説明

投影光学系、露光装置、及びその組立方法

【課題】全長の長い投影光学系であってもそれを必要な設置場所に容易に設置できるとともに、設置場所における組立調整を短時間に行う。
【解決手段】下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとを有する投影光学系POの組立方法は、投影光学系POの光学特性が調整された状態で、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置関係を記憶し、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとを分解する工程と、次に下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとを互いに固定する際、記憶された相対位置関係に基づいて、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置を調整する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光学素子を有する投影光学系、この投影光学系の組立方法、その投影光学系を備える露光装置、及びこの露光装置を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の各種デバイス(電子デバイス)を製造するためのフォトリソグラフィ工程で使用される露光装置に備えられている投影光学系は、必要な光学特性(結像特性等)を達成するために、複数の光学素子の相対的な位置関係を高精度に所定の状態に調整する必要がある。その位置関係の必要な調整精度は、露光光の波長が遠紫外域から真空紫外域にかかる程度の露光装置ではサブミクロンのオーダーであり、露光光として波長が100nm程度以下の極端紫外光(Extreme Ultraviolet Light:以下、EUV光という)を用いる露光装置(EUV露光装置)ではnmのオーダーである。
【0003】
このように複数の光学素子間の位置関係を高精度に調整する必要がある投影光学系の組立調整を効率的に行うために、従来は一例として、投影光学系の鏡筒を複数の光学素子のうちのいずれかを有する複数の部分鏡筒に分割し、光学系製造工場において、各部分鏡筒毎にそれぞれ内部の光学素子間の位置関係を調整した後、その複数の部分鏡筒を積み重ねて必要な光学特性が得られるまで全体調整を行っていた(例えば、特許文献1参照)。このように組立調整の完了した投影光学系は、その状態で露光装置の設置場所である例えばデバイス製造工場に搬送され、その露光装置の所定のフレームに固定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−128307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近は、より微細なパターンを露光するために、投影光学系の物体面と像面との間隔がさらに長くなる傾向があり、それに伴い、投影光学系の鏡筒の全長もさらに長くなる傾向がある。このように全長の長い投影光学系は、航空機の搭載制限等によりそのままの状態で別の場所に搬送するのが困難である場合がある。
【0006】
さらに、投影光学系を露光装置の所定のフレームに設置する際には、その投影光学系を例えばクレーンで吊り下げる必要があるが、投影光学系の全長が長い場合には、露光装置が設置される例えばデバイス製造工場の天井を高くする必要性が生じるなど、実質的に露光装置の組立が困難になる。
【0007】
一方、一度組み立てた投影光学系を複数の部分鏡筒に分解して設置場所に搬送することが考えられるが、分解した複数の部分鏡筒を再度積み重ねて組み立てるものとすると、必要な光学特性を達成するまで投影光学系の組立調整を繰り返す必要があり、露光装置の稼働開始までの時間が長くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、全長の長い投影光学系であってもそれを必要な設置場所に容易に設置できるとともに、設置場所における組立調整を短時間に行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による投影光学系の組立方法は、複数の光学素子と、その複数の光学素子のうち第1光学素子を保持する第1部分鏡筒と、その複数の光学素子のうち第2光学素子を保持する第2部分鏡筒と有し、第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系を組み立てるための投影光学系の組立方法において、その第1部分鏡筒にその第2部分鏡筒が固定され、かつその投影光学系の光学特性が調整された状態で、その第1部分鏡筒とその第2部分鏡筒との相対位置関係を記憶する工程と、その第1部分鏡筒とその第2部分鏡筒とを分解する工程と、分解されたその第1部分鏡筒とその第2部分鏡筒とを、再度互いに固定するため、記憶されたその相対位置関係を使用して、その第1部分鏡筒とその第2部分鏡筒との相対位置を調整する工程と、その第1部分鏡筒にその第2部分鏡筒を固定する工程と、を含むものである。なお、上記調整する工程は、一例として、記録された相対位置関係に対して、第1部分鏡筒と第2部分鏡筒の相対位置関係が所定の許容範囲に収まるよう、第1部分鏡筒及び第2部分鏡筒の少なくとも一方を移動させることにより、これら第1部分鏡筒と第2部分鏡筒の相対位置関係を調整する。
【0010】
また、本発明による投影光学系は、複数の光学素子と、その複数の光学素子のうち第1光学素子を保持する第1部分鏡筒と、その第1部分鏡筒に固定され、その複数の光学素子のうち第2光学素子を保持する第2部分鏡筒と有し、第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系において、その第1部分鏡筒にその第2部分鏡筒が固定され、かつその投影光学系の光学特性が調整された状態で計測されたその第1部分鏡筒とその第2部分鏡筒との相対位置関係を記憶する記憶装置を備えるものである。
【0011】
また、本発明による第1の露光装置は、投影光学系を介して物体を露光する露光装置において、その投影光学系として本発明の投影光学系を用いるものである。
【0012】
また、本発明による第2の露光装置は、投影光学系を介して物体を露光する露光装置において、その投影光学系は、複数の光学素子と、その複数の光学素子のうち第1光学素子を保持する第1部分鏡筒と、その第1部分鏡筒に固定され、その複数の光学素子のうち第2光学素子を保持する第2部分鏡筒と有し、第1面のパターンの像を第2面に形成し、その第1部分鏡筒にその第2部分鏡筒が固定され、かつその投影光学系の光学特性が調整された状態で計測されたその第1部分鏡筒とその第2部分鏡筒との相対位置関係を記憶する記憶装置と、その記憶装置に記憶されたその相対位置関係を使用して、その第1部分鏡筒とその第2部分鏡筒との相対位置を調整する調整装置と、を備えるものである。
【0013】
また、本発明によるデバイス製造方法は、リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、そのリソグラフィ工程で本発明の露光装置を用いるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1部分鏡筒に第2部分鏡筒が固定され、かつ投影光学系の光学特性が調整された状態で計測されたその2つの部分鏡筒の相対位置関係を記憶しておくことによって、その投影光学系をその2つの部分鏡筒間で分解(分離)して設置場所に搬送し、その相対位置関係をほぼ再現するようにその2つの部分鏡筒を連結することによって、その投影光学系の組立調整を行うことができる。従って、全長の長い投影光学系であってもそれを必要な設置場所に容易に設置できるとともに、設置場所における組立調整を短時間に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態の一例の露光装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】(A)は組立調整が完了した投影光学系を示す断面図、(B)は図2(A)のBB線に沿う断面図である。
【図3】投影光学系を分解(分離)した状態を示す断面図である。
【図4】投影光学系の下部鏡筒を光学フレームに設置した状態を示す断面図である。
【図5】(A)は投影光学系の下部鏡筒上に上部鏡筒を設置した状態を示す断面図、(B)は図5(A)のCC線に沿う断面図である。
【図6】投影光学系の組立調整工程の一例を示すフローチャートである。
【図7】電子デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態の一例につき図1〜図7を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の露光装置100の全体構成を概略的に示す断面図の例である。露光装置100は、露光光(露光用の照明光)ELとして、波長が100nm程度以下でかつ3〜50nm程度の範囲内で例えば11nm又は13nm等のEUV光(Extreme Ultraviolet Light)を用いるEUV露光装置である。露光装置100は、一例として半導体デバイス製造工場のクリーンルーム内の真空チャンバー1内に設置されている。図1において、露光装置100は、露光光ELをパルス発生するレーザプラズマ光源10と、露光光ELでレチクルR(マスク)のパターン面(ここでは下面)上の照明領域27Rを照明する照明光学系ILSと、レチクルRを移動するレチクルステージRSTと、レチクルRの照明領域27R内のパターンの像をレジスト(感光材料)が塗布されたウエハW(感光基板)上に投影する投影光学系POとを備えている。さらに、露光装置100は、ウエハWを移動するウエハステージWSTと、装置全体の動作を統括的に制御するコンピュータを含む主制御系31等とを備えている。
【0018】
本実施形態では、露光光ELとしてEUV光が使用されている。そのため、照明光学系ILS及び投影光学系POは、特定のフィルタ等(不図示)を除いて複数のミラー等の反射光学素子より構成され、レチクルRも反射型である。その反射光学素子は、例えば、石英(又は高耐熱性の金属等)よりなる部材の表面を所定の曲面又は平面に高精度に加工した後、その表面にモリブデン(Mo)とシリコン(Si)との多層膜(EUV光の反射膜)を形成して反射面としたものである。なお、その多層膜は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)等の物質と、Si、ベリリウム(Be)、4ホウ化炭素(B4C)等の物質とを組み合わせた他の多層膜でもよい。また、レチクルRは例えば石英の基板の表面に多層膜を形成して反射面(反射膜)とした後、その反射面に、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、又はクロム(Cr)等のEUV光を吸収する材料よりなる吸収層によって転写用のパターンを形成したものである。
【0019】
また、EUV光の気体による吸収を防止するため、露光装置100はほぼ全体として箱状の真空チャンバー1内に収容されている。真空チャンバー1には、真空チャンバー1内の空間を排気管32Aa,32Ba等を介して真空排気するための大型の真空ポンプ32A,32B等が備えられている。さらに、真空チャンバー1内で露光光ELの光路上の真空度をより高めるために複数のサブチャンバ(不図示)も設けられている。真空チャンバー1は、一例として底部1a上に上部1bを固定したものである。一例として、真空チャンバー1内の気圧は10-5Pa程度、真空チャンバー1内で投影光学系POを収納するサブチャンバ(不図示)内の気圧は10-5〜10-6Pa程度である。
【0020】
以下、図1において、ウエハステージWSTが載置される面(真空チャンバー1の底面)の法線方向にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面(本実施形態ではほぼ水平面に平行な面)内で図1の紙面に垂直にX軸を、図1の紙面に平行にY軸を取って説明する。本実施形態では、レチクルR上での露光光ELの照明領域27Rは、X方向(非走査方向)に細長い円弧状である。通常の露光時には、レチクルR及びウエハWは投影光学系POに対してY方向(走査方向)に同期して走査される。
【0021】
先ず、レーザプラズマ光源10は、高出力のレーザ光源(不図示)と、集光レンズ12と、ノズル14と、集光ミラー13とを有するガスジェットクラスタ方式の光源である。集光レンズ12は、レーザ光源から真空チャンバー1の窓部材15を介して供給されるレーザ光を集光する。ノズル14は、キセノン等のターゲットガスを噴出する。集光ミラー13は、回転楕円面状の反射面を持つ。レーザプラズマ光源10から例えば数kHzの周波数でパルス発光された露光光ELは、集光ミラー13の第2焦点に集光する。レーザプラズマ光源10の出力は主制御系31によって制御される。
【0022】
その第2焦点に集光した露光光ELは、凹面ミラー21を介してほぼ平行光束となり、複数のミラーよりなる第1フライアイ光学系22に入射する。第1フライアイ光学系22で反射された露光光ELは複数のミラーよりなる第2フライアイ光学系23に入射する。この一対のフライアイ光学系22及び23からオプティカルインテグレータが構成されている。フライアイ光学系22,23の各ミラー素子の形状及び配置等については、例えば、米国特許第6,452,661号公報に開示されている。
【0023】
図1において、第2フライアイ光学系23の反射面の近傍(オプティカルインテグレータの射出面の近傍)は、照明光学系ILSの瞳面である。瞳面又はこの近傍の位置に、照明条件を通常照明、輪帯照明、2極照明、又は4極照明等に切り換える開口絞り(不図示)が配置されている。その開口絞りを通過した露光光ELは、曲面ミラー24に入射し、曲面ミラー24で反射された露光光ELは、凹面ミラー25で反射された後、レチクルRのパターン面の照明領域27Rを下方から斜めに均一な照度分布で照明する。また、照明領域27Rの形状を実質的に規定し、走査方向に開閉するための可変のレチクルブラインド(可変視野絞り)(不図示)が設けられている。凹面ミラー21、フライアイ光学系22,23、曲面ミラー24、及び凹面ミラー25等を含んで照明光学系ILSが構成されている。なお、照明光学系ILSは図1の構成には限定されず、他の種々の構成が可能である。
【0024】
次に、レチクルRは、レチクルステージRSTの底面に静電チャックRHを介して吸着保持されている。レチクルステージRSTは、レーザ干渉計(不図示)の計測値及び主制御系31の制御情報に基づいて、駆動される。具体的に制御システム33は、真空チャンバー1の外面のXY平面に平行なガイド面に沿って、例えば磁気浮上型2次元リニアアクチュエータよりなる駆動系(不図示)を介してY方向に所定ストロークで移動するよう、また、X方向及びZ軸回りの回転方向(θz方向)等にも微小量移動するよう、レチキタルステージRSTを駆動する。レチクルRは、真空チャンバー1の上面の開口を通して真空チャンバー1で囲まれた空間内に設置されている。レチクルステージRSTを真空チャンバー1側に覆うようにパーティション8が設けられている。パーティション8内は不図示の真空ポンプによって大気圧と真空チャンバー1内の気圧との間の気圧に維持されている。
【0025】
レチクルRの照明領域27Rで反射された露光光ELが、物体面(第1面)のパターンの縮小像を像面(第2面)に形成する投影光学系POに向かう。投影光学系POは、一例として、6枚のミラーM1〜M6を複数の分割鏡筒4A〜4Dで保持することによって構成されている(詳細後述)。投影光学系POは、物体面側に非テレセントリックで、像面側にほぼテレセントリックの反射光学系であり、投影倍率は1/4倍等の縮小倍率である。レチクルRの照明領域27Rで反射された露光光ELが、投影光学系POを介してウエハW上の露光領域27W(照明領域27Rと共役な領域)に、レチクルRのパターンの一部の縮小像を形成する。
【0026】
投影光学系POにおいて、レチクルRからの露光光ELは、第1のミラーM1で上方(+Z方向)に反射され、続いて第2のミラーM2で下方に反射された後、第3のミラーM3で上方に反射され、第4のミラーM4で下方に反射される。次に第5のミラーM5で上方に反射された露光光ELは、第6のミラーM6で下方に反射されて、ウエハW上にレチクルRのパターンの一部の像を形成する。一例として、投影光学系POは、ミラーM1〜M6の光軸が共通に光軸AXと重ならない非共軸光学系である。ミラーM2の反射面の近傍の瞳面又はこの近傍に開口絞り(不図示)が配置されている。なお、投影光学系POは非共軸光学系でなくともよく、その構成は任意である。
【0027】
また、ウエハWは、静電チャック(不図示)を介してウエハステージWST上に吸着保持されている。ウエハステージWSTは、XY平面に沿って配置されたガイド面上に配置されている。ウエハステージWSTは、レーザ干渉計(不図示)の計測値及び主制御系31の制御情報に基づいて、ステージ制御系33により駆動される。具体的には、制御系33は、磁気浮上型2次元リニアアクチュエータよりなる駆動系(不図示)を介してX方向及びY方向に所定ストロ−クでレチクルステージRSTを駆動し、必要に応じてθz方向等にも駆動する。
【0028】
ウエハステージWST上のウエハWの近傍には、例えば米国特許第6,573,997号公報に開示されているシアリング法又はポイントディフラクション干渉方式(PDI方式)で投影光学系POの波面収差を計測する結像特性計測系29が設置されている。結像特性計測系29の計測結果は、主制御系31に供給されている。その波面収差からディストーション、コマ収差、及び球面収差等を求めることができる。なお、PDI方式で投影光学系POの波面収差を計測する場合には、レチクルRの代わりにピンホール状のパターンが形成されたテストレチクルRTをロードしてもよい。また、PDI方式以外に、例えば投影光学系POの物体面及び像面に対応する回折格子を設置して、シアリング干渉を行わせる二重格子方式等を使用してもよい。
【0029】
露光の際には、ウエハW上のレジストから生じるガスが投影光学系POのミラーM1〜M6に悪影響を与えないように、ウエハWはパーティション7の内部に配置される。パーティション7には露光光ELを通過させる開口が形成され、パーティション7内の空間は、主制御系31の制御のもとで真空ポンプ(不図示)により真空排気されている。
【0030】
ウエハW上の1つのショット領域(ダイ)を露光するときには、露光光ELが照明光学系ILSによりレチクルRの照明領域27Rに照射される。レチクルRとウエハWとは投影光学系POに対して投影光学系POの縮小倍率に従った所定の速度比でY方向に同期して移動する(同期走査される)。このようにして、レチクルパターンはウエハW上の一つのショット領域に露光される。その後、ウエハステージWSTを駆動してウエハWをX方向、Y方向にステップ移動した後、ウエハW上の次のショット領域に対してレチクルRのパターンが走査露光される。このようにステップ・アンド・スキャン方式でウエハW上の複数のショット領域に対して順次レチクルRのパターンの像が露光される。
【0031】
次に、本実施形態の投影光学系POの構成につき詳細に説明する。投影光学系POの鏡筒は、第1の分割鏡筒4A、第2の分割鏡筒4B、第3の分割鏡筒4C、及び第4の分割鏡筒4Dに分割される。分割鏡筒4A及び4Bは、複数箇所でボルト5Bで連結されて下部鏡筒6Aを構成している。また、分割鏡筒4Aの上端部にフランジ部4Afが形成され、フランジ部4Afが真空チャンバー1内の光学系フレーム3に複数箇所でボルト5Aによって固定されている。また、分割鏡筒4Cと分割鏡筒4Dとは、複数箇所でボルト5D及びナット5Eによって連結されて、上部鏡筒6Bを構成している。上部鏡筒6Bの分割鏡筒4Cの底面が、下部鏡筒6Aの分割鏡筒4Aの上面に複数箇所でボルト5Cによって固定されている。なお、投影光学系POのZ方向の高さ(全長)は、一例として1m〜数m程度である。
【0032】
また、ミラーM1及びM3は、分割鏡筒4C内の支持板39A上に保持調整機構35A及び35Cを介して支持されている。保持調整機構35A(35Cも同様)は、ミラーM1(M3)を保持するミラーホルダと、これを支持する3箇所のヒンジ機構を含む粗調機構38を含んで構成されている。粗調機構38は、例えば分割鏡筒4Cに設けられた開口(不図示)を介してオペレータがその高さを例えば数10μm〜100μmのストローク範囲で、1μm程度の分解能で調整可能である。3箇所の粗調機構38を調整することで、ミラーM1(M3)の光軸AX方向の位置、及び光軸AXに垂直な面内でX軸、Y軸に平行な軸の回り(θx方向、θy方向)の角度を調整可能である。
【0033】
また、ミラーM2及びM4は、分割鏡筒4Dの上部に保持調整機構35B及び35Dを介して支持されている。保持調整機構35B(35Dも同様)は、ミラーM2(M4)を保持するミラーホルダ36と、これを支持する3箇所のパラレルリンク機構よりなる微調機構37と、これらの微調機構37を支持する3箇所の粗調機構38とを含んでいる。微調機構37は、例えばピエゾ素子等の駆動素子によって数〜10μm程度のストローク範囲を、1nm程度の分解能で調整可能である。微調機構37の伸縮量は、主制御系31の制御のもとにある結像特性制御系34によって制御される。3箇所の微調機構37を調整することで、ミラーM2(M4)の光軸AX方向の位置、及びθx方向、θy方向の角度を調整可能である。
【0034】
微調機構37及び粗調機構38の構成は、例えば米国特許第7,154,684号公報に記載されている。
【0035】
また、ミラーM6は、分割鏡筒4A内の支持板39Cに保持調整機構35F(保持調整機構35Aと同様の構成)を介して支持されている。ミラーM5は、分割鏡筒4B内の支持板39B上に保持調整機構35E(保持調整機構35Bと同様の構成)を介して支持されている。従って、投影光学系POを構成するミラーM1〜M6は、それぞれ保持調整機構35A〜35Fを介して光軸AX方向の位置、及びθx方向、θy方向の角度を調整可能である。また、結像特性制御系34が保持調整機構35B,35D,35E内の3箇所の微調機構37の伸縮量を調整する。これにより、露光装置100による露光動作中に、投影光学系POのディストーション、コマ収差、及び球面収差等の所定の収差を所定範囲(例えば露光光ELの照射によって結像特性が変動する範囲を含む範囲)内で調整可能である。なお、保持調整機構35A〜35Eの構成は任意であり、各保持調整機構35A〜35Eにおける微調機構37と粗調機構38との組合せも任意である。
【0036】
さらに、投影光学系POの分割鏡筒4A,4Cには、図2(B)に示すように、これらの間の相対的な位置関係を計測するためのセンサが備えられている。
【0037】
センサは、例えば静電容量式センサであり、検出位置の電気的な変化を検知する検出器41A,41B,41Cと、検出器41A,41B,41Cに対向して配置された平板状の電極よりなる被計測部材42A,42B,42Cと、によって構成される。
【0038】
図2(B)において、分割鏡筒4Aのフランジ部4Af上の−Y方向の端部、及びX方向の両端部には、それぞれ検出器41A,41B,41Cが固定されている。検出器41A,41B,41Cに対向する部分の分割鏡筒4Cには、被計測部材42A,42B,42Cが固定されている。検出器41A〜41Cには検出信号の処理装置44等に対して着脱可能なコネクタ43A〜43Cが設けられている。検出器41A,41B,41Cは、それぞれ分割鏡筒4Cの被計測部材42A,42B,42Cとの間の静電容量の変化から、被計測部材42A,42B,42Cに対するY方向の間隔ΔY、X方向の間隔ΔX、及び円周方向の間隔ΔRを計測する。2箇所の間隔ΔY,ΔRの差分から分割鏡筒4Aに対する分割鏡筒4Cのθz方向の回転角も算出できる。
【0039】
なお、これらの検出器41A〜41Cの他に、さらに分割鏡筒4Aに対する分割鏡筒4CのZ方向の位置、及びθx方向、θy方向の回転角を計測する少なくとも3個のセンサを設けてもよい。これによって、下部鏡筒6Aに対する上部鏡筒6Bの6自由度の相対位置を計測可能である。また、検出器41A〜41C等は図1では図示省略されている。次に、本実施形態の投影光学系POの組立調整方法の一例につき図6のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
先ず、ステップ101において、図2(A)に示すように、光学系製造工場(第1工場)で、所定の光学系フレーム3Aに投影光学系POの分割鏡筒4Aのフランジ部4Afを固定する。図2(A)の座標系(X,Y,Z)と図1の座標系(X,Y,Z)との方向は同じである。そして、分割鏡筒4Aを基準として、他の分割鏡筒4B〜4Dの組立調整を行う。すなわち、分割鏡筒4Aの上に分割鏡筒4Cを載置し、分割鏡筒4Aを基準として分割鏡筒4Cの位置を調整しながら、ボルト5Cを用いて固定する。次に、分割鏡筒4Cの上に分割鏡筒4Dを載置し、分割鏡筒4Aとの位置調整が行われた分割鏡筒4Cを基準として分割鏡筒4Dの位置を調整しながら、ボルト5D及びナット5Eを用いて固定する。さらに、分割鏡筒4Aの下に分割鏡筒4Bを近づけ、分割鏡筒4Aを基準として分割鏡筒4Bの位置を調整しながら、ボルト5Bを用いて固定する。これらの組立調整が行われた後、調整用光束ELAを用いた結像特性計測とその計測結果に基づいた投影光学系POのミラーM1〜M6の位置及び角度調整が行われる。図2(A)において、調整用光源ILSAから射出された調整用光束ELAは、ミラーを介して、不図示のフレームに静電チャックRHAを介して保持された調整用レチクルRA上の照明領域27Rに照射される。投影光学系POは反射系であるため、調整用光束ELAとしてはEUV光よりも波長の長い例えば可視域のレーザ光等も使用可能である。
【0041】
調整用レチクルRAで反射された調整用光束ELAは、投影光学系POを介して可動ステージWSTA上の結像特性計測系29A上の露光領域27Wに入射する。結像特性計測系29Aは図1の結像特性計測系29と同様に投影光学系POの波面収差を計測する。しかしながら、調整用光束ELAの波長がEUV光と異なっている場合には、内部の回折格子の周期等が異なっている。そして、結像特性計測系29Aで計測される波面収差が許容範囲内に収まるまで、投影光学系POのミラーM1〜M6の位置及び角度調整が行われる。
【0042】
次のステップ102において、図2(A)のBB線に沿う断面図である図2(B)に示すように、分割鏡筒4Aに設けられた3箇所の検出器41A〜41C及びこれらにコネクタ43A〜43Cを介して接続された処理装置44を用いて、分割鏡筒4Aに対する分割鏡筒4CのX方向、Y方向の位置ずれ量に相当する間隔ΔX,ΔY、及びθz方向の回転角に相当する円周方向の間隔ΔRを計測し、分割鏡筒4Aと分割鏡筒4Cの相対位置関係に相当する計測結果を例えばUSB(Universal Serial Bus)方式のメモリー45に記憶する。その後、コネクタ43A〜43Cが処理装置44から取り外されるとともに、メモリー45は処理装置44から取り外されて投影光学系POの設置場所に搬送される。なお、本実施形態では、分割鏡筒4Aに対する分割鏡筒4Cの間隔ΔX,ΔY、及びΔRを計測しているが、次のステップ103において投影光学系POを上部鏡筒6Bと下部鏡筒6Aに分けて搬送する際、分割鏡筒4Aと分割鏡筒4B及び分割鏡筒4Cと分割鏡筒4Dは、固定されたまま搬送されるので、メモリ45に記憶された計測結果は、下部鏡筒6Aに対する上部鏡筒6Bの相対位置関係を記憶したものと等価である。
【0043】
次のステップ103において、図3に示すように、投影光学系POを上部鏡筒6Bと下部鏡筒6Aとに分解して、上部鏡筒6B及び下部鏡筒6Aを個別に露光装置100(投影光学系PO)が設置される半導体デバイス製造工場(第2工場)に搬送する。搬送する際、上部鏡筒6B及び下部鏡筒6Aは、有機系ガスの発生が少ない材料で形成された梱包材を用いて梱包される。また、その内部を窒素等の不活性ガスにより充填することで、分割鏡筒4A〜4D及びミラーM1〜M6のクリーン度を保ちながら搬送することができる。
【0044】
図4は、その半導体デバイス製造工場内の設置場所において、組立途中の露光装置を示す断面図の例である。図4において、真空チャンバー1の上部を開いた底部1aが設置され、底部1a内にウエハステージWSTが載置され、不図示のフレームにレーザプラズマ光源10、及び照明光学系ILSの一部が支持されている。
【0045】
次のステップ104において、図4の真空チャンバー1内の光学系フレーム3に下部鏡筒6Aの分割鏡筒4Aのフランジ部4Afをボルト5Aで固定する。この際に、真空チャンバー1の上部の天井に配置されているガイドレール46に沿って移動可能なクレーン47が使用される。次のステップ105において、図5(A)に示すように、投影光学系POの下部鏡筒6A上に、クレーン47で長さが調整可能なチェーン49A,49Bを介して吊り下げた上部鏡筒6Bを載置する。次のステップ106において、クレーン47で上部鏡筒6Bの荷重を支えてその荷重の一部を相殺しながら、かつ下部鏡筒6Aの分割鏡筒4Aに設けた検出器41A〜41Cで上部鏡筒6Bの位置及び回転角を計測しながら、光学系フレーム3に設けた位置決め部材50A等を用いて上部鏡筒6Bの位置及び回転角を調整する。
【0046】
図5(A)のCC線に沿う断面図の例である図5(B)に示すように、下部鏡筒6Aの分割鏡筒4Aに設けられた3箇所の検出器41A〜41Cをコネクタ43A〜43Cを介して処理装置44Aに接続する。処理装置44Aにはステップ102で計測された相対位置関係の計測結果を記憶したメモリー45も接続される。処理装置44Aは、検出器41A〜41Cを介して計測される位置及び回転角と、メモリー45に記憶されている位置及び回転角との誤差を表示する機能を備えている。
【0047】
また、下部鏡筒6Aを支持する光学系フレーム3には、上部鏡筒6BをX方向に押し引きするための止めねじ方式の位置決め部材50A,50Bと、上部鏡筒6BをY方向に押し引きするための止めねじ方式の位置決め部材50C,50Dとが固定されている。さらに、分割鏡筒4Aの上部の±X方向にほぼ対称な位置に点線で示す支持部材51E,51Fを介して、上部鏡筒6Bをθz方向に回転するための1対の位置決め部材50E,50Fが固定されている。位置決め部材50A〜50Fを押し引きすることによって、下部鏡筒6Aに対して上部鏡筒6BのX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を調整できる。なお、位置決め部材50A〜50Fは、図1では図示省略されている。
【0048】
この場合、検出器41A〜41C及び処理装置44Aを用いて、下部鏡筒6A(分割鏡筒4A)に対する上部鏡筒6B(分割鏡筒4C)のX方向、Y方向の位置ずれ量に相当する間隔ΔX1,ΔY1、及びθz方向の回転角に相当する円周方向の間隔ΔR1を計測する。
【0049】
次のステップ107において、オペレータは、計測された間隔ΔX1,ΔY1,ΔR1が、それぞれステップ102で計測されてメモリー45に記憶されている計測値(下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bの相対位置関係と等価な、分割鏡筒4Aと分割鏡筒4Cの相対位置関係)を使用して、記憶された間隔ΔX,ΔY,ΔRに対してそれぞれ許容範囲内かどうかを判定する。その許容範囲は例えば±数μm〜±10μm程度である。そして、その計測結果が記憶されている計測値に対して許容範囲内にない場合には、ステップ106に戻り、検出器41A〜41Cで上部鏡筒6B(分割鏡筒4C)の位置及び回転角を計測しながら、光学系フレーム3等に設けた位置決め部材50A〜50Fを用いて上部鏡筒6Bの位置及び回転角を調整する。
【0050】
その後、ステップ107において、位置関係の計測値が記憶されている計測値に対して許容範囲内に収まったときに、ステップ108に移行し、上部鏡筒6Bからクレーン47のチェーン49A,49Bを外し、上部鏡筒6Bの分割鏡筒4Cをボルト5Cによって下部鏡筒6Aの分割鏡筒4Aのフランジ部4Afに固定する。次のステップ109において、結像特性計測系29を用いて投影光学系POの波面収差(結像特性)を計測する。なお、結像特性計測系29を用いる場合には、図1に示すように真空チャンバー1を組み立てて、その内部を真空にする必要がある。そこで、図5の状態で投影光学系POの波面収差を計測するために、ステップ101の場合と同様に、結像特性計測系29の代わりに例えば可視域の計測光を使用できる結像特性計測系29Bを設置し、その計測光を用いて投影光学系POの物体面の所定の反射パターン(不図示)を照明してもよい。
【0051】
次のステップ110において、その波面収差の計測結果が許容範囲内かどうかを調べる。この許容範囲とは、ミラーM1〜M6を支持する保持調整機構35A〜35Fの微調機構37によって調整可能な範囲である。
【0052】
その波面収差の計測結果が許容範囲内でない場合には、ステップ111に移行して、投影光学系POの各ミラーM1〜M6の位置を対応する保持調整機構35A〜35F内の粗調機構38を用いて調整する。その後、動作はステップ109に戻る。そして、その波面収差の計測結果が許容範囲内に収まるまで、ステップ111のミラーM1〜M6の位置調整が行われる。そして、ステップ110で、その波面収差の計測結果が許容範囲内になったときに投影光学系POの組立調整が終了する。これ以後の投影光学系POの結像特性の変動又は誤差は、結像特性制御系34によって保持調整機構35A〜35E内の微調機構37を駆動することで補正できる。
【0053】
このように本実施形態によれば、投影光学系POを下部鏡筒6A及び上部鏡筒6Bに分割して搬送していても、露光装置100が使用される工場において、投影光学系POの組立調整を容易にかつ効率的に行って、光学系製造工場で組立調整された状態をほぼ正確に復元できる。
【0054】
本実施形態の作用効果等は以下の通りである。
【0055】
(1)本実施形態の露光装置100の投影光学系POは、複数のミラーM1〜M6と、ミラーM1〜M6のうちミラーM5,M6を保持する下部鏡筒6Aと、下部鏡筒6Aに固定され、ミラーM1〜M6のうちミラーM1〜M4を保持する上部鏡筒6Bと有し、第1面のパターンの像を第2面に形成するよう構成され、下部鏡筒6Aに上部鏡筒6Bが固定され、かつ投影光学系POの結像特性としての波面収差(光学特性)が調整された状態で計測された下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置関係(ΔX,ΔY,ΔR)を記憶するメモリー45を備えている。
【0056】
投影光学系POの組立方法は、下部鏡筒6Aに上部鏡筒6Bが固定され、かつ投影光学系POの波面収差が調整された状態で、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置関係を記憶するステップ101,102と、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとを分解するステップ(ステップ103の前半部)と、分解された下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとを、再度互いに固定する際、記憶されたその相対位置関係を使用して、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置を調整するステップ(ステップ103の後半部〜ステップ107)と、下部鏡筒6Aに上部鏡筒6Bを固定するステップ108と、を含む。
【0057】
この実施形態によれば、下部鏡筒6Aに上部鏡筒6Bが固定され、かつ投影光学系POの波面収差が調整された状態で計測されたその下部鏡筒6A及び上部鏡筒6Bの相対位置関係が記憶される。そして、投影光学系POをその2つの部分鏡筒間で分解して設置場所に搬送し、その相対位置関係をほぼ再現するようにその2つの部分鏡筒を連結することによって、投影光学系POの組立調整を行うことができる。従って、全長の長い投影光学系POであってもそれを必要な設置場所に容易に設置できるとともに、設置場所における投影光学系POの組立調整を短時間に行うことができる。
【0058】
投影光学系POは、3分割以上に分解して搬送してもよい。
【0059】
メモリー45を用いる代わりに、後述の検出器41A〜41Cに計測値を記憶する記憶装置を設けておき、各検出器41A〜41Cで計測値を記憶していてもよい。
【0060】
(2)その相対位置関係を計測する検出器41A〜41Cが下部鏡筒6Aの分割鏡筒4Aに設けられ、被計測部材42A〜42Cが上部鏡筒6Bの分割鏡筒4Cに設けられているため、その相対位置関係を正確に計測できる。
【0061】
検出器41A〜41Cが上部鏡筒6B側に、被計測部材42A〜42Cが下部鏡筒6A側に設けられていてもよいことは勿論である。また、被計測部材42A〜42Cを用いることなく、検出器41A〜41Cのみを用いて下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置関係を計測してもよい。
【0062】
検出器41A〜41Cの少なくとも一つは、下部鏡筒6A又は上部鏡筒6Bの少なくとも一方に設けられていてもよい。例えば、下部鏡筒6A又は上部鏡筒6Bに鏡筒の位置を決める止め具やレールが設けられ、X方向とY方向の位置を微調整機構で調整可能な範囲に調整することができれば、θzに対応する検出器を用いて、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置関係を計測すれば十分である。もちろん、これらの方向に限ることはなく、X方向、Y方向、Z方向、θx方向、θy方向、θz方向の6自由度について同様に考えられ、対応する検出器を設置すればよい。
【0063】
検出器41A〜41Cとしては、例えば渦電流センサ又は光学式で三角測量式の検出器等を使用してもよい。さらに、検出器41A〜41Cとしてアブソリュート型のリニアエンコーダ、被計測部材42A〜42Cとして上部鏡筒6B(分割鏡筒4C)に設けたスケール(又は回折格子)を使用し、リニアエンコーダによりスケールの変位を読み取ることによって、相対位置関係を計測してもよい。
【0064】
検出器41A〜41C及び被計測部材42A〜42Cの少なくとも一つは、着脱できるように設けてもよいし、下部鏡筒6A又は上部鏡筒6Bに固定されていてもよい。
【0065】
(3)光学系フレーム3に、下部鏡筒6Aに対する上部鏡筒6Bの相対位置を調整する位置決め部材50A〜50D(調整装置)が設けられ、下部鏡筒6Aに支持部材51E,51Fを介して下部鏡筒6Aに対する上部鏡筒6Bの相対回転角を調整する位置決め部材50E,50Fが設けられているため、下部鏡筒6Aに対する上部鏡筒6Bの相対位置及び回転角を容易に高精度に調整できる。
【0066】
位置決め部材50A〜50Dも下部鏡筒6Aに固定してもよい。さらに、位置決め部材50A〜50Fの全部を光学系フレーム3に固定することも可能である。
【0067】
なお、位置決め部材50A〜50Fの少なくとも一部を電動式のアクチュエータとしてもよい。さらに、位置決め部材50A〜50Fの少なくとも一部を着脱式としてもよい。
【0068】
(4)フランジ部4Afを持つ下部鏡筒6Aの分割鏡筒4Aを基準として上部鏡筒6Bを固定しているため、組立調整が容易である。
【0069】
(5)下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置関係を記憶するステップ101,102は、下部鏡筒6Aに上部鏡筒6Bを固定して投影光学系POを組み立てるステップ(ステップ101の前半)と、組み立てられた投影光学系POの結像特性(波面収差)計測するステップ(ステップ101の後半)と、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置関係(ΔX,ΔY,ΔR)を記憶するステップ(ステップ102の後半)とを有する。従って、投影光学系POの組立調整が完了した状態での下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの位置関係を記憶できる。
【0070】
(6)その相対位置を調整するステップは、クレーン47を用いて下部鏡筒6Aに対する上部鏡筒6Bの重量(荷重)の少なくとも一部を相殺した状態で、下部鏡筒6Aに対して上部鏡筒6Bの相対位置を調整するステップ106を含んでいる。従って、上部鏡筒6Bの重量が大きい場合でも、下部鏡筒6Aに対する上部鏡筒6Bの相対位置を容易に調整できる。
【0071】
なお、上部鏡筒6Bの重量が軽い場合には、上部鏡筒6Bの重量の全部を下部鏡筒6Aで支持した状態で下部鏡筒6Aに対する上部鏡筒6Bの相対位置を調整してもよい。
【0072】
(7)固定するステップ108の後に、投影光学系POの結像特性(波面収差)を計測するステップ109を実行しており、そのため、投影光学系POの組立調整が高精度に行われたかどうかを確認できる。
【0073】
なお、例えば本発明をArFエキシマレーザ等を用いる露光装置に適用した場合には、投影光学系の複数の光学素子間の相対位置精度は比較的粗いため、ステップ109〜111の動作は省略可能である。
【0074】
(8)ステップ102からステップ108を経たとしても波面収差の計測結果が微調機構37によって調整可能な範囲内となるように、保持調整機構35A〜35Eが光学素子を保持できれば、ステップ109〜111を省略することができる。すなわち、ステップ108が完了することで、投影光学系POの組立調整が終了する。これ以後の投影光学系POの結像特性の変動又は誤差は、結像特性制御系34によって保持調整機構35A〜35E内の微調機構37を駆動することで補正することができる。なお、このときに投影光学系POの結像特性を測定し、その結果に基づいて補正してもよいことは勿論である。また、ステップ101において計測した結像特性と比較して、その結果に基づいて補正してもよい。
【0075】
(9)その分解するステップ(ステップ103の前半部)では、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとを光学系製造工場(第1の場所)(チャンバーの外部)で分解し、その相対位置を調整するステップは、その光学系製造工場で分解された下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとをデバイス製造工場(第2の場所)の真空チャンバー1の底部内に搬送するステップ(ステップ103の後半部)と、その真空チャンバー1の底部内(チャンバーの内部)で下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置を調整するステップ106とを有する。従って、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとを分解して搬送しても、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置を分解前の状態に容易に設定できる。
【0076】
なお、本実施形態は、投影光学系POを同じ工場内のある部屋から別の部屋に分解して搬送してから組立調整を行うような場合にも適用可能である。
【0077】
例えば本実施形態をArFエキシマレーザ光を用いる露光装置に適用するような場合には、最終的に投影光学系の組立調整が行われる場所は、例えば大気圧下で使用される通常の環境チャンバー内である。さらに、最終的に投影光学系の組立調整行われる場所はチャンバーの外であってもよい。
【0078】
(10)投影光学系POのミラーM1〜M6は、微調機構37及び/又は粗調機構38を含む保持調整機構35A〜35F(調整機構)を備えている。従って、保持調整機構35A〜35Fを用いて、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置関係の調整を行った後に残存しているミラーM1〜M6間の相対位置の誤差を調整できる。
【0079】
なお、ミラーM1〜M6のうちの少なくとも1枚のミラーが保持調整機構35A〜35Fのいずれかを備えているのみでもよい。
【0080】
(11)本実施形態の露光装置100は、投影光学系POを介してウエハWを露光する露光装置において、投影光学系POの下部鏡筒6Aに上部鏡筒6Bが固定され、かつ投影光学系POの波面収差が調整された状態で計測された下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置関係を記憶するメモリー45と、メモリー45に記憶された相対位置関係に基づいて、下部鏡筒6Aと上部鏡筒6Bとの相対位置を調整する位置決め部材50A〜50Fと、を備えている。
【0081】
従って、投影光学系POを分解して搬送した上で、容易に再現性を持って投影光学系POの組立調整を行うことができる。
【0082】
また、上記の実施形態の露光装置を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、図7に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した実施形態の露光装置によりレチクルのパターンを基板(感応基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0083】
従って、このデバイス製造方法は、上記の実施形態の露光装置を用いて基板上に感光層のパターンを形成することと、そのパターンが形成された基板を処理すること(ステップ224)とを含んでいる。その露光装置によれば、投影光学系の組立調整が容易であるため、電子デバイスの製造コストを低減できる。
【0084】
図1の実施形態では、露光光源としてEUV光源を用いたが、これに限定されることはなく、例えば、波長100〜160nm程度のVUV光源、Ar2レーザ(波長126nm)、Kr2レーザ(波長146nm)、F2レーザ(波長157nm)などの紫外パルスレーザ光源、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光源(波長247nm)、YAGレーザの高調波発生光源、固体レーザ(半導体レーザなど)の高調波発生装置、又は水銀ランプ(i線等)なども使用することができる。
【0085】
本実施形態は反射型の投影光学系に限らず、反射屈折型の投影光学系や屈折型の投影光学系に適用することができる。
【0086】
さらに本実施形態は、例えば米国特許出願公開第2007/242247号公報又は欧州特許出願公開第1420298号公報等に開示されている液浸型露光装置の投影光学系にも適用可能である。
【0087】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0088】
R…レチクル、W…ウエハ、PO…投影光学系、M1〜M6…ミラー、1…真空チャンバー、4A〜4D…分割鏡筒、4Af…フランジ部、6A…下部鏡筒、6B…上部鏡筒、29…結像特性計測系、35A〜35F…保持調整機構、41A〜41C…検出器、50A〜50F…位置決め部材、100…露光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学素子と、前記複数の光学素子のうち第1光学素子を保持する第1部分鏡筒と、前記複数の光学素子のうち第2光学素子を保持する第2部分鏡筒と有し、第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系を組み立てるための投影光学系の組立方法において、
前記第1部分鏡筒に前記第2部分鏡筒が固定され、かつ前記投影光学系の光学特性が調整された状態で、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒との相対位置関係を記憶する工程と、
前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒とを分解する工程と、
分解された前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒とを再度互いに固定するために、記憶された前記相対位置関係を使用して、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒との相対位置を調整する工程と、
前記第1部分鏡筒に前記第2部分鏡筒を固定する工程と、を含むことを特徴とする投影光学系の組立方法。
【請求項2】
前記調整する工程は、記録された前記相対位置関係に対して、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒の相対位置関係が所定の許容範囲に収まるよう、前記第1部分鏡筒及び前記第2部分鏡筒の少なくとも一方を移動させることにより、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒の相対位置関係を調整することを特徴とする請求項1に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項3】
前記相対位置関係を記憶する工程は、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒との少なくとも一方に、少なくとも一部が設けられたセンサを用いて計測した計測結果を記憶することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項4】
前記相対位置関係を記憶する工程は、前記第1部分鏡筒に前記第2部分鏡筒を固定して前記投影光学系を組み立てる第1工程と、組み立てられた前記投影光学系の光学特性を計測する第2工程と、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒との相対位置関係を記憶する第3工程とを有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項5】
前記相対位置を調整する工程は、前記第1部分鏡筒に対する前記第2部分鏡筒の重量の少なくとも一部を相殺した状態で、前記第1部分鏡筒に対して前記第2部分鏡筒の相対位置を調整することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項6】
前記固定する工程の後、前記投影光学系の光学特性を計測する工程を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項7】
前記計測する工程において計測された前記投影光学系の光学特性と、前記記憶する工程で、前記相対位置関係を記憶したときの前記投影光学系の光学特性とを比較する工程と、
前記比較する工程で比較した結果を使用して、前記複数の光学素子のうち少なくとも一つの光学素子の位置を調整する工程とを有することを特徴とする請求項6に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項8】
前記複数の光学素子のうち少なくとも一つの光学素子の位置を調整する工程は、前記比較する工程で得られた光学特性間の誤差が所定の許容範囲に収まるよう、前記第1部分鏡筒及び前記第2部分鏡筒の少なくとも一方を移動させることにより、前記複数の光学素子のうち少なくとも一つの光学素子の位置を調整することを特徴とする請求項7に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項9】
前記分解する工程は、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒とを第1の場所で分解し、
前記相対位置を調整する工程は、前記第1の場所で分解された前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒とを第2の場所に搬送する第4工程と、前記第2の場所で、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒との相対位置を調整する第5工程とを有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項10】
前記第1の場所は、前記投影光学系を収容するチャンバーの外部であり、前記第2の場所は、前記チャンバーの内部であり、
前記相対位置を調整する工程中の前記第5工程は、前記チャンバーの内部で、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒との相対位置を調整することを特徴とする請求項9に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項11】
前記第1部分鏡筒は、フランジ部を有し、
前記固定する工程では、前記チャンバー内に設けられたフレームに前記フランジ部を固定することを特徴とする請求項10に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項12】
前記第1の場所は、前記投影光学系を製造する光学系製造工場内であり、前記第2の場所は、デバイス製造工場内であることを特徴とする請求項9に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項13】
前記分解する工程は、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒を前記光学系製造工場内で分解し、
前記相対位置を調整する工程中の前記第4工程は、前記光学系製造工場内で分解された前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒とを前記デバイス製造工場内に設置されている露光装置用チャンバー内に搬送し、
前記相対位置を調整する工程中の前記第5工程は、前記露光装置用チャンバー内で、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒との相対位置を調整することを特徴とする請求項12に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項14】
前記投影光学系は、EUV光を用いて前記第1面のパターン像を前記第2面に形成することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の投影光学系の組立方法。
【請求項15】
第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系において、
複数の光学素子と、
前記複数の光学素子のうち第1光学素子を保持する第1部分鏡筒と、
前記第1部分鏡筒に固定され、前記複数の光学素子のうち第2光学素子を保持する第2部分鏡筒と、
前記第1部分鏡筒に前記第2部分鏡筒が固定され、かつ前記投影光学系の光学特性が調整された状態で計測された、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒との相対位置関係を記憶する記憶装置とを備えることを特徴とする投影光学系。
【請求項16】
前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒の少なくとも一方に、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒との前記相対位置関係を調整する調整装置の少なくとも一部が設けられたことを特徴とする請求項15に記載の投影光学系。
【請求項17】
前記第1部分鏡筒は、前記第1部分鏡筒に前記第2部分鏡筒を固定する際の基準となることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の投影光学系。
【請求項18】
前記第1部分鏡筒はフランジ部を有することを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の投影光学系。
【請求項19】
前記相対位置関係を計測するセンサをさらに備え、前記センサは検出器と被計測部材によって構成され、
少なくとも前記検出器が前記第1部分鏡筒及び前記第2部分鏡筒の少なくとも一方に設けられたことを特徴とする請求項15から請求項18のいずれか一項に記載の投影光学系。
【請求項20】
前記複数の光学素子のうち、少なくとも一つの光学素子の位置を調整する調整機構を備えたことを特徴とする請求項15から請求項19のいずれか一項に記載の投影光学系。
【請求項21】
前記投影光学系は、EUV光を用いて前記第1面のパターンの像を前記第2面に形成することを特徴とする請求項15から請求項20のいずれか一項に記載の投影光学系。
【請求項22】
投影光学系を介して物体を露光する露光装置において、
前記投影光学系は、請求項15から請求項21のいずれか一項に記載の投影光学系であることを特徴とする露光装置。
【請求項23】
投影光学系を介して物体を露光する露光装置において、
前記投影光学系は、複数の光学素子と、前記複数の光学素子のうち第1光学素子を保持する第1部分鏡筒と、前記第1部分鏡筒に固定され、前記複数の光学素子のうち第2光学素子を保持する第2部分鏡筒とを有し、
前記第1部分鏡筒に前記第2部分鏡筒が固定され、かつ前記投影光学系の光学特性が調整された状態で計測された、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒との相対位置関係を記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された前記相対位置関係を使用して、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒との相対位置を調整する調整装置と、を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項24】
前記調整装置は、前記第1部分鏡筒及び前記第2部分鏡筒の少なくとも一方に備えられることを特徴とする請求項23に記載の露光装置。
【請求項25】
前記第1部分鏡筒は、フランジ部を有し、
前記フランジ部を支持すると共に、前記調整装置の少なくとも一部を有するフレームをさらに備えたことを特徴とする請求項23に記載の露光装置。
【請求項26】
前記調整装置は、記録された相対位置関係に対して、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒の相対位置関係が所定の許容範囲に収まるよう、前記第1部分鏡筒及び前記第2部分鏡筒の少なくとも一方を移動させることにより、前記第1部分鏡筒と前記第2部分鏡筒の相対位置関係を調整することを特徴とする請求項23から請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
前記リソグラフィ工程で請求項22から請求項26のいずれか一項に記載の露光装置を用いることを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−14908(P2011−14908A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150558(P2010−150558)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】