説明

成形機

【課題】 成形機におけるボールを用いた直動ガイド機構やボールネジ機構の耐久性、クリーン性を高め、低騒音化を図り、また、成形機におけるボールネジ機構の可及的な高速回転化を可能とすること。
【解決手段】 直線移動する直線移動部材の直線移動をガイドするボールを用いた直動ガイド機構、および/または、サーボモータの回転を直線運動に変換して直線移動部材を直線移動させるボールネジ機構を備えた成形機において、直動ガイド機構またはボールネジ機構に、ボールの間にリテーナを挟み込んだボールリテーナメカニズムを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機やダイカストマシンなどの成形機に係り、特に、直線移動する直線移動部材の直線移動をガイドするボールを用いた直動ガイド機構、あるいは、サーボモータの回転を直線運動に変換して直線移動部材を直線移動させるボールネジ機構を備えた成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の射出成形機などの成形機に用いられる、ボールを用いた直動ガイド機構や、ボールネジ機構においては、ボール同士が接触しつつ転動して、ボール列が循環する構造をとっており、また、転動子としてのボールは、一般的に、軸受け炭素鋼(SUJ2)によりなる鋼球が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
鋼球のボール同士が接触する従来の直動ガイド機構あるいはボールネジ機構においては、ボール同士が完全な点接触をするので、単位面圧が高くなり、油膜切れを起こし易いので、相互摩擦による摩耗を生じ易く、また、発熱も生じ易いので、寿命が短くなり、かつ、騒音や摩耗塵の発生も問題となる。また、鋼球のボールを用いているので、鋼球の許容圧縮荷重から来る制約で、ボールネジ機構においては、DN値(軸径×回転数)で置き換えて表される許容回転数を所定以上には高めることができず、ボールネジ機構の高速回転化を阻害する要因となっていた。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、成形機におけるボールを用いた直動ガイド機構やボールネジ機構の耐久性、クリーン性を高め、低騒音化を図ることにある。また、本発明の目的とするところは、成形機におけるボールネジ機構の可及的な高速回転化を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記した目的を達成するため、直線移動する直線移動部材の直線移動をガイドするボールを用いた直動ガイド機構、および/または、サーボモータの回転を直線運動に変換して直線移動部材を直線移動させるボールネジ機構を備えた成形機において、直動ガイド機構またはボールネジ機構に、ボールの間にリテーナを挟み込んだボールリテーナメカニズムを用いる。
【0006】
また、直線移動する直線移動部材の直線移動をガイドするボールを用いた直動ガイド機構を備えた成形機において、直動ガイド機構のボールにセラミックスボールを用いる。
【0007】
また、直線移動する直線移動部材の直線移動をガイドするボールを用いた直動ガイド機構、および、サーボモータの回転を直線運動に変換して直線移動部材を直線移動させるボールネジ機構を備えた成形機において、直動ガイド機構およびボールネジ機構のボールにセラミックスボールを用いる。
【発明の効果】
【0008】
ボールの間にリテーナを挟み込んだボールリテーナメカニズムをとる直動ガイド機構あるいはボールネジ機構においては、ボールの間にプラスチック製のリテーナが介在するので、従来のようにボール同士が接触せず、ボールとリテーナが接触するので面圧が低くなり、また、ボール同士の衝突による騒音の発生も皆無となり、さらに、ボールが均一に整列されて循環するので、ころがり抵抗変動がなく滑らかな動きが得られ、さらにまた、グリースがリテーナに保持されて循環して、グリースポケット部でボールが回転されると油膜が形成されるので、ボール表面の油膜が切れにくくなる。その結果、ボール同士が接触しないことと、面圧が低くなることと、良好な油膜維持効果などが相俟って、長寿命化が達成できて、かつ、発熱や発塵や騒音や振動を抑えることが可能となり、さらに、グリース保持能力が高まるので、補給するグリースの量を大幅に低減できて、長期にわたりメンテナンスフリーとすることも可能となり、クリーニング性が高まり、ランニングコストも抑えることができる。
【0009】
また、セラミックスボールを用いた直動ガイド機構あるいはボールネジ機構においては、セラミックスボールの質量が鋼球に較べると格段に小さいので、単位衝撃エネルギーを大幅に小さくでき、また、セラミックスボールの縦弾性係数は、鋼球のそれと比較すると約1.5倍であり、負荷に対する剛性が高いので(つまり、許容圧縮荷重が鋼球のそれと比較すると約1.5倍であるので)、耐久性を高めることができる。さらに、セラミックスボールは油膜形成に優れ、潤滑条件が良好となるので、鋼球同士が接触する従来構造に比較すると、使用するグリース量を約1/5程度に低減できて、クリーン性が良くなり、ランニングコストも抑えられる上、故障寿命が約1.5倍程度延びる。さらにまた、セラミックスボールは鋼球に較べると、許容圧縮荷重が大きいので、ボールネジ機構においては、鋼球を用いたボールネジ機構よりもDN値を大幅に向上させることができ(許容回転数を大幅に高めることができ)、したがって、鋼球を用いたボールネジ機構よりも大幅な高速回転が可能となり、運転の可及的な高速化を図ることができる。また、許容圧縮荷重が鋼球の約1.5倍であるため、ボールネジ径を小さくしてもメカ信頼性を保つことが保証されるので、ボールネジ径を小さくすることで慣性を小さくでき、これにより、加減速の過渡応答性が高まり、この点でも、運転の高速化に大きく寄与する。
【0010】
さらにまた、ボールリテーナメカニズムをとる直動ガイド機構あるいはボールネジ機構において、使用するボールをセラミックスボールとすると、上述したボールリテーナメカニズムによる利点とセラミックスボールによる利点との相乗効果によって、より一層の長寿命化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る射出成形機における型開閉メカニズム系の要部構成を示す図である。
【0013】
図1において、1はベースフレーム、2は、ベースフレーム1上に固設された平行な1対のレール部材、3は、ベースフレーム1上に固設された固定ダイプレート、4は、固定ダイプレート3に搭載された固定側金型、5は、型締め駆動源(型開閉駆動源)である図示せぬ型締め用サーボモータなどを搭載した保持プレート(テールストック)、6は、固定ダイプレート3の4隅と保持プレート5の4隅との間にそれぞれ架け渡らされた4本のタイバー、7は、各タイバー6に挿通・案内されて前後進可能な可動ダイプレート、8は、可動ダイプレート7に搭載された可動側金型、9は、保持プレート5に回転可能であるように保持され、型締め用サーボモータの回転が伝達される被動プーリ、10は、被動プーリ9と一体に回転するナット体(図示せず)と、該ナット体が螺合したボールネジ軸10aとを持つボールネジ機構、11は、その力の入力端であるクロスヘッド11aに、ボールネジ機構10の直線運動部であるボールネジ軸10aの先端が固定され、型締め用サーボモータにより伸張/折り畳み駆動されることにより、可動ダイプレート7を前後進させるトグルリンク機構、12は、タイバー6の一端側を固定ダイプレート3に固定する締付けナット、13は、保持プレート5に回転可能であるように保持されるとともに、タイバー6の他端側に螺合されて、保持プレート5に搭載された図示せぬダイハイト(型厚)調整用サーボモータにより回転駆動される調整ナット体、14A、14Bは、保持プレート5の下部および可動ダイプレート7の下部にそれぞれ取り付けられ、レール部材2上を直線移動可能な直動部材であり、直動部材14Aとレール2とにより保持プレート5の直動ガイド機構が構成されており、直動部材14Bとレール2とにより可動ダイプレート7の直動ガイド機構が構成されている。
【0014】
図1に示す構成において、ダイハイト調整時には、図示せぬダイハイト調整用サーボモータにより各調整ナット体13を同期回転させて、直動部材14Aに担持された保持プレート5をレール2に沿って直線移動させ、ダイハイト調整後は、保持プレート5の位置を維持するようにされる。
【0015】
また、図1に示す構成において、成形運転時には、固定側金型4の図示せぬ樹脂注入口には、後記する射出メカニズム系のノズルが押し付けられた状態となっている。そして、型開き状態から型閉じを行う際には、図示せぬ型締め用サーボモータを所定方向に回転させて、被動プーリ9、ボールネジ機構10を介してクロスヘッド11aを図1で右行方向に前進させて、トグルリンク機構11を伸張駆動し、これにより、直動部材14Bに担持された可動ダイプレート7を、レール2に沿って固定ダイプレート3の方向に前進駆動する。そして、トグルリンク機構11を完全に突っ張らせることによりタイバー6を弾性的に伸ばし、このタイバー6の弾性回復力により型締め力を発生させる。また、型締め状態から型開きを行う際には、型締め用のサーボモータを先とは逆方向に回転させて、被動プーリ9、ボールネジ機構10を介してクロスヘッド11aを図1で左行方向に後退させて、トグルリンク機構11を折り畳み駆動し、これにより、直動部材14Bに担持された可動ダイプレート7を、レール2に沿って固定ダイプレート3から離間する方向に後退駆動するようになっている。
【0016】
図2は、本発明の第1実施形態に係る射出成形機における射出メカニズム系の要部構成を示す図である。
【0017】
図2において、1はベースフレーム、21は、ベースフレーム1上に固設された平行な1対のレール部材、22は射出ユニットのベース盤、23A、23B、23Cは、ベース盤22の下部に取り付けられてレール部材21上を直線移動可能な部材であり、レール21との協働によってベース盤22の直動ガイド機構を構成する直動部材、24は、ベース盤23上に固設された保持プレート(ヘッドストック)、25は、保持プレート24と所定距離をおいて対向するように配置された保持プレート、26は、2つの保持プレート24、25の間に架け渡された複数本のガイドバー、27は、その基部を保持プレート24に固定された加熱シリンダ、28は、加熱シリンダ1の先端に取り付けられたノズル、29は、加熱シリンダ27およびノズル28に巻装されたバンドヒータ、30は、図示せぬホッパーから原料樹脂(樹脂ペレット)を加熱シリンダ27の内部へ供給するため保持プレート24に穿設された樹脂供給穴、31は、樹脂供給穴30と連通するように加熱シリンダ27の基端側に穿設された樹脂供給穴、32は、加熱シリンダ1内に回転並びに前後進可能であるように配設されたスクリュー、33は、ガイドバー26に直線移動可能に挿通されたスクリュー移送体、34は、スクリュー移送体33に回転可能であるように保持されると共に、スクリュー32の基端部が固定された回転体、35は、回転体34に固定されると共に、図示せぬ計量用サーボモータによって回転駆動される被動プーリ、36は、スクリュー移送体33に固定されたナット体36bと、該ナット体36bが螺合すると共に、その非ネジ部を保持プレート25に取り付けられた軸保持体37によって回転可能に保持されたボールネジ軸36aとを、持つボールネジ機構、38は、ベース盤22上に保持材39を介して取り付けられた射出用サーボモータ、40は、ボールネジ軸36aの非ネジ部の端部と、射出用サーボモータ38の出力軸とを、両者が一体回転するように同一直線上で連結したカップリングである。
【0018】
図2に示す構成において、ノズルタッチ動作時には、図示せぬノズルタッチ/ノズルバック用サーボモータの回転で、図示せぬボールネジ機構により、直動部材23A、23B、23Cに担持されたベース盤22がレール部材21に沿って直線移動(図示左行方向)され、これにより、射出ユニット全体が直線移動されて、射出ユニットのノズル28が固定側金型4の図示せぬ樹脂注入口に押し付けられる。また、ノズルバック動作時には、同様に図示せぬノズルタッチ/ノズルバック用サーボモータの回転で、図示せぬボールネジ機構により、直動部材23A、23B、23Cに担持されたベース盤22がレール部材21に沿って直線移動(図示右行方向)され、これにより、射出ユニット全体が直線移動されて、ノズル28が固定側金型4の図示せぬ樹脂注入口から引き離される。
【0019】
また、図2に示す構成において、計量行程時には、図示せぬ計量用サーボモータが回転駆動され、これにより、被動プーリ35、回転体34が回転駆動され、回転体34と一体のススクリュー32が所定方向に回転する。このスクリュー32の回転によって、スクリュー32の後端側に供給された樹脂材料が、混練・可塑化されつつ、スクリュー32のネジ送り作用によって前方に移送され、スクリュー32の前方に溶融樹脂が貯まるにしたがって、スクリュー32は後退する。このとき、射出用サーボモータ38が圧力フィードバック制御で駆動制御されて、カップリング40を介してボールネジ軸36aが適宜に回転駆動され、これにより、ボールネジ軸36aに螺合したナット体36b、スクリュー移送体33、回転体34を介して、スクリュー32にかかる背圧が制御されつつ、スクリュー32が後退する。そして、スクリュー32の前方に所定量の溶融樹脂が貯えられた時点で、図示せぬ計量用サーボモータによるスクリュー32の回転駆動は停止される。
【0020】
また、図2に示す構成において、射出充填行程時には、計量完了後の適宜タイミングで、射出用サーボモータ38が速度フィードバック制御で駆動制御され、カップリング40を介してボールネジ軸36aが高速回転駆動されて、ナット体36bが高速前進駆動され、これによって、スクリュー移送体33、回転体34を介して、スクリュー32が高速に前進駆動されて、スクリュー32の前方に貯えられた溶融樹脂が、型締め状態の金型のキャビティ内に射出充填される。この射出充填後は、射出用サーボモータ38が圧力フィードバック制御で駆動制御され、これにより、ボールネジ軸36aに螺合したナット体36b、スクリュー移送体33、回転体34を介して、スクリュー32に所定の圧力がかけられて、キャビティ内の樹脂に保圧力が印加される。
【0021】
本実施形態では、前記直動体14A、14Bとレール部材2とで構成される直動ガイド機構、および、前記直動部材23A、23B、23Cとレール部材21で構成される直動ガイド機構に、図3に示すような、ボールリテーナメカニズムを採用している。
【0022】
図3において、51はレール部材、52は直動部材であり、同図では、直動部材52の内部を示すために、直動部材52の端面シール板の一部を取り去って描いてある。また、図3において、53は鋼球よりなるボール、54はプラスチック製の円筒状のリテーナであり、リテーナ54はボール53の間に挟み込まれるように配置されて、ボール53とリテーナ54の両者は、直動部材52のころがり案内部52aを循環するように、直動部材52内に収納されると共に、レール部材51の直動ころがり案内部51aを移動可能となっている。ころがり案内部52a、直動ころがり案内部51aを転動しつつ循環するボール53は、リテーナ54を間に挟んでおり、ボール53同士が接触することはなく、また、図示していないがエンドレスのベルトでリテーナ54を保持しているので、ボール53は均一に整列されて循環し、ころがり抵抗変動がなく滑らかに動作するようになっている。
【0023】
このように、本実施形態では、ボールリテーナメカニズムを採用した直動ガイド機構を用いるようにしているので、従来のようにボール同士が接触せず、ボール53とリテーナ54が接触するので面圧が低くなり、また、ボール53同士の衝突による騒音の発生も皆無となり、さらに、ボール53が均一に整列されて循環するので、ころがり抵抗変動がなく滑らかな動きが得られ、さらにまた、グリースがリテーナ54に保持されて循環して、グリースポケット部でボールが回転されると油膜が形成されるので、ボール表面の油膜が切れにくくなる。その結果、ボール同士が接触しないことと、面圧が低くなることと、良好な油膜維持効果などが相俟って、長寿命化が達成できて、かつ、発熱や発塵や騒音や振動を抑えることが可能となり、さらに、グリース保持能力が高まるので、補給するグリースの量を大幅に低減できて、長期にわたりメンテナンスフリーとすることも可能となり、クリーニング性が高まり、ランニングコストも抑えることができる。
【0024】
また、本実施形態では、前記ボールネジ機構10、前記ボールネジ機構36などのボールネジ機構に、図4に示すような、ボールリテーナメカニズムを採用している。
【0025】
図4において、61はボールネジ軸、62はナット体であり、同図では、ナット体62の内部を示すために、ナット体62の一部を破断して描いてある。また、図4において、63は鋼球よりなるボール、64はプラスチック製の円筒状のリテーナであり、リテーナ64はボール63の間に挟み込まれるように配置されて、ボール63とリテーナ64の両者は、ナット体62のヘリカルころがり案内部62aを循環するように、ナット体62内に収納されると共に、ボールネジ軸61のヘリカルころがり案内部61aを移動可能となっている。ヘリカルころがり案内部62a、ヘリカルころがり案内部61aを転動しつつ循環するボール63は、リテーナ64を間に挟んでおり、ボール63同士が接触することはなく、また、ボール63は均一に整列されて循環し、ころがり抵抗変動がなく滑らかに動作するようになっている。
【0026】
このように、本実施形態では、ボールリテーナメカニズムを採用したボールネジ機構を用いるようにしているので、従来のようにボール同士が接触せず、ボール63とリテーナ64が接触するので面圧が低くなり、また、ボール63同士の衝突による騒音の発生も皆無となり、さらに、ボール63が均一に整列されて循環するので、ころがり抵抗変動がなく滑らかな動きが得られ、さらにまた、グリースがリテーナ64に保持されて循環して、グリースポケット部でボールが回転されると油膜が形成されるので、ボール表面の油膜が切れにくくなる。その結果、ボール同士が接触しないことと、面圧が低くなることと、良好な油膜維持効果などが相俟って、長寿命化が達成できて、かつ、発熱や発塵や騒音や振動を抑えることが可能となり、さらに、グリース保持能力が高まるので、補給するグリースの量を大幅に低減できて、長期にわたりメンテナンスフリーとすることも可能となり、クリーニング性が高まり、ランニングコストも抑えることができる。さらに、面圧が低くなり、滑らかな動きが得られるので、リテーナがなく鋼球のボール同士が接触する従来のボールネジ機構に較べると、DN値を大幅に向上させることができる。つまり、リテーナがなく鋼球のボール同士が接触する従来のボールネジ機構のDN値は概ね7万程度であるのに対し、本実施形態のボールネジ機構のDN値は略21万を達成でき、このように、DN値を大幅に向上させることで、許容回転数を大幅に高めることがで可能となり、よって、大幅な高速回転が可能となり、運転の可及的な高速化を図ることができる。したがって、このようなボールリテーナメカニズムを採用したボールネジ機構を射出系に用いることで、射出成形機にとって重要な射出充填速度を大幅に上げることができる。
【0027】
<第2実施形態>
本第2実施形態は、前記第1実施形態における、前記直動体14A、14Bとレール部材2とで構成される直動ガイド機構、および、前記直動部材23A、23B、23Cとレール部材21で構成される直動ガイド機構として、リテーナのないボール同士が接触する構造の直動ガイド機構を採用し、かつ、直動ガイド機構に用いるボールとして、窒化珪素系セラミックス(Si)よりなるセラミックスボールを用いる共に、前記第1実施形態における、前記ボールネジ機構10、前記ボールネジ機構36などのボールネジ機構として、リテーナのないボール同士が接触する構造のボールネジ機構を採用し、かつ、ボールネジ機構に用いるボールとして、窒化珪素系セラミックスよりなるセラミックスボールを用いたものである。
【0028】
本実施形態では、直動ガイド機構、ボールネジ機構の転動子としてのボールを、窒化珪素系セラミックスよりなるセラミックスボールを用いており、このセラミックスボールは、鋼球に較べて、質量が半分以下で単位衝撃エネルギーが大幅に小さく、したがって、高速回転の際、循環部への衝突エネルギーが小さく、損傷の大幅な低減が図れ、また、質量が軽いので衝突音も小さくなる(騒音も小さくなる)。また、セラミックスボールの線膨張係数は、鋼球のそれに較べると1/4以下であるので、熱変形が少なく、熱的損傷の虞が殆どなく、かつ、発熱の低減にも繋がる。また、セラミックスボールを用いると、セラミックスボールは油膜形成に優れているので、潤滑条件が良好となり、使用するグリース量を鋼球の場合の約1/5程度に低減できて、クリーン性が良くなり、ランニングコストも抑えられる上、たとえボール同士が接触する構造ではあっても、故障寿命も鋼球のそれと比較すると、約1.5倍程度延ばすことができる。
【0029】
また、セラミックスボールの縦弾性係数は、鋼球のそれに較べると約1.5倍であるので、(つまり、許容圧縮荷重が鋼球のそれと比較すると約1.5倍であるので)、セラミックスボールを用いたボールネジ機構においては、たとえボール同士が接触する構造ではあっても、鋼球を用いたボールネジ機構よりもDN値を大幅に向上させることができ(許容回転数を大幅に高めることができ)、したがって、鋼球を用いたボールネジ機構よりも大幅な高速回転が可能となり、運転の可及的な高速化を図ることができる。また、許容圧縮荷重が鋼球の約1.5倍であるため(負荷に対する剛性が鋼球のそれより約50%アップしているので)、ボールネジ径を小さくしてもメカ信頼性を保つことが保証されるので、ボールネジ径を小さくすることができる。いま、例えば鋼球を用いた場合のボールネジ径が50mmであったものが、セラミックスボールを用いるとボールネジ径を40mmにできると仮定すると、概ね、鋼球のボールネジ機構のDN値が7万であるのに対して、セラミックスボールのボールネジ機構のDN値は15万であるので、鋼球のボールネジ機構の許容回転数がN=70000/50=1400(rpm)であるのに対して、セラミックスボールのボールネジ機構の許容回転数はN=150000/40=3750(rpm)となるので、このようなセラミックスボールを採用したボールネジ機構を射出系に用いることで、許容回転数の大幅なアップにより、射出成形機にとって重要な射出充填速度を大幅に上げることができる。また、前記のようにボールネジ径を50mmから40mmに小さくすることで、回転円柱体のGD(慣性)は径の4乗に比例することから、ボールネジ軸のGD(慣性)は約半分に小さくできる。さらに、ボールネジ軸の径を小さくすることで、射出系のボールネジ機構36の回転部であるボールネジ軸36aを保持する軸保持体(軸受けベアリング)の回転部分の径を小さくできるので、それらの部材の慣性を小さくできることも相俟って、射出駆動部全体の慣性が約半分以下に小さくすることが可能で、射出成形機にとって重要な射出充填加減速時間を大幅に短縮することができるとともに、加減速の過渡応答性が高まり、この点でも、運転の高速化に大きく寄与する。
【0030】
<第3実施形態>
本第3実施形態は、前記第1実施形態における、前記直動体14A、14Bとレール部材2とで構成される直動ガイド機構、および、前記直動部材23A、23B、23Cとレール部材21で構成される直動ガイド機構として、ボールリテーナメカニズムをもつ直動ガイド機構を採用し、かつ、直動ガイド機構に用いるボールとして、窒化珪素系セラミックス(Si)よりなるセラミックスボールを用いる共に、前記第1実施形態における、前記ボールネジ機構10、前記ボールネジ機構36などのボールネジ機構として、ボールリテーナメカニズムをもつボールネジ機構を採用し、かつ、ボールネジ機構に用いるボールとして、窒化珪素系セラミックスよりなるセラミックスボールを用いたものである。
【0031】
このように本実施形態では、ボールリテーナメカニズムをとる直動ガイド機構あるいはボールネジ機構において、使用するボールをセラミックスボールとしているので、上述したボールリテーナメカニズムによる利点とセラミックスボールによる利点との相乗効果によって、より一層の長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る射出成形機における、型開閉メカニズム系の要部構成を示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る射出成形機における、射出メカニズム系の要部構成を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る射出成形機において用いる直動ガイド機構を示す説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る射出成形機において用いるボールネジ機構を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ベースフレーム
2 レール部材
3 固定ダイプレート
4 固定側金型
5 保持プレート(テールストック)
6 タイバー
7 可動ダイプレート
8 可動側金型
9 被動プーリ
10 ボールネジ機構
10a ボールネジ軸
11 トグルリンク機構
11a クロスヘッド
12 締付けナット
13 調整ナット体
14A、14B 直動部材
21 レール部材
22 射出ユニットのベース盤
23A、23B、23C 直動部材
24 保持プレート(ヘッドストック)
25 保持プレート
26 ガイドバー
27 加熱シリンダ
28 ノズル
29 バンドヒータ、
30、31 樹脂供給穴
32 スクリュー
33 スクリュー移送体
34 回転体
35 被動プーリ
36 ボールネジ機構
36a ボールネジ軸
36b ナット体
37 軸保持体
38 射出用サーボモータ
39 保持材
40 カップリング
51 レール部材
51a 直動ころがり案内部
52 直動部材
52a ころがり案内部
53 ボール
54 リテーナ
61 ボールネジ軸
61a ヘリカルころがり案内部
62 ナット体
62a ヘリカルころがり案内部
63 ボール
64 リテーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線移動する直線移動部材の直線移動をガイドするボールを用いた直動ガイド機構、および/または、サーボモータの回転を直線運動に変換して直線移動部材を直線移動させるボールネジ機構を備えた成形機において、
前記直動ガイド機構または前記ボールネジ機構に、ボールの間にリテーナを挟み込んだボールリテーナメカニズムを用いたことを特徴とする成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の成形機において、
前記ボールにセラミックスボールを用いたことを特徴とする成形機。
【請求項3】
直線移動する直線移動部材の直線移動をガイドするボールを用いた直動ガイド機構を備えた成形機において、
前記直動ガイド機構のボールにセラミックスボールを用いたことを特徴とする成形機。
【請求項4】
直線移動する直線移動部材の直線移動をガイドするボールを用いた直動ガイド機構、および、サーボモータの回転を直線運動に変換して直線移動部材を直線移動させるボールネジ機構を備えた成形機において、
前記直動ガイド機構および前記ボールネジ機構のボールにセラミックスボールを用いたことを特徴とする成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−7479(P2006−7479A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185272(P2004−185272)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】