説明

携帯情報端末

【課題】 動作用電源電圧の低下が生じる蓋然性が高いと想定される状態を事前に検出し、揮発性メモリの記憶内容の維持をより確実に図る携帯情報端末を提供する。
【解決手段】 携帯情報端末1のマイコン4は、電池蓋開検出スイッチ19によって本体の電池蓋が開いたことが検出されると、SDRAM5の記憶内容の内ファイル管理領域の情報をFROM6に転送し、その転送が完了すると本体をパワーオフ状態にして動作用電源を電池2からサブバッテリ12に切り替え、SDRAM5に対するバックアップを所定時間だけ継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作用電源を供給するための電池と、通常動作時にデータの書換えが比較的高頻度で行なわれる揮発性メモリとを備えて構成される携帯情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、以下のような構成が開示されている。即ち、携帯端末10の稼動に伴い装着されていた電池パック2の電力が徐々に消費され、電池残量がある一定値以下になると、ディスプレイに、電池パックが充電または交換の必要な状態にある旨の表示がなされる。そして、ユーザが電池パック2を携帯端末10から取り外すと検出器4がその状態(急激な電圧レベルの低下)を検出し、検出信号をセレクタ5に対して出力する。すると、セレクタ5、CPU1及び揮発性メモリ6に供給する電力を電池パック2からバックアップ電池3側へと切換える。
【特許文献1】特開2003−101624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された技術では、電池パック2が実際に携帯端末10から取り外されることで検出器4による検出電圧レベルが「零」になった場合に、バックアップ電池3への切換えを行っている。また、揮発性メモリ6の記憶内容を不揮発性メモリ7に転送するタイミングは、揮発性メモリ6がバックアップ電池3によってバックアップされる状態に移行した後一定時間が経過した時点で行うようになっている(段落(0019)参照)。
しかし、上記の技術では、バックアップ電池3を供給電源として揮発性メモリ6の記憶内容を不揮発性メモリ7に転送しているので、バックアップ電池3が急速に消耗して揮発性メモリ6の記憶内容が消失してしまうおそれがある。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、動作用電源電圧の低下が生じる蓋然性が高いと想定される状態を事前に検出して、揮発性メモリの記憶内容の維持をより確実に図ることができる携帯情報端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の携帯情報端末によれば、制御手段は、電池蓋開検出手段によって本体の電池蓋が開いたことが検出されると、揮発性メモリの記憶内容の内、少なくともファイル管理領域の情報を不揮発性メモリに転送する。そして、その転送が完了すると、本体をパワーオフ状態にして動作用電源を電池からバックアップ電源に切り替え、揮発性メモリに対するバックアップを所定時間だけ継続する。
即ち、例えばユーザが意図的に本体の電池蓋を開いた場合は、その後に電池を収納部より取外すことが想定される。また、例えば携帯情報端末に外力が加わることによって電池蓋が開いた場合も、続いてその衝撃により電池が脱落することが想定される。従って、上記事象が検出された場合は、先ず、少なくともファイル管理領域の情報を揮発性メモリから不揮発性メモリに転送して、不揮発性メモリのデータファイルを管理するのに必要な情報が消失することを確実に回避することで、揮発性メモリの記憶内容の維持をより確実に図ることができる。また、上記のデータ転送は、動作用電源が電池より供給されている間に行なわれるので、電源が安定している状態で転送を確実に完了させることができる。
【0006】
そして、上記転送が完了した後は、本体をパワーオフ状態にして動作用電源をバックアップ電源に切り替え、揮発性メモリに対するバックアップを所定時間だけ継続する。即ち、携帯情報端末がパワーオフ状態となった後にユーザが端末を再度パワーオンさせることも想定されるので、揮発性メモリのバックアップを継続しておけば、揮発性メモリ上に保持されているデータを直ぐに読み出して、パワーオフさせる前の動作状態を直ちに復帰させることができる。
【0007】
請求項2記載の携帯情報端末によれば、バックアップ電源によりバックアップされるその他のデバイスが、そのバックアップに必要な電流値が揮発性メモリよりも小さく、且つ揮発性メモリよりも低い電圧まで動作可能である場合、制御手段は、バックアップ電源電圧が下限値を下回ると揮発性メモリに対するバックアップを停止させる。斯様に構成すれば、その他のデバイスの記憶内容をバックアップする時間を、より長く確保することができる。
【0008】
請求項3記載の携帯情報端末によれば、前記デバイスを、時刻計時を行うリアルタイムクロックICとする。即ち、リアルタイムクロックICは、一度設定された日時のデータに基づいて時刻計時を継続して行うには、その設定データを極力保持することが望ましい。従って、リアルタイムクロックICを備える携帯情報端末に対して、本発明を有効に適用することができる。
【0009】
請求項4記載の携帯情報端末によれば、制御手段は、電池が収納部に収納されている状態で本体のパワーオフキーが押されると、請求項1のケースと同様に、揮発性メモリ上にある少なくともファイル管理領域の情報を不揮発性メモリに転送し、その転送が完了した後に、本体をスリープ状態にする。その後、所定時間が経過すると、本体のスリープ状態を解除して、ワーク領域の情報を不揮発性メモリに転送させた後、揮発性メモリに対するバックアップを停止させて本体をパワーオフ状態にする。
即ち、ユーザの意思で本体がパワーオフされた場合でも、その後に再度パワーオンされる可能性はあるため、やはり揮発性メモリ上のファイル管理領域情報を不揮発性メモリに転送してから本体をスリープ状態にする。従って、揮発性メモリがバックアップされている所定時間内は、当該メモリ上の情報を迅速に読み出すことができる。また、この場合のデータ転送も、動作用電源が電池より供給されている間に行なわれるので、転送を確実に完了させることができる。
【0010】
その後、所定時間が経過した場合は、揮発性メモリ上のワーク領域情報についても確実にバックアップを図ることを重視し、本体のスリープ状態を解除して、上記情報を不揮発性メモリに転送させた後、揮発性メモリに対するバックアップを停止させる。従って、揮発性メモリがワーク領域としても使用される場合、ファイル管理領域の情報退避を優先的に行なうと共に、揮発性メモリに対するバックアップが維持できなくなる可能性が高くなった時点でワーク領域の情報も退避させることで、重要性に応じて情報のバックアップを段階的に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図1は、例えばバーコードハンディターミナルのような携帯情報端末の電気的構成を、本発明の要旨に係る部分のみ示すものである。携帯情報端末1は、例えば電圧が3.0V〜4.2Vのリチウムイオン電池2の電源を、電源回路3を介して安定化させた3Vの動作用電源(メイン電源)により駆動される構成である。
メイン電源は、マイクロコンピュータ(制御手段)4、SDRAM(揮発性メモリ)5、フラッシュROM(FROM,不揮発性メモリ)6、電圧検出回路7、リアルタイムクロックIC(RTC)8などに供給されている(但し、SDRAMに対しては、ショットキーダイオード9を介して供給されている)。また、メイン電源の電圧は電圧監視回路10により監視されるようになっており、電圧監視回路10は、上記電圧が所定レベルに低下すると(ローバッテリ)、マイコン4に対してローバッテリ検出信号を出力するようになっている。
【0012】
また、電池2の電源は、DC/DCコンバータ11を介して5Vに昇圧され、例えば容量が1.5F程度の電気2重層コンデンサで構成されるサブバッテリ(バックアップ電源)12及びリニアレギュレータ13に供給されている。リニアレギュレータ13は、5V電圧から3.1Vの電圧を生成し、ショットキーダイオード14を介して電圧検出回路7及びRTC8にバックアップ用の電源(BU3V)を供給している。そのバックアップ電源は、PチャネルMOSFET15を介してSDRAM5にも供給されている。
尚、RTC(デバイス)8は、バックアップ電源によって、設定された時刻データ等がバックアップされるようになっているが、バックアップ時の消費電流は約10μAである。これに対して、SDRAM5のデータをリフレッシュしながらバックアップするのに必要な電流は、約800μAとなっている。また、SDRAM5の動作可能電圧の下限は2.7Vであり、RTC8の動作可能電圧の下限は2.7Vよりも更に低い(例えば、1.5V程度)ものとする。
【0013】
FET15のゲートは、抵抗16のソース及びDフリップフロップ17のQバー出力端子に接続されている。そのフリップフロップ17は、マイコン4によりデータ及びクロックが入力され、セット/リセットが行われるようになっている。そして、フリップフロップ17のQ出力端子は、逆方向のダイオード18を介してマイコン4の入力ポートに接続されている。尚、ダイオード18のアノード側はメイン電源にプルアップされており、ダイオード18は、メイン電源の供給が停止されバックアップ電源のみがアクティブとなっている場合に、マイコン4の入力ポートに対する電流の入流を阻止するために配置されている。
フリップフロップ17のクリア端子(負論理)には、電圧検出回路7の検出出力信号が与えられている。電圧検出回路7は、メイン電源の供給が停止された場合に、バックアップ電源電圧を監視し、入力電圧が(3.1−0.3=)2.8Vから2.7Vに低下した場合に、検出出力信号をロウレベルに変化させるようになっている。尚、その信号出力端子は、バックアップ電源にプルアップされている。その時、フリップフロップ17はクリアされるので、FET15はオフとなる。
【0014】
また、携帯情報端末1の筐体には、電池2を筐体内部に収納、取出しする際に開閉される電池蓋(何れも図示せず)があり、マイコン4は、その電池蓋の開閉状態を検出スイッチ(電池蓋開検出手段)19のオン/オフによって認識できるようになっている。また、マイコン4は、通信インターフェイス(I/F)20を介して外部のホスト21との通信が可能となっており、ホスト21よりダウンロードしたデータファイル等は、FROM6に書き込まれるようになっている。
【0015】
携帯情報端末1本体のパワーオン,オフをユーザが切り替えるためのパワースイッチ23の出力信号は、3入力ORゲート24を介して電源回路3に与えられていると共に、マイコン4の入力ポートにも与えられている。ORゲート24の残り2つの入力端子は、マイコン4の出力ポート、RTC8の出力端子に夫々接続されている。パワースイッチ23の押下後、マイコン4が起動すると、マイコン4からORゲート24にハイレベルを出力し、パワーオン状態を維持する。メイン電源の供給を停止してパワーオフさせる場合は、マイコン4からロウレベルを出力するようになっている。尚、RTC8は、携帯情報端末1のタイマー起動等を実現するために電源回路3を制御する。
【0016】
次に、本実施例の作用について図2乃至図6も参照して説明する。図3は、携帯情報端末1が、初期状態でパワーオフしている場合から(a)、パワーオン(b),データファイルのダウンロード(c),パワーオフ時の処理(d)へと移行する間における、FROM6,SDRAM5のメモリイメージを示すものである。
【0017】
図3(a)に示す初期状態では、FROM6には、制御プログラムが記憶されている制御プログラム領域や、その他のデータファイル等が記憶されているデータ領域があり、ファイル管理領域には、これらのデータファイルを管理する情報が記憶されている。そして、図3(b)に示すように携帯情報端末1がパワーオンになると、FROM6のファイル管理領域がSDRAM5に転送される。また、マイコン4が動作を開始すると、SDRAM5の一部はワーク領域として使用される。
また、図3(c)に示すように、ホスト21よりデータファイルをダウンロードすると、FROM6のデータ領域に対するデータファイルの追加又は更新が行われる。それに伴い、SDRAM5側のファイル管理領域の情報が更新される。そして、図3(d)に示すように、携帯情報端末1がパワーオフされる場合は、SDRAM5側のファイル管理領域の情報がFROM6側に転送される。そして、所定時間が経過すると、SDRAM5側のワーク領域の情報もFROM6側に転送される。尚、図3(d)に示すケースの処理については後ほど詳述する。
【0018】
図2は、主としてマイコン4により行われる制御内容を、本発明の要旨に係る部分について示すフローチャートである。尚、携帯情報端末1はパワーオンしている状態を前提とする。マイコン4は、パワースイッチ23がユーザによって操作されパワーオフに移行するか(ステップS3)、検出スイッチ19により本体の電池蓋が開放され、電池2の抜き取りがあると想定されるか(ステップS2)、また、電池2が消耗してメイン電源電圧が低下し、電圧監視回路10により「ローバッテリ」状態が検出されるまで(ステップS1)待機している。
そして、パワーオフに移行する場合は(ステップS3,「YES」)、何れも以下のようにステップS4〜S12を実行する。尚、図4は、パワーオフ時の処理を示すタイミングチャートである。
【0019】
先ず、マイコン4は、図3(d)に示すようにSDRAM5側のファイル管理領域の情報をFROM6側に転送する(ステップS4,図4(a),(b)参照)。例えば、ファイル管理領域の容量が32kBであるとするとデータ転送には600ms程度を要する。それから、マイコン4は、例えばRTC8が1分毎に発生させる割り込みをイネーブルにした上で動作クロックを停止させてスリープモードに移行する(ステップS5)。
マイコン4は、RTC8が発生させる1分毎の割り込みにより一旦起動して割り込み回数をカウントすると再度スリープ状態になる。そして、そのカウント値が「10」になり10分が経過すると(ステップS6,「YES」)、マイコン4はウェイクアップして(ステップS7)SDRAM5のワーク領域の情報をFROM6側に転送する(ステップS8,図4(a),(b)参照)。例えば、ワーク領域の容量が1MB程度であればデータ転送には10秒程度を要する。それから、マイコン4は、フリップフロップ17にロウレベルデータをセットすることでFET15をオフさせ、SDRAM5のバックアップを停止させる(ステップS9,図4(e)参照)。
【0020】
ここで、ステップS6における時間「10分」は、その間に、ユーザがパワースイッチ23を操作して携帯情報端末1をパワーオンさせた場合に、前回のパワーオフ時の直前の状態をそのまま復帰させるリジューム機能を迅速に実行させるために設定している時間である。即ち、上記10分間は、SDRAM5がバックアップされておりワーク領域の情報はそのまま保持されているので、マイコン4は、直ちにそのワーク領域の情報に基づいて動作することができる。
また、ステップS8ではワーク領域の情報をFROM6に転送させているので、SDRAM5のバックアップが停止してSDRAM5上の情報が失われても、再度パワーオンとなった場合にFROM6側に保持されている情報をSDRAM5側に転送すれば、上記と同様にリジューム機能を実現することができる。
【0021】
それから、マイコン4は、ORゲート24にロウレベル信号を出力してメイン電源の供給を停止(オフ)させる(ステップS10)。従って、実質的にはSDRAM5のバックアップはこの時点で停止することになる。その後は、電池2が消耗し切るまで(ステップS11,「YES」)サブバッテリ12を介してRTC8のバックアップは継続される(ステップS12)。そのバックアップ期間は、例えば1ヶ月以上となる(図4(g)参照)。
【0022】
一方、携帯情報端末1がパワーオンしている状態から、マイコン4が、検出スイッチ19により電池蓋が開放されたことを検出した場合は、例えばユーザが意図的に本体の電池蓋を開いた場合や、携帯情報端末1に外力が加わることによって電池蓋が開いた場合などが想定される。そして、この場合は電池2が収納部より取外されたり、或いは外力の衝撃により電池2が収納部より脱落することが考えられ、メイン電源の供給が遮断される状態に移行する可能性が高い。従って、マイコン4は、上記の場合にステップS2で「YES」と判断してステップS13に移行し、ステップS4と同様の処理を行なう(図5(a),(b)参照)。尚、このケースに対応するタイミングチャートを図5に示す。
それから、マイコン4は、電源回路3によるメイン電源の供給をオフしてパワーオフ状態とし(ステップS14)動作用電源をサブバッテリ12に切り替える。その後、実際に電池2が抜き取られたとしても(図5(c)参照)、所定時間はサブバッテリ12によってSDRAM5のバックアップが維持されるので、リジューム機能は有効となる(図5(d)参照)。
【0023】
サブバッテリ12のみによってSDRAM5、RTC8、フリップフロップ17などのバックアップが行われると、サブバッテリ12が次第に消耗してバックアップ電源電圧が次第に低下する。そして、10分程度が経過し、SDRAM5の動作限界電圧である2.7Vを下回ると(ステップS15,「YES」)、その時点でSDRAM5のバックアップは不可能となる。この時、電圧検出回路7の検出出力はロウレベルとなって、フリップフロップ17はリセットされる。すると、FET15はオフとなり、SDRAM5に対するバックアップ電源の供給は停止される(ステップS16)。
【0024】
以降は、サブバッテリ12により、RTC8やフリップフロップ17などのバックアップが行われるが、そのまま1時間程度が経過すると(ステップS17,「YES」)、サブバッテリ12が更に消耗してそれらのバックアップも不能となる(ステップS12)。また、この図5のケースでは、SDRAM5上のデータはファイル管理領域だけしかFROM6に退避できない。従って、FROM6に記憶されている制御プログラムやデータ等を読み出すことは支障ないが、リジューム機能は無効となる。また、「ローバッテリ」状態が検出された場合も(ステップS1,「YES」)、同様にステップS13〜S17を実行する。
【0025】
また、図6は、特殊なケースであり、例えば、携帯情報端末1が落下するなどして衝撃が加わることで、パワーオンの状態から電池2による電源供給が瞬断した後に、電池2が脱落した場合を示すタイミングチャートである。そして、図7は、図6に対応するマイコン4のフローチャートである。
携帯情報端末1に衝撃が加わると、本体の電池収容部内における電極と、電池2の電極との接触状態が一瞬離れることでメイン電源の瞬断が発生する場合がある。この時、電圧監視回路10はローバッテリを検出するが(P1)、マイコン4は、キャッシュ内のデータをSDRAM5に退避させるなどの最低限の処理を行なう。それから、メイン電源の供給断により(P2)マイコン4は一時的に動作を停止する(P3)。
【0026】
その後、メイン電源の供給が再開されるが(P4)、マイコン4は動作停止状態のままであり、RTC8が、例えば1秒間隔で出力する割り込みを発生させると(P5)、マイコン4の動作停止状態は解除されて再起動する(P6,スタート)。すると、マイコン4は、起動要因がRTC8の割り込みによるものか否かを判断し(ステップS21)、RTC8の割り込みによるものであれば(「YES」)、図2に示すステップS13以降の処理を実行する。従って、それ以降の処理は、図5のタイミングチャートと同様になる。
【0027】
以上のように本実施例によれば、マイコン4は、電池蓋開検出スイッチ19によって本体の電池蓋が開いたことが検出されると、SDRAM5の記憶内容の内ファイル管理領域の情報をFROM6に転送し、その転送が完了すると本体をパワーオフ状態にして動作用電源を電池2からサブバッテリ12に切り替え、SDRAM5に対するバックアップを所定時間だけ継続するようにした。従って、FROM6のデータファイルを管理するのに必要な情報が消失することを確実に回避して、SDRAM5の記憶内容の維持をより確実に図ることができる。また、上記のデータ転送は、動作用電源が電池2より供給されている間に行なわれるので、電源が安定している状態で転送を確実に完了させることができる。
そして、上記転送が完了した後は、本体をパワーオフ状態にして動作用電源をサブバッテリ12に切り替え、SDRAM5に対するバックアップを所定時間だけ継続する。即ち、携帯情報端末1がパワーオフ状態となった後にユーザが端末を再度パワーオンさせることも想定されるので、SDRAM5のバックアップを継続しておけば、SDRAM5上に保持されているデータを直ぐに読み出して、パワーオフさせる前の動作状態を直ちに復帰させることができる。
【0028】
また、サブバッテリ12によりバックアップされるRTC8が、そのバックアップに必要な電流値がSDRAM5よりも小さく、且つSDRAM5よりも低い電圧まで動作可能である場合、マイコン4は、サブバッテリ12電圧が下限値を下回るとSDRAM5に対するバックアップを停止させるので、RTC8の記憶内容をバックアップする時間を、より長く確保することができる。そして、RTC8は、一度設定された日時のデータに基づいて時刻計時を継続して行うには、その設定データを極力保持することが望ましい。従って、RTC8を備える携帯情報端末1に対して本発明を有効に適用することができる。
【0029】
更に、マイコン4は、電池2が収納部に収納されている状態で本体のパワーオフキーが押されると、SDRAM5上にあるファイル管理領域の情報をFROM6に転送し、その転送が完了した後に本体をスリープ状態にして、その後所定時間が経過すると、本体のスリープ状態を解除してワーク領域の情報をFROM6に転送させた後、SDRAM5に対するバックアップを停止させて本体をパワーオフ状態にする。
即ち、ユーザの意思で本体がパワーオフされた場合でも、その後に再度パワーオンされる可能性はあるため、やはりSDRAM5上のファイル管理領域情報をFROM6に転送してから本体をスリープ状態にする。従って、SDRAM5がバックアップされている所定時間内は、当該メモリ上の情報を迅速に読み出すことができる。また、この場合のデータ転送も、動作用電源が電池2より供給されている間に行なわれるので、転送を確実に完了させることができる。
【0030】
その後、所定時間が経過すると、SDRAM5上のワーク領域情報についても確実にバックアップを図ることを重視し、本体のスリープ状態を解除して上記情報をFROM6に転送させた後、SDRAM5に対するバックアップを停止させる。従って、SDRAM5がワーク領域としても使用される場合、ファイル管理領域の情報退避を優先的に行なうと共に、SDRAM5に対するバックアップが維持できなくなる可能性が高くなった時点でワーク領域の情報も退避させ、重要性に応じて情報のバックアップを段階的に図ることができる。
【0031】
本発明は上記しかつ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
揮発性メモリは、SDRAM5に限ることなく、DRAM,SRAMなどであっても良い。
不揮発性メモリは、FROM5に限ることなく、その他EEPROMやFe(Ferroelectric)RAMや、M(Magneto resistive)RAMなどでも良い。
バックアップ電源によってバックアップされる他のデバイスは、RTC8に限ることなく、その他例えばタイマICなどであっても良い。
携帯情報端末は、バーコードハンディターミナルに限ることなく、揮発性メモリ,不揮発性メモリを備えているものであれば適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例であり、携帯情報端末の電気的構成を、本発明の要旨に係る部分のみ示す図
【図2】携帯情報端末の主としてマイコンより行われる制御内容を、本発明の要旨に係る部分について示すフローチャート
【図3】携帯情報端末が、初期状態でパワーオフしている場合(a)、パワーオン(b),データファイルのダウンロード(c),パワーオフ時の処理(d)へと移行する間における、FROM,SDRAMのメモリイメージを示す図
【図4】パワーオフ時の処理を示すタイミングチャート
【図5】携帯情報端末より電池が抜き取られる場合の処理を示すタイミングチャート
【図6】メイン電源の瞬断が発生した後、電池が脱落する場合の処理を示すタイミングチャート
【図7】図6のタイミングチャートに対応する処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0033】
図面中、1は携帯情報端末、2は電池、4はマイクロコンピュータ(制御手段)、5はSDRAM(揮発性メモリ)、6はフラッシュROM(不揮発性メモリ)、8はリアルタイムクロックIC(RTC)、12はサブバッテリ(バックアップ電源)、19は検出スイッチ(電池蓋開検出手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作用電源を供給するための電池と、
本体に前記電池を収納するための収納部を開閉する電池蓋が開いたことを検出する電池蓋開検出手段と、
外部よりダウンロードされたデータファイルが書き込まれる不揮発性メモリと、
前記ダウンロード時に、前記不揮発性メモリ上のデータファイルを管理するための管理領域が更新設定される揮発性メモリと、
前記揮発性メモリをバックアップするためのバックアップ電源と、
前記揮発性メモリと前記不揮発性メモリとの間におけるデータ転送を制御すると共に、前記不揮発性メモリに対するバックアップ状態を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記電池蓋開検出手段によって前記電池蓋が開いたことが検出されると、前記揮発性メモリの記憶内容の内、少なくとも前記ファイル管理領域の情報を前記不揮発性メモリに転送し、その転送が完了した後に、本体をパワーオフ状態にして前記動作用電源を前記電池から前記バックアップ電源に切り替え、前記揮発性メモリに対するバックアップを所定時間だけ継続することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項2】
前記バックアップ電源により記憶内容がバックアップされ、そのバックアップに要する電流値が前記揮発性メモリよりも小さく、且つ前記揮発性メモリよりも低い電圧まで動作可能なデバイスを有している場合に、
前記バックアップ電源の電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記制御手段は、前記バックアップ電源の電圧が下限値を下回ると、前記揮発性メモリに対するバックアップを停止させることを特徴とする請求項1記載の携帯情報端末。
【請求項3】
前記デバイスは、時刻計時を行うリアルタイムクロックICであることを特徴とする請求項2記載の携帯情報端末。
【請求項4】
前記揮発性メモリは、通常動作時においてワーク領域としても使用され、
前記制御手段は、前記電池が前記収納部に収納されている状態で本体のパワーオフキーが押された場合、
前記揮発性メモリの記憶内容の内、少なくとも前記ファイル管理領域の情報を前記不揮発性メモリに転送し、その転送が完了した後に本体をスリープ状態にして、
所定時間が経過すると、本体のスリープ状態を解除して、前記ワーク領域の情報を前記不揮発性メモリに転送させた後、前記揮発性メモリに対するバックアップを停止させて本体をパワーオフ状態にすることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の携帯情報端末。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−18428(P2007−18428A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201619(P2005−201619)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】