説明

抗菌性組成物

本発明は、乳タンパク質カゼインから取得、化学的に合成、または組み換えDNA技術により産生させることができるペプチドと、二価陽イオンとを含む、新規な抗菌性組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳タンパク質カゼインから取得、化学的に合成、または組み換えDNA技術により産生させることができるペプチドと、二価陽イオンとを含む、新規な抗菌性組成物に関する。これらの組成物は、抗菌防腐剤として食品中に使用することができ、歯垢の抑制、ならびに、齲蝕および歯周病に関連する病原体の抑制のための口腔ケア製品(例えば、練り歯磨き、うがい薬、デンタルフロスなど)中に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
非グリコシル化、リン酸化形態のウシのカゼイノマクロペプチド(CMP)である、カッパーシン(Kappacin)は、グラム陽性口腔細菌に対してもグラム陰性口腔細菌に対しても、in vitroで抗菌活性を有する(Malkoski等:非特許文献1)。CMPは、牛のκ−カゼインから、Phe105とMet106との間のペプチド結合をキモシンで加水分解することにより遊離された、アミノ酸64個のポリペプチドである。CMPは、κ−カゼインのC末端フラグメント(106−169)を含み、κ−カゼイン中に存在する翻訳後修飾部位を全て含んでいる。CMPは、多様にリン酸化およびグリコシル化されている(Pisano等(1984年)、SaitoおよびItoh(1992年)、Talbo等:非特許文献2)。CMPは、MALDI−PSD質量分析法により決定されたように、Ser149が完全にリン酸化されていて、Ser127が部分的にリン酸化(10%)されている(非特許文献2)。
【0003】
さらに、κ−カゼインの変異体は、少なくとも6種あり、変異体Aと変異体Bが最もよく知られている(CreamerおよびHarris:非特許文献3)。変異体Aと変異体Bは、残基136および残基148で異なっていて、変異体Aの親水性の残基Thr136およびAsp148が、変異体Bでは疎水性の残基Ile136およびAla148に置き換わっている。カッパーシンの抗菌活性部位は、合成ペプチドSer(P)149κ−カゼイン−A(138-158)を使って決定された、残基138−158であることが示された。この合成ペプチドκ−カゼイン−A(138-158)を使って、Ser149のリン酸化が抗菌活性に不可欠であることが示された(非特許文献1)。CMP変異体AのStreptococcus mutansに対する最小阻害濃度(MIC)は0.68mg/ml(100μM)であるのに対し、変異体Bはより活性が低くそのMICは1.04mg/ml(154μM)であった(非特許文献1)。
【0004】
カッパーシンが細菌の増殖を阻害するメカニズムはまだ明らかではない。カッパーシンは、わずかに酸性の発育pHでS. mutansに対して最も有効であることが見いだされた。非グリコシル化κ−カゼイン−B(130-158)は、特にトリフルオロエタノール中で、両親媒性α−へリックスを形成することが提唱されている(Plowman:非特許文献4)。この特性は、カッパーシンが表面活性剤として働き、細胞膜中に細孔を形成すると仮定するとその抗菌活性を説明するのに役立つ。この作用機序は、これまでに単離された陽イオン性の抗菌性ペプチドの大部分について提唱されている。しかし、カッパーシンは陰イオン性ペプチドであり、より良く知られている陽イオン性の抗菌性ペプチドとシークエンス類似性を示さない。また、両親媒性のらせん構造を形成する傾向を有すると考えられることを除き、これらの陽イオン性ペプチドのその他の特徴をいずれも有していない。カッパーシンは、近年発見された陰イオン性の抗菌性ペプチド、特にenkelytinとは、いくつかの特徴を共有する。このペプチドは、カッパーシンと同様に、多数のグルタミル残基を含み、リン酸化が抗菌活性に不可欠である(Goumon:非特許文献5、Goumon(1998年)、Strub:非特許文献6)。静電的反発力を通して、または二価金属イオンの結合により、リン酸化がenkelytinのコンホーメーションを変化させることが提唱されている(Goumon(1998年)、Kieffer(1998年))が、リン酸化された形態のenkelytinの構造はまだ決定されていない。
【非特許文献1】Antimicrobial Agents and Chemotherapy 45, 2309-2315(2001).
【非特許文献2】Peptides 22, 1093-1098 (2001).
【非特許文献3】International Dairy Federation Special Issue 9702, pp. 110-123 (1997).
【非特許文献4】Journal of Dairy Research 64, 377-397 (1997).
【非特許文献5】European Journal of Biochemistry 235, 516-525 (1996).
【非特許文献6】Journal of Biological Chemistry 271, 28533-28540 (1996).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カッパーシンを含む、負に帯電した抗菌性ペプチドが、どのようにして細菌細胞表面に作用するかはまだ明らかとなっていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、pHおよび二価金属陽イオンがペプチドの抗菌活性および構造に及ぼす影響を研究した。本発明者等は、ペプチドと二価陽イオンとの間の相乗効果を明らかにすることができた。
【0007】
したがって、本発明の最初の態様は、抗菌性組成物である。この組成物は、二価陽イオンおよびペプチドを含む抗菌性組成物であって、このペプチドが、非グリコシル化形態の約100個未満、好ましくは約70個未満のアミノ酸であり、下記配列:
【化1】

およびこれらの配列の保存的置換からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、組成物である。
【0008】
本発明の好ましい実施態様では、上記ペプチドは、下記配列:
【化2】

からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
本発明のさらに好ましい実施態様では、上記ペプチドは、下記配列:
【化3】

およびこれらの配列の保存的置換からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
さらに好ましくは、上記ペプチドは、下記配列:
【化4】

からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
本発明のさらに好適な実施態様では、上記ペプチドは、下記配列:
【化5】

からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
二価陽イオンは、Zn2+、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Sn2+、およびMn2+からなる群から選択されることが好ましい。加えて、この二価陽イオンは、SnFおよびCuFなどのようにフッ化物と会合していてもよい。しかし、現在のところ二価陽イオンはCa2+またはZn2+が好ましい。
【0013】
さらに好ましくは、二価陽イオンのペプチドに対するモル比は、0.5:1.0から15.0:1.0の範囲であり、0.5:1.0から4.0:1.0の範囲が好適である。さらに好ましくは、二価陽イオンのペプチドに対するモル比は、1.0:1.0から4.0:1.0の範囲、好ましくは1.0:1.0から2.0:1.0の範囲である。
【0014】
さらに好ましい実施態様では、組成物はさらに製薬品として許容できる担体を含む。このような組成物は、歯科用口腔内組成物、局所性または全身性に適用するための治療用抗感染組成物であってもよい。歯科用組成物または治療用組成物は、ゲル、液体、固体、粉体、クリーム、またはロゼンジ(口内錠)の形態とすることができる。また、治療用組成物は錠剤またはカプセルの形態であってもよい。
【0015】
さらなる態様では、被験者の齲触または歯周病の治療または予防方法であって、そのような処置の必要のある被験者の歯または歯ぐきに本発明の組成物を投与する工程を含む方法を提供する。この組成物を局所的投与することが好ましい。
【0016】
ペプチドの抗菌活性を引き起こすものは、ペプチドの物理的性質よりむしろペプチドの特異的な配列であるため、ペプチド配列におけるいわゆる保存的置換を、活性の実質的な喪失なしにすることができる。活性の実質的な喪失を引き起こさないこのような保存的置換は本発明に包含されると考えている。
【0017】
保存的置換の概念は当業者に周知であるが、明確にするために保存的置換の例を以下に提示する。
【化6】

【0018】
本発明の組成物には多くの応用がある。例えば、抗菌防腐剤として食品中に使用することができ、歯垢の抑制、ならびに齲触および歯周病に関わる病原体の抑制のための口腔ケア製品(練り歯磨きおよび口内洗浄液)中に使用することができる。本発明の抗菌性組成物は、医薬の調製にも使用することができる(例えば、局所性または全身性の抗感染薬など)。
【0019】
本明細書をとおして、用語「含む(comprise:comprises、comprisingなどの変形を含む)」は、記載された要素または整数あるいは一群の要素または整数を含むが、他の要素または整数あるいは一群の要素または整数を排除するものではない。
【0020】
本発明は、二価陽イオンと少なくとも1種類のペプチドとを含む抗菌性組成物に関する。これらのペプチドは、当初はカゼイン、すなわちκ−カゼイン(106-169)(表1)から得た。
【0021】
【表1】

【0022】
ペプチドSer(P)149κ−カゼイン(117-169) およびSer(P)127, Ser(P)149κ−カゼイン(117-169) は、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィー(HPLC)を含む標準的なクロマトグラフィー方法を用いて、ウシのカゼインのトリプシン消化産物から精製することができる。
Ser(P)149κ−カゼイン(106-169) およびSer(P)127, Ser(P)149κ−カゼイン(106-169) も、限外濾過法により乳漿タンパク質を除去すること、または酸沈殿の後続いてホスホペプチドを逆相HPLC精製することにより、チーズホエー(乳清)およびレンネットホエー(乳清)から調製することができる。このペプチドは、その他の種、例えばヤギ、ヒツジなどのカゼインから調製することができる。
【0023】
ペプチドκ−カゼイン(106-169) は、チーズホエーまたはレンネットホエー中に、いくつかの異なる形態で存在する。このペプチドには、2個の主要な遺伝的変異体(AおよびB)があり、グリコシル化およびリン酸化による翻訳後修飾がされている。κ−カゼイノグリコペプチドまたはグリコマクロペプチドとして知られるこのグリコシル化形態は、Neeserにより、ぺプチドのトレオニン残基に結合したオリゴサッカライド鎖に基づく抗歯垢剤または抗齲触剤として記載されていた(米国特許第4,992,420号および第4,994,441号)。Neeserは、このグリコペプチドのオリゴサッカライド鎖が、歯垢を形成する口腔細菌に特異的に結合することにより、これらの細菌が唾液に覆われた歯のエナメル質上に付着することを阻害すると主張する。グリコシル化形態のκ−カゼイン(106-169) は、クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび逆相HPLC)により、または、選択的沈殿または限外濾過により、非グリコシル化形態から分離することができる。その非グリコシル化形態のκ−カゼイン(117-169) またはκ−カゼイン(106-169)だけが抗菌活性を示した。グリコシル化が抗菌活性を損なうため、グリコシル化形態またはアグリコシル化形態のκ−カゼイン(117-169) またはκ−カゼイン(106-169) を分離することが望ましく、この分離はクロマトグラフィー、選択的沈殿、または限外濾過により実現することができる。Ser(P)149 のリン酸化、およびSer(P)149 のリン酸化より程度の低いSer(P)127のリン酸化は、抗菌活性に重要であり、2種の主要な遺伝的変異体(AおよびB)のリン酸化形態は同等の活性を有するようであった(表1)。Neeserの特許は、κ−カゼイン(106-169) の抗菌活性も、病原細菌の抑制のための非グリコシル化形態のペプチドの使用も開示していない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の特に好ましい実施態様では、抗菌性組成物を、齲触または歯周病の予防および/または治療を助けるために、練り歯磨きなどの歯磨剤、うがい薬、または口腔用製剤に組み入れる。ペプチドは、歯磨剤組成物の0.01−50重量%、好ましくは1−10重量%を占めていてもよい。口腔用組成物には、投与される本発明の組成物の量がその口腔用組成物の0.01−50重量%、好ましくは0.1−10重量%であることが好ましい。上記のペプチドを含有する本発明の口腔用組成物は、例えば、練り歯磨き、歯磨き粉および液体歯磨剤、うがい薬、トローチ、チューインガム、歯科用軟膏、歯肉マッサージクリーム、うがい錠、ロゼンジ、乳製品、およびその他の食料品などの、口腔に適用できる多様な形態に調製し使用することができる。本発明の口腔用組成物は、特定の口腔用組成物のタイプおよび形態によって、さらに付加的な周知の成分を含有していてもよい。
【0025】
本発明の口腔用組成物の特に好ましい形態では、口腔用組成物は、例えばうがい薬または洗浄剤などのように、性質が実質的に液体である。このような調剤品では、媒体は、典型的には以下に記述するような湿潤剤を含んでいる、水−アルコール混合液である。
【0026】
通例、水のアルコールに対する重量比は、約1:1から約20:1の範囲である。このタイプの調剤品の水−アルコール混合液の総量は、典型的には調剤品の約70から約99.9重量%の範囲である。このアルコールは、典型的にはエタノールまたはイソプロパノールである。エタノールが好ましい。
【0027】
このような液体および本発明のその他の調剤品のpHは、通常約4.5から約9の範囲であり、典型的には約5.5から約8の範囲である。このpHは、好ましくは約6から約8.0の範囲であり、7.4が好適である。このpHは、酸(例えば、クエン酸または安息香酸)または塩基(例えば、水酸化ナトリウム)で制御することができ、あるいは緩衝化(クエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどを用いた状態で)することができる。
【0028】
本発明の他の望ましい形態の口腔用組成物は、例えば歯磨き粉、歯科用錠剤、あるいは練り歯磨き(歯科用クリーム)またはゲル状歯磨剤の形態の歯磨剤などのように、性質が実質的に固体またはペースト状である。このような固体またはペースト状の口腔用調剤品の媒体は、通常、歯科用製品として許容できる研磨剤を含有する。研磨剤の例として、水に不溶のメタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム二水和物、無水第二リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム三水和物、焼成アルミナ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、シリカ、ベントナイト、およびこれらの混合物が挙げられる。他の好適な研磨剤として、例えば、メラミン−、フェノール−、または尿素−ホルムアルデヒド類、あるいは、架橋されたポリエポキシド類またはポリエステル類などの、粒子状の熱硬化性樹脂が挙げられる。好ましい研磨剤として、粒子径が最大約5ミクロンであり、平均粒子径が最大約1.1ミクロンであり、かつ表面積が最大約50,000cm/gの結晶性シリカ、シリカゲルまたはコロイダルシリカ、および無定形アルカリ金属アルミノケイ酸錯体が挙げられる。
【0029】
視覚的に透明なゲル形態を採用する場合、コロイダルシリカの研磨剤(例えば、登録商標SYLOIDのもとで市販されているSyloid 72およびSyloid 74、または、登録商標SANTOCELのもとで市販されているSantocel 100など)、アルカリ金属アルミノケイ酸錯体類が、特に有用である。これらの研磨剤は、歯磨剤に一般に使われるゲル化剤−液体(水および/または湿潤剤を含む)系の屈折率に近い屈折率を有するからである。
【0030】
いわゆる「水に不溶の」研磨剤は、性質が陰イオン性であることが多く、少量の可溶性物質も含有している。したがって、不溶性のメタリン酸ナトリウムは、Thorpe's Dictionary of Applied Chemistry, Volume 9,4th Edition, pp. 510-511に記載されている適切な方法のいずれでも調製することができる。Madrell's salt およびKurrol’s saltとして知られている不溶性のメタリン酸ナトリウムの形態が、さらに好適な材料の例である。これらのメタリン酸塩は、水にほんの微量だけ溶解性を示し、したがって、通例、不溶性のメタリン酸塩(IMP)と称される。この中には、微量の水溶性のリン酸塩物質が不純物として、通常2から3重量%(例えば最高で4重量%など)存在する。
【0031】
水溶性のリン酸塩物質(不溶性のメタリン酸塩の場合は水溶性のトリメタリン酸ナトリウムを含むと考えられている)の量は、必要であれば水で洗浄することにより減量または除去することができる。不溶性のアルカリ金属のメタリン酸塩は、典型的には、粒子径がたとえば37ミクロンを超える成分がその物質の1%を超えないような粉末形態のものを採用する。
【0032】
研磨剤は通常、固体またはペースト状の組成物中に重量濃度で約10%から約99%の濃度で存在する。研磨剤は、練り歯磨き中には約10%から約75%の量で、歯磨き粉中には約70%から約99%の量で存在することが好ましい。練り歯磨きにおいては、研磨剤が天然の珪藻である場合、研磨剤は通常約10から30重量%の量で存在する。他の研磨剤は、典型的には約30から75重量%の量で存在する。
【0033】
練り歯磨き中には、液体の媒体は、水および湿潤剤を典型的には調剤品の約10重量%から約80重量%の範囲の量で含んでいてもよい。グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、およびポリプロピレングリコールは、好適な湿潤剤/担体の例である。水、グリセリンおよびソルビトールの液体混合物も好都合である。屈折率が重要な考慮事項となる透明ジェル中には、約2.5〜30重量%の水、0から約70重量%のグリセリン、および約20−80重量%のソルビトールの液体混合物を採用することが好ましい。
【0034】
練り歯磨き、クリーム、およびジェルは、典型的に、天然または合成の増粘剤またはゲル化剤を約0.1から約10重量%、好ましくは約0.5から約5重量%の比率で含有する。好ましい増粘剤は、合成へクトライトである。合成へクトライトは、合成のコロイド状のマグネシウムアルカリ金属ケイ酸錯体粘土であり、例えばラポナイト(例えば、CP、SP2002、D)としてラポート社(Laporte Industries Limited)により市販されている。ラポナイトDは、およその重量で、SiO:58.00%、MgO:25.40%、NaO:3.05%、LiO:0.98%、および多少の水と微量金属である。その真比重は2.53であり、見掛けかさ密度は湿度8%で1.0g/mlである。
【0035】
他の好適な増粘剤として、アイリッシュモス、イオタカラギーナン、トラガカントガム、スターチ、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(例えば、Natrosolとして入手可能)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および例えば微細化Syloid(例えば244)などのコロイダルシリカが挙げられる。
【0036】
可溶化剤として、例えば湿潤剤であるポリオール類、例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、およびヘキシレングリコールなど、セロソルブ類、例えばメチルセロソルブ、およびエチルセロソルブなど、直鎖中に炭素原子を少なくとも約12個含む植物性油脂類およびワックス類、例えばオリーブオイル、ヒマシ油、およびワセリンなど、ならびにエステル類、例えば酢酸アミル、酢酸エチル、および安息香酸ベンジルなど、が含まれていてもよい。
【0037】
口腔用の調剤品は、従来どおり、適切なラベルを貼ったパッケージに入れて販売または別の方法で流通されるべきであることが理解されよう。したがって、口内洗浄液の瓶には、口内洗浄液またはうがい薬であることを実質上記載し、その使用のための指示を記載したラベルを貼り付ける。また、練り歯磨き、クリーム、およびジェルは、通常、練り歯磨き、クリーム、およびジェルであることを実質上記載したラベルを貼り付けた、押出しチューブ(典型的にはアルミニウム、裏打ちした鉛またはプラスチック)、あるいは、他のスクイーズ容器(内容物を計量して出すためのポンプまたは加圧ディスペンサー)に入れる。
【0038】
有機界面活性剤は、予防作用の増進を達成し、口腔内全体にわたる活性剤の徹底した完全な分散の達成を助け、さらに、美容上の期待により沿うインスタントな組成物を提供するために、本発明の組成物中に使われる。この有機界面活性物質は、陰イオン性、非イオン性、または両性(双極イオン性と両性イオン性どちら?)であって、本発明の抗菌性ペプチドを変性させない性質であることが好ましい。さらに、有機界面活性剤として、ペプチドを変性させずに組成物に洗浄および泡立ち特性を与える、洗浄力のある物質を採用することが好ましい。好ましい陰イオン界面活性剤の例として、高級脂肪酸のモノグリセリドモノ硫酸塩類の水溶性塩類、例えば水素添加したココナッツオイル脂肪酸のモノ硫酸化モノグリセリドのナトリウム塩、高級アルキル硫酸塩類、例えばラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールスルホン酸塩類、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、高級アルキルスルホ酢酸塩類、1,2−ヒドロキシプロパンスルホン酸塩類の高級脂肪酸エステル類、および、低級脂肪族アミノカルボン酸化合物類の実質的に飽和の高級脂肪族アシルアミド類、例えばその脂肪酸基、アルキル基またはアシル基などに炭素原子を12から16個有する化合物、が挙げられる。最後に挙げたアミド類の例として、石鹸または類似の高級脂肪酸物質を実質的に含まない、N−ラウロイルサルコシン、および、N−ラウロイル、N−ミリストイル、またはN−パルミトイルサルコシンのナトリウム、カリウム、およびエタノールアミン塩が挙げられる。本発明の口腔用組成物中にこれらのサルコナイト(sarconite) 化合物類を使用することには、特に利点がある。これらの物質は、糖の分解に起因する口腔内の酸の形成の阻害に長期に渡る著しい効果を示すことに加え、酸液溶液中で歯のエナメル質の溶解性を多少減少させる影響を与えるからである。ペプチド類と共に使用するのに適した水溶性の非イオン性界面活性剤の例としては、エチレンオキシドと、反応性であることに加えて疎水性の長鎖(例えば、炭素原子約12から20個の脂肪族鎖)を有している種々の反応性水素含有化合物類との縮合生成物類(この縮合生成物類(「エトキサマー類(ethoxamer)」)は、親水性のポリオキシエチレン部分を含む)、例えばポリ(エチレンオキシド)と脂肪酸類、脂肪アルコール類、脂肪族アミド類、多価アルコール類(例えばソルビタンモノステアリン酸塩)、およびポリプロピレンオキシド(例えばプルロニック剤類)との縮合生成物類が挙げられる。
【0039】
界面活性剤は、典型的には約0.1〜5重量%の量で存在する。注目すべきことには、この界面活性剤は本発明のペプチドの溶解を助ける可能性があり、それによって必要な可溶化をする湿潤剤の量を減少させる可能性がある。
【0040】
本発明の口腔用組成物中には、種々の他の物質を組み入れることができる。他の物質として例えば、美白剤、防腐剤、シリコーン類、クロロフィル化合物類および/またはアンモニア処理した物質(例えば尿素、リン酸二アンモニウム、およびこれらの混合物など)が挙げられる。これらの補助剤は、それらが存在する場合には、所望の性質および特性に実質的に悪影響を及ぼさない量で調剤品中に組み込まれる。
【0041】
いずれの適切な香味物質および甘味物質も使用することができる。好適な風味成分の例として、風味オイル、例えばスペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、ササフラス、クローブ、セージ、ユーカリ、マジョラム、シナモン、レモン、およびオレンジのオイル、ならびにメチルサリチル酸が挙げられる。好適な甘味剤として、ショ糖、乳糖、麦芽糖、ソルビトール、キシリトール、シクラミン酸ナトリウム、ペリラルチン、AMP(アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル)、サッカリンなどが挙げられる。好ましくは、風味剤および甘味剤は、単独または共同で調剤品の約0.1%から5%以上までを占めてよい。
【0042】
本発明の好ましい実施においては、本発明の口腔用組成物(例えば本発明の組成物を含有するうがい薬および歯磨剤など)は、例えば毎日、2日に1回、または3日に1回、または好ましくは1日に1から3回、pHは約4.5から約9、通常約5.5から約8、好ましくは約6から約8で、少なくとも2週間から8週間までの間、またはさらに長く一生涯にわたって、定期的に歯ぐきおよび歯に適用することが好ましい。
【0043】
本発明の組成物は、ロゼンジ(口内錠)またはチューインガムその他の製品に組み入れることができる。本発明の組成物は、例えば、暖かいガムベースにかき混ぜながら入れることにより、またはガムベース(その例証としてジェルトン、ゴムラテックス、ビニライト樹脂などが挙げられる)の外側の表面を、望ましくは従来の可塑剤または軟化剤、砂糖またはその他の甘味料、または例えばグルコース、ソルビトールなどと共に覆うことにより組み入れることができる。
【0044】
別の実施態様では、本発明の組成物は、防腐剤として作用するように、食品中に、0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、最も好ましくは1〜5重量%、特に2重量%で処方される。
【0045】
本発明は、二価陽イオンとペプチドとを含む製薬組成物を含有し、製薬品として許容できる担体とともに記載される組成物を提供する。このような組成物は、歯科用口腔内組成物、局所性または全身性に適用するための治療用抗感染組成物からなる群から選択することができる。歯科用組成物または治療用組成物は、ゲル、液体、固体、粉体、クリーム、またはロゼンジ(口内錠)の形態とすることができる。また、治療用組成物は錠剤またはカプセルの形態であってもよい。
【0046】
本発明は、齲触または歯周病の治療または予防方法であって、そのような処置の必要のある被験者の歯または歯ぐきに本発明の組成物を投与する工程を含む方法を提供する。この組成物を局所的投与することが好ましい。
【0047】
本明細書は特にヒトでの適用に言及しているが、本発明は獣医学的目的にも有用であることが明確に理解されるであろう。したがって、いずれの観点においても、本発明は、例えばウシ、ヒツジ、馬類および家禽などの家畜類、例えば犬類および猫類などのコンパニオン・アニマル類、および動物園動物類に有用である。
【0048】
本発明の本質がより明確に理解されるように、その好ましい態様を以下の限定されない実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0049】
〔材料と方法〕
〔カッパーシンの調製〕
塩酸カゼイン(Caseinate-HCl)(Bonlac Foods, Melbourne Australia)を、定常攪拌下、50℃、pH8.0で徐々に脱イオン水に添加することにより溶解して、最終的に21.5g/Lの濃度とした。カゼイン酸塩が溶解すると直ちに温度を37℃に低下させ、カゼインの沈殿を避けるため、1MHClを徐々に添加することによりpHを6.3に調整した。加水分解を開始させるために、レンネット(90% Chymosin EC 3.4. 23.4, 145 IMCU/ml, Single Strength, Chr. Hanson)を添加して最終的に1.2IMCU/gカゼインの濃度とし、この溶液を37℃で1時間攪拌した。この溶液のpHを、1MHClおよび1MNaOHの添加により6.3±0.2に保持した.トリクロロ酢酸を添加して最終的に4%の濃度とすることにより加水分解を停止させ、沈殿したタンパク質を遠心分離によりペレット化した(5000g、15分、4℃)。カゼイノマクロペプチド(CMP)を含有する上清を、3000Daカットオフ膜(S10Y3, Amicon)を用いて透析濾過することにより濃縮した。その後、この物質を凍結乾燥した。この調剤品を、文献(Malkoskiら、2001年)の記載に従って、C18カラムを使用し、90%アセトニトリル/0.1体積%TFAで溶出する逆相HPLCにより、グリコシル化形態のタンパク質類、非グリコシル化κ−カゼイン−A(106-169)、および非グリコシル化κ−カゼイン−B(106-169)にさらに分画した。溶出液を主波長215nmでモニターした。各分画の同定は、線形マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI MS; PerSeptive Biosystems, MA, USA)、およびN末端配列分析により、文献(Malkoski等、2001年)の記載に従って行った。
【0050】
〔固相ペプチド合成および精製〕
Ser(P)149κ−カゼイン−A(138-158)およびSer(P)149κ−カゼイン−B(138-158)に対応したペプチドを、文献(Malkoski等、2001年)の記載に従って、標準的な固相ペプチド合成プロトコルにより合成した。ペプチドを、C18カラムを用いた逆相HPLCにより精製し、質量分析により文献(Malkoski等、2001年)の記載に従って同定した。
【0051】
〔抗浮遊細菌アッセイ〕
口腔内の日和見病原体であるStreptococcus mutans Ingbritt株を本研究の指標菌として使用した。抗菌アッセイは、文献(Malkoski等、2001年)の記載に従い、96ウェルプレートで実施し、細菌の増殖を40時間にわたって継続的にモニターした。簡潔に説明すると、細菌を、酵母抽出物(5.0g/l)および100mMリン酸カリウムを含有するトッドヘヴィット培地(Todd Hewitt Broth)(36.4g/l)中、pH6.3または7.2で培養した。この細菌の接種材料は、生育培地中の指数増殖細胞を希釈して、生存細胞を2.7×10個/mlとすることにより準備した。この細菌増殖アッセイでは、試験ウェル中にκ−カゼイン−A(106-169)または κ−カゼイン−B(106-169)を20μMから120μMまでの間の濃度で含有させた。これらのペプチドは、カッパーシン:二価金属イオンが1:1から1:4の比率となる範囲の亜鉛またはカルシウムイオンとの組合せでも試験した。合成Ser(P)149κ−カゼイン−A(138-158)ペプチドおよび合成Ser(P)149κ−カゼイン−B(138-158)ペプチドもこのアッセイで試験した。これらのプレートを37℃でインキュベートし、iEMSマイクロプレートリーダー(Labsystems, OY Research Technologies Division)を用いて620nmでの吸光度(OD)を測定することにより増殖を測定した。
【0052】
〔S. mutansのバイオフィルム増殖〕
一定膜厚フィルム培養槽(constant depth film fermenter)(CDFF: Wimmpenny, Cardiff University, UK)を、バイオフィルムの形成に用いた。このCDFFは、それぞれ直径4.5mmのプラグ5個が入っているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)槽15個を含み、3rpmの一定速度で回転するステンレススチールのディスク1個を有する。このプラグを、スチールディスクの表面から0.4mm下方に設置した。一定のバイオフィルム膜厚0.4mmを維持するために、内蔵スクレーパーを使用した。このスクレーパーはステンレススチールディスクがスクレーパーの下で回転するように取り付けられ、培養槽に対して押し下げることができるようにばね仕掛けで装着されている。このCDFF内をCO5%のNガスを連続的に流すことにより嫌気性雰囲気に保った。このCDFFをCOインキュベーター内に収容し、そのCOインキュベーターを37℃の定常的な培養温度を保つのに用いた。Todd Hewitt(酵母抽出物(8g/l)の培養液(THYE))中のS. mutans Ingbritt株の指数増殖期のバッチ培養物(35.4g/l)を使用して、流速30ml/時で5時間CDFFに植菌した。生育培地である、ショ糖0.1%(w/v)を含有するTHYEを、その後CDFFに40ml/時の一定の流速で供給した。
【0053】
溶液による処理の前後の指定時刻に、プラグをCDFFから取り除き、浮遊細菌を除くために洗浄し、細菌の数を決定するための生菌数計測を行った。種々の溶液の細胞の生存度への影響を評価するために、CDFFへの生育培地の添加を10分間一時的に停止し、流速30ml/時のその溶液で置換した。10分後に生育培地の添加を再開した。CDFFで試験した溶液を以下に挙げる。2mMトリスHCl(pH6.0)溶液、カッパーシン調剤品(上記)10mg/mlの2mMトリスHCl(pH6.0)溶液、カッパーシン調剤品(上記)10mg/mlおよびZnCl20mMの2mMトリスHCl(pH6.0)溶液、ZnCl20mMの2mMトリスHCl(pH6.0)溶液、ZnCl2mMの2mMトリスHCl(pH6.0)溶液、ならびに、ジグルコン酸クロルヘキシジンの0.05%脱イオン水溶液。
【0054】
〔二価金属陽イオンの結合アッセイ〕
135μMから540μMまでの間の指定した濃度のCaClまたはZnClを、攪拌下、135μMの濃度の精製したκ−カゼイン−A(106-169)水溶液と共にpH7.3、37℃で1時間インキュベートした。試料をその後、3000Daカットオフ濾過膜(YM3 Cellulose, Millipore Bedford Ma, USA)を通して遠心分離(1,000g、10分)して、結合していない二価陽イオンを、結合した陽イオンを有するペプチドから分離した。その後、濾液およびもとの試料中のカルシウムイオンまたは亜鉛イオンの量を、422.7nmおよび213.9nmの吸光モードに設定した原子吸光分光計(Model 373 AAS, Perkin-Elmer)によりそれぞれ測定した。試料中の亜鉛またはカルシウム、および遊離の(結合していない)亜鉛またはカルシウムの総量は、標準曲線を参照して算出した。κ−カゼイン−A(106-169)への結合量は、スキャッチャード分析により求めた。
【0055】
〔構造決定〕
合成Ser(P)149κ−カゼイン−A(138-158)の一次元H−NMRスペクトルは、600MHzで作動するVarian Unity Inova spectrometer (Palo Alto, Ca. , USA)で得た。一連のスペクトルは、一定のpH6.5で、トリフルオロエタノール(TFE)の濃度が0、5、15、および30体積%、ならびにもとのペプチド濃度が3mMの条件で記録した。pHは1MHClを滴加することにより調整した。スペクトルは、TFE30%およびCaCl3mMの濃度で、最終的なペプチド濃度が2.3mMとなる条件で記録した。スペクトルは全て、プローブ温度5℃で記録した。溶媒ピークの抑制は、WET−1D手順を用いて行った(Smallcombeら(1995年))。
【0056】
〔臨床試験〕
被験者10例を二重盲検法の交差研究のために募集した。被験者は、メルボルン大学の歯科学部に入学した大学生から募集した。このグループは、平均年齢21歳の、女性6例および男性4例からなる。被験者は臨床試験開始前に診察され、いずれも良好な健康状態であり、回復していない齲触病変がなく、中等度から重度の歯肉炎の兆候がない歯群を持っていると判断された。これらの被験者は、臨床試験の開始前まで、抗菌性の薬剤を含有するいかなる歯磨剤も使用していなかった。メルボルン大学のヒト治験倫理委員会の承認を得た。
【0057】
臨床試験の開始時に、被験者に、他の態様の口腔衛生習慣を一切中止して、割り当てられた口内洗浄溶液の使用だけに依存するように指示した。本研究では、4種類の溶液を口内洗浄溶液として試験した。溶液Aは脱イオン水であり、溶液Bはカッパーシン調剤品の1%(w/v)脱イオン水溶液であり、溶液CはZnCl20mMの脱イオン水溶液であり、溶液Dはカッパーシン調剤品1%(w/v)およびZnCl20mMの脱イオン水溶液である。いずれの溶液のpHも、KOHを使用して6.9±0.1に調整した。被験者に、毎日3回洗浄するように指示した。すなわち、朝、昼、および晩に15mlの溶液で1分間洗浄するよう指示した。各試験のセッションは、4日間であり、試験の最終日に臨床評価を行った。SilnessおよびLoeのプラークインデックス(PI)を歯垢の評価のために用いた(SilnessおよびLoe(1964年))。各歯の表面(遠心面、頬側面、近心面、および舌側面)の歯肉部に、0−3のスコアを付与した。第三大臼歯を除き全ての歯に、試験の終結時にスコアを付与した。その後の各試験のセッションにおいて被験者らは、それぞれの通常の口腔衛生習慣を少なくとも7日間、次の試験前に取り戻した。データは、ノンパラメトリックなウィルコクソンの順位検定により分析した。
【0058】
〔結果〕
〔κ−カゼイン(106-169)の遺伝的変異体の抗菌活性〕
カッパーシン(κ−カゼイン(106-169))の主要な遺伝的変異体2種の相対的な抗菌活性の差異が、既に同定されているκ−カゼイン−A(106-169)の活性部位中のアミノ酸配列の差異によるものであるか否かを調べるために、残基138−158の、Ser(P)149κ−カゼイン−B(138-158)を合成し、その活性を試験した。合成Ser(P)149κ−カゼイン−B(138-158)の純度を逆相HPLCにより測定し、単一ピークを得た(図1)。このピークをマススペクトルにより分析すると、合成ペプチドSer(P)149κ−カゼイン−B(138-158)の計算質量2235.4に対応する観測質量(m/z)2233.9Daで単一のピークが観測された(図2)。マイクロプレート増殖アッセイにおいてS. mutansに対して発育pH6.28で試験した合成ペプチドSer(P)149κ−カゼイン−B(138-158)の、算出した最小阻害濃度(MIC)は、44μMであった。
【0059】
〔カッパーシンの二価金属陽イオンとの相互作用〕
合成活性部位ペプチド[Ser(P)149κ−カゼイン−A(138-158)およびSer(P)149κ−カゼイン−B(138-158)]も、精製した全長ぺプチドからなる遺伝的変異体類も、発育pH7.20、300μMまでの濃度で試験した場合にはS. mutansの増殖を全く阻害しなかった。pH7.2、当量の濃度の抗菌性二価陽イオンZn2+の存在下で、κ−カゼイン(106-169)の2種の遺伝的変異体の細菌増殖阻害活性を試験すると、相乗効果が観測された。(図3)。亜鉛イオンのみのMICは200μMであり、このことにより、カッパーシン:亜鉛が1:1を超える比で試験したときには、カッパーシンと亜鉛の相乗効果が打ち消された。興味深いことに、亜鉛イオンをカルシウムイオンに置き換えると、1:1の比で最高300μMまでの濃度においてκ−カゼイン−B(106-169)およびカルシウムでのS. mutansの増殖に対する影響が全く検出できなかったにもかかわらず、κ−カゼイン−A(106-169)およびカルシウムイオンでは抗菌性効果が検出可能であった(表2)。
【0060】
κ−カゼイン−A(106-169)の生理活性に対するカルシウムの最適な比は、種々の比をマイクロプレート増殖アッセイにおいてS. mutansに対して試すことにより決定した。2:1の比が1:1の比より効果的であることが明らかとなった一方、カルシウム:カゼイン−A(106-169)比を4:1にまで増加させても活性を高めなかった(図4)。
【0061】
κ−カゼイン−A(106-169)を用いた二価陽イオンZn2+の結合アッセイのスキャッチャード分析により、このペプチドには亜鉛のための2個の結合部位が存在することが実証された(図5)。カルシウムの結合についても同様の結果を得た。
【0062】
【表2】

【0063】
〔バイオフィルムとして培養されたStreptococcus mutansの生存度に対するカッパーシンおよび亜鉛の影響〕
CDFFバイオフィルム培養槽へのインキュベーション後、S. mutansは1プラグあたり生存細胞5−6×10個を含む安定なバイオフィルムを急速に形成した。2mMトリスHClpH6.0溶液を5ml添加しても、このバイオフィルム中のS. mutans生菌数計測にはほとんど影響が無かった。対照的に、カッパーシン調剤品1%(w/v)の2mMトリスHClpH6.0溶液を5ml添加すると、急速にS. mutans生存細胞数が低減する結果となり、添加の2時間後には生菌数の99.5%の低減が見られた。カッパーシン添加後のS. mutansバイオフィルムの回復は遅く、添加の3日後に細菌数が前処理のレベルのまだ13%未満であった。CDFF内のS. mutansの安定なバイオフィルムにZnCl2mMの2mMトリスHClpH6.0溶液を5ml添加すると、生菌数が約60%減少した。生存細胞の数は、この処理からは急速に回復した。バイオフィルムにZnCl20mMの溶液を同様に添加すると、生存細胞数が92%に減少する結果となった。再び、生存細胞数の急速な回復が観測された。S. mutansバイオフィルムにカッパーシン:亜鉛(カッパーシン1%(w.v)、亜鉛20mM)を添加すると、2時間で96%の減少という、生存細胞数の急速な減少がもたらされた。しかし、カッパーシン:亜鉛処理の3日後には、バイオフィルム中の生存S. mutansの数は、前処理レベルの0.5%未満にまで減少した。さらに、バイオフィルム中のS. mutansの生存度は、それに続く15日間にわたってカッパーシン:亜鉛処理から回復しなかった。カッパーシンおよびカッパーシン:亜鉛の比較有効性を試験するために、ジグルコン酸クロルヘキシジン0.05%(w/v)の溶液をCDFFバイオフィルム培養槽のS. mutansに対して試験した。その結果、S. mutans細胞生存度は48%に減少した。また、処理の3.5時間後には前処理の生存度と有意な差異がないという、細胞生存度の急速な回復が見られた。
【0064】
〔構造解析〕
90%HO/10%DO溶液中で記録された合成Ser(P)149κ−カゼイン−A(138-158)のH−NMRスペクトルのアミド領域は、約δ8.15からδ8.75に領域が0.6ppm領域が拡大しており、このアミドの共鳴が十分に分散されていないことを示している。これは「ランダムコイル」コンフォーメーションをとっているペプチドの特徴である。TFEを5体積%添加すると、一部の共鳴のケミカルシフトが変化し、一般的なピークのブロード化がみられた。ピークのブロード化は、水性溶液とTFEミセルからなるより無極性の環境との2つの環境下でのペプチド分子の存在状態の化学交換の結果である。ペプチド分子は、2つの環境でのアミドの化学シフトの差異に比例した速度でその環境を交換する。より多くのTFEを試料に添加するほど、ペプチドは無極性なTFE環境に選択的に親和し、水性相との交換速度が遅くなる。これらの変化は、アミドの化学シフトのさらなる変化およびNMR共鳴の一般的なシャープ化を伴う。しかし、化学シフトの幅はまだ相対的に小さく、約δ8.15からδ8.75の0.6ppmであり、ペプチドがまだ「ランダムコイル」コンフォーメーションをとっていることを示唆している。モル過剰量のカルシウムイオンを添加すると、アミド共鳴が約δ7.75からδ9.0の1.25ppmの幅、すなわちペプチド固有のコンフォーメーションに特徴的な幅を超えて拡大した。
【0065】
〔臨床試験〕
市販のカッパーシンを富化したCMP製剤を、被験者10例の二重盲検法、交差、小スケールの抗歯垢臨床試験に使用した。この製剤のHPLC分析は、10.0mg/ml溶液中には非グリコシル化κ−カゼイン−A(106-169)4.4mg/l、非グリコシル化κ−カゼイン−B(106-169)1.9mg/l、およびグリコシル化κ−カゼイン(106-169)3.0mg/lが存在することを示した。グリコシル化κ−カゼイン(106-169)の理論平均分子量が7500であることに基づくと、製剤中にはいずれかの形態のκ−カゼイン(106-169)が約1.33mMの濃度で存在しており、その結果Zn:CMP比は約15:1である。
【0066】
口腔衛生の唯一の形態として水(対照)の口内洗浄液を使用して4日間経過した後では、SilnessおよびLoeの全口腔平均プラークインデックススコアは178.9±33.5であり、臼歯のみを考慮した場合の平均プラークインデックススコアは85.9±14.4であった。対照である水と比較して、カッパーシン口内洗浄溶液は臼歯の平均プラークインデックススコアの7%を低減する結果となり、ZnCl口内洗浄溶液は9%の低減をもたらし、一方亜鉛:カッパーシン処置は21%の低減をもたらした(図6)。ZnCl口内洗浄溶液は、臼歯のプラークインデックススコアを考慮してウィルコクソンの順位検定により判定したところ、水での処置と比較して有意に(P<0.05)歯垢の堆積を低減した。カッパーシン口内洗浄溶液には、対照である水との有意な差異が無かった。亜鉛:カッパーシン口内洗浄溶液は、他のいずれの処置と比較しても有意に(P<0.05)歯垢の堆積を低減した。
【0067】
臼歯のプラークスコアの分布も、使用した口内洗浄液のタイプで変化した。水の口内洗浄液では2またはそれ以上のスコアを有する歯表面が78%であったのに対し、亜鉛:カッパーシン口内洗浄溶液では、2またはそれ以上のプラークインデックススコアを有する表面が47%だけであった(図7)。
【0068】
〔考察〕
非グリコシル化、リン酸化形態のカゼイノマクロペプチド[κ−カゼイン(106-169)](カッパーシン)は、グラム陽性口腔細菌に対してもグラム陰性口腔細菌に対しても、酸性pHで抗菌活性を有することが明らかとなっていた。既知の6種の遺伝的変異体のうち、κ−カゼイン−A(106-169)およびκ−カゼイン−B(106-169)が圧倒的に最も豊富な形態である。本発明者らは以前に、κ−カゼイン−A(106-169)がκ−カゼイン−B(106-169)より高い抗菌活性を有していること、κ−カゼイン−A(106-169)の抗菌活性を残基138−158に限局することができること、およびSer149のリン酸化が活性に不可欠であることを明らかにした(Malkoskiら、国際公開第99/26971号公報(2001年))。κ−カゼイン−B(106-169)の低い抗菌活性が残基138−158領域内の親水性アミノ酸から疎水性アミノ酸への置換(変異体AのAsp148から変異体BのAla148)に起因するかどうかを突き止めるため、合成ペプチドSer(P)149κ−カゼイン−B(138-158)の活性を測定した。S. mutansに対するpH6.28での合成Ser(P)149κ−カゼイン−B(138-158)の最小阻害濃度(MIC)は、44μMであった。これを、同一の条件下の合成Ser(P)149κ−カゼイン−A(138-158)のMICが26μMであったことを示す以前の研究と比較した。その結果、活性部位のアミノ酸配列の差異は、κ−カゼイン(106-169)遺伝的変異体AとBとのS. mutansに対するpH6.28での活性の差異の全部とはいえないまでも大部分を説明しそうである。
【0069】
中性pH(7.20)では、非グリコシル化リン酸化κ−カゼイン(106-169)のいずれの遺伝的変異体も指標株S. mutansに対する抗菌活性が無かった(表2)。κ−カゼイン−A(106-169)に二価金属陽イオンである亜鉛を1:1の比で加えると、S. mutansに対する抗菌効果が161μMのMICで生じた。このMICは、亜鉛だけで観察される値より低い(表2、図3)。亜鉛とκ−カゼイン−B(106-169)との1:1の比の組合せでは、亜鉛だけの値より低いMICは得られなかったが、この組合せはサブ−MIC濃度で、同一濃度の亜鉛だけまたはκ−カゼイン−B(106-169)だけでは検出されなかったある程度の阻害活性を有していた(図3)。亜鉛と合成ペプチドSer(P)149κ−カゼイン−A(138-158)との1:1の比の組合せは、亜鉛:κ−カゼイン−A(106-169)で観察された値と同等のMICを有し、二価金属イオンがこのペプチド領域と相互作用する可能性を示唆した。中性でのこの増強された活性が、亜鉛の抗菌活性に起因するかどうか、またはペプチドのコンフォーメーションの変化に起因するかどうかを突き止めるために、抗菌活性が全くない二価金属陽イオンであるカルシウムをCMP由来のペプチドと共に試験した。κ−カゼイン−A(106-169)にカルシウムを1:1の比で加えると、S. mutansに対する抗菌効果が248μMのMICで生じた(表2)。カルシウムだけでは、最高で1mMまでの濃度でS. mutansの増殖に全く影響を与えない。カルシウムとκ−カゼイン−B(106-169)の組合せによっては全く抗菌効果が検出できなかった(表2)。このことは、二価金属陽イオンの存在が、中性pHでのκ−カゼイン−A(106-169)の活性の増強をおそらくペプチドの構造の改変により助けていることを示唆している。二価金属陽イオンのκ−カゼイン−A(106-169)に対する最も有効な比が2:1であることをカルシウムを用いて割り出した(図4)。この結果は、κ−カゼイン−A(106-169)が選択的に二価金属陽イオン2個と結合することを示すスキャッチャード分析の結果と整合性がとれている(カルシウムまたは亜鉛いずれも、図5)。
【0070】
in vivoでは、口腔細菌は、硬組織(歯)に付着したバイオフィルムである歯垢として存在する。S. mutansを一定膜厚フィルム培養槽中、より厳密に口腔内の条件をシミュレートするため遊離のショ糖を含有する生育培地で、バイオフィルムとして増殖した。薬剤の抗菌活性を正確に決定するためには、バイオフィルムモデル(Wilson(1996年))で試験すべきである。この一定膜厚フィルム培養槽は、多数のバイオフィルムを再現可能な方法で作り出す精巧な手段を提供する。このバイオフィルムは抗菌剤の有効性の定量のために使用することができ、これにより抗歯垢活性の予測に役立つ結果が得られる(Hope and Wilson(2003年)、Shuら(2003年)、Wilson(1996年)、Wimpennyら(1989年))。このS. mutansバイオフィルムにカッパーシンまたはカッパーシン:亜鉛溶液を添加すると、生存細胞が劇的に減少した。興味深いことに、細菌細胞数の減少は長期間持続し、カッパーシンが浮遊細菌よりバイオフィルム細菌に対してより効果的に作用する可能性が示唆された。比較では、口内洗浄液への抗歯垢添加剤と認識されているクロルヘキシジンの0.05%溶液は、S. mutansの生存度に対してカッパーシンより低い効果、およびより短い持続効果を示した。
【0071】
カッパーシンは、それが負に帯電したアミノ酸を高い比率で含んでいるという点で特異な抗菌性ペプチドである。κ−カゼイン−A(106-169)の等電点(Pi)は3.9であり、5から8のpH範囲にわたって分子の電荷の変化がほとんどなく、約−7である。
【0072】
合成ペプチドκ−カゼイン−A(138-158)の構造解析により、このペプチドが例えば細菌細胞膜などの非極性な相と相互作用すること、および過剰のカルシウムイオンの存在下でこのペプチドがその環境下で特異的なコンフォーメーションをとることが示唆された。これらの結論は、カルシウム非存在下でのグリコシル化CMPおよび非グリコシル化CMPの構造を決定し、その構造が主としてランダムで柔軟であることを見出したSmithらの研究(2002年)とも、CMPのこの領域がTFEの存在下で両親媒性のα−へリックスを形成する傾向があることを見いだしたPlowmanの研究(1997年)とも、整合性がとれている。
【0073】
カゼインから作られる市販のカッパーシン調剤品を、抗歯垢臨床試験に使用した。この調剤品では、非グリコシル化形態のCMP(カッパーシン)が乾燥重量の63%を占めていて、このうち70%が遺伝的変異体Aであり30%が遺伝的変異体Bである。カッパーシン−亜鉛配合口内洗浄液は、唯一の口腔衛生手段として用いた場合、カッパーシンだけまたは亜鉛だけを含む口内洗浄液よりも歯肉縁上の歯垢の抑制に有意に有効であり、相乗効果を示した。クエン酸亜鉛は、二重盲検交差試験で被験者の歯垢の堆積を5−8%有意に低減することが、Tureskyのプラークインデックスを用いて以前に明らかとなっていた(Addyら、1980年)。この研究では、塩化亜鉛口内洗浄液でも同様の結果が得られ、全口腔平均プラークインデックススコアおよび臼歯の平均プラークインデックススコアがそれぞれ6%および9%減少した。Giertsenら(1988年)は、塩化亜鉛を口内洗浄液として使用すると、対照である水と比較して歯垢の無い歯表面を9%有意に増加させることをSilnessおよびLoeのプラークインデックスを用いて明らかにした。カッパーシン口内洗浄液は水と比較して臼歯の歯肉縁上の歯垢を7%低減したが、この歯垢の低減は統計的に対照と異ならなかった。この研究では、SilnessおよびLoeのプラークインデックスは、歯の表面の全体にわたる歯垢の分布の変化より容易に観察できる、特に歯肉の縁に沿った歯垢の厚さの変化に用いた。その結果、試験継続期間が短く(5日)被験者の数が少ない理由で、このSilnessおよびLoeのプラークインデックスが最も適切なプラーク評価系であるとみなされた。また、無染色のプラークスコアが染色したスコアより、歯肉炎、乾燥歯垢重量および湿潤歯垢重量と大幅に高い相関があることも明らかになっていた(LoescheおよびGreen、1972年)。
【0074】
亜鉛および錫の塩が抗菌活性および比較的高い安全プロファイルを有することはかなり以前から認識されてきた(Moranら、2000年)。亜鉛は、活性チオール基を含む酵素との相互作用をとおして膜輸送および代謝過程(解糖を含む)を阻害することによりその抗菌活性を及ぼすと考えられてきた(CumminsおよびCreeth(1992年)、OppermanおよびRolla(1980年)、Oppermanら(1980年))。歯垢細菌中への亜鉛の吸着は、最初に細胞表面タンパク質との静電的な相互作用、次にそれに続いて起こる細胞内への輸送が伴う。歯垢阻害効果は、洗浄後にイオン類が歯垢中および口腔内に保持されることによる、歯垢微生物に対する長時間作用型の静菌性効果であると考えられている(Giertsenら、1988年)。亜鉛塩類は、練り歯磨きおよび口内洗浄液に、抗菌剤であるトリクロサン、クロルヘキシジン、およびサンギナリンとの組合せで使用されてきた。これらは相乗的な抗菌作用を有することが明らかになっている(Giertsenら(1988年)、Moranら(2000年))。
【0075】
カッパーシン−亜鉛を含有する口内洗浄液での処置は、臼歯のプラークインデックススコアの21%の減少をもたらした(図6)。これらの結果は、クロルヘキシジン口内洗浄液と同程度である。クロルヘキシジンは、これまでに試験された最も有効な抗歯垢および抗歯肉炎化合物であると考えられている。しかし、歯および修復物の外因性の着色、味覚異常、ならびに舌の茶色の着色を含むクロルヘキシジンの使用の副作用が、長期間の使用を制限している(Elderidgeら、1998年)。
【0076】
歯肉縁上の歯垢の長期間にわたる堆積は歯肉炎の進行および歯周炎の発生に関連すること、ならびに歯肉縁上の歯垢の抑制だけで歯肉炎を消散させるのに十分であることは一般に広く認められている(CorbetおよびDavies、1993年)。本研究の結果は、天然のペプチドであるカッパーシンと亜鉛イオンの組合せが、歯肉縁上の歯垢の抑制に有効な口内洗浄液を生み出す可能性を示している。
【0077】
〔本発明の組成物を含む処方案〕
〔処方1〕
成分 重量%
第二リン酸カルシウム二水和物 50.0
グリセロール 20.0
カルボキシルメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.5
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
デキストラナーゼ 0.01
本発明の組成物 1.0
水 バランス
【0078】
〔処方2〕
成分 重量%
第二リン酸カルシウム二水和物 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 10.0
カルボキシルメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.5
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
デキストラナーゼ 0.01
本発明の組成物 2.0
水 バランス
【0079】
〔処方3〕
成分 重量%
第二リン酸カルシウム二水和物 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 10.0
カルボキシルメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウロイル酸ジエタノールアミド 1.0
スクロースモノラウレート 2.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
デキストラナーゼ 0.01
本発明の組成物 5.0
水 バランス
【0080】
〔処方4〕
成分 重量%
ソルビトール 10,0
アイリッシュモス 1.0
水酸化ナトリウム(50%) 1.0
Gantrez 19.0
水(脱イオン化) 2.69
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.76
サッカリンナトリウム 0.3
ピロリン酸塩 2.0
水酸化アルミニウム 48.0
風味オイル 0.95
本発明の組成物 1.0
水 バランス
【0081】
〔処方5〕
成分 重量%
ポリアクリル酸ナトリウム 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 20.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
エタノール 3.0
本発明の組成物 2.0
リノール酸 0.05
水 バランス
【0082】
〔うがい薬の処方案〕
〔処方1〕
成分 重量%
エタノール 20.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
ラウロイル酸ジエタノールアミド 0.3
本発明の組成物 2.0
水 バランス
【0083】
〔処方2〕
成分 重量%
Gantrez S-97 2.5
グリセリン 10.0
風味オイル 0.4
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.05
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
ラウロイル酸ジエタノールアミド 0.2
本発明の組成物 2.0
水 バランス
【0084】
〔ロゼンジの処方案〕
成分 重量%
糖質 75〜80
コーンシロップ 1〜20
風味オイル 1〜2
NaF 0.01〜0.05
本発明の組成物 3.0
ステアリン酸マグネシウム 1〜5
水 バランス
【0085】
〔歯肉マッサージクリームの処方案〕
成分 重量%
白色ワセリン 8.0
プロピレングリコール 4.0
ステアリルアルコール 8.0
ポリエチレングリコール4000 25.0
ポリエチレングリコール400 37.0
モノステアリン酸スクロース 0.5
グルコン酸クロルヘキシジン 0.1
本発明の組成物 3.0
水 バランス
【0086】
〔チューインガムの処方案〕
成分 重量%
ガムベース 30.0
炭酸カルシウム 2.0
結晶ソルビトール 53.0
グリセリン 0.5
風味オイル 0.1
本発明の組成物 2.0
水 バランス
【0087】
本明細書に記載の全ての刊行物を、参照により本明細書に取り込む。本明細書に含まれる文書の議論、言動、材料、装置、論文または同種のもののいずれも、単に本発明の解釈を提供する目的だけのものである。いずれかのまたは全てのこれらの事柄が、本発明の各特許請求項の優先日前に豪州またはほかの国に存在した、本発明に関連する従来技術基盤または当技術分野の一般的知識を形成すると解されるべきではない。
【0088】
当業者により、大まかに記述した本発明の精神と適用範囲から逸脱することなく多くの変形および/または修正が、具体的な実施例に示したように本発明に加えられるであろうことが理解されるであろう。したがって、本明細書の実施例は、いすれの観点においても例証となるものであり限定的なものではない。
【0089】
(参考文献)


【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、精製したSer(P)149κ−カゼイン−B(138-158)のクロマトグラムを示す。精製したペプチド画分の試料を、RP−HPLC分析カラムにアプライした。精製したペプチドを、0−100%緩衝溶液B(30分)の直線的濃度勾配法でこのカラムから溶出した。流速は1ml/分とした。緩衝溶液Aは、0.1%酢酸水;pH5.5(TEA)であり、緩衝溶液Bは、60%アセトニトリル含有0.1%酢酸水;pH5.5(TEA)であった。
【図2】図2は、RP−HPLCの画分Bの、MALDI−TOF MSを使ったマススペクトル分析である。主ピークは、合成ペプチドSer(P)149κ−カゼイン−B(138-158)に対応する2233.9DaのMWで観測された。スペクトルは、リニア・ネガティブモード、加速電圧20kV、グリッド電圧93%、およびパルス遅延時間100ナノ秒で得た。
【図3】図3は、κ−カゼイン−A(106-169)[▲]、κ−カゼイン−B(106-169)[◇]、ZnCl[×]、Zn:κ−カゼイン−B(106-169)(1:1比)[■]、およびZn:κ−カゼイン−A(106-169)(1:1比)[◆]の、THYE中、pH7.2でのStreptococcus mutansの増殖に対する効果を示す。
【図4】図4は、カルシウムイオン濃度が、pH7.2でS. mutansに対して試験された250μMκ−カゼイン−A(106-169)の増殖阻害活性に及ぼす影響を示す。CaCl対照[◆];Ca:κ−カゼイン−A(106-169)[▲]。κ−カゼイン−A(106-169)は、このアッセイに添加する前に、1:0から1:4までの比で1時間、CaClでインキュベートした。
【図5】図5は、亜鉛のκ−カゼイン−A(106-169)への結合のスキャッチャード分析を示す。ZnClを精製したκ−カゼイン−A(106-169)と共にpH7.3、37℃の水中で1時間インキュベートした。その後、試料を遠心分離機で分子量3000のカットオフ濾過膜を通して分離した。亜鉛イオンの量は原子吸光分析により決定した。
【図6】図6は、口腔衛生の唯一の形態として口内洗浄液に使用した場合に、カッパーシン(10mg/ml)、ZnCl(20mM)、およびカッパーシン:ZnClが、臼歯の平均プラークインデックススコアに与える影響を示す。a=対照となる水とは有意に異なる。b=他のいずれの処置とも有意に異なる。これらはウィルコクソンの順位検定を用いて決定した。
【図7】図7は、臼歯のプラークインデックススコアの分布における口内洗浄液の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二価陽イオンおよびペプチドを含む抗菌性組成物であって、前記ペプチドが、非グリコシル化形態の約100個未満のアミノ酸であり、下記配列:
【化1】

およびこれらの配列の保存的置換からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、組成物。
【請求項2】
前記ペプチドが、約70個未満のアミノ酸である、請求項1に記載の抗菌性組成物。
【請求項3】
前記ペプチドが、下記配列:
【化2】

からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗菌性組成物。
【請求項4】
前記ペプチドが、下記配列:
【化3】

およびこれらの配列の保存的置換からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗菌性組成物。
【請求項5】
前記二価陽イオンが、Zn2+、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Sn2+、Mn2+、SnFおよびCuFを含む群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗菌性組成物。
【請求項6】
前記二価陽イオンがCa2+またはZn2+である、請求項5に記載の抗菌性組成物。
【請求項7】
前記組成物における、前記二価陽イオンの前記ペプチドに対するモル比が0.5から15.0:1.0の範囲である、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗菌性組成物。
【請求項8】
前記二価陽イオンの前記ペプチドに対する前記モル比が0.5:1.0から4.0:1.0の範囲である、請求項7に記載の抗菌性組成物。
【請求項9】
前記二価陽イオンの前記ペプチドに対する前記モル比が1.0:1.0から4.0:1.0の範囲である、請求項8に記載の抗菌性組成物。
【請求項10】
前記二価陽イオンの前記ペプチドに対する前記モル比が1.0:1.0から2.0:1.0の範囲である、請求項9に記載の抗菌性組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物および製薬上許容できる担体を含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を被験者に投与する工程を含む、被験者の齲触または歯周病の治療または予防方法。
【請求項13】
前記組成物を被験者の歯または歯ぐきに投与する、請求項12に記載の齲触または歯周病の治療または予防方法。
【請求項14】
前記組成物を局所的投与により投与する、請求項13に記載の齲触または歯周病の治療または予防方法。
【請求項15】
被験者の齲触または歯周病を治療または予防するための医薬の調製における、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−519622(P2007−519622A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544171(P2006−544171)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001764
【国際公開番号】WO2005/058344
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(500240313)ザ・ユニヴァーシティ・オブ・メルボーン (2)
【Fターム(参考)】