説明

感放射線性樹脂組成物

【課題】レジストとしての基本物性に優れ、ラインエッジラフネスが小さい感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)分子鎖の末端に式(1)で表される基を有し、かつアルカリ難溶性あるいは不溶性であり、酸の作用によりアルカリ易溶性となる樹脂、及び(B)感放射線性酸発生剤を含有する感放射線性樹脂組成物を提供する。
【化1】


〔式(1)中、XはS−R1で表される2価の基を示し、R1は置換基を有することができる炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物に関し、更に詳しくは、特にKrFエキシマレーザーあるいはArFエキシマレーザー等の遠紫外線を用いる微細加工に有用な化学増幅型レジストとして好適に使用することができる感放射線性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、最近ではサブハーフミクロンオーダー(0.4μm以下)の微細加工を可能にするリソグラフィー技術の開発が進められており、近い将来には、サブクォーターミクロン(0.20μm以下)レベルの微細加工技術が必要になるとされている。
【0003】
サブクォーターミクロンレベルの微細加工を可能とするためには、より波長の短い放射線の利用が検討されている。このような短波長の放射線としては、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、電子線等を挙げることができるが、これらのうち、特にKrFエキシマレーザーあるいはArFエキシマレーザーが注目されている。
【0004】
このようなエキシマレーザーによる照射に適した感放射線性樹脂組成物として、酸解離性官能基を有する成分と放射線の照射(以下、「露光」という。)により酸を発生する感放射線性酸発生剤との相互作用を利用した組成物(以下、「化学増幅型感放射線性組成物」という。)が数多く提案されている。
【0005】
このような化学増幅型感放射線性組成物として、例えば、カルボン酸のt−ブチルエステル基又はフェノールのt−ブチルカーボナート基を有する重合体と感放射線性酸発生剤とを含有する組成物が提案されている(特許文献1参照)。この組成物は、露光により発生した酸の作用により、重合体中に存在するt−ブチルエステル基あるいはt−ブチルカーボナート基が解離して、該重合体がカルボキシル基あるいはフェノール性水酸基からなる酸性基を有するようになり、その結果、レジスト被膜の露光領域がアルカリ現像液に易溶性となる現象を利用したものである。
【0006】
ところで、従来の化学増幅型感放射線性組成物の多くは、フェノール系樹脂をベースにするものであるが、このような樹脂の場合、芳香環に起因して遠紫外線が吸収されるため、露光された放射線がレジスト被膜の下層部まで十分に到達できないという欠点があり、そのため露光量がレジスト被膜の上層部では多く、下層部では少なくなり、現像後のレジストパターンが上部で細く下部にいくほど太い台形状になってしまい、十分な解像度が得られない等の問題があった。その上、現像後のレジストパターンが台形状となった場合、その次の工程、即ちエッチングやイオンの打ち込み等を行う際に、所望の寸法精度が達成できず、問題となっていた。しかも、レジストパターン上部の形状が矩形でないと、ドライエッチングによるレジストの消失速度が速くなってしまい、エッチング条件の制御が困難になる問題もあった。
【0007】
レジストパターンの形状は、感放射線性樹脂組成物の放射線の透過率を高くすることにより改善することができる。例えば、ポリメチルメタクリレートに代表される(メタ)アクリレート系樹脂は、遠紫外線に対しても透明性が高く、放射線の透過率の観点から非常に好ましい樹脂であり、メタクリレート系樹脂を使用した化学増幅型感放射線性樹脂組成物が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この組成物は、微細加工性能の点では優れているものの、芳香環をもたないため、ドライエッチング耐性が低いという欠点があり、この場合も高精度のエッチング加工を行うことが困難であり、放射線の透過率に加えて、ドライエッチング耐性にも優れた化学増幅型感放射線性樹脂組成物の開発が望まれている。
【0008】
一方、遠紫外線に対する透明性を損なわないで、ドライエッチング耐性を改善させるためには、芳香環の代わりに脂環式基を導入する方法が知られており、例えば、脂環式基を有する(メタ)アクリレート系樹脂を使用した化学増幅型感放射線性樹脂組成物が提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
しかしながら、半導体分野において、より高い集積度が求められるようになると、レジストである感放射線性樹脂組成物はより優れた解像度が必要とされるようになってきた。また、同時により微細化が進むにつれて、パターンのラインエッジラフネスを低減する要求もますます強まってきた。また微細化に伴い、プロセス条件に対するマージン、例えばパターンの粗密依存性(dense/iso bias)の低減も要求された。半導体産業における微細化の進歩につれ、このような解像度の優れる、パターンラインエッジラフネスの小さい、並びにパターン粗密依存性の小さいような条件を満たす感放射線性樹脂組成物の開発が急務になっている。
【0010】
【特許文献1】特公平2−27660号公報
【特許文献2】特開平4−226461号公報
【特許文献3】特開平7−234511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、放射線に対する透明性が高く、しかも感度、解像度、ドライエッチング耐性、パターン形状等のレジストとしての基本物性に優れ、解像性能が高く、パターンのラインエッジラフネスが小さい感放射線性樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、樹脂に特定の末端基を導入することにより樹脂を感放射線性酸発生剤とともにレジストとして使用した場合に、レジストとしての基本特性に優れ、特にラインエッジラフネスが改良されることを見出したことに基づくものである。即ち、本発明により、以下の感放射線性樹脂組成物が提供される。
【0013】
(A)分子鎖の少なくとも一方の末端に下記一般式(1)で表される基を有し、かつアルカリ難溶性あるいは不溶性であり、酸の作用によりアルカリ易溶性となる樹脂、及び(B)感放射線性酸発生剤を含有する感放射線性樹脂組成物。
【0014】
【化1】

〔式(1)中、−X−は−S−R1−で表される2価の基を示し、R1は置換基を有することができる炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。〕
【0015】
本発明において、前記樹脂が下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0016】
【化2】

〔式(2)中、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3、R4及びR5は、以下の(i)又は(ii)の条件を満たす基である。
(i)R3、R4及びR5は、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体、又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示し、この中の少なくとも1つは炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。
(ii)R3、R4及びR5のいずれか2つが互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子も含めて炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体を形成し、残りの1つが炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体、又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。〕
【0017】
本発明において、前記樹脂が下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有することも好ましい。
【0018】
【化3】

〔式(3)中、R6は水素原子又はメチル基を示し、R7は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシ基を表す。〕
【0019】
また本発明において、感放射線性樹脂組成物が、(C)酸拡散制御剤を更に含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記(A)成分及び(B)成分を含有するため、特に(A)成分として特定の末端基を有する樹脂を含有するため、レジスト基本性能である解像度、パターンプロファイル、ラインエッジラフネス(LER)特性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0022】
[(A)樹脂成分]
(A)成分である樹脂(以下、「樹脂(A)」という)は、その分子鎖の一方あるいは両方の末端に下記一般式(1)で表される基(以下「末端基(1)という」)を有する。
【0023】
【化4】

〔式(1)中、−X−は−S−R1−で表される2価の基を示し、R1は置換基を有することができる炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。〕
【0024】
一般式(1)において、R1の炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、2,3−ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基;エチリデン基、プロピリデン基、i−プロピリデン基、ブチリデン基、ペンチリデン基、ヘキシリデン基等のアルキリデン基;1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,2−シクロヘプチレン基、1,3−シクロヘプチレン基、1,4−シクロヘプチレン基等のシクロアルキレン基;1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、2,3−トリレン基、2,4−トリレン基、2,5−トリレン基、1,4−ナフチレン基等のアリーレン基;o−キシリレン基、m−キシリレン基、p−キシリレン基等のアラルキレン基等を挙げることができる。
【0025】
また、これらの炭化水素基に対する置換基としては、例えば、−CN、−OH、−C(=O)R(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)、−OR(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)等を挙げることができる。ここで、各Rの炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。これらの置換基は、前記炭化水素基の適宜の位置に存在することができる。
【0026】
末端基(1)の好ましい具体例としては、後述する連鎖移動剤由来の残基が挙げられる。即ち、後述する一般式(5)で示される化合物の好ましい具体例が連鎖移動剤として働き、末端基を形成する場合の末端基が挙げられる。
【0027】
また、樹脂(A)は、アルカリ難溶性あるいは不溶性であり、酸の作用によりアルカリ易溶性となる。このような特性を有することにより、(B)成分である感放射線性酸発生剤と組み合わせることにより、レジスト材料として好適に用いることができる。
【0028】
ここで、「アルカリ難溶性あるいは不溶性」とは、樹脂(A)を含有する本発明の感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト皮膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像処理条件下で、当該レジスト被膜の代わりに、樹脂(A)のみから形成された被膜を現像処理した場合に、当該被膜の初期膜厚の50%以上が現像処理後に残存する性質を意味する。また、「酸の作用によりアルカリ易溶性となる」とは、樹脂(A)を含有する本発明の感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト皮膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像処理条件下で、酸の作用後、溶解樹脂(A)のみから形成された皮膜を現像処理した場合に当該皮膜の初期膜圧の90%以上が現像処理後に消失する性質を意味する。
【0029】
以上のように樹脂(A)が、アルカリ難溶性あるいは不溶性であり、酸の作用によりアルカリ易溶性となる特性を有し、かつ末端基(1)を有することにより、後述の(B)成分である感放射線性酸発生剤と組み合わせて、解像度、パターンプロファイル、ラインエッジラフネス(LER)特性に非常に優れた感放射線性樹脂組成物とすることができる。
【0030】
アルカリ難溶性あるいは不溶性であり、酸の作用によりアルカリ易溶性となる特性を好適に示す好ましい樹脂として、例えば、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(2)」という)を有する樹脂が挙げられ、樹脂(A)が繰り返し単位(2)を有することが好ましい。
【0031】
【化5】

〔式(2)中、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3、R4及びR5は、以下の(i)又は(ii)の条件を満たす基である。
(i)R3、R4及びR5は、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体、又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示し、この中の少なくとも1つは炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。
(ii)R3、R4及びR5のいずれか2つが互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子も含めて炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体を形成し、残りの1つが炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体、又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。〕
【0032】
一般式(2)におけるR3、R4及びR5の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。また、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体の具体例としては、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、テトラシクロ[4.4.0.12,6.17,10]ドデカン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン、又はこれらの誘導体に由来する炭化水素基が挙げられる。
【0033】
繰り返し単位(2)を与える単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸−2−メチルアダマンタン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メチル−3−ヒドロキシアダマンタン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルアダマンタン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルエステル、(メタ)アクリル酸−8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルエステル、(メタ)アクリル酸−1−メチルシクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−エチルシクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−メチルシクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−1−エチルシクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−メチル−テトラシクロ [6.2.1.13,6.02,7.]ドデカ−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−エチル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7.]ドデカ−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−1−シクロヘキシル−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−テトラシクロ [6.2.1.13,6.02,7.]ドデカ−4−イル−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−アダマンタン−1−イル−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−(2(3)−ヒドロキシシクロペンチル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−(3(4)−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−(3(4)−ヒドロキシシクロへプチル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1,1−ジシクロヘキシルエチルエステル、1,1−ジビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1,1−ジトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1,1−ジ(テトラシクロ [6.2.1.13,6.02,7.]ドデカ−4−イル)エチルエステル、(メタ)アクリル酸−1,1−ジアダマンタン−1−イルエチルエステル等が挙げられる。
【0034】
樹脂(A)が一般式(3)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3)」という)を有することが好ましい。このような繰り返し単位を有することにより、解像性能が向上する傾向にある。
【0035】
【化6】

〔式(3)中、R6は水素原子又はメチル基を示し、R7は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシ基を表す。〕
【0036】
一般式(3)のR7における炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0037】
繰り返し単位(3)を与える単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナ−2−イルエステル等が挙げられる。
【0038】
以上のように樹脂(A)が、末端基(1)、繰り返し単位(2)及び(3)を総て有することにより、後述の(B)成分である感放射線性酸発生剤と組み合わせて、解像度、パターンプロファイル、ラインエッジラフネス(LER)特性に非常に優れた感放射線性樹脂組成物とすることができる。
【0039】
樹脂(A)は、繰り返し単位(2)及び(3)に加えて、その他の繰り返し単位を含むことができる。その他の繰り返し単位を与えるモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチルエステル、1−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシメチルエステル、1−(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピルエステル、1−(メタ)アクリル酸−1−フロオロ−1−ヒドロキシメチルエステル、1−(メタ)アクリル酸−1,1−フルオロ−1−ヒドロキシメチルエステル、1−(メタ)アクリル酸−1,2−ジフルオロ−2−ヒドロキシメチルエステル、1−(メタ)アクリル酸−1,1,2,2−テトラフルオロ−2−ヒドロキシメチルエステル、1−(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシエチルエステル、1−(メタ)アクリル酸−2,2−ジトリフルオロメチル−2−ヒドロキシエチルエステル;
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシアダマンタン−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5(6)−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−9(10)−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7.]ドデカ−4−イル、(メタ)アクリル酸カルボキシルメチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−カルボキシルエチルエステル、(メタ)アクリル酸−3−カルボキシルプロピルエステル、(メタ)アクリル酸−3−カルボキシアダマンタン−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5(6)−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−9(10)−カルボキシテトラシクロ [6.2.1.13,6.02,7.]ドデカ−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸シアノメチルエステル、1−(メタ)アクリル酸−2−シアノエチルエステル、1−(メタ)アクリル酸−3−シアノプロピルエステル、(メタ)アクリル酸−3−シアノアダマンタン−1−イル、(メタ)アクリル酸−5(6)−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−9(10)−シアノテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7.]ドデカ−4−イルエステル、;
(メタ)アクリル酸−t−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メチル−2−プロピルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メチル−2−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチル−2−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−3−エチル−3−ブチルエステル;
(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸n−プロピルエステル、(メタ)アクリル酸シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸アダマンタン−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−7,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルエステル、(メタ)アクリル酸テトラシクロ [6.2.1.13,6.02,7.]ドデカ−4−イルエステル;
(メタ)アクリル酸−7−オキソ−6−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシカルボニル−7−オキソ−6−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−オキソテトラヒドロピラン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−メチル−2−オキソテトラヒドロピラン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−エチル−2−オキソテトラヒドロピラン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−プロピル−2−オキソテトラヒドロピラン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2,2−ジメチル−5−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4,4−ジメチル−5−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4,4−ジメチル−2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5,5−ジメチル−2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5−オキソテトラヒドロフラン−2−イルメチルエステル、(メタ)アクリル酸−3,3−ジメチル−5−オキソテトラヒドロフラン−2−イルメチルエステル、(メタ)アクリル酸−4,4−ジメチル−5−オキソテトラヒドロフラン−2−イルメチルエステル等が挙げられる。
【0040】
その他の繰り返し単位は、繰り返し単位(2)、(3)及びその他の繰り返し単位の合計量に対し60モル%以下、樹脂(A)中に含むことができる。
【0041】
樹脂(A)は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(2)を10〜80モル%、更には20〜70モル%、特には30〜65モル%有することが好ましい。また、繰り返し単位(3)を10〜60モル%、更には20〜55モル%、特には30〜50モル%有することが好ましい。また、その他の繰り返し単位を0〜50モル%、更には0〜40モル%、特には5〜30モル%有することが好ましい。繰り返し単位(2)の含有率が低すぎると解像性が劣化する傾向にあり、高すぎると現像性が低下する傾向にある。繰り返し単位(3)の含有率が高すぎると樹脂が溶剤に対して不溶性になる傾向にある。
【0042】
樹脂(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求めたポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは3,000〜50,000、更に好ましくは5,000〜30,000、特に好ましくは5,000〜10,000である。樹脂(A)のMwが小さすぎると、露光部と未露光部とのアルカリ溶解速度の差が小さくなり、解像度が低下する傾向があり、一方Mwが大きすぎると、露光部のアルカリ溶解速度が低くなって、感度が低下する傾向がある。また、樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求めたMwとポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」という。)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜4である。樹脂のMw/Mnが1〜6の範囲外の場合には、現像性及び解像度が低下する傾向がある。
【0043】
樹脂(A)は通常、ラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合により製造することができる。例えば、アルカリ難溶性あるいは不溶性であり、酸の作用によりアルカリ易溶性となる特性を与える単量体、好ましくは繰り返し単位(2)を与える単量体、更に好ましくは繰り返し単位(2)及び(3)を各々与える単量体を、一般式(1)で表される基を有する連鎖移動剤(以下「連鎖移動剤(1)」という)の存在下で、ラジカル重合開始剤により重合することにより、下記一般式(4)に示すような樹脂(A)を得ることができる。
【0044】
【化7】

〔式(4)中、R’はラジカル重合開始剤由来の残基又は連鎖移動剤(1)由来の残基を示し、XはS−R1で表される2価の基を示し、R1は置換基を有することができる炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。〕
【0045】
好ましい連鎖移動剤(1)としては、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化8】

〔R1は置換基を有することができる炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。〕
【0047】
一般式(5)で表される化合物の好ましい具体例としては下記式(5−1)〜(5−8)で示される化合物が挙げられる。
【0048】
【化9】

【0049】
上述のような重合方法において用いられる好ましいラジカル開始剤としては、熱重合開始剤、レドックス重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられる。具体的にはパーオキシドやアゾ化合物等の重合開始剤が挙げられ、更に具体的には、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(MAIB)等が挙げられる。
【0050】
このような重合方法におけるラジカル重合開始剤と連鎖移動剤とのモル比は、好ましくは(1:1)〜(0.005:1)、更に好ましくは(1:1)〜(0.1:1)である。連鎖移動剤の量がラジカル重合開始剤の量以上であることにより、樹脂(A)のMwを好適な範囲に制御できるとともに、好適な量の末端基(1)を樹脂(A)に導入することができる。
【0051】
ラジカル重合開始剤の単量体に対する添加量は、単量体100モルに対して1〜10モルであることが好ましく、3〜6モルであることが更に好ましい。添加量が少なすぎると高分子量体が得られ、多すぎると分子量のコントロールが難しくなる。連鎖移動剤の単量体に対する添加量は、単量体100モルに対して1〜20モルであることが好ましく、3〜10モルであることが更に好ましい。添加量が少なすぎると末端をコントロールすることが難しくなり、多すぎると分子量のコントロールが難しくなる。
【0052】
重合操作については通常のバッチ重合、滴下重合などの方法で合成できる。重合溶媒は単量体、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤を溶解できる有機溶剤が用いられる。有機溶剤としてケトン系溶剤、エーテル系溶剤、非プロトン系極性溶剤、エステル系溶剤、芳香族系溶剤、線状又は環状脂肪族系溶剤が挙げられる。ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトンなどが挙げられる。エーテル系溶剤としてはアルコキシアルキルエーテル、例えば、メトキシメチルエーテル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。非プロトン系極性溶剤はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキサイドなどが挙げられる。エステル系溶剤は酢酸アルキル、例えば酢酸エチル、酢酸メチルなどが挙げられる。芳香族系溶剤はアルキルアリール溶剤、例えばトルエン、キシレン、及びハロゲン化芳香族溶剤、例えばクロロベンゼンなどが挙げられる。脂肪族系溶剤はヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0053】
重合温度は20〜120℃、好ましくは50〜110℃、更に好ましくは60〜100℃である。通常の大気雰囲気でも重合できる場合もあるが、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下での重合が好ましい。重合時間は一般に0.5〜144時間、好ましくは1〜72時間、より好ましくは2〜24時間である。
【0054】
[(B)感放射線性酸発生剤成分]
本発明において使用される感放射線性酸発生剤は、露光により酸を発生する化合物であり、この酸の作用によって、樹脂(A)に存在する特定の基が解離し、その結果レジスト被膜の露光部がアルカリ現像液に易溶性となり、レジストパターンを形成することができる。
【0055】
酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物等を挙げることができる。
【0056】
前記オニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩(但し、テトラヒドロチオフェニウム塩を含む。)、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等を挙げることができる。
【0057】
また、前記スルホンイミド化合物としては、例えば、下記一般式(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0058】
【化10】

〔式(6)中、Qは2価の有機基を示し、R8は1価の有機基を示す。〕
【0059】
一般式(6)において、Qとしては、例えば、メチレン基、炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数7〜20のアラルキレン基、ジフルオロメチレン基、炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のパーフルオロアルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、ノルボルナン骨格を有する2価の基や、これらの基に炭素数6以上のアリール基や炭素数1以上のアルコキシ基が置換基として結合した基等を挙げることができる。
【0060】
また、R8としては、例えば、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のパーフルオロアルキル基、炭素数3〜10のパーフルオロシクロアルキル基、炭素数7〜15の1価のビシクロ環含有炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基等を挙げることができる。
【0061】
他の酸発生剤としては、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物及びジアゾメタン化合物の群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0062】
特に好ましい他の酸発生剤としては、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2,4−ジフルオロベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム4−トリフルオロベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2,4−ジフルオロメチルベンゼンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{(5−メチル−5−カルボキシメタンビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)スルホニルオキシ}スクシンイミドを挙げることができる。
【0063】
上述したような感放射線性酸発生剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。感放射線性酸発生剤の使用量は、レジストとしての感度及び現像性を確保する観点から、樹脂(A)100質量部に対して、通常、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部である。感放射線性酸発生剤の使用量が0.1質量部未満では、感度及び現像性が低下し、また10質量部を超えると、放射線の透過率が低下して、矩形のレジストパターンを得られ難くなる傾向がある。
【0064】
[(C)酸拡散抑制剤成分]
感放射線性樹脂組成物が、感放射線性酸発生剤から発生する酸の拡散を抑制する酸拡散抑制剤を添加することにより、レジストパターンの側壁の垂直性をより効果的に改善することができる。また、このような酸拡散制御剤を配合することにより、感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上するとともに、レジストとしての解像度が更に向上し、また露光から現像処理までの引き置き時間(PED)の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、その結果、プロセス安定性に極めて優れた感放射線性樹脂組成物となり得る。
【0065】
このような酸拡散制御剤としては、レジストパターンの形成工程中の露光や加熱処理により塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。含窒素有機化合物としては、例えば、下記一般式(7)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」という。)、同一分子内に窒素原子を2個有するジアミノ化合物(以下、「含窒素化合物(II)」という。)、アミド基含有化合物、含窒素複素環式化合物等を挙げることができる。
【0066】
【化11】

〔式(7)中、各R9は相互に独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの各基は置換されていてもよい。〕
【0067】
一般式(7)において、R9の置換されていてもよいアルキル基としては、例えば、炭素数1〜15、好ましくは1〜10のもの、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、テキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等を挙げることができる。
【0068】
また、R9の置換されていてもよいアリール基としては、例えば、炭素数6〜12のもの、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、1−ナフチル基等を挙げることができる。
【0069】
また、R9の置換されていてもよいアラルキル基としては、例えば、炭素数7〜19、好ましくは7〜13のもの、具体的には、ベンジル基、α−メチルベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基等を挙げることができる。
【0070】
含窒素化合物(I)の具体例としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、1−ナフチルアミン等の芳香族アミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類等を挙げることができる。
【0071】
また、含窒素化合物(II)の具体例としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等を挙げることができる。
【0072】
また、アミド基含有化合物の具体例としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0073】
また、含窒素複素環式化合物の具体例としては、例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール等のイミダゾール類;ピリジン、キノリン、8−オキシキノリン、アクリジン等のピリジン類の他、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン等を挙げることができる。
【0074】
更に、含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する化合物を用いることもできる。酸解離性基を有する含窒素有機化合物としては、例えば、N−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン、N−(t−ブトキシカルボニル)イミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)ベンズイミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)2フェニルベンズイミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)ジオクチルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン等を挙げることができる。
【0075】
これらの含窒素有機化合物のうち、含窒素化合物(I)、含窒素化合物(II)、含窒素複素環式化合物等が好ましい。これらの酸拡散制御剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0076】
酸拡散制御剤の配合量は、(B)酸解離性基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、更に好ましくは0.001〜10質量部、特に好ましくは0.005〜5質量部である。この場合、酸拡散制御剤の配合量を0.001質量部以上とすることにより、プロセス条件によってレジストとしてのパターン形状や寸法忠実度が低下することを抑制でき、また15質量部以下とすることにより、レジストとしての感度や露光部の現像性を向上させることができる。
【0077】
[その他の添加剤]
−溶解制御剤−
感放射線性樹脂組成物には、酸の作用により、アルカリ現像液に対する溶解性が高くなる性質を有する溶解制御剤を配合することもできる。このような溶解制御剤としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する化合物や、該化合物中の酸性官能基の水素原子をを酸解離性基で置換した化合物等を挙げることができる。前記溶解制御剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。溶解制御剤の配合量は、感放射線性樹脂組成物中の全樹脂成分100質量部に対し、通常、10質量部以下、好ましくは5質量部以下である。
【0078】
−界面活性剤−
感放射線性樹脂組成物には、感放射線性樹脂組成物の塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す界面活性剤を配合することもできる。このような界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又は両性の界面活性剤のいずれでも使用することができるが、好ましくはノニオン系界面活性剤である。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類の他、以下商品名で、「KP」(信越化学工業製)、「ポリフロー」(共栄社油脂化学工業製)、「エフトップ」(トーケムプロダクツ製)、「メガファック」(大日本インキ化学工業製)、「フロラード」(住友スリーエム製)、「アサヒガード」及び「サーフロン」(旭硝子製)等の各シリーズ等を挙げることができる。界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。界面活性剤の配合量は、感放射線性樹脂組成物中の全樹脂成分100質量部に対し、界面活性剤の有効成分として、通常、2質量部以下、好ましくは1.5質量部以下である。
【0079】
−増感剤−
感放射線性樹脂組成物には、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを感放射線性酸発生剤に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を有し、感放射線性樹脂組成物の見掛けの感度を向上させることができる増感剤を配合することもできる。このような増感剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等を挙げることができる。これらの増感剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。増感剤の配合量は、感放射線性樹脂組成物中の全樹脂成分100質量部に対して、通常、50質量部以下、好ましくは30質量部以下である。
【0080】
更に、感放射線性樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、前記以外の添加剤、例えば、染料、顔料、接着助剤や、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤、形状改良剤等、具体的には4−ヒドロキシ−4’−メチルカルコン等を配合することもできる。この場合、染料や顔料を配合することにより、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和でき、また接着助剤を配合することにより、基板との接着性を改善することができる。
【0081】
組成物溶液の調製
感放射線性樹脂組成物は、通常、使用時に各成分を溶剤に溶解して均一溶液とし、その後必要に応じて、例えば孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することにより、組成物溶液として調製される。
【0082】
ここで用いられる溶剤としては、例えば、エーテル類、エステル類、エーテルエステル類、ケトン類、ケトンエステル類、アミド類、アミドエステル類、ラクタム類、ラクトン類、(ハロゲン化)炭化水素類等を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、酢酸エステル類、ヒドロキシ酢酸エステル類、乳酸エステル類、アルコキシ酢酸エステル類、(非)環式ケトン類、アセト酢酸エステル類、ピルビン酸エステル類、プロピオン酸エステル類、N,N−ジアルキルホルムアミド類、N,N−ジアルキルアセトアミド類、N−アルキルピロリドン類、γ−ラクトン類、(ハロゲン化)脂肪族炭化水素類、(ハロゲン化)芳香族炭化水素類等を挙げることができる。
【0083】
溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、イソプロペニルアセテート、イソプロペニルプロピオネート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を挙げることができる。
【0084】
これらの溶剤のうち、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、2−ヘプタノン、乳酸エステル類、2−ヒドロキシプロピオン酸エステル類、3−アルコキシプロピオン酸エステル類等が、塗布時の膜面内均一性が良好となるの点で好ましい。溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0085】
また必要に応じて、上述した溶剤とともに、他の溶剤、例えば、ベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等の高沸点溶剤等を使用することができる。これらの他の溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。他の溶剤を使用割合は、全溶剤に対して、通常、50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。
【0086】
溶剤の合計使用量は、溶液の全固形分濃度が、通常、5〜50質量%、好ましくは10〜50質量%、更に好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%、就中10〜25質量%となる量である。溶液の全固形分濃度をこの範囲とすることにより、塗布時の膜面内均一性が良好となる点で好ましい。
【0087】
レジストパターンの形成
レジストパターンは以下のような方法により感放射線性樹脂組成物から形成することができる。上述のようにして調製された組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆されたウエハー等の基板上に塗布することにより、レジスト被膜を形成する。その後、場合により予め加熱処理(以下、「PB」という。)を行ったのち、所定のマスクパターンを介して、該レジスト被膜に露光する。
【0088】
露光の際に使用することができる放射線としては、使用される(A)酸発生剤の種類に応じて、水銀灯の輝線スペクトル(波長254nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、F2エキシマレーザー(波長157nm)、EUV(波長13nm等)等の遠紫外線や、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線等を挙げることができ、好ましくは遠紫外線及び荷電粒子線であり、特に好ましくは、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー及び電子線である。
【0089】
また、放射線量等の露光条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成、添加剤の種類等に応じて適宜選定される。また、レジストパターンの形成に際しては、露光後に加熱処理(以下、この加熱処理を「PEB」という。)を行うことが、レジストの見掛けの感度を向上させる点で好ましい。PEBの加熱条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成、添加剤の種類等により変わるが、通常、30〜200℃、好ましくは50〜150℃である。
【0090】
その後、露光されたレジスト被膜をアルカリ現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。アルカリ現像液としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水、アルキルアミン類、アルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の1種以上を溶解したアルカリ性水溶液が使用され、特に好ましいアルカリ現像液は、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類の水溶液である。
【0091】
また、前記アルカリ性水溶液の濃度は、好ましくは10質量%以下、更に好ましくは1〜10質量%、特に好ましくは2〜5質量%である。この場合、アルカリ性水溶液の濃度を10質量%以下とすることにより、非露光部の現像液への溶解を抑制することができる。また、前記アルカリ性水溶液からなる現像液には、界面活性剤等を適量添加することが好ましく、それによりレジストに対する現像液の濡れ性を高めることができる。なお、前記アルカリ性水溶液からなる現像液で現像した後は、一般に、水で洗浄して乾燥する。
【実施例】
【0092】
以下、本発明の実施例を示して、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0093】
Mwは東ソー(株)製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0094】
[合成例1]
下記に示す化合物(8−1)53.92g(50モル%)、化合物(8−2)10.69g(10モル%)、化合物(8−3)35.38g(40モル%)を2−ブタノン187gに溶かし、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.24g、3−ヒドロキシ−1−プロパンチオール3.5gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、三口フラスコ内を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。
【0095】
ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー状として洗浄した後ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、末端に−S−CH2−CH2−OH基を有する白色粉末の樹脂を得た(72g、収率72%)。IR測定を行った結果、3300cm-1の吸収が確認された。この樹脂はMwが7400であり、13C−NMR分析の結果、化合物(8−1)、化合物(8−2)、化合物(8−3)から形成される各繰り返し単位の含有率が52.2:8.6:39.2(モル%)の共重合樹脂であった。この樹脂を樹脂(A−1)とする。
【0096】
【化12】

【0097】
[合成例2]
下記に示す化合物(9−1)24.31g(50モル%)、化合物(9−2)7.75g(15モル%)、化合物(9−3)17.94g(35モル%)を2−ブタノン150gに更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.01g、3−ヒドロキシ−1−プロパンチオール1.75gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、三口フラスコ内を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。
【0098】
ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー状として洗浄した後ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、末端に−S−CH2−CH2−OH基を有する白色粉末の樹脂を得た(38g、収率88%)。IR測定を行った結果、3300cm-1の吸収が確認された。この樹脂はMwが7200であり、13C−NMR分析の結果、化合物(9−1)、化合物(9−2)、化合物(9−3)から形成される各繰り返し単位の含有率が52.1、13.6、34.3(モル%)の共重合樹脂であった。この樹脂を樹脂(A−2)とする。
【0099】
【化13】

【0100】
[合成例3]
下記に示す化合物(10−1)24.62g(50モル%)、化合物(10−2)5.77g(37モル%)、化合物(10−3)19.61g(13モル%)を2−ブタノン150gに溶解させ、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.04g、3−ヒドロキシ−1−プロパンチオール1.75gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、三口フラスコ内を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。
【0101】
ろ別された白色粉末を2度2000gのイソプロピルアルコールにてスラリー状として洗浄した後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、末端に−S−CH2−CH2−OH基を有する白色粉末の樹脂を得た(85g、収率85%)。IR測定を行った結果、3300cm-1の吸収が確認された。この樹脂はMwが6200であり、13C−NMR分析の結果、化合物(10−1)、化合物(10−2)、化合物(10−3)から形成される各繰り返し単位の含有率が54.1:31.9:13.9(モル%)の共重合樹脂であった。この樹脂を樹脂(A−3)とする。
【0102】
【化14】

【0103】
[比較合成例1]
上記化合物(8−1)53.92g(50モル%)、化合物(8−2)10.69g(10モル%)、化合物(8−3)35.38g(40モル%)を2−ブタノン187gに溶かし、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.24gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、三口フラスコ内を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。
【0104】
ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー状として洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(72g、収率72%)。この重合体はMwが8500であり、13C−NMR分析の結果、化合物(8−1)、化合物(8−2)、化合物(8−3)から形成される各繰り返し単位の含有率が52.2:8.0:39.8(モル%)の共重合体であった。この重合体を重合体(A’−1)とする。
【0105】
[比較合成例2]
上記化合物(9−1)24.31g(50モル%)、化合物(9−2)7.75g(15モル%)、化合物(9−3)17.94g(35モル%)を2−ブタノン150gに更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.01g単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、三口フラスコ内を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。
【0106】
ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー状とし洗浄した後ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の樹脂を得た(38g、収率88%)。この樹脂はMwが8200であり、13C−NMR分析の結果、化合物(9−1)、化合物(9−2)、化合物(9−3)から形成される各繰り返し単位の含有率が52.1、13.6、34.3(モル%)の共重合樹脂であった。この樹脂を樹脂(A’−2)とする。
【0107】
[比較合成例3]
上記化合物(10−1)24.62g(50モル%)、化合物(10−2)5.77g(37モル%)、化合物(10−3)19.61g(13モル%)を2−ブタノン150gに溶解させ、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.04gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、三口フラスコ内を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。
【0108】
ろ別された白色粉末を2度2000gのイソプロピルアルコールにてスラリー状として洗浄した後ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の樹脂を得た(85g、収率85%)。この樹脂はMwが6200であり、13C−NMR分析の結果、化合物(10−1)、化合物(10−2)、化合物(10−3)から形成される各繰り返し単位の含有率が54.1:31.9:13.9(モル%)の共重合樹脂であった。この樹脂を樹脂(A’−3)とする。
【0109】
[実施例1〜3及び比較例1〜3]
合成例1〜3及び比較合成例1〜3で得られた各樹脂と、以下に示す酸発生剤と、他の成分とを表1に示す割合で配合して均一溶液としたのち、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過して、実施例1〜3及び比較例1〜3の各組成物溶液を調製した。得られた感放射線性樹脂組成物溶液を表2に示す条件にて露光して各種評価を行った。評価結果を表3に示す。ここで、部は、特記しない限り質量基準である。
【0110】
[酸発生剤(B)]
(B−1):トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
[酸拡散制御剤(C)]
(C−1):2−フェニルベンズイミダゾール
[溶剤(D)]
(D−1):プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
(D−2):シクロヘキサノン
【0111】
[評価方法]
(1)感度:
ウエハー表面に膜厚770オングストロームのARC29(Brewer Science社製)膜を形成したシリコンウエハー(ARC29)を用い、各組成物溶液を、基板上にスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、表2に示す条件でPBを行って形成した膜厚0.25μmのレジスト被膜に、ニコン製ArFエキシマレーザー露光装置(開口数0.75)を用い、マスクパターンを介して露光した。その後、表2に示す条件でPEBを行ったのち、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、25℃で60秒間現像し、水洗、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、線幅0.11μmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度とした。
【0112】
(2)解像度:
最適露光量で解像される最小のライン・アンド・スペースパターンの寸法を解像度とした。
【0113】
(3)パターンプロファイル:
線幅0.16μmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)の方形状断面の下辺寸法L1と上辺寸法L2とを走査型電子顕微鏡により測定し、0.85≦L2/L1≦1を満足し、かつパターンプロファイルが裾を引いていない場合を、パターンプロファイルが”良好”であるとした。
【0114】
(4)ラインエッジラフネス(LER):
最適露光量にて解像した110nm1L/1Sパターンの観測において、日立製測長SEM:S9220にてパターン上部から観察する際、線幅を任意のポイントで観測し、その測定ばらつきを3シグマで評価した。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
表3に示すように、実施例1〜3において、レジスト基本性能である解像度、パターンプロファイル、ラインエッジラフネス(LER)特性に優れた感放射線性樹脂組成物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、レジストとしての基本性能に優れ、特にラインエッジラフネス(LER)特性に優れているので、これから更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用の化学増幅型レジストとして極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖の少なくとも一方の末端に下記一般式(1)で表される基を有し、かつアルカリ難溶性あるいは不溶性であり、酸の作用によりアルカリ易溶性となる樹脂、及び
(B)感放射線性酸発生剤
を含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】

〔式(1)中、XはS−R1で表される2価の基を示し、R1は置換基を有することができる炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。〕
【請求項2】
前記樹脂が下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化2】

〔式(2)中、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3、R4及びR5は、以下の(i)又は(ii)の条件を満たす基である。
(i)R3、R4及びR5は、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体、又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示し、この中の少なくとも1つは炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。
(ii)R3、R4及びR5のいずれか2つが互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子も含めて炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体を形成し、残りの1つが炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基もしくはその誘導体、又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。〕
【請求項3】
前記樹脂が下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する請求項1又は2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化3】

〔式(3)中、R6は水素原子又はメチル基を示し、R7は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシ基を表す。〕
【請求項4】
(C)酸拡散制御剤を含有する請求項1〜3の何れかに記載の感放射線性樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−126350(P2006−126350A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312637(P2004−312637)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】