説明

感応センサ及びその製造方法

【課題】 2種類のガスの検出を正確に行え、ヒータの消費電力が大きくなったり、感応センサが大型化するのを抑制できる感応センサを提供する。
【解決手段】 内層にヒータ17を有するベース1と、ヒータ17に対応する位置において、相互に対向するようにベース1の一方の面1a上に形成された第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bと、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bにそれぞれ接続された第1の一対の薄膜配線パターン23A,23Bと、第1の一対の対向電極19A,19Bに跨るように形成された第1の感応膜25と、ヒータ17に対応する位置において、相互に対向するようにベース1の他方の面1b上に形成された第2の一対の薄膜対向電極119A,119Bと、第2の一対の薄膜対向電極119A,119Bにそれぞれ接続された第2の一対の薄膜配線パターン123A,123Bと、第2の一対の対向電極119A,119Bに跨るように形成された第2の感応膜125とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ等のように特定の物質に感応する感応膜を備えた感応センサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平5−281177号公報(特許文献1)には、ベース上に相互に間隔をあけて対向する一対の薄膜対向電極と、該一対の薄膜対向電極に一端が接続された一対の薄膜配線パターンとを形成した感応センサが示されている。一対の薄膜対向電極は、細長い基本電極部と、該基本電極部から延びる1以上の直線状電極部とをそれぞれ有している。そして一方の薄膜対向電極の1以上の直線状電極部と他方の薄膜状対向電極の1以上の直線状電極とが等しい間隔をあけて交互に並ぶように、一対の薄膜対向電極が形成されている。この一対の対向電極上には、該一対の対向電極に跨って感応膜が形成されている。この種の感応センサを用いてガスを検出する場合には、ベースに感応膜を加熱するヒータを配置する。
【0003】
このような感応センサにより2種類のガスを検出する場合は、ヒータの加熱温度を変化させて、それぞれのガスを検出する。例えば、特開2000−356616号公報(特許文献2)に示すセンサでは、400℃前後のヒータの加熱温度でメタンガスを検出し、100℃前後のヒータの加熱温度で一酸化炭素を検出する。
【0004】
または、特開平11−295252号公報(特許文献3)に示すセンサのように、ベースに2つのヒータを並んで配置し、それぞれのヒータの上方に一対の薄膜対向電極、一対の薄膜配線パターン及び感応膜からなる感応部(以下、単に感応部という)を形成する。
【特許文献1】特開平5−281177号公報
【特許文献2】特開2000−356616号公報
【特許文献3】特開平11−295252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ヒータの加熱温度を変化させて、2種類のガスを検出する方法では、1つの感応部で2種類のガスを検出するため、正確にガス検出を行うのが難しかった。また、ベースに2つのヒータを並んで配置する方法では、ヒータの消費電力が大きくなる上、感応センサが大型化する問題があった。
【0006】
本発明の目的は、2種類のガスの検出を正確に行える感応センサ及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、ヒータの消費電力が大きくなったり、感応センサが大型化するのを抑制できる感応センサ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の感応センサは、複数の絶縁層が積層されて構成され且つ内層にヒータを有するベースと、ヒータに対応する位置において、相互に間隔をあけて対向するようにベースの一方の面上に形成された第1の一対の薄膜対向電極と、第1の一対の薄膜対向電極にそれぞれ接続された第1の一対の薄膜配線パターンと、第1の一対の対向電極に跨るように第1の一対の対向電極及びベースの一方の面上に形成された第1の感応膜と、ヒータに対応する位置において、相互に間隔をあけて対向するようにベースの他方の面上に形成された第2の一対の薄膜対向電極と、第2の一対の薄膜対向電極にそれぞれ接続された第2の一対の薄膜配線パターンと、第2の一対の対向電極に跨るように第2の一対の対向電極上及びベースの他方の面に形成された第2の感応膜とを有している。なお、一対の薄膜対向電極は、直接的に対向するものでもよく、一対の薄膜対向電極の間にそれぞれの薄膜対向電極に間隔をあけて他の電極を配置し、このような電極を介して対向するものであっても構わない。本発明では、一対の薄膜対向電極、感応膜等からなる感応部をベースの両面にそれぞれ形成して、1つのヒータにより両面に形成された感応膜(第1及び第2の感応膜)を加熱している。このため、本発明の感応センサでは、2つの感応部を1つのヒータだけで加熱できるので、ヒータの消費電力を少なくできる。また、ヒータが占める部分を小さくできるので、感応センサが大型化するのを抑制できる。
【0009】
第1及び第2の感応膜の特性が異なるように構成すれば、2つの感応部で2種類のガスをそれぞれ検出するため、正確にガス検出を行うことができる。
【0010】
ベースの他方の面を、第2の感応膜が形成されている領域の外側に位置する外側領域において支持する支持部をさらに有しているように構成することができる。このようにすれば、ベースは中央に位置するいわゆるダイヤフラム状の薄板部と、薄板部の周囲に位置して支持部に支持される被支持部(外側領域)とを有する構成となる。この場合、以下のように感応センサを構成することができる。
【0011】
支持部は、ベースの他方の面の外側領域全体を支持するように形成された環状の支持部材から構成し、第2の一対の薄膜配線パターンの外部接続用の一対の接続用電極は、それぞれベースを厚み方向に貫通する一対の貫通孔を通してベースの一方の面側に向かって露出させるように構成できる。このようにすれば、ベースの他方の面上に形成された第2の感応部の出力を一対の貫通孔を通して容易に取り出すことができる。また、第1の感応部の出力及び第2の感応部の出力は、いずれもベースの一方の面側から取り出すことができるので、感応センサに接続される検出器の設計が容易になる。この場合、ベースの外側領域に囲まれた内側領域には、第2の感応膜に被検出ガスを供給する1以上の貫通孔を形成すればよい。このようにすれば、1以上の貫通孔を通して、第2の感応膜にガスが到達する。
【0012】
支持部には、支持部の厚み方向の両側と、ベースが位置する側の反対側とに開口する開口部を形成するのが好ましい。このようにすれば、開口部を通しても、第2の感応膜にガスが到達するため、第2の感応膜によるガスの検出が正確になる。
【0013】
ベースの輪郭形状は矩形状を呈しており、支持部は、ベースの他方の面の四隅を支持する4つの支持部材から構成し、第2の一対の薄膜配線パターンは、ベースの他方の面上をベースの対向する一対の辺に向かってそれぞれ延びるように形成することができる。このようにすれば、4つの支持部材によりベースを安定して支持でき、4つの支持部材の隣接する2つの支持部材の間の空隙から、第2の感応部で検出するガスが流れ、ガスが検出しやすくなる。また、ベースの4つの支持部材が配置された側の面に形成された第2の感応部の出力を、隣接する2つの支持部材の間の空隙から、容易に取り出すことができる。
【0014】
前述したベースに一対の貫通孔を形成する感応センサは、例えば、次のように製造することができる。まず、シリコン単結晶からなる素材板を用意し、素材板の表面に第2の一対の薄膜対向電極と第2の一対の薄膜配線パターンとを形成する。次に、第2の一対の薄膜対向電極及び第2の一対の薄膜配線パターン上並びに素材板の外部に露出する表面上に、複数の絶縁層から構成されるベース形成層を形成する。そして、ベース形成層の表面上に第1の一対の薄膜対向電極及び第1の一対の薄膜配線パターンを形成する。次に、エッチングによりベース形成層に一対の貫通孔を形成し、一対の貫通孔を形成する前または後に、素材板のベース形成層が形成された面の反対側をエッチングにより第2の一対の薄膜対向電極及び第2の一対の薄膜配線パターンの一部が露出するまでくり抜いて、支持部とベースの中央部とを形成する。次に第1及び第2の一対の薄膜対向電極に跨るように第1及び第2の感応膜をそれぞれ形成する。このように、製造すれば、比較的単純な手順でベースの他方の面側に一対の貫通孔を形成する感応センサを製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、2つの感応部で2種類のガスをそれぞれ検出するため、正確にガス検出を行うことができる。また、2つの感応部を1つのヒータだけで加熱できるので、ヒータの消費電力を少なくできる。また、ヒータが占める部分を小さくできるので、感応センサが大型化するのを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1及び図2は、ガスセンサに適用した本発明の一実施の形態の感応センサを模式的に表した断面図及び底面図であり、図3は、図1を上方から見た図の部分拡大図であり、図4は、図2のII-II線断面図であり、図5は、図1のガスセンサの中央部の拡大図(図3のV−V線断面図)である。なお、理解を容易にするため、図1及び図5では、厚み寸法を誇張して描いている。各図に示すように、本例のガスセンサは、ベース1と、支持部3と、第1及び第2の感応部5,7とを有している。ベース1は輪郭形状が矩形状を呈しており、中央に位置するいわゆるダイヤフラム状の薄板部9と、薄板部9の周囲に位置して支持部3に支持される被支持部(外側領域)11とを有している。この外側領域11は、後述する第2の感応膜125が形成されている領域の外側に位置している。また、ベース1は、第1の感応部5が形成された一方の面1aと、第2の感応部7が形成された他方の面1bとを有している。ベース1の外側領域11には、後述する第2の一対の薄膜配線パターン123A,123B上のそれぞれの接続用電極131をベース1の一方の面1a側に向かって露出させる一対の矩形状の貫通孔1c,1dが形成されている。また、図2及び図4に示すように、ベース1の外側領域11に囲まれた内側領域12には、4つの貫通孔9aが形成されている。4つの貫通孔9aは、第1及び第2の感応部5,7の外側において、薄板部9の中心点Cを中心とした周方向に等間隔に形成されている。4つの貫通孔9aは、ベース1の内側領域12と支持部3とに囲まれた内部14に外気を流入させて、第2の感応膜125に被検出ガスを供給する役割を果たしている。図5に詳細に示すように、ベース1は、複数の絶縁層13,15が積層されて構成されており、内層にヒータ17を有している。具体的には、ベース1は、シリコン化合物からなる下部絶縁層13と、該下部絶縁層13上に形成されたシリコン化合物からなる上部絶縁層15とを有している。下部絶縁層13は、厚み400Åの薄膜Si層13aと、厚み6000Åの薄膜SiO層13bとが積層されて構成されている。上部絶縁層15は、厚み3μmを有しておりSiO0.70.7から形成されている。
【0017】
ヒータ17は、ベース1の中央部に形成されており、上部絶縁層15によって覆われた状態で下部絶縁層13上に形成されている。ヒータ17は、4100Åの厚みの白金薄膜層からなり、蛇行のパターン形状を有している。このヒータ17は、後述する第1の感応膜25と第2の感応膜125とを加熱する役割を果たしている。
【0018】
支持部3は、シリコン単結晶から形成されている。この支持部3は、ベース1の外側領域11全体を支持するように環状に形成されている。
【0019】
第1及び第2の感応部5,7は、ベース1の両面にそれぞれ形成されている。第1及び第2の感応部5,7は、感応膜の組成、堰及び一対の薄膜配線パターンを除いて同じ構成を有している。そこで、図3及び図5に示すベース1の第1の感応部5を参照して、第1及び第2の感応部5,7の構成を説明する。第1の感応部5は、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bと、第1の薄膜導電部21と、第1の薄膜配線パターン23A,23Bと、第1の感応膜25とを有している。なお、理解を容易にするため、図3においては、第1の感応膜25を透明なものとして描いている。
【0020】
第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bは、白金からなり、ベース1のヒータ17に対応する位置においてスパッタリングにより形成されている。本例では、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bは、4000Åの厚み寸法を有している。第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bは、仮想円(仮想環状形)CAに沿い且つ相互に間隔をあけて対向するように形成された円弧形状をそれぞれ呈している。第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bの間には、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bとの間に等しい間隔をあけることができる円形形状の第1の薄膜導電部21が形成されている。この第1の薄膜導電部21の平面輪郭形状は、仮想円CAと同心の相似形状を有している。第1の薄膜導電部21は、白金からなり、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bと共にスパッタリングにより形成されている。第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bには、複数の凹部27がそれぞれ形成されている。本例では、複数の凹部27は、上面に開口する矩形の貫通孔からなり、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bがそれぞれ円弧状に延びる方向に並んで形成されている。これにより、複数の凹部27は、薄膜対向電極に分散して形成されることになる。また、第1の一対の薄膜対向電極19A,19B上には、堰部29がそれぞれ形成されている。堰部29は、後述する接続用電極31と同材質の金からなり、スパッタリングにより形成されている。本例では、堰部29は6000Åの厚み寸法を有しており、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bの上面に固定されてベース1から離れる方向に突出している。この堰部29は、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bが対向する方向とは逆の方向に位置する第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bの縁にそれぞれ沿って連続して延びる薄膜により形成されている。本例では、複数の凹部27及び堰部29により第1の感応膜25を形成する未硬化感応膜の広がりに対して抵抗となる抵抗発生構造が構成されている。
【0021】
本例では、図3に示すように、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bの一方の薄膜対向電極19Aの端部19bと、端部19bと直接対向する他方の薄膜対向電極19Bの端部19cと間のギャップ寸法L1が、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bと第1の薄膜導電部21とのそれぞれのギャップ寸法L2の2倍に設定されている。
【0022】
第1の一対の薄膜配線パターン23A,23Bは、白金からなり、第1の一対の薄膜対向電極19A,19B及び第1の薄膜導電部21と共にスパッタリングにより形成されている。図1に示すように、第1の一対の薄膜配線パターン23A,23Bは、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bに一端が接続されて、ベース1に形成された貫通孔1c,1dに隣接する位置まで延びている。そして、第1の一対の薄膜配線パターン23A,23Bの縁部の表面上には、接続用電極31がそれぞれ形成されている。接続用電極31は、外部接続用の電極であり、金からなるスパッタリングにより形成されている。
【0023】
第1の感応膜25は、SnOやInを主成分とする金属酸化物半導体とPtとからなり、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bに跨るように第1の一対の対向電極19A,19B及びベース1の一方の面1a上に感応液を滴下して形成した未硬化感応膜が加熱により硬化されて形成されている。この第1の感応膜25は、中心部が盛り上がった円板形状を有しており、第1の一対の薄膜対向電極19A,19B上のそれぞれの堰部29に接触している。
【0024】
第2の感応部7は、第2の一対の薄膜対向電極119A,119Bと、第2の薄膜導電部121と、第2の薄膜配線パターン123A,123Bと、第2の感応膜125とを有している。第2の感応部7は、堰を有していない点、並びに感応膜の組成(特性)、堰及び一対の薄膜配線パターンの構成を除いて第1の感応部5と同じ構成を有しているので、第1の感応部5と同じ構造の部材には、第1の感応部5に100を加えた符号を付してその説明を省略する。第2の感応部7の感応膜125は、SnOやInを主成分とする金属酸化物半導体とPdとから形成されている。これにより、本例では、第1の感応部5により一酸化炭素のガスの検出が行え、第2の感応部7によりメタンのガスの検出が行える。第2の感応部7の第2の一対の薄膜配線パターン123A,123Bは、ベース1の他方1bの面上において、ベース1と支持部3との間を延びるように形成されている。第2の一対の薄膜配線パターン123A,123Bの縁部は、ベース1に形成された貫通孔1c,1d内まで延びている。そして、第1の一対の薄膜配線パターン19A,19Bの縁部には、貫通孔1c,1dを通してベース1の一方の面1a側に向かって露出する接続用電極131がそれぞれ形成されている。
【0025】
本例のガスセンサは、以下のようにして製造した。まず、図6(A)に示すようなシリコン単結晶からなる素材板41を用意した。次に図6(B)に示すように、素材板41の表面に第2の一対の薄膜対向電極119A,119Bと第2の一対の薄膜配線パターン123A,123Bと第2の薄膜導電部121とを白金を用いてスパッタリングにより形成した。第2の一対の薄膜対向電極119A,119Bには、複数の凹部127が同時されることになる。
【0026】
次に図6(C)に示すように、第2の一対の薄膜対向電極119A,119B、第2の一対の薄膜配線パターン123A,123B及び第2の薄膜導電部121上並びに素材板41の外部に露出する表面上に、前述した複数の絶縁層から構成されるベース形成層45を形成した。ここでいうベース形成層45は、下部絶縁層13(薄膜Si層13a,薄膜SiO層13b)、ヒータ17及び上部絶縁層15から構成されている。薄膜SiO層13b、薄膜Si層13a及びヒータ17は、いずれもP−CVDの薄膜形成技術によりこの順番で形成した。上部絶縁層15は、P−CVDの薄膜形成技術を厚みが3μmまで行って形成した。なお、第2の一対の薄膜対向電極119A,119Bと第2の薄膜導電部121との間の空隙部及び凹部127は、小さいため、これらの内部にベース形成層45の一部は入り込み難い。また、ベース形成層45の一部が入ったとしても、感応センサの機能が低下する可能性は低いと考えられる。
【0027】
次に、ベース形成層45の表面上に第1の一対の薄膜対向電極19A,19B,第1の一対の薄膜配線パターン23A,23B及び第1の薄膜導電部21を形成した。
【0028】
次に図6(D)に示すように、エッチングによりベース形成層45に貫通孔1c,1dを形成して、第2の一対の薄膜配線パターン123A,123Bの縁部をベース1の一方の面3a側に露出させた。また、素材板41の第1の一対の薄膜対向電極19A,19B等を形成した面の反対側をエッチングにより、第2の一対の薄膜対向電極119A,119B、第2の薄膜配線パターン123A,123Bの一部及び第2の薄膜導電部121が露出するまでくり抜いて凹部47を形成した。これにより、ベース1の中央部(内側領域12)と支持部3とを形成した。また、エッチングにより4つの貫通孔9a(図2参照)も形成した。
【0029】
次に図6(E)に示すように、堰部29と接続用電極31とを金を用いてスパッタリングにより同時に形成した。また、接続用電極131も金を用いてスパッタリングにより形成した。これにより、一対の接続用電極131は、それぞれ一対の貫通孔1c,1dを通してベース1の一方の面1a側に向かって露出することになる。
【0030】
次に、第1の一対の薄膜対向電極19A,19Bに跨るように感応液をデスペンサーにより滴下して未硬化感応膜を形成した。未硬化感応膜は、複数の凹部27及び堰部29により、一対の薄膜対向電極19A,19Bが対向する方向とは逆の方向に広がるのを抑制され、堰部29に接触した状態で中心部が盛り上がった円板形状となる。そして、未硬化感応膜を約600℃で加熱により硬化(焼成)させて、第1の感応膜25を形成した(図1参照)。次にガスセンサの上下を逆にして第1の感応膜25を作る方法と同様の方法で第2の感応膜125を作って図1に示すようなガスセンサを完成した。
【0031】
本例の感応センサによれば、2つの感応部5,7で2種類のガスをそれぞれ検出するため、正確にガス検出を行うことができる。また、2つの感応部5,7を1つのヒータ17だけで加熱できるので、ヒータ17の消費電力を少なくできる。また、ヒータ17が占める部分を小さくできるので、感応センサが大型化するのを抑制できる。
【0032】
図7及び図8は、ガスセンサに適用した本発明の他の実施の形態の感応センサを模式的に表した断面図及び底面図である。本例のガスセンサは、支持部とベースと第1の薄膜配線パターンの構造を除いて図1〜図6に示すガスセンサと同じ構造を有している。本例のガスセンサにおいては、図1〜図6に示すガスセンサと同じ構造の部材には200を加えた符号を付して、その説明を省略する。本例のガスセンサの支持部203は、ベース201の他方の面201bの四隅を支持する4つの支持部材204により構成されている。本例のように、支持部203を4つの支持部材204から構成すれば、4つの支持部材204によりベース201を安定して支持でき、4つの支持部材204の隣接する2つの支持部材204の間の空隙から、後述する第2の感応部207に検出するガスが流れ、ガスが検出しやすくなる。本例のガスセンサのベース201は、一対の貫通孔が形成されておらず、その他は、図1〜図6に示すガスセンサのベース1と基本的に同じ構造を有している。
【0033】
第2の一対の薄膜配線パターン323A,323Bは、ベース201の他方の面201b上において、第2の一対の薄膜対向電極319A,319Bに一端が接続されており、ベース201の縁部の隣接する2つの支持部材204の間を通ってベース201の対向する一対の辺201e,201fに向かってそれぞれ延びている。第2の一対の薄膜配線パターン323A,323Bの縁部表面上には、接続用電極331がそれぞれ形成されている。本例のように、第2の一対の薄膜配線パターン323A,323Bを形成すれば、ベース201の4つの支持部材204が配置された側の面に形成された第2の感応部207の出力を、隣接する2つの支持部材204の間の空隙から、容易に取り出すことができる。
【0034】
図9(A)及び(B)は、ガスセンサに適用した本発明の更に他の実施の形態の感応センサを模式的に表した断面図及び側面図である。本例のガスセンサは、支持部の構造を除いて図1〜図6に示すガスセンサと同じ構造を有している。本例のガスセンサにおいては、図1〜図6に示すガスセンサと同じ構造の部材には400を加えた符号を付して、その説明を省略する。本例のガスセンサの支持部403は、4つの開口部403aを有している。4つの開口部403aは、ベース401の隣接する2つの隅部の間にそれぞれ形成されている。開口部403aは、支持部403の厚み方向の両側と、ベース401が位置する側の反対側とに開口している。本例のガスセンサの開口部403aの輪郭形状は、円弧形状(アーク形状)を有している。
【0035】
図10(A)及び(B)は、ガスセンサに適用した本発明の別の実施の形態の感応センサを模式的に表した断面図及び側面図である。本例のガスセンサは、支持部の構造を除いて図1〜図6に示すガスセンサと同じ構造を有している。本例のガスセンサにおいては、図1〜図6に示すガスセンサと同じ構造の部材には600を加えた符号を付して、その説明を省略する。本例のガスセンサの支持部603は、4つの開口部603aを有している。4つの開口部603aは、ベース601の隣接する2つの隅部の間にそれぞれ形成されている。開口部603aは、支持部603の厚み方向の両側と、ベース601が位置する側の反対側とに開口している。本例のガスセンサの開口部603aの輪郭形状は、台形形状を有している。
【0036】
なお、上記各例では、感応液を滴下して形成した未硬化感応膜を硬化して感応膜を形成したが、薄膜形成技術によって形成された薄膜により感応膜を形成してもかまわない。
【0037】
また、上記各例では、弧状を呈する一対の薄膜対向電極が薄膜導電部を介して対向しているが、一対の薄膜対向電極を直接対向させても構わない。例えば、一対の薄膜対向電極を細長い基本電極部と、該基本電極部から延びる1以上の直線状電極部とから形成し、一方の薄膜対向電極の直線状電極部と他方の薄膜状対向電極の直線状電極とを間隔をあけて交互に並ぶように、一対の薄膜対向電極を形成することができる。
【0038】
また、上記各例では、未硬化感応膜を加熱硬化させたが、自然放置により未硬化感応膜を硬化させてもかまわない。
【0039】
また、上記各例では、本発明をガスセンサに適用した例を示したが、本発明を湿度センサ等の他の感応センサに適用できるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ガスセンサに適用した本発明の一実施の形態の感応センサを模式的に表した断面図である。
【図2】図1に示す感応センサの底面図である。
【図3】図1を上方から見た図の部分拡大図である。
【図4】図2のIV-IV線断面図である。
【図5】図1に示すガスセンサの中央部の拡大図(図3のV−V線断面図)である。
【図6】(A)〜(E)は、図1に示すガスセンサの製造方法を説明するために用いる図である。
【図7】ガスセンサに適用した本発明の他の実施の形態の感応センサを模式的に表した断面図である。
【図8】図7に示す感応センサの底面図である。
【図9】(A)及び(B)は、ガスセンサに適用した本発明の更に他の実施の形態の感応センサを模式的に表した断面図及び側面図である。
【図10】(A)及び(B)は、ガスセンサに適用した本発明の別の実施の形態の感応センサを模式的に表した断面図及び側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ベース
3 支持部
9a 貫通孔
11 外側領域
17 ヒータ
19A,19B 第1の一対の薄膜対向電極
119A,119B 第2の一対の薄膜対向電極
23A,23B 第1の薄膜配線パターン
123A,123B 第2の薄膜配線パターン
25 第1の感応膜
125 第2の感応膜
403a,603a 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層されて構成され且つ内層にヒータを有するベースと、
前記ヒータに対応する位置において、相互に間隔をあけて対向するように前記ベースの一方の面上に形成された第1の一対の薄膜対向電極と、
前記第1の一対の薄膜対向電極にそれぞれ接続された第1の一対の薄膜配線パターンと、
前記第1の一対の対向電極に跨るように前記第1の一対の対向電極及び前記ベースの前記一方の面上に形成された第1の感応膜と、
前記ヒータに対応する位置において、相互に間隔をあけて対向するように前記ベースの他方の面上に形成された第2の一対の薄膜対向電極と、
前記第2の一対の薄膜対向電極にそれぞれ接続された第2の一対の薄膜配線パターンと、
前記第2の一対の対向電極に跨るように前記第2の一対の対向電極上及び前記ベースの前記他方の面に形成された第2の感応膜とを有する感応センサ。
【請求項2】
前記第1及び第2の感応膜の特性が異なることを特徴とする請求項1に記載の感応センサ。
【請求項3】
前記ベースの前記他方の面を、前記第2の感応膜が形成されている領域の外側に位置する外側領域において支持する支持部をさらに有している請求項1に記載の感応センサ。
【請求項4】
前記支持部は、前記ベースの前記他方の面の前記外側領域全体を支持するように形成された環状の支持部材から構成されており、
前記第2の一対の薄膜配線パターンの外部接続用の一対の接続用電極は、それぞれ前記ベースを前記厚み方向に貫通する一対の貫通孔を通して前記ベースの前記一方の面側に向かって露出しており、
前記ベースの前記外側領域に囲まれた内側領域には、前記第2の感応膜に被検出ガスを供給する1以上の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の感応センサ。
【請求項5】
前記支持部には、前記支持部の厚み方向の両側と、前記ベースが位置する側の反対側とに開口する開口部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の感応センサ。
【請求項6】
前記ベースの輪郭形状は矩形状を呈しており、
前記支持部は、前記ベースの前記他方の面の四隅を支持する4つの支持部材から構成されており、
前記第2の一対の薄膜配線パターンは、前記ベースの前記他方の面上を、前記ベースの対向する一対の辺に向かってそれぞれ延びるように形成されている請求項3に記載の感応センサ。
【請求項7】
複数の絶縁層が積層されて構成され且つ内層にヒータを有するベースと、
前記ヒータに対応する位置において、相互に間隔をあけて対向するように前記ベースの一方の面上に形成された第1の一対の薄膜対向電極と、
前記第1の一対の薄膜対向電極にそれぞれ接続された第1の一対の薄膜配線パターンと、
前記第1の一対の対向電極に跨るように前記第1の一対の対向電極及び前記ベースの前記一方の面上に形成された第1の感応膜と、
前記ヒータに対応する位置において、相互に間隔をあけて対向するように前記ベースの他方の面上に形成された第2の一対の薄膜対向電極と、
前記第2の一対の薄膜対向電極にそれぞれ接続された第2の一対の薄膜配線パターンと、
前記第2の一対の対向電極に跨るように前記第2の一対の対向電極上及び前記ベースの前記他方の面に形成された第2の感応膜と、
前記ベースの前記他方の面を、前記第2の感応膜が形成されている領域の外側に位置する外側領域において支持する支持部とを有し、
前記支持部は、前記ベースの前記他方の面の前記外側領域全体を支持するように形成された環状の支持部材から構成されており、
前記第2の一対の薄膜配線パターンの外部接続用の一対の接続用電極は、それぞれ前記ベースを前記厚み方向に貫通する一対の貫通孔を通して前記ベースの前記一方の面側に向かって露出している感応センサの製造方法において、
シリコン単結晶からなる素材板を用意し、
前記素材板の表面に前記第2の一対の薄膜対向電極と前記第2の一対の薄膜配線パターンとを形成し、
前記第2の一対の薄膜対向電極及び前記第2の一対の薄膜配線パターン上並びに前記素材板の外部に露出する表面上に、前記複数の絶縁層から構成されるベース形成層を形成し、
前記ベース形成層の表面上に前記第1の一対の薄膜対向電極及び前記第1の一対の薄膜配線パターンを形成し、
エッチングにより前記ベース形成層に前記一対の貫通孔を形成し、
前記一対の貫通孔を形成する前または後に、前記素材板の前記ベース形成層が形成された面の反対側をエッチングにより前記第2の一対の薄膜対向電極及び前記第2の一対の薄膜配線パターンの一部が露出するまでくり抜いて、前記支持部と前記ベースの中央部とを形成し、
前記第1及び第2の一対の薄膜対向電極に跨るように第1及び第2の感応膜をそれぞれ形成する感応センサの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−74977(P2009−74977A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245113(P2007−245113)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000242633)北陸電気工業株式会社 (49)
【Fターム(参考)】