説明

感光性積層体の製造装置及び製造方法

【課題】複数の長尺状感光性ウエブを基板に並列に貼り付ける場合、複数の長尺状感光性ウエブの相対的な貼り付け位置のずれを抑制し、良好な状態の感光性積層体を製造する。
【解決手段】感光性ウエブ22a、22bの可撓性ベースフイルム26に対するゴムローラ80aの静止摩擦係数μを、0.1≦μ≦1.0の範囲に設定し、ゴムローラ80a、80b間に1枚のガラス基板24を挿入するとともに、2枚の感光性ウエブ22a、22bの露出された感光性樹脂層28をガラス基板24側として感光性ウエブ22a、22bをゴムローラ80a、80b間に送り出し、感光性樹脂層28をガラス基板24に貼り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と、支持体上に感光材料層が設けられた複数の長尺状感光性ウエブとを同期させて一対の圧着ローラ間に送り出し、複数の前記感光材料層を前記基板に並列に貼り付けることで感光性積層体を製造する製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶パネル用基板、プリント配線用基板、PDPパネル用基板では、感光性樹脂層(感光材料層)を有する感光性シート体(感光性ウエブ)を基板表面に貼り付けて構成されている。感光性シート体は、可撓性プラスチック支持体上に感光性樹脂層と保護フイルムとが、順次、積層されている。
【0003】
この種の感光性シート体の貼り付けに使用される製造装置は、通常、ガラス基板や樹脂基板等の基板を所定の間隔ずつ離間させて搬送するとともに、前記基板に貼り付けられる感光性樹脂層の範囲に対応して、前記感光性シート体から保護フイルムを剥離する方式が採用されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている製造装置では、図8に示すように、フイルムロール1から繰り出される積層体フイルム(感光性シート体)1aが、ガイドローラ2a、2bに巻き付けられて水平のフイルム搬送面に沿って延在している。このガイドローラ2bには、積層体フイルム1aの送り量に応じた数のパルス信号を出力するロータリエンコーダ3が取り付けられている。
【0005】
水平のフイルム搬送面に沿って延在する積層体フイルム1aは、サクションローラ4に巻き掛けられるとともに、前記ガイドローラ2bと前記サクションローラ4との間には、ハーフカッタ5とカバーフイルム剥離装置6とが設けられている。
【0006】
ハーフカッタ5は、一対のディスクカッタ5a、5bを備えている。ディスクカッタ5a、5bは、積層体フイルム1aのフイルム幅方向に沿って移動することにより、前記積層体フイルム1aのカバーフイルム(図示せず)をその裏側の感光性樹脂層(図示せず)と一体に切断する。
【0007】
カバーフイルム剥離装置6は、粘着テープロール7から繰り出される粘着テープ7aを押圧ローラ8a、8b間でカバーフイルムに強く圧着させた後、巻き取りロール9によって巻き取る。これにより、カバーフイルムは、感光性樹脂層から剥離されて粘着テープ7aと共に巻き取りロール9に巻き取られる。
【0008】
サクションローラ4の下流には、基板搬送装置10によって、順次、間欠的に搬送される複数の基板11の上面に、積層体フイルム1aを重ねて圧着する一対のラミネーションローラ12a、12bが配設されている。このラミネーションローラ12a、12bの下流側には、支持フイルム巻き取りロール13が配置されている。基板11に貼り付けられている透光性支持フイルム(図示せず)は、支持フイルム巻き取りロール13に巻き取られる。
【0009】
一方、このように構成される製造装置を応用して、複数の積層体フイルム1aを1枚の基板11に並列に貼り付けようにした製造装置が開発されている(特許文献2参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平11−34280号公報(図1)
【特許文献2】特開2004−333616号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、積層体フイルム1aには、所定のテンションが常時付加され、また、ラミネーションローラ12a、12bから熱が印加されるため、積層体フイルム1aの長さが変動する。特に、複数の積層体フイルム1aを1枚の基板11に同時に貼り付ける場合、個々の積層体フイルム1aの長さの変動量が異なっていると、基板11に対する貼り付け位置がずれてしまい、場合によっては、製品不良となるおそれがある。
【0012】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、複数の長尺状感光性ウエブを基板に並列に貼り付ける場合、複数の長尺状感光性ウエブの相対的な貼り付け位置のずれを抑制し、良好な状態の感光性積層体を製造することのできる感光性積層体の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基板と、支持体上に感光材料層が設けられた複数の長尺状感光性ウエブとを同期させて一対の圧着ローラ間に送り出し、複数の前記感光材料層を前記基板に並列に貼り付けることで感光性積層体を製造する製造装置において、
前記長尺状感光性ウエブの前記支持体に当接する一方の前記圧着ローラの前記支持体に対する静止摩擦係数μを0.1≦μ≦1.0の範囲に設定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、基板と、支持体上に感光材料層が設けられた複数の長尺状感光性ウエブとを同期させて一対の圧着ローラ間に送り出し、複数の前記感光材料層を前記基板に並列に貼り付けることで感光性積層体を製造する製造方法において、
前記長尺状感光性ウエブの前記支持体に当接する一方の前記圧着ローラの前記支持体に対する静止摩擦係数μを0.1≦μ≦1.0の範囲に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、複数の長尺状感光性ウエブを基板に並列に貼り付ける場合、圧着ローラの長尺状感光性ウエブの支持体に対する静止摩擦係数μを0.1≦μ≦1.0の範囲に設定することにより、各長尺状感光性ウエブの延び率を所定の許容範囲内として、長尺状感光性ウエブの相対的な貼り付け位置のずれを抑制することができる。この結果、良好な状態の感光性積層体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る感光性積層体の製造装置20の概略構成図であり、この製造装置20は、液晶又は有機EL用カラーフィルタ等の製作工程で、長尺状感光性ウエブ22a、22bの各感光性樹脂層28(後述する)を並列してガラス基板24に熱転写する作業を行う。感光性ウエブ22a、22bは、それぞれ所定の幅寸法に設定されており、例えば、前記感光性ウエブ22aが前記感光性ウエブ22bよりも幅広に構成されている。
【0017】
図2は、製造装置20に使用される感光性ウエブ22a、22bの断面図である。この感光性ウエブ22a、22bは、可撓性ベースフイルム(支持体)26と、感光性樹脂層(感光材料層)28と、保護フイルム30とを積層して構成される。
【0018】
図1に示すように、製造装置20は、感光性ウエブ22a、22bをローラ状に巻回した2本(2本以上であればよい)の感光性ウエブロール23a、23bを収容し、各感光性ウエブロール23a、23bから前記感光性ウエブ22a、22bを同期して送り出し可能な第1及び第2ウエブ送り出し機構32a、32bと、送り出された各感光性ウエブ22a、22bの保護フイルム30に幅方向に切断可能な境界位置であるハーフカット部位(加工部位)34を形成する第1及び第2加工機構36a、36bと、一部に非接着部38aを有する接着ラベル38(図3参照)を各保護フイルム30に接着させる第1及び第2ラベル接着機構40a、40bとを備える。
【0019】
第1及び第2ラベル接着機構40a、40bの下流には、各感光性ウエブ22a、22bをタクト送りから連続送りに変更するための第1及び第2リザーバ機構42a、42bと、各感光性ウエブ22a、22bから保護フイルム30を所定の長さ間隔で剥離させる第1及び第2剥離機構44a、44bと、ガラス基板24を所定の温度に加熱した状態で貼り付け位置に搬送する基板搬送機構45と、前記保護フイルム30の剥離により露出した感光性樹脂層28を前記ガラス基板24に一体的且つ並列に貼り付ける貼り付け機構46とが配設される。
【0020】
貼り付け機構46における貼り付け位置の上流近傍には、各感光性ウエブ22a、22bの境界位置であるそれぞれのハーフカット部位34を直接検出する第1及び第2検出機構47a、47bが配設される。
【0021】
第1及び第2ウエブ送り出し機構32a、32bの下流近傍には、略使用済みの感光性ウエブ22a、22bの後端と、新たに使用される感光性ウエブ22a、22bの先端とを貼り付けるそれぞれの貼り付け台49が配設される。貼り付け台49の下流には、感光性ウエブロール23a、23bの巻きずれによる幅方向のずれを制御するために、フイルム端末位置検出器51が配設される。ここで、フイルム端末位置調整は、第1及び第2ウエブ送り出し機構32a、32bを幅方向に移動させて行うが、ローラを組み合わせた位置調整機構を付設して行ってもよい。なお、第1及び第2ウエブ送り出し機構32a、32bは、感光性ウエブロール23a、23bを装填して感光性ウエブ22a、22bを繰り出す繰り出し軸を、2軸又は3軸等の多軸に構成してもよい。
【0022】
第1及び第2加工機構36a、36bは、第1及び第2ウエブ送り出し機構32a、32bに収容巻回されている各感光性ウエブロール23a、23bのロール径を算出するためのローラ対50の下流に配置される。第1及び第2加工機構36a、36bは、それぞれ単一の丸刃52を備え、この丸刃52は、感光性ウエブ22a、22bの幅方向に走行して前記感光性ウエブ22a、22bの所定の位置にハーフカット部位34を形成する。
【0023】
図2に示すように、ハーフカット部位34は、少なくとも保護フイルム30を切断する必要があり、実際上、この保護フイルム30を確実に切断するために感光性樹脂層28乃至ベースフイルム26まで切り込むように丸刃52の切り込み深さが設定される。丸刃52は、回転することなく固定された状態で、感光性ウエブ22a、22bの幅方向に移動してハーフカット部位34を形成する方式や、前記感光性ウエブ22a、22b上を滑ることなく回転しながら前記幅方向に移動して前記ハーフカット部位34を形成する方式が採用される。このハーフカット部位34は、丸刃52に代替して、例えば、レーザ光や超音波を用いたカット方式の他、ナイフ刃、押し切り刃(トムソン刃)等で形成する方式を採用してもよい。
【0024】
なお、第1及び第2加工機構36a、36bは、それぞれ感光性ウエブ22a、22bの搬送方向(矢印A方向)に所定の距離だけ離間して2台配設し、保護フイルム30の残存部分30b(図2)を挟んで2つのハーフカット部位34を同時に形成してもよい。
【0025】
ハーフカット部位34は、例えば、両側の前記ガラス基板24にそれぞれ10mmずつ入り込んだ位置に設定される。ガラス基板24間のハーフカット部位34で挟まれた部分は、後述する貼り付け機構46において感光性樹脂層28を前記ガラス基板24に額縁状に貼り付ける際のマスクとして機能するものである。
【0026】
第1及び第2ラベル接着機構40a、40bは、ガラス基板24間に対応して保護フイルム30の残存部分30bを残すため、剥離側前方の剥離部分30aaと剥離側後方の剥離部分30abとを連結する接着ラベル38を供給する。図2に示すように、保護フイルム30は、残存部分30bを挟んで、先に剥離される部分を前方の剥離部分30aaとする一方、後に剥離される部分を後方の剥離部分30abとする。
【0027】
図3に示すように、接着ラベル38は、短冊状に構成されており、例えば、保護フイルム30と同一の樹脂材で形成される。接着ラベル38は、中央部に粘着剤が塗布されない非接着部(微粘着を含む)38aを有するとともに、この非接着部38aの両側、すなわち、前記接着ラベル38の長手方向両端部に、前方の剥離部分30aaに接着される第1接着部38bと、後方の剥離部分30abに接着される第2接着部38cとを有する。
【0028】
図1に示すように、第1及び第2ラベル接着機構40a、40bは、それぞれ最大7枚の接着ラベル38を所定間隔ずつ離間して貼り付け可能な吸着パッド54a〜54gを備えるとともに、前記吸着パッド54a〜54gによる前記接着ラベル38の貼り付け位置には、感光性ウエブ22a、22bを下方から保持するための受け台56が昇降自在に配置される。
【0029】
第1及び第2リザーバ機構42a、42bは、上流側の感光性ウエブ22a、22bのタクト搬送と、下流側の前記感光性ウエブ22a、22bの連続搬送との速度差を吸収するために、矢印方向に揺動自在なダンサーローラ60を備える。第2リザーバ機構42bには、第1及び第2ウエブ送り出し機構32a、32bから送り出される各感光性ウエブ22a、22bが貼り付け機構46に至るまでの各搬送路長を同一に調整するためのダンサーローラ61が配設される。
【0030】
第1及び第2リザーバ機構42a、42bの下流に配置される第1及び第2剥離機構44a、44bは、それぞれ感光性ウエブ22a、22bの送り出し側のテンション変動を遮断し、ラミネート時のテンションを安定化させるためのサクションドラム62を備える。各サクションドラム62の近傍には、剥離ローラ63が配置されるとともに、この剥離ローラ63を介して感光性ウエブ22a、22bから鋭角の剥離角で剥離される保護フイルム30は、残存部分30bを除いてそれぞれ保護フイルム巻き取り部64に巻き取られる。
【0031】
第1及び第2剥離機構44a、44bの下流側には、感光性ウエブ22a、22bにテンションを付与可能な第1及び第2テンション制御機構66a、66bが配設される。第1及び第2テンション制御機構66a、66bは、それぞれシリンダ68を備え、前記シリンダ68の駆動作用下に、それぞれテンションダンサー70が揺動変位することにより、各テンションダンサー70が摺接する感光性ウエブ22a、22bのテンションが調整可能である。なお、第1及び第2テンション制御機構66a、66bは、必要に応じて使用すればよく、削除することもできる。
【0032】
第1及び第2検出機構47a、47bは、レーザセンサやフォトセンサ等の光電センサ72a、72bを備えており、前記光電センサ72a、72bは、ハーフカット部位34の楔状の溝形状部や、保護フイルム30の厚さによる段差、あるいは、これらの組み合わせによる変化を直接検出し、この検出信号を境界位置信号とする。光電センサ72a、72bは、バックアップローラ73a、73bに対向して配置される。なお、光電センサ72a、72bに代えて、非接触変位計やCCDカメラ等の画像検査手段等を用いてもよい。
【0033】
第1及び第2検出機構47a、47bにより検出されるハーフカット部位34の位置データは、リアルタイムで統計処理及びグラフ化が可能であり、ばらつき異常や偏りの発生時に警報を出すことができる。
【0034】
また、ハーフカット部位34を直接検出するのではなく、このハーフカット部位34に対応して第1及び第2加工機構36a、36bの近傍で孔部や切り欠きを形成したり、レーザ加工やアクアジェット加工による孔開けや切り込みを設けたり、インクジェットやプリンタ等によるマーキングを設けたりしてマーク部を形成し、このマーク部を検出して境界位置信号としてもよい。
【0035】
基板搬送機構45は、ガラス基板24を挟持するように配設される複数組の基板加熱部(例えば、ヒータ)74と、このガラス基板24を矢印C方向に搬送する搬送部76とを備える。基板加熱部74では、ガラス基板24の温度を常時監視し、異常時には、搬送部76の停止や警報を発生するとともに、異常情報を発信して異常なガラス基板24を後工程でNG排出、品質管理又は生産管理等に活用することができる。搬送部76には、図示しないエア浮上プレートが配設され、ガラス基板24が浮上されて矢印C方向に搬送される。ガラス基板24の搬送は、ローラコンベアでも行える。
【0036】
ガラス基板24の温度測定は、基板加熱部74内又は貼り付け位置直前で行うことが好ましい。測定方法としては、接触式(例えば、熱電対)の他、非接触式であってもよい。
【0037】
基板加熱部74の上流には、複数のガラス基板24が収容される基板ストッカー71が設けられる。この基板ストッカー71に収容されている各ガラス基板24は、ロボット75のハンド部75aに設けられた吸着パッド79に吸着されて取り出され、基板加熱部74に挿入される。
【0038】
貼り付け機構46は、上下に配設されるとともに、所定温度に加熱されるゴムローラ(圧着ローラ)80a、80bを備える。ゴムローラ80a、80bには、バックアップローラ82a、82bが摺接する。一方のバックアップローラ82bは、ローラクランプ部83を構成する加圧シリンダ84a、84bによりゴムローラ80b側に押圧される。
【0039】
ゴムローラ80aの近傍には、感光性ウエブ22a、22bが前記ゴムローラ80aに接触することを防止するための接触防止ローラ86が移動可能に配設される。貼り付け機構46の上流近傍には、感光性ウエブ22a、22bを予め所定温度に予備加熱するための予備加熱部87が配設される。この予備加熱部87は、例えば、赤外線バーヒータ等の加熱手段を備える。
【0040】
ガラス基板24は、貼り付け機構46から矢印C方向に延在する搬送路88を介して搬送される。この搬送路88には、フイルム搬送ローラ90a、90b及び基板搬送ローラ92が配設される。ゴムローラ80a、80bと基板搬送ローラ92との間隔は、ガラス基板24の一枚分の長さ以下に設定されることが好ましい。基板搬送ローラ92の下流側近傍には、搬送されたガラス基板24の先端部を検知する基板先端検知センサ94が配設される。
【0041】
また、基板搬送ローラ92の下流には、冷却機構122とベース自動剥離機構142とが設けられる。ベース自動剥離機構142は、所定間隔ずつ離間する各ガラス基板24に貼り付けられている長尺なベースフイルム26を連続して剥離するものであり、プレ剥離部144と、比較的小径な剥離ローラ146と、巻き取り軸148と、自動貼り付け機150とを備えている。巻き取り軸148は、駆動時にトルク制御してベースフイルム26に張力を付与する一方、例えば、剥離ローラ146に張力検出器(図示せず)を設けることにより、張力のフィードバック制御を行うことが好ましい。プレ剥離部144は、ガラス基板24間で昇降可能な剥離バー156を備える。
【0042】
ベース自動剥離機構142の下流には、ガラス基板24に実際に貼り付けられた感光性樹脂層28のエリア位置を測定する測定器158が配設される。この測定器158は、例えば、感光性樹脂層28が貼り付けられたガラス基板24を撮影するCCD等のカメラ160を備える。
【0043】
また、ベース自動剥離機構142の下流には、測定器158によって感光性樹脂層28にエリア位置の測定された複数の感光性積層体106が収容される感光性積層体ストッカー132が設けられる。ベース自動剥離機構142でベースフイルム26及び残存部分30bが剥離された感光性積層体106は、ロボット134のハンド部134aに設けられた吸着パッド136に吸着されて取り出され、感光性積層体ストッカー132に収容される。
【0044】
なお、以上のように構成される製造装置20では、第1及び第2ウエブ送り出し機構32a、32b、第1及び第2加工機構36a、36b、第1及び第2ラベル接着機構40a、40b、第1及び第2リザーバ機構42a、42b、第1及び第2剥離機構44a、44b、第1及び第2テンション制御機構66a、66b並びに第1及び第2検出機構47a、47bが、貼り付け機構46の上方に配置されているが、これとは逆に、前記第1及び第2ウエブ送り出し機構32a、32bから前記第1及び第2検出機構47a、47bまでを前記貼り付け機構46の下方に配置し、感光性ウエブ22a、22bの上下が逆になって感光性樹脂層28がガラス基板24の下側に貼り付けてもよく、また、前記製造装置20全体を直線状に構成してもよい。
【0045】
図1に示すように、製造装置20は、ラミネート工程制御部100により全体が制御されており、この製造装置20の各機能部毎に、例えば、ラミネート制御部102、基板加熱制御部104及びベース剥離制御部108等が設けられ、これらが工程内ネットワークにより相互に接続されている。さらに、ラミネート工程制御部100は、工場ネットワークに接続されており、図示しない工場CPUからの指示情報(条件設定や生産情報)の生産管理や稼動管理等、生産のための情報処理を行う。
【0046】
基板加熱制御部104は、上流工程からガラス基板24を受け入れ、このガラス基板24を所望の温度まで加熱して貼り付け機構46に供給する動作及び該ガラス基板24の情報のハンドリング等を制御する。
【0047】
ラミネート制御部102は、工程全体のマスターとして、各機能部の制御を行うものであり、第1及び第2検出機構47a、47bにより検出された感光性ウエブ22a、22bのハーフカット部位34の位置情報に基づいて、貼り付け位置における各境界位置とガラス基板24との相対位置及び各境界位置同士の相対位置を制御可能な制御機構を構成している。
【0048】
ベース剥離制御部108は、ガラス基板24に貼り付けられた感光性ウエブ22a、22bからベースフイルム26を剥離し、感光性積層体106として下流に搬送する動作制御を行うとともに、前記感光性積層体106の情報をハンドリング制御する。
【0049】
製造装置20内は、仕切り壁110を介して第1クリーンルーム112aと第2クリーンルーム112bとに仕切られる。第1クリーンルーム112aには、第1及び第2ウエブ送り出し機構32a、32bから第1及び第2テンション制御機構66a、66bまでが収容されるとともに、第2クリーンルーム112bには、第1及び第2検出機構47a、47b以降が収容される。第1クリーンルーム112aと第2クリーンルーム112bとは、貫通部114を介して連通する。
【0050】
以上のように構成される製造装置20の動作について、本発明に係る製造方法との関連で以下に説明する。
【0051】
先ず、第1及び第2ウエブ送り出し機構32a、32bに取り付けられている各感光性ウエブロール23a、23bから感光性ウエブ22a、22bが送り出される。感光性ウエブ22a、22bは、第1及び第2加工機構36a、36bに搬送される。
【0052】
第1及び第2加工機構36a、36bでは、丸刃52が感光性ウエブ22a、22bの幅方向に移動して、前記感光性ウエブ22a、22bを保護フイルム30から感光性樹脂層28乃至ベースフイルム26まで切り込んでハーフカット部位34を形成する(図2参照)。さらに、感光性ウエブ22a、22bは、図1に示すように、保護フイルム30の残存部分30bの寸法に対応して矢印A方向に搬送された後に停止され、丸刃52の走行作用下にハーフカット部位34が形成される。これにより、感光性ウエブ22a、22bには、残存部分30bを挟んで前方の剥離部分30aaと後方の剥離部分30abとが設けられる(図2参照)。
【0053】
次いで、各感光性ウエブ22a、22bは、第1及び第2ラベル接着機構40a、40bに搬送されて、保護フイルム30の所定の貼り付け部位が受け台56上に配置される。第1及び第2ラベル接着機構40a、40bでは、所定枚数の接着ラベル38が吸着パッド54b〜54gにより吸着保持され、各接着ラベル38が保護フイルム30の残存部分30bを跨いで、前方の剥離部分30aaと後方の剥離部分30abとに一体的に接着される(図3参照)。
【0054】
例えば、7枚の接着ラベル38が接着された感光性ウエブ22a、22bは、図1に示すように、第1及び第2リザーバ機構42a、42bを介して送り出し側のテンション変動を防いだ後、第1及び第2剥離機構44a、44bに連続的に搬送される。第1及び第2剥離機構44a、44bでは、感光性ウエブ22a、22bのベースフイルム26がサクションドラム62に吸着保持されるとともに、保護フイルム30が残存部分30bを残して前記感光性ウエブ22a、22bから剥離される。この保護フイルム30は、剥離ローラ63を介して剥離されて保護フイルム巻き取り部64に巻き取られる(図1参照)。
【0055】
第1及び第2剥離機構44a、44bの作用下に、保護フイルム30が残存部分30bを残してベースフイルム26から剥離された後、感光性ウエブ22a、22bは、第1及び第2テンション制御機構66a、66bによってテンション調整が行われ、さらに第1及び第2検出機構47a、47bで光電センサ72a、72bによりハーフカット部位34の検出が行われる。
【0056】
各感光性ウエブ22a、22bは、ハーフカット部位34の検出情報に基づいて、フイルム搬送ローラ90a、90bの回転作用下に、それぞれ貼り付け機構46に定量搬送される。一方、ガラス基板24は、基板搬送機構45の作用下に、予め加熱された状態で貼り付け位置に搬送される。このガラス基板24は、並列されている感光性ウエブ22a、22bの感光性樹脂層28の貼り付け部分に対応してゴムローラ80a、80b間に一旦配置される。
【0057】
この状態で、バックアップローラ82b及びゴムローラ80bを上昇させることにより、ゴムローラ80a、80b間にガラス基板24が所定のプレス圧力で挟み込まれる。さらに、ゴムローラ80aの回転作用下に、このガラス基板24には、図4に示すように、並列されている各感光性樹脂層28が転写(ラミネート)される。
【0058】
ここで、ラミネート条件としては、速度が1.0m/min〜10.0m/min、ゴムローラ80a、80bの温度が90℃〜140℃、前記ゴムローラ80a、80bのゴム硬度が40度〜90度、該ゴムローラ80a、80bのプレス圧(線圧)が50N/cm〜400N/cmである。
【0059】
また、ラミネート条件として、感光性ウエブ22a、22bの可撓性ベースフイルム26に当接する上部のゴムローラ80aの可撓性ベースフイルム26に対する静止摩擦係数μを、0.1≦μ≦1.0の範囲に設定する。静止摩擦係数μをこのように設定することにより、後述するように、感光性ウエブ22a、22bの延び率を小さくし、感光性ウエブ22a、22bのガラス基板24に対する相対的な位置ずれを許容範囲内とすることができる。
【0060】
ゴムローラ80a、80bを介してガラス基板24に感光性ウエブ22a、22bの一枚分のラミネートが終了すると、前記ゴムローラ80aの回転が停止される一方、前記感光性ウエブ22a、22bがラミネートされた前記ガラス基板24(以下、貼り付け基板24aともいう。)が基板搬送ローラ92によりクランプされる。
【0061】
そして、ゴムローラ80bが、ゴムローラ80aから離間する方向に退避してクランプが解除されるとともに、基板搬送ローラ92の回転が開始されて、貼り付け基板24aが矢印C方向に定量搬送され、感光性ウエブ22a、22bの基板間位置がゴムローラ80aの下方付近の所定位置に移動する。一方、基板搬送機構45を介して次なるガラス基板24が貼り付け位置に向かって搬送される。
【0062】
この次なるガラス基板24の先端がゴムローラ80a、80b間に配置されると、前記ゴムローラ80bが上昇して、前記ゴムローラ80a、80bにより前記次なるガラス基板24と感光性ウエブ22a、22bとがクランプされる。そして、ゴムローラ80a、80b及び基板搬送ローラ92の回転作用下にラミネートが開始されるとともに、貼り付け基板24aが矢印C方向に搬送される。
【0063】
その際、貼り付け基板24aは、図4に示すように、それぞれの端部同士が残存部分30bによって覆われている。従って、感光性樹脂層28がガラス基板24に転写される際、ゴムローラ80a、80bが前記感光性樹脂層28により汚れることがない。
【0064】
貼り付け機構46でラミネートされた貼り付け基板24aは、冷却機構122を通って冷却された後、プレ剥離部144に移送される。このプレ剥離部144では、剥離バー156がガラス基板24間に臨入して上昇し、これによって、ガラス基板24間の保護フイルム30が持ち上げられ、隣接するガラス基板24の後端及び先端から剥離する。
【0065】
次いで、ベース自動剥離機構142では、巻き取り軸148の回転作用下に、貼り付け基板24aからベースフイルム26が連続して巻き取られる。さらに、トラブル停止での切り離しや、不良品分離時の切断の後、新たにラミネート処理が開始された貼り付け基板24aのベースフイルム26の先端と、巻き取り軸148に巻き取られているベースフイルム26の後端とは、自動貼り付け機150を介して自動的に貼り付けられる。
【0066】
ベースフイルム26が剥離された貼り付け基板24aは、測定器158に対応する検査ステーションに配置される。この検査ステーションでは、ガラス基板24が位置決め固定された状態で、カメラ160によりガラス基板24と感光性樹脂層28の画像を取り込む。そして、画像処理が施されることにより、貼り付け位置が演算される。
【0067】
感光性樹脂層28の貼り付け位置が確認された貼り付け基板24aは、ロボット134によって取り出され、感光性積層体106として感光性積層体ストッカー132に収容される。
【0068】
ここで、本出願人は、ラミネート条件として、感光性ウエブ22a、22bの可撓性ベースフイルム26に当接する上部のゴムローラ80aの可撓性ベースフイルム26に対する静止摩擦係数μを、0.1≦μ≦1.0の範囲、好ましくは、0.1≦μ≦0.6、さらに好ましくは、0.1≦μ≦0.3の範囲に設定することで、感光性ウエブ22a、22bのガラス基板24に対する相対的な位置ずれを許容範囲内とすることができることを見い出した。
【0069】
図5は、貼り付け機構46を構成するゴムローラ80a、80bにより、ガラス基板24に2枚の感光性ウエブ22a、22bを貼り付けた状態を示す。この場合、ガラス基板24に貼り付けられた感光性ウエブ22aの2個所のハーフカット部位34間の貼り付け長さをLa、ガラス基板24に貼り付けられた感光性ウエブ22bの2個所のハーフカット部位34間の貼り付け長さをLbとする。
【0070】
感光性ウエブ22a、22bが延びないと仮定したときの各感光性ウエブ22a、22bの貼り付け長さをL0とし、感光性ウエブ22aの延び率α1(%)を、
α1=(La/L0−1)×100
と定義し、感光性ウエブ22bの延び率α2(%)を、
α2=(Lb/L0―1)×100
と定義し、ゴムローラ80aの可撓性ベースフイルム26に対する静止摩擦係数μを変えて各延び率α1、α2を測定して評価を行った。なお、延び率α1、α2の許容範囲を0.1%〜1.0%とする。その結果を図6に示す。
【0071】
静止摩擦係数μを1.0<μの範囲に設定したとき、延び率α1、α2が許容範囲を超えており、例えば、第1及び第2加工機構36a、36によってハーフカット部位34を調整する等の処理が必要となる。
【0072】
静止摩擦係数μを0.6<μ≦1.0の範囲に設定したとき、時々延び率α1、α2が許容範囲を超える場合があった。また、静止摩擦係数μを0.3<μ≦0.6の範囲に設定したとき、延び率α1、α2が許容範囲内となる場合が多く、かなりの確率で良好な貼り付け状態を得ることができた。さらに、静止摩擦係数μを0.1≦μ≦0.3の範囲に設定したとき、延び率α1、α2が許容範囲内となり、良好な貼り付け状態を得ることができた。
【0073】
以上の結果から、ゴムローラ80aの可撓性ベースフイルム26に対する静止摩擦係数μを小さくすることにより、延び率α1、α2を許容範囲内とできることが了解される。そして、静止摩擦係数μを0.1≦μ≦0.3の範囲に設定すれば、感光性ウエブ22a、22bの相対的な貼り付け位置のずれが安定的に許容範囲内となり、極めて良好な貼り付け状態を得ることができる。
【0074】
なお、第1の実施形態では、2本の感光性ウエブロール23a、23bを用いているが、これに限定されるものではなく、3本以上の感光性ウエブロールを採用してもよい。また、以下に説明する第2の実施形態においても、同様である。
【0075】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る製造装置300の概略構成図である。なお、第1の実施形態に係る製造装置20と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0076】
製造装置300は、貼り付け機構46の下流に配置され、各ガラス基板24間の感光性ウエブ22a、22bを一体的に切断可能な基板間ウエブ切断機構48を備える。
【0077】
このように構成される製造装置300では、上記の第1の実施形態と同様に、貼り付け機構46でラミネートされた貼り付け基板24aは、矢印C方向に搬送される。そして、貼り付け基板24a間が基板間ウエブ切断機構48に対応する位置に至ると、この基板間ウエブ切断機構48は、前記貼り付け基板24aと同一の搬送速度で矢印C方向に移動しながら、該貼り付け基板24a間で2本の感光性ウエブ22a、22bを一体的に切断する。
【0078】
この切断後に、基板間ウエブ切断機構48は、所定の待機位置に戻される一方、貼り付け基板24aでは、ベースフイルム26及び残存部分30bが順次剥離(枚葉剥離)されて感光性積層体106が製造される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る製造装置の概略構成図である。
【図2】前記製造装置に使用される長尺状感光性ウエブの断面図である。
【図3】前記長尺状感光性ウエブに接着ラベルが接着された状態の説明図である。
【図4】ガラス基板に感光性樹脂層をラミネートする状態の説明図である。
【図5】圧着ローラにより基板に2枚の長尺状感光性ウエブを貼り付けた状態の説明図である。
【図6】静止摩擦係数と長尺状感光性ウエブの延び率評価との関係説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る製造装置の概略構成図である。
【図8】特許文献1の製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0080】
20、300…製造装置 22a、22b…感光性ウエブ
24…ガラス基板 26…可撓性ベースフイルム
28…感光性樹脂層 30…保護フイルム
46…貼り付け機構 74…基板加熱部
80a、80b…ゴムローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、支持体上に感光材料層が設けられた複数の長尺状感光性ウエブとを同期させて一対の圧着ローラ間に送り出し、複数の前記感光材料層を前記基板に並列に貼り付けることで感光性積層体を製造する製造装置において、
前記長尺状感光性ウエブの前記支持体に当接する一方の前記圧着ローラの前記支持体に対する静止摩擦係数μを0.1≦μ≦1.0の範囲に設定することを特徴とする感光性積層体の製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の製造装置において、
前記静止摩擦係数μを、0.1≦μ≦0.3の範囲に設定することを特徴とする感光性積層体の製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造装置において、
複数の前記長尺状感光性ウエブは、共通の前記一方の圧着ローラに対して送り出されることを特徴とする感光性積層体の製造装置。
【請求項4】
基板と、支持体上に感光材料層が設けられた複数の長尺状感光性ウエブとを同期させて一対の圧着ローラ間に送り出し、複数の前記感光材料層を前記基板に並列に貼り付けることで感光性積層体を製造する製造方法において、
前記長尺状感光性ウエブの前記支持体に当接する一方の前記圧着ローラの前記支持体に対する静止摩擦係数μを0.1≦μ≦1.0の範囲に設定することを特徴とする感光性積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の製造方法において、
前記静止摩擦係数μを、0.1≦μ≦0.3の範囲に設定することを特徴とする感光性積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載の製造方法において、
複数の前記長尺状感光性ウエブは、共通の前記一方の圧着ローラに対して送り出されることを特徴とする感光性積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−110490(P2008−110490A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293113(P2006−293113)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】