説明

建築構造物における装置部材取付用の取付金具

【課題】装置部材aの取付部1内に挿入しておく座板2とこれに挿通しておく締付ボルト3とこれに螺合する締付ナット4とからなる取付金具cを用いて、装置部材aを施工現場に配設せる取付材bに組み付けていく際に生じていた厄介な問題を解消せしめる手段を提供する。
【解決手段】角板状の座板2と、その座板2に設けたボルト挿通口21に嵌挿する頭部30付きの締付ボルト3と、その締付ボルト3の螺子部31に螺合する締付ナット4と、からなる装置部材取付用の取付金具cにおいて、座板2に形設するボルト挿通口21を、中心点が、角板状の座板2の後面視において二組の対角をそれぞれ結ぶ二本の仮想対角線の交点付近に位置し、口径の左右の巾が、ボルト挿通口21に嵌挿する締付ボルト3の螺子部31の外径に略対応し、口径の上下の巾が、座板2の底辺及び上辺に対し垂直な方向に拡巾した、上下方向の長穴状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ合金等の金属材で成形して、建築構造物の外側または内側に装置せしめるルーバー材・てすり材・笠木材等の装置部材を、取付材に対して取付けるための、座板とそれに嵌挿する締付ボルトとその締付ボルトを締結する締付ナットとからなる建築構造物における装置部材取付用の取付金具についての改良に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材で成形して、建築構造物の外側または内側に装置せしめるルーバー材・てすり材・笠木材等の装置部材の取付けは、その装置部材aの基端側に、図1・図2にあるように、あり溝状の断面形状をもって長手方向に連続する取付部1を、アルミ合金等の金属材の押出成形により装置部材aを成形する際に一体に連続させた構造として形設しておき、この取付部1内に、角板状の座板2を、それに頭部30付きの締付ボルト3の頭部側が嵌挿された状態として挿入して、嵌挿した締付ボルト3の螺子部31が、前記断面あり溝状の取付部1の外部に対する開放口10から突出する状態とし、この突出させた締付ボルト3の螺子部31を予め所定の個所に配位して設置しておく取付材bの取付板部50に開設したボルト挿通穴51に挿通し、この締付ボルト3の螺子部31に締付ナット4を螺合して締め付けることで、座板2と取付材bとであり溝状の取付部1のの後壁11を挟み込むように締結することにより行っている。
【0003】
この、装置部材aを、取付材bに組み付けセットするための、座板2と締付ボルト3と締付ナット4とからなる装置部材取付用の取付金具cは、通常、図3にあるように、ステンレス板などの金属板から形成される上下の高さ寸法Hが、装置部材aの基端側に形設した取付部1の後端面に開設した開裂状の開放口10の上下の開口巾Kより広い寸法で、左右方向の巾寸法Dが、前記取付部1の内腔の上下高さhに略対応する寸法となる後面視において左右に横長の略長方形乃至矩形をなす寸法形状に形成した座板2と、それの中央部位に開設したボルト挿通口21に挿通する頭部30付きの締付ボルト3と、この締付ボルト3の螺子部31に図2・図4にあるように螺合する締付ナット4とにより構成される。
【0004】
そして、この取付金具cを用いて行う装置部材aの取付材bへの組み付けは、取付金具cの角形の座板2を、装置部材aの取付部1内に挿入して、その取付部1の後壁11の内面に接合するよう位置させ、この座板2に予め挿通しておく頭部30付きの締付ボルト3の螺子部31を、装置部材aの取付部1の後壁11に形設してある開放口10から後方に突出させ、この螺子部31を、取付材bの取付板部50に形設しておくボルト挿通穴51に通して、その取付板部50の後面側に突き出し、この螺子部31に締付ナット4を螺合して締め付けることで、図4にあるように、装置部材aの、開放口10の上下に位置する後壁11・11を座板2と取付材bの取付板部50とで挟持して固定装着せしめることで行なわれる。
【0005】
この取付金具cには、座板2を、図6の左半側に示しているように、上下の高さ寸法Hを、装置部材aの取付部1の開放口10の開口巾より狭くし、左右の巾寸法Dを、装置部材aの後端部の内腔の上下高さに略対応する寸法とした細巾の帯板状に形成しておき、この細巾の帯状の座板2を横長の姿勢として開放口10から装置部材a内に挿入し、挿入したところで、嵌挿しておいた締付ボルト3による回動により、座板2を図6の右半側に示しているように、開放口10に対しクロスする縦長の姿勢に変換せしめて、締付ボルト3による締結を行うようにする形態のものがある。この形態のものは、座板2が細巾なことで取付部1の後壁11との接触面積が小さく、締付の際に充分な強度が得られないことと、締め付けの際、または、締め付けにより組み付けた装置部材aが使用中に受ける風による振動により座板2が装置部材aに対して回動して開放口10と平行する姿勢となったときに、開放口10から飛び出すようになって装置部材aの組付を不確実なものとする問題を生ぜしめている。このことから座板2は、通常、開放口10の開口巾より上下に広巾の角板状に形成している。
【0006】
この開放口10の開口巾より上下に巾広の角板状に形成した取付金具cの座板2の装置部材aの取付部1内への挿入は、この座板2のボルト挿通口21に対する締付ボルト3の挿通が、座板2だけを装置部材aの取付部1の内腔に挿入した状態では、その座板2の前面側から締付ボルト3を挿通することが困難なことから、座板2には、それのボルト挿通口21に締付ボルト3の頭部30側を挿通しておき、この状態の座板2を、装置部材aの長手方向の端部のこぐちから、座板2とそれに嵌挿した締付ボルト3の頭部30側とを、嵌め込むようにして挿入することで行っている。
【0007】
これは、締付ボルト3を挿通した状態の座板2の装置部材a内への挿入を、図5にあるように、座板2の姿勢を傾斜させることで、装置部材aの取付部1の後面の開裂状の開放口10から挿入していくと、座板2に挿通した締付ボルト3の螺子部31及び座板2が取付部1の開放口10の上下の口縁に干渉して支えてくることで、挿入できないことから、この締付ボルト3を挿通した座板2の装置部材aの取付部1内への挿入を、取付部1のこぐちから行うようにしていることによる。
【0008】
装置部材aは、通常、1.8〜2.7m程度の長尺物に作られ、これを取付金具cにより組み付け固定するための取付材bは、50〜60cmの間隔において、施工現場に多数本並列設置される。装置部材aを取付材bに組み付けて、組み立て施工されるルーバー材・てすり・笠木等の装置品は、通常、一本の装置部材aの長さより遙かに長く、装置部材aは複数本継ぎ足して組み付けられる。
【0009】
このことから、装置部材aを並列する取付材bに対して座板2と締付ボルト3と締付ナット4からなる取付金具cを用いて組み付けていくとき、装置部材aの取付部1の一方のこぐちから挿入した取付金具cの座板2は、先にこぐちに近い取付材bに対し組み付けると、次にこぐちから挿入する取付金具cの座板2を、次位の取付材bと対応する位置までスライドさせることができなくなるので、この装置部材aの取付部1のこぐちからその取付部1内に挿入する取付金具cの座板2は、装置部材aを取付金具cにより取付材bに組み付ける作業を行う前に、並列する取付材bのそれぞれと対応する位置の全てに、もれなく配位させておかなければならない。しかも、各取付材bに対応させて装置部材aの取付部1内に用意した取付金具cの締付ボルト3を挿通した座板2は、それが取付部1内を取付材bと対応する位置から動いていても、組み付けるべき取付材bと対応する位置に戻すよう動かし、組み付ける取付材bを正しく選択して組み付けなければならない。組み付けるべき取付材bを誤ったときは、それにより遊びの状態となった取付金具cの座板2を、組み付けた取付金具cを飛び越して他の取付材bと対応する位置に動かすことができないことで、組み付けた取付金具cの組み付けを、ほどいて、やりなおさなければならないからである。このことから、この座板2と締付ボルト3と締付ナット4からなる取付金具cを用いての装置部材aの取付材bへの組み付けには、その作業を厄介なものとしている問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明において解決しようとする課題は、装置部材aの取付部1内に挿入しておく座板2とこれに挿通しておく締付ボルト3とこれに螺合する締付ナット4とからなる取付金具cを用いて、装置部材aを施工現場に配設せる取付材bに組み付けていく際に生じていた厄介な問題を解消せしめる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決する本発明手段は、種々の試行錯誤を重ねて得られた知見に基づいて成されたものである。
【0012】
取付金具cの座板2は、締付ボルト3により締め付けたときに、装置部材aの取付部1後面の開放口10から逸出しないようにするため、上下方向の高さ寸法を、装置部材aの取付部1の後壁11に開設してある開放口10の上下方向の開口巾の寸法よりも大きく形成しなければならないが、前後の厚さ寸法は、締付ボルト3による締付の際に充分の強度のものであれば足り、前記取付部1の後面の開放口10の上下の開口巾の寸法より小さい、通常の座板の厚さ寸法にしてよいものである。
【0013】
このように形成した座板2は、それに挿通した締付ボルト3が装置部材aの後端部の開放口10の上下の口縁に干渉して支えることさえなければ、斜めの姿勢として、装置部材a後端部の開放口10から挿入し、開放口10をくぐり抜けて、装置部材aの取付部1内への挿入が終えたところで、座板2の姿勢を立てた姿勢に戻すことで、この取付部1の後面の開放口10からの取付部1内への挿入が可能である。
【0014】
そして、座板2を斜めの姿勢としたときに締付ボルト3が取付部1の後面の開放口10の口縁に支えるようになることについては、座板2に挿通した締付ボルト3を、座板2に対し上下方向の傾斜回動が自在になるようにしておけば、座板2を斜めの姿勢にして取付部1の後面の開放口10から取付部1内に挿入していくときに、締付ボルト3を座板2の後面に沿う傾斜した姿勢となるように座板2に対し回動させることで、この締結ボルト3が取付部1の開放口10の口縁に支える干渉がなくなって、座板2を取付部1後面の開放口10から取付部1内に挿入していけるようになるという知見が得られたこと、そして、このように締付ボルト3を座板2に対し回動自在とするには、締付ボルト3と座板2のボルト挿通口21との嵌合部分をボールジョイント状に構成するなどの種々の手段はあるが、締付ボルト3の座板2に対する回動は、上下方向の回動だけでもよく、この上下の回動が得られるようにするには、ボルト挿通口21を、上下方向に長い長穴状に形成しておくことで足りるという知見が得たことによるものである。
【0015】
このことから、本発明においては、上述の課題を解決するための手段として、角板状の座板2と、その座板2に設けたボルト挿通口21に嵌挿する頭部30付きの締付ボルト3と、その締付ボルト3の螺子部31に螺合する締付ナット4と、からなるルーバー取付用の取付金具cにおいて、座板2に形設するボルト挿通口21を、中心点が、角板状の座板2の後面視において二組の対角をそれぞれ結ぶ二本の仮想対角線の交点付近に位置し、口径の左右の巾が、ボルト挿通口21に嵌挿する締付ボルト3の螺子部31の外径に略対応し、口径の上下の巾が、座板2の底辺及び上辺に対し垂直な方向に拡巾した、上下方向の長穴状に形成したことを特徴とする建築構造物における装置部材取付用の取付金具を提起するものである。
また、これに併せて、座板2に、後面視において上下方向の長穴状に形設する締付ボルト挿通用のボルト挿通口21を、そのボルト挿通口21の口径の上下の巾が、座板2の前面側に寄る部位において小さく、座板2の後面側に寄るに従い上下に拡巾する形状の長穴状に形設しておくことを特徴とする請求項1記載の建築構造物における装置部材取付用の取付金具を提起するものである。
さらに、締付ボルト3の頭部30の、後面側を、側面視において、円弧状に突出する突起部Tに形成し、座板2の前面側で、ボルト挿通口21の周辺部位に、締付ボルト3の上下の傾斜回動時における頭部30後面の回動軌跡に略沿う側面視で凹面状の凹溝wを形設しておくことを特徴とする請求項1記載の建築構造物における装置部材取付用の取付金具を提起するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明手段による装置部材取付用の取付金具は、座板2のボルト挿通口21に嵌挿した締付ボルト3が、ボルト挿通口21を上下方向に長い長穴状に形成したことで、座板2に対し上下方向の傾斜回動を自在にしてあるのだから、座板2を、それに締付ボルト3を嵌挿した状態で、装置部材aの取付部1内に挿入せしめるときに、締付ボルト3を座板2に対し傾斜回動させて、座板2の後面に略沿う姿勢にし、その状態で、座板2を装置部材aの取付部1後面の開放口10に対し斜めに寝かせた姿勢として、その開放口10から挿入していくことで、装置部材aの取付部1内に挿入し得るようになる。
【0017】
これにより、取付金具cの座板2は、締付ボルト3を嵌挿した状態として、既に装入して組み付けた取付金具cの制約を受けることなく、装置部材aの取付部1の後面の開放口10の長手方向における所望の場所から、随時取付部1内に装入できることになるので、座板2と締付ボルト3と締付ナット4からなる取付金具cによる装置部材aの取付作業に生じていた諸々の問題を解消し得るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の実施の形態を、実施例につき図面に従い詳述する。
【実施例1】
【0019】
図7乃至図19は、本発明による装置部材取付用の取付金具の第1の実施例を示し、図7は同上取付金具で装置部材を取付材に組み付けている状態の側面図、図8は同上状態の縦断側面図、図9は同上取付金具の座板の後面図、図10は同上の座板の前面図、図11は同上の座板の左側面図、図12は同上の座板の図10におけるX−X線の縦断測面図、図13は同上取付金具の締付ボルト及び締付ナットの側面図、図14は同上取付金具の締付ボルト及び締付ナットの前面図、図15は同上取付金具の締付ボルト及び締付ナットの平面図、図16は同上取付金具の締付ボルトを嵌挿した座板を装置部材aの後端部に設けた取付部に挿入した状態の後面図、同17は同上取付金具の座板を締付ボルトの螺じ締め方向に回動させた状態の後面図、図18は、同上取付金具の座板に嵌挿した締付ボルトを座板に対し上方に傾斜回動させた状態時の説明図、図19は同上取付金具の座板に嵌挿した締付ボルトを座板に対し下方に傾斜回動させた状態時の説明図で、これら図において、aは装置部材、bは取付材、1は装置部材aの後端部に装設せる取付部、10はその取付部1の後面側の開放口、11は開放口10を形成する取付部1の後壁、cは取付金具、2はその取付金具cの座板、21はその座板2に設けたボルト挿通口、3はボルト挿通口21に嵌挿する締付ボルト、30は同上の頭部、31は同上の螺子部、4は締付ナットを示す。
【0020】
装置部材aは、金属材で成形するルーバー材・てすり材・笠木材等の部材である。この例においては、アルミ合金等の金属材から押出し成形加工により形成した通常の金属製のルーバー材であり、全体を角筒状の角型に形成したタイプのもので、前後巾を120ミリ、上下厚さを40ミリとした形態のものであって、後部には、取付金具cの座板2を、締付ボルト3の頭部30側が挿通された状態として嵌挿し、締付ボルト3に螺合する締付ナット4の締結により装置部材aを取付材bに取り付けるための取付部1が、装設してある。
【0021】
取付部1は、後面側に開放口10が開口する側断面においてあり溝状の形状をもって、長手方向である左右方向に連続する構造に構成してあり、その後面側の開放口10は、それの上下の開口巾が20ミリで、内部の底面から天井面までの高さhが37ミリに設定されている。
【0022】
取付材bは、鋼板等の金属板から折曲加工により成形された通常のアングル鋼を用いたもので、これを所定の長さのものにして施工現場の所定の場所に立設したものである。
【0023】
取付金具cは、ステンレス板等の金属板から角板状に成形する座板2と、それの中心部位に開設せるボルト挿通口21に嵌挿する頭部30付きの締付ボルト3と、その締付ボルト3の螺子部31に螺合して締結する締付ナット4と、からなることについては、従前のものと変わりがないが、この例における取付金具cは、前述した寸法・形状に作られた装置部材aの取付部1に適応するよう形成したものであり、それの座板2は、後面視において、上下の巾寸法が、取付部1の後面の開放口10の上下の開口巾の20ミリよりも巾広の25ミリで、左右の横巾が、取付部1の内部の高さ寸法hに対応する37ミリで、前後の厚さが前述の開放口10の開口巾の20ミリの2分の1より稍大きい12.5ミリの角板状に形成してある。この座板2の寸法は、取付部1の後端面に形設せる開放口10の上下の開口巾が12ミリに設定してある構造の取付部1に用いる場合にあっては、上下の巾寸法は16ミリとするよう変更される。
【0024】
そして、この座板2は、左右の両端部が、後面視において、底辺に対し略45度に傾いて平行する切断線をもって、それぞれ斜めに切断されて左右に横長の菱形に形成してあり、斜辺と斜辺との間の寸法を、左右の横巾寸法として、取付部1の内部の天井面と底面との間の内法寸法に対応する37ミリとしてある。
【0025】
この座板2を菱形とする左右の斜辺をなす側縁の傾斜方向は、後面視において、図9にあるように、左右の斜辺がそれぞれ右方に傾斜するように設定してあり、これにより、座板2に嵌挿した締付ボルト3を螺じ締めの方向に回動させたときに、これに追従して回転する座板2が、その座板2の左右の斜辺を取付部1内部の天井面と底面とに当接して、それ以後の座板2の回動を阻止し、取付部1に対し一体的に結合した状態となるようにしている。
【0026】
角板状の座板2を、それの左右の側辺が傾斜する斜辺となる左右に横長の菱形に形成するのは、座板2をそれに嵌挿した締付ボルト3を、螺子の締め込み方向に回動させて座板2を前記方向に回動させることで、対向間隔が装置部材aの後端部に装設した取付部1の内部の天井面から底面までの高さ寸法に略対応させてある左右の側辺を、それぞれ取付部1内の天井面と底面とに当接させ、これにより、座板2を取付部1内部に固定した状態とするときの、座板2の回動角度量を少なくして、固定した状態が速やかに得られるようにすることと、座板2を、それの左右の側辺が取付部1内の天井面と底面とにそれぞれ当接した固定状態とするよう回動させるときの座板2の回動作動を円滑なものとするために、従来、図3・図6において示しているよう座板2の側辺と上辺とのコーナー部分を、斜めに切断しておくか、弧状に面取りしておくことで生じていた、装置部材aの後端部に装設の取付部1の後壁11・11の前面に当接する座板2の接触部位の面積に削減が生じないようにして締結・固着が強固に行われようにすることにある。この菱形に成形した座板2の辺縁のコーナー部分に、取り扱いの際の安全を図るため、接触部位の面積に削減を生ぜしめない程度に面取り加工を行うことは差し支えない。
【0027】
座板2の左右の側辺を、装置部材aの端部に設けた取付部1内部の天井面と底面とに当接させるために行う座板2の回動は、前述の図3にある従来例のもののように、側辺と上辺とのコーナー部分を、斜めに、または弧状に面取り加工した座板2にあっても、左右の側辺が水平な方向に沿う姿勢とするまで、略90度回動させなければならないが、上述の左右の側辺を傾斜する斜辺とした本発明手段の実施例の座板にあっては、斜辺にした側辺の傾斜角度の分だけ既に座板を回動させていることになり、90度からこの斜辺とした側辺の傾斜角度を差し引いた残りの角度分だけ座板2を回動させれば、側辺が取付部1内部の天井面・底面に平行して当接し、装置部材aに対し固定した状態となるので、座板の回動角度量を少なくし、座板2を装置部材a内に固定状態とするまでの回動操作を早くする。
【0028】
座板2は、左右の巾寸法を、装置部材aの後端部の取付部1内部の底面から天井面までの高さ寸法に略対応する寸法に形成しておいて、取付部1内に挿入した状態で回動させることにより、左右の側辺を上辺及び底辺として装置部材a内腔の天井面と底面とに衝合する状態とし、この状態において、取付部1の後端部の上下の後壁11・11の前面に当接する部位を、締付面として機能させるものである。
【0029】
従前の取付金具における座板は、図3にあるように、座板を90度回転させるときの回転作動が、つかえを生ぜしめることなく行われるようにするのを、回転により、天井面・底面に対し、支えるようになる側辺の、中心線より回転方向前方の部分を、予め切除していることで、行うことから、締付面として機能する部分の面積を狭めているのに対し、この実施例の座板2は、回転により上辺及び下辺となる左右の側辺を、回転方向に傾斜する斜辺に形成して、この斜辺が、それの傾斜角度を90度から差引いた角度分だけ座板2と共に回動したところで、水平な姿勢となってこの左右の側辺がそっくりそのまま取付部1の天井面および底面に衝合するようにしていることから、左右の側辺の一方において傾斜角度分だけ斜に切除した部分があっても、他方において傾斜角度分だけ付加されるようになって、この取付部1の後面の開放口10を挟んで対向する上下の後壁11・11の前面側(内面側)に当接する左右の側辺の接触部分の面積に、削減が無く、従って、締結・固着を強固なものとする。
【0030】
ところで、この座板2は、上下の両端面が、それの前縁から後縁に至る間を図11にあるように弧面に形成してあり、これにより、締付ボルト3が嵌挿された状態の座板2を、前後に寝かせた姿勢として取付部1後面の開放口10から取付部1内にくぐり込ませていくときに、座板2の上下の端面が開放口10の上下の口縁に当接して干渉するようになるのを避けるようにしている。さらに、この座板2の上下の端面に形成する弧面は、前方に向かうに従い上下の弧面の間の距離を狭くする形状に形成してあって、これにより、座板2を取付部1の後面の開放口10から取付部1内にくぐり込ませるときの操作・作業が、一層楽に行えるようにしている。
【0031】
さらに、この実施例の座板2の前面側には、それの上下の中間部位に、後面側に向け円弧状に刳り込む凹溝wが左右方向に連続するよう形設してある。この円弧状の凹溝wは、座板2のボルト挿通口21に嵌挿した締付ボルト3を、それの頭部30の後面側が座板2の前面側に当接した状態において、座板2に対し上下方向に傾斜回動させるときの回動操作を円滑にするためのもので、座板2の前面側の左右の中央部位の、締付ボルト3の頭部30の後面側が当接するようになる部位にだけ形設してあればよいものであるが、この例においては、座板2の上記部位に対するこの凹溝wの形設を容易にするため、座板2の左右の一端から他端に渡る間に連続する凹溝wとして形設してある。このことから、この凹溝wの、締付ボルト3の頭部30の後面側と対面する部位から左右に外れる部位は、格別の機能のない遊びの部位となる。
【0032】
この座板2に、締付ボルト3の挿通口として形設するボルト挿通口21は、その締付ボルト3の外径に対応する巾で上下方向に長い長穴にするが、この例においては、図12にあるように、座板2の前面側に寄る部位においては、上下の長さ寸法が狭く、座板2の後面側に寄るに従い、この上下の長さ寸法が大きくなる側面視においてコーン状の長穴に形成してあり、これにより、図18、図19に示しているように、締付ボルト3の上方への傾斜回動及び下方への傾斜回動が、長穴状のボルト挿通口21の内部に、遊びの空間を生ぜしめることなく行われるようにしている。
【0033】
この座板2のボルト挿通口21に嵌挿する締付ボルト3は、図13乃至図15に示しているように、頭部30が、後面側を前記座板2の前面側に形設した弧状の凹溝wの底面に対応する凸の弧面の突起部Tに形成した左右に長いブロック状をなす形状に形成してあって、これにより全体としてT字状をなす形状としてある。
【実施例2】
【0034】
図20乃至図25は、別の実施例を示している。この例は、装置部材取付用の取付金具の座板を、角型の平板状とした例である。
【0035】
この例の装置部材取付用の取付金具は、ステンレススチール等の金属材よりなる板材から角形に板どりして成形した座板2と、その座板2の中心部位に開設したボルト挿通口21に嵌挿する頭部30付きの締付ボルト3と、その締付ボルト3の螺子部31に螺合して締結する締付ナット4とにより構成すること、及び、角形の座板2に形設するボルト挿通口21を、それに挿通した締付ボルト3が座板2に対し上下に傾斜回動を自在とする上下方向の長穴状に構成することについては、前述の実施例のものと変わりない。
【0036】
座板2は、ステンレススチール等の金属板から、左右の側辺を斜辺とする菱形に板どりして成形した板状の座板で、それの斜辺とした左右の側辺の傾斜方向は、座板2に嵌挿した締付ボルト3の螺じ締めの方向に傾斜するよう設定してあり、その傾斜角度は略45度としてある。
【0037】
この例における菱形に成形した座板2は、図20にあるように装置部材aの端部に設けた取付部1が、それの上下寸法を40ミリ、開放口10の開口巾を20ミリ、内部の天井面から底面までを37ミリに設定してある装置部材aの取付に適応するように形成したものであり、その座板2は、板厚が10ミリで、上下の巾寸法が取付部1後面の開放口10の開口巾より広い25ミリ、左右の巾寸法が、取付部1内部の天井高さに略対応する37ミリとした形状のものに形成してある。
【0038】
この座板2に開設する締付ボルト3挿通用のボルト挿通口21は、図21に示しているように、座板2の後面視において二組の対角を結ぶ二本の仮想対角線の交点位置に中心点をおき、口径の左右の巾が締付ボルト3の螺子部31の外径寸法に略対応し、口径の上下の巾が、上辺及び底辺に対し垂直な方向に拡巾した上下方向の長穴状に形成してある。そして、この長穴状のボルト挿通口21は、図20にあるように、座板2の前面側に寄る部位においては、上下方向の口径が小さく、後面側に寄る部位に向け順次上下方向の口径を大きくする縦断した側面視において横向きのコーン状をなす形状に形成してある。
【0039】
ボルト挿通口21を上下方向に長い長穴状に形成するのは、このボルト挿通口21に嵌挿した締付ボルト3を、該締付ボルト3の螺子部31を手で持って上下方向に動かし、座板2の前面側に当接する頭部30の後面部を略回動中心として、上下に傾斜回動させて座板2に対し寝かせた姿勢とするときの、締付ボルト3の動きに、ボルト挿通口21の内壁面との干渉による制約を生ぜしめないよう自由にするためのものであり、上下方向に長い長穴状に形成してあればよいものであるが、螺子部31を手で持って締付ボルト3を傾斜回動させるときの該締付ボルト3の動きは、頭部30側では小さく螺子部31側では大きくなることから、この例のように、長穴状とするボルト挿通口21の形状を、座板2の後面側に向け次第に拡径する横向きのコーン状に形成することは、座板としての強度を保持せしめながら締付ボルト3の傾斜回動を許容するボルト挿通口21が形設できるようになる。
【0040】
またこの長穴状のボルト挿通口21の中心点位置を、対角線の交点位置を占めるようにしているのは、座板2をそれに締付ボルト3を嵌挿して取付部1内に開放口10から挿入した状態において、図23において、2重線の矢印で示しているように、座板2を、締付ボルト3中心に螺子締めする方向である右回りに回動させたときに、前記交点中心に回動する該座板2の左右の側辺と上下の辺縁とのコーナー部分が、該座板2の上下巾の寸法と取付部1内の天井高さの寸法との差により生成される空間内を、干渉が無い自由な状態で余裕をもって回動していくようにするためである。
【0041】
このボルト挿通口21に嵌挿する締付ボルト3は、それの頭部30をナット状又は円盤状とした通常の締付ボルトの形態のものである。この実施例の取付金具cにおける座板2は、それの板厚が、装置部材a後端部に設けた取付部1後面のの開放口10の上下の開口巾の20ミリより薄い10ミリで、上下の辺縁間の巾寸法が取付部1内部の天井高さの37ミリより狭い25ミリであるから、座板2のボルト挿通口21に嵌挿した締付ボルト3を、上下方向の長穴状に形成したボルト挿通口21の形状を利用して、座板2に対し上下方向に傾斜回動させ、座板2の外面に沿う姿勢とし、この状態の座板2を斜めに寝かせて、開放口10をくぐらせることにより、取付部1後面の開放口10から取付部1内に挿入していけるようになる。そして、挿入し終えたところで、締付ボルト3の姿勢を旧に戻し、これを螺子の締め込み方向に回動させれば、締付ボルト3と共に回動する座板2が略45度の角度量を回動したところで傾斜する左右の側辺が、取付部1内部の天井面及び底面にそれぞれ当接して装置部材aに対し固定状態となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
取付金具cは、取付部1と同様の構造の取付部が端部に装設してあるものであれば、機械装置の装置部材の取付けにもそのまま利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従前のルーバー取付用の取付金具の、使用状態における前面側から見た斜視図である。
【図2】同上取付金具の同上状態における後面側から見た斜視図である。
【図3】同上取付金具の座板を、それに締付ボルトを挿通して、装置部材に設けた取付部の内部に挿入した状態の、一部破断した後面図である。
【図4】同上取付金具により装置部材を取付材に組み付けた状態の縦断側面図である。
【図5】同上取付金具の座板を、装置部材に設けた取付部の後面の開放口から取付部内に挿入することが不能であることの説明図である。
【図6】同上取付金具の座板を、取付部の後面側の開放口の上下の開口巾より狭い巾に形成した例の、座板を取付部内に挿入した状態の一部破断した後面図である。
【図7】本発明手段を実施せる装置部材取付用の取付金具により、装置部材を取付材に取付けた状態の側面図である。
【図8】同上取付金具の、同上状態時の縦断側面図である。
【図9】同上取付金具の座板の後面図である。
【図10】同上取付金具の座板の前面図である。
【図11】同上取付金具の座板の側面図である。
【図12】同上取付金具の座板の縦断側面図である。
【図13】同上取付金具の締付ボルトの側面図である。
【図14】同上取付金具の同上締付ボルトの後面図である。
【図15】同上取付金具の同上締付ボルトの平面図である。
【図16】同上取付金具の座板を、それに締付ボルトを嵌挿して装置部材の取付部内に挿入した状態時の後面図である。
【図17】同上取付金具の同上状態の座板を右回りに45度回転させた状態の後面図である。
【図18】同上取付金具の座板のボルト挿通口に嵌挿した締付ボルトを、座板に対し上方に傾斜回動させた状態時の説明図である。
【図19】同上の締付ボルトを座板に対し下方に傾斜回動させた状態時の説明図である。
【図20】別の実施例の取付金具の、取付材に装置部材を取付けた状態の縦断側面図である。
【図21】同上取付金具の、座板の後面図である。
【図22】同上の座板の前面図である。
【図23】同上の座板の、ボルト挿通口に締付ボルトを嵌挿して、装置部材の端部の取付部内に挿入した状態の後面図である。
【図24】同上の座板を、45度右回りに回動させた状態の後面図である。
【図25】同上の座板を、それに嵌挿した締付ボルトを寝かせた姿勢として、取付部の後面側の開放口から挿入する状態時の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
D 左右方向の巾寸法
H 上下の高さ寸法
K 上下の開口巾
T 突起部
a 装置部材
b 取付材
c 取付金具
h 高さ寸法
w 凹溝
1 取付部
10 開放口
11 後壁
2 座板
21 ボルト挿通口
3 締付ボルト
30 頭部
31 螺子部
4 締付ナット
50 取付板部
51 ボルト挿通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角板状の座板(2)と、その座板(2)に設けたボルト挿通口(21)に嵌挿する頭部(30)付きの締付ボルト(3)と、その締付ボルト(3)の螺子部(31)に螺合する締付ナット(4)と、からなる装置部材取付用の取付金具(c)において、座板(2)に形設するボルト挿通口(21)を、中心点が、角板状の座板(2)の後面視において二組の対角をそれぞれ結ぶ二本の仮想対角線の交点付近に位置し、口径の左右の巾が、ボルト挿通口(21)に嵌挿する締付ボルト(3)の螺子部(31)の外径に略対応し、口径の上下の巾が、座板(2)の底辺及び上辺に対し垂直な方向に拡巾した、上下方向の長穴状に形成したことを特徴とする建築構造物における装置部材取付用の取付金具。
【請求項2】
座板(2)に、後面視において上下方向の長穴状に形設する締付ボルト挿通用のボルト挿通口(21)を、そのボルト挿通口(21)の口径の上下の巾が、座板(2)の前面側に寄る部位において小さく、座板(2)の後面側に寄るに従い上下に拡巾する形状の長穴状に形設しておくことを特徴とする請求項1記載の建築構造物における装置部材取付用の取付金具。
【請求項3】
締付ボルト(3)の頭部(30)の、後面側を、側面視において、円弧状に突出する突起部(T)に形成し、座板(2)の前面側で、ボルト挿通口(21)の周辺部位に、締付ボルト(3)の上下の傾斜回動時における頭部(30)後面の回動軌跡に略沿う側面視で凹面状の凹溝(w)を形設しておくことを特徴とする請求項1記載の建築構造物における装置部材取付用の取付金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−115228(P2009−115228A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289402(P2007−289402)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000217239)田中金属株式会社 (2)
【Fターム(参考)】