説明

搬送装置及び方法

【課題】 機構部が熱変形した場合であっても機構部間における搬送対象物の受け渡しを円滑に行う。
【解決手段】 高温環境下で搬送対象物を横行、昇降あるいは回転することによって搬送し、複数の機構部間において上記搬送対象物の受け渡しを行う搬送装置であって、受け渡す側の機構部の位置あるいは受け渡される側の機構部の位置を検出する位置検出部8c,8dと、上記位置検出部8c,8dの検出結果に基づいて上記受け渡す側の機構部あるいは上記受け渡される側の機構部の所定範囲に対する位置ズレを検出するズレ検出部100とを有し、上記受け渡す側の機構部の位置あるいは上記受け渡される側の機構部の位置が上記所定範囲に対してずれている場合に、上記ズレ検出部100の検出結果に応じて上記受け渡される側の機構部を上記受け渡す側の機構部に対して相対移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送装置は搬送対象物を所定位置に搬送するためのものであるが、このような搬送装置の中には、気密容器内(雰囲気ガス中あるいは真空中)や高温環境下において搬送対象物を搬送するものがある(特許文献1参照)。
また、搬送装置の中には、搬送対象物を搬送する複数の機構部を備えるものがあり、このような搬送装置においては、複数の機構部間において搬送対象物を受け渡しながら搬送対象物を搬送している。このような複数の機構部を有する搬送装置においては、例えば、いずれかの機構部にサーボモータを設置し、搬送対象物が機構部間の受け渡しにおいて、サーボモータによって機構部を所定の位置に位置決めする動作を行い移動することによって搬送対象物の受け渡しを行っている。
【特許文献1】特開平2003−332404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、高温環境下でかつ気密容器内で複数の機構部を用いて搬送対象物を搬送する搬送装置においては、熱膨張によって機構部を構成する部材自体が変形する場合がある。このような場合には、結果的に搬送対象物がずれることとなり、サーボモータで対応することが困難となる。このため、搬送対象物がずれた状態で複数の機構部間において受け渡される場合が生じる。
このように、搬送対象物がずれた状態で複数の機構部間において受け渡された場合には、搬送対象物が機構部から落下したり、搬送対象物が機構部を構成する部材と衝突することによって搬送対象物や機構部の部材が破損すると言った搬送装置を停止せざるを得ない問題が生じる。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、機構部が熱変形した場合であっても機構部間における搬送対象物の受け渡しを円滑に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、高温環境下で搬送対象物を横行、昇降あるいは回転することによって搬送し、複数の機構部間において上記搬送対象物の受け渡しを行う搬送装置であって、受け渡す側の機構部の位置あるいは受け渡される側の機構部の位置を検出する位置検出部と、上記位置検出部の検出結果に基づいて上記受け渡す側の機構部あるいは上記受け渡される側の機構部の所定範囲に対する位置ズレを検出するズレ検出部とを有し、上記受け渡す側の機構部の位置あるいは上記受け渡される側の機構部の位置が上記所定範囲に対してずれている場合に、上記ズレ検出部の検出結果に応じて上記受け渡される側の機構部を上記受け渡す側の機構部に対して相対移動させることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、上記位置検出部が、上記受け渡す側の機構部の位置あるいは上記受け渡される側の機構部を撮像する撮像装置及び画像処理装置であることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、上記機構部が気密容器内に配設されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、高温環境で搬送対象物を横行、昇降あるいは回転することによって搬送し、複数の機構部間において上記搬送対象物の受け渡しを行う搬送方法であって、受け渡す側の機構部の位置あるいは受け渡される側の機構部の位置を検出し、該検出結果に基づいて上記受け渡す側の機構部あるいは上記受け渡される側の機構部の所定範囲に対する位置ズレを検出し、上記受け渡す側の機構部の位置あるいは上記受け渡される側の機構部の位置が上記所定範囲に対してずれている場合に、上記位置ズレの検出結果に応じて上記受け渡される側の機構部を上記受け渡す側の機構部に対して相対移動させることを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、上記受け渡す側の機構部あるいは上記受け渡される側の機構部を撮像することによって、上記受け渡す側の機構部の位置あるいは上記受け渡される側の機構部の位置を検出し、上記受け渡す側の機構部あるいは上記受け渡される側の機構部の撮像データを画像処理することによって、上記受け渡す側の機構部あるいは上記受け渡される側の機構部の所定範囲に対する位置ズレを検出することを特徴とする。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項4または5に係る発明において、上記受け渡す側の機構部のエッジ位置あるいは上記受け渡される側の機構部のエッジ位置に基づいて上記受け渡す側の機構部あるいは上記受け渡される側の機構部の所定範囲に対する位置ズレを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の搬送装置及び方法によれば、受け渡す側の機構部の位置あるいは受け渡される側の機構部の位置が検出され、さらに位置ズレが検出される。そして、受け渡す側の機構部の位置あるいは受け渡される側の機構部の位置がずれている場合に、位置ズレの検出結果に応じて受け渡される側の機構部が上記受け渡す側の機構部に対して相対移動される。このため、熱膨張によって機構部の部材が変形した場合であっても、受け渡す側の機構部と受け渡される側の機構部との位置関係を搬送対象物の受け渡しに最適な状態に修正動作させることができる。したがって、本発明の搬送装置及び方法によれば、機構部が熱変形した場合であっても機構部間における搬送対象物の受け渡しを円滑に行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明の搬送装置及び方法によれば、位置検出部として撮像装置を用いる場合には、受け渡す側の機構部あるいは受け渡される側の機構部を撮像することによって、受け渡す側の機構部の位置あるいは受け渡される側の機構部の位置が検出され、この検出結果を画像処理することによって受け渡す側の機構部あるいは受け渡される側の機構部の位置ズレが検出される。したがって、本発明の搬送装置及び方法によれば、容易に受け渡す側の機構部あるいは受け渡される側の機構部の位置ズレを検出することができる。
【0013】
また、本発明の搬送方法によれば、受け渡す側の機構部あるいは受け渡される側の機構部の所定範囲に対する位置ズレが、受け渡す側の機構部のエッジ位置あるいは受け渡される側の機構部のエッジ位置に基づいて検出される。したがって、本発明の搬送方法によれば、容易に受け渡す側の機構部あるいは受け渡される側の機構部の位置ズレを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る搬送装置及び方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
本実施形態の搬送装置は、析出板製造装置である半導体基板製造装置に用いられている。図1は、半導体基板製造装置を平面視した場合における概略構成図である。また、図2は、半導体製造装置を正面視した場合における概略構成図である。また、図3は、半導体基板製造装置を側面視した場合における概略構成図である。
なお、半導体基板製造装置1において、本実施形態の搬送装置は、基板搬出入機構60及び析出機構10を備えて構成されている。これら基板搬出入機構60及び析出機構10によって析出用基板14(搬送対象物)が横行、昇降あるいは回転されることによって搬送され、基板搬出入機構60と析出機構10との間で受け渡される。そして、半導体基板製造装置1は、本実施形態の搬送装置を用いて析出用基板14を搬出しながら、シート状の析出板2を製造するものである。以下、このような半導体基板製造装置1の詳細構成について説明する。
【0016】
図1に示すように、半導体基板製造装置1は、搬送経路が交差しないように溶湯15上で析出用基板14を往復移動させることによって、図2に示すように、Siを主成分とするシート状の析出板2を製造するものである。なお、半導体基板製造装置1は、析出板製造装置の一種である。また、析出板製造装置は、半導体材料や金属材料等の溶解対象物101を加熱溶解して溶湯15とし、この溶解対象物101をシート状の析出板2となるように製造する装置である。また、溶解対象物101としては、Si等の半導体材料の他、鉄やチタン等の金属材料を用いることができる。
【0017】
半導体製造装置1は、外部環境から内部を密閉状態に隔離可能な二重壁構造の真空容器4を備えている。そして、真空容器4は、密閉状態の処理室3を形成している。処理室3は、析出機構収容空間3aと、基板移動空間3bと溶湯収容空間3cとを上下方向に備えている。析出機構収容空間3aは、最上部に位置されており、後述の析出機構10(機構部)を収容するように形成されている。基板起動空間3bは、析出機構収容空間3aと溶湯収容空間3cとの間に位置されており、図1の上下方向に2セット設けられた後述の基板搬出入機構60(機構部)の中間機構部60bを収容するように形成されている。溶湯収容空間3cは、最下部に位置されており、後述のルツボ装置75を収容するように形成されている。
【0018】
上記真空容器4には、Arガスの不活性ガスを供給する不図示のガス供給装置及び処理室3の空気を排気する不図示の真空排気装置が接続されている。これらの装置は、処理室3を所定の圧力に減圧しながら不活性ガスを供給することによって、外部環境とは異なる例えば不活性ガスで充満された処理環境を処理室3内に形成する。
【0019】
また、図1に示すように、真空容器4に対して搬送方向の上流側(図中左側)には、基板搬出入機構60の搬入機構部60aが配置されている。一方、真空容器4に対して搬送方向の下流側(図中右側)には、基板搬出入機構60の搬出機構部60cが配置されている。これらの搬入機構部60a、搬出機構部60c及び中間機構部60bとは、略直線状に水平配置されている。搬入機構部60aは、縦断面が矩形状の隔壁62a,62b,62cと、覗き窓67と、図2に示す搬送ローラ59とを備えて構成されている。なお、覗き窓67は隔壁62aによって囲われた空間内をオペレータが監視するためのものであり、複数配置されている。また、搬送ローラ59は、隔壁62aによって囲われた空間内に配置されており、析出用基板14を載置しながら搬送方向に移動させるものである。
【0020】
隔壁62a,62b,62cに囲われた空間は、各々圧力調整室61a,予熱室61b,待機室61cとして構成されている。これらの圧力調整室61a,予熱室61b,待機室61cは、搬送方向の上流側からこの順に配置されている。圧力調整室61aは、本実施形態において6枚の析出用基板14直列状に収納可能なサイズに設定されている。また、圧力調整室61aは、その一端が、大気圧である装置がいぶに連通されていると共に、その他端が、予熱室61bに連通されている。
【0021】
圧力調整室61aの一端及び他端には、第1遮蔽板63及び第2遮蔽板64が各々設けられている。これらの各遮蔽板63,64は、不図示のシリンダ装置によって昇降可能にされていると共に、不図示の制御装置で昇降動作が制御されている。具体的には、第1遮蔽板63は、析出用基板14を圧力調整室61aに搬入するときに上昇され、搬入後に圧力調整室61aの一端を気密状態に密閉するように下降される。一方、第2遮蔽板64は、圧力調整室61aから予熱室61bに析出用基板14を搬送するときに、第2遮蔽板64の他端を開放するように上昇される。また、圧力調整室61aには、電磁バルブ65を介して排気系66が接続されている。排気系66は、圧力調整室61aを真空状態にまで減圧可能になっている。電磁バルブ65は、圧力調整室61aへの析出用基板14の搬入時において閉栓され、析出用基板14の搬入後に、圧力調整室61aを減圧するように開栓される。
【0022】
上記の圧力調整室61aに第2遮蔽板64を介して連通された予熱室61bは、圧力調整室61aと同様に、6枚分の析出用基板14を直列状に収容可能なサイズに設定されている。予熱室61bは、真空容器4と同様に、二重壁構造の隔壁62bに囲まれている。また、予熱室61bは、その一端が、上述の第2遮蔽板64によって開閉可能にされている一方、他端が、第1仕切り部材68によって区画されている。第1仕切り部材68は、図2に示すように搬送ローラ59で搬送される析出用基板14を通過させる程度の隙間を形成するように配置されている。
【0023】
上記の予熱室61bには、第1予熱ヒータ82が設けられている。第1予熱ヒータ82は、搬送方向の上流側端部に位置する析出用基板14に対向するように配置されている。そして、第1予熱ヒータ82は、析出用基板14が対向されたときに、この析出用基板14を加熱して所定温度に昇温させることによって、溶湯15と析出用基板14との温度差が一定となるようにしている。なお、第1予熱ヒータ82は、電熱線を通電によって発熱させて加熱する方式であっても良いし、電磁誘導を利用して加熱する方式であっても良い。また、図1に示すように、予熱室61bには、予熱時に析出用基板14から放散した不純物ガスを吸引するように、排気系66が接続されている。排気系66の吸引口は、不純物ガスを効率的に吸引するように、第1予熱ヒータ82に近接されている。
【0024】
上記の予熱室61bは、第1仕切り部材68を介して待機室61cに連通されている。待機室61cは、真空容器4と同様に、二重壁構造の隔壁62cに囲まれている。また、待機室61cの一端及び他端は、第1仕切り部材68及び第2仕切り部材69によって各々区画されている。第2仕切り部材69は、析出用基板14と後述の基板送り機構70とを通過させるように形成及び配置されている。また、待機室61cには、上述の第1予熱ヒータ82と同様の第2予熱ヒータ83が設けられている。
【0025】
上記の第2予熱ヒータ83は、待機状態の析出用基板14に対向するように配置されている。そして、第2予熱ヒータ83は、析出用基板14が対向されたときに、第1予熱ヒータ82で予熱された析出用基板14を加熱して昇温させることによって、溶湯15と析出用基板14との温度差がさらに縮小された状態で一定となるようにしている。なお、第2予熱ヒータ83は、析出用基板14の予熱温度を微調整する用途に使用されても良い。さらに、待機室61cには、予熱時に析出用基板14から放散した不純物ガスを吸引するように、排気系66が接続されている。排気系66の吸引口は、不純物ガスを効率的に吸引するように、第2予熱ヒータ83に近接されている。
【0026】
上記の待機室61cは、第2仕切り部材69を介して処理室3に連通されている。処理室3は、基板搬出入機構60の中間機構部60bを収容している。中間機構部60bは、図2に示すように、析出用基板14を移動自在に載置する第1搬送台84及び第2搬送台85を備えている。第1搬送台84は、搬送ローラ59の端部に近接するように、一端部が待機室61cに進出されている。第1搬送台84と第2搬送台85とは、処理室3の上流側(図中左側)と下流側(図中右側)とに所定間隔を隔てて直列配置されている。これらの搬送台84,85の隙間は、基板搬出入機構60と析出機構10との間に析出用基板14を受け渡しする着脱位置Aとして設定されている。
【0027】
上記の第1搬送台84の側方には、図1に示すように、基板送り機構70が配設されている。基板送り機構70は、複数の爪部材71と、これらの爪部材71を自由端側で片持ちする爪支持部材72と、爪支持部材72の基端部を回動可能に支持する爪旋回機構73と、爪旋回機構73と共に爪支持部材72及び爪部材71を搬送方向に進退移動させる爪進退機構74とを備えている。上記の各爪部材71は、析出用基板14の両側面を挟み込むように配設間隔が設定されていると共に、隣接する析出用基板14,14間の隙間を所定幅に拡大させるように所定の厚みに設定されている。また、爪旋回機構73は、クラッチ付きモータ等からなっており、正逆方向に回動することによって、爪部材71が析出用基板14の上方及び側方に位置決め可能に旋回させるようになっている。爪進退機構74は、エアーシリンダ等からなっており、1回当たりの移動距離が析出用基板14の長さに設定されている。
【0028】
そして、このように構成された基板送り機構70は、析出用基板14を爪部材71で所定間隔をおいて把持する動作と、爪部材71を搬送方向に移動させる動作と、析出用基板14から爪部材71を開放する動作と、爪部材を搬送方向とは略方向に移動させる動作とを繰り返すことによって、予熱室61bから待機室61cに搬入された析出用基板14を第2予熱ヒータ83による予熱位置と着脱位置Aとに順次送り込むようになっていると共に、着脱位置Aから搬出機構60cに送り出すよになっている。
【0029】
上記の各機構部60a〜60cからなる基板搬出入機構60は、ルツボ装置75を中心として左右対称に並列配置されている。これによって、基板搬出入機構60の経路中に存在する着脱位置Aは、ルツボ装置75内の溶湯15の上方から離れた場所に位置した状態になっている。ルツボ装置75は、図2に示すように、溶湯15を収容するルツボ76と、ルツボ76の側面壁の周囲に配置された誘導加熱コイル77と、これらのルツボ76及び誘導加熱コイル77と、これらのルツボ76及び誘導加熱コイル77を支持するルツボ支持台78とを有している。誘導加熱コイル77には、不図示の電力ケーブルを介して高周波電源が接続されている。これによって、誘導加熱コイル77は、高周波電源から高周波数の交流電力が供給されることによって、ルツボ76の周囲に交番磁場を生成させ、ルツボ76の主に表面側を誘導加熱するようになっている。
【0030】
上記のルツボ76は、図1に示すように、平面視円形状に形成されている。なお、ルツボ76は、析出用基板14の進行方向が長尺となるように平面視長方形状や楕円形状に形成されていても良い。この場合には溶湯15の収容量を最小限に抑制しながら、ルツボ76の側面壁が析出用基板14の浸漬時の障害物になることを回避することができる。また、ルツボ76は、側面側と底面側との2方向から大きな熱量が伝達されるように、底面壁が十分に大きな厚みに設定されている。一方、ルツボ76の側面壁は、電磁誘導の浸透深さ未満の厚みに設定されており、溶湯15を対流させることによってゴミ等の落下物が核となって溶湯15の表面中央が凝固する現象を防止している。
【0031】
上記のルツボ装置75の斜め上方には、溶解対象物101を供給する供給機構90が設けられている。供給機構90は、真空容器4における搬送方向の下流側の側面にもうけられている。供給機構90は、一端が処理室3内に開口された収容隔壁91と、収容隔壁91内を処理室3側の送給室93と大気側の準備室94とに気密状に分離可能な遮蔽機構92と、準備室94を大気側に開閉可能な蓋部材95と、溶解対象物101を準備室94からルツボ76の上方に搬送する原料搬送機構96とを有している。
【0032】
また、供給機構90の側方には、真空容器4の第1覗き窓部4aが配置されている。第1覗き窓部4aには、CCDカメラ等の第1撮像装置8aが設けられている。第1撮像装置8aは、ルツボ76と共に溶湯15の湯面高さを検出可能にしている。また、真空容器4における搬送方向の下流側の側壁面には、第2覗き窓部4bが配置されている。第2覗き窓部4bには、CCDカメラ等の第2撮像装置8bが設けられている。第2撮像装置8bは、第1撮像装置8aでは撮像できない逆方向から見た領域を撮像するように設定されている。
【0033】
また、真空容器4における搬送方向と直交する方向の一方(図中下側)には、第3覗き窓4cが配置されている。第3覗き窓4cには、CCDカメラ等の第3撮像装置8c(撮像装置)が設けられている。また、図2に示すように、真空容器4における第2搬送台85の上方には、第4覗き窓4dが配置されている。第4覗き窓4dには、CCDカメラ等の第4撮像装置8d(撮像装置)が設けられている。これらの第3撮像装置8c及び第4撮像装置8dは、第1搬送台84(受け渡す側の機構)の位置を検出可能にしている。
【0034】
図4は、半導体基板製造装置1が備える信号処理系の一部を表したブロック図である。この図に示すように、第3撮像装置8c及び第4撮像装置8dは、制御装置100(ズレ検出部)と接続されている。制御装置100は、演算部や記憶部を備えており、第3撮像装置8c及び第4撮像装置8dから入力される第2搬送台85の撮像データを画像処理することによって、第2搬送台85の非熱変形時における存在範囲(所定範囲)に対する位置ズレを検出可能にしている。また、制御装置100は、位置ズレを検出した場合に、検出した位置ズレに基づいて制御信号を生成し、この制御信号を出力する。なお、制御信号は、析出用基板14の円滑な受け渡しができるように、検出された位置ズレが補正されるように、後述の析出機構10(受け渡す側の機構)を移動するための信号である。アンプ200は、制御信号を増幅して出力するものである。アンプ200と、析出機構10とは接続されている。具体的には、後述の析出機構10の一部である水平駆動装置23、垂直駆動装置35及び旋回駆動装置40の各々とアンプ200が接続されている。
【0035】
また、制御装置100は、半導体基板製造装置1の各機構を個別あるいは連動させながら制御する各種の機能を備えている。具体的には、第1撮像装置8aからの撮像信号の明暗に基づいて溶湯15の湯面高さを検出する機能や、検出された湯面高さが所定の基準高さとなるように、供給機構90における溶解対象物101の供給タイミングや供給量を制御する機能等を有している。
【0036】
また、ルツボ装置75の上方には、図2に示すように、析出機構10が設けられている。析出機構10は、後述の基板把持機構51(受け渡される側の機構)を着脱位置Aとルツボ装置75の溶湯15との間で搬出入方向(搬送方向)に対して直交する方向に移動させることによって、基板把持機構51に装着された析出用基板14を溶湯14に浸漬させて引き上げるように構成されている。具体的には、析出機構10は、着脱位置Aでは析出用基板14の他方面(基板面14aに対して逆面)を下側から着脱可能に基板把持機構51を介して保持し、溶湯15への浸漬位置では析出用基板14の他方面を上側に位置させるように、析出用基板14を旋回半径方向に対して傾斜した姿勢で保持する先端部を旋回軸を中心として旋回させることによって、基板把持機構51と共に析出用基板14を交差方向に移動させる構成にされている。なお、旋回半径方向とは、図3の旋回軸49を中心として旋回する旋回部材50の長手方向のことである。
【0037】
図3は、半導体基板製造装置を側面視した場合における概略構成図である。上記の析出機構10は、水平移動機構13と、水平移動機構13によって水平移動可能にされた垂直移動機構11と、垂直移動機構11によって昇降可能にされた旋回機構12と、基板把持機構51とを有している。水平移動機構13は、待機室61cを取り囲む隔壁62cの上面に設けられている。水平移動機構13は、図3に示すように、搬送方向に対して直交された水平搬送部16と、この水平搬送部16を駆動する水平駆動部17とを有している。水平搬送部16は、水平方向に配置されており、一端側が真空容器4側に配置され、他端側が真空容器4内の処理室3に配置されている。
【0038】
上記の水平搬送部16は、図2に示すように、周面全体にネジ溝が形成されたネジ軸部材18と、ネジ軸部材18に螺合されたブロック部材19と、ブロック部材19の下面を進退移動自在に支持するレール部材20と、ブロック部材19の上面に設けられ、垂直移動機構11に連結された連結部材21とを有している。さらに、水平搬送部16は、図3に示すように、ネジ軸部材18の一端に連結され、真空容器4外に延設された連結軸部材24を有している。連結軸部材24の一端部には、水平駆動部17が連結されている。水平駆動部17は、任意の回転速度で正逆回転可能であると共に所定の保持力で停止可能なサーボモータ等の水平駆動装置23を有している。水平駆動装置23は、連結軸部材24を介してネジ軸部材18を正逆回転させることによって垂直移動機構11を水平方向の任意の位置に移動可能にしている。
【0039】
上記の水平移動機構13で水平移動される垂直移動機構11は、図2に示すように、垂直方向に配置された垂直搬送部30と、垂直搬送部30の上端部に設けられた垂直駆動部31とを有している。垂直搬送部30は、周面全体にネジ溝が形成された不図示のネジ軸部材と、ネジ軸部材に螺合され、全面(図中右面)に旋回機構12が連結されたブロック部材33と、ブロック部材33の裏面(図中左面)を昇降自在に支持するレール部材34とを有している。
【0040】
上記の垂直搬送部30の上端部には、垂直駆動部31が連結されている。垂直駆動部31は、任意の回転速度で正逆回転可能であると共に所定の保持力で停止可能なサーボモータ等の垂直駆動装置35は、ネジ軸部材の上端部に連結されており、ネジ軸部材を正逆回転させることによって、ブロック部材33等を介して旋回機構12を垂直方向の認知の高さ位置に移動可能にしていている。
【0041】
また、冷却装置36は、垂直駆動装置35を処理室3の処理環境から隔離するように収納し、窒素ガスの不活性ガスや空気等の冷却ガスが封入された収納容器25と、収納容器25の壁面に接合することによって収納容器25の壁面に沿って冷却水等の冷却媒体を流動させる不図示の冷却配管とを有している。そして、冷却装置36は、冷却ガスが冷却配管を流通する冷却水等の冷却媒体で熱交換されることによって、収納容器25内における収容環境を所定の温度以下に維持するようになっている。なお、冷却装置36は、真空容器3外から収納容器25内に冷却ガスを給排出して循環させるように構成されていても良い。
【0042】
上記の垂直移動機構11は、旋回機構12を昇降可能に支持している。旋回機構12は、ブロック部材33に一端面を連結された連結支持体38と、連結支持体38の上面に連結された旋回駆動部39と、先回駆動部39によって旋回駆動される浸漬機構部37とを有している。旋回駆動部39は、任意の回転速度で回転可能であると共に所定の保持力で停止可能なサーボモータ等の旋回駆動装置40と、旋回駆動装置40を冷却する冷却装置41とを有している。
【0043】
上記の冷却装置41は、垂直駆動部31と同様に、収納容器25等を有した上述の冷却装置36と同一の部材によって同一の冷却機能を発揮するように構成されている。この冷却装置41内の旋回駆動装置40は、旋回駆動軸40aが水平配置されると共に、旋回駆動軸40aの先端部がブロック部材33に対向するように配置されている。駆動用スプロケット42aの下方には、中間スプロケット42bと旋回用スプロケット42bとがこの順に配置されている。そして、駆動用スプロケット42aは、第1チェーン43aを介して中間スプロケット42bに連結され、中間スプロケット42bは、第2チェーン43bを介して旋回用スプロケット42cに連結されている。
【0044】
上記の旋回用スプロケット42cは、回転軸部材44に設けられている。回転軸部材44は、第1支持部材45によって水平方向に回転自在に支持されている。第1支持部材45は、図3にも示すように、連結支持体38から垂下されていると共に、中間スプロケット42bやチェーン43a,43bを溶湯15の輻射熱から保護するように設けられている。
【0045】
上記の第1支持部材45に支持された回転軸部材44の一端部は、ロータリーエンコーダ46に連結されている。ロータリーエンコーダ46は、回転軸部材44の回転角度を検出することによって、浸漬機構部37の旋回角度を検出可能にしている。また、ロータリーエンコーダ46の周囲には、カバー部材47が設けられている。カバー部材47は、溶湯15からの輻射熱を遮る熱遮蔽板としての機能と、溶湯15等から飛散して浮遊する塵埃がロータリーエンコーダ46に付着することを防止する防塵カバーとして機能を備えている。
【0046】
一方、回転軸部材44の他端部は、浸漬機構部37に連結されている。浸漬機構部37は、図5に示すように、連結支持体38の下面から垂下された第2支持部材48,48と、第2支持部材48,48によって水平方向に回転自在に支持された旋回軸49と、旋回軸49に設けられた一対の旋回部材50,50とを有している。回転軸部材44と第2支持部材48,48とは、カーボンで形成された軸受機構97を介して回転自在に連結されている。軸受機構97は、各第2支持部材48の下端部に嵌入されたハウジング98と、回転軸部材44に外挿された円筒部材99とを有している。円筒部材99は、ハウジング98内に摺動自在に内挿されている。そして、軸受機構97は、円筒部材99の外周面をハウジング98の内壁面に摺動させることによって、回転軸部材44を円滑に回転させるようになっている。
【0047】
上記の軸受機構97を介して旋回される旋回部材50,50の先端部には、後述の基板把持機構51が設けられている。基板把持機構51は、旋回半径方向に対して傾斜した姿勢で析出用基板14を保持することによって、着脱位置Aにおいては水平状態の析出用基板14を下側から着脱可能に保持し、析出位置Bにおいては析出用基板14を保持した面を上側に位置させるようになっている。なお、各旋回部材50は、機械的強度に優れたステンレス鋼等の金属材料で形成されていても良いし、耐熱性優れたカーボンによって形成されていても良い。
【0048】
上記のように、各機構11〜13を備えた析出機構10は、図1に示すように、水平移動機構13による水平移動と、垂直移動機構11による垂直移動と、旋回機構12による旋回移動とを組合わせることによって、基板把持機構51を着脱位置Aと析出位置Bとに位置決め可能にしていると共に、析出用基板14を所定の浸漬軌跡で溶湯15に浸漬させるようになっている。なお、浸漬軌跡は、析出用基板14を旋回方向(矢印方向)の上流側から斜め方向に下降させて溶湯15から引き上げることによって、浸漬された部分に溶湯15の凝固成長した析出物である析出板2を生成させるように設定されている。
【0049】
上記の析出用基板14は、図6(a),(b)及び図7に示すように、カーボンによって平面視矩形状に形成されている。なお、析出用基板14は、円形状や楕円形状、三角形状、台形状、五角形以上の多角形状に形成されていても良い。析出用基板14は、析出板2が析出される基板面14a(下面)と、析出用基板14の上面(反析出面)に形成された逆台形状の把持部14bと、搬送方向の両側面に形成された突起部14cとを有している。上記の突起部14cは、析出用基板14,14同士が当接したときの突起部14c,14c間のブレを減少させるように、各側面の両端部に左右一対に配置されている。
【0050】
また、突起部14c,14cは、溶湯15に浸漬されないように、基板面14aから離れた把持部14bの側面に配置されている。また、各突起部14cの搬送方向の長さは、析出用基板14の側面に析出した側方析出物5の突出長よりも大きな値に設定されている。そして、これらの突起部14c,14cは、隣接する析出用基板14,14間に隙間を生じさせることによって、析出用基板14のコーナー部の破損を防止し、図1の基板送り機構70による析出用基板14の分離作業を容易化し、さらには析出用基板14の側面に析出した側方析出物5同士の当接を防止するようになっている。
【0051】
また、上記の突起部14c,14cが側面に形成された把持部14bは、後述の基板把持機構51の係合部52a,52a間に搬送方向の移動で着脱されるように、搬送方向に対して平行に形成されている。また、把持部14bは、中心部から両端部手前までの領域における幅が係合部52a,52aに当接する程度の幅に設定されている。そして、把持部14bの両端部手前から両端部にいたる領域においては、両端部手前から両端部にかけて幅を徐々に減少させるように設定されている。これによって、析出用基板14を搬送する際に、搬送方向に対して幅方向に多少のブレは誤差があった場合でも、把持部14bを係合部52a,52a間に確実に挿入させることが可能になっている。
【0052】
なお、析出用基板14の突起部14cは、搬送方向の少なくとも一方の側面に形成されていれば良い。また、析出用基板14は、基板面14aの両端部が上面の両端部の内側に位置するように基板面14aから上面側にかけて傾斜されていて良い。
【0053】
上記の析出用基板14は、図3の浸漬機構37に設けられた基板把持機構51によって着脱可能に保持される。基板把持機構51は、図7に示すように、チャック部52,52を左右対称に一体的に備えている。各チャック部52,52は、把持部14bに係合するように下面に形成された係合部52aと、ゴミ等の落下物を受け止めるように形成された環状溝部52bに周囲を囲まれた懸吊部52cとを有している。上記の係合部52aは、析出用基板14の把持部14bを挿入するように左右対称に配置されている。これによって、基板把持機構51は、析出用基板14が搬送方向(搬出入方向)に移動されたときに、この析出用基板14の把持部14bを係合部52a,52a間に挿入することによって析出用基板14を上下方向に保持可能になっている。
【0054】
一方、懸吊部52cの上面には、2つの突設部52d,52dが対向配置されている。両突設部52d,52dの中央部には、ピン挿通穴52e,52eが形成されている。これらの突設部52d,52d間には、上述の浸漬機構部37の旋回部材50,50が嵌合されるようになっている。そして、ピン挿通穴52e,52eには、カーボン製のピン部材53が抜脱可能に挿通されるようになっており、ピン部材53は、各旋回部材50,50をチャック部52,52に連結させるようになっている。
【0055】
上記のピン部材53は、溶湯15からの輻射熱の直射を回避するように、チャック部52の析出側の投影面積よりも短くなるように形成されている。また、ピン部材53の表面には、硬化層54が形成されており、ピン部材53は、硬化層54によって表面の機械的強度が高められることによって、チャック部52のピン挿通穴52eに対して着脱する際の磨耗が低減されている。一方、チャック部52においては、ピン部材53に接触するピン挿通穴52eと、析出用基板14に接触する係合部52a及び下面と硬化層54が形成されている。そして、チャック部52は、硬化層54で接触面の機械的強度が高められることによって、ピン部材53の着脱時及び析出用基板14の把持時における磨耗が低減されている。
【0056】
なお、硬化層54の形成方法としては、プラズマCVDやイオンプレーティング等の表面処理方法でSiC膜をコーティングする硬化処理を挙げることができる。また、硬化層54は、基板把持機構51の全表面に形成されていても良く、この場合には、基板保持機構51の全体の機械的強度を高めることができるため、基板把持機構51をオペレータが運搬する際に衝撃を与えても破損し難いものとすることができる。
【0057】
次に、このように構成された、半導体基板製造装置1の動作について説明する。
【0058】
(準備・保全工程)
準備・保全工程は、析出板2の生産開始前及び生産開始後において、半導体製造装置1を生産に適した状態にする場合に実施される。すなわち、図2に示すように、ルツボ装置75の検査や坩堝76の交換、真空容器4内の各機構の検査が行われる。また、ルツボ装置75の検査中に、供給機構71の収容箱72に収容された溶解対象物101の残存量が確認され、適正な量となるように補充される。各機器の検査や交換等が完了すると、真空容器4が密閉される。そして、不図示の真空排気装置が作動されて空気が排気された後、Arガスの不活性ガスが供給されることによって、外部環境とは異なる処理環境が処理室3に形成される。
【0059】
この後、誘導加熱コイル77に高周波数の交流電力が供給され、高周波磁界がルツボ76の周囲に生成される。この結果、ルツボ76の側面壁の表面側に強度の磁界が印加されることによって、側面壁の主に表面側が誘導加熱によって加熱され、この表面側の熱量が内側方向に向かって伝導していくことになる。そして、ルツボ76の側面側と底面側との2方向から大きな熱量が伝達され、この熱量で溶解対象物101が均等に加熱される結果、早期に全体が溶解して溶湯15となる。また、溶湯15になった後は、この溶湯15の側面及び下面が大きな熱量で加熱され続けられるため、溶湯15全体が均一な温度に維持される。
【0060】
また、溶湯15が形成されると、溶湯15から高温の輻射熱が放出される。この際、輻射熱の一部は、析出機構10に向かって進行することになるが、析出機構10の旋回駆動部39に進行する輻射熱は、連結支持体38が熱遮蔽板としての機能を発揮することによって旋回駆動部39を直射することがない。また、析出機構10の第1チェーン43a等の駆動力伝達機構に進行する輻射熱は、第1支持部材45が熱遮蔽板としての機能を発揮することによって駆動直伝達機構を直射することがない。さらに、析出機構10のロータリーエンコーダ46に進行する輻射熱は、カバー部材47が熱遮蔽板として機能することによってロータリーエンコーダ46を直射することがない。これによって、析出機構10の内部機器は、輻射熱が直射されることよる熱劣化が防止されることになる。
【0061】
さらに、垂直駆動部31及び旋回駆動部39は、垂直駆動装置35及び旋回駆動装置40を冷却装置36,41の収納容器25,25内に収容することによって、処理室3の高温環境下での運転を回避している。したがって、これらの駆動部31,39は、熱に起因した故障の発生が十分に防止されている。なお、冷却装置36,41は、冷却ガスが冷却配管を流通する冷却水等の冷却媒体で熱交換することによって収納容器25内における収容環境を所定の温度以下に維持している。したがって、溶解対象物を加熱溶解しているときに、冷却ガスが収納容器25等の破損により漏洩しても、冷却水が溶湯15に接触して重大な故障を引き起こすことがない。
【0062】
(基板搬送工程)
上記のようにして所望の処理環境下で溶湯15が形成されることによって、生産の準備が完了すると、図1に示すように、ルツボ装置75を中心として上下対称に配置された基板搬出入機構60,60において析出用基板14の搬送動作が実施される。なお、以降の説明においては、説明の便宜上、一方の基板搬出入機構60における搬送動作を説明する。
【0063】
具体的には、まず、基板搬出入機構60の上流側に配置された不図示の基板セット位置において6枚等の複数の析出用基板14が基板面14aを上向にして直列状態にセットされる。この後、電磁バルブ65の開栓によって圧力調整室61aの排気動作が停止されると共に、第1遮蔽板63が上昇されることによって圧力調整室61aの一端が開口される。そして、不図示の搬送ローラ等の搬送装置によって析出用基板14が直列状態で圧力調整室61aに搬入される。
【0064】
上記の析出用基板14のセット時や搬入時において、隣接する析出用基板14,14が接触や衝突することによって各析出用基板14に衝撃が加わることがある。この際、析出用基板14の搬送方向の前後の側面に一対の突起部14c,14cが形成されているため、セット時や搬送時における接触や衝突は、析出用基板14のコーナー部に衝撃が加わることによるコーナー部の欠け等の破損を防止することができる。この結果、析出用基板14の基板面14aが元の形状を維持するため、所定形状の析出板を確実に得ることができる。
【0065】
圧力調整室61aに全数の析出用基板14が搬入されると、第1遮蔽板63が下降され、圧力調整室61aの両端が閉口された状態にされる。この後、電磁バルブ65が開栓され、排気系66によって圧力調整室61aが真空状態にされる。これによって、析出用基板14に付着していた塵埃が除去される。そして、第2遮蔽板64の上昇によって圧力調整室61aの他端が開口され、これによって圧力量性質61aと予熱室61bとが連通される。
【0066】
この後、圧力調整室61aの析出用基板14が圧力調整室61aに搬送され、全数が圧力調整室61aに搬入されると、第2遮蔽板64の下降によって圧力調整室61aと予熱室61bとが隔離される。なお、圧力調整室61aにおいては、上述の基板セット位置からの析出用基板14の搬入動作が実施される。
【0067】
予熱室61bにおいては、搬送方向の先頭(最上流側)に位置する析出用基板14が第1予熱ヒータ82に対向されている。これによって、予熱ヒータ82に予熱用電力が供給されると、この予熱ヒータ82によって先頭の析出用基板14が所定の予熱温度に加熱される。また、析出用基板14を加熱したときに、析出用基板14から塵埃が飛散したり、析出用基板14内のガスが放出される場合があり、これらの塵埃やガスが処理室3内に流入すると、処理室3の処理環境の汚染物質として作用する。しかしながら、これらの塵埃やガスは、大部分が排気系66に吸引されて装置外部に排出されると共に、残留分の処理室3への流動が第1仕切り部材68や待機室61cの第2仕切り部材69で遮られる。これによって、処理室3の処理環境が析出用基板14の塵埃やガスで汚染されることは殆どない。
【0068】
この後、基板送り機構70が作動され、予熱された先頭の析出用基板14が爪部材71,71に狭持されながら、ほぼ析出用基板14の長さ寸法分の距離を搬送されることによって待機室61cに搬入される。待機室61cに搬送された析出用基板14は、第2予熱ヒータ83によってさらに予熱される。そして、所望の予熱温度となるように微調整されたり、温度低下が防止される。この後、基板送り機構70による搬送動作が繰り返して実施されることによって、待機室61cにおける析出用基板14が順次着脱位置Aに搬送されながら、予熱室61bにおける先頭の析出用基板14が順次待機室61cに搬送される。
【0069】
上記のようにして析出用基板14が基板送り機構70によって搬送されている間、着脱位置Aにおいては、図3に示すように、基板把持機構51が係合部52a,52aを上側に位置した姿勢で待機している。したがって、析出用基板14が着脱位置Aに搬送されると、図7に示すように、析出用基板14の把持部14bが基板把持機構51の係合部52a,52a間の幅よりも狭小化されているため、把持部14bが係合部52a,52a間に確実に挿入される。
【0070】
ここで、図2に示すように、着脱位置Aへの析出用基板14の搬送時に、制御装置100は、第1搬送台84の位置を検出し、この検出結果に基づいて第1搬送台84の位置ズレを検出し、さらに検出した位置ズレに応じて析出機構10を駆動することによって、基板把持機構51を第1搬送台84に対して移動する。
【0071】
具体的には、制御装置100は、図8(a)に示すように、第3撮像装置8cから取得した撮像データ(図示実線)から、基板把持機構51と第1搬送台84とを比較(画像処理)することによって、第1搬送台84の基板把持機構51に対する相対的な高さ方向の位置ズレを検出する。なお、ここでは、図8(a)に示すように、取得した撮像データにおける第1搬送台84の長さ方向の上側エッジ位置Aと基板保持機構51の上側エッジ位置A’とを比較することによって高さ方向の位置ズレを検出する。また、制御装置100は、図8(b)に示すように、第4撮像装置8dから取得した撮像データ(図示実線)から、基板把持機構51と第1搬送台84とを比較(画像処理)することによって、第1搬送台84の基板把持機構51に対する相対的な角度のズレと横方向のズレを検出する。なお、ここでは、図8(b)に示すように、取得した撮像データにおける第1搬送台84の幅方向の上側エッジCと基板把持機構51の上側エッジC’とを比較することによって角度のズレを検出している。また、第1搬送台84の側面エッジBと基板把持機構51の側面エッジB’とを比較することによって横方向のズレを検出している。続いて、制御装置100は、このようにして検出した位置ズレに基づいて制御信号を生成し、当該制御信号を析出機構10に入力することによって、析出機構10を駆動する。この結果、析出機構10の基板把持機構51が析出用基板14を円滑に受け渡しができる位置に移動される。なお、制御装置100は、第1搬送台84の位置ズレが検出されない、もしくは、位置ズレが許容範囲内である場合には、既に基板把持機構51が析出用基板14を円滑に受け渡しができる位置に存在していると判断し、基板保持機構51を第1搬送台84に対して移動することはない。
【0072】
このような基板搬送工程(搬送方法)によれば、熱膨張によって機構部の部材が熱変形した場合であっても、基板保持機構51と第1搬送台84との位置関係を析出用基板14の受け渡しに最適な状態にすることができる。したがって、第1搬送台84が熱変形した場合であっても基板保持機構51と第1搬送台84との間における析出用基板14の受け渡しを円滑に行うことが可能となる。
【0073】
また、このような基板搬送工程によれば、第3撮像装置8c及び第4撮像装置8dによって撮像された第1搬送台84の撮像データを制御装置100において画像処理することによって、第1搬送台84の基板把持機構51に対する相対的な位置ズレが検出される。このため、高温雰囲気に新たなセンサ等を設置することなく、第1搬送台84の位置ズレを検出することができるため、容易に第1搬送台84の位置ズレを検出することができる。
【0074】
また、このような基板搬送工程によれば、第1搬送台84の位置ズレがエッジ位置A〜Cに基づいて検出される。したがって、制御装置100において比較する撮像データ量を最小限にすることができる。このため、容易に第1搬送台84の位置ズレを検出することができる。
【0075】
その後、後述の析出工程が完了した析出用基板14が基板把持機構51から搬送方向に押し出され、第2搬送台85に受け渡される。そして、押し出された前回の析出用基板14は、第2搬送台85を介して真空容器4から分離される。
【0076】
なお、析出用基板14の着脱時において、溶湯15に浸漬される析出用基板14の基板面14aが上側に位置されることによって、析出用基板14が水平状態の姿勢で搬送及び着脱される。これによって、析出用基板14が安定した状態で着脱される。また、図1に示すように、着脱Aが溶湯15の上方から外れた場所に存在するため、例えば着脱時に塵埃や欠けが発生して落下したり、着脱失敗で析出用基板14が落下した場合でも、これらの塵埃が溶湯に入りにくいものとなっている。
【0077】
また、析出後の析出用基板14を基板把持機構51から抜脱したり、この析出用基板14を装置外に搬出する場合においては、図6に示すように、隣接する析出用基板14間において突起部14c,14c同士が当接する。したがって、浸漬時に析出用基板14の側面に側方析出物5が生じていた場合でも、この側方析出物5,5同士が当接することはない。この結果、抜脱時や搬出時に振動や衝撃による外力が析出用基板14,14間に発生しても、この外力が突起物14cに直接的に作用することがない。これによって、側方析出物5が外力により剥離することによって、この側方析出物5と共に、析出板が析出用基板14から剥がれ落ちるという事態を防止することが可能になっている。
【0078】
(析出工程)
両基板搬出入機構60,60において、上記のようにして基板把持機構51への析出用基板14の装着が完了すると、図3に示すように、一方の基板搬出入機構60における着脱位置Aの基板把持機構51が向きを一定にした状態で搬送方向に対して直交方向に移動され、基板把持機構51に保持された析出用基板14が溶湯15に浸漬される。
【0079】
具体的には、基板把持機構51が水平移動機構13によって析出位置Bに向かって水平移動されながら垂直移動機構11によって上昇される。そして、基板把持機構51が溶湯15の上方に位置したときに、旋回機構12が作動されることによって、旋回部材50の旋回中心を半径とした浸漬軌跡で基板把持機構51及び析出用基板14が旋回される。なお、浸漬軌跡は、各機構11,12,13の動作の組合わせにより任意のカーブを描くことができる。
【0080】
上記のようにして溶湯15への析出用基板14の浸漬が行われると、図5に示すように、溶湯15の上方に浸漬機構部37が位置するため、旋回部材50,50を回転自在に支持する軸受機構97が溶湯15からの輻射熱によって高温に加熱される。
【0081】
なお、図3に示すように、旋回時においては、基板把持機構51が係合部52a,52aの向きを搬送方向に一致させた状態で旋回する。したがって、析出用基板14の突起物14cが係合部52a,52a内で搬送方向に移動しないため、析出用基板14が基板把持機構51から脱落することがない。そして、このようにして基板把持機構51に保持された析出用基板14が図示二点鎖線のように基板把持機構51の下側に位置した状態となりながら析出位置Bで溶湯15に浸漬され、析出用基板14の基板面14aに溶湯15の溶解対象物101が析出される。そして、一定時間の経過後に、析出用基板14が溶湯15から引き上げられることによって、析出用基板14の基板面14aに所定厚みの析出板2が形成される。
【0082】
上記旋回部材50の旋回動作は、基板把持機構51が旋回前の位置に復帰するまで継続される。この際、旋回角度は、図2のロータリーエンコーダ46によって検出されているため、基板把持機構51の位置決めが高精度に行われる。この後、旋回機構12が停止されると共に、垂直移動機構11及び水平移動機構13が作動されることによって、基板把持機構51が着脱位置Aに復帰される。この後、上述の基板搬送工程において、次回の析出用基板14が基板送り機構70によって着脱位置Aに搬送されると、この次回の析出用基板14によって今回の析出用基板14が送り出される。
【0083】
また、上記のようにして一方の基板搬出入機構60で析出工程が完了し、次回の析出用基板14が基板把持機構51に装着されるまでの間、他方の基板搬出入機構60における析出動作が同様に実施される。これによって、両基板搬出入機構60,60で搬送された析出用基板14が交互に使用されながら、1台のルツボ装置75で析出板2が順次製造される。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る搬送装置及び搬送方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0085】
例えば、上記実施形態においては、析出機構10の基板把持機構51を移動することによって、第1搬送台84の位置ズレに対応した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、第1搬送台84を上下左右回転移動する移動機構を設置し、この移動機構を用いて第1搬送台84自身を移動することによって、第1搬送台84の位置ズレに対応しても良い。
【0086】
また、上記実施形態においては、析出機構10と第1搬送台84との間における析出用基板14の受け渡しを対象として説明した。しかしながら、本発明は、析出機構10と第1搬送台84との間における析出用基板14の受け渡しのみを対象とするものではなく、例えば、第2搬送台85と基板把持機構51との間における析出用基板14の受け渡しを対象としても良い。この場合には、第2搬送台85の熱変形による位置ズレを検出する撮像装置を設置し、第2搬送台85の位置ズレに応じて第2搬送台85あるいは基板把持機構51を移動することによって、第2搬送台85と基板把持機構51との間における析出用基板14の受け渡しを円滑に行うことが可能となる。なお、このような場合には、本発明の受け渡す側の機構が基板把持機構51とされ、本発明の受け渡される側の機構が第2搬送台85とされる。
【0087】
また、本実施形態においては、撮像装置(第3撮像装置8c及び第4撮像装置8d)によって第1搬送台84を撮像することによって得られた撮像データを画像処理することによって、第1搬送台84の位置ズレを検出した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、所定の基準位置(例えば、基板把持機構51の第2搬送台側85側の側面と第2搬送台の基板把持機構51側の側面)に光ファイバ等を介して接続された発光素子と受光素子を設置し、これらの発光素子及び受光素子を用いて基板把持機構51と第1搬送台84との位置ズレを検出することもできる。
【0088】
また、上記実施形態においては、搬送装置を半導体基板製造装置に備えられるものとして説明した。しかしながら、本発明の搬送装置及び方法は、半導体基板製造装置のみに適用されるものではなく、高温環境下でかつ気密容器内で複数の機構部間によって搬送対象物を搬送する全ての搬送装置に適用することができる。
【0089】
また、本実施形態においては、浸漬機構部37をカーボンによって形成しているが、これに限定されるものではなく、セラミックスで形成されていても良い。
【0090】
また、本実施形態の軸受機構97は、円筒部材99とハウジング98とで旋回自在に支持する構成としたが、これに限定されるものではなく、セラミックス製の軸受を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の一実施形態である搬送装置を備える半導体基板製造装置を平面視した場合における概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態である搬送装置を備える半導体基板製造装置を正面視した場合における概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態である搬送装置を備える半導体基板製造装置を側面視した場合における概略構成図である。
【図4】半導体基板製造装置の信号処理系の一部を示したブロック図である。
【図5】軸受機構の概略構成を示した説明図である。
【図6】析出後の析出用基板の状態を示す説明図である。
【図7】析出用基板を保持した基板把持機構の斜視図である。
【図8】第1搬送台の位置ズレを検出する方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0092】
1 半導体基板製造装置 2 析出板 3 処理室 3a 析出機構収容空間 3b 基板移動空間 3c 溶湯収容空間 4 真空容器 8c 第3撮像装置(撮像装置) 8d 第4撮像装置(撮像装置) 10 析出機構(機構部) 11 垂直移動機構 12 旋回機構 13 水平移動機構 14 析出用基板(搬送対象物) 15 溶湯 16 水平搬送部 17 水平駆動部 23 水平駆動装置 35 垂直駆動装置 40 旋回駆動装置 51 基板把持機構 60 基板搬出入機構(機構部) 84 第1搬送台 85 第2搬送台 100 制御装置(ズレ検出部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温環境下で搬送対象物を横行、昇降あるいは回転することによって搬送し、複数の機構部間において前記搬送対象物の受け渡しを行う搬送装置であって、
受け渡す側の機構部の位置あるいは受け渡される側の機構部の位置を検出する位置検出部と、前記位置検出部の検出結果に基づいて前記受け渡す側の機構部あるいは前記受け渡される側の機構部の所定範囲に対する位置ズレを検出するズレ検出部とを有し、
前記受け渡す側の機構部の位置あるいは前記受け渡される側の機構部の位置が前記所定範囲に対してずれている場合に、前記ズレ検出部の検出結果に応じて前記受け渡される側の機構部を前記受け渡す側の機構部に対して相対移動させる
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記位置検出部は、前記受け渡す側の機構部の位置あるいは前記受け渡される側の機構部を撮像する撮像装置及び画像処理装置であることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記機構部が気密容器内に配設されていることを特徴とする請求項1または2記載の搬送装置。
【請求項4】
高温環境で搬送対象物を横行、昇降あるいは回転することによって搬送し、複数の機構部間において前記搬送対象物の受け渡しを行う搬送方法であって、
受け渡す側の機構部の位置あるいは受け渡される側の機構部の位置を検出し、
該検出結果に基づいて前記受け渡す側の機構部あるいは前記受け渡される側の機構部の所定範囲に対する位置ズレを検出し、
前記受け渡す側の機構部の位置あるいは前記受け渡される側の機構部の位置が前記所定範囲に対してずれている場合に、前記位置ズレの検出結果に応じて前記受け渡される側の機構部を前記受け渡す側の機構部に対して相対移動させる
ことを特徴とする搬送方法。
【請求項5】
前記受け渡す側の機構部あるいは前記受け渡される側の機構部を撮像することによって、前記受け渡す側の機構部の位置あるいは前記受け渡される側の機構部の位置を検出し、
前記受け渡す側の機構部あるいは前記受け渡される側の機構部の撮像データを画像処理することによって、前記受け渡す側の機構部あるいは前記受け渡される側の機構部の所定範囲に対する位置ズレを検出する
ことを特徴とする請求項4記載の搬送方法。
【請求項6】
前記受け渡す側の機構部のエッジ位置あるいは前記受け渡される側の機構部のエッジ位置に基づいて前記受け渡す側の機構部あるいは前記受け渡される側の機構部の所定範囲に対する位置ズレを検出することを特徴とする請求項4または5記載の搬送方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−32529(P2006−32529A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207075(P2004−207075)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】