説明

感光性カバーレイ

【課題】硬化後のフレキシブルプリント基板との積層体の反りを低減することができる感光性カバーレイを提供すること。
【解決手段】少なくとも(A)下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物、(B)可溶性ポリイミド、(C)光重合性化合物および(D)光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性カバーレイ。
【化1】


(上記一般式(1)中、Xは2価の連結基を示す。nおよびmはそれぞれ1〜10の範囲を示す。ただし、n+m≧4である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性カバーレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルプリント基板の保護膜や絶縁膜として、ポリイミドフィルムなどの成形体に接着剤を塗布して得られるカバーレイフィルムなどが用いられてきた。カバーレイフィルムをパターン加工する方法として、パンチングによる孔空け加工が一般的に用いられていた。しかし近年、配線の微細化、フレキシブルプリント基板に搭載されるチップ部品の小型化により、かかる加工では微細化に対応することが困難となっている。そこで、微細パターン加工を実現するため、フォトグラフィック技術を活用した感光性カバーレイが求められている。
【0003】
現像性に優れる感光性材料としてアクリル樹脂が挙げられるが、耐熱性や絶縁性が不十分であり、半導体素子やフレキシブル配線基板、リジット基板、集積回路等の保護膜や絶縁膜等の電気・電子用途には適していない。そこで、電気特性や耐薬品性、耐熱性に優れるポリイミド系樹脂を用いた感光性カバーレイが検討されている。
【0004】
アルカリ水溶液で現像可能な感光性樹脂組成物として、例えば、水酸基を含有するポリイミド樹脂に炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂と、(メタ)アクリル系化合物と、光反応開始剤および/または増感剤を含有する感光性樹脂組成物や(例えば、特許文献1参照)、プリント配線板表面に塗工・乾燥・露光・アルカリ現像後、硬化する感光性樹脂組成物において、アルカリ現像工程において0.8重量%以下の炭酸ナトリウム水溶液で現像可能である感光性樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、これらの感光性樹脂組成物は硬化後の反りが大きい課題があった。
【0005】
一方、接着剤組成物として、カルボキシル基および/または水酸基を有する熱可塑性樹脂、分子内にオキサゾリン基を有する化合物および熱硬化性樹脂を含有する接着剤組成物や(例えば、特許文献3参照)、側鎖にカルボキシル基を有するポリイミド樹脂、光硬化性樹脂、光重合開始剤および多官能エポキシ化合物を含有する接着剤組成物(例えば、特許文献4参照)が提案されている。しかしながら、これらの接着剤組成物を硬化して得られる接着シートもまた、反りが大きいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−325616号公報
【特許文献2】特開2008−197544号公報
【特許文献3】特開2008−260907号公報
【特許文献4】特開2008−274269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、硬化後のフレキシブルプリント基板との積層体の反りを低減することができる感光性カバーレイを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも(A)下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物、(B)可溶性ポリイミド、(C)光重合性化合物および(D)光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性カバーレイである。
【0009】
【化1】

【0010】
上記一般式(1)中、Xは2価の連結基を示す。nおよびmはそれぞれ1〜10の範囲を示す。ただし、n+m≧4である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、硬化後のフレキシブルプリント基板との積層体の反りが小さい感光性カバーレイを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の感光性カバーレイは、(A)前記一般式(1)で表されるエポキシ化合物、(B)可溶性ポリイミド、(C)光重合性化合物および(D)光重合開始剤を含む。なお、本発明におけるカバーレイとは、フレキシブルプリント基板の配線を保護する材料を指し、硬化させて保護膜として使用される。硬化前の形状は限定されず、例えば、ワニス状やフィルム状などが挙げられる。前記フレキシブルプリント基板とは、絶縁樹脂フィルム層に導体配線が形成されたものである。例えば、ポリイミドフィルムと銅箔が、直接またはエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの接着剤を介して積層され、銅箔が回路加工された基板が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明における(A)下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物は、分子内に2個のエポキシ基と、4個以上のプロピレンオキサイド(−CO−)を有する化合物である。このようなエポキシ化合物として、“アデカレジン(登録商標)”EP−4003S((株)アデカ製)、PG207GS(東都化成(株)製)などを挙げることができる。
【0014】
【化2】

【0015】
上記一般式(1)中、Xは2価の連結基を示す。nおよびmはそれぞれ1〜10の範囲を示す。ただし、n+m≧4である。
【0016】
エポキシ基を有することにより、感光性カバーレイの硬化後の半田耐熱性を向上させることができ、また、フレキシブルプリント基板との接着性を向上させることができる。さらに、n+m≧4とすること、すなわち、プロピレンオキサイド(−CO−)骨格を4個以上有することにより、感光性カバーレイの硬化後の弾性率を低減し、フレキシブルプリント基板との積層体の反りを低減することができる。プロピレンオキサイド骨格に類似するエチレンオキサイド(−CO−)骨格では、かかる反りの低減効果は得られない。また、プロピレンオキサイド骨格の数が4個未満の場合にも、かかる反りの低減効果は得られない。プロピレン基は分岐していることが好ましく、n+mの値は5以上が好ましい。このような化合物を含有することにより、硬化後のフレキシブルプリント基板との積層体の反りをより低減することができ、また、アルカリ水溶液に対する現像性を向上させることができる。
【0017】
また、一般式(1)におけるXは2価の連結基を示し、単結合でもよい。芳香族環を有することが好ましく、アルカリ溶液、特に1重量%炭酸ナトリウムによる現像性が向上する。2以上の芳香族環を−CH−、−C(CH−、−O−、−CO−、−SO−、−S−、−NHCO−、−C(CF−または−COO−で連結したものがより好ましく、一般式(1)で表されるエポキシ化合物がビスフェノールA骨格を有することがより好ましい。このような化合物を含有することにより、感光性カバーレイの硬化後の弾性率を低減し、フレキシブルプリント基板との積層体の反りをより低減することができる。また、1重量%炭酸ナトリウム水溶液に対する現像性を向上させることができる。
【0018】
本発明における(B)可溶性ポリイミドとは、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジエチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、γ−ブチロラクトン、メチルモノグライム、メチルジグライム、メチルトリグライム、エチルモノグライム、エチルジグライム、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒のいずれかの有機溶媒100gに対して、25℃で1g以上溶解するものを指す。
【0019】
(B)可溶性ポリイミドは、酸無水物残基とジアミン残基を有する。本発明においては、ピロメリット酸二無水物残基を全酸二無水物残基中10mol%以上有することが好ましい。これにより、1重量%炭酸ナトリウム水溶液に対する現像性を向上させることができる。30mol%以上がより好ましく、50mol%以上がより好ましい。
【0020】
(B)可溶性ポリイミドは、ピロメリット酸二無水物残基に加えて、またはピロメリット酸二無水物残基にかえて、他の酸無水物残基を有してもよい。他の酸無水物残基を構成する酸無水物としては、例えば、2,2’−ヘキサフルオロプロピリデンジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシルフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシルフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(3,3−カルボキシルフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。特に好ましくは、4,4’−オキシジフタル酸無水物である。
【0021】
本発明における(B)可溶性ポリイミドのジアミン残基は特に限定されないが、下記一般式(2)または(3)で表されるジアミンの残基が好ましい。これらを2種以上有してもよい。
【0022】
【化3】

【0023】
上記一般式(2)中、aは3〜10の範囲を示す。上記一般式(3)中、Yは−CH−、−C(CH−、−O−、−CO−、−SO−、−S−、−NHCO−、−C(CF−、−COO−または単結合を示す。
【0024】
上記一般式(2)で表されるジアミン(ポリオキシプロピレンジアミン)は、1重量%炭酸ナトリウム水溶液に対する現像性を向上させることができる。また、感光性カバーレイの硬化後の弾性率をより低減し、フレキシブルプリント基板との積層体の反りをより低減することができる。一般式(2)で表されるジアミンの残基を全ジアミン残基中5mol%以上有することが好ましく、20mol%以上がより好ましく、30mol%以上がより好ましい。また、現像パターンの精度の観点から、60mol%以下が好ましい。
【0025】
上記一般式(3)で表されるジアミンはカルボキシル基を有するため、1重量%炭酸ナトリウム水溶液による現像性をより向上させることができる。また、(A)成分のエポキシ化合物との反応架橋点を有することから、硬化後の耐折れ性を向上させることができる。一般式(3)で表されるジアミンの残基を全ジアミン残基中10mol%以上有することが好ましく、20mol%以上がより好ましい。一方、現像時の膜減りを低減する観点から、60mol%以下が好ましい。
【0026】
上記一般式(3)で表されるジアミンとしては、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、3,3’−ジアミノ−5,5’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルスルフォンなどが挙げられる。
【0027】
(B)可溶性ポリイミドは、上記のジアミン残基に加えて、または、上記のジアミン残基にかえて、下記一般式(4)で表されるジアミン(シロキサンジアミン)の残基を有してもよい。かかるジアミン残基を有することにより、感光性カバーレイの硬化後の弾性率をより低減し、フレキシブルプリント基板との積層体の反りをより低減することができる。一般式(4)で表されるジアミンの残基を全ジアミン残基中5mol%以上有することが好ましく、より好ましくは10mol%以上である。一方、1重量%炭酸ナトリウム水溶液による現像性を向上させる観点から、30mol%以下が好ましい。
【0028】
【化4】

【0029】
上記一般式(4)中、R〜Rは炭素数1〜3のアルキル基またはアリール基を表す。iおよびjは1〜6の整数、kは1〜10の整数を表す。kが2以上の場合、複数のR〜Rはそれぞれ同じでも異なってもよい。
【0030】
本発明における(B)可溶性ポリイミドのジアミン残基を構成するジアミン成分として、前記一般式(2)で表されるジアミン/前記一般式(3)で表されるジアミン/前記一般式(4)で表されるジアミンの組み合わせがより好ましい。
【0031】
(B)可溶性ポリイミドは、上記一般式(2)〜(4)以外のジアミンの残基を有してもよい。他のジアミンとしては、例えば、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン,4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニル−2,2’−プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4,−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3、3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス[3−(アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ポリプロピレングリコールジアミン、ポリエチレングリコールジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス[3−(アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルなどが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0032】
本発明における(B)可溶性ポリイミドは、末端封止剤により末端封止されていてもよい。末端封止剤としては例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,6−キシリジン、3,4−キシリジン、3,5−キシリジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、m−ニトロアニリン、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、o−フェネチジン、m−フェネチジン、p−フェネチジン、o−アミノベンズアルデヒド、p−アミノベンズアルデヒド、m−アミノベンズアルデヒド、o−アミノベンズニトリル、p−アミノベンズニトリル、m−アミノベンズニトリル、2−アミノビフェニル、3−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、2−アミノフェニルフェニルエーテル、3−アミノフェニルフェニルエーテル、4−アミノフェニルフェニルエーテル、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、3−アミノフェニルフェニルスルフィド、4−アミノフェニルフェニルスルフィド、2−アミノフェニルフェニルスルホン、3−アミノフェニルフェニルスルホン、4−アミノフェニルフェニルスルホン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、1−アミノ−2−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、2−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、7−アミノ−2−ナフトール、8−アミノ−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、9−アミノアントラセンなどの芳香族モノアミンを挙げることができる。この中でもm−アミノフェノールが好ましい。また、これらを2種以上用いてもよい。
【0033】
本発明における(B)可溶性ポリイミドは、重量平均分子量10,000以上30,000以下であることが好ましい。重量平均分子量を10,000以上とすることにより、硬化後の耐折れ性を向上させることができる。一方、重量平均分子量を30,000以下とすることにより、1重量%炭酸ナトリウム水溶液による現像性を向上させることができる。20,000以下がより好ましく、15,000以下がより好ましい。また、可溶性ポリイミドを2種以上含有する場合、少なくとも1種の重量平均分子量が上記範囲であればよい。
【0034】
(B)可溶性ポリイミドの重量平均分子量は、次の方法により求めることができる。可溶性ポリイミドをN−メチルピロリドン(NMP)に溶解した固形分濃度0.1重量%のポリイミド溶液を用い、GPC装置Waters2690(Waters(株)製)によりポリスチレン換算の重量平均分子量を算出する。GPC測定条件は、移動層をLiClとリン酸をそれぞれ濃度0.05mol/Lで溶解したNMPとし、展開速度を0.4ml/分とする。使用するGPC装置として、例えば、
検出器:Waters996
システムコントローラー:Waters2690
カラムオーブン:Waters HTR−B
サーモコントローラー:Waters TCM
カラム:TOSOH grard comn
カラム:THSOH TSK−GEL α−4000
カラム:TOSOH TSK−GEL α−2500などが挙げられる。
【0035】
(B)可溶性ポリイミドは、酸無水物とジアミン、必要により末端封止剤を、好ましくは溶媒中で反応させてポリイミド前駆体を得て、熱または適当な触媒により、閉環させることにより得ることができる。得られた反応液を、そのままポリイミドワニスとして感光性カバーレイの調製に用いてもよい。ポリイミドの重合に使用される溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサンメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトンなどの極性溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、蓚酸ジエチル、炭酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど炭化水素類が挙げられる。これらの中でもN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。また、これらを2種以上用いてもよい。
【0036】
なお、本発明における(B)可溶性ポリイミドとは、イミド化率90%以上のものを指す。99%以上が好ましく、100%がより好ましい。
【0037】
本発明の感光性カバーレイは、(C)光重合性化合物および(D)光重合開始剤を含有する。(C)光重合性化合物は、分子内に不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物が好ましい。例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称を示す。
【0038】
(C)光重合性化合物として、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(1,2−プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリ(1,2−プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、テトラ(1,2−プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、エチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどが挙げられる。また、エポキシ変性(メタ)アクリル樹脂やウレタン変性(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル変性(メタ)アクリル樹脂なども挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0039】
これらの中でも、ポリエチレングリコールジアクリレートとウレタンアクリレートが好ましい。ポリエチレングリコールジアクリレートは、炭酸ナトリウム水溶液による現像性をより向上させることができる。ウレタンアクリレートは、硬化後の応力と弾性率をより低減することができる。
【0040】
ポリエチレングリコールジアクリレートとしては、例えば、“アロニックス(登録商標)”M−245、M315、M450(以上、商品名、東亞合成(株)製)などがあり、ウレタンアクリレートとしては、例えば、CN981、CN982E75、CN982P90、CN966J75、CN9001(以上、商品名、巴工業(株)製)などが挙げられる。
【0041】
(D)光重合開始剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’,4”−トリス(ジメチルアミノ)トリフェニルメタン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ジイミダゾール、アセトフェノン、ベンゾイン、2−メチルベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−t−ブチルアントラキノン、1,2−ベンゾ−9,10−アントラキノン、メチルアントラキノン、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジアセチルベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、2(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2[2’(5”−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドカルコン、ジ(テトラアルキルアンモニウム)−4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルフォネート、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、ビス(n5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、ヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、OXE−02(チバ・ジャパン製)、“オプトマー(登録商標)”N1919、NCI−831((株)アデカ製)が好ましい。
【0042】
本発明の感光性カバーレイにおいて、(A)一般式(1)で表されるエポキシ化合物の含有量は、(B)可溶性ポリイミド100重量部に対して10〜30重量部が好ましい。また、(C)光重合性化合物の含有量は、(B)可溶性ポリイミド100重量部に対して50〜70重量部が好ましく、(D)光重合開始剤の含有量は、(B)可溶性ポリイミド100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。(C)光重合性化合物および(D)光重合開始剤の含有量を上記範囲とすることにより、光硬化反応を適度に効率良く進めることができる。
【0043】
本発明の感光性カバーレイは、必要に応じて難燃剤、消泡剤、充填剤、レベリング剤、重合禁止剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0044】
充填剤としては、シリカ、タルク、硫酸バリウム、ワラストナイト、炭酸カルシウムなどの無機充填剤、有機ポリマー充填剤などを挙げることができる。具体的には、SOE2、SOE3(以上、商品名、(株)アドマテックス製)、HE5(商品名、竹原化学工業(株)製)、SG95、D−1000、D−800、D−600(以上、商品名、日本タルク(株)製)、B−30、B−35、BF21、BF40(以上、商品名、堺化学工業(株)製)などが挙げられる。充填剤の含有量は、(B)可溶性ポリイミドを100重量部に対して20〜40重量部が好ましい。
【0045】
本発明の感光性カバーレイは、溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0046】
本発明の感光性カバーレイは、1重量%炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であることが好ましい。ここで、1重量%炭酸ナトリウム水溶液で現像可能とは、感光性カバーレイを20μmの膜厚になるように銅箔に塗布したものを、ネガ型フォトマスクを配して、i線の積算露光量測定値で100mJ/cm露光し、液温30〜35℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液で、吐出圧0.05〜0.1MPaの条件で現像した場合、未露光部の1重量%炭酸ナトリウム水溶液に対する溶解時間が4分以下であり、光学顕微鏡で200倍に拡大して観察した際にφ50μmのビア底部に溶解残渣がなく、かつ、未露光部が完全に溶解したときの露光部の残膜率が80%以上であることを意味する。
【0047】
本発明の感光性カバーレイは、前記(A)〜(D)および必要によりその他の成分を混合することにより得ることができる。混合方法としては、例えば、3本ロール、ビーズミル装置等の一般的な混練装置により混練する方法や、一般的な撹拌装置により撹拌する方法を挙げることができる。
【0048】
次に、本発明の感光性カバーレイを用いて、硬化膜を形成する方法について説明する。
【0049】
まず、感光性カバーレイをスクリーン印刷、カーテンロール、リバースロール、スプレーコーティング、スピンナーを利用した回転塗布等により基材表面に塗布し、乾燥する。塗布膜の厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。塗布膜の乾燥方法としては、120℃以下の温度で加熱することが好ましく、50〜100℃の温度で加熱することがより好ましい。なお、乾燥を速やかに行うため、熱風を送風することが好ましい。
【0050】
次に、露光およびアルカリ現像を行い、パターンを形成する。例えば、乾燥塗布膜にネガ型のフォトマスクを置き、紫外線、可視光線、電子線、レーザー光線などの活性光線を照射する。露光量は50〜1000mJ/cmが好ましく、50〜400mJ/cmがより好ましい。露光は窒素下で行ってもよく、減圧下で行うことが好ましい。なお、光照射部をより硬化させるため、露光後に加熱処理を施してもよい。アルカリ現像とは、シャワー、パドル、浸漬または超音波等の方法により露光後の塗布膜にアルカリ溶液を接触させ、未硬化部を除去することである。アルカリ現像によって形成したパターンを、リンス処理して不要な残分を除去することが好ましい。リンス液としては、水や酸性水溶液などが挙げられる。
【0051】
アルカリ溶液としては、0.01〜3重量%の炭酸ナトリウム水溶液が好ましく、0.5〜1重量%の炭酸ナトリウム水溶液がより好ましい。本発明の感光性カバーレイはアルカリ溶解性が高く、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液により50μmφのビアパターンを容易に形成することができる。アルカリ溶液の温度は10〜40℃が好ましく、20〜35℃がより好ましい。また、エッチング液の噴霧圧力は0.05〜3.0MPsが好ましく、特に好ましくは、0.1〜2MPsである。
【0052】
次に、加熱処理を行うことにより、形成したパターンを硬化させる。加熱処理の温度は、硬化をより効率的に進める観点から、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。一方、フレキシブルプリント基板の保護膜として用いる場合には、配線の酸化劣化を抑制する観点から、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。また、加熱処理をアルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、酸素による酸化劣化を抑制することができる。
【0053】
本発明の感光性カバーレイから得られる硬化膜は、フレキシブルプリント基板の保護膜として好ましく用いることができる。一例として、本発明の感光性カバーレイを用いてフレキシブルプリント基板配線の保護膜を形成する方法について説明する。まず、感光性カバーレイを基材上に塗布し、乾燥する。通常、フレキシブルプリント基板の基材には、銅などの金属配線パターンが形成されたポリイミドフィルムが用いられる。塗布方法はスクリーン印刷法が好ましい。感光性カバーレイの乾燥後の膜厚は、フレキシブルプリント基板の配線パターンの厚み以上、配線パターンの2倍以下程度が一般的である。配線パターンの厚みは通常9〜18μmであり、配線保護膜の厚みは10〜20μmが好ましい。
【0054】
次に、所定のパターンのマスクを介して露光する。露光には超高圧水銀灯が好ましく用いられる。さらに、現像、硬化処理を行い、配線保護膜を得る。
【実施例】
【0055】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが本発明にはこれらの実施例により限定されるものではない。なお、各実施例において略号で示した原料の詳細を以下に示す。
<ポリイミド合成原料>
PMDA:無水ピロメリット酸無水物(ダイセル化学(株)製)
OPDA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物(マナック(株)製)
SiDA:ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学(株)製)
MBAA:[ビス(4−アミノ−3−カルボキシ)フェニル]メタン(和歌山精化工業(株)製)
D−400:ポリオキシプロピレンジアミン(BASF社製、商品名“D−400” 一般式(2)のa=5.6)
3Ap:3−アミノフェノール(東京化成(株)製)
<光重合性化合物>
CN981:ウレタンアクリレートオリゴマー(サートマー・ジャパン(株)製)
M−245:ポリエチレングリコールジアクリレート(東亞合成(株)製、商品名“アロニックス(登録商標)”M−245)
<光重合開始剤>
N1919:光ラジカル重合開始剤((株)アデカ製、商品名“オプトマー(登録商標)”N1919)
NCI−831;光ラジカル重合開始剤((株)アデカ製、商品名“アデカアークルズ(登録商標)”NCI−831)
<エポキシ化合物>
850−S:Bis(ビスフェノール)A型エポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名“EPICLON(登録商標)850−S)
EP−4000S:プロピレンオキサイド変性BisA型エポキシ樹脂((株)アデカ製、商品名“アデカレジン(登録商標)”EP−4000S、下記一般式(5)におけるn+m=2)
EP−4003S:プロピレンオキサイド変性BisA型エポキシ樹脂((株)アデカ製、商品名“アデカレジン(登録商標)”EP−4003S、下記一般式(5)におけるn+m=5〜6)
【0056】
【化5】

【0057】
PG207GS:プロピレンオキサイド変性エポキシ樹脂(東都化成(株)製)、下記一般式(6)におけるl=4〜6
【0058】
【化6】

【0059】
BEO−60E:エチレンオキサイド変性BisA型エポキシ樹脂(新日本理化(株)製、商品名リカレジンBEO−60E))
<熱重合禁止剤>
HQME:ヒドロキノンモノメチルエーテル
<無機充填剤>
SG−95:タルク微粒子 平均粒子径2.5μm(日本タルク(株)製)
<界面活性剤>
L1983:“ディスパロン(登録商標)”L1983(楠本化成(株)製)
<着色剤>
PB4920:青色顔料
<溶媒>
NMP:N−メチルピロリドン
γ−BL:γ−ブチロラクトン 。
【0060】
各実施例・比較例における評価方法を次に示す。
【0061】
(1)重量平均分子量測定
ポリイミドをNMPに溶解した固形分濃度0.1重量%の溶液を用い、下に示す構成のGPC装置Waters2690(Waters(株)製)によりポリスチレン換算の重量平均分子量を算出した。GPC測定条件は、移動層をLiClとリン酸をそれぞれ濃度0.05mol/Lで溶解したNMPとし、展開速度を0.4ml/分とした。
検出器:Waters996
システムコントローラー:Waters2690
カラムオーブン:Waters HTR−B
サーモコントローラー:Waters TCM
カラム:TOSOH grard comn
カラム:THSOH TSK−GEL α−4000
カラム:TOSOH TSK−GEL α−2500 。
【0062】
(2)イミド化率測定
ポリイミドをγ−BLに溶解した固形分濃度40〜25重量%の溶液を調製し、シリコンウエハーに膜厚3〜5μmになるようにスピンナーで塗布後、120℃で3分間熱処理した。その半分を、ホットプレートを用いて280℃で5分間熱処理し、完全にイミド基を閉環させた。120℃、280℃で熱処理したもののそれぞれについて、FT−IR(HORIBA製 FT−720)分析を行い、イミド基由来の吸収が現れる1366cm−1のピークの差によりイミド化率を算出した。
【0063】
(3)可溶性評価
ポリイミド1gを25℃のNMP100g中に添加して撹拌し、溶解したものを可溶性と判断した。
【0064】
(4)硬化膜作製
スクリーン印刷機MEC−2400(三谷電子工業(株)製)、SUS製200メッシュ、乳剤厚さ20μm、50mm×50mmのスクリーン版を用いて、厚み15μmの銅箔(NA−VLP:三井金属製)上に、感光性カバーレイを乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布した。ついで、熱風オーブンINH−21CD(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、100℃で30分間熱処理を行った。その後、50×50mmの面積で50〜100μmのビアが100μmピッチで並んだネガ型フォトマスクを配して、i線の積算露光量測定値で100mJ/cm露光した。その後、現像装置AD−1200(ミカサ製)を用い、液温30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として0.1MPaの吐出圧で1分毎に4分間、水洗30秒で現像を行った。ついで、熱風オーブンINH−21CD(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、180℃で60分間熱処理を行い、感光性カバーレイを完全に硬化させて硬化膜を得た。
【0065】
(5)単膜フィルム作製
#24〜28のバーコーターを使用して厚み12μmの銅箔(NA−DFF:三井金属製)に感光性カバーレイを乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布し、熱風オーブンINH−21CD(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、100℃で30分間熱処理を行った。その後、i線の積算露光量測定値で100mJ/cm全面露光した。ついで、熱風オーブンINH−21CD(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、180℃で60分間熱処理を行い、感光性カバーレイを完全に硬化させて硬化膜を得た。銅付きの硬化膜を銅エッチング液(塩化第二鉄水溶液)に浸漬し、銅箔を完全に溶解させて水洗を行い、感光性カバーレイの単膜フィルムを得た。
【0066】
(6)現像性評価
前記(4)記載の方法で得られた現像時間1分間〜4分間の各硬化膜の表面を光学顕微鏡で200倍に拡大して観察し、下記基準により評価した。
○:50μmφの感光パターンのビアが確実に空いており、ビア底部に溶解残渣がないもの。
△:50μmφの感光パターンのビアが空いているが、ビア底部に少々溶解残渣が見られるもの。
×:50μmφの感光パターンのビアが全く空いていないもの。
−:50μmφの感光パターンが歪み、剥がれが生じているもの。
【0067】
また、前記(4)記載の方法により得られた硬化膜の残膜率を測定した。未露光部と露光部の膜厚をAMBiOS XP−1((株)テックサイエンス製)によって測定し、次式で表される残膜率を算出した。なお、残膜率の測定には、上記硬化膜の表面観察において○と評価されたものを使用した。○と評価されたサンプルが複数ある場合には、それらすべての膜厚を測定し、数平均値を算出した。
残膜率=((未露光部膜厚−露光部膜厚)/未露光部膜厚)×100%
現像時間4分以内に上記硬化膜表面の評価結果が○となり、残膜率が80%以上となった場合、現像可能と判定した。
【0068】
(7)耐折れ性評価
厚み25μmのポリイミドフィルム“カプトン(登録商標)”100EN(東レ・デュポン(株)製)を50mm×50mmのサイズにカットし、この上に感光性樹脂組成物を乾燥後厚みが20μmになるように塗布して100℃で30分間乾燥した。ついで、超高圧水銀灯で100mJ/cm露光し、熱風オーブンを用いて180℃で60分間熱処理して、硬化膜とポリイミドフィルムとの積層体を得た。得られた積層体を幅10mm×長さ50mmの短冊に切り出し、長さ25mmのところで180°に10回折り曲げて、目視でクラックの有無を観察した。10回折り曲げてもクラックが発生しない場合は○と評価し、クラックが観察された場合は、その時の折り曲げ回数を耐折れ性とした。
【0069】
(8)反り評価
硬化後の感光性カバーレイとフレキシブルプリント基板との積層体の反りをモデル的に評価するため、硬化後の感光性カバーレイとポリイミドフィルムとの積層体の反りを評価した。前記(7)に記載の方法により得られた硬化膜とポリイミドフィルムとの積層体を、平坦な場所に上が凸になるように置き、凸部の高さを測定した。凸部の高さが10mm以下である場合、反りは小さいと評価できる。
【0070】
(9)半田耐熱性評価
上記(4)に記載の方法により得られた硬化膜を温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で24時間放置した後、300℃で完全に溶解しているはんだ浴に10秒間浸漬した。その後引き上げたサンプルを目視観察した。クラックや剥がれ、膨れが発生しているものを×、いずれも発生していないものを○と評価した。
【0071】
(10)膜物性測定(強伸度測定)
上記(5)に記載の方法により得られた感光性カバーレイの単膜フィルムを1cm×15cmの短冊状に片刃で切り、試験片数が5以上になるようにサンプルを用意した。
使用するテンシロン:オリエンテックテンシロンRTA−100
レンジ(100kgN):10〜20%
引っ張り速度(mm/分):300mm/分
測定長(mm):50(mm)
以上の条件で膜物性試験を行い、感光性カバーレイの伸度(%)、応力(MPa)、弾性率(MPa)を測定した。
【0072】
合成例1 ポリイミドの合成
乾燥窒素気流下で500mlの4つ口フラスコにMBAAを12.1g(31.2mol)、D−400を29.4g(50.0mol)、SiDAを6.30g(18.8mol)、NMPを85.1g仕込み、オイルバス中60℃で撹拌し、末端封止剤として3Apを3.27g添加して溶解させた。溶液が均一となったら、PMDA29.4g(90.0mol)とODPA4.65g(10.0mol)を添加して1時間反応させた。その後オイルバスの温度を170〜180℃に上げ、留出水を除去しながら2時間反応させた。その後室温まで放冷し、固形分50重量%のポリイミド溶液Aを得た。得られたポリイミドは可溶性であり、重量平均分子量は14732であり、イミド化率は100%であった。
【0073】
合成例2 ポリイミドの合成
NMPを85.1gから88.7gに、PMDAを29.4gから0gに、ODPAを4.65gから46.5g(100mol)に変更した以外は合成例1と同様にして、固形分50重量%のポリイミド溶液Bを得た。得られたポリイミドは可溶性であり、重量平均分子量は15225であり、イミド化率は100%であった。
【0074】
合成例3 ポリイミドの合成
NMPを85.1gから73.5gに、MBAAを12.1gから19.3g(50mol)に、D−400を29.4gから0gに、SiDAを6.30gから16.7g(50.0mol)に変更した以外は合成例1と同様にして、固形分50重量%のポリイミド溶液Cを得た。得られたポリイミドは可溶性であり、重量平均分子量は13521であり、イミド化率は100%であった。
【0075】
合成例4 ポリイミドの合成
NMPを85.1gから85.0gに、MBAAを12.1gから1.93g(5.0mol)に、D−400を29.4gから32.3g(55.0mol)に、SiDAを6.30gから13.4g(40.0mol)に変更した以外は合成例1と同様にして、固形分50重量%のポリイミド溶液Dを得た。得られたポリイミドは可溶性であり、重量平均分子量は12423であり、イミド化率は100%であった。
【0076】
合成例5 ポリイミドの合成
NMPを85.1gから73.6gに、MBAAを12.1gから4.77g(11.1mol)に、D−400を29.4gから7.24g(11.1mol)に、SiDAを6.30gから29.0g(77.8mol)に変更した以外は合成例1と同様にして、固形分50重量%のポリイミド溶液Eを得た。得られたポリイミドは可溶性であり、重量平均分子量は12041であり、イミド化率は100%であった。
【0077】
実施例1
合成例1記載の方法により得られた可溶性ポリイミド溶液A8gに、CN981を1.9g、M−245を0.6g、NCI−831を0.15g、EP−4003Sを0.8g、L1983を0.08g、HQMEを0.02g、SG−95を1.4g、PB4920を0.02g添加し、混合撹拌後、3本ロールに5回通し、粘性液体である感光性カバーレイAを得た。
【0078】
実施例2
EP−4003S 0.8gにかえてPG207GS 0.8gを加えた以外は実施例1と同様にして、粘性液体である感光性カバーレイBを得た。
【0079】
実施例3
可溶性ポリイミド溶液Aにかえて上記合成例2記載の方法により得られた可溶性ポリイミド溶液Bを使用した以外は実施例1と同様にして粘性液体である感光性カバーレイCを得た。
【0080】
実施例4
可溶性ポリイミド溶液Aにかえて上記合成例3記載の方法により得られた可溶性ポリイミド溶液Cを使用した以外は実施例1と同様にして粘性液体である感光性カバーレイDを得た。
【0081】
実施例5
可溶性ポリイミド溶液Aにかえて上記合成例4記載の方法により得られた可溶性ポリイミド溶液Dを使用した以外は実施例1と同様にして粘性液体である感光性カバーレイEを得た。
【0082】
比較例1
EP−4003S 0.8gにかえてEP−4000S 0.8gを用いた以外は実施例1と同様にして、粘性液体である感光性カバーレイFを得た。
【0083】
比較例2
EP−4003S 0.8gにかえて850−S 0.8gを用いた以外は実施例1と同様にして粘性液体である感光性カバーレイGを得た。
【0084】
比較例3
EP−4003S 0.8gにかえてBEO−60E 0.8gを用いた以外は実施例1と同様にして、粘性液体である感光性カバーレイHを得た。
【0085】
比較例4
合成例5記載の方法により得られた可溶性ポリイミド溶液E8gに、CN981を1.9g、M−245を0.6g、NCI−831を0.15g、L1983を0.08g、HQMEを0.02g、SG−95を1.4g、PB4920を0.02g添加し、混合撹拌後、3本ロールに5回通し、粘性液体である感光性カバーレイIを得た。
【0086】
各実施例および比較例で得られた感光性カバーレイの組成を表1、評価結果を表2に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物、(B)可溶性ポリイミド、(C)光重合性化合物および(D)光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性カバーレイ。
【化1】

(上記一般式(1)中、Xは2価の連結基を示す。nおよびmはそれぞれ1〜10の範囲を示す。ただし、n+m≧4である。)
【請求項2】
前記(B)可溶性ポリイミドが酸二無水物残基とジアミン残基を有し、ピロメリット酸二無水物残基を全酸二無水物残基中10mol%以上有することを特徴とする請求項1記載の感光性カバーレイ。
【請求項3】
前記(B)可溶性ポリイミドが酸二無水物残基とジアミン残基を有し、下記一般式(2)で示されるジアミンの残基を全ジアミン残基中5mol%以上60mol%以下有することを特徴とする請求項1または2記載の感光性カバーレイ。
【化2】

(上記一般式(2)中、aは3〜10の範囲を示す。)
【請求項4】
前記(B)可溶性ポリイミドが酸二無水物残基とジアミン残基を有し、下記一般式(3)で示されるジアミンの残基を全ジアミン残基中10mol%以上60mol%以下有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の感光性カバーレイ。
【化3】

(上記一般式(3)中、Yは−CH−、−C(CH−、−O−、−CO−、−SO−、−S−、−NHCO−、−C(CF−、−COO−または単結合を示す。)
【請求項5】
1重量%炭酸ナトリウム水溶液で現像が可能であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の感光性カバーレイ。
【請求項6】
フレキシブルプリント基板上に請求項1〜5いずれかに記載の感光性カバーレイを硬化させてなる保護膜を有する積層体。

【公開番号】特開2011−17898(P2011−17898A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162497(P2009−162497)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】