説明

建設機械

【課題】 折畳み式ドアと車体との段差をなくしたり、ドアを開いたときに係止部と保持部とを係止することによりドアを開ドア位置で安定させる。
【解決手段】 キャブボックス14には折畳み式ドア26を設け、そのドアパネル27,29と上部旋回体3の左側面カバー9とはドア26の閉ドア位置で垂直方向に対してほぼ同一面上に配置する。また、キャブボックス14の左後側面部14Eにはキャッチ34,35を設け、折畳み式ドア26のドアパネル27,29にはキャッチ34,35に個別に係合するストライカ32,33を設ける。これにより、折畳み式ドア26は、その開ドア位置において2組のストライカ32,33がキャッチ34,35を係止することにより、ドアパネル27,29のがたつき等を防止でき、折畳み式ドア26を安定的に保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等として好適に用いられ、オペレータが搭乗するキャブを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械としては、オペレータが搭乗するキャブを備えたものが知られており、このような建設機械のキャブには、オペレータによって開,閉されるドアが設けられている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平1−198929号公報
【特許文献2】WO99/61711号公報
【特許文献3】特開平11−100864号公報
【0004】
この種の従来技術による油圧ショベルは、下部走行体に上部旋回体が旋回可能に設けられ、該上部旋回体は、旋回フレーム上にキャブが設けられている。そして、キャブは、左前、右前、左中間、左後、右後に位置して5本のピラーを立設すると共に、このピラー間には前面、左前側面、左後側面、右側面、後面からなる5面を配置することにより中空なキャブボックスを構成し、該キャブボックスの左前ピラーと左中間ピラーとの間に開,閉可能にドアを取付けることにより構成されている。
【0005】
ここで、特許文献1、特許文献2に示される従来技術では、例えばドアが1枚のドアパネル等によって平板状に形成されている。そして、このドアは、ヒンジ等を用いてキャブボックスの左中間ピラーに回動可能に取付けられ、キャブボックスの外側に向けて開く構成となっている。
【0006】
また、特許文献3の従来技術では、例えば2枚のドアパネル等を回動可能に連結した折畳み式のドアが用いられている。この折畳み式ドアは、左中間ピラーに回動可能に取付けられた第一ドアパネルと、該第一ドアパネルの前側に回動可能に取付けられた第二ドアパネルとにより構成されている。また、第二ドアパネルの外面には1個のストライカが設けられ、前記キャブボックスの左後側面には、ドアを大きく開いたときに前記ストライカに取付け,取外し可能に係合する1個のキャッチが設けられている。これにより、折畳み式ドアを開いた状態で作業を行う場合には、折畳み式ドアを開いてストライカをキャブボックス側のキャッチに係合させることにより、ドアを開ドア位置にロックすることができる。
【0007】
また、この従来技術では、折畳み式ドアを閉めたときに2枚のドアパネルが若干屈曲した状態に保持され、このときにドアの下側には、旋回フレームの一部がドアよりも側方に突出した状態で配置されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した特許文献1、特許文献2に記載された従来技術では、キャブのドアを外側に向けて開く1枚のドアパネルにより構成している。しかし、建設機械の運転時には、例えばドアを開いた状態で作業を行うこともあるため、車体のレイアウト設計等を行うときには、開いた状態でドアが作業の邪魔にならないように、開いたドアが車幅の範囲から食み出す寸法を小さく抑えたいという要求がある。
【0009】
この場合、例えばキャブ全体の位置を車体の中心側に移動させる方法も考えられる。しかし、キャブと他の構造物との位置関係等を考慮すると、キャブの移動量が制約されるため、この方法でドアの食み出しを抑えるには限界がある。
【0010】
このため、特許文献1、特許文献2に記載された従来技術では、ドアが食み出す寸法を小さくするために、キャブを小型化せざるを得ないことがあり、このような場合には、キャブ内に十分なスペースを確保できず、運転環境が低下し易いという問題がある。
【0011】
また、特許文献3に記載された従来技術では、折畳み式ドアを構成する2枚のドアパネルのうち、第二ドアパネルだけにストライカを設け、ドアを開いたときにはストライカをキャブボックス側のキャッチに係合させる構成としている。このため、第一ドアパネルは、キャブボックス側に固定されていないから、回動可能に支持するためのヒンジ等の遊びにより第一ドアパネルががたつきや振動を生じてしまい、耐久性が低下するという問題がある。
【0012】
さらに、特許文献3に記載された従来技術では、旋回フレームの外周を形成する側面パネルがキャブの外側面よりも突出する構成となっている。そして、ドアを開いたときに折返されたドアが入り込む空間を形成している。このため、例えば寒冷地や冬季の作業現場等では、降雪中に建設機械を運転したり、降雪中に屋外に停車していると、旋回フレームの突出部位に積もった雪によってドアが開き難くなり、作業性が低下するという問題がある。また、土砂の掘削作業を行なう場合には、この土砂が旋回フレームの突出部分に堆積してしまうこともある。
【0013】
また、特許文献3に記載された従来技術では、2枚のドアパネルを折畳み可能に接続しているから、該各ドアパネル間の折畳み部位には隙間が形成されてしまう。このため、折畳み式ドアを閉じた状態でも、各ドアパネル間の隙間から雨水、塵埃等がキャブ内に侵入してしまうという問題がある。
【0014】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、開いたドアが車幅の範囲から食み出す寸法を小さく抑えることができ、ドアを開いた状態でも作業を円滑に行うことができると共に、キャブ内のスペースを十分に確保でき、運転環境を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的は、例えば降雪等の環境下でも、ドアの開,閉操作を常に円滑に行うことができ、作業性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、キャブ内のオペレータに広い後方視界を提供できるようにした建設機械を提供することにある。
【0017】
さらに、本発明の他の目的は、2枚のドアパネル間の折畳み部位を通じてキャブ内に雨水、塵埃等が侵入するのを防止し、作業環境を良好にできるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決するために本発明は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体に旋回可能に搭載されフレーム上にキャブが設けられると共に該キャブの下側を側面カバーで覆ってなる上部旋回体とを備え、前記キャブは、左前、右前、左中間、左後、右後に位置して上,下方向に延びる5本のピラーが設けられると共に、該各ピラー間に前面、左前側面、左後側面、右側面、後面からなる5面が設けられた中空なキャブボックスと、該キャブボックスの左前ピラーと左中間ピラーとの間に開,閉可能に設けられたドアとにより構成してなる建設機械に適用される。
【0019】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、ドアは、キャブボックスの左中間ピラーに回動可能に取付けられると共に折畳み可能な2枚のドアパネルからなる折畳み式ドアとして形成し、該折畳み式ドアと側面カバーとは垂直方向に対してほぼ同一面上に配設し、折畳み式ドアには開いたときに開ドア位置を保持するための2個の保持部を設け、キャブボックスの左後側面には、前記折畳み式ドアが前記開ドア位置となったときに前記各保持部をそれぞれ取付け,取外し可能に係止する2個の係止部を設ける構成としたことにある。
【0020】
また、請求項2の発明によると、キャブボックスの左後側面は、左中間ピラーから左後ピラーに向けて円弧状の湾曲面として形成し、折畳み式ドアを開いたときにキャブボックスの左後側面に沿って折返した状態で保持する構成としている。
【0021】
また、請求項3の発明によると、折畳み式ドアには、2枚のドアパネルの間を伸縮可能に覆う保護カバーを設ける構成としている。
【0022】
また、請求項4の発明によると、2個の保持部は、折畳み式ドアを構成する2枚のドアパネルにそれぞれ個別に取付け、2個の係止部は、前記折畳み式ドアが開ドア位置となったときに2個の保持部を別々に固定する位置に設ける構成としている。
【0023】
また、請求項5の発明によると、キャブを構成する左後ピラーは、キャブ内に設けられた運転席の後方位置に当該運転席に着座したオペレータの後方視界を損なわない範囲で配設する構成としている。
【0024】
さらに、請求項6の発明によると、折畳み式ドアを構成する2枚のドアパネル間には、折畳み式ドアを閉じたときに2枚のドアパネルの間に挟まれて該各ドアパネル間をシールするシール部材を設ける構成としている。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明によれば、折畳み式ドアを閉じたときには、ドアの下側に位置する側面カバーと折畳み式ドアとを垂直方向に対してほぼ同一面上に配設することができる。これにより、キャブボックスの左側面をフレーム(車体)の左側面にほぼ揃えて配置することができ、キャブボックスを車幅に納まる範囲内で大きく形成することができる。このため、キャブ内のスペースを十分に確保でき、車体の走行、旋回動作等を妨げることなく、オペレータの運転環境を向上させることができる。
【0026】
また、折畳み式ドアに2個の保持部を設け、キャブボックスの左後側面に2個の係止部を設け、ドアの開ドア位置でそれぞれを係止させる構成としているから、がたつきを生じ易い折畳み式ドアでも2組の保持部と係止部により、がたつきや振動を抑えることができ、ドアを開ドア位置に安定的に保持することができる。
【0027】
また、上部旋回体の側面カバーと折畳み式ドアとは垂直方向に対して同一面上に位置して、両者間には段差が形成されないので、例えば降雪時にドアを閉じていたとしても、折畳み式ドアの外側に雪等が積もってドアが開き難くなるのを防止することができる。従って、降雪等の環境下でも、ドアの開,閉操作を常に円滑に行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0028】
一方、折畳み式ドアを開いたときには、例えばキャブボックスの左後側面等に沿ってドアを折返すことができる。これにより、キャブを大きく形成したとしても、例えば開いたドアが車幅の範囲内に納まるように配置したり、ドアが車幅の範囲から側方に食み出す寸法を小さく抑えることができる。従って、例えば狭い作業現場等であっても、キャブのドアを開いた状態で作業を円滑に行うことができる。そして、ドアの食み出しを抑えつつ、キャブ内のスペースを十分に確保でき、運転環境を向上させることができる。
【0029】
さらに、折畳み式ドアを開いたときには、ドア側の2個の保持部をキャブボックス側の各係止部にそれぞれ係止することができる。これにより、例えばキャブのドアを開いた状態で作業を行う場合でも、ドアの2つの折畳み部位のがたつき等を2個の係止部(及び保持部)によってそれぞれ個別に防止できる。このため、ドアの各部位にがたつきが生じてヒンジ等が劣化したり、騒音が発生するのを防止することができる。
【0030】
また、折畳み式ドアを開いたときには、このドアはキャブボックスの左後側面に沿って折返すことができるので、キャブを大きく形成したとしても、例えば開いたドアが車幅の範囲内に納まるように配置したり、ドアが車幅の範囲から食み出す寸法を小さく抑えることができる。従って、オペレータは、例えば狭い作業現場等でドアを開いた状態でも、これを気にすることなく作業を円滑に行うことができる。
【0031】
また、請求項2の発明によれば、折畳み式ドアを開いたときには、ドアをキャブボックスの左後側面に沿って略円弧状に折返すことができ、開いたドアをキャブボックスの側面に沿ってコンパクトに配置することができる。これにより、キャブを十分に大きく形成しつつ、開いたドアがキャブから食み出す寸法を小さく抑えることができる。
【0032】
また、請求項3の発明によれば、2枚のドアパネルの折畳み部位の間を、保護カバーによって覆うことができ、この状態で保護カバーをドアの折畳み動作に追従して伸縮させることができる。そして、オペレータがドアを開閉するときには、ドアの折畳み部位の間に指先等が挟まれるのを、保護カバーによって防止でき、ドアの取扱いを容易に行うことができる。
【0033】
また、請求項4の発明によれば、2組の保持部と係止部により、2枚のドアパネルを別個に固定することができる。これにより、2組の保持部と係止部は、キャブボックスに対するドアパネルのがたつき、各ドアパネル間のがたつきとを効果的に抑えて、折畳み式ドアを開ドア位置により一層安定的に保持することができる。
【0034】
また、請求項5の発明によれば、キャブボックスの左後ピラーは、運転席に着座したオペレータの後方視界を損なわない範囲で運転席の後方位置に配設しているから、運転席に着座したオペレータが後を振向いたときに左後ピラーが視界を遮ることがない。これにより、オペレータの後方視界を広げることができ、作業性を向上することができる。
【0035】
さらに、請求項6の発明によれば、シール部材は、折畳み式ドアを閉じたときに、2枚のドアパネルの間に挟まれることにより該各ドアパネル間をシールすることができる。これにより、キャブ内への雨水、塵埃等の侵入を防止することができ、キャブ内の作業環境を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態に適用される建設機械として、油圧ショベルを例に挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
まず、図1ないし図13は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は油圧ショベルを示し、該油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置4とにより大略構成されている。ここで、油圧ショベル1は、例えば上部旋回体3がほぼ円形に形成された後方小旋回機と呼ばれる小旋回機として構成されている。
【0038】
また、上部旋回体3は、図1ないし図5に示す如く、例えば底板、縦板(図示せず)等の組合せにより支持構造体として形成された旋回フレーム5と、該旋回フレーム5の前側に搭載された後述のキャブ11と、旋回フレーム5の後端側に取付けられたカウンタウェイト6と、前記キャブ11の後側に搭載されたエンジン、油圧ポンプ、熱交換器(図示せず)等の機器を後側から覆うエンジンカバー7と、前記エンジン等を左側から覆うエンジン左カバー8と、旋回フレーム5の前側を左側から覆う左側面カバー(左スカートカバー)9と、前記エンジン、旋回フレーム5等を右側から覆う右側面カバー(右スカートカバー)10等とにより構成されている。また、上部旋回体3は、図4に示す如く、下部走行体2の車幅内でほぼ旋回できるように、上方からみて略円形状に形成されている。
【0039】
ここで、エンジン左カバー8は、図1に示す如く、エンジンカバー7の左側からキャブ11の左下側まで傾斜して延び、例えばエンジン、油圧ポンプ等の左側を覆っている。また、左側面カバー9は、前記エンジン左カバー8の先端に連続するようにキャブ11の左下側を前側に延びて形成され、旋回フレーム5を左側方から覆っている。この左側面カバー9は、全体として垂直方向に対しほぼ平面状に形成されている。
【0040】
一方、右側面カバー10は、図2に示すように、後側がエンジンカバー7の右側から旋回フレーム5の高さまで下向きに傾斜し、前側が旋回フレーム5を右側方から覆うように前側に延びている。また、右側面カバー10は、例えば上部旋回体3の旋回半径の円弧に沿うように凸湾曲面状に形成されている。
【0041】
そして、エンジンカバー7、エンジン左カバー8、左側面カバー9、右側面カバー10等は、エンジン、タンク等の機器、旋回フレーム5の周囲を覆う上部旋回体3の外装カバーを構成している。
【0042】
11は旋回フレーム5の左側に搭載された油圧ショベル1のキャブで、該キャブ11は、防振マウント(図示せず)を介して旋回フレーム5上に取付けられ、図1ないし図5に示す如く、旋回フレーム5上に配設された床板12と、該床板12上に設けられ、オペレータが着座する運転席13と、後述のキャブボックス14等とにより構成されている。また、運転席13は、後述するキャブボックス14内の後側寄りで左,右方向のほぼ中央部に配設されている。
【0043】
14はキャブ11の外形を形成するキャブボックスで、該キャブボックス14は、運転席13を囲むように旋回フレーム5上に設けられている。そして、キャブボックス14は、図6、図7に示す如く、上,下方向に延びる後述の左前ピラー15、右前ピラー16、右後ピラー17、センタピラー18、左後ピラー19からなる5本のピラーと、該各ピラー15〜19の間に配置された前面部14A、右側面部14B、後面部14C、左前側面部14D、左後側面部14Eからなる5面とを有している。
【0044】
この場合、キャブボックス14の左後側面部14Eは、その一部を構成する後述の左後窓ガラス20と共に、センタピラー18から左後ピラー19に向けて外向きに凸円弧状をなす湾曲面として形成されている。これにより、左後側面部14Eは、キャブボックス14内の居住空間を狭めることなく、該キャブボックス14の左後側を上部旋回体3の旋回半径内に収めることができる。また、左後側面部14Eは、後述の折畳み式ドア26を開いたときに当該ドア26が取付けられる取付面となっている。
【0045】
次に、各ピラー15〜19について詳しく述べる。まず、左前ピラー15は、キャブボックス14の左前部に配設され、前面部14Aと左前側面部14Dとの間の稜線を形成している。右前ピラー16は、キャブボックス14の右前部に位置して前面部14Aと右側面部14Bとの間の稜線を形成している。右後ピラー17は、キャブボックス14の右後部に位置して右側面部14Bと後面部14Cとの間の稜線を形成している。
【0046】
また、センタピラー18は、キャブボックス14の左側に位置して前,後方向の中間部位に設けられた左中間ピラーを構成し、左前側面部14Dと左後側面部14Eとの境界位置で運転席13の左横の近傍に配設されている。そして、センタピラー18には、後述の乗降口24を開,閉する折畳み式ドア26が水平方向に回動可能に取付けられている。
【0047】
さらに、左後ピラー19は、図3、図7に示す如く、キャブボックス14の後側に配設され、右後ピラー17の左側にキャブボックス14の幅寸法の半分程度の間隔をもって配置されている。この場合、左後ピラー19は、運転席13の後方位置で、該運転席13に着座したオペレータの後方視界を損なわない範囲に配設されている。
【0048】
詳しくは、左後ピラー19は、運転席13の後側近傍で該運転席13に着座したオペレータが後側に振向いたときに視界の邪魔にならない位置、好ましくは、運転席13の幅寸法内に収まる真後の範囲に配設されている。これにより、左後ピラー19は、例えば油圧ショベル1が転倒したり、重量物が衝突した場合に、キャブボックス14の変形をオペレータ(運転席13)の位置を中心にして効果的に抑えることができる。
【0049】
また、左後ピラー19を運転席13の後方位置に配設することにより、運転席13に着座したオペレータは、左後を振向くことによってセンタピラー18と左後ピラー19との間に設けられた左後窓ガラス20から左後方の広い範囲を視野とすることができる。一方、オペレータが右後を振向いたときには、右後ピラー17と左後ピラー19との間に設けられた後窓ガラス21から右後方の広い範囲を視野とすることができる。これにより、運転席13に着座したオペレータに広い後方視界を提供することができる。
【0050】
ここで、左後ピラー19は、例えばインナパネルとアウタパネルとを溶接手段を用いて固着することにより、横断面筒状の柱体として形成され、十分な剛性を有する強度部材として構成されている。これにより、左後ピラー19は、オペレータを保護する上で重要なキャブボックス14の後側中央部分の強度をより一層高めることができる。
【0051】
一方、22はキャブボックス14の左上側に配設された左ルーフピラーで、該左ルーフピラー22は、キャブボックス14の左前側面部14D、左後側面部14Eと天面部14Fとの間の稜線を形成している。そして、左ルーフピラー22の後部側は、ピラー18,19間に位置する部位が外向きに凸円弧状をなして湾曲している。また、23はキャブボックス14の右上側に配設された右ルーフピラーで、該右ルーフピラー23は、キャブボックス14の右側面部14Bと天面部14Fとの間の稜線を形成している。
【0052】
24はキャブボックス14の左前ピラー15とセンタピラー18との間に設けられた乗降口で、該乗降口24は、オペレータがキャブ11に乗り降りするものであり、折畳み式ドア26によって開,閉される。この場合、乗降口24(折畳み式ドア26)は、その下側に位置してピラー15,18の間に設けられた下部連結板25と共にキャブボックス14の左前側面部14Dを構成している。
【0053】
26はキャブボックス14のセンタピラー18に回動可能に設けられた折畳み式ドアを示し、該折畳み式ドア26は、左前ピラー15とセンタピラー18との間(乗降口24)に開,閉可能に配置されている。また、折畳み式ドア26は、後述のドアパネル27,29、ヒンジ28,31、ストライカ32,33、保護カバー37等によって構成され、中間ヒンジ31を挟んで2つに折畳み(屈曲)可能となっている。
【0054】
そして、折畳み式ドア26は、センタピラー18(ドアヒンジ28)を中心として前,後方向に回動され、図5、図7に示すようにキャブボックス14の乗降口24を閉じる閉ドア位置と、ドアを開いたときに図10、図12に示すようにキャブボックス14の左後側面部14Eに沿って略円弧状(略L字状)に折返される開ドア位置との間で開,閉される。
【0055】
27は第1のドアパネルで、該第1のドアパネル27は、例えば上,下方向に延びる細長い四角形状に形成され、その幅方向の後側(基端側)は、例えば2個のドアヒンジ28を用いてキャブボックス14のセンタピラー18に回動可能に取付けられている。この場合、2個のドアヒンジ28は、ドアパネル27とセンタピラー18との間に上,下方向に間隔をもって設けられ、これらを水平方向に回動可能に連結している。
【0056】
29は第1のドアパネル27に折畳み可能に設けられた第2のドアパネルで、該第2のドアパネル29は、ドアパネル27の幅方向の前側(先端側)に上,下の中間ヒンジ31を用いて取付けられ、第1のドアパネル27に対して前,後方向に回動可能となっている。また、第2のドアパネル29には、オペレータ等が把持する取手30と、左前ピラー15側の部位に取付け,取外し可能に係合され、係合時に折畳み式ドア26を閉ドア位置に保持すると共に取手30を引くことにより係合状態が解除されるラッチ機構(図示せず)とが設けられている。
【0057】
31はドアパネル27,29の間に設けられた例えば2個の中間ヒンジで、該各中間ヒンジ31は、上,下方向に間隔をもって配置され、2枚のドアパネル27,29を折畳み可能に連結している。
【0058】
そして、ドアパネル27,29は、図7、図8に示す如く、折畳み式ドア26が閉ドア位置にあるときに、互いにほぼ平面状に延びてキャブボックス14の乗降口24を閉塞している。この状態で、折畳み式ドア26を構成するドアパネル27,29と、キャブボックス14を構成する下部連結板25と、上部旋回体3を構成する左側面カバー9とは、図9に示すように、上,下方向に延び、垂直方向に対してほぼ同一の平面上に配置されている。これにより、折畳み式ドア26と左側面カバー9とは、段差なく連続して接続されている。
【0059】
このため、キャブボックス14の左前側面部14Dを車幅に納まる範囲内で最大に近い位置まで左側に寄せて配置することができる。また、例えば降雪時に折畳み式ドア26を閉じていたとしても、ドアパネル27,29の外側に雪が積もってドアが開き難くなるのを防止することができる。
【0060】
また、ドアパネル27,29は、図12に示す如く、折畳み式ドア26を開いたときに、中間ヒンジ31を中心として略L字状に屈曲することにより、キャブボックス14の左後側面部14Eに沿って略円弧状に折返される。そして、ドアパネル27,29は、後述するストライカ32,33とキャッチ34,35によってそれぞれ開ドア位置に保持された状態となる。これにより、例えばキャブ11を大きく形成したとしても、開ドア位置にあるドアが車幅の範囲から側方に食み出す寸法を小さく抑えることができる。
【0061】
32は2個の中間ヒンジ31間に位置して第1のドアパネル27の外側に突出して設けられた保持部としてのストライカを示している。このストライカ32は、第1のドアパネル27の回動支点となるドアヒンジ28から前側に離間して配置され、図5に示す如く、例えば略U字状の金具として形成されている。そして、ストライカ32は、折畳み式ドア26を開いたときに、キャブボックス14の左後側面部14Eに設けられた後述のキャッチ34に取付け,取外し可能に係止され、このキャッチ34と協働して第1のドアパネル27を開ドア位置に保持している。
【0062】
また、33は取手30の前側に位置して第2のドアパネル29に突設された保持部としての他のストライカで、該ストライカ33は、第2のドアパネル29の回動支点となる中間ヒンジ31から前側に離間して配置されている。このストライカ33もストライカ32と同様に、他のキャッチ35に取付け,取外し可能に係止されることにより、キャッチ35と協働して第2のドアパネル29を開ドア位置に保持する構成となっている。
【0063】
34,35はキャブボックス14の左後側面部14Eに設けられた係止部としての例えば2個のキャッチで、これらのキャッチ34,35は、各ストライカ32,33に対応する位置に取付けられ、左後側面部14Eに前,後方向に間隔をもって配置されている。
【0064】
ここで、キャッチ34は、第1のドアパネル27に設けられたストライカ32に対応するようにキャブボックス14の左後側面部14Eの前側に配置されている。また、キャッチ34は、図13に示す如く、キャブボックス14に固定された固定部34Aと、該固定部34Aに変位可能に支持され、ストライカ32が係止されまたは離脱する略U字状の爪部34Bと、ストライカ32が係止された爪部34Bを一定の位置に保持する保持ばね(図示せず)とにより構成されている。
【0065】
そして、第1のドアパネル27を開ドア位置まで開いたときには、このドアパネル27に設けられたストライカ32によって爪部34Bを固定部34A側に押込むと、爪部34Bが変位してストライカ32が該爪部34Bの内側に係止された状態となる。そして、この係止状態は、保持ばねのばね力によって保持されるので、ドアパネル27を開ドア位置にロックすることができる。
【0066】
また、第1のドアパネル27を開ドア位置から閉じるときには、これを一定以上の力によってキャッチ34から離れる方向に引くと、爪部34Bが保持ばねのばね力に抗してストライカ32を離脱させる方向に変位する。これにより、ストライカ32の係止状態を解除でき、ドアパネル27をロックされた状態から外すことができる。
【0067】
一方、他のキャッチ35は、第2のドアパネル29に設けられたストライカ33に対応するようにキャブボックス14の左後側面部14Eの後側に配置されている。また、キャッチ35は、キャッチ34と同様に、固定部35A、爪部35B、保持ばねからなり、ストライカ33をワンタッチで係止または離脱できる構成となっている。
【0068】
ここで、ストライカ32,33とキャッチ34,35とは、2枚のドアパネル27,29を別個にロックするものである。即ち、ストライカ32とキャッチ34により第1のドアパネル27をロックし、ストライカ33とキャッチ35により第2のドアパネル29をロックするようにしている。これにより、ストライカ32,33とキャッチ34,35とは、各ドアパネル27,29のがたつき等をそれぞれ個別に防止でき、後述のドアクッション36と協働して折畳み式ドア26を開ドア位置に安定的に保持することができる。
【0069】
36はキャブボックス14の左後側面部14Eまたは天面部14Fに設けられたドアクッション36を示している。このドアクッション36は、キャブボックス14に取付けられたブラケット36Aと、例えばゴム等の弾性材料により形成され、該ブラケット36Aに取付けられた弾性体36Bとにより構成されている。
【0070】
そして、弾性体36Bは、折畳み式ドア26が開ドア位置にあるときに、第2のドアパネル29に弾性的に当接している。これにより、ドアクッション36は、ドア全体を弾性的に支持し、ストライカ32,33、キャッチ34,35と協働して折畳み式ドア26のがたつき、振動等を緩衝すると共に、これを保護している。
【0071】
37はオペレータの指先等を保護するために折畳み式ドア26のドアパネル27,29の間に設けられた保護カバーで、該保護カバー37は、例えば弾性材料または可撓性材料等からなり、蛇腹状のシート、布、フィルム等として形成されている。
【0072】
そして、保護カバー37は、折畳み式ドア26の2つに折畳まれる部位(ドアパネル27,29)の間を上,下方向のほぼ全長にわたって覆うと共に、ドアの幅方向に伸縮可能となっている。これにより、保護カバー37は、折畳み式ドア26を開,閉して2枚のドアパネル27,29が中間ヒンジ31により折曲げられたときに、該各ドアパネル27,29の間にオペレータの指先等が挟まれるのを防止している。
【0073】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0074】
まず、オペレータがキャブ11内の運転席13に着座し、折畳み式ドア26を閉じたときには、図9に示す如く、折畳み式ドア26と上部旋回体3の外装カバーを構成する左側面カバー9とが垂直方向に対してほぼ同一面上に配設される。これにより、キャブボックス14の左前側面部14Dは旋回フレーム5の左側面にほぼ揃えて配置できるので、キャブボックス14を車幅に納まる範囲内で十分に大きく形成でき、オペレータの運転環境を向上させることができる。
【0075】
そして、キャブ11内の運転席13に着座したオペレータは、操作レバー等を操作することにより、車両を走行させたり、上部旋回体3を旋回させると共に、作業装置4を作動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0076】
ここで、油圧ショベル1は、例えば急斜面等で無理な姿勢のまま走行したり、作業したときには転倒する虞があり、転倒した場合にはキャブ11に対して大きな荷重が作用する。しかし、本実施の形態によるキャブ11は、キャブボックス14の左後ピラー19が運転席13の後方位置に配設されているから、左後ピラー19は、キャブ11に大きな荷重が作用した場合でも、運転席13の周囲でキャブボックス14が大きく変形するのを防止でき、運転席13に着座したオペレータを保護することができる。
【0077】
また、左後ピラー19を運転席13の後方位置に配設したことにより、運転席13に着座したオペレータが首を振って後側を振向いても、後方位置の左後ピラー19は視界に入らず邪魔にならないから、オペレータに広い後方視界によって効率よく作業を行なうことができる。
【0078】
また、例えばドア26を開いた状態で作業を行う場合には、オペレータは、折畳み式ドア26を開き、これをキャブ11の左後側面部14Eに沿った開ドア位置まで後側に回動させた後に、ドア側のストライカ32,33をキャッチ34,35にそれぞれ押付ける。これにより、オペレータは、各ストライカ32,33をキャッチ34,35にそれぞれワンタッチで係止させることができ、このような簡単な動作によって折畳み式ドア26を開ドア位置にロックすることができる。
【0079】
そして、この状態では、折畳み式ドア26を円弧状の左後側面部14Eとエンジン左カバー8に沿ってコンパクトに折畳むことができるので、オペレータは、開いたドア26の位置や突出状態等を必要以上に気にすることなく、車体の走行、旋回動作を円滑に行うことができる。
【0080】
このとき、開いた状態の折畳み式ドア26には、走行時、作業時に振動、衝撃等の外力が加わり易い。しかし、折畳み式ドア26を構成する第1のドアパネル27はストライカ32とキャッチ34とにより開ドア位置に保持され、ドアパネル27はストライカ33とキャッチ35により開ドア位置に保持されている。また、折畳み式ドア26はドアクッション36によって弾性的に支持されている。これにより、折畳み式ドア26を開いたときには、2枚のドアパネル27,29は個別に保持しているから、ドアパネル27,29のがたつき等が生じてヒンジ28,31が劣化したり、騒音が発生するのを防止することができる。
【0081】
また、折畳み式ドア26を閉じるときには、ドアパネル27,29をキャブボックス14から離れる方向に引くことにより、各ストライカ32,33をキャッチ34,35から簡単に引抜くことができ、ドアをスムーズに閉じることができる。
【0082】
かくして、第1の実施の形態によれば、折畳み式ドア26は2枚のドアパネル27,29によって形成し、これらのドアパネル27,29にはストライカ32,33を設け、キャブボックス14の左後側面部14Eにはストライカ32,33に対応する位置にキャッチ34,35を設ける構成としている。
【0083】
従って、折畳み式ドア26は、開いたときにキャブボックス14の左後側面部14Eに沿って折返すことができる。これにより、キャブ11を大きく形成したとしても、例えば開いた折畳み式ドア26が車幅の範囲内に納まるように配置したり、折畳み式ドア26が下部走行体2の車幅の範囲から側方に食み出す寸法を小さく抑えることができる。
【0084】
特に、第1の実施の形態では、キャブボックス14の左後側面部14Eを円弧状に形成しているので、開いたドアを左後側面部14Eに沿って略円弧状に折返すことができ、ドア全体を開ドア位置にコンパクトに配置、格納することができる。
【0085】
そして、この開ドア位置では、2枚のドアパネル27,29を2組のストライカ32,33とキャッチ34,35によってそれぞれ開ドア位置に安定的にロックすることができる。これにより、ドアパネル27,29のがたつき等によってドアが開ドア位置から外れたり、ヒンジ28,31の劣化や騒音等が発生するのを確実に防止でき、ドアの耐久性を高めることができる。
【0086】
従って、オペレータは、折畳み式ドア26を開いた状態でも、ドア26の位置やがたつき等を気にすることなく、車両の運転や各種の作業を円滑に行うことができ、例えば狭い作業現場等でも、作業を効率よく行うことができる。
【0087】
また、ストライカ32とキャッチ34により第1のドアパネル27をロックし、ストライカ33とキャッチ35により第2のドアパネル29をロックする構成としているから、ストライカ32,33とキャッチ34,35は、キャブボックス14に対する第1のドアパネル27のがたつき、第1のドアパネル27に対する第2のドアパネル29のがたつきを個別に防止でき、折畳み式ドア26を開ドア位置により一層安定的に保持することができる。
【0088】
また、折畳み式ドア26を用いてドアの食み出しを抑えることにより、例えばキャブボックス14の左前側面部14D、左後側面部14E等を車幅の範囲内で左側に寄せて配置することができる。これにより、キャブ11内のスペースを十分に確保でき、オペレータの運転環境を向上させることができる。
【0089】
一方、折畳み式ドア26を閉じた状態においては、折畳み式ドア26を構成するドアパネル27,29と、キャブボックス14の下部連結板25と、上部旋回体3を構成する左側面カバー9とを垂直方向に対してほぼ同一面上に配設したので、これら3箇所の部位を段差なくほぼ連続した平面として接続することができる。
【0090】
これにより、キャブボックス14の左前側面部14Dを車幅に納まる範囲内でほぼ最大に近い位置まで左側に寄せて配置でき、キャブ11内のスペースを車幅の範囲内で十分に確保することができる。従って、車体の走行、旋回動作等を妨げることなく、オペレータの運転環境を向上させることができる。
【0091】
また、折畳み式ドア26と上部旋回体3の左側面カバー9とは垂直方向にほぼ同一面をなし、この折畳み式ドア26の下側には段差がない。このため、例えば降雪時に折畳み式ドア26を閉じていたとしても、ドアパネル27,29の外側に雪が積もってドアが開き難くなるのを防止でき、ドアの開,閉操作を常に円滑に行うことができる。
【0092】
また、ドアパネル27,29の間には、伸縮性を有する保護カバー37を設けたので、これらの間を保護カバー37によって覆うことができ、この状態で保護カバー37をドアの折畳み動作に追従して伸縮させることができる。そして、オペレータが折畳み式ドア26を開閉するときには、ドアパネル27,29の間に指先等が挟まれるのを保護カバー37によって防止でき、ドアの取扱いを容易に行うことができる。
【0093】
また、キャブボックス14の左後側面部14Eは、センタピラー18から左後ピラー19に向けて円弧状の湾曲面として形成している。このため、前述したように、上部旋回体3がほぼ円形状に形成された後方小旋回機と呼ばれる小型の油圧ショベル1にキャブ11を搭載した場合にも、左後側面部14Eを旋回半径内に収めることができ、旋回半径を小さくして作業性能を向上することができる。しかも、キャブボックス14の左後側面部14Eを湾曲面として形成することにより、平坦面に比較して剛性を高めることができるから、運転席13の近傍でキャブボックス14の強度をより一層高めることができる。
【0094】
さらに、キャブボックス14の左後ピラー19を運転席13の後方位置に配設する構成としているから、運転席13を囲むキャブボックス14のうち、運転席13に着座したオペレータに近い部分を左後ピラー19により効率よく強化することができる。従って、例えば油圧ショベル1が転倒してキャブボックス14に大きな荷重が作用した場合でも、キャブボックス14の変形をオペレータの位置で小さく抑えることができる。
【0095】
しかも、キャブボックス14の左後ピラー19は、運転席13に着座したオペレータの後方視界を損なわない範囲で当該運転席13の後方位置に配設しているから、オペレータが後側を振向いたときの視野から左後ピラー19を外すことができ、後方視界を広げて作業性を向上することができる。
【0096】
また、キャブボックス14には、運転席13の左横近傍にセンタピラー18を配設しているから、左後ピラー19と一緒にキャブボックス14のうち運転席13に着座したオペレータに近い部分を効率よく強化することができる。
【0097】
次に、図14ないし図16は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、折畳み式ドアを構成する2枚のドアパネル間には、折畳み式ドアを閉じたときに2枚のドアパネルの間に挟まれて該各ドアパネル間をシールするシール部材を設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0098】
図14において、41は折畳み式ドア26の2枚のドアパネル27,29間に位置して保護カバー37と別個に設けられたシール部材を示している。このシール部材41は、図14に示す折畳み式ドア26の閉ドア位置で各ドアパネル27,29間に挟まれることにより、該各ドアパネル27,29間を通じて雨水、塵埃等がキャブ11内に侵入するのを防止するものである。
【0099】
また、シール部材41は、図15に示す如く、第1のドアパネル27の前端面27Aに上,下方向に延びて設けられ、例えば弾性材料等からなる断面略U字状の第1のシール42と、該第1のシール42に対面するように第2のドアパネル29の後端面29Aに上,下方向に延びて設けられた第2のシール43とにより構成されている。ここで、第1のシール42は、第1のドアパネル27の前端面27Aに接着、嵌着、ねじ止め等の手段を用いて固着されている。また、第2のシール43は、容易に変形して第1のシール42に密着できるように、弾性材料等を用いて内部が中空なチューブ状に形成され、第2のドアパネル29の後端面29Aに接着、嵌着、ねじ止め等の手段を用いて固着されている。
【0100】
ここで、図14、図15に示す如く、折畳み式ドア26が閉じて閉ドア位置に配置されると、ドアパネル27の前端面27Aとドアパネル29の後端面29Aとが接近する。これにより、シール部材41は、各ドアパネル27,29間に挟まれるから、第1のシール42と第2のシール43とが当接して密着することによりシール性を発揮することができる。このように、第1のシール42と第2のシール43とが密着したシール状態では、各ドアパネル27,29間の隙間を遮断することができ、外部の雨水、塵埃がキャブ11内に侵入するのを防止することができる。一方、図16に示す如く、折畳み式ドア26が開いて開ドア位置に配置されると、シール部材41は、第1のシール42と第2のシール43とを離間させる。
【0101】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、2枚のドアパネル27,29間には、保護カバー37とは別個にシール部材41を設けているから、折畳み式ドア26を閉ドア位置に配置したときには、シール部材41により2枚のドアパネル27,29間をシールすることができる。これにより、外部の雨水、塵埃がキャブ11内に侵入するのを防止でき、作業環境を良好にすることができる。
【0102】
次に、図17ないし図19は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、シール部材を保護カバーの一部として設ける構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0103】
図17において、51は折畳み式ドア26のドアパネル27,29の間に設けられた本実施の形態による保護カバーを示している。この保護カバー51は、第1の実施の形態による保護カバー37と同様に、ドアパネル27,29の間にオペレータの指先等が挟まれるのを防止するもので、例えば弾性材料等を用いて形成されている。ここで、保護カバー51は、図18に示すように、前,後方向(幅方向)の両側が蛇腹部51Aとなり、該各蛇腹部51Aで挟まれた中間部位がシール部材としてのシール部51Bとなっている。
【0104】
ここで、保護カバー51の一部を構成するシール部51Bは、各ドアパネル27,29間に設けられている。詳しくは、シール部51Bは、保護カバー51の前,後方向のほぼ中間部位を各ドアパネル27,29間に突出するように略C字状に大きく膨らませることにより、上,下方向に延びるチューブ状に形成されている。
【0105】
また、図17、図18に示す如く、折畳み式ドア26が閉じて閉ドア位置に配置されると、第1のドアパネル27の前端面27Aと第2のドアパネル29の後端面29Aとが接近する。これにより、シール部51Bは、ドアパネル27の前端面27Aとドアパネル29の後端面29Aとの間に挟まれて該前端面27A、後端面29Aに当接することにより、これらに密着してシール性を発揮することができる。このように、シール部51Bを各ドアパネル27,29に密着させたシール状態では、該各ドアパネル27,29間の隙間を遮断することができ、外部の雨水、塵埃がキャブ11内に侵入するのを防止することができる。
【0106】
一方、図19に示す如く、折畳み式ドア26が開いて開ドア位置に配置されるときには、シール部51Bは、断面C字状の開口側を開くことにより各蛇腹部51Aと同様の機能を発揮することができる。
【0107】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第2の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、2枚のドアパネル27,29間には保護カバー51のシール部51Bを設けているから、折畳み式ドア26を閉ドア位置に配置したときには、シール部51Bにより2枚のドアパネル27,29間をシールすることができる。しかも、シール部51Bは、保護カバー51の一部として一体形成しているから、部品点数を削減でき、組立作業性等を向上することができる。
【0108】
なお、第1の実施の形態では、折畳み式ドア26に設けたストライカ32,33を略U字状の金具として形成し、キャブボックス14に設けたキャッチ34,35の略U字状の爪部34Bを各ストライカ32,33に係止させる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば先に述べた特開平1−198929号公報に記載されているように、ストライカは先端が大径部となった棒状体として形成し、キャッチはストライカの先端大径部に係止する爪部等から形成する構成としてもよい。この場合、折畳み式ドアを開いたときには、キャッチの爪部をストライカの先端大径部に周囲から係止することにより折畳み式ドアを開ドア位置に保持することができる。
【0109】
また、第2の実施の形態では、シール部材41は、第1のドアパネル27の前端面27Aに設けられた第1のシール42と、該第1のシール42に対面するように第2のドアパネル29の後端面29Aに設けられた第2のシール43とにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1のドアパネル27の前端面27Aにのみシール部材を設け、このシール部材を第2のドアパネル29の後端面29Aに押付けることによりシール機能を得る構成としてもよい。また、同様に第2のドアパネル29の後端面29Aにのみシール部材を設ける構成としてもよい。
【0110】
さらに、各実施の形態では、建設機械として小型の油圧ショベルを例に挙げて述べた。しかし、本発明はこれに限らず、例えば中型、大型の油圧ショベルやホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の第1の実施の形態に適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】図1に示す油圧ショベルの背面図である。
【図3】図1に示す油圧ショベルの右側面図である。
【図4】図1に示す油圧ショベルの平面図である。
【図5】図1に示す油圧ショベルを斜め後側からみた斜視図である。
【図6】キャブボックスを単体で示す斜視図である。
【図7】キャブを図1中の矢示VII−VII方向から拡大してみた横断面図である。
【図8】図7中の閉ドア位置の折畳みドア等を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図9】折畳み式ドアを閉じてキャブの左側面カバーと同一面上に配置した状態を図1中の矢示IX−IX方向から示す要部拡大断面図である。
【図10】キャブのドアを開いた状態を図5と同様位置からみた斜視図である。
【図11】油圧ショベルの車体をドアを開いた状態で示す平面図である。
【図12】キャブのドアを開いた状態を図7と同様位置からみた横断面図である。
【図13】折畳み式ドアを開いた状態を示す図12中の要部拡大断面図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態によるシール部材が設けられた折畳み式ドア等を図8と同様位置からみた要部拡大断面図である。
【図15】図14中のシール部材等を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図16】折畳み式ドアを開ドア位置に配置した状態を示す要部拡大断面図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態によるシール部を有する保護カバーが設けられた折畳み式ドア等を図8と同様位置からみた要部拡大断面図である。
【図18】図17中の保護カバー等を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図19】折畳み式ドアを開ドア位置に配置した状態を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0112】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
5 旋回フレーム(フレーム)
9 左側面カバー
11 キャブ
13 運転席
14 キャブボックス
14A 前面部
14B 右側面部
14C 後面部
14D 左前側面部
14E 左後側面部
15 左前ピラー
16 右前ピラー
17 右後ピラー
18 センタピラー(左中間ピラー)
19 左後ピラー
24 乗降口
26 折畳み式ドア
27 第1のドアパネル
29 第2のドアパネル
32,33 ストライカ(保持部)
34,35 キャッチ(係止部)
37,51 保護カバー
41 シール部材
51B シール部(シール部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体に旋回可能に搭載されフレーム上にキャブが設けられると共に該キャブの下側を側面カバーで覆ってなる上部旋回体とを備え、前記キャブは、左前、右前、左中間、左後、右後に位置して上,下方向に延びる5本のピラーが設けられると共に、該各ピラー間に前面、左前側面、左後側面、右側面、後面からなる5面が設けられた中空なキャブボックスと、該キャブボックスの左前ピラーと左中間ピラーとの間に開,閉可能に設けられたドアとにより構成してなる建設機械において、
前記ドアは、前記キャブボックスの左中間ピラーに回動可能に取付けられると共に折畳み可能な2枚のドアパネルからなる折畳み式ドアとして形成し、該折畳み式ドアと前記側面カバーとは垂直方向に対してほぼ同一面上に配設し、前記折畳み式ドアには開いたときに開ドア位置を保持するための2個の保持部を設け、前記キャブボックスの左後側面には、前記折畳み式ドアが前記開ドア位置となったときに前記各保持部をそれぞれ取付け,取外し可能に係止する2個の係止部を設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記キャブボックスの左後側面は、前記左中間ピラーから前記左後ピラーに向けて円弧状の湾曲面として形成し、前記折畳み式ドアを開いたときに前記キャブボックスの左後側面に沿って折返した状態で保持する構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記折畳み式ドアには、2枚のドアパネルの間を伸縮可能に覆う保護カバーを設けてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記2個の保持部は、前記折畳み式ドアを構成する2枚のドアパネルにそれぞれ個別に取付け、前記2個の係止部は、前記折畳み式ドアが開ドア位置となったときに前記2個の保持部を別々に固定する位置に設ける構成としてなる請求項1,2または3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記キャブを構成する左後ピラーは、前記キャブ内に設けられた運転席の後方位置に当該運転席に着座したオペレータの後方視界を損なわない範囲で配設する構成としてなる請求項1,2,3または4に記載の建設機械。
【請求項6】
前記折畳み式ドアを構成する2枚のドアパネル間には、前記折畳み式ドアを閉じたときに2枚のドアパネルの間に挟まれて該各ドアパネル間をシールするシール部材を設ける構成としてなる請求項1,2,3,4または5に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−21753(P2006−21753A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154222(P2005−154222)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【出願人】(595154236)株式会社タカハシワークス (2)
【Fターム(参考)】