説明

建設機械の送受信システムにおける燃料消費量補正装置

【課題】標高(気圧)のみならず気温を考慮してその判断結果から建設機械の燃料消費量が良好となるように補正する。新たなセンサ(外気温センサ等)や複雑な制御マップを備えたコントローラは追加することなくシステムを構築する。
【解決手段】基準燃料消費量データベース31には、複数の建設機械1に対応した燃料消費量、位置対応情報データベース32には、気温/および標高の情報、燃料消費量補正情報データベース33には、気温または/および標高に応じた燃料消費量補正情報が格納されている。判断手段41では、建設機械1の燃料消費量を補正するか否かが判断される。位置情報変換手段42では、建設機械1の地点における気温または/および標高の情報に変換される。燃料消費量補正指令作成手段43では、建設機械1の気温または/および標高に応じた燃料消費量補正指令が作成される。送受信手段50は、燃料消費量補正指令を建設機械1に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の送受信システムにおいて、建設機械の燃料消費量を補正する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料消費量は、気温や気圧に影響を受けることが知られている。たとえば、気温が下がると、燃料消費量が下がる傾向がある。また、標高が高い場所では、気圧が下がるため、エンジンの吸気圧が下がり、エンジン内の発火ポイントがずれて燃料消費量が増加する。
【0003】
したがって、燃料消費量が増加に転じた場合には、気温や気圧に応じて適正な燃料消費量になるように補正することが必要である。たとえば気温に応じて適正な暖機時間、暖機回転数になるように補正することが必要である。
【0004】
とりわけ、建設機械は、極端に気温や気圧の異なる場所に移送されて稼動することが多い。たとえば建設機械が熱帯地帯から極寒地に移動した場合には、大きく気温が変動する。このため建設機械にあっては、気温や気圧に応じて燃料消費量を補正することが、燃料の無駄な損失を低減する上で重要な課題となっている。
【0005】
なお、本明細書では、「燃料消費量」を、単位時間当たりに消費した燃料の量(単位は、たとえばL/h)の意味で使用する。
【0006】
また、油圧ショベルなどの建設機械は、ひとたびエンジンが始動されると、長時間連続して稼動する。たとえば朝、エンジンが始動されると、昼休みに小休止する他は夕方まで連続して稼動する。このような建設機械に特有な使い方では、暖機時間、暖機回転数、つまり1日の中で最初のエンジン始動から作業機の作動が開始するまでの暖機時間、暖機時間におけるエンジン回転数を示す暖機回転数が、燃料消費量に大きな影響を与えることがわかっている。
【0007】
(従来における実施技術)
建設機械の分野では、地球上の各位置に存在する複数の建設機械と地上局との間でデータを相互に送受信する送受信システムが既に導入されている。この送受信システムでは、複数の建設機械から、建設機械の現在位置などの内部情報を地上局に送信するとともに、地上局で複数の建設機械の内部情報を受信して処理を行い、処理結果に応じて地上局から個々の建設機械に対して、指令を送信し、個々の建設機械では、受信した指令に基づき処理が行われる。
【0008】
(特許文献にみられる従来技術)
特許文献1には、建設機械に搭載されたGPSセンサで検出された位置情報と地図データベースに基づき、建設機械の稼動現場の標高を算出し、算出した標高に応じて、ノッキングが生じたり、スモークが悪化したり、出力低下等が生じたりすることがないようにエンジンに対する燃料の噴射量を適正に調整するという発明が記載されている。
【特許文献1】特開2005−61280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1記載の発明は、あくまでもノッキングが生じたり、スモークが悪化したり、出力低下等が生じたりしないようにエンジンに対する燃料の噴射量を適正に調整するものであって、必ずしも燃料消費量を最適にするものではない。つまり特許文献1では、現在の燃料消費量が良い状態であるのか悪い状態であるのについての判断はしていないし、燃料消費量が悪い場合に良好となるように補正することもしていない。
【0010】
また、燃料消費量は、標高(気圧)のみならず気温によっても大きく変動するものであり、この点については特許文献1では、何ら考慮されていない。
【0011】
また、建設機械の燃料消費量が適正になるように補正するにあたり、既存の多数の建設機械の個々の車体に新たなセンサ(外気温センサ等)や複雑な制御マップを備えたコントローラを追加することは、システムを構築するにあたり構成要素を増やすことになるため、構成要素を増やすことなくシステムを構築したいとの要請がある。
【0012】
本発明は、こうした実情に鑑みてされたものであり、従来技術では未解決であった新規な課題、つまり現在の燃料消費量が良い状態であるのか悪い状態であるかを判断し、その判断結果から燃料消費量が良好となるように補正することを達成しようとするものである。そして、その際に、標高(気圧)のみならず気温を考慮して建設機械の燃料消費量が適正になるように補正することを課題とする。しかも、既存の多数の建設機械の個々の車体に新たなセンサ(外気温センサ等)や複雑な制御マップを備えたコントローラを追加することなく、システムを構築することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明は、
複数の建設機械から少なくとも建設機械の位置を含む建設機械の内部情報を地上局に送信するとともに、地上局で複数の建設機械の内部情報を受信して処理を行い、処理結果に応じて地上局から個々の建設機械に対して指令を送信し、個々の建設機械では、受信した指令に基づき処理が行われる建設機械の送受信システムに適用され、
建設機械は、内部情報として、位置および燃料消費量を含む内部情報を地上局に送信するものであって、
地上局は、
複数の建設機械の内部情報に基づき作成され、各条件に対応して基準となる燃料消費量が格納された基準燃料消費量データベースと、
各位置に対応して気温または/および標高の情報が格納された位置対応情報データベースと、
気温または/および標高に応じて建設機械の燃料消費量を補正するための燃料消費量補正情報が格納された燃料消費量補正情報データベースと、
発信元の建設機械の内部情報と、基準燃料消費量データベースとに基づき、発信元の建設機械の燃料消費量と基準燃料消費量とを同一条件下で対比して、発信元の建設機械の燃料消費量を補正するか否かを判断する判断手段と、
発信元の建設機械の位置と、位置対応データベースとに基づき、発信元の建設機械の位置を、発信元の建設機械の地点における気温または/および標高の情報に変換する位置情報変換手段と、
発信元の建設機械の燃料消費量を補正すべきと判断した場合に、発信元の建設機械の地点における気温または/および標高の情報と、燃料消費量補正情報データベースとに基づいて、発信元の建設機械の地点における気温または/および標高に応じた燃料消費量補正指令を作成する燃料消費量補正指令作成手段と、
作成した燃料消費量補正指令を発信元の建設機械に送信する送信手段と
を備えた建設機械の送受信システムにおける燃料消費量補正装置であることを特徴とする。
【0014】
第2発明は、
複数の建設機械から少なくとも建設機械の位置を含む建設機械の内部情報を地上局に送信するとともに、地上局で複数の建設機械の内部情報を受信して処理を行い、処理結果に応じて地上局から個々の建設機械に対して指令を送信し、個々の建設機械では、受信した指令に基づき処理が行われる建設機械の送受信システムに適用され、
建設機械は、内部情報として、位置、燃料消費量、エンジン始動から作業機の作動が開始するまでの暖機時間、暖機時間におけるエンジン回転数を示す暖機回転数を含む内部情報を地上局に送信するものであって、
地上局は、
複数の建設機械の内部情報に基づき作成され、各条件に対応して基準となる燃料消費量が格納された基準燃料消費量データベースと、
各位置に対応して気温の情報が格納された位置対応情報データベースと、
各気温に対応して最適暖機時間、最適暖機回転数が格納された最適暖機データベースと、
発信元の建設機械の内部情報と、基準燃料消費量データベースとに基づき、発信元の建設機械の燃料消費量と基準燃料消費量とを同一条件下で対比して、発信元の建設機械の燃料消費量を補正するか否かを判断する判断手段と、
発信元の建設機械の位置と、位置対応情報データベースとに基づき、発信元の建設機械の位置を、発信元の建設機械の地点における気温情報に変換する位置情報変換手段と、
発信元の建設機械の燃料消費量を補正すべきと判断した場合に、発信元の建設機械の地点における気温の情報と、最適暖機データベースとに基づいて、発信元の建設機械の地点における気温に応じた最適暖機時間、最適暖機回転数を求め、求められた最適暖機時間、最適暖機回転数と発信元の建設機械の現在の暖機時間、暖機回転数と比較して、比較結果に応じて燃料消費量を補正するための指令を作成する燃料消費量補正指令作成手段と、
作成した燃料消費量補正指令を発信元の建設機械に送信する送信手段と
を備えた建設機械の送受信システムにおける燃料消費量補正装置であることを特徴とする。
【0015】
第3発明は、第1発明において、
基準燃料消費量データベースは、各標高に対応して基準となる燃料消費量が格納されたものであり、
判断手段は、発信元の建設機械の燃料消費量と基準燃料消費量とを同一標高の条件下で対比して、発信元の建設機械の燃料消費量を補正するか否かを判断するものであること
を特徴とする。
【0016】
第4発明は、第1発明において、
燃料消費量補正指令作成手段は、発信元の建設機械の燃料消費量を補正すべきと判断した場合に、発信元の建設機械の地点における標高に応じてエンジンの燃料噴射を補正するための指令を作成するものであること
を特徴とする。
【0017】
第5発明は、第1発明において、
燃料消費量補正指令作成手段は、発信元の建設機械の燃料消費量を補正すべきと判断した場合に、発信元の建設機械の地点における気温に応じて、エンジン始動から作業機の作動が開始するまでの暖機時間、暖機時間におけるエンジン回転数を示す暖機回転数を適正にするための指令を作成するものであること
を特徴とする。
【0018】
第6発明は、第1発明において、
建設機械は、緯度、経度、標高の各位置情報からなるGPSの位置情報を地上局に送信するものであって、
位置対応情報データベースは、各位置に対応して気温の情報が格納されたものであり、
位置情報変換手段は、発信元の建設機械の位置と、位置対応データベースとに基づき、発信元の建設機械の位置を、発信元の建設機械の地点における気温の情報に変換するものであること
を特徴とする。
【0019】
第7発明は、第2発明において、
建設機械は、エンジンが稼動している時間帯を示す稼動マップ情報と、エンジンが稼動しかつ作業機が作動している時間帯を示す実稼動マップ情報との組み合わせからなる情報を、暖機時間の情報として、地上局に送信すること
を特徴とする。
【0020】
第1発明は、図1に示す建設機械の送受信システム100に適用されることを前提とするものである。建設機械の送受信システム100では、複数の建設機械1、1、1…から少なくとも建設機械1の位置を含む建設機械1の内部情報が地上局130に送信されるとともに、地上局130で複数の建設機械1、1、1…の内部情報を受信して処理が行われ、処理結果に応じて地上局130から個々の建設機械1に対して指令が送信され、個々の建設機械1では、受信した指令に基づき処理が行われる。
【0021】
建設機械1は、内部情報として、位置および燃料消費量を含む内部情報を地上局130に送信する。
【0022】
地上局130は、サーバ131として構成され、基準燃料消費量データベース31と、位置対応情報データベース32と、燃料消費量補正情報データベース33とを含むデータベース部30と、判断手段41と、位置情報変換手段42と、燃料消費量補正指令作成手段43とを含む演算処理部40と、送受信手段50とを備えている。
【0023】
図2に示すように、基準燃料消費量データベース31は、複数の建設機械1、1、1…の内部情報に基づき作成されたものである。基準燃料消費量データベース31には、各条件に対応して基準となる燃料消費量が格納されている。たとえば、基準燃料消費量データベース31には、各標高に対応して基準となる燃料消費量(複数の建設機械1、1、1…の平均燃料消費量)が格納されている(第3発明)。
【0024】
位置対応情報データベース32には、各位置に対応して気温または/および標高の情報が格納されている。
【0025】
燃料消費量補正情報データベース33には、気温または/および標高に応じて建設機械の燃料消費量を補正するための燃料消費量補正情報が格納されている。
【0026】
判断手段41では、発信元の建設機械1の内部情報と、基準燃料消費量データベースとに基づき、発信元の建設機械1の燃料消費量と基準燃料消費量とを同一条件下で対比して、発信元の建設機械1の燃料消費量を補正するか否かが判断される。たとえば、発信元の建設機械1の燃料消費量と基準燃料消費量(平均燃料消費量)とを同一標高の条件下で対比して、発信元の建設機械1の燃料消費量を補正するか否かが判断される(第3発明)。
【0027】
位置情報変換手段42では、発信元の建設機械1の位置と、位置対応データベース32とに基づき、発信元の建設機械1の位置が、発信元の建設機械1の地点における気温または/および標高の情報に変換される。
【0028】
燃料消費量補正指令作成手段43では、発信元の建設機械1の燃料消費量を補正すべきと判断した場合に、発信元の建設機械周囲1の気温または/および標高の情報と、燃料消費量補正情報データベース33とに基づいて、発信元の建設機械1の地点における気温または/および標高に応じた燃料消費量補正指令が作成される。たとえば、燃料消費量補正指令作成手段43では、発信元の建設機械1の燃料消費量を補正すべきと判断した場合に、発信元の建設機械1の地点における標高に応じてエンジン3の燃料噴射を補正するための指令が作成される(第4発明;図5のステップ307)。また、たとえば、燃料消費量補正指令作成手段43では、発信元の建設機械1の燃料消費量を補正すべきと判断した場合に、発信元の建設機械1の地点における気温に応じて、エンジン始動から作業機の作動が開始するまでの暖機時間、暖機時間におけるエンジン回転数を示す暖機回転数を適正にするための指令が作成される(第5発明;図5のステップ308〜310)。
【0029】
送受信手段50は、作成した燃料消費量補正指令を発信元の建設機械1に送信する。これにより発信元の建設機械1では燃料消費量補正指令が受信され、受信された燃料消費量補正指令に基づき、燃料消費量を補正する処理が行われる。
【0030】
建設機械1の地点における標高の情報は、建設機械1に搭載のGPSセンサ6の検出結果から直接取得してもよい。すなわち、第6発明では、建設機械1は、緯度、経度、標高の各位置情報からなるGPSの位置情報を地上局130に送信する。地上局130では、位置情報から標高の情報が取り出される。一方、位置対応情報データベース32には、各位置に対応して気温の情報が格納されている。位置情報変換手段42では、発信元の建設機械1の位置と、位置対応データベース32とに基づき、発信元の建設機械1の位置が、発信元の建設機械1の地点における気温の情報に変換される。
【0031】
第2発明では、建設機械1は、内部情報として、位置、燃料消費量、エンジン始動から作業機の作動が開始するまでの暖機時間、暖機時間におけるエンジン回転数を示す暖機回転数を含む内部情報を地上局130に送信する。
【0032】
基準燃料消費量データベース31は、複数の建設機械1、1、1…の内部情報に基づき作成される。基準燃料消費量データベース31には、各条件に対応して基準となる燃料消費量が格納されている。
【0033】
位置対応情報データベース32には、各位置に対応して気温の情報が格納されている。
【0034】
最適暖機データベース33Aには、各気温に対応して最適暖機時間、最適暖機回転数が格納されている。
【0035】
判断手段41では、発信元の建設機械1の内部情報と、基準燃料消費量データベースとに基づき、発信元の建設機械1の燃料消費量と基準燃料消費量とを同一条件下で対比して、発信元の建設機械1の燃料消費量を補正するか否かが判断される。
【0036】
位置情報変換手段42では、発信元の建設機械1の位置と、位置対応情報データベースとに基づき、発信元の建設機械1の位置が、発信元の建設機械1の地点における気温情報に変換される。
【0037】
燃料消費量補正指令作成手段43では、発信元の建設機械1の燃料消費量を補正すべきと判断した場合に、図5に示すように、発信元の建設機械1の地点における気温の情報と、最適暖機データベース33Aとに基づいて、発信元の建設機械1の地点における気温に応じた最適暖機時間、最適暖機回転数が求められる(ステップ303)。そして、求められた最適暖機時間、最適暖機回転数と発信元の建設機械の現在の暖機時間、暖機回転数と比較する(ステップ304、305、306)。そして、比較結果に応じて燃料消費量を補正するための指令が作成される(ステップ307〜310)。
【0038】
送受信手段50は、作成した燃料消費量補正指令を発信元の建設機械1に送信する。これにより発信元の建設機械1では燃料消費量補正指令が受信され、受信された燃料消費量補正指令に基づき、燃料消費量を補正する処理が行われる。
【0039】
暖機時間の情報は、建設機械1の稼動マップ情報、実稼動マップ情報から取得するようにしてもよい。すなわち、第7発明では、図3に示すように、建設機械1は、エンジン3が稼動している時間帯を示す稼動マップ情報と、エンジンが稼動しかつ作業機が作動している時間帯を示す実稼動マップ情報との組み合わせからなる情報を、暖機時間の情報として、地上局130に送信する。
【0040】
以上のように本発明によれば、複数の建設機械、つまり世界各地で稼動している多数の建設機械の燃料消費量等の内部情報に基づいて、基準となる燃料消費量のデータを作成するようにしているため、燃料消費量が良い状態であるか悪い状態であるかを、非常に信頼性が高く判断することが可能な基準燃料消費量データとして取得することができる。そして、その基準燃料消費量と比較して判断するようにしているため個々の建設機械1の燃料消費量を補正すべきか否かを非常に信頼性高く判断することができる。
【0041】
このように本発明によれば、建設機械1の現在の燃料消費量が良い状態であるのか悪い状態であるかを判断し、その判断結果から燃料消費量が良好となるように補正するという新規な課題が達成される。そして、その際に、標高(気圧)のみならず気温を考慮して建設機械1の燃料消費量が適正になるように補正することができる。
【0042】
しかも、既存の送受信システム100を利用しており、建設機械1からは、位置、燃料消費量等の内部情報を地上局130に送るだけでよく、燃料消費量を補正すべきか否かの判断、気温や標高のデータの取得、燃料消費量補正指令の作成は全て地上局130の1箇所で行われるため、既存の多数の建設機械の個々の車体に新たなセンサ(外気温センサ等)や複雑な制御マップを備えたコントローラを追加する必要はない。このため、構成要素を増やすことなくシステムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、図面を参照して本発明に係る建設機械の送受信システムにおける燃料消費量補正装置の実施の形態について説明する。なお、以下では、建設機械として油圧ショベルを想定して説明する。
【0044】
図1は、実施形態の全体の装置構成を示している。
【0045】
実施例の送受信システム100では、複数の建設機械1、1、1…から建設機械1の位置を含む建設機械1の内部情報が地上局130に送信されるとともに、地上局130で複数の建設機械1、1、1…の内部情報を受信して処理が行われ、処理結果に応じて地上局130から個々の建設機械1に対して指令が送信され、個々の建設機械1では、受信した指令に基づき処理が行われる。
【0046】
建設機械1の車体2には、エンジン3が設けられている。エンジン3には、燃料噴射装置4が付設されている。燃料噴射装置4は、エンジン3の気筒内に燃料を噴射する装置である。燃料噴射装置4は、エンジンコントローラ11によって調整される。エンジンコントローラ11は、燃料噴射装置4を介して燃料噴射量および燃料噴射時期を制御する。エンジンコントローラ11では、エンジン3の気筒内に噴射される燃料の消費量が所定のサンプリング周期で計算される。これを瞬間燃料消費量F(単位:L/h)という。
【0047】
また、エンジンコントローラ11では、エンジン稼動時間SMRがサービスメータの積算値として積算される。
【0048】
また、エンジンコントローラ11では、エンジン3が稼動しており、かつ建設機械1の作業機5が作動している実稼働時間RSMRが積算される。作業機5が作動している時間は、作業機用操作レバーが中立位置から操作されていた時間を計時することによって求められる。エンジン3が稼動しており、かつ建設機械1の作業機5が作動している実稼動時間RSMRは、エンジン稼動時間SMRと作業機用操作レバー操作時間とが重なっている時間を積算することによって求められる。
【0049】
図3(a)、(b)は、建設機械1の稼動マップMP、実稼動マップRMPを例示する。すなわち、図3に示すように、稼動マップMPは、1日の中で、エンジン3が稼動している時間帯を示す情報のことである。実稼動マップRMPは、1日の中で、エンジン3が稼動しかつ作業機5が作動している時間帯を示す情報のことである。
【0050】
また、エンジン3には、エンジン回転数Nを検出するエンジン回転センサ3aが付設されている。エンジンコントローラ11には、エンジン回転センサ3aの検出信号、つまりエンジン3の回転数Nを示す信号が入力される。エンジンコントローラ11は、ローアイドル回転数を調整する。
【0051】
建設機械1の車体2には、GPS(グローバルポジショニングセンサ)センサ6が設けられている。GPSセンサ6は、GPS衛星から送られる信号を受信して、自己の車体2の3次元位置P、つまり緯度、経度、標高を検出する。GPSセンサ6は、通信コントローラ12に接続されている。
【0052】
建設機械1の車体2には、送受信手段7が設けられている。送受信手段7は、アンテナ7aを介して地上局130との間で相互にデータを送受信する。送受信手段7は、通信コントローラ12によって制御される。
【0053】
建設機械1の車体2の運転席には、モニタパネル8が設けられている。モニタパネル8には、表示器8aが設けられている。モニタパネル8の表示器8aには、運転者にとって必要な情報が表示される。モニタパネル8は、モニタコントローラ13によって制御される。
【0054】
建設機械1の車体2内には、エンジンコントローラ11と、通信コントローラ12と、モニタコントローラ13とがシリアル通信が可能となるように信号線14によってデジーチェーン状に接続されており、車体内ネットワーク15を構成している。なお、実際の建設機械1には、エンジンコントローラ11、通信コントローラ12、モニタコントローラ13以外のコントローラが存在するが、図1では、本発明に係る部分のみ示している。
【0055】
信号線14上には所定のプロトコルのフレーム信号、たとえばCAN(private)のフレーム信号が伝送される。フレーム信号が各コントローラ11、12、13に伝送されるとフレーム信号に記述されたデータに従い各コントローラ11、12、13に接続された制御対象機器、アクチュエータ(エンジン3、送受信手段7、モニタパネル8など)に駆動信号が出力されこれら各制御対象機器、アクチュエータが駆動制御されるとともに、各コントローラ11、12、13に接続された各センサ(エンジン回転センサ3a、GPSセンサ6など)で検出された検出データあるいは制御対象機器内部の情報を示すデータが取得されフレーム信号に記述される。
【0056】
上述した各コントローラで取得された瞬間燃料消費量F、エンジン稼動時間SMR、実稼動時間RSMR、エンジン回転数等は、フレーム信号に記述され、信号線14を介して通信コントローラ12に送出される。
【0057】
通信コントローラ12では、フレーム信号に記述されたデータが取り出される。
【0058】
通信コントローラ12では、車体内で取得されたデータを地上局130における処理に適合した形式に加工する処理が行われる。すなわち、通信コントローラ12では、ある一定期間内に取得された瞬間燃料消費量Fが平均されて平均燃料消費量AF(単位:L/h)が求められる。また、通信コントローラ12では、エンジン稼動時間SMR、実稼動時間RSMRに基づいて稼動マップMP、実稼動マップRMP(図3)が求められる。また、通信コントローラ12では、稼動マップMP、実稼動マップRMPの各時刻におけるエンジン回転数Nが求められる。
【0059】
こうして建設機械1の位置P、平均燃料消費量AF、エンジン稼動時間SMR、稼動マップMP、実稼動マップRMP、エンジン回転数Nが車体内部情報DTとして取得される。車体内部情報DTには、送信時刻t(年、月、日、時間、分、秒を示すデータ)の情報および自己の建設機械1を特定し識別する識別IDが対応づけられて、送受信手段7のアンテナ7aを介して地上局130に所定のタイミングで送信される。ここで、たとえば建設機械1が油圧ショベルの「PC200-8」という機種の製造シリアル番号「123」号であれば、識別IDとしては、「PC200−8-123」という内容のデータとなる。
【0060】
車体内部情報DTの送信は、定時毎または/およびイベント毎のタイミングで行われる。定時毎の送信とは、たとえば夜中の1:00や昼12:00になるたびに送信することである。イベント毎の送信とは、たとえば車体内でエラーが発生したり、建設機械1が一定距離移動するごとに送信することである。
【0061】
建設機械1の車体2から離れた場所には、地上局130が設けられている。地上局130は、送受信手段50と、サーバ131を含んで構成されている。
【0062】
建設機械1の車体2および地上局130のサーバ131から離れた場所には、端末140が設けられている。
【0063】
建設機械1の送受信手段7と地上局130の送受信手段50とは、有線または無線の通信線21によって通信自在に接続されている。地上局130のサーバ131と端末140とは、図示しない送受信手段を介して有線または無線の通信線22、たとえばインターネットによって通信自在に接続されている。
【0064】
サーバ131は、WWW(ワールド ワイド ウエブ)のサービスを提供すべくHTTP(ハイパー テキスト トランスファー プロトコル)サーバとして機能する。サーバ131は、HTML(ハイバー テキスト マークアップ ランゲージ)で記述されたインターネット情報画面を要求元の端末140の表示装置に表示する。
【0065】
地上局130のサーバ131は、データベース部30と演算処理部40とを備えている。 データベース部30は、基準燃料消費量データベース31と、位置対応情報データベース32と、燃料消費量補正情報データベース33とを含んで構成されている。演算処理部40は、判断手段41と、位置情報変換手段42と、燃料消費量補正指令作成手段43とを含んで構成されている。
【0066】
図2は、基準燃料消費量データベース31に格納されたデータの内容を示している。
【0067】
同図2に示すように、基準燃料消費量データベース31は、複数の建設機械1、1、1…の内部情報に基づき作成されたものである。基準燃料消費量データベース31には、各条件に対応して基準となる燃料消費量が格納されている。たとえば、基準燃料消費量データベース31には、各標高ALに対応して基準となる燃料消費量、つまり複数の建設機械1、1、1…の平均燃料消費量AFc(単位L/h)が格納されている。本実施例では、標高毎平均燃費マップが基準燃料消費量データベース31に格納されている。標高毎平均燃費マップは、建設機械1の機種毎、標高レベル毎の平均燃料消費量AFcを示したものである。
【0068】
標高ALは、「0mレベル」(0m以上100m未満)、「100mレベル」(100m以上200m未満)、「200mレベル」(200m以上300未満)…といった100m刻みの各標高レベルに分類されている。
【0069】
複数の建設機械1、1、1…は、油圧ショベルのPC60、PC200(-8)、PC400…、ブルドーザのD60、D155…、ホイールローダのWA380…、ダンプトラックのHD785…といった各機種に分類されている。
【0070】
位置対応情報データベース32には、各位置Pに対応して気温TPまたは/および標高ALの情報が格納されている。本実施例では、標高地図情報と平均気温地図情報が位置対応情報データベース32に格納されている。標高地図情報は、緯度、経度に対応してその地点における標高ALを求めることができる地図情報のことである。平均気温地図情報は、緯度、経度、月日時(時刻t)に対応してその地点のその月日時における過去の平均気温TPを求めることができる地図情報のことである。
【0071】
燃料消費量補正情報データベース33には、気温TPまたは/および標高ALに応じて建設機械1の燃料消費量を補正するための燃料消費量補正情報が格納されている。燃料消費量補正情報データベース33は、最適暖機データベース33A、標高毎最適燃料噴射量データベース33Bを含んで構成されている。最適暖機データベース33Aには、各平均気温TPに対応して最適暖機時間bτ、最適暖機回転数bNLが格納されている。ここで、暖機時間τとは、1日の中で建設機械1のエンジン3が最初に始動してから作業機5の作動が開始するまでの時間のことである。最適暖機時間bτとは、1日の平均燃料消費量AFを最も下げることができる暖機時間τのことである。暖機回転数NLとは、暖機時間τ中におけるエンジン回転数Nのことである。最適暖機回転数bNLとは、1日の平均燃料消費量AFを最も下げることができる暖機回転数NLのことである。
【0072】
標高毎最適燃料噴射指令データベース33Bには、各標高ALに対応して、燃料消費量Fを最小にすることができる最適な燃料噴射量、燃料噴射時期が格納されている。
【0073】
以下、図4、図5に示すフローチャートを参照して本実施例における処理手順について説明する。図4、図5に示す処理は、演算処理部40で行われる。
【0074】
(車体内部情報の送信)
建設機械1の送受信手段7から車体内部情報DTが送信時刻tの情報およびID情報に対応づけられて、定時毎または/およびイベント毎に、地上局130の送受信手段50に送信される(ステップ201)。
【0075】
(車体内部情報の受信)
地上局130の送受信手段50では、車体内部情報DTが受信される(ステップ202)。
【0076】
(位置情報変換処理)
地上局130の演算処理部40は、発信元の建設機械1から送られてきた位置Pの情報に含まれている緯度、経度、標高ALの情報を取り出す。また、位置Pの情報の内容が緯度、経度だけで標高ALの情報が含まれていない場合には、演算処理部40の位置情報変換手段42は、発信元の建設機械1の緯度、経度と、位置対応データベース32の標高地図情報とに基づき、建設機械1の緯度、経度を、その地点における標高ALの情報に変換する処理を行う。
【0077】
地上局130のデータベース30には、発信元の建設機械1の緯度、経度、標高AL、平均燃料消費量AF、エンジン稼動時間SMR、稼動マップMP、実稼動マップRMP、エンジン回転数Nのデータが、それぞれ自己の識別IDに対応する格納場所に格納される(ステップ203)。
【0078】
(基準燃料消費量データベースの内容更新処理)
つぎに、発信元の建設機械1の識別ID、標高AL、平均燃料消費量AFに基づいて、基準燃料消費量データベース31の標高毎平均燃費マップが更新される。すなわち、たとえば発信元の建設機械1の識別IDが「PC200−8-123」であり、標高ALが1050m(1000m以上1100m未満)であるとすると、図2に示すように、機種「PC200−8」および標高「1000mレベル」(1000m以上1100m未満)に対する平均燃料消費量AFcが、発信元の建設機械1の平均燃料消費量AFを用いて計算し直され、対応する箇所の平均燃料消費量AFcが更新される。
【0079】
なお、基準燃料消費量データベース31の内容の更新は、発信元の建設機械1から送信される車体内部情報DTを地上局130で受信するたびに行ってもよく、データ受信とは異なるタイミングで行ってもよい。たとえば建設機械1からの受信データを蓄積しておき、定期的に(たとえば週1回毎、月1回毎、毎日の定時刻に)行ってもよい(ステップ204)。
【0080】
(判断処理)
つぎに、判断手段41では、発信元の建設機械1の内部情報DTと、基準燃料消費量データベース31とに基づき、発信元の建設機械1の平均燃料消費量AFと基準となる平均燃料消費量AFcとを同一条件下で対比して、発信元の建設機械1の燃料消費量Fを補正するか否かが判断される。本実施例では、図2に示すように、発信元の建設機械1の平均燃料消費量AFと基準となる燃料消費量(平均燃料消費量)AFcとを同一標高の条件(「1000mレベル」)、同一機種(「PC200−8」)の条件下で対比して、発信元の建設機械1の燃料消費量Fを補正するか否かが判断される。たとえば発信元の建設機械1の平均燃料消費量AFが、基準となる燃料消費量(平均燃料消費量)AFc未満であれば、「補正する必要はない」と判断し、基準となる燃料消費量(平均燃料消費量)AFc以上であれば、「補正すべき」と判断する(ステップ205)。
【0081】
この結果、発信元の建設機械1の燃料消費量Fを補正する必要はないと判断した場合には(ステップ205の判断NO)、そのまま処理を終えるが、発信元の建設機械1の燃料消費量Fを補正すべきと判断した場合には(ステップ205の判断YES)、図5に示す処理にすすみ、燃料消費量を補正するための燃料消費量補正指令を作成する。これは燃料消費量補正指令作成手段43で行われる。作成された燃料消費量補正指令は、送受信手段50によって建設機械1に送信される。
【0082】
(燃料消費量補正指令作成処理および送信処理)
すなわち、図3(a)、(b)に示すように、発信元の建設機械1の稼動マップMP、実稼動マップRMPを用いて、発信元の建設機械1の暖機時間τが算出される。また稼動時間τ中のエンジン回転数Nから、暖機回転数NLが求められる(ステップ301)。
【0083】
つぎに、位置情報変換手段42では、発信元の建設機械1の緯度、経度のデータと、送信時刻tのデータと、位置対応データベース32の平均気温地図情報とに基づいて、発信元の建設機械1の緯度、経度の情報が、平均気温TPの情報に変換される。つまり発信元の建設機械1からデータを送信した月日時(送信時刻t)、発信元の建設機械1の地点(緯度、経度)における平均気温TPが求められる。ただし、発信元の建設機械1からデータを送信した月日時、発信元の建設機械1の地点(緯度、経度)における現時点の気温が、気象庁のウエブサイトなどの他の情報源から取得できれば、必ずしも上記平均気温地図情報を利用する必要はない(ステップ302)。
【0084】
つぎに、発信元の建設機械1の地点における平均気温TPと、最適暖機データベース33Aとに基づいて、発信元の建設機械1の地点における平均気温TPに対応する最適暖機時間bτ、最適暖機回転数bNLが算出される(ステップ303)。
【0085】
つぎに、ステップ303で求められた最適暖機時間bτ、最適暖機回転数bNLとステップ301で求められた発信元の建設機械1の現在の暖機時間τ、暖機回転数NLとが比較される。たとえば、暖機時間τが最適暖機時間bτ以上であれば、暖機時間τが適正であると判断され、暖機時間τが最適暖機時間bτ未満であれば、暖機時間τが短く不適正であると判断される。また暖機回転数NLが最適暖機回転数bNL以上であれば、暖機回転数NLが適正であると判断され、暖機回転数NLが最適暖機回転数bNL未満であれば、暖機回転数NLが低く不適正であると判断される(ステップ304、305)。この判断結果に応じて暖機時間τ、暖機回転数NLを適正にするための指令が作成される(ステップ308、309、310)。
【0086】
まず、暖機回転数NLが適正で、暖機時間τが短く不適正 である場合には(ステップ304の判断YES)、暖機時間τを長くする旨のメッセージと、最適暖機時間bτの数値を表示させるための表示指令が地上局130の送受信手段50に送出される。以後、表示指令は、地上局130の送受信手段50から通信線21を介して建設機械1の送受信手段7に送信される。建設機械1の送受信手段7で受信された表示指令は、通信コントローラ12から信号線14を介してモニタコントローラ13に送られる。モニタコントローラ13は、表示指令にしたがい、モニタパネル8の表示器8aに、「暖機時間を長くせよ、適正な暖機時間はXXX時間以上」という表示を行う(ステップ308)。
【0087】
一方、「暖機回転数NLが適正で、暖機時間τが短く不適正である」ということでなかった場合には(ステップ304の判断NO)、つぎに、暖機時間τが適正で、暖機回転数NLが低く不適正であるか否かが判断される(ステップ305)。
【0088】
この結果、暖機時間τが適正で、暖機回転数NLが低く不適正である場合には(ステップ305の判断YES)、暖機時間τにおけるローアイドル回転数NLを最適暖機回転数bNL以上に上昇させるためのローアイドル回転数調整指令が地上局130の送受信手段50に送出される。以後、ローアイドル回転数調整指令は、地上局130の送受信手段50から通信線21を介して建設機械1の送受信手段7に送信される。建設機械1の送受信手段7で受信されたローアイドル回転数調整指令は、通信コントローラ12から信号線14を介してエンジンコントローラ11に送られる。エンジンコントローラ11は、ローアイドル回転数調整指令にしたがい、暖機時間τにおけるローアイドル回転数NLが最適暖機回転数bNL以上に上昇するようにローアイドル時のエンジン回転数を調整する(ステップ309)。
【0089】
つぎに、「暖機時間τが適正で、暖機回転数NLが低く不適正である」ということでなかった場合には(ステップ305の判断NO)、つぎに暖機時間τ、暖機回転数NLの両方が適正であるか、あるいは暖機時間τ、暖機回転数NLの両方が不適正であるかが判断される(ステップ306)。
【0090】
この結果、暖機時間τ、暖機回転数NLの両方が不適正である場合には(ステップ306の判断「両方不適正」)、暖機時間τを長くする旨のメッセージと、最適暖機時間bτの数値を表示させるための表示指令および暖機時間τにおけるローアイドル回転数NLを最適暖機回転数bNL以上に上昇させるためのローアイドル回転数調整指令が地上局130の送受信手段50に送出される。以後、表示指令およびローアイドル回転数調整指令は、地上局130の送受信手段50から通信線21を介して建設機械1の送受信手段7に送信される。建設機械1の送受信手段7で受信された表示指令は、通信コントローラ12から信号線14を介してモニタコントローラ13に送られる。モニタコントローラ13は、表示指令にしたがい、モニタパネル8の表示器8aに、「暖機時間を長くせよ、適正な暖機時間はXXX時間以上」という表示を行う。また建設機械1の送受信手段7で受信されたローアイドル回転数調整指令は、通信コントローラ12から信号線14を介してエンジンコントローラ11に送られる。エンジンコントローラ11は、ローアイドル回転数調整指令にしたがい、暖機時間τにおけるローアイドル回転数NLが最適暖機回転数bNL以上に上昇するようにローアイドル時のエンジン回転数を調整する(ステップ310)。
【0091】
一方、暖機時間τ、暖機回転数NLの両方が適正である場合には(ステップ306の判断「両方適正」)、発信元の建設機械1の標高ALと、標高毎最適燃料噴射指令データベース33Bとに基づいて、発信元の建設機械1の標高ALに対応する最適燃料噴射量、最適燃料噴射時期が算出される。そして、最適燃焼噴射量、最適燃料噴射時期でエンジン3に燃料を噴射するための最適燃料噴射指令が作成され、地上局130の送受信手段50に送出される。以後、最適燃料噴射指令は、地上局130の送受信手段50から通信線21を介して建設機械1の送受信手段7に送信される。建設機械1の送受信手段7で受信された最適燃料噴射指令は、通信コントローラ12から信号線14を介してエンジンコントローラ11に送られる。エンジンコントローラ11は、最適燃料噴射指令にしたがい、燃料噴射装置4を調整して、燃料噴射量、燃料噴射時期を最適燃料噴射量、最適噴射時期に制御する(ステップ307)。
【0092】
上述した実施例に対しては種々の変形した実施が可能である。
【0093】
上述した実施例では、図2に示すように、基準燃料消費量データベース31の内容は、標高毎平均燃費マップであるとし、建設機械1の機種毎、標高レベル毎の平均燃料消費量AFcが格納されているものとして説明した。
【0094】
しかし、基準燃料消費量データベース31は、複数の建設機械1、1、1…の内部情報DTに基づき作成されたものであって、各条件に対応して基準となる燃料消費量が格納されているものであればよい。各条件としては、上述した標高以外に、作業モード、積荷重量、気温などが考えられる。
【0095】
たとえば、油圧ショベルなどでは、作業の負荷の大きさに応じて各種作業モードが選択され、それに応じてエンジン3の最大トルクが変化し、それによって燃料消費量が変動する。よって、作業モードを条件の1つとして、作業モードの情報を内部情報DTに含ませて建設機械1から地上局130に送信し、各作業モード毎に基準平均燃料消費量AFcが対応づけられた基準燃料消費量データベース31を作成してもよい。
【0096】
同様に、ダンプトラックなどでは、積荷重量の大きさによって、燃料消費量が変動する。よって、積荷重量を条件の1つとして、積荷重量の情報を内部情報DTに含ませて建設機械1から地上局130に送信し、各積荷重量毎に基準平均燃料消費量AFcが対応づけられた基準燃料消費量データベース31を作成してもよい。
【0097】
また、実施例では、標高を考慮して基準燃料消費量データベース31を作成しているが、気温を考慮して基準燃料消費量データベース31を作成してもよい。つまり建設機械1の機種毎、気温毎に平均燃料消費量AFcを格納してもよく、機種毎、標高毎、気温毎に平均燃料消費量AFcを格納してもよい。
【0098】
また、実施例では、燃料消費量補正情報データベース33は、最適暖機データベース33A、標高毎最適燃料噴射量データベース33Bからなるものとし、気温TPおよび標高ALに応じて建設機械1の燃料消費量Fを補正するための燃料消費量補正情報(最適暖機時間bτ、最適暖機回転数bNL、最適燃料噴射量、最適燃料噴射時期)が格納されているものとして説明した。しかし、これは一例であり、気温TPのみに応じて燃料消費量補正情報(最適暖機時間bτ、最適暖機回転数bNL)を格納する実施も可能であり、標高ALのみに応じて燃料消費量補正情報(最適燃料噴射量、最適燃料噴射時期)を格納する実施も可能である。
【0099】
同様に燃料消費量補正指令作成手段43は、気温TPおよび標高ALに応じた燃料消費量補正指令(表示指令、ローアイドル回転数調整指令、最適燃料噴射指令)を作成するものとして説明した。しかし、気温TPのみに応じて燃料消費量補正指令(表示指令、ローアイドル回転数調整指令)を作成する実施も可能であり、標高ALのみに応じて燃料消費量補正指令(最適燃料噴射指令)を作成する実施も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、実施形態の全体の装置構成を示した図である。
【図2】図2は、基準燃料消費量データベースに格納されたデータの内容を示した図である。
【図3】図3(a)、(b)は、建設機械の稼動マップ、実稼動マップを例示した図である。
【図4】図4は、実施例における処理手順を示したフローチャートである。
【図5】図5は、実施例における処理手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0101】
100 送受信システム、1 建設機械、130 地上局、31 基準燃料消費量データベース、32 位置対応情報データベース、33 燃料消費量補正情報データベース、41 判断手段、42 位置情報変換手段、43 燃料消費量補正指令作成手段、50 送受信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の建設機械から少なくとも建設機械の位置を含む建設機械の内部情報を地上局に送信するとともに、地上局で複数の建設機械の内部情報を受信して処理を行い、処理結果に応じて地上局から個々の建設機械に対して指令を送信し、個々の建設機械では、受信した指令に基づき処理が行われる建設機械の送受信システムに適用され、
建設機械は、内部情報として、位置および燃料消費量を含む内部情報を地上局に送信するものであって、
地上局は、
複数の建設機械の内部情報に基づき作成され、各条件に対応して基準となる燃料消費量が格納された基準燃料消費量データベースと、
各位置に対応して気温または/および標高の情報が格納された位置対応情報データベースと、
気温または/および標高に応じて建設機械の燃料消費量を補正するための燃料消費量補正情報が格納された燃料消費量補正情報データベースと、
発信元の建設機械の内部情報と、基準燃料消費量データベースとに基づき、発信元の建設機械の燃料消費量と基準燃料消費量とを同一条件下で対比して、発信元の建設機械の燃料消費量を補正するか否かを判断する判断手段と、
発信元の建設機械の位置と、位置対応データベースとに基づき、発信元の建設機械の位置を、発信元の建設機械の地点における気温または/および標高の情報に変換する位置情報変換手段と、
発信元の建設機械の燃料消費量を補正すべきと判断した場合に、発信元の建設機械の地点における気温または/および標高の情報と、燃料消費量補正情報データベースとに基づいて、発信元の建設機械の地点における気温または/および標高に応じた燃料消費量補正指令を作成する燃料消費量補正指令作成手段と、
作成した燃料消費量補正指令を発信元の建設機械に送信する送信手段と
を備えたことを特徴とする建設機械の送受信システムにおける燃料消費量補正装置。
【請求項2】
複数の建設機械から少なくとも建設機械の位置を含む建設機械の内部情報を地上局に送信するとともに、地上局で複数の建設機械の内部情報を受信して処理を行い、処理結果に応じて地上局から個々の建設機械に対して指令を送信し、個々の建設機械では、受信した指令に基づき処理が行われる建設機械の送受信システムに適用され、
建設機械は、内部情報として、位置、燃料消費量、エンジン始動から作業機の作動が開始するまでの暖機時間、暖機時間におけるエンジン回転数を示す暖機回転数を含む内部情報を地上局に送信するものであって、
地上局は、
複数の建設機械の内部情報に基づき作成され、各条件に対応して基準となる燃料消費量が格納された基準燃料消費量データベースと、
各位置に対応して気温の情報が格納された位置対応情報データベースと、
各気温に対応して最適暖機時間、最適暖機回転数が格納された最適暖機データベースと、
発信元の建設機械の内部情報と、基準燃料消費量データベースとに基づき、発信元の建設機械の燃料消費量と基準燃料消費量とを同一条件下で対比して、発信元の建設機械の燃料消費量を補正するか否かを判断する判断手段と、
発信元の建設機械の位置と、位置対応情報データベースとに基づき、発信元の建設機械の位置を、発信元の建設機械の地点における気温情報に変換する位置情報変換手段と、
発信元の建設機械の燃料消費量を補正すべきと判断した場合に、発信元の建設機械の地点における気温の情報と、最適暖機データベースとに基づいて、発信元の建設機械の地点における気温に応じた最適暖機時間、最適暖機回転数を求め、求められた最適暖機時間、最適暖機回転数と発信元の建設機械の現在の暖機時間、暖機回転数と比較して、比較結果に応じて燃料消費量を補正するための指令を作成する燃料消費量補正指令作成手段と、
作成した燃料消費量補正指令を発信元の建設機械に送信する送信手段と
を備えたことを特徴とする建設機械の送受信システムにおける燃料消費量補正装置。
【請求項3】
基準燃料消費量データベースは、各標高に対応して基準となる燃料消費量が格納されたものであり、
判断手段は、発信元の建設機械の燃料消費量と基準燃料消費量とを同一標高の条件下で対比して、発信元の建設機械の燃料消費量を補正するか否かを判断するものであること
を特徴とする請求項1記載の建設機械の送受信システムにおける燃料消費量補正装置。
【請求項4】
燃料消費量補正指令作成手段は、発信元の建設機械の燃料消費量を補正すべきと判断した場合に、発信元の建設機械の地点における標高に応じてエンジンの燃料噴射を補正するための指令を作成するものであること
を特徴とする請求項1記載の建設機械の送受信システムにおける燃料消費量補正装置。
【請求項5】
燃料消費量補正指令作成手段は、発信元の建設機械の燃料消費量を補正すべきと判断した場合に、発信元の建設機械の地点における気温に応じて、エンジン始動から作業機の作動が開始するまでの暖機時間、暖機時間におけるエンジン回転数を示す暖機回転数を適正にするための指令を作成するものであること
を特徴とする請求項1記載の建設機械の送受信システムにおける燃料消費量補正装置。
【請求項6】
建設機械は、緯度、経度、標高の各位置情報からなるGPSの位置情報を地上局に送信するものであって、
位置対応情報データベースは、各位置に対応して気温の情報が格納されたものであり、
位置情報変換手段は、発信元の建設機械の位置と、位置対応データベースとに基づき、発信元の建設機械の位置を、発信元の建設機械の地点における気温の情報に変換するものであること
を特徴とする請求項1記載の建設機械の送受信システムにおける燃料消費量補正装置。
【請求項7】
建設機械は、エンジンが稼動している時間帯を示す稼動マップ情報と、エンジンが稼動しかつ作業機が作動している時間帯を示す実稼動マップ情報との組み合わせからなる情報を、暖機時間の情報として、地上局に送信すること
を特徴とする請求項2記載の建設機械の送受信システムにおける燃料消費量補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−235940(P2009−235940A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80557(P2008−80557)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】