説明

感度を高めた熱センサ

本発明は、各々の第1の基板(110)内の断熱テーブル(1100)上に形成される第1(1120、1125)及び第2の温度感知素子を有する熱センサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関し、特に、感度を高めた熱センサに関する。より詳細には、本発明は、断熱されたテーブル上の同じ場所に配置される第1及び第2の温度感知素子であり、典型的には抵抗素子であって、第1及び第2の温度感知素子の各々が同じ熱環境に曝されるような素子を備える、熱センサに関する。
【背景技術】
【0002】
センサは、従来技術において周知である。シリコン又はゲルマニウムなどの半導体材料により形成されたとき、そのようなセンサは、機械的構造、例えばMEMS配列、又は赤外線(IR)センサなどの電磁(EM)放射線センサとして提供することができる。シリコンなどの材料を使用することにより、所望の構成とするためにエッチング及び他の半導体加工技術からウェハの1つ又は複数の層においてセンサを形成することが可能になる。センサのデリケートな性質のため、及び周囲の環境に影響を受けやすいため、センサに保護キャップを備える方法が知られ、そのキャップはセンサの環境をセンサが動作可能な周囲環境から隔離する役割をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第20,030,075,794号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EMセンサの分野においては、パッケージ形態で提供することができるセンサが特に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これら及び他の問題は、断熱されたテーブル上の同じ場所に配置される第1及び第2の温度感知素子、典型的には抵抗素子であって、第1及び第2の温度感知素子の各々が同じ熱環境に曝されるような素子を備える本発明の教示に従って熱センサをもたらす電気回路によって解決される。感知素子を等温環境内の同じ場所に配置することにより、感知素子からの応答が、他の何らかのソースから生じたものではなく、その素子上の照射に関連付けられた応答であることを確実にすることが可能である。
【0006】
好ましい実施形態によれば、従って本発明は、請求項1にかかる電気回路を提供する。そのような電気回路の有利な実施形態は、これの従属請求項において提供される。また、本発明は、請求項17又は18にかかる熱センサ、請求項62にかかるセンサアレイ、請求項66にかかるガス分析器、及び請求項64にかかる弁別センサを提供する。また、本発明は、請求項68にかかるセンサを形成する方法も提供する。請求項70の教示による電磁センサも提供する。
【0007】
本発明の教示のこれら及び他の特徴は、範囲を制限するものと決して解釈されるのではなく、むしろ教示を理解することを助けるものとして提供されている付属の図面を参照することによって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
ここで、本発明は、添付の図面に関連して説明されるであろう。
【図1】本発明を実施するためのセンサの例示的な実施形態の断面図である。
【図2】図1のセンサの上から見た斜視図である。
【図3】図1のセンサを形成するために用いることができる方法の例を示す図である。
【図4A】本発明の教示に従って光学素子を定めるために用いることができる第1のパターンの例を示す図である。
【図4B】本発明の教示に従って光学素子を定めるために用いることができる第2のパターンの例を示す図である。
【図4C】本発明の教示に従って光学素子を定めるために用いることができる第3のパターンの例を示す図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態に従って複数の感知素子を含むセンサの例を示す平面略図である。
【図6】本発明の教示に従って図5の複数の感知素子を用いることに適した光学素子を定めるために用いることができるパターンの例を示す図である。
【図7】本発明の教示に従った複合センサの断面図である。
【図8】センサが基準素子を含む更なる実施形態を示す図である。
【図9】図8の配列の変形を示す図である。
【図10】本発明の文脈の範囲内で用いることができるセンサ構成の例示的な実施形態を示す図である。
【図11】(A)および(B)はそれぞれ、更なる実施形態の文脈において、断熱されたテーブル上に感知素子を設けることを示す図である。
【図12】更なる実施形態の文脈において、基板上のセンサと周囲素子との間に断熱層の形成を示す、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図12c】図12A及び12Bの配列の変形を示す図である。
【図13】図12の配列の更なる修正形態を示す図である。
【図14】更なる実施形態の文脈において、ダイ温度センサを設けることを示す図である。
【図15】図14のダイ温度センサのアレイの例を示す図である。
【図16】ダイ温度センサのアレイの更なる実施例を示す図である。
【図17】ダイ温度センサのアレイの更なる実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本発明は、図1から17の例示的な実施形態に関連して説明されるであろう。本発明は、任意の電磁(EM)放射線感知環境に応用されるが、説明を簡単にするため、好ましい例示的な実施形態、すなわちシリコンウェハベースの熱放射線センサの実施形態に関連して説明することにする。以下で例示される実施形態の各々は、互いに組み合わせて使用することが可能であるが、一方の実施形態の特徴及びコンポーネントが他方の実施形態の特徴又はコンポーネントと併用される場合もされない場合もあるため、本発明はそのような限定される形で解釈されるべきでないことは理解されるであろう。そのような点において、本発明は、付属の請求項に照らして必要とみなされる場合に限り、限定されるものとする。
【0010】
電磁放射線センサは、多くの場合、デリケートな感知メンブレンを備える。メンブレンは壊れやすいため、メンブレンが製造された後、センサの取り扱いを慎重に行い、損傷及び歩留まり損失を防ぐ必要がある(その結果、コストに影響する)。加えて、メンブレンベースの熱放射線センサでは、ガス対流及び伝導を介した吸収メンブレンからの熱損失をなくすために、センサを真空又は他の低圧環境内でパッケージングすることが有利である。最後に、多くの単一点IRセンサが、集束レンズをまったく使用していないが、単一点熱センサでは入射放射線をメンブレン上の単一感知点上に集束して信号を効果的に増幅できることが有利である。単一点IRセンサがレンズを使用している場合、これらのセンサでは、一般に、適当な形状及び屈折率を有する材料、例えば、ゲルマニウム又は他の類似の材料の屈折レンズを使用する。
【0011】
熱的シーンをセンサアレイ上に結像して、そのシーンの赤外線画像を生成するために、ビームの集束(すなわち、レンズを使って)はセンサアレイの像面上にシーンの焦点像を形成するうえで非常に望ましいという、同様の要件が付加的な要件の場合でも適用される。
【0012】
本発明のセンサは、シリコンキャップを用いてウェハレベルで熱センサをキャッピングするためのデバイス及び方法を提供することにより上述のこれら及び他の問題点を解決するものである。本発明によれば、センサデバイス(又はセンサデバイスを繰り返したアレイ)は、1つのウェハ基板上に製造され、キャッピングウェハは、別の基板上に製造される。キャッピングウェハは、センサウェハに接合され、制御された周囲条件の下でセンサウェハに接着されるが、ただし、好ましい実施形態は真空状態下のものである。この接着されたウェハ配列を、個片切断(singulated)又はソーイングして、個別のキャップ付きセンサチップに仕立てることができ、最後にパッケージングして、販売する。そのようなキャッピング方法は、参照により本明細書に組み込まれる、本発明の譲受人に譲渡されたFeltonらの特許文献1に適切に説明されている。
【0013】
図1は、そのようなセンサデバイス100の断面を示している。そのデバイスは、第1のシリコンウェハ110内に形成された感知素子105又はセンサダイと呼ばれることもあるものを含む。また、パターン120をエッチングして個々の回折光学素子を形成するシリコンの蓋からなるキャップ115を備える。この回折光学素子(DOE)を実装する2つの可能な方式は、各々、振幅変調及び位相変調として周知である。振幅変調の場合、表面パターンは、放射線の透過を許容する領域と放射線をブロックする領域とからなる。位相変調の場合、パターンは、パターンの相対的な高さの差の関数として放射線の相対的位相を効果的に変更する表面上の高さの変化からなる。この例示されている実施形態では、パターンは、キャップの内面135上に形成されるが、外面140にも形成されうることが理解されるであろう。また、見やすくするために形状が誇張されているパターンは、隔たる距離及び深さが、光学素子が使用される際の光の波長に関係する、複数のリッジ部150を含むことも理解されるであろう。キャップは、典型的には、第2のシリコンウェハ又はキャッピングダイ内に形成される。回折光学素子キャップ115内で定められるこのパターン120は、所定の周波数の入射放射線125をセンサの特定の平面上に、又はセンサ上の特定の点に集束することができるか、あるいは異なる周波数を異なる点に集束することができる。キャップ115は、接着剤又は封止剤130を使用して第1のウェハに接着され、その接着により、周囲圧力と異なる圧力、典型的には低い圧力とすることができる、封止されたキャビティ145を定める。あるいは、このキャビティの封止されている性質、及びその製造プロセスは、キャビティ内の雰囲気ガスを空気と異なるものにすることを可能にし、例えば、空気又は他の何らかの気体に比べて熱伝導率が低いキセノンを使用することも可能であろう。シリコンキャップは、可視スペクトル内の入射光に対し実質的に不透明であり、したがって、光が中の感知素子に作用することを阻害すると考えることができるが、シリコンは、EMスペクトルの赤外振動数の光の透過を可能にすると理解され、したがって、IRセンサを実現するこのアプリケーションに関して、適当な材料である。図2は、感知素子がその上に備えられているキャップによりカバーされることがわかる、組み立てられたセンサデバイスの例を示す。
【0014】
センサを製造するための典型的なプロセスの流れを図3に示す。最初に、当業者に周知となる技術を使用してセンサウェハ110が製造される(工程300)。また、キャッピングウェハも、別に製造される(工程310)。このキャッピングウェハの製造は、キャップの外面140又は内面135のいずれか又は両方への所望のパターンのエッチングを含む。さらに、内側又は外側のいずれかのキャップ表面に反射防止コーティングを加えることができる。2つのウェハ基板のそれぞれの所望のコンポーネントを備えると、そのウェハを接着するために接合することができる(工程320)。理想的には、この接着は、真空条件の下で達成される。2つのウェハが接合された後、個々のチップを、キャップを定めない第2のウェハの領域を取り除くことによりウェハの全領域内で個片切断するか、又は定めることができる(工程330)。このようにして、1つのプロセスの流れで複数の個々のチップ又はセンサを提供することができる。
【0015】
光学素子を定めるパターンの性質がセンサの動作の仕方を決めることは理解されるであろう。図4は、センサキャップ内の回折光学系を定めるために使用することができる、振幅変調又は位相変調のいずれかの方式を使用して実装することができる、パターンタイプの例を示す。図4Aの例は、位相変調方式に関する回折光学素子の高さ方向の正弦的変化を使用して10μmの波長の平行入射光を300μm離れている焦点面に集束するように最適化されている。正弦曲線の相対的高さは、パターン内のグレースケールの変化により表され、振幅変調方式では、グレースケールは、パターンの透過効率を表す。図4Bの例は、10μmの波長の平行入射光を370μm離れている焦点面に集束するように設計されているが、この場合、白黒パターンは、正弦的変化ではなくむしろ位相変調型回折光学素子の格子を実装するための単一の段の高さの変化を表す。図4Cの例もまた、回折光学素子を実装するために単一の段の高さの変化を使用するが、この場合、10μmの波長の平行入射光を10μm離れている焦点面に集束するように設計されている。これらの3つの例は、使用することができるパターンのタイプの例示であり、及び焦点面の制御又は入射放射線内の異なる波長成分に対する独立の制御に関する異なる設計要件も、この方式では可能であり、本発明の対象となることは理解されるであろう。図4B及び4Cの白黒円からなるこれらの例は、透過パターン又は光を集束する位相変調パターンのいずれかを表すことができるが、透過する際に損失も生じるという欠点がある。しかしながら、パターンの設計は、例えば、図4Aのグレースケール図で表されているように、格子を定めるリッジ部機構において湾曲した側壁を導入するなど、損失基準が低くなるように最適化することができることが理解されるであろう。
【0016】
本発明により提供されるキャップは、多くの態様で有利である。これは、1)その後の取り扱い中にメンブレンを保護する役割をし、2)製造中に真空排気することができる感知メンブレン用のハウジングも提供し、3)入射赤外線を単一点に集束して信号を増幅するか、又はアレイ上に集束してシーンの画像を形成するような方法でパターン形成及びエッチングすることができる。特に、そのパターンは、光学素子(すなわち、従来の屈折又はフレネルレンズ)又は好ましい実施形態の回折光学素子を実装するようなものとすることができる。このアプリケーションに関する光学素子の形成は、以前には赤外線屈折レンズに必要であった非標準の(したがって高価な)材料ではなく、レンズをシリコンで実装することができるという点で有利である。シリコンキャップ内に回折光学系を使用する結果として得られる利点は、定着しているプロセスを使用してウェハバッチレベルでレンズのパターン形成及びエッチングを行い、それをセンサウェハに接着することができるという点にあり、そのため、以前に使用されていた屈折レンズ技術に比べて費用効果の高いレンズが得られる。この方式は、ここで説明されている赤外線アプリケーションに加えて、他の電磁放射線センサにも応用することができる。例えば、キャップは、石英で作ることができ、又はいくつかの場合において、センサがIRセンサ以外のアプリケーションに使用されるのであれば、パイレックス(登録商標)などの標準ガラスもしくは場合によってはサファイアで形成することができる。
【0017】
あるアプリケーションでは、レンズ/キャップ構成を使用して、キャップにより封じ込められた異なるセンサ上に入射放射線内の異なる波長を集束することができると都合がよい場合がある。図5は、4つの感知素子501、502、503、504が同じキャップ配列内に設けられるそのような一例の概略図である。レンズ配列の適当な設計により、他の波長の焦点をぼかす(集束を外す)一方で、特定の1つの波長を集束するように最適化することが可能であることは理解されるであろう。これにより、赤外線内の異なる波長成分の個々の強度測定を行うことができ、これは、例えばヒトの呼気中のエチルアルコールのレベルを監視することが要求されている場合に、呼気中アルコール採取装置などのガス分析において非常に役立つ可能性のある機能である。アルコールはIRスペクトル中に特定の吸光度ピークを有するので、これらのピークと一致する放射線をキャップの下のアレイ内に備えられている感知素子501、502、503、504のうちの特定の素子上に集束することで、特定の周波数で放射線の強度の変化を弁別することが可能であり、したがって、これは、試料中に存在するアルコールの指標として機能する。各々の感知素子は、適当な周波数の入射放射線に反応するように構成されているので、その放射線が個々のセンサ上に入射すると、各々の感知素子の性能の分析結果は、分析されているガスのガス波長シグネチャーを与えることに反応するように設計されている物質の有無を示す。
【0018】
図6は、入射放射線内の4つの異なる波長のうちのそれぞれの波長を図5に示されている4つの感知素子501、502、503、504のうちの1つに集束するために図5のセンサ配列と組み合わせて使用することができる振幅変調方式を使用する回折光学素子(DOE)設計の例である。そのような設計又はパターンは、レンズ内に単一の段を形成するか、又は異なる高さの複数の段を設けることにより加工することができる。本発明は、単一の段、複数段、又は他の変形であるすべての製造方法を包含することを意図されているという点で、DOEの加工に関していかなる形でも制限されることを意図されていないことは理解されるであろう。
【0019】
図示されていないが、本発明の構造は、さらに、複合レンズ効果をもたらすために光学素子上に形成された第2のレンズ配列を備えるように変更することができることは理解されるであろう。そのような配列は、倍率の増大、視野の拡大、分解能の向上、光学的フィルタリングの改善などのアプリケーションに適していると場合がある。そのような配列は、チップに結合された第2のレンズを備えることにより提供することができる。あるいは、図7に示されているように、第2のレンズ701を加工し、その第2のレンズを完成パッケージ700に結合することが可能である。このようにして、DOE115と第2のレンズ701の内部との間に、定められた体積703が形成される。定められた体積内の雰囲気は、圧力又は内容物に関して望み通りに制御することができる。複合レンズ効果を生み出す他の方法は、本発明の範囲内に包含されることを意図されていることは理解されるであろう。
【0020】
本発明の技術は、例えば60×60アレイなどのIRセンサアレイを備える効率的方法を提供することは理解されるであろう。そのような構成は、本発明のセンサアレイを使用して、従来のIRアレイに取って代わるIR撮像などのアプリケーションに望ましいものである。現在のIRアレイは、本発明に関して提供されるような低コストのユニット内に一体化されたレンズ及びセンサアレイを有していない。現在の従来のIRアレイは、本発明によって説明されたウェハレベルの解決策ではなく、真空パッケージにそのパッケージ内のIR透過窓又はレンズを設ける。
【0021】
本発明の集積感知素子/レンズキャップ構成に関する他のアプリケーションは、被写界深度分析(depth of field analysis)が必要な場合である。レンズを適宜構成することにより、2つの異なる距離から出る光をキャップ内の別々の感知素子上に集束することが可能である。これにより、熱の発生源に関して弁別する、例えば金属平板であるのかそれとも三次元の人間の胴体であるのかを弁別することが可能である。そのようなアプリケーションとしては、例えばエアバッグ展開装置(air bag deployment arrangements)で使用するための弁別展開センサ(discriminatory deployment sensors)がある。
【0022】
本発明にかかるセンサの寸法は、典型的には、ミクロンからミリメートルのオーダーである。例えば、10μmの波長の放射線を対象とするとき、キャップの寸法は、約1mm2の集光面積を有し、感知素子から約160μmの高さとなるように設定することができる。しかしながら、これらの寸法は、純粋に例示することのみを目的としており、本発明をどれかの寸法基準に制限することを意図されていない。
【0023】
本発明のセンサの加工は、エッチングプロセスに関連して説明されている。典型的には、このエッチングは、強度の反応性イオンエッチング(RIE)として周知のタイプのプロセスであり、実質的に垂直な側壁(約90度)を本質的に形成する。そのようなプロセスの利点の1つは、そのような垂直性を有する場合、キャビティの側壁に対する空間が少なくて済むことである。このことは、「窓」のサイズ、したがって、作製することができるキャップの全体的サイズに直接影響する。キャップのサイズを縮小することにより、チップ上の必要な面積が小さくなり、それに対応して、キャップエッジの下、及びその周りの「無駄」な空間が減る。
【0024】
放射線障壁を組み込んだキャップ配列
これまで、本発明の教示にかかるセンサは、透明窓を備える感知デバイスに関連して説明されてきた。本発明は、さらに、第1のセルとは異なる応答をもたらす、感知デバイスも組み込んだ第2のセルの加工に関する、ある実施形態で提供する。次に、この第2のセルは基準セルとみなすことができ、これは、その応答を感知セルと組み合わせて使用することができ、感知セルの応答の弁別を可能にするという点で第1の感知セルと異なる。これの一例では、IRセンサの場合にそのセンサからはキャップ(すなわち、300K)しか見えないように基準セルを全体的に不透明なものにするが、既知のわずかな周囲放射線が常に中を通過するように基準セルを部分的に不透明にすることも可能である。感知すべきガスを除いて感知側と同じ光路を通ってやってくる放射線を基準セルに照射することができるガスセンサのアプリケーションでは、これは利点となる。これにより、例えば水蒸気に対する信号のスプリアス依存(spurious dependencies)が取り除かれる。更なる例は、第1のセルの出力と異なるが、第1のセルの出力と比較できる出力を提供するために、第2のセルの光学特性が第1のセルの光学特性と同じであるが、異なる周波数の放射線、すなわち、異なる放射線源の放射線を選択的に照射される場合である。しかしながら、すべての場合において、第2のセルは、第1のセルの応答出力と異なる応答出力を提供するように構成され、この第2の基準セルの応答の変化は、第1のセルの出力を基準とするか、又はキャリブレーションするために使用される第2のセルに使用されるキャップの特性を変えることにより提供することができることは理解されるであろう。
【0025】
典型的な実施形態は、光学的に不透明な窓を備える基準セルを使用することになる。そのような不透明性を用いて、「暗い」セルを提供することができ、それは、第1のセルにより感知される放射線のレベルと無関係の信号出力を提供するものである。図8は、そのような配列の例を示している。前の図に関連してすでに説明されている要素については同じ参照番号が使用される。
【0026】
この配列において、センサデバイス800は、センサデバイス上に入射する放射線のレベルを示す出力を提供する第1のセル810及びセンサデバイス上に入射する放射線のレベルと無関係の出力を提供する第2のセル820を含む。第1及び第2のセルの各々は、第1の基板110上に形成されたIRセンサ105を含み、その各々は、各々の上に備えられたキャップ816、826を有する。各々のセルのキャッピングは、各々のセンサの上に制御された体積を定める役割をし、上述のように、これは適宜、そのアプリケーションに応じて真空排気するか、又は特定のガスで充填することができる。第2のセル820は、キャップを介したセンサ105上への放射線の透過を妨げるように構成されているという点で第1のセルと異なる。これは、セル上に光学的に不透明な層830を備えることにより達成することができる。したがって、第2のセルは、基準セルとみなすことができ、その出力は入射放射線と無関係である。次いで、この第2のセルの出力は、第1のセルの出力をキャリブレーションするために使用することができ、その信号出力は入射放射線の強度により決定される。
【0027】
そのような基準セルを備えることにより、本発明の教示にかかるセンサデバイスが、暴露センサ(exposed sensor)の出力と基準暗センサの出力との比較を行うことにより放射線の検出を可能にすることは理解されるであろう。このデバイスでは、暗センサの光学的特性のみが変更され、熱的及び電気的特性はその照射センサの特性と同じである。このようにして、可視スペクトル中の放射線などのIR放射線又はあらゆるタイプの電磁放射線において、入射放射線の正確で精度の高い感知が可能になる。
【0028】
図8に示されている2つのセルの配列は、それぞれ別々に形成される2つの異なるセルの配列である。図9に示されているような代替配列は、2つのキャビティ又はチャンバ905、910を定めるようにマイクロマシニングされた単一キャップ900を備えることができ、その一方905は、照射素子の上に配置可能であり、第2のキャビティ又はチャンバ910は、不照射素子の上に配置可能である。2つの定められた領域の各々は、IR感知素子105を有し、任意の都合のよいプロセスを使用して形成することができる。キャップキャビティの内側は、任意の望ましいガス環境(例えば、空気、窒素、アルゴン、キセノン)で充填するか、又は実際には単に真空にすることができる。キャップは、必要なレベルの気密封止をもたらすことができる封止プロセスを使用して基板に封止される。そのような技術は、当業者には明らかであろう。IR放射線をブロックするシールド830は、入射放射線を反射する金属薄層を(都合よく)使用して加工される。キャップの不均一な加熱を避けるために、望ましくは、IRブロッキング層は、吸収体ではなく反射体であるべきである。図9に示されているように、封止部分の間隙920を個々の蓋チャンバの間に残すことができ、各々のチャンバ内の圧力をキャップ全体の漏出速度と無関係に均一にすることが可能である。そのような配列では、周囲圧力に非常に敏感な多くのMEMSベースのIRセンサデバイスの問題を解決する。
【0029】
2つのチャンバを定めるために、カラム925が備えられる。カラムは、キャップ900の上部930から下方に延び、2つのチャンバの間の間隙920で終端する。カラムは、2つのカラムの間の放射線の漏れを最小限に抑えるようにコーティング又はドーピングすることができる。カラムの典型的な寸法は、幅50〜100ミクロン、高さ170ミクロンである。間隙は、典型的には、監視されているIR放射線の波長のオーダーである6ミクロンのオーダーの高さを有し、そのため、放射線がこの間隙を通して照射キャビティから不照射キャビティに伝わる可能性は低い。しかしながら、必要であれば暗キャビティの完全性のさらなる保証を、均圧化する一方で放射線の伝達を妨げることを可能にするために、鋸歯配列に類似する階段状パターンを備えることにより達成することができる。
【0030】
不照射キャビティ側内のIR汚染レベルをさらに低減するために、分離領域の壁も反射性の金属(又はIRタイプの障壁)でコーティングして、照射面から反射されたIRをブロックすることができる。あるいは、この領域は、反射IRを吸収するように処理する(例えば、ポリシリコン材料を使用して十分な密度となるように高濃度ドーピングするか、又は十分な厚さになるまで酸化する)ことができる。放射線の吸収は、キャビティの内部を通過するIRのブロッキングを達成する好ましい方法であるが、なぜならば、反射による解決手段の場合である他の領域にただ跳ね返るではなく、キャビティから取り出されることを確実にするからである。側壁により行われる吸収は、反射を減衰させるのに役立ち、各々のセル内のスプリアス信号の発生を防止する。更なる適当な技術は、単に照射センサから不照射センサまでの間隔を十分にあけて、放射線がシリコン中に自然に吸収されるものとすることができる。
【0031】
本発明の教示にかかるセンサ配列では、2つの感知デバイスが同じ温度表面に対して露出することを確実にするためにキャップに高熱伝導性材料を使用しており、したがってここでもまた、熱的汚染問題が最小限に抑えられることは理解されるであろう。シリコンに関連して説明されているが、ゲルマニウムなどの他の材料も使用することができることは理解されるであろう。
【0032】
本明細書で説明されているようなキャッピング配列を使用することにより、照射センサ及び不照射センサを隣り合うように配置することが可能である。その結果、同じ加工効率で加工することができ、この2つの唯一の違いは、それらが動作する光学的環境である。これは、2つのセンサ(基準及び能動的)の間の出力の差が小さいことを実際の測定で示す高感度のアプリケーションにおいて使用されるセンサに特に有益である。
【0033】
応答特性が異なる少なくとも2つのセルを備えることにより、説明したばかりのような能動的セル及び基準セルを定めることが可能である。異なる応答特性の実現は、例えば、光学的応答特性、電気的特性、熱的応答特性を変更するか、又はさらにはこれらの3つの特性のすべてを同じに保ち、各々のセルに異なる照射源から照射することにより多数の異なる方法で実装することができる。
【0034】
ホイートストンブリッジ配列の使用
IRセンサ(例えば、ボロメータ、熱電対列など)の詳細は遮蔽に関しては比較的重要性が低いが、図9は、ホイートストンブリッジ構成のIRセンサの配列を示している。機能に関して、ホイートストンブリッジの片側を照射する必要がある一方で、反対側は暗いままにする。前述のキャップ配列の構造を使用することで、ブリッジの暗側を遮蔽しながら、その一方で感知素子の同じ熱的及び電気的性能を他の何らかの形で保つことが可能である。そのような集積IRセンサ構造は、効果の高い温度管理スキーム、真空又は周囲制御キャップ、及びブリッジの暗側に遮蔽を設ける方法を組み合わせたものである。キャップ構造は、遮蔽及び照射ブリッジ素子の熱的特性及び電気的特性が等しくなることを確実にする。図9において単一デバイスとして説明されているが、そのような配列は、単一のセンサ又はアレイに適用することができるということが理解されるであろう。
【0035】
図10に示されているようなホイートストンブリッジ構成では、ブリッジの片側の熱感抵抗器(サーミスター又はボロメータなど)(Rbol’)は、入射放射線によって照射され、ブリッジのこの側の出力は、不照射対(Rbol)と効果的に比較され、照射抵抗器と不照射抵抗器との間の抵抗変化の差に比例する出力電圧を生成する。
【0036】
Vo=VDD[(Rbol−Rbol’)/(Rbol+Rbol’)]
ここで、Rbol’=Rbol+dRに対し、
dVo〜−2dR/4Rbol
感熱抵抗器は、既知の抵抗温度係数(TCR)を有することにより特徴付けられ、照射された場合に入射放射線からの熱を吸収することになる。したがって、抵抗器(Rbol)は暗い場所に保持される必要があるだけでなく、Rbol’と同じ熱的環境に置かれる必要もあり、他の温度効果が観測信号を汚染することが不可能であることは明らかである。ブリッジの他の構成も可能であり、ときには望ましいが、照射抵抗器の各々に対して同一の熱的環境を他の何らかの形で維持しながら、その4つの抵抗器のうち2つは入射放射線から遮蔽されるブリッジを4つの同一の抵抗器(同じTCR、同じ熱伝導率及び容量)から作ることで、最適な性能が得られる。同一の抵抗器を使用することは、入射放射線がない場合に、出力電圧が抵抗器の背景温度の変化に対してゼロのままとなるという効果をもたらす。入射放射線に応答しない抵抗器は、「基準」ボロメータと呼ばれることが多い。
【0037】
4つの物理的に分離されている抵抗器を使用するホイートストンブリッジ構成を使用する放射線センサは、あるアプリケーションに関して適当な信号応答を提供することができる一方で、古典的なブリッジ構成の性能を改善することが可能である。本発明の実施形態は、印加された信号に対するセンサの応答性を改善するそのような配列を提供する。この配列では、ホイートストンブリッジの対向するレッグ部(leg)を形成する2つの抵抗器の各々の対は、各々が同じ熱環境に曝されるように熱的に隔離されたテーブル上の同じ場所に配置されている。
【0038】
図11(2つの抵抗器を備える単一のテーブルの構造を示している)の平面図(図11A)及び断面図(図11B)に示されているように、そのような配列は、シリコン基板110においてキャビティ1105をエッチングすることにより形成される熱的に隔離されたテーブル1100を提供する。キャビティの範囲は、エッチングプロセスの範囲を制御することができる溝1110の使用により定めることができる。キャビティは、下にある基板からテーブル1100を断熱する役割をする。スロット1115は、テーブルの隣のチップの一部分における熱勾配からテーブルを断熱するために備えることができる。蛇状(S)構成の、この例示的な実施形態では、第1の抵抗器1120及び第2の抵抗器1125がテーブルに備えられている。抵抗器の実際の構成は重要ではなく、重要なのは、加工された抵抗器の主要部が、熱的に隔離されたテーブル上に備えられるということであることは理解されるであろう。2つの抵抗器の各々は、接点1130を備え、ブリッジの残り部分に対する抵抗器の接続を容易にする。
【0039】
この実施形態では、図11は2つのブリッジ抵抗器、すなわち、ホイートストンブリッジの1つのペアリングを有するテーブルの形成を示しているが、ブリッジ抵抗器のペアリングの各々がそれ自体のテーブル上に配置されることが望ましいことは理解されるであろう。したがって、ブリッジ構成の形成は、2つの熱的に隔離されたテーブルが必要となり、各々が微小電気機械構造(MEMS)加工技術を使用して形成されることが望ましい。ホイートストンブリッジの対向するレッグ部上の2つの抵抗器は、両方とも同じ温度変化が現れることを確実にし、適切に接続された場合に、所定の入力放射流束密度に対し出力信号の2倍の出力を提供するように同じテーブル上の同じ場所に配置される。
【0040】
感熱抵抗器は、既知の抵抗温度係数(TCR)を有することにより特徴付けられ、照射された場合に入射放射線からの熱を吸収する(適当な吸収層が、抵抗器及びテーブルの構造内に含まれている)。この分野で周知のような窒化ケイ素、二酸化ケイ素、銀化合物、及び窒化チタンなどの抵抗性化合物の層を含む様々な吸収層を使用することができる。問題は、吸収されたエネルギーが十分に大きな温度上昇をもたらすように抵抗器を構築し、次いで所定の温度上昇に対し利用可能な出力信号を最大化することである。
【0041】
ホイートストンブリッジ構成には多数の周知の利点がある。主な利点は、適切に整合している一組の抵抗器(例えば、すべての抵抗器が同じTCR及び値を有する)について、出力電圧が周囲温度に無関係であり、ブリッジ間の全電圧(VDD)及び各々の照射抵抗器Rbol’の局所的加熱にのみ依存することである。この実施形態では、可能な最大の信号は、2つのRbol’ユニットを一方のテーブル上に配置し、2つのRbolユニットを類似のテーブル上に配置することにより得られる。これらの構成により、2つのテーブルの熱的な結合は悪くなるが、放射線感知抵抗器対が等温であることを確実にする。テーブルの断熱性は高性能デバイスに関してはわずかに低下するが、テーブルの熱伝導性は、テーブルのレッグ部のアスペクト比によって主に決まる。したがって、2つの抵抗器が収まるようにレッグ部の幅を広げると、テーブルから基板(そのようなシステムにおける主要なヒートシンク)への達成可能な熱抵抗が減少することになる。したがって、レッグ部が全DC応答及びセンサの応答の時定数に影響を及ぼすので、システムの設計者がシステムに必要な応答速度対精度の比に応じてレッグ部の異なる寸法を選択することができるある種のトレードオフの可能性があることは理解されるであろう。
【0042】
上ではホイートストンブリッジに関して説明しているが、そのような構成が使用されることは本質的ではない。例えば、感知抵抗器が、電流源の対向する対によりバイアスされる場合、同じ構造を使用することも可能であり、同じ利点を生み出すことになる。同じ熱的に隔離されたテーブル上に2つの抵抗素子を配置することによって生成される熱的に等価な環境を設けることで恩恵を受けることになる他のアプリケーションは、抵抗器をフィードバック構成において使用して感知素子を備える第2の抵抗器を有するシナリオを含むことになるが、ただし、両方の抵抗器を組み合わせて回路の応答をもたらし、2つの抵抗素子の間の温度変動がスプリアスな結果をもたらさないことが重要である。
【0043】
図11では、2つのレッグ部を有するテーブルが示されているが、一般にテーブルの機械的安定性と熱的な隔離の程度との間にトレードオフがあるが、任意の数のレッグ部を使用することができる。レッグ部の対称的配列は、機械的安定性には望ましいことであるが、不可欠というわけではない。
【0044】
ブリッジの片側は入射放射線により照射される必要があり、他方の側は放射線から遮蔽される必要があるので、それらの間に、適当な遮蔽構造を構成することを可能にするのに十分な分離距離がある。そのような構造を、ペアリングの各々が特定のキャビティ内の熱的に隔離されたテーブル上に備えられる図9のセンサ配列により提供することができる。IRセンサ105は、赤外線に感受性を示すシリコンマイクロマシニング技術を使用してブリッジを加工することにより抵抗器ブリッジ配列として提供することができる。2つのキャビティ905、910のマイクロマシニングは、キャビティの1つを照射素子(Rbol’)上に配置し、キャビティの他方を不照射素子(Rbol)上に配置することで行うことができる。図9に示されているように、不照射テーブルは、到達するRbolから入射放射線を「十分に」ブロックする場合、その下にキャビティ1105を有し、最良の抵抗器の電気的及び熱的整合を照射側にもたらすか、又は入射放射線を部分的にしかブロックしない場合、その下にキャビティを有しておらず、より良好な熱的短絡(したがってIR応答を最小にする)を基板にもたらすことができる。
【0045】
この実施形態は、2つの抵抗素子が熱的に隔離されたテーブル上に設けられている好ましい実装に関連して説明されているが、この説明は、本発明の教示を使用して得られるタイプの利点の例であることは理解されるであろう。そのような教示は、基板の残り部分から断熱されている第1の領域上に少なくとも2つの熱感知電気素子を達成することとして考えることができる。そのような熱的な隔離は、テーブルが基板内に加工される実施形態に関連して説明されているが、それと同等のものとして、テーブルを基板上に加工することが可能であることも理解されるであろう。そのような構造は、例えば、基板の上側表面に犠牲層を、次いで支持層を含む、感知素子層を堆積し、そして犠牲層を除去して、自立したテーブルを残すことにより提供することができる。代替の実装では、犠牲層の代わりに、基板内に存在する熱的効果から上に配置されている、形成された感知素子を断熱するのに役立つような高い熱係数を有する蒸着層が形成される。これら及び他の変更は、高い断熱度が要求される電気素子の下に断熱層を提供する手段として当業者には明らかである。
【0046】
ダイの一部を断熱するための断熱層
上記の内容から理解されるように、熱センサ及び他の電気素子は、支持基板の温度の影響を被る可能性がある。熱センサは特に、設計上、温度の変化に敏感であり、支持基板の温度を基準又はベースライン温度として使用することが多いことは理解されるであろう。しかしながら、センサが、隣接する熱発生手段(例えば、回路)を組み込んでいる場合、この基準又はベースライン温度が分布し、センサによって測定される計算温度に誤差を生じることになる。
【0047】
図12は任意の熱発生領域と熱センサとの間に断熱層を形成し、任意のスプリアスな熱源からセンサを断熱する手段を例示する他の実施形態を示している。必要な断熱度は、必要に応じて設計することができる。この実施形態では、場合によってはシリコンオンインシュレータウェハと結合されるガス又は真空を含む領域により間を空けた溝の対(又は複数、例えば三つ組みなど)を使用して、高い断熱度をもたらす。
【0048】
すべてのそのようなセンサ及び回路にとって重要であるが、センサが温度信号それ自体を測定しようとしている場合、例えば、赤外線センサ又は微小熱量測定センサである場合、それ故に、図1から11に関連して説明されているセンサ配列に組み込むために特に適している場合に、問題は深刻なものとなる。そのようなセンサは、一般に、基板温度を基準又はベースライン温度とみなし、その内部温度と基板基準又はベースライン温度との比較を実行する。定常状態であろうと時間的に変化しようと、ベースライン温度における任意のオフセット又は不均一分布は、発生したオフセットに本質的に正比例してセンサの応答に不正確性を引き起こすことがある。
【0049】
付近に熱を放散する回路があると、電力消費素子の周辺に局所的な温度上昇が生じることになる。この熱は、使用される材料の熱伝導性に応じてよく制御され理解されている形で素子から遠ざかる方向に伝導される。断熱層は、これまでに説明したキャップ付きセンサを使用するアプリケーションに適していると思われるが、ここで、そのようなキャッピングと無関係に説明する。
【0050】
本発明のこの実施形態は、熱源とセンサ又は感知回路との間の熱抵抗を高めて、この外部熱源の影響を低減するための手段を提供する。図12に関連して、その構造の主要な特徴及びそれを製造する方法を説明する。図1から11のうちの1つに関連して、すでに説明されている部分については同じ参照番号が使用される。シリコン又は他の適当なウェハは、基板110として使用される。センサを任意の適当な方法により形成し(加工順序は重要でない)、次いで、センサ105又は熱放散源1215の周りにリングを形成するために、基板内に2つの隣接する深い溝1205、1210をエッチングして、適切な充填材料1205a、1205b(例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ポリシリコン、又はこれらの組合せ)を充填する。2つの溝の各々は、これにより、第1の熱係数を有する第1及び第2の領域を形成し、第2の熱係数を有する中間領域1220により互いに隔てられる。この中間領域は、2つの溝の間にある領域をエッチングして、真空排気された空気充填領域を形成するために断熱キャップ1225を使ってキャッピングすることができる空気充填領域を形成することにより都合よく設けることができる。当然ことながら、この領域1220内の利用可能な体積は、代替的に、必要に応じて、他の気体組成物で充填することができる。回路素子の残り部分は、断熱キャップ1225を溝及びそれらの間の領域の上に残す任意の通常の集積回路法により形成される。エッチャントを入れるための臨時の孔1230をこの断熱層内に形成して、隣接する溝の間にシリコンを露出させる。次いで、ウェハ全体を、シリコンのみをエッチングするように選択されたエッチング媒体(例えば、ガスの場合はXeF2、又は液体のエッチャントの場合はKOH)に曝して、溝の間のシリコンを除去する。このガス充填空間の熱伝導率が低いことは、熱源から感知素子へ、溝及び除去されるゾーンの深さに至るまで、伝わる熱を少なくすることを確実にする。熱は、溝を彫られエッチングされた領域の下で強制的に流され、したがって熱源と感知素子との間の実効熱抵抗は高くなる。
【0051】
断熱レベルの増加は、(1)複数のそのような断熱層を使用すること、(2)シリコン基板の全深さに関して溝及び除去ゾーンの深さを増大すること、(3)図12cに示されているように、感知素子の下の下側切り取り部1240を定めるために十分にエッチングを延ばし、範囲の差はあるとしても封じ込められ隔離された「島」1250を形成すること、又は(4)シリコンオンインシュレータ材料1301の基板を使用し、図13に示されているように埋め込まれた断熱層の深さまで溝がエッチングされることを確実にすることなどの多数の異なる方法により得ることができる。当業者であれば、そのような埋め込まれた酸化物層を組み込んだ構造を加工することを熟知しているであろう。酸化物又は他の誘電体層では、その熱伝導率が半導体又は金属層に比べてかなり低いので、そのような材料を使用は、達成される断熱効果をさらに改善することができる。図12cに示されているエッチングの範囲は、他より、典型的には外側の溝に比べて深く形成された溝の1つを有することにより制御することができ、したがって、エッチングは、センサの下の一定方向に優先的に行われる。センサの下にこの真空排気された領域を設けることは、周囲のシリコン基板と異なる熱的特性を有する領域を形成し、これにより、上に配置されているセンサに対する断熱効果の増加をもたらす。
【0052】
有利には、これらの溝は、周知の方法を使用して提供される二酸化ケイ素などの誘電体で充填することができる。しかしながら、二酸化ケイ素とシリコンとでは熱膨張率に差があるため、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素又はその両方の薄い層(例えば、100〜200nm)を使用して、エッチングされた溝の内側を覆い、次いで、溝のバルクにポリシリコンを充填するのが一般的であった。これが、多結晶シリコンの高い熱伝導率のため、断熱層としての溝の有効性を著しく減少させる。原理上、溝は、二酸化ケイ素層が蒸着された後も未充填のままにすることができるが、これは、溝が断熱以外の任意の機能を有している場合に一般的には望ましくない溝/シリコン基板界面での表面電位制御の問題を生む。また、コストを最低限に保つことを確実にすることが望ましいので、我々の方式では、センサ自体の加工に多くの状況において使用される工程を使用し、加工プロセスの更なるコストを加えない。上述の表面電位制御問題があるため、このことは、未充填溝の場合に、おそらく、受け入れがたいものとなるであろう(すなわち、電気的絶縁のプロセスにおいて使用される溝は、そのような表面電位制御問題を許容することができない)。また、プロセス全体に対する加工手順の始めに溝処理を実行することが望ましいことが多く、未充填の溝は、この場合、上部開口による管理できない欠陥レベルを引き起こすプロセス残留物で満たされるので、許容することができない。プロセスの任意の時点において加工された溝を使用し、我々が提案する方法をプロセス手順の終わりにおいて実行して、任意のそのような問題を回避することが意図されている。
【0053】
異なる熱係数の領域を定めることにより、温度感知素子の周りの断熱層を形成は、隣接するコンポーネントから出る任意の熱の効果から素子を断熱する役割をする。それでもまだ、断熱層領域内のコンポーネントをこの領域の外部の領域に電気的に結合することが必要になる場合があることは理解されるであろう。そのような結合は、結合される必要のあるコンポーネント同士の間に配線トラック1235などの多数の異なるタイプの電気的接続のうちの1つを形成することにより達成することができる。そのようなセンサのアプリケーションの環境に従って、選ばれた最終的な断熱層構成に影響を及ぼす異なる度合いの断熱効果が要求されうる。
【0054】
分布型ダイ温度センサ
これまでに説明したセンサは、スタンドアロンのセンサ又はそのようなセンサのアレイに関連して説明されているが、本発明の他の実施形態では、ダイ温度感知を行う配列も提供される。そのような配列は、図14から17に示されている。
【0055】
そのようなダイ感知機能を備えることは、ダイの周囲の多数の位置でダイ温度を測定する手段を提供し、次いで、これらの温度測定を使用して、見かけの観測温度を再補正することができる。これは、ダイの周囲の戦略上の地点に感知ダイオード及び/又はトランジスタなどの小型の温度測定手段を配置し、温度センサ回路を使用してこれらのスポット温度を測定し、データをユーザに提供することによりなされることができる。図12及び13に関連して上で示された断熱層と併用した場合、この断熱層の効果は、さらに、既知の熱源を施し、断熱層のいずれかの側に配置されているセンサを使用して、断熱層間の温度変化dTを測定することにより製造時にチェックすることができる。
【0056】
熱を消費する任意の回路は、電力消費素子の周辺で局所的な温度上昇を生じることになることが知られている。この熱は、使用される材料の熱伝導性に応じて、よく制御され理解されている形で素子から遠ざかる方向に伝導される。加えて、局所的レベル又はより広いレベルでの他のダイ温度変化は、外部放射線源又は周囲温度変化により引き起こすことができる。例えば、IR熱センサが、移動する高温−低温エッジ(例えば、コンベアに載っている高温の物体)を含むシーンを測定している場合、ダイ温度変化は、物体が視野内を通過するとともに一方のエッジから他方のエッジへと移動するセンサダイ上で発生する。同様に、同じ熱センサが低温環境から高温環境に運ばれた場合に、ベースのダイ温度は、ある程度の感知できるタイムラグとともに変化し、読み取りを不正確にする。したがって、大域的なダイ温度変化及び固定された、又は時間とともに変化する温度勾配は、重大な測定誤差を生じる場合がある。
【0057】
断熱層がシリコン基板内にエッチングされている熱センサのMEMSによる実装において生じる他の問題は、断熱層が、シリコン処理段階で、又は前の図に関連して説明されたキャッピングプロセスにおいて、欠損するか、又は形成が不完全である場合があるということである。プローブ及び最終試験でこの断熱層をチェックするある種の手段は、パフォーマンスの悪いダイを排除するのに役立つ。
【0058】
この問題は、多数の温度センサがダイ領域の周囲に配置され、次いで、局部的な温度読み取り値を使用してIR熱センサ測定を補正する場合に非常にうまく対処することができる。このアプリケーションは、ダイ温度勾配が重大な温度測定誤差を引き起こす可能性がある、放射量測定アプリケーション(すなわち、赤外線画像処理ではなく実際の温度測定が必要な場合)に使用される熱センサアレイにとって特に重要である。
【0059】
本発明のこの実施形態では、熱赤外線又は微小熱量計測センサ又はイメージングシステムなどのシステムにおいて、もし存在すれば、断熱層内に、また断熱層なしで(すなわち、断熱層のいずれかの側に)配置されている温度感知点の分布された一組を開示する。これらの温度感知点は、多くの方法で作ることができるが、有利には、その後当業者に周知の回路により駆動されるPN接合を使用して作られる。図14は、そのような配列がどのように見えるかを示している。前の図面に関連して説明されているコンポーネントについては同じ参照番号が使用される。
【0060】
図14に示されているように、複数の個々のダイ温度センサ1400を備え、そのダイの周りに配列される。図14の図において、複数の個々のIRセンサ105は、前述と同様に、溝1205、1210により定められた断熱層領域1410内に設けられる。ダイ温度センサ1400は、断熱層領域内に備えられ、領域内のダイ温度を監視する。追加のダイ温度センサが、断熱層領域1410の外側に備えられる。溝配列により形成された断熱層の完全性をチェックするために、これらの温度感知デバイス1400が、抵抗器1215などの周知の熱負荷源と組み合わされる。ある実施形態では、熱負荷機能は、単一ユニット内の周知のTCR抵抗器と組み合わされ、これにより、加熱機能と温度感知機能を組み合わせることで空間の使用を最小限に抑えることができる。あるいは、加熱器は、単に、ダイ上の周知の熱源、例えば、増幅器の入力段などの付近の大電流領域としてもよい。さらに、アレイ温度センサを使用して、同じ機能を実行することもできる。すなわち、熱源が断熱層の外部で利用可能である周知の回路条件について、センサの内部アレイは、温度測定の特定のパターンを示すことになる。これからの任意の偏差が一旦特徴付けられると、断熱層の欠陥が指摘されることになる。
【0061】
既知の熱負荷が(複数の)抵抗器を通じて加えられたとき、温度を断熱層のいずれかの側で測定し、その完全性を確実にすることができる。これらの温度差は、任意の所定のシステム及びそのシステムが収められているパッケージの特性を示す。断熱層に欠陥又は障害があると(例えば、何らかの異物が断熱溝にブリッジを形成した場合)、温度差が予想よりも小さい値となる。
【0062】
熱センサ測定の精度を改善することを補助するために、ダイ温度測定デバイス1400を断熱層内のダイの周りに分布させる必要があり、その結果、個々のセンサのピクセルの隣のダイの局所的な、時間とともに変動する温度測定及びダイ上の勾配がわかる。次いで、ユーザは、測定を実行する過程においてダイ温度測定の平均をとる(すべての読み取り値の平均をとる)ことを選択することができるか、又は激しい熱的シーン温度差(空間的又は時間的のいずれか)を生じるアプリケーションにおいて、局所温度読み取り値を使用して個々のピクセルの温度測定精度を改善することができる。
【0063】
図15から17は、小さなアレイに対する分布型温度センサを示している。様々な温度センサ配置戦略を使用することができる。図15に示されているように、温度センサ1400は、小さな3×3ピクセルアレイ1500のコーナーのすべてに配置することができる。これにより、ダイ温度「マップ」の詳細がよくわかるが、使用される領域及びすべてのセンサを接続するために必要な配線に関するコストが増大する。図16は、このサイズのアレイに関して、すべての外側コーナー及び4つのすべての内側コーナーが温度センサ1400を受け入れる代替的な実施形態を示している。これは、各々のピクセルに対し2つのセンサ、及び中心ピクセルに対し4つのセンサを備え、アレイ内の特定のピクセルに関して最大の精度が要求されるいくつかのアプリケーションにおいて有利なものとすることができる。図17は、4つの内側コーナーのみが温度センサを受け入れる最小の被覆状況を示している。この状況において、1つのピクセルに対し少なくとも1つの温度センサがあり、いくつかについては2つあり、また中心ピクセルはここでもまた4つのセンサを有する。この分布は、センサが断熱層から離れた位置に配置されているため(アレイのサイズ及び/又は断熱層の内側の面積による)断熱層の欠陥を効果的に検出することができない。図15から17の異なる例から、異なるアプリケーションはダイ温度センサの他の分布が必要になることは理解されるであろう。さらに、個々のダイ温度センサの分布は、複数のダイ温度センサのうちの一部のセンサをセンサのキャップの下に配置し、他のセンサをキャップの外側に配置する必要がある場合があることも理解されるであろう。
【0064】
本発明により提供されるような配列は、従来の既存技術に勝る多くの利点があることが理解されるであろう。熱放射量測定システムにおける現在の実務慣例は、センサパッケージと熱的に接触するように近くに配置されるか、又はセンサパッケージに極めて近い位置に配置された外部温度センサを使用してダイ温度を測定することである。この周囲温度測定ユニットは、通常、同じPCB上に取り付けられるか、又は放射量センサ又はアレイと物理的に接触するように取り付けることができる。あるセンサ及びアレイは、センサが同じダイ上に物理的に配置されるが、ダイ温度センサのアレイは決して使用されていない。ダイ温度センサが能動的温度センサを製作するための周知の回路技術を使用して作製され、次いで、ユーザが、事前キャリブレーションがなされた詳細ダイ温度情報にアクセスする場合、このパラメータの広範なキャリブレーションをユーザ側で行う必要はない。
【0065】
パッケージの外側に配置されている追加のセンサによりダイ温度を感知すると、実際のアレイ温度と周囲又はPCB温度との間に明らかな熱的遅延が生じる。このため、多くのアプリケーションに関して、受け入れがたいほど不正確な読み取りが長い間続く。ここで開示されているスキームは、この熱的遅延を起こさずにダイ温度を測定することに非常に優れている。
【0066】
本明細書で説明されているセンサは、例示的な実施形態に関連して示されていることは理解されるであろう。任意の一実施形態の特徴は、他の実施形態の特徴と併せて使用することができるか、又は実際に他の実施形態の構造的特徴と無関係に適用することができることも理解されるであろう。そのようなセンサのアプリケーションは、両方とも単一のピクセル及びアレイであるIRからデジタルへのコンバータなどの複数の環境に置くことができる。更なるアプリケーションは、単一点熱測定システム、例えば、デジタル温度計、侵入防止警報装置、人数計測センサ、シーンを赤外線撮像するための赤外線カメラを含む。これら及び他のアプリケーションは、これまでに説明した教示を検討すれば当業者にとって容易に明らかなものであろう。したがって、本発明は、好ましい実施形態に関連して説明されているが、付属の請求項に照らして必要とみなされる場合を除き本発明がいかなる形でも限定されることを意図されていないことは理解されるであろう。
【0067】
上側、下側、内側、及び外側という言葉は、例示的な実施形態を示す際に説明を簡単にするために使用されており、本発明を1つの配向に限定することを意図していない。同様に、「備える、含む」/「備えること、含むこと」という言葉は、本明細書内で使用されている場合、記載されている特徴、整数、工程、又はコンポーネントの存在を意味し、1つ又は複数の他の特徴、整数、工程、コンポーネント、又はこれらからなる群の存在もしくは追加を除外しない。さらに、本発明は、特定の例に関連して説明されているが、付属の請求項に照らして必要とみなされる場合を除き、本発明をいかなる形でも限定することを意図されておらず、また本発明の精神及び範囲から逸脱することなく説明されている例に対し多くの修正及び変更を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に加工された電気回路であって、第1及び第2の熱放射線感知電気素子を備え、各々の電気素子が前記回路の出力全体に寄与する出力を提供し、前記電気素子が前記第1の基板から断熱されている第1の領域上の同じ場所に配置されることを特徴とする回路。
【請求項2】
前記第1の領域は、前記第1の基板内に形成されることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記第1の領域は、前記第1の基板上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項4】
前記第1の領域は、真空排気されたキャビティを前記第1の領域の下に設けることにより前記第1の基板から断熱されることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項5】
前記第1の領域は、前記第1の領域と下にある前記基板との間に断熱層を設けることにより前記第1の基板から断熱されることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項6】
前記第1の領域は、前記基板に対して吊り下げられていることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項7】
前記第1の領域は、実質的に等温な構造を備えることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項8】
前記第1の領域は、前記基板に1つ又は複数のエッジ部分で結合されることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項9】
前記第1の領域をテーブルとして備え、前記電気素子をその上側表面上に形成し、前記テーブルは1つ又は複数のレッグ部を備えることにより前記基板に対して支持され、前記(複数の)レッグ部は前記テーブルのエッジ部分に設けられることを特徴とする請求項8に記載の回路。
【請求項10】
前記電気素子は、抵抗素子であることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項11】
熱センサとして構成され、前記第1及び第2の電気素子の各々は、その素子により感知される温度を示す出力を提供することを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項12】
前記センサは、前記第1及び第2の電気素子を備える熱放射線センサであり、前記第1及び第2の電気素子の各々は、その素子に入射する放射線を示す出力を提供することを特徴とする請求項11に記載の回路。
【請求項13】
第3及び第4の熱感知電気素子をさらに備え、前記第3及び第4の素子は第2の断熱された領域上の同じ場所に配置されることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項14】
前記電気素子は、ブリッジ構成で配列されることを特徴とする請求項13に記載の回路。
【請求項15】
前記ブリッジ構成の個々のレッグ部を、前記第1、第2、第3、及び第4の電気素子の各々により備えることを特徴とする請求項14に記載の回路。
【請求項16】
各々の断熱された領域上の前記素子の各々は、個別の構造上の前記素子の他方に相補出力を供給することを特徴とする請求項15に記載の回路。
【請求項17】
請求項1に記載の回路を含むことを特徴とする熱センサ。
【請求項18】
半導体基板上に加工された熱センサであって、
a)第1及び第2の放射線感知素子を有し、前記熱センサの出力全体に寄与する出力を発生する第1の温度感知素子と、
b)第1及び第2の放射線感知素子を有し、前記熱センサの出力全体に寄与する出力を発生する第2の温度感知素子とを備え、
前記第1及び第2の温度感知素子は、第1及び第2の領域上に配置され、前記第1及び第2の領域は第1の基板から断熱されることを特徴とするセンサ。
【請求項19】
第2の基板内に形成された第1及び第2のキャップをさらに備え、前記第1及び第2の基板は、前記第1及び第2の温度感知素子がその上に備えられた各々のキャップを有するように互いに関して配列され、前記第1の温度感知素子の前記キャップは、前記キャップを介した前記感知素子上への入射放射線の透過を可能にし、前記第2の温度感知素子の前記キャップは、前記キャップを介して透過され、前記第2の温度感知素子上に透過される放射線の少なくとも一部をブロックすることを特徴とする請求項18に記載のセンサ。
【請求項20】
前記第1の温度感知素子の前記キャップは、前記第1の温度感知素子上に前記入射放射線を集束するように構成された光学素子を含むことを特徴とする請求項19に記載のセンサ。
【請求項21】
前記第2の温度感知素子の前記キャップは、前記キャップ上に入射する放射線を反射する反射コーティングを含むことを特徴とする請求項19に記載のセンサ。
【請求項22】
前記第2の温度感知素子の前記キャップは、前記キャップを介した前記第2の温度感知素子上への放射線の透過を妨げるために光学的に不透明なコーティングを含むことを特徴とする請求項19に記載のセンサ。
【請求項23】
前記第1及び第2の基板の互いに関する配列は、前記キャップの各々とその個別の温度感知素子との間にキャビティを定めることを特徴とする請求項19に記載のセンサ。
【請求項24】
前記第1及び第2の温度感知素子に関する前記キャビティの各々は、互いに流体連結していることを特徴とする請求項23に記載のセンサ。
【請求項25】
前記第1及び第2の温度感知素子に関する前記キャビティの各々は、前記第1及び第2の温度感知素子に関する前記キャビティのうちの他方のキャビティから隔離されることを特徴とする請求項23に記載のセンサ。
【請求項26】
前記第1及び第2の基板は、シリコンで形成されることを特徴とする請求項19に記載のセンサ。
【請求項27】
前記第1及び第2の温度感知素子は、赤外線感知素子であることを特徴とする請求項18に記載のセンサ。
【請求項28】
前記少なくとも1つの光学素子は、回折光学素子であることを特徴とする請求項20に記載のセンサ。
【請求項29】
前記少なくとも1つの光学素子は、屈折光学素子であることを特徴とする請求項20に記載のセンサ。
【請求項30】
前記キャビティにおける前記周囲条件及び組成物は、指定されうることを特徴とする請求項23に記載のセンサ。
【請求項31】
前記キャビティは、周囲圧力よりも低い圧力で形成されることを特徴とする請求項30に記載のセンサ。
【請求項32】
前記キャビティは、前記センサが使用されるアプリケーション用に選択された気体組成物で満たされることを特徴とする請求項30に記載のセンサ。
【請求項33】
前記気体組成物は、窒素の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有するガスを含むことを特徴とする請求項32に記載のセンサ。
【請求項34】
前記光学素子は、前記第1の温度感知素子の上に形成されているチャンバに隣接する、前記キャップの内面内に形成されることを特徴とする請求項20に記載のセンサ。
【請求項35】
前記光学素子は、前記第1の温度感知素子の上に形成されているチャンバから離れている、前記キャップの外面内に形成されることを特徴とする請求項20に記載のセンサ。
【請求項36】
光学素子は、前記第1の温度感知素子に対する前記キャップの外面及び内面の両方に形成され、前記光学素子の組合せは複合レンズを形成することを特徴とする請求項20に記載のセンサ。
【請求項37】
複数の第1の温度感知素子が形成され、前記光学素子は、特定の波長の放射線を複数の前記第1の温度感知素子のうちの事前に選択された温度感知素子に選択的に誘導するように構成されることを特徴とする請求項20に記載のセンサ。
【請求項38】
前記第1及び第2の温度感知素子に関する前記キャップは、同じ第2の基板内に形成され、加えて、前記センサは前記第2の基板の上で配向された外側キャップを備え、前記キャップは光学素子を含むことを特徴とする請求項19に記載のセンサ。
【請求項39】
前記第1及び第2の基板の各々を互いに関して配列すると、前記第1の基板から上方に延び、間にあるルーフ部を支持する側壁により前記キャップの各々が形成され、前記ルーフ部は前記温度感知素子に実質的に平行な平面内にあることを特徴とする請求項19に記載のセンサ。
【請求項40】
前記第1及び第2の温度感知素子の各々は、互いに隣接し、その上に備えられている前記キャップは前記ルーフ部から下方に延びる共通の中心カラムを共有し、これにより前記第1及び第2の温度感知素子の各々に対するチャンバを定めることを特徴とする請求項39に記載のセンサ。
【請求項41】
前記第2の温度感知素子の前記チャンバは、前記キャップを介した前記第2の温度感知素子上への放射線の透過を妨げるように処理されることを特徴とする請求項40に記載のセンサ。
【請求項42】
前記処理は、前記チャンバの前記側壁のドーピングを含むことを特徴とする請求項41に記載のセンサ。
【請求項43】
前記処理は、前記第2の温度感知素子の前記キャップの前記ルーフ部に反射コーティングを施すことを含むことを特徴とする請求項41に記載のセンサ。
【請求項44】
前記中心カラムは、前記ルーフ部から前記第1の基板に完全には届かず、これにより前記カラムの下側表面と前記第1の基板の上側表面との間に間隙が定められることを特徴とする請求項40に記載のセンサ。
【請求項45】
前記間隙の幅は、感知される入射放射線の波長と同程度であることを特徴とする請求項44に記載のセンサ。
【請求項46】
前記間隙を設けることにより、前記第1及び第2の感知素子に対する前記チャンバの間の圧力を均一にすることができることを特徴とする請求項44に記載のセンサ。
【請求項47】
前記第1及び第2の温度感知素子の各々は、ボロメータとして提供されることを特徴とする請求項18に記載のセンサ。
【請求項48】
前記第1及び第2の温度感知素子の各々の少なくとも一部は、前記第1の基板内に定められたキャビティの上に吊り下げられ、前記吊り下げの程度は前記第1及び第2の領域を形成する断熱テーブルを定め、前記キャビティは前記温度感知素子と前記基板との間の断熱を行うことを特徴とする請求項18に記載のセンサ。
【請求項49】
前記第1及び第2の温度感知素子は、ホイートストンブリッジ構成で配列されることを特徴とする請求項18に記載のセンサ。
【請求項50】
前記ホイートストンブリッジ構成を、抵抗素子の第1の対を有する前記第1の温度感知素子及び抵抗素子の第2の対を有する前記第2の温度感知素子により提供し、各々の対の抵抗器はホイートストンブリッジの対向するレッグ部を定めることを特徴とする請求項49に記載のセンサ。
【請求項51】
前記ホイートストンブリッジの対向するレッグ部上の前記抵抗器の各々は、専用の断熱テーブル上の同じ場所に配置されることを特徴とする請求項50に記載のセンサ。
【請求項52】
前記断熱テーブルは、微小電気機械技術を使用して加工されることを特徴とする請求項51に記載のセンサ。
【請求項53】
前記第1の基板は、前記センサの外側に配置された溝配列を備え、前記溝配列は前記センサと前記第1の基板上の他の素子との間の断熱を行うことを特徴とする請求項18に記載のセンサ。
【請求項54】
前記溝配列は、前記第1の基板内にエッチングされた2つの隣接する溝を備え、前記2つの溝の各々は断熱材で充填され、前記溝の熱係数と異なる熱係数を有する中間領域により互いに隔てられていることを特徴とする請求項53に記載のセンサ。
【請求項55】
前記溝配列は、前記センサの周りに断熱層を定めるように前記センサの周りに配置されることを特徴とする請求項54に記載のセンサ。
【請求項56】
前記溝配列は、前記センサと前記第1の基板上に備えられている熱源との間に配置されることを特徴とする請求項55に記載のセンサ。
【請求項57】
前記溝配列は、複数の溝を備え、前記複数の溝はキャビティにより互いに隔てられている隣接する溝の対で形成されることを特徴とする請求項53に記載のセンサ。
【請求項58】
前記第1の基板は、埋め込みシリコンオンインシュレータ層を含み、前記溝配列を形成する前記溝の深さは、前記埋め込まれた層に届くほどの深さであることを特徴とする請求項53に記載のセンサ。
【請求項59】
前記キャビティは、前記センサの下に延びることを特徴とする請求項57に記載のセンサ。
【請求項60】
複数のダイ温度センサをさらに備え、前記複数のダイ温度センサは前記センサが配置されているダイの温度を示す出力を提供することを特徴とする請求項18に記載のセンサ。
【請求項61】
前記複数のダイセンサは、複数の出力測定を行うように前記ダイの周りに配列され、前記出力測定の各々はそのダイ温度センサの位置の温度に関連付けられることを特徴とする請求項60に記載のセンサ。
【請求項62】
複数のセンサを含むセンサアレイであって、前記センサの各々は能動的感知素子及び基準感知素子を有し、前記能動的感知素子は第1の基板内の断熱テーブル上に形成され、第2の基板内に形成された光学素子を有し、前記第1及び第2の基板は前記第2の基板が前記感知素子の上にキャップを形成するように互いに関して構成され、前記光学素子は前記キャップに入射した放射線を前記感知素子に誘導するように構成され、前記基準感知素子も前記第1の基板内の断熱テーブル内に形成され、前記第2の基板内に形成されたキャップを有し、前記第1及び第2の基板は、前記キャップが前記基準感知素子の上に配置されるように互いに関して構成され、前記キャップは、前記基準感知素子を前記キャップ上に入射した放射線の少なくとも一部から遮蔽するために使用され、前記能動的感知素子及び基準感知素子はブリッジ構成で配列されることを特徴とするセンサアレイ。
【請求項63】
前記センサアレイの出力は、像面を定めることを特徴とする請求項62に記載のセンサアレイ。
【請求項64】
熱放射体を感知したときに信号を提供するように構成された弁別センサであって、前記センサからの第1の距離で前記熱放射体を感知したときに信号を発生するように構成された第1の感知素子と、前記センサからの第2の距離で物体を感知したときに信号を発生するように構成された第2の感知素子とを含み、前記第1及び第2の感知素子の各々は、第1の基板上に形成された断熱テーブル上に配置されている少なくとも1つの感知素子と、第2の基板内に形成された少なくとも1つの光学素子とを含み、前記第1及び第2の基板は、前記第2の基板が前記少なくとも1つの感知素子の上にキャップを形成するように互いに関して構成され、前記少なくとも1つの光学素子は、前記キャップ上に入射した放射線を前記少なくとも1つの感知素子に誘導するように構成されることを特徴とする弁別センサ。
【請求項65】
前記物体は、人間の胴体であることを特徴とする請求項64に記載の弁別センサ。
【請求項66】
第1の基板内に形成された少なくとも1つの感知素子と、第2の基板内に形成された少なくとも1つの光学素子とを備えるガス分析器であって、前記第1及び第2の基板は、前記第2の基板が前記少なくとも1つの感知素子の上にキャップを形成するように互いに関して構成され、前記少なくとも1つの光学素子は、前記キャップ上に入射した放射線を前記少なくとも1つの感知素子に誘導するように構成され、前記誘導される入射放射線は、特定のガスの存在を示す波長を有するガス分析器において、前記第1の基板内に形成された少なくとも1つの基準感知素子を備え、第2の基板内に形成された前記少なくとも1つの基準感知素子に対するキャップを有し、前記キャップは、前記基準感知素子を前記キャップ上に入射した前記放射線の少なくとも一部から遮蔽して前記基準感知素子が前記入射放射線の強度と無関係の出力を提供するために使用され、前記基準感知素子及び感知素子は各々、前記第1の基板内に定められた個々の断熱テーブル上に形成され、ブリッジ構成でまとめて配列されることを特徴とするガス分析器。
【請求項67】
複数の感知素子及び複数の関連する光学素子を備え、組み合わされた前記感知素子及び光学素子の各々は、前記複数の感知素子の前記出力がガス波長シグネチャースペクトルを提供するために使用されうるように特定波長分析に関して構成されることを特徴とする請求項66に記載のガス分析器。
【請求項68】
センサを形成する方法であって、
少なくとも1つの感知素子及び少なくとも1つの基準感知素子を第1の基板内に形成する工程と、
前記感知素子を下の前記基板から断熱するように前記感知素子の各々の一部分の下にキャビティをエッチングする工程と、
光学素子及び遮蔽キャップを第2の基板内に形成する工程と、
前記第2の基板が前記感知素子の上に前記光学素子を備え、前記光学素子が入射放射線を前記感知素子上に誘導するように構成され、前記第2の基板が前記遮蔽キャップを前記基準センサの上に備え、前記遮蔽キャップが、前記キャップ上に入射した放射線の前記基準感知素子上への透過を妨げる働きをするように前記第1及び第2の基板を接着して合わせる工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項69】
前記感知素子は、ブリッジ構成で配列されることを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項70】
半導体プロセスで加工される電磁センサであって、第1の基板内に形成された第1及び第2の感知素子を備え、前記第1及び第2の基板の各々は、その上に定められた各々のキャップを有し、前記キャップは前記第2の基板内に形成され、前記第1の基板上に取り付け可能であり、前記第1の感知素子の上に形成された前記キャップは、前記感知素子上への前記キャップを介した放射線の透過を可能にし、前記第2の感知素子の上に形成された前記キャップは、前記第1の感知素子上に入射した放射線に関して前記第2の感知素子上に入射した前記放射線を減少するために、前記感知素子上への前記キャップを介した前記放射線の少なくとも一部の透過をフィルタリングし、前記第1及び第2の感知素子の各々は、前記第1の基板上の断熱テーブル上に備えられ、ブリッジ構成で互いに電気的に結合されることを特徴とする電磁センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図12c】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−507084(P2010−507084A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532798(P2009−532798)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061096
【国際公開番号】WO2008/046864
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(501144003)アナログ・デバイシズ・インコーポレーテッド (51)
【Fターム(参考)】