説明

成膜方法と成膜装置、マスク、パターン膜、光電変換素子、及び太陽電池

【課題】光電変換素子の構成膜等の成膜に好ましく適用でき、複数のライン状パターンを有するパターン膜を直接パターン成膜することが可能な成膜方法を提供する。
【解決手段】ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤを有するマスクMを用いて、物理気相成長(PVD)法によりパターン成膜を行う。若しくは、1本のワイヤが折り曲げられて形成され、ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤ部を有するマスクを用いて、PVD法によりパターン成膜を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のライン状パターンを有するパターン膜を成膜する成膜方法と成膜装置、これら成膜方法と成膜装置に用いるマスク、複数のライン状パターンを有するパターン膜、及びこれを用いた光電変換素子と太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下部電極(裏面電極)と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層と上部電極との積層構造を有する光電変換素子が、太陽電池等の用途に使用されている。
従来、太陽電池においては、バルクの単結晶Si又は多結晶Si、あるいは薄膜のアモルファスSiを用いたSi系太陽電池が主流であったが、Siに依存しない化合物半導体系太陽電池の研究開発がなされている。化合物半導体系太陽電池としては、GaAs系等のバルク系と、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなるCIS(Cu−In−Se)系あるいはCIGS(Cu−In−Ga−Se)系等の薄膜系とが知られている。CIS系あるいはCIGS系は、光吸収率が高く、高エネルギー変換効率が報告されている。
【0003】
薄膜系光電変換素子等の各種電子デバイスの分野においては、可撓性基板上に各種機能膜を成膜及び加工して、デバイス全体を薄板状に加工する技術の開発が進められている。かかるプロセスでは、原材料使用量を低減でき、製造工程を連続工程(Roll to Roll工程)とすることができるので、製造コストを低減することができる。光電変換素子用の可撓性基板としては、金属基材の表面に絶縁膜を形成した基板等が挙げられる。
【0004】
従来より、高効率化及び低コスト化等を目的として、集積デバイスをモノリシックに作製することが行なわれている。その際、鍵となる技術の一つが、薄膜に開溝部を設けて多数のセルに分割する技術である。多数のセルに分割するための上記開溝部を形成する際には、基板の位置を高精度に検出する必要がある。
【0005】
例えば図4A及び図4Bに示すように、薄膜系光電変換素子1では一般に、短手方向断面視において、下部電極20のみを貫通する第1の開溝部61、光電変換層30とバッファ層40とを貫通する第2の開溝部62、及び上部電極50のみを貫通する第3の開溝部63が形成されており、長手方向断面視において、光電変換層30とバッファ層40と上部電極50とを貫通する第4の開溝部64が形成されている。これらの開溝部61〜64によって、光電変換素子1が多数のセルCに分離されると共に、多数のセルCの直列接続構造が形成されている。
【0006】
従来、上記開溝部61〜64は、開溝部のないベタ膜を成膜した後、スクライブ加工により形成されている。光電変換素子1においては、それぞれの膜の材質及び特性により適したスクライブ加工が実施される。例えば、CIGS系の素子では通常、第1の開溝部61はレーザスクライブ加工により形成され、第2〜第4の開溝部62〜64はスクライブ刃を用いた機械的なスクライブ加工により形成されている。
【0007】
非特許文献1には、ワイヤソーを用いた光電変換素子の電極及び光電変換層等のスクライブ加工が提案されている。
特許文献1の段落0040には、光電変換素子の電極及び光電変換層等をフォトリソグラフィによりパターニングすることが好ましいことを記載されており、段落0053,0094等にはドライエッチングとウエットエッチングの2段エッチングの例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-123720号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】平成13年度新エネルギー・産業技術総合開発機構 委託業務成果報告書「CI S系薄膜太陽電池モジュール製造技術開発(高品質薄膜製造高速化技術)」太陽光発電技術研究組合 松下電器産業株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のスクライブ加工あるいは非特許文献1に記載のワイヤソーによる開溝部の形成方法では、開溝部のないベタ膜を成膜した後、ベタ膜の開溝部形成部分を除去して開溝部を形成しているため、材料の無駄が多い上、大量の削りカスが生じてしまう。削りカスが基板に付着すると、歩留まり低下の原因になり得る。
【0011】
水洗、超音波洗浄、ガス噴射、及び、静電気又は電磁気を用いた集塵等により削りカスを取り除くことができるが、高クリーンレベルを維持することは難しい。洗浄工程を設ける場合には、手間のかかる洗浄工程、さらに洗浄方法によってはその後の乾燥工程が増えて全体の工程数が増えるため、非効率的であり生産性が良くなく、全体の製造装置が大きくなり、製造コストが大きくなる。また、真空一貫の連続工程(Roll to Roll工程)で光電変換素子を製造しようとするときには真空を破らなくてはいけない。
【0012】
特許文献1に記載の方法では、ウエット工程を含むため、やはり真空を破らなくてはいけない。また、ドライエッチングとウエットエッチングの2段階のエッチングを実施するのは、非効率的であり生産性が良くなく、全体の製造装置が大きくなり、製造コストが大きくなる。
【0013】
非特許文献1に記載のワイヤソーを用いた方法では、被パターニング膜を機械的に削るため、被パターニング膜にクラックあるいは欠陥等のダメージを与える恐れもある。
【0014】
以上の点を考慮すれば、光電変換素子の構成膜を直接パターニングできることが好ましい。半導体デバイスの分野においては金属マスクを用いた気相成膜により直接パターニングすることがなされているが、nm〜μmオーダーのパターンである。光電変換素子において、基板の短手方向に延びたパターンのサイズは例えば50μm幅×60cm長であり、基板の長手方向に延びたパターンのサイズは例えば50μm幅×1.2m長である。従来は、線幅がμオーダーで、長さが60cm〜1.2mである細線パターンの直接パターニング方法は実用化されていない。かかる細線パターンに従来の金属マスクを適用しようとしても、マスクの強度が確保できない。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、光電変換素子の構成膜等の成膜に好ましく適用でき、複数のライン状パターンを有するパターン膜を直接パターン成膜することが可能な成膜方法及び成膜装置を提供することを目的とするものである。
本発明はまた、上記の成膜方法を用いて成膜されたパターン膜、及びこれを備えた光電変換素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の成膜方法は、基板上に複数のライン状パターンを有するパターン膜を成膜する成膜方法において、
前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤを有するマスクを用いて、物理気相成長(PVD)法によりパターン成膜を行うことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第1の成膜方法において、前記マスクは、個々の前記ワイヤの両端部が該ワイヤの線方向に直交する方向に延びた一対の固定部材に固定されたものであることが好ましい。
【0018】
本発明の第2の成膜方法は、基板上に複数のライン状パターンを有するパターン膜を成膜する成膜方法において、
1本のワイヤが折り曲げられて形成され、前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤ部を有するマスクを用いて、物理気相成長(PVD)法によりパターン成膜を行うことを特徴とするものである。
【0019】
本発明の第2の成膜方法において、前記ワイヤは切れることなく全体が繋がったものであり、前記ワイヤを線方向に流して循環させることが可能なものであることが好ましい。
【0020】
本発明の第2の成膜方法において、前記ワイヤの一部を前記成膜が行われない箇所に配設し、前記パターン成膜の最中若しくは終了後に、前記ワイヤを線方向に流して循環させ、前記成膜が行われない箇所において前記ワイヤに付着した成膜材料を洗浄除去する処理を行うことが好ましい。
【0021】
本発明の第1,第2の成膜方法は、前記ライン状パターンの幅が30μm以上で長さが150.0mm以上である場合に有効である。
【0022】
本発明の第1,第2の成膜方法において、前記基板を搬送すると共に、前記基板の搬送速度に合わせて、前記基板の搬送方向に前記マスクを移動させながら、前記パターン成膜を行うことが好ましい。
【0023】
本発明の第1,第2の成膜方法は、前記パターン膜が、下部電極と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層と上部電極との積層構造を有し、かつ該積層構造が複数の開溝部によって複数のセルに分割された光電変換素子の構成膜である場合に有効である。
【0024】
本発明の第1,第2の成膜方法は、前記光電変換素子の前記下部電極、前記光電変換半導体層、及び前記上部電極のうち少なくとも1つの成膜に適用できる。
【0025】
本発明の第1のマスクは、複数のライン状パターンを有するパターン膜を物理気相成長(PVD)法により成膜する際に用いられるマスクにおいて、
前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤを有することを特徴とするものである。
【0026】
本発明の第1のマスクは、個々の前記ワイヤの両端部が該ワイヤの線方向に直交する方向に延びた一対の固定部材に固定されたものであることが好ましい。
【0027】
本発明の第2のマスクは、複数のライン状パターンを有するパターン膜を物理気相成長(PVD)法により成膜する際に用いられるマスクにおいて、
1本のワイヤが折り曲げられて形成され、前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤ部を有することを特徴とするものである。
【0028】
本発明の第2のマスクは、前記ワイヤは切れることなく全体が繋がったものであり、前記ワイヤを線方向に流して循環させることが可能なものであることが好ましい。
【0029】
本発明の第1の成膜装置は、基板上に複数のライン状パターンを有するパターン膜を成膜する成膜装置において、
前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤを有するマスクを備え、物理気相成長(PVD)法によりパターン成膜を行うものであることを特徴とするものである。
【0030】
本発明の第1の成膜装置において、前記マスクは、個々の前記ワイヤの両端部が該ワイヤの線方向に直交する方向に延びた一対の固定部材に固定されたものであることが好ましい。
【0031】
本発明の第2の成膜装置は、基板上に複数のライン状パターンを有するパターン膜を成膜する成膜装置において、
1本のワイヤが折り曲げられて形成され、前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤ部を有するマスクを備え、物理気相成長(PVD)法によりパターン成膜を行うものであることを特徴とするものである。
【0032】
本発明の第2の成膜装置において、前記ワイヤは切れることなく全体が繋がったものであり、前記ワイヤを線方向に流して循環させることが可能なものであることが好ましい。
【0033】
本発明の第2の成膜装置において、前記ワイヤの一部は前記成膜が行われない箇所に配設されており、該箇所に前記ワイヤに付着した成膜材料を洗浄除去する洗浄除去装置が設けられていることが好ましい。
【0034】
本発明の第1,第2の成膜装置は、前記ライン状パターンの幅が30μm以上で長さが150.0mm以上である場合に有効である。
【0035】
本発明の第1,第2の成膜装置は、前記基板を搬送する基板搬送手段と、前記基板の搬送速度に合わせて、前記基板の搬送方向に前記マスクを移動させるマスク移動手段とを備えていることが好ましい。
【0036】
本発明の第1,第2の成膜装置は、前記パターン膜が、下部電極と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層と上部電極との積層構造を有し、かつ該積層構造が複数の開溝部によって複数のセルに分割された光電変換素子の構成膜である場合に有効である。
【0037】
本発明の第1,第2の成膜装置は、前記光電変換素子の前記下部電極、前記光電変換半導体層、及び前記上部電極のうち少なくとも1つの成膜に有効である。
【0038】
本発明の第1のパターン膜は、上記の本発明の成膜方法により成膜されたものであることを特徴とするものである。
【0039】
本発明の第2のパターン膜は、複数のライン状パターンを有するパターン膜において、
前記ライン状パターンの幅が30μm以上で長さが150.0mm以上であり、
前記複数のライン状パターンのパターン間隙の成膜と除去が実施されることなく、直接パターン形成されたものであることを特徴とするものである。
【0040】
本発明の光電変換素子は、下部電極と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層と上部電極との積層構造を有し、かつ該積層構造が複数の開溝部によって複数のセルに分割された光電変換素子において、
上記の本発明の第1又は第2のパターン膜を備えたことを特徴とするものである。
【0041】
本発明の光電変換素子において、前記下部電極、前記光電変換半導体層、及び前記上部電極のうち少なくとも1つを前記パターン膜により構成することができる。
【0042】
本発明の光電変換素子において、前記光電変換層の主成分が、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる化合物半導体であることが好ましい。
【0043】
本発明の太陽電池は、上記の本発明の光電変換素子を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、光電変換素子の構成膜等の成膜に好ましく適用でき、複数のライン状パターンを有するパターン膜を直接パターン成膜することが可能な成膜方法及び成膜装置を提供することができる。
本発明によれば、上記の成膜方法を用いて成膜されたパターン膜、及びこれを備えた光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】本発明に係る第1実施形態のマスクの構成例を示す平面図
【図1B】本発明に係る第1実施形態のマスクのその他の構成例を示す平面図
【図2A】本発明に係る第2実施形態のマスクの構成例を示す平面図
【図2B】本発明に係る第2実施形態のマスクのその他の構成例を示す平面図
【図3】本発明に係る一実施形態の成膜装置の構成を示す斜視図
【図4A】本発明に係る一実施形態の光電変換素子の短手方向の模式断面図
【図4B】本発明に係る一実施形態の光電変換素子の長手方向の模式断面図
【図5】陽極酸化基板の構成を示す模式断面図
【図6】陽極酸化基板の製造方法を示す斜視図
【図7】I−III−VI化合物半導体における格子定数とバンドギャップとの関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0046】
「第1実施形態のマスク」
図面を参照して、本発明に係る第1実施形態のマスクの構成について説明する。図1A,図1Bはマスクの平面図であり、ワイヤ111の拡大斜視図を合わせて図示してある。図面上は視認しやすくするため、実際のものとは適宜縮尺を異ならせてある。
【0047】
図1Aに示すマスク110A及び図1Bに示すマスク110Bはいずれも、複数のライン状パターンを有するパターン膜を物理気相成長(PVD)法により成膜する際に用いられるマスクであり、形成するパターン膜のライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤ111を有している。マスク110Aでは長手方向に複数のワイヤ111が延びており、マスク110Aでは短手方向に複数のワイヤ111が延びている。
【0048】
ワイヤ111のサイズ(幅、長さ、径)と本数は、形成するパターン膜の複数のライン状パターンに合わせて設計される。ワイヤ111の材質は特に制限されず、マスクの強度及び使用耐久性等を考慮すればステンレス等の金属が好ましい。
【0049】
マスク110A及びマスク110Bにおいて、個々のワイヤ111の両端部はワイヤ111の線方向に直交する方向に延びた一対の固定部材112に固定されている。固定部材112の形状は特に制限されず、板状、棒状、及びローラ状等が挙げられる。例えば、個々のワイヤ111の両端部を一対の固定部材112に巻きつけて、固定させることが好ましい。固定部材112の材質は特に制限されず、マスクの強度及び使用耐久性等を考慮すればステンレス等の金属が好ましい。マスク110A及びマスク110Bにおいては、一対の固定部材112の間で成膜が行われる。
【0050】
「第2実施形態のマスク」
図面を参照して、本発明に係る第2実施形態のマスクの構成について説明する。図2Aはマスクの平面図であり、図2Bは斜視図である。図面上は視認しやすくするため、実際のものとは適宜縮尺を異ならせてある。
【0051】
図2Aに示すマスク120Aは、複数のライン状パターンを有するパターン膜を物理気相成長(PVD)法により成膜する際に用いられるマスクであり、1本のワイヤ121が折り曲げられて形成され、形成するパターン膜のライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤ部122を有している。マスク120Aでは短手方向に複数のワイヤ部122が延びている。
【0052】
ワイヤ121のサイズ(幅、長さ、径)とワイヤ部122の本数は、形成するパターン膜の複数のライン状パターンに合わせて設計される。ワイヤ121の材質は特に制限されず、マスクの強度及び使用耐久性等を考慮すればステンレス等の金属が好ましい。
【0053】
ワイヤ121は切れることなく全体が繋がっている。マスク120Aにはワイヤ121の各折返し部分に回動可能なローラ123が設けられており、ワイヤ121を線方向に流して循環させることが可能である。
【0054】
マスク120Aは、ワイヤ部122の線方向に直交する方向に配列された一対のローラ群124を有している。マスク120Aにおいては、これら一対のローラ群124の間の複数のワイヤ部122がマスクとして機能し、一対のローラ群124の間で成膜が行われる。ワイヤ121の一部は成膜が行われない箇所125に引き廻されている。成膜が行われない箇所125への引廻しは、マスクとして機能する一対のローラ群124の間の複数のワイヤ部122と同一面上でもよいし、非同一面上(例えば蒸着源の成膜側と反対側など)でもよい。
【0055】
マスク120Aにおいては、成膜が行われない箇所125に洗浄除去装置126を設けることで、パターン成膜の最中若しくは終了後に、ワイヤ121を線方向に流して循環させ、ワイヤ121に付着した成膜材料を洗浄除去することが可能である。
【0056】
図2Bに示すマスク120Bは、マスク120Aと同様に1本のワイヤ121が折り曲げられて形成され、形成するパターン膜のライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤ部122を有している。マスク120Aと同様にワイヤ121は切れることなく全体が繋がっている。マスク120Bにはマスク120Aと同様に、ワイヤ121の各折返し部分には回動可能なローラ123が設けられており、ワイヤ121を線方向に流して循環させることが可能である。
【0057】
マスク120Bでは、蒸着源Dを囲むように、上記複数のワイヤ部121が全体がキャタピラ状に配列されている。このマスクでは、ワイヤ121の一部は成膜が行われない蒸着源Dの成膜側と反対側に配設されている。かかる構成でも、成膜が行われない蒸着源Dの成膜側と反対側に洗浄除去装置(図示略)を設けることで、パターン成膜の最中若しくは終了後に、ワイヤ121を線方向に流して循環させ、ワイヤ121に付着した成膜材料を洗浄除去することが可能である。
【0058】
「成膜方法」
第1実施形態のマスク110A又は110Bを用いることにより、本発明の第1の成膜方法を実施することができる。
本発明の第1の成膜方法は、基板上に複数のライン状パターンを有するパターン膜を成膜する成膜方法において、
前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤを有するマスクを用いて、物理気相成長(PVD)法によりパターン成膜を行うことを特徴とするものである。
【0059】
第2実施形態のマスク120A又は120Bを用いることにより、本発明の第2の成膜方法を実施することができる。
本発明の第2の成膜方法は、基板上に複数のライン状パターンを有するパターン膜を成膜する成膜方法において、
1本のワイヤが折り曲げられて形成され、前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤ部を有するマスクを用いて、物理気相成長(PVD)法によりパターン成膜を行うことを特徴とするものである。
【0060】
本発明の第1,第2の成膜方法によれば、複数のライン状パターンを有するパターン膜を直接パターン成膜することができる。
本発明によれば、複数のライン状パターンのパターン間隙に成膜が行われないので、材料の無駄がなく、パターン間隙に成膜された材料をスクライブ加工及びエッチング等により除去する工程が不要である。パターン間隙に成膜された材料を除去することにより生じる削りカスが生じないので、成膜装置内をクリーンに保つことができ、削りカスを洗浄除去する必要もない。被パターン膜を削る必要がないので、被パターン膜にクラックあるいは欠陥等のダメージを与える恐れもない。したがって、本発明の第1,第2の成膜方法によれば、従来の方法よりも工程数が少なく生産性良く低コストに、高精度なパターン成膜を実施することができる。
【0061】
本発明の第1,第2の成膜方法によれば、幅が30μm以上で長さが150.0mm以上である細線パターンの直接パターン成膜が可能である。すなわち、本発明の第1,第2の成膜方法は、幅が30μm以上で長さが150.0mm以上である場合に有効である。本発明ではかかるサイズの細線パターンも高精度にパターン成膜を実施できる。
【0062】
エッチングで細線パターンを作る従来の金属マスクでは、マスクの強度がなく、長期間使用することができない。特に、幅が30μm以上で長さが150.0mm以上である細線パターンの成膜を実施するだけの強度がなく、従来はかかる細線パターンの直接パターン成膜(パターン間隙の成膜と除去を実施しない直接パターン成膜)は実用化されていない。
【0063】
本発明では、ワイヤ、好ましくは金属ワイヤを用いたマスクを用いるので、幅が30μm以上で長さが150.0mm以上である細線パターン用の設計でも、マスクに充分な強度があり、直接パターン成膜を良好に高精度に実施できる。マスクに充分な強度があるので、マスクに付着した成膜材料を除去することで、繰り返し使用でき、製造の低コスト化を図ることができる。
【0064】
なお、「背景技術」の項で挙げた非特許文献1では、ワイヤソーを用いたパターニングが記載されている。ここでは、ワイヤはパターン間隙に成膜された材料を削り取る刃として使用されており、従来はワイヤをマスクとして使用するという発想がなかった。
【0065】
基板としては特に制限なく、ガラス基板、シリコン基板、金属基板、金属基材の表面に絶縁膜が形成された基板、及び樹脂基板等が挙げられる。基板上にはパターン膜の形成前に単数又は複数の膜が形成されていてもよい。
【0066】
太陽電池用の光電変換素子等では通常、形成するパターン膜のライン状パターンの幅が30μm以上で長さが150.0mm以上である。したがって、本発明の第1,第2の成膜方法は、形成するパターン膜が、下部電極と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層と上部電極との積層構造を有し、かつ該積層構造が複数の開溝部によって複数のセルに分割された光電変換素子の構成膜である場合などに有効である。本発明が適用可能な光電変換素子の構成膜は開溝部が形成される任意の構成膜であり、下部電極、光電変換半導体層、バッファ層、及び上部電極等が具体的に挙げられる。
【0067】
光電変換素子用の基板としては、ソーダライムガラス基板等のガラス基板、表面に絶縁膜が成膜されたAl、Cu、Ti、及びステンレス等の金属基板、Alを主成分とする金属基材の少なくとも一方の面側に陽極酸化膜を有する陽極酸化基板、及びポリイミド等の樹脂基板等が挙げられる。
【0068】
本発明の第1,第2の成膜方法において、基板を搬送すると共に、基板の搬送速度に合わせて、基板の搬送方向にマスクを移動させながら、パターン成膜を行うことが好ましい。かかる構成では、基板を停止することなく、連続的に成膜を実施することができ、好ましい。
【0069】
連続工程(Roll to Roll工程)による製造が可能なことから、連続した帯状の可橈性基板を用いてウェブ搬送することが好ましい。マスクについても連続した帯状のマスクとし、基板の搬送速度に合わせて、マスクをウェブ搬送することが好ましい(図3に示す後記実施形態の成膜装置を参照)。
【0070】
光電変換素子の場合、連続工程(Roll to Roll工程)による製造が可能な可橈性基板として、表面に絶縁膜が成膜されたAl、Cu、Ti、及びステンレス等の金属基板、Alを主成分とする金属基材の少なくとも一方の面側に陽極酸化膜を有する陽極酸化基板、及びポリイミド等の樹脂基板が挙げられる。本発明の成膜方法はドライプロセスであるので、本発明の成膜方法を用いることにより真空一貫の連続工程(Roll to Roll工程)で光電変換素子を製造することが可能となる。
【0071】
ポリイミド等の樹脂基板を用いる場合には、樹脂の耐熱温度以下で光電変換層の成膜を行う必要があり、400℃程度のプロセスが限界である。この温度では高特性の光電変換層を成膜することは難しいため、エネルギーアシスト層を設けるなどの工夫を要する。
【0072】
熱応力による基板の反り等を抑制するためには基板とその上に形成される各層との間の熱膨張係数差が小さいことが好ましい。光電変換層及び下部電極(裏面電極)との熱膨張係数差、コスト、及び太陽電池に要求される特性等の観点から、また、大面積基板を用いる場合も、その表面全体にピンホールなく簡易に絶縁膜を形成することができことから、Alを主成分とする金属基材の少なくとも一方の面側に陽極酸化膜を有する陽極酸化基板が特に好ましい。
【0073】
本明細書において、「金属基材の主成分」は、含量98質量%以上の成分であると定義する。金属基材は、微量元素を含んでいてもよい純Al基材でもよいし、Alと他の金属元素との合金基材でもよい。
本明細書において、基板上に形成される電極、光電変換半導体層、及び必要に応じて設けられる他の任意の層の「主成分」は、含量90質量%以上の成分であると定義する。
【0074】
本発明の第2の成膜方法において、図2A,図2Bに示したように、ワイヤの一部を成膜が行われない箇所に配設し、パターン成膜の最中若しくは終了後に、ワイヤを線方向に流して循環させ、成膜が行われない箇所においてワイヤに付着した成膜材料を洗浄除去する処理を行うことが好ましい。かかる構成では、マスクをクリーンに保ち、高精度なパターン成膜を持続して行うことができ、好ましい。かかる構成では、マスクの交換頻度が少なく、低コストに成膜を実施することができる。
【0075】
マスクの洗浄方法としては特に制限されず、水洗、超音波洗浄、ガス噴射、静電気又は電磁気を用いた集塵、及びダイヤモンドダイスの穴を通して機械的にゴミを取り除く方法等が挙げられる。
【0076】
以上説明したように、本発明によれば、光電変換素子の構成膜等の成膜に好ましく適用でき、複数のライン状パターンを有するパターン膜を直接パターン成膜することが可能な成膜方法を提供することができる。
【0077】
「成膜装置」
図面を参照して、本発明に係る一実施形態の成膜装置について説明する。図3は成膜装置の概略斜視図である。
【0078】
本実施形態の成膜装置200は連続した帯状の可橈性基板B上に複数のライン状パターンを有するパターン膜を成膜する装置であり、図1Aに示したマスク110Aの構成を基本構成とする連続した帯状のマスクMを用いた成膜装置である。
【0079】
本実施形態の成膜装置200は真空成膜が可能なように真空排気及びガス導入が可能に設計されている(図示略)。成膜装置200は、連続した帯状の可橈性基板Bを、張力を付与しながらウェブ搬送する基板搬送手段210と、基板Bの搬送速度に合わせて、基板Bの搬送方向にマスクMを移動させるマスク移動手段220とを備えている。
【0080】
本実施形態において、基板搬送手段210は、連続した帯状の可橈性基板Bを送り出す回動可能な送出しローラ211と、パターン成膜後の可橈性基板Bを巻き取る回動可能な巻取りローラ212と、送出しローラ211と巻取りローラ212との間に適宜配置された搬送ローラ213,214とから概略構成されている。送出しローラ211は、先の工程からパターン成膜工程に基板Bを搬送する搬送ローラであってもよい。同様に、巻取りローラ212は、パターン成膜工程から次の工程に基板Bを搬送する搬送ローラであってもよい。
【0081】
本実施形態において、マスク移動手段220は、連続した帯状のマスクMを送り出す回動可能な送出しローラ221と、パターン成膜に使用されたマスクMを巻き取る回動可能な巻取りローラ222と、送出しローラ221と巻取りローラ222との間に適宜配置された搬送ローラ223,224とから概略構成されている。本実施形態では、ローラ221,222がマスクMをなす個々のワイヤ(図1Aの符号111)の両端部が固定される一対の固定部材(図1Aの符号112)となっている。本実施形態において、可橈性基板B上に接するようにマスクMが供給されるようになっている。
【0082】
成膜装置200には、蒸着源Dと、可橈性基板Bの成膜を行う部分を加熱するヒータ230とが備えられている。蒸着源Dは可橈性基板Bの成膜が行われる表側(マスクMが配置された側)に配置され、ヒータ230は可橈性基板Bの成膜が行われない裏側に配置されている。ここでは、CIGS光電変換層の成膜用について図示してあり、蒸着源Dとして、Cu,In,Ga,及びSeの4つの蒸着源が備えられている。蒸着源の数は、パターン膜の組成に応じて決定される。
【0083】
本実施形態の成膜装置200は、以上のように構成されている。本実施形態の成膜装置200によれば、上記の本発明の第1の成膜方法を実施することができる。本発明によれば、光電変換素子の構成膜等の成膜に好ましく適用でき、複数のライン状パターンを有するパターン膜を直接パターン成膜することが可能な成膜装置200を提供することができる。
【0084】
マスクMとして、図1B,図2A,及び図2Bに示したマスク110B,120A,及び120Bを使用して、同様に成膜装置を構成することができる。図2A及び図2Bに示したマスク120A,120Bを用いる場合には、ワイヤを線方向に流して循環させ、成膜が行われない箇所を通るワイヤに対して、ワイヤに付着した成膜材料を洗浄除去する洗浄除去装置を設ける構成とすることが好ましい。
【0085】
「光電変換素子」
図面を参照して、本発明に係る一実施形態の光電変換素子の構造について説明する。図4Aは光電変換素子の短手方向の模式断面図、図4Bは光電変換素子の長手方向の模式断面図、図5は陽極酸化基板の構成を示す模式断面図、図6は陽極酸化基板の製造方法を示す斜視図である。視認しやすくするため、図中、各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0086】
光電変換素子1は、陽極酸化基板10上に、下部電極(裏面電極)20と光電変換半導体層30とバッファ層40と上部電極50とが順次積層された積層構造を基本構成とする素子である。以降、光電変換半導体層は「光電変換層」と略記する。
【0087】
光電変換素子1には、短手方向断面視において、下部電極20を貫通する第1の開溝部61、光電変換層30とバッファ層40とを貫通する第2の開溝部62、及び上部電極50のみを貫通する第3の開溝部63が形成されており、長手方向断面視において、光電変換層30とバッファ層40と上部電極50とを貫通する第4の開溝部64が形成されている。
【0088】
上記構成では、第1〜第4の開溝部61〜64によって素子が多数のセルCに分離された構造が得られる。また、第2の開溝部62内に上部電極50が充填されることで、あるセルCの上部電極50が隣接するセルCの下部電極20に直列接続した構造が得られる。
【0089】
本実施形態において、開溝部61〜64が形成された下部電極20,光電変換層30,バッファ層40,及び上部電極50が複数のライン状パターンを有するパターン膜であり、本発明の第1又は第2の成膜方法により直接パターン成膜された膜である。これらの膜では、隣接する開溝部間がライン状パターンとなっている。
【0090】
(陽極酸化基板)
本実施形態において、陽極酸化基板10はAlを主成分とする金属基材11の少なくとも一方の面側を陽極酸化して得られた基板である。陽極酸化基板10は、図5の左図に示すように、金属基材11の両面側に陽極酸化膜12が形成されたものでもよいし、図5の右図に示すように、金属基材11の片面側に陽極酸化膜12が形成されたものでもよい。陽極酸化膜12はAlを主成分とする膜である。
【0091】
デバイスの製造過程において、AlとAlとの熱膨張係数差に起因した基板の反り、及びこれによる膜剥がれ等を抑制するには、図5の左図に示すように金属基材11の両面側に陽極酸化膜12が形成されたものが好ましい。両面の陽極酸化方法としては、片面に絶縁材料を塗布して片面ずつ両面を陽極酸化する方法、及び両面を同時に陽極酸化する方法が挙げられる。
【0092】
基板10の両面側に陽極酸化膜12を形成する場合、基板両面の熱応力のバランスを考慮して、2つの陽極酸化膜12の膜厚がほぼ等しくする、若しくは光電変換層等が形成されない面側の陽極酸化膜12を他方の陽極酸化膜12よりもやや厚めとすることが好ましい。
【0093】
金属基材11としては、日本工業規格(JIS)の1000系純Alでもよいし、Al−Mn系合金、Al−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金、Al−Zr系合金、Al−Si系合金、及びAl−Mg−Si系合金等のAlと他の金属元素との合金でもよい(「アルミニウムハンドブック第4版」(1990年、軽金属協会発行)を参照)。金属基材11には、Fe、Si、Mn、Cu、Mg、Cr、Zn、Bi、Ni、及びTi等の各種微量金属元素が含まれていてもよい。
【0094】
陽極酸化は、必要に応じて洗浄処理・研磨平滑化処理等が施された金属基材11を陽極とし陰極と共に電解質に浸漬させ、陽極陰極間に電圧を印加することで実施できる。陰極としてはカーボンやアルミニウム等が使用される。電解質としては制限されず、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、及びアミドスルホン酸等の酸を、1種又は2種以上含む酸性電解液が好ましく用いられる。
【0095】
陽極酸化条件は使用する電解質の種類にもより特に制限されない。条件としては例えば、電解質濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.005〜0.60A/cm、電圧1〜200V、電解時間3〜500分の範囲にあれば適当である。
【0096】
電解質としては、硫酸、リン酸、シュウ酸、若しくはこれらの混合液が好ましい。かかる電解質を用いる場合、電解質濃度4〜30質量%、液温10〜30℃、電流密度0.05〜0.30A/cm、及び電圧30〜150Vが好ましい。
【0097】
図6に示すように、Alを主成分とする金属基材11を陽極酸化すると、表面11sから該面に対して略垂直方向に酸化反応が進行し、Alを主成分とする陽極酸化膜12が生成される。陽極酸化により生成される陽極酸化膜12は、多数の平面視略正六角形状の微細柱状体12aが隙間なく配列した構造を有するものとなる。各微細柱状体12aの略中心部には、表面11sから深さ方向に略ストレートに延びる微細孔12bが開孔され、各微細柱状体12aの底面は丸みを帯びた形状となる。通常、微細柱状体12aの底部には微細孔12bのないバリア層(通常、厚み0.01〜0.4μm)が形成される。陽極酸化条件を工夫すれば、微細孔12bのない陽極酸化膜12を形成することもできる。
【0098】
陽極酸化膜12の微細孔12bの径は特に制限されない。表面平滑性及び絶縁特性の観点から、微細孔12bの径は好ましくは200nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。微細孔12bの径は10nm程度まで小さくすることが可能である。
【0099】
陽極酸化膜12の微細孔12bの開孔密度は特に制限されない。絶縁特性の観点から、微細孔12bの開孔密度は好ましくは100〜10000個/μmであり、より好ましくは100〜5000個/μmであり、特に好ましくは100〜1000個/μmである。
【0100】
陽極酸化膜12の表面粗さRaは特に制限されない。上層の光電変換層30を均一に形成する観点から、陽極酸化膜12の表面平滑性は高い方が好ましい。表面粗さRaは好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【0101】
金属基材11及び陽極酸化膜12の厚みは特に制限されない。基板10の機械的強度及び薄型軽量化等を考慮すれば、陽極酸化前の金属基材11の厚みは例えば0.05〜0.6mmが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。基板の絶縁性、機械的強度、及び薄型軽量化を考慮すれば、陽極酸化膜12の厚みは例えば0.1〜100μmが好ましい。
【0102】
陽極酸化膜12の微細孔12bには、必要に応じて公知の封孔処理を施してもよい。封孔処理により、耐電圧及び絶縁特性を向上させることが可能である。
【0103】
(光電変換層)
光電変換層30は光吸収により電流を発生する層である。その主成分は特に制限されず、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体であることが好ましい。光電変換層30の主成分は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
【0104】
光吸収率が高く、高い光電変換効率が得られることから、
光電変換層30の主成分は、
Cu及びAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
【0105】
上記化合物半導体としては、
CuAlS,CuGaS,CuInS
CuAlSe,CuGaSe,CuInSe(CIS),
AgAlS,AgGaS,AgInS
AgAlSe,AgGaSe,AgInSe
AgAlTe,AgGaTe,AgInTe
Cu(In1−xGa)Se(CIGS),Cu(In1−xAl)Se,Cu(In1−xGa)(S,Se)
Ag(In1−xGa)Se,及びAg(In1−xGa)(S,Se)等が挙げられる。
【0106】
光電変換層30は、CuInSe(CIS)、及び/又はこれにGaを固溶したCu(In,Ga)Se(CIGS)を含むことが特に好ましい。CIS及びCIGSはカルコパイライト結晶構造を有する半導体であり、光吸収率が高く、高エネルギー変換効率が報告されている。また、光照射等による効率の劣化が少なく、耐久性に優れている。
【0107】
光電変換層30には、所望の半導体導電型を得るための不純物が含まれる。不純物は隣接する層からの拡散、及び/又は積極的なドープによって、光電変換層30中に含有させることができる。
【0108】
光電変換層30中において、I−III−VI族半導体の構成元素及び/又は不純物には濃度分布があってもよく、n型,p型,及びi型等の半導体性の異なる複数の層領域が含まれていても構わない。例えば、CIGS系においては、光電変換層30中のGa量に厚み方向の分布を持たせると、バンドギャップの幅/キャリアの移動度等を制御でき、光電変換効率を高く設計することができる。
【0109】
光電変換層30は、I−III−VI族半導体以外の1種又は2種以上の半導体を含んでいてもよい。I−III−VI族半導体以外の半導体としては、Si等のIVb族元素からなる半導体(IV族半導体)、GaAs等のIIIb族元素及びVb族元素からなる半導体(III−V族半導体)、及びCdTe等のIIb族元素及びVIb族元素からなる半導体(II−VI族半導体)等が挙げられる。
【0110】
光電変換層30には、特性に支障のない限りにおいて、半導体、所望の導電型とするための不純物以外の任意成分が含まれていても構わない。
【0111】
CIGS層の成膜方法としては、1)多源同時蒸着法、2)セレン化法、3)スパッタ法、4)ハイブリッドスパッタ法、及び5)メカノケミカルプロセス法等が知られている。
【0112】
1)多源同時蒸着法としては、
3段階法(J.R.Tuttle et.al,Mat.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.426(1996)p.143.等)と、
ECグループの同時蒸着法(L.Stolt et al.:Proc.13th ECPVSEC(1995,Nice)1451.等)とが知られている。
前者の3段階法は、高真空中で最初にIn、Ga、及びSeを基板温度300℃で同時蒸着し、次に500〜560℃に昇温してCu及びSeを同時蒸着後、In、Ga、及びSeをさらに同時蒸着する方法である。後者のECグループの同時蒸着法は、蒸着初期にCu過剰CIGS、後半でIn過剰CIGSを蒸着する方法である。
【0113】
CIGS膜の結晶性を向上させるため、上記方法に改良を加えた方法として、
a)イオン化したGaを使用する方法(H.Miyazaki, et.al, phys.stat.sol.(a),Vol.203(2006)p.2603.等)、
b)クラッキングしたSeを使用する方法(第68回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007秋 北海道工業大学)7P−L−6等)、
c)ラジカル化したSeを用いる方法(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007春 青山学院大学)29P−ZW−10等)、
d)光励起プロセスを利用した方法(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007春 青山学院大学)29P−ZW−14等)等が知られている。
【0114】
2)セレン化法は2段階法とも呼ばれ、最初にCu層/In層あるいは(Cu−Ga)層/In層等の積層膜の金属プレカーサをスパッタ法、蒸着法、あるいは電着法などで成膜し、これをセレン蒸気またはセレン化水素中で450〜550℃程度に加熱することにより、熱拡散反応によってCu(In1−xGa)Se等のセレン化合物を生成する方法である。この方法を気相セレン化法と呼ぶ。このほか、金属プリカーサ膜の上に固相セレンを堆積し、この固相セレンをセレン源とした固相拡散反応によりセレン化させる固相セレン化法がある。
【0115】
セレン化法においては、セレン化の際に生ずる急激な体積膨張を回避するために、金属プリカーサ膜に予めセレンをある割合で混合しておく方法(T.Nakada et.al,, Solar Energy Materials and Solar Cells 35(1994)204-214.等)、及び金属薄層間にセレンを挟み(例えばCu層/In層/Se層…Cu層/In層/Se層と積層する)多層化プリカーサ膜を形成する方法(T.Nakada et.al,, Proc. of 10th European Photovoltaic Solar Energy Conference(1991)887-890. 等)が知られている。
【0116】
また、グレーデッドバンドギャップCIGS膜の成膜方法として、最初にCu−Ga合金膜を堆積し、その上にIn膜を堆積し、これをセレン化する際に、自然熱拡散を利用してGa濃度を膜厚方向で傾斜させる方法がある(K.Kushiya et.al, Tech.Digest 9th Photovoltaic Science and Engineering Conf. Miyazaki, 1996(Intn.PVSEC-9,Tokyo,1996)p.149.等)。
【0117】
3)スパッタ法としては、
CuInSe多結晶をターゲットとした方法、
CuSeとInSeをターゲットとし、スパッタガスにHSe/Ar混合ガスを用いる2源スパッタ法(J.H.Ermer,et.al, Proc.18th IEEE Photovoltaic Specialists Conf.(1985)1655-1658.等)、
Cuターゲットと、Inターゲットと、SeまたはCuSeターゲットとをArガス中でスパッタする3源スパッタ法(T.Nakada,et.al, Jpn.J.Appl.Phys.32(1993)L1169-L1172.等)が知られている。
【0118】
4)ハイブリッドスパッタ法としては、前述のスパッタ法において、CuとIn金属は直流スパッタで、Seのみは蒸着とするハイブリッドスパッタ法(T.Nakada,et.al., Jpn.Appl.Phys.34(1995)4715-4721.等)が知られている。
【0119】
5)メカノケミカルプロセス法は、CIGSの組成に応じた原料を遊星ボールミルの容器に入れ、機械的なエネルギーによって原料を混合してCIGS粉末を得、その後、スクリーン印刷によって基板上に塗布し、アニールを施して、CIGSの膜を得る方法である(T.Wada et.al, Phys.stat.sol.(a), Vol.203(2006)p2593等)。
【0120】
6)その他のCIGS成膜法としては、スクリーン印刷法、近接昇華法、MOCVD法、及びスプレー法などが挙げられる。例えば、スクリーン印刷法あるいはスプレー法等で、Ib族元素、IIIb族元素、及びVIb族元素を含む微粒子膜を基板上に形成し、熱分解処理(この際、VIb族元素雰囲気での熱分解処理でもよい)を実施するなどにより、所望の組成の結晶を得ることができる(特開平9−74065号公報、特開平9−74213号公報等)。
【0121】
図7は、主なI−III−VI化合物半導体における格子定数とバンドギャップとの関係を示す図である。組成比を変えることにより様々な禁制帯幅(バンドギャップ)を得ることができる。バンドギャップよりエネルギーの大きな光子が半導体に入射した場合、バンドギャップを超える分のエネルギーは熱損失となる。太陽光のスペクトルとバンドギャップの組合せで変換効率が最大になるのがおよそ1.4〜1.5eVであることが理論計算で分かっている。
【0122】
光電変換効率を上げるために、例えばCu(In,Ga)Se(CIGS)のGa濃度を上げたり、Cu(In,Al)SeのAl濃度を上げたり、Cu(In,Ga)(S,Se)のS濃度を上げたりしてバンドギャップを大きくすることで、変換効率の高いバンドギャップを得ることができる。CIGSの場合、1.04〜1.68eVの範囲で調整できる。
【0123】
組成比を膜厚方向に変えることでバンド構造に傾斜を付けることができる。傾斜バンド構造としては、光の入射窓側から反対側の電極方向にバンドギャップを大きくするシングルグレーデットバンドギャップ、あるいは、光の入射窓からPN接合部に向かってバンドギャップが小さくなりPN接合部を過ぎるとバンドギャップが大きくなるダブルグレーデッドバンドギャップの2種類がある(T.Dullweber et.al, Solar Energy Materials & Solar Cells, Vol.67, p.145-150(2001)等)。いずれもバンド構造の傾斜によって内部に発生する電界のため、光に誘起されたキャリアが加速され電極に到達しやすくなり、再結合中心との結合確率を下げるため、発電効率が向上する(WO2004/090995号パンフレット等)。
【0124】
スペクトルの範囲別にバンドギャップの異なる半導体を複数使うと、光子エネルギーとバンドギャップの乖離による熱損失を小さくし、発電効率を向上することができる。このような複数の光電変換層を重ねて用いるものをタンデム型という。2層タンデムの場合、例えば1.1eVと1.7eVの組合せを用いることにより発電効率を向上することができる。
【0125】
(電極、バッファ層)
下部電極20及び上部電極50はいずれも導電性材料からなる。光入射側の上部電極50は透光性を有する必要がある。
下部電極20の主成分としては特に制限されず、Mo,Cr,W,及びこれらの組合わせが好ましく、Moが特に好ましい。下部電極20の厚みは特に制限されず、0.3〜1μmが好ましい。
上部電極50の主成分としては特に制限されず、ZnO,ITO(インジウム錫酸化物),SnO,及びこれらの組合わせが好ましい。上部電極50の厚みは特に制限されず、0.6〜1.0μmが好ましい。
下部電極20及び/又は上部電極50は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造もよい。
下部電極20及び上部電極50の成膜方法は特に制限されず、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法等の気相成膜法が挙げられる。
【0126】
バッファ層40の主成分としては特に制限されず、CdS,ZnS,ZnO,ZnMgO,ZnS(O,OH) ,及びこれらの組合わせが好ましい。バッファ層40の厚みは特に制限されず、0.03〜0.1μmが好ましい。
好ましい組成の組合わせとしては例えば、Mo下部電極/CdSバッファ層/CIGS光電変換層/ZnO上部電極が挙げられる。
【0127】
光電変換層30〜上部電極50の導電型は特に制限されない。通常、光電変換層30はp層、バッファ層40はn層(n−CdS等)、上部電極50はn層(n−ZnO層等 )あるいはi層とn層との積層構造(i−ZnO層とn−ZnO層との積層等)とされる。かかる導電型では、光電変換層30と上部電極50との間に、pn接合、あるいはpin接合が形成されると考えられる。また、光電変換層30の上にCdSからなるバッファ層40を設けると、Cdが拡散して、光電変換層30の表層にn層が形成され、光電変換層30内にpn接合が形成されると考えられる。光電変換層30内のn層の下層にi層を設けて光電変換層30内にpin接合を形成してもよいと考えられる。
【0128】
(その他の構成)
光電変換素子1は必要に応じて、上記で説明した以外の任意の構成を備えることができる。
【0129】
ソーダライムガラス基板を用いた光電変換素子においては、基板中のアルカリ金属元素(Na元素)がCIGS層等の光電変換層に拡散し、エネルギー変換効率が高くなることが報告されている。本実施形態においても、アルカリ金属をCIGS層等の光電変換層に拡散させることは好ましい。
【0130】
アルカリ金属元素の拡散方法としては、Mo下部電極上に蒸着法またはスパッタリング法によってアルカリ金属元素を含有する層を形成する方法(特開平8−222750号公報等)、Mo下部電極上に浸漬法によりNaS等からなるアルカリ層を形成する方法(WO03/069684号パンフレット等)、Mo下部電極上に、In、Cu及びGa金属元素を含有成分としたプリカーサを形成した後このプリカーサに対して例えばモリブデン酸ナトリウムを含有した水溶液を付着させる方法等が挙げられる。下部電極20の内部に、NaS,NaSe,NaCl,NaF,及びモリブデン酸ナトリウム塩等の1種又は2種以上のアルカリ金属化合物を含む層を設ける構成も好ましい。
【0131】
陽極酸化基板10と下部電極20との間、及び/又は下部電極20と光電変換層30との間に、必要に応じて、層同士の密着性を高めるための密着層(緩衝層)を設けることができる。また、必要に応じて、陽極酸化基板10と下部電極20との間に、アルカリイオンの拡散を抑制するアルカリバリア層を設けることができる。アルカリバリア層については、特開平8−222750号公報を参照されたい。
【0132】
本実施形態の光電変換素子1は、以上のように構成されている。
本実施形態の光電変換素子1は陽極酸化基板10を用いた素子であるので、軽量かつフレキシブルであり、低コストで製造可能な素子である。
【0133】
本実施形態において、開溝部61〜64が形成された下部電極20,光電変換層30,バッファ層40,及び上部電極50が複数のライン状パターンを有するパターン膜であり、本発明の第1又は第2の成膜方法により直接パターン成膜された膜である。したがって、本実施形態によれば、従来の方法よりも工程数が少なく生産性良く低コストに、高精度なパターン成膜を実施することができ、低コストに高性能な光電変換素子1を製造することができる。
【0134】
光電変換素子1は、太陽電池等に好ましく使用することができる。光電変換素子1に対して必要に応じて、カバーガラス、保護フィルム等を取り付けて、太陽電池とすることができる。
【0135】
「設計変更」
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の成膜方法と成膜装置、及びマスクは、光電変換素子等の用途に好ましく適用できる。本発明の光電変換素子は、太陽電池、及び赤外センサ等の用途に好ましく適用できる。
【符号の説明】
【0137】
110A,110B マスク
111 ワイヤ
112 固定部材
120A,120B マスク
121 ワイヤ
122 ワイヤ部
125 成膜が行われない箇所
126 洗浄除去装置
200 成膜装置
210 基板搬送手段
220 マスク移動手段
B 可撓性基板
M マスク
D 蒸着源
1 光電変換素子(太陽電池)
10 陽極酸化基板
20 下部電極(パターン膜)
30 光電変換半導体層(パターン膜)
40 バッファ層(パターン膜)
50 上部電極(パターン膜)
61〜64 開溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数のライン状パターンを有するパターン膜を成膜する成膜方法において、
前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤを有するマスクを用いて、物理気相成長(PVD)法によりパターン成膜を行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記マスクは、個々の前記ワイヤの両端部が該ワイヤの線方向に直交する方向に延びた一対の固定部材に固定されたものであることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
基板上に複数のライン状パターンを有するパターン膜を成膜する成膜方法において、
1本のワイヤが折り曲げられて形成され、前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤ部を有するマスクを用いて、物理気相成長(PVD)法によりパターン成膜を行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項4】
前記ワイヤは切れることなく全体が繋がったものであり、前記ワイヤを線方向に流して循環させることが可能なものであることを特徴とする請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記ワイヤの一部を前記成膜が行われない箇所に配設し、前記パターン成膜の最中若しくは終了後に、前記ワイヤを線方向に流して循環させ、前記成膜が行われない箇所において前記ワイヤに付着した成膜材料を洗浄除去する処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記ライン状パターンの幅が30μm以上で長さが150.0mm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記基板を搬送すると共に、前記基板の搬送速度に合わせて、前記基板の搬送方向に前記マスクを移動させながら、前記パターン成膜を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項8】
前記パターン膜は、下部電極と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層と上部電極との積層構造を有し、かつ該積層構造が複数の開溝部によって複数のセルに分割された光電変換素子の構成膜であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項9】
前記パターン膜は、前記光電変換素子の前記下部電極、前記光電変換半導体層、及び前記上部電極のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項8に記載の成膜方法。
【請求項10】
複数のライン状パターンを有するパターン膜を物理気相成長(PVD)法により成膜する際に用いられるマスクにおいて、
前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤを有することを特徴とするマスク。
【請求項11】
個々の前記ワイヤの両端部が該ワイヤの線方向に直交する方向に延びた一対の固定部材に固定されたものであることを特徴とする請求項10に記載のマスク。
【請求項12】
複数のライン状パターンを有するパターン膜を物理気相成長(PVD)法により成膜する際に用いられるマスクにおいて、
1本のワイヤが折り曲げられて形成され、前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤ部を有することを特徴とするマスク。
【請求項13】
前記ワイヤは切れることなく全体が繋がったものであり、前記ワイヤを線方向に流して循環させることが可能なものであることを特徴とする請求項12に記載のマスク。
【請求項14】
基板上に複数のライン状パターンを有するパターン膜を成膜する成膜装置において、
前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤを有するマスクを備え、物理気相成長(PVD)法によりパターン成膜を行うものであることを特徴とする成膜装置。
【請求項15】
前記マスクは、個々の前記ワイヤの両端部が該ワイヤの線方向に直交する方向に延びた一対の固定部材に固定されたものであることを特徴とする請求項14に記載の成膜装置。
【請求項16】
基板上に複数のライン状パターンを有するパターン膜を成膜する成膜装置において、
1本のワイヤが折り曲げられて形成され、前記ライン状パターンの幅に合わせた間隔で配列された複数のワイヤ部を有するマスクを備え、物理気相成長(PVD)法によりパターン成膜を行うものであることを特徴とする成膜装置。
【請求項17】
前記ワイヤは切れることなく全体が繋がったものであり、前記ワイヤを線方向に流して循環させることが可能なものであることを特徴とする請求項16に記載の成膜装置。
【請求項18】
前記ワイヤの一部は前記成膜が行われない箇所に配設されており、該箇所に前記ワイヤに付着した成膜材料を洗浄除去する洗浄除去装置が設けられていることを特徴とする請求項17に記載の成膜装置。
【請求項19】
前記ライン状パターンの幅が30μm以上で長さが150.0mm以上であることを特徴とする請求項14〜18のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項20】
前記基板を搬送する基板搬送手段と、前記基板の搬送速度に合わせて、前記基板の搬送方向に前記マスクを移動させるマスク移動手段とを備えていることを特徴とする請求項14〜19のいずれかにに記載の成膜装置。
【請求項21】
前記パターン膜は、下部電極と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層と上部電極との積層構造を有し、かつ該積層構造が複数の開溝部によって複数のセルに分割された光電変換素子の構成膜であることを特徴とする請求項14〜20のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項22】
前記パターン膜は、前記光電変換素子の前記下部電極、前記光電変換半導体層、及び前記上部電極のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項21に記載の成膜装置。
【請求項23】
請求項1〜9のいずれかに記載の成膜方法により成膜されたものであることを特徴とするパターン膜。
【請求項24】
複数のライン状パターンを有するパターン膜において、
前記ライン状パターンの幅が30μm以上で長さが150.0mm以上であり、
前記複数のライン状パターンのパターン間隙の成膜と除去が実施されることなく、直接パターン形成されたものであることを特徴とするパターン膜。
【請求項25】
下部電極と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層と上部電極との積層構造を有し、かつ該積層構造が複数の開溝部によって複数のセルに分割された光電変換素子において、
請求項23又は24に記載のパターン膜を備えたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項26】
前記下部電極、前記光電変換半導体層、及び前記上部電極のうち少なくとも1つが前記パターン膜であることを特徴とする請求項25に記載の光電変換素子。
【請求項27】
前記光電変換層の主成分が、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる化合物半導体であることを特徴とする請求項25又は26に記載の光電変換素子。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれかに記載の光電変換素子を備えたことを特徴とする太陽電池。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−242116(P2010−242116A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89175(P2009−89175)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】