振動片、振動子、発振器、及びセンサー
【課題】小型化を進める上で、周囲温度の変化に対する特性が良好な圧電振動片と、圧電デバイスを提供すること。
【解決手段】圧電材料により形成された所定長さの基部51と、前記基部の一端側から延びる複数の振動腕35,36と、前記基部の一端側より所定距離だけ離れた他端側に接続される連結部73と、前記連結部に接続され、圧電振動片の幅方向に延長される接続部74と、前記接続部に接続され、かつ前記振動腕の外側において、該振動腕と同じ方向に延びる支持用アーム61,62とを備え、振動腕35、36が接続されている基部51の一端から、圧電振動片の振動腕35、36の反対側の一端までの長さ寸法hと、前記連結部を介して前記支持用アームが前記基部に接続されている接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされている、圧電振動片である。
【解決手段】圧電材料により形成された所定長さの基部51と、前記基部の一端側から延びる複数の振動腕35,36と、前記基部の一端側より所定距離だけ離れた他端側に接続される連結部73と、前記連結部に接続され、圧電振動片の幅方向に延長される接続部74と、前記接続部に接続され、かつ前記振動腕の外側において、該振動腕と同じ方向に延びる支持用アーム61,62とを備え、振動腕35、36が接続されている基部51の一端から、圧電振動片の振動腕35、36の反対側の一端までの長さ寸法hと、前記連結部を介して前記支持用アームが前記基部に接続されている接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされている、圧電振動片である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片と、パッケージやケース内に圧電振動片を収容した圧電デバイスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器や圧電ジャイロセンサー等において、圧電振動子や圧電発振器等の圧電デバイスが広く使用されている。
図12は、圧電デバイスに従来より用いられている圧電振動片の一例を示す概略平面図である。
【0003】
図において、圧電振動片1は、水晶などの圧電材料をエッチングすることにより、図示する外形を形成するもので、パッケージ(図示せず)等に取付けられる矩形の基部2と、基部2から図において上方に延長された一対の振動腕3,4を備えており、これら振動腕の主面(表裏面)に長溝3a,4aを形成するとともに、必要な駆動用の電極を形成したものである(特許文献1参照)。
このような圧電振動片1においては、駆動用の電極を介して駆動電圧が印加されると、各振動腕3,4の先端部を近接・離間するようにして、屈曲振動することにより、所定の周波数の信号が取り出されるようになっている。
【0004】
ところで、このような圧電振動片1は、基部2の符号5,6で示す箇所に引出し電極が形成され、この部分に接着剤7,8を塗布して、例えばパッケージなどの基体に固定支持される。
そして、この接着剤による固定支持後に、圧電振動片を構成する材料と、パッケージなどの材料の線膨張係数の相違などに起因して残る残留応力が、振動腕の屈曲振動を妨げないように、基部2に切り込み部9を形成するようにしている。
このような、圧電振動片1においては各部位の小寸法化を進め、これに対応して、基部の長さも小さな寸法とされることで、圧電振動片1の小型化が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−261575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このように小型化を進めた圧電振動片1においては、以下の理由により、温度特性試験において、好ましい結果が得られない場合がある。
すなわち、圧電振動片1を水晶で形成した場合に、その線膨張係数は13.8ppm/℃であるが、これを収容して接合するパッケージについては、アルミナセラミックパッケージで7.0ppm/℃である。
そして、圧電振動片1のパッケージへの接合工程(マウント工程)では、導電性接着剤を用いて約200℃で接着剤を硬化させており、硬化後常温に戻した際には、圧電振動片1とパッケージの各線膨張係数の相違に対応した応力が、接合部に働くことになる。
【0007】
このため、温度特性試験を行うと、例えば、図13に示すように、理想の温度特性Aに対して、実際にはBのグラフに示すような特性を示す。
すなわち、マイナス50℃から100℃まで、温度環境を変化させてその特性を試験すると、マイナス50℃の際に上記接合部に働く応力のため、周波数はプラスにシフトしてしまう。また、マイナス55度(「摂氏」、以下、温度表示は全て「摂氏」)で1000H(時間)放置(32kHz(キロヘルツ)の圧電振動子の場合)すると、マイナス55度の最も大きな応力が作用した後で、その後常温に戻すことになり、応力状態が完全に元に戻らず周波数はマイナスにシフトしてしまう。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、小型化を進める上で、温度特性が良好な圧電振動片と、圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧電振動片は、圧電材料により形成された所定長さの基部と、前記基部の一端側から延びる複数の振動腕と、前記基部の一端側より所定距離だけ離れた他端側に接続される連結部と、前記連結部に接続され、圧電振動片の幅方向に延長される接続部と、前記接続部に接続され、かつ前記振動腕の外側において、前記振動腕と同じ方向に延びる支持用アームとを備え、前記基部の前記一端側から、前記圧電振動片の前記振動腕の反対側の一端までの長さ寸法hと、前記連結部を介して前記支持用アームが前記基部に接続されている接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明の圧電振動片の構成によれば、前記基部の一端側より所定距離だけ離れた他端側に接続される連結部と、前記連結部に接続され、圧電振動片の幅方向に延長される接続部と、前記接続部に接続され、かつ前記振動腕の外側において、前記振動腕と同じ方向に延びる支持用アームとを備えている。このため、支持用アームがパッケージなどの基体側に接着などにより接合された場合においては、周囲温度の変化や、落下衝撃などを原因として、その接合箇所に生じた応力変化が、支持用アームの接合箇所から、振動腕に影響を与えることはほとんどなく、このため、特に温度特性が良好となる。しかも、これとは逆に屈曲振動する振動腕からの振動漏れは、支持用アームに達するまでに接続部と連結部を経由していることから、ほとんど及ぶことがない。すなわち、基部長さが極端に短いと、屈曲振動の漏れた成分が支持用アーム全体に拡がり、制御が困難となる事態が考えられるが、この発明において、そのようなおそれがない。
そして、このような作用を得ることができる上に、支持用アームは、基部の他端から幅方向に延長され、振動腕の外側で、この振動腕と同じ方向に延びる構成としたから、全体の大きさをコンパクトにすることができる。
また、本発明の圧電振動片では、前記基部の長さ寸法hと、前記連結部を介して前記支持用アームが前記基部に接続されている接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされている。
これにより、励振部である各振動腕から接合部となる各支持用アームにいたる構造において、パッケージなどへ直接固定される支持用アーム自体や、励振の影響を強く受ける振動腕、およびその形成基端にある前記基部以外の箇所において、適切に応力を集中できる箇所をつくることができ、この部分で支持用アームからの応力による影響が、前記振動腕に伝搬することを防止することができる。これにより、小型化を進める上で、温度特性が良好な圧電振動片を提供することができる。なお、40%を超えると、温度特性が極端に悪くなることが確認されている。
【0011】
また、本発明の圧電振動片は、さらに、前記基部の前記一端側から、前記圧電振動片の前記振動腕の反対側の前記一端までの長さ寸法hと、前記接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、20%以上40%以下とされていることを特徴とする。
このような構成によれば、前記比率であるL3/hが、20%以上とすることで、充分な剛性が得られ、圧電振動片の組立工程で折れるという問題を解決する。
【0012】
また、本発明の圧電振動片は、さらに、前記接続部がくびれるように縮幅された縮幅部を有しており、接続部の幅寸法L3が前記縮幅部の幅寸法であることを特徴とする。
このような構成によれば、支持用アームからの応力による影響が、前記振動腕に伝搬することを防止するために設けられる部分的に剛性の低い構造を、適切に設定することができる。
【0013】
また、本発明の圧電振動片は、さらに、前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、40%以下とされていることを特徴とする。
このような構成によれば、前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、40%以下とされている。このため、励振部である各振動腕が、接合部となる各支持用アームからの影響をきわめて受けにくくなる。
【0014】
また、本発明の圧電振動片は、さらに、前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、23%以上40%以下とされていることを特徴とする。
本発明の発明者は、前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、23%未満となると、落下衝撃などの外部からの衝撃により前記連結部が破断するおそれがあることを確認した。
したがって、前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、23%以上40%以下とされることにより、励振部である各振動腕が、パッケージなどへの接合部を含む支持用アームからの影響をきわめて受けにくく、しかも外部からの衝撃で、容易に破損することのない圧電振動片を得ることができる。
【0015】
本発明の圧電デバイスは、パッケージまたはケース内に圧電振動片を収容した圧電デバイスであって、前記圧電振動片が、圧電材料により形成された所定長さの基部と、前記基部の一端側から延びる複数の振動腕と、前記基部の一端側より所定距離だけ離れた他端側に接続される連結部と、前記連結部に接続され、圧電振動片の幅方向に延長される接続部と、前記接続部に接続され、かつ前記振動腕の外側において、前記振動腕と同じ方向に延びる支持用アームとを備え、前記基部の前記一端側から、前記圧電振動片の前記振動腕の反対側の一端までの長さ寸法hと、前記連結部を介して前記支持用アームが前記基部に接続されている接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされていることを特徴とする。
【0016】
本発明の圧電デバイスの構成によれば、パッケージなどへ直接固定される支持用アーム自体や、励振の影響を強く受ける振動腕、およびその形成基端にある前記基部以外の箇所において、適切に応力を集中できる箇所をつくることができ、この部分で支持用アームからの応力による影響が、前記振動腕に伝搬することを防止することができる。これにより、小型化を進める上で、温度特性が良好な圧電デバイスを提供することができる。
【0017】
本発明の圧電デバイスは、さらに、前記パッケージが、セラミック製の箱状パッケージで、外部に連通した孔封止用の貫通孔を備えるとともに、金属製の蓋体により封止されるようになっており、前記パッケージと前記蓋体とが金−ゲルマニウムの合金でなるロウ材を用いて封止されていることを特徴とする。
このような構成によれば、ガラス製の蓋体を低融点ガラスのロウ材で接合する場合と比べて、金−ゲルマニウム合金のロウ材を用いることで、限られた大きさの封止代(しろ)であっても、十分接合強度を得ることができる。特に、封止孔を利用したガス出しにおいて、十分加熱しても蓋体の接合に影響することがなく、優れた気密性を実現できる。また、実装工程においてリフロー炉を通した場合にも、ロウ材が再溶融することなく、接合性能に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の圧電デバイスの実施形態を示す概略平面図。
【図2】図1のA−A線切断端面図。
【図3】図1の実施形態に係る圧電振動片の概略拡大平面図。
【図4】図1の振動腕部分のB−B線切断端面図。
【図5】図1の圧電振動片を用いた発振回路例を示す回路図。
【図6】図3の圧電振動片の寸法と理想の温度特性に対する周波数シフト(ズレ)を示すグラフ。
【図7】図1の圧電デバイス(圧電振動片)の温度特性試験の結果を示すグラフ。
【図8】励振電極の電極膜を構成するクロムと金の各膜厚と低温における周波数特性の関係を示す表。
【図9】図1の圧電デバイスの蓋体の接合構造の一例を示す部分切断端面図。
【図10】本発明の圧電デバイスの製造方法の一例を示すフローチャート。
【図11】水晶Z板の座標軸を示す図。
【図12】従来の圧電振動片の概略平面図。
【図13】図12の圧電振動片の温度特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1および図2は、本発明の圧電デバイスの実施形態を示しており、図1はその概略平面図、図2は図1のA−A線切断端面図である。また、図3は図1の圧電振動片32の詳細を説明するための拡大平面図、図4は図1の振動腕部分に関するB−B線切断端面図である。
これらの図において、圧電デバイス30は、圧電振動子を構成した例を示しており、この圧電デバイス30は、基体であるパッケージ57内に圧電振動片32を収容している。
パッケージ57は、図1および図2に示すように、例えば、矩形の箱状に形成されており、第1の基板54と、第2の基板55と、第3の基板56の3つの基板を積層して形成されており、例えば、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成形して図示の形状とした後で、焼結して形成されている。
パッケージ57は、圧電振動片32を収容した後で、透明なガラス製の蓋体40が封止材58を用いて接合されることにより、気密に封止されている。これにより、蓋体40を封止した後で、外部からレーザ光を照射して圧電振動片32の電極などをトリミングして、周波数調整できるようになっている。
この蓋封止後の周波数調整を行わない場合には、蓋体40として金属製の蓋体を用いることができ、例えば、コバール製の蓋体などを用いることで、後述するように、シーム溶接による蓋封止を行うことができる。
【0020】
パッケージ57の底部には、製造工程において、脱ガスするための貫通孔27を有している。貫通孔27は、第1の基板54に形成された第1の孔25と、第2の基板55に形成され、上記第1の孔25よりも小さな外径を有し、第1の孔25と連通した第2の孔26で形成されている。
そして、貫通孔27には、封止材28が充填されることにより、パッケージ57内が気密状態となるように孔封止されている。
パッケージ57は、図2に示すように、第3の基板56の内側の材料を除去することで、内部空間Sのスペースを形成している。この内部空間Sが圧電振動片32を収容するための収容空間である。
パッケージ57の第2の基板55に形成した各電極部31−1,31−2の上には、導電性接着剤43を用いて、後述する圧電振動片32の支持用アーム61,62の後述する引出し電極形成箇所を載置して接合している。
このため、図1の圧電デバイス30よりも圧電振動片32を接合する接合強度に優れている。
【0021】
圧電振動片32は、例えば水晶で形成されており、水晶以外にもタンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。この圧電振動片32は、図1に示すように、基部51と、この基部51の一端(図において右端)から、右方に向けて、二股に別れて平行に延びる一対の振動腕35,36を備えている。
各振動腕35,36の主面の表裏には、好ましくは、それぞれ長さ方向に延びる長溝33,34をそれぞれ形成し、図1および図4に示すように、この長溝内に駆動用の電極である励振電極37,38が設けられている。
尚、この実施形態では、各振動腕35,36の先端部は、ややテーパ状に次第に拡幅されることにより、重量増加され、錘の役割を果たすようにされている。これにより、振動腕の屈曲振動がされやすくなっている。
【0022】
また、圧電振動片32は、その基部51の振動腕を形成した一端より、図1において、所定距離BL(基部長さL2+切り込み部長さ)を隔てた他端(図において左端)において、基部51の幅方向に延長され、かつ振動腕35,36の両外側の位置で、各振動腕35,36の延びる方向(図1において右方向)に、これら振動腕35,36と平行に延びている支持用アーム61,62を備えている。
このような圧電振動片32の音叉状の外形と、各振動腕に設ける長溝は、それぞれ例えば水晶ウエハなどの材料をフッ酸溶液などでウエットエッチングしたり、ドライエッチングすることにより精密に形成することができる。
【0023】
励振電極37,38は、長溝33,34内と、各振動腕の側面とに形成され、各振動腕について長溝内の電極と、側面に設けた電極が対となるようにされている。そして、各励振電極37,38は、それぞれ引出し電極37a,38aとして、支持用アーム61,62に引き回されている。これにより、圧電デバイス30を実装基板などに実装した場合に、外部からの駆動電圧が、実装端子41から、電極部31−1,31−2を介して圧電振動片32の各支持用アーム61,62の引出し電極37a,38aに伝えられ、各励振電極37,38に伝えられるようになっている。
そして、長溝33,34内の励振電極に駆動電圧が印加されることによって、駆動時に、各振動腕の長溝が形成された領域の内部の電界効率を高めることができるようになっている。
【0024】
ここで、励振電極37,38は下地金属層の上に導通性に優れた金属で電極層を形成することで作られる。
この実施形態では、下地金属層として、クロム(Cr)層を成膜し、電極層として金(Au)層を成膜して、後述する製造工程において、フォトリソグラフィなどの手法により図1に示すような形状の電極に形成されている。
この場合、下地層と電極層(図示せず)の各成膜は、スパッタリングや蒸着により行われるが、水晶ウエハなどから多数の圧電振動片を形成するためのバッジ工程では、蒸着により成膜するのが好ましい。
【0025】
また、図3に示すように、好ましくは、基部51には、基部51の振動腕側の端部から十分離れた位置において、両側縁に、基部51の幅方向の寸法を部分的に縮幅して形成した凹部もしくは切り込み部71,72を設けている。
これにより、振動腕35,36が屈曲振動する際に振動漏れが基部51側に漏れ、支持用アーム61,62に伝搬することを抑制し、CI値を低く抑えることができる。
なお、強度が許す場合には、基部51の例えば中心付近に図示しない貫通孔を形成し、該貫通孔周縁近傍に応力を集中させるようにすることで、振動漏れが、支持用アーム61,62に伝搬することを抑制し、CI値を低く抑えることができる。
図3に示すように、この切り込み部71,72に挟まれた部分が連結部73である。連結部73は、基部51の他端側において、両側方に延長された延長部である接続部74に一体に接続されている。すなわち、この最も外側で基部51の幅方向に延長された部分(接続部74)は、平行な一対の支持用アーム61,62とを繋ぐ部分であり、接続部として機能するものである。
ここで、図3において、連結部73の幅寸法をrとし、基部51の幅寸法をeとすると、連結部の幅rと前記基部の幅eの比率であるr/eが、40%以下とされており、さらに好ましくは、r/eが、23%以上とされている。
【0026】
次に、支持用アームの構造について説明する。
支持用アーム61と支持用アーム62は同一の形状であるから、支持用アーム61について図3を参照しながら説明すると、その長さ寸法uは、圧電振動片32の全長aに対して、60ないし80%とすることが、安定した支持構造を得るために必要である。
また、支持用アーム61,62の外側コーナ部61a,62aは、それぞれ内方に凸もしくは外方に凸となったR状に面取りされることにより、欠けたりする損傷を防止している。
【0027】
パッケージ57の第2基板55に形成した電極部31−1、31−2と支持用アームとの接合箇所は、例えば、一方の支持用アーム61に関して、圧電振動片32の長さ寸法の重心位置Gに相当する箇所をひとつだけ選択することもできる。しかし、図1で示すように、上記重心G位置を挟んで該重心位置から等距離離れた2点を選んで電極部31−1,31−2を設定し、接合すると、より接合構造が強化され、安定するので好ましい。
ひとつの支持用アームについて、1点で接合する場合は、接着剤塗布領域の長さが、圧電振動片32の全長aの25%以上を確保することが十分な接合強度を得る上で好ましい。
この実施形態のように、2点の接合箇所(両方の支持用アームを合わせると4箇所)を設ける場合には、接合箇所どうしの間隔を圧電振動片32の全長aの25%以上とすることが十分な接合強度を得る上で好ましい。
【0028】
なお、各電極部31−1,31−2のうち、少なくとも一組の電極部31−1,31−2はパッケージ裏面の実装端子41,41と導電スルーホールなどで接続されている。パッケージ57は、圧電振動片32を収容した後で、透明なガラス製の蓋体40が封止材58を用いて接合されることにより、気密に封止されている。
尚、蓋体40は、透明な材料でなく、例えば、コバールなどの金属板体をシーム封止などで接合する構造としてもよい。
【0029】
ここで、本実施形態では、上述した支持用アーム61,62が延びる箇所、すなわち、基部51の他端部53は、振動腕35,36の付け根部52よりも十分離れた距離BL(基部長さL2+切り込み部長さ)を有するようにされている。
この距離BLは、好ましくは、振動腕35,36の腕幅寸法Wの大きさを超える寸法とされている。
すなわち、音叉型振動片の振動腕35,36が屈曲振動する際に、その振動漏れが基部51に向かって伝えられる範囲は、振動腕35,36の腕幅寸法Wと相関がある。本発明者はこの点に着目し、支持用アーム61,62の基端となる箇所を適切な位置に設けなければならないという知見を持った。
【0030】
そこで、本実施形態では、支持用アーム61,62の基端となる箇所53について、振動腕の付け根部52を起点として、振動腕の腕幅寸法Wの大きさに対応した寸法を超える位置を選択することで、振動腕35,36からの振動漏れが、支持用アーム61,62側に伝搬することを、より確実に抑制する構造とすることができたものである。したがって、CI値を抑制して、かつ後述する支持用アームの作用効果を得るためには、53の位置を振動腕35,36の付け根部(すなわち、基部51の一端部である)52の箇所から上記BLの距離だけ離すことが好ましい。
同様の理由により、切り込み部71,72が形成される箇所も、振動腕35,36の付け根部52の箇所から振動腕35,36の腕幅寸法Wの大きさを超える箇所とするのが好ましい。このため、切り込み部71,72は、支持用アーム61,62が基部51に対して一体に接続されている箇所を含んで、そこよりも振動腕寄りの位置に形成される。
尚、支持用アーム61,62は振動に関与しないので、その腕幅寸法Wに特別の条件はないが、支持構造を確実にするため、振動腕よりも大きな幅とすることが好ましい。
【0031】
かくして、この実施形態では、振動腕の腕幅寸法Wが50μm程度、振動腕どうしの間隔MWが80μm程度、支持用アーム61,62の幅fを100μm程度とすることで、圧電振動片32の幅BWを500μmとすることができ、これは図12の圧電振動片1の幅とほぼ同様で、長さは短く、従来と同じ大きさのパッケージに十分収容できるものである。本実施形態は、そのような小型化をはかりつつ、以下のような作用効果を得ることができる。
【0032】
図1の圧電振動片32においては、支持用アーム61,62がパッケージ57側に導電性接着剤43により接合されているので、周囲温度の変化や、落下衝撃などを原因として、その接合箇所に生じた応力変化が、支持用アーム61,62の接合箇所から、基部51の他端部53までの屈曲した距離と、さらには、距離BLを超える基部51の長さ分の距離を隔てて振動腕35,36に影響を与えることはほとんどなく、このため、特に温度特性が良好となる。
しかも、これとは逆に屈曲振動する振動腕35,36からの振動漏れは、基部51を隔てた支持用アーム61,62に達するまでに距離BLを超える基部51の所定長さを隔てていることから、ほとんど及ぶことがない。
【0033】
ここで、基部51の長さが極端に短いと、屈曲振動の漏れた成分が支持用アーム61,62の全体に拡がり、制御が困難となる事態が考えられるが、この実施形態では、そのような事態が十分に回避される。
そして、このような作用を得ることができる上に、支持用アーム61,62は、図示したように、基部51の他端部53から幅方向に延長され、振動腕35,36の外側で、この振動腕と同じ方向に延びる構成としたから、全体の大きさをコンパクトにすることができる。
また、この実施形態では、図1に示すように、支持用アーム61,62の先端が、振動腕35,36の先端よりも基部51寄りになるように形成されている。この点においても、圧電振動片32の大きさをコンパクトにすることができる。
【0034】
さらに、図12の構成と比較して、容易に理解されるように、図12では、互いに接近した引出し電極5と引出し電極6に、導電性接着剤7,8を塗布して接合する構造であるから、これらが接触しないように、短絡を避けてきわめて狭い範囲に接着剤を塗布(パッケージ側)したり、接合後も硬化前に接着剤が流れて短絡しないようにしながら接合工程を実行しなければならず、容易な工程ではなかった。
これに対して、図1の圧電振動片32では、互いにパッケージ57の幅方向一杯に離れた支持用アーム61,62のそれぞれの中間付近に対応する電極部31−1,31−2に、導電性接着剤43,43を塗布すればよいので、上述のような困難さがほとんどなく、また、短絡の心配もないものである。
【0035】
さらに、図3において、圧電振動片32では、振動腕の長さをL1とし、基部51の長さをL2(距離BL−切り込み部長さ)としている。
支持用アーム62と連結部73との間に一体に接続されている接続部の幅L3が60μm以上、100μm以下とされると好ましい。すなわち、この幅L3が60μm未満のものの製造は難しい。L3が100μmを超えると、圧電振動片の小型化の障害になるだけでなく、振動腕35、36が接続されている基部51の一端から、圧電振動片の振動腕35、36の反対側の一端までの長さ寸法hと、接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、20%以上40%以下とすることが困難になる。
なお、図3において幅寸法L3は、やや広い接続部74の本来の幅寸法L3−1よりも縮幅した縮幅とされ、該縮幅部の幅寸法がL3とされている。
これは、以下の理由による。
【0036】
本発明者等の研究によれば、パッケージなどへの接合部である支持用アーム62が接合されると、そこに用いられた接着剤などの影響により、低温試験特に温度特性、における低温の残留応力による影響が、この接続部74と、連結部73を介して、基部51から振動腕に至る経路を伝搬すると考えられる。この残留応力が振動腕35,36の屈曲振動に悪影響を与えるのであるが、これを防止するには、この経路中のどこかで応力が集中する箇所を設けることである。
しかしながら、種々試行してみると、支持用アーム61,62の接合箇所以外の箇所に、切り込み等を形成することはある程度の効果は期待できるものの、支持するための該支持用アーム自体の全体の剛性が低下し、振動腕側からの振動漏れの影響が出て必ずしも満足できる結果とならない。
また、後述するように切り込み部71,72を深くして、連結部73を小さくすることは、かなり良い効果が期待できるものの、振動腕にやや近すぎることで、単に連結部73の幅寸法rを小さくすることだけでは、満足する結果が得られなかった。
そこで、振動腕35、36が接続されている基部51の一端から、圧電振動片の振動腕35、36の反対側の一端までの長さ寸法hと、接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hに関して、これを40%以下とすることで、後述するように、きわめてよい効果が得られることを見出したものである。
なお、基部51において、幅寸法L3は、やや広い接続部74の本来の幅寸法L3−1よりも縮幅した縮幅とされ、該縮幅部の幅寸法がL3とされているのは、上記のとおりであるが、製造工程の都合などにより、該縮幅部を形成しない場合には、L3=L3−1となる。
【0037】
次に、本実施形態の圧電振動片32の好ましい詳細構造について、図3および図4を参照しながら説明する。
図3に示す圧電振動片32の各振動腕35,36は同じ形状であるから、振動腕36について説明すると、基部51から各振動腕が延びる基端部Tでは、振動腕幅が最も広い。そして、振動腕36の付け根部であるこのTの位置から振動腕36の先端側に僅かな距離だけ離れたUの箇所の間において、急激に縮幅する第1の縮幅部TLが形成されている。そして第1の縮幅部TLの終端であるUの位置から、振動腕36のさらに先端側に向かってPの位置まで、すなわち、振動腕に関して、CLの距離にわたって、徐々に連続的に縮幅する第2の縮幅部が形成されている。
【0038】
このため、振動腕36は基部に近い付け根付近が、第1の縮幅部TLを設けることにより、高い剛性を備えるようにされている。また、第1の縮幅部の終端Uから先端に向かうにつれて、第2の縮幅部CLを形成したことにより、連続的に剛性が低くなるようにされている。Pの箇所は腕幅の変更点Pであり、振動腕36の形態上くびれた位置であるから、くびれ位置Pと表現することもできる。振動腕36においては、この腕幅の変更点Pよりもさらに先端側は、腕幅が同じ寸法で延長されるか、好ましくは図示のように徐々に僅かに拡大している。
【0039】
ここで、図3の長溝33,34が長い程、振動腕35,36を形成する材料について電界効率が向上する。ここで、振動腕の全長L1に対して、長溝33,34の基部51からの長さj(長溝の長さ)が、少なくともj/L1=0.7程度までは、長くするほど音叉型振動片のCI値は下がることがわかっている。このため、j/L1=0.5ないし0.7であることが好ましい。この実施形態では、図3において、振動腕36の全長L1は、例えば1250μm程度である。
【0040】
また、長溝の長さを適切に長くして、十分にCI値の抑制をはかるようにした場合、次に圧電振動片32のCI値比(高調波のCI値/基本波のCI値)が問題となる。
すなわち、基本波のCI値が低減されると同時に、高調波のCI値も抑制され、該高調波のCI値が、基本波のCI値よりも小さくなると、高調波により発振しやすくなってしまう。
そこで、長溝を長くしてCI値を低くするだけでなく、さらに、腕幅が縮小から拡大に変更する変更点Pについても振動腕の先端よりに設けることで、CI値を低減しつつ、さらにCI値比(高調波のCI値/基本波のCI値)を大きくすることができる。
すなわち、振動腕36ではその根本部分、つまり、付け根付近が、第1の縮幅部TLにより、剛性が強化されている。これにより、振動腕の屈曲振動を一層安定させることができ、CI値の抑制をはかることができる。
【0041】
しかも、第2の縮幅部CLを設けたことで、振動腕36は、その付け根付近から、先端側に向かって、腕幅の変更点であるくびれ位置Pまで、徐々に剛性が低下し、くびれ位置Pからさらに先端側では、長溝34が無く、腕幅を徐々に拡大させていることから、剛性は先端側にいくに従って高くされている。
このため、2次の高調波における振動の際の振動の「節」を、振動腕36のより先端側に位置させることができると考えられ、このことにより、長溝34を長くして圧電材料の電界効率を上げ、CI値を上昇させても、基本波のCI値を抑制しながら、2次の高調波のCI値の低下を招くことがないようにすることができる。このことから、図3に示すように、好ましくは腕幅の変更点Pを長溝の先端部よりも、振動腕の先端側に設けることで、ほぼ確実にCI値比を大きくして、高調波による発振を防止できる。
【0042】
さらに、本発明者の研究によると、振動腕の全長L1に対して、長溝33,34の基部51からの長さjとしたときの、上記j/L1と、振動腕36の最大幅/最小幅の値である腕幅縮幅率Mと、これらに対応したCI値比(第2高調波のCI値/基本波のCI値)とは相関がある。
そして、上記j/L1=61.5%とした場合、振動腕36の最大幅/最小幅の値である腕幅縮幅率Mを1.06よりも大きくすることにより、CI値比を1より大きくすることができ、高調波による発振を防止することができることが確認されている。
かくして、全体を小型化しても、基本波のCI値を低く抑えることができ、ドライブ特性が悪化することがない圧電振動片を提供することができる。
【0043】
次に、圧電振動片32のさらに好ましい構造について説明する。
図4の寸法xで示すウエハ厚み、すなわち、圧電振動片を形成する水晶ウエハの厚みは、70μmないし130μmが好ましい。
図3の寸法aで示す圧電振動片32の全長は、1300μmないし1600μm程度である。振動腕の全長である寸法L1は、1100ないし1400μmとし、圧電振動片32の全幅dは、400μmないし600μmとすることが、圧電デバイスの小型化の上で好ましい。このため、音叉部分の小型化のためには、基部51の幅寸法eは200ないし400μm、支持用アームの幅fは、30ないし100μmとすることが支持効果を確実にする上で必要である。
【0044】
また、図3の振動腕35と36の間の寸法kは、50ないし100μmとするのが好ましい。寸法kが50μmより少ないと、圧電振動片32の外形を、後述するように、水晶ウエハをウエットエッチングにより貫通させて形成する場合に、エッチング異方性に基づく異形部、すなわち、図4の符号81で示した振動腕側面におけるプラスX軸方向へのヒレ状凸部を、十分に小さくすることが困難になる。寸法kが100μm以上となると、振動腕の屈曲振動が不安定になるおそれがある。
さらに、図4の振動腕35(振動腕36も同じ)における長溝33の外縁と振動腕の外縁との寸法m1,m2は、ともに3ないし15μmとするとよい。寸法m1,m2は15μm以下とすることで、電界効率が向上し、3μm以上とすることで、電極の分極が確実に行われるのに有利である。
【0045】
図3の振動腕36において、第1の縮幅部TLの幅寸法mが11μm以上あると、CI値の抑制に確実な効果が期待できる。
図3の振動腕36において、腕幅の変更点Pよりも先端側が拡幅している拡幅度合いが、振動腕36の腕幅が最小とされている箇所である該腕幅の変更点Pの箇所の幅に対して、0ないし20μm程度の増加とするのが好ましい。これを超えて拡幅されると、振動腕36の先端部が重くなりすぎて、屈曲振動の安定性を損なうおそれがある。
【0046】
また、図4における振動腕35(振動腕36も同じ)の外側の一側面に、プラスX軸方向にヒレ状に突出する異形部81が形成されている。これは、圧電振動片をウエットエッチングして外形形成する際に、水晶のエッチング異方性によりエッチング残りとして形成されるものであるが、好ましくは、フッ酸とフッ化アンモニウムによるエッチング液中で、9時間ないし11時間エッチングすることにより、該異形部81の突出量vを5μm以内に低減することが、振動腕35の安定した屈曲振動を得る上で好ましい。
【0047】
図3の寸法gで示す長溝の幅寸法は、振動腕の該長溝が形成されている領域において、振動腕の腕幅cに対して、60ないし90%程度とするのが好ましく、その寸法は40μmないし60μmとするのが好ましい。振動腕35,36には、第1および第2の縮幅部が形成されているので、腕幅cは振動腕の長さ方向の位置により異なるが、振動腕の最大幅に対して、長溝の幅gは60ないし90%程度となる。これより長溝の幅が小さくなると、電界効率が下がり、CI値の上昇につながる。
【0048】
さらに、図3の振動腕35、36が接続されている基部51の一端から、圧電振動片の振動腕35、36の反対側の一端までの長さ寸法hは、圧電振動片32の全長aに対して、従来30%程度あったものが、この実施形態は、切り込み部の採用などにより、15ないし25%程度とすることができ、小型化を実現している。
なお、上記基部51の全長hの寸法は、例えば、150μmないし300μmとすることができる。
また、好ましくは、基部51には、図1の実施形態と同様に、基部51の両側縁に、凹部もしくは切り込み部71,72を設けてあり、その深さ(図3の寸法q)は、例えば80μm程度とすることができる。
さらに、本実施形態では、基部の長さ寸法hと、連結部73を介して支持用アーム61,62が基部51に接続されている接続部74の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされている。この場合、上記比率L3/hは20%以上とされるのが好ましい。
これにより、後述する作用を発揮することができる。
【0049】
また、本実施形態では、パッケージ寸法を小型にするために、基部51の側面と支持用アーム61,62の間隔(寸法p)が30ないし100μmとされている。
図4に示すように、圧電振動片32の各励振電極37,38はクロス配線により、交流電源に接続されており、電源から駆動電圧としての交番電圧が、各振動腕35,36に印加されるようになっている。
【0050】
これにより、振動腕35,36は互いに逆相振動となるように励振され、基本モード、すなわち、基本波において、各振動腕35,36の先端側を互いに接近・離間させるように屈曲振動されるようになっている。
ここで、例えば、圧電振動片32の基本波は、Q値:12000、容量比(C0/C1):260、CI値:57kΩ、周波数:32.768kHz(「キロヘルツ」、以下同じ)である。
また、2次の高調波は、例えば、Q値:28000、容量比(C0/C1):5100、CI値:77kΩ、周波数:207kHzである。
【0051】
図5は、本実施形態の圧電振動片32を利用して圧電発振器を構成する場合の発振回路の例を示す回路図である。
発振回路91は、増幅回路92と帰還回路93を含んでいる。
増幅回路92は、増幅器95と帰還抵抗94を含んで構成されている。帰還回路93は、ドレイン抵抗96と、コンデンサ97,98と、圧電振動片32とを含んで構成されている。
ここで、図5の帰還抵抗94は、例えば10MΩ(メガオーム)程度、増幅器95はCMOSインバータを用いることができる。ドレイン抵抗96は、例えば200ないし900kΩ(キロオーム)、コンデンサ97(ドレイン容量)と、コンデンサ98(ゲート容量)は、それぞれ10ないし22pF(ピコファラド)とすることができる。
【0052】
本実施形態の圧電振動片32、および圧電デバイス30は以上のように構成されており、特徴的な作用効果について説明する。
既に説明したように、本実施形態の圧電振動片32においては、図3において、振動腕35、36が接続されている基部51の一端から、圧電振動片の振動腕35、36の反対側の一端までの長さ寸法hと、連結部73を介して支持用アーム61,62が基部51にそれぞれ接続されている接続部74の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされていることによって、図6に示すような効果が期待できる。
【0053】
すなわち、図6は横軸にL3/hの値をとり、縦軸にマイナス50℃における理想の温度特性に対する周波数のシフト(ズレ)を示している。
図において、L3/hが40%以下の領域では、周波数シフトが極端に小さくなる。また、L3/hが35%以下の領域では、周波数シフトがさらに小さくなる。そして、L3/hの下限は、20%程度であり、下限値を超えて小さくなると、組立工程での折れという弊害がある。
【0054】
さらに好ましくは、図3における圧電振動片32の連結部73の幅寸法rと基部51の幅寸法eの比率であるr/eが、23%以上40%以下とされていることである。
この比率であるr/eが、23%未満となると、落下衝撃などの外部からの衝撃により前記連結部が破断するおそれがあることが確認されている。
このため、比率r/eが、23%以上あることで、しかも40%以下とされることにより、励振部である各振動腕が、パッケージなどへの接合部を含む支持用アームからの影響をきわめて受けにくく、しかも外部からの衝撃で、容易に破損することのない圧電振動片を得ることができる。
【0055】
次に、図7は、本実施形態の圧電振動片32の温度特性試験の結果を示しており、図8は、これに対応して、図3の圧電振動片32の励振電極37,38を形成する下地金属層であるクロム層と、電極層である金層の各層厚みと、低温における周波数のバラツキとの関係を、丸、三角、バツの記号でまとめたものである。ここで、周波数のバラツキがあると、理想的な温度特性に対するズレ、すなわち、周波数ひずみが大きい圧電振動片が製造される。
丸は図7に示すように、最も結果がよく、低温領域で周波数のバラツキが非常に小さいもの、三角はわずかにバラツキがあるが、結果としてほぼ良好であるもの、バツは好ましい結果とは言えない場合を示している。
【0056】
すなわち、励振電極37,38を構成する電極膜の下地層であるクロム層の膜厚が30nm以下であり、金層の膜厚が50nm以下とされると、上記三角以上の好結果を得ることができる。
つまり、クロム層が30nm以下とされることで、低温における電極部のヤング率が大きくなりすぎることがない。また、金層の膜厚が50nm以下とされることで、電極の形成コストの上昇を抑えることができる。これによって、圧電振動片32を小型に形成しても、低温時に屈曲振動の妨げとなるCI値を抑制し、低温における周波数ひずみを防止するとともに、十分な導通性能を発揮して、温度特性が良好な圧電振動片を提供することができる。
【0057】
また、図8において、励振電極37,38を構成する電極膜の下地層であるクロム層の膜厚が20nm以下とされる場合に、電極膜である金層の膜厚が40nm以下とされると好ましい。
すなわち、クロム層の膜厚を20nm以下に抑制すると、金層の膜厚を40nm以下として十分な膜厚とし、導通性能を向上させても低温における周波数ひずみを防止することができる。
【0058】
さらに、図8において、クロム層の膜厚が10nm以下とされる場合に、金層の膜厚が50nm以下とされるとより好ましい。
すなわち、クロム層の膜厚を10nm以下に抑制すると、金層の膜厚を50nm以下として十分な膜厚とし、さらに導通性能を向上させても低温における周波数ひずみを防止することができる。
【0059】
(圧電デバイスの製造方法)
次に、図10のフローチャートを参照しながら、上述の圧電デバイスの製造方法の一例を説明する。
(蓋体およびパッケージの製造方法)
圧電デバイス30の圧電振動片32と、パッケージ57と、蓋体40は、それぞれ別々に製造される。
蓋体40は、例えば、所定の大きさのガラス板、例えば、硼珪酸ガラスの板ガラスを切断し、パッケージ57を封止するのに適合する大きさの蓋体として用意される。
パッケージ57は、上述したように、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成形して形成される複数の基板を積層した後、焼結して形成されている。成形の際には、複数の各基板は、その内側に所定の孔を形成することで、積層した場合に内側に所定の内部空間Sを形成する。
【0060】
(圧電振動片の製造方法)
先ず、圧電基板を用意し、ひとつの圧電基板から所定数の圧電振動片について、同時にその外形をエッチングにより形成する(外形エッチング)。
ここで、圧電基板は、圧電材料のうち、例えば、圧電振動片32を複数もしくは多数分離することができる大きさの水晶ウエハが使用される。この圧電基板は工程の進行により図3の圧電振動片32(図1の圧電振動片32なども同様に製造される)を形成するので、図1あるいは図4に示すX軸が電気軸、Y軸が機械軸及びZ軸が光学軸となるように、圧電材料、例えば水晶の単結晶から切り出されることになる。また、水晶の単結晶から切り出す際、上述のX軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系において、Z軸を中心に時計回りに0度ないし5度(図11のθ)の範囲で回転して切り出した水晶Z板を所定の厚みに切断研磨して得られる。
【0061】
外形エッチングでは、図示しない耐蝕膜などのマスクを用いて、圧電振動片の外形から外側の部分として露出した圧電基板に関して、例えば、フッ酸溶液をエッチング液として、圧電振動片の外形のエッチングを行う。耐蝕膜としては、例えば、クロムを下地として、金を蒸着した金属膜などを用いることができる。このエッチング工程は、ウエットエッチングで、フッ酸溶液の濃度や種類、温度等により変化する。
ここで、外形エッチング工程でのウエットエッチングでは、図3に示した機械軸X、電気軸Y、光学軸Zに関して、エッチングの進行上、次のようなエッチング異方性を示す。
すなわち、圧電振動片32に関して、そのX−Y平面内におけるエッチングレートについては、プラスX方向で、このX軸に対して120度の方向、およびマイナス120度の方向の面内においてエッチングの進行が速く、マイナスX方向でX軸に対してプラス30度の方向、およびマイナス30度の方向の内面のエッチングの進行が遅くなる。
同様に、Y方向のエッチングの進行は、プラス30度方向およびマイナス30度方向が速くなり、プラスY方向で、Y軸に対してプラス120度方向、およびマイナス120度方向が遅くなる。
【0062】
このようなエッチング進行上の異方性により、圧電振動片32では、図4の符号81で示されているように、各振動腕の外側側面に、ヒレ状に突出した異形部が形成される。
しかしながら、この実施形態では、エッチング液として、フッ酸および、フッ化アンモニウムを用いて、十分な時間、すなわち、9時間ないし11時間という十分な時間をかけて、エッチングを行うことにより、図4で説明した異形部81の突出量vが5μm以内と、きわめて小さくすることができる(ST11)。
この工程において、圧電振動片32の切り込み部71,72を含む外形が同時に形成され、終了時には、水晶ウエハに対して、それぞれ細い一体部で基部51付近を接続された多数の圧電振動片32の外形完成状態のものが得られる。
【0063】
(溝形成のためのハーフエッチング工程)
次に、図示しない溝形成用レジストにより、図4で示した形態となるように、各長溝を挟む両側の壁部を残す様にして、溝を形成しない部分に耐蝕膜を残し、外形エッチングと同じエッチング条件で、各振動腕35,36の表面と裏面を、それぞれウエットエッチングすることにより長溝に対応した底部を形成する(ST12)。
ここで、図4を参照すると、符号tで示す溝深さは、全体厚みxに対して、30ないし45%程度とされる。tに関して、全体厚みxの30%以下だと、電界効率を十分向上させることができない場合がある。45%以上だと、剛性が不足して、屈曲振動に悪影響を与えたり、強度が不足する場合がある。
【0064】
なお、上記外形エッチングおよび溝エッチングは、その一方もしくは両方をドライエッチングにより形成してもよい。その場合には、例えば、圧電基板(水晶ウエハ)上に、圧電振動片32の外形や、外形形成後には、長溝に相当する領域を、その都度メタルマスクを配置して覆う。この状態で、例えば、図示しないチャンバー内に収容し、所定の真空度でエッチングガスを供給して、エッチングプラズマを生成しドライエッチングすることができる。つまり、真空チャンバー(図示せず)には、例えば、フレオンガスボンベと酸素ガスボンベとが接続され、さらに、真空チャンバーには、排気管が設けられ、所定の真空度に真空引きされるようになっている。
真空チャンバー内が、所定の真空度に真空排気され、フレオンガスと、酸素ガスが送られ、その混合ガスが所定の気圧になるまで充填された状態にて、直流電圧が印加されると、プラズマが発生する。そして、イオン化された粒子を含む混合ガスは、メタルマスクから露出した圧電材料に当たる。この衝撃により、物理的に削り取られて飛散し、エッチングが進行する。
【0065】
(電極形成工程)
次に、蒸着もしくはスパッタリングなどによって、電極となる金属、例えば、金を全面に被覆し、次いで、電極を形成しない箇所を露出したレジストを用いて、フォトリソグラフィの手法により、図1で示した駆動用の電極を形成する(ST13)。
その後、各振動腕35,36の先端部には、スパッタリングや蒸着により、錘付け電極(金属被膜)21,21が形成される(ST14)。錘付け電極21,21は通電されて圧電振動片32の駆動に用いられるのではなく、後述する周波数調整に利用される。
【0066】
次いで、ウエハ上で、周波数の粗調整が行われる(ST15)。粗調整は、錘付け電極21,21の一部をレーザ光などのエネルギービームを照射することにより、部分的に蒸散させる質量削減方式による周波数調整である。
続いて、上記したウエハに対する細い一体部を折り取り、圧電振動片32を個々に形成する個片にする(ST16)。
次に、図1で説明したように、パッケージ57の各電極部31−1,31−2,31−1,31−2に導電性接着剤43,43,43,43を塗布し、その上に支持用アーム61,62を載置して、接着剤を加熱・硬化させることにより、パッケージ57に対して、圧電振動片32を接合する(ST17)。
なお、この導電性接着剤43としては、例えば、合成樹脂などを利用したバインダー成分に、銀粒子などの導電粒子を混入したもので、機械的接合と電気的接続とを同時に行うことができるものである。
【0067】
次に蓋封止を行う。
パッケージ57を透明な蓋体40で封止する場合には、圧電振動片32のST17における接合後において、該蓋体40をパッケージ57に接合する(ST18−2)。
この場合、例えば、低融点ガラスなどを加熱して、蓋体40をパッケージ57に接合する加熱工程が行われるが、この際に、低融点ガラスや導電性接着剤などからガスが生成される。
そこで、加熱により、このようなガスを図2で説明した貫通孔27から排出し(脱ガス)、その後、真空中で段部29に、好ましくは、金すずなどでなる金属球体やペレットを配置し、レーザ光などを照射することにより、溶融する。これにより図2の封止材(金属充填材)28が貫通孔27を気密に封止する(ST19−2)。
次いで、図2で示すように、ガラスなどでなる透明な蓋体40を透過させるように外部からレーザ光を圧電振動片32の振動腕35および/または振動腕36の錘付け電極21の先端側に照射し、質量削減方式により微調整としての周波数調整を行う(ST20−2)。次いで、必要な検査を経て、圧電デバイス30が完成する。
【0068】
あるいは、蓋体40として、金属製のものを用いて、図9に示すように接合すると、より好ましい。
蓋体の接合前には、パッケージに圧電振動片32を接合した状態で通電し、振動腕35,36の錘付け電極21,21の一部をレーザ光などのエネルギービームを照射することにより、部分的に蒸散させて、質量削減方式による周波数の微調整をする(ST18−1)。
次に蓋封止を行う。
図9は、蓋体40の接合状態を説明する部分切断端面図である。
この場合、蓋体40としてはコバルトと鉄の合金であるコバールが好適に使用される。 パッケージ57の上端には、予めメタライズ部82が形成される。パッケージ側に形成されるメタライズ部82としては、例えば、下から上へ順に、タングステン(W)82a、ニッケル(Ni)82b、金(Au)82cの各層が形成される。あるいは、モリブデン(Mo)82a、ニッケル(Ni)82b、金(Au)82cの層構造としてもよい。
【0069】
これに対して、コバール製の蓋体40の少なくとも接合面には、ニッケル(Ni)層83aの表面に金(Au)層83bがメッキされたメッキ層83が形成されている。すなわち、パッケージと蓋体の両方の接合面には金が露出されており、ロウ材58としては金(Au)−ゲルマニウム(Ge)合金84が使用されている。
つまり、金ゲルマニウムのロウ材84を用いて、加熱チャンバー内等に収容して加熱しロウ材を溶融させて接合する(ST19−1)。
【0070】
ここで、このような蓋体40の接合工程では、熱が発生し、この際に、導電性接着剤などから、あるいはパッケージ内面の水分が気化したりしてガスが生成される。
そこで、ST19−2と同様に、例えば真空チャンバー内などに収容して加熱し、上記した蓋体接合の際などに生じたガスを、図2で説明した貫通孔27から排出し(脱ガス)、その後、真空中で段部29に好ましくは、金−ゲルマニウム(Au−Ge)合金でなる金属球体やペレットを配置し、レーザ光などを照射することにより、溶融する。これにより図2の封止材(金属充填材)28が貫通孔27を気密に封止する(ST20−1)。
次いで、必要な検査を経て、圧電デバイス30が完成する。
【0071】
かくして、金属製の蓋体40を用いる場合には、ガラス製の蓋体を低融点ガラスのロウ材で接合する場合と比べて、金−ゲルマニウム合金のロウ材を用いることで、限られた大きさの封止代(しろ)Dであっても、十分接合強度を得ることができる。特に、封止孔である貫通孔27を利用したガス出しにおいて、十分加熱しても蓋体40の接合に影響することがなく、優れた気密性を実現できる。また、圧電デバイス30の実装工程においてリフロー炉を通した場合にも、ロウ材が再溶融することなく、接合性能に優れている。
【0072】
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
また、この発明は、箱状のパッケージに圧電振動片を収容したものに限らず、シリンダー状の容器に圧電振動片を収容したもの、圧電振動片をジャイロセンサーとして機能するようにしたもの、さらには、圧電振動子、圧電発振器等の名称にかかわらず、圧電振動片を利用したあらゆる圧電デバイスに適用することができる。さらに、圧電振動片32では、一対の振動腕を形成しているが、これに限らず、振動腕は3本でも、4本以上でもよい。
【符号の説明】
【0073】
30…圧電デバイス、32…圧電振動片、33,34…長溝、35,36…振動腕、51…基部、61,62…支持用アーム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片と、パッケージやケース内に圧電振動片を収容した圧電デバイスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器や圧電ジャイロセンサー等において、圧電振動子や圧電発振器等の圧電デバイスが広く使用されている。
図12は、圧電デバイスに従来より用いられている圧電振動片の一例を示す概略平面図である。
【0003】
図において、圧電振動片1は、水晶などの圧電材料をエッチングすることにより、図示する外形を形成するもので、パッケージ(図示せず)等に取付けられる矩形の基部2と、基部2から図において上方に延長された一対の振動腕3,4を備えており、これら振動腕の主面(表裏面)に長溝3a,4aを形成するとともに、必要な駆動用の電極を形成したものである(特許文献1参照)。
このような圧電振動片1においては、駆動用の電極を介して駆動電圧が印加されると、各振動腕3,4の先端部を近接・離間するようにして、屈曲振動することにより、所定の周波数の信号が取り出されるようになっている。
【0004】
ところで、このような圧電振動片1は、基部2の符号5,6で示す箇所に引出し電極が形成され、この部分に接着剤7,8を塗布して、例えばパッケージなどの基体に固定支持される。
そして、この接着剤による固定支持後に、圧電振動片を構成する材料と、パッケージなどの材料の線膨張係数の相違などに起因して残る残留応力が、振動腕の屈曲振動を妨げないように、基部2に切り込み部9を形成するようにしている。
このような、圧電振動片1においては各部位の小寸法化を進め、これに対応して、基部の長さも小さな寸法とされることで、圧電振動片1の小型化が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−261575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このように小型化を進めた圧電振動片1においては、以下の理由により、温度特性試験において、好ましい結果が得られない場合がある。
すなわち、圧電振動片1を水晶で形成した場合に、その線膨張係数は13.8ppm/℃であるが、これを収容して接合するパッケージについては、アルミナセラミックパッケージで7.0ppm/℃である。
そして、圧電振動片1のパッケージへの接合工程(マウント工程)では、導電性接着剤を用いて約200℃で接着剤を硬化させており、硬化後常温に戻した際には、圧電振動片1とパッケージの各線膨張係数の相違に対応した応力が、接合部に働くことになる。
【0007】
このため、温度特性試験を行うと、例えば、図13に示すように、理想の温度特性Aに対して、実際にはBのグラフに示すような特性を示す。
すなわち、マイナス50℃から100℃まで、温度環境を変化させてその特性を試験すると、マイナス50℃の際に上記接合部に働く応力のため、周波数はプラスにシフトしてしまう。また、マイナス55度(「摂氏」、以下、温度表示は全て「摂氏」)で1000H(時間)放置(32kHz(キロヘルツ)の圧電振動子の場合)すると、マイナス55度の最も大きな応力が作用した後で、その後常温に戻すことになり、応力状態が完全に元に戻らず周波数はマイナスにシフトしてしまう。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、小型化を進める上で、温度特性が良好な圧電振動片と、圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧電振動片は、圧電材料により形成された所定長さの基部と、前記基部の一端側から延びる複数の振動腕と、前記基部の一端側より所定距離だけ離れた他端側に接続される連結部と、前記連結部に接続され、圧電振動片の幅方向に延長される接続部と、前記接続部に接続され、かつ前記振動腕の外側において、前記振動腕と同じ方向に延びる支持用アームとを備え、前記基部の前記一端側から、前記圧電振動片の前記振動腕の反対側の一端までの長さ寸法hと、前記連結部を介して前記支持用アームが前記基部に接続されている接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明の圧電振動片の構成によれば、前記基部の一端側より所定距離だけ離れた他端側に接続される連結部と、前記連結部に接続され、圧電振動片の幅方向に延長される接続部と、前記接続部に接続され、かつ前記振動腕の外側において、前記振動腕と同じ方向に延びる支持用アームとを備えている。このため、支持用アームがパッケージなどの基体側に接着などにより接合された場合においては、周囲温度の変化や、落下衝撃などを原因として、その接合箇所に生じた応力変化が、支持用アームの接合箇所から、振動腕に影響を与えることはほとんどなく、このため、特に温度特性が良好となる。しかも、これとは逆に屈曲振動する振動腕からの振動漏れは、支持用アームに達するまでに接続部と連結部を経由していることから、ほとんど及ぶことがない。すなわち、基部長さが極端に短いと、屈曲振動の漏れた成分が支持用アーム全体に拡がり、制御が困難となる事態が考えられるが、この発明において、そのようなおそれがない。
そして、このような作用を得ることができる上に、支持用アームは、基部の他端から幅方向に延長され、振動腕の外側で、この振動腕と同じ方向に延びる構成としたから、全体の大きさをコンパクトにすることができる。
また、本発明の圧電振動片では、前記基部の長さ寸法hと、前記連結部を介して前記支持用アームが前記基部に接続されている接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされている。
これにより、励振部である各振動腕から接合部となる各支持用アームにいたる構造において、パッケージなどへ直接固定される支持用アーム自体や、励振の影響を強く受ける振動腕、およびその形成基端にある前記基部以外の箇所において、適切に応力を集中できる箇所をつくることができ、この部分で支持用アームからの応力による影響が、前記振動腕に伝搬することを防止することができる。これにより、小型化を進める上で、温度特性が良好な圧電振動片を提供することができる。なお、40%を超えると、温度特性が極端に悪くなることが確認されている。
【0011】
また、本発明の圧電振動片は、さらに、前記基部の前記一端側から、前記圧電振動片の前記振動腕の反対側の前記一端までの長さ寸法hと、前記接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、20%以上40%以下とされていることを特徴とする。
このような構成によれば、前記比率であるL3/hが、20%以上とすることで、充分な剛性が得られ、圧電振動片の組立工程で折れるという問題を解決する。
【0012】
また、本発明の圧電振動片は、さらに、前記接続部がくびれるように縮幅された縮幅部を有しており、接続部の幅寸法L3が前記縮幅部の幅寸法であることを特徴とする。
このような構成によれば、支持用アームからの応力による影響が、前記振動腕に伝搬することを防止するために設けられる部分的に剛性の低い構造を、適切に設定することができる。
【0013】
また、本発明の圧電振動片は、さらに、前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、40%以下とされていることを特徴とする。
このような構成によれば、前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、40%以下とされている。このため、励振部である各振動腕が、接合部となる各支持用アームからの影響をきわめて受けにくくなる。
【0014】
また、本発明の圧電振動片は、さらに、前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、23%以上40%以下とされていることを特徴とする。
本発明の発明者は、前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、23%未満となると、落下衝撃などの外部からの衝撃により前記連結部が破断するおそれがあることを確認した。
したがって、前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、23%以上40%以下とされることにより、励振部である各振動腕が、パッケージなどへの接合部を含む支持用アームからの影響をきわめて受けにくく、しかも外部からの衝撃で、容易に破損することのない圧電振動片を得ることができる。
【0015】
本発明の圧電デバイスは、パッケージまたはケース内に圧電振動片を収容した圧電デバイスであって、前記圧電振動片が、圧電材料により形成された所定長さの基部と、前記基部の一端側から延びる複数の振動腕と、前記基部の一端側より所定距離だけ離れた他端側に接続される連結部と、前記連結部に接続され、圧電振動片の幅方向に延長される接続部と、前記接続部に接続され、かつ前記振動腕の外側において、前記振動腕と同じ方向に延びる支持用アームとを備え、前記基部の前記一端側から、前記圧電振動片の前記振動腕の反対側の一端までの長さ寸法hと、前記連結部を介して前記支持用アームが前記基部に接続されている接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされていることを特徴とする。
【0016】
本発明の圧電デバイスの構成によれば、パッケージなどへ直接固定される支持用アーム自体や、励振の影響を強く受ける振動腕、およびその形成基端にある前記基部以外の箇所において、適切に応力を集中できる箇所をつくることができ、この部分で支持用アームからの応力による影響が、前記振動腕に伝搬することを防止することができる。これにより、小型化を進める上で、温度特性が良好な圧電デバイスを提供することができる。
【0017】
本発明の圧電デバイスは、さらに、前記パッケージが、セラミック製の箱状パッケージで、外部に連通した孔封止用の貫通孔を備えるとともに、金属製の蓋体により封止されるようになっており、前記パッケージと前記蓋体とが金−ゲルマニウムの合金でなるロウ材を用いて封止されていることを特徴とする。
このような構成によれば、ガラス製の蓋体を低融点ガラスのロウ材で接合する場合と比べて、金−ゲルマニウム合金のロウ材を用いることで、限られた大きさの封止代(しろ)であっても、十分接合強度を得ることができる。特に、封止孔を利用したガス出しにおいて、十分加熱しても蓋体の接合に影響することがなく、優れた気密性を実現できる。また、実装工程においてリフロー炉を通した場合にも、ロウ材が再溶融することなく、接合性能に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の圧電デバイスの実施形態を示す概略平面図。
【図2】図1のA−A線切断端面図。
【図3】図1の実施形態に係る圧電振動片の概略拡大平面図。
【図4】図1の振動腕部分のB−B線切断端面図。
【図5】図1の圧電振動片を用いた発振回路例を示す回路図。
【図6】図3の圧電振動片の寸法と理想の温度特性に対する周波数シフト(ズレ)を示すグラフ。
【図7】図1の圧電デバイス(圧電振動片)の温度特性試験の結果を示すグラフ。
【図8】励振電極の電極膜を構成するクロムと金の各膜厚と低温における周波数特性の関係を示す表。
【図9】図1の圧電デバイスの蓋体の接合構造の一例を示す部分切断端面図。
【図10】本発明の圧電デバイスの製造方法の一例を示すフローチャート。
【図11】水晶Z板の座標軸を示す図。
【図12】従来の圧電振動片の概略平面図。
【図13】図12の圧電振動片の温度特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1および図2は、本発明の圧電デバイスの実施形態を示しており、図1はその概略平面図、図2は図1のA−A線切断端面図である。また、図3は図1の圧電振動片32の詳細を説明するための拡大平面図、図4は図1の振動腕部分に関するB−B線切断端面図である。
これらの図において、圧電デバイス30は、圧電振動子を構成した例を示しており、この圧電デバイス30は、基体であるパッケージ57内に圧電振動片32を収容している。
パッケージ57は、図1および図2に示すように、例えば、矩形の箱状に形成されており、第1の基板54と、第2の基板55と、第3の基板56の3つの基板を積層して形成されており、例えば、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成形して図示の形状とした後で、焼結して形成されている。
パッケージ57は、圧電振動片32を収容した後で、透明なガラス製の蓋体40が封止材58を用いて接合されることにより、気密に封止されている。これにより、蓋体40を封止した後で、外部からレーザ光を照射して圧電振動片32の電極などをトリミングして、周波数調整できるようになっている。
この蓋封止後の周波数調整を行わない場合には、蓋体40として金属製の蓋体を用いることができ、例えば、コバール製の蓋体などを用いることで、後述するように、シーム溶接による蓋封止を行うことができる。
【0020】
パッケージ57の底部には、製造工程において、脱ガスするための貫通孔27を有している。貫通孔27は、第1の基板54に形成された第1の孔25と、第2の基板55に形成され、上記第1の孔25よりも小さな外径を有し、第1の孔25と連通した第2の孔26で形成されている。
そして、貫通孔27には、封止材28が充填されることにより、パッケージ57内が気密状態となるように孔封止されている。
パッケージ57は、図2に示すように、第3の基板56の内側の材料を除去することで、内部空間Sのスペースを形成している。この内部空間Sが圧電振動片32を収容するための収容空間である。
パッケージ57の第2の基板55に形成した各電極部31−1,31−2の上には、導電性接着剤43を用いて、後述する圧電振動片32の支持用アーム61,62の後述する引出し電極形成箇所を載置して接合している。
このため、図1の圧電デバイス30よりも圧電振動片32を接合する接合強度に優れている。
【0021】
圧電振動片32は、例えば水晶で形成されており、水晶以外にもタンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。この圧電振動片32は、図1に示すように、基部51と、この基部51の一端(図において右端)から、右方に向けて、二股に別れて平行に延びる一対の振動腕35,36を備えている。
各振動腕35,36の主面の表裏には、好ましくは、それぞれ長さ方向に延びる長溝33,34をそれぞれ形成し、図1および図4に示すように、この長溝内に駆動用の電極である励振電極37,38が設けられている。
尚、この実施形態では、各振動腕35,36の先端部は、ややテーパ状に次第に拡幅されることにより、重量増加され、錘の役割を果たすようにされている。これにより、振動腕の屈曲振動がされやすくなっている。
【0022】
また、圧電振動片32は、その基部51の振動腕を形成した一端より、図1において、所定距離BL(基部長さL2+切り込み部長さ)を隔てた他端(図において左端)において、基部51の幅方向に延長され、かつ振動腕35,36の両外側の位置で、各振動腕35,36の延びる方向(図1において右方向)に、これら振動腕35,36と平行に延びている支持用アーム61,62を備えている。
このような圧電振動片32の音叉状の外形と、各振動腕に設ける長溝は、それぞれ例えば水晶ウエハなどの材料をフッ酸溶液などでウエットエッチングしたり、ドライエッチングすることにより精密に形成することができる。
【0023】
励振電極37,38は、長溝33,34内と、各振動腕の側面とに形成され、各振動腕について長溝内の電極と、側面に設けた電極が対となるようにされている。そして、各励振電極37,38は、それぞれ引出し電極37a,38aとして、支持用アーム61,62に引き回されている。これにより、圧電デバイス30を実装基板などに実装した場合に、外部からの駆動電圧が、実装端子41から、電極部31−1,31−2を介して圧電振動片32の各支持用アーム61,62の引出し電極37a,38aに伝えられ、各励振電極37,38に伝えられるようになっている。
そして、長溝33,34内の励振電極に駆動電圧が印加されることによって、駆動時に、各振動腕の長溝が形成された領域の内部の電界効率を高めることができるようになっている。
【0024】
ここで、励振電極37,38は下地金属層の上に導通性に優れた金属で電極層を形成することで作られる。
この実施形態では、下地金属層として、クロム(Cr)層を成膜し、電極層として金(Au)層を成膜して、後述する製造工程において、フォトリソグラフィなどの手法により図1に示すような形状の電極に形成されている。
この場合、下地層と電極層(図示せず)の各成膜は、スパッタリングや蒸着により行われるが、水晶ウエハなどから多数の圧電振動片を形成するためのバッジ工程では、蒸着により成膜するのが好ましい。
【0025】
また、図3に示すように、好ましくは、基部51には、基部51の振動腕側の端部から十分離れた位置において、両側縁に、基部51の幅方向の寸法を部分的に縮幅して形成した凹部もしくは切り込み部71,72を設けている。
これにより、振動腕35,36が屈曲振動する際に振動漏れが基部51側に漏れ、支持用アーム61,62に伝搬することを抑制し、CI値を低く抑えることができる。
なお、強度が許す場合には、基部51の例えば中心付近に図示しない貫通孔を形成し、該貫通孔周縁近傍に応力を集中させるようにすることで、振動漏れが、支持用アーム61,62に伝搬することを抑制し、CI値を低く抑えることができる。
図3に示すように、この切り込み部71,72に挟まれた部分が連結部73である。連結部73は、基部51の他端側において、両側方に延長された延長部である接続部74に一体に接続されている。すなわち、この最も外側で基部51の幅方向に延長された部分(接続部74)は、平行な一対の支持用アーム61,62とを繋ぐ部分であり、接続部として機能するものである。
ここで、図3において、連結部73の幅寸法をrとし、基部51の幅寸法をeとすると、連結部の幅rと前記基部の幅eの比率であるr/eが、40%以下とされており、さらに好ましくは、r/eが、23%以上とされている。
【0026】
次に、支持用アームの構造について説明する。
支持用アーム61と支持用アーム62は同一の形状であるから、支持用アーム61について図3を参照しながら説明すると、その長さ寸法uは、圧電振動片32の全長aに対して、60ないし80%とすることが、安定した支持構造を得るために必要である。
また、支持用アーム61,62の外側コーナ部61a,62aは、それぞれ内方に凸もしくは外方に凸となったR状に面取りされることにより、欠けたりする損傷を防止している。
【0027】
パッケージ57の第2基板55に形成した電極部31−1、31−2と支持用アームとの接合箇所は、例えば、一方の支持用アーム61に関して、圧電振動片32の長さ寸法の重心位置Gに相当する箇所をひとつだけ選択することもできる。しかし、図1で示すように、上記重心G位置を挟んで該重心位置から等距離離れた2点を選んで電極部31−1,31−2を設定し、接合すると、より接合構造が強化され、安定するので好ましい。
ひとつの支持用アームについて、1点で接合する場合は、接着剤塗布領域の長さが、圧電振動片32の全長aの25%以上を確保することが十分な接合強度を得る上で好ましい。
この実施形態のように、2点の接合箇所(両方の支持用アームを合わせると4箇所)を設ける場合には、接合箇所どうしの間隔を圧電振動片32の全長aの25%以上とすることが十分な接合強度を得る上で好ましい。
【0028】
なお、各電極部31−1,31−2のうち、少なくとも一組の電極部31−1,31−2はパッケージ裏面の実装端子41,41と導電スルーホールなどで接続されている。パッケージ57は、圧電振動片32を収容した後で、透明なガラス製の蓋体40が封止材58を用いて接合されることにより、気密に封止されている。
尚、蓋体40は、透明な材料でなく、例えば、コバールなどの金属板体をシーム封止などで接合する構造としてもよい。
【0029】
ここで、本実施形態では、上述した支持用アーム61,62が延びる箇所、すなわち、基部51の他端部53は、振動腕35,36の付け根部52よりも十分離れた距離BL(基部長さL2+切り込み部長さ)を有するようにされている。
この距離BLは、好ましくは、振動腕35,36の腕幅寸法Wの大きさを超える寸法とされている。
すなわち、音叉型振動片の振動腕35,36が屈曲振動する際に、その振動漏れが基部51に向かって伝えられる範囲は、振動腕35,36の腕幅寸法Wと相関がある。本発明者はこの点に着目し、支持用アーム61,62の基端となる箇所を適切な位置に設けなければならないという知見を持った。
【0030】
そこで、本実施形態では、支持用アーム61,62の基端となる箇所53について、振動腕の付け根部52を起点として、振動腕の腕幅寸法Wの大きさに対応した寸法を超える位置を選択することで、振動腕35,36からの振動漏れが、支持用アーム61,62側に伝搬することを、より確実に抑制する構造とすることができたものである。したがって、CI値を抑制して、かつ後述する支持用アームの作用効果を得るためには、53の位置を振動腕35,36の付け根部(すなわち、基部51の一端部である)52の箇所から上記BLの距離だけ離すことが好ましい。
同様の理由により、切り込み部71,72が形成される箇所も、振動腕35,36の付け根部52の箇所から振動腕35,36の腕幅寸法Wの大きさを超える箇所とするのが好ましい。このため、切り込み部71,72は、支持用アーム61,62が基部51に対して一体に接続されている箇所を含んで、そこよりも振動腕寄りの位置に形成される。
尚、支持用アーム61,62は振動に関与しないので、その腕幅寸法Wに特別の条件はないが、支持構造を確実にするため、振動腕よりも大きな幅とすることが好ましい。
【0031】
かくして、この実施形態では、振動腕の腕幅寸法Wが50μm程度、振動腕どうしの間隔MWが80μm程度、支持用アーム61,62の幅fを100μm程度とすることで、圧電振動片32の幅BWを500μmとすることができ、これは図12の圧電振動片1の幅とほぼ同様で、長さは短く、従来と同じ大きさのパッケージに十分収容できるものである。本実施形態は、そのような小型化をはかりつつ、以下のような作用効果を得ることができる。
【0032】
図1の圧電振動片32においては、支持用アーム61,62がパッケージ57側に導電性接着剤43により接合されているので、周囲温度の変化や、落下衝撃などを原因として、その接合箇所に生じた応力変化が、支持用アーム61,62の接合箇所から、基部51の他端部53までの屈曲した距離と、さらには、距離BLを超える基部51の長さ分の距離を隔てて振動腕35,36に影響を与えることはほとんどなく、このため、特に温度特性が良好となる。
しかも、これとは逆に屈曲振動する振動腕35,36からの振動漏れは、基部51を隔てた支持用アーム61,62に達するまでに距離BLを超える基部51の所定長さを隔てていることから、ほとんど及ぶことがない。
【0033】
ここで、基部51の長さが極端に短いと、屈曲振動の漏れた成分が支持用アーム61,62の全体に拡がり、制御が困難となる事態が考えられるが、この実施形態では、そのような事態が十分に回避される。
そして、このような作用を得ることができる上に、支持用アーム61,62は、図示したように、基部51の他端部53から幅方向に延長され、振動腕35,36の外側で、この振動腕と同じ方向に延びる構成としたから、全体の大きさをコンパクトにすることができる。
また、この実施形態では、図1に示すように、支持用アーム61,62の先端が、振動腕35,36の先端よりも基部51寄りになるように形成されている。この点においても、圧電振動片32の大きさをコンパクトにすることができる。
【0034】
さらに、図12の構成と比較して、容易に理解されるように、図12では、互いに接近した引出し電極5と引出し電極6に、導電性接着剤7,8を塗布して接合する構造であるから、これらが接触しないように、短絡を避けてきわめて狭い範囲に接着剤を塗布(パッケージ側)したり、接合後も硬化前に接着剤が流れて短絡しないようにしながら接合工程を実行しなければならず、容易な工程ではなかった。
これに対して、図1の圧電振動片32では、互いにパッケージ57の幅方向一杯に離れた支持用アーム61,62のそれぞれの中間付近に対応する電極部31−1,31−2に、導電性接着剤43,43を塗布すればよいので、上述のような困難さがほとんどなく、また、短絡の心配もないものである。
【0035】
さらに、図3において、圧電振動片32では、振動腕の長さをL1とし、基部51の長さをL2(距離BL−切り込み部長さ)としている。
支持用アーム62と連結部73との間に一体に接続されている接続部の幅L3が60μm以上、100μm以下とされると好ましい。すなわち、この幅L3が60μm未満のものの製造は難しい。L3が100μmを超えると、圧電振動片の小型化の障害になるだけでなく、振動腕35、36が接続されている基部51の一端から、圧電振動片の振動腕35、36の反対側の一端までの長さ寸法hと、接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、20%以上40%以下とすることが困難になる。
なお、図3において幅寸法L3は、やや広い接続部74の本来の幅寸法L3−1よりも縮幅した縮幅とされ、該縮幅部の幅寸法がL3とされている。
これは、以下の理由による。
【0036】
本発明者等の研究によれば、パッケージなどへの接合部である支持用アーム62が接合されると、そこに用いられた接着剤などの影響により、低温試験特に温度特性、における低温の残留応力による影響が、この接続部74と、連結部73を介して、基部51から振動腕に至る経路を伝搬すると考えられる。この残留応力が振動腕35,36の屈曲振動に悪影響を与えるのであるが、これを防止するには、この経路中のどこかで応力が集中する箇所を設けることである。
しかしながら、種々試行してみると、支持用アーム61,62の接合箇所以外の箇所に、切り込み等を形成することはある程度の効果は期待できるものの、支持するための該支持用アーム自体の全体の剛性が低下し、振動腕側からの振動漏れの影響が出て必ずしも満足できる結果とならない。
また、後述するように切り込み部71,72を深くして、連結部73を小さくすることは、かなり良い効果が期待できるものの、振動腕にやや近すぎることで、単に連結部73の幅寸法rを小さくすることだけでは、満足する結果が得られなかった。
そこで、振動腕35、36が接続されている基部51の一端から、圧電振動片の振動腕35、36の反対側の一端までの長さ寸法hと、接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hに関して、これを40%以下とすることで、後述するように、きわめてよい効果が得られることを見出したものである。
なお、基部51において、幅寸法L3は、やや広い接続部74の本来の幅寸法L3−1よりも縮幅した縮幅とされ、該縮幅部の幅寸法がL3とされているのは、上記のとおりであるが、製造工程の都合などにより、該縮幅部を形成しない場合には、L3=L3−1となる。
【0037】
次に、本実施形態の圧電振動片32の好ましい詳細構造について、図3および図4を参照しながら説明する。
図3に示す圧電振動片32の各振動腕35,36は同じ形状であるから、振動腕36について説明すると、基部51から各振動腕が延びる基端部Tでは、振動腕幅が最も広い。そして、振動腕36の付け根部であるこのTの位置から振動腕36の先端側に僅かな距離だけ離れたUの箇所の間において、急激に縮幅する第1の縮幅部TLが形成されている。そして第1の縮幅部TLの終端であるUの位置から、振動腕36のさらに先端側に向かってPの位置まで、すなわち、振動腕に関して、CLの距離にわたって、徐々に連続的に縮幅する第2の縮幅部が形成されている。
【0038】
このため、振動腕36は基部に近い付け根付近が、第1の縮幅部TLを設けることにより、高い剛性を備えるようにされている。また、第1の縮幅部の終端Uから先端に向かうにつれて、第2の縮幅部CLを形成したことにより、連続的に剛性が低くなるようにされている。Pの箇所は腕幅の変更点Pであり、振動腕36の形態上くびれた位置であるから、くびれ位置Pと表現することもできる。振動腕36においては、この腕幅の変更点Pよりもさらに先端側は、腕幅が同じ寸法で延長されるか、好ましくは図示のように徐々に僅かに拡大している。
【0039】
ここで、図3の長溝33,34が長い程、振動腕35,36を形成する材料について電界効率が向上する。ここで、振動腕の全長L1に対して、長溝33,34の基部51からの長さj(長溝の長さ)が、少なくともj/L1=0.7程度までは、長くするほど音叉型振動片のCI値は下がることがわかっている。このため、j/L1=0.5ないし0.7であることが好ましい。この実施形態では、図3において、振動腕36の全長L1は、例えば1250μm程度である。
【0040】
また、長溝の長さを適切に長くして、十分にCI値の抑制をはかるようにした場合、次に圧電振動片32のCI値比(高調波のCI値/基本波のCI値)が問題となる。
すなわち、基本波のCI値が低減されると同時に、高調波のCI値も抑制され、該高調波のCI値が、基本波のCI値よりも小さくなると、高調波により発振しやすくなってしまう。
そこで、長溝を長くしてCI値を低くするだけでなく、さらに、腕幅が縮小から拡大に変更する変更点Pについても振動腕の先端よりに設けることで、CI値を低減しつつ、さらにCI値比(高調波のCI値/基本波のCI値)を大きくすることができる。
すなわち、振動腕36ではその根本部分、つまり、付け根付近が、第1の縮幅部TLにより、剛性が強化されている。これにより、振動腕の屈曲振動を一層安定させることができ、CI値の抑制をはかることができる。
【0041】
しかも、第2の縮幅部CLを設けたことで、振動腕36は、その付け根付近から、先端側に向かって、腕幅の変更点であるくびれ位置Pまで、徐々に剛性が低下し、くびれ位置Pからさらに先端側では、長溝34が無く、腕幅を徐々に拡大させていることから、剛性は先端側にいくに従って高くされている。
このため、2次の高調波における振動の際の振動の「節」を、振動腕36のより先端側に位置させることができると考えられ、このことにより、長溝34を長くして圧電材料の電界効率を上げ、CI値を上昇させても、基本波のCI値を抑制しながら、2次の高調波のCI値の低下を招くことがないようにすることができる。このことから、図3に示すように、好ましくは腕幅の変更点Pを長溝の先端部よりも、振動腕の先端側に設けることで、ほぼ確実にCI値比を大きくして、高調波による発振を防止できる。
【0042】
さらに、本発明者の研究によると、振動腕の全長L1に対して、長溝33,34の基部51からの長さjとしたときの、上記j/L1と、振動腕36の最大幅/最小幅の値である腕幅縮幅率Mと、これらに対応したCI値比(第2高調波のCI値/基本波のCI値)とは相関がある。
そして、上記j/L1=61.5%とした場合、振動腕36の最大幅/最小幅の値である腕幅縮幅率Mを1.06よりも大きくすることにより、CI値比を1より大きくすることができ、高調波による発振を防止することができることが確認されている。
かくして、全体を小型化しても、基本波のCI値を低く抑えることができ、ドライブ特性が悪化することがない圧電振動片を提供することができる。
【0043】
次に、圧電振動片32のさらに好ましい構造について説明する。
図4の寸法xで示すウエハ厚み、すなわち、圧電振動片を形成する水晶ウエハの厚みは、70μmないし130μmが好ましい。
図3の寸法aで示す圧電振動片32の全長は、1300μmないし1600μm程度である。振動腕の全長である寸法L1は、1100ないし1400μmとし、圧電振動片32の全幅dは、400μmないし600μmとすることが、圧電デバイスの小型化の上で好ましい。このため、音叉部分の小型化のためには、基部51の幅寸法eは200ないし400μm、支持用アームの幅fは、30ないし100μmとすることが支持効果を確実にする上で必要である。
【0044】
また、図3の振動腕35と36の間の寸法kは、50ないし100μmとするのが好ましい。寸法kが50μmより少ないと、圧電振動片32の外形を、後述するように、水晶ウエハをウエットエッチングにより貫通させて形成する場合に、エッチング異方性に基づく異形部、すなわち、図4の符号81で示した振動腕側面におけるプラスX軸方向へのヒレ状凸部を、十分に小さくすることが困難になる。寸法kが100μm以上となると、振動腕の屈曲振動が不安定になるおそれがある。
さらに、図4の振動腕35(振動腕36も同じ)における長溝33の外縁と振動腕の外縁との寸法m1,m2は、ともに3ないし15μmとするとよい。寸法m1,m2は15μm以下とすることで、電界効率が向上し、3μm以上とすることで、電極の分極が確実に行われるのに有利である。
【0045】
図3の振動腕36において、第1の縮幅部TLの幅寸法mが11μm以上あると、CI値の抑制に確実な効果が期待できる。
図3の振動腕36において、腕幅の変更点Pよりも先端側が拡幅している拡幅度合いが、振動腕36の腕幅が最小とされている箇所である該腕幅の変更点Pの箇所の幅に対して、0ないし20μm程度の増加とするのが好ましい。これを超えて拡幅されると、振動腕36の先端部が重くなりすぎて、屈曲振動の安定性を損なうおそれがある。
【0046】
また、図4における振動腕35(振動腕36も同じ)の外側の一側面に、プラスX軸方向にヒレ状に突出する異形部81が形成されている。これは、圧電振動片をウエットエッチングして外形形成する際に、水晶のエッチング異方性によりエッチング残りとして形成されるものであるが、好ましくは、フッ酸とフッ化アンモニウムによるエッチング液中で、9時間ないし11時間エッチングすることにより、該異形部81の突出量vを5μm以内に低減することが、振動腕35の安定した屈曲振動を得る上で好ましい。
【0047】
図3の寸法gで示す長溝の幅寸法は、振動腕の該長溝が形成されている領域において、振動腕の腕幅cに対して、60ないし90%程度とするのが好ましく、その寸法は40μmないし60μmとするのが好ましい。振動腕35,36には、第1および第2の縮幅部が形成されているので、腕幅cは振動腕の長さ方向の位置により異なるが、振動腕の最大幅に対して、長溝の幅gは60ないし90%程度となる。これより長溝の幅が小さくなると、電界効率が下がり、CI値の上昇につながる。
【0048】
さらに、図3の振動腕35、36が接続されている基部51の一端から、圧電振動片の振動腕35、36の反対側の一端までの長さ寸法hは、圧電振動片32の全長aに対して、従来30%程度あったものが、この実施形態は、切り込み部の採用などにより、15ないし25%程度とすることができ、小型化を実現している。
なお、上記基部51の全長hの寸法は、例えば、150μmないし300μmとすることができる。
また、好ましくは、基部51には、図1の実施形態と同様に、基部51の両側縁に、凹部もしくは切り込み部71,72を設けてあり、その深さ(図3の寸法q)は、例えば80μm程度とすることができる。
さらに、本実施形態では、基部の長さ寸法hと、連結部73を介して支持用アーム61,62が基部51に接続されている接続部74の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされている。この場合、上記比率L3/hは20%以上とされるのが好ましい。
これにより、後述する作用を発揮することができる。
【0049】
また、本実施形態では、パッケージ寸法を小型にするために、基部51の側面と支持用アーム61,62の間隔(寸法p)が30ないし100μmとされている。
図4に示すように、圧電振動片32の各励振電極37,38はクロス配線により、交流電源に接続されており、電源から駆動電圧としての交番電圧が、各振動腕35,36に印加されるようになっている。
【0050】
これにより、振動腕35,36は互いに逆相振動となるように励振され、基本モード、すなわち、基本波において、各振動腕35,36の先端側を互いに接近・離間させるように屈曲振動されるようになっている。
ここで、例えば、圧電振動片32の基本波は、Q値:12000、容量比(C0/C1):260、CI値:57kΩ、周波数:32.768kHz(「キロヘルツ」、以下同じ)である。
また、2次の高調波は、例えば、Q値:28000、容量比(C0/C1):5100、CI値:77kΩ、周波数:207kHzである。
【0051】
図5は、本実施形態の圧電振動片32を利用して圧電発振器を構成する場合の発振回路の例を示す回路図である。
発振回路91は、増幅回路92と帰還回路93を含んでいる。
増幅回路92は、増幅器95と帰還抵抗94を含んで構成されている。帰還回路93は、ドレイン抵抗96と、コンデンサ97,98と、圧電振動片32とを含んで構成されている。
ここで、図5の帰還抵抗94は、例えば10MΩ(メガオーム)程度、増幅器95はCMOSインバータを用いることができる。ドレイン抵抗96は、例えば200ないし900kΩ(キロオーム)、コンデンサ97(ドレイン容量)と、コンデンサ98(ゲート容量)は、それぞれ10ないし22pF(ピコファラド)とすることができる。
【0052】
本実施形態の圧電振動片32、および圧電デバイス30は以上のように構成されており、特徴的な作用効果について説明する。
既に説明したように、本実施形態の圧電振動片32においては、図3において、振動腕35、36が接続されている基部51の一端から、圧電振動片の振動腕35、36の反対側の一端までの長さ寸法hと、連結部73を介して支持用アーム61,62が基部51にそれぞれ接続されている接続部74の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされていることによって、図6に示すような効果が期待できる。
【0053】
すなわち、図6は横軸にL3/hの値をとり、縦軸にマイナス50℃における理想の温度特性に対する周波数のシフト(ズレ)を示している。
図において、L3/hが40%以下の領域では、周波数シフトが極端に小さくなる。また、L3/hが35%以下の領域では、周波数シフトがさらに小さくなる。そして、L3/hの下限は、20%程度であり、下限値を超えて小さくなると、組立工程での折れという弊害がある。
【0054】
さらに好ましくは、図3における圧電振動片32の連結部73の幅寸法rと基部51の幅寸法eの比率であるr/eが、23%以上40%以下とされていることである。
この比率であるr/eが、23%未満となると、落下衝撃などの外部からの衝撃により前記連結部が破断するおそれがあることが確認されている。
このため、比率r/eが、23%以上あることで、しかも40%以下とされることにより、励振部である各振動腕が、パッケージなどへの接合部を含む支持用アームからの影響をきわめて受けにくく、しかも外部からの衝撃で、容易に破損することのない圧電振動片を得ることができる。
【0055】
次に、図7は、本実施形態の圧電振動片32の温度特性試験の結果を示しており、図8は、これに対応して、図3の圧電振動片32の励振電極37,38を形成する下地金属層であるクロム層と、電極層である金層の各層厚みと、低温における周波数のバラツキとの関係を、丸、三角、バツの記号でまとめたものである。ここで、周波数のバラツキがあると、理想的な温度特性に対するズレ、すなわち、周波数ひずみが大きい圧電振動片が製造される。
丸は図7に示すように、最も結果がよく、低温領域で周波数のバラツキが非常に小さいもの、三角はわずかにバラツキがあるが、結果としてほぼ良好であるもの、バツは好ましい結果とは言えない場合を示している。
【0056】
すなわち、励振電極37,38を構成する電極膜の下地層であるクロム層の膜厚が30nm以下であり、金層の膜厚が50nm以下とされると、上記三角以上の好結果を得ることができる。
つまり、クロム層が30nm以下とされることで、低温における電極部のヤング率が大きくなりすぎることがない。また、金層の膜厚が50nm以下とされることで、電極の形成コストの上昇を抑えることができる。これによって、圧電振動片32を小型に形成しても、低温時に屈曲振動の妨げとなるCI値を抑制し、低温における周波数ひずみを防止するとともに、十分な導通性能を発揮して、温度特性が良好な圧電振動片を提供することができる。
【0057】
また、図8において、励振電極37,38を構成する電極膜の下地層であるクロム層の膜厚が20nm以下とされる場合に、電極膜である金層の膜厚が40nm以下とされると好ましい。
すなわち、クロム層の膜厚を20nm以下に抑制すると、金層の膜厚を40nm以下として十分な膜厚とし、導通性能を向上させても低温における周波数ひずみを防止することができる。
【0058】
さらに、図8において、クロム層の膜厚が10nm以下とされる場合に、金層の膜厚が50nm以下とされるとより好ましい。
すなわち、クロム層の膜厚を10nm以下に抑制すると、金層の膜厚を50nm以下として十分な膜厚とし、さらに導通性能を向上させても低温における周波数ひずみを防止することができる。
【0059】
(圧電デバイスの製造方法)
次に、図10のフローチャートを参照しながら、上述の圧電デバイスの製造方法の一例を説明する。
(蓋体およびパッケージの製造方法)
圧電デバイス30の圧電振動片32と、パッケージ57と、蓋体40は、それぞれ別々に製造される。
蓋体40は、例えば、所定の大きさのガラス板、例えば、硼珪酸ガラスの板ガラスを切断し、パッケージ57を封止するのに適合する大きさの蓋体として用意される。
パッケージ57は、上述したように、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成形して形成される複数の基板を積層した後、焼結して形成されている。成形の際には、複数の各基板は、その内側に所定の孔を形成することで、積層した場合に内側に所定の内部空間Sを形成する。
【0060】
(圧電振動片の製造方法)
先ず、圧電基板を用意し、ひとつの圧電基板から所定数の圧電振動片について、同時にその外形をエッチングにより形成する(外形エッチング)。
ここで、圧電基板は、圧電材料のうち、例えば、圧電振動片32を複数もしくは多数分離することができる大きさの水晶ウエハが使用される。この圧電基板は工程の進行により図3の圧電振動片32(図1の圧電振動片32なども同様に製造される)を形成するので、図1あるいは図4に示すX軸が電気軸、Y軸が機械軸及びZ軸が光学軸となるように、圧電材料、例えば水晶の単結晶から切り出されることになる。また、水晶の単結晶から切り出す際、上述のX軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系において、Z軸を中心に時計回りに0度ないし5度(図11のθ)の範囲で回転して切り出した水晶Z板を所定の厚みに切断研磨して得られる。
【0061】
外形エッチングでは、図示しない耐蝕膜などのマスクを用いて、圧電振動片の外形から外側の部分として露出した圧電基板に関して、例えば、フッ酸溶液をエッチング液として、圧電振動片の外形のエッチングを行う。耐蝕膜としては、例えば、クロムを下地として、金を蒸着した金属膜などを用いることができる。このエッチング工程は、ウエットエッチングで、フッ酸溶液の濃度や種類、温度等により変化する。
ここで、外形エッチング工程でのウエットエッチングでは、図3に示した機械軸X、電気軸Y、光学軸Zに関して、エッチングの進行上、次のようなエッチング異方性を示す。
すなわち、圧電振動片32に関して、そのX−Y平面内におけるエッチングレートについては、プラスX方向で、このX軸に対して120度の方向、およびマイナス120度の方向の面内においてエッチングの進行が速く、マイナスX方向でX軸に対してプラス30度の方向、およびマイナス30度の方向の内面のエッチングの進行が遅くなる。
同様に、Y方向のエッチングの進行は、プラス30度方向およびマイナス30度方向が速くなり、プラスY方向で、Y軸に対してプラス120度方向、およびマイナス120度方向が遅くなる。
【0062】
このようなエッチング進行上の異方性により、圧電振動片32では、図4の符号81で示されているように、各振動腕の外側側面に、ヒレ状に突出した異形部が形成される。
しかしながら、この実施形態では、エッチング液として、フッ酸および、フッ化アンモニウムを用いて、十分な時間、すなわち、9時間ないし11時間という十分な時間をかけて、エッチングを行うことにより、図4で説明した異形部81の突出量vが5μm以内と、きわめて小さくすることができる(ST11)。
この工程において、圧電振動片32の切り込み部71,72を含む外形が同時に形成され、終了時には、水晶ウエハに対して、それぞれ細い一体部で基部51付近を接続された多数の圧電振動片32の外形完成状態のものが得られる。
【0063】
(溝形成のためのハーフエッチング工程)
次に、図示しない溝形成用レジストにより、図4で示した形態となるように、各長溝を挟む両側の壁部を残す様にして、溝を形成しない部分に耐蝕膜を残し、外形エッチングと同じエッチング条件で、各振動腕35,36の表面と裏面を、それぞれウエットエッチングすることにより長溝に対応した底部を形成する(ST12)。
ここで、図4を参照すると、符号tで示す溝深さは、全体厚みxに対して、30ないし45%程度とされる。tに関して、全体厚みxの30%以下だと、電界効率を十分向上させることができない場合がある。45%以上だと、剛性が不足して、屈曲振動に悪影響を与えたり、強度が不足する場合がある。
【0064】
なお、上記外形エッチングおよび溝エッチングは、その一方もしくは両方をドライエッチングにより形成してもよい。その場合には、例えば、圧電基板(水晶ウエハ)上に、圧電振動片32の外形や、外形形成後には、長溝に相当する領域を、その都度メタルマスクを配置して覆う。この状態で、例えば、図示しないチャンバー内に収容し、所定の真空度でエッチングガスを供給して、エッチングプラズマを生成しドライエッチングすることができる。つまり、真空チャンバー(図示せず)には、例えば、フレオンガスボンベと酸素ガスボンベとが接続され、さらに、真空チャンバーには、排気管が設けられ、所定の真空度に真空引きされるようになっている。
真空チャンバー内が、所定の真空度に真空排気され、フレオンガスと、酸素ガスが送られ、その混合ガスが所定の気圧になるまで充填された状態にて、直流電圧が印加されると、プラズマが発生する。そして、イオン化された粒子を含む混合ガスは、メタルマスクから露出した圧電材料に当たる。この衝撃により、物理的に削り取られて飛散し、エッチングが進行する。
【0065】
(電極形成工程)
次に、蒸着もしくはスパッタリングなどによって、電極となる金属、例えば、金を全面に被覆し、次いで、電極を形成しない箇所を露出したレジストを用いて、フォトリソグラフィの手法により、図1で示した駆動用の電極を形成する(ST13)。
その後、各振動腕35,36の先端部には、スパッタリングや蒸着により、錘付け電極(金属被膜)21,21が形成される(ST14)。錘付け電極21,21は通電されて圧電振動片32の駆動に用いられるのではなく、後述する周波数調整に利用される。
【0066】
次いで、ウエハ上で、周波数の粗調整が行われる(ST15)。粗調整は、錘付け電極21,21の一部をレーザ光などのエネルギービームを照射することにより、部分的に蒸散させる質量削減方式による周波数調整である。
続いて、上記したウエハに対する細い一体部を折り取り、圧電振動片32を個々に形成する個片にする(ST16)。
次に、図1で説明したように、パッケージ57の各電極部31−1,31−2,31−1,31−2に導電性接着剤43,43,43,43を塗布し、その上に支持用アーム61,62を載置して、接着剤を加熱・硬化させることにより、パッケージ57に対して、圧電振動片32を接合する(ST17)。
なお、この導電性接着剤43としては、例えば、合成樹脂などを利用したバインダー成分に、銀粒子などの導電粒子を混入したもので、機械的接合と電気的接続とを同時に行うことができるものである。
【0067】
次に蓋封止を行う。
パッケージ57を透明な蓋体40で封止する場合には、圧電振動片32のST17における接合後において、該蓋体40をパッケージ57に接合する(ST18−2)。
この場合、例えば、低融点ガラスなどを加熱して、蓋体40をパッケージ57に接合する加熱工程が行われるが、この際に、低融点ガラスや導電性接着剤などからガスが生成される。
そこで、加熱により、このようなガスを図2で説明した貫通孔27から排出し(脱ガス)、その後、真空中で段部29に、好ましくは、金すずなどでなる金属球体やペレットを配置し、レーザ光などを照射することにより、溶融する。これにより図2の封止材(金属充填材)28が貫通孔27を気密に封止する(ST19−2)。
次いで、図2で示すように、ガラスなどでなる透明な蓋体40を透過させるように外部からレーザ光を圧電振動片32の振動腕35および/または振動腕36の錘付け電極21の先端側に照射し、質量削減方式により微調整としての周波数調整を行う(ST20−2)。次いで、必要な検査を経て、圧電デバイス30が完成する。
【0068】
あるいは、蓋体40として、金属製のものを用いて、図9に示すように接合すると、より好ましい。
蓋体の接合前には、パッケージに圧電振動片32を接合した状態で通電し、振動腕35,36の錘付け電極21,21の一部をレーザ光などのエネルギービームを照射することにより、部分的に蒸散させて、質量削減方式による周波数の微調整をする(ST18−1)。
次に蓋封止を行う。
図9は、蓋体40の接合状態を説明する部分切断端面図である。
この場合、蓋体40としてはコバルトと鉄の合金であるコバールが好適に使用される。 パッケージ57の上端には、予めメタライズ部82が形成される。パッケージ側に形成されるメタライズ部82としては、例えば、下から上へ順に、タングステン(W)82a、ニッケル(Ni)82b、金(Au)82cの各層が形成される。あるいは、モリブデン(Mo)82a、ニッケル(Ni)82b、金(Au)82cの層構造としてもよい。
【0069】
これに対して、コバール製の蓋体40の少なくとも接合面には、ニッケル(Ni)層83aの表面に金(Au)層83bがメッキされたメッキ層83が形成されている。すなわち、パッケージと蓋体の両方の接合面には金が露出されており、ロウ材58としては金(Au)−ゲルマニウム(Ge)合金84が使用されている。
つまり、金ゲルマニウムのロウ材84を用いて、加熱チャンバー内等に収容して加熱しロウ材を溶融させて接合する(ST19−1)。
【0070】
ここで、このような蓋体40の接合工程では、熱が発生し、この際に、導電性接着剤などから、あるいはパッケージ内面の水分が気化したりしてガスが生成される。
そこで、ST19−2と同様に、例えば真空チャンバー内などに収容して加熱し、上記した蓋体接合の際などに生じたガスを、図2で説明した貫通孔27から排出し(脱ガス)、その後、真空中で段部29に好ましくは、金−ゲルマニウム(Au−Ge)合金でなる金属球体やペレットを配置し、レーザ光などを照射することにより、溶融する。これにより図2の封止材(金属充填材)28が貫通孔27を気密に封止する(ST20−1)。
次いで、必要な検査を経て、圧電デバイス30が完成する。
【0071】
かくして、金属製の蓋体40を用いる場合には、ガラス製の蓋体を低融点ガラスのロウ材で接合する場合と比べて、金−ゲルマニウム合金のロウ材を用いることで、限られた大きさの封止代(しろ)Dであっても、十分接合強度を得ることができる。特に、封止孔である貫通孔27を利用したガス出しにおいて、十分加熱しても蓋体40の接合に影響することがなく、優れた気密性を実現できる。また、圧電デバイス30の実装工程においてリフロー炉を通した場合にも、ロウ材が再溶融することなく、接合性能に優れている。
【0072】
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
また、この発明は、箱状のパッケージに圧電振動片を収容したものに限らず、シリンダー状の容器に圧電振動片を収容したもの、圧電振動片をジャイロセンサーとして機能するようにしたもの、さらには、圧電振動子、圧電発振器等の名称にかかわらず、圧電振動片を利用したあらゆる圧電デバイスに適用することができる。さらに、圧電振動片32では、一対の振動腕を形成しているが、これに限らず、振動腕は3本でも、4本以上でもよい。
【符号の説明】
【0073】
30…圧電デバイス、32…圧電振動片、33,34…長溝、35,36…振動腕、51…基部、61,62…支持用アーム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料により形成された所定長さの基部と、
前記基部の一端側から延びる複数の振動腕と、
前記基部の一端側より所定距離だけ離れた他端側に接続される連結部と、
前記連結部に接続され、圧電振動片の幅方向に延長される接続部と、
前記接続部に接続され、かつ前記振動腕の外側において、前記振動腕と同じ方向に延びる支持用アームと、を備え、
前記基部の前記一端側から、前記圧電振動片の前記振動腕の反対側の一端までの長さ寸法hと、前記連結部を介して前記支持用アームが前記基部に接続されている接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記基部の前記一端側から、前記圧電振動片の前記振動腕の反対側の前記一端までの長さ寸法hと、前記接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、20%以上40%以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記接続部がくびれるように縮幅された縮幅部を有しており、接続部の幅寸法L3が前記縮幅部の幅寸法であることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動片。
【請求項4】
前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、40%以下とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の圧電振動片。
【請求項5】
前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、23%以上40%以下とされていることを特徴とする請求項3または4に記載の圧電振動片。
【請求項6】
パッケージまたはケース内に圧電振動片を収容した圧電デバイスであって、
前記圧電振動片が、
圧電材料により形成された所定長さの基部と、
前記基部の一端側から延びる複数の振動腕と、
前記基部の一端側より所定距離だけ離れた他端側に接続される連結部と、
前記連結部に接続され、圧電振動片の幅方向に延長される接続部と、
前記接続部に接続され、かつ前記振動腕の外側において、前記振動腕と同じ方向に延びる支持用アームと、を備え、
前記基部の前記一端側から、前記圧電振動片の前記振動腕の反対側の一端までの長さ寸法hと、前記連結部を介して前記支持用アームが前記基部に接続されている接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項7】
前記パッケージが、セラミック製の箱状パッケージで、外部に連通した孔封止用の貫通孔を備えるとともに、金属製の蓋体により封止されるようになっており、前記パッケージと前記蓋体とが金−ゲルマニウムの合金でなるロウ材を用いて封止されていることを特徴とする請求項6に記載の圧電デバイス。
【請求項1】
圧電材料により形成された所定長さの基部と、
前記基部の一端側から延びる複数の振動腕と、
前記基部の一端側より所定距離だけ離れた他端側に接続される連結部と、
前記連結部に接続され、圧電振動片の幅方向に延長される接続部と、
前記接続部に接続され、かつ前記振動腕の外側において、前記振動腕と同じ方向に延びる支持用アームと、を備え、
前記基部の前記一端側から、前記圧電振動片の前記振動腕の反対側の一端までの長さ寸法hと、前記連結部を介して前記支持用アームが前記基部に接続されている接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記基部の前記一端側から、前記圧電振動片の前記振動腕の反対側の前記一端までの長さ寸法hと、前記接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、20%以上40%以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記接続部がくびれるように縮幅された縮幅部を有しており、接続部の幅寸法L3が前記縮幅部の幅寸法であることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動片。
【請求項4】
前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、40%以下とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の圧電振動片。
【請求項5】
前記連結部の幅寸法rと前記基部の幅寸法eの比率であるr/eが、23%以上40%以下とされていることを特徴とする請求項3または4に記載の圧電振動片。
【請求項6】
パッケージまたはケース内に圧電振動片を収容した圧電デバイスであって、
前記圧電振動片が、
圧電材料により形成された所定長さの基部と、
前記基部の一端側から延びる複数の振動腕と、
前記基部の一端側より所定距離だけ離れた他端側に接続される連結部と、
前記連結部に接続され、圧電振動片の幅方向に延長される接続部と、
前記接続部に接続され、かつ前記振動腕の外側において、前記振動腕と同じ方向に延びる支持用アームと、を備え、
前記基部の前記一端側から、前記圧電振動片の前記振動腕の反対側の一端までの長さ寸法hと、前記連結部を介して前記支持用アームが前記基部に接続されている接続部の幅寸法L3との比率であるL3/hが、40%以下とされていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項7】
前記パッケージが、セラミック製の箱状パッケージで、外部に連通した孔封止用の貫通孔を備えるとともに、金属製の蓋体により封止されるようになっており、前記パッケージと前記蓋体とが金−ゲルマニウムの合金でなるロウ材を用いて封止されていることを特徴とする請求項6に記載の圧電デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−17207(P2013−17207A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184911(P2012−184911)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2007−212634(P2007−212634)の分割
【原出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2007−212634(P2007−212634)の分割
【原出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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