説明

接着剤組成物、回路部材接続用接着剤シート及び半導体装置の製造方法

【課題】 半導体ウエハへの貼付性、ウエハ裏面研削性及びフリップチップボンディング時の埋込性のすべてを高水準で満足するフィルム状接着剤の形成を可能とする接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】 上記課題を解決する接着剤組成物は、(A)重量平均分子量が2万以上10万以下の熱可塑性樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、(E)マイクロカプセル型の硬化促進剤と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、それを用いた回路部材接続用接着剤シート及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体チップの実装技術として、半導体チップを直接回路基板に接続するフェイスダウンボンディング方式が知られている。この方式には、半導体チップの電極部分にはんだバンプを形成して回路基板の電極にはんだ接続する方法や、半導体チップに設けた突起電極に導電性接着剤を塗布して回路基板の電極との電気的な接続を行う方法がある。
【0003】
フェイスダウンボンディング方式で製造された半導体装置は、各種環境下に曝された場合、接続されたチップと基板の熱膨張係数差に基づくストレスが接続界面で発生するため、接続信頼性が低下しやすいという問題を有している。このため、接続界面のストレスを緩和する目的で、チップと基板の間隙をエポキシ樹脂等のアンダーフィル材で充填することが行われている。
【0004】
アンダーフィル材の充填方式としては、チップと基板とを接続した後に低粘度の液状樹脂を注入する方式と、基板上にアンダーフィル材を設けた後にチップを搭載する方式がある。更に、後者の方式には、液状樹脂を塗布する方式とフィルム状樹脂を貼付ける方式がある。
【0005】
液状樹脂を用いる方式は、ディスペンサーによる精密な塗布量コントロールが困難である。特に、近年の薄型化されたチップを実装する場合、塗布量が多すぎると、ボンディング時に滲み出した樹脂がチップの側面を這い上がり、ボンディングツールを汚染してしまう。そのため、本方式では、ツールの洗浄が必要となり、量産時の工程が煩雑化する。
【0006】
他方、フィルム状樹脂を用いる方式は、フィルムの厚みを調整することによって最適な樹脂量を与えることが容易にできる反面、仮圧着工程と呼ばれるフィルム状樹脂を基板に貼付ける工程を必要とする。通常、仮圧着工程は、対象となるチップ幅よりも大きめの幅にスリットされたリール状の接着剤テープを用意し、チップサイズに応じて基材上の接着剤テープをカットして接着剤が反応しない程度の温度で基板上に熱圧着する。ところが、チップ搭載位置にフィルムを精度よく供給することは難しく、また微小チップなどに対応した細幅のリール加工は困難であることから、一般的に、歩留りの確保には、仮圧着で貼付けるフィルムをチップサイズより大きくすることで対応している。そのため、本方式では、隣接部品との距離や実装面積を余分に確保する必要があり、高密度化実装に対応しにくい。
【0007】
最近、高密度化実装技術の一つとして、フィルム状接着剤付チップを用いる方法が検討されている。例えば、下記特許文献1及び2などには、フィルム状の接着剤が貼付されたウエハを準備し、このウエハの裏面を研削した後、ウエハを接着剤と共に切断してチップ化することにより、チップにチップサイズと同サイズの接着剤が付着したフィルム状接着剤付チップを作製し、これを回路基板に実装して半導体装置を製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−049482号公報
【特許文献2】特許第2833111号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の方法におけるフィルム状接着剤は、ウエハへの貼付工程、ウエハ裏面研削工程、ダイシング工程、フリップチップボンディング工程を経ることになる。ウエハへの貼付工程では、ウエハに貼付したときに剥離やボイドの発生を十分抑制できる貼付性がフィルム状接着剤に求められる。ウエハ裏面研削工程では、ウエハ裏面研削性に優れていること、すなわち、研削による破損やクラックの発生を十分防止できる粘着性や密着性を有していることがフィルム状接着剤に求められる。フリップチップボンディング工程では、半導体素子搭載用部材などの回路部材との接続時にボイドが発生しにくい埋込性がフィルム状接着剤に求められる。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載のウエハ加工用テープの接着剤層は、フィルム自体が柔らかすぎるため高温圧着時にボイドが出やすく、埋込不足により信頼性に悪影響を及ぼす可能性があった。上記特許文献2に記載の接着剤フィルムは、フリップチップボンディング工程における埋込性が必ずしも十分とはいえず、特に、ハンダ接合を同時に行う場合の200℃以上での熱圧着時にボイドが発生することがあった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、半導体ウエハへの貼付性、ウエハ裏面研削性及びフリップチップボンディング時の埋込性のすべてを高水準で満足するフィルム状接着剤の形成を可能とする接着剤組成物、それを用いた回路部材接続用接着剤シート、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の接着剤組成物は、(A)重量平均分子量が2万以上10万以下の熱可塑性樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、(E)マイクロカプセル型の硬化促進剤とを含む。
【0013】
本発明の接着剤組成物によれば、上記構成を有することにより、半導体ウエハへの貼付性、ウエハ裏面研削性及びフリップチップボンディング時の埋込性のすべてを高水準で満足するフィルム状接着剤を形成することができる。
【0014】
本発明の接着剤組成物により上記の効果が得られる理由を本発明者らは以下のとおり考えている。すなわち、上記(A)〜(E)成分を組み合わせることによって、ウエハへの貼付工程で求められる比較的低温での埋込性及びウエハ裏面研削工程で求められる粘着性や密着性を有するフィルムを形成しつつ、上記エポキシ樹脂及びマイクロカプセル型の硬化促進剤の配合により速硬化性が得られること、及び放射線重合性化合物及び光開始剤の配合によりフリップチップボンディング前の放射線照射により加熱時の流動性を制御できることで、ボンディング時における良好な埋込性が達成されたと本発明者らは考えている。
【0015】
本発明の接着剤組成物は、(A)成分を100質量部と、(B)成分を5〜500質量部と、(C)成分を5〜200質量部と、(D)成分を0.1〜30質量部と、(E)成分を50〜300質量部とを含むものであることが好ましい。
【0016】
また、本発明の接着剤組成物は、(F)1分子内にフェノール性水酸基を1つ有するメチロール化合物を更に含むことができる。このような化合物を配合することにより、埋込性を損なうことなく樹脂組成物にフラックス活性を付与することができる。係る接着剤組成物をハンダ接合される回路部材間に介在させた場合、ハンダ表面の酸化膜を除去するためのフラックス活性が十分に得られ、加熱加圧によってハンダ接合と接着剤の硬化とを同時に且つ良好に行うことが可能となる。
【0017】
本発明の接着剤組成物は、相対向する回路部材間に介在させ、回路部材同士を接着するために用いることができる。
【0018】
本発明の回路部材接続用接着剤シートは、支持基材と、該支持基材上に設けられ、上記本発明の接着剤組成物からなる接着剤層とを備えることを特徴とする。本発明の回路部材接続用接着剤シートは、接着剤層を、相対向する回路部材間に介在させ、回路部材同士を接着するために用いることができる。
【0019】
本発明はまた、主面の一方に複数の回路電極を有する半導体ウエハを準備し、該半導体ウエハの回路電極が設けられている側に、上記本発明の回路部材接続用接着剤シートの接着剤層を貼付ける工程と、半導体ウエハの回路電極が設けられている側とは反対側を研削して半導体ウエハを薄化する工程と、接着剤層に放射線を照射する工程と、薄化した半導体ウエハ及び放射線が照射された接着剤層をダイシングしてフィルム状接着剤付半導体素子に個片化する工程と、フィルム状接着剤付半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とをフィルム状接着剤付半導体素子のフィルム状接着剤を介して接着する工程とを備える半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、半導体ウエハへの貼付性、ウエハ裏面研削性及びフリップチップボンディング時の埋込性のすべてを高水準で満足するフィルム状接着剤の形成を可能とする接着剤組成物、及びそれを用いた回路部材接続用接着剤シートを提供することができる。また、本発明によれば、上記の回路部材接続用接着剤シートを用いた半導体装置の製造方法を提供することができ、これにより接続信頼性に優れた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る回路部材接続用接着剤シートの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【図3】本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【図4】本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【図5】本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【図6】本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明に係る回路部材接続用接着剤シートの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す回路部材接続用接着剤シート10は、支持基材3と、該支持基材3上に設けられ、本発明の接着剤組成物からなる接着剤層2と、接着剤層2を被覆する保護フィルム1とを備えている。
【0023】
まず、接着剤層2を構成する本発明の接着剤組成物について説明する。
【0024】
本発明の接着剤組成物は、(A)重量平均分子量が2万以上10万以下の熱可塑性樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、(E)マイクロカプセル型の硬化促進剤とを含む。
【0025】
(A)重量平均分子量が2万以上10万以下の熱可塑性樹脂は、例えば、接着剤組成物に塗膜性を付与するために使用される。具体例としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリルゴム、ポリスチレン、フェノキシ樹脂、NBR、SBR、ポリイミドやシリコーン変性樹脂(アクリルシリコーン、エポキシシリコーン、ポリイミドシリコーン)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の樹脂のうち、接着後の高信頼性が得られやすくなる高Tg化の観点から、フェノキシ樹脂が好ましい。フェノキシ樹脂としては、東都化成(株)製FX−293、YP−70等を用いることができる。
【0026】
また、(A)成分は、耐リフロー性の点で、(B)エポキシ樹脂と非相溶であることが好ましい。ただし、相溶性については(A)成分の特性のみでは決定されないので、(A)成分及び(B)成分の両者が相溶しない組み合わせを選択する。
【0027】
(A)成分の重量平均分子量は2万以上10万以下であるが、3万以上9.5万以下であることが好ましく、4万以上9万以下であることがより好ましく、5万以上8万以下であることが特に好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあると、シート状又はフィルム状とした接着剤層の強度、可とう性を良好にバランスさせることが容易となるとともに接着剤層のフロー性が良好となるため、配線の回路充填性(埋込性)を十分確保できる。なお、本明細書において、重量平均分子量とは、表1に示す条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
【0028】
【表1】

【0029】
(B)エポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂ハンドブック(新保正樹編、日刊工業新聞社)等に記載されるエポキシ樹脂を広く使用することができる。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシなどの二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂などを使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものを適用することができる。
【0030】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート807,815,825,827,828,834,1001,1004,1007,1009、ダウケミカル社製DER−330,301,361、東都化成(株)製YD8125,YDF8170等が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート152,154、日本化薬(株)製EPPN−201、ダウケミカル社製DEN−438等が、また、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬(株)製EOCN−102S,103S,104S,1012,1025,1027、東都化成(株)製YDCN701,702,703,704等が挙げられる。多官能エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製Epon1031S、1032−H60、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製アラルダイト0163、ナガセケムテックス(株)製デナコールEX−611,614,614B,622,512,521,421,411,321等が挙げられる。アミン型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート604、東都化成(株)製YH−434、三菱ガス化学(株)製TETRAD−X,TETRAD−C、住友化学(株)製ELM−120等が挙げられる。複素環含有エポキシ樹脂としては、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製アラルダイトPT810等の、UCC社製ERL4234,4299,4221,4206等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明においては、高接着力を付与する観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0032】
本発明に係る接着剤組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5〜500質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましく、75〜400質量部とすることがさらにより好ましく、100〜300質量部とすることが特に好ましい。(B)成分の含有量が上記の範囲にあると、フィルム状に形成した接着剤層の弾性率及び成型時のフロー性抑制が十分確保でき、高温での取り扱い性を良好にできる。
【0033】
(C)放射線重合性化合物としては、放射線の照射により架橋し得る化合物が挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパンなどのアクリレート又はメタクリレートが挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、新中村化学株式会社製:A−DPH、日立化成工業株式会社製:FA−512AS、FA−513AS等の市販品を用いることができる。
【0034】
本発明に係る接着剤組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、5〜200質量部が好ましい。係る含有量が5質量部以上であると、紫外線などの放射線照射による放射線重合性化合物の重合反応を十分に進めることができ、高温圧着時の流動性を抑制することができる。一方、配合量が200質量部を超えると、架橋が起こりすぎ、圧着に必要な流動性が得られにくくなるので好ましくない。これらの点を考慮すると、上記配合量は、10〜150質量部がより好ましく、20〜100質量部が特に好ましい。
【0035】
(D)光開始剤としては、放射線の照射により上記(C)成分を硬化させ得る化合物が挙げられる。(D)成分の具体例としては、例えば、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のケトン類、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。中でも、溶媒への溶解性や熱時の安定性から、チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製Irg−184、Irg−819が好ましい。また、光開始剤は、1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本発明に係る接着剤組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましい。係る含有量が0.1質量部より小さいと、未反応の(D)成分が残存しやすくなる。この場合、高温圧着時にボイドが多くなり、埋込性に悪影響を与える傾向にある。一方、上記含有量が30質量部を超えると、重合反応によって分子量を十分に増加させることが困難となり、低分子量成分が多く存在する傾向にある。この場合、低分子量成分が熱時の流動性に影響を及ぼす可能性がある。これらの点を考慮すると、上記含有量は、0.5〜25質量部がより好ましく、1〜20質量部が特に好ましい。
【0037】
(E)マイクロカプセル型の硬化促進剤としては、ポリウレタン、ポリスチレン、ゼラチン及びポリイソシアネート等の高分子物質、ケイ酸カルシウム、ゼオライトなどの無機物、或いはニッケルや銅などの金属薄膜などの被膜により硬化促進剤からなる核が実質的に覆われているものが挙げられる。カプセルに内包される硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラートなどが挙げられる。これらのうち、保存安定性、速硬化性の点で、イミダゾールが好ましい。
【0038】
マイクロカプセルの平均粒径は、フィルム形成性の観点から、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。また、粒径の下限値は、保存安定性をより確実に得る観点から、2μm以上であることが好ましい。
【0039】
(E)成分は市販品を用いることができ、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製HP−3941、HP−4032等が挙げられる。
【0040】
本発明に係る接着剤組成物における(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して50〜300質量部であることが好ましい。係る含有量が、50質量部未満であると、硬化反応が進みにくくなる傾向にあり、300質量部を超えると、マイクロカプセル型の硬化促進剤に含まれている液状成分の影響で、ボイドが発生しやすくなる傾向にある。これらの点を考慮すると、上記含有量は、75〜250質量部がより好ましく、100〜200質量部がさらにより好ましい。
【0041】
本発明に係る接着剤組成物は、(F)1分子内にフェノール水酸基を1つ有するメチロール化合物を更に含有することができる。このような化合物を配合することにより、埋込性を損なうことなく接着剤層2にフラックス活性を付与することができる。
【0042】
(F)1分子内にフェノール水酸基を1つ有するメチロール化合物としては、以下のフラックス活性試験においてハンダボールをほぼ1個に凝集させることができるものが好ましい。試験は、銅板状に3mmφのハンダボールを10個置き、そこにメチロール化合物を約200mg載せ、260℃に温めたホットプレート上で加熱し、30秒経過後のハンダボールの状態を観察する。
【0043】
また、(F)成分は、フィルム形成時には反応が抑制され活性が維持し、高温圧着時には活性を示した後に反応して系内に取り込まれるという設計の観点から、フェノール性水酸基の両隣にメチロール基が存在するメチロール化合物であることが好ましい。
【0044】
更に、(F)成分は、下記一般式(1)で示されるメチロール化合物が好ましい。
【化1】


式(1)中、Xは、炭素数1〜10のアルキル基を示し、炭素数が2以上でありメチレン基を有する場合、メチレン基の少なくとも一つが−O−、−NH−、−S−、−CO−、−OCO−又は−COO−で置換されていてもよく、炭素数が3以上でありメチン基(−CH<)を有する場合、メチン基の少なくとも一つが窒素原子で置換されていてもよい。
【0045】
また、フラックス活性や塗工溶媒への溶解性の観点から、上記一般式(1)におけるXが、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるメチロール化合物を用いることが好ましい。更に、塗工溶媒への溶解性の観点から、Xがメチル基などであるメチロール化合物を用いることが好ましい。具体的には、本州化学(株)製、商品名:DML−POP、DML−PC等が挙げられる。
【0046】
本発明に係る接着剤組成物における(F)成分の含有量は、埋込性を十分維持しつつ良好なフラックス活性を得る観点から、接着剤組成物全量を基準として、2〜30質量%であることが好ましい。係る含有量が、2質量%未満であると、十分なフラックス活性が発現されない可能性があり、一方、30質量%を超えると、ボイドが発生しやすくなる傾向にある。
【0047】
本発明に係る接着剤組成物には、形成される接着剤層の取扱い性向上、熱伝導性向上、溶融粘度の調整及びチキソトロピック性付与などを目的として、無機フィラーを添加することができる。無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられる。これらのフィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。また、フィラーの形状は特に制限されない。
【0048】
上記のフィラーの中でも、熱伝導性向上のためには、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が好ましい。また、溶融粘度の調整やチキソトロピック性の付与の目的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカなどが好ましい。また、フィルムの熱時流動性向上のためには、ナノフィラーを用いることがより好ましい。
【0049】
無機フィラーの配合量は、接着剤組成物全量100質量部に対して1〜100質量部が好ましい。係る配合量が1質量部未満であると、添加効果が十分に得られない傾向があり、100質量部を超えると、接着剤層の貯蔵弾性率の上昇、接着性の低下、ボイド残存による電気特性の低下等の問題が発生しやすくなる傾向がある。
【0050】
また、本発明に係る接着剤組成物には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することができる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられる。
【0051】
上記シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらは、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。また、日本ユニカー株式会社製A−189、A−1160などの市販品を用いることもできる。
【0052】
上記カップリング剤の配合量は、添加効果や耐熱性及びコストの面から、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部とするのが好ましい。
【0053】
さらに、本発明に係る接着剤組成物には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を向上させる目的で、イオン捕捉剤を更に添加することができる。このようなイオン捕捉剤としては、例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤等の、銅がイオン化して溶け出すのを防止するため銅害防止剤として知られる化合物、ジルコニウム系、アンチモンビスマス系マグネシウムアルミニウム化合物等の無機イオン吸着剤などが挙げられる。
【0054】
上記イオン捕捉剤の配合量は、添加効果や耐熱性及びコスト等の点から、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部とするのが好ましい。
【0055】
また、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記接着剤組成物に導電粒子を含有させて異方導電性接着フィルム(ACF)とすることができる。
【0056】
接着剤層2は、上述した本発明に係る接着剤組成物を溶媒に溶解若しくは分散してワニスとし、このワニスを支持基材3上に塗布し、加熱により溶媒を除去することによって形成することができる。或いは、上記ワニスを保護フィルム1上に塗布し、加熱により溶媒を除去することによって形成することができる。
【0057】
用いる溶媒は、特に限定されないが、接着剤層形成時の揮発性やワニス作製時の溶解性などを考慮して決めることが好ましい。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の比較的低沸点の溶媒は接着剤層形成時に接着剤層の硬化が進みにくい点で好ましい。また、塗工性を向上させるなどの目的では、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノンなどの比較的高沸点の溶媒を使用することが好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
支持基材3としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックフィルム等が挙げられる。市販のものとして、例えば、帝人デュポンフィルム株式会社製の「A−31」等のポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。また、支持基材3は、上記の材料から選ばれる2種以上が混合されたもの、又は、上記のフィルムが複層化されたものでもよい。
【0059】
支持基材3の厚みは、特に制限はないが、5〜250μmが好ましい。厚みが5μmより薄いと、半導体ウエハの研削(バックグラインド)時に支持基材が切れる可能性があり、250μmより厚いと経済的でなくなるため好ましくない。
【0060】
支持基材3は、光透過性が高いことが好ましく、具体的には、500〜800nmの波長域における最小光透過率が10%以上であることが好ましい。
【0061】
支持基材3としては、例えば、粘着剤層を支持基材上に設けたものを用いることができる。設ける粘着剤としては主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートを用い、官能基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレートとアクリル酸を用い、溶液重合法によりアクリル共重合体を合成したものなどを使用することができる。
【0062】
上記ワニスを支持基材上に塗布する方法としては、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等、一般に周知の方法が挙げられる。
【0063】
接着剤層2の厚みは、特に制限はないが、3〜200μmが好ましい。厚みが3μmより小さいと、応力緩和効果が乏しくなる傾向があり、200μmより厚いと経済的でなくなる上に、半導体装置の小型化の要求に応えることが困難となる。
【0064】
保護フィルム1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の耐熱性及び耐溶媒性を有する重合体フィルムを用いることができる。市販のものとして、例えば、帝人デュポンフィルム株式会社製の「A−31」等のポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。保護フィルムは、厚みが10〜100μmであることが好ましく、30〜75μmであることがより好ましく、35〜50μmであることが特に好ましい。この厚みが10μm未満では塗工の際、保護フィルムが破れる傾向があり、100μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。
【0065】
上述した回路部材接続用接着剤シート10は、相対向しハンダ接合される回路電極を有する回路部材と半導体素子との間又は半導体素子同士の間に介在させ、回路部材と半導体素子又は半導体素子同士を接着するために用いることができる。この場合、回路部材と半導体素子又は半導体素子同士を熱圧着することにより、ボイド発生を抑制しつつ十分な接着力で接着することができる。これにより、接続信頼性に優れた接続体を得ることができる。
【0066】
次に、回路部材接続用接着剤シート10を用いて半導体装置を製造する方法について説明する。
【0067】
図2〜図6は、本発明に係る半導体装置の製造方法の好適な一実施形態を説明するための模式断面図である。本実施形態の半導体装置の製造方法は、
(a)主面の一方に複数の回路電極を有する半導体ウエハを準備し、該半導体ウエハの回路電極が設けられている側に、上述した本発明に係る回路部材接続用接着剤シートの接着剤層を貼付ける工程と、
(b)半導体ウエハの回路電極が設けられている側とは反対側を研削して半導体ウエハを薄化する工程と、
(c)接着剤層に放射線を照射する工程と、
(d)薄化した半導体ウエハ及び放射線を照射した接着剤層をダイシングしてフィルム状接着剤付半導体素子に個片化する工程と、
(e)フィルム状接着剤付半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とをフィルム状接着剤付半導体素子のフィルム状接着剤を介して接着する工程と、
を備える。以下、図面を参照しながら、各工程について説明する。
【0068】
(a)工程
先ず、接着剤シート10を所定の装置に配置し、保護フィルム1を剥がす。続いて、主面の一方に複数の回路電極20を有する半導体ウエハAを準備し、半導体ウエハAの回路電極が設けられている側に接着剤層2を貼付け、支持基材3/接着剤層2/半導体ウエハAが積層された積層体を得る(図2を参照)。回路電極20には、ハンダ接合用のハンダバンプを設けてもよい。また、回路電極20にハンダバンプを設けず、半導体素子搭載用支持部材の回路電極にハンダバンプを設けることもできる。
【0069】
(b)工程
次に、図3(a)に示されるように、半導体ウエハAの回路電極20が設けられている側とは反対側をグラインダー4によって研削し、半導体ウエハを薄化する。半導体ウエハの厚みは、例えば、10μm〜300μmとすることができる。半導体装置の小型化、薄型化の観点から、半導体ウエハの厚みを20μm〜100μmとすることが好ましい。
【0070】
(c)工程
図3(b)に示されるように、接着剤層2に支持基材3側から放射線を照射することにより接着剤層2を硬化させ、接着剤層2と支持基材3との間の接着力を低下させる。ここで、使用される放射線としては、例えば、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。本実施形態においては、波長300〜800nmの放射線を用いることが好ましく、その照射条件としては、照度:15〜100mW/cmで、上記アクリルモノマーなどの(C)成分が重合する程度の照射量で照射することが好ましい。
【0071】
(d)工程
次に、図4(a)に示されるように、積層体の半導体Aにダイシングテープ5を貼付け、これを所定の装置に配置して支持基材3を剥がす。このとき、接着剤層2に放射線が照射されていることにより、支持基材3を容易に剥がすことができる。支持基材3の剥離後、図4(b)に示されるように、半導体ウエハA及び接着剤層2をダイシングソウ6によりダイシングする。こうして、半導体ウエハAは複数の半導体素子A’に分割され、接着剤層2は複数のフィルム状接着剤2aに分割される。
【0072】
続いて、ダイシングテープ5をエキスパンド(拡張)することにより、上記ダイシングにより得られた各半導体素子A’を互いに離間させつつ、ダイシングテープ5側からニードルで突き上げられた半導体素子A’及びフィルム状接着剤2aからなるフィルム状接着剤付半導体素子12を吸引コレット7で吸引してピックアップする。
【0073】
(e)工程
次に、図6に示されるように、フィルム状接着剤2aが付着した半導体素子A’の回路電極20と、半導体素子搭載用支持部材8の回路電極22とを位置合わせし、フィルム状接着剤付半導体素子12と半導体素子搭載用支持部材8とを熱圧着する。この熱圧着により、回路電極20と回路電極22とが電気的に接続されるとともに、半導体素子A’と半導体素子搭載用支持部材8との間にフィルム状接着剤2aの硬化物が形成される。
【0074】
また、回路電極20或いは回路電極22にハンダバンプが設けられている場合、熱圧着により、回路電極20と回路電極22とがハンダ接合により電気的且つ機械的に接続される。
【0075】
熱圧着時の温度は、ハンダ接合の観点から、200℃以上であることが好ましく、220℃〜260℃であることがより好ましい。熱圧着時間は、1〜20秒とすることができる。熱圧着の圧力は、0.1〜5MPaとすることができる。
【0076】
以上の工程を経て、半導体装置30が得られる。本実施形態の半導体装置の製造方法では、本発明に係る回路部材接続用接着剤シートを用いることにより、上記(a)工程では、剥離やボイドの発生を十分抑制でき、上記(b)工程ではウエハを破損やクラックの発生を十分防止しつつ研削することができ、上記(e)工程では、ボイドの発生を十分抑制しつつ半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを良好に接着することができる。これにより、半導体装置30は接続信頼性に優れたものになり得る。また、本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、そのような半導体装置を歩留まりよく製造することができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)
熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂「FX293」(東都化成株式会社製、製品名)100質量部、エポキシ樹脂として「1032H60」(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名)80質量部及び「YL−980」(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名)60質量部、放射線重合性化合物として「FA−513AS」(日立化成工業株式会社製、製品名)80質量部、光開始剤として「Irg−184」(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製、製品名)4.0質量部、マイクロカプセル型硬化促進剤として「HX−3941HP」(旭化成ケミカルズ株式会社製、製品名)160質量部、並びに、シランカップリング剤として「SH−6040」(東レダウコーニングシリコーン製、製品名)4質量部を混合した混合物を、トルエンと酢酸エチルの混合溶媒中に溶解して接着剤組成物のワニスを得た。得られたワニスを計量した後、ここに、フィラーとしてシリカ粒子「SE−2050」(株式会社アドマテックス社製、製品名、平均粒径0.5μm)を、ワニス中の「FX293」100質量部に対して400質量部の割合で加え、撹拌し分散した。得られた分散物を、支持基材としてのセパレータフィルム(PETフィルム、厚み38μm)上にロールコータを用いて塗布した後、70℃のオーブンで10分間乾燥させた。こうして、支持基材上に厚み30μmの接着剤層が形成されてなる回路部材接続用接着剤シートを得た。
【0079】
(実施例2)
「YL−980」に代えて「EX−1020」(大阪ガスケミカル株式会社製、製品名)を60質量部配合した以外は実施例1と同様にして、回路部材接続用接着剤シートを得た。
【0080】
(実施例3)
「FA−513AS」に代えて「A−DPH」(新中村工業化学株式会社製、製品名)を80質量部配合した以外は実施例1と同様にして、回路部材接続用接着剤シートを得た。
【0081】
(実施例4)
「FX293」に代えて「YP−70」(東都化成株式会社製、製品名)100質量部配合した以外は実施例1と同様にして、回路部材接続用接着剤シートを得た。
【0082】
(実施例5)
メチロール化合物である「DML―POP」(本州化学工業株式会社、製品名)20質量部を更に配合した以外は実施例3と同様にして、回路部材接続用接着剤シートを得た。
【0083】
(実施例6)
まず、バックグラインド(BG)テープAを以下の手順で作製した。主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートとを、官能基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレートとアクリル酸とを用いて、溶液重合法によってアクリル共重合体を合成した。得られたアクリル共重合体の重量平均分子量は40万、ガラス転移点は−38℃であった。次いで、アクリル共重合体100質量部に対し、多官能イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コローネートHL)10質量部を配合して粘着剤ワニスを調製し、ポリオレフィンフィルム(オカモト株式会社製、商品名:WNH−2110、厚さ100μm)上に乾燥時の粘着剤層の厚さが10μmになるよう塗工乾燥した。更に、シリコーン系離型剤を塗布したニ軸延伸ポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:A3171、厚さ25μm)を粘着剤面にラミネートした。この粘着剤層付きフィルムを室温で1週間放置し十分にエージングを行った。エージング後の粘着剤層付きフィルムからニ軸延伸ポリエステルフィルムを剥がしたものをBGテープAとした。
【0084】
熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂「FX293」(東都化成株式会社製、製品名)100質量部、エポキシ樹脂として「1032H60」(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名)80質量部及び「YL−980」(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名)60質量部、放射線重合性化合物として「FA−513AS」(日立化成工業株式会社製、製品名)80質量部、光開始剤として「Irg−184」(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製、製品名)4.0質量部、マイクロカプセル型硬化促進剤として「HX−3941HP」(旭化成ケミカルズ株式会社製、製品名)160質量部、並びに、シランカップリング剤として「SH−6040」(東レダウコーニングシリコーン製、製品名)4質量部を混合した混合物を、トルエンと酢酸エチルの混合溶媒中に溶解して接着剤組成物のワニスを得た。得られたワニスを計量した後、ここに、フィラーとしてシリカ粒子「SE−2050」(株式会社アドマテックス社製、製品名、平均粒径0.5μm)を、ワニス中の「FX293」100質量部に対して400質量部の割合で加え、撹拌し分散した。得られた分散物を、保護フィルムである表面離型処理ポリエチレンテレフタレート(帝人デュポンフィルム株式会社製、テイジンテトロンフィルム:A−31、厚さ50μm)上に乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、70℃で10分間加熱乾燥して接着剤層を形成した。次いで、上記接着剤層上に、BGテープAの粘着剤層が接触するように上記BGテープAをラミネートすることによって、保護フィルム(表面離型処理ポリエチレンテレフタレート)、接着剤層、BGテープAからなる回路部材接続用接着剤シートを得た
【0085】
(比較例1)
「FA−513AS」及び「Irg−184」を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、回路部材接続用接着剤シートを得た。
【0086】
(比較例2)
「FA−513AS」及び「Irg−184」を配合しなかった以外は実施例4と同様にして、回路部材接続用接着剤シートを得た。
【0087】
(比較例3)
「HX−3941HP」を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、回路部材接続用接着剤シートを得た。
【0088】
(比較例4)
「HX−3941HP」に代えて「2MAOK」(四国化成工業株式会社製、製品名)を14質量部配合した以外は実施例1と同様にして、回路部材接続用接着剤シートを得た。
【0089】
(比較例5)
「HX−3941HP」を配合しなかった以外は実施例6と同様にして、回路部材接続用接着剤シートを得た。
【0090】
[回路部材接続用接着剤シートの評価]
上記で得られた回路部材接続用接着剤シートについて、下記の試験手順にしたがって、ウエハ貼付性、ウエハ裏面研削性及び埋込性を評価した。結果を表2に示す。
【0091】
<ウエハ貼付性>
支持台上に載せたシリコンウエハ(6インチ径、厚さ625μm)の回路電極が設けられている面に、回路部材接続用接着剤シートを、接着剤層をシリコンウエハ側にしてラミネート条件(温度80℃、線圧0.5〜2kgf/cm、送り速度0.5〜5m/分)で加圧することにより積層した。このときの接着剤層の貼付状態を目視及び顕微鏡観察で視察し、下記の基準に基づいてウエハ貼付性を評価した。
A:剥離、ボイドが観察されない。
C:剥離、ボイドが観察される。
【0092】
<ウエハ裏面研削性>
上記と同様にして回路部材接続用接着剤シートとシリコンウエハ(厚み625μm)との積層体を作製し、これをバックグラインダーに配置し、厚みが280μmとなるまでシリコンウエハの裏面を研削(バックグラインド)した。研削したウエハを目視及び顕微鏡観察で視察し、下記の基準に基づいてウエハ裏面研削性を評価した。
A:ウエハの破損及びマイクロクラックの発生がない。
C:ウエハの破損又はマイクロクラックの発生がある。
【0093】
<埋込性>
金ワイヤーバンプ(レベリング済み、バンプ高さ30μm、184バンプ)付きチップ(10mm角、厚み280μm)を、バンプ面を上に向けて仮圧着装置のステージ上に置いた。次に、回路部材接続用接着剤シートを支持基材ごと11mm角に切断し、これを接着層側がバンプ面に向くようにしてチップに被せ、さらに、シリコーン製熱伝導性カバーフィルムを載せて、80℃、1MPaで加熱、加圧を行った。
【0094】
加熱加圧後、接着剤層から支持基材を剥がし、接着剤層に対して紫外線を用いて照度15mW/cmで500mJの露光を行い、接着剤付きチップを得た。次に、得られた接着剤付きチップを、Ni/AuめっきCu回路プリント基板と位置合わせをし、次いで、250℃、5MPa、10秒の加熱、加圧を行った。こうして得られた半導体装置について、ボイド状況を超音波顕微鏡で視察し、下記の基準に基づいて埋込性を評価した。
A:ボイドがほとんどなく、ボイドが埋込面積の10%未満である。
C:ボイドが多く存在し、ボイドが埋込面積の10%以上である。
【0095】
<支持基材剥離性>
上記ウエハ裏面研削性の評価サンプルを、照度:20mW/cm、露光量:500mJの条件で紫外線照射し、その後、回路部材接続用接着剤シートの支持基材(又はBGテープ)を5mm/秒の速度で剥離した。剥離した後の支持基材(又はBGテープ)と回路部材接続用接着剤付きウエハの表面を目視及び顕微鏡観察で視察し、下記の基準に基づいて支持基材剥離性を評価した。
A:支持基材(又はBGテープ)が接着剤層から剥離でき、接着剤層とウエハの剥離が無い。
B:支持基材(又はBGテープ)が接着剤層から一部剥離できず、一部接着剤層ごとウエハから剥離してしまう。(接着剤層のウエハからの剥離面積が30%未満)
C:支持基材(又はBGテープ)が接着剤層から剥離できず、接着剤層ごとウエハから剥離してしまう。(接着剤層のウエハからの剥離面積が30%以上)
【0096】
【表2】

【符号の説明】
【0097】
1…保護フィルム、2…接着剤層、3…支持基材、4…グラインダー、5…ダイシングテープ、6…ダイシングソウ、7…吸引コレット、8…半導体素子搭載用支持部材、10…回路部材接続用接着剤シート、12…フィルム状接着剤付半導体素子、20,22…回路電極、30…半導体装置、A…半導体ウエハ、B…放射線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量が2万以上10万以下の熱可塑性樹脂と、
(B)エポキシ樹脂と、
(C)放射線重合性化合物と、
(D)光開始剤と、
(E)マイクロカプセル型の硬化促進剤と、
を含む、接着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)成分を100質量部と、前記(B)成分を5〜500質量部と、前記(C)成分を5〜200質量部と、前記(D)成分を0.1〜30質量部と、前記(E)成分を50〜300質量部と、
を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
(F)1分子内にフェノール性水酸基を1つ有するメチロール化合物を更に含む、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
相対向する回路部材間に介在させ、前記回路部材同士を接着するために用いられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
支持基材と、該支持基材上に設けられ、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、回路部材接続用接着剤シート。
【請求項6】
主面の一方に複数の回路電極を有する半導体ウエハを準備し、該半導体ウエハの前記回路電極が設けられている側に、請求項5に記載の回路部材接続用接着剤シートの接着剤層を貼付ける工程と、
前記半導体ウエハの前記回路電極が設けられている側とは反対側を研削して前記半導体ウエハを薄化する工程と、
前記接着剤層に放射線を照射する工程と、
前記薄化した半導体ウエハ及び前記放射線が照射された接着剤層をダイシングしてフィルム状接着剤付半導体素子に個片化する工程と、
前記フィルム状接着剤付半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを前記フィルム状接着剤付半導体素子のフィルム状接着剤を介して接着する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157552(P2011−157552A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46809(P2011−46809)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【分割の表示】特願2010−102495(P2010−102495)の分割
【原出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】