説明

応力分離部を有するMEMSデバイスおよび製造方法

応力分離部を有する微小電気機械システム(MEMS)デバイス20は、第1の構造層24に形成された要素28,30,32、第2の構造層26に形成された要素68,70、第1の構造層24から離間された層26を含む。製造方法は、層24と26との間に接合部72,74を形成する工程92,94,104を含む。接合部72,74は、第1層24の相当する要素30,32を第2層26の要素68,70に接続される。製造方法80は、すべての要素30,32,68,70がMEMSデバイス20の基板22上に吊らされるように下にある基板22から構造層24,26を解放する工程をさらに含む。ここで、要素30,32,68,70と基板22との取付は基板22の中央領域46のみに起こる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に微小電気機械システム(MEMS)デバイスに関する。より詳細には、本発明は、応力分離部を有するMEMSデバイスおよびそのMEMSデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(MEMS)センサデバイスは、自動車、慣性誘導システム、家庭用機器、種々のデバイス用の保護システムや、多くの他の産業、科学、および工学システムなどの用途において広く用いられている。このようなMEMSデバイスは、加速度、圧力、または温度などの物理状態を感知し、感知した物理状態を表す電気信号を提供するために用いられる。容量感知式MEMSセンサ設計は、高重力環境における小型化されたデバイスの動作において、またそのコストが比較的低いため、非常に望ましい。
【0003】
多くのMEMSセンサデバイス用途では、より小さなサイズや、積極的なコスト目標を満たす低いコストパッケージが必要とされる。加えて、MEMSデバイス用途では、より低い温度係数オフセット(TCO)仕様が求められている。TCOは、MEMSデバイスなどの同様デバイスの性能に熱応力がどの程度の影響を与えるかの尺度である。TCOが高いことは、それに対応して熱的に誘起される応力が大きいことを示している。MEMSデバイスの製造およびパッケージングの用途では、異なる熱膨張係数を有する様々な材料がしばしば用いられる。種々の材料は、温度変化が存在する場合、異なる割合で膨張や収縮するので、MEMSデバイスのアクティブトランスデューサ層は、異なる材料の寸法変化が異なることにより、伸び、曲げ、反り、その他の変形を受ける場合がある。したがって、有意な熱応力、すなわち、望ましくない高いTCOが、製造または動作中に生じることがしばしばある。
【0004】
加えて、応力は、最終用途においてパッケージ化された半導体デバイスをプリント回路基板上にはんだ付けすることによっても発生することがある。それらのパッケージ応力によって、MEMSセンサの実装された基板のひずみが変化して、オフセットの変化、すなわち、変位が生じることがある。さらにまた、基板には、基板の表面を通じた一様でない伸び、曲げ、または反りなど、何らかの一定でないひずみが生じる場合がある。パッケージの応力および基板のひずみによって誘起される変位によって、感知信号に変化が生じることがあるので、MEMSデバイスの出力性能に不利な影響を与えることがある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本発明の一実施形態によるMEMSデバイスの平面図。
【図2】2−2区分線に沿った図1のMEMSデバイスの側面図。
【図3】3−3区分線に沿った図1のMEMSデバイスの側面図。
【図4】4−4区分線に沿った図1のMEMSデバイスの側面図。
【図5】本発明の別の実施形態による微小電気機械システム(MEMS)デバイスの製造プロセスのフローチャート。
【図6】プロセスの開始段階における図1のMEMSデバイスの側面図。
【図7】プロセスの続く段階における図6のデバイスの側面図。
【図8】プロセスの続く段階における図7のデバイスの側面図。
【図9】プロセスの続く段階における図8のデバイスの側面図。
【図10】プロセスの続く段階における図9のデバイスの側面図。
【図11】プロセスの続く段階における図9のデバイスの側面図。
【図12】本発明の別の実施形態によるMEMSデバイスの平面図である。
【図13】本発明の別の実施形態によるMEMSデバイスの平面図である。
【図14】本発明の別の実施形態によるMEMSデバイスの平面図である。
【図15】15−15区分線に沿った図14のMEMSデバイスの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の一実施形態では、本明細書においてMEMSデバイスと呼ぶ、微小電気機械システム(MEMS)トランスデューサが含まれる。このMEMSデバイスは、下に位置する基板から概ね分離されている。この分離は、従来技術のデバイスに比べ、基板に対する要素の接続を有意に減少させることによって、また、接続を互いに近接する範囲内に、かつ、基板の中央領域に置くことによって達成される。本発明の別の実施形態では、2つの構造層を用いるMEMSデバイスの製造方法が含まれる。1つの構造層によって、その層の平面内における感知能力が達成され、別の構造層によって、MEMSデバイスの固定要素が懸吊され、固定要素は下に位置する基板に直接的に接触しない。
【0007】
ここで図1〜4を参照する。図1には、本発明の一実施形態によるMEMSデバイス20の平面図を概略的に示す。図2には、図1における2−2区分線に沿ったMEMSデバイス20の側面図を示す。図3には、図1における3−3区分線に沿ったMEMSデバイス20の側面図を示す。図4には、図1における4−4区分線に沿ったMEMSデバイス20の側面図を示す。図1〜4では、以下に記載するように、MEMSデバイス20の構造層内に形成される様々な要素を区別して様々なシェーディングおよび/またはハッチングを用いて示す。それらの構造層内の様々な要素は、堆積、パターニング、エッチングなど、現行のおよび開発中の表面マイクロマシニング技術を利用して形成されてよい。したがって、図面においては様々なシェーディングおよび/またはハッチングが用いられるが、典型的には、構造層内の様々な要素は、ポリシリコン、単結晶シリコンなど、同じ材料から形成される。
【0008】
MEMSデバイス20(下述)の要素は、MEMSデバイス20における他の要素に「取り付けられる」、「取り付けられている」、「接続される」、「固定される」、または「相互に接続される」のように、様々に記載される場合がある。しかしながら、それらの用語は、MEMS製造におけるパターニングおよびエッチングプロセスを通じて生じるMEMSデバイス20の特定の要素の直接的または間接的な物理接続を指していることが理解される。これについては図5に関連して記載する。
【0009】
MEMSデバイス20は、基板22と、第1の構造層24と、第2の構造層26とを備える。第1の構造層24には、数々の要素が形成される。一実施形態では、それらの要素には、可動要素(本明細書では、プルーフマス28と呼ぶ)と、第1の不動要素30と、第2の不動要素32とが含まれる。プルーフマス28は、右上を向いた幅の狭いハッチングによって表されている。第1の不動要素30は、右下を向いた幅の広いハッチングによって表されており、第2の不動要素32は、右上を向いた幅の広いハッチングによって表されている。本明細書において用いられる「第1」及び「第2」の用語は、数えられる一連の要素における要素の順番または優先順位を示すものではない。むしろ、「第1」および「第2」の用語は、記載を明確にするべく2つの可動要素30,32を区別する目的で用いられる。
【0010】
プルーフマス28、第1の不動要素30、および第2の不動要素32は、基板22の面34の上方に懸吊されており(図2〜4において最もよく理解される)、基板22の面34の中央領域46において基板22に取り付けられるべく構成されている。プルーフマス28は、1つ以上のプルーフマスアンカー部36(例えば、2つのアンカー部36)を介して基板22に固定されている。同様に、第1の不動要素30は、1つ以上の第1のアンカー部38(例えば、3つのアンカー部38)を介して基板22に固定されており、第2の不動要素32は、1つ以上の第2のアンカー部40(例えば、3つのアンカー部40)を介して基板22に固定されている。一実施形態では、アンカー部36,38,40は、犠牲層42の一部分がプルーフマス28および不動要素30,32の下方に残っているときに形成され、続いて処理中に犠牲層42のエッチングが行われる(下述)。犠牲層42は、図2,3には、濃い点描のパターンによって示す。ここでもやはり、「第1」及び「第2」の用語は、数えられる一連の要素における要素の順番または優先順位を示すものではない。むしろ、記載の明確にする目的で、「第1」の用語はアンカー部38を第1の不動要素30に関連付けるために用いられ、「第2」の用語はアンカー部40を第2の不動要素32に関連付けるために用いられる。
【0011】
図1では、アンカー部36,38,40は、それらに対応する要素28,30,32の上方の「X」の印によって表されている。一実施形態では、プルーフマスアンカー部36は、基板22の中央領域36においてアンカー領域44にプルーフマス28を取り付けている。同様に、第1のアンカー部38は、基板22の中央領域46においてアンカー領域48に第1の不動要素30を取り付けており、第2のアンカー部40は、基板22の中央領域46においてアンカー領域50に第2の不動要素32を取り付けている。したがって、中央領域46は、基板22上のプルーフマス28、第1の不動要素30、および第2の不動要素32の位置に対する基板22の「中央」によって規定される。
【0012】
1つ以上の弾性部材52(または、ばね)は、プルーフマス28とプルーフマスアンカー部36とを相互に接続している。一実施形態では、弾性部材52によって、平面(すなわち、基板22の平坦な面34)に平行な1つの方向(本明細書ではY方向54と呼ぶ)におけるプルーフマス28の移動が可能となる。プルーフマス28は、幾つかの可動フィンガーまたは電極(本明細書では突出部56と呼ぶ)を備えており、それらの突出部56はすべて、プルーフマス28の外部フレーム58に接続されている。突出部56は、基板22の平坦な面34にほぼ平行に延びている。
【0013】
第1および第2の不動要素30,32は、それぞれ第1および第2のアンカー部38,40を介して基板34に取り付けられており、要素30,32はプルーフマス28に対して可動でない、すなわち、固定されている。第1の不動要素30は、第1のアンカー部38に取り付けられた1つ以上のフレーム構造60(この例では、3つのフレーム構造60)と、基板22の平坦な面34にほぼ平行に延びている幾つかの固定電極62とを備える。固定電極62は、感知電極および/またはアクチュエータ電極の何らかの組み合わせであってよく、本明細書では第1の固定フィンガー62と呼ばれる。同様に、不動要素32は、アンカー部40に取り付けられた1つ以上のフレーム構造64(この例では、3つのフレーム構造64)と、基板22の平坦な面34にほぼ平行に延びている幾つかの固定電極66とを備える。固定電極66は、感知電極および/またはアクチュエータ電極の何らかの組み合わせであってよく、本明細書では第2の固定フィンガー66と呼ばれる。第1および第2の固定フィンガー62,66の間には、プルーフマス28の突出部56が介在している。
【0014】
第1および第2の固定フィンガー62,66は第2の構造層26に形成された要素を介してそれぞれそのフレーム構造60,64との接続によってプルーフマス28に対して「固定されている」、すなわち、不動である。第2の構造層26に形成されたそれらの要素は、本明細書において第1のビーム68と呼ぶ1つ以上のビーム68と、本明細書において第2のビーム70と呼ぶ1つ以上のビーム70とを含む。ここでもやはり、「第1」及び「第2」の用語は、数えられる一連の要素における要素の順番または優先順位を示すものではない。むしろ、記載の明確にする目的で、「第1」の用語はビーム68を第1の不動要素30に関連付けるために用いられ、「第2」の用語はビーム70を第2の不動要素32に関連付けるために用いられる。第1のビーム68は薄い点描のパターンによって表され、第2のビームは右下を向いた幅の狭いハッチングによって表される。
【0015】
第1のビーム68は、第1のフィンガー62上に形成され第1のフィンガー62の上方を延びている複数の第1の接合部72を介して第1の不動要素30の第1のフィンガー62に接続されている。さらに、第1のビーム68は、第1の不動要素30の適切なフレーム構造60に接続されている。なお、第1のフィンガー62の各々は、第1の不動要素30の別個の部品であり、フレーム構造60および第1のアンカー部38に接続することなく第1の構造層に形成されている。第1のビーム68は第1の接合部72に接続されており、第1のフィンガー62は互いに相互に接続されるとともに第1の不動要素30の適切なフレーム構造60に相互に接続されており、第1のフィンガー62は基板22の上に懸吊されたまま保持されており、続いて犠牲層42が除去される(下述)。しかしながら、突出部56および第2のフィンガー66は、第1のビーム68に接続されていない。よって、突出部56の各々は一対の第1のフィンガー62の間に挿間されており、第1の接合部72を介して第1のフィンガー62の各々に取り付けられるように、第1のビーム68が突出部56の位置を横断する、すなわち、横切るように配向されている。
【0016】
同様に、第2のビーム70は、第2のフィンガー66上に形成され第2のフィンガー66の上方を延びている複数の第2の接合部74を介して第2の不動要素32の第2のフィンガー66に接続されている。さらに、第2のビーム70は、第2の不動要素32の適切なフレーム構造64に接続されている。第1のフィンガー62と同様に、第2のフィンガー66の各々は、第2の不動要素32の別個の部品であり、フレーム構造64および第2のアンカー部40に接続することなく第1の構造層24に形成されている。第2のビーム70は第2の接合部74に接続されており、第2のフィンガー66は互いに相互に接続されるとともに第2の不動要素32の適切なフレーム構造64に相互に接続されており、第2のフィンガー66は基板22の上に懸吊されたまま保持されており、続いて犠牲層42が除去される(下述)。しかしながら、突出部56および第1のフィンガー62は、第2のビーム70に接続されていない。よって、突出部56の各々は一対の第2のフィンガー66の間に挿間されており、第2の接合部74を介して第2のフィンガー66の各々に取り付けられるように、第2のビーム70が突出部56の位置を横断することが留意される。第1および第2の接合部72,74は、中実の黒いシェーディングによって図1,2,4に示されている。
【0017】
図示された実施形態では、MEMSデバイス20は容量感知能力を有する加速度計であってよい。一般に、弾性部材52は、何らかの他の手段による選択的な力の印可によってその変形が生じるまで、基板22に平行な中立位置において基板22の上にプルーフマス28を懸吊している。例として、MEMSデバイス20がY方向54における加速度を経験する場合、MEMSデバイス20のプルーフマス28が動く。プルーフマス28のY方向54における側方移動は、プルーフマス28の介在する第1および第2の固定フィンガー62,66によって検出されることが、当業者には理解される。この側方移動は、続いて電子機器(図示せず)によって加速度に応じた大きさのパラメータを有する信号(電圧、電流、周波数など)へと変換される。この例では、MEMSデバイス20は、Y方向54における側方移動の検出のための一軸加速度計であってもよい。しかしながら、代替の実施形態では、二軸加速度計または他のMEMS感知デバイスを備えてもよい。
【0018】
上述の通り、MEMSデバイス(MEMSデバイス20など)のパッケージングの応力および/または下に位置するプリント回路基板に対するその半田接続によって、基板22のひずみが変化して、センサの不正確さに繋がるオフセットのシフトまたは変位が生じる。さらにまた、基板22のひずみプロファイルが、基板22の平面を通じて一貫していない場合がある。MEMSデバイス20では、ひずみプロファイルが一貫していないことの不利な影響は、基板22の上に第1および第2の不動要素30,32の懸吊された構成によって、プルーフマス28と不動要素30,32との基板22に対する接続の減少によって、また、すべての接続(すなわち、アンカー部36,38,40)を基板22の中央領域46に近接させて配置することによって、緩和される。
【0019】
図5には、本発明の別の実施形態による、MEMSデバイス製造プロセス80のフローチャートを示す。MEMSデバイス製造プロセス80では、基板の上に固定要素を懸吊することによって下に位置する基板からほぼ分離されたMEMSデバイスを製造するための方法が提供される。プロセス80について、MEMSデバイス20(図1)の製造に関連して記載する。しかしながら、以下の方法は、改良されたオフセット性能のための応力分離が望ましい他の設計のMEMSデバイスの製造に適合可能であることが理解される。
【0020】
製造プロセス80について、図示を簡単にするために、単一のMEMSデバイス20の製造に関連して以下に記載する。しかしながら、以下のプロセスによって複数のMEMSデバイス20の同時製造が可能であることが当業者には理解される。例えば、複数のMEMSデバイス20が基板22上の同時の半導体薄膜製造によって得られてもよい。最終用途においてパッケージ化されプリント回路基板に接続可能である個々のMEMSデバイス20を提供するべく、従来の手法により、個々のMEMSデバイス20が切断、すなわち、ダイシングされてもよい。
【0021】
MEMSデバイス製造プロセス80は、作業82にて開始する。作業82において、基板22は、基板22上に堆積された第1の犠牲層42とともに与えられる。
作業82に関連して図6を参照する。図6には、作業82による処理の開始段階84におけるMEMSデバイス20(図1)の側面図を示す。開始段階84において、基板22が提供される。基板22は、犠牲層42(例えば、リンケイ酸ガラス(PSG))であってよく、例えば、例えば、ウェハ提供元から提供される。これに代えて、基板22が提供元から提供されてもよい。基板22の受け入れに続き、MEMSデバイス20を製造する製造機関によって、犠牲層42が基板の上に堆積されてもよい。シリコンウェハおよびPSGについて言及したが、基板22および犠牲層42が他の種類の材料から形成されてもよいこと、および/または基板22も複数層に形成されてよいことが当業者には理解される。随意の一実施形態では、アンカー部36,38,40(図1)を最終的に製造するための開口部(図示せず)を形成するように、アンカー領域44,48、および50(図1)にて犠牲層42がエッチングされてもよい。
【0022】
戻ってMEMSデバイス製造プロセス80(図5)を参照すると、作業82に続いて、作業86が実行される。作業86において、第1の構造層24(図3)が犠牲層42の上に形成されて、第1の構造層24に少なくともプルーフマス28と、第1の可動要素30と、第2可動要素32とが形成される。
【0023】
タスク86に関連して図7を参照する。図7には、処理の続く段階88における図6のデバイスの側面図を示す。段階88において、第1の構造層24を形成するために、ポリシリコンなどの材料は犠牲層42上に堆積される。第1の構造層24は、プルーフマス28、第1の不動要素30、および第2の不動要素32(図1)を形成するべく、パターニングおよびエッチングされる。加えて、犠牲層42はアンカー領域44,48、および50にて以前にエッチングされている場合、犠牲層42の上に第1の構造層24を堆積することによって、犠牲層42の開口部が充填されてアンカー部36,38、および40(図1)が形成される。パターニングおよびエッチング処理技術によって、要素28,30、および32を互いに分離する溝(トレンチ)90が形成される。この図では、第1の構造層24に生じられた要素28,30、および32は互いに区別されない。むしろ、右上を向いた幅の広い単一のハッチングパターンを用いて、第1の構造層24を表している。
【0024】
MEMSデバイス製造プロセス80(図5)を参照する。作業86に続いて、作業92が実行される。作業92において、第2の犠牲層が第1の構造層24の上に堆積される。プロセス80は作業94に続く。作業94において、開口部が第2の犠牲層を通じて形成される。
【0025】
作業92,94に関連して図8を参照する。図8には処理の続く段階96における図7のデバイスの側面図を示す。段階96において、例えば、PSGからなる別の犠牲層98が、作業92によって第1の構造層24上に堆積される。犠牲層98は、作業86(図5)において第1の構造層24を通じてエッチングされた溝90を少なくとも部分的に充填する。犠牲層98は、次いでパターニングおよびエッチングされ、犠牲層98を通じて複数の開口部100が形成されて、第1の構造層24の部分102を露出する、特に、第1の不動要素30(図1)および第2の不動要素32(図1)の部分102を露出する。
【0026】
戻ってMEMSデバイス製造プロセス80(図5)を参照すると、作業92に続いて、作業104が実行される。作業104において、第2の構造層26(図3)が犠牲層98の上に堆積され、少なくとも第1のビーム68および第2のビーム70(図1)が形成される。
【0027】
作業104に関連して図9を参照する。図9には、処理に続く段階106における図8のデバイスの側面図を示す。段階106において、第2の構造層26を形成するためにポリシリコンなどの材料の別の層が犠牲層98上に堆積される。第1および第2の接合部72,74(図1,3,,4)をそれぞれ形成するために、犠牲層98の上に第2の構造層26を堆積することによって犠牲層98の開口部102が充填される。
【0028】
図10には、処理の続く段階108における図9のデバイスの側面図を示す。段階108において、第1のビーム68および第2のビーム70(図1)を形成するために第2の構造層26がパターニングおよびエッチングされる。必要な場合、相互接続部(図示せず)が含まれてもよい。作業104(図5)のパターニングおよびエッチング処理技術によって、要素ビーム68,70を互いに物理的に分離する溝または空間110が形成される。この図において、第2の構造層26に形成される要素68,70および接合部72,74は、互いに区別されていない。むしろ、右下を向いた幅の狭い単一のハッチングパターンを用いて、第2の構造層26の要素を表している。
【0029】
戻ってMEMSデバイス製造プロセス80(図5)を参照すると、作業104に続いて、作業112が実行される。作業112において、第1および第2の構造層24,26における要素は、例えば、エッチング技術を用いて、第1および第2の犠牲層42,98を除去することによって基板22の上に懸吊される。
【0030】
タスク112に関連して図11を参照する。図11には、処理の続く段階114における図10のデバイスの側面図を示す。段階114において、下に位置する基板22から、プルーフマス28、不動要素30,32、および弾性部材52を解放するために、周知の処理を用いて犠牲層98,42がエッチングされる。図11には、図2にも示したように図1の2−2区分線に沿ったMEMSデバイス20の側面図を一般的に示す。しかしながら、先に示した図6〜10の処理のように、第1および第2の構造層24,26および第1および第2の接合部72,74に形成される様々な要素は、図11では互いに区別されていない。むしろ、それらの様々な要素は図2から容易に認められる。
【0031】
一実施形態において、作業112における犠牲層98,42のエッチングによって犠牲層98の全体がほぼ除去され、接合部72,74を除き、第2の構造層26のビーム68,70は第1の構造層24から離間されている。作業112における犠牲層98,42のエッチングによって、さらに、プルーフマス28、第1および第2の不動要素30,32、および弾性部材52の下に位置する犠牲層42の全体がほぼ除去され、それらは基板22の上方に基板22から離間して懸吊される。しかしながら、一実施形態では、アンカー領域44,48、および50に犠牲層42が残り、プルーフマス28および不動要素30,32はアンカー部36,38、および40を介して基板22に取り付けられている。
【0032】
犠牲層98,42の選択的除去は、プルーフマス28かつ不動要素30,32の特定領域をエッチング材料またはエッチング剤対し浸透性とすることによって達成され得る。この浸透性は、第1および第2の構造層24,26がスルーホール(図示を簡単にするため示していない)を有するように製造することによって達成され得る。このスルーホールによって、エッチング剤が通過して下に位置する犠牲層98,42に到達することの可能な通路が提供される。勿論、スルーホールは、少なくともアンカー領域44,48、および50における第1の構造層24を通じて形成される必要はなく、領域44,48、および50の下に位置する犠牲層は残り、続いて適切な時間でエッチングが行われる。この浸透性は、これに代えて、第1および第2の構造層24,26を形成するために用いられる材料の特性によって達成され得る。例えば、第1および第2の構造層24,26を形成するために用いられる材料の特性は、第1および第2の構造層24,26にダメージを与えることなく第1および第2の構造層24,26の材料を通過して下に位置する犠牲層98,42にエッチング剤が到達するようなものであってもよい。
【0033】
戻ってMEMSデバイス製造プロセス80(図5)を参照する。タスク112に続いて、MEMSデバイス製造プロセス80は他の作業を含み得るが、簡潔のため、ここでは説明しない。それらの追加の製造作業(楕円によって表す)には、MEMSデバイス20を気密封止する工程、電気的な相互接続部を形成する工程などが含まれる。MEMSデバイス20の製造に続いて、製造プロセス80は、第1および第2のビーム68,70が対応する第1および第2の接合部72,74を介して対応する第1および第2の固定フィンガー62,66にそれぞれの接続されることによって終了する。第1および第2のビーム68,70は、追加では、構造の一体性を提供するために、それぞれのフレーム構造60,64に接続され、フレーム構造60,64は、それぞれ第1および第2のアンカー部38,40によって下に位置する基板22に接続され、第1および第2の固定フィンガー62,66がビーム68,70によって基板22の上方に懸吊される。
【0034】
図12には、本発明の別の実施形態によるMEMSデバイス118の平面図を示す。MEMSデバイス118において構造層内の要素が様々に配置可能であることを示すために提供される。図1〜4のシェーディングおよび/またはハッチングにしたがって、MEMSデバイス118の構造層内に形成される様々な要素を区別するために、図12に関連しても同じシェーディングおよび/またはハッチングが用いられる。
【0035】
MEMSデバイス118は、MEMSデバイス20(図1〜4)に関連して最もよく理解されるように、基板22と第1および第2の構造層とを備える。プルーフマス28、第1の不動要素30、第2の不動要素32、および弾性部材52は、上述の通り、第1の構造層に形成されており、基板22の面34の上方に懸吊されている。加えて、MEMSデバイス118は、第2の構造層に形成された第1および第2のビーム68,70や、それぞれ第1および第2のビーム68,70をそれぞれ第1および第2の不動要素30,32に相互に接続する第1および第2の接合部72,74を備える。
【0036】
この示した実施形態では、プルーフマス28は1つのプルーフマスアンカー部36を介して基板22に固定されており、第1の不動要素30は2つのアンカー部38を介して基板22に固定されており、第2の不動要素32は2つのアンカー部40を介して基板34に固定されており、それらはすべて、基板22の中央領域46におけるそれぞれアンカー領域44,48,50に位置する。したがって、第1の構造層の要素の取付は、MEMSデバイス20より少ないアンカー部を用いて達成される。しかしながら、プルーフマス28および不動要素30,32の基板22に対する接続の減少によって、第1および第2の不動要素30,32が基板22の上に懸吊される構成を通じてひずみプロファイルが一貫しないことによる不利な影響を緩和するために、アンカー部は依然として互いに近接するように配置され、基板22に対して中央に配置される。
【0037】
MEMSデバイス20と同様、MEMSデバイス118のプルーフマス28は、外部フレーム68に接続された突出部56を備える。同様に、不動要素30は第1の固定フィンガー62を備え、第2の不動要素32は第2の固定フィンガー66を備える。しかしながら、MEMSデバイス118のアンカー構成によって、第1および第2の不動要素30,32について異なった構成が得られる。この例では、第1の不動要素30は2つのフレーム構造60を備え、第2の不動要素32は2つのフレーム構造64を備え、それらはすべてほぼU字状である。したがって、第1および第2の不動要素30,32の応力分離は、ビームおよびフレーム構造を介して第1および第2の固定フィンガー62,66を懸吊することによって達成される。
【0038】
図13には、本発明のさらに別の実施形態によるMEMSデバイス120の平面図を示す。MEMSデバイス20,118は、Y方向54における加速度を検出するための一軸加速度計として構成されている。図13の代替の実施形態では、本発明の原理は二軸加速度計MEMSデバイス120に適用されている。図1〜4のシェーディングおよび/またはハッチングにしたがって、MEMSデバイス120の構造層内に形成される様々な要素を区別するために、図13に関連しても同じシェーディングおよび/またはハッチングが用いられる。
【0039】
MEMSデバイス120は、基板122、第1の構造層124、および第2の構造層126を備える。数々の要素が第1の構造層124に形成されている。一実施形態では、これらの要素には、プルーフマス28(右上方向の幅の狭いハッチング)、第1の不動要素130(右下方向の幅の広いハッチング)、および第2の不動要素132(右上方向の幅の広いハッチング)が含まれる。MEMSデバイス120は、MEMSデバイス製造プロセス80(図5)によって製造可能である。
【0040】
プルーフマス128、第1の不動要素130、第2の不動要素132は、基板122の面134の上方に懸吊されている。プルーフマス128は、1つ以上のプルーフマスアンカー部136(例えば、1つアンカー部136)を介して基板122に取り付けられている。同様に、第1の不動要素130は1つ以上の第1のアンカー部138(例えば、8つのアンカー部138)を介して基板122に取り付けられており、第2の不動要素132は1つ以上の第2のアンカー部140(例えば、4つのアンカー部40)を介して基板34に固定されている。アンカー部136,138、および140は、それらに対応する要素128,130、および132の上方の「X」の印によって表されている。示したように、プルーフマスアンカー部136は、基板122のほぼ中央領域146のアンカー領域にてプルーフマス128に取り付けられている。同様に、第1のアンカー部138は基板122の中央領域146のアンカー部にて第1の不動要素130に取り付けられており、第2のアンカー部140は基板122の中央領域146のアンカー領域にて第2の不動要素132に取り付けられている。
【0041】
1つ以上の弾性部材152(またはバネ)は、プルーフマス128をプルーフマスアンカー部136に相互に接続している。一実施形態では、弾性部材152によって、互いに垂直であり、かつ、平面すなわち基板122の平坦な面134に平行である2つの方向におけるプルーフマス128の移動が可能となる。この2つの方向は、Y方向54およびX方向154を含む。
【0042】
プルーフマス128は、複数の突出部156を備え、それらはすべてプルーフマス128の外部フレーム158に接続されている。突出部156は、基板122の平坦な面134にほぼ平行に延びている。加えて、第1の不動要素130は、第1のアンカー部138に取り付けられている1つ以上のフレーム構造160と、基板122の平坦な面134にほぼ平行に延びている幾つかの第1の固定フィンガー162とを備える。同様に、不動要素132は、アンカー部140に取り付けられている1つ以上のフレーム構造164と、基板122の平坦な面134にほぼ平行に延びている幾つかの第2の固定フィンガー166とを備える。第1および第2の固定フィンガー162,166からなる対の間には、プルーフマス128の突出部156が介在している。よって、第1および第2の不動要素130,132は、それぞれ第1および第2のアンカー部138,140を介して基板122に取り付けられており、要素130,132はプルーフマス128に対して不動である、すなわち、固定されている。
【0043】
第1および第2の固定フィンガー162,166は第2の構造層126に形成された要素を介して第1および第2の固定フィンガー162,166とそれぞれそのフレーム構造160,164との接続によってプルーフマス28に対して「固定されている」、すなわち、不動である。第2の構造層26に形成されたそれらの要素は、1つ以上の第1のビーム168(薄い点描のパターンによって表される)および1つ以上の第2のビーム170(右下方向の幅の狭いハッチングによって表される)を含む。
【0044】
第1のビーム168は、第1のフィンガー162上に形成され第1のフィンガー162の上方を延びている複数の第1の接合部172を介して第1の不動要素130の第1のフィンガー162に接続されている。加えて、第1のビーム168は、第1の不動要素130の適切なフレーム構造160に接続されている。なお、第1のフィンガー162の各々は、第1の不動要素130の別個の部品であり、フレーム構造160および第1のアンカー部138に接続することなく第1の構造層124に形成されている。第1のビーム168は第1の接合部172に接続されており、第1のフィンガー162は互いに相互に接続されるとともに第1の不動要素130の適切なフレーム構造160に相互に接続されている。よって、第1のフィンガー162は基板122上に懸吊されたまま保持されている。
【0045】
同様に、第2のビーム170は、第2のフィンガー166上に形成され第2のフィンガー166の上方を延びている複数の第2の接合部174を介して第2の不動要素132の第2のフィンガー166に接続されている。加えて、第2のビーム170は、第2の不動要素132の適切なフレーム構造164に接続されている。第1のフィンガー162と同様、第2のフィンガー166の各々は、第2の不動要素132の別個の部品であり、フレーム構造164および第2のアンカー部140に接続することなく第1の構造層124に形成されている。第2のビーム170は第2の接合部174に接続されており、第2のフィンガー166は互いに相互に接続されるとともに第2の不動要素132の適切なフレーム構造164に相互に接続されている。よって、第2のフィンガー166は基板122上に懸吊されたまま保持されている。第1および第2の接合部172,174は、中実の黒いシェーディングによって図13に示されている。
【0046】
示した実施形態では、MEMSデバイス120は容量感知能力を有する加速度計であってよい。弾性部材152は、何らかの他の手段によるY方向54またはX方向154における選択的な力の印可によってその変形が生じるまで、基板122に平行な中立位置において基板122の上にプルーフマス128を懸吊している。プルーフマス128のY方向54における側方移動は、第1および第2の固定フィンガー162,166(それらの間にはプルーフマス128が介在するとともに、Y方向54にほぼ垂直に配向されている)のサブセット176によって検出され得る。同様に、プルーフマス128のX方向154における側方移動は、第1および第2の固定フィンガー162,166(それらの間にはプルーフマス128が介在するとともに、X方向154にほぼ垂直に配向されている)のサブセット178によって検出され得る。Y方向54および/またはX方向154における側方移動は、続いて電子機器(図示せず)によって加速度に応じた大きさのパラメータを有する信号(電圧、電流、周波数など)へと変換される。
【0047】
図14,15を参照する。図14には、本発明の別の実施形態によるMEMSデバイス180の平面図を示し、図15には図14における15−15区分線に沿ったMEMSデバイス180の側面図を示す。上述の製造方法について、相対的に厚い第1の構造層24(図2)の上に位置する相対的に薄い第2の構造層26(図2)の形成に関連して記載する。他の実施形態では、相対的に厚い上に位置する層の堆積より前に相対的に薄い下に位置する層を堆積することが望ましい。図14,15の代替の実施形態では、MEMSデバイス製造方法の原理は、相対的に薄い第1の構造層と第1の構造層の上に位置する相対的に厚い第2の構造層とを有する一軸加速度MEMSデバイス180に対して適用される。図1〜4におけるシェーディングおよび/またはハッチングにしたがって、MEMSデバイス180の構造層内に形成される様々な要素を区別するために、図14,15に関連しても同じシェーディングおよび/またはハッチングが用いられる。
【0048】
MEMSデバイス180は、基板182、第1の構造層184、および第2の構造層186を備える。第1の構造層184に形成される要素には、第1のビーム188(薄い点描のパターンによって表される)および第2のビーム190(右下方向の幅の狭いハッチングによって表される)が含まれる。第2の構造層186に形成される要素には、プルーフマス192(右上方向の幅の狭いハッチングによって表される)、第1の不動要素194(右下方向の幅の広いハッチングによって表される)、第2の不動要素194(右上方向の幅の広いハッチングによって表される)、および弾性部材198が含まれる。
【0049】
プルーフマス192、第1の不動要素194、第2の不動要素196、および弾性部材198、は基板182の面200の上方に懸吊されている(図15を見ると最もよく理解される)。プルーフマス192は、1つ以上のプルーフマスアンカー部202を介して基板182に固定されている。同様に、第1の不動要素194は1つ以上の第1のアンカー部204を介して基板182に固定されており、第2の不動要素196は1つ以上の第2のアンカー部206を介して基板182に固定されている。図14において、アンカー部202,204、および206は、それらに対応する要素192,194、および196の上方の「X」の印によって表されている。
【0050】
一実施形態では、アンカー部202,204、および206は、基板182の中央領域208で犠牲層および構造層のビルドアップによって形成されており、アンカー部202,204、および206は、第2の構造層186に形成されている対応する要素192,194、および196に取り付けられている。犠牲層210は、中央領域208にてアンカー部202,204、および206を下に位置する基板182に取り付けており、図15では濃い点描のパターンによって示されている。
【0051】
プルーフマス192、第1の不動要素194、第2の不動要素196、および弾性部材198の残るフィーチャは、プルーフマス28、第1の不動要素30、第2の不動要素32、および弾性部材52(図1〜4)における設計と同様である。したがって、簡単のため、要素28,30,32,52の特定のフィーチャについては要素192,194,196、および198に同じく適用され、ここでは繰り返さない。
【0052】
第1の接合部212は、第1のビーム188を第1の不動要素194の一部分(例えば、固定フィンガおよびフレーム構造)に接続する。同様に、第2の接合部214は、第2のビーム190を第2の不動要素196の一部分(例えば、固定フィンガおよびフレーム構造)に接続する。MEMSデバイス180(第1および第2の構造層184,186および第1および第2の接合部212,214に形成されている要素を含む)は、MEMSデバイス製造プロセス80(図5)にしたがって形成され得る。
【0053】
図14,15に関連して図5を参照する。第1および第2のビーム188,190は、MEMSデバイス製造プロセス80の作業86の実行を介して第1の構造層184に形成される。次に、第2の犠牲層(図示せず)は第1の構造層184の上に堆積され、開口部(図示せず)は作業92,94の実行を介して第1および第2の接合部212,214について形成される。次に、作業104の実行を介して、プルーフマス192、第1の不動要素194、第2の不動要素196、および弾性部材198を形成するべく、第2の構造層186が形成される。第1および第2の構造層184,186の様々な要素は、続いて、作業112によって犠牲層を除去することにより、下に位置する基板182から懸吊される、すなわち、解放される。さらに、相対的に薄いビーム188,190によって、不動要素194,196を基板182の上方に懸吊したまま保持し、中央領域208においてのみ基板182に取り付けておくのに十分な構造安定性が提供される。
【0054】
本明細書に記載の実施形態は、下に位置する基板から応力分離されたMEMSセンサを備える。1つの構造層に形成された不動要素の応力分離は、製造プロセスにおいて第2の構造層を通じて要素を支持することによって達成される。この設計アプローチでは、2つの構造層の要素を接続する接合部が必要である。この2つの構造層は、下に位置する基板から後に解放される、すなわち、脱着される。したがって、一方の構造層における要素は、層の面内における感知能力を得ることが可能であり、他方の構造層は要素を不動のまま、すなわち固定されたまま保持するので、基板に直接接触しない。これによって、基板に対するアンカー接続が、基板に近接して中心に配置されることが可能となる。アンカー部が中心に配置される構成と、アンカー部の量が最小化されることとによって、基板の面を通じたひずみが一貫せず不規則であることによる不利な影響が減少される。よって、そうしたMEMSデバイスは、熱によって誘起されるパッケージ応力勾配に対する影響を受けにくく、従来製造プロセスを利用して低コスト、かつ、小型の、シングルダイトランスデューサとして容易に実装されることができる。
【0055】
前述の詳細な説明は、具体的な例示の実施の形態を参照しながら本発明を説明するものである。しかし、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更が加えられ得ることが理解されよう。詳細な説明及び添付図面は限定するものではなく、単に例と見なされるべきであり、そのような修正又は変更は、すべて本明細書で説明され定義された本発明の範囲内に入るものとする。以上、具体的な実施例に関して、利益、他の利点、及び問題の解決方法について説明してきたが、利益、利点、問題の解決方法、及びこうした利益、利点、問題 の解決方法をもたらし、又はより顕著なものにする構成要素は、全ての請求項又は何れかの請求項において重要とされ、要求され、不可欠とされる機能や構成要 素であると見なされるべきではない。例えば、MEMSデバイスは、様々な数の中心に配置されたアンカー部および/またはビームを備えるように適合されてよい。加えて、プルーフマス、不動要素、ビーム、弾性部材などが、示した以外の形状および寸法であってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板から分離されている微小電気機械システム(MEMS)デバイスを製造するための方法において、
基板の上に位置する第1の犠牲層上に第1の構造層を形成して、溝によって互いに隔てられた第1および第2の要素を形成する工程と、
第1の構造層の上に第2の犠牲層を堆積する工程であって、第2の犠牲層は前記溝を少なくとも部分的に充填する、工程と、
第2の犠牲層を通じる開口部を形成して、第2の要素の一部を露出させる工程と、
第2の犠牲層の上に第2の構造層を形成して第3の要素を形成する工程であって、第2の構造層は前記開口部を充填して第2の要素と第3の要素との間に接合部を形成する工程と、
第1および第2の犠牲層の少なくとも一部を除去することによって、前記基板の上に第1、第2、および第3の要素を懸吊する工程であって、前記基板の上の第1、第2、および第3の要素の位置に対する前記基板上の中央領域においてのみ、第2の要素が前記基板に取り付けられており、第3の要素は少なくとも前記接合部を介して第2の要素に接続される工程と、を備える方法。
【請求項2】
前記基板上に第1のアンカー部を形成する工程と、
前記基板上の前記中央領域に第2のアンカー部を形成する工程と、
前記基板の平面とほぼ平行に第1の要素が移動することを可能にするように、第1の要素と第2の要素との間に弾性部材を形成する工程であって、第2の要素が第1の要素に対して移動不能であるように第2の要素は第2のアンカー部に固定される、工程と、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の構造層を形成する前記工程によって、別の溝によって第1および第2の要素から隔てられた第4の要素が形成され、
前記懸吊する工程によって、第4の要素が前記基板の上に懸吊され、第4の要素が第1の要素に対して移動不能であるように第4の要素は前記基板の中央領域において第3のアンカー部を介して前記基板に取り付けられている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1の構造層を形成する前記工程によって、別の溝によって第1および第2の要素から隔てられた第4の要素が形成され、
堆積する工程によって、前記別の溝は第2の犠牲層により少なくとも部分的に充填され、
開口部を形成する工程によって、第4の要素の第2の
部分を露出する、第2の犠牲層を通じる第2の開口部が形成され、
第2の構造層を形成する工程によって第5の要素が形成され、第2の構造層は第2の開口部を充填して5の要素と第4の要素との間に第2の接合部を形成し、
懸吊する工程によって第4および第5の要素が基板の上に懸吊され、前記基板の中央領域においてのみ、第4の要素が前記基板に取り付けられており、第5の要素は第2の接合部を介して第4の要素に接続される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の構造層を形成する前記工程によって、突出部を有する第1の要素と、該突出部の介在する複数のフィンガーを有する第2の要素とが形成され、
開口部を形成する前記工程によって、第2の犠牲層を通じるとともに前記複数のフィンガーの各々の一部分を露出する開口部が形成され、前記開口部は該開口部のうちの1つであり、
第2の構造層を形成する前記工程は、
前記開口部の各々を充填して複数の接合部を形成する工程であって、前記接合部は該複数の接合部のうちの1つである、工程と、
前記接合部の各々に接続されているビームとして、第2の構造層に第3の要素を形成し、前記複数のフィンガーが該ビームに相互接続され、前記突出部が該ビームに接続されない工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フィンガーは第1のフィンガーであり、前記開口部は第1の開口部であり、前記ビームは第1のビームであり、
第1の構造層を形成する前記工程によって、前記突出部の介在する複数の第2のフィンガーを有する第4の要素が形成され、
開口部を形成する前記工程によって、第2の犠牲層を通じるとともに前記複数の第2のフィンガーの各々の第2の部分を露出する第2の開口部が形成され、
第2の構造層を形成する前記工程は、さらに、
前記第2の開口部の各々を充填して第2の接合部を形成する工程と、
前記第2の接合部の各々に接続されている第2のビームとして、第2の構造層に第5の要素を形成し、前記第2のフィンガーが該第2のビームに相互接続され、前記突出部および前記第1のフィンガーが該第2のビームに接続されない工程と、を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第1の構造層を形成する前記工程によって、第1のビームとしての第1の要素と第2のビームとしての第2の要素とが形成され、
開口部を形成する前記工程によって、第2の犠牲層を通じるとともに第1のビームの第1の部分を露出する第1の開口部が形成され、第2の犠牲層を通じるとともに第2のビームの第2の部分を露出する第2の開口部が形成され、
第2の構造層を形成する工程は、
前記第1および第2の開口部を充填してそれぞれ第1および第2の接合部を形成する工程と、
可動要素を形成する工程であって、可動要素は該可動要素を基板に取り付けるための第1のアンカー部を有し、前記可動要素は前記基板の1つの平面に対して可動であり、突出部を備える、前記工程と、
前記中央領域に第2のアンカー部を有する第1の不動要素として第3の要素を形成する工程であって、第3の要素は複数の第1のフィンガーを備え、前記第1の接合部によって前記複数の第1のフィンガーが第1のビームに接続され、第1の不動要素の第1のフィンガーが相互に接続される前記工程と、
前記中央領域に第2のアンカー部を有する第2の不動要素として第4の要素を形成する工程であって、第4の要素は複数の第2のフィンガーを備え、前記第2の接合部によって前記複数の第2のフィンガーが第2のビームに接続され、第2のフィンガーが相互に接続され、第1および第2のフィンガーには前記突出部が介在する前記工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
懸吊する工程は、第2の犠牲層のほぼ全体を除去する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
懸吊する工程は、第1および第2の要素の下に位置する第1の犠牲層のほぼ全体を除去する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
微小電気機械システム(MEMS)デバイスにおいて、
基板と、
第1の構造層に形成された第1の要素および第2の要素であって、第1の要素および第2の要素の両方は基板の一部分の上に懸吊されており、第1の要素は基板に可動に接続されており、第2の要素は基板に不動に接続されており、基板の上方における第1の要素および第2の要素の位置に対する該基板の中央領域においてのみ、第2の要素が基板に取り付けられている、第1の要素および第2の要素と、
第1の構造層から離間した第2の構造層に形成されている第3の要素と、
第2の要素と第3の要素との間に形成されており、第3の要素を第2の要素に接続する接合部と、を備えるMEMSデバイス。
【請求項11】
前記基板の中央領域の上に位置する犠牲層をさらに備え、該犠牲層は前記基板において第1および第2の要素が懸吊されている部分の上に位置していない、請求項10に記載のMEMSデバイス。
【請求項12】
前記基板に取り付けられている第1のアンカー部と、
第1の要素と第1のアンカー部との間に接続されている弾性部材であって、第1の要素は前記基板の平面に対しほぼ平行に移動可能である弾性部材と、
前記基板の中央領域に位置し、第2の要素と接続されている第2のアンカー部であって、第2の要素は第1の要素に対して不動である第2のアンカー部と、をさらに備える請求項10に記載のMEMSデバイス。
【請求項13】
第1の構造層に形成されており、前記基板の前記部分の上方に懸吊される第4の要素と、
前記基板の中央領域に位置し、第4の要素と接続されている第3のアンカー部であって、第4の要素は第1の要素に対して不動である第3のアンカー部と、をさらに備え、第4の要素は前記基板の中央領域においてのみ前記基板に取り付けられている、請求項12に記載のMEMSデバイス。
【請求項14】
弾性部材によって、第1の要素は第1の方向と第1の方向に垂直な第2の方向とに移動可能であり、第1および第2の方向の各々は前記基板の平面に対しほぼ平行である、請求項12に記載のMEMSデバイス。
【請求項15】
第1の要素は、前記基板の平面にほぼ平行に延びている突出部を備え、
第2の要素は、前記突出部の介在するフィンガーを備え、
第3の要素は、ビームとして第2の構造層に形成されており、
前記MEMSデバイスは、第1および第2の構造層の間に延びている複数の接合部をさらに備え、前記接合部は複数の接合部のうちの1つであり、ビームは接合部の各々に接続されており、フィンガーはビームによって相互に接続されており、突出部はビームに接続されていない、請求項10に記載のMEMSデバイス。
【請求項16】
前記フィンガーは第1のフィンガーであり、接合部は第1の接合部であり、ビームは第1のビームであり、前記MEMSデバイスは、
第1の構造層に形成されており、前記基板の前記部分の上方に懸吊される第4の要素であって、前記突出部の介在する第2のフィンガーを備える第4の要素と、
第2の構造層に形成されている第2のビームと、
第1および第2の構造層の間に延びている複数の第2の接合部をさらに備え、第2のビームは第2の接合部の各々に接続されており、第2のフィンガーは第2のビームによって相互に接続されており、突出部および第1のフィンガーは第2のビームに接続されていない、請求項15に記載のMEMSデバイス。
【請求項17】
前記突出部のうちの少なくとも1つは前記フィンガーのうちの一対のフィンガーの間に挿間されており、前記ビームは前記突出部のうちの前記少なくとも1つの位置を横切り、前記ビームは前記接合部を介して前記一対のフィンガーの各々に取り付けられている、請求項15に記載のMEMSデバイス。
【請求項18】
基板から分離されている微小電気機械システム(MEMS)デバイスを製造するための方法において、
基板の上に位置する第1の犠牲層上に第1の構造層を形成して、溝によって互いに隔てられた第1および第2の要素を形成する工程と、
第1の構造層の上に第2の犠牲層を堆積する工程であって、第2の犠牲層は前記溝を少なくとも部分的に充填する、工程と、
第2の犠牲層を通じる開口部を形成して、第2の要素の一部を露出させる工程と、
第2の犠牲層の上に第2の構造層を形成して第3の要素を形成する工程であって、第2の構造層は前記開口部を充填して第2の要素と第3の要素との間に接合部を形成する工程と、
第1および第2の犠牲層のほぼ全体を除去することによって、前記基板の上に第1、第2、および第3の要素を懸吊する工程であって、前記基板の上の第1、第2、および第3の要素の位置に対する前記基板の中央領域においてのみ、第2の要素が前記基板に取り付けられており、第3の要素は前記接合部を介して第2の要素に接続される工程と、を備える方法。
【請求項19】
第1の構造層を形成する前記工程によって、突出部を有する第1の要素と、該突出部の介在する第1のフィンガーを有する第2の要素と、該突出部の介在する第2のフィンガーを有する第4の要素とが形成され、
開口部を形成する前記工程によって、第2の犠牲層を通じるとともに第1のフィンガーの第1の部分を露出する第1の開口部が形成され、第2の犠牲層を通じるとともに第2のフィンガーの第2の部分を露出する第2の開口部が形成され、
第2の構造層を形成する前記工程は、
前記第1の開口部を充填して複数の第1の接合部を形成する工程であって、前記接合部は複数の第1の接合部のうちの1つである、工程と、
前記第2の開口部を充填して複数の第2の接合部を形成する工程と、
前記第1の接合部の各々に接続されている第1のビームとして、第2の構造層に第3の要素を形成し、前記第1のフィンガーが第1のビームによって相互に接続される工程と、
前記第2の接合部の各々に接続されている第2のビームとして、第2の構造層に第4の要素を形成し、前記第2のフィンガーが第2のビームによって相互に接続される工程と、を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1の構造層を形成する前記工程によって、第1のビームとしての第1の要素と第2のビームとしての第2の要素とが形成され、
開口部を形成する前記工程によって、第2の犠牲層を通じるとともに第1のビームの第1の部分を露出する第1の開口部が形成され、第2の犠牲層を通じるとともに第2のビームの第2の部分を露出する第2の開口部が形成され、
第2の構造層を形成する工程は、
前記第1および第2の開口部を充填してそれぞれ第1および第2の接合部を形成する工程と、
可動要素を形成する工程であって、可動要素は該可動要素を基板に取り付けるための第1のアンカー部を有し、前記可動要素は前記基板の1つの平面に対して可動であり、突出部を備える、前記工程と、
前記中央領域にのみ第2のアンカー部を有する第1の不動要素として第3の要素を形成する工程であって、第3の要素は複数の第1のフィンガーを備え、前記第1の接合部によって前記複数の第1のフィンガーが第1のビームに接続され、第1の不動要素の第1のフィンガーが第1のビームによって相互に接続される前記工程と、
前記中央領域にのみ第3のアンカー部を有する第2の不動要素として第4の要素を形成する工程であって、第4の要素は複数の第2のフィンガーを備え、前記第2の接合部によって前記複数の第2のフィンガーが第2のビームに接続され、第2の不動要素の第2の複数の第2のフィンガーが第2のビームによって相互に接続され、第1および第2のフィンガーには前記突出部が介在する前記工程と、を含む、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−503341(P2013−503341A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526804(P2012−526804)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/044517
【国際公開番号】WO2011/028359
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】