説明

排気ガス回収利用装置

【課題】内燃機関の排気通路に設けられた排気絞り弁を閉弁制御して、排気絞り弁上流側の排気通路から排気ガスを回収することで、蓄圧容器内に迅速に高い圧力を形成し、且つ、その圧力を持続させる。
【解決手段】本発明の排気ガス回収利用装置は、内燃機関10の排気通路28に設けられた排気絞り弁56と、該排気絞り弁56上流側の排気通路Pから蓄圧容器64へ排気ガス回収を行うべく排気絞り弁56を閉弁制御する排気絞り弁制御手段とを備え、前記蓄圧容器64は、該蓄圧容器64の内部を仕切る隔壁70と、該隔壁70を挟んで隣り合う空間を連通可能にする連通弁B(76、78)とを備え、前記隔壁70によって少なくとも一部が区画形成されていて前記連通弁によって圧力が調節可能な第1室72に排気通路Pから排気ガスが回収されるように、前記第1室72は排気通路Pに連通可能にされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に設けられた排気絞り弁を閉弁して、排気絞り弁上流側の排気通路から蓄圧容器へ排気ガスを回収し、且つ、回収された排気ガスを利用する排気ガス回収利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一部の車両では、内燃機関の排気通路に排気ブレーキ用の排気絞り弁が設けられている。他方、車両の内燃機関の排気通路に設けられた排気絞り弁を、排気ブレーキ以外の用途に用いることが提案されている。例えば、特許文献1には、排気ブレーキ用排気シャッターを用いたディーゼルエンジンの過給圧制御装置が開示されている。この装置は、加速状態を検出する加速検出手段と、過給器のタービン上流側の排気通路に設置された排気シャッターと排気弁との間に電磁弁を介して内燃機関の排気圧力を貯留するように連結された容器と、加速検出手段の出力信号により前記電磁弁が開かれるように制御する制御部とを備えている。
【0003】
【特許文献1】実開平01−102437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の装置では、容器に蓄えられた圧力が加速状態のときに過給器のタービンに供給されるが、この用途に限らず、容器に蓄えられた圧力あるいは排気ガスは用いられ得る。しかしながら、その圧力が高いほど、一般的に、その利用効果は増し、あるいは利用用途の選択の幅は拡がるが、容器内に高い圧力を迅速且つ持続的に形成する構成に関しては特許文献1では何ら触れられていない。
【0005】
そこで、本発明はかかる点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、内燃機関の排気通路に設けられた排気絞り弁を閉弁制御して、排気絞り弁上流側の排気通路から排気ガスを回収することで、蓄圧容器内に迅速に高い圧力を形成し、且つ、その圧力を持続させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の排気ガス回収利用装置は、車両に搭載された内燃機関の排気通路に設けられた排気絞り弁と、該排気絞り弁上流側の排気通路から蓄圧容器へ排気ガス回収を行うべく前記排気絞り弁を閉弁制御する排気絞り弁制御手段とを備えた排気ガス回収利用装置において、前記蓄圧容器は、該蓄圧容器の内部を仕切る隔壁と、該隔壁を挟んで隣り合う空間を連通可能にする連通弁とを備え、前記隔壁によって少なくとも一部が区画形成されていて前記連通弁によって圧力が調節可能な前記蓄圧容器の第1室に前記排気絞り弁上流側の排気通路から排気ガスが回収されるように、前記第1室は前記排気絞り弁上流側の排気通路に連通可能にされていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、蓄圧容器はその内部を仕切る隔壁を備えているので、隔壁によって少なくとも一部が区画形成された第1室の内容積は、蓄圧容器全体の内容積に比べて小さくなる。そして、その第1室に排気絞り弁上流側の排気通路から排気ガスが回収されるように、第1室は排気絞り弁上流側の排気通路に連通可能にされているので、蓄圧容器の内部空間が隔壁によって仕切られていない場合に比べて、第1室に排気ガスを回収して、第1室の圧力を迅速に高めることが可能になる。また、蓄圧容器は隔壁を挟んで隣り合う空間を連通可能にする連通弁を備え、この連通弁によって圧力が調節可能な第1室に排気ガスが回収されるので、第1室に排気ガスが回収されてその圧力が高まったとき第1室の排気ガスの一部を隣りの空間に送ってその排気ガスの一部の圧力をそこに蓄えることができ、他方、第1室の圧力が低下したときその隣りの空間から第1室へ排気ガスを流して第1室の圧力を補うことが可能になる。したがって、内燃機関の排気通路に設けられた排気絞り弁を閉弁制御して、排気絞り弁上流側の排気通路から排気ガスを回収することで、蓄圧容器の第1室に形成された高い圧力を、持続させることが可能になる。
【0008】
なお、前記連通弁は2つの弁を含んで構成され、該2つの弁の各々は互いに逆向きの排気ガスの流れを調節するために設けられていると良い。こうすることで、2つの弁の内の一方で、第1室から上記隣りの空間に出る排気ガスの流れを調節し、その内の他方で、上記隣りの空間から第1室へ入る排気ガスの流れを調節することが可能になる。
【0009】
さらに、上記種々の排気ガス回収利用装置は、前記隔壁によって少なくとも一部が区画形成されていて該隔壁を挟んで前記第1室と隣り合うと共に前記連通弁を介して前記第1室と連通可能にされている第2室と、前記内燃機関の排気通路に設けられたターボ過給器のタービンと、該タービンに前記第1室の排気ガスを供給可能にする第1弁と、前記タービンに前記第2室の排気ガスを供給可能にする第2弁と、前記内燃機関への停止指令を検出する停止指令検出手段と、該停止指令検出手段により停止指令が検出されたとき、前記第1室と前記第2室とのいずれか一方の排気ガスを前記タービンに供給するように前記第1弁および前記第2弁の一方を開弁制御する弁制御機構部とを備えているとよい。このような構成を有することで、排気ガス回収利用装置は、停止指令検出手段により停止指令が検出されたとき、第1室と第2室とのいずれか一方の排気ガスをタービンに供給することが可能になる。したがって、タービンに供給された排気ガスが比較的低い温度を有するときには、タービンを冷やすことが可能になる。
【0010】
より具体的には、上述の種々の排気ガス回収利用装置は、前記第1室の圧力を検出する第1圧力検出手段と、前記第2室の圧力を検出する第2圧力検出手段とをさらに備え、前記弁制御機構部は、前記停止指令検出手段により停止指令が検出されたとき、前記第1圧力検出手段により検出された前記第1室の圧力と前記第2圧力検出手段により検出された前記第2室の圧力とに基づいて前記第1室と第2室とのいずれか一方を選択する選択手段と、該選択手段により前記第1室が選択されたとき、前記第1弁を開弁制御する第1弁制御手段と、前記選択手段により前記第2室が選択されたとき、前記第2弁を開弁制御する第2弁制御手段とを含むとよい。このような構成を有することで、停止指令検出手段により停止指令が検出されたとき、第1室と第2室との内、それらの圧力に基づいて選択された一方に蓄えられた排気ガスを、タービンに供給することが可能になる。ただし、前記選択手段は、前記第1室と前記第2室との内、相対的に圧力の低い方を選択するとよい。こうすることで、次回以降の機関始動直後に、第1室あるいは第2室のいずれかに利用可能な程度の圧力を有する排気ガスを貯留しておくことが可能になる。
【0011】
なお、上記様々な排気ガス回収利用装置において、前記排気絞り弁制御手段は、燃料カット実行中に、前記排気絞り弁上流側の排気通路から前記蓄圧容器へ排気ガス回収を行うべく前記排気絞り弁を閉弁制御するのが望ましい。こうすることで、蓄圧容器に、排気ガスの内、空気を回収することが可能になる。したがって、回収された排気ガスの温度を比較的低温に保つことが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。まず、第1実施形態について説明する。
【0013】
本第1実施形態の排気ガス回収利用装置が適用された車両の内燃機関システムの概念を図1に示す。本第1実施形態における内燃機関10は、燃料である軽油を燃料噴射弁12から圧縮状態にある燃焼室内に直接噴射することにより自然着火させる型式の内燃機関、すなわちディーゼル機関である。
【0014】
気筒14の燃焼室に臨むと共に吸気通路16の一部を区画形成する吸気ポートは、シリンダヘッドに形成されていて、吸気弁によって開閉される。シリンダヘッドには、吸気通路16の一部を区画形成する吸気マニフォルド18が接続され、さらにその上流側には同じく吸気通路16の一部を区画形成する吸気管20が接続されている。吸気管20の上流端側には、吸気通路16に導かれる空気中の塵埃などを除去するべくエアクリーナ22が設けられている。また、スロットルアクチュエータ24によって開度が調整されるスロットル弁26が、吸気管20の途中に設けられている。
【0015】
他方、気筒14の燃焼室に臨むと共に排気通路28の一部を区画形成する排気ポートは、シリンダヘッドに形成されていて、排気弁によって開閉される。シリンダヘッドには、排気通路28の一部を区画形成する排気マニフォルド30が接続され、さらにその下流側には同じく排気通路28の一部を区画形成する排気管32が接続されている。なお、排気ガス浄化触媒が充填された触媒コンバータ34が排気管32の途中に設けられている。
【0016】
さらに、排気ガスにより回転駆動されるタービンホイールを含むタービン36が排気管32の途中に設けられている。ただし、ここでは、タービン36は、触媒コンバータ34よりも上流側に配置されている。これに対応して、タービンホイールに同軸で連結され、タービンホイールの回転力で回転するようにしたコンプレッサホイールを含むコンプレッサ38が吸気管20の途中に設けられている。すなわち、内燃機関10には、排気エネルギーを取り出すタービン36と、タービン36により取り出された排気エネルギーによって内燃機関10に過給するコンプレッサ38とを有するターボ過給器(過給器)40が設けられている。そして、コンプレッサ38により圧縮された空気を冷却すべく、インタークーラ42がコンプレッサ38よりも下流側に設けられている。
【0017】
内燃機関10には、排気通路28を流れる排気ガスの一部を吸気通路16に導く排気ガス還流(EGR)システム44が設けられている。EGRシステム44は、排気通路28と吸気通路16とをつなぐEGR通路46を区画形成するEGR管48と、EGR通路46の連通状態調節用のEGR弁50と、還流される排気ガス(EGRガス)冷却用のEGRクーラ52とを有している。ここでは、EGR管48上流側の一端は排気マニフォルド30に接続され、その下流側の他端は吸気マニフォルド18に接続されている。EGR弁50はEGRクーラ52よりも下流側に設けられていて、その開度はアクチュエータ54により調節される。ただし、ここではEGR弁50はポペット式弁である。
【0018】
さらに、排気通路28の途中には、排気絞り弁56が設けられている。本第1実施形態では排気絞り弁56はバタフライ式弁である。排気絞り弁56は、その閉弁時には排気通路28を流れる排気ガスすなわち燃焼ガスや空気である流体を効果的にせき止め、そのような流体の排気絞り弁56よりも下流側への流れを概ね遮断する遮断弁として機能する。排気絞り弁56は、アクチュエータ58により開閉駆動される。なお、排気絞り弁56は、閉弁時に、排気通路28の流路断面積を50%程度減少させるような構成を有する弁であってもよく、あるいは、閉弁時に、排気通路28を完全に閉塞するような構成を有する弁であってもよい。
【0019】
図1から明らかなように、排気絞り弁56上流側の排気通路、すなわち、排気絞り弁56と排気弁との間の排気通路(弁間通路)Pには、さらに、管部材60により区画形成された管路62が連通され、その管路62により排気通路28と蓄圧容器64内とは連通可能にされている。蓄圧容器64は、弁間通路Pであればいずれの場所、例えば排気マニフォルド30に接続されてもよいが、本第1実施形態の蓄圧容器64は、排気通路28の内、排気絞り弁56上流側であって、タービン36上流側の箇所に接続されている。管路62の径は排気通路28の径に比べて小さい。蓄圧容器64内と排気通路28との連通状態の調節用に、管路62に流量制御弁66が設けられている。なお、流量制御弁66が開弁されることで蓄圧容器64内と排気通路28とは連通し、他方、流量制御弁66が閉弁されることで蓄圧容器64内と排気通路28との連通は遮断され、蓄圧容器64内は概略的に密閉状態になる。ただし、流量制御弁66はアクチュエータ68により開閉駆動される。なお、ここでは流量制御弁66はポペット式弁である。
【0020】
なお、後述するように排気通路28の排気ガスすなわち圧力は、流体の移動を伴いつつ、管路62を介して排気通路28から蓄圧容器64内に回収される。他方、蓄圧容器64内に蓄えられた圧力エネルギーを有する排気ガスは、管路62を介して、蓄圧容器64内から排気通路28、具体的には弁間通路Pに放出されて利用に供される。すなわち、本第1実施形態では、蓄圧容器64内へのエネルギー回収およびそのエネルギー放出利用は、同じ管路62を介して行われる。そして、本第1実施形態では、蓄圧容器64内に回収された排気ガス、すなわちその排気ガスの有する圧力エネルギーは、加速要求が求められたときに、特にその初期に管路62を介してタービン36上流側の排気通路Qへ解放される。解放された排気ガスすなわち圧力エネルギーは過給器40のタービン36の駆動に用いられる。これにより、過給器40の応答性向上が図られる。
【0021】
ここで、上記蓄圧容器64の断面模式図を図2に示す。蓄圧容器64内には隔壁70が設けられ、この隔壁70により蓄圧容器64の内部は2つに仕切られている。隔壁70は固定されているので、隔壁70を挟んで隣り合う2つの空間、すなわち第1室72と第2室72との各内容積は一定である。第1室72には上記管路62が連通可能にされている。他方、第2室74は直接的に弁間通路Pに連通可能にされていない。第2室74と第1室72との連通状態調節用に、具体的には第2室74に第1室72を介して排気ガスが回収され、他方、第2室74から第1室72へ排気ガスが放出(あるいは噴出)されることを可能にするように、第1室72と第2室74とを隔てる隔壁70に連通弁B(図1参照)が設けられている。ここでは、双方向の排気ガスの流れを可能にするように、回収弁76と放出弁78との2つの逆止弁が連通弁Bとして隔壁70に設けられている。回収弁76は、第1室72に回収された排気ガスを第2室74に受け渡すべく機能し、これにより第2室74に排気ガスを回収することが可能になる。放出弁78は、第2室74に回収された排気ガスを第1室72に受け渡すべく機能する。回収弁76は、例えば第1室72の圧力が第2室74の圧力よりも高く、第1室72と第2室74との圧力差が100kPa以上で開弁するように開弁圧力が設定されている。他方、放出弁78は、第1室72内の圧力が第2室74内の圧力よりも低いとき開弁するように開弁圧力が設定されている。その結果、第1室72の圧力は、第2室74の圧力よりも早く立ち上がり、概して、第1室72の圧力は第2室74の圧力以上となる。
【0022】
内燃機関10は、電子制御ユニット(ECU)80に、各種値を検出(導出あるいは推定)するための信号を電気的に出力する各種センサ類を備えている。ここで、その内のいくつかを具体的に述べる。吸入空気量を検出するためのエアフローメーター82が吸気管20に備えられている。また、エアフローメーター82近傍に吸入空気の温度を検出するための吸気温度センサ84が、そしてインタークーラ42下流側にも温度を検出するための吸気温度センサ86が備えられている。また、過給圧を検出するための圧力センサ88が吸気管20の途中に設けられている。また運転者によって操作されるアクセルペダル90の踏み込み量に対応する位置、すなわちアクセル開度を検出するためのアクセルポジションセンサ92が備えられている。また、スロットル弁26の開度を検出するためのスロットルポジションセンサ94も備えられている。さらに、EGR弁50の開度を検出するための、ここではそのリフト量を検出するためのバルブリフトセンサ96も備えられている。また、ピストンが往復動する、シリンダブロックには、連接棒を介してピストンが連結されているクランクシャフトのクランク回転信号を検出するためのクランクポジションセンサ98が取り付けられている。ここでは、このクランクポジションセンサ98は機関回転数(機関回転速度)を検出するための機関回転数センサとしても利用される。さらに、弁間通路Pの排気ガスすなわち燃焼ガスや空気である流体の圧力を検出するための圧力センサ100が備えられている。また、蓄圧容器64内の圧力を検出するための圧力センサ102も備えられている。より詳しくは、圧力センサ102は第1室72の圧力検出用に設けられている。さらに、内燃機関10の冷却水温を検出するための温度センサ104が設けられている。
【0023】
ECU80は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器、入力インタフェース、出力インタフェース等を含むマイクロコンピュータで構成されている。入力インタフェースには、前記各種センサ類が電気的に接続されている。これら各種センサ類からの出力信号(検出信号)に基づき、予め設定されたプログラムにしたがって円滑な内燃機関10の運転がなされるように、ECU80は出力インタフェースから電気的に作動信号(駆動信号)を出力する。こうして、燃料噴射弁12の作動、スロットル弁26、EGR弁50、排気絞り弁56および流量制御弁66の各開度などが制御される。ただし、ECU80は、スロットル弁26、EGR弁50、排気絞り弁56、流量制御弁66の各開度を制御するため、各アクチュエータ24、54、58、68に作動信号を出力する。なお、ここでは、排気絞り弁56の開度を制御する排気絞り弁制御手段は、ECU80の一部と、アクチュエータ58とを含んで構成される。
【0024】
ECU80は、エアフローメーター82からの出力信号に基づいて導出される吸入空気量、クランクポジションセンサ98からの出力信号に基づいて導出される機関回転数など、すなわち機関負荷および機関回転数で表される運転状態に基づいて燃料噴射量(燃料量)、燃料噴射時期を設定する。そして、それら燃料噴射量、燃料噴射時期に基づいて、燃料噴射弁12からの燃料の噴射が行われる。
【0025】
なお、内燃機関10では、クランクポジションセンサ98からの出力信号に基づいて導出される機関回転数が所定回転数(燃料カット回転数)以上であり、且つ、アクセルポジションセンサ92からの出力信号に基づいて導出されるアクセル開度が0%、すなわちアクセルペダル90が踏まれていないときに、燃料噴射弁12からの燃料噴射が停止(燃料カット)されるように設定されている。ただし、このような燃料カット状態が続いて、機関回転数が低下して別の所定回転数(燃料カット復帰回転数)に達すると、燃料噴射は再開される。また、燃料カットが実行されているときに、アクセルペダル90が踏まれてアクセル開度が0%を超えるようになった場合にも、燃料噴射は再開される。なお、燃料カットが行われているときは、概ね減速時に対応する。
【0026】
そして、このように燃料カットをする運転状態のとき、上記スロットル弁26が閉状態に保持されるように、予め上記プラグラムは設定されている。ただし、後述するエネルギー回収のときには、強制的にスロットル弁26は例えば全開の開状態になるように制御される。なお、スロットル弁26は内燃機関10の始動時は全開に制御され、他方、内燃機関10の停止時は全閉に制御される。そして、通常走行時には、機関状態および冷却水温などに応じて、スロットル弁26の開度は適切な開度になるように制御される。
【0027】
また、上記各種センサ類からの出力信号に基づいて定まる内燃機関10の運転状態に基づいてEGR弁50の開度は制御される。ここでは、高負荷領域(全負荷領域を含む。)がEGR弁50が全閉状態に閉弁される領域(EGR外領域)として定められ、それ以外の低・中負荷領域がEGR弁50が開かれる領域(EGR領域)として定められている。本第1実施形態では、上記の如く燃料カットをする運転状態のときには、EGR弁50の開度は全閉になるように設定されているが、このときEGR弁50は所定開度の開状態にされてもよい。ただし、後述するエネルギー回収に際しては、EGR弁50は、運転状態にかかわらず、強制的に閉状態になるように制御される。ただし、EGR弁50の開度は、エネルギー回収に際して、弁間通路Pの圧力や変速機の変速比に基づいて段階的に閉状態になるように制御されてもよい。
【0028】
ところで、通常走行時、排気絞り弁56は全開の開状態に保持制御されるので、排気通路28を流れる排気ガスは触媒コンバータ34を通過して外気に放出される。これに対して、後述するエネルギー回収の所定条件が満たされたとき、排気絞り弁56は全閉の閉状態になるように制御され、排気通路28を流れる排気ガスは概ねせき止められる。そして、このようにしてせき止めた排気ガスの回収を通じてエネルギー回収が行われる。
【0029】
以下、エネルギー回収の制御について、図3のフローチャートにしたがって詳細に説明する。ただし、図3のフローチャートは、およそ20ms毎に繰り返されるものである。なお、以下の記載から明らかになるように、蓄圧容器64内に回収される排気ガスは概ね空気である。
【0030】
内燃機関10が起動されると、まずECU80は、ステップS301において、回収フラグが「1」、すなわちONであるか否かを判定する。ここで、回収フラグが「1」ということは、エネルギー回収が行われる所定条件が満たされていることを表す。これに対してそれが「0」ということは、エネルギー回収が行われる所定条件が満たされていないことを表す。初期状態では同回収フラグはリセットされているためここでは否定判定される。なお、本第1実施形態において、エネルギー回収のための所定条件が満たされるとは、以下の記載から明らかなように、燃料カット実行中であること、および、蓄圧容器64内の圧力が所定圧以下であることの2つが満たされることである。
【0031】
ステップS301で否定判定されると、次ぐステップS303で、燃料カット(実行)中か否かが判定される。具体的には、燃料カット中か否かは、燃料噴射量が「0」とされているか否かで判定される。なお、通常走行時には、概して、内燃機関10により所定出力を生み出すべく、「0」より大きな燃料噴射量が上述の如く導かれて燃料噴射が行われている。それ故、そのようなときには、ステップS303において否定判定されて、該ルーチンは終了する。
【0032】
上記ステップS303で燃料カット中として肯定判定されると、次ぐステップS305で、蓄圧容器64内の圧力(図3中の「容器内圧」)が、蓄圧容器64に許容される圧力であって、所定圧である予め決められてROMに記憶されている上限圧以下か否かが判定される。蓄圧容器64内に十分な量の圧力エネルギーすなわち排気ガスが蓄えられているときに、さらにエネルギー回収が行われることを防ぐためである。蓄圧容器64内の圧力は圧力センサ102からの出力信号に基づいて導出される。なお、このステップS305で否定判定されると、該ルーチンは終了する。ただし、ここでは、上限圧として、ゲージ圧で500kPaという値が設定されている。
【0033】
ステップS305で肯定判定されると、次ぐステップS307で、エネルギー回収の所定条件が満たされているとして、上記回収フラグが「1」にされる。これにより、内燃機関10の通常の上記制御よりも、エネルギー回収用の制御が優先して行われることになる。そして、ステップS309に至ると、EGR弁50が閉弁し、流量制御弁66が閉弁し、且つ、スロットル弁26が開弁するように、各アクチュエータ54、68、24に作動信号が出力される。
【0034】
EGR弁50は通常、上記の如く運転状態に基づいて制御されるが、ステップS309に至って以降のエネルギー回収に際しては、原則的には閉状態にされる。また、流量制御弁66は基本的には閉弁されているので、流量制御弁66は閉状態に保たれることになる。さらに、排気通路28へ空気を送るべく、スロットル弁26は全開の開状態にされる。
【0035】
次ぐステップS311では、排気絞り弁56が閉弁するように、アクチュエータ58に作動信号が出力される。こうして当該ルーチンは終了する。
【0036】
次のルーチンのステップS301では回収フラグが「1」であるので肯定判定される。ステップS301で肯定判定されると、次ぐステップS313で、上記ステップS303と同様に燃料カット中か否かが判定される。ここで肯定判定されると次ぐステップS315で、上記ステップS305と同様に蓄圧容器64内の圧力が上記上限圧以下か否かが判定される。なお、ステップS313およびステップS315での判定が行われるのは、ステップS307で回収フラグが「1」にされた後、エネルギー回収の所定条件が満たされなくなったときに、エネルギー回収を終了する制御をするためである。
【0037】
さてステップS315で肯定判定されると次ぐステップS317で、蓄圧容器64内の圧力が、弁間通路Pの圧力(図3中の「背圧」)以下か否かが判定される。このとき既に、排気絞り弁56が閉弁制御されているので、時間の経過につれて、排気絞り弁56によってせき止められた排気ガスの圧力(圧力エネルギー)は高くなる。そして、その圧力が回収可能な程度にまで高まっているかを調べるために、ステップS317での判定が行われる。ステップS317で否定判定される場合には次ぐステップS319で、流量制御弁66が閉弁するようにアクチュエータ68に作動信号が出力される。これは、既に流量制御弁66が閉じられている場合には、流量制御弁66が閉じたままにされることを意味している。他方、ステップS317で肯定判定される場合には次ぐステップS321で、流量制御弁66が開弁するようにアクチュエータ68に作動信号が出力される。これにより、弁間通路Pの高められた圧力エネルギーを有する排気ガスが管路62を介して、蓄圧容器64内に回収される。
【0038】
高い圧力エネルギー、換言すると高い圧力エネルギーを有する排気ガス(ここでは主に空気)が回収されることで、蓄圧容器64内の圧力は増す。こうしたエネルギー回収は、上記ステップS313あるいはステップS315で否定判定されない限りは概ね続けて行われる。
【0039】
エネルギー回収中に、ステップS313あるいはステップS315で否定判定されるに至ると、エネルギー回収を終了するための制御が行われる。それらのいずれかで否定判定されると次ぐステップS323で、EGR弁50の強制的な閉弁が解除され、EGR弁50の開度が運転状態に基づいた開度になるようにアクチュエータ54に作動信号が出力される。また、流量制御弁66が閉弁するように、アクチュエータ68へ作動信号が出力される。また、スロットル弁26の強制的な開弁が解除され、スロットル弁26の開度が運転状態に基づいた開度になるようにアクチュエータ24へ作動信号が出力される。さらに、排気絞り弁56が開弁するようにアクチュエータ58へ作動信号が出力される。そして、次ぐステップS325で回収フラグが「0」にされる。この結果、内燃機関10はエネルギー回収を行わない通常の制御状態に復帰される。
【0040】
このようにしてエネルギー回収が行われるが、このときの蓄圧容器64内での排気ガスの流れを段階的に次に説明する。上記エネルギー回収用の所定条件がみたされているときにエネルギー回収を行うべくステップS321で流量制御弁66が開弁制御されると、まず、蓄圧容器64の第1室72にエネルギー回収すなわち排気ガスの回収が行われる。その結果、第1室72の圧力が高められる。例えば蓄圧容器64の第1室72および第2室74の各圧力が十分に低いとき、具体的にはゲージ圧で50kPa以下のとき、回収弁76および放出弁78が共に閉じられている状態で、第1室72の圧力は、ゲージ圧で100、200、300kPaというように徐々に高められる。そして、第1室72の圧力が第2室74の圧力よりも100kPa以上高くなると、回収弁76が開弁するようになる。その結果、第1室72から第2室74へ回収弁76を介して排気ガスが流れるようになり、第2室74の圧力も高められる。そして、例えば、第1室72の圧力が上記上限圧を超えるようになると、すなわちステップS315で否定されると、エネルギー回収が終了される。
【0041】
したがって、蓄圧容器64全体よりも内容積の小さい第1室72にまず排気ガスが回収されてそこに高い圧力状態が形成されるので、より短時間で高い圧力エネルギーを有する排気ガスを回収することが可能になる。そして、さらにその回収を続けることで、第2室74にも高い圧力エネルギーを有する排気ガスを回収できる。それ故、蓄圧容器64全体で十分な量の排気ガスを回収し、それを高い圧力エネルギーを有する状態にすることができる。
【0042】
次に、蓄圧容器64に回収された圧力エネルギーの利用に関して図4のフローチャートにしたがって詳細に説明する。ただし、図4のフローチャートは、およそ20ms毎に繰り返されるものである。
【0043】
まず、ECU80は、ステップS401において、上記回収フラグが「0」、すなわちOFFであるか否かを判定する。初期状態では同フラグはリセットされているためここでは肯定判定される。なお、ステップS401で否定判定されると、当該ルーチンは終了する。
【0044】
ステップS401で肯定判定されると、次ぐステップS403では、アシストフラグが「1」、すなわちONであるか否かが判定される。ここで、アシストフラグが「1」であるということは、過給器40の作動をアシストする必要があることを表し、これに対してそれが「0」であるということは、そのような必要がないことを表す。初期状態では同アシストフラグはリセットされているためここでは否定判定される。
【0045】
ステップS403で否定判定されると、次ぐステップS405では、機関回転数が所定回転数以下か否かが判定される。機関回転数が所定回転数より高いときには、過給器40の作動に関してアシストの必要がないので、機関回転数が上記所定回転数を越えているときにはステップS405で否定判定されて、当該ルーチンは終了する。他方、ステップS405で機関回転数が所定回転数以下であるとして肯定判定されると、次ぐステップS407で、急加速が要求されたか否かが判定される。急加速が要求されたか否かは、アクセル開度の変化割合(アクセル開度変化速度)に基づいて判定される。本第1実施形態では、アクセル開度が大きくなる方へ変化したときであって、所定時間におけるその変化幅が所定量を超えたときに、ECU80は急加速が要求されたと判断する。より具体的には、ECU80は、アクセルポジションセンサ92からの出力信号に基づいてアクセル開度を求め、それの微少の所定時間に対する変化量すなわち変化速度が、予め設定されてROMに記憶されている基準値、すなわち上記所定量を超えたとき、急加速が要求されたと判断する。ステップS407で肯定判定されると、次いでステップS409での判定がなされる。なお、ステップS407で否定判定されると、当該ルーチンは終了する。
【0046】
ステップS407で肯定判定されると、次ぐステップS409で蓄圧容器64内の圧力が所定圧以上か否かが判定される。この所定圧とは、過給器40の作動アシストを行うのに最低限必要とされる圧力のことであり、予め実験により求められてROMに記憶されている。具体的には、この所定圧は、ゲージ圧で200kPaであり得る。なお、この所定圧は、排気絞り弁56上流側の排気通路Pの圧力に、例えば100kPaである余裕分の圧力を足した値であっても良い。そして、ステップS409で肯定判定されると、次ぐステップS411でアシストフラグが「1」にされ、次ぐステップS413で流量制御弁66が開弁するように、アクチュエータ68へ作動信号が出力される。このようにして、過給器40の作動アシストが開始される。なお、ステップS409で否定判定されると、あるいはステップS413を経ることで、該ルーチンは終了する。
【0047】
ただし、過給器40の作動アシストをするときの流量制御弁66の開度は、圧力センサ88からの出力信号により導出される圧力に基づいて、所望の過給圧が得られるようにフィードバック制御される。これにより、過給器40の作動アシストが適切になされることになる。
【0048】
そして、次回以降のルーチンでは、回収フラグが「0」であり、且つ、アシストフラグが「1」であるので、上記ステップS401およびステップS403でそれぞれ肯定判定される。次ぐステップS415では、上記ステップS405と同様に、機関回転数が所定回転数以下か否かが判定される。そして、ここで肯定判定されると、次ぐステップS417で、所定時間が経過していないか否かが判定される。ここで、判定対象となる時間は流量制御弁66が開かれたときからの経過時間である。本第1実施形態のECU80は内蔵するタイマ手段でステップS413に至ったときからの時間を計測し、この時間を経過時間と擬制して採用する。また、判定基準となる所定時間は0.5秒から1.5秒、特に好ましくは1.0秒に設定されて予めROMに記憶されている。ステップS417で所定時間が経過していないとして肯定判定されると、次ぐステップS419で、上記ステップS409と同様に、蓄圧容器64内の圧力が上記所定圧以上か否かが判定される。そして、ここで肯定判定されると、当該ルーチンは終了する。
【0049】
上記ステップS415から上記ステップS419のいずれかで否定判定されることで、過給器40の作動アシストに対するエネルギー利用すなわち排気ガス利用を終了するための制御が行われる。ステップS415からステップS419のいずれかで否定判定されると、ステップS421で流量制御弁66が閉弁するように、アクチュエータ68へ作動信号が出力される。そして、次ぐステップS423でアシストフラグが「0」にされる。これにより、該ルーチンは終了する。
【0050】
このようにして蓄圧容器64内の圧力エネルギーすなわち排気ガスの利用が図られるが、上記の如く、蓄圧容器64内の隔壁70に設けられた放出弁78は、第1室72内の圧力が第2室74内の圧力よりも低いとき開弁するようにその開弁圧力が設定されているので、第2室74の圧力が第1室72の圧力よりも低いときには第1室72の排気ガスが排気通路28に放出されて利用されることになる。そして、第1室72の圧力が低下するなどして第2室74の圧力が第1室72の圧力よりも高くなったときには、放出弁78を介して第2室74の排気ガスは第1室72へ流れるので、第1室72の圧力を持続的に高く保つことができる。したがって、第1室72における排気ガスは、比較的長い間、高圧の状態で利用され得る。すなわち、第1室72に回収された高い圧力エネルギーを有する排気ガスが優先して利用され、第2室74にも高い圧力エネルギーを有する排気ガスがあるときには蓄圧容器64内全体の高い圧力エネルギーを有する排気ガスが効果的に利用され得る。
【0051】
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。ただし、上記第1実施形態で説明したのと同様の構成要素に対しては同様の符号を付してその重複説明を省略する。
【0052】
本第2実施形態の排気ガス回収利用装置が適用された車両の内燃機関システムの概念を図5に示す。本第2実施形態における内燃機関10aもディーゼル機関である。上記第1実施形態における内燃機関システムとは異なり、本第2実施形態における内燃機関システムでは、蓄圧容器64の第2室74内とタービン36上流側の排気通路Qを連通可能にする、第2管120により区画形成された第2管路122が設けられている。第2管路122には、上記した流量制御弁66を第1弁とした場合の、第2流量制御弁すなわち第2弁124が設けられている。第2弁124の駆動は、アクチュエータ126によって行われる。ただし、第1管路である上記管路62も、タービン36上流側の排気通路Qに連通されている。
【0053】
ただし、本第2実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、蓄圧容器64に設けられた放出弁178(不図示)が電磁駆動弁とされている。図5では表されていないが、放出弁178は、ECU80からの出力信号に基づいて制御されるアクチュエータ178aによって駆動される。
【0054】
さらに、第2室74の圧力を検出するための圧力センサ128が設けられている。さらに、タービン36には、タービン36の温度を検出するための温度センサ130が設けられている。さらに、ECU80には、機関始動信号に対応するON信号や機関停止信号に対応するOFF信号を出力するキースイッチ132が接続されている。キースッチ132は、運転者により操作されるキー(不図示)を介して入力される運転者からの機関始動要求(始動指令)や機関停止要求(停止指令)に連動してそれらのON−OFF信号を出力する。キースイッチ132は内燃機関10aの停止指令を検出するために用いられる。
【0055】
このような構成を上記第1実施形態に加えて有する第2実施形態では、上で図3および図4にしたがって説明したように、第1管路62を介して、エネルギー回収やエネルギー利用が行われる。ただし、図4にしたがって説明された如きエネルギー利用に際しては、第1室72の圧力が第2室74の圧力を下回ったとき、放出弁178が開弁制御される。さらに、後述するように、本第2実施形態では、機関停止実行時に、蓄圧容器64内に回収された排気ガスを利用して、過給器40のタービン36が冷却される。
【0056】
一般的に、上記の如く過給器40を備えた内燃機関を登載した車両では、加速走行(高回転での運転)直後、タービン36は高温になっている。この状態で、すぐに内燃機関10aを停止すると、タービン36あるいはその近傍を循環するオイルに焼き付きが生じて各部材に固着等が生じる可能性がある。そこで、これらを防止するべく、例えば、加速走行(高回転での運転)直後に、機関停止指令が検出されたときには、タービン36の冷却時間を確保するべく所定時間、アイドリング状態に保たれるように、ECU80のプログラム等は設定されている。しかしながら、このような冷却は強制的にタービン36を冷却するものではないので、その冷却に長い時間を必要とされる場合がある。この間、燃料が消費されるので、燃費向上の観点から、その時間の短縮が望まれる。そこで、本第2実施形態では、内燃機関10aを停止させるときであって、タービン36の温度が所定温度以上のとき、蓄圧容器64内の排気ガスをタービン36に供給するすなわち吹き掛けることで、タービン36を迅速に冷却する。以下、タービン36の冷却を説明する。
【0057】
上記内燃機関システムが搭載された車両が車庫に止められるなどしていて、その車両の内燃機関10aの停止(機関停止)が図られる場合に関して、図6のフローチャートにしたがって説明する。なお、図6のフローチャートは、内燃機関10aが始動されたときから内燃機関10aが停止されるまで、およそ20msごとに繰り返される。ただし、ECU80には、キースイッチ132からOFF信号が出力された後も、所定時間は電源が給電可能とされるリレーが設けられているので、以下の処理は適切に行われる。
【0058】
なお、ここでは、 上記第1実施形態と同様に排気絞り弁制御手段は構成される。また、停止指令検出手段は、キースイッチ132とECU80の一部とを含んで構成される。また、第1室72の圧力を検出する第1圧力検出手段は、圧力センサ102とECU80の一部とを含んで構成される。また、第2室74の圧力を検出する第2圧力検出手段は、圧力センサ128とECU80の一部とを含んで構成される。第1室72の圧力と第2室74の圧力とに基づいて第1室72と第2室74とのいずれか一方を選択する選択手段は、ECU80の一部により構成される。また、第1弁66を制御する第1弁制御手段は、ECU80の一部とアクチュエータ68とを含んで構成される。さらに、第2弁124を制御する第2弁制御手段は、ECU80の一部とアクチュエータ126とを含んで構成される。
【0059】
ECU80は、ステップS601で停止フラグが「0」すなわちOFFであるか否かを判定する。初期状態では同停止フラグはリセットされているので、ここでは肯定判定される。なお、この停止フラグは、機関停止要求があり、機関停止実行時のタービン36冷却用の後述する制御を行うとき「1」にされる。そして停止フラグは、その後のECU80への給電の終了に伴って、リセットされる(「0」にされる)。
【0060】
ステップS601で肯定判定されると、次ぐステップS603で機関停止要求があるか否かが判定される。キースイッチ132からOFF信号が入力されると、ECU80は機関停止要求があると判定する。このようにキースイッチ132からのOFF信号に基づいて機関停止要求があると判定することは、内燃機関10aへの停止指令を検出することに対応する。ステップS603で肯定判定されると、ステップS605に進む。他方、否定判定されると、該ルーチンは終了する。なお、機関停止要求があるときは、概ね、図示しない車速センサからの出力信号に基づいて導出される車速は「0」であり、且つ、アクセルポジションセンサ92からの出力信号に基づいて導出されるアクセル開度は0%である。
【0061】
そして、ステップS603で肯定判定されると次ぐステップS605で、タービン36の温度(図6中「タービン温度」)が所定温度以上であるか否かが判定される。タービン36の冷却を行う必要があるか否かを判定するためである。なお、所定温度は、予め実験により求められてROMに記憶されている。そして、ここで否定判定されると該ルーチンは終了する。他方、肯定判定されるとステップS607へ進む。ただし、ステップS605は、タービン36の冷却を行う必要があるか否かを判定するためのステップであるので、その上記判定事項は、例えばタービン36上流側の排気通路Qの温度、排気マニフォルド30の温度等が所定温度以上であるか否かなどによって代替され得る。
【0062】
そして、ステップS605で肯定判定されると次ぐステップS607で、まず、圧力センサ102からの出力信号に基づいて導出された第1室72の圧力と、圧力センサ128からの出力信号に基づいて導出された第2室74の圧力とが比較される。そして、この比較に基づいて、第1室72と第2室74とのいずれか一方が選択される。具体的には、ここでは、第1室72と第2室74との内、圧力が低い方が選択される。ここでは、このようにして選択されたのが第2室74であるとして以下の説明を続ける。
【0063】
さらに、ステップS607では、第2室74が選択されたので、第2室74内を排気通路Qに連通させて、第2室74内の排気ガスをタービン36に供給するべく、第2弁である第2流量制御弁124が開弁するように、アクチュエータ126へ作動信号が出力される。こうして、第2室74内の排気ガスは排気通路Qに供給されて、タービン36に供給される。上記の如く、蓄圧容器64へのエネルギー回収は燃料カット実行中に行われるので、蓄圧容器64内の排気ガスは概ね空気で構成される。したがって、第2室74内の排気ガスは排気ガスとしては低温である。このように低温の排気ガスがタービン36に供給される結果、タービン36が冷却されるようになる。
【0064】
ステップS607の次のステップS609では上記停止フラグが「1」にされる。そして、次ぐステップS611で、選択された蓄圧容器64の第2室の圧力(図6中「容器内圧」)が所定圧以下か否かが判定される。ここでは、所定圧はゲージ圧で30kPaに設定されて、予めROMに記憶されている。なお、ステップS611でのこの所定圧は大気圧であってもよい。機関停止要求があると、上記の如く選択された第2室74に関する第2弁124が開弁制御されるので、第2室74内の圧力は低下する。しかしながら、第2室74内の圧力が未だ所定圧以下にまで低下していないときには、ステップS611で否定され、該ルーチンは終了する。
【0065】
次回以降のルーチンでは停止フラグが「1」であるので、ステップS601で否定判定されて、ステップS611へ進む。そして、第2室74内の圧力が所定圧以下であると肯定判定されるようになると、ステップS613へ進む。
【0066】
ステップS613では、ステップS607で開弁制御された弁、ここでは第2弁124が閉弁するように、アクチュエータ126へ作動信号が出力される。これにより、タービン36の冷却が終了されて、内燃機関10aの停止が完了する。なお、ステップS613を経て第1弁66あるいは第2弁124が閉弁されることで、ECU80等への給電は終了される。
【0067】
なお、上記ステップS611で説明したように、タービン36の冷却を蓄圧容器64内の圧力が所定圧以下になるまで行うことにしたが、その終了判定(ステップS611)は、ステップS603を経てから所定時間経過したときに行われてもよい。あるいはそのような終了判定はタービン36の温度が第2所定温度以下になったときに行われてもよい。
【0068】
以上、上記したように、機関停止指令があったときに、蓄圧容器64内の排気ガスがタービン36に供給されることで、機関停止実行時にタービン36が冷却されるので、タービン冷却時間を短くすることができる。また、ここでは、タービン冷却に相対的に圧力の低い方の部屋の圧力が用いられるので、他方の部屋には相対的に高い圧力を有する排気ガスが貯留された状態に保たれ得る。したがって、次回以降の機関始動(直)後の加速時に、過給器40の作動アシストが可能になり得る。さらに、ここでは、機関停止実行時に蓄圧容器64からタービン36上流側の排気通路Qに概ね空気が供給されるので、排気通路Qの燃焼ガスの濃度は低くなる。したがって、次回の機関始動時に燃焼室に排気ガスが戻ることが低減されるので、そのときの機関始動性を高めることが可能になる。
【0069】
以上、本発明に係る排気ガス回収利用装置を上記第1及び第2実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されない。上記両実施形態では、隔壁70に設けられた連通弁Bは、2つの弁から構成されたが、1つの弁から構成されても良い。ただし、連通弁Bが1つの弁で構成されるときには、連通弁BはECU80からの出力信号に基づいて制御されるアクチュエータにより駆動される弁であり得る。また、上記第1実施形態では2つの弁は逆止弁であり、上記第2実施形態では一方が逆止弁であり他方が電磁駆動弁であるとしたが、それらの両方が電磁駆動弁とされても良い。連通弁Bが電磁駆動弁で構成される場合には、ECU80は所定の時期に電磁駆動弁を開弁あるいは閉弁制御するが、そ(れら)の開閉時期は上記第1実施形態において逆止弁で説明したことに準じるとよい。
【0070】
また、上記両実施形態では、蓄圧容器64内は2つの部屋に分けられたが、複数の隔壁などを用いて3つ以上の部屋に分けられても良い。ただし、蓄圧容器64が3つ以上の部屋を有する場合には、上記両実施形態で説明したエネルギー回収および、機関停止実行時を除くエネルギー利用に関しては、弁間通路Pに直接的に連通可能な第1室を介してのみ、他の部屋は、弁間通路Pと連通可能にされるとよい。
【0071】
また、上記第2実施形態では、機関停止指令があったときに、相対的に圧力の低い方の部屋の排気ガスを排気通路Qに供給することにした。しかしながら、相対的に圧力の高い方の部屋の排気ガスを排気通路Qに供給することを本発明は排除しない。または、機関停止指令があったときに、予め定めておいた部屋の排気ガスをタービン36に供給することにしてもよく、例えば機関停止指令があったときには、第1室72や第2室74の圧力に関わらず、第2室74の排気ガスがタービン36に供給されても良い。このように第2室74の排気ガスがタービン36に供給される場合には、上記第2実施形態の放出弁178は上記第1実施形態の放出弁78であってもよい。また、第2室74の排気ガスがタービン36に供給され、第2管路122がそのためだけに用いられる場合には、第2管路は排気通路Qの内、最下流側に連通され得、具体的にはタービン36のスクロール室に直接排気ガスを供給可能なようにタービン36に直接的に連通され得る。
【0072】
また、エネルギー回収を上記両実施形態では燃料カット中に行うことにしたが、それはこれ以外のときに行われてもよい。機関運転状態が燃料噴射をする運転状態のときにエネルギー回収が行われてもよい。
【0073】
なお、上記両実施形態では、蓄圧容器64内に回収された圧力エネルギーを、過給器40の作動アシストに用いることとした。しかしながら、これは回収された圧力エネルギーの用途を制限するものではなく、回収された圧力エネルギーは、種々の機能部品の作動アシストなどに用いられ得る。なお、排気通路28と蓄圧容器64とをつなぐエネルギー回収用の通路と、種々の機能部品と蓄圧容器64とをつなぐエネルギー放出用の通路とは、分けられてもよい。
【0074】
また、上記両実施形態では、排気絞り弁56はバタフライ式弁であったが、それ以外の形式の弁であってもよい。排気絞り弁56は、例えば、ポペット式弁、シャッター式弁であり得る。なお、排気絞り弁56として、排気ブレーキ用に設けられた弁が用いられてもよい。また、EGR弁50や流量制御弁66は、ポペット式弁以外の形式の弁であってもよく、バタフライ式弁、シャッター式弁であり得る。なお、エネルギー回収用の通路とエネルギー放出用の通路とが分けられる場合には、エネルギー回収用の通路に設けられる弁は逆止弁であってもよい。
【0075】
なお、上記両実施形態では、本発明をディーゼル機関に適用して説明したが、これに限定されず、本発明は、ポート噴射型式のガソリン機関、筒内噴射形式のガソリン機関等の各種の内燃機関に適用可能である。また、用いられる燃料は、軽油やガソリンに限らず、アルコール燃料、LPG(液化天然ガス)等でもよい。また、本発明が適用される内燃機関の気筒数などはいくつであってもよい。
【0076】
なお、上記両実施形態およびその変形例では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明については、特許請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明は特許請求の範囲およびその等価物の範囲および趣旨に含まれる修正および変更を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】第1実施形態が適用された車両の内燃機関システムの概念図である。
【図2】図1の蓄圧容器の断面模式図である。
【図3】第1実施形態のエネルギー回収用のフローチャートである。
【図4】第1実施形態のエネルギー利用用のフローチャートである。
【図5】第2実施形態が適用された車両の内燃機関システムの概念図である
【図6】第2実施形態において、機関停止実行時にタービンを冷却するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
10 内燃機関
28 排気通路
36 タービン
40 ターボ過給器
56 排気絞り弁
64 蓄圧容器
70 隔壁
72 第1室
74 第2室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関の排気通路に設けられた排気絞り弁と、該排気絞り弁上流側の排気通路から蓄圧容器へ排気ガス回収を行うべく前記排気絞り弁を閉弁制御する排気絞り弁制御手段とを備えた排気ガス回収利用装置において、
前記蓄圧容器は、該蓄圧容器の内部を仕切る隔壁と、該隔壁を挟んで隣り合う空間を連通可能にする連通弁とを備え、
前記隔壁によって少なくとも一部が区画形成されていて前記連通弁によって圧力が調節可能な前記蓄圧容器の第1室に前記排気絞り弁上流側の排気通路から排気ガスが回収されるように、前記第1室は前記排気絞り弁上流側の排気通路に連通可能にされていることを特徴とする排気ガス回収利用装置。
【請求項2】
前記連通弁は2つの弁を含んで構成され、該2つの弁の各々は互いに逆向きの排気ガスの流れを調節するために設けられていることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス回収利用装置。
【請求項3】
前記隔壁によって少なくとも一部が区画形成されていて該隔壁を挟んで前記第1室と隣り合うと共に前記連通弁を介して前記第1室と連通可能にされている第2室と、
前記内燃機関の排気通路に設けられたターボ過給器のタービンと、
該タービンに前記第1室の排気ガスを供給可能にする第1弁と、
前記タービンに前記第2室の排気ガスを供給可能にする第2弁と、
前記内燃機関への停止指令を検出する停止指令検出手段と、
該停止指令検出手段により停止指令が検出されたとき、前記第1室と前記第2室とのいずれか一方の排気ガスを前記タービンに供給するように前記第1弁および前記第2弁の一方を開弁制御する弁制御機構部と
を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の排気ガス回収利用装置。
【請求項4】
前記第1室の圧力を検出する第1圧力検出手段と、
前記第2室の圧力を検出する第2圧力検出手段と
をさらに備え、
前記弁制御機構部は、
前記停止指令検出手段により停止指令が検出されたとき、前記第1圧力検出手段により検出された前記第1室の圧力と前記第2圧力検出手段により検出された前記第2室の圧力とに基づいて前記第1室と第2室とのいずれか一方を選択する選択手段と、
該選択手段により前記第1室が選択されたとき、前記第1弁を開弁制御する第1弁制御手段と、
前記選択手段により前記第2室が選択されたとき、前記第2弁を開弁制御する第2弁制御手段と
を含むことを特徴とする請求項3に記載の排気ガス回収利用装置。
【請求項5】
前記選択手段は、前記第1室と前記第2室との内、相対的に圧力の低い方を選択することを特徴とする請求項4に記載の排気ガス回収利用装置。
【請求項6】
前記排気絞り弁制御手段は、燃料カット実行中に、前記排気絞り弁上流側の排気通路から前記蓄圧容器へ排気ガス回収を行うべく前記排気絞り弁を閉弁制御することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の排気ガス回収利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−41479(P2009−41479A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208344(P2007−208344)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】