説明

接着剤組成物、接着フィルム及び半導体装置

【課題】 半導体素子等の電子部品とリードフレームや絶縁性支持基板とを接着させる接着剤組成物であって、実装時の高温半田付け熱履歴にも耐える接着剤組成物、接着フィルム及び半導体装置を提供する。
【解決手段】 樹脂及びフィラーを含有してなる接着剤組成物であって、前記フィラーの形状が球状であり、かつ平均粒子径が10μm以下、最大粒子径が25μm以下である接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、接着フィルム及び半導体装置に関し、さらに詳しくは、半導体素子等の電子部品とリードフレームや絶縁性支持基板等の支持部材との接着材料、すなわちダイボンド用に好適な接着剤組成物、接着フィルム及びこれらを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子部品とリードフレームや絶縁性支持基板等の支持部材との接着材料としては、従来、Au−Si共晶合金、半田、樹脂ペースト、樹脂フィルム等が知られている。これらの中で、Au−Si共晶合金は高価かつ弾性率が高いという問題があり、半田は融点以上の温度に耐えられず、かつ弾性率が高いという問題があるため、近年は、安価で弾性率が低い樹脂ペーストや樹脂フィルムが主に使用されている。
【0003】
樹脂ペーストは耐熱信頼性の点から熱硬化性樹脂を主成分としたものが主流であり、樹脂フィルムはフィルム形成性の点から熱可塑性樹脂を主成分としたものが主流である。
【0004】
一方半導体パッケージは、電子機器の小型・薄型化による高密度実装の要求が急激な増加にともなって、従来のピン挿入型に代わり、高密度実装に適した表面実装型が主流になってきた。
【0005】
この表面実装型パッケージは、リードあるいはバンプをプリント基板等に直接はんだ付けするために、赤外線リフローやベーパーフェーズリフロー、はんだディップ等により、パッケージ全体を加熱して実装される。この際、パッケージ全体が240℃前後の高温にさらされるため、パッケージ内部に吸湿水分が存在すると、水分の爆発的な気化により、パッケージクラック(以下リフロークラックという)が発生する。このリフロークラックは、半導体パッケージの信頼性を著しく低下させるため、深刻な問題・技術課題となっている。
【0006】
ダイボンディング材に起因するリフロークラックの発生メカニズムは、次の通りである。半導体パッケージは保管されている間に(1)ダイボンディング材が吸湿し、(2)この吸湿水分がリフローはんだ付けの実装時に、加熱によって水蒸気化し、(3)この蒸気圧によってダイボンディング層の破壊や剥離が起こり、(4)リフロークラックが発生する。封止材の耐リフロークラック性が向上してきている中で、ダイボンディング材に起因するリフロークラックは、特に薄型パッケージにおいて重大な問題となっている。
【0007】
さらに、近年になって地球規模での環境保全対策に伴い、欧州などを中心に、鉛に関する法的規制がますます強化されてきており、それに伴って、実装半田の鉛フリー化が推進され、高信頼性が求められる分野では、現行のSn−Pb系からより融点の高いSn−Ag系半田に切り替わるといわれている。実装半田が上記のSn−Ag系に切り替わると、融点が高くなるため、リフロー炉の最高温度は現行よりも20℃〜30℃高くなる。従って、ダイボンド用の接着材料には、リフロー温度の上昇に耐え、これまで以上に信頼性を向上させた材料が求められるようになる。
【0008】
従来最も一般的に使用されている銀フィラー充填樹脂ペースト(以下銀ペーストという)では、チップの大型化により、銀ペーストを塗布部全面に均一に塗布することが困難になってきていること、ペースト状であるため接着層にボイドが発生し易いこと等によりリフロークラックが発生し易い。
【0009】
上記の問題を解決するため、樹脂ペーストをフィルム化した樹脂フィルムが提案されている。フィルム状にすることにより、均一な接着面積が確保でき、またボイドを大きく減らすこともできるため、ペースト状よりも良好な耐リフロークラック性を確保することができる。
【0010】
樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂を主成分としたものが主流であり、融点が低い熱可塑性樹脂を選んで用いると、接着温度を低くすることができ、リードフレームの酸化等、チップに与えるダメージを少なくすることができる。しかし、融点の低い熱可塑性樹脂を用いた樹脂フィルムは、熱時の接着力が低いので、実装時における半田付け熱処理に耐えられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、半導体素子等の電子部品とリードフレームや絶縁性支持基板とを接着させる接着剤組成物であって、実装時の高温半田付け熱履歴にも耐える接着剤組成物、接着フィルム及び半導体装置を提供することである。
【0012】
すなわち、請求項1〜4記載の発明は、実装時の高温半田付け熱履歴に耐え、接着強度に優れる接着剤組成物を提供するものである。請求項5及び6記載の発明は、請求項1〜4記載の発明の効果を奏し、より接着強度に優れた接着剤組成物を提供するものである。請求項7記載の発明は、請求項5及び6記載の発明の効果を奏し、さらにボイドが発生せず、製膜性に優れた接着剤組成物を提供するものである。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明の効果を奏し、さらに低温接着性、低応力性、耐加水分解性、高温高湿条件下における信頼性に優れた接着剤組成物を提供するものである。請求項9記載の発明は、請求項7記載の発明の効果を奏し、より低温接着性、低応力性、耐加水分解性、高温高湿条件下における信頼性に優れた接着剤組成物を提供するものである。
【0014】
請求項10記載の発明は、請求項5〜9記載の発明の効果を奏し、より接着強度に優れた接着剤組成物を提供するものである。請求項11〜13記載の発明は、請求項1〜10記載の発明の効果を奏し、より接着強度に優れた接着剤組成物を提供するものである。
【0015】
請求項14記載の発明は、実装時の高温半田付け熱履歴に耐え、接着強度に優れ、低温接着性、低応力性、耐加水分解性、高温高湿条件下における信頼性に優れ、作業性に優れた接着フィルムを提供するものである。
【0016】
請求項15記載の発明は、高温高湿条件下における高い信頼性を確保する半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、樹脂及びフィラーを含有してなる接着剤組成物であって、前記フィラーの形状が球状であり、かつ平均粒子径が10μm以下、最大粒子径が25μm以下である接着剤組成物に関する。また本発明は、フィラーが金属フィラー又は無機フィラーである上記接着剤組成物に関する。また本発明は、フィラーが銀粉である上記接着剤組成物に関する。また本発明は、フィラーの含量が1〜50体積%である上記接着剤組成物に関する。
【0018】
また本発明は、樹脂が熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる上記接着剤組成物に関する。また本発明は、樹脂が熱可塑性樹脂100重量部、熱硬化性樹脂0.1〜200重量部からなる上記接着剤組成物に関する。また本発明は、熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂又はポリイミド樹脂である上記接着剤組成物に関する。
【0019】
また本発明は、ポリイミド樹脂が、下記一般式(1)
【化1】

【0020】
(式中、nは2〜20の整数を示す)で表されるテトラカルボン酸二無水物又は下記式(2)
【化2】

【0021】
で表されるテトラカルボン酸二無水物の含量が全テトラカルボン酸二無水物の30モル%以上であるテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である上記接着剤組成物に関する。
【0022】
また本発明は、ポリイミド樹脂が、上記一般式(1)のテトラカルボン酸二無水物又は上記式(2)のテトラカルボン酸二無水物の含量が全テトラカルボン酸二無水物の30モル%以上であるテトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(3)
【化3】

【0023】
(式中、Q及びQは各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有していてもよいフェニレン基を示し、Q、Q、Q及びQは各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、mは1〜50の整数を示す)で表されるシロキサン系ジアミンが全ジアミンの3モル%以上を含むジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である上記接着剤組成物に関する。
【0024】
また本発明は、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である上記接着剤組成物に関する。また本発明は、さらにカップリング剤を含有してなる上記接着剤組成物に関する。また本発明は、カップリング剤がシランカップリング剤である上記接着剤組成物に関する。また本発明は、熱可塑性樹脂100重量部、カップリング剤0.01〜50重量部を含有してなる上記接着剤組成物に関する。
【0025】
また本発明は、上記接着剤組成物を用いて形成してなる接着フィルムに関する。また本発明は、上記接着剤組成物又は上記接着フィルムを用いて半導体素子を支持部材に接着した構造を有してなる半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0026】
請求項1〜4記載の接着剤組成物は、実装時の高温半田付け熱履歴に耐え、接着強度に優れるものである。請求項5及び6記載の接着剤組成物は、請求項1〜4記載の発明の効果を奏し、より接着強度に優れたものである。請求項7記載の接着剤組成物は、請求項5及び6記載の発明の効果を奏し、さらにボイドが発生せず、製膜性に優れたものである。
【0027】
請求項8記載の接着剤組成物は、請求項7記載の発明の効果を奏し、さらに低温接着性、低応力性、耐加水分解性、高温高湿条件下における信頼性に優れたものである。請求項9記載の接着剤組成物は、請求項7記載の発明の効果を奏し、より低温接着性、低応力性、耐加水分解性、高温高湿条件下における信頼性に優れたものである。請求項10記載の接着剤組成物は、請求項5〜9記載の発明の効果を奏し、より接着強度に優れたものである。請求項11〜13記載の接着剤組成物は、請求項1〜10記載の発明の効果を奏し、より接着強度に優れたものである。
【0028】
請求項14記載の接着フィルムは、実装時の高温半田付け熱履歴に耐え、接着強度に優れ、低温接着性、低応力性、耐加水分解性、高温高湿条件下における信頼性に優れ、作業性に優れたものである。請求項15記載の半導体装置は、高温高湿条件下における高い信頼性を確保するを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(A)代表的な球状フィラーのSEM写真である。(B)代表的な鱗片状フィラーのSEM写真である。
【図2】鱗片状及び球状の銀フィラーをそれぞれ充填した接着フィルムの断面写真である。
【図3】鱗片状又は球状フィラーを充填した接着フィルムにおける樹脂/フィラー界面剥離の概念図である。
【図4】銀フィラーの種類と接着フィルムのピール強度との関係を示すグラフである。
【図5】実施例又は比較例で用いたフィラーのSEM写真である。
【図6】プッシュプルゲージを用いたピール強度測定方法を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の接着剤組成物は、樹脂及びフィラーを含有してなる接着剤組成物であって、前記フィラーの形状が球状であり、かつ平均粒子径が10μm以下、最大粒子径が25μm以下であることを特徴とする。このような構成にすることで接着剤組成物に接着強度、及び破壊靭性を向上させる効果を付与し、半田付け熱履歴における接着剤層の破壊又は剥離を抑えることができ、結果として耐リフロークラック性が向上する。
【0031】
本発明の接着剤組成物に使用するフィラーの形状が「球状」とは、真球状のみでなく、楕円球状、塊状、粒状、海綿状等の形状も含む。中でも優れた接着強度を示す点で真球状が好ましい。代表的な球状フィラーのSEM写真を図1(A)に、代表的な鱗片状フィラーのSEM写真を図1(B)に示す。
【0032】
上記球状フィラーは、形状の指標として知られる長短度(N)及び扁平度(M)が、それぞれ0.5≦1/N≦1.0、0.5≦1/M≦1.0であることが好ましい。なお、長短度(N)は、N=長径(L)/短径(B)で表され、扁平度(M)は、M=短径(B)/厚み(T)で表される。ここで、長径(L)とは、同じ状態にある粒子を垂直な2平面ではさんだときの、2平面間の距離の最大値であり、短径(B)とは、長径(L)に直交する方向で、垂直2平面ではさんだときの、2平面間の距離であり、厚み(T)とは、水平な2平面で粒子をはさんだときの、2平面間の距離をいう(参考文献:久保輝一郎 他,粉体−基礎と応用(丸善))。これに対して、鱗片状(フレーク状)とは、上記の1/Mが0.5未満のものを指し、このようなフィラーを充填した接着フィルムの接着強度は、球状のフィラーを充填した接着フィルムと比較して劣る。
【0033】
上記球状フィラーの平均粒子径は10μm以下、最大粒子径は25μm以下であり、平均粒子径が5μm以下、最大粒子径が20μm以下であることが好ましい。平均粒子径が10μmを超え、かつ最大粒子径が25μmを超えると、破壊靭性向上の効果が得られない。下限は特に制限はないが、通常、どちらも0.001μmである。
【0034】
上記球状フィラーは、平均粒子径10μm以下、最大粒子径は25μm以下の両方を満たす必要がある。最大粒子径が25μm以下であるが平均粒子径が10μmを超えるフィラーを使用すると、高い接着強度が得られない。また、平均粒子径は10μm以下であるが最大粒子径が25μmを超えるフィラーを使用すると、粒径分布が広くなり接着強度にばらつきが出やすくなる。また、本発明の接着剤組成物を薄膜フィルム状に加工して使用する場合、表面が粗くなり接着力が低下する。
【0035】
本発明の接着剤組成物に含有されるフィラーの平均粒子径及び最大粒子径の測定方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、200個程度のフィラーの粒径を測定する方法等が挙げられる。
【0036】
SEMを用いた測定方法としては、例えば、接着剤組成物を用いて半導体素子と半導体支持基板とを接着した後、加熱硬化(好ましくは150〜200℃で1〜10時間)させたサンプルを作製し、このサンプルの中心部分を切断して、その断面をSEMで観察する方法等が挙げられる。
【0037】
また、用いるフィラーが金属フィラー又は無機フィラーである場合は、接着剤組成物を600℃のオーブンで2時間加熱し、樹脂成分を分解、揮発させ、残ったフィラーをSEMで観察、測定する方法をとることもできる。フィラーそのものをSEMで観察する場合、サンプルとしては、SEM観察用の試料台の上に両面粘着テープを貼り付け、この粘着面にフィラーを振り掛け、その後、イオンスパッタで蒸着したものを用いるとよい。このとき、前述のフィラーの存在確率が全フィラーの80%以上であるとする。
【0038】
本発明の接着剤組成物において、用いるフィラーとして上記のフィラーが好ましい理由としては、次のような理由が考えられる。
【0039】
図2は、鱗片状及び球状の銀フィラーをそれぞれ充填した接着フィルムの断面写真である。図3は、鱗片状又は球状フィラーを充填した接着フィルムにおける樹脂/フィラー界面剥離の概念図を示す。
【0040】
図2からわかるように、鱗片状の銀フィラーを充填した接着フィルムにおいては、銀フィラーが接着フィルムの表面に対して水平方向に配向しているのが観察される。この原因として、鱗片状のフィラーを含有した接着剤組成物を薄く塗布する際、特に基材フィルム上に塗工して接着フィルムを製造する際に、鱗片状フィラーが塗工方向に配向する傾向があることが明らかになった。一方、球状の銀フィラーを充填した接着剤組成物においては、フィラーの形状に異方性がないため、鱗片状のフィラーに見られるような配向性を有しない。
【0041】
このようなフィラーの形状の違いが、接着剤層の厚さ方向の引張強度(即ち接着強度)に影響するものと考えられる。すなわち、図3(A)に示すように、フィラーの形状が鱗片状の場合、樹脂1/フィラー2界面の剥離面がフラットであるため、接着剤層の厚さ方向に引張応力がかかったとき、亀裂3の伝播がフィラーの配向方向(水平方向)に容易に進行すると考えられるのに対し、球状のフィラーの場合は、図3(B)に示すように球面が亀裂3の伝播を抑制する方向に作用するため、鱗片状のフィラーと比較して樹脂1/フィラー4界面の剥離が抑えられる傾向にあると考えられる。このような亀裂3の伝播挙動の違いが、結果として接着剤層の厚さ方向の接着強度に影響するものと考えられる。また、フィラーの粒子径が小さくなると、樹脂/フィラー界面積が増大するので、接着剤層としての破壊靭性が大きくなり、それに伴って接着剤層の厚さ方向の接着強度が向上するものと考えられる。
【0042】
上記フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラーなどが挙げられる。
【0043】
上記フィラーは所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、接着剤組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着フィルムに熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着フィルムに靭性等を付与する目的で添加される。これら金属フィラー、無機フィラー又は有機フィラーは、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置に求められる特性を付与できる点で、金属フィラー、無機フィラーが好ましく、金属フィラーの中では銀粉がより好ましい。
【0044】
上記フィラーの含量は1〜50体積%であることが好ましく、1〜40体積%であることがより好ましく、1〜30体積%であることが特に好ましく、1〜25体積%であることが極めて好ましい。1体積%未満であると、破壊靭性向上の効果が得られない傾向があり。50体積%を超えると接着性が低下する傾向がある。
【0045】
本発明の接着剤組成物に含まれる樹脂は、高い接着力を得ることができる点で、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のどちらか一方を含有することが好ましく、両者を含有することがより好ましい。
【0046】
上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等が挙げられ、高い接着強度が得られる点でフェノキシ樹脂又はポリイミド樹脂が好ましい。
【0047】
上記フェノキシ樹脂とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められた重量平均分子量が5000以上の高分子量エポキシ樹脂を示し、エポキシ樹脂と同様に、ビスフェノールA型、F型、AD型、AF共重合型、S型等の種類が挙げられる。重量平均分子量は5,000〜150,000のものが好ましく、10,000〜80,000のものが溶融粘度や他の樹脂との相溶性等の点からより好ましい。
【0048】
上記ポリイミド樹脂は、通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒中で縮合反応させて製造できる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンは等モル又はほぼ等モルで用いるのが好ましく、各成分の添加順序は任意である。
【0049】
この場合、まずポリアミド酸が生成し、さらに加熱することで脱水閉環しポリイミド樹脂が生成する。なお、本発明においてポリイミド樹脂とは、ポリイミド及びその前駆体を総称する。ポリイミドの前駆体には、ポリアミド酸のほか、ポリアミド酸が部分的にイミド化したものがある。
【0050】
用いる有機溶媒としては、原料及び生成するポリイミドを完全に溶解すれば特に制限はなく、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、m−クレゾール、o−クロルフェノール等が挙げられる。
【0051】
反応初期の反応温度は0〜80℃が好ましく、0〜50℃がより好ましい。反応が進行しポリアミド酸が生成するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇する。ポリイミド樹脂は、生成したポリアミド酸を加熱処理又は化学的処理により、脱水閉環させて得ることができる。
【0052】
加熱処理の場合の反応温度は、用いる原料によって変化するが、120〜250℃が好ましい。また反応は、脱水反応で生じる水を系外に除去しながら行うことが好ましい。この際、ベンゼン、トルエン及びキシレン等を用いて水を共沸除去してもよい。
【0053】
化学的方法で脱水閉環させる場合は、脱水剤として、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等の酸無水物、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物などを用いる。このとき必要に応じて、例えば、ピリジン、イソキノリン、トリメチルアミン、アミノピリジン、イミダゾール等の閉環触媒を用いてもよい。閉環剤又は閉環触媒は、テトラカルボン酸二無水物1モルに対し、各々1〜8モルの範囲で使用するのが好ましい。
【0054】
使用できるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2′,3−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェニン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2′,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物)スルホン、ビシクロ〔2,2,2〕オクト(7)−エン、2,3,5、6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸二無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸二無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(1)
【化4】

【0055】
(ただし、nは2〜20の整数を示す)で表されるテトラカルボン酸二無水物及び下記式(2)
【化5】

【0056】
で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、中でも、接着フィルムに低温接着性を付与できる点で上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましく、耐湿信頼性に優れる点で上記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これらテトラカルボン酸二無水物は単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
また、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の含量は、全テトラカルボン酸二無水物に対して30モル%以上が好ましく、低温接着性に優れる点で50%以上がより好ましく、70%以上が極めて好ましい。
【0058】
上記一般式(1)のテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテートニ無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビストリメリテート二無水物、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
また、上記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物の含量は、全テトラカルボン酸二無水物に対して30モル%以上が好ましく、接着剤組成物に耐湿信頼性を付与できる点で50%以上がより好ましく、70%以上が極めて好ましい。
【0060】
上記ポリイミド樹脂の原料ジアミンとしては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン等の脂肪族ジアミン、o−(又はm−、p−)フェニレンジアミン、3,3′−(又は3,4′−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−(又は3,4′−)ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−(又は3,4′−、4,4′−)ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3′−(又は3,4′−、4,4′−)ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−(又は3,4′−、4,4′−)ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−(又は3,4′−、4,4′−)ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2′−(3,4′−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4′−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−(又は1,4−)ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3′−(1−フェニレンビス(1−メチルエチレリデン))ビスアニリン、3,4′−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4′−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(4−アミノフェニキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン等の不飽和結合含有ジアミン、下記一般式(3)
【化6】

【0061】
(式中、Q及びQは各々独立に炭素数が1〜5のアルキレン基、又は置換基を有していてもよいフェニレン基を示し、Q、Q、Q及びQは各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、mは1〜50の整数を示す)で表されるシロキサン系ジアミンなどが挙げられ、中でも上記一般式(3)で表されるジアミンが、接着剤組成物に加熱硬化後の低応力性及び低温接着性を付与できる点で好ましい。これらのジアミンは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
上記一般式(3)のシロキサン系ジアミンとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、下記式で表されるシロキサンジアミン等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【化7】

【0063】
上記一般式(3)で表されるシロキサン系ジアミンの含量は、全ジアミンに対して3モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が極めて好ましい。ジアミンの含量が3モル%未満であると、低吸湿性、低温接着性及び加熱硬化後の低応力性等の特性を発揮できない傾向がある。
【0064】
上記熱硬化性樹脂は、熱により架橋反応を起こす反応性化合物である。このような化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。なお、これら熱硬化性樹脂は単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
上記熱硬化性樹脂の含量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、200重量部以下が好ましく、接着剤組成物をフィルム状に加工して使用する場合は100重量部以下がより好ましい。200重量部を超えるとフィルム形成性が悪くなる傾向がある。下限は特に制限されないが、通常、0.1重量部である。
【0066】
また、硬化のために、適宜硬化剤と硬化促進剤、又は触媒と助触媒を使用することができる。
【0067】
上記硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられる。
【0068】
上記硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0069】
上記硬化剤の含量としては、上記熱硬化性樹脂100重量部に対して、0〜200重量部が好ましい。上記硬化促進剤の含量は、上記熱硬化性樹脂100重量部に対して、0〜50重量部が好ましい。
【0070】
好ましい熱硬化性樹脂の一つである、上記エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を含むものがより好ましく、硬化性や硬化物特性の点からフェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が極めて好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
上記エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられ、中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。
【0072】
上記分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0073】
好ましい熱硬化性樹脂の一つである、上記シアネート樹脂としては、例えば、2,2′−ビス(4−シアネートフェニル)イソプロピリデン、1,1′−ビス(4−シアネートフェニル)エタン、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、シアネーテッドフェノール−ジシクロペンタンジエンアダクト、シアネーテッドノボラック、ビス(4−シアナートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナートフェニル)エーテル、レゾルシノールジシアネート、1,1,1−トリス(4−シアネートフェニル)エタン、2−フェニル−2−(4−シアネートフェニル)イソプロピリデン等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂を使用する場合には、コバルト、亜鉛、銅等の金属塩や金属錯体などを触媒とし、アルキルフェノール、ビスフェノール化合物、フェノールノボラック等のフェノール系化合物などを助触媒とすることができる。
【0075】
好ましい熱硬化性樹脂の一つである、上記ビスマレイミド樹脂としては、例えば、o−(又はm−、p−)ビスマレイミドベンゼン、4−ビス(p−マレイミドクミル)ベンゼン、1,4−ビス(m−マレイミドクミル)ベンゼン及び下記一般式(4)〜(7)で表される化合物等が挙げられる。
【化8】

【0076】
(式中、XはO、CH、CF、SO、S、CO、C(CH又はC(CFを示し、四つのRは各々独立に、水素、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、二つのDは各々独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す)
【化9】

【0077】
(式中、YはO、CH、CF、SO、S、CO、C(CH又はC(CFを示し、四つのRは各々独立に水素、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、二つのDはエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す)
【化10】

【0078】
(式中、qは0〜4の整数を示し、複数のDは各々独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す)
【化11】

【0079】
(式中、二つのRは各々独立に二価の炭化水素基、四つのRは各々独立に一価の炭化水素基を示し、二つのDは各々独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示し、rは1以上の整数を表す)
なお、上記各構造式において、Dで示されるエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基としては、例えば、マレイン酸残基、シトラコン酸残基等が挙げられる。
【0080】
上記一般式(4)のビスマレイミド樹脂としては、例えば、4,4−ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4−ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミド−3,3′−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルホン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルフィド、4,4−ビスマレイミドジフェニルケトン、2′−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、4−ビスマレイミドジフェニルフルオロメタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0081】
上記一般式(5)のビスマレイミド樹脂としては、例えば、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)メタン、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)フルオロメタン、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ケトン、2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0082】
これらビスマレイミド樹脂の硬化を促進するため、ラジカル重合剤を使用してもよい。ラジカル重合剤の含量は、ビスマレイミド樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部が好ましい。
【0083】
上記ラジカル重合剤としては、例えば、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0084】
本発明の接着剤組成物は、さらにカップリング剤を含有させることが好ましい。カップリング剤としては、例えば、チタン系カップリング剤、シランカップリング剤等が挙げられ、入手が容易である点でシランカップリング剤が好ましい。
【0085】
上記のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3―ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N,N′―ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、ポリエトキシジメチルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
上記のカップリング剤の含量は、樹脂100重量部に対して、0.01〜50重量部であることが好ましく、0.05重量部〜20重量部より好ましい。50重量部を超えると保存安定性が悪くなる傾向があり、0.01重量部未満であるとカップリング剤の効果が充分に得られない傾向がある。
【0087】
本発明の接着剤組成物は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、フィラー及び必要に応じて他の成分を有機溶媒中で混合、混練して得ることができる。混合、混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0088】
本発明の接着剤組成物は、半導体装置製造時の作業性の向上、半導体装置の信頼性向上等の他に、その特性である高い接着力を最大限に活かすことができる点でフィルム状接着剤とすることが好ましい。
【0089】
本発明の接着剤組成物をフィルム状接着剤として得る方法としては、例えば、基材フィルム上に接着剤組成物の層を形成させ、加熱乾燥した後、基材を除去して得る方法等が挙げられる。加熱乾燥の条件は、使用した溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、通常60℃〜200℃で、0.1〜90分間加熱して行う。
【0090】
この時、基材を除去せずにフィルムの支持体とした基材つき接着フィルムとしてもよい。また、半導体装置製造工程を簡略化する目的で、得られた接着フィルムにダイシングフィルムを積層した一体型の接着フィルムとしてもよい。一体型の接着フィルムは、半導体ウェハの裏面に一体型接着フィルムの接着層を加熱しながらラミネートし、ダイシングした後、接着フィルム付き半導体素子としてピックアップして使用することが好ましい。
【0091】
上記接着剤組成物の製造の際に用いる有機溶媒は、材料を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0092】
本発明の接着剤組成物をフィルム状接着剤とする場合、フィルムの厚さ(接着剤層の厚さ)は10〜100μmが好ましい。フィルムの厚さを25μm以下とする場合は、フィルム状接着剤の平滑性に優れる点で、使用するフィラーの最大粒子径をフィルムの厚さ以下とすることが好ましい。
【0093】
接着フィルムの製造時に使用する基材フィルムは、上記の加熱、乾燥条件に耐えるものであれば特に限定するものではなく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは2種以上組み合わせて多層フィルムとしてもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0094】
本発明の接着剤組成物は、機能性を付与する目的でフィラーを高充填する必要がある場合、フィラーの高充填による接着強度、及び破壊靭性の大幅な低下を抑制でき、良好な耐リフロークラック性を維持することができる。
【0095】
例えば、熱放散性が重要となる分野の接着材料として、銀等の熱伝導性に優れるフィラーを高充填する場合、本発明の接着剤組成物の構成にすることによって、これまで困難であった高熱伝導性と高耐リフロークラック性の高度な両立を可能にする接着材料が得られる。この場合、熱伝導率は、1.0W/mK以上が好ましい。
【0096】
得られた接着剤組成物又は接着フィルムは、IC、LSI等の半導体素子と、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム等のリードフレーム、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等のプラスチックフィルム、ガラス不織布等基材にポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等のプラスチックを含浸、硬化させたもの、アルミナ等のセラミックス等の支持部材との接合に用いることができる。すなわち、前記したような半導体素子と支持部材との間に本発明の接着剤組成物を挾み、加熱圧着して、両者を接着させる。加熱温度は、通常、100〜300℃、0.1〜300秒間である。その後、ワイヤボンディング工程、必要に応じて封止材による封止工程等の工程を経て、半導体装置(半導体パッケージ)とされる。
【0097】
本発明の接着剤組成物及び接着フィルムは、半導体素子等の電子部品とリードフレームや絶縁性支持基板等の支持部材の接着材料として、良好な熱時接着力及び実装時の高温半田付けの熱履歴に対して優れた信頼性を有し、鉛フリーに対応した半導体パッケージのダイボンド材として好適に使用できる。また、本発明の接着剤組成物又は接着フィルムを用いて半導体素子と支持部材とを接着した構造を含有してなる半導体装置は、信頼性に優れる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0099】
実施例1〜6、比較例1〜3
下記A〜Cのポリイミドを用い、表1〜3の配合表に示す通り、実施例1〜6及び比較例1〜3の接着剤組成物を調合した。
【0100】
《ポリイミドの合成》
ポリイミドA:攪拌装置、窒素導入管、乾燥管を備えた1リットルの四つ口のフラスコに、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン8.2g(0.02モル)及び次式で表されるジアミン72.0g(0.08モル)を入れ、窒素気流下、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)320gを加えて溶液とした。
【化12】

【0101】
フラスコを水浴上に移し、激しく攪拌しながら4,4′−(4,4′−イソプロピリデンジフェノキシ)−ビス(フタル酸ニ無水物)52.0g(0.10モル)を少量ずつ加えた。酸二無水物がほぼ溶解したら、ゆっくりと攪拌し、6時間反応させ、ポリアミド酸溶液を得た。
【0102】
次に、前記のポリアミド酸溶液が入った四つ口フラスコに蒸留装置を装着し、キシレンを210gを加えた。激しく攪拌しながら、窒素気流下、180℃の油浴上で加熱しながらイミド化により生成する縮合水をキシレンと共に共沸留去した。その反応液を水中に注ぎ、沈殿したポリマーをろ過により採り、乾燥してポリイミドA(重量平均分子量29,300)を得た。
【0103】
ポリイミドB:1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート二無水物):41.0g(0.10モル)と2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン41.0g(0.10モル)を原料に用いて、その他はポリイミドAと同様に合成し、ポリイミドB(重量平均分子量126,000)を得た。
【0104】
ポリイミドC:1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)52.2g(0.10モル)と4,4′−ジアミノジフェニルメタン19.8g(0.10モル)を原料に用いて、その他はポリイミドAと同様に合成し、ポリイミドC(重量平均分子量120,000)を得た。
【0105】
なお、表1〜3において、種々の記号は下記のものを意味する。
【0106】
PKHH:(株)巴工業製、フェノキシ樹脂
ESCN195:(株)住友化学製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)
エピコート834:(株)油化シェルエポキシ製、ビスフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量250)
DME−100:(株)新日本理化学製、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量155)
BMI−M:(株)三井化学製、ノボラック型ビスマレイミド樹脂
L−10:(株)旭チバ製、ビスフェノールF型シアネート樹脂
XU−366:(株)旭チバ製、フェニル−1−(1−メチルエチリデン)ベンゼン型シアネート樹脂
H−1:(株)明和化成製、フェノールノボラック(OH当量106)
NH−7000:(株)日本化薬製、ナフトールノボラック(OH当量140)
トリスフェノールTC:(株)本州化学製、トリスフェノールノボラック(OH当量160)
XL−225:(株)三井化学製、キシリレン変性フェノールノボラック(OH当量175)
2P4MHZ:(株)四国化成製、キュアゾール2P4MHZ
2MA−OK:下記式で表されるイミダゾール化合物
【化13】

【0107】
S520:(株)チッソ製、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン
A−1310:(株)日本ユニカー製、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン
A−1100:(株)日本ユニカー製、3−アミノプロピルトリエトキシシラン
A−189:(株)日本ユニカー製、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
A−187:(株)日本ユニカー製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
SE−1:(株)トクヤマ製、シリカ
MFP−1110:(株)三井金属工業製、銅粉
C−0083P:(株)ケメット製、銀粉
E−03:(株)東海ミネラル、シリカ
I−ED:(株)デグサ製、銀粉
TCG−1:(株)徳力化学製、銀粉
D−1:(株)デグサ製、銀粉
HP−P1:(株)水島合金鉄製、窒化ホウ素
図5に、上記フィラーの形状をSEM写真で示す。
【0108】
DMAc:ジメチルアセトアミド
DMF:ジメチルホルムアミド
NMP:N−メチルピロリドン
【表1】

【表2】

【表3】

【0109】
この接着剤組成物を30〜50μmの厚さに基材(ポリプロピレンフィルム)上に塗布し、80℃で10分、続いて150℃で30分加熱し、その後、室温で基材から剥がして、フィルム状の接着剤組成物を得た。
【0110】
《評価試験》
実施例1〜6、比較例1〜3で得られた接着剤組成物について、ピール接着力を測定した(表4)。
【表4】

【0111】
(実施例7)
ポリイミドAを100重量部、エポキシ樹脂としてエピコート834を20重量部、硬化剤としてNH−7000を8.4重量部、硬化促進剤として2P4MHZを0.15重量部、シランカップリング剤としてA−189を1.0重量部、及び規定量の球状及び鱗片状の銀フィラー(30vol%)を溶媒DMAc中で撹拌混合したのち真空脱泡して接着剤組成物を得た。これを基材フィルムポリプロピレン上に30μmの厚さに塗布し、150℃で30分乾燥し、基材フィルムを剥離して、規定含量の球状又は鱗片状フィラーを含有する接着フィルムを得た。これらの接着フィルムにおける、銀フィラーの平均粒子径とピール強度との関係を図4に示す。
【0112】
図4から明らかなように、球状のフィラーの方が鱗片状のフィラーよりもピール強度は高く、フィラーの平均粒子径が小さくなるにつれてピール強度は高くなることがわかる。
【0113】
なお、ピール接着力及びチップ反りの測定法は以下の通り。
【0114】
<ピール接着力の測定法>
図6に示すようなプッシュプルゲージ11(日立化成工業(株)製)を用いて、引っ張り速度0.5mm/sec、角度17°で測定した。ここでいうピール強度とは90°ピール強度であり、図6に示す装置でその値を測定することができる。測定サンプルは、フィルム状の接着剤組成物12を5mm×5mmの大きさに切断し、これを5×5mmのシリコンチップ13と銅リードフレームのダイパッド部14との間に挟み、1000gの荷重をかけて、250℃で5秒間圧着させたのち、180℃で、1時間加熱して接着剤組成物を硬化させた。245℃又は275℃の熱板16上で、20秒加熱した時の引き剥がし強さを測定した。
【0115】
<熱拡散率の測定>
実施例4の接着フィルム(硬化条件:180℃5h,厚さ20μm)の厚さ方向の熱拡散率を測定し、熱伝導率を算出した。熱拡散率は、Temperature Wave Analysis法(TWA法,参考文献:T. Hashimoto, et al, Thermochim. Acta, 304/305, 151, 1997, J. Morikawa, et al, Polymer, 38, 21, pp.5397, 1997,T. Kurihara, et al, International Journalof Thermophysics, 18, 2, pp.505−513,1997)により、測定温度:20℃,周波数:10Hzの条件で測定した。また、熱伝導率は、下記数式により算出した。結果を表5に示す。
【0116】
[数1]
λ=α・Cp・ρ
(式中、λは熱伝導率、αは熱拡散率、Cpは比熱容量、ρは密度を示す)
【表5】

【符号の説明】
【0117】
1 樹脂
2 鱗片状フィラー
3 亀裂
4 球状フィラー
11 プッシュプルゲージ
12 本発明の接着剤組成物
13 シリコンチップ
14 ダイパッド部
15 支え
16 熱板
17 支え

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂及びフィラーを含有してなる接着剤組成物であって、前記フィラーの形状が球状であり、かつ平均粒子径が10μm以下、最大粒子径が25μm以下である接着剤組成物。
【請求項2】
フィラーが金属フィラー又は無機フィラーである請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
フィラーが銀粉である請求項2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
フィラーの含量が1〜50体積%である請求項1、2又は3記載の接着剤組成物。
【請求項5】
樹脂が熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項6】
樹脂が熱可塑性樹脂100重量部、熱硬化性樹脂0.1〜200重量部からなる請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項7】
熱可塑性樹脂がポリイミド樹脂である請求項5又は6記載の接着剤組成物。
【請求項8】
ポリイミド樹脂が、下記一般式(1)
【化1】

(式中、nは2〜20の整数を示す)で表されるテトラカルボン酸二無水物又は下記式(2)
【化2】

で表されるテトラカルボン酸二無水物の含量が全テトラカルボン酸二無水物の30モル%以上であるテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である請求項7記載の接着剤組成物。
【請求項9】
ポリイミド樹脂が、上記一般式(1)のテトラカルボン酸二無水物又は上記式(2)のテトラカルボン酸二無水物の含量が全テトラカルボン酸二無水物の30モル%以上であるテトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(3)
【化3】

(式中、Q及びQは各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有していてもよいフェニレン基を示し、Q、Q、Q及びQは各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、mは1〜50の整数を示す)で表されるシロキサン系ジアミンが全ジアミンの3モル%以上を含むジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である請求項7記載の接着剤組成物。
【請求項10】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である請求項5〜9のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項11】
さらにカップリング剤を含有してなる請求項1〜10のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項12】
カップリング剤がシランカップリング剤である請求項11記載の接着剤組成物。
【請求項13】
熱可塑性樹脂100重量部、カップリング剤0.01〜50重量部を含有してなる請求項11又は12記載の接着剤組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の接着剤組成物を用いて形成してなる接着フィルム。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかの接着剤組成物又は請求項14記載の接着フィルムを用いて半導体素子を支持部材に接着した構造を有してなる半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−275229(P2009−275229A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188711(P2009−188711)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【分割の表示】特願2001−287985(P2001−287985)の分割
【原出願日】平成13年9月21日(2001.9.21)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】