説明

成形型

【課題】入れ子型に内嵌されたシールリングを交換する際の作業性の向上を図ることができる成形型を提供すること。
【解決手段】シールリング50は、内周面に内周胴部54と内周拡径部55とを備えると共に、その内周拡径部55の内径を内周胴部54の内径よりも大きくすることで、内周拡径部55と内周胴部54との間に内周段部56を位置させる構成であるので、シールリング50を入れ子型22から抜き取る場合には、内周段部56を利用して(例えば、内周段部56に抜き取り治具を係合させ)、シールリング50を上方へ押し上げることで、容易に嵌合孔部22bから抜き取ることができる。よって、定期的に必要なシールリング50の交換作業において、その作業性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型に関し、特に、入れ子型に内嵌されたシールリングを交換する際の作業性の向上を図ることができる成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に使用される防振装置(例えば、車輪懸架装置に装着される防振ブッシュやエンジンを支持するエンジンマウントなどの加硫成形品)として、金属材料から筒状に構成された内筒及び外筒の間にゴム状弾性材からなる防振基体を介在させたもの(或いは外筒を省略したもの)が知られている。
【0003】
このような防振装置は、一般に、下型及び上型を型閉めした状態において、上下に相対向して入れ子型が配置され、その入れ子型により内筒の周囲部にキャビティが形成されると共に、そのキャビティ内へゴム状弾性材となる成形材料が注入孔より注入されて、加硫成形される(特許文献1)。
【0004】
ここで、内筒の上下端部分は、入れ子型の中央部に形成された嵌合孔部とその嵌合孔部に内嵌されたシールリングとによって外周面が緊密に被嵌され、これにより、キャビティ内に充填された成形材料が、内筒の端部外周面と嵌合孔部及びシールリングの内周面との間の隙間を通過して、端面バリとなることを防止している。
【特許文献1】特開2002−79551号公報(図2など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シールリングの内周面が摩耗すると、内筒の端部外周面を緊密に被嵌することができなくなるため、端面バリの発生を招く。そのため、防振装置の加硫成形が所定数だけ行われると、シールリングの交換(入れ子型からの抜き取り)が定期的に行われる。
【0006】
しかしながら、上述した従来の成形型では、入れ子型の嵌合孔部からシールリングを抜き取る際に、抜き取り治具をシールリングに係合させることが困難であり、その作業性が悪いという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、入れ子型からシールリングを抜き取る際の作業性の向上を図ることができる成形型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、請求項1記載の成形型は、ゴム状弾性材から構成される防振基体と前記防振基体が外周に加硫接着される筒状の内筒とを少なくとも有する防振装置を加硫成形するものであって、上下に相対向して位置し前記防振基体の外形を成形する入れ子型を有すると共に上下に型閉めされる下型及び上型と、前記入れ子型内に設置された前記内筒の下端開口より嵌入され前記内筒の下端を係止する支持ピンと、前記支持ピンと同心状に対向配置され前記内筒の上端を係止する内筒押えと、を備え、前記下型及び上型を型閉めした状態において、前記支持ピンと内筒押えとにより支持した前記内筒の外周側に前記入れ子型によりキャビティを形成すると共に、前記キャビティ内へゴム状弾性材となる成形材料を充填して前記内筒と一体に加硫成形するものであり、筒状のシールリングを備え、前記入れ子型は、前記内筒の端部外周に被嵌される被嵌部と、前記被嵌部に同心に連設され前記シールリングが内嵌される嵌合孔部と、を備えると共に、前記入れ子型の嵌合孔部は、前記被嵌部に連設される小径孔部と、前記小径孔部に連接されると共に前記小径孔部よりも内径が大きくされる拡径孔部と、を備え、前記シールリングは、前記シールリングの外周面を構成すると共に前記入れ子型の嵌合孔部における拡径孔部に内嵌される外周拡径部と、前記シールリングの外周面を構成すると共に前記外周拡径部よりも外径が小さくされ前記入れ子型の嵌合孔部における小径孔部との間に隙間を有する外周胴部と、前記外周拡径部と外周胴部との間に位置する外周段部と、前記シールリングの内周面を構成すると共に前記内筒押えが上下方向へ摺動変位可能に内嵌される内周胴部と、前記シールリングの内周面を構成すると共に前記内周胴部よりも内径が大きくされ前記内筒の端部外周に被嵌される内周拡径部と、前記内周拡径部と内周胴部との間に位置する内周段部と、を備えている。
【0009】
請求項2記載の成形型は、請求項1記載の成形型において、前記内筒は、上下端面が鋸刃状の凹凸形状に構成されると共に、上下端外周が先細のテーパ状に構成されるものであり、前記シールリングは、前記内周胴部の内径が前記内筒のテーパ状の上下端外径よりも大きくされると共に、前記下型及び上型を型閉めした状態において、前記内周段部の上下方向位置が前記内筒押えの下端と一致され、前記シールリングの外周胴部と前記入れ子型の嵌合孔部における小径孔部との間の隙間は、前記シールリングの外周胴部における全範囲にわたって連続して形成されると共に、前記内周段部が外周段部よりも前記入れ子型の被嵌部側に位置している。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の成形型によれば、シールリングは、その内周面を構成すると共に内筒押えが上下方向(軸方向)へ摺動変位可能に内嵌される内周胴部と、シールリングの内周面を構成すると共に内筒の端部外周に被嵌される内周拡径部とを備え、内周拡径部の内径を内周胴部の内径よりも大きくすることで、内周拡径部と内周胴部との間に内周段部を位置させる構成であるので、かかる内周段部を利用して(例えば、内周拡径部の内径よりも小径であって内周胴部の内径よりも大径となる筒状の抜き取り治具の端面を内周段部に係合させるなどして)、シールリングを嵌合孔部内から外部へ向けて押し上げる(押し出す)ことができ、その結果、シールリングを入れ子型から容易に抜き取ることができるという効果がある。これにより、定期的に必要なシールリングの交換作業において、その作業性の向上を図ることができる。
【0011】
ここで、入れ子型の嵌合孔部は、その嵌合孔部の内周面を構成すると共に被嵌部に連設される小径孔部と、嵌合孔部の内周面を構成すると共に前記小径孔部よりも内径が大きくされる拡径孔部とを備え、シールリングは、シールリングの外周面を構成すると共に入れ子型の嵌合孔部における拡径孔部に内嵌される外周拡径部と、シールリングの外周面を構成すると共に外周拡径部よりも外径が小さくされる外周胴部とを備え、入れ子型の嵌合孔部にシールリングが内嵌されると、入れ子型の嵌合孔部における小径孔部とシールリングの外周胴部との間に隙間が形成される構成であるので、内筒の端部外周を緊密に被嵌して端面バリの発生を抑制しつつ、シールリングの摩耗を抑制して交換サイクルの延長を図ることができると共に、シールリングから内筒を抜き取り易くして作業性の向上を図ることができるという効果がある。
【0012】
即ち、上記隙間を有さない構成では、内筒の外径に対してシールリングの内径に余裕を持たせる(締め代を緩くする)と、内筒の端部外周をシールリングによって緊密に被嵌できず、端面バリの発生を招く。一方、内筒の外径に対してシールリングの内径を小さくし過ぎる(締め代が大きい)と、内筒の端部外周がシールリングによって緊密に被嵌され過ぎるため、シールリングの摩耗が早まり、交換サイクルが短くなると共に、型開きの際にシールリングから内筒が外れ難くなり、作業性の低下を招く。
【0013】
これに対し、本発明によれば、入れ子型の嵌合孔部における拡径孔部にシールリングの外周拡径部を内嵌させると共に、その状態では入れ子型の嵌合孔部における小径孔部とシールリングの外周胴部との間に隙間が形成される構成であるので、シールリングを弾性的に拡径させ易くすることができる。よって、内筒の外径に対してシールリングの内径を十分に小さく(締め代を確保)して、端面バリの発生を抑制する場合でも、シールリングの摩耗を抑制して交換サイクルの延長を図ることができると共に、型開きの際に内筒をシールリングから抜きやすくして作業性の向上を図ることができる。
【0014】
また、シールリングの外周拡径部のみが入れ子型の嵌合孔部における拡径孔部に内嵌される構成であるので、シールリングを嵌合孔部内から外方へ押し上げて(押し出して)入れ子型から抜き取りやすいという効果がある。この場合、入れ子型の嵌合孔部において、拡径孔部の内径を小径孔部の内径よりも大径とする構成であるので、これらの関係が小径とされる場合と比較して、内筒の端部外周を緊密に被嵌して端面バリの発生を抑制しつつ、シールリングの摩耗を抑制して交換サイクルの延長を図ることができると共に、シールリングから内筒を抜き取り易くして作業性の向上を図ることができるという効果がある。更に、内筒押えの上下方向(軸方向)への摺動変位を阻害することなく、スムーズに行わせることができるという効果がある。
【0015】
請求項2記載の成形型によれば、請求項1記載の成形型の奏する効果に加え、シールリングの内周胴部の内径を内筒のテーパ状の上下端(先端)外径よりも大きくする構成であるので、下型及び上型を型閉めした状態において、内筒押えのみにより内筒の端部を軸方向へ押さえることができ、シールリングの内周段部が内筒の端部又は傾斜面と接触することを回避することができる。
【0016】
ここで、内筒の寸法公差が大きい場合には、下型及び上型の型閉め時に、例えば、内筒のテーパ状の傾斜面にシールリングの内周胴部と内周段部との稜線部が乗り上げ、シールリングが径方向へ拡径されることがある。この場合、シールリングにより内筒の端部外周を緊密に被嵌できなくなり、端面バリが発生する。
【0017】
これに対し、本発明によれば、上述したように、シールリングの内周段部が内筒の端部又は傾斜面に接触することを回避することができるので、内筒の端部外周を確実に被嵌して、端面バリの発生を抑制することができる効果がある。
【0018】
また、下型及び上型を型閉めした状態において、シールリングの内周段部の上下方向(軸方向)位置を内筒押えの下端(内筒の押え面である係止段部)と一致させる構成であるので、この構成によっても端面バリの発生をより確実に抑制することができる。
【0019】
即ち、内周段部の上下方向位置を内筒押えの下端(内筒の押え面である係止段部)よりも下方(内筒側)に位置させると、内筒の寸法公差が大きな場合に、シールリングの一部が内筒に乗り上げ易くなり、端面バリの発生を招く。これに対し、内周段部の上下方向位置が内筒押えの下端に一致していれば、少なくとも上下方向(軸方向)には内筒押えが内筒を押さえるため、シールリングが内筒へ乗り上げることによる端面バリの発生を抑制できる。
【0020】
一方、内周段部の上下方向位置を内筒押えの下端(内筒の押え面である係止段部)よりも上方へ位置させると、その分、内筒押えの外周面が露出されるため、加硫時にキャビティから漏出したゴム材料(成形材料)が内筒押さえの外周面に付着して、かかる内筒押えの上下方向への摺動変位が阻害される。また、内周段部の上下方向位置を内筒押えの下端よりも上方へ位置させると、その分、シールリングの内周拡径部、即ち、薄肉となる部位の長さが長くなるため、内筒の上端外周を緊密に被嵌することができず、端面バリの発生を招く。
【0021】
これに対し、内周段部の上下方向位置が内筒押えの下端(内筒の押え面である係止段部)に一致していれば、下型と上型とを型閉めした状態において、内筒押えの外周面をシールリングの内周胴部により被覆することができるので、かかる内筒押えの外周面にゴム材料(成形材料)が付着することを抑制して、内筒押えのスムーズな摺動変位を確保することができる。
【0022】
また、内周段部の上下方向位置を内筒押えの下端に一致させることで、シールリングの薄肉となる部位(内周拡径部)の長さが不必要に長くなることを回避して、必要最小限の長さとすることができるので、内筒の上端外周を緊密に被嵌して、端面バリの発生を確実に抑制することができる。
【0023】
また、シールリングの外周胴部と入れ子型の嵌合孔部における小径孔部との間の隙間は、シールリングの下端面から外周段部までの範囲(即ち、シールリングの外周胴部における全範囲)にわたって連続して形成されると共に、内周段部が外周段部よりもシールリングの下端側(即ち、入れ子型の被嵌部側)に位置する構成であるので、内筒の端部外周における緊密な被嵌と、内筒押えの上下方向へのスムーズな摺動変位との両立を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態における成形型100の部分断面図であり、図2は、成形型100の部分拡大断面図である。なお、図1及び図2は、下型10及び上型20が型閉めされると共に、内筒210及び外筒220がセットされたキャビティ内に成形材料Rが充填された状態を図示する。
【0025】
成形型100は、防振装置200を加硫成形するための加硫成形用金型であり、図1に示すように、上下に型閉めされる下型10及び上型20と、互いに対向して配置される支持ピン30及び内筒押え40とを主に備え、キャビティ内に成形材料Rを充填して加硫することで、防振装置200を加硫成形する。ここで、成形型100の成形対象となる防振装置200について、図3を参照して説明する。
【0026】
図3は、防振装置200の斜視図である。本実施の形態では、成形対象の一例として、車輪懸架装置に使用される防振ブッシュを例に説明する。
【0027】
防振装置200は、図3に示すように、鉄鋼材料から円筒状に構成される内筒210と、鉄鋼材料から円筒状に構成されると共に内筒210の外周側に同心状に配置される外筒220と、ゴム状弾性材から構成されると共に内筒210の外周面と外筒220の内周面との間を連結する防振基体230とを備えて構成されている。
【0028】
なお、図3に示すように、内筒210の軸O方向(図3上下方向)上端面及び下端面には、鋸刃形状(凹凸形状)の山形溝211が複数刻設されており、これら複数の山形溝211は、軸O方向視において、放射直線状に分散配置されている。また、内筒210は、上下端外周が先細のテーパ状に傾斜して構成されている。
【0029】
図1及び図2に戻って説明する。下型10は、後述する上型20に対して上下動(図1上下方向移動)することで型閉め及び型開き可能に構成される部位であり、図1に示すように、上型20の下側(図1下側)に対向配置されている。下型10の上面(図1上側面)には、正面視円形の凹部11が凹設されており、この凹部11には、入れ子型12が内嵌固定されている。
【0030】
入れ子型12は、図1に示すように、内筒210の外周側と外筒220の内周側との対向間に防振基体230の外形を成形するためのキャビティを形成するための部位であり、後述する上型20における入れ子型22と相対向する位置に配置されている。
【0031】
上型20は、上述したように、下型10に対し型閉め及び型開き可能に構成される部位であり、図1に示すように、下型10の上側(図1上側)に対向配置されている。上型20の下面(図1下側面)には、正面視円形の凹部21が凹設されており、この凹部21には、上述した入れ子型12と共にキャビティを形成するための入れ子型22が内嵌固定されている。
【0032】
入れ子型12,22には、図1に示すように、外筒220を内筒210と同心に保持するための嵌合段部12c,22cが形成されており、図1に示すように、下型10及び上型20を型閉めした状態では、外筒220の端面を上下から押圧挟持して、かかる外筒220を嵌合保持できるように構成されている。
【0033】
なお、下型10及び上型20には、押えリング13,23がボルト(図示せず)により固定されており、この押えリング13,23の内周側に外筒220が内嵌されるように構成されている。これにより、加硫成形時に外筒220が膨出変形することを抑制することができる。
【0034】
また、入れ子型12,22は、図1及び図2に示すように、被嵌部12a,22a及び嵌合孔部12b,22bを備えている。ここで、被嵌部12a,22a及び嵌合孔部12b,22bについては、入れ子型12,22において共通する構成であるので、入れ子型22を例として、図2を参照しつつ説明すると共に、入れ子型12についての説明は省略する。
【0035】
被嵌部22aは、図2に示すように、内筒210の上端外周に被嵌される部位であり、断面円形の内周を有すると共に、その内径が内筒210の外周径よりも若干小さな値に設定されている。
【0036】
嵌合孔部22bは、図2に示すように、被嵌部22aに同心に連設され、後述するシールリング50が内嵌される部位であり、断面円形の内周を有して構成されている。この嵌合孔部22bは、その嵌合孔部22bの内周面における下部(図2下側)を構成すると共に被嵌部22aに連設される小径孔部22b1と、嵌合孔部22bの内周面における上部(図2上側)を構成すると共に小径孔部22b1よりも内径が大きな値に設定される拡径孔部22b2とを備えている。なお、小径孔部22b1は、軸方向(図2上下方向)に沿って一定の内径を有して構成されている。
【0037】
なお、嵌合孔部12bは、上述したように、嵌合孔部22bと共通に構成される部位であり、その嵌合孔部12bの内周面における上部(図1上側)を構成すると共に被嵌部12aに連設される小径孔部12b1(図2の小径孔部22b1を参照)と、嵌合孔部12bの内周面における下部(図1下側)を構成すると共に小径孔部12b1よりも内径が大きな値に設定される拡径孔部12b2(図2の拡径孔部22b2を参照)とを備えている。なお、小径孔部12b1は、軸方向(図1上下方向)に沿って一定の内径を有して構成されている。
【0038】
図1及び図2に示すように、嵌合孔部12b,22b内には、後述するシールリング50を介して、支持ピン30及び内筒押え40が直立状に突出して配置されている。
【0039】
支持ピン30は、図1に示すように、内筒210の下端(図1下側)開口から嵌入され内筒210の下端を係止するための部位であり、内筒210内に嵌入される嵌入ピン部31と、その嵌入ピン部31の基部において内筒210の下端を係止する段部として大径に形成される係止段部32と、その係止段部32を最大径とし下方へ向かうに従って外径が漸減する円錐状の円錐部33とを備えて構成されている。
【0040】
なお、入れ子型12の嵌合孔部12bには、図1に示すように、保持筒14が後述するシールリング50と共に内嵌保持されている。保持筒14は、支持ピン30の円錐部33に対応する円錐状の内周を揺する受け面部14aを備えており、この受け面部14aに円錐部33が受け止められることで、支持ピン30を図1に示す定位置に保持する。
【0041】
ここで、支持ピン30は、図1に示すように、軸方向(図1上下方向)に変位可能に構成されると共に、下方(図1下側)へ向けて延設されるエジェクトピン34を備えている。エジェクトピン34のばね座(図示せず)と下型10との間には、コイルスプリングとして構成される戻し用ばねSP1が弾性的に圧縮変形された状態で配置されており、この戻し用ばねSP1の弾性復元力により、支持ピン30は、下方(図1下側)へ向けて付勢されると共に、その付勢力により図1に示す定位置に保持されている。
【0042】
加硫成形後に防振基体200を型抜きする際には、エジェクトピン34を戻し用ばねSP1の付勢力に抗しつつ上方(図1上側)へ向けて突き上げ手段(図示せず)により突き上げ移動させることで、内筒210の下端外周を入れ子型12及びシールリング50との嵌合部から離脱させることができる。
【0043】
内筒押え40は、図1及び図2に示すように、内筒210の上端(図1上側)開口から嵌入され内筒210の上端を係止するための部位であり、内筒210内に嵌入される嵌入ピン部41と、その嵌入ピン部41の基部(図2上側)に連設されると共に嵌入ピン部41よりも大径に形成される胴部42と、それら胴部42と嵌入ピン部41との間に形成される係止段部43と、胴部42の上端(図2上側)において径方向外方へ張り出し形成される張り出し部44とを備えると共に、支持ピン30と同心状に上下に対向して配置されている。
【0044】
ここで、内筒押え40は、図2に示すように、後述するシールリング50の内周に対し、軸方向(図1上下方向)に摺動変位可能に胴部42が嵌合されると共に、所定範囲(即ち、張り出し部44の上面が上型20に当接された位置と、張り出し部43の下面がシールシング50の上面に当接される位置との間、図5参照)で上下(図1上下方向)へ変位可能に構成されている。
【0045】
内筒押え40と上型20との間には、図2に示すように、コイルスプリングとして構成される戻し用ばねSP2が弾性的に圧縮変形された状態で配置されており、この戻し用ばねSP2の弾性復元力により、内筒押え40は、下方(図2下側)へ向けて付勢されている。
【0046】
これにより、図2に示すように、型閉め状態においては、内筒押え40が内筒210の寸法誤差を吸収しつつ、かかる内筒210を弾性的に押圧支持することができる。一方、加硫成形後に防振基体200を型抜きする際には、戻し用ばねSP2の付勢力により、内筒押え40が下方(図2下側)へ向けて突出変位することで、内筒210の上端外周を入れ子型22及びシールリング50との嵌合部から自然的に離脱させることができる(図5参照)。
【0047】
シールリング50は、図1又は図2に示すように、内筒210の上下端外周を被嵌すると共に、保持筒14を内嵌保持または内筒押え40を摺動変位可能に保持するための部材であり、入れ子型12,22の嵌合孔部12b,22bに内嵌保持されている。ここで、図4を参照して、シールリング50の詳細構成について説明する。
【0048】
図4(a)は、シールリング50を軸方向から視た正面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線におけるシールリング50の断面図である。なお、入れ子型12,22に保持される両シールリング50は共通に構成されるものであるので、図4では、入れ子型22に保持されるシールリング50を例に説明する。
【0049】
シールリング50は、図4に示すように、金型材料から軸Oを有し両端が開口した円筒状に構成される部材であり、その外周面側に、外周拡径部51と、外周胴部52と、外周段部53とを備えている。
【0050】
外周拡径部51は、図4に示すように、シールリング50の外周面における上部(図2上側)を構成すると共に、入れ子型22の嵌合孔部22bにおける拡径孔部22b2に内嵌される部位であり(図2参照)、径方向外方にフランジ状に張り出す張り出し部として形成されている。
【0051】
外周胴部52は、図4に示すように、シールリング50の外周面における下部(図2下側)を構成する部位であり、その外周胴部52の外径は、外周拡径部51の外径よりも小さくされ、かつ、入れ子型22の嵌合孔部22bにおける小径孔部22b1の内径よりも小さくされている。これにより、シールリング50は、入れ子型22の嵌合孔部22bにおける小径孔部22b1との間に隙間を有する(図2参照)。
【0052】
なお、外周胴部52は、軸O方向に沿って一定の外径を有して構成されている。外周段部53は、図4に示すように、外周拡径部51と外周胴部52との間に位置する段差部であり、軸Oに直交する平面として構成されている。
【0053】
また、シールリング50は、図4に示すように、その内周面側に、内周胴部54と、内周拡径部55と、内周段部56とを備えている。内周胴部54は、シールリング50の内周面における上部(図2上側)を構成すると共に、内筒押え40が上下方向へ摺動変位可能に内嵌される部位であり(図2参照)、軸Oに沿って内径が一定に構成されている。
【0054】
内周拡径部55は、図4に示すように、シールリング50の内周面における下部(図2下側)を構成すると共に、内筒210の上部外周に被嵌される部位であり(図2参照)、その内周拡径部55の内径は、内周胴部54の内径よりも大きくされている。
【0055】
内周段部56は、内周胴部54と内周拡径部55との間に位置する段差部であり、軸Oに直交する平面として構成されている。なお、本実施の形態では、内周胴部54の内径と内周拡径部55の内径との差が1.0mmとされ、内周段部56の幅(図4(b)上下方向寸法)が0.5mmに設定されている。
【0056】
ここで、シールリング50は、外周拡径部51の軸O方向長さ(図4(b)左右方向長さ)が、外周胴部52の軸O方向長さよりも十分に短くされ、かつ、内周拡径部55の軸O方向長さが、内周胴部54の軸O方向長さよりも十分に短くされている。これにより、後述するように、内筒210の上端外周を緊密に被嵌して端面バリの発生を抑制する効果と、シールリング50の摩耗を抑制して交換サイクルの延長を図る効果と、シールリング50から内筒210を抜き取り易くして作業性の向上を図る効果と、内筒押え40の上下方向への摺動変位をスムーズに行わせる効果とを、それぞれ確実に発揮させることができる。
【0057】
なお、上述した軸O方向長さは、外周拡径部51が外周胴部52に対して20%〜30%の範囲内の長さに設定され、かつ、内周拡径部55が内周胴部54に対して20%〜30%の範囲内の長さに設定されることが好ましい。本実施の形態では、上記範囲がいずれも25%に設定されている。よって、軸O直角方向視において、外周胴部52と内周胴部54とが重なる領域は、軸O方向長さ全体の50%とされている。
【0058】
図1及び図2に戻って説明する。上述したように、成形型100は、内周胴部54と内周拡径部55との間に内周段部56を位置させるように、シールリング50が構成されているので、かかる内周段部56を利用して(即ち、内周拡径部55の内径よりも小径であって内周胴部54の内径よりも大径となる筒状の抜き取り治具の端面を内周段部56に係合させるなどして)、シールリング50を上方(図2上側)へ押し上げることができる。即ち、シールリング50を入れ子型22から容易に抜き取ることができるので、定期的に必要なシールリング50の交換作業において、その作業性の向上を図ることができる。
【0059】
また、上述したように、成形型100は、入れ子型22の嵌合孔部22bにおける小径孔部22b1とシールリング50の外周胴部52との間に隙間が形成される構成であるので、内筒210の上端外周を緊密に被嵌して端面バリの発生を抑制しつつ、シールリング50の摩耗を抑制して交換サイクルの延長を図ることができると共に、シールリング50から内筒210を抜き取り易くして作業性の向上を図ることができる。
【0060】
即ち、上記隙間を有さない構成では、内筒210の外径に対してシールリングの内径に余裕をもたせる(締め代を緩くする)と、内筒210の上端外周をシールリングによって緊密に被嵌できず、端面バリの発生を招く。一方、内筒210の外径に対してシールリングの内径を小さくし過ぎる(締め代を大きくする)と、内筒210の上端外周がシールリングによって緊密に被嵌され過ぎるため、シールリングの摩耗が早まり、交換サイクルが短くなると共に、型開きの際にシールリングから内筒210が外れ難くなり(図5参照)、作業性の低下を招く。
【0061】
これに対し、本発明によれば、図2に示すように、入れ子型22の嵌合孔部22bにおける拡径孔部22b2にシールリング50の外周拡径部51を内嵌させた状態で、入れ子型22の嵌合孔部22bにおける小径孔部22b1とシールリング50の外周胴部52との間に隙間を形成させる構成であるので、シールリング50を弾性的に拡径させ易くすることができる。
【0062】
よって、内筒210の外径に対してシールリング50(内周拡径部55)の内径を十分に小さく(締め代を大きく)して、端面バリの発生を抑制する場合でも、シールリング50の摩耗を抑制して交換サイクルの延長を図ることができると共に、型開きの際に内筒210をシールリング50から抜きやすくして(図5参照)、作業性の向上を図ることができる。
【0063】
また、シールリング50の外周拡径部51のみを入れ子型22の嵌合孔部22bにおける拡径孔部22b2に内嵌させる構成であるので、シールリング50を入れ子型22から抜き取る際には、かかるシールリング50を上方へ押し上げて入れ子型22から抜き取り易くすることができる。
【0064】
ここで、成形型100は、図2に示すように、入れ子型22の嵌合孔部22bにおいて、拡径孔部22b2の内径を小径孔部22b1の内径よりも大径とし、かつ、シールリング50において、外周拡径部51の外径を外周胴部52の外径よりも大径とする構成である。
【0065】
このように構成することで、これらの関係が逆(例えば、拡径孔部22b2の内径が小径孔部22b1の内径よりも小径)とされる場合と比較して、内筒210の上端外周を緊密に被嵌して端面バリの発生を抑制しつつ、シールリング50の摩耗を抑制して交換サイクルの延長を図ることができると共に、シールリング50から内筒210を抜き取り易くして作業性の向上を図ることができる。更に、内筒押え40の上下方向への摺動変位を阻害することなく、スムーズに行わせることができる。
【0066】
ここで、成形型100は、図2に示すように、シールリング50の内周胴部54の内径を、内筒210の上端(先端)における外径(図2上側における外径)よりも大きくする構成であるので、図2に示す型閉め状態において、内筒押え40のみが内筒210の上端を軸方向へ押さえる状態とすることができ、シールリング50の内周段部56が内筒210の上端又は傾斜面と接触することを回避することができる。
【0067】
即ち、内筒210の寸法公差が大きい場合には、図2に示す型閉め時に、例えば、内筒210の上端面(図2上側面)又はテーパ状の傾斜面に対し、シールリング50の内周段部56又はその内周段部56と内周胴部54との稜線部が乗り上げ、シールリング50が径方向へ拡径されることがある。この場合、シールリング50により内筒210の上端外周を緊密に被嵌できなくなり、端面バリの発生を招く。
【0068】
これに対し、本発明によれば、上述の構成とすることで、シールリング50の内周段部56や上記稜線部が内筒210の上端又は傾斜面に接触することを回避することができるので、内筒210の上端外周を確実に被嵌して、端面バリの発生を抑制できる。
【0069】
また、ここで、成形型100は、図2に示すように、下型10及び上型20を型閉めした状態において、シールリング50の内周段部56の上下方向位置(図2上下方向位置)を、内筒押え40の下端と一致させる構成であるので、この構成によっても端面バリの発生をより確実に抑制することができる。
【0070】
即ち、内周段部56の上下方向位置(図2上下方向位置)を、内筒押え40の下端よりも下方(図2下側)に位置させると、内筒210の寸法公差が大きな場合に、シールリング50の一部が内筒210に乗り上げ易くなり、端面バリの発生を招く。これに対し、内周段部56の上下方向位置が内筒押え40の下端に一致していれば、少なくとも上下方向には内筒押え40が内筒を押さえるため、シールリング50が内筒210へ乗り上げることによる端面バリの発生を抑制できる。
【0071】
一方、内周段部56の上下方向位置(図2上下方向位置)を内筒押え40の下端よりも上方(図2上側)へ位置させると、その分、内筒押え40(胴部42)の外周面が露出されるため、加硫時にキャビティから漏出した成形材料Rが内筒押さえ40の外周面に付着して、かかる内筒押え40の上下方向への摺動変位が阻害される。また、内周段部56の上下方向位置を内筒押え40の下端よりも上方へ位置させると、その分、シールリング50の内周拡径部55、即ち、薄肉となる部位の長さが長くなるため、内筒210の上端外周を緊密に被嵌することができず、端面バリの発生を招く。
【0072】
これに対し、図2に示すように、内周段部56の上下方向位置(図2上下方向位置)が内筒押え40の下端に一致していれば、図2に示す型閉め状態において、内筒押え40(胴部42)の外周面をシールリング50の内周胴部54により被覆することができるので、かかる内筒押え40の外周面に成形材料Rが付着することを抑制して、内筒押え40のスムーズな摺動変位を確保することができる。
【0073】
また、内周段部56の上下方向位置(図2上下方向位置)を内筒押え40の下端に一致させることで、シールリング50の薄肉となる部位(内周拡径部55)の長さが不必要に長くなることを回避して、必要最小限の長さとすることができるので、内筒210の上端外周を緊密に被嵌して、端面バリの発生を確実に抑制することができる。
【0074】
なお、請求項2に記載した「シールリング50の内周段部56と内筒押え40の下端との上下方向位置が一致する」とは、内筒210の軸方向長さがその公差範囲の目標中央値にある場合に一致していれば足り、戻し用ばねSP2による内筒押え40の弾性的な支持(上下方向の摺動変位)により内筒210の軸方向長さの寸法誤差(公差)を吸収する際において、その内筒押え40が目標中央値での位置から上下方向(図2上下方向)へ摺動変位している状態においても、上記上下方向位置が一致していることを要求する趣旨ではない。
【0075】
また、ここで、成形型100は、シールリング50の外周胴部52と入れ子型22の嵌合孔部22bにおける小径孔部22b1との間の隙間が、シールリング50の下端面(図2下側面)から外周段部53までの範囲にわたって連続して形成されると共に、内周段部56が外周段部53よりもシールリング50の下端側(図2下側)に位置する構成であるので、内筒210の上端外周における緊密な被嵌と、内筒押え40の上下方向へのスムーズな摺動変位との両立を図ることができる。
【0076】
図1に示すように、上型20の上面(図1上側面)には、型開きの際に上型20から分離可能なランナブロック80が載設されている。成形型100は、ランナブロック80と上型20との接合面に形成される注入用ランナ溝61と、キャビティに接続される括れ形状のゲート62と、上型20及び入れ子型22を上下に貫通してゲート62と注入用ランナ溝61とを連結する注入孔63とにより、キャビティ内へ成形材料Rを注入するための注入経路60が形成されている。
【0077】
また、図1に示すように、成形型100は、ランナブロック80と上型20との接合面に形成される逃がし用ランナ溝71と、キャビティに接続される括れ形状のゲート72と、上型20及び入れ子型22を上下に貫通してゲート62と逃がし用ランナ溝71とを連結する逃がし用孔73とにより、キャビティ内のエア及び成形材料Rを外部へ排出するための排出経路70が形成されている。
【0078】
防振装置200(図3参照)を成形型100により加硫成形するに際しては、上側20が下型10から離間された型開き状態において、まず、内筒210及び外筒220を型内にセットする。即ち、内筒210を下型10から突出する支持ピン30に嵌入し、内筒210の下端外周をシールリング50で被嵌させつつ、内筒210の下端を保持筒14に係止させて、内筒210を直立状態に支持する。また、外筒220は、入れ子型12の嵌合段部12cに嵌合させてセットする。
【0079】
次いで、上型20を降下させ、下型10と上型20との型閉めを行うと共に、これに伴って、図2に示すように、シールリング50の内周拡径部55を内筒210の上端外周に被嵌させると共に、内筒押え40の係止段部43が内筒210の上端を係止して、かかる内筒210を押圧保持する。同時に、図1に示すように、入れ子型22の嵌合段部22cが外筒220の上端に嵌合する。
【0080】
そして、成形材料Rが、上述した注入経路60を介して、キャビティ内へ注入されると、かかる成形材料Rは、内筒210の両側を廻って排出経路70の側へと流動されると共に、排出経路70から排出されつつ、図1に示すように、キャビティ内に充填されるので、所定の充填圧を保持させつつ、加硫成形を行う。
【0081】
加硫成形後は、型開きを行い、ゲート62,72の箇所から不要部分を切り離して、成形品としての防振装置200(図3参照)を成形型100から抜き取る。この場合、上述したように、支持ピン30をエジェクトピン34により上方(図1上側)へ突き上げることで、内筒210の下端外周を入れ子型12の被嵌部12a及びシールリング50の内周拡径部55から容易に離脱させることができる。
【0082】
同様に、型開きに伴って、内筒押え40が、戻し用ばねSP2の付勢力により、下方(図1下側)へ向けて突出変位することで、内筒210の上端外周を入れ子型22の被嵌部22a及びシールリング50の内周拡径部55との嵌合部から自然的に離脱させることができる(図5参照)。
【0083】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0084】
上記各実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0085】
上記実施の形態では、防振基体200が外筒220を有して構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、防振基体200が外筒220を有さずに構成されていても良い。
【0086】
上記実施の形態では説明を省略したが、シールリング50の軸方向長さ(図2上下方向長さ)は嵌合孔部22bの凹設深さ(図2上下方向長さ)よりも短いことが好ましい。即ち、図2に示すように、シールリング50の外周拡径部51が拡径孔部22b2に内嵌され、かかる外周拡径部51が入れ子型22と上型20との間に挟圧保持された状態において、シールリング50の下端(図2下側)と、嵌合孔部22bの底面(被嵌部22aの上面)との間に隙間が形成されることが好ましい。
【0087】
これにより、内筒210の上端外周を緊密に被嵌して端面バリの発生を抑制しつつ、シールリング50の摩耗を抑制して交換サイクルの延長を図ることができると共に、シールリング50から内筒210を抜き取り易くして作業性の向上を図ることができ、更に、内筒押え40の上下方向への摺動変位を阻害することなく、スムーズに行わせることができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施の形態における成形型の部分断面図である。
【図2】成形型の部分拡大断面図である。
【図3】防振装置の斜視図である。
【図4】(a)はシールリングを軸方向から視た正面図であり、(b)は図4(a)のIVb−IVb線における防振装置の断面図である。
【図5】成形型の部分拡大断面図であり、型開き時の状態を図示する。
【符号の説明】
【0089】
100 成形型
10 下型
12 入れ子型
12a 被嵌部
12b 嵌合孔部
12b1 小径孔部
12b2 拡径孔部
20 上型
22 入れ子型
22a 被嵌部
22b 嵌合孔部
22b1 小径孔部
22b2 拡径孔部
30 支持ピン
40 内筒押え
50 シールリング
51 外周拡径部
52 外周胴部
53 外周段部
54 内周胴部
55 内周拡径部
56 内周段部
200 防振装置
210 内筒
230 防振基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性材から構成される防振基体と前記防振基体が外周に加硫接着される筒状の内筒とを少なくとも有する防振装置を加硫成形する成形型であって、
上下に相対向して位置し前記防振基体の外形を成形する入れ子型を有すると共に上下に型閉めされる下型及び上型と、前記入れ子型内に設置された前記内筒の下端開口より嵌入され前記内筒の下端を係止する支持ピンと、前記支持ピンと同心状に対向配置され前記内筒の上端を係止する内筒押えと、を備え、
前記下型及び上型を型閉めした状態において、前記支持ピンと内筒押えとにより支持した前記内筒の外周側に前記入れ子型によりキャビティを形成すると共に、前記キャビティ内へゴム状弾性材となる成形材料を充填して前記内筒と一体に加硫成形する成形型において、
筒状のシールリングを備え、
前記入れ子型は、前記内筒の端部外周に被嵌される被嵌部と、前記被嵌部に同心に連設され前記シールリングが内嵌される嵌合孔部と、を備えると共に、
前記入れ子型の嵌合孔部は、前記被嵌部に連設される小径孔部と、前記小径孔部に連接されると共に前記小径孔部よりも内径が大きくされる拡径孔部と、を備え、
前記シールリングは、前記シールリングの外周面を構成すると共に前記入れ子型の嵌合孔部における拡径孔部に内嵌される外周拡径部と、前記シールリングの外周面を構成すると共に前記外周拡径部よりも外径が小さくされ前記入れ子型の嵌合孔部における小径孔部との間に隙間を有する外周胴部と、前記外周拡径部と外周胴部との間に位置する外周段部と、前記シールリングの内周面を構成すると共に前記内筒押えが上下方向へ摺動変位可能に内嵌される内周胴部と、前記シールリングの内周面を構成すると共に前記内周胴部よりも内径が大きくされ前記内筒の端部外周に被嵌される内周拡径部と、前記内周拡径部と内周胴部との間に位置する内周段部と、を備えていることを特徴とする成形型。
【請求項2】
前記内筒は、上下端面が鋸刃状の凹凸形状に構成されると共に、上下端外周が先細のテーパ状に構成されるものであり、
前記シールリングは、前記内周胴部の内径が前記内筒のテーパ状の上下端外径よりも大きくされると共に、前記下型及び上型を型閉めした状態において、前記内周段部の上下方向位置が前記内筒押えの下端と一致され、
前記シールリングの外周胴部と前記入れ子型の嵌合孔部における小径孔部との間の隙間は、前記シールリングの外周胴部における全範囲にわたって連続して形成されると共に、前記内周段部が外周段部よりも前記入れ子型の被嵌部側に位置していることを特徴とする請求項1記載の成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−29091(P2009−29091A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198152(P2007−198152)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】