説明

建設機械

床板(15)の前側を床板支持機構(21)を介して旋回フレーム(5)の前側に傾転可能に支持し、床板(15)と旋回フレーム(5)との間には、床板(15)を傾転させる傾転機構(30)を設ける。また、傾転機構(30)は、旋回フレーム(5)側に揺動可能に取付けられたガイドレール(33)と、ガイドレール(33)に回転可能に取付けられたねじ軸(34)と、ねじ軸(34)に螺着した状態で床板(15)に取付けられた移動部材(35)とにより構成している。従って、傾転機構(30)は、ねじ軸(34)を回転駆動して移動部材(35)を移動することにより床板(15)とキャブ(29)を傾転させることができる。また、傾転機構(30)は、床板(15)とキャブ(29)を傾転させた位置に固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の建設建設に関し、特に、フレームに対して床板が傾転可能となった建設機械に関する。
【背景技術】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
また、上部旋回体は、旋回フレームと、該旋回フレームの後側に搭載されたエンジンと、該エンジンの後側に位置して前記旋回フレームの後端部に取付けられたカウンタウエイトと、前記エンジンの前側に位置して前記旋回フレーム上に設けられた平板状の床板と、該床板に設けられたオペレータが着座する運転席と、該運転席の上方を覆うキャノピ、キャブ等の建屋とにより大略構成されている。
ここで、油圧ショベルには、狭い作業現場での作業に適したミニショベルと呼ばれる小型の油圧ショベルがあり、この小型の油圧ショベルでは、コントロールバルブ、旋回モータ等の機器を設置するスペースが少ないため、これらを床板の下側に配設している。
また、床板は、下側に設置したコントロールバルブ、旋回モータ等の機器に対してメンテナンス作業を行なうことができるように、前側位置を支点として後側を持上げて傾転可能な構成としている。
詳しくは、旋回フレームの前側位置と床板の前側位置との間には、当該床板の前側位置を支点として運転席等と一緒に床板を前,後方向に傾転可能に支持する床板支持機構を設けている。また、床板の下側には、旋回フレームとの間にガスダンパを設け、該ガスダンパの付勢力によって床板を床板支持機構を支点として前方に傾転させる構成としている(例えば、特開2000−72048号公報)。
ところで、上述した従来技術による油圧ショベルでは、床板の下側に設けたガスダンパの付勢力によって床板を傾転させる構成としている。しかし、床板上には運転席、キャブ、レバー、ペダル、バルブ、表示装置、空調装置等が搭載されているから、該床板には大きな重量が作用している。このため、従来技術では、重量の大きな床板を持上げるためにガスダンパを例えば2本〜4本設けている。
しかし、2本〜4本のガスダンパを床板の下側に設けた場合には、せっかく床板を傾転させても、ガスダンパが邪魔になって作業箇所に手が届きにくく、メンテナンス作業の作業性が悪いという問題がある。
また、ガスダンパは床板の下側に収まる大きさに規定されるため、ストローク寸法を大きくすることができず、床板を大きく傾転させることができない。また、床板を大きく傾転させようとしてガスダンパの位置を傾転支点に近づけると、床板を傾転させるためにより大きな力が必要になるから、ガスダンパが大型化したり、取付本数が増大してしまうという問題がある。
一方、ガスダンパは、床板を持上げようとする方向に常時付勢力を作用させているから、床板を傾転させるためにロックを解除すると、ガスダンパは縮小状態から最伸長状態まで一気に伸長してしまう。このため、床板を傾転させようとしてロックを解除したときに、床板が急に持上がってしまう。一方、ガスダンパの付勢力に抗して床板を押下げるのに大きな力が必要になってしまい、取扱い性が悪いという問題がある。
さらに、ガスダンパは、シールが劣化してガスが漏れた場合には、床板を傾転状態で保持できなくなる虞がある。このため、ガスダンパからガスが漏れても床板を持上げた状態に保持できるように、旋回フレームと床板との間に別途ストッパを設けておく必要があるという問題がある。
【発明の開示】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、床板を傾転させたときにフレームとの間に大きなスペースを確保することにより、エンジン、油圧機器等のメンテナンス作業を容易に行なうことができるようにした建設機械を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、床板を安全かつ容易に傾転させることができ、床板を傾転させるときの取扱い性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
本発明による建設機械は、前側に作業装置が設けられたフレームと、該フレームの後側に搭載されたエンジンと、該エンジンの前側に位置して前記フレーム上に設けられた床板と、該床板に設けられたオペレータが着座する運転席とを備えている。
そして、上述した課題を解決するために、本発明が採用する構成の特徴は、フレームの前側位置と床板の前側位置との間には、当該床板の前側位置を支点として運転席と一緒に床板を傾転可能に支持する床板支持機構を設け、前記床板支持機構よりも後側に位置してフレームと床板との間には、フレーム側を揺動支点とし、床板側を移動支点として、当該移動支点が任意の位置まで変位することにより床板を移動支点の変位量に応じて前側に傾転させる傾転機構を設ける構成としたことにある。
このように構成したことにより、床板がフレーム上に置かれた運転位置では、傾転機構の移動支点は揺動支点に接近した位置に配置されている。また、傾転機構は、移動支点を揺動支点から離間する方向に変位させると、移動支点の変位量に応じて床板を前側に傾転させる。このときに、移動支点の変位は、任意の位置で止めることができるから、床板の傾転量を自由に設定することができる。この結果、エンジン等を点検、整備するときに、その作業内容に応じて床板を傾転させることができるから、作業効率を向上することができる。
本発明によると、傾転機構は床板の側面位置に前,後方向に伸長して設け、外部から操作することによって移動支点を変位させる構成とするのが好ましい。これにより、傾転機構は外部から操作して移動支点を変位させることができるから、床板の傾転作業を安全に、かつ簡単に行なうことができる。
本発明によると、前記傾転機構は、基端側が前記フレームに揺動可能に支持されたねじ軸と、前記床板と該ねじ軸との間に設けられ該ねじ軸の回転に応じて移動する移動部材とを備え、前記ねじ軸の基端側を揺動支点とし、前記移動部材を移動支点として構成してもよい。
このように構成したことにより、傾転機構は、フレームに揺動可能に支持されたねじ軸を回転することにより、該ねじ軸に螺合した移動部材を当該ねじ軸に沿って先端側に移動させることができる。
本発明によると、傾転機構は、基端側がフレーム側に上,下方向に揺動可能に取付けられ先端側が自由端となって前側に延びたガイドレールと、該ガイドレールに沿って延び該ガイドレールの長さ方向に位置決めされた状態で回転可能に設けられたねじ軸と、床板側に回動可能に取付けられ該ねじ軸に螺合した状態で前記ガイドレールに沿って前,後方向に移動する移動部材とにより構成してもよい。
このように構成したことにより、傾転機構は、フレーム側のガイドレールに設けられたねじ軸を回転することにより、該ねじ軸に螺合した移動部材をガイドレールに沿って先端側に移動させることができる。このときにガイドレールはフレームに対して床板を傾転状態で支持する支柱として機能することができる。
そして、床板側に取付けられた移動部材が、ねじ軸の先端側に移動した分だけ、前側の床板支持機構を支点として床板を前方に傾転させ、該床板の後側を持上げることができる。このように床板を傾転させた状態では、フレームと床板との間にガスダンパ等が存在せず、フレームと床板との間を作業スペースとして大きく開放することができる。
この結果、作業者はフレームと床板との間の大きな作業スペースを利用し、作業箇所に簡単に手を差し入れることができるから、効率よくメンテナンス作業を行なうことができ、作業性、安全性等を向上することができる。
また、傾転機構は、ねじ軸と移動部材との螺合を利用して床板を傾転させているから、移動部材の移動ストロークを大きくすることができる。これにより、床板を大きく傾転させることができ、フレームと床板との間の作業スペースを大きく開放することができる。
一方、ねじ軸と移動部材との螺合を利用している傾転機構は、ガスダンパのように常時付勢力を発生するものではないから、床板が急に傾転することなく、また押下げるのに大きな力を必要としない。従って、床板の傾転操作を簡単かつ安全に行なうことができる。
さらに、ねじ軸と移動部材との螺合によって床板を傾転しているから、床板を傾転させた位置に固定することができ、フレームと床板との間のストッパを省略して、作業性を向上することができる。また、床板の傾転量(角度)を任意に設定することができ、効率のよい作業を行なうことができる。
この場合、ガイドレールは、フレーム側に揺動可能に取付けられる基端取付部と、該基端取付部から平行に延びる2本のレール部と、該各レール部の先端を連結する先端連結部とにより長方形状の枠体として形成し、ねじ軸は、前記各レール部間を延び、基端側を自由端とすると共に先端側を前記先端連結部に取付け、移動部材は、前記ガイドレールの各レール部間に位置して前記ねじ軸に螺合して設け、移動部材は、ねじ軸の先端側を回転操作することにより前記ガイドレールに沿って変位する構成とするのが好ましい。
このように構成したことにより、ねじ軸の先端側を回転駆動することにより、該ねじ軸に螺合した移動部材を、ガイドレールの各レール部間に沿って移動することができ、この移動部材の移動量(変位量)に応じて床板を傾転させることができる。また、ねじ軸は、先端側だけをガイドレールの先端連結部に取付けているから、例えばねじ軸に多少の歪が生じた状態で該ねじ軸を回転させた場合でも、自由端となった基端側が振れることで歪による動作抵抗を低減することができる。
また、本発明によると、ガイドレールは、フレーム側に揺動可能に取付けられる基端取付部と、該基端取付部から平行に延びる2本のレール部と、該各レール部の先端を連結する先端連結部とにより長方形状の枠体として形成し、ねじ軸は、前記各レール部間を延び、基端側を前記基端取付部に取付けると共に先端側を前記先端連結部に取付け、移動部材は、前記ガイドレールの各レール部間に位置して前記ねじ軸に螺合して設け、移動部材は、ねじ軸の先端側を回転操作することにより前記ガイドレールに沿って変位する構成としてもよい。
このように構成したことにより、ねじ軸の先端側を回転駆動することにより、該ねじ軸に螺合した移動部材を、ガイドレールの各レール部間に沿って移動することができ、この移動部材の移動量(変位量)に応じて床板を傾転させることができる。また、ねじ軸は、ガイドレールに対して両持ち構造で取付けているから、ねじ軸により移動部材を移動するときの動作性、ねじ軸等の耐久性を向上することができる。
本発明によると、フレームにはエンジンの近傍に位置して床板の後側位置を支持する支持部材を設け、前記支持部材には傾転機構のガイドレールを揺動可能に取付け、床板の側面位置には傾転機構の移動部材を取付ける構成としてもよい。
このように構成したことにより、傾転機構のガイドレールは支持部材に取付け、傾転機構の移動部材は床板の側面位置に取付けることができ、既存の部材を利用して傾転機構を設置することができる。また、移動部材は床板に取付けているから、床板上にキャブを取付ける場合とキャノピを取付ける場合の両方に対応することができる。
この場合、支持部材は、エンジンの上側で左,右方向に延びる支持ベースと、該支持ベースから下向きに延びてフレームに取付けられる複数本の支柱とにより形成し、前記各支柱のうち床板の側面位置に配置した支柱には、前向き傾斜する傾斜面部を設け、前記支柱の傾斜面部には、傾転機構の基端側を支持する取付ブラケットを設ける構成とするのが好ましい。
このように構成したことにより、傾転機構は、床板を傾転させたときに先端側が斜め上側を向くことになる。ここで、傾転機構の基端側は前向き傾斜する支柱の傾斜面部に設けている。これにより、床板を傾転させたときに作用する大きな荷重を傾斜面部で確実に受承することができる。
本発明によると、床板は、運転席に着座したオペレータの足乗せ場となる足乗せ板と、該足乗せ板の後側から立上りエンジンが入り込むように該エンジンの上側を後方に延びた隔壁板と、前記足乗せ板の側部位置から立上った側面板とを含んで形成し、傾転機構の移動部材は前記床板の側面板に取付ける構成としてもよい。これにより、床板に形成した側面板を利用して傾転機構の移動部材を取付けることができる。
また、本発明によると、ねじ軸の先端側には工具連結部を設け、該工具連結部にねじ締め用工具を連結することによりねじ軸を回転駆動する構成としてもよい。これにより、ねじ軸の先端側に設けられた工具連結部に、例えばインパクトレンチ等のねじ締め用工具を連結して回転駆動することにより、ねじ軸を回転して床板を簡単に傾転させることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施の形態に適用されるキャブ仕様の油圧ショベルを示す正面図である。
図2は、図1中の油圧ショベルの平面図である。
図3は、上部旋回体を、床板、外装カバー等を取外した状態で示す平面図である。
図4は、旋回フレームを、支持部材を取付けた状態で示す正面図である。
図5は、支持部材を単体で示す外観斜視図である。
図6は、上部旋回体を、外装カバーの一部、エンジン、タンク等を取外した状態で右前側からみた外観斜視図である。
図7は、上部旋回体を、外装カバー、エンジン、タンク等を取外した状態で示す正面図である。
図8は、上部旋回体を、外装カバー、エンジン、タンク等を取外した状態で示す右側面図である。
図9は、床板、床板支持機構、台座部材を、分解した状態で左前側からみた分解斜視図である。
図10は、傾転機構とその周辺を拡大して示す外観斜視図である。
図11は、傾転機構とその周辺を分解した状態で示す分解斜視図である。
図12は、傾転機構の移動部材、スリーブ、ボルト等を、拡大して示す分解斜視図である。
図13は、上部旋回体の床板、キャブ等を、傾転機構によってチルトアップした状態を図6と同様位置からみた外観斜視図である。
図14は、上部旋回体の床板、キャブ等を、傾転機構によってチルトアップした状態を図7と同様位置からみた正面図である。
図15は、本発明の第2の実施の形態による油圧ショベルの上部旋回体を、外装カバー、エンジン、タンク等を取外した状態で示す正面図である。
図16は、図15中の傾転機構とその周辺を拡大して示す外観斜視図である。
図17は、傾転機構とその周辺を分解した状態で示す分解斜視図である。
図18は、傾転機構の移動部材、スリーブ、ボルト等を、拡大して示す分解斜視図である。
図19は、本発明の第1の変形例による傾転機構の周辺を示す分解斜視図である。
図20は、本発明の第2の変形例によるキャノピ仕様の油圧ショベルを示す正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として小型の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
まず、図1ないし図14は本発明の第1の実施の形態に適用される油圧ショベルを示している。
図1において、1は建設機械としてのキャブ仕様の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより構成されている。そして、上部旋回体3の前側には、土砂の掘削作業等を行なうスイング式の作業装置4が揺動および俯仰動可能に設けられている。
また、上部旋回体3は、下部走行体2の車幅内でほぼ旋回できるように、上方からみて略円形状に形成されている(図2参照)。そして、上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、エンジン6、床板15、床板支持機構21、運転席26、キャブ29、傾転機構30等により大略構成されている。
5は上部旋回体3のベースを構成する旋回フレームを示している。ここで、該旋回フレーム5は、図3、図4に示す如く、左,右方向の中間部を前,後方向に延びた平板状の底板5Aと、該底板5Aの上面側に左,右に離間して立設された一対の縦板5B,5Bと、該各縦板5Bの前端部に設けられ、作業装置4を支持する支持ブラケット5Cと、前側に位置して左,右方向に延びた前梁5Dと、前記各縦板5Bの後部位置で左,右方向に延びた中梁5Eと、前記前梁5Dと中梁5Eとの間に設けられたアンダカバー5F等により大略構成されている。また、支持ブラケット5Cの後側近傍には、後述する床板支持機構21を取付けるための取付座5Gが設けられている。
6は旋回フレーム5の後側に搭載されたエンジン(図3参照)で、該エンジン6は、左,右方向に延在する横置き状態に配置されている。ここで、エンジン6は、後述する床板15の隔壁板17の下側に入り込むように配設されている。これにより、エンジン6、カウンタウエイト13等は、前側に詰めて配設することができるから、設置スペースを有効的に使用して上部旋回体3を小型化することができる。また、エンジン6の左側には、該エンジン6によって駆動される油圧ポンプ7が設けられ、エンジン6の右側にはラジエータ、オイルクーラ等の熱交換器8が配設されている。
また、9は熱交換器8の前側に位置して旋回フレーム5の右側に設けられた作動油タンク、10は該作動油タンク9の前側に設けられた燃料タンクを示している。また、11は旋回フレーム5のアンダカバー5F上に設けられたコントロールバルブで、該コントロールバルブ11は、油圧ポンプ7、作動油タンク9等と接続されている。さらに、旋回フレーム5の中央部には、上部旋回体3を旋回させる旋回モータ、旋回動作を許しつつ圧油を下部走行体2側に供給するセンタジョイント(いずれも図示せず)等が設けられている。また、燃料タンク10の上側にはバッテリ(図示せず)が配設されている。
12はエンジン6を跨ぐように旋回フレーム5の後側に設けられた支持部材で、該支持部材12は旋回フレーム5の一部を構成している。また、支持部材12は、図5に示すように、エンジン6の上方に位置して左,右方向に延び、後述する床板15の隔壁板17に設けられた建屋取付板18が取付けられる支持ベース12Aと、該支持ベース12Aをエンジン6の上方に支持する複数本、例えば4本の支柱12B,12C,12D,12Eとにより大略構成されている。
また、各支柱12B,12C,12D,12Eのうち左前支柱12Bは、支持ベース12Aの左端部から前方下向きに延び、左後支柱12Cは支持ベース12Aの左端部から下向きに延びている。また、右前支柱12Dは支持ベース12Aの右端部から前方下向きに延び、右後支柱12Eは支持ベース12Aの右端部から下向きに延びている。そして、各支柱12B,12C,12D,12Eの下端部は、それぞれ旋回フレーム5に取付けられている。
ここで、右前支柱12Dは、後述の床板15よりも右側に位置して設けられ、熱交換器8を塞がないように略L字状に屈曲している。また、右前支柱12Dの長さ方向中間部は、前向きに傾斜する傾斜面部12D1となり、該傾斜面部12D1には、図6、図7に示すように後述する傾転機構30を構成するガイドレール33が取付ブラケット31を介して取付けられている。
13はエンジン6の後側に位置して旋回フレーム5の後端部に取付けられたカウンタウエイト(図1、図2参照)で、該カウンタウエイト13は、作業装置4との重量バランスをとるもので、左,右方向に円弧状に延びる凸湾曲形状をなしている。
ここで、エンジン6は、床板15の隔壁板17の下側に入り込むように前側に詰めて配設しているので、カウンタウエイト13は、エンジン6に近付けて前側寄りに配置することができる。これにより、カウンタウエイト13は、下部走行体2の車幅に対応する旋回半径内に収めることができる。
14は後述するキャブ29の周囲に設けられた外装カバーで、該外装カバー14は、旋回フレーム5に配設されたエンジン6、油圧ポンプ7、熱交換器8、作動油タンク9、燃料タンク10等をカウンタウエイト13等と共に覆うものである。
そして、外装カバー14は、図1、図2、図6等に示すように、カウンタウエイト13の左端側から前方に向けて滑らかに連続する左側面カバー14Aと、カウンタウエイト13の右端側から前方に向けて滑らかに連続する右側面カバー14Bと、カウンタウエイト13の中間部に位置して上,下方向に開閉可能に設けられたエンジンカバー14Cと、後述するキャブ29の右側に位置して各タンク9,10を覆うように開閉可能に設けられたタンクカバー14Dとによって大略構成されている。また、タンクカバー14Dは、後述の傾転機構30を取付けるために、キャブ29との間に間隔をもって配設されている。
次に、15は旋回フレーム5上の左側寄りに設けられた床板で、該床板15は、図8、図9に示す如く構成されている。即ち、床板15は、後述の運転席26に着座したオペレータの足乗せ場となる足乗せ板16と、該足乗せ板16の後側に設けられた隔壁板17と、該隔壁板17の上端部に設けられた建屋取付板18と、前記足乗せ板16の右側位置から立上った側面板19とにより大略構成されている。
ここで、足乗せ板16の前側部分は、後述の走行操作レバー・ペダル28等を取付けるためのレバー・ペダル取付部16Aとなり、該レバー・ペダル取付部16Aの前側には支持機構取付板16Bが左,右方向に延びて取付けられている。そして、この支持機構取付板16Bには後述の床板支持機構21を構成する取付片23が設けられている。
また、床板15の後部側を構成する隔壁板17は、足乗せ板16の後側から立上がった後にエンジン6の上側を後方に延びて設けられ、これにより、エンジン6は、隔壁板17の下側に入り込むように配設することができる。詳しくは、隔壁板17は、図9に示すように、足乗せ板16の後端から上方に立上った立上り壁17Aと、該立上り壁17Aの上端から後方に延びた運転席支持台17Bと、該運転席支持台17Bの後端から上側に延びた背板部17Cと、前記運転席支持台17B、背板部17Cの右側に位置する計器類取付部17Dとにより形成されている。そして、運転席支持台17Bには、後述の運転席26が搭載され、計器類取付部17Dにはスイッチ、モニタ等の計器類(図示せず)が取付けられる。
また、建屋取付板18は左,右方向に延びて設けられ、該建屋取付板18には左,右方向に離間して複数個の取付穴18Aが設けられている。ここで、各取付穴18Aは、建屋を構成する後述のキャブ29後部を取付けるときに、ボルト(図示せず)が挿通されるものである。また、各取付穴18Aは、建屋取付板18を支持部材12の支持ベース12Aに取付けるときにボルトが挿通されるもので、このボルトを取外すことにより床板15をチルトアップ可能な状態にすることができる。
さらに、側面板19は、足乗せ板16の右端後部から隔壁板17の計器類取付部17Dに沿って立上がった略長方形状の板体として形成されている。また、側面板19は、後述の傾転機構30によって床板15を運転席26、キャブ29等と一緒に傾転させるときの接続部を構成している。さらに、側面板19は、大きな重量を支持できるように十分な強度をもって足乗せ板16、計器類取付部17Dに固着されている。そして、側面板19の上部側には、図10、図11等に示すように後述のスリーブ20が取付けられている。
20は側面板19の上部側に設けられたスリーブで、該スリーブ20は、図12に示すように、後述する傾転機構30の移動部材35が回動可能に挿着される円筒体として形成されている。そして、スリーブ20は、図10、図11に示す如く、その軸線が左,右方向となるように側面板19に取付けられている。
21は旋回フレーム5の前側位置と床板15の足乗せ板16の前側位置との間に設けられた床板支持機構を示している。この床板支持機構21は、図8、図9に示すように、旋回フレーム5の前側位置に設けられた前梁5D、取付座5Gに取付けられ、内部に防振ゴム22Aが嵌合された2個の取付ブラケット22と、該各取付ブラケット22に対応するように足乗せ板16の支持機構取付板16Bの下側に設けられた左,右2枚ずつの取付片23と、前記防振ゴム22Aを介して前記取付ブラケット22と取付片23とを傾転可能に連結する連結ピン24とにより大略構成されている。
そして、床板支持機構21は、左,右方向を中心軸線(回転軸線)として床板15の前側位置を旋回フレーム5の前側位置に傾転可能に支持するものである。これにより、床板支持機構21は、図12、図13に示すように、その中心軸線を支点として床板15を前方(矢示A方向)に向けて傾転させ、該床板15の後側を持上げることができる。また、床板15の後側を後方(矢示B方向)に向けて傾転させることもできる。さらに、床板支持機構21は、取付ブラケット22内に設けた防振ゴム22Aにより、旋回フレーム5に対し床板15の前側を防振状態に支持することができる。
また、25は床板15を構成する隔壁板17の立上り壁17A前面に取付けられた台座部材で、該台座部材25は、隔壁板17の運転席支持台17Bと一緒に後述の運転席26を支持するものである。
26は床板15を構成する隔壁板17の運転席支持台17B、台座部材25の上側に設けられた運転席(図1、図7等参照)で、該運転席26は、オペレータが着座するものである。また、運転席26の左,右両側には、作業装置4等を操作するための作業操作レバー27が配設されている。
また、28は走行操作レバー・ペダルで、この走行操作レバー・ペダル28は、運転席26の前方に位置して床板15を構成する足乗せ板16のレバー・ペダル取付部16Aに設けられている。ここで、走行操作レバー・ペダル28は、操作レバー部と足踏みペダル部とが一体化されて同時に動く構成となっており、下部走行体2を走行させるときに手動操作または足踏み操作によって操作するものである。
29は運転席26の周囲を覆うように床板15に設けられたキャブで、該キャブ29は、前面板29A、後面板29B、左側面板29C、右側面板29Dおよび天井板29Eによりボックス形状をなしている。また、左側面板29Cには、キャブ29に出入りするためのドア(図示せず)が開閉可能に取付けられている。また、前面板29Aには前面ガラス29Fが取付けられ、後面板29Bには後面ガラス(図示せず)が取付けられ、右側面板29Dには右側面ガラス29Gが取付けられている。そして、キャブ29は、その前部が床板15の足乗せ板16の前側部分にボルト止めされ、後部が建屋取付板18の各取付穴18Aにボルト止めされている。
ここで、床板15、運転席26、作業操作レバー27、走行操作レバー・ペダル28、キャブ29等は、一つのユニットとして構成され、床板支持機構21を支点として前側ないし上側となる矢示A方向、後側ないし下側となる矢示B方向に傾転可能となっている。
次に、30は床板支持機構21よりも後側に位置して旋回フレーム5と床板15との間に設けられた傾転機構で、該傾転機構30は、床板15の右側位置に前,後方向に伸長して設けられている。また、傾転機構30は、旋回フレーム5側に位置する後述の連結ピン32を揺動支点とし、床板15側の移動部材35を移動支点として、当該移動部材35が任意の位置まで変位することにより、前記床板15を移動部材35の変位量に応じて前側(矢示A方向)または後側(矢示B方向)に傾転させるものである。そして、傾転機構30は、図10ないし図12に示すように後述の取付ブラケット31、ガイドレール33、ねじ軸34、移動部材35等により大略構成されている。
31は傾転機構30を旋回フレーム5側の支持部材12に取付けるための取付ブラケットを示している。そして、この取付ブラケット31は、支持部材12を構成する右前支柱12Dの傾斜面部12D1にボルト止めされるベース板31Aと、該ベース板31Aの表面に前,後方向に延びて平行に立設された一対の支持板31Bとにより構成されている。また、各支持板31Bには、後述するガイドレール33の基端取付部33Aが揺動支点となる連結ピン32を介して上,下方向に揺動可能に取付けられている。
32はガイドレール33の基端取付部33Aを支持部材12に取付けられた取付ブラケット31に上,下方向に揺動可能に支持する連結ピンを示している。ここで、連結ピン32は、ガイドレール33の揺動支点を構成するもので、取付ブラケット31の支持板31Bとガイドレール33の基端取付部33Aとの間に挿嵌されている。
33は基端側が取付ブラケット31を介して支持部材12の右前支柱12Dに上,下方向に揺動可能に取付けられたガイドレールで、該ガイドレール33は、基端側と自由端となった先端側との間で後述の移動部材35を直線的に案内するものである。そして、ガイドレール33は、取付ブラケット31の各支持板31Bに連結ピン32を介して上,下方向に揺動可能に取付けられた基端取付部33Aと、上,下方向に間隔をもった状態で該基端取付部33Aから平行に延びた一対のレール部33Bと、該各レール部33Bの先端部を連結して設けられた先端連結部としての先端連結板33Cとにより構成され、全体として長方形状の枠体をなしている。
また、先端連結板33Cには、図11に示す如く、各レール部33B間に位置してねじ軸34の先端側が貫通する軸挿通穴33C1と、該軸挿通穴33C1から前側を拡径して設けられ、ねじ軸34の先端側を回転可能に支持するスラスト軸受34Bが嵌合する軸受嵌合穴33C2とが形成されている。
34はガイドレール33の各レール部33B間に位置して設けられ、該各レール部33Bに沿って延びたねじ軸を示している。また、ねじ軸34は、外周にねじ山が刻設された棒状体として形成され、後述する移動部材35の螺合穴35Cに螺合している。また、ねじ軸34は、基端側が自由端34Aとなり、先端側がスラスト軸受34B、工具連結部34Cとなっている。そして、ねじ軸34の工具連結部34Cは、先端連結板33Cの軸挿通穴33C1を貫通して突出し、スラスト軸受34Bは、軸受嵌合穴33C2に回転可能に支持されている。また、ねじ軸34の自由端34Aは、各レール部33B間に位置して自由状態となっている。
ここで、ねじ軸34の自由端34Aは、スラスト軸受34Bをガイドレール33の先端連結板33Cに取付けた状態では、移動部材35の位置よりも長い寸法に設定されている。これにより、ねじ軸34の自由端34Aは、ガイドレール33の基端取付部33Aの近傍に延在している。
また、ねじ軸34のスラスト軸受34Bは、床板15、キャブ29等を前側ないし上側に傾転させるときに、ねじ軸34を回転可能に支持しつつ、ガイドレール33の基端側に向けて(矢示D方向に向けて)作用する荷重を受承するものである。
さらに、ねじ軸34の工具連結部34Cは、六角形状をなし、先端連結板33Cから前側に突出している。ここで、工具連結部34Cは、例えばボルトの頭と同様に六角形状をなすことにより、ボルトを締めるインパクトレンチ等のねじ締め用工具(図示せず)を外部から連結できるようになっている。これにより、ねじ軸34は、先端部の工具連結部34Cをインパクトレンチで回転駆動することにより、螺合した移動部材35をガイドレール33に沿って移動することができる。
35は移動部材を示し、該移動部材35は、ねじ軸34に螺合した状態で床板15側に取付けられ、移動支点を構成している。そして、移動部材35は、ねじ軸34が回転駆動されたときにガイドレール33に沿って先端側(矢示C方向)または基端側(矢示D方向)に移動(変位)するものである。
また、移動部材35は、図11、図12に示す如く、左,右方向に延びて設けられた段付円柱状の軸体35Aと、床板15と反対側となる軸体35Aの一端部に拡径して設けられた鍔部35Bと、前記軸体35Aの一端部側に位置して該軸体35Aの直径方向に貫通して形成され、内周側にねじ山が刻設された螺合穴35Cと、前記軸体35Aの他端面に開口して設けられたボルト穴35Dとにより大略構成されている。
そして、移動部材35の長さ方向の一端側は、ガイドレール33の各レール部33B間に移動可能に配置される。また、螺合穴35Cは、ねじ軸34に螺合している。さらに、移動部材35の長さ方向の他端側は、床板15の側面板19に取付けられたスリーブ20に軸体35Aを回動可能に挿通され、この状態でボルト穴35Dに螺着されたボルト36によって抜止めされている。
このように構成された傾転機構30は、外部に突出したねじ軸34の工具連結部34Cにインパクトレンチを連結して該ねじ軸34を回転駆動することにより、ねじ軸34に螺合した移動部材35をガイドレール33に沿って矢示C方向に移動する。これにより、傾転機構30は、旋回フレーム5側の支持部材12と移動部材35との距離寸法を大きくすることができるから、該移動部材35が接続された床板15を床板支持機構21を支点として前側ないし上側となる矢示A方向に傾転(チルトアップ)させることができる。
また、傾転機構30は、ねじ軸34と移動部材35とを螺合させているから、例えばガスダンパのようにガス漏れによって傾転させた床板15が降りてくるような事態が起きず、ストッパ等の部材を必要としない。
一方、傾転機構30は、ねじ軸34を逆方向に回転駆動して移動部材35をガイドレール33に沿って基端取付部33A(矢示D方向)に移動することにより、支持部材12と移動部材35との距離寸法を小さくすることができ、床板15を床板支持機構21を支点として後側ないし下側となる矢示B方向に傾転(チルトダウン)させることができる。
さらに、ねじ軸34は、スラスト軸受34Bだけをガイドレール33の先端連結部33Cに取付け、基端部側は自由端34Aとなっている。このため、例えばねじ軸34に歪が生じた状態で該ねじ軸34を回転させたときには、自由端34Aが自由状態で振れることができ、歪による動作抵抗を低減することができる。
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
まず、オペレータは運転席26に着座し、この状態で走行操作レバー・ペダル28を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、作業操作レバー27を操作することにより、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行なうことができる。
次に、油圧ショベル1のメンテナンス作業を行なう場合について説明する。このメンテナンス作業の対象となるエンジン6、油圧ポンプ7、コントロールバルブ11等は床板15の下側に配設されている。このため、床板15は、図13、図14に示すようにキャブ29等と一緒に矢示A方向にチルトアップする必要がある。
そこで、床板15、キャブ29等をチルトアップするときの作業について説明する。まず、床板15の建屋取付板18を旋回フレーム5の支持部材12に取付けているボルト等を取外す。この状態では、旋回フレーム5の支持部材12と床板15の間は、傾転機構30のねじ軸34と移動部材35との螺合によって連結されているだけである。このため、従来技術に用いられているガスダンパとは異なり、ボルトを外した瞬間に床板15が跳ね上がることもなく、床板15のチルトアップ作業を円滑かつ安全に作業を行なうことができる。
次に、傾転機構30を構成するねじ軸34先端の工具連結部34Cにインパクトレンチ等を連結し、該ねじ軸34を回転駆動する。これにより、外部からの操作で移動部材35をガイドレール33に沿って矢示C方向に移動することができるから、該移動部材35が取付けられた床板15、キャブ29等を、図13、図14に示すように床板支持機構21を支点として矢示A方向として示される上側ないし前側に向けてチルトアップすることができる。
そして、移動部材35をガイドレール33の先端側まで移動させることにより、床板15の後側を大きく持上げることができる。このように床板15をチルトアップした状態では、エンジン6は、その前側と上側の大部分を全体に亘って露出させることができるから、作業者はこれらの部分に手を伸ばすことにより、点検、整備、修理等のメンテナンス作業や、コントロールバルブ11の交換作業等を行なう。
また、例えばねじ軸34の回転を途中で止めた場合には、移動部材35は、ガイドレール33の長さ方向の途中まで移動し、その位置で停止する。このため、ねじ軸34の回転を途中で止めた場合には、床板15を任意の傾転位置で停止させ、この任意の傾転位置にストッパ等を用いることなく保持することができる。従って、必要以上に床板15を傾転させることなく、メンテナンス作業の内容に応じた最適な傾転位置に固定することができ、メンテナンス作業の作業性を高めることができる。
しかも、旋回フレーム5と床板15との間には、従来技術のようにガスダンパ等の障害物が存在しないため、メンテナンス作業のための作業スペースを大きく確保することができる。また、傾転機構30は、ねじ軸34と移動部材35とを螺合させているから、例えばガスダンパのようにガス漏れによって傾転させた床板15が降りてくるような事態を未然に防ぐことができ、安全ストッパを省略することができる。
一方、各種作業が終了したら、インパクトレンチでねじ軸34を逆方向に回転駆動して移動部材35をガイドレール33に沿って矢示D方向となる基端取付部33A側に移動することにより、床板15、キャブ29等を矢示B方向として示される下側方向にチルトダウンさせることができる。そして、床板15の建屋取付板18を支持部材12にボルト止めすることにより、メンテナンス作業を終了することができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、旋回フレーム5と床板15との間には、傾転機構30を設け、該傾転機構30のねじ軸34を回転し、該ねじ軸34に螺合する移動部材35をねじ軸34の先端側に移動させる構成としている。これにより、傾転機構30は、床板15、キャブ29等を前方に向け矢示A方向に傾転させ、エンジン6等を露出させることができる。
この場合、傾転機構30は、ねじ軸34を回転させて移動部材35を矢示C方向に変位させることにより、移動部材35の変位量に応じて床板15を前側に傾転させる。このときに、移動部材35の変位量は、ねじ軸34の回転を途中で止めることにより任意に設定できるから、床板15の傾転量を、メンテナンス作業の内容に応じて自由に設定することができる。この結果、エンジン等を点検、整備するときに、その作業内容に応じた最適な位置に床板を傾転させることができるから、作業効率を向上することができる。
また、傾転機構30は、ねじ軸34と移動部材35との螺合によって床板15を傾転させる構成としている。従って、この傾転機構30は、床板15を傾転させた位置に固定することができ、旋回フレーム5と床板15との間にストッパ等を介在させる必要がなく、作業性を向上することができる。また、傾転機構30は、床板15の傾転量(角度)を任意に設定することができるから、簡単な作業では床板15を少しだけ持上げることができ、効率のよい作業を行なうことができる。
また、床板15等をチルトアップした状態では、旋回フレーム5と床板15との間にガスダンパ等の邪魔になるものがなく、大きな作業スペースを提供することができる。これにより、作業者はエンジン6、コントロールバルブ11等の作業箇所に無理なく手を差し入れることができるから、メンテナンス作業を容易に行なうことができ、作業性、安全性を向上することができる。
また、傾転機構30は、ねじ軸34と移動部材35との螺合を利用して床板15等を傾転させることができるから、ねじ軸34(ガイドレール33)を長く形成することにより、床板15等を大きく傾転させることができる。これにより、旋回フレーム5と床板15との間の作業スペースを大きく開放することができる。
また、傾転機構30は、ガスダンパのように常時付勢力を発生するものではないから、床板15を急に傾転させたり、押下げるのに大きな力を必要とすることはない。従って、床板15のチルトアップ作業、チルトダウン作業を安全に、かつ簡単に行なうことができる。
一方、傾転機構30のガイドレール33は、取付ブラケット31を介して支持部材12に取付け、移動部材35は床板15の側面板19に取付ける構成としているから、既存の部材を利用して傾転機構30を容易かつ安価に設置することができる。また、移動部材35は床板15の側面板19に取付けられているから、床板15は、この上にキャブ29を取付ける場合と図20に示されるキャノピ62を取付ける場合の両方に対応することができる。
また、傾転機構30は、床板15を傾転させたときに先端側が斜め上側を向くことになる。ここで、傾転機構30の基端側は、支持部材12を構成する右前支柱12Dの傾斜面部12D1に設けているから、床板15を傾転させたときに作用する大きな荷重を傾斜面部12D1で確実に受承することができる。
また、傾転機構30のねじ軸34は、先端部側だけをガイドレール33の先端連結部33Cに取付け、基端部側は自由端34Aとしている。これにより、例えばねじ軸34に歪が生じた状態で該ねじ軸34を回転させた場合でも、自由端34Aとなった基端側が振れることで歪による動作抵抗を低減することができ、作業性や寿命を向上することができる。
さらに、ねじ軸34の先端には、インパクトレンチ等のねじ締め用工具を連結可能な工具連結部34Cを設けているから、該工具連結部34Cに対し外部からインパクトレンチを連結してねじ軸34を回転駆動することにより、床板15等を簡単に傾転させることができる。
次に、図15ないし図18は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、ねじ軸はガイドレールの各レール部間を延び、該ねじ軸の基端側がガイドレールの基端取付部に取付けられ、先端側が先端連結部を貫通して突出した状態で取付けられている構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図15において、41は第2の実施の形態による傾転機構で、該傾転機構41は、第1の実施の形態で述べた取付ブラケット31、後述するガイドレール42、ねじ軸43、移動部材44等により大略構成されている。
42は傾転機構41を構成するガイドレールで、該ガイドレール42は、図16、図17に示す如く、第1の実施の形態によるガイドレール33とほぼ同様に、基端取付部42A、レール部42B、先端連結部42Cにより構成されている。しかし、第2の実施の形態によるガイドレール42は、基端取付部42Aにねじ軸43の嵌合部43Aを回転可能に支持する軸支持穴42A1が形成されている。また、先端連結板42Cには、ねじ軸43の先端軸部43Bを貫通させた状態で回転可能に支持する軸挿通穴42C1が形成されている。
43はガイドレール42の各レール部42B間に設けられたねじ軸で、該ねじ軸43は、基端側の嵌合部43Aが基端取付部42Aの軸支持穴42A1に回転可能に取付けられている。また、ねじ軸43の先端軸部43Bは先端連結板42Cの軸挿通穴42C1を貫通して突出した状態で、該軸挿通穴42C1に回転可能に取付けられている。さらに、ねじ軸43には、先端軸部43Bよりも前側に工具連結部43Cが設けられている。即ち、ねじ軸43は、基端側の嵌合部43Aと先端側の先端軸部43Bの位置でガイドレール42に両持ち構造で取付けられている。
44はガイドレール42の各レール部42Bに沿って移動する移動部材を示している。この移動部材44は、図17、図18に示すように、円柱状の軸体44Aの一端側を各レール部42B間に通し、第1の鍔部44Bと第2の鍔部44Cとの間に各レール部42Bを挟み、この状態で螺合穴44Dにねじ軸43を螺合させる構成となっている。また、軸体44Aの他端側は、床板15の側面板19に取付けられたスリーブ20に挿通され、この状態でボルト穴44Eに螺着するボルト36によって抜止めされている。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、ねじ軸43は、ガイドレール42に対して両持ち構造で取付けているから、ねじ軸43の取付強度を高めることができる。これにより、移動部材44を移動するときの動作性、ねじ43の耐久性等を向上することができる。
なお、第1の実施の形態では、傾転機構30のガイドレール33とねじ軸34の関係は、先端側の工具連結部34Cをガイドレール33の先端連結部33Cに取付けた状態で、自由端34Aは基端取付部33Aから大きく離間した位置に配置する構成として説明した。
しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図19に示す第1の変形例による傾転機構51のように、ガイドレール52の基端取付部52Aの形状を変更し、基端取付部52Aをねじ軸34の自由端34Aに近接する位置まで延ばす構成とし、該基端取付部52Aの先端側にレール部52Bを取付ける構成としてもよい。
この場合には、基端取付部52A等に対して強度が弱いレール部52Bを短くすることができるから、ガイドレール52全体を高強度にすることができ、座屈等に対する剛性を高めることができる。
上述した第1の変形例による構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができる。第2の実施の形態に適用する場合には、ガイドレールのレール部の長さ寸法に合わせてねじ軸も短くすればよいものである。
また、第2の実施の形態では、傾転機構41の移動部材44は、ねじ軸43に螺合した状態でガイドレール42に沿って移動する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えばねじ軸43に十分な強度をもたせ、該ねじ軸43の基端側(嵌合部43A側)を支持部材12側の取付ブラケット31等に直接的に片持ち状態で取付ける構成としてもよい。このようにねじ軸43を取付ブラケット31に直接取付ける場合には、ガイドレール42を省略する構成としてもよい。
また、各実施の形態では、前面板29A、後面板29B、左側面板29C、右側面板29Dおよび天井板29Eによりボックス形状に形成され、左側面板29Cにドアが取付けられたキャブ29を用いたキャブ仕様の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図20に示す第2の変形例のように、建設機械としてキャノピ仕様の油圧ショベル61に適用してもよい。このキャノピ仕様の油圧ショベル61は、運転席26の上側を覆うキャノピ62を備えている。
また、上述した油圧ショベル1,61以外にも、キャブ、キャノピ等を備えずに、床板上に運転席のみが搭載された形式の油圧ショベルに適用してもよい。
さらに、実施の形態は、床板、運転席等を備えた他の建設機械にも広く適用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側に作業装置が設けられたフレームと、該フレームの後側に搭載されたエンジンと、該エンジンの前側に位置して前記フレーム上に設けられた床板と、該床板に設けられたオペレータが着座する運転席とを備えてなる建設機械において、
前記フレームの前側位置と前記床板の前側位置との間には、当該床板の前側位置を支点として前記運転席と一緒に床板を傾転可能に支持する床板支持機構を設け、
前記床板支持機構よりも後側に位置して前記フレームと床板との間には、前記フレーム側を揺動支点とし、床板側を移動支点として、当該移動支点が任意の位置まで変位することにより前記床板を移動支点の変位量に応じて前側に傾転させる傾転機構を設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記傾転機構は前記床板の側面位置に前,後方向に伸長して設け、外部から操作することによって前記移動支点を変位させる構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記傾転機構は、基端側が前記フレームに揺動可能に支持されたねじ軸と、前記床板と該ねじ軸との間に設けられ該ねじ軸の回転に応じて移動する移動部材とを備え、前記ねじ軸の基端側を揺動支点とし、前記移動部材を移動支点として構成してなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記傾転機構は、基端側が前記フレーム側に上,下方向に揺動可能に取付けられ先端側が自由端となって前側に延びたガイドレールと、該ガイドレールに沿って延び該ガイドレールの長さ方向に位置決めされた状態で回転可能に設けられたねじ軸と、前記床板側に回動可能に取付けられ該ねじ軸に螺合した状態で前記ガイドレールに沿って前,後方向に移動する移動部材とにより構成してなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記ガイドレールは、前記フレーム側に揺動可能に取付けられる基端取付部と、該基端取付部から平行に延びる2本のレール部と、該各レール部の先端を連結する先端連結部とにより長方形状の枠体として形成し、
前記ねじ軸は、前記各レール部間を延び、基端側を自由端とすると共に先端側を前記先端連結部に取付け、
前記移動部材は、前記ガイドレールの各レール部間に位置して前記ねじ軸に螺合して設け、
前記移動部材は、前記ねじ軸の先端側を回転操作することにより前記ガイドレールに沿って変位する構成としてなる請求項4に記載の建設機械。
【請求項6】
前記ガイドレールは、前記フレーム側に揺動可能に取付けられる基端取付部と、該基端取付部から平行に延びる2本のレール部と、該各レール部の先端を連結する先端連結部とにより長方形状の枠体として形成し、
前記ねじ軸は、前記各レール部間を延び、基端側を前記基端取付部に取付けると共に先端側を前記先端連結部に取付け、
前記移動部材は、前記ガイドレールの各レール部間に位置して前記ねじ軸に螺合して設け、
前記移動部材は、前記ねじ軸の先端側を回転操作することにより前記ガイドレールに沿って変位する構成としてなる請求項4に記載の建設機械。
【請求項7】
前記フレームには前記エンジンの近傍に位置して前記床板の後側位置を支持する支持部材を設け、
前記支持部材には前記傾転機構のガイドレールの基端側を揺動可能に取付け、前記床板の側面位置には前記傾転機構の移動部材を取付ける構成としてなる請求項4に記載の建設機械。
【請求項8】
前記支持部材は、前記エンジンの上側で左,右方向に延びる支持ベースと、該支持ベースから下向きに延びて前記フレームに取付けられる複数本の支柱とにより形成し、
前記各支柱のうち床板の側面位置に配置した支柱には、前向き傾斜する傾斜面部を設け、
前記支柱の傾斜面部には、前記傾転機構の基端側を支持する取付ブラケットを設ける構成としてなる請求項7に記載の建設機械。
【請求項9】
前記床板は、前記運転席に着座したオペレータの足乗せ場となる足乗せ板と、該足乗せ板の後側から立上り前記エンジンが入り込むように該エンジンの上側を後方に延びた隔壁板と、前記足乗せ板の側部位置から立上った側面板とを含んで形成し、
前記傾転機構の移動部材は前記床板の側面板に取付ける構成としてなる請求項3,4,5,6,7または8に記載の建設機械。
【請求項10】
前記ねじ軸の先端側には工具連結部を設け、該工具連結部にねじ締め用工具を連結することにより前記ねじ軸を回転駆動する構成としてなる請求項3,4,5,6,7または8に記載の建設機械。

【国際公開番号】WO2005/025968
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【発行日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513828(P2005−513828)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012318
【国際出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】