説明

感光性組成物、それから形成された硬化膜、および硬化膜を有する素子

【課題】耐アルカリ溶剤性を持つ硬化膜を作成する事が出来るポジ型感光性組成物を提供する。また、本発明の別の目的は、上記のポジ型感光性組成物から形成されたTFT基板用平坦化膜、層間絶縁膜、コアやクラッド材などの硬化膜、およびその硬化膜を有する表示素子、半導体素子、固体撮像素子、光導波路などの素子を提供する。
【解決手段】(a)珪素原子に結合する水素原子を含まないポリシロキサン、(b)ナフトキノンジアジド化合物、および(c)溶剤を含有し、さらに(d)下記一般式(1)で表されるイソシアヌレート基を有する化合物、もしくは(e)イソシアヌレート基を有して珪素原子に結合する水素原子を含まないポリシロキサンを含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【化1】


(式中、R1は水素、または置換、無置換の炭素数1〜10価の基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子や有機EL表示素子などの薄膜トランジスタ(TFT)基板用平坦化膜、半導体素子の層間絶縁膜、固体撮像素子用平坦化膜やマイクロレンズアレイパターン、あるいは光導波路のコアやクラッド材を形成するための感光性組成物、それから形成された硬化膜、およびその硬化膜を有する素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどにおいて、さらなる高精細、高解像度を実現する方法として、表示装置の開口率を上げる方法が知られている(特許文献1参照)。これは、透明な平坦化膜をTFT基板の上部に保護膜として設けることによって、データラインと画素電極をオーバーラップさせることを可能とし、従来技術に比べて開口率を上げる方法である。
このようなTFT基板用平坦化膜の材料としては、高耐熱性、高透明性の特性を有し、かつTFT基板電極とITO電極との導通確保のため50μm〜数μm程度のホールパターン形成をする必要があり、一般的にポジ型感光性材料が用いられる。代表的な材料としては、アクリル樹脂にキノンジアジド化合物を組み合わせた材料(特許文献2、3、4参照)が知られている。しかしながら、これらの材料は耐熱性や耐薬品性が不十分であり、基板の高温処理や各種薬液処理により硬化膜が着色して透明性が低下するという問題がある。また、これらアクリル系材料は一般に感度が低いため生産性が低く、より高感度の材料が求められている。
一方、高耐熱性、高透明性といった特性を有する他の材料として、ポリシロキサンが知られており、これにポジ型の感光性を付与するためにキノンジアジド化合物を組み合わせた材料(特許文献5参照)が公知である。この材料は透明性が高く、基板の高温処理によっても透明性は低下すること無く、高透明の硬化膜を得ることができる。しかしながらポリシロキサンは強アルカリ溶液耐性が低く、硬化膜が強アルカリ溶液へ溶解、膜厚減少が起こってしまうという問題点があった。アルカリ溶液でのクラック発生を抑制させるためポリシロキサンへイミド骨格を導入する手法が報告されているが、本手法にても硬化膜の膜厚減少という問題点は解消できなかった。(特許文献6参照)
【特許文献1】特開平9−152625号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2001−281853号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平5−165214号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2002−341521号公報(請求項1)
【特許文献5】特開2006−178436号公報(請求項1)
【特許文献6】特開2008−185672号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、耐アルカリ溶剤性を持つ硬化膜を作成する事が出来るポジ型感光性組成物を提供する。また、本発明の別の目的は、上記のポジ型感光性組成物から形成されたTFT基板用平坦化膜、層間絶縁膜、コアやクラッド材などの硬化膜、およびその硬化膜を有する表示素子、半導体素子、固体撮像素子、光導波路などの素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。すなわち(a)珪素原子に結合する水素原子を含まないポリシロキサン、(b)ナフトキノンジアジド化合物、(c)溶剤を含有し、さらに(d)下記一般式(1)で表されるイソシアヌレート基を有する化合物もしくは(e)イソシアヌレート基を有して珪素原子に結合する水素原子を含まないポリシロキサン含有することを特徴とするポジ型感光性組成物である。
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、R1は水素、または置換、無置換の炭素数1〜10価の基を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明の感光性組成物は耐アルカリ溶剤性を持つポジ型感光性組成物を提供する。また、得られた硬化膜は、TFT基板用平坦化膜や層間絶縁膜として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の感光性組成物は、(a)珪素原子に結合する水素原子を含まないポリシロキサン、(b)ナフトキノンジアジド化合物、(c)溶剤を含有し、さらに(d)下記一般式(1)で表されるイソシアヌレート基を有する化合物もしくは(e)イソシアヌレート基を有して珪素原子に結合する水素原子を含まないポリシロキサンを含有する。
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R1は水素、または置換、無置換の炭素数1〜10価の基を表す。)
(a)珪素原子に結合する水素原子を含まないポリシロキサンは、下記一般式(3)で表されるオルガノシランの1種以上を加水分解し縮合させることによって合成されるポリシロキサンであることが好ましい。
【0011】
【化3】

【0012】
一般式(3)で表されるオルガノシランにおいて、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも無置換体、置換体のいずれでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基およびその置換体の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基が挙げられる。アルケニル基およびその置換体の具体例としては、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基が挙げられる。アリール基およびその置換体の具体例としては、フェニル基、トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基が挙げられる。珪素原子に結合した水素原子がポリシロキサンに含まれるとポジ型感光性の特性が失われるため、珪素原子に結合した水素原子がポリシロキサンに含まれない必要がある。
【0013】
一般式(3)のRは水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、これらのアルキル基、アシル基、アリール基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が挙げられる。アシル基の具体例としては、アセチル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基が挙げられる。
【0014】
一般式(3)のnは0から3の整数を表す。n=0の場合は4官能性シラン、n=1の場合は3官能性シラン、n=2の場合は2官能性シラン、n=3の場合は1官能性シランである。
【0015】
一般式(3)で表されるオルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシランなどの4官能性シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸などの3官能シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシランなどの2官能シラン、トリメチルメトキシシラン、トリn−ブチルエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシランなどの1官能シランが挙げられる。なお、これらのオルガノシランは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのオルガノシランの中でも、硬化膜の耐クラック性や硬度の点から3官能シランが好ましく用いられる。
【0016】
本発明で用いる(a)のポリシロキサンは、一般式(3)で表されるオルガノシランの1種以上と、下記一般式(4)で表されるオルガノシランの1種以上を加水分解し縮合させることによって合成されるポリシロキサンであることがより好ましい。
【0017】
【化4】

【0018】
一般式(4)で表されるオルガノシランにおいて、式中、RからRはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表す。これらのアルキル基、アシル基、アリール基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が挙げられる。アシル基の具体例としては、アセチル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基が挙げられる。一般式(4)のmは2から8の整数であり、mは分布を有してもよい。
【0019】
一般式(4)で表されるオルガノシランを用いることで、高い耐熱性や透明性を維持しつつ、感度と解像度に優れたポジ型感光性組成物が得られる。一般式(4)で表されるオルガノシランの具体例としては、メチルシリケート51(扶桑化学工業株式会社製)、Mシリケート51、シリケート40、シリケート45(多摩化学工業株式会社製)、メチルシリケート51、メチルシリケート53A、エチルシリケート40、エチルシリケート48(コルコート株式会社製)などが挙げられる。
【0020】
(a)のポリシロキサンの態様として、前述の一般式(3)で表されるオルガノシランの1種以上と、シリカ粒子を反応させることによって合成されるポリシロキサンを用いても良い。シリカ粒子を反応させることで、パターン解像度が向上する。これは、ポリシロキサン中にシリカ粒子が組み込まれることで、膜のガラス転移温度が高くなり熱硬化時のパターンだれが抑えられるためと考えられる。
【0021】
シリカ粒子の具体例としては、イソプロパノールを分散媒とした粒子径12nmのIPA−ST、メチルイソブチルケトンを分散媒とした粒子径12nmのMIBK−ST、イソプロパノールを分散媒とした粒子径45nmのIPA−ST−L、イソプロパノールを分散媒とした粒子径100nmのIPA−ST−ZL、プロピレングリコールモノメチルエーテルを分散媒とした粒子径15nmのPGM−ST(以上商品名、日産化学工業(株)製)、γ−ブチロラクトンを分散媒とした粒子径12nmのオスカル101、γ−ブチロラクトンを分散媒とした粒子径60nmのオスカル105、ジアセトンアルコールを分散媒とした粒子径120nmのオスカル106、分散溶液が水である粒子径5〜80nmのカタロイド−S(以上商品名、触媒化成工業(株)製)、プロピレングリコールモノメチルエーテルを分散媒とした粒子径16nmのクォートロンPL−2L−PGME、γ−ブチロラクトンを分散媒とした粒子径17nmのクォートロンPL−2L−BL、ジアセトンアルコールを分散媒とした粒子径17nmのクォートロンPL−2L−DAA、分散溶液が水である粒子径18〜20nmのクォートロンPL−2L、GP−2L(以上商品名、扶桑化学工業(株)製)、粒子径が100nmであるシリカ(SiO2)SG−SO100(商品名、共立マテリアル(株)製)、粒子径が5〜50nmであるレオロシール(商品名、(株)トクヤマ製)などが挙げられる。また、これらのシリカ粒子は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明におけるポリシロキサンは、一般式(3)や(4)で表されるオルガノシランなどのモノマーを加水分解および部分縮合させることにより合成される。加水分解および部分縮合には一般的な方法を用いることができる。例えば、混合物に溶媒、水、必要に応じて触媒を添加し、50〜150℃で0.5〜100時間程度加熱攪拌する。なお、攪拌中、必要に応じて、蒸留によって加水分解副生物(メタノールなどのアルコール)や縮合副生物(水)の留去を行ってもよい。
上記の反応溶媒としては特に制限は無いが、通常は後述の(d)溶剤と同様のものが用いられる。溶媒の添加量はオルガノシランなどのモノマー100重量部に対して10〜1000重量部が好ましい。また加水分解反応に用いる水の添加量は、加水分解性基1モルに対して0.5〜2モルが好ましい。
【0023】
必要に応じて添加される触媒に特に制限はないが、酸触媒、塩基触媒が好ましく用いられる。酸触媒の具体例としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂が挙げられる。塩基触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシラン、イオン交換樹脂が挙げられる。触媒の添加量はオルガノシランなどのモノマー100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましい。
【0024】
また、組成物の貯蔵安定性の観点から、加水分解、部分縮合後のポリシロキサン溶液には上記触媒が含まれないことが好ましく、必要に応じて触媒の除去を行うことができる。除去方法に特に制限は無いが、操作の簡便さと除去性の点で、水洗浄、および/またはイオン交換樹脂の処理が好ましい。水洗浄とは、ポリシロキサン溶液を適当な疎水性溶剤で希釈した後、水で数回洗浄して得られた有機層をエバポレーター等で濃縮する方法である。イオン交換樹脂での処理とは、ポリシロキサン溶液を適当なイオン交換樹脂に接触させる方法である。
【0025】
本発明のポジ型感光性組成物は、(b)ナフトキノンジアジド化合物を含有する。ナフトキノンジアジド化合物を含有する感光性組成物は、露光部が現像液で除去されるポジ型を形成する。用いるナフトキノンジアジド化合物に特に制限は無いが、好ましくはフェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル結合した化合物であり、当該化合物のフェノール性水酸基のオルト位、およびパラ位がそれぞれ独立して水素、もしくは一般式(5)で表される置換基のいずれかである化合物が用いられる。
【0026】
【化5】

【0027】
式中、R、R10、R11はそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、フェニル基、置換フェニル基のいずれかを表す。また、R、R10、R11で環を形成してもよい。アルキル基は無置換体、置換体のいずれでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基、2−カルボキシエチル基が挙げられる。また、フェニル基上の置換基としては、水酸基、メトキシ基などが挙げられる。また、R、R10、R11で環を形成する場合の具体例としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、フルオレン環が挙げられる。
【0028】
フェノール性水酸基のオルト位、およびパラ位が上記以外、例えばメチル基の場合、熱硬化によって酸化分解が起こり、キノイド構造に代表される共役系化合物が形成され、硬化膜が着色して無色透明性が低下する。なお、これらのナフトキノンジアジド化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物と、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドとの公知のエステル化反応により合成することができる。
フェノール性水酸基を有する化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる(いずれも本州化学工業(株)製)。
【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
原料となるナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドとしては、4−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドあるいは5−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドを用いることができる。4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物はi線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適している。また、5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適している。露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を選択することが好ましい。4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を混合して用いることもできる。
【0032】
ナフトキノンジアジド化合物の添加量は特に制限されないが、好ましくは樹脂(ポリシロキサン)100重量部に対して2〜30重量部であり、さらに好ましくは4〜20重量部である。ナフトキノンジアジド化合物の添加量が1重量部より少ない場合、露光部と未露光部との溶解コントラストが低すぎて、実用に足る感光性を発現しない。また、さらに良好な溶解コントラストを得るためには5重量部以上が好ましい。一方、ナフトキノンジアジド化合物の添加量が30重量部より多い場合、ポリシロキサンとナフトキノンジアジド化合物との相溶性の低下による塗布膜の白化や、熱硬化時に起こるキノンジアジド化合物の分解による着色が顕著になるために、硬化膜の無色透明性が低下することがある。また、さらに高透明性の膜を得るためには15重量部以下であることが好ましい。
【0033】
本発明のポジ型感光性組成物は(d)下記一般式(1)で表されるイソシアヌレート基を有する化合物、または(e)イソシアヌレート骨格を有するポリシロキサンを含有する。
【0034】
【化8】

【0035】
一般式(1)においてRは水素、または置換、無置換の炭素数1〜10価の基を表し、複数のRはそれぞれ同じであっても異なってもよい。無置換の炭素数1〜10価の基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、ビニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。置換された炭素数1〜10価の基としては3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基、2−アクリロキシエチル、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、2,3−ジブロモプロピル基、2−トリメトキシシリルエチル基、3−トリメトキシシリルプロピル基、2−トリエトキシシリルエチル基、3−トリエトキシシリルプロピル基などが挙げられる。イソシアヌレート基を有する化合物の具体例としては下記構造のX−12−965(信越化学工業(株)製)、“TAIC”(日本化成(株)社製)、“アロニックス”M−315(イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート:東亞合成(株)製)、“アロニックス”M−215(イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート:東亞合成(株)製)、“TEPIC”(日産化学(株)製)などが挙げられる。
【0036】
【化9】

【0037】
(e)イソシアヌレート骨格を有するポリシロキサンは(d)のイソシアヌレート基を有する化合物の一般式(1)における少なくとも1つのRが下記一般式(2)で表される基であるオルガノシラン化合物を加水分解し縮合させることによって合成されるポリシロキサンであることが好ましく、さらに(a)ポリシロキサンの合成法で記載したオルガノシラン、シリカ粒子と共重合しても良い。
【0038】
【化10】

【0039】
は水素原子または炭素数1〜6価の有機基、mは1〜6の整数を表す。Rとしてはメチル基、エチル基、プロピルオキシエチル基、フェニル基等が挙げられ、一般式(2)で表される置換基としては2−トリメトキシシリルエチル基、3−トリメトキシシリルプロピル基、2−トリエトキシシリルエチル基、3−トリエトキシシリルプロピル基、3−トリフェニルシリルプロピル基が挙げられる。(d)のイソシアヌレート基を有する化合物の一般式(1)における少なくとも1つのRが一般式(2)で表される基であるオルガノシラン化合物の具体例としてはX−12−965(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0040】
【化11】

【0041】
またポリシロキサンとイソシアネート基を硬化時により反応させるため、(a)のポリシロキサンが1つ以上の珪素原子に結合するシラノール基(−Si−OH)を有し、かつ(d)のイソシアネート基を有する化合物が一般式(1)における少なくとも1つのRが一般式(2)で表される基であるオルガノシラン化合物であることが好ましい。
【0042】
【化12】

【0043】
1つ以上の珪素原子に結合するシラノール基(−Si−OH)を有する(a)のポリシロキサンとしては特に限定されず(a)珪素原子に結合する水素原子を含まないポリシロキサンに記載したポリマーが用いることが出来る。またシラノール基を残存させるために、シラノール基を封止する1官能オルガノシランを用いず、2、3、4官能オルガノシランの1種以上を加水分解し縮合させることによって合成されるポリシロキサンであることが好ましい。
【0044】
またポリシロキサンが1つ以上の炭素−炭素二重結合を有しかつ一般式(1)で表されるイソシアネート化合物の少なくとも1つのRが炭素−炭素二重結合を有する炭素数1〜10価の有機基である化合物を用いることにより、ポリシロキサンとイソシアネート基を硬化時に反応させることも出来る。
【0045】
炭素−炭素二重結合を有する炭素数1〜10価の有機基としてはビニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、2−アクリロキシエチル、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基などが挙げられる。一般式(1)で表されるイソシアネート化合物の少なくとも1つのRが炭素−炭素二重結合を有する炭素数1〜10価の有機基である化合物の具体例としては“TAIC”(日本化成(株)社製)、“アロニックス”M−315(イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート:東亞合成(株)製)、“アロニックス”M−215(イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート:東亞合成(株)製)が挙げられる。
【0046】
本発明のポジ型感光性組成物は(d)溶剤を含有する。使用する溶剤に特に制限はないが、好ましくはアルコール性水酸基を有する化合物が用いられる。これらの溶剤を用いると、ポリシロキサンとキノンジアジド化合物とが均一に溶解し、組成物を塗布成膜しても膜は白化することなく、高透明性が達成できる。
【0047】
上記アルコール性水酸基を有する化合物は特に制限されないが、好ましくは大気圧下の沸点が110〜250℃である化合物である。沸点が250℃より高いと膜中の残存溶剤量が多くなりキュア時の膜収縮が大きくなり、良好な平坦性が得られなくなる。一方、沸点が110℃より低いと、塗膜時の乾燥が速すぎて膜表面が荒れるなど塗膜性が悪くなる。
アルコール性水酸基を有する化合物の具体例としては、アセトール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールなどが挙げられる。なお、これらのアルコール性水酸基を有する化合物は、単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
また、本発明の感光性組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の溶剤を含有してもよい。その他の溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシ−1−ブチルアセテート、アセト酢酸エチルなどのエステル類、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、などのエーテル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、炭酸プロピレン、N−メチルピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどが挙げられる。
【0049】
溶剤の添加量に特に制限はないが、好ましくは樹脂(ポリシロキサン)100重量部に対して100〜2000重量部の範囲である。
本発明の感光性組成物は、界面活性剤を含有しても良い。界面活性剤を含有することで、塗布ムラが改善し均一な塗布膜が得られる。フッ素系界面活性剤や、シリコーン系界面化成剤が好ましく用いられる。
【0050】
フッ素系界面活性剤の具体的な例としては、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロデカン、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N′−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルなどの末端、主鎖および側鎖の少なくとも何れかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物からなるフッ素系界面活性剤を挙げることができる。また、市販品としては、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183、同F475(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、エフトップEF301、同303、同352(新秋田化成(株)製)、フロラードFC−430、同FC−431(住友スリーエム(株)製))、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭硝子(株)製)、BM−1000、BM−1100(裕商(株)製)、NBX−15、FTX−218、DFX−218((株)ネオス製)などのフッ素系界面活性剤がある。
【0051】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、SH28PA、SH7PA、SH21PA、SH30PA、ST94PA(いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、BYK−333(ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられる。
界面活性剤の含有量は、感光性組成物中、0.0001〜1重量%とするのが一般的である。
【0052】
本発明の感光性組成物は、アクリル樹脂を含有してもよい。アクリル樹脂を用いることにより、下地基板との密着性やパターン加工性が改善される場合がある。アクリル樹脂に特に制限は無いが、好ましくは不飽和カルボン酸の重合体が挙げられる。不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。これらは単独で用いても良いが、他の共重合可能なエチレン性不飽和化合物と組み合わせて用いても良い。共重合可能なエチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ペンチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレートなどが挙げられる。
【0053】
また、該アクリル樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和基が付加したアクリル樹脂であることが好ましい。側鎖にエチレン性不飽和基が付加されることによって、熱硬化時にアクリル樹脂の架橋が起こり、硬化膜の耐薬品性が向上する。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基等がある。アクリル樹脂の側鎖にエチレン性不飽和基を付加させる方法としては、水酸基、アミノ基、グリシジル基などの官能基とエチレン性不飽和基とを含有する化合物を用いて、この官能基をアクリル樹脂中のカルボニル基に反応させる方法が挙げられる。ここでいう水酸基、アミノ基、グリシジル基などの官能基とエチレン性不飽和基とを含有する化合物としては、アクリル酸2−ヒドロキシルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−アミノエチル、メタクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0054】
さらに、本発明の感光性組成物は必要に応じて、シランカップリング剤、架橋剤、架橋促進剤、増感剤、熱ラジカル発生剤、溶解促進剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤、消泡剤などの添加剤を含有することもできる。
【0055】
本発明の感光性組成物を用いた硬化膜の形成方法について説明する。本発明の感光性組成物をスピナー、スリットなどの公知の方法によって下地基板上に塗布し、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置でプリベークする。プリベークは、50〜150℃の範囲で30秒〜30分間行い、プリベーク後の膜厚は、0.1〜15μmとするのが好ましい。
プリベーク後、ステッパー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、パラレルライトマスクアライナー(PLA)などの紫外可視露光機を用い、10〜4000J/m程度(波長365nm露光量換算)を所望のマスクを介してパターン露光する。
露光後、現像により露光部が溶解し、ポジパターンを得ることができる。現像方法としては、シャワー、ディップ、パドルなどの方法で現像液に5秒〜10分間浸漬することが好ましい。現像液としては、公知のアルカリ現像液を用いることができる。具体的例としてはアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩などの無機アルカリ、2−ジエチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類、水酸化テトラメチルアンモニウム、コリン等の4級アンモニウム塩を1種あるいは2種以上含む水溶液等が挙げられる。また、現像後は水でリンスすることが好ましく、必要であればホットプレート、オーブンなどの加熱装置で50〜150℃の範囲で脱水乾燥ベークを行うこともできる。
【0056】
その後、ブリーチング露光を行うことが好ましい。ブリーチング露光を行うことによって、膜中に残存する未反応のナフトキノンジアジド化合物が光分解して、膜の光透明性がさらに向上する。ブリーチング露光の方法としては、PLAなどの紫外可視露光機を用い、100〜20000J/m程度(波長365nm露光量換算)を全面に露光する。
ブリーチング露光した膜を、必要であればホットプレート、オーブンなどの加熱装置で50〜150℃の範囲で30秒〜30分間ソフトベークを行った後、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置で150〜450℃の範囲で1時間程度キュアすることで、表示素子におけるTFT用平坦化膜、半導体素子における層間絶縁膜、あるいは光導波路におけるコアやクラッド材といった硬化膜が形成される。
【0057】
本発明の感光性組成物を用いて作製した硬化膜は、波長400nmにおける膜厚3μmあたりの光透過率が90%以上であり、さらに好ましくは92%以上である。光透過率が90%より低いと、液晶表示素子のTFT基板用平坦化膜として用いた場合、バックライトが通過する際に色変化が起こり、白色表示が黄色味を帯びる。
前記の波長400nmにおける膜厚3μmあたりの透過率は、以下の方法により求められる。組成物をテンパックスガラス板にスピンコーターを用いて任意の回転数でスピンコートし、ホットプレートを用いて100℃で2分間プリベークする。その後、ブリーチング露光として、PLAを用いて、膜全面に超高圧水銀灯を3000J/m(波長365nm露光量換算)露光し、オーブンを用いて空気中220℃で1時間熱硬化して膜厚3μmの硬化膜を作製する。得られた硬化膜の紫外可視吸収スペクトルを(株)島津製作所製MultiSpec−1500を用いて測定し、波長400nmでの透過率を求める。
この硬化膜は表示素子におけるTFT用平坦化膜、半導体素子における層間絶縁膜、あるいは光導波路におけるコアやクラッド材等に好適に使用される。
【0058】
本発明における素子は、上述のような高耐熱性、高透明性の硬化膜を有する表示素子、半導体素子、あるいは光導波路材を指し、特に、TFT用平坦化膜として有する液晶、ならびに有機EL表示素子に好適である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。なお、用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。
【0060】
DAA:ダイアセトンアルコール
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GBL:γ−ブチロラクトン
EDM:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
HPE:2−ヒドロキシプロピオン酸エチル。
【0061】
また、ポリシロキサン溶液、アクリル樹脂溶液の固形分濃度、およびポリシロキサン、アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、以下の通り求めた。
【0062】
(1)固形分濃度
アルミカップにポリシロキサン溶液またはアクリル樹脂溶液を1g秤取し、ホットプレートを用いて250℃で30分間加熱して液分を蒸発させた。加熱後のアルミカップに残った固形分を秤量して、アクリル樹脂またはポリシロキサン溶液の固形分濃度を求めた。
【0063】
(2)重量平均分子量
重量平均分子量はGPC(Waters社製410型RI検出器、流動層:テトラヒドロフラン)にてポリスチレン換算により求めた。
【0064】
合成例1 ポリシロキサン溶液(a)の合成
500mlの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを54.48g(0.40mol)、フェニルトリメトキシシランを109.07g(0.55mol)、(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを14.78g(0.05mol)、PGMEAを151g仕込み、室温で攪拌しながら水65.9gにリン酸0.54g(仕込みモノマーに対して0.3重量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて30分攪拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌し(内温は100〜110℃)、ポリシロキサン溶液を得た。
【0065】
得られたポリシロキサン溶液の固形分濃度を測定し、40重量%となるようにPGMEAを添加してポリシロキサン溶液(a)を得た。ポリシロキサンの重量平均分子量は6900であった。なお、ポリシロキサン中のフェニル基含有比はSi原子モル比で55%であった。ポリシロキサン溶液(a)をスピンコーター(ミカサ(株)製1H−360S)を用いてスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて120℃で2分間プリベークし、赤外吸収スペクトル測定((株)堀場製作所製FT−720)を行ったところシラノール基を有していた。
【0066】
合成例2 ポリシロキサン溶液(b)の合成
500mlの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを49.03g(0.36mol)、フェニルトリメトキシシランを130.88g(0.66mol)、シリケート40(多摩化学工業株式会社製)を26.82g(0.18mol)、DAAを190g仕込み、室温で攪拌しながら水62.9gにリン酸0.62g(仕込みモノマーに対して0.3重量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて30分攪拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌し(内温は100〜110℃)、ポリシロキサン溶液を得た。
【0067】
得られたポリシロキサン溶液の固形分濃度を測定し、40重量%となるようにDAAを添加してポリシロキサン溶液(b)を得た。ポリシロキサンの重量平均分子量は6200であった。なお、ポリシロキサン中のフェニル基含有比はSi原子モル比で55%、一般式(2)で表されるオルガノシランの含有比はSi原子モル比で15%であった。ポリシロキサン溶液(b)をスピンコーター(ミカサ(株)製1H−360S)を用いてスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて120℃で2分間プリベークし、赤外吸収スペクトル測定((株)堀場製作所製FT−720)を行ったところシラノール基を有していた。
【0068】
合成例3 ポリシロキサン溶液(c)の合成
500mlの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを35.41g(0.26mol)、フェニルトリメトキシシランを141.78g(0.715mol)、(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを14.78g(0.065mol)、Mシリケート51(多摩化学工業株式会社製)を28.20g(0.18mol)、PGMEAを205g仕込み、室温で攪拌しながら水63.7gにリン酸1.1g(仕込みモノマーに対して0.5重量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて30分攪拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌し(内温は100〜110℃)、ポリシロキサン溶液を得た。
【0069】
得られたポリシロキサン溶液の固形分濃度を測定し、40重量%となるようにPGMEAを添加してポリシロキサン溶液(c)を得た。ポリシロキサンの重量平均分子量は7400であった。なお、ポリシロキサン中のフェニル基含有比はSi原子モル比で55%、一般式(2)で表されるオルガノシランの含有比はSi原子モル比で20%であった。ポリシロキサン溶液(c)をスピンコーター(ミカサ(株)製1H−360S)を用いてスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて120℃で2分間プリベークし、赤外吸収スペクトル測定((株)堀場製作所製FT−720)を行ったところシラノール基を有していた。
【0070】
合成例4 ポリシロキサン溶液(d)の合成
500mlの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを40.86g(0.30mol)、フェニルトリメトキシシランを99.15g(0.50mol)、Mシリケート51(多摩化学工業株式会社製)を11.75g(0.10mol)、シリカゾル粒子分散液クォートロンPL−2L(扶桑化学工業株式会社製、分散媒:水 シリカ粒子含有量19.7w%)30.50g(0.10mol)、DAA190gを仕込み、室温で攪拌しながら水23.21gにリン酸0.47g(仕込みモノマーに対して0.3重量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて30分攪拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌し(内温は100〜110℃)、ポリシロキサン溶液を得た。
【0071】
得られたポリシロキサン溶液の固形分濃度を測定し、40重量%となるようにDAAを添加してポリシロキサン溶液(d)を得た。ポリシロキサンの重量平均分子量はシリカ粒子を含むため正確に測定不能であった。なお、ポリシロキサン中のフェニル基含有比はSi原子モル比で50%、一般式(2)で表されるオルガノシランの含有比はSi原子モル比で10%であった。ポリシロキサン溶液(d)をスピンコーター(ミカサ(株)製1H−360S)を用いてスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて120℃で2分間プリベークし、赤外吸収スペクトル測定((株)堀場製作所製FT−720)を行ったところシラノール基を有していた。
【0072】
合成例5 イソシアヌレート骨格を有するポリシロキサン(e)の合成
500mLの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを54.48g(0.40mol)、フェニルトリメトキシシランを109.07g(0.55mol)、トリス−(3− トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(X−12−965:信越化学工業(株)製)を30.76(0.05mol)、PGMEAを158.98g仕込み、室温で撹拌しながら水53.55gにリン酸0.389g(仕込みモノマーに対して0.2重量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに浸けて1時間撹拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100〜110℃)。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計115g留出した。得られたポリシロキサン溶液の固形分濃度を測定し、固形分濃度が40重量%となるようにPGMEAを加えてイソシナヌレート骨格を有するポリシロキサン溶液(e)を得た。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は8000であり、フェニル基の含有量はSi原子に対して55%であった。ポリシロキサン溶液(e)をスピンコーター(ミカサ(株)製1H−360S)を用いてスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて120℃で2分間プリベークし、赤外吸収スペクトル測定((株)堀場製作所製FT−720)を行ったところシラノール基を有していた。
【0073】
合成例6 炭素−炭素二重結合を有するポリシロキサン溶液(f)の合成
500mLの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを44.95g(0.30mol)、フェニルトリメトキシシランを109.07g(0.50mol)、(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン27.10g(0.10mol)、ビニルトリメトキシシラン16.29g(0.10mol)、PGMEAを161.51g仕込み、室温で撹拌しながら水61.38gにリン酸0.099g(仕込みモノマーに対して0.05重量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに浸けて1時間撹拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100〜110℃)。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計115g留出した。得られたポリシロキサン溶液の固形分濃度を測定し、固形分濃度が40重量%となるようにPGMEAを加えて炭素−炭素二重結合を有するポリシロキサン溶液(f)を得た。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は4500であり、フェニル基の含有量はSi原子に対して50%であった。ポリシロキサン溶液(f)をスピンコーター(ミカサ(株)製1H−360S)を用いてスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて120℃で2分間プリベークし、赤外吸収スペクトル測定((株)堀場製作所製FT−720)を行ったところシラノール基を有していた。
【0074】
合成例7 炭素−炭素二重結合を有するポリシロキサン溶液(g)の合成
500mLの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを47.67g(0.35mol)、フェニルトリメトキシシランを39.66g(0.20mol)、(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン26.23g(0.10mol)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン82.04g(0.35mol)、DAAを179.42g仕込み、室温で撹拌しながら水55.80gにリン酸0.391g(仕込みモノマーに対して0.2重量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに浸けて1時間撹拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100〜110℃)。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計115g留出した。得られたポリシロキサン溶液の固形分濃度を測定し、固形分濃度が40重量%となるようにDAAを加えて炭素−炭素二重結合を有するポリシロキサン溶液(g)を得た。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は4800であり、フェニル基の含有量はSi原子に対して50%であった。ポリシロキサン溶液(g)をスピンコーター(ミカサ(株)製1H−360S)を用いてスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて120℃で2分間プリベークし、赤外吸収スペクトル測定((株)堀場製作所製FT−720)を行ったところシラノール基を有していた。
【0075】
合成例8 ポリシロキサン溶液(h)の合成
GBL200gにイソシアネートプロピルトリエトキシシラン197.9g(0.80
mol)と無水フタル酸(東京化成工業(株)社製)118.5g(0.80mol)を
加えてしばらく室温にて攪拌した後、140℃にて2時間攪拌した。その結果、固形分5
8.4%の下記構造で表されるイミドシラン化合物溶液を得た。
【0076】
【化13】

【0077】
次に500mLの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを40.34g(0.35mol)、フェニルトリメトキシシランを69.41g(0.35mol)、上記イミドシラン化合物溶液180.5g(固形分換算で0.30molに相当)、DAAを75.36g仕込み、室温で撹拌しながら水55.8gにリン酸0.338g(仕込みモノマーに対して0.2重量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに浸けて1時間撹拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100〜110℃)。
【0078】
得られたポリシロキサン溶液の固形分濃度を測定し、固形分濃度が43重量%となるようにDAAを加えてポリシロキサン溶液(h)を得た。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は6000であり、フェニル基の含有量はSi原子に対して35%であった。ポリシロキサン溶液(h)をスピンコーター(ミカサ(株)製1H−360S)を用いてスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて120℃で2分間プリベークし、赤外吸収スペクトル測定((株)堀場製作所製FT−720)を行ったところシラノール基を有していた。
【0079】
合成例9 アクリル樹脂溶液(a)の合成
500mlのフラスコに2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)を5g、t−ドデカンチオールを5g、PGMEAを120g仕込んだ。その後、メタクリル酸を30g、ベンジルメタクリレートを35g、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレートを35g仕込み、室温で攪拌してフラスコ内を窒素置換した後、70℃で5時間加熱攪拌した。ジメチルベンジルアミンを1g、p−メトキシフェノールを0.2g添加し、90℃で4時間加熱攪拌し、アクリル樹脂溶液(a)を得た。
得られたアクリル樹脂溶液の固形分濃度を測定し、固形分濃度が43重量%となるようにPGMEAを加えてアクリル樹脂溶液(a)を得た。アクリル樹脂の重量平均分子量は11500、酸価は105mgKOH/gであった。
【0080】
合成例10 ノボラック樹脂の溶液(a)の合成
冷却管と撹拌装置を装着した2Lのセパラブルフラスコに、m−クレゾール172.8g(1.6mol)、2.3−ジメチルフェノール36.6g(0.3モル)、3.4−ジメチルフェノール12.2g(0.1mol)、37重量%ホルムアルデヒド水溶液12.6g(ホルムアルデヒド:1.5mol)、シュウ酸2水和物12.6g(0.1mol)及びメチルイソブチルケトン554gを加え、30分撹拌した後、1時間静置した。2層に分離した上層をデカンテーションによって除去し、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル(HPE)を加え、残存メチルイソブチルケトン、水を減圧濃縮によって除去し、ノボラック樹脂のHPE溶液を得た。得られたノボラック樹脂のHPE溶液に、ポリマー濃度が43重量%となるようにHPEを加えて、ノボラック樹脂のHPE溶液(x)を得た。
【0081】
合成例11 キノンジアジド化合物(a)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.23g(0.05mol)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド37.62g(0.14mol)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.58g(0.154mol)を系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記構造のキノンジアジド化合物(a)を得た。
【0082】
【化14】

【0083】
合成例12 キノンジアジド化合物(b)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−HAP(商品名、本州化学工業(株)製)15.32g(0.05mol)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド26.87g(0.1mol)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン11.13g(0.11mol)を系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記構造のキノンジアジド化合物(b)を得た。
【0084】
【化15】

【0085】
実施例1
合成例1で得られたポリシロキサン溶液(a)17.63g(ポリシロキサン100重量部)、合成例9で得られたキノンジアジド化合物(a)0.49g(7重量部)、請求項2の一般式(2)で表されるイソシアヌレート骨格を有する化合物としてX−12−965(信越化学工業(株)製)0.75g(10重量部)、溶剤としてDAA4.27g、PGMEA6.28gを黄色灯下で混合、攪拌した。次に界面活性剤としてBYK−333を30ppmとなるように添加し、攪拌、均一溶液とした後、0.45μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して組成物1を調製した。
【0086】
組成物1をシリコンウェハおよびOA−10ガラス板(日本電気硝子(株)製)にスピンコーター(ミカサ(株)製1H−360S)を用いてスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて100℃で2分間プリベークし、膜厚3μmの膜を作製した。作製した膜をパラレルライトマスクアライナー(以下、PLAと略する)(キヤノン(株)製PLA−501F)を用いて、超高圧水銀灯を感度測定用のグレースケールマスクを介してパターン露光した後、自動現像装置(滝沢産業(株)製AD−2000)を用いて2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液 (商品名“ELM−D”、三菱ガス化学(株)製)で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスした。その後、ブリーチング露光として、PLA(キヤノン(株)製PLA−501F)を用いて、膜全面に超高圧水銀灯を3000J/m2(波長365nm露光量換算)露光した。その後、ホットプレートを用いて110℃で2分間ソフトベークし、次いでオーブン(タバイエスペック(株)製IHPS−222)を用いて空気中220℃で1時間キュアして硬化膜を作製した。
【0087】
感光特性、および硬化膜特性の評価結果を表2に示す。なお、表中の評価は以下の方法で行った。なお、下記の(3)〜(7)の評価はシリコンウェハ基板を、(8)の評価はOA−10ガラス板を用いて行った。
【0088】
(3)膜厚測定
光干渉式膜厚測定装置(商品名“ラムダエース”STM−602、大日本スクリーン製)を用いて、屈折率1.50で測定を行った。
【0089】
(4)現像時残膜率の算出
残膜率は以下の式に従って算出した。
残膜率(%)=現像後の未露光部膜厚÷プリベーク後の膜厚×100
(5)感度の算出
露光、現像後、10μmのライン・アンド・スペースパターンを1対1の幅に形成する露光量(以下、これを最適露光量という)を感度とした。
【0090】
(6)解像度の算出
最適露光量における現像後の最小パターン寸法を現像後解像度、キュア後の最小パターン寸法をキュア後解像度とした。
【0091】
(7)光透過率の測定
紫外・可視分光光度計(商品名“MultiSpec−1500”、(株)島津製作所)を用いて、まずOA−10ガラス板のみを測定し、その紫外可視吸収スペクトルをリファレンスとした。次にOA−10ガラス板上に組成物の硬化膜を形成(パターン露光は行わない)し、このサンプルをシングルビームで測定し、3μmあたりの波長400nmでの光透過率を求め、リファレンスとの差異を硬化膜の光透過率とした。
【0092】
(8)耐溶剤時の残膜率
シリコンウェハ上に形成された硬化膜の膜厚を光干渉式膜厚測定装置(商品名“ラムダエース”STM−602、大日本スクリーン製)にて測定する。その後硬化膜を強アルカリ溶液であるモノエタノールアミン/ジメチルスルホキシド=70/30(重量比)中に80℃で20分間浸漬した後、5分間純水リンスを行い、水を窒素ブローで除去し、再び膜厚を測定した。(アルカリ溶液処理後の膜厚)×100/(処理前の膜厚)[%]を求め耐アルカリ性の指標とした。
【0093】
実施例2〜12、比較例1〜4
組成物1と同様に、組成物2〜15を表1に記載の組成にて調製した。イソシアヌレート骨格を有する化合物として用いた、“TAIC”(日本化成(株)社製)、“アロニックス”M−315(イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート:東亞合成(株)製)、“アロニックス”M−215(イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート:東亞合成(株)製)の構造を下記に示す。組成物1と同様の評価を行い、結果を表2に示す。
【0094】
【化16】

【0095】
【表1】

【0096】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)珪素原子に結合する水素原子を含まないポリシロキサン、(b)ナフトキノンジアジド化合物、および(c)溶剤を含有し、さらに(d)下記一般式(1)で表されるイソシアヌレート基を有する化合物、もしくは(e)イソシアヌレート基を有して珪素原子に結合する水素原子を含まないポリシロキサンを含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【化1】

(式中、R1は水素、または置換、無置換の炭素数1〜10価の基を表す。)
【請求項2】
前記(a)のポリシロキサンが1つ以上の珪素原子に結合するシラノール基(−Si−OH)を有し、かつ前記(d)のイソシアヌレート基を有する化合物の一般式(1)における少なくとも1つのRが下記一般式(2)で表される基であることを特徴とする請求項1に記載のポジ型感光性組成物。
【化2】

(Rは水素原子または炭素数1〜6価の有機基、mは1〜6の整数を表す。)
【請求項3】
前記(a)のポリシロキサンが1つ以上の炭素−炭素二重結合を有し、かつ前記(d)のイソシアヌレート基を有する化合物の一般式(1)における少なくとも1つのRが炭素−炭素二重結合を有する炭素数1〜10価の有機基であることを特徴とする請求項1に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のポジ型感光性組成物から形成された硬化膜であって、波長400nmにおける膜厚3μmあたりの光透過率が90%以上である硬化膜。
【請求項5】
請求項4記載の硬化膜を具備する素子。

【公開番号】特開2010−139802(P2010−139802A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316535(P2008−316535)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】