説明

感放射線性組成物、絶縁膜の形成方法、絶縁膜及び固体撮像素子

【課題】CCD、CMOS等の固体撮像素子における光電変換部の実装に用いられる絶縁膜の形成に好適に用いられる感放射線性組成物、絶縁膜の形成方法、絶縁膜及び固体撮像素子を提供する。
【解決手段】本発明の感放射線性樹脂組成物は、黒色剤と、フェノール性水酸基を有する重合体と、感放射線性酸発生剤と、酸の作用により架橋反応が進行する架橋剤と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性組成物、絶縁膜の形成方法、絶縁膜及び固体撮像素子に関する。更に詳しくは、CCD、CMOS等の固体撮像素子における光電変換部の実装に用いられる絶縁膜の形成に好適に用いられる感放射線性組成物、絶縁膜の形成方法、絶縁膜及び固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD、CMOS等の固体撮像素子を含む固体撮像装置を備えるデジタルカメラ、ビデオカメラ、車載カメラ、撮影機能を有するパーソナルコンピュータ、携帯電話、電子手帳等の電子機器の性能が急速に向上してきた。この固体撮像素子において、暗電流の低減、ダイナミックレンジの低下防止、周辺回路の動作安定を図るとともに、画質の低下を抑制するために、固体撮像素子に含まれる光電変換部に対して、不要な光を遮ることは、一般的であり、例えば、特許文献1及び2において公知である。これらの文献においては、黒色着色剤及び樹脂を含み、固体撮像素子における光電変換部の有効画素領域(撮像部)の周縁に配置される遮光膜が開示されている。また、特許文献3には、カーボンブラックとアクリル系樹脂とアクリル系モノマーと光重合開始剤とを含有する遮光膜形成用感放射線性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−156801号公報
【特許文献2】特開2007−115921号公報
【特許文献3】特開平11−142637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記遮光膜は、通常、遮光膜形成用感放射線性組成物を用いることにより、基板(シリコン酸化膜付き基板等)に予め形成された絶縁膜の表面に対して形成していた。つまり、固体撮像素子等を製造する際には、基板上に絶縁膜を形成する工程と、この工程により形成された絶縁膜上に遮光膜を形成する工程が少なくとも必要となっていた。
そこで、更なるプロセスの簡略化(歩留まりの向上)のために、絶縁膜を形成する工程及び遮光膜を形成する工程の合理化が検討され、絶縁性及び遮光性の両方の性能を有する絶縁膜を形成可能な組成物の開発が求められている。更に、この絶縁膜には、シリコン酸化膜(SiO)及び電極等に対する密着性にも優れていることが必要である。
【0005】
本発明の目的は、感放射線性組成物、特に固体撮像素子における光電変換部の実装に用いられる絶縁膜の形成に好適であり、絶縁性、遮光性及び密着性に優れた感放射線性組成物、絶縁膜の形成方法、絶縁膜及び固体撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の通りである。
[1](A)黒色剤と、
(B)フェノール性水酸基を有する重合体と、
(C)感放射線性酸発生剤と、
(D)酸の作用により架橋反応が進行する架橋剤と、を含有することを特徴とする感放射線性組成物。
[2]前記(B)フェノール性水酸基を有する重合体が、フェノール性水酸基を有する化合物とホルミル基を有する化合物との縮合物である前記[1]に記載の感放射線性組成物。
[3]前記(B)フェノール性水酸基を有する重合体が、ヒドロキシスチレンにおける重合性不飽和結合が開裂した構造単位を有する重合体である前記[1]に記載の感放射線性組成物。
[4]前記(B)フェノール性水酸基を有する重合体として、フェノール性水酸基を有する化合物とホルミル基を有する化合物との縮合物、及び、ヒドロキシスチレンにおける重合性不飽和結合が開裂した構造単位を有する重合体を含有する前記[1]に記載の感放射線性組成物。
[5]前記(D)架橋剤は、メチロール基を含有する化合物である前記[1]に記載の感放射線性組成物。
[6]更に、(E)架橋ポリマー粒子を含有する前記[1]に記載の感放射線性組成物。
[7]固体撮像素子における光電変換部の実装に用いられる絶縁膜形成用の感放射線性組成物である前記[1]乃至[6]のいずれかに記載の感放射線性組成物。
[8]固体撮像素子における光電変換部の実装に用いられる絶縁膜の形成方法であって、
(1)電極部を備える基板上に、前記[7]に記載の感放射線性組成物からなる塗膜を形成する工程と、
(2)少なくとも前記電極部上に形成された塗膜以外の塗膜を露光する工程と、
(3)露光後の塗膜を現像する工程と、を備えることを特徴とする絶縁膜の形成方法。
[9]前記[8]に記載の絶縁膜の形成方法により形成したことを特徴とする絶縁膜。
[10]前記[1]乃至[6]のいずれかに記載の感放射線性組成物から得られたことを特徴とする絶縁膜。
[11]少なくとも、光電変換部、前記[9]に記載の絶縁膜、及び電極部を備えることを特徴とする固体撮像素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明の感放射線性組成物によれば、絶縁性、遮光性及び密着性に優れる絶縁膜を形成することができる。特に、この感放射線性組成物は、CCD、CMOS等の固体撮像素子における光電変換部の実装に用いられる絶縁膜の形成に好適に用いることができる。
本発明の絶縁膜の形成方法によれば、絶縁性、遮光性及び密着性に優れた絶縁膜を形成することができる。そのため、絶縁部と遮光部とを別々に形成する必要がなくなり、従来のプロセスを簡略化することができ、CCD、CMOS等の固体撮像素子を含む固体撮像装置を備える電子機器分野において、好適に用いることができる。
本発明の固体撮像素子は、絶縁性、遮光性及び密着性に優れる絶縁膜を備えている。そのため、CCD、CMOS等の固体撮像素子を含む固体撮像装置を備える電子機器分野において、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】絶縁膜を含む固体撮像素子の一例を示す要部断面図。
【図2】絶縁膜を含む固体撮像素子の他の例を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0010】
[1]感放射線性組成物
本発明の感放射線性組成物は、(A)黒色剤(以下、「黒色剤(A)」ともいう。)と、(B)フェノール性水酸基を有する重合体(以下、「重合体(B)」ともいう。)と、(C)感放射線性酸発生剤(以下、「酸発生剤(C)」ともいう。)と、(D)酸の作用により架橋反応が進行する架橋剤(以下、「架橋剤(D)」ともいう。)と、を含有することを特徴とする。
この感放射線性組成物は、CCD、CMOS等の固体撮像素子における光電変換部の実装に用いられる絶縁膜の形成に好適に用いることができる。
【0011】
(A)黒色剤
黒色剤(A)とは、広義には赤外線を吸収する化合物を示す。具体的には、ポリメタクリル酸(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量;50,000)100質量部に対し、黒色剤を1質量部及びメチルエチルケトンを50質量部からなる組成物を、スピンコート法により塗布し、その後、ホットプレートにて100℃で加熱することにより形成した膜厚20μmの塗膜における、波長1200nmでの光線透過率が、50%T以下となるものを示す。
前記黒色剤(A)としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄、酸化マンガン、グラファイト及び染料等が挙げられる。これらのなかでも、カーボンブラック、チタンブラックが好ましい。
【0012】
前記カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。
【0013】
また、前記カーボンブラックとしては、三菱化学社製の商品名、#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#980、#970、#960、#950、#900、#850、MCF88、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA220、IL30B、IL31B、IL7B、IL11B、IL52B、#4000、#4010、#55、#52、#50、#47、#45、#44、#40、#33、#32、#30、#20、#10、#5、CF9、#3050、#3150、#3250、#3750、#3950、ダイヤブラックA、ダイヤブラックN220M、ダイヤブラックN234、ダイヤブラックI、ダイヤブラックLI、ダイヤブラックII、ダイヤブラックN339、ダイヤブラックSH、ダイヤブラックSHA、ダイヤブラックLH、ダイヤブラックH、ダイヤブラックHA、ダイヤブラックSF、ダイヤブラックN550M、ダイヤブラックE、ダイヤブラックG、ダイヤブラックR、ダイヤブラックN760M、ダイヤブラックLP;キャンカーブ社製の商品名、サーマックスN990、N991、N907、N908、N990、N991、N908;旭カーボン社製の商品名、旭#80、旭#70、旭#70L、旭F−200、旭#66、旭#66HN、旭#60H、旭#60U、旭#60、旭#55、旭#50H、旭#51、旭#50U、旭#50、旭#35、旭#15、アサヒサーマル;デグサ社製の商品名、ColorBlack Fw200、ColorBlack Fw2、ColorBlack Fw2V、ColorBlack Fw1、ColorBlack Fw18、ColorBlack S170、ColorBlack S160、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、SpecialBlack4A、PrintexU、PrintexV、Printex140U、Printex140V等を用いることができる。
更に、特開平11−60988号公報、特開平11−60989号公報、特開平10−330643号公報、特開平11−80583号公報、特開平11−80584号公報、特開平9−124969号公報、特開平9−95625号公報、特開平9−71733号公報に開示されている樹脂被覆カーボンブラックを使用することもできる。
【0014】
前記カーボンブラックは、絶縁性を有するカーボンブラックである方が好ましい。絶縁性を有するカーボンブラックとは、下記のような方法で粉末としての体積抵抗を測定した場合、絶縁性を示す、即ち、体積抵抗値が10Ω・cm以上である、カーボンブラックのことであり、例えば、カーボンブラック粒子表面に、有機物が吸着、被覆または化学結合(グラフト化)しているなど、カーボンブラック粒子表面に有機化合物を有していることをいう。
カーボンブラックを、ベンジルメタクリレート及びメタクリル酸に由来する繰り返し構造単位を、モル比70:30で含む共重合体(重量平均分子量30,000)に対して、質量比20:80となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテル中に分散し、分散液を得る。その後、この分散液を、厚さ1.1mm、10cm×10cmのクロム基板上に塗布し、乾燥膜厚3μmの塗膜を作製する。次いで、この塗膜をオーブン中、200℃で1時間熱処理する。そして、JIS K6911に準拠している三菱化学社製の高抵抗率計(「ハイレスターUP(MCP−HT450)」)を用いて印加し、温度23℃及び相対湿度65%の条件下、体積抵抗値を測定する。
本発明において、好ましいカーボンブラックの体積抵抗値は、好ましくは10Ω・cm以上、更に好ましくは10Ω・cm以上である。
【0015】
また、前記チタンブラックとしては、TiO、TiO1.25、Ti、Ti、Ti等(Ti;1≦x≦4、1≦y≦7、y/x<1.75)の低次酸化チタン;窒化チタン;TiO(0.2<x<0.8、0.6<y<1.2)の酸窒化チタン等が挙げられる。
低次酸化チタンとしては、特公昭52−12733号公報に記載されている、二酸化チタンと金属チタン粉末とを、真空又は還元雰囲気中、550℃〜1100℃の温度で加熱して得られた化合物;特開昭64−11572号公報に記載されている、含水二酸化チタンと金属チタン粉末とを、珪素、アルミニウム、ニオブ、タングステン等を含む化合物からなる焼成処理補助剤の存在下、不活性雰囲気中で加熱して得られた化合物等が挙げられる。
また、酸窒化チタンとしては、特公平3−51645号公報、特公平2−42773号公報等に記載されている、二酸化チタンや水酸化チタンの粉末を、アンモニア存在下、550℃〜950℃程度の温度で還元して得られた化合物が挙げられる。
【0016】
また、前記チタンブラックとしては、三菱マテリアル社製の商品名、10S、12S、13M、13M−C、13R、13R−N;赤穂化成社製の商品名、TilackD超微粒子タイプ等を用いることができる。
尚、前記チタンブラックは、表面処理されたものを用いることもできる。
【0017】
前記黒色剤(A)の数平均粒子径は、分散安定性及び沈降防止の観点から、40nm以下であることが好ましく、より好ましくは5〜40nm、更に好ましくは5〜30nmである。尚、前記数平均粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定された値とすることができる。
【0018】
感放射線性組成物中の黒色剤(A)の含有量は、後述の重合体(B)を100質量部(但し、後述のフェノール性低分子化合物が配合されている場合には、重合体(B)とフェノール性低分子化合物の合計を100質量部)とした場合に、0.1〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜120質量部、更に好ましくは5〜40質量部である。黒色剤(A)の含有量が前記範囲にあると、十分な遮光性を有する絶縁膜を得ることができる。即ち、温度23℃において、波長1,000nmの光を、厚さ20μmの絶縁膜に照射した場合の透過率を、好ましくは20%T以下、より好ましくは15%T以下、更に好ましくは10%T以下とすることができる。
黒色剤(A)の含有量が200質量部より多く含まれる場合、絶縁膜の力学的な強度が十分でなくなる可能性がある。
【0019】
また、黒色剤(A)を用いる場合、黒色剤(A)を分散質とし、分散媒に分散させた黒色剤分散液として用いることが好ましい。
この分散媒としては、本発明の感放射線性組成物に利用できる後述の溶剤(G)を適用することができる。この際、溶剤(G)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、分散媒の配合量は、黒色剤(A)を100質量部とした場合に、200〜1200質量部が好ましく、300〜1000質量部がより好ましい。
【0020】
更に、黒色剤分散液には、分散剤や分散助剤等を配合することができる。この分散剤や分散助剤としては、黒色剤(A)を組成物中で安定に凝集することなく存在させることができるものであれば、特に制限されない。例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系及び両性系等のどのような形態であってもよく、更には、シリコン等の無機元素を含有するものでもよいし、重合体であってもよい。具体的には、例えば、変性アクリル系共重合体、アクリル系共重合体、ポリウレタン、ポリエステル、シランカップリング剤、高分子共重合体のアルキルアンモニウム塩又はリン酸エステル塩、カチオン性櫛型グラフトポリマー等を挙げることができる。ここで、カチオン性櫛型グラフトポリマーとは、複数の塩基性基(カチオン性の官能基)を有する幹ポリマー1分子に、2分子以上の枝ポリマーがグラフト結合した構造のポリマーをいい、例えば、幹ポリマー部がポリエチレンイミン、枝ポリマー部がε−カプロラクトンの開環重合体で構成されるポリマーが挙げられる。
これらのなかでも、変性アクリル系共重合体、ポリウレタン、カチオン性櫛型グラフトポリマー並びにシランカップリング剤であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びその加水分解縮合物が好ましい。
【0021】
また、このような分散剤や分散助剤は商業的に入手することができ、例えば、変性アクリル系共重合体として、Disperbyk−2000、Disperbyk−2001(以上、ビックケミー(BYK)社製)、ポリウレタンとして、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−165、Disperbyk−167、Disperbyk−170、Disperbyk−182(以上、ビックケミー(BYK)社製)、ソルスパース76500(ルーブリゾール(株)社製)、ソルスパース5000、ソルスパース37500、カチオン性櫛型グラフトポリマーとして、ソルスパース24000(ルーブリゾール(株)社製)、アジスパーPB821、アジスパーPB822(味の素ファインテクノ株式会社製)等を挙げることができる。
尚、これらの分散剤や分散助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
前記分散剤や分散助剤を用いる場合、前記分散剤や分散助剤の含有量は、用いられる黒色剤(A)の種類及び分散剤等の種類等の組み合わせにより適宜調整する。黒色剤(A)を100質量部とした場合に、100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5〜100質量部、更に好ましくは10〜50質量部である。前記分散剤や分散助剤の含有量が100質量部以下であれば、現像性に優れた感放射線性組成物を得ることができる。
【0023】
また、黒色剤分散液の調製方法は、例えば、黒色剤(A)を分散媒中、分散剤等の添加剤の存在下で、ディゾルバー、ロッドミル、ビーズミル、ロールミル等を用いて、粉砕混合しつつ黒色剤分散液を調製することができる。
【0024】
(B)フェノール性水酸基を有する重合体
前記重合体(B)は、フェノール性水酸基を有するものであり、アルカリ現像液により現像する場合は、アルカリ可溶性の重合体を用いる。
尚、「アルカリ可溶性」とは、2.38質量%のテトラヒドロキアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を100質量部とした場合、この水溶液に重合体(B)を10質量部以上溶解できる場合をいう。
【0025】
前記重合体(B)としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物と、ホルミル基を有する化合物との縮合物(以下、「重合体(B1)」ともいう。)を用いることができる。
前記フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール等のクレゾール類;2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール、2,3−キシレノール等のキシレノール類;m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−エチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、p−オクチルフエノール、2,3,5−トリメチルフェノール等のアルキルフェノール類;p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、3,5−ジメトキシフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、m−エトキシフェノール、p−エトキシフェノール、m−プロポキシフェノール、p−プロポキシフェノール、m−ブトキシフェノール、p−ブトキシフェノール等のアルコキシフェノール類;2−メチル−4−イソプロピルフェノール等のビスアルキルフェノール類;m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、フェニルフェノール、レゾルシノール、ナフトール等のヒドロキシ芳香化合物等が挙げられる。これらのなかでも、クレゾール類が好ましい。
尚、フェノール性水酸基を有する化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
前記ホルミル基を有する化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、フルフラール、クロロアセトアルデヒド及びこれらのアセタール体、例えば、クロロアセトアルデヒドジエチルアセタール等が挙げられる。これらのなかでも、ホルムアルデヒドが好ましい。
尚、ホルミル基を有する化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
この重合体(B1)は、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物を主成分として、酸性触媒の存在下、ホルミル基を有する化合物と付加縮合反応させることにより得ることができる。
この酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸等が挙げられる。
これらの酸性触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
また、前記重合体(B1)としては、市販のフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック樹脂を用いることもできる。
【0029】
また、前記重合体(B)としては、フェノール性水酸基を有する構造単位(b1)〔以下、単に「構造単位(b1)」ともいう。〕を含有する重合体(以下、「重合体(B2)」ともいう。)を用いることもできる(重合体(B1)を除く)。
前記構造単位(b1)は、例えば、ヒドロキシスチレン単位(即ち、ヒドロキシスチレンにおける重合性不飽和結合が開裂した単位)、イソプロペニルフェノール単位(即ち、イソプロペニルフェノールにおける重合性不飽和結合が開裂した単位)等であることが好ましく、より好ましくはヒドロキシスチレン単位である。
構造単位(b1)を形成し得る単量体としては、例えば、p−イソプロペニルフェノール、m−イソプロペニルフェノール、o−イソプロペニルフェノール、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン等のフェノール性水酸基含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、p−イソプロペニルフェノール、p−ヒドロキシスチレンが好ましい。
【0030】
また、前記構造単位(b1)は、例えば、t−ブチル基、アセタール基等でフェノール性水酸基が保護された単量体から得ることもできる。得られた重合体及び共重合体は、公知の方法、例えば、酸触媒下で脱保護することにより、フェノール性水酸基を有する構造単位に変換することができる。
前記フェノール性水酸基が保護された単量体としては、例えば、p−1−メトキシエトキシスチレン、p−1−エトキシエトキシスチレン等のアセタール基で保護されたヒドロキシスチレン類、t−ブトキシスチレン、t−ブトキシカルボニルオキシスチレン、アセトキシスチレン等が挙げられる。
尚、重合体(B2)は、構造単位(b1)を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0031】
また、本発明における前記重合体(B2)は、前記構造単位(b1)以外にも、その他の単量体に由来する構造単位(b2)〔以下、単に「構造単位(b2)」ともいう。〕を含有していてもよい。
前記構造単位(b2)を形成し得る「その他の単量体」としては、例えば、
スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレンなどのスチレン類;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸あるいはそれらの酸無水物類;
不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、i−プロピルエステル、n−ブチルエステル、i−ブチルエステル、sec−ブチルエステル、t−ブチルエステル、n−アミルエステル、n−ヘキシルエステル、シクロヘキシルエステル、2−ヒドロキシエチルエステル、2−ヒドロキシプロピルエステル、3−ヒドロキシプロピルエステル、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルエステル、ベンジルエステル、イソボロニルエステル、トリシクロデカニルエステル、1−アダマンチルエステル等のエステル類;
(メタ)アクリロニトリル、マレインニトリル、フマロニトリル、メサコンニトリル、シトラコンニトリル、イタコンニトリル等の不飽和ニトリル類;
(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、マレインアミド、フマルアミド、メサコンアミド、シトラコンアミド、イタコンアミド等の不飽和アミド類;
マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド類;
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルネン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセンなどの脂環式骨格を有する化合物;
p−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、o−ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールジビニルエーテル等のポリエチレングリコールジビニルエーテル等の架橋性単量体類;
(メタ)アリルアルコール等の不飽和アルコール類、N−ビニルアニリン、ビニルピリジン類、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
これらのなかでも、スチレン、p−メトキシスチレンが好ましい。
尚、重合体(B2)は、構造単位(b2)を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0032】
特に、前記重合体(B2)は、構造単位(b1)からなり、且つこの構造単位(b1)がヒドロキシスチレン単位を与える単量体を用いて得られる樹脂であることが好ましい。
【0033】
重合体(B)は、下記のいずれかの構成であることが好ましい。このような場合、絶縁性、遮光性及び密着性により優れた絶縁膜を形成することができる。
(1)フェノール性水酸基を有する化合物と、ホルミル基を有する化合物との縮合物、 (2)ヒドロキシスチレンにおける重合性不飽和結合が開裂した構造単位を有する重合体、
(3)フェノール性水酸基を有する化合物とホルミル基を有する化合物との縮合物、及び、ヒドロキシスチレンにおける重合性不飽和結合が開裂した構造単位を有する重合体を含有するもの。
【0034】
また、重合体(B)は、ガラス転移温度(Tg)が0℃を超えていることが好ましい。
【0035】
更に、前記重合体(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、絶縁膜の解像性、熱衝撃性、耐熱性及び残膜率等の観点から、500〜300,000であることが好ましく、より好ましくは600〜150,000、更に好ましくは1,000〜100,000である。
【0036】
重合体(B)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(C)感放射線性酸発生剤
前記酸発生剤(C)は、放射線等の照射により酸を発生する化合物である。酸発生剤(C)への放射線等の照射により発生する酸の触媒作用によって、後述の架橋剤(D)による架橋反応が生じる。
酸発生剤(C)としては、例えば、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
【0038】
前記オニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。好ましいオニウム塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフリオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0039】
前記ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物等が挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物の具体例としては、1,10−ジブロモ−n−デカン、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、スチリル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0040】
前記ジアゾケトン化合物としては、例えば、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物等が挙げられ、具体例としては、フェノール類の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0041】
前記スルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物及びこれらの化合物のα−ジアゾ化合物等が挙げられ、具体例としては、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタン等が挙げられる。
【0042】
前記スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類等が挙げられる。好ましい具体例としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルp−トルエンスルホネート等が挙げられる。
【0043】
前記スルホンイミド化合物の具体例としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等が挙げられる。
【0044】
前記ジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0045】
酸発生剤(C)としては、オニウム塩化合物が好ましく、ヒドロキシル基含有オニウム塩化合物がより好ましい。
尚、これらの酸発生剤(C)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
酸発生剤(C)の含有量は、組成物の感度、解像度、パターン形状等を確保する観点から、重合体(B)を100質量部(但し、後述のフェノール性低分子化合物が配合されている場合には、重合体(B)とフェノール性低分子化合物の合計を100質量部)とした場合に、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5質量部である。酸発生剤(C)の含有量が0.1〜10質量部である場合、感度、パターン形状の点で好ましい。
【0047】
(D)酸の作用により架橋反応が進行する架橋剤
前記架橋剤(D)は、酸の作用により架橋反応が進行するものである。具体的には、酸により反応し、架橋剤同士や他の成分(例えば重合体(B))との架橋反応を進行させて、3次元架橋構造を形成するものである。即ち、「架橋反応が進行する」とは、イオン結合や共有結合等の新たな化学結合を形成するという意味である。
【0048】
この架橋剤(D)としては、例えば、分子中に2個以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物(d1)(以下、「アミノ基含有化合物(d1)」という。);オキシラン環含有化合物(d2);オキセタニル環含有化合物(d3);イソシアネート基含有化合物(ブロック化されたものを含む。);o−ヒドロキシベンズアルデヒド等のアルデヒド基含有フェノール化合物、;2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール等のメチロール基を含有するフェノール化合物等が挙げられる。
これらのなかでも、アミノ基含有化合物(d1)及びオキシラン環含有化合物(d2)から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。また、これらのなかでも、メチロール基を含有する化合物を用いることが好ましい。
これらの架橋剤(D)は、各成分の配合組成等に応じて適宜選択して用いられる。また、架橋剤(D)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
前記アミノ基含有化合物(d1)は、例えば、(ポリ)メチロール化メラミン、(ポリ)メチロール化グリコールウリル、(ポリ)メチロール化ベンゾグアナミン、(ポリ)メチロール化ウレア等の窒素化合物中の活性メチロール基(CHOH基)の全部又は一部(少なくとも2個)がアルキルエーテル化された化合物が挙げられる。ここで、アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基又はブチル基が挙げられ、これらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、アルキルエーテル化されていないメチロール基は、一分子内で自己縮合していてもよく、二分子間で縮合して、その結果、オリゴマー成分が形成されていてもよい。具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等を用いることができる。
感放射線性組成物中に、アミノ基含有化合物(d1)を含有することにより、解像度及び耐薬品性の点で優れた絶縁膜を得られるため好ましい。
【0050】
前記オキシラン環含有化合物(d2)としては、分子内にオキシラン環が含有されていればよく、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェノール型エポキシ樹脂、フェノール−キシリレン型エポキシ樹脂、ナフトール−キシリレン型エポキシ樹脂、フェノール−ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;レゾルシノールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジル化合物等が挙げられる。
オキシラン環含有化合物(d2)を含有することにより、解像度及び耐薬品性の点で優れた絶縁膜を得られるため好ましい。
【0051】
架橋剤(D)としては、アミノ基含有化合物(d1)、オキシラン環含有化合物(d2)が好ましく、アミノ基含有化合物(d1)とオキシラン環含有化合物(d2)とを併用することもできる。また、併用する場合、合計を100質量%としたときに、オキシラン環含有化合物(d2)が50質量%以下であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。このような質量割合で併用した場合、高解像性を損なうことなく、且つ耐薬品性に優れた絶縁膜を形成することができるため好ましい。
【0052】
架橋剤(D)の含有量は、重合体(B)を100質量部(但し、後述のフェノール性低分子化合物が配合されている場合には、重合体(B)とフェノール性低分子化合物の合計を100質量部)とした場合に、1〜100質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましい。この架橋剤(D)の含有量が1〜100質量部であれば、硬化反応が十分に進行し、形成される絶縁膜は高解像度で良好なパターン形状を有し、且つ耐熱性、電気絶縁性等に優れるため好ましい。
【0053】
(E)架橋ポリマー粒子
本発明の感放射線性組成物は、架橋ポリマー粒子を更に含有していてもよい。架橋ポリマー粒子を含有する場合には、絶縁性及び密着性により優れた絶縁膜を形成することができるため好ましい。
【0054】
前記架橋ポリマー粒子は、不飽和重合性基を2個以上有する架橋性単量体(以下、単に「架橋性単量体」という。)と、架橋ポリマー粒子のTgが0℃以下となるように選択される1種又は2種以上の「他の単量体」とを共重合させた共重合体である。特に、他の単量体を2種以上併用し、且つ他の単量体のうちの少なくとも1種が、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基等の重合性基以外の官能基を有するものであることがより好ましい。
【0055】
また、この架橋ポリマー粒子のポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常、100万以上である。
更に、この架橋ポリマー粒子を20質量%の乳酸エチル溶液としたときの、溶液の曇り価(ヘイズ)は、通常、8%以上である。尚、前述の重合体(B)の20質量%の乳酸エチル溶液における曇り価は、通常、0.5%以下である。
【0056】
前記架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を複数有する化合物が挙げられる。これらのなかでも、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0057】
また、前記他の単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン等のジエン化合物;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、クロトン酸ニトリル、ケイ皮酸ニトリル、イタコン酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリル、フマル酸ジニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、ケイ皮酸アミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール等の芳香族ビニル化合物;ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、グリコールのジグリシジルエーテル等と(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等との反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアナートとの反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、コハク酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル等の不飽和酸化合物;ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和化合物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有不飽和化合物等が挙げられる。
【0058】
これらの他の単量体のなかでも、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン等のジエン化合物、イソプレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、スチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類等が好ましい。
【0059】
架橋ポリマー粒子を製造する際における、前記架橋性単量体の使用量は、共重合に用いられる単量体の合計を100質量%とした場合に、1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。
【0060】
また、架橋ポリマー粒子を製造する際において、前記ジエン化合物(特に、ブタジエン)を他の単量体として用いる場合には、ジエン化合物の使用量は、共重合に用いられる単量体の合計を100質量%とした場合に、20〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜70質量%である。ジエン化合物の使用量が20〜80質量%である場合、架橋ポリマー粒子がゴム状の軟らかい微粒子となり、形成される絶縁膜等の硬化物にクラック(割れ)が発生するのを防止することができ、より耐久性に優れる絶縁膜等とすることができる。
【0061】
また、架橋ポリマー粒子の平均粒径は、通常、30〜500nmであり、好ましくは40〜200nm、更に好ましくは50〜120nmである。この架橋ポリマー粒子の粒径の制御方法は、例えば、乳化重合により架橋ポリマー粒子を合成する場合、使用する乳化剤の量により乳化重合中のミセルの数を制御することにより、粒径を調整することができる。尚、架橋ポリマー粒子の平均粒径は、光散乱流動分布測定装置(大塚電子社製、型式「LPA−3000」)を使用し、架橋ポリマー粒子の分散液を常法に従って希釈して測定した値である。
【0062】
これらの架橋ポリマー粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の感放射線性組成物における架橋ポリマー粒子の含有量は、重合体(B)を100質量部(但し、後述のフェノール性低分子化合物が配合されている場合には、重合体(B)とフェノール性低分子化合物の合計を100質量部)とした場合に、0.5〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量部である。架橋ポリマー粒子の含有量が0.5〜50質量部である場合、絶縁性及び密着性により優れた絶縁膜を形成することができる。更には、他の成分との相溶性又は分散性に優れ、形成される絶縁膜等の耐熱性等を向上させることができる。
【0063】
(F)他の添加剤
本発明の感放射線性組成物には、必要に応じて、他の添加剤を、本発明の特性を損なわない程度に含有させることができる。前記他の添加剤としては、フェノール性低分子化合物、密着促進剤、増感剤、クエンチャー、レベリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等が挙げられる。
【0064】
前記フェノール性低分子化合物を用いることにより、感放射線性組成物の感度や解像度を向上させることができる。前記フェノール性低分子化合物としては、例えば、4,4’−{1−[4−〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール、4,4’−{1−[4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,3−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、4,6−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル]エタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。これらのフェノール性低分子化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このフェノール性低分子化合物の配合量は、前記重合体(B)を100質量部とした場合に、40質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量部である。
【0065】
前記密着助剤を用いることにより、絶縁膜と基板との密着性を向上させることができる。前記密着助剤としては、例えば、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性置換基を有する官能性シランカップリング剤等が挙げられる。具体的には、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1,3,5−N−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらの密着助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この密着助剤の含有量は、重合体(B)を100質量部(但し、後述のフェノール性低分子化合物が配合されている場合には、重合体(B)とフェノール性低分子化合物の合計を100質量部)とした場合に、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2〜10質量部、更に好ましくは0.5〜8質量部である。
【0066】
また、本発明の感放射線性組成物には、前記黒色剤(A)以外の金属粒子や金属化合物粒子が含まれていないことが好ましい。これらの金属粒子や金属化合物粒子が配合されると、十分な絶縁性が得られなくなるおそれがある。
【0067】
(G)溶剤
本発明の感放射線性組成物は、通常、前述の各成分が、溶剤に溶解又は分散されてなる組成物である。
この溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、他のエーテル化合物、ケトン化合物、乳酸アルキルエステル、他のエステル化合物、芳香族炭化水素、アミド化合物、ラクトン化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0069】
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
前記他のエーテル化合物としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
前記ケトン化合物としては、メチルエチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等が挙げられる。
【0070】
前記乳酸アルキルエステルとしては、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸n−ブチル、乳酸イソブチル等が挙げられる。
前記他のエステル化合物としては、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、ぎ酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等が挙げられる。
【0071】
前記芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。
前記アミド化合物としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
前記ラクトン化合物としては、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0072】
これらの溶剤のなかでも、溶解性、分散性、塗布性等の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、メチル−n−ペンチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、ぎ酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸エチル等が好ましい。
【0073】
尚、前記溶剤は、ベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、しゅう酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等の高沸点溶剤を含んでもよい。これらの高沸点溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
前記溶剤の含有量は、組成物の塗布性、安定性等の観点から、組成物中の溶剤を除いた各成分の合計割合が、通常、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%となるように用いる。
【0075】
[2]感放射線性組成物の製造方法
本発明における感放射線性組成物を製造する方法は、例えば、前記溶剤(G)の中で、所定量の黒色剤(A)、重合体(B)、酸発生剤(C)、架橋剤(D)及び他の添加剤等を一括して又は分割配合して混合する方法等とすることができる。尚、黒色剤(A)は、前述の黒色剤分散液として配合してもよい。
混合装置としては、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸押出機、2軸押出機等が挙げられる。混合後、必要に応じて、フィルターで濾過を行ってもよい。
【0076】
[3]絶縁膜及びそれを備える固体撮像素子
本発明の絶縁膜は、前記感放射線性組成物から得られるもの、又は後述する「絶縁膜の形成方法」により形成されたことを特徴する。
また、本発明の固体撮像素子は、前記絶縁膜を備えることを特徴とするものであり、具体的には、少なくとも、光電変換部、前記絶縁膜、及び電極部を備えるものである。
例えば、固体撮像素子としては、貫通電極を有する固体撮像素子や、商品名「NeoPAC」(OptoPAC Inc.社製)等の構造を有する固体撮像素子であって、前記絶縁膜を有する固体撮像素子等を挙げることができる。
【0077】
以下、本発明の固体撮像素子用における光電変換部の実装に用いられる絶縁膜及びそれを備える本発明の固体撮像素子について説明する。
本発明の絶縁膜及び本発明の固体撮像素子の代表例を例示する(図1及び図2参照)。
図1は、絶縁膜16を含む固体撮像素子1の要部断面図であり、シリコンウエハ等からなる支持基板11と、この支持基板11の一面側(以下、「上面側」という。)及び他面側(以下、「下面側」という。)を貫通する貫通孔の内壁面並びに支持基板11の下面表面に形成された絶縁層12と、前記貫通孔の内表面を含む絶縁層12の表面に形成された配線部13と、配線部13の表面において部分的に形成された電極部15と、この電極部15の周縁であって、支持基板11の下面表面における絶縁層12の表面、及び電極部が形成されていない配線部13の表面に形成された絶縁膜16とを備える。尚、この図1において、支持基板11の上面側に配された光電変換部等は省略した。
また、図2は、図1の固体撮像素子1における電極部15の露出部に半田ボール17を備える固体撮像素子1’である。
【0078】
[4]絶縁膜の形成方法
本発明の絶縁膜の形成方法は、固体撮像素子における光電変換部の実装に用いられる絶縁膜の形成方法であって、(1)電極部を備える基板上に、感放射線性組成物からなる塗膜を形成する工程と、(2)少なくとも前記電極部上に形成された塗膜以外の塗膜を露光する工程と、(3)露光後の塗膜を現像する工程と、を備えることを特徴とする。
【0079】
前記絶縁膜16(図1及び図2参照)は、具体的には、例えば、下面表面に部分的に電極部15を有する絶縁膜形成用基板(図示せず)上に、前記本発明の感放射線性組成物を塗布した後、プレベークを行って、塗膜(被膜)を形成する。次いで、この被膜に、フォトマスクを介して現像後に少なくとも電極部15が露出するように設計された所定のパターンで露光する。そして、現像し、被膜の未露光部を溶解除去する。その後、必要に応じてポストベークを行うことにより、絶縁膜16を得ることができる。
【0080】
前記本発明の感放射線性組成物を塗布する際には、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等、公知の塗布方法を適用することができる。
【0081】
その後、前記塗膜をプレベークする際の温度は、塗膜の構成成分等により、適宜、選択されるが、通常、70〜130℃の範囲、好ましくは80〜120℃の範囲から選ばれる。この熱処理は、前記範囲において、温度一定として行ってよいし、昇温及び降温を組み合わせて行ってもよい。
【0082】
次に、プレベーク後の被膜に対して、光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の光(放射線)を露光する。
【0083】
その後、露光後の被膜を現像する。現像に用いられる現像液としては、通常、アルカリ現像液が用いられる。アルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等の水溶液が好ましい。また、この水溶液は、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤、界面活性剤等が、適量添加されたものであってもよい。
現像方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、液盛り現像法等が挙げられる。現像時間は、通常、常温(22℃〜28℃)で5〜300秒である。
現像を行った後、通常、水洗及び乾燥を行う。乾燥方法としては、ホットプレート、オーブン等を用いた熱乾燥;エアーガン等を用いた風乾等が挙げられる。
【0084】
現像後、得られたパターン化した被膜(パターン化被膜)は、必要に応じて、ポストベークされて、絶縁膜となる。
前記パターン化被膜をポストベークする際の温度は、パターン化被膜の構成成分等により、適宜、選択されるが、通常、150〜250℃の範囲、好ましくは180〜230℃の範囲から選ばれる。
【0085】
前記絶縁膜は、単一層及び多層のいずれでもよい。
前記絶縁膜の厚さは、絶縁性、遮光性及び密着性の観点から、好ましくは30μm以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25μm、更に好ましくは2〜20μmである。尚、前記絶縁膜の厚さが30μm以下であれば、赤外線を含む外部からの光を十分に遮光することができ、且つ、クラック等のない絶縁膜を形成できる。
【0086】
前記絶縁膜は、その表面に保護膜を備えてもよい。その場合、保護膜形成材料としては、アクリル系樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物等を用いることができる。
【実施例】
【0087】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。ここで、「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0088】
[1]感放射線性組成物の調製
(1−1)黒色剤分散液の調製
下記表1に示す割合で、黒色剤(A)、分散剤(H)、及び溶剤(I)をビーズミルにより混合して、黒色剤分散液(Ax−1)〜(Ax−3)を調製した。
【0089】
【表1】

【0090】
尚、表1における黒色剤(A)、分散剤(H)、及び溶剤(I)の詳細を以下に示す。
<黒色剤(A)>
A−1:カーボンブラック(光散乱法による粒子径:10〜200μm)
A−2:チタンブラック(光散乱法による粒子径:10〜200μm)
<分散剤(H)>
H−1:変性アクリル系ブロック共重合体(ビックケミー・ジャパン社製、商品名「DISPERBYK−2001」)
H−2:表面処理剤(ビックケミー・ジャパン社製、商品名「DISPERBYK−165」)
H−3:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
<溶剤(I)>
I−1:3−メトキシブチルアセテート
【0091】
(1−2)感放射線性組成物の調製(実施例1〜3)
下記表2に示すように各成分を混合することにより、実施例1〜3の感放射線性組成物を調製した。尚、各成分の詳細は以下の通りである。
【0092】
【表2】

【0093】
<黒色剤分散液(Ax)>
Ax−1:前述の黒色剤分散液(Ax−1)
Ax−2:前述の黒色剤分散液(Ax−2)
<重合体(B)>
B−1:m−クレゾール/p−クレゾール=60/40(モル比)からなるクレゾールノボラック樹脂(ゲルパーミエーションカラムクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量=6500)
B−2:p−ヒドロキシポリスチレン(ゲルパーミエーションカラムクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量=3000)
<低分子化合物(b)>
b−1:4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール
【0094】
<酸発生剤(C)>
C−1:1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート
<架橋剤(D)>
D−1:ヘキサメトキシメチルメラミン(三井サイテック株式会社製、商品名「サイメル300」)
D−2:トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX321L」)
<架橋ポリマー粒子(E)>
E−1:ブタジエン/アクリロニトリル/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=64/20/8/6/2(モル比、光散乱法による重量平均粒子径=70nm)
<他の添加剤(F)>
F−1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
F−2:ジグリセリンEO付加物ペルフルオロノネニルエーテル(株式会社ネオス製、商品名「FTX−218」)
<溶剤(G)>
G−1:メチル−n−ペンチルケトン
G−2:乳酸エチル
【0095】
(1−3)感放射線性組成物の調製(比較例1)
(1−3−1)重合体(R−1)の調製
フラスコ内で、メタクリル酸25部、N−フェニルマレイミド30部、スチレン18部、ベンジルメタクリレート15部及び2−アクリロイロキシオキシエチルコハク酸12部を、シクロヘキサノン200部に溶解した。次いで、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル1部、及びα−メチルスチレンダイマー2.5部を投入し、80℃で5時間加熱し、重合体(R−1)を得た。
重合体(R−1)のゲルパーミエーションカラムクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量は22000であった。
【0096】
尚、本実施例における、ゲルパーミエーションカラムクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量の測定条件は以下の通りである。
<重量平均分子量(Mw)の測定>
東ソー社製GPC(商品名「HLC−8220GPC」)のGPCカラム(商品名「G2000HXL」2本、商品名「TSKgel、GMPW」1本、商品名「G3000PW」1本)を使用し、流量:1.0mL/分、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
【0097】
(1−3−2)感放射線性組成物(比較例1)の調製
上述のようにして調製した重合体(R−1)20部、前記黒色剤分散液(Ax−1)50部、多官能性単量体(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「MAX3510」、東亞合成株式会社製))8部、光重合開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4’−モルフォリノブチロフェノン)2.2部、光重合開始剤(2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール)1.7部、光重合開始剤(4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン)0.6部、水素供与体(2−メルカプトベンゾチアゾール)0.8部、界面活性剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)5部、界面活性剤(DIC社製、商品名「メガファックF475」)0.6部、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)12.8部、溶剤(シクロヘキサノン)10部を混合することにより、比較例1の感放射線性組成物を調製した。
【0098】
[2]感放射線性組成物の評価
前述のようにして得られた実施例1〜3及び比較例1の感放射線性組成物について、下記項目について評価した。その結果を表3に示す。
【0099】
(2−1)パターン形状(残渣、最小パターンサイズ)
感放射線性組成物を、シリコンウエハ基板に、スピンコーターを用いて塗布した後、110℃のホットプレート上で3分間(但し、比較例1の感放射線性組成物については、90℃のホットプレート上で2.5分間)プレベークを行って、被膜を形成した。次いで、基板を室温に冷却し、露光装置(商品名「マスクアライナーMA200e」、SUSS社製)を用いて、マスクを介して、被膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む紫外線を露光した。このときの露光量は2000mJ/cm(但し、比較例1の感放射線性組成物については、露光量500mJ/cm)であった。
その後、23℃のポリオキシエチレン系界面活性剤含有0.05質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、基板を1分間シャワー現像した。そして、超純水を用いて洗浄して風乾した。次いで、180℃のホットプレート上で60分間ポストベークを行って、基板上にパターン化被膜(膜厚20μm)を形成した。得られたパターン化被膜を電子顕微鏡にて観察し、画素パターンの残渣が認められるかどうかについて、下記基準にて判定した。また、このときパターン全体が剥離することなく残存していた最小のパターンサイズ(μm)を測定した。
○:残渣が認められない。
×:残渣が多い。
【0100】
(2−2)密着性
感放射線性組成物をガラス基板(表面にSiO層を有する基板)及び表面に銅箔を有するシリコンウエハ基板に、スピンコーターを用いて塗布した後、110℃のホットプレート上で3分間(但し、比較例1の感放射線性組成物については、90℃のホットプレート上で2.5分間)プレベークを行って被膜を形成した。次いで、露光装置(商品名「マスクアライナーMA200e」、SUSS社製)を用いて、被膜全面に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む紫外線を露光した。このときの露光量は2000mJ/cm(但し、比較例1の感放射線性組成物については、露光量500mJ/cm)であった。
その後、180℃のホットプレートで60分間ポストベークを行って、被膜化し、膜厚20μmの絶縁膜を得た。
密着性は、ブランク被膜及び下記条件(a)に供した絶縁膜に対して、JIS K5400に準拠したカッター及びカッターガイドを用いて、1mm角の碁盤目を100個作成し、テープにより密着性を確認した(碁盤目試験)。テープを剥離した後に残った碁盤目を計数した。
(a)絶縁膜付き基板を、高度加速寿命試験装置(型式「TPC−212」、エスペック社製)を用いて、温度110℃及び湿度100%の条件下、168時間放置した後の絶縁膜。
【0101】
(2−3)電気絶縁性(体積抵抗率)
感放射線性組成物を、表面に銅箔を有するシリコンウエハ基板に、スピンコーターを用いて塗布した後、110℃のホットプレート上で3分間(但し、比較例1の感放射線性組成物については、90℃のホットプレート上で2.5分間)プレベークを行って被膜を形成した。次いで、露光装置(商品名「マスクアライナーMA200e」、SUSS社製)を用いて、被膜全面に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む紫外線を露光した。このときの露光量は2000mJ/cm(但し、比較例1の感放射線性組成物については、露光量500mJ/cm)であった。
その後、180℃のホットプレートで60分間ポストベークを行って、被膜化し、膜厚20μmの絶縁膜を得た。体積抵抗率は、ブランク被膜及び下記条件(b)に供した絶縁膜に対して測定を実施した。
(b)絶縁膜付き基板を、高度加速寿命試験装置(型式「TPC−212」、エスペック社製)を用いて、温度110℃及び湿度100%の条件下、168時間放置した後の絶縁膜。
【0102】
(2−4)透過率
感放射線性組成物を、ガラス基板に、スピンコーターを用いて塗布した後、110℃のホットプレート上で3分間(但し、比較例1の感放射線性組成物については、90℃のホットプレート上で2.5分間)プレベークを行って被膜を形成した。次いで、この被膜を有する基板を室温に冷却し、露光装置(商品名「マスクアライナーMA200e」、SUSS社製)を用いて、被膜全面に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む紫外線を露光した。このときの露光量は2000mJ/cm(但し、比較例1の感放射線性組成物については、露光量500mJ/cm)であった。
その後、180℃のホットプレートで60分間ポストベークを行って、被膜化し、膜厚20μmの絶縁膜を得た。
透過率は、ブランク被膜及び下記の各種条件(c)〜(e)に供した絶縁膜に対して、分光光度計(型式「V7300」、日本分光社製)を用いて、温度23℃、波長範囲400〜1,200nmにおいて測定し、1,000nmにおける透過率を評価した。
(c)絶縁膜付き基板を、恒温恒湿試験装置(型式「PSL−2KPH」、エスペック社製)を用いて、温度85℃及び湿度85%の条件下、168時間放置した後の絶縁膜。
(d)絶縁膜付き基板を、高度加速寿命試験装置(型式「TPC−212」、エスペック社製)を用いて、温度110℃及び湿度100%の条件下、168時間放置した後の絶縁膜。
(e)絶縁膜付き基板を、ホットプレート上で、大気中、260℃1時間放置した後の絶縁膜。
【0103】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の感放射線性組成物は、デジタルカメラ、ビデオカメラ、車載カメラ、撮影機能を有するパーソナルコンピュータ、携帯電話、電子手帳等の電子機器に配設される固体撮像素子における光電変換部の実装に用いられる絶縁膜の形成に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0105】
1、1’:固体撮像素子、11:支持基板、12:絶縁層、13:配線部、15:電極部、16:絶縁膜、17:半田ボール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)黒色剤と、
(B)フェノール性水酸基を有する重合体と、
(C)感放射線性酸発生剤と、
(D)酸の作用により架橋反応が進行する架橋剤と、を含有することを特徴とする感放射線性組成物。
【請求項2】
前記(B)フェノール性水酸基を有する重合体が、フェノール性水酸基を有する化合物とホルミル基を有する化合物との縮合物である請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項3】
前記(B)フェノール性水酸基を有する重合体が、ヒドロキシスチレンにおける重合性不飽和結合が開裂した構造単位を有する重合体である請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項4】
前記(B)フェノール性水酸基を有する重合体として、フェノール性水酸基を有する化合物とホルミル基を有する化合物との縮合物、及び、ヒドロキシスチレンにおける重合性不飽和結合が開裂した構造単位を有する重合体を含有する請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項5】
前記(D)架橋剤は、メチロール基を含有する化合物である請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項6】
更に、(E)架橋ポリマー粒子を含有する請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項7】
固体撮像素子における光電変換部の実装に用いられる絶縁膜形成用の感放射線性組成物である請求項1乃至6のいずれかに記載の感放射線性組成物。
【請求項8】
固体撮像素子における光電変換部の実装に用いられる絶縁膜の形成方法であって、
(1)電極部を備える基板上に、請求項7に記載の感放射線性組成物からなる塗膜を形成する工程と、
(2)少なくとも前記電極部上に形成された塗膜以外の塗膜を露光する工程と、
(3)露光後の塗膜を現像する工程と、を備えることを特徴とする絶縁膜の形成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の絶縁膜の形成方法により形成したことを特徴とする絶縁膜。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載の感放射線性組成物から得られたことを特徴とする絶縁膜。
【請求項11】
少なくとも、光電変換部、請求項9に記載の絶縁膜、及び電極部を備えることを特徴とする固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−215597(P2011−215597A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12314(P2011−12314)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】