説明

拡張カルマンフィルタによる内燃エンジンのシリンダ内の空燃比の推定方法

【課題】特定のための段階を必要とせず、かつエンジンのすべての動作点についてロバスト性のより高い空燃比推定モデルを実現する、排気プロセスのより詳細なモデル化を可能にする。
【解決手段】本発明は、空燃比を測定する検出器を含む排気回路を有する内燃エンジンの各シリンダ内の空燃比を推定する方法に関する。カルマンフィルタに基づく推定器が、複数のシリンダからの気体の排出と、それらの気体の検出器までの排気回路内の移動とを表している物理モデルに結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射内燃エンジンの各シリンダの空燃比をマニフォールドの下流の空燃比の測定値から推定する方法および拡張カルマンフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
空気の質量に対する燃料の質量の比によって特徴づけられる空燃比についての理解は、空燃比が1に近いときに混合気が良好な燃焼状態になるガソリンエンジンを備えているか、希薄混合状態(1未満の空燃比)で動作する限り空燃比を知ることについての関心が異なるディーゼルエンジンを備えているかによらず、すべての乗物に対して重要である。特に、NOxトラップを使用している触媒は、時間の経過と共に効率が低下する。最適な効率を回復するには、希薄混合気での正常運転状態に戻る前に、空燃比を数秒間1付近に維持しなければならない。そのため、DeNOx触媒による汚染物除去は、シリンダ毎の空燃比の正確な制御が必要である。
【0003】
そのため、NOxトラップの上流の(過給エンジンの)タービンの出口に配置されているプローブは、排気過程の結果としての平均空燃比の測定値を出力する。高度にフィルタリングされる、ノイズの影響を受けているこの測定値は、空燃比が1の期間中にシリンダ内に噴射される燃料の質量の制御に使用され、そのため、各シリンダには同じ質量の燃料が噴射される。
【0004】
シリンダ内への燃料の質量をより正確に、特に個別に制御するためには、シリンダ毎に空燃比の再現が必要である。空燃比プローブを乗物の各シリンダの出口に取り付けることは、空燃比プローブの原価を考えれば不可能であるので、1つのプローブから出力される測定値を基に動作する推定器は、各シリンダ内の空燃比を別個に知ることができるので有利である。
【0005】
したがって、エンジン制御では、すべてのシリンダの空燃比が均衡するように、再現された複数の空燃比から各シリンダ内に噴射する燃料の質量を調節することができる。
【0006】
特許文献1は、モデルの定義と、その観測と、カルマンフィルタによるフィルタリングとについて記述している。このモデルは、マニフォールド内の混合気の物理的記述を含んでおらず、脈動が非常に大きい流量の現象を考慮していない。
【0007】
シリンダ内の空燃比の推定は、行列の複数の係数によってのみ調節されており、これらの係数は最適化アルゴリズムによってオフラインで特定することができる。さらに、行列のさまざまな調節、そのための行列のパラメータの特定は、各動作点(エンジン回転数/負荷)に対応している。したがって、この推定器は(5つの空燃比プローブを備えた)大規模な取得試験手段が必要で、エンジンの状態が変化する場合のロバスト性を有していない。
【特許文献1】仏国特許出願公開第2,834,314号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特定のための段階を必要とせず、かつエンジンのすべての動作点についてロバスト性のより高い空燃比推定モデルを実現する、排気プロセスのより詳細なモデル化を可能にすることである。本発明は、さらに、クランク軸の6°の回転毎の測定を可能にし、したがって、測定ノイズに影響されることなく空燃比の測定情報を高頻度に得ることを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、マニフォールドに連結されている少なくとも複数のシリンダと、前記マニフォールドの下流で空燃比(λ)を測定する検出器とを含む排気回路を有する内燃エンジンの各シリンダ内の空燃比を推定する方法において、
モデルの少なくとも1つの変数から、前記検出器によって測定される前記空燃比(λ)の推定値を定めるステップと、
前記測定される空燃比の推定値を考慮に入れて、前記検出器の伝達関数のモデル化を行うステップと、
前記伝達関数の前記モデル化を考慮に入れて、複数の前記シリンダの各々からの気体の排出と、前記排気回路内における前記検出器までの気体の移動とをリアルタイムで表す物理モデルを定めるステップと、
前記モデルを拡張カルマン型の非線形推定器に結合するステップと、
前記拡張カルマン型の非線型推定器によって前記各シリンダ内の前記空燃比の値をリアルタイムで推定するステップと、
を有することを特徴とする、内燃エンジンの各シリンダ内の空燃比を推定する方法に関する。
【0010】
本方法によれば、前記伝達関数のモデル化を1次フィルタによって行ってもよい。
【0011】
気体の移動時間と前記検出器の応答時間とによる遅延時間を、決められたシリンダ内で試験的な外乱を発生させることと、その影響を前記検出器の位置で測定することとによって求めてもよい。
【0012】
一態様によれば、前記物理モデルは、前記排気マニフォールド内の気体の総質量(MT)と、前記排気マニフォールド内の新気の質量(Mair)と、前記検出器によって測定される前記空燃比(λ)と、前記各シリンダ内の空燃比(λi)との、少なくとも4種類の変数を有していてもよい。この態様はまた、前記排気マニフォールド内の気体の総質量(MT)と、前記シリンダから流出する質量流量(di)との、少なくとも2種類の出力データを有していてもよい。
前記測定される前記空燃比(λ)を、前記排気マニフォールド内の気体の総質量(MT)と前記排気マニフォールド内の新気の質量(Mair)との関数として推定してもよい。
【0013】
前記各シリンダ内の前記空燃比の前記推定値は、前記排気マニフォールド内の気体の総質量(MT)の推定値、前記排気マニフォールド内の新気の質量(Mair)の推定値、および前記各シリンダ内の前記空燃比(λi)の推定値の、リアルタイムの修正値を含んでいてもよい。
【0014】
最後に、本方法を、すべてのシリンダ内の空燃比を調節するために各シリンダ内に噴射される燃料質量を変更するエンジン制御に適用してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
すべてのシリンダの空燃比の推定値の平均に関して各シリンダ内での個別の空燃比を推定する利点は、非常に多い。
−推定をタービンの出口の1つの空燃比プローブを基に行う場合のコスト価格
−排出物質の削減
−運転のしやすさ(伝達されるトルクの調節)の改善
−燃費の低減
−燃料噴射装置の診断(噴射ノズルのドリフトの検出や噴射装置の故障の検出)
排気プロセスの説明
排気プロセスは、気体が排気弁から外気(排気サイレンサの出口)まで移動する経路を有している。本実施形態のエンジンの例は、2200cm3の4シリンダエンジンである。このエンジンには、可変容量ターボ過給器が備えられている。図1の模式図は、排気プロセスの具体的な構成部材を示している。
−λ1からλ4は、4つのシリンダの各々の内部の空燃比である。
−SRは空燃比プローブである。
−CEは排気マニフォールドに対応している。
−Tはターボ過給器のタービンに対応している。
−DS1からDS4は、シリンダの出口での流量を表している。
【0016】
空燃比プローブ(SR)は、タービン(T)の直後に配置されている。シリンダ内での燃焼後の気体は、以下の動作を行う。
−排気弁を通過する。排気弁はカム軸によって制御され、そのリフトローは釣り鐘形状である。流量は、弁が開いているときの高い値から、シリンダとマニフォールドの圧が等しくなったときの低い値まで変化し、ピストンが排気ガスを排出するように再び上に摺動し始めた時に再び増加する。
−マニフォールドをシリンダヘッドの出口に連結している短いパイプを通過する。
−4つのシリンダからの流れ(DS1からDS4)が出会う排気マニフォールド(CE)内での混合相。ここで、各シリンダからの排気の一吹きが、マニフォールドの型(対称または非対称)と、流れの重なる割合を定めるEEO(Early Exhaust Opening)と、LEC(Late Exhaust Closing)とによって混合される。
−吸気部の上流に配置されている過給器に必要なトルクを供給するタービンを通過する。流量に対するタービンの動作の影響はよくわかっていないが、さまざまなシリンダからの一吹きの排気をより多く混合することになると考えることができる。
−UEGO型のプローブによる測定。
【0017】
排気ガスの組成は、燃焼室に供給される燃料および空気の量と、燃料の組成と、燃焼の進行とによって決まる。
【0018】
実際には、空燃比プローブは多孔質の物質から作られている拡散バリアによって排気管に連結されている拡散室内のO2の濃度を測定する。この構成では、特に空燃比プローブの付近の温度および/または圧力の変動のため、プローブ用に選択された位置によって空燃比に差が生じることがある。
【0019】
しかしながら、必要なのはシリンダ間の空燃比の差異の検出であり、平均値は推定器によって通常は維持されているため、圧力または温度に依存しているこの空燃比の変動現象は無視されている。
【0020】
本発明の推定器によって用いられるリアルタイム物理モデルでは、測定される空燃比(λ)はプローブの周辺の空気の質量(すなわち空気の流れ)と総質量(すなわち総流量)とに関連している。このモデルは、空気、燃料および既燃ガスの3つの気体によるアプローチに基づいている。したがって、燃焼後に残ったすべての気体は、希薄混合気の場合、空気と既燃ガスとの混合物であると考えられる。過濃混合気については、燃料が過剰であり、燃焼後には未燃焼の燃料と既燃ガスとが残るのに対して、空気はすべて消滅している。実際には、燃焼は100%完全ではないが、この推定器については完全と見なされている。
【0021】
前述の3種類の質量への空燃比の関連付けを定式化する。希薄混合気の場合、空気が過剰で、燃焼後は燃料は残っていない。燃焼前に、以下の質量がシリンダ内に存在していると仮定する。
【0022】
空気の質量Mair、燃料の質量Mcarb、および既燃ガスの質量MgazB
air=x;Mcarb=y;MgazB=0
理論空燃比を達成するには燃料の14.7倍の空気が必要なことがわかっていると、燃焼前後の各種の質量を示した以下の表を作成することができる。
【0023】
【表1】

【0024】
以下の式の計算によって得られる、比Mcarb/Mairを表している空燃比λは、混合気が希薄混合気であるときにだけ有効である。
【0025】
【数1】

【0026】
ここで、PCOは、混合が理論空燃比の時の比Mcarb/Mairに対応している。PCOは、燃料の発熱量である。
【0027】
過濃混合気の場合、式は以下のようになる。
【0028】
【数2】

【0029】
しかしながら、吸気部に既燃ガスが存在すると、3つの気体の濃度が排気部で変わるので、これらの式は混合気がEGRを含んでいない場合に有効である。
【0030】
本実施形態では、式(7)の空燃比を組み入れるために希薄混合気用の空燃比の式だけが推定器で使用され、非常にわずかな空気(<3%)だけが無視される。しかし、本発明は、本実施形態にだけ限定されているわけではなく、実際、式は空燃比が1の付近では連続しており、式の逆数を取ったものは過濃混合気に対して何ら問題がない。
【0031】
排気管内で気体が混合する様子をより良く理解するために、ディーゼルエンジンのモデルをIMAGINE社(フランス)のAMESimソフトウェアと共に使用した。このモデルは、逆数を取ることはできないが、本発明のモデルの確認するための基準として使用されることになる。
【0032】
AMESimは、0Dモデル化のソフトウェアで、特に熱および液圧の現象に適している。AMESimは、特に、容積部分、管、または絞りをモデル化することができる。
【0033】
排気モデルは以下を有している。
−容積部分と管とによって表されている複数の排気管
−熱交換を備えた排気マニフォールド
−タービンとバイパス弁
−タービンの合流部の容積部分と弁の流量
−タービンと測定プローブとの間の管
−排気経路の容積部分と管
管、絞り、および容積部分をモデル化する基本ブロックは、AMESimの取扱説明書、「Thermal Pneumatic Library」に記載されている。絞りを通過する流量、質量およびエネルギーの保存を計算するために、標準の式が使用される。さらに、モデルは気体の慣性も考慮しており、これは気体の組成の動力学の検討には重要である。
【0034】
このモデルは0Dモデルのため、時間の次元は考慮されず、物理的アプローチによって遅れ時間をモデル化することはできない。入力変数を変化させると、出力は即座に変化する。したがって、移動時間は無視される。この制限は、リアルタイムでの取得に取り組む場合に、重要である。
【0035】
本発明によれば、1つのリアルタイム物理モデルが、大局的なシステム、つまり排気ガスがシリンダからマニフォールドを通ってタービンの下流の排気部まで移動する経路全体をモデル化するために定められる。
【0036】
I−リアルタイム物理モデルの定義
本実施形態では、温度の変動は1つのエンジンサイクルを通して低く、流量の変動への温度の影響は限られていると考えられる。圧力の変動は、流量に直接関連しているため、実際にはプロセスにおいて不可欠である。したがって、シリンダ、マニフォールド、およびタービンの各要素に対して一定の温度が設定されている。そのため、熱交換もモデル化されていない。この簡略化のための仮定による大きな影響はない。
【0037】
第1のアプローチでは、新気と既燃ガスとの2つの気体を考慮する。従来の式は、容積部分内の気体の総質量の変動と、新気の質量の変動とを示している。そのため、既燃ガスをそれらから求めることができる。この手順は希薄混合状態の場合に有効であるが、過濃混合気の場合にも同様の式を燃料と既燃ガスについて示すことができる。
【0038】
A)排気マニフォールドの物理モデル
排気マニフォールドは、質量が保存される容積部分に従ってモデル化されている。温度は、実質的に一定であると仮定して、エンジン回転数と負荷との関数としてグラフから求められている。
【0039】
本発明によれば、測定される空燃比をプローブの周辺の空気の質量と総質量とに関連付けることにしている。したがって、マニフォールド内の総質量の保存は、マニフォールド内の排気ガスの質量はマニフォールドに流入する排気ガスの質量(シリンダの出口の流量)からマニフォールドから流出する質量を引いたものに等しいという事実を表している。タービン内の流れの組成は、マニフォールドの出口と同じと仮定している。したがって、マニフォールドから流出する質量は、タービンを通過する流れに等しい。したがって、総質量については以下の式が得られる。
【0040】
【数3】

【0041】
ここで、
e:エンジン回転数
α:クランク軸の角度
T:排気マニフォールド内の総質量
i:シリンダiから流出する質量流量
T:タービンを通過する全流量
である。
【0042】
同様に、空気の質量の保存については、以下の式が得られる。
【0043】
【数4】

【0044】
ここで、
e:エンジン回転数
α:クランク軸の角度
air:排気マニフォールド内の新気の質量
λi:各シリンダ内の空燃比
i:シリンダiから流出する質量流量
air:タービンを通過する空気の流量
である。
【0045】
シリンダの出口の流量とタービンを通過する流量とを求めることができる物理モデルについて説明する。
【0046】
シリンダの出口での流量を求めることができるモデル:気体の排出
シリンダの出口での気体の流量は、排気弁の出口での流量を示す物理モデルによってモデル化することができる。3つの変数が、弁を通過する気体のこの排出モデルに使用される。
−クランク軸の角度(α)
−シリンダを通じて吸い込まれる流れdasp(上流のエンジン制御によって推定される変数)
−1サイクルにわたってプローブによって測定される空燃比の平均値
【0047】
【数5】

【0048】
流出する流れの平均値は、吸入される流れと噴射されたガソリンの流量から知ることができる。流出する流れの瞬間値は、吸入される流れに依存したテンプレートに基づいて得られる。このテンプレートは、エンジン回転数、クランク軸の角度、シリンダによって吸入される流れ、および1サイクルにわたってプローブによって測定される空燃比の平均値から、クランク軸の角度の関数として、シリンダについての平均流量を推定することを可能にする経験則に基づいた物理モデル(曲線)である。この物理法則の唯一の制約は、流出する流れの平均値(曲線の領域)を考慮し、以下の2つの現象を明らかにする曲線を提供することである。
−クランク角度の関数として流量のピークによって表されているシリンダ/排気の圧力の均衡
−振幅がより小さい流量の第2のピークで表される、排気弁の流れの断面に依存する流量
このテンプレート
【0049】
【数6】

【0050】
は、排気弁の出口での質量流量の経過(曲線)di、つまりすべてのシリンダに共通の流量の推定値
【0051】
【数7】

【0052】
を出力する。これは、エンジンのテストベンチでの測定値と関連させて求められる。それから、吸入される流れとプローブで測定される空燃比の平均値とによって、テンプレートを相似変形し、クランク軸角度の関数として各シリンダに対して位相を移動させ、各シリンダの出口での気体の流量を推定する。
【0053】
i(α)=d(αi+α)・α0
ここで、
−di(α)はシリンダiの出口で流出する気体の流量
−d(α)はテンプレート、つまりシリンダの出口での流量の推定値
【0054】
【数8】

【0055】
−αiはシリンダiの位相ずれの角度
である。
【0056】
テンプレート曲線の位相ずれは、図1(DS1からDS4)において概略的に示されている。
【0057】
タービンを通過する流量を求めることができる複数の物理モデルを以下に説明する。
【0058】
タービンを通過する流量を求めることができるモデル:タービンモデル
タービンは、流量制限部を通過する流れによってモデル化されている。タービン内の流量は、タービンの回転数と、タービンの上流と下流の圧力の比との関数としてのマッピング(チャート)によって一般的に求められる。
【0059】
タービンを通過する流量dTは、排気マニフォールド内の排気ガスの総質量(MT)と、排気マニフォールド内の温度と、ターボ過給器の回転数と、ターボ過給器の形状寸法との関数である。したがって、このモデルの入力データは、
−排気ガスの総質量(MT
−空気の質量(Mair
−エンジン回転数(Ne
−(ターボ過給器の)タービンの回転数
である。
【0060】
この流量は、総質量MTの凹関数から推定することができる。この関数をpで表す。したがって、タービン内の流量は、次のように示される。
【0061】
T(MT)=MT・p(MT
関数pは、タービンの回転数の関数として表され、かつ大気状態での排気マニフォールド内の質量(M0)に対する排気マニフォールド内の排気ガスの総質量(MT)の比として表される、ルートの形態の関数である。したがって、マッピングによって、MT/M0の比と、(ターボ過給器)のタービンの回転数との関数として、p(MT)が得られる。このマッピングで使用される式は次のとおりである。
【0062】
【数9】

【0063】
ここで、
−fは多項式関数
−gは定数
である。
【0064】
関数fのパラメータは、タービンのマッピングとの関連付けによって最適化されている。
【0065】
さらに、空気の組成は排気マニフォールド内と同じであると仮定している。したがって、タービンを通過する空気の流れは、次の式で表される。
【0066】
【数10】

【0067】
したがって、物理的な気体の排出とタービンのモデルとによって、式(1)と式(2)とは次のように示すことができる。
【0068】
【数11】

【0069】
これらの式(3)のシステムは、排気マニフォールドの物理モデルである。
【0070】
このモデルの入力データは、
e:エンジンの回転数
α:クランク軸の角度
i:シリンダiから流出する質量流量
T:タービンを通過する全流量
air:タービンを通過する空気の流量
λi:各シリンダ内の空燃比
であり、システムの未知数は、
T:排気マニフォールド内の総質量
air:排気マニフォールド内の新気の質量
である。
【0071】
第1の式は1つの未知数MTを含んでいる。第2の式は2つの未知数Mairおよびλiを含んでいる。これは、以下に説明するさらなる仮定につながる。
【0072】
B)シリンダの出口の空燃比についての仮定
排気マニフォールドのリアルタイム物理モデル(RTM)を完成するために、シリンダの出口での空燃比は、動作点で一定であると仮定し、その結果以下の式が得られる。
【0073】
【数12】

【0074】
実際に、リアルタイムでの計算では、λiが定数であると推定されている。
【0075】
C)検出器の動的特性についての仮定
上記の式では、検出器で測定される空燃比は、複数のシリンダ内の空燃比、シリンダの出口での空気の流れ、および気体の全体の流れから計算される。この構成は、モデルへの入力を推定しなければならないため、カルマンフィルタにおいて使用することが困難である。そのため、このモデルは入力MTおよびλとを加えることによって完成されている(Mohinder S. Grewal:“Kalman Filtering Theory and Practice”,Prentice Hall,1993年)。
【0076】
そのため、空燃比検出器の応答の動的特性を考慮して、(UEGO型の)測定プローブの伝達関数を1次フィルタによってモデル化した。モデルによって得られるタービンの下流の空燃比(λ)は、マニフォールド内の空燃比と等しく、上記の空燃比の式を使用することによって、測定される空燃比をMTおよびMairから推定することができる。
【0077】
【数13】

【0078】
したがって、プローブの応答は以下の関係式によってモデル化することができる。
【0079】
【数14】

【0080】
ここで、τ:1次であると見なす空燃比検出器の時定数、である。
【0081】
D)リアルタイム物理モデルの表現
最後に、式(3),(5)および(6)から、リアルタイム物理モデルRTMは行列形式で以下のように表すことができる。
【0082】
【数15】

【0083】
物理モデルの未知数は、最終的に、MT,Mairおよびλiである。
【0084】
物理モデルの出力データはMTおよびdiである。
【0085】
E)排気の遅延時間
管内および様々な容積部分内における気体の移動による遅延時間と、測定プローブの「アイドル時間」とは、前述の物理モデル(式(7)のシステム)では考慮されていない。しかしながら、管内の移動が無視されるので、物理モデルはこれらの遅延時間に関して線形に構成されている。そのため、これらの遅延時間は、排気プロセス全体について1つの遅延時間にまとめることが可能であり、以下に説明するように遅延時間の影響を後で考慮することができるため、物理モデルの逆数を取ることができる。
【0086】
II−空燃比の推定器
上記の物理モデル(7)は、タービンの下流の空燃比(マニフォールド内の空燃比と同一であると考えられる)は、排気マニフォールドの入口での気体流の組成の関数として表されることを示している。
【0087】
測定されるデータは、
−プローブで測定される空燃比:λ
である。
【0088】
システムのそれ以外の既知のデータは、
−エンジン回転数:Ne
−クランク軸の角度:α
−(過給器の)タービンの回転数
−シリンダに吸入される流れ
である。
【0089】
システムのモデル化されたデータは、
−シリンダiからの質量流量:di
−タービンを通過する全流量:dT
−タービンを通過する空気の流量:dair
−排気マニフォールド内の総質量:MT
である。
【0090】
したがって、未知数は、
−4つのシリンダの各々における空燃比:λi
−排気マニフォールド内の新気の質量:Mair
である。
【0091】
物理モデル(7)は非線形であり、そのようなシステムはリアルタイムには解くことができない。そのため、システムの未知数を直接計算しようとするよりも、推定器を使用することが必要である。本発明の推定器の選択は、このモデルが拡張カルマンフィルタに使用できる構造を有していることに基づいている。したがって、物理モデルRTMから未知数を推定するために、本発明の方法は、拡張カルマンフィルタに基づいて推定器を構築することを提案している。このようなフィルタは、当業者には公知であり、以下の文献に記載されている。
−Greg WelchおよびGary Bishop:“An Introduction to Kalman Filter”,University of North Carolina−Chapel Hill TR95−041,2003年5月23日
拡張カルマンフィルタの構造を以下に述べる。測定プロセスが非線形である場合に、拡張カルマンフィルタ(EKF)によってプロセスの状態ベクトルを推定することができる。
【0092】
プロセス(x)は、非線形の確率方程式(f)によって決定される。増分をkとすると、以下のように示すことができる。
【0093】
【数16】

【0094】
測定値(y)は、非線形観測方程式hによって求めることができる。増分をkとすると、以下のように示すことができる。
【0095】
k=h(xk,vk
ここで、確率変数wkおよびvkは、それぞれモデルノイズと測定ノイズとを表している。
【0096】
推定方法は、時間の増分毎に変数が予測され、それから予測が修正される、予測/修正の技法に基づく推定器を有している。以下では、予測/修正段階を、拡張カルマンフィルタの一般的な状態において説明する。
【0097】
以下の表記を使用する。
【0098】
【数17】

【0099】
は時間増分kでのxの予測値
【0100】
【数18】

【0101】
は時間増分kでのxの推定値
予測段階:
【0102】
【数19】

【0103】
上述の式では、以下の変数を使用している。
【0104】
【数20】

【0105】
種々の要素が、AMESimを使用したシミュレーション中に取得された複数の値によって初期化される。
【0106】
修正段階:
時間の増分kにおけるxの推定値
【数21】

【0107】
は、以下のような予測値
【0108】
【数21】

【0109】
の修正によって得られる。
【0110】
【数22】

【0111】
ここで、
−Aは、xについてのfの偏微分のヤコビ行列
【0112】
【数23】

【0113】
−Wは、wについてのfの偏微分のヤコビ行列
【0114】
【数24】

【0115】
−Hは、xについてのhの偏微分のヤコビ行列
【0116】
【数25】

【0117】
−Vは、vについてのhの偏微分のヤコビ行列
【0118】
【数26】

【0119】
である。
【0120】
これらの行列は実際には増分ごとに異なるが、表記を簡略化するために増分のインデックスkを使用していないことに留意されたい。
【0121】
カルマンフィルタの入力では、タービンの下流の空燃比λとマニフォールド内の気体の総質量MTとが必要である。したがって、推定器の、測定されるパラメータまたはモデル化されたパラメータは次のようになる。
【0122】
【数27】

【0123】
空燃比λは測定され、気体の総質量はカルマンフィルタに並列なモデル(7)の計算の結果である。
【0124】
カルマンフィルタに基づくこの推定器によって、最終的には、空燃比の推定値を、タービンの下流に配置された検出器によって測定された空燃比からシリンダ毎に求めることができる。
【0125】
このように構成された推定器によって、リアルタイムモデル(7)によって得られた最初の値MTとプローブによって測定される空燃比とから、MT,Mair,λiおよびλをリアルタイムで修正することが可能である。
【0126】
カルマンフィルタは数値的にリアルタイムで解くことができ、計算には当業者には公知の前進オイラー法による離散化を使用する。
【0127】
シミュレーションの結果:推定器の試験(9)
既知の個別の空燃比から、基準モデルAMESimによってプローブでの空燃比(λ)を推定した。この空燃比の値は、推定器の入力で使用される。プローブの動力学は考慮していない。噴射を不均衡にして、タービンの下流で測定される空燃比(λ)からシリンダ毎の空燃比の推定値(λi)を観測する。
【0128】
シミュレーションについては、80μs長い噴射を1つのシリンダで行うことによって、4つのシリンダを連続的に不均衡にすることができ、したがってシリンダ1と4とが同様に不均衡になった。図2Aおよび図2Bは、AMESimによって得られた時間(T)の関数としての空燃比
【0129】
【数28】

【0130】
を下側に、時間(T)の関数としての推定器
【0131】
【数29】

【0132】
の推定結果を上側に示している。4つの曲線は4つのシリンダの各々に対応している。適応フィルタに基づく推定器の性能は非常に良好である。しかし、このモデルでは考慮していない気体の慣性によるわずかな位相差が認められる。そのため、排気の遅れ時間の推定器によって、このモデルおよび推定器を完成することとする。
【0133】
排気遅延時間の推定器
上述のように構築された推定器では、シリンダの排気部とプローブで取得された信号との間の遅延時間を考慮する推定方法を行うことができない。実際には、遅延時間には、管内および容積部分を通過する移動時間、測定プローブのアイドル時間などのいくつかの原因がある。
【0134】
推定器の入力において遅延時間Dをモデルからの変数に適用することによって、推定器を空燃比の測定値と同期させることができる。遅延時間を有する推定器の構成を図3に示しており、ここで、
−Neおよびαは、式(7)で表されるリアルタイムモデルRTMの入力データ
−MMBOは、開ループ質量モデル(モデルRTM)
−Dは、モデルRTM(MMBO)の複数の出力変数に適用される遅延時間であり、この遅延時間は式(10)から得られる
−SRは、式(4)によって推定器で使用される空燃比をタービンの下流で測定するプローブ
−ERFKは、カルマンフィルタに基づいた、式(9)で示される空燃比の推定器
−λiは、推定器ERFKによって推定されるシリンダiの空燃比
である。
【0135】
遅延時間は、エンジンの回転数、負荷、排気マニフォールドの圧力などの動作条件によって決まる。遅延時間はモデル化が困難なため、推定器と測定値との間の遅延時間を他の計器を使用せずにリアルタイムに計算するための同定方法が開発された。この原理は、シリンダ1の噴射点の近傍でわずかな増量を行い、各シリンダについて空燃比の変動を計算することにある。そのため、シリンダ2,3および4の変動にペナルティを課すように、同定基準Jkを設定する。
【0136】
【数30】

【0137】
ここで、
【0138】
【数31】

【0139】
である。
【0140】
ペナルティは、βによって課される。シリンダ2について推定された空燃比の値に正の変動がある場合、推定器と測定値との間の遅延は正である。シリンダ3に変動がある場合、遅延は負であり、ペナルティは負である。シリンダ4の変動は、正または負の遅延時間の結果と考えられる。モデルRTMの複数の出力変数に適用される遅延時間Dは、追加の遅延であり、Jkを最小化することによる最小2乗法によって計算される。
【0141】
規準Jkは、PI(比例積分)制御器によって、推定器の遅延時間でゼロに調節される。制御器が安定すると、推定された空燃比の変動はシリンダ1で最大で、シリンダ4で最小になる。そして、推定器は測定値と位相が一致する。
【0142】
結果
図4Aから図4Fは、上述の推定器による、高負荷での2000rpm,9バール(0.9Mpa)(図4Aから図4C)、および低負荷での2500rpm,3バール(0.1Mpa)(図4Dから図4F)の場合における空燃比の推定値をシリンダ毎に示している。これらの図では、時間(T)の関数としての基準空燃比
【0143】
【数32】

【0144】
を上側に、時間(T)の関数としての推定器による結果
【0145】
【数33】

【0146】
を下側に示している。4つの曲線は4つのシリンダの各々に対応している。
【0147】
本発明は、プローブによって測定される空燃比(λ)とマニフォールド内の総質量(MT)の情報とから、4つのシリンダの出口での空燃比(λi)の推定を可能にする推定器の構成を有する推定方法に関する。このようにして得られた推定器は能率的であり、特に、動作点が変化しても更なる調節は必要ない。同定段階は必要なく、1回のノイズの測定とモデルの調節だけを行えばよい。
【0148】
本発明による推定のロバスト性を動作状態によらずに高めるために、遅れ時間制御器が推定器と共に使用され、シリンダでの噴射時間を増加させた後に遅れ時間を再調節することを可能にしている。これによって、たとえば空燃比が1の段階の前に、推定器を最適に校正することができる。
【0149】
本発明によれば、クランク軸の6°の回転ごとに測定を実行し、それによって、測定ノイズに影響されずに空燃比の測定値の情報を高頻度に得ることが可能である。さらに、この高頻度の表現によって、システムの脈動効果を考慮することができる。モデル化されたシステムは、周期的であり、動力学的により良好な、つまり排気脈動が推定される推定器を得ることができる。
【0150】
さらに、本発明によれば、計算時間を従来の方法に対して80分の1に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】排気プロセスの具体的な構成部材を模式的に示す図である。
【図2】4つのシリンダの1つについて、基準空燃比
【0152】
【数34】

【0153】
を時間(T)の関数として示した図と、本発明の推定器の結果
【0154】
【数35】

【0155】
を時間(T)の関数として示した図である。
【図3】推定器の構造を示す図である。
【図4A】4つのシリンダの1つについて、基準空燃比
【0156】
【数36】

【0157】
を時間(T)の関数として示した図と、第1の動作点に関する、高負荷での2000rpm,(9バール)の場合での本発明による遅延を考慮した推定器の結果
【0158】
【数37】

【0159】
を時間(T)の関数として示した図である。
【図4B】4つのシリンダの1つについて、基準空燃比
【0160】
【数38】

【0161】
を時間(T)の関数として示した図と、第1の動作点に関する、高負荷での2000rpm,(9バール)の場合での本発明による遅延を考慮した推定器の結果
【0162】
【数39】

【0163】
を時間(T)の関数として示した図である。
【図4C】4つのシリンダの1つについて、基準空燃比
【0164】
【数40】

【0165】
を時間(T)の関数として示した図と、第1の動作点に関する、高負荷での2000rpm,(9バール)の場合での本発明による遅延を考慮した推定器の結果
【0166】
【数41】

【0167】
を時間(T)の関数として示した図である。
【図4D】4つのシリンダの1つについて、基準空燃比
【0168】
【数42】

【0169】
を時間(T)の関数として示した図と、第2の動作点に関する、低負荷での2500rpm,(3バール)の場合での本発明による遅延を考慮した推定器の結果
【0170】
【数43】

【0171】
を時間(T)の関数として示した図である。
【図4E】4つのシリンダの1つについて、基準空燃比
【0172】
【数44】

【0173】
を時間(T)の関数として示した図と、第2の動作点に関する、低負荷での2500rpm,(3バール)の場合での本発明による遅延を考慮した推定器の結果
【0174】
【数45】

【0175】
を時間(T)の関数として示した図である。
【図4F】4つのシリンダの1つについて、基準空燃比
【0176】
【数46】

【0177】
を時間(T)の関数として示した図と、第2の動作点に関する、低負荷での2500rpm,(3バール)の場合での本発明による遅延を考慮した推定器の結果
【0178】
【数47】

【0179】
を時間(T)の関数として示した図である。
【符号の説明】
【0180】
CE 排気マニフォールド
T ターボ過給器のタービン
SR プローブ
DS1〜DS4 シリンダの出口での流量
λ1〜λ4 シリンダ内の空燃比
Ne エンジンの回転数
α クランク軸の角度
MNBO 開ループ質量モデル
D 遅れ時間
ERFK 空燃比の推定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニフォールドに連結されている少なくとも複数のシリンダと、前記マニフォールドの下流で空燃比(λ)を測定する検出器とを含む排気回路を有する内燃エンジンの各シリンダ内の空燃比を推定する方法において、
モデルの少なくとも1つの変数から、前記検出器によって測定される前記空燃比(λ)の推定値を定めるステップと、
前記測定される空燃比の推定値を考慮に入れて、前記検出器の伝達関数のモデル化を行うステップと、
前記伝達関数の前記モデル化を考慮に入れて、複数の前記シリンダの各々からの気体の排出と、前記排気回路内における前記検出器までの気体の移動とをリアルタイムで表す物理モデルを定めるステップと、
前記モデルを拡張カルマン型の非線形推定器に結合するステップと、
前記拡張カルマン型の非線型推定器によって前記各シリンダ内の前記空燃比の値をリアルタイムで推定するステップと、
を有することを特徴とする、内燃エンジンの各シリンダ内の空燃比を推定する方法。
【請求項2】
前記伝達関数のモデル化を1次フィルタによって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
気体の移動時間と前記検出器の応答時間とによる遅延時間を、決められたシリンダ内で試験的な外乱を発生させることと、その影響を前記検出器の位置で測定することとによって求める、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記物理モデルは、前記排気マニフォールド内の気体の総質量(MT)と、前記排気マニフォールド内の新気の質量(Mair)と、前記検出器によって測定される前記空燃比(λ)と、前記各シリンダ内の空燃比(λi)との、少なくとも4種類の変数を有している、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記物理モデルは、前記排気マニフォールド内の気体の総質量(MT)と、前記シリンダから流出する質量流量(di)との、少なくとも2種類の出力データを有している、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記測定される前記空燃比(λ)を、前記排気マニフォールド内の気体の総質量(MT)と前記排気マニフォールド内の新気の質量(Mair)との関数として推定する、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記各シリンダ内の前記空燃比の前記推定値は、前記排気マニフォールド内の気体の総質量(MT)の推定値、前記排気マニフォールド内の新気の質量(Mair)の推定値、および前記各シリンダ内の前記空燃比(λi)の推定値の、リアルタイムの修正値を含んでいる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
すべてのシリンダ内の空燃比を調節するために各シリンダ内に噴射される燃料質量を変更するエンジン制御への、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法の適用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【公開番号】特開2006−336645(P2006−336645A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149261(P2006−149261)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【Fターム(参考)】