説明

感光性樹脂組成物、この感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法及び電子部品

【課題】基板上に形成されたパターンの現像後における接着性を向上させることができる感光性樹脂組成物、パターン形成方法及び電子部品を提供する。
【解決手段】感光性樹脂組成物は、(a)下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位から主としてなるポリマーと、(b)接着助剤として末端に酸無水物基を有するシロキサンと、及び(c)溶媒とを含む。
【化1】


[式中、R1は3価又は4価の有機基、R2は2価の有機基、Rは炭素炭素不飽和二重結合を有する一価の有機基又は炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物がイオン結合したO-+(M+は水素イオン又は炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物と水素からなる陽イオンを表わす。)で表される基であり、全繰り返し単位中に炭素炭素不飽和二重結合を少なくとも1つ含み、mは2以上の整数であり、nは1又は2である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、この感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法及び電子部品に関し、さらに詳しくは、各種実装回路形成用基板及び回路基板や、特に近年高容量化や小型化が急がれているハードディスクドライブ用サスペンジョン上に直接電気的信号線を形成するための部品としての回路形成用基板及び回路基板に使用する感光性樹脂組成物、この感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法及び電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブの高記憶容量化や高速化などの点から、磁気ヘッドとして従来のMIG(メタルインギャップ)や磁気誘導型である薄膜に代わって、磁気抵抗型のMR(Magneto Resistive)素子と薄膜を一体化させた、所謂MR−薄膜複合型ヘッドが注目されている。従来のヘッドが磁気信号の読み書きを1ヘッドで兼用させるのに対し、MRヘッドは読み書きを1ヘッド内で分業させるために、端子の数は2倍(必要に応じてさらにアース端子も加わる)となって、ヘッドとディスク本体を接続するワイヤーの細線化が必要となる。
【0003】
しかしながら、細線化を行うとワイヤーが腐食しやすくなり、また、インピーダンスの整合も取り難くなったり、ヘッドの実装も難しくなるという問題を生じるようになる。このような新たな問題点を解決するための方法として、ヘッドを実装するサスペンジョン上に直接回路を形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭48−16620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような回路形成用基板には、優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミド樹脂層が用いられている。しかしながら、ポリイミド樹脂層の吸水率が高いと、例えばハードディスクドライブ本体にサスペンジョンとしてこのような回路形成用基板を組み込んだ場合に、ポリイミド樹脂層への水の吸脱着に伴う寸法変化が大きくなって、サスペンジョン自体が反ってしまい、アライメント精度が低下すると共に、ディスクと本体との間隔が変化してデバイスとしての性能不良を起こすという問題点があった。また、剛直構造のポリイミド樹脂は、本硬化後における下層の有機層に対して接着性が低下する傾向があり、現像後の放置時間が制限されるという問題点もあった。
【0006】
本発明は、以上のような従来の課題を解決するためになされたものであって、吸水率が低く、下層との接着性が良好なパターンを形成し得る感光性樹脂組成物、この感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法及び電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明による感光性樹脂組成物は、(a)下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位から主としてなるポリマーと、(b)接着助剤として末端に酸無水物基を有するシロキサンと、及び(c)溶媒とを含むことを特徴とする。
【化1】

[式中、R1は3価又は4価の有機基、R2は2価の有機基、Rは炭素炭素不飽和二重結合を有する一価の有機基又は炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物がイオン結合したO-+(M+は水素イオン又は炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物と水素からなる陽イオンを表わす。)で表される基であり、全繰り返し単位中に炭素炭素不飽和二重結合を少なくとも1つ含み、mは2以上の整数であり、nは1又は2である。]
【0008】
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記ポリマー(a)が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位から主としてなるポリマーであることを特徴とする。
【化2】

(式中、R1は3価又は4価の有機基、R2は2価の有機基、M+は水素イオン又は炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物と水素からなる陽イオンを表わし、全繰り返し単位中に炭素炭素不飽和二重結合を少なくとも1つ含み、m’は30〜150、nは1又は2である。)
【0009】
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(b)接着助剤が、トリアルコキシシリルアルキルスクシン酸無水物であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(a)ポリマー100重量部に対して、前記(b)接着助剤1〜20重量部を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明によるパターン形成方法にあっては、前記感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、前記塗布、乾燥工程により得られた感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜を現像する工程と、及び前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明による電子部品にあっては、前記パターン形成方法により得られるパターンの層を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明による電子部品にあっては、電子部品がハードディスクドライブのサスペンジョンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による感光性樹脂組成物は、(a)上記一般式(I)で表わされる繰り返し単位から主としてなるポリマーと、(b)接着助剤として末端に酸無水物基を有するシロキサンと、及び(c)溶媒とを含むので、基板上に形成されたパターンの現像後における下層への接着性を向上させることができる。また、吸水率の非常に低いパターンを形成することができる。この感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法では、感光性樹脂膜から形成されたパターンと、その下層との接着性が向上するので、現像後から加熱による硬化までの放置時間が制限されず、また、現像後から加熱による硬化までの放置時間を長くすることができ、発生したパターンの剥離を防止することができる。さらに、本発明による電子部品は、回路の表面保護膜層又は層間絶縁膜層等として、良好な形状と特性のパターンを有することにより、信頼性の高い電子部品が得られるという効果を奏する。これらの効果は特に、適用される電子部品がハードディスクドライブのサスペンジョンであるときに顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる感光性樹脂組成物、この感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法及び電子部品の一実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この一実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
[感光性樹脂組成物]
本発明による感光性樹脂組成物は、(a)下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位から主としてなるポリマーと、(b)接着助剤として末端に酸無水物基を有するシロキサンと、及び(c)溶媒とを含む。
【0017】
【化1】

[式中、R1は3価又は4価の有機基、R2は2価の有機基、Rは炭素炭素不飽和二重結合を有する一価の有機基又は炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物がイオン結合したO-+(M+は水素イオン又は炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物と水素からなる陽イオンを表わす。)で表される基であり、全繰り返し単位中に炭素炭素不飽和二重結合を少なくとも1つ含み、mは2以上の整数であり、nは1又は2である。]
【0018】
以下、感光性樹脂組成物の各成分について説明する。
(a)成分
(a)上記一般式(I)で表わされる繰り返し単位から主としてなるポリマー(以下、(a)成分とする)において、一般式(I)中のR1は、3価又は4価の有機基である。この基は一般に、原料として使用するテトラカルボン酸(二無水物)又はトリカルボン酸(無水物)におけるカルボキシル基及び酸無水物基以外の残基であり、ベンゼン環等の芳香環を有する基であることが好ましい。具体的には後述するテトラカルボン酸二無水物の残基などが挙げられる。また、一般式(I)中のR2は2価の有機基である。この基は一般に、原料として使用するジアミンのアミノ基以外の残基であり、具体的には後述するジアミンの残基などが挙げられる。
【0019】
一般式(I)中、nは1又は2である。また、mは繰り返し数を示し、2以上の整数であり、30〜150であることが好ましい。一般式(I)におけるRは、炭素炭素不飽和二重結合を有する一価の有機基又は炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物がイオン結合したO-+で表される基である。ここで、炭素炭素不飽和二重結合を有する基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基等を含む基などが挙げられるが、反応性等の点でアクリロイル基、メタクリロイル基を含む基が好ましい。
【0020】
Rの具体例としては、アクリロキシアルキルオキシ基(CH=CH−COO−R’−O−。R’は例えば炭素原子数1〜10のアルキレン基等)、メタクリロキシアルキルオキシ基(CH=C(CH3)−COO−R’−O−。R’は例えば炭素原子数1〜10のアルキレン基等の2価の有機基、アクリロキシアルキルアミノ基(CH=CH−COO−R’−NH−。R’は例えば炭素原子数1〜10のアルキレン基等の2価の有機基)、メタクリロキシアルキルアミノ基(CH=C(CH3)−COO−R’−NH−。R’は例えば炭素原子数1〜10のアルキレン基等の2価の有機基)などの一価の有機基が挙げられる。
【0021】
また、炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物がイオン結合したO-+で表される基において、M+は水素イオン、アクリロイル基、メタクリロイル基等の炭素炭素不飽和結合を有する基を有する化合物と水素からなる陽イオンを表わす。炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物がイオン結合したO-+で表される基として、ジアルキルアミノアルキルアクリレート又はジアルキルアミノアルキルメタクリレート(例えば各アルキルの炭素原子数1〜10)等のアミノ基を有するアクリレート又はメタクリレートなどがイオン結合した基(CH=CH−COO−R’−N+H(Cn2n+12・O-、CH=C(CH3)−COO−R’−N+H(Cn2n+12・O-)等が挙げられる。
【0022】
これらの中で、炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物がイオン結合したO-+で表される基を含むものが反応性等の点で好ましく、特に、下記一般式(II)で表される繰り返し単位から主としてなるポリマーであることが好ましい。
【化2】

(式中、R1は3価又は4価の有機基、R2は2価の有機基、M+は水素イオン又は炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物と水素からなる陽イオンを表わし、全繰り返し単位中に炭素炭素不飽和二重結合を少なくとも1つ含み、m’は30〜150、nは1又は2である。)
【0023】
ここで、一般式(II)中のm’は、主鎖の繰り返し単位数であり、m’の範囲は30〜150である。また、nは1又は2である。
従って、(a)成分の重量平均分子量は、10,000〜90,000であることが好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することができる。
【0024】
このようなポリイミドの前駆体となるポリアミド酸は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を付加重合させて得ることができる。その後、感光性を付与させるために、アクリロイル基もしくはメタクリロイル基を持ったアミンを添加撹拌することで、ポリアミド酸にイオン結合させて、上記一般式(II)で表される感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0025】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'−オキシジフタル酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4'−スルフォニルジフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物などが挙げられるが、テトラカルボン酸二無水物であればこの範囲には限られない。
【0026】
ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン,1,5−ジアミノナフタレン、ベンジジン、3,3'−ジメトキシベンジジン、4,4'−(又は3,4'−、3,3'−、2,4'−)ジアミノジフェニルメタン、4,4'−(又は3,4'−、3,3'−、2,4'−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−(又は3,4'−、3,3'−、2,4'−)ジアミノジフェニルスルフォン、4,4'−(又は3,4'−、3,3'−、2,4'−)ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ベンゾフェノンジアミン、3,3'−ベンゾフェノンジアミン、4,4'−ジ(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジ(3−アミノフェノキシ)フェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、2,2'−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、5,5'−メチレン−ビス−(アントラニル酸)、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3'−ジヒドロキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル−6,6'−ジスルホン酸等の芳香族ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、2,7−ジアミノベンゾフラン、2,7−ジアミノカルバゾール、3,7−ジアミノフェノチアジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−チアジアゾール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−s−トリアジン等の複素環式ジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、下記一般式(III)
【0027】
【化3】

(式中、R3,R4,R5及びR6は各々独立に炭素数1〜6のアルキル基を示し、o及びpは各々独立に1〜10の整数である。)で示されるジアミノポリシロキサン等の脂肪族ジアミンなどが挙げられるが、ジアミン化合物であればこの範囲には限られない。
【0028】
上記のテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物はそれぞれ単独で、又は各々2種類以上を組み合わせて使用される。
【0029】
ポリアミド酸に感光性を付与させるために添加するアクリロイル基もしくはメタクリロイル基を持ったアミンとしては、例えば、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられるが、この範囲には限られない。これらのアクリロイル基もしくはメタクリロイル基を持ったアミンは、上記(a)成分中のポリアミド酸100重量部に対して、20〜150重量部添加されることが好ましい。
【0030】
(b)接着助剤
接着助剤として末端に酸無水物基を有するシロキサン(以下、(b)成分とする)は、現像液での現像後の接着性を向上させることができ、後述する露光後の感光性樹脂膜の現像後から硬化までの放置時間において、感光性樹脂膜とその下層、特に有機層との接着性を向上させることができる。従って、例えば有機層としてポリイミド樹脂層を有するものやステンレス製のハードディスクドライブのサスペンションなどに特に有効である。接着助剤としては、例えば2−(トリメトキシシリル)エチルスクシン酸無水物、3−(トリメトキシシリル)プロピルスクシン酸無水物、4−(トリメトキシシリル)ブチルスクシン酸無水物、2−(トリエトキシシリル)エチルスクシン酸無水物、3−(トリエトキシシリル)プロピルスクシン酸無水物、4−(トリエトキシシリル)ブチルスクシン酸無水物などのトリアルコキシシリルアルキルスクシン酸無水物等が好ましいものとして挙げられるが、この範囲には限られない。中でも特に3−(トリエトキシシリル)プロピルスクシン酸無水物が効果が高く好ましい。
【0031】
(b)成分である接着助剤の添加量は、上記(a)成分100重量部に対して、1〜20重量部添加するのが好ましく、より好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜10重量部である。接着助剤の添加量が1重量部未満であると、現像後の有機層との十分な接着性が得られにくい傾向がある。一方、接着助剤の添加量が20重量部を超えると、形成されたパターン形状が悪くなる傾向がある。
【0032】
(c)溶媒
本発明による感光性樹脂を合成する際に用いる溶媒(以下、(c)成分とする)としては、アセトン、メチルエチルケトン、トルエンクロロホルム、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、スルホラン等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で、又は二種以上組み合わせて使用される。(c)成分である溶媒は、上記(a)成分100重量部に対して100〜1000重量部添加されることが好ましい。
【0033】
本発明による感光性樹脂組成物は、ワニスの形態で提供される。また、感光性樹脂を含む溶液には、増感剤、遮光剤、重合禁止剤、架橋剤、光反応開始剤、安定化剤、他の接着助剤等を必要によって添加してもよい。
【0034】
[パターン形成方法]
次に、本発明によるパターン形成方法について説明する。本発明のパターン形成方法では、上述した感光性樹脂組成物を、例えばスプレー法、スクリーン印刷法、回転塗布法等によって支持基板、例えばサスペンジョン形成用ステンレス基板上に塗布する。次に、感光性樹脂組成物中の有機溶剤を加熱、乾燥することにより除去し、粘着性のない塗膜である感光性樹脂膜を得る。この塗膜上に、所定のパターン状に活性光線を照射し、例えば、スルーホールのパターンを形成する。照射する活性光線としては、紫外線、遠紫外線、可視光線、電子線、X線などがある。活性光線の照射後、未照射部分を適当な現像液で除去することにより、所望のレリーフパターンを得ることができる。
【0035】
現像液としては、特に制限はないが、1,1,1−トリクロロエタン等の難燃性溶媒、炭酸ナトリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液等のアルカリ水溶液、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン等の良溶媒、これら良溶媒と低級アルコール、水、芳香族炭化水素等の貧溶媒との混合溶媒などが用いられる。現像後は必要に応じて貧溶媒等でリンスを行う。
【0036】
このようにして得られたレリーフパターンを、例えば、80〜400℃で5〜300分間、加熱することにより、イミドを閉環させ、ポリイミドパターンを形成することができる。本発明においては、感光性樹脂膜から形成されたパターンと、その下層との接着性が向上するので、現像後から加熱による硬化までの放置時間が制限されず、また、現像後から加熱による硬化までの放置時間を長くすることができ、発生したパターンの剥離を防止することができる。従って、本発明による感光性樹脂組成物を使用したパターンを有する電子部品の歩留まりを向上させることができる。
【0037】
次に、本発明によるパターン形成方法により、一例として、ハードディスクドライブのサスペンションにパターンを形成する工程を図面に基づいて説明する。図1〜図9は、感光性樹脂のパターンを形成する工程を説明する概略断面図である。これらの図1〜図9において、まず、サスペンションを構成する支持基板1例えばステンレス箔を用意し(図1)、次にこの支持基板1上に、上述した感光性樹脂組成物をスピンコーター(図示しない)などを用いて塗布し(図2)、露光、現像を行うことにより絶縁層2を形成する(図3)。
【0038】
次に、絶縁体である絶縁層2上にめっき膜を成長させるために、下地となる金属層としてシード層3を形成する(図4)。シード層3としては、クロム薄膜及び銅薄膜の2層を高周波スパッタリング法等により形成することができる。次に、シード層3上にレジスト4を塗布し、所定のパターンで露光、現像を行い(図5)、レジストパターンの開口部5に、順次電解めっき法等により銅、ニッケル、金等の多層構造の回路導体を積層して回路層6を形成する(図6)。
【0039】
回路層6を形成した後、レジスト4を剥離し、シード層3をエッチングにより除去する(図7)。次に、回路層6を保護するために、上述と同じ感光性樹脂組成物を回路層6上に塗布し、露光、現像を行って保護層7を形成する(図8)。その後、保護層7及び支持基板1の所定部分を覆うカバー8を設け、ジンバルを形成することができる(図9)。
【0040】
[電子部品]
本発明による感光性樹脂組成物は、上述したパターン形成方法によりパターンを形成するために使用され、得られたパターンは、各種実装回路形成用基板及び回路基板の層間絶縁層、下地絶縁層、又は表面保護膜層などとして電子部品に適用される。ここで、電子部品としては、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイスを含むが、特にハードディスクドライブのサスペンションに好適である。すなわち、本発明による感光性樹脂組成物は、ハードディスクドライブ用サスペンジョン上に直接電気的信号線を形成するための部品として、回路形成用基板及び回路基板に好ましく使用される。
【0041】
図10は、本発明による感光性樹脂組成物を使用してパターンを形成したハードディスクドライブのサスペンションを示す概略平面図である。図10において、サスペンション10は、磁気ディスクへのデータの書き込み及び読み出し機能を備えた磁気ヘッドを搭載し、磁気ディスクと磁気ヘッドとの間隙を数十nmに精度良く制御する部材であり、ステンレスなどで製造された板状部材11から構成されている。サスペンション10を構成する板状部材11の先端には、切り込み12によってジンバル13が一体に形成されており、ジンバル13上には、磁気ヘッドを有するスライダ(図示しない)が固定される。
【0042】
また、板状部材11上には、感光性樹脂組成物から作製された絶縁層(図示しない)が形成されており、その上に銅導体層14からなる所定のパターン回路が実装され、さらにその上に感光性樹脂組成物から作製された保護膜15が形成されている。なお、板状部材11上に所定のパターン回路が実装されているので、このサスペンション10はいわゆる「回路付きサスペンション」と呼ばれる。また、本発明の電子部品は、感光性樹脂組成物を表面が有機層で形成された支持基板上に対して高い接着性を有している。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
(感光性樹脂溶液の調製)
実施例及び比較例で用いた感光性樹脂は以下の方法で得た。まず、N−メチル−2−ピロリドン300重量部にp−フェニレンジアミン25重量部と2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン25重量部を添加して溶解させた後、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物50重量部を添加して重合させ、ポリアミド酸を得た。このポリアミド酸の重量平均分子量は約53,000であった。その後、このポリアミド酸の溶液に、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート50重量部、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3(1H−ピル−イル)フェニル)チタニウム2重量部、ジエチルアミノ−3−テノイルクマリン0.5重量部、N−フェニルベンゼンスルフォンアミド15重量部を添加して撹拌し、感光性樹脂溶液を得た。なお、前記ポリアミド酸とN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレートを前記配合比で配合することにより、本発明における(a)成分(一般式(I)も一般式(II)も充足するもの)が形成されていることが明らかである。
【0045】
(実施例1)
得られた感光性樹脂溶液に、3−(トリエトキシシリル)プロピルスクシン酸無水物5重量部を添加撹拌して得た感光性樹脂組成物を、ステンレス製の基板上に回転塗布し、90℃で3分間ホットプレート上で乾燥させて、膜厚12μmの感光性樹脂膜を得た。この感光性樹脂膜にフォトマスクを介して高圧水銀灯による露光を行った。この露光は、100J/m2のエネルギーを照射して行った。その後、上記基板をホットプレートにより110℃で1分間加熱した直後に、N−メチル−2−ピロリドンによる現像液に浸漬させた。上記基板上における未露光部分の感光性樹脂膜は、110秒で溶解した。
【0046】
浸漬後140秒後に、現像液から上記基板を取り出し、イソプロピルアルコ−ルによるリンスを行った。現像後24時間、30℃/60%RHの環境下に放置した。現像後から24時間放置後において、パターンの剥離は確認されなかった。この基板を350℃のオーブンに1時間投入し、膜厚約5μmのレリーフパターンを得た。得られたフィルムの吸水率は0.8%であった。なお、この吸水率は、基板上に貼り付いたフィルムを剥がして水に浸け、十分吸水させた後、加熱、乾燥して重量を測定し、水に浸ける前のフィルム重量と加熱乾燥後の重量の変化率から求めた。
【0047】
(実施例2)
実施例1において、3−(トリエトキシシリル)プロピルスクシン酸無水物の配合量を3重量部とした以外は、全く同様にして感光性樹脂組成物を製造し、評価したところ、現像後から24時間放置後において、パターンの剥離は確認されなかった。また、この基板を350℃のオーブンに1時間投入し、膜厚約5μmのレリーフパターンを得た。得られたフィルムの吸水率は0.8%であった。
【0048】
(比較例)
上述のようにして得られた感光性樹脂溶液に、3−(トリエトキシシリル)プロピルスクシン酸無水物を加えないで得た感光性樹脂組成物を、実施例1及び2と同様にして評価を行った。30℃/60%RHの環境下において現像後から硬化までの放置時間を1時間としたとき、形成したパターンに剥離が確認された。
【0049】
実施例1及び2における感光性樹脂膜は、非常に低い露光エネルギー量で露光を行うことができ、露光感度が非常に高いことが判った。また、比較例では、現像後から硬化までの1時間の放置においてパターンの剥離が発生したのに対し、実施例1及び2では、24時間放置してもパターンの剥離は発生せず、接着性向上の効果が認められた。さらに、実施例1及び2で得られたフィルムの吸水率は非常に低い値であった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明にかかる感光性樹脂組成物は、基板上に形成したパターンの現像後における下層への接着性を向上させることができる。また、吸水率の非常に低いパターンを形成することができる。この感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法は、感光性樹脂膜から形成されたパターンと、その下層との接着性が向上するので、現像後から加熱による硬化までの放置時間が制限されず、また、現像後から加熱による硬化までの放置時間を長くすることができ、発生したパターンの剥離を防止することができる。さらに、本発明による電子部品は、回路の表面保護膜層又は層間絶縁膜層等として、良好な形状と特性のパターンを有することにより、信頼性の高い電子部品に有用であり、特に、ハードディスクドライブのサスペンションに適している。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態における感光性樹脂のパターンを形成する工程を説明する概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における感光性樹脂のパターンを形成する工程を説明する概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における感光性樹脂のパターンを形成する工程を説明する概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における感光性樹脂のパターンを形成する工程を説明する概略断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における感光性樹脂のパターンを形成する工程を説明する概略断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における感光性樹脂のパターンを形成する工程を説明する概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態における感光性樹脂のパターンを形成する工程を説明する概略断面図である。
【図8】本発明の実施の形態における感光性樹脂のパターンを形成する工程を説明する概略断面図である。
【図9】本発明の実施の形態における感光性樹脂のパターンを形成する工程を説明する概略断面図である。
【図10】本発明の実施の形態における感光性樹脂を使用したハードディスクドライブのサスペンションを示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 支持基板
2 絶縁層
3 シード層
4 レジスト
5 開口部
6 回路層
7 保護層
8 カバー
10 サスペンション
11 板状部材
12 切り込み
13 ジンバル
14 銅導体層
15 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位から主としてなるポリマーと、(b)接着助剤として末端に酸無水物基を有するシロキサンと、及び(c)溶媒とを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】

[式中、R1は3価又は4価の有機基、R2は2価の有機基、Rは炭素炭素不飽和二重結合を有する一価の有機基又は炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物がイオン結合したO-+(M+は水素イオン又は炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物と水素からなる陽イオンを表わす。)で表される基であり、全繰り返し単位中に炭素炭素不飽和二重結合を少なくとも1つ含み、mは2以上の整数であり、nは1又は2である。]
【請求項2】
前記ポリマー(a)が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位から主としてなるポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、R1は3価又は4価の有機基、R2は2価の有機基、M+は水素イオン又は炭素炭素不飽和二重結合を有する化合物と水素からなる陽イオンを表わし、全繰り返し単位中に炭素炭素不飽和二重結合を少なくとも1つ含み、m’は30〜150、nは1又は2である。)
【請求項3】
前記(b)接着助剤は、トリアルコキシシリルアルキルスクシン酸無水物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(a)ポリマー100重量部に対して、前記(b)接着助剤1〜20重量部を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のうち、いずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち、いずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、前記塗布、乾燥工程により得られた感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜を現像する工程と、及び前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載のパターン形成方法により得られるパターンの層を有することを特徴とする電子部品。
【請求項7】
前記電子部品は、ハードディスクドライブのサスペンジョンであることを特徴とする請求項6に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−122889(P2008−122889A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343394(P2006−343394)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(398008295)日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】