説明

排気制御弁

【課題】 エンジンの低速回転域では閉弁状態を維持すると共に、エンジンの高速回転域では弁の開度を大きくして排気抵抗をより小さくでき、かつ安価・安定して弁の開閉チャタリングを防止する排気制御弁を提供する。
【解決手段】 排気制御弁1は、マフラ本体51内におけるインナーパイプ54の途中に設けられた弁座2に対し開閉回動可能に設けられた弁体3と、弁体3を弁座2のシート面8に当接させる方向へ付勢するリターンスプリング5と、弁体3の閉弁位置から所定の開弁位置までの範囲における弁体3の開閉回動に対して摩擦による摺動抵抗を付与する摩擦ヒンジ6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された内燃機関から排出された排気ガスが流れる排気系の通路を開閉制御する排気制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の排気制御弁は、消音器内の消音室との連通路を開閉することで、エンジンの始動、アイドリング回転を含むエンジンの低速回転域では、閉弁により排気ガスに拡張室等を通過させることで騒音を低減すると共に、高速回転域では、開弁により排気ガスに拡張室等をバイパスさせることで通気抵抗を下げ、背圧を低減している。このように、従来の排気制御弁では、エンジンの低速回転域における低騒音化要求と高速回転域における排気系の低背圧化要求との両立を図ることを目的とし、弁体が弁座のシート面に当接した閉弁位置では弁体の排気受圧面の面積が小さく、初期開弁時以降は排気受圧面の面積が大きくなるように弁体および弁座の形状を設定している。
【0003】
一方、特許文献2には、マフラ(消音器)・パイプに揺動可能に応動してマフラ・パイプを開閉する開閉バルブの弁体をコイルばねと断面円弧状の板ばねのばね力で開閉バルブの弁座に弁体を押しつけるようにし、これら両ばねのばね力に抗してマフラ・パイプを開放させるとともに、この開放時に板ばねを折曲させてその反力を低下させるようにして、開閉バルブが開閉を繰り返す、いわゆるチャタリングが生じるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−162650号公報
【特許文献2】特許第4037571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の従来の排気制御弁においては、エンジンの高速回転域であって開弁状態のときの排気受圧面の面積に対し、エンジンの低速回転域であって閉弁状態のときの排気受圧面の面積を小さくすると共に、開弁時には排気受圧面積を大きくするには、形状が複雑になると共に、レイアウトの制約等による限界がある。また、リターンスプリング(付勢手段)のセット加重を小さくすると、エンジンの低回転時から開弁してしまうため低騒音化に反してしまう。したがって、エンジンの低速回転域で閉弁状態を維持するためには、リターンスプリング(付勢手段)のセット荷重(弁体が閉弁位置のときのリターンスプリングの付勢力)を大きくする必要がある。ところが、スプリングの性質上弁体に作用するリターンスプリングの付勢力は弁体が付勢力に抗してより開弁方向へ回転するほど大きくなるため、リターンスプリングのセット荷重を大きくすると、セット荷重の小さいものに比べて、弁の開度が小さくなりエンジンの高速回転域での排気抵抗が大きくなるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の従来の排気制御弁においては、チャタリングは防止できるものの、板ばねの折曲を利用するため、そのばね力にばらつきが生じやすく、また繰り返しによる破損やばね力の低下が生じやすいといった問題があった。
【0007】
本発明は、エンジンの低速回転域では閉弁状態を維持すると共に、エンジンの高速回転域では弁の開度を大きくして排気抵抗をより小さくでき、かつ安価・安定して弁の開閉チャタリングを防止する排気制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の排気制御弁では、弁体を弁座のシート面に当接(弁口を閉じる)させる方向へ付勢する付勢手段に加え、弁体の閉弁位置から所定の開弁位置までの範囲における弁体の開閉回動に対して摩擦による摺動抵抗を付与する抵抗付与手段を備える。
【発明の効果】
【0009】
よって、本発明では、抵抗付与手段の摺動抵抗により、弁体が閉弁位置から所定の開弁位置までの範囲にある初期開弁時に必要とされる排気抵抗を確保できるため、付勢手段のセット荷重を小さくできる。よって、初期開弁時以降で弁体に作用する付勢手段の付勢力を小さくできるため、エンジンの高速回転域における弁開度を大きく取ることができ、排気抵抗をより下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の排気制御弁1が使用されたマフラの断面図である。
【図2】実施例1の排気制御弁1の平面図である。
【図3】実施例1の排気制御弁1の縦断面図である。
【図4】実施例1の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部分解斜視図である。
【図5】実施例1の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部背面図である。
【図6】実施例1における弁体3の開弁角度(開弁位置)と支持軸4に付与されるトルクとの関係を示す図である。
【図7】実施例2の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部分解斜視図である。
【図8】実施例2の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部背面図である。
【図9】実施例3の排気制御弁1の平面図である。
【図10】実施例3の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部分解斜視図である。
【図11】実施例3の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部背面図である。
【図12】実施例3の摩擦ヒンジ6の動作を示す説明図である。
【図13】実施例3における弁体3の開弁角度(開弁位置)と支持軸4に付与されるトルクとの関係を示す図である。
【図14】実施例3におけるマフラ内の圧力と排気ガス流量との関係を示す図である。
【図15】実施例4の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部背面図である。
【図16】実施例4のカバー部材39を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の排気制御弁を実施するための形態を、図面に示す各実施例に基づいて説明する。
【0012】
[実施例1]
まず、実施例1の排気制御弁1が組み込まれたマフラの全体構成を図1に基づいて説明する。なお、図1(イ)は排気制御弁1の閉弁状態、図1(ロ)は排気制御弁1の開弁状態を示す。
このマフラは、マフラ本体51と、インナープレート52と、インレットパイプ53と、インナーパイプ54と、アウトレットパイプ55とを備える。
【0013】
マフラ本体51は、略円筒状のアウターシェル51aと、該アウターシェル51aの前後両端開口部を閉塞するアウタープレート51b、51cとで構成されている。そして該マフラ本体51の内部は、インナープレート52により第1消音室(拡張室)56と第2消音室(拡張室)57とに仕切られている。
【0014】
インレットパイプ53は、上流側のアウタープレート51aおよびインナープレート52を貫通した状態でその下流側開口部が第2消音室57に連通され、また、アウトレットパイプ55は、インナープレート52および下流側のアウタープレート51cを貫通した状態でその上流側開口部が第1消音室56に連通されている。
【0015】
インナーパイプ54は、インナーパネル52を貫通した状態で設けられることにより第1消音室56と第2消音室57との間が連通された状態となっている。そして、このインナーパイプ54における第1消音室56側開口端部に、排気制御弁1が組み付けられている。
そして、インナープレート52には、第1消音室56と第2消音室57との間を常時連通する連通孔52aが形成されている。
【0016】
次に、実施例1の排気制御弁1の全体構成を説明する。
[全体構成]
図2は実施例1の排気制御弁1の平面図、図3は実施例1の排気制御弁1の縦断面図である。
実施例1の排気制御弁1は、弁座2と、弁体3と、支持軸4と、リターンスプリング(付勢手段)5と、摩擦ヒンジ(抵抗付与手段)6とを備える。
【0017】
弁座2は、パイプ部7と、シート部9と、シート部基板部10と、一対の軸支持部11,11とを備える。
パイプ部7は、マフラ(消音器)本体51内のインナーパイプ(排気流通路)54の排気ガス流れ方向において下流端部に接続固定される。
シート部9は、パイプ部7の端部から半径方向外方へ向けて平面的に突出する状態に延設されている。シート部9の弁体3側の面には、弁体3が着座する環状のシート面8が設定されている。
シート部基板部10は、シート部9の一端外周縁部から平面的に延設されている。
一対の軸支持部11,11は、シート部基板部10の両側面部を垂直に立ち上げて形成されている。
【0018】
弁体3は、本体部12と、シール部13と、本体基板部16と、一対の軸被支持部17,17とを備える。
シール部13は、本体部12の外周に一体に延設されている。シール部13の弁座1側の面には、シート面8と当接する環状のシール面14が設定されている。
本体基板部16は、シール部13の一端外周縁部から平面的に延設されている。
一対の軸被支持部17,17は、本体基板部16の両側面部を垂直に立ち上げて形成されている。
両軸被支持部17,17は、弁座2の両軸支持部11,11の内側に位置し、弁座2の両軸支持部11,11間に架設された支持軸4と一体に固定されている。
支持軸4は両軸支持部11,11に対して回動可能に支持されている。よって、弁体3は支持軸4を中心として弁座2に対し開閉回動可能である。
【0019】
リターンスプリング5は、コイルスプリングであって、支持軸4の周りにそのコイル部5aが装着され、コイル部5aの両端を弁体3の本体部12の略中央部と弁座2のシート部基板部10とにそれぞれ当接係止させることにより、弁体3の本体部12を弁座2のシート面8に当接させて弁体3を閉じる方向に付勢力を作用させている。
【0020】
[摩擦ヒンジ]
図4は実施例1の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部分解斜視図、図5は実施例1の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部背面図である。ここで、図4、図5では、支持軸4の一端側のみを図示しているが、他端側についても同様の構造である。
摩擦ヒンジ6は、弁体3の開閉回動に対し摺動抵抗を付与するもので、軸支持部11と、2つのウェーブワッシャ(ウェーブばね・予圧付与手段・抵抗付与手段)20,21とを備える。
【0021】
ウェーブワッシャ20,21は、軸支持部11の両面に当接して摩擦による摺動抵抗およびセット荷重を与えるもので、弁座2の軸支持部11と抜け止め用の加締め部材36との間と、弁座2の軸支持部11と弁体3の軸被支持部17との間にセット荷重(予圧)を与えた状態で介装されている。
ウェーブワッシャ20,21の中心には、支持軸4の先端部26が挿通される長穴32,33が形成されている。先端部26には、二面幅部26a,26bが形成されており、長穴32,33の長辺は先端部26の長辺よりも長く、短辺は二面幅部26a,26bの幅よりも長く、かつ、先端部26の長辺よりも短く形成されている。よって、ウェーブワッシャ20,21は、先端部26に挿入後、支持軸4に対し相対回転不能、かつ、軸方向へ相対移動可能である。
【0022】
次に、作用を説明する。
[排気制御弁の組み立て方法]
図4、図5を用いて、排気制御弁1の組み立て方法を説明する。
まず、弁体3の一対の軸被支持部17,17に形成された開口35,35に、リターンスプリング5を挿通させた支持軸4の両端部を通し、支持軸4の両端部外周面と軸被支持部17,17の開口35,35の周縁部分とを溶接する。続いて、支持軸4の先端部26に、ウェーブワッシャ21、弁座2の軸支持部11、ウェーブワッシャ20を順に挿通させる。最後に、ウェーブワッシャ20から突出した先端部26に抜け止め用の加締め部材36を嵌めてこの外側の先端部26を加締め加工してこれらを固定する。
【0023】
ここで、加締め治具により加締め部材36を嵌めた支持軸4の先端部26を加締め加工してこれらを固定するにあたって、その加締め位置を変えることで、支持軸4の段差部31と加締め部材36との距離が変化するので、ウェーブワッシャ20,21のセット荷重(与圧)を所望の値に設定できる。つまり、摩擦ヒンジ6の摺動抵抗特性は、ウェーブワッシャ20,21のばね特性とセット荷重により決まるため、排気制御弁1の組み付け時にウェーブワッシャ20,21のセット荷重を調整することで、摩擦ヒンジ6により弁体3に付与される摺動抵抗を所望の特性とすることができる。
【0024】
このとき、摩擦ヒンジ6により弁体3に付与される摺動抵抗は、弁体3の開弁位置にかかわらず常にリターンスプリング5の付勢力よりも小さくする必要がある。理由は、開弁した弁体3をリターンスプリング5の付勢力によって閉弁位置まで戻す際、摩擦ヒンジ6の摺動抵抗がリターンスプリング5の付勢力よりも大きいと、弁体3が閉弁位置まで戻らなくなるからである。つまり、摺動抵抗が常に付勢力よりも小さくなるようにウェーブワッシャ20,21のばね特性およびセット荷重を設定することで、エンジン回転数が高速回転域から低速回転域まで低下したとき、弁体3を確実に閉弁位置まで戻すことができる。
【0025】
[エンジン低速回転域での低騒音化]
実施例1の排気制御弁1において、弁体3の初期開弁時、すなわち、シート面8から弁体3のシール面14が離れて開弁するとき、弁体3には摩擦ヒンジ6により摺動抵抗が作用する。このため、この初期開弁時の排気受圧面の面積を基準として、エンジンの回転数が所定の低速回転域における排気圧力では開弁しない程度にリターンスプリング5の付勢力と摩擦ヒンジ6の摺動抵抗との合力を設定しておくことにより、エンジンの低速回転域においては、マフラ内を流れる排気圧力が小さいことから、当該排気圧力を前記合力が上回ることで弁体3が閉じた状態に維持される(図1(イ)を参照)。これにより、インレットパイプ53からが第2消音室(拡張室)57、インナープレート52に形成された複数の連通孔52a、第1消音室(拡張室)56を通過してアウトレットパイプ55から排気されるようになるため、排気騒音エネルギーが拡張、収縮により大きく減衰されて低騒音となる。したがって、エンジンの低速回転域で必要とされる低騒音化要求を満たすことができる。
【0026】
[エンジン高速回転域での低背圧化]
一方、エンジン回転数が所定の低速回転域を超えた、中・高速回転域においては、マフラ内を流れる排気圧力が大きくなるため、当該排気圧力を前記合力が上回ることで弁体3が押し開けることができる(図1(ロ)を参照)。これにより、インレットパイプ53からが第2消音室(拡張室)57、インナープレート52に形成された複数の連通孔52aおよびインナーパイプ54を経由して第1消音室(拡張室)56に流入し、アウトレットパイプ55から排気されるようになるため、排気抵抗を減らすことができる。これにより、エンジンの高速回転域における排気系の低背圧化要求を満たすことができる。
【0027】
[リターンスプリングのセット荷重低減]
図6は、実施例1における弁体3の開弁角度(開弁位置)と支持軸4に付与されるトルクとの関係を示す図である。
実施例1では、初期開弁時において、弁体3の閉弁状態を維持するために必要なトルクを、リターンスプリング5の付勢力と摩擦ヒンジ6の摺動抵抗との合力で生成しているため、エンジンの低速回転域で閉弁状態を維持するために必要な排気抵抗を確保しつつ、従来の排気制御弁に対して、リターンスプリング5のセット荷重を小さくできる。
【0028】
したがって、リターンスプリング5のばね特性が上記従来の排気制御弁と同等であったとしても、セット荷重の差分だけリターンスプリング5の付勢力を小さくできる。よって、従来の排気制御弁に対し、弁体3の開弁角度が初期開弁時の開弁角度を超えたときに弁体3に作用するリターンスプリング5の付勢力を小さくできることから、エンジンの中・高速回転域における開口面積を従来に比べて大きくすることができるため、排気抵抗をより小さく下げることができる。
【0029】
次に、実施例1の効果を説明する。
実施例1の排気制御弁1にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
(1) 弁体3を弁座2のシート面8に当接(弁口を閉じる)させる方向へ付勢するリターンスプリング5に加え、弁体3の閉弁位置から所定の開弁位置までの範囲における弁体3の開閉回動に対して摩擦による摺動抵抗を付与する摩擦ヒンジ6を備え。これにより、摩擦ヒンジ6の摺動抵抗により、弁体3が閉弁位置から所定の開弁位置までの範囲にある初期開弁時に必要とされる排気抵抗を確保できるため、リターンスプリング5のセット荷重を小さくできる。よって、初期開弁時以降で弁体3に作用するリターンスプリング5の付勢力を小さくできるため、エンジンの低速回転域では閉弁状態を維持すると共に、エンジンの高速回転域における弁開度を大きく取ることができるので、排気抵抗をより下げることができる。
【0030】
(2) 抵抗付与手段により弁体3に付与される摺動抵抗は、リターンスプリング5の付勢力よりも小さいため、エンジンの回転数が高速回転域から低速回転域へと変化し、マフラ内を流れる排気圧力が小さくなったとき、リターンスプリング5の付勢力により抵抗付与手段の摺動抵抗に抗して弁体3を閉弁位置まで確実に戻すことができ、エンジンの低速回転域における排気騒音を抑制できる。
【0031】
次に、他の実施例について説明する。この他の実施例の説明にあたっては、前記実施例1と同様の構成部分については図示を省略し、もしくは同一の符号を付けてその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0032】
〔実施例2〕
この実施例2は、摩擦ヒンジ6の構成が下記の点で実施例1とは相違したものである。
まず、構成を説明する。
[摩擦ヒンジ]
図7は実施例2の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部分解斜視図、図8は実施例2の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部背面図である。ここで、図7、図8では、支持軸4の一端側のみを図示しているが、他端側についても同様の構造である。
摩擦ヒンジ6は、軸支持部11と、2つのウェーブワッシャ(ウェーブばね・与圧付与手段・抵抗付与手段)20,21と、摩擦プレート22、43とを備える。
【0033】
摩擦プレート22、43の中心には、支持軸4の先端部26が挿通される長穴34、27が形成されている。よって、摩擦プレート22、43は、ウェーブワッシャ20,21と同様に、先端部26に挿入後、支持軸4に対し相対回転不能、かつ、軸方向へ相対移動可能である。
摩擦プレート22、43は、軸支持部11の両面に当接して摺動抵抗を与えるもので、弁座2の軸支持部11の両面を挟む状態で、加締め部材36と弁体3の軸支時部17との間で、軸支持部11と軸被支持部17のそれぞれの対向面を離間する方向に押圧する2つのウェーブワッシャ20,21によりセット荷重(予圧)を与えた状態で介装されている。
【0034】
次に、作用を説明する。
[排気制御弁の組み立て方法]
図7、図8を用いて、排気制御弁1の組み立て方法を説明する。
まず、弁体3の一対の軸被支持部17,17に形成された開口35,35に、リターンスプリング5を挿通させた支持軸4の両端部を通し、支持軸4の両端部外周面と軸被支持部17,17の開口35,35の周縁部分とを溶接する。続いて、支持軸4の先端部26に、ウェーブワッシャ21、20、摩擦プレート43、弁座2の軸支持部11、摩擦プレート22を順に挿通させる。最後に、摩擦プレート22から突出した先端部26に抜け止め用の加締め部材36を嵌めて最適な位置で先端部26を加締め加工してこれらを固定する。
【0035】
ここで、実施例1で説明したように、加締め部材36の加締め位置に応じて支持軸4の段差部31と加締め部材36との距離が変化することで、両ウェーブワッシャ20,21のセット荷重(与圧)も変わるので、その加締め位置を適宜調整することで、ウェーブワッシャ20,21のセット荷重を所望の値に設定できる。つまり、摩擦ヒンジ6の摺動抵抗特性は、ウェーブワッシャ20,21のばね特性とセット荷重により決まるため、排気制御弁1の組み付け時にウェーブワッシャ20,21のセット荷重を調整することで、摩擦ヒンジ6により弁体3に付与される摺動抵抗を所望の特性とすることができる。
【0036】
このとき、摩擦ヒンジ6により弁体3に付与される摺動抵抗は、実施例1と同様に、弁体3の開弁位置にかかわらず常にリターンスプリング5の付勢力よりも小さくする必要がある。
【0037】
次に、実施例2の効果を説明する。
実施例2の排気制御弁1にあっては、弁体3を弁座2のシート面8に当接(弁口を閉じる)させる方向へ付勢するリターンスプリング5に加え、弁体3の閉弁位置から所定の開弁位置までの範囲における弁体3の開閉回動に対して摩擦による摺動抵抗を付与する摩擦ヒンジ6を備えることで、上記実施例1の効果(1)、(2)と同様の効果が得られる。
【0038】
〔実施例3〕
この実施例3は、摩擦ヒンジ6の構成が下記の点で実施例1、2とは相違したものである。
まず、構成を説明する。
[全体構成]
図9は実施例3の排気制御弁1の平面図であり、摩擦ヒンジ6以外は上記実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0039】
[摩擦ヒンジ]
図10は実施例3の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部分解斜視図、図11は実施例3の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部背面図である。ここで、図10、図11では、支持軸4の一端側のみを図示しているが、他端側についても同様の構造である。
摩擦ヒンジ6は、弁体3がシート面8に当接した閉弁位置から所定の開弁位置までの範囲では、弁体3の開閉回動に対し大きな摺動抵抗を付与し、弁体3の開弁位置が所定の開弁位置を超える範囲にあるときには微小な摺動抵抗を付与するもので、カムプレート(回転カム)18と、固定カムとしての軸支持部11と、2つのウェーブワッシャ(与圧付与手段)20,21と、摩擦プレート22とを備える。
【0040】
カムプレート18は、弁座2の軸支持部11とウェーブワッシャ20との間に配置されている。カムプレート18は、両面が平坦な円盤状に形成され、軸支持部11に面した一面23の外周縁には、弁体3の開閉回動時、後述する凸部(固定カム側凸部)29が摺接するエリアとして環状のカム面(当接面)24が設定されている。カム面24には、1つの凸部(回転カム側凸部)25が形成されている。凸部25は、等脚台形状に形成され、平行でない2辺(斜面)がカムプレート18の周方向を向いて配置されている。カムプレート18の中心には、支持軸4の先端部26が挿通される長穴27が形成されている。先端部26には、二面幅部26a,26bが形成されており、長穴27の長辺は先端部26の長辺よりも長く、短辺は二面幅部26a,26bの幅よりも長く、かつ、先端部26の長辺よりも短く形成されている。よって、カムプレート18は、先端部26に挿入後、支持軸4に対し相対回転不能、かつ、軸方向へ相対移動可能である。
【0041】
軸支持部11のカムプレート18に面した一面28には、弁体3の開閉回動時、カムプレート18の凸部29が摺接するエリアとして環状のカム面19が設定されている。カム面19は、カム面24と略同一の環状に形成されている。カム面19には、1つの凸部29が形成されている。凸部29は、凸部25と同様に等脚台形状に形成され、平行でない2辺(斜面)がカム面19の周方向を向いて配置されている。なお、弁体3の開閉回動時における両凸部25,29の位置関係の変化については後述する。
軸支持部11において、カム面19の径方向内側には、支持軸4の先端部26が挿通される軸穴30が形成されている。軸穴30は、先端部26の長径よりも大きな内径に形成され、支持軸4を相対回転可能に支持する。
【0042】
ウェーブワッシャ20,21は、カムプレート18をカム面19側へ付勢することで両カム面19,24に摺動抵抗を与えるもので、カムプレート18と支持軸4の段差部31との間に介装されている。ウェーブワッシャ20,21の中心には、支持軸4の先端部26が挿通される長穴32,33が形成されている。長穴32,33の形状は、上述したカムプレート18の長穴27と同じである。
摩擦プレート22は、一対の軸支持部11,11の外側に配置され、中心には支持軸4の先端部26が挿通される長穴34が形成されている。長穴34の形状は、上述したカムプレート18の長穴27やウェーブワッシャ20,21の長穴32,33と同じである。
【0043】
次に、実施例3の作用を説明する。
[排気制御弁の組み立て方法]
図10、図11を用いて、排気制御弁1の組み立て方法を説明する。
まず、弁体3の一対の軸被支持部17,17に形成された開口35,35に、リターンスプリング5を挿通させた支持軸4を通し、支持軸4と軸被支持部17,17の開口35,35の周縁部分とを溶接する。続いて、支持軸4の先端部26に、ウェーブワッシャ21、ウェーブワッシャ20、カムプレート18を順に挿通させる。
次に、弁座2の一対の軸支持部11,11の軸穴30に支持軸4の先端部26を通し、一対の軸支持部11,11の外側から先端部26に摩擦プレート22を挿通させる。最後に、摩擦プレート22から突出した先端部26に抜け止め用の加締め部材36を嵌めて、先端部26を加締め加工してこれらを固定する。
【0044】
ここで、加締め部材36の固定位置を適宜調整することで、ウェーブワッシャ20,21のセット荷重を所望の値に設定できる。つまり、摩擦ヒンジ6の摺動抵抗特性は、ウェーブワッシャ20,21のばね特性とセット荷重により決まるため、排気制御弁1の組み付け時にウェーブワッシャ20,21のセット荷重を調整することで、摩擦ヒンジ6により弁体3に付与される摺動抵抗を所望の特性とすることができる。
【0045】
このとき、摩擦ヒンジ6により弁体3に付与される摺動抵抗は、弁体3の開弁位置にかかわらず常にリターンスプリング5の付勢力よりも小さくする必要がある。理由は、開弁した弁体3をリターンスプリング5の付勢力によって閉弁位置まで戻す際、摩擦ヒンジ6の摺動抵抗がリターンスプリング5の付勢力よりも大きいと、弁体3が閉弁位置まで戻らなくなるからである。つまり、摺動抵抗が常に付勢力よりも小さくなるようにウェーブワッシャ20,21のばね特性およびセット荷重を設定することで、エンジン回転数が高速回転域から低速回転域まで低下したとき、弁体3を確実に閉弁位置まで戻すことができる。
【0046】
[摩擦ヒンジの動作]
図12は、実施例3の摩擦ヒンジ6の動作を示す説明図である。
図12(a)は、弁体3が閉弁位置にあるときの摩擦ヒンジ6の状態を示している。このとき、カム面24の凸部25は、カム面19の凸部29に乗り上げた状態、言い換えると、両凸部25,29は互いに突き当てた状態であり、両カム面24,19間の距離Dは最大値Dmaxとなる。よって、2つのウェーブワッシャ20,21は支持軸4の軸方向に最も縮んだ状態であり、ウェーブワッシャ20,21がカムプレート18を軸支持部11側へ付勢する付勢力は最大である。
本体部12に排気ガスの圧力が作用し図12(a)の状態から弁体3が開弁方向へ回転を開始すると、弁体3と一体に回転するカムプレート18は、弁座2と一体の軸支持部11に対して相対回転を開始する。このとき、上記のようにウェーブワッシャ20,21による付勢力は最大であるため、弁体3に作用する摺動抵抗は最も大きい。
【0047】
続いて、図12(b)のように凸部25が凸部29の斜面を降り始めると、両カム面24,19間の距離Dは徐々に減少し、これに応じて弁体3に付与される摺動抵抗も徐々に小さくなる。そして、図5(c)のように凸部25が凸部29の斜面から完全に降りて凸部25,29が斜面同士を接触させた状態になると、距離Dは最小値Dminとなり、弁体3に付与される摺動抵抗は2つのウェーブワッシャ20,21のセット荷重の合力とカム面19,24間の動摩擦係数とに対応した最小値となる。この後、図12(c)の状態からさらに弁体3が開弁方向へ回転したとしても、凸部25が再び凸部29に乗り上げることはないため、距離Dは最小値Dminのまま不変であり、弁体3に付与される摺動抵抗は最小値のままである。
【0048】
[エンジン低速回転域での低騒音化]
実施例3の排気制御弁1において、弁体3の初期開弁時、すなわち、シート面8から弁体3のシール面14が離れて開弁するとき、弁体3には摩擦ヒンジ6により大きな摺動抵抗が作用する。このため、この初期開弁時の排気受圧面の面積を基準として、エンジンの回転数が所定の低速回転域における排気圧力では開弁しない程度にリターンスプリング5の付勢力と摩擦ヒンジ6の摺動抵抗との合力を設定しておくことにより、エンジンの低速回転域においては、マフラ内を流れる排気圧力が小さいことから、当該排気圧力を前記合力が上回ることで弁体3が閉じた状態に維持される(図1(イ)を参照)。これにより、インレットパイプ53からが第2消音室(拡張室)57、インナープレート52に形成された複数の連通孔52a、第1消音室(拡張室)56を通過してアウトレットパイプ55から排気されるようになるため、排気騒音エネルギーが拡張、収縮により大きく減衰されて低騒音となる。したがって、エンジンの低速回転域で必要とされる低騒音化要求を満たすことができる。
【0049】
[エンジン高速回転域での低背圧化]
一方、エンジン回転数が所定の低速回転域を超えた、中・高速回転域においては、マフラ内を流れる排気圧力が大きくなるため、流体力がリターンスプリング5の付勢力と摩擦ヒンジ6の摺動抵抗との合力に打ち勝って弁体3の本体部12がシート面8から押し開かれた初期開弁状態になると、摩擦ヒンジ6により弁体3に作用する摺動抵抗は小さくなる。これにより、シート面8から弁体3が一旦離れた後、すなわち、初期開弁時以降は、図12(b),(c)に示したように、初期開弁時よりも低い排気圧力で弁体3を押し開けることができるため、開口面積を大きくすることができる
そして、排気制御弁1が大きく開弁(図1(ロ)を参照)することで、インレットパイプ53からが第2消音室(拡張室)57、インナープレート52に形成された複数の連通孔52aおよびインナーパイプ54を経由して第1消音室(拡張室)56に流入し、アウトレットパイプ55から排気されるようになるため、排気抵抗をさらに減らすことができる。これにより、エンジンの高速回転域における排気系の低背圧化要求を満たすことができる。
【0050】
[リターンスプリングのセット荷重低減]
図13は、実施例3における弁体3の開弁角度(開弁位置)と支持軸4に付与されるトルクとの関係を示す図である。
実施例3では、初期開弁時において、弁体3の閉弁状態を維持するために必要なトルクを、リターンスプリング5の付勢力と摩擦ヒンジ6の摺動抵抗との合力で生成しているため、エンジンの低速回転域で閉弁状態を維持するために必要な排気抵抗を確保しつつ、従来の排気制御弁に対して、リターンスプリング5のセット荷重を小さくできる。
【0051】
したがって、リターンスプリング5のばね特性が上記従来の排気制御弁と同等であったとしても、セット荷重の差分だけリターンスプリング5の付勢力を小さくできる。よって、従来の排気制御弁に対し、弁体3の開弁角度が初期開弁時の開弁角度を超えたときに弁体3に作用するリターンスプリング5の付勢力を小さくできることから、エンジンの中・高速回転域における開口面積を従来に比べて大きくすることができるため、排気抵抗をより小さく下げることができる。
【0052】
また、実施例3では、摩擦ヒンジ6における両カム面24,19の凸部25,29を、共に等脚台形状としたため、図12に示すように、凸部25が凸部29の斜面を降りるときの摺動抵抗を急激に変化させることができる。すなわち、弁体3が開弁した後は、摺動抵抗を迅速に低下させることができ、不要な摩擦抵抗により排気抵抗が増大するのを抑制できる。
【0053】
図14は、実施例3におけるマフラ内の圧力と排気ガス流量との関係を示す図であり、従来の排気受圧面が2段階に変化する排気制御弁(摩擦ヒンジなし)の場合は、初期開弁時直後の圧力の下がり代が開き始めの圧力に対して25%程度であるのに対し、実施例3の排気制御弁1では、従来の排気制御弁を超える圧力の下がり代を実現できる。よって、エンジンの低速回転域と高速回転域との通気抵抗差をより増大させることができ、低速回転域における低騒音化要求と高速回転域における排気系の低背圧化要求との両立をより高いレベルで実現可能となった。
【0054】
次に、実施例3の効果を説明する。
実施例3の排気制御弁1にあっては、実施例1の効果(1)、(2)に加え、以下の効果を奏する。
【0055】
(3) 抵抗付与手段を、弁体3の開閉回動時、閉弁位置から所定の開弁位置までの範囲内で摺動抵抗を最大とする摩擦ヒンジ6としたため、従来構造の排気制御弁に対し摩擦ヒンジ6の追加のみで排気性能をより高めることができる。
(4) 摩擦ヒンジ6は、弁体3と一体に回転する支持軸4に設けられたカムプレート18と、支持軸4の両端を回動可能に支持する一対の軸支持部11,11に設けられた固定カム(軸支持部11)とを有し、カムプレート18と軸支持部11との当接面(カム面19,24)にはそれぞれ1つの凸部25,29が形成され、カムプレート18の凸部25は、弁体3が閉弁位置のとき軸支持部11の凸部29に乗り上げた状態であり、弁体3が閉弁位置から所定の開弁位置まで開く間に凸部29から降りる。これにより、支持軸4にカムプレート18を追加し、軸支持部11にカム面19を形成するだけの簡単な設計変更で摩擦ヒンジ6を構成できる。よって、従来の排気制御弁のレイアウト形状を大きく変えることがないため、従来の排気制御弁の搭載性を踏襲できる。つまり、摩擦ヒンジ6の追加によりマフラ本体に対する排気制御弁1の搭載性が損なわれることがない。
【0056】
(5) カムプレート18は、支持軸4に対して軸方向移動可能に設けられ、支持軸4に、カムプレート18を軸支持部11側へ付勢する2つのウェーブワッシャ20,21を設けたため、ウェーブワッシャ20,21のばね特性とセット荷重を適宜変更するだけで、摩擦ヒンジ6の摺動抵抗特性を簡単に調整できる。このため、異なる車両向けに摩擦ヒンジ6の摺動抵抗特性を異ならせた複数の排気制御弁1を製造する場合に有利である。
【0057】
〔実施例4〕
実施例4は、摩擦ヒンジ6を覆うカバー部材39を設けた例である。
図15は実施例4の摩擦ヒンジ6の構成を示す排気制御弁1の要部背面図、図16は実施例4のカバー部材39を示す正面図である。
実施例4では、カムプレート18が軸支持部11の外側に配置され、軸被支持部17と軸支持部11との間には、ワッシャ37が介装されている。
実施例4では、軸支持部11の外側に突出した支持軸4の先端部26に対し、カムプレート18、ウェーブワッシャ20、ウェーブワッシャ21、摩擦プレート22の順に挿通され、カムプレート18の一面23は軸支持部11に向いて配置されている。軸支持部11において、カム面19および凸部29は、カムプレート18に面した他面38側に設けられている。
【0058】
実施例4の摩擦ヒンジ6は、カバー部材39に覆われている。カバー部材39は、一端側を開口した断面ハット型に形成され、支持軸4の先端部26を含む摩擦ヒンジ6を内部に収容可能な大きさを有している。カバー部材39の開口側の端縁にはフランジ部40が形成されている。フランジ部40の外周は、平面視略矩形に形成されている。フランジ部40には、対角線上に配置された一対の第1取り付け穴41,41と第2取り付け穴42,42,とが形成されている。第1取り付け穴41,41と第2取り付け穴42,42は、同一円周上に配置されている。軸支持部11の他面38には、対角線上に一対のネジ穴(不図示)が形成されている。一対のネジ穴は、第1取り付け穴41,41および第2取り付け穴42,42と同一円周上に位置する。
第1取り付け穴41,41および第2取り付け穴42,42は、例えば、異なる車両向けに摺動抵抗特性を異ならせた2種類の摩擦ヒンジ6を製造する場合、カバー部材39を軸支持部11にボルト締結する際のボルト穴として、一方は第1取り付け穴41,41を使用し、他方は第2取り付け穴42,42を用いる。
【0059】
次に、実施例4の作用を説明する。
[摩擦ヒンジ保護作用]
摩擦ヒンジ6は、カムプレート18と軸支持部11とを摺動接触させることで、弁体3に摩擦による摺動抵抗を付与するものであるため、両カム面24,19に煤などの異物が付着した場合、摺動抵抗特性が狙った特性から外れてしまうおそれがある。また、摩擦ヒンジ6には、摺動抵抗調整用に2つのウェーブワッシャ20,21が組み込まれているが、ウェーブワッシャ20,21は比較的熱に弱いため、排気ガスが直接当たると熱害による形状変形等の影響により、摺動抵抗が低下するおそれがある。
これに対し、実施例4では、摩擦ヒンジ6を覆うカバー部材39を設けたため、排気ガス中に含まれる煤等の異物が両カム面24,19へ付着することに伴う摺動抵抗特性の低下、およびウェーブワッシャ20,21に排気ガスが直接当たることに伴う摺動抵抗低下を共に防止できる。
【0060】
また、実施例4では、カバー部材39を軸支持部11にボルト締結する際に用いるボルト穴として、一対の第1取り付け穴41,41と一対の第2取り付け穴42,42とを設けた。よって、第1取り付け穴41,41をボルト穴とした場合と、第2取り付け穴42,42をボルト穴とした場合とでは、軸支持部11に固定されたカバー部材39の角度(フランジ部40の傾き)が互いに異なったものとなる。
よって、異なる車両向けに摩擦ヒンジ6の摺動抵抗特性を異ならせた2種類の排気制御弁1を製造する場合、それぞれ別の取り付け穴を用いてカバー部材39を軸支持部11に取り付けるようにすることで、軸支持部11に対するカバー部材39の取り付け角度から容易に摩擦ヒンジ6の摺動抵抗特性を判別でき、誤組み付けを抑制できる。
【0061】
次に、実施例4の効果を説明する。
実施例4の排気制御弁1にあっては、実施例3の効果(1)〜(6)に加え、以下の効果を奏する。
(7) カムプレート18は、軸支持部11の外側に配置され、軸支持部11には、摩擦ヒンジ6を覆うカバー部材39が設けられているため、排気ガス中に含まれる煤等の異物が両カム面24,19へ付着することに伴う摺動抵抗特性の低下、およびウェーブワッシャ20,21に排気ガスが直接当たることに伴う摺動抵抗低下を共に防止できる。
【0062】
以上、本発明を上記各実施例に基づき説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
例えば、摩擦ヒンジは、弁体の開閉回動時、閉弁位置から所定の開弁位置までの範囲内で摺動抵抗を最大とする構造であれば、実施例に示した構造に限られない。
実施例では、摩擦ヒンジを支軸の両端にそれぞれ設けた例を示したが、摩擦ヒンジを支軸の一端側のみに設けた場合であっても、実施例と同様の作用効果を得ることができる。
実施例では、弁座の軸支持部自身を固定カムとして用いた例を示したが、固定カムは弁座の軸支持部に固定されていれば、軸支持部と別体でもよい。
ウェーブワッシャの個数は必要な摺動抵抗に応じて適宜設定できる。また、ウェーブワッシャに代えて、コイルスプリング等のばねを用いてもよい。
実施例では、マフラ本体内の排気パイプの端部に弁座を設けた例を示したが、マフラ内部構造に応じてマフラ内の仕切り板(バッフルプレート)に設けてもよい。
本発明は、特開2004−162650号公報に記載の排気制御弁のように、排気受圧面が段階的に変化する排気制御弁に適用した場合であっても、リターンスプリングのセット荷重を小さくでき、エンジンの高速回転域における排気抵抗をより小さくできるという効果を奏する。この場合、例えば、実施例3の構成において、弁座2部分でシート面8の下流側に、弁体3の排気受圧面を画成するシート面8の内径φd1よりも大径の内径φd2を有する円筒部を形成し、弁体3側に、弁体3の閉弁位置から所定の開弁位置までの間は円筒部9内にあって円筒部9の上端開口部を閉塞するフランジ部を延設する。これにより、エンジンの低速回転域と高速回転域との通気抵抗差をより増大させることができ、排気性能をより高めることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 排気制御弁
2 弁座
3 弁体
4 支持軸
5 リターンスプリング(付勢手段)
6 摩擦ヒンジ(抵抗付与手段)
8 シート面
9 円筒部(筒部)
11 軸支持部(固定カム)
14 フランジ部(栓体部材)
17 軸被支持部
18 カムプレート(回転カム)
19 カム面(当接面)
20 ウェーブワッシャ(ウェーブばね・与圧付与手段)
21 ウェーブワッシャ(ウェーブばね・与圧付与手段)
22 摩擦プレート
24 カム面(当接面)
25 凸部(回転カム側凸部)
29 凸部(固定カム側凸部)
36 加締め部材
39 カバー部材
43 摩擦プレート
51 マフラ本体
54 インナーパイプ(排気流通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消音器本体内における排気流通路の途中に設けられた弁座に対し開閉回動可能に設けられた弁体と、
この弁体を前記弁座のシート面に当接させる方向へ付勢する付勢手段と、
前記弁体の閉弁位置から所定の開弁位置までの範囲における前記弁体の開閉回動に対して摩擦による摺動抵抗を付与する抵抗付与手段と、
を備えたことを特徴とする排気制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の排気制御弁において、
前記摺動抵抗は、前記付勢手段の付勢力よりも小さいことを特徴とする排気制御弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の排気制御弁において、
前記抵抗付与手段は、前記弁体の開閉回動時、該回動に対し摺動抵抗を作用する摩擦ヒンジであることを特徴とする排気制御弁。
【請求項4】
請求項3に記載の排気制御弁において、
前記摩擦ヒンジは、前記弁座に設けられてこの排気通路から外れた位置まで伸ばされて互いに離間される軸支持部と、該軸支持部にそれぞれ対面し、かつ互いに離間するように前記弁体に設けられ、前記軸支持部に支持された支持軸が一体回転するように取り付けられた軸被支持部と、前記軸支持部の両側に配置された状態で前記支持軸と一体回転するよう該支持軸にされて取り付けられ、前記軸支持部の両側面に押圧される1対のウェーブばねと、
を有する、
ことを特徴とする排気制御弁。
【請求項5】
請求項3に記載の排気制御弁において、
前記摩擦ヒンジは、前記弁座に設けられてこの排気通路から外れた位置まで伸ばされて互いに離間される軸支持部と、該軸支持部にそれぞれ対面し、かつ互いに離間するように前記弁体に設けられ、前記軸支持部に支持された支持軸が一体回転するように取り付けられた軸被支持部と、前記軸支持部とこれと隣合う前記軸被支持部のそれぞれの対向面を離間する方向に押圧するウェーブばねと、
を有する、
ことを特徴とする排気制御弁。
【請求項6】
請求項3に記載の排気制御弁において、
前記摩擦ヒンジは、前記弁体の開閉回動時、前記閉弁位置から前記所定の開弁位置までの範囲内で摺動抵抗を最大とすることを特徴とする排気制御弁。
【請求項7】
請求項6に記載の排気制御弁において、
前記摩擦ヒンジは、前記弁体と一体に回転する支軸に設けられた回転カムと、前記支軸の両端を回動可能に支持する一対の軸支持部に設けられた固定カムとを有し、
前記回転カムと前記固定カムとの当接面にはそれぞれ凸部が形成され、回転カム側凸部は、前記弁体が閉弁位置のとき固定カム側凸部に乗り上げた状態であり、前記弁体が前記閉弁位置から前記所定の開弁位置まで開く間に前記固定カム側凸部から降りることを特徴とする排気制御弁。
【請求項8】
請求項7に記載の排気制御弁において、
前記回転カムは、前記支軸に対して軸方向移動可能に設けられ、
前記支軸に、前記回転カムを前記固定カム側へ付勢する与圧付与手段を設けたことを特徴とする排気制御弁。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の排気制御弁において、
前記回転カムは、前記一対の軸支持部の外側に配置され、
前記軸支持部には、前記摩擦ヒンジを覆うカバー部材が設けられていることを特徴とする排気制御弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−36887(P2012−36887A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152619(P2011−152619)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】