説明

排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法

【課題】PM捕集部でのオゾンPM酸化を均一に行うことができ、PM捕集部に残留したPMによる、圧力損失の増大、高温燃焼時のPM捕集部の破損を抑制することができるとともに、PMを効率よく酸化させることが可能な排ガス浄化装置を提供すること。
【解決手段】内燃機関1に接続され、複数の通路に分岐している排ガス通路2と、
前記排ガス通路2内にそれぞれ配置され、排ガス中の粒子状物質を捕集する複数の粒子状物質捕集装置3a、3bと、
前記粒子状物質捕集装置3a、3bより下流側の前記排ガス通路2にそれぞれ接続され、前記粒子状物質捕集装置にオゾンを供給するオゾン供給手段4a、4bと、
一部の粒子状物質捕集装置に下流側からオゾンを供給しつつ、該オゾンが残りの粒子状物質捕集装置に上流側から供給されるように、排ガス流路と前記オゾン供給手段とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする排ガス浄化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディーゼルエンジンの排ガスには、炭素を主成分とする粒子状物質(以下、「PM(Particulate Matter)」という)が含まれ、大気汚染の原因となることが知られている。そこで、排ガスからこれらの粒子状物質を捕捉して除去するための装置や方法が種々提案されており、例えば、(i)燃料を強制的に噴射供給することによりディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、「DPF」という)の温度を上昇させて捕集したPMを酸化・燃焼させる方法、(ii)排ガス中のNOからNOを生成させ、NOによりPMを酸化させる方法(例えば、特表2002−531762号公報(特許文献1))、(iii)触媒化したDPFを用いてPMの酸化を図る方法(例えば、特開平6−272541号公報(特許文献2)、特開平9−125931号公報(特許文献3))が提案されている。
【0003】
しかし、(i)の方法では、燃料を強制的に噴射供給するため燃費の悪化を招くと共に、PMが急激に燃焼し、その際の反応熱に由来する急激な温度変化によってDPFが破損することがあるという問題があった。また、(ii)の方法では、NOによるPMの酸化速度が十分でないため、エンジンから排出されるPMを完全に酸化除去することが困難であるという問題があった。さらに、(iii)の方法では、触媒及びPMが共に固体であるため、両者が十分に接触せずPMの酸化反応が不十分であるという問題があった。
【0004】
そこで、最近、NOに比較して酸化力の強いオゾン(O)を用いてPMを酸化して処理する技術が開示されており、例えば、特開2002−129936号公報(特許文献4)には、ディーゼルエンジンの吸気通路又は排気通路にオゾンを添加するオゾン添加手段と、機関運転状態に基づいて、前記吸気通路又は排気通路に添加するオゾン添加量を演算する添加量演算手段と、該添加量演算手段により演算されたオゾン添加量が吸気通路又は排気通路に添加されるように、前記オゾン添加手段を制御する添加量制御手段と、を含んで構成されたことを特徴とするディーゼルエンジンの排気浄化装置が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献4に記載されているようなディーゼルエンジンの排気浄化装置においては、オゾンをPM捕集部に対し、排ガス上流側から導入するため、PM捕集部では上流側のPMが優先的に酸化され、下流側ではPMが残留する傾向にあった。そのために、残留したPMにより圧力損失が増加し、PMの酸化効率が低下するという問題があった。さらに、残留したPMを高温で燃焼させた場合には、不均一な温度上昇よりPM捕集部が破損するという問題もあった。
【特許文献1】特表2002−531762号公報
【特許文献2】特開平6−272541号公報
【特許文献3】特開平9−125931号公報
【特許文献4】特開2002−129936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、PM捕集部でのオゾンPM酸化を均一に行うことができ、PM捕集部に残留したPMによる、圧力損失の増大、高温燃焼時のPM捕集部の破損を抑制することができるとともに、PMを効率よく酸化させることが可能な排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、排ガス中のPMを複数の粒子状物質捕集装置で捕集し、オゾン供給手段から供給されるオゾンを用いてPMを酸化させる排ガス浄化装置において、一部の粒子状物質捕集装置に下流側からオゾンを供給しつつ、該オゾンが残りの粒子状物質捕集装置に上流側から供給されるように、排ガス流路と前記オゾン供給手段とを制御することにより、PM捕集部でのオゾンPM酸化を均一に行うことができ、PM捕集部に残留したPMによる、圧力損失の増大、高温燃焼時のPM捕集部の破損を抑制することができるとともに、PMを効率よく酸化させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の排ガス浄化装置は、内燃機関に接続され、複数の通路に分岐している排ガス通路と、
前記排ガス通路内にそれぞれ配置され、排ガス中の粒子状物質を捕集する複数の粒子状物質捕集装置と、
前記粒子状物質捕集装置より下流側の前記排ガス通路にそれぞれ接続され、前記粒子状物質捕集装置にオゾンを供給するオゾン供給手段と、
一部の粒子状物質捕集装置に下流側からオゾンを供給しつつ、該オゾンが残りの粒子状物質捕集装置に上流側から供給されるように、排ガス流路と前記オゾン供給手段とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする排ガス浄化装置ことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の排ガス浄化装置においては、前記オゾン供給手段が、前記一部の粒子状物質捕集装置に下流側から二次空気を更に供給することが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の排ガス浄化装置においては、前記残りの粒子状物質捕集装置の上流側から下流側に流通した排ガスの一部が前記一部の粒子状物質捕集装置の下流側から上流側に供給されるように前記排ガス流路を制御する排ガス流路制御手段、を更に備えていてもよい。
【0011】
本発明の排ガス浄化方法は、内燃機関に接続され、複数の通路に分岐している排ガス通路と、
前記排ガス通路内にそれぞれ配置され、排ガス中の粒子状物質を捕集する複数の粒子状物質捕集装置と、
前記排ガス通路に接続され、前記粒子状物質捕集装置にオゾンを供給するオゾン供給手段と、
を備える排ガス浄化装置を用いる排ガス浄化方法であって、
一部の粒子状物質捕集装置に下流側からオゾンを供給しつつ、該オゾンが残りの粒子状物質捕集装置に上流側から供給されるように、排ガス流路と前記オゾン供給手段とを制御することを特徴とする方法である。
【0012】
なお、上記本発明の排ガス浄化装置及び方法によれば、PM捕集部でのオゾンPM酸化を均一に行うことができ、PM捕集部に残留したPMによる、圧力損失の増大、高温燃焼時のPM捕集部の破損を抑制することができるとともに、PMを効率よく酸化させることが可能となる。すなわち、オゾンを粒子状物質捕集装置に対して常に一定の方向、例えば上流側から供給した場合には、PM捕集部では上流側のPMが優先的に酸化され、下流側ではPMが残留する傾向にある。これに対して、本発明においては、一部の粒子状物質捕集装置に下流側からオゾンを供給しつつ、該オゾンが残りの粒子状物質捕集装置に上流側から供給されるように、排ガス流路とオゾン供給手段とを制御している。そして、前記排ガス流路に応じて、複数の粒子状物質捕集装置のうちのいずれか一つの装置に前記オゾン供給手段からオゾンが供給されることとなることから、オゾンはそれぞれの粒子状物質捕集装置に上流側及び下流側から供給されることとなる。そのため、本発明においては、PM捕集部でのオゾンPM酸化を均一に行うことができ、PM捕集部に残留したPMによる、圧力損失の増大、高温燃焼時のPM捕集部の破損を抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明においては、一部の粒子状物質捕集装置を流通したオゾン(未反応オゾン)が残りの粒子状物質捕集装置のPM酸化に利用されるため、オゾンを有効利用することができる。さらに、本発明においては、比較的温度が低い下流側からオゾンを供給するため、熱分解によるオゾンの消費が抑制され、オゾンが有効利用される。そのため、本発明においては、PMを効率よく酸化させることが可能となる。また、本発明においては、オゾンが有効利用されるために必要オゾン量を低減することができ、オゾン発生に必要なエネルギーに起因する燃費悪化を抑制することも可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、PM捕集部でのオゾンPM酸化を均一に行うことができ、PM捕集部に残留したPMによる、圧力損失の増大、高温燃焼時のPM捕集部の破損を抑制することができるとともに、PMを効率よく酸化させることが可能な排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に、本発明の排ガス浄化装置を備えた内燃機関の好適な一実施形態を示す概略模式図を示す。図1に示す排ガス浄化装置は、内燃機関1に接続され、複数の通路(第一の通路2a、第二の通路2b)に分岐している排ガス通路2と、前記排ガス通路(第一の通路2a、第二の通路2b)内にそれぞれ配置されている複数の粒子状物質捕集装置3a、3bと、前記粒子状物質捕集装置3a、3bより下流側の前記排ガス通路(第一の通路2a、第二の通路2b)にそれぞれ接続されているオゾン供給手段4a、4bと、排ガス流路を制御するための排ガス流路切り換え弁5を備えている。また、オゾン供給手段4a、4b、及び排ガス流路切り換え弁5は、それぞれエンジンコントロールユニット(ECU)6と電気的に接続されている。
【0017】
そして、図1に示す排ガス浄化装置は、一部の粒子状物質捕集装置(例えば、粒子状物質捕集装置3b)に下流側からオゾンを供給しつつ、該オゾンが残りの粒子状物質捕集装置(例えば、粒子状物質捕集装置3a)に上流側から供給されるように、排ガス流路切り換え弁5とオゾン供給手段4a、4bとを制御することができる。
【0018】
本発明において用いることができる内燃機関1としては、特に限定されないが、例えば、ディーゼルエンジン、希薄燃焼ガソリンエンジン等の希薄燃焼方式の内燃機関を挙げることができる。
【0019】
本発明にかかる粒子状物質捕集装置3a、3bは、複数の通路に分岐している排ガス通路2(第一の通路2a、第二の通路2b)内にそれぞれ配置されている。このような粒子状物質捕集装置3a、3bとしては、例えば、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、「DPF」という)を挙げることができる。このようなDPFとしては、その形態は特に制限されず、ウォールフロー型のものであっても、或いはフォーム型のものであってもよい。なお、ウォールフロー型のDPFは、下流側に詰栓が施された通路と、上流側に詰栓が施された通路とが交互に区画形成されたハニカム構造を有しており、排ガスは下流側に詰栓が施された通路から流路壁面を通過して上流側に詰栓が施された通路に流入して下流側に流れ、その際に排ガス中のPMが流路壁面によって捕集される。また、このようなDPFの材質も特に制限されないが、コージェライト、炭化ケイ素、シリカ、アルミナ、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム、ニッケル及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。なお、DPFに貴金属等の触媒がコートされていると、OがPMを酸化する前に分解され易くなる傾向にあるため、DPFには触媒がコートされていないことが好ましい。
【0020】
本発明にかかるオゾン供給手段4a、4bは、前記粒子状物質捕集装置3a、3bより下流側の前記排ガス通路(第一の通路2a、第二の通路2b)にそれぞれ接続されている。このようなオゾン供給手段4a、4bとしては、例えば、オゾン発生手段としてのオゾン発生器とオゾン供給ノズルとを備えているものが挙げられる。
【0021】
このようなオゾン発生器としては、高電圧を印加可能な放電管内に原料となる空気又は酸素を流しつつオゾンを発生させる形態や、他の任意の形式のものを用いることができるが、オゾン発生器に供給するガスに窒素が存在するとNOが生成するため、酸素のみを供給することが好ましい。
【0022】
また、このようなオゾン供給ノズルとしては、前記粒子状物質捕集装置3a、3bの下流端面全体に満遍なくオゾンを供給できるよう、前記粒子状物質捕集装置3a、3bの下流端面の全直径に及ぶような複数のオゾン供給口を有していることが好ましい。なお、オゾン供給手段4a、4bの形態としては、このようなオゾン供給ノズルを有するもの以外にも種々の形態が可能であり、例えば一つのオゾン供給口しか有しないような場合は、オゾン供給口と前記粒子状物質捕集装置3a、3bの下流端面との距離を、その下流端面全体に満遍なくオゾンが行き渡るような距離だけ離間させることが好ましい。
【0023】
このような排ガス流路切り換え弁5としては、市販されている流量調整弁を適宜使用することができる。なお、本発明の排ガス浄化装置においては、排ガス流路切り換え弁5に代えて排ガス流路を制御することができるもの、例えば、流量調整弁、開閉弁を使用することもできる。
【0024】
このようなエンジンコントロールユニット(ECU)6は、一部の粒子状物質捕集装置に下流側からオゾンを供給しつつ、該オゾンが残りの粒子状物質捕集装置に上流側から供給されるように、排ガス流路切り換え弁5とオゾン供給手段4a、4bとを制御する制御手段を備えるものである。
【0025】
ここで、このような制御手段について図2に示すタイミングチャートを参照しながらさらに詳細に説明する。図2に示すタイミングチャートは、本発明にかかる制御手段の好適な一実施形態における排ガス流路とオゾン供給手段との関係を示すものである。このような制御手段においては、例えば、図2に示すタイミングチャートにように所定時間毎に前記排ガス流路切り換え弁5と前記オゾン供給手段4a、4bを制御する。
【0026】
そして、このような制御手段においては、内燃機関1からの排ガスが粒子状物質捕集装置3aに流入するように排ガス流路切り換え弁5を調節した場合には、排ガスが流入しない粒子状物質捕集装置3bにオゾン供給手段4bからオゾンを供給する。また、粒子状物質捕集装置3bを流通したオゾン(未反応オゾン)は内燃機関1からの排ガスと共に粒子状物質捕集装置3aに上流側から供給される。一方、内燃機関1からの排ガスが粒子状物質捕集装置3bに流入するように排ガス流路切り換え弁5を調節した場合には、排ガスが流入しない粒子状物質捕集装置3aにオゾン供給手段4aからオゾンを供給する。また、粒子状物質捕集装置3aを流通したオゾン(未反応オゾン)は内燃機関1からの排ガスと共に粒子状物質捕集装置3bに上流側から供給される。
【0027】
以上説明したような制御手段によって、一部の粒子状物質捕集装置に下流側からオゾンを供給しつつ、該オゾンを残りの粒子状物質捕集装置に上流側から供給することができる。また、このような制御手段によって、オゾンはそれぞれの粒子状物質捕集装置に上流側及び下流側から供給されることとなるため、PM捕集部でのオゾンPM酸化を均一に行うことができ、PM捕集部に残留したPMによる、圧力損失の増大、高温燃焼時のPM捕集部の破損を抑制することが可能となる。
【0028】
また、本発明においては、一部の粒子状物質捕集装置を流通したオゾン(未反応オゾン)が残りの粒子状物質捕集装置のPM酸化に利用されるため、オゾンを有効利用することができる。さらに、本発明においては、比較的温度が低い下流側からオゾンを供給するため、熱分解によるオゾンの消費が抑制され、オゾンが有効利用される。そのため、本発明においては、PMを効率よく酸化させることが可能となる。
【0029】
以上、本発明の排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法の好適な実施形態について説明したが、本発明の排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の排ガス浄化装置においては、前記オゾン供給手段(例えば、オゾン供給手段4b)が、前記一部の粒子状物質捕集装置(例えば、粒子状物質捕集装置3b)に下流側から二次空気を更に供給してもよい。このようにして、前記一部の粒子状物質捕集装置3bを流通したオゾン(未反応オゾン)を前記残りの粒子状物質捕集装置3aにより確実に供給することができる。なお、二次空気とは、エンジン排ガス以外で外部より導入したガスのことをいい、例えば、大気、工場エアー、N、CO、希ガス(He、Ne、Ar等)が挙げられる。
【0030】
また、本発明の排ガス浄化装置は、図3に示す排ガス浄化装置のように、排ガス流路切り換え弁5に代えて流量調整弁7を備えていてもよい。図3に示す排ガス浄化装置においては、前記残りの粒子状物質捕集装置(例えば、粒子状物質捕集装置3a)の上流側から下流側に流通した排ガスの一部が前記一部の粒子状物質捕集装置(例えば、粒子状物質捕集装置3b)の下流側から上流側に供給されるように前記排ガス流路を制御することができる(図3参照)。このようにして、前記一部の粒子状物質捕集装置3bを流通したオゾン(未反応オゾン)を前記残りの粒子状物質捕集装置3aにより確実に供給することができる。
【0031】
さらに、本発明の排ガス浄化装置は、図4に示す排ガス浄化装置のように、圧力センサ8を更に備えていてもよい。図4に示す排ガス浄化装置においては、圧力センサ8によって検知した圧力損失の値に基づいて排ガス流路切り換え弁5及びオゾン供給手段4a、4bを制御して、内燃機関1からの排ガスがそれぞれの粒子状物質捕集装置3a、3bに流入する時間を調整することができる。このようにして、PM捕集部に残留したPMによる、圧力損失の増大をより確実に抑制することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例)
図1に示す排ガス浄化装置を用いて、内燃機関1からの排ガスを浄化する試験を行った。すなわち、内燃機関1としては、ディーゼルエンジン(排気量2L、直噴、コモンレール、ターボ付き)を使用した。また、粒子状物質捕集装置3a、3bとしては、DPF(直径100mm、長さ150mm、セル数300cpsi、コージェライト製)を使用した。さらに、オゾン供給手段4a、4bとしては、オゾン発生装置(荏原実業社製)を備えるもの(オゾン供給量:2mol/h)を使用した。また、排ガス流路切り換え弁5としては、排ガス流路切り換え弁(巴バルブ社製)を使用した。なお、内燃機関1から排出される排ガスのガス流量は20g/secであり、排ガスのガス組成は、NO(100ppm)、NO(50ppm)、THC(100ppm)、CO(0ppm)、O(10%)、CO(6.7%)、HO(5%)、N(残部)であった。また、粒子状物質捕集装置3a、3bの入り口における排ガスの温度は200℃であった。
【0034】
そして、図1に示す排ガス浄化装置を用いて、図2に示すタイミングチャートに従って排ガス流路切り換え弁5及びオゾン供給手段4a、4bを制御しつつ、内燃機関1からの排ガスを前記排ガス浄化装置に1時間導入し、排ガスを浄化する試験を行った。
【0035】
(比較例)
オゾン供給手段4a、4bを粒子状物質捕集装置3a、3bの上流に接続し、図5に示すタイミングチャートに従って排ガス流路切り換え弁5及びオゾン供給手段4a、4bを制御した以外は実施例と同様にして内燃機関1からの排ガスを浄化する試験を行った。
【0036】
<PM酸化性能の評価>
実施例及び比較例で得られた排ガス浄化装置のPM酸化性能を以下の方法によって評価した。すなわち、先ず、マイクロダイリューショントンネル(エフテクノ社製、MIT−2000)を用い、工場エアーで希釈したエンジン排気をフィルタに所定時間導入しPMを採取し、フィルタの重量変化からディーゼルエンジンから排出されるPM量を測定した。次に、ディーゼルエンジンにDPFを取り付けたものを準備して、上記と同様の方法でDPFをすり抜けるPM量を測定した。そして、ディーゼルエンジンから排出されるPM量の値及びDPFをすり抜けるPM量の値から、1時間あたりのDPFに蓄積されるPM量を算出した。
【0037】
次いで、実施例及び比較例で得られたDPFの重量をそれぞれ測定し、1時間運転後におけるDPFに残留したPM量をそれぞれ算出した。そして、DPFに蓄積されるPM量の値からDPFに残留したPM量の値を差し引いて、実施例及び比較例で得られた排ガス浄化装置における1時間あたりのPM酸化量を算出した。また、そのPM酸化量の値から、1時間あたりの平均PM酸化速度(g/h)を算出した。得られた結果を図6に示す。
【0038】
図6に示した結果から明らかなように、本発明の排ガス浄化装置を用いた場合(実施例)は、PM酸化速度が高かった。したがって、本発明によれば、PMを効率よく酸化させることが可能となることが確認された。また、本発明の排ガス浄化装置を用いた場合(実施例)は、DPFに残留するPMが少ないことから、本発明によれば、PM捕集部でのオゾンPM酸化を均一に行うことができ、PM捕集部に残留したPMによる、圧力損失の増大、高温燃焼時のPM捕集部の破損を抑制することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、PM捕集部でのオゾンPM酸化を均一に行うことができ、PM捕集部に残留したPMによる、圧力損失の増大、高温燃焼時のPM捕集部の破損を抑制することができるとともに、PMを効率よく酸化させることが可能な排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の排ガス浄化装置を備えた内燃機関の好適な一実施形態を示す概略模式図である。
【図2】本発明にかかる制御手段の好適な一実施形態における排ガス流路とオゾン供給手段との関係を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の排ガス浄化装置を備えた内燃機関の好適な他の実施形態を示す概略模式図である。
【図4】本発明の排ガス浄化装置を備えた内燃機関の好適な他の実施形態を示す概略模式図である。
【図5】比較例で得られた排ガス浄化装置における排ガス流路とオゾン供給手段との関係を示すタイミングチャートである。
【図6】実施例及び比較例で得られた排ガス浄化装置におけるPM酸化速度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0041】
1…内燃機関、2…排ガス通路、2a…第一の通路、2b…第二の通路、3a…粒子状物質捕集装置、3b…粒子状物質捕集装置、4a…オゾン供給手段、4b…オゾン供給手段、5…排ガス流路切り換え弁、6…エンジンコントロールユニット(ECU)、7…流量調整弁、8…圧力センサ、A1…内燃機関からの排ガスの流れ、A2…粒子状物質捕集装置を流通した一部の排ガスの流れ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に接続され、複数の通路に分岐している排ガス通路と、
前記排ガス通路内にそれぞれ配置され、排ガス中の粒子状物質を捕集する複数の粒子状物質捕集装置と、
前記粒子状物質捕集装置より下流側の前記排ガス通路にそれぞれ接続され、前記粒子状物質捕集装置にオゾンを供給するオゾン供給手段と、
一部の粒子状物質捕集装置に下流側からオゾンを供給しつつ、該オゾンが残りの粒子状物質捕集装置に上流側から供給されるように、排ガス流路と前記オゾン供給手段とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記オゾン供給手段が、前記一部の粒子状物質捕集装置に下流側から二次空気を更に供給することを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記残りの粒子状物質捕集装置の上流側から下流側に流通した排ガスの一部が前記一部の粒子状物質捕集装置の下流側から上流側に供給されるように前記排ガス流路を制御する排ガス流路制御手段、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
内燃機関に接続され、複数の通路に分岐している排ガス通路と、
前記排ガス通路内にそれぞれ配置され、排ガス中の粒子状物質を捕集する複数の粒子状物質捕集装置と、
前記排ガス通路に接続され、前記粒子状物質捕集装置にオゾンを供給するオゾン供給手段と、
を備える排ガス浄化装置を用いる排ガス浄化方法であって、
一部の粒子状物質捕集装置に下流側からオゾンを供給しつつ、該オゾンが残りの粒子状物質捕集装置に上流側から供給されるように、排ガス流路と前記オゾン供給手段とを制御することを特徴とする排ガス浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−31884(P2008−31884A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204465(P2006−204465)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】