請求項15】
請求項1〜13の何れかに記載の平版印刷版現像廃液削減装置であって、
前記再利用システムは、前記配管と接続された循環用の配管とポンプをさらに備え、前記ポンプを周期的に駆動することにより、前記洗浄水タンクから前記自動現像装置への水供給を制御する平版印刷版現像廃液削減装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−200855(P2011−200855A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137372(P2010−137372)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【特許番号】特許第4774124号(P4774124)
【特許公報発行日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000113115)富士フイルムグラフィックシステムズ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】