説明

投写光学系及びこれを備えるプロジェクター

【課題】プロジェクターの大型化や画像の劣化を防止することができる投写光学系及びこれを組み込んだプロジェクターを提供する。
【解決手段】第2群40が液晶パネル18G(18R,18B)の縦横方向に関して異なるパワーを持つので、第1群30も含めた投写光学系20の全系としても、縦横方向に異なる焦点距離を持つことになり、液晶パネル18G(18R,18B)の画像の横縦比とスクリーン上に投写される画像の横縦比とを異なるものにできる。また、液晶パネル18G(18R,18B)に近い第2群40に設けた第1の光学要素群41と第2の光学要素群42によって縦横方向に関するパワーに差を設けて横縦比を変化させているので、液晶パネル18G(18R,18B)に近い位置で各像高の光線を比較的像高に近い経路に沿って通過させやすくなり、光線のコントロールがしやすくなり、性能向上が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写像のアスペクト比を切り替えることができる投写光学系及びこれを備えるプロジェクターに関し、特に、アスペクト比変換用の光学部を着脱可能にした投写光学系及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの投写光学系に用いられるアスペクト比変換用のコンバーターとして、本来の投写光学系の前面位置すなわち像側正面に進退可能に配置されるフロント配置型のコンバーターが存在する。
【0003】
しかしながら、この種のコンバーターは、プロジェクター本体から独立した外付けの光学部として設けられており、プロジェクターを大型化させるとともに、コンバーターを含めた全投写光学系の調整を複雑にし、或いは画像を著しく劣化させる。
【0004】
なお、プロジェクターの投写光学系ではなく、カメラ等の撮像光学系に使用されるアスペクト比変換用のコンバーターとして、結像光学系の像側に配置されるリア配置型のアナモフィックコンバーターが存在する(特許文献1参照)。このアナモフィックコンバーターは、第1レンズユニットと、アナモフィックレンズを含む第2レンズユニットと、正の光学的パワーを有する第3レンズユニットとからなり、第2レンズユニットは、第1レンズユニット及び第3レンズユニットの間の動作位置に配置された第1の状態と、動作位置から退避した第2の状態とに移動可能となっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のアナモフィックコンバーターは、撮像光学系に用いるものであり、これを投写光学系にそのまま用いると、種々の制約が生じる。例えば、特許文献1のような撮像光学系では、レンズ交換できることが基本的前提となっており、アナモフィックコンバーターを使用しない場合、結像光学系は、撮像部に直接固定されて単独で使用される。そのため、結像光学系の性能を維持しようとすると、アナモフィックコンバーターが長くなってしまう。一方、プロジェクターの投写光学系では、レンズ交換が一般的に行われないので、様々な交換レンズをマウント可能にする汎用コンバーターとしての機能は不要となる。
【0006】
なお、投写光学系では、一般的にアオリを利用すること(表示パネルをレンズ光軸に対して垂直な方向にオフセット又はシフトさせること)が常識であるが、撮像光学系では、そのような機能は不要なので、上記のようなアオリに係る課題、例えばアオリ状態でアナモフィックコンバーターを挿入するとスクリーン上で画像の位置ズレが生じることに対しての対処等については、一切考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−300928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記背景技術の問題に鑑みてなされたものであり、プロジェクターの大型化や画像の劣化を防止することができる投写光学系及びこれを組み込んだプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る投写光学系は、光変調素子の画像を被投写面上に拡大投写する際に、光変調素子の画像の横縦比と、被投写面上に投写される画像の横縦比とを異なるものとする投写光学系であって、被投写面側から順に、例えば変倍光学系(ズームレンズ)を含む拡大光学系である第1群と、光軸に対して回転非対称な面を持つとともに、光変調素子の縦方向と横方向とで異なるパワーを持った調整光学要素を含む第2群とを備えてなる。
【0010】
上記投写光学系によれば、第2群が光変調素子の縦方向と横方向とで異なるパワーを持つので、第1群も含めた投写光学系の全系としても、縦横方向に異なる焦点距離を持ち縦横方向の拡大倍率も異なるものとなり、光変調素子の画像の横縦比と被投写面上に投写される画像の横縦比とを異なるものにできる。つまり、本投写光学系により、幅と高さとの比であるアスペクト比の変換が可能になる。また、光変調素子に近い第2群に設けた調整光学要素によって縦横方向に関するパワーに差を設けて横縦比を変化させているので、光変調素子に近い位置で各像高の光線を比較的像高に近い経路に沿って通過させやすくなり、光線のコントロールがしやすくなり、結像性能の向上が可能となる。一般的に、回転非対称な光学要素の製造は難しく、精度を出すためには小型化が必須条件である。上記投写光学系の場合、光変調素子に近い位置では、光線の広がりが少なくレンズが小型になるので、高精度なレンズ加工が期待でき、性能向上につながるとともに、コストダウンも可能である。
【0011】
本発明の具体的な側面によれば、投写光学系において、第2群は、光路上に進退可能であり、第2群が光路上から退避したときに、光変調素子の画像と被投写面に投写される画像との横縦比が一致している。この場合、第1群が一般的な投写光学系と同じ拡大光学系の機能を受け持ち、第1群のみで光変調素子の画像を被投写面上に明るい状態で拡大投写することができる。さらに、第2群を光路上に進退させる際、第1群を大きく動かす必要がないので、機械機構等の負担が少ない。なお、第2群が従来型のアナモフィックコンバーター(リレー光学系)である場合、アナモフィックコンバーターを取り外した場合、第1群を凡そアナモフィックコンバーター分だけ撮像素子に近づける必要が生じ、第1群を再マウントしたり大きく移動させるため大掛かりな機械機構等が必要になるとともに、アナモフィックコンバーターの光学的な負担が大きくなり、アナモフィックコンバーターの長さや構成レンズ数が第1群に匹敵する大掛かりなものにならざるを得ない。一方、本発明の投写光学系によれば、第2群をリレーレンズのように機能させる必要がなく、全長を短くし構成レンズ数を少なくすることが可能になる。また、本発明の投写光学系の場合、従来型のアナモフィックコンバーターとは異なり、第1群から独立して第2群の一部ではなく全体を進退させるので、第2群の進退又は着脱の際、第1群への偏芯等の影響が少なく、さらに機構的にも独立した配置が可能になり、投写光学系の組立の際に、第2群をユニットとして第1群のみとの組立精度を考慮すればよく、組立性向上が望める。
【0012】
本発明の別の側面によれば、第2群は、パワーを持たない平板と入れ替え可能であり、第2群に代えて平板が光路上に配置されたときに、光変調素子の画像の横縦比と被投写面上の画像との横縦比が一致している。これにより、第2群と平板とを入れ替えた場合も、透過率の変化を少なく抑えることができるので、入れ替えの前後で画像の明るさを調整する必要が無くなる。また、平板の材料を適切に選択すれば、入れ替え時の色収差の差を低減することができる。さらに、第2群の進退による結像面のズレを解消することができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、第2群は、異なる調整光学要素を有する複数の第2群ユニットのうちのいずれか1つの第2群ユニットを選択して光路上に配置したものである。この場合、光変調素子の画像の横縦比と異なる横縦比を2種類以上選択して被投写面上に対応する横縦比の画像を投写することができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、光変調素子の中心を通る法線と、投写光学系の光軸とが、平行に配置されるように構成されている。この場合、光変調素子の中心と投写光学系の光軸とを一致させる必要はなく、光変調素子の中心を投写光学系の光軸からずらして配置することにより、そのずらした量に投写光学系の倍率をかけた量だけ被投写面が逆方向にずれた精密な投写が可能になる。
【0015】
本発明のさらに別の側面によれば、投写光学系は、光変調素子の中心を通る法線に対し、投写光学系の光軸を平行に保ったまま移動させるシフト機構を備えている。この場合、投写光学系のシフト量を調整しても、そのシフト量に応じて被投写面がシフトした比較的精密な投写が可能になる。さらに、拡大光学系が変倍機能を備える場合には、シフトを利用した状態で投写光学系の変倍を行なうと、被投写面のシフト量がシフトに合わせて増減し被投写面から、はみ出すので、これをシフト機構で補正することで、被投写面に収まるように画像を投写することが容易になる。
【0016】
本発明のさらに別の側面によれば、調整光学要素の一部又は全部が、シリンドリカルレンズである。シリンドリカルレンズは、高精度の加工が容易であり、調整光学要素延いては投写光学系のコストダウンが可能になる。
【0017】
本発明のさらに別の側面によれば、調整光学要素の一部又は全部が、アナモフィックレンズ(トーリック又はトロイダルレンズ)である。アナモフィックレンズは、縦横の両断面で曲率をコントロールできるので、非点収差等の曲率差に影響する諸収差の低減が可能で、投写光学系の高性能化が期待できる。
【0018】
本発明のさらに別の側面によれば、調整光学要素の一部又は全部が、投写光学系の光軸を含む断面が非球面式で表される形状を有する。非球面式で表される非球面レンズは、諸収差の低減が可能であり、特に高次の非球面係数を利用することで、高像高部の補正が可能になる。本発明では、パネルに近い比較的、各像高の光線が像高に近い高さで通過している面であり、より効果的に収差を補正することが可能になり、投写光学系の高性能化が期待できる。
【0019】
本発明のさらに別の側面によれば、調整光学要素の一部又は全部が、自由曲面レンズである。自由曲面レンズにより、光変調素子の縦横方向以外の斜め方向に関する投写状態の最適化も容易になり、投写光学系の高性能化が達成される。
【0020】
本発明のさらに別の側面によれば、第2群は、1枚以上の回転対称レンズと1枚以上の回転非対称レンズとを含む。第1群の拡大光学系で抑え切れなかった諸収差、特に非点収差を光変調素子に近い第2群側で簡易に抑えこむことができる。
【0021】
本発明のさらに別の側面によれば、第2群は、光変調素子の横方向の断面において、被投写面側から順に、正のパワーをもつ第1の光学要素群と、負のパワーをもつ第2の光学要素群とで構成されている。この場合、被投写面上に投写される映像を縦方向に圧縮又は短縮することができる。被投写面の縦寸法が固定されている場合、投写距離を変えずに横縦比の変更が可能になる。
【0022】
本発明のさらに別の側面によれば、第2群は、光変調素子の横方向の断面において、被投写面側から順に、負のパワーをもつ第1の光学要素群と、正のパワーをもつ第2の光学要素群とで構成されている。この場合、被投写面上に投写される映像を横方向に伸張又は拡大することができる。被投写面の縦寸法が固定されている場合、投写距離を変えずに横縦比の変更が可能になる。
【0023】
本発明のさらに別の側面によれば、第1の光学要素群と第2の光学要素群の間隔が可変であり、当該間隔に応じて被投写面に投写される画像の横縦比が変化する。この場合、横縦比すなわちアスペクト比を連続的に変化させることができる。
【0024】
本発明のさらに別の側面によれば、光変調素子側で略テレセントリックになっている。第2群を光路上に進退させた場合に、投写光学系のバックフォーカスが変化しても、投写光学系を光軸に沿って移動させるだけで、被投写面上に投写される映像の結像状態や配置、拡大・縮小倍率を適切に保つことができる。
【0025】
本発明のさらに別の側面によれば、第2群の光変調素子側に、光合成用のプリズムが配置されている。この場合、複数の光変調素子に形成された複数色の画像を合成して投写することが可能になる。
【0026】
発明に係るプロジェクターは、上述した投写光学系と、光変調素子とを備える。本プロジェクターによれば、光変調素子の画像の横縦比と異なる横縦比の画像を被投写面上に投写することができる。この際、特別な投写光学系により、プロジェクター大型化や画像の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクターの使用状態を説明する図である。
【図2】図1のプロジェクターの概略構成を示す図である。
【図3】図1のプロジェクターのうち投写光学系の構造を説明する図である。
【図4】(A)は、投写光学系の縦断面の構成を示し、(B)は、投写光学系の横断面の構成を示す。
【図5】投写光学系等を説明する斜視図である。
【図6】(A)は、投写光学系の第1動作状態を示し、(B)は、投写光学系の第2動作状態を示す。
【図7】(A)は、図3等に示す投写光学系の変形例の縦断面の構成を示し、(B)は、投写光学系の横断面の構成を示す。
【図8】第1実施形態の実施例1の光学系について説明する図である。
【図9】(A)〜(C)は、図8に示す実施例1の光学系のズーム動作を示す図である。
【図10】図8に示す実施例1の光学系から第2群を除いた状態を説明する図である。
【図11】(A)〜(C)は、図10に示す光学系のズーム動作を示す図である。
【図12】(A)は、第2実施形態に係るプロジェクターの投写光学系のある状態における横断面の構成を示し、(B)は、投写光学系の別の状態における横断面の構成を示す。
【図13】(A)は、第3実施形態に係るプロジェクターの投写光学系のある状態における横断面の構成を示し、(B)は、投写光学系の別の状態における横断面の構成を示す。
【図14】第4実施形態に係るプロジェクターの概略構成を示す図である。
【図15】(A)は、投写光学系の縦断面の構成を示し、(B)は、投写光学系の横断面の構成を示す。
【図16】第4実施形態の実施例2の光学系について説明する図である。
【図17】(A)〜(C)は、図16に示す実施例2の光学系のズーム動作を示す図である。
【図18】図16に示す実施例2の光学系から第2群を除いた状態を説明する図である。
【図19】(A)〜(C)は、図18に示す光学系のズーム動作を示す図である。
【図20】(A)は、変形例の投写光学系の縦断面の構成を示し、(B)は、変形例の投写光学系の横断面の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態に係るプロジェクター及び投写光学系を詳細に説明する。
【0029】
〔第1実施形態〕
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るプロジェクター2は、画像信号に応じて画像光PLを形成し、当該画像光PLをスクリーンSC等の被投写面へ向けて投写する。プロジェクター2の投写光学系20は、プロジェクター2内に内蔵された光変調素子である液晶パネル18G(18R,18B)の画像をスクリーン(被投写面)SC上に拡大投写する際に、液晶パネル18G(18R,18B)の画像の横縦比(アスペクト比)AR0に対して、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比(アスペクト比)AR2を異なるものとすることができる。つまり、液晶パネル18Gの表示領域A0の横縦比AR0と、スクリーンSCの表示領域A2の横縦比AR2とは、同一とすることもできるが、異なるものとすることもできる。具体的には、液晶パネル18Gの表示領域A0の横縦比AR0は、例えば1.78:1であり、スクリーンSCの表示領域A2の横縦比AR2は、例えば1.78:1、1.85:1、2.35:1、2.4:1等とされる。
【0030】
図2に示すように、プロジェクター2は、画像光を投写する光学系部分50と、光学系部分50の動作を制御する回路装置80とを備える。
【0031】
光学系部分50において、光源10は、例えば超高圧水銀ランプであって、R光、G光、及びB光を含む光を射出する。ここで、光源10は、超高圧水銀ランプ以外の放電光源であってもよいし、LEDやレーザーのような固体光源であってもよい。第1インテグレーターレンズ11及び第2インテグレーターレンズ12は、アレイ状に配列された複数のレンズ素子を有する。第1インテグレーターレンズ11は、光源10からの光束を複数に分割する。第1インテグレーターレンズ11の各レンズ素子は、光源10からの光束を第2インテグレーターレンズ12のレンズ素子近傍にて集光させる。第2インテグレーターレンズ12のレンズ素子は、重畳レンズ14と協働して、第1インテグレーターレンズ11のレンズ素子の像を液晶パネル18R、18G、18Bに形成する。このような構成により、光源10からの光が液晶パネル18R、18G、18Bの表示領域(図1の表示領域A0)全体を略均一な明るさで照明する。
【0032】
偏光変換素子13は、第2インテグレーターレンズ12からの光を所定の直線偏光に変換させる。重畳レンズ14は、第1インテグレーターレンズ11の各レンズ素子の像を、第2インテグレーターレンズ12を介して液晶パネル18R、18G、18Bの表示領域上で重畳させる。
【0033】
第1ダイクロイックミラー15は、重畳レンズ14から入射したR光を反射させ、G光及びB光を透過させる。第1ダイクロイックミラー15で反射されたR光は、反射ミラー16及びフィールドレンズ17Rを経て、光変調素子である液晶パネル18Rへ入射する。液晶パネル18Rは、R光を画像信号に応じて変調することにより、R色の画像を形成する。
【0034】
第2ダイクロイックミラー21は、第1ダイクロイックミラー15からのG光を反射させ、B光を透過させる。第2ダイクロイックミラー21で反射されたG光は、フィールドレンズ17Gを経て、光変調素子である液晶パネル18Gへ入射する。液晶パネル18Gは、G光を画像信号に応じて変調することにより、G色の画像を形成する。第2ダイクロイックミラー21を透過したB光は、リレーレンズ22、24、反射ミラー23、25、及びフィールドレンズ17Bを経て、光変調素子である液晶パネル18Bへ入射する。液晶パネル18Bは、B光を画像信号に応じて変調することにより、B色の画像を形成する。
【0035】
クロスダイクロイックプリズム19は、光合成用のプリズムであり、各液晶パネル18R、18G、18Bで変調された光を合成して画像光とし、投写光学系20へ進行させる。
【0036】
投写光学系20は、各液晶パネル18G,18R,18Bによって変調されクロスダイクロイックプリズム19で合成された画像光PLを図1のスクリーンSC上に拡大投写する。この際、投写光学系20は、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比AR2を、液晶パネル18G,18R,18Bの画像の横縦比AR0と等しいものとしたり、この横縦比AR0と異なるものとすることができる。
【0037】
回路装置80は、ビデオ信号等の外部画像信号が入力される画像処理部81と、画像処理部81の出力に基づいて光学系部分50に設けた液晶パネル18G,18R,18Bを駆動する表示駆動部82と、投写光学系20に設けた駆動機構(不図示)を動作させて投写光学系20の状態を調整するレンズ駆動部83と、これらの回路部分81,82,83等の動作を統括的に制御する主制御部88とを備える。
【0038】
画像処理部81は、入力された外部画像信号を各色の諧調等を含む画像信号に変換する。画像処理部81は、投写光学系20が画像の横縦比又はアスペクト比を変換して投写する第1動作状態である場合、投写光学系20による横縦比の変換を逆にした画像のアスペクト比変換を予め行ってスクリーンSC上に表示される画像が縦横に伸縮しないようにする。具体的には、投写光学系20によって例えば1.78:1から例えば2.4:1となるように横方向に画像の伸張が行われる場合、予め、横方向に0.742=1.78/2.4倍の画像の圧縮が行われ、或いは、縦方向に1.35=2.4/1.78倍の画像の伸張が行われる。一方、投写光学系20が画像の横縦比又はアスペクト比を変換しないで投写する第2動作状態である場合、画像処理部81は、上記のような画像のアスペクト比変換を行わない。なお、画像処理部81は、外部画像信号に対して歪補正や色補正等の各種画像処理を行うこともできる。
【0039】
表示駆動部82は、画像処理部81から出力された画像信号に基づいて液晶パネル18G,18R,18Bを動作させることができ、当該画像信号に対応した画像又はこれに画像処理を施したものに対応する画像を液晶パネル18G,18R,18Bに形成させることができる。
【0040】
レンズ駆動部83は、主制御部88の制御下で動作し、例えば投写光学系20を構成する一部の光学要素を光軸OAに沿って適宜移動させることにより、投写光学系20による図1のスクリーンSC上への画像の投写倍率を変化させることができる。また、レンズ駆動部83は、投写光学系20を構成する別の一部の光学要素を光軸OA上すなわち光路上に進退させることにより、図1のスクリーンSC上に投写される画像の横縦比AR2を変化させることができる。レンズ駆動部83は、投写光学系20全体を光軸OAに垂直な上下方向に移動させるシフトの調整により、図1のスクリーンSC上に投写される画像の縦位置を変化させることができる。
【0041】
以下、図3を参照して、実施形態の投写光学系20について説明する。投写光学系20は、レンズ等の複数の光学要素を組み合わせてなる本体部分20aと、本体部分20aの一部又は全体を移動させることでその結像状態を調整する駆動機構61,62,63,64とを備える。
【0042】
本体部分20aは、スクリーンSC側から順に、第1群30と、第2群40とからなる。
【0043】
第1群30は、一般的な投写光学系と同様の機能を有し、単独でも液晶パネル18G(18R,18B)の拡大像をスクリーンSC上に投写することができる。第1群30は、第1レンズ部31と、第2レンズ部32とを有する。たとえば、第1レンズ部31を構成する少なくとも1枚のレンズを光軸OAに沿って手動等により微動させることにより、本体部分20aのフォーカス状態を調整することができる。また、第2レンズ部32を構成する少なくとも1枚のレンズをズーム駆動機構61により光軸OAに沿って移動させることにより、本体部分20aによる投写倍率を変更することができる。
【0044】
第2群40は、横方向(X方向)と縦方向(Y方向)で異なる焦点距離を持っており、結果的に第1群30も含めた投写光学系20の全系としても、縦方向と横方向とで異なる焦点距離を持つことになる。すなわち、本体部分20aによる縦方向と横方向の拡大倍率も異なるものとなり、液晶パネル18G(18R,18B)に表示された画像の横縦比AR0とは異なる横縦比AR2の画像をスクリーンSC上に投写することができる。第2群40は、光軸OAに対して回転非対称な面を持つ1つ以上の調整光学要素を含み、具体的には、図4(B)に示す縦方向(Y方向)の断面に関して、スクリーンSC側から順に、正のパワーを持つ第1の光学要素群41と、負のパワーを持つ第2の光学要素群42とで構成されている。なお、第1の光学要素群41と第2の光学要素群42とは、図4(A)に示す横方向(X方向)の断面に関して、パワーを有していない。第2群40を図5にも示す第1アナモフィック駆動機構62により一体として光路上に進退させることにより、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比(アスペクト比)を所望のタイミングで切り替えることができる。具体的には、図6(B)に示すように、第2群40を光路上から退避させて、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像のままの横縦比(例えば1.78:1)でスクリーンSC上に画像を投写することができる。あるいは、図6(A)に示すように、第2群40を光路上に配置して、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像を縦方向に圧縮(縮小)した横縦比(例えば2.4:1)でスクリーンSC上に画像を投写することができる。さらに、第2群40を構成する第1の光学要素群41と第2の光学要素群42とを調整光学要素として第2アナモフィック駆動機構63により光軸OA方向に移動させて、これらの間隔を調整することにより、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比(アスペクト比)を連続的に増減させることもできる。なお、第2群40によってスクリーンSC上に投写される画像を縦方向に圧縮(縮小)する構成は、横寸法が固定されたスクリーンSCを使用する際に有効である。つまり、このようなスクリーンSCに対して投写光学系20による投写距離等を変えずに横縦比だけの変更が可能になる。
【0045】
さらに、図3に示すように、全系駆動機構64により本体部分20a全体を光軸OAに垂直な方向に移動させてシフト量を調整することにより、スクリーンSC上に投写される画像の光軸OAからのズレ量を増減させることができる。つまり、本体部分20aの光軸OAを液晶パネル18Gの中心軸AXに平行な状態を保ちつつ、本体部分20aの光軸OAを液晶パネル18Gの中心軸AXに対して適当なシフト量SFだけ移動させることで、光軸OAから例えば上方向(+Y方向)に外れた位置に画像を投写することができ、シフト量SFの調整によって画像の投写位置を縦方向に上下移動させることができる。なお、本体部分20aの光軸OAの液晶パネル18Gの中心軸AXを基準するズレ量であるシフト量SFは、必ずしも可変とする必要はなく、例えばゼロでない値で固定することもできる。また、全系駆動機構64により本体部分20a全体を光軸OAに沿った方向に適宜移動させることもできる。
【0046】
以上のズーム駆動機構61、第1アナモフィック駆動機構62、第2アナモフィック駆動機構63、及び全系駆動機構64は、モーター、機械的な伝達機構、センサー等を有しており、図2のレンズ駆動部83からの駆動信号に応じて動作する。これらの駆動機構61,62,63,64は、レンズ駆動部83からの駆動信号によって単独で動作するだけでなく、複合的に動作する。例えば、ズーム駆動機構61の動作に合わせて全系駆動機構64を動作させることで、ズーミング時に画像がシフトする現象等を抑制することができる。
【0047】
ここで、図3等に示す投写光学系20の機能についてより詳細に説明する。この投写光学系20の場合、液晶パネル18G(18R,18B)に最も近い第2群40を利用して縦横の焦点距離を変化させており、各像高の光線がある程度像高に沿って通過するようにできるので、液晶パネル18G(18R,18B)に近い部分で光線のコントロールがしやすくなり、性能向上が可能である。一般的に回転非対称な光学要素の製造は難しく、精度を出すためには第2群40の小型化が必須条件である。その点で、第2群40が液晶パネル18G(18R,18B)に最も近いほど光線の広がりが少なく第2群40を構成する調整光学要素である第1の光学要素群41と第2の光学要素群42とを小型にできるので、これらの光学要素群41,42に対して高精度なレンズ加工が期待でき、投写光学系20の性能向上につながるとともに、コストダウンも可能である。
【0048】
投写光学系20の第2群40を光路外に退避させて第2動作状態とした場合、投写光学系20内の第2群40の位置には、何も配置されない。すなわち、第2群40を退避させているとき、投写光学系20は回転対称な光学要素のみで構成されることになるので、液晶パネル18G(18R,18B)の表示領域A0の横縦比(アスペクト比)とスクリーンSCの表示領域A2の横縦比(アスペクト比)とは一致することになる。ここで、第1群30は、一般的な投写光学系と同じ拡大光学系及び変倍光学系の機能を受け持ち、第1群30のみで液晶パネル18Gの像をスクリーンSC上で結像させることができる。さらに、第2群40を退避させた際には透過率が向上し、画像を明るくできる。ただし、第1群30は、第2群40を配置可能にするため長いバックフォーカスを持つように設計される。この点が従来型のアナモフィックコンバーター(特開2005−300928号公報参照)を投写系に流用する場合と大きく異なる。すなわち、従来型のアナモフィックコンバーターでは、アナモフィックコンバーターを取り外した場合は、おおよそアナモフィックコンバーター分だけ、投写光学系が撮像素子に近づくことになる。一方、本実施形態の投写光学系20の場合は、第2群40を取り外して光路外に退避させても、第1群30の位置をほとんど変化させる必要がない。つまり、第2群40を光路上に進退させる縦横の倍率切換時に第1群30を大きく動かす必要がなく、メカ機構の負担を小さくすることができる。なお、従来型のアナモフィックコンバーターを投写系に流用する場合、アナモフィックコンバーター部の一部である2群を光路上に進退させることで縦横の倍率変換を行なえるが、縦横の倍率変換用の2群を光路上に進退させても本体光学系の大きな移動がないようにしている。そして、従来型のアナモフィックコンバーターは、単独で使用可能な本体光学系に代えて本体光学系のマウントに固定され、リレーレンズのように機能させることになる。このため、従来型のアナモフィクコンバーターの場合、その光学的な負担が大きくなり、光軸方向に長くなって構成レンズ数が増加するという問題があるが、本実施形態の投写光学系20によれば、第2群40をリレーレンズのように機能させる必要がなく、全長を短くし構成レンズ数を少なくすることが可能になる。また、本実施形態の投写光学系20の場合、従来型のアナモフィックコンバーターとは異なり、第1群30から独立して第2群40の一部ではなく全体を進退させるので、第2群40の進退又は着脱の際、第1群30への偏芯等の影響が少なく、さらに機構的にも独立した配置が可能になり、投写光学系20の組立の際に、第2群40をユニットとして第1群30のみとの組立精度を考慮すればよく、組立性向上が望める。
【0049】
投写光学系20において、本体部分20aの光軸OAを液晶パネル18Gの中心軸AXに平行な状態を保ちつつ適当なシフト量SFだけ移動させた状態とできるので、シフトを利用した投写が可能になり、視聴者と画像光PLとが干渉するのを防ぐのが容易になり、設置性が向上する。投写光学系20の本体部分20aが液晶パネル18Gに対して上記のようにシフトした状態の場合、ズーム駆動機構61により第2レンズ部32を動作させて投写倍率を変更するズーミングを行うと、画像光PLのシフト量の絶対量が増加する。よって、ズーミングによるシフト量が増加を全系駆動機構64の動作によって補正することで、プロジェクター2の操作性・設置性を向上させことができる。この際、主制御部88の制御下で、ズーム駆動機構61と全系駆動機構64とを連動させて動作を自動化することにより、より操作性が向上する。
【0050】
上記実施形態の投写光学系20の場合、第2群40を構成する調整光学要素である光学要素群41,42の片面又は両面がシリンドリカルレンズ面である。シリンドリカルレンズは、加工が容易で高精度が期待でき、コストダウンが可能である。また、平面断面側の偏芯感度が低く、組立性が向上し、結果的に、高性能化が期待できる。つまり、第2群40をシリンドリカルレンズで構成することで、投写光学系20の精度を確保しつつコストダウンが可能になる。
【0051】
第2群40を構成する光学要素群41,42の片面又は両面は、シリンドリカルレンズ面に限らず、アナモフィックレンズ(例えばトーリック又はトロイダルレンズ)とすることができる。また、第2群40を構成する光学要素群41,42の片面又は両面は、横のX断面又は縦のY断面に関して非球面式、具体的には、以下の多項式hで表される形状を持つものとできる。

ここで、yは光軸OAからの像の高さ(像高)、cは基準とする球面の曲率、kは円錐定数、A2、A4、A6、A8、A10、・・・のそれぞれは所定の補正項とする。さらに、第2群40を構成する光学要素群41,42の片面又は両面は、自由曲面とすることができる。アナモフィックレンズを用いることにより、X方向及びY方向の両断面で曲率をコントロールできるので、非点収差の低減が可能で、高性能化が可能になる。また、非球面とすることにより、各種収差の低減が可能で、高性能化が可能になる。さらに、自由曲面とすることにより、スクリーンSC上又は液晶パネル18G(18R,18B)上のイメージサークル面において、液晶パネル18G(18R,18B)の縦横方向以外の中間の斜め方向の結像状態の最適化も容易になり、高性能化が可能になる。
【0052】
第2群40については、2枚の光学要素群41,42に限らず3枚以上の光学要素群で構成することができる。この際、第2群40によって色収差が発生しないことが望ましい。このため、以下の関係
Σ(φi×νi)≒0
ここで、
φi:第2群40を構成する各レンズの屈折率
νi:第2群40を構成する各レンズのアッベ数
が成り立つことが望ましい。
【0053】
上記実施形態の投写光学系20の場合、物体側で略テレセントリックになっている。すなわち、液晶パネル18G(18R,18B)からの光線が光軸OAに平行に近い状態にされており、液晶パネル18G(18R,18B)と投写光学系20とを比較的簡易に高精度で組み合わせることができ、組立性が良好なものとなる。第2群40を光路上に進退させて縦横の倍率切換を行う場合、投写光学系20の焦点距離が変わり、バックフォーカスを調整する必要が生じる。その際、投写光学系20が物体側で略テレセントリックでなく主光線に角度がある場合、光合成用のプリズムであるクロスダイクロイックプリズム19が存在すると、液晶パネル18G(18R,18B)からの画像光がバックフォーカスの調整に伴って上下に移動する。さらに、バックフォーカスの調整により倍率が変化する。これを防止するためには、機構上又は光学設計上の工夫が必要となるが、投写光学系20が物体側で略テレセントリックであれば、縦横の倍率切換に際して投写光学系20を光軸OA方向に移動させるだけで足り、上記のような問題は生じないので、投写光学系20を機構的又は光学設計的に簡単にできる。また、バックフォーカスの調整に伴った倍率変化もない。さらに、投写光学系20を光軸OAに垂直な方向に移動させてアオリを利用した投写を行う場合、液晶パネル18G(18R,18B)からの出射光が略テレセントリックな状態で投写光学系20に取り込まれるならば、周辺光量の確保が容易になり、画質の向上に寄与する。
【0054】
図7(A)及び7(B)は、図4(A)及び4(B)に示す投写光学系20の変形例を説明する図である。第2群140は、縦方向(Y方向)と横方向(X方向)で異なる焦点距離を持っており、結果的に第1群30も含めた投写光学系20の全系としても、縦方向と横方向とで異なる焦点距離を持つことになる。この場合、第2群140は、横方向(X方向)の断面に関して、スクリーンSC側から順に、負のパワーを持つ第1の光学要素群141と、正のパワーを持つ第2の光学要素群142とで構成されている。なお、第1の光学要素群141と22の光学要素群142とは、図7(B)に示す縦方向(Y方向)の断面に関して、パワーを有していない。図7(A)及び7(B)に示すように、第2群40を光路上に配置して、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像を横方向向に伸張した横縦比(例えば2.4:1)でスクリーンSC上に画像を投写することができる。図示を省略するが、この第2群140を光路上から退避させた場合、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像のままの横縦比(例えば1.78:1)でスクリーンSC上に画像を投写することができる。さらに、第2群140を構成する第1の光学要素群141と第2の光学要素群142とを図3の第2アナモフィック駆動機構63により光軸OA方向に移動させてこれらの間隔を調整することにより、スクリーンSC上に投写される画像の縦横比又は横縦比(アスペクト比)を連続的に増減させることもできる。なお、第2群40によってスクリーンSC上に投写される画像を横方向に伸張する構成は、縦横寸法が固定されたスクリーンSCを使用する際に有効である。つまり、このようなスクリーンSCに対して投写光学系20による投写距離等を変えずに横縦比だけの変更が可能になる。
【0055】
以上のように本実施形態の投写光学系20によれば、第2群40が液晶パネル18G(18R,18B)の縦横方向に関して異なるパワーを持つので、第1群30も含めた投写光学系20の全系としても、縦横方向に異なる焦点距離を持つことになり、液晶パネル18G(18R,18B)の画像の横縦比とスクリーンSC上に投写される画像の横縦比とを異なるものにできる。また、液晶パネル18G(18R,18B)に近い第2群40に設けた第1の光学要素群41,42,141,142によって縦横方向に関するパワーに差を設けて横縦比を変化させているので、液晶パネル18G(18R,18B)に近い位置で各像高の光線を比較的像高に近い経路に沿って通過させやすくなり、光線のコントロールがしやすくなり、性能向上が可能である。また、上記投写光学系20の場合、液晶パネル18G(18R,18B)に近い位置では、光線の広がりが少なくレンズが小型になるので、高精度なレンズ加工が期待でき、性能向上につながるとともに、コストダウンも可能になる。
【実施例1】
【0056】
図8は、第1実施形態の投写光学系20の具体的な実施例1を説明する図である。この場合、投写光学系20は、第2群40を光路上に配置して横縦比を縦のY方向に関して圧縮する第1動作状態となっている。この場合、投写光学系20は、レンズL1〜L23からなり、このうちレンズL1〜L18によって第1群30が構成され、レンズL19〜L23によって第2群40が構成されている。第1群30に含まれるレンズL1〜L18は、光軸OAのまわりに回転対称な球面のレンズである。第2群40のうち、接合レンズL19,L20とレンズL21とを組み合わせたものは、縦のY方向に関して正のパワーを有するレンズとなっており、横のX方向に関してパワーを有しないシリンドリカルレンズとなっている。また、接合レンズL22,L23は、縦のY方向に関して負のパワーを有するレンズとなっており、横のX方向に関してパワーを有しないシリンドリカルレンズとなっている。なお、第1群30のレンズL1〜L7、L8〜L9、L10〜L11、L12、L13〜L16は、投写倍率の変更時すなわちズーミング時に光軸OAに沿って変位する。ここで、レンズL8〜L9と、レンズL10〜L11と、レンズL12とは、第1群30の第2レンズ部32を構成する第1レンズ群32aと第2レンズ群32bと第3レンズ群32cとにそれぞれ対応する。また、レンズL13〜L16は、第1群30の第2レンズ部32を構成する第4レンズ群32dに対応する。
【0057】
図9(A)〜9(C)は、ズーミングの動作を説明するものであり、図9(A)は、図8の状態を示し、拡大率の大きな「ワイド端」の場合を示している。また、図9(B)は、「中間」の状態の場合を示し、図9(C)は、拡大率の小さな「テレ端」の場合を示している。図示のように、第2レンズ部32に含まれる各レンズ群32a,32b,32c等の構成要素が光軸OAの方向に沿って個別に動くことによって、ズーミングの動作がなされる。
【0058】
以下の表1に、実施例1のレンズデータ等を示す。この表1の上欄において、「面番号」は、物面OS側から順に各レンズの面に付した番号である。「面タイプ」は、球面、非球面、シリンドリカル面等の別を示し、また、「R1」、「R2」は、Y及びX曲率半径を示し、「D」は、次の面との間のレンズ厚み或いは空気空間を表している。さらに、「Nd」は、レンズ材料のd線における屈折率を示し、「νd」はレンズ材料のd線におけるアッベ数を示す。表1の下欄には、「ワイド端」、「中間」、及び「テレ端」における各面番号について距離又は空気間隔の値が示されている。
【表1】

【0059】
図10は、投写光学系20の本体部分20aから第2群40を光路外に退避させたものであり、横縦比を変換しない第2動作状態となっている。また、図11(A)〜11(C)は、第2群40を光路外に退避させた場合におけるズーミング動作、すなわち「ワイド端」、「中間」、及び「テレ端」の様子を示す図である。
【0060】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る投写光学系等について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態の投写光学系等の変形例であり、特に説明しない部分又は事項は、第1実施形態の場合と同様である。
【0061】
図12(A)及び12(B)は、第2実施形態に係る投写光学系20の縦断面を説明する図である。本実施形態の場合、投写光学系20の第2群40が光路上に進退するだけでなく、アスペクト比変換用の第2群40が光路上から退避した場合、代替光学素子240が光路上に挿入される。この代替光学素子240は、例えば1枚の板状部材241で構成されるが、2枚以上の板状部材で構成されてもよい。板状部材241は、屈折力を持たないが高い透過性を有し、その屈折率により、光路長を調整する役割を有する。代替光学素子240は、第2群40と同様に第1アナモフィック駆動機構62に駆動されて光路上に進退する。つまり、第1アナモフィック駆動機構62により、第2群40と代替光学素子240とが光路上に選択的に配置される。
【0062】
第2群40を光路上から退避させると、光路長が変化するため、投写光学系20の物体面とその像面との結像関係が崩れ、例えばスクリーンSCの手前に結像してしまう。このため、本実施形態では、第2群40を光路上から退避させた際に、そのスペースに屈折力を持たない代替光学素子240を挿入することで、光路長の調整を行い、スクリーンSCと液晶パネル18G(18R,18B)との結像関係のズレを解消する。屈折力を持たない板状部材241は、光路長に関して第2群40と略等価にする必要があり、板状部材241の屈折率をnpとし、板状部材241の光軸OA方向の厚みをdpとした場合、以下の関係
np×dp=Σ(ni×di)
ここで、
ni:第2群40を構成する各レンズの屈折率
di:第2群40を構成する各レンズの光軸OA上の厚み
i:第2群40中のレンズの番号
が成り立つことが望ましい。
【0063】
以上では、光路上に進退する第2群40が図4(B)と同様のものであるとしたが、第2群40は、図7(A)の第2群140と同様のものであってもよい。
【0064】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る投写光学系等について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態の投写光学系等の変形例であり、特に説明しない部分又は事項は、第1実施形態の場合と同様である。
【0065】
図13(A)及び13(B)は、第3実施形態に係る投写光学系20の横断面を説明する図である。本実施形態の場合、2種類の第2群40,340を光路上に選択的に進退させることができる。つまり、第1種類目の第2群(第2群ユニット)40を構成する光学要素群41,42のパワーと、第2種類目の第2群(第2群ユニット)340を構成する光学要素群341,342のパワーとは異なっており、第2群40,340を入れ替えることにより、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比(アスペクト比)を、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像を基準として2段階で変化させることができる。具体的には、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像の横縦比が例えば1.78:1である場合、第1種類目の第2群40を光路上に挿入することで、スクリーンSC上に形成される画像の横縦比を例えば2.4:1に変換することができ、第2種類目の第2群340を光路上に挿入することで、スクリーンSC上に形成される画像の横縦比を例えば1.85:1に変換することができる。
【0066】
なお、以上の第3実施形態では、第2群40,340が図4(B)に示す構成となっているが、第2群40,340のいずれか又は双方を図7(A)に示す第2群40と同様に横に伸張するタイプのレンズ群に置き換えることができる。また、以上の第3実施形態では、2種の第2群40,340を光路上に切り替えて配置しているが、3種以上の第2群を光路上に切り替えて配置することもできる。
【0067】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る投写光学系等について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態の投写光学系等の変形例であり、特に説明しない部分又は事項は、第1実施形態の場合と同様である。
【0068】
図14に示すように、プロジェクター2の光学系部分50は、照明用の光源410と、光束調整用のレンズ417と、光変調素子である液晶パネル418と、拡大投写用の投写光学系420とを備える。光源410は、超高圧水銀ランプ等で形成され、R光、G光、B光を含む光を射出する。レンズ417は、光源410から液晶パネル418への照明光ILの入射角度を調整する。液晶パネル418は、光源410からの照明光ILを空間的に変調するためのものであり、各画素にカラーフィルターを配置しており、単独でカラー表示を行う。
【0069】
図15(A)及び15(B)に示すように、投写光学系420は、第1実施形態の場合と同様に、本体部分20aとして第1群30と第2群40を備える。第1群30は、第1レンズ部31と、第2レンズ部32とを有する。第2群40は、縦のY方向にのみ正のパワーを持つ第1の光学要素群41と、縦のY方向にのみ負のパワーを持つ第2の光学要素群42とを備える。第2群40は、縦方向と横方向とで異なる焦点距離を持っており、結果的に第1群30も含めた投写光学系420の全系としても、縦方向と横方向とで異なる焦点距離を持つ。
【0070】
本実施形態の投写光学系420の場合、図2に示す光合成用のクロスダイクロイックプリズム19が不要となるので、投写光学系420のバックフォーカスを比較的短くすることができる。また、光合成用のクロスダイクロイックプリズム19が存在しないことから、投写光学系420が物体側すなわち液晶パネル418側でテレセントリックでなくても、投写される画像の劣化を比較的少なく抑えることができる。
【実施例2】
【0071】
図16は、第4実施形態の投写光学系420の具体的な実施例2を説明する図である。この場合、投写光学系420は、第2群40を光路上に配置して横縦比を縦のY方向に関して圧縮する第1動作状態となっている。この場合、投写光学系420は、レンズL1〜L23からなり、このうちレンズL1〜L18によって第1群30が構成され、レンズL19〜L23によって第2群40が構成されている。第1群30に含まれるレンズL1〜L18は、光軸OAのまわりに回転対称な球面のレンズである。第2群40のうち、接合レンズL19,L20とレンズL21とを組み合わせたものは、縦のY方向に関して正のパワーを有するレンズとなっており、横のX方向に関してパワーを有しないシリンドリカルレンズとなっている。また、接合レンズL22,L23は、縦のY方向に関して負のパワーを有するレンズとなっており、横のX方向に関してパワーを有しないシリンドリカルレンズとなっている。なお、第1群30のレンズL1〜L7、L8〜L9、L10〜L11、L12、L13〜L16、は、投写倍率の変更時すなわちズーミング時に光軸OAに沿って変位する。ここで、レンズL8〜L9と、レンズL10〜L11と、レンズL12とは、第1群30の第2レンズ部32を構成する第1レンズ群32aと第2レンズ群32bと第3レンズ群32cとにそれぞれ対応する。また、レンズL13〜L16は、第1群30の第2レンズ部32を構成する第4レンズ群32dに対応する。
図17(A)〜17(C)は、ズーミングの動作を説明するものであり、図17(A)は、図16の状態を示し、拡大率の大きな「ワイド端」の場合を示している。また、図17(B)は、「中間」の状態の場合を示し、図17(C)は、拡大率の小さな「テレ端」の場合を示している。図示のように、第2レンズ部32に含まれる各レンズ群32a,32b,32c等の構成要素が光軸OAの方向に沿って個別に動くことによって、ズーミングの動作がなされる。
【0072】
以下の表2に、実施例2のレンズデータ等を示す。この表2において、「面番号」、「面タイプ」、「R1」、「R2」、「D」、「Nd」、「νd」は、実施例1と同様のものを意味する。
【表2】

【0073】
図18は、投写光学系420の本体部分20aから第2群40を光路外に退避させものであり、横縦比を変換しない第2動作状態となっている。また、図19(A)〜19(C)は、第2群40を光路外に退避させた場合におけるズーミング動作、すなわち「ワイド端」、「中間」、及び「テレ端」の様子を示す図である。
【0074】
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0075】
例えば、上記実施形態では、投写光学系420の第2群40,140,340により、液晶パネル18G等に表示された画像を縦方向に圧縮(縮小)又は横方向に伸張してスクリーンSC上に相対的に横長のアスペクト比となるように変換した画像を投写したが、第2群40,140,340のレンズ構成を変更することで、相対的に縦長のアスペクト比となるように変換した画像を投写することもできる。
【0076】
また、図20(A)及び20(B)に示すように、第2群40を、第1の光学要素群41と第2の光学要素群42と第3の光学要素群543とで構成することもできる。この場合、第1及び第2の光学要素群41,42は、光軸OAのまわりに回転非対称で縦方向(Y方向)の断面に関してのみパワーを有するが、第3の光学要素群543は、光軸OAのまわりに回転対称で横方向(X方向)の断面と縦方向(Y方向)の断面とにおいて同様のパワーを有する。この場合、第1群30の拡大光学系である第2レンズ部32で抑え切れなかった非点収差等を液晶パネル18G,18R,18Bに近い第2群543側で簡易に抑えこむことができる。なお、図7(A)の第2群140、図13(A)及び13(B)の第2群40,340等にも、回転対称で縦横の断面において同様のパワーを有するレンズ又は光学要素群を組み込むことができる。
【0077】
液晶パネル18G,18R,18B,418は、透過型に限らず、反射型とすることができる。ここで、「透過型」とは、液晶パネルが変調光を透過させるタイプであることを意味しており、「反射型」とは、液晶パネルが変調光を反射するタイプであることを意味している。
【0078】
プロジェクターとしては、投写面を観察する方向から画像投写を行う前面投写型のプロジェクターと、投写面を観察する方向とは反対側から画像投写を行う背面投写型のプロジェクターとがあるが、図2等に示すプロジェクターの構成は、いずれにも適用可能である。
【0079】
液晶パネル18G,18R,18B,418に代えて、マイクロミラーを画素とするデジタル・マイクロミラー・デバイス等を、光変調素子として用いることもできる。
【符号の説明】
【0080】
2…プロジェクター、 10…光源、 15,21…ダイクロイックミラー、 17B,17G,17R…フィールドレンズ、 18B,18G,18G,418…液晶パネル、 19…クロスダイクロイックプリズム、 20…投写光学系、 20a…本体部分、 30…第1群、 31…第1レンズ部、 32…第2レンズ部、 40,140,340…第2群、 41,42,141,142…光学要素群、 50…光学系部分、 61…ズーム駆動機構、 62…第1アナモフィック駆動機構、 63…第2アナモフィック駆動機構、 64…全系駆動機構、 80…回路装置、 81…画像処理部、 83…レンズ駆動部、 88…主制御部、 A0…表示領域、 A2…表示領域、 AR0…横縦比、 AR2…横縦比、 OA…中心軸、 L01-L23…レンズ、 OA…光軸、 PL…画像光、 SC…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調素子の画像を被投写面上に拡大投写する際に、前記光変調素子の画像の横縦比と、前記被投写面に投写される画像の横縦比とを異なるものとする投写光学系であって、
前記被投写面側から順に、拡大光学系である第1群と、光軸に対して回転非対称な面を持つとともに、前記光変調素子の縦方向と横方向とで異なるパワーを持った調整光学要素を含む第2群とを備えてなる、
投写光学系。
【請求項2】
前記第2群は、光路上に進退可能であり、
前記第2群が光路上から退避したときに、前記光変調素子の画像と前記被投写面に投写される画像との横縦比が一致している、請求項1に記載の投写光学系。
【請求項3】
前記第2群は、パワーを持たない平板と入れ替え可能であり、
前記第2群に代えて平板が光路上に配置されたときに、前記光変調素子の画像と前記スクリーン上の画像との横縦比が一致している、請求項1に記載の投写光学系。
【請求項4】
前記第2群は、異なる調整光学要素を有する複数の第2群ユニットのうちのいずれか1つの第2群ユニットを選択して光路上に配置したものである、請求項1に記載の投写光学系。
【請求項5】
前記光変調素子の中心を通る法線と、前記投写光学系の光軸とが、平行に配置されるように構成されている、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項6】
前記投写光学系は、前記光変調素子の中心を通る法線に対し、前記投写光学系の光軸を平行に保ったまま移動させるシフト機構を備えている、請求項5に記載の投写光学系。
【請求項7】
前記調整光学要素の一部又は全部が、シリンドリカルレンズである、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項8】
前記調整光学要素の一部又は全部が、アナモフィックレンズである、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項9】
前記調整光学要素の一部又は全部が、前記投写光学系の光軸を含む断面が非球面式で表される形状を有する、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項10】
前記調整光学要素の一部又は全部が、自由曲面レンズである、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項11】
前記第2群は、1枚以上の回転対称レンズと1枚以上の回転非対称レンズとを含む、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項12】
前記第2群は、前記光変調素子の横方向の断面において、前記被投写面側から順に、負のパワーをもつ第1の光学要素群と、正のパワーをもつ第2の光学要素群とで構成されている、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項13】
前記第2群は、前記光変調素子の縦方向の断面において、前記被投写面側から順に、正のパワーをもつ第1の光学要素群と、負のパワーをもつ第2の光学要素群とで構成されている、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項14】
前記第1の光学要素群と前記第2の光学要素群の間隔が可変であり、当該間隔に応じて被投写面に投写される画像の横縦比が変化する、請求項12及び請求項13のいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項15】
前記光変調素子側で略テレセントリックになっている、請求項1から14までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項16】
前記第2群の前記光変調素子側に、光合成用のプリズムが配置されている、請求項15に記載の投写光学系。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項に記載の投写光学系と、
前記光変調素子とを備える、
プロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−3369(P2013−3369A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134867(P2011−134867)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】