説明

成膜方法

【課題】 金属前駆体を用いて形成される金属含有膜を半導体装置の内部構造体に利用しても、金属汚染の発生を抑制することが可能な成膜方法を提供すること。
【解決手段】 基板の裏面を疎水化処理する工程(ステップ1)と、裏面が疎水化処理された基板の表面上に、π電子を含む金属前駆体を用いたCVD法を用いて、金属含有膜を形成する工程(ステップ2)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、膜を成膜する成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅(Cu)を使用している配線の新しいバリア膜として、CVD−マンガン含有膜が検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−300567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CVD−マンガン含有膜は、原料ガスとして、例えば、シクロペンタジエニル系マンガン前駆体が用いられる。即ち、CVD−マンガン含有膜は、金属前駆体を用いて形成される金属含有膜である。
【0005】
金属前駆体を用いて形成される金属含有膜は、基板の表面、例えば、層間絶縁膜上だけでなく、基板の裏面にも形成されることがある。このため、金属前駆体を用いて形成される金属含有膜を半導体装置の内部構造体に利用した場合には、基板の裏面からの金属汚染が懸念される。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、金属前駆体を用いて形成される金属含有膜を半導体装置の内部構造体に利用しても、金属汚染の発生を抑制することが可能な成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の一態様に係る成膜方法は、基板の表面上に、金属含有膜を成膜する成膜方法であって、(1)前記基板の裏面を疎水化処理する工程と、(2)前記裏面が疎水化処理された前記基板の表面上に、金属前駆体を用いたCVD法を用いて、前記金属含有膜を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、金属前駆体を用いて形成される金属含有膜を半導体装置の内部構造体に利用しても、金属汚染の発生を抑制することが可能な成膜方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施形態に係る成膜方法の基本例を示す流れ図
【図2A】この発明の一実施形態に係る成膜方法を利用した半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2B】この発明の一実施形態に係る成膜方法を利用した半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2C】この発明の一実施形態に係る成膜方法を利用した半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2D】この発明の一実施形態に係る成膜方法を利用した半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2E】この発明の一実施形態に係る成膜方法を利用した半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2F】この発明の一実施形態に係る成膜方法を利用した半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図3】この発明の一実施形態に係る成膜方法の一例を実施することが可能な成膜システムの一例を概略的に示す平面図
【図4】処理ユニット200の一例を概略的に示す断面図
【図5】処理ユニット200の他例を概略的に示す断面図
【図6】処理ユニット300の一例を概略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本件発明者らは、シクロペンタジエニル系マンガン前駆体を用いて形成されたCVD−マンガン含有膜は、下地表面が疎水化されていると、マンガンが下地表面に付着し難いことを見出した。シクロペンタジエニル陰イオンは芳香性を有する。このため、π電子を含んでいる。π電子を含む有機化合物、本例ではπ電子を含む金属前駆体は、Si−OH表面には吸着しやすいが、水素終端された表面やSi−CH表面には吸着し難い。この発明の一実施形態に係る成膜方法は、このようなπ電子を含む有機化合物が持つ性質を利用する。
【0011】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図にわたり、共通の部分には共通の参照符号を付す。
【0012】
(成膜方法)
図1は、この発明の一実施形態に係る成膜方法の基本例を示す流れ図である。
【0013】
一実施形態に係る成膜方法は、基板、例えば、シリコンウエハの表面上に、金属含有膜、例えば、CVD−マンガン含有膜を成膜する成膜方法であり、以下のように行われる。
【0014】
なお、本明細書においては、ウエハの表面とは、成膜やエッチング等の各種の処理が施され、トランジスタ等の半導体デバイス等が形成される面、また、ウエハの裏面とは、ウエハの表面とは反対側の面で上記半導体デバイス等が形成されない面と定義する。
【0015】
図1に示すように、まず、基板の裏面を疎水化処理する(ステップ1)。
【0016】
次に、裏面が疎水化処理された基板の表面上に、π電子を含む金属前駆体を用いたCVD法を用いて、金属含有膜を形成する(ステップ2)。
【0017】
このように、一実施形態に係る成膜方法は、CVD−マンガン含有膜を基板の表面上に形成する前に、基板の裏面を疎水化処理する。この後、裏面が疎水化処理された基板の表面上に、π電子を含む金属前駆体を用いたCVD法を用いて、金属含有膜を形成するので、基板の裏面上への金属の付着を抑制することができる。
【0018】
従って、一実施形態によれば、金属前駆体を用いて形成される金属含有膜を半導体装置の内部構造体に利用しても、金属汚染の発生を抑制することが可能な成膜方法を得ることができる。
【0019】
(半導体装置の製造方法)
次に、一実施形態に係る成膜方法を利用した半導体装置の製造方法の一例を説明する。
【0020】
図2A〜図2Fは、この発明の一実施形態に係る成膜方法を利用した半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【0021】
図2Aには、基板の一例が示されている。一例に係る基板は、半導体ウエハ、例えば、シリコンウエハ1である(以下ウエハ1という)。なお、図2A〜図2Fでは、トランジスタ等の素子の図示は省略し、ウエハ1上に形成されている層間絶縁膜2の部分のみを概略的に示している。
【0022】
図2Aに示すように、ウエハ1上には、層間絶縁膜2が形成されている。層間絶縁膜2の材料例は、酸化シリコン系絶縁膜である。
【0023】
次に、図2Bに示すように、層間絶縁膜2に、配線を形成するための溝3を形成する。溝3は、例えば、フォトリソグラフィ法を用いて、溝3に対応した窓を持つ図示せぬフォトレジストマスクを形成し、このフォトレジストマスクをエッチングのマスクに用いて、層間絶縁膜2をエッチングすることで形成される。
【0024】
次に、図2Cに示すように、ウエハ1の裏面(本例では、ウエハ1の層間絶縁膜2が形成されていない面)を疎水化処理し、ウエハ1の裏面に疎水化領域4を形成する。
【0025】
疎水化処理は、ウエハ1の裏面を疎水化させる疎水化効果を有する疎水化物質を用いて行われる。本例では、疎水化物質の一例としてフッ酸(フッ化水素酸)を用いた。フッ酸を含む疎水化物質を用いてウエハ1の裏面を処理することで、ウエハ1の裏面が、例えば、水素終端され、ウエハ1の裏面に疎水化領域4を形成することができる。
【0026】
疎水化処理の方法としては、疎水化物質を含有する疎水化処理液を用いたウエット式疎水化処理、又は疎水化物質を含む疎水化処理ガスを用いたドライ式疎水化処理のいずれかを用いることができる。また、ハケ塗り、ブラシ塗り、インクジェット法などを用いて疎水化処理を行っても良い。
【0027】
ウエット式疎水化処理を用いる場合には、疎水化処理液をウエハ1の裏面に供給してウエハ1の裏面を疎水化処理し、疎水化領域4を形成する。
【0028】
ドライ式疎水化処理を用いる場合には、疎水化処理ガスをウエハ1の裏面に吹き付けてウエハ1の裏面を疎水化処理し、疎水化領域4を形成する。
【0029】
ウエット式疎水化処理の場合には、ウエハ1の裏面に選択的に疎水化処理液を供給することで、ウエハ1の裏面のみを選択的に疎水化することができる。
【0030】
また、ドライ式疎水化処理の場合には、疎水化処理ガスを用いるため、疎水化処理ガスがウエハ1の表面、本例では層間絶縁膜2の表面上にも疎水化処理ガスが廻り込む可能性がある。このような可能性を低減したい場合には、疎水化処理ガスをウエハ1の裏面に吹き付けている間、ウエハ1の表面、本例では層間絶縁膜2の表面には、不活性ガスを吹き付けるようにしても良い。層間絶縁膜2の表面には、不活性ガスを吹き付けることで、疎水化処理ガスが層間絶縁膜2の表面上に廻り込むことを抑制でき、ウエハ1の裏面のみを選択的に疎水化することができる。
【0031】
また、疎水化物質としては、フッ酸の他、CH基を表面に結合させるような物質であっても良い。このような疎水化物質としては、以下の疎水化物質を挙げることができる。
【0032】
HMDS(Hexamethyldisilazane)
TMDS(1,1,3,3-Tetramethyldisilazane)
TMSDMA(Dimethylaminotrimethylsilane)
DMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)
TMMAS(Trimethylmethylaminosilane)
TMICS(Trimethyl(isocyanato)silane)
TMSA(Trimethylsilylacetylene)、及び
TMSC(Trimethylsilylcyanide)
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン
ジメチルシラン
テトラエチルシクロテトラシロキサン
1,2,3−トリエチル−2,4,6−トリメチルシクロトリシラザン
1,2,3,4,5,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン
モノメチルシラン
ヘキサメチルジシラン
ヘキサメチルシロキサン
トリメチルシラン
テトラメチルシラン
ジメチルジメトキシシラン
オクタメチルシクロテトラシロキサン
トリメトキシメチルシラン
ヘキサエチルジシラザン
ヘキサフェニルジシラザン
ヘプタメチルジシラザン
ジプロピル−テトラメチルジシラザン
ジ−n−ブチル−テトラメチルジシラザン
ジ−n−オクチル−テトラメチルジシラザン
ジビニル−テトラメチルジシラザン
1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン
ヘキサエチルシクロトリシラザン
ヘキサフェニルシクロトリシラザン
オクタメチルシクロテトラシラザン
オクタエチルシクロテトラシラザン
テトラエチル−テトラメチルシクロテトラシラザン
テトラフェニルジメチルジシラザン
ジフェニル−テトラメチルジシラザン
トリビニル−トリメチルシクロトリシラザン、及び
テトラビニル−テトラメチルシクロテトラシラザン
疎水化物質としては、上記物質から選択された少なくとも1つであっても良い。
【0033】
具体的な処理条件は、以下の通りである。
【0034】
ウエット式疎水化処理
疎水化処理液 : フッ酸溶液(濃度0.1%〜50%)
ウエハ温度 : 0℃以上50℃以下
処理時間 : 10sec以上300sec以下
ドライ式疎水化処理
疎水化処理ガス : フッ化水素
ウエハ温度 : 0℃以上50℃以下
処理時間 : 10sec以上300sec以下
次に、図2Dに示すように、裏面が疎水化処理されたウエハ1の表面上、本例では層間絶縁膜2の表面上に、π電子を含む金属前駆体を原料ガスとするCVD法を用いて、金属含有膜を形成する。本例では、π電子を含む金属前駆体としてビスエチルシクロペンタジエニルマンガン((EtCp)Mn[=Mn(C])を用いた。また、成膜法としては、熱CVD法を用いた。これにより、層間絶縁膜2の表面上には、CVD−マンガン含有膜5として熱CVD−酸化マンガン膜が形成される。CVD−マンガン含有膜5は、金属、例えば、銅の拡散を抑制する機能を持つ。このため、本例のCVD−マンガン含有膜5は、銅の拡散を抑制するバリア膜として使用される。
【0035】
具体的な処理条件は、以下の通りである。
【0036】
処理容器内雰囲気: (EtCp)Mn雰囲気
ウエハ温度 : 50℃以上400℃以下
処理時間 : 1sec以上600sec以下
(EtCp)Mnは、シクロペンタジエニル配位子を有する。即ち、π電子を含む金属前駆体である。このため、ウエハ1の裏面に形成された疎水化領域4上には、マンガンの付着が抑制される。
【0037】
また、π電子を含む金属前駆体としては、(EtCp)Mnの他、シクロペンタジエニル配位子を有する金属前駆体であっても良い。
【0038】
また、金属がマンガンであるとき、シクロペンタジエニル配位子を有する金属前駆体としては、(EtCp)Mnの他、以下の金属前駆体を挙げることができる。
【0039】
CpMn[=Mn(C
(MeCp)Mn[=Mn(CH
(i−PrCp)Mn[=Mn(C
MeCpMn(CO)[=(CH)Mn(CO)
(t−BuCp)Mn[=Mn(C
Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11)]、及び
((CHCp)Mn[=Mn((CH
金属前駆体としては、上記物質から選択された少なくとも1つであっても良い。
【0040】
次に、図2Eに示すように、CVD−マンガン含有膜5上に、銅又は銅合金膜6aを形成した後、図2Fに示すように、銅又は銅合金膜6aの表面を平坦化し、溝3内に、銅を使用している配線6を形成する。
【0041】
このようにして、バリア膜としてCVD−マンガン含有膜5を用いた銅を使用している配線6を備えた半導体装置が製造される。
【0042】
このように製造された半導体装置にあっては、ウエハ1の裏面への金属、本例ではマンガンの付着が抑制される。このため、金属前駆体を用いて形成される金属含有膜、本例ではCVD−マンガン含有膜5を半導体装置の内部構造体、本例ではバリア膜として利用しても、半導体装置の内部への金属汚染の発生を抑制することができる。また、ウエハ1の裏面への金属の付着が抑制されるので、付着した金属が、他の処理容器の内部に持ち込まれ拡散する、いわゆるクロスコンタミネーションの発生も抑制することが可能である。
【0043】
表1に、本実施形態による効果の確認を行った実験データを示す。
【0044】
【表1】

表1は、ウエハ1としてシリコンウエハの表面上に、金属前駆体、(EtCp)Mnを原料ガスとした熱CVDプロセスを行った後、シリコンウエハの表面上に存在するマンガンの量を蛍光X線測定により測定した結果を示している。マンガンの量は、シリコンウエハの表面に、直径10mmの円領域の観測箇所を設定し、この観測箇所において、マンガン蛍光X線の1秒間あたりの検出数(cps:counts per second)で評価した。
【0045】
表1に示すように、疎水化処理されていないシリコンウエハの表面上に、(EtCp)Mnを原料ガスとした熱CVDプロセスを行った場合(比較例)、シリコンウエハの表面の観測箇所において5.7cpsの蛍光X線量に相当するマンガン量が検出された。
【0046】
対して、疎水化処理されたシリコンウエハの表面上に、(EtCp)Mnを原料ガスとした熱CVDプロセスを行った場合(一実施形態)には、シリコンウエハの表面の観測箇所において1.4cpsの蛍光X線量に相当するマンガン量しか検出されず、比較例に比較してシリコンウエハ表面のマンガンの付着量を約25%に低減することができた。
【0047】
なお、本効果の確認を行った実験の条件は以下の通りである。
【0048】
疎水化処理(フッ酸洗浄)の条件
チップ化したベアシリコンウエハ(Bare−Siウエハ)を、フッ化水素酸(濃度46以%上48%以下)に30秒間浸した後、ブロー乾燥させた。
【0049】
フッ酸洗浄から5分以内に、下記のプロセス条件にて熱CVDプロセスを行った
熱CVDプロセスの条件
ガスをバブリングガスとして使用し、80℃に加温されたMn前駆体(EtCp)Mnをウエハに対して気化供給を行った。具体的には、Hの流量25sccm、Mn前駆体(EtCp)Mnの推定流量7.2sccm、プロセス圧力133Pa、ウエハ温度200℃の条件にて、10分間(600sec)の熱CVDプロセスを行った。
【0050】
このように、一実施形態によれば、ウエハ1の裏面を疎水化処理する、あるいは疎水化処理しておくことで、ウエハ1の表面上にCVD−マンガン含有膜5した場合でも、ウエハ1の裏面上に存在するマンガンの量を減らすことができる。
【0051】
(装置構成)
(成膜システム)
図3は、この発明の一実施形態に係る成膜方法の一例を実施することが可能な成膜システムの一例を概略的に示す平面図である。
【0052】
図3に示すように、成膜システム100は、第1の処理ユニット200と、第2の処理ユニット300とを備えている。処理ユニット200、300は、多角形状をなす搬送室101の2つの辺にそれぞれ対応して設けられている。搬送室101の他の2つの辺にはそれぞれロードロック室102、103が設けられている。ロードロック室102、103の搬送室101と反対側には、搬入出室104が設けられている。搬入出室104のロードロック室102、103と反対側にはウエハWを収容可能な3つのキャリアCを取り付けるポート105、106、107が設けられている。
【0053】
処理ユニット200、300、ロードロック室102、103は、搬送室101にゲートバルブGを介して接続される。処理ユニット200、300、ロードロック室102、103は、ゲートバルブGを開けることにより搬送室101と連通され、ゲートバルブGを閉じることにより搬送室101から遮断される。ロードロック室102、103は、さらに搬入出室104にゲートバルブGを介して接続される。ロードロック室102、103は、ゲートバルブGを開けることにより搬入出室104に連通され、対応するゲートバルブGを閉じることにより搬入出室104から遮断される。
【0054】
搬送室101の内部には、処理ユニット200、300、ロードロック室102、103に対して、ウエハ1の搬入出を行う搬送装置108が設けられている。搬送装置108は、搬送室101の略中央に配設されている。搬送室101の内部は、所定の真空度に保持されるようになっている。ウエハ1は、処理ユニット200、300、ロードロック室102、103の間で大気暴露されることなく搬送される。
【0055】
搬入出室104のポート105、106、107にはそれぞれシャッタSが設けられている。ウエハ1を収容した、又は空のキャリアCがポート105、106、107に取り付けられるとシャッタSが外れ、外気の侵入を防止しつつ、キャリアCが搬入出室104と連通される。搬入出室104の側面には、アライメントチャンバ109が設けられている。アライメントチャンバ109では、ウエハ1のアライメントが行われる。
【0056】
搬入出室104の内部には、キャリアC、アライメントチャンバ109、ロードロック室102、103に対して、ウエハ1の搬入出を行う搬送装置110が設けられている。
【0057】
制御部111は、成膜システム100を制御する。制御部111は、プロセスコントローラ112、ユーザーインターフェース113、及び記憶部114を含んで構成される。ユーザーインターフェース113は、工程管理者が、成膜システム100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボード、成膜システム100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を含む。記憶部114には、成膜システム100による処理を、プロセスコントローラ112の制御にて実現するための制御プログラムや駆動条件データ等が記録されたレシピが格納される。レシピは、必要に応じてユーザーインターフェース113からの指示により記憶部114から呼び出され、プロセスコントローラ112に実行させることで成膜システム100が制御される。レシピは、例えば、CD−ROM、ハードディスク、フラッシュメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納された状態のものを利用したり、あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させて利用したりすることも可能である。
【0058】
(処理ユニット200)
第1の処理ユニット200は、ウエハ1の裏面を疎水化処理する装置である。
【0059】
図4は、処理ユニット200の一例(200a)を概略的に示す断面図である。なお、図4においては、処理容器内へのガス供給系、及びウエハ1を加熱する加熱機構等の図示は省略している。
【0060】
図4に示すように、処理ユニット200aは、ウエハ1を収容する処理容器201を備えている。処理容器201の底部には、ウエハ1を回転可能に載置する載置台202が設けられている。
【0061】
載置台202には、ウエハ1を支持する支持部203が設けられている。本例の支持部203は、ウエハ1のエッジを支持する。さらに、載置台202は、回転する回転軸204により支持されている。回転軸204は、内部が中空とされている。回転軸204の内部には、処理液供給管205が設けられている。処理液供給管205は、ウエハ1の裏面に対し、疎水化処理液を供給する。
【0062】
処理液供給管205には、フッ酸溶液等の疎水化処理液を供給する疎水化処理液供給源206から延びる配管207が接続されている。配管207には、疎水化処理液供給源206から順に、疎水化処理液の流量を調節するリキッドフローコントローラ208と、配管207を開閉するバルブ209とが設けられている。
【0063】
載置台202の周囲には、疎水化処理液を回収する、円筒状のドレインカップ210が設けられている。ドレインカップ210の底部には、図示せぬ回収機構に接続された排出管211が接続されている。ドレインカップ210で回収された疎水化処理液は、排出管211を介して排出され、図示せぬ回収機構に送られる。
【0064】
処理容器201の側壁には、ウエハ1の搬入出を行う搬入出口212が設けられている。搬入出口212はゲートバルブGにより開閉可能である。
【0065】
処理ユニット200aを用いてウエハ1の裏面を疎水化処理する場合には、まず、支持部203によりウエハ1のエッジを支持する。この際、ウエハ1の裏面は載置台202から離し、ウエハ1の裏面と載置台202との間に空間213が生じた状態でウエハ1を支持する。次いで、載置台202を回転させることで、ウエハ1を回転させる。次いで、疎水化処理液を処理液供給管205から空間213に吐出させる。これにより、回転したウエハ1の裏面に疎水化処理液が拡がり、ウエハ1の裏面が疎水化処理される。なお、ウエハ1の裏面に拡がった疎水化処理液は、ウエハ1が回転しているため、やがて裏面から離脱する。離脱した疎水化処理液はドレインカップ210によって回収される。
【0066】
図5は、処理ユニット200の他例(200b)を概略的に示す断面図である。なお、図5においては、ウエハ1を加熱する加熱機構等の図示は省略している。
【0067】
図5に示すように、処理ユニット200bは、ウエハ1を収容する処理容器251を備えている。処理容器251の底部には、ウエハ1を支持する支持部252が設けられている。本例の支持部252は、ウエハ1のエッジを支持する。
【0068】
処理容器251の側壁には、ウエハ1の表面に対して不活性ガスを供給する不活性ガス供給管253と、ウエハ1の裏面に対して疎水化処理ガスを供給する疎水化処理ガス供給管254とが設けられている。
【0069】
不活性ガス供給管253には、窒素ガス等の不活性ガスを供給する不活性ガス供給源255から延びる配管256が接続されている。配管256には、不活性ガス供給源255から順に、不活性ガスの流量を調節するマスフローコントローラ257と、配管256を開閉するバルブ258とが設けられている。
【0070】
疎水化処理ガス供給管254には、フッ化水素等の疎水化処理ガスを供給する疎水化処理ガス供給源259から延びる配管260が接続されている。配管260には、疎水化処理ガス供給源259から順に、疎水化処理ガスの流量を調節するマスフローコントローラ261と、配管260を開閉するバルブ262とが設けられている。
【0071】
処理容器251の底部には、処理容器251の内部を排気する図示せぬ排気機構に接続された排気管263a、263bが接続されている。ウエハ1の表面上方の空間265の雰囲気は排気管263aを介して排気され、ウエハ1の裏面下方の空間266の雰囲気は排気管263bを介して排気される。また、本例の支持部252は、例えば、シリンダ状になっている。このため、ウエハ1が支持部252に支持されたとき、空間266は空間265から隔離される。このように支持部252を、例えば、シリンダ状とすることで、疎水化処理ガスがウエハ1の表面側、即ち、空間265側に拡散することを抑制することができる。
【0072】
処理容器251の側壁には、ウエハ1の搬入出を行う搬入出口264が設けられている。搬入出口264はゲートバルブGにより開閉可能である。
【0073】
処理ユニット200bを用いてウエハ1の裏面を疎水化処理する場合には、まず、支持部252によりウエハ1のエッジを支持する。次いで、不活性ガスを不活性ガス供給管253からウエハ1の表面上方の空間265に吐出させる。これとともに、疎水化処理ガスを疎水化処理ガス供給管254からウエハ1の裏面下方の空間266に吐出させる。吐出された疎水化処理ガスはウエハ1の裏面に接触し、これにより、ウエハ1の裏面が疎水化処理される。
【0074】
(処理ユニット300)
第2の処理ユニット300は、裏面が疎水化処理されたウエハ1の表面上に、金属含有膜を形成する装置である。
【0075】
図6は、処理ユニット300の一例を概略的に示す断面図である。
【0076】
図6に示すように、本例の処理ユニット300は、マンガン含有膜を成膜する熱CVD装置として構成され、ウエハ1を収容する処理容器301を備えている。処理容器301内には載置台302が設けられている。載置台302にはヒータ303が埋設されており、ウエハ1を、例えば、50℃以上400℃以下に加熱することが可能に構成されている。
【0077】
処理容器301の天井部には、シャワーヘッド304が設けられている。シャワーヘッド304は、金属前駆体を含む成膜ガスが供給される供給口305と、供給された成膜ガスをウエハ1に対して吐出させる複数の吐出孔306とを備えている。供給口305は、成膜ガスを供給するガス供給管307に接続されている。
【0078】
ガス供給管307には、(EtCp)Mn等の金属前駆体を供給する金属前駆体供給源308から延びる配管309と、ArガスやNガス等からなるキャリアガスを供給するキャリアガス供給源310から延びる配管311が接続されている。
【0079】
金属前駆体供給源308は、本例では、金属前駆体貯留部312を備えている。本例では、金属前駆体貯留部312に、金属前駆体として、例えば、(EtCp)Mnが液体の状態で貯留されている。金属前駆体貯留部312にはバブリング機構313が接続されている。
【0080】
バブリング機構313は、本例では、バブリングガスが貯留されたバブリングガス貯留部314と、バブリングガスを金属前駆体貯留部312に導く供給管315と、供給管315中を流れるバブリングガスの流量を調節するマスフローコントローラ316、及びバルブ317とを含んで構成される。バブリングガスの例は、アルゴン(Ar)ガス、水素(H)ガス、及び窒素(N)ガス等である。供給管315の一端は、金属前駆体貯留部312に貯留された金属前駆体の液体、本例では、(EtCp)Mn中に配置される。供給管315からバブリングガスを噴出させることで金属前駆体の液体はバブリングされ、気化される。気化された金属前駆体ガス、本例では(EtCp)Mnガスは、配管309、及び配管309を開閉するバルブ318を介してガス供給管307、シャワーヘッド304を通って、処理容器301の内部に導入される。
【0081】
ガス供給管307には、配管311が接続されており、キャリアガス供給源310から、バルブ319、マスフローコントローラ320、及びバルブ321を通って、キャリアガスが導入される。
【0082】
処理容器301の底部には、排気口322が設けられている。排気口322には排気装置323が接続されている。処理容器301の内部の圧力は、排気装置323により排気することで、所定の真空度まで減圧することができる。
【0083】
処理ユニット300を用いてウエハ1の表面に金属含有膜を形成する場合には、まず、排気装置323により所定の真空度に減圧された処理容器301内の載置台302上にウエハ1を載置する。次いで、気化された金属前駆体ガスをシャワーヘッド304の吐出孔306からウエハ1の表面上方に吐出させる。吐出された金属前駆体ガスはウエハ1の表面に接触し、これによりウエハ1の表面上に金属含有膜、例えば、CVD−マンガン含有膜5が形成される。
【0084】
この発明の一実施形態に係る成膜方法の一例は、図3〜図6に示したような成膜システム100を使用することで、ウエハ1の裏面の疎水化処理と、ウエハ1の表面上への金属含有膜との成膜処理とを、搬送室101を介して、大気暴露することなく実施することができる。
【0085】
なお、大気暴露しないことによる利点は、疎水化処理されたウエハ1の裏面が、大気暴露されることによって親水性に変化してしまうことを抑制できることである。
【0086】
このように、この発明の実施形態に係る成膜方法によれば、金属前駆体を用いて形成される金属含有膜を半導体装置の内部構造体に利用しても、金属汚染の発生を抑制することが可能な成膜方法を提供できる。
【0087】
以上、この発明を一実施形態に従って説明したが、この発明は上記一実施形態に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲で様々に変形することができる。
【0088】
例えば、一実施形態においては、金属含有膜として、CVD−マンガン含有膜を例示したが、金属としてはマンガンに限定されるものではない。例えば、ルテニウム(Ru)やストロンチウム(Sr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等にも応用することができる。
【0089】
また、金属含有膜が利用される半導体装置の内部構造体として、バリア膜を例示したが、バリア膜の他、誘電体膜、例えば、キャパシタの誘電体として使用される高誘電体膜や強誘電体膜にも適用することができる。さらには、シード膜やシリサイド膜にも適用することができる。
その他、この発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で様々に変形することができる。
【符号の説明】
【0090】
1…ウエハ、2…層間絶縁膜、3…溝、4…疎水化領域、5…CVD−マンガン含有膜、6…銅を使用している配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上に、金属含有膜を成膜する成膜方法であって、
(1)前記基板の裏面を疎水化処理する工程と、
(2)前記裏面が疎水化処理された前記基板の表面上に、金属前駆体を用いたCVD法を用いて、前記金属含有膜を形成する工程と、
を備えることを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記疎水化処理が、前記基板の裏面を疎水化させる疎水化効果を有する疎水化物質を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記疎水化処理が、前記疎水化物質を含有する疎水化処理液を用いたウエット式疎水化処理であり、
前記疎水化処理液を前記基板の裏面に供給し、前記基板の裏面を疎水化処理することを特徴とする請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記疎水化処理が、前記疎水化物質を含む疎水化処理ガスを用いたドライ式疎水化処理であり、
前記疎水化処理ガスを前記基板の裏面に吹き付けて、前記基板の裏面を疎水化処理することを特徴とする請求項2に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記疎水化処理ガスを前記基板の裏面に吹き付けている間、
前記基板の表面には、不活性ガスを吹き付けることを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記疎水化物質が、
フッ酸
HMDS(Hexamethyldisilazane)
TMDS(1,1,3,3-Tetramethyldisilazane)
TMSDMA(Dimethylaminotrimethylsilane)
DMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)
TMMAS(Trimethylmethylaminosilane)
TMICS(Trimethyl(isocyanato)silane)
TMSA(Trimethylsilylacetylene)
TMSC(Trimethylsilylcyanide)
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン
ジメチルシラン
テトラエチルシクロテトラシロキサン
1,2,3−トリエチル−2,4,6−トリメチルシクロトリシラザン
1,2,3,4,5,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン
モノメチルシラン
ヘキサメチルジシラン
ヘキサメチルシロキサン
トリメチルシラン
テトラメチルシラン
ジメチルジメトキシシラン
オクタメチルシクロテトラシロキサン
トリメトキシメチルシラン
ヘキサエチルジシラザン
ヘキサフェニルジシラザン
ヘプタメチルジシラザン
ジプロピル−テトラメチルジシラザン
ジ−n−ブチル−テトラメチルジシラザン
ジ−n−オクチル−テトラメチルジシラザン
ジビニル−テトラメチルジシラザン
1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン
ヘキサエチルシクロトリシラザン
ヘキサフェニルシクロトリシラザン
オクタメチルシクロテトラシラザン
オクタエチルシクロテトラシラザン
テトラエチル−テトラメチルシクロテトラシラザン
テトラフェニルジメチルジシラザン
ジフェニル−テトラメチルジシラザン
トリビニル−トリメチルシクロトリシラザン、及び
テトラビニル−テトラメチルシクロテトラシラザン
から選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項2乃至請求項5いずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記金属前駆体が、π電子含有配位子を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6いずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記π電子含有配位子を有する前記金属前駆体が、シクロペンタジエニル配位子を有することを特徴とする請求項7に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記金属がマンガンであるとき、
前記シクロペンタジエニル配位子を有する前記金属前駆体が、
(EtCp)Mn[=Mn(C
CpMn[=Mn(C
(MeCp)Mn[=Mn(CH
(i−PrCp)Mn[=Mn(C
MeCpMn(CO)[=(CH)Mn(CO)
(t−BuCp)Mn[=Mn(C
Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11)]、及び
((CHCp)Mn[=Mn((CH
から選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項8に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記(1)工程、及び前記(2)工程が別々の処理容器内で行われ、
前記(1)工程、及び前記(2)工程を、前記基板を大気暴露することなく連続して行うことを特徴とする請求項1乃至請求項9いずれか一項に記載の成膜方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−29256(P2011−29256A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170999(P2009−170999)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】