説明

摩擦係合装置

【課題】他部材との干渉防止のための切欠きが形成される小要素のピストンでも、その変形を有効に抑制できる摩擦係合装置を提供する。
【解決手段】動力伝達装置のケース11側の摩擦板12と回転要素13側の摩擦板14とを押圧方向に押圧する筒状壁部15bを有する環状のピストン15と、ケース11とピストン15の間に介装されてピストン15を軸方向一方側に付勢するリターンスプリング18を有する付勢手段17とを備えた摩擦係合装置において、ピストン15が、筒状壁部15b側をその周方向の一部で切り欠いた第1受圧区間A1とそれ以外の第2受圧区間A2とを有し、付勢手段17は、ピストン15と同心的に配置されたリターンスプリング18を含んで構成され、その一定の周方向長さ当りの押圧方向への曲げ剛性が、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内にてピストン15の第2受圧区間A2の範囲内におけるよりも大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用動力伝達装置に装備される摩擦係合装置、特に他部材との干渉防止のために摩擦板押圧部側を部分的に切り欠いたピストンを備える摩擦係合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の動力伝達装置、例えば自動変速機においては、変速機構を構成する複数のプラネタリーギヤセットのリングギヤ、プラネタリキャリア、サンギヤ等を摩擦係合装置である湿式多板型のクラッチやブレーキで相互に選択的に摩擦係合させたりあるいはケース側に選択的に摩擦係合させたりすることで、複数の変速段を形成するように動力伝達経路の切り換えがなされる。
【0003】
一般に、自動変速機においては、例えば図5に示すように、変速機構100が平行な複数の回転要素101、102、103を有しているので、コンパクト化のためにはこれら回転要素101〜103の間の軸間距離を短縮する必要がある。
【0004】
そこで、例えば変速機ケース104に支持されたブレーキ装置のピストンが変速機構の出力要素であるカウンタドライブギヤの大半を取り囲む略円筒状に形成されるとともに部分的に切り欠かれ、その切欠き部分でカウンタドライブギヤと出力伝動用のカウンタドリブンギヤとが噛合するものがある(例えば、特許文献1参照)。この装置では、薄肉のピストンをプレス加工により有底筒状にすることで比較的高強度のピストンとし、皿ばね状のリターンスプリングを用いることで軸長の短縮化を可能にしている。
【0005】
他の摩擦係合装置として、変速機構を構成する平行軸歯車組の軸間距離を短縮すべく、摩擦板に隣接する大径のC字形スナップリングの切欠き部を主副変速機間の伝動歯車対を噛合させるためのケース開口部に合致させるとともに回り止めするようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、ピストンをブレーキ解放側に復帰させるリターンスプリングの環状のリテーナを部分的に切り欠いてピストン前部のブレーキ押圧部を貫通させるようにしたり、摩擦板である環状のブレーキプレートの外歯のスプラインを部分的に欠歯させてそこにリターンスプリングを配置したりすることで、圧縮コイルばねを用いながらも大径化を抑えるようにしたものが知られている(例えば、特許文献3、4参照)。
【特許文献1】特開2006−144879号公報
【特許文献2】特開2000−81118号公報
【特許文献3】特開2007−170442号公報
【特許文献4】特開2007−170440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来の摩擦係合装置にあっては、ピストンを解放位置側に付勢する手段が、ピストンに対し周方向に等間隔に配置された圧縮コイルばね(圧縮コイルばね群)や周方向の各位置で同等のばね剛性および板の曲げ剛性を有する皿ばね状のリターンスプリングで構成されていた。
【0008】
そのため、摩擦係合装置のピストンが駆動輪側への出力要素となるカウンタドライブギヤ等の他部材(例えばカウンタドリブンギヤ)と干渉するのを避けるべく、ピストンのスカート状の環状押圧部を切り欠く必要があるとき、複数のリターンスプリングがピストンの環状押圧部に沿って周方向等間隔に配置されていたり周方向の各位置で同等のばね剛性および板の曲げ剛性を有する皿ばね状のリターンスプリングで構成されていたりする構成では、摩擦板側からの反力がなく押圧方向の油圧力のみがかかるピストンの切欠き部分に応力が集中し易くなり、ピストンをより小要素にすると、ピストンが変形してしまうおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、小要素化されたピストンに他部材との干渉を防止するための切欠きが形成される場合でも、そのピストンの不要な変形を抑えることのできる、小型の動力伝達装置に好適な摩擦係合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る摩擦係合装置は、上記目的達成のため、(1)ケースに支持された一方側の摩擦板と、ケースに対し回転可能な回転要素に支持された他方側の摩擦板と、前記ケースに摺動可能に収納されて前記ケースとの間に環状の油圧室を形成する受圧部と該受圧部からの推力により前記一方側の摩擦板および前記他方側の摩擦板を軸方向一方側の押圧方向に押圧する押圧部とを有する環状のピストンと、前記ケースと前記ピストンの間に介装され、前記ピストンを軸方向のいずれか一方側に付勢する弾性部材を有する付勢手段と、を備えた摩擦係合装置において、前記ピストンが、前記押圧部側をその周方向の一部で切り欠いた第1受圧区間と該第1受圧区間以外の第2受圧区間とを有し、前記付勢手段は、前記環状のピストンと同心的に配置された環状体を含んで構成され、該環状体の一定の周方向長さ当りの前記押圧方向への曲げ剛性が、前記ピストンの前記第1受圧区間の範囲内にて前記ピストンの前記第2受圧区間の範囲内におけるよりも大きくなっていることを特徴とする。
【0011】
この構成により、ピストンは、押圧部が切り欠かれていない第2受圧区間では油圧室側の油圧力とこれに対抗する摩擦板側からの反力とを受けることになるが、押圧部が部分的に切り欠かれた第1受圧区間では油圧室側の油圧力を受けるものの摩擦板側からの反力を直接受けないことになり、そのままではピストンの第1受圧区間に撓みや応力の集中が生じ易くなる。しかし、ピストンの第1受圧区間においては、付勢手段を構成しピストンに係合する環状体の押圧方向への曲げ剛性が第2受圧区間のそれより大きいことから、第1受圧区間の受圧部における撓みが高曲げ剛性の環状体によって抑制される補強構造となり、第1受圧区間における過度の歪みや応力の集中が抑制されることになる。
【0012】
上記(1)に記載の構成を有する摩擦係合装置においては、(2)前記付勢手段が、環状の板ばねによって構成されているのが好ましい。
【0013】
この構成により、環状の板ばねの形状設定によって第1受圧区間と第2受圧区間とで板ばねの一定の周方向長さ当りの押圧方向への曲げ剛性を容易に相違させることができるとともに、この環状の板ばねにピストンの復帰力を発揮させることで、軸方向長さの短い装置にできる。
【0014】
上記(2)に記載の構成を有する摩擦係合装置においては、(3)前記環状の板ばねが、前記環状のピストンと同心的に配置された環状板部および該環状板部の半径方向に延びる複数の撓み腕部を有し、前記環状板部および前記複数の撓み腕部によって前記付勢手段の前記環状体および前記弾性部材が構成されているのがより好ましい。
【0015】
この構成により、環状体の環状板部および複数の撓み腕部のうち少なくとも一方を第1受圧区間と第2受圧区間とでは相違する形状として、その環状体の一定周方向長さ当りの押圧方向への曲げ剛性を容易に相違させることができるとともに、その低曲げ剛性部分と高曲げ剛性部分とを容易に識別できることになる。
【0016】
上記(3)に記載の構成を有する摩擦係合装置においては、(4)前記環状の板ばねの環状板部が、前記ピストンの前記第1受圧区間の範囲内にて前記ピストンの前記第2受圧区間の範囲内におけるよりも半径方向に幅広くなっていてもよい。
【0017】
この場合、環状体の一定周方向長さ当りの押圧方向への曲げ剛性を容易に相違させることができるとともに、その低曲げ剛性部分と高曲げ剛性部分とを容易に識別できることになる。
【0018】
上記(3)に記載の構成を有する摩擦係合装置においては、(5)前記環状の板ばねの複数の撓み腕部が、前記ピストンの前記第1受圧区間の範囲内にて前記ピストンの前記第2受圧区間の範囲内におけるよりも周方向に幅広くなっていてもよい。
【0019】
この場合、環状体の一定周方向長さ当りの押圧方向への曲げ剛性を容易に相違させることができるとともに、その低曲げ剛性部分と高曲げ剛性部分とを容易に識別できることになる。
【0020】
上記(1)〜(5)に記載の構成を有する摩擦係合装置においては、(6)前記ピストンが、プレス加工された板金部材と、該板金部材に装着されたシール部材とによって構成されているのが好ましい。
【0021】
この構成により、薄肉化が容易になり、比較的大径の環状部品でありながらその製造コストを低減できる。
【0022】
上記(6)に記載の構成を有する摩擦係合装置においては、(7)前記ピストンの板金部材が、前記受圧部に対応する底壁部と、該底壁部から前記押圧方向に屈曲するように形成された略円筒状の筒状壁部と、を有し、前記筒状壁部の周方向の一部が略U字形状に切り欠かれることで、前記第1受圧区間における前記筒状壁部の軸方向の長さが前記第2受圧区間における前記筒状壁部の軸方向の長さより短くなっているのが好ましい。
【0023】
この場合、第1受圧区間においても底壁部から筒状壁部への曲げ部が存在することになり、ピストンを小要素化する場合に所要の曲げ剛性を得ることができる。
【0024】
なお、環状体の環状板部および複数の撓み腕部のうち少なくとも一方を第1受圧区間内で第2受圧区間内よりも高剛性にする場合、環状体の円周方向で反対側に位置するよう、該環状板部および複数の撓み腕部のうち少なくとも一方の高剛性部分を対向配置すると、油圧受圧時および復帰時のいずれにおいても、ピストンに軸線の傾きが生じ難くなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ピストンの押圧部の一部が切り欠かれた第1受圧区間で、付勢手段を構成する環状体の高曲げ剛性部分によってピストンの押圧方向への撓みが抑制され、ピストンの第1受圧区間における応力の集中が抑制されるようにしているので、小要素化されたピストンに他部材との干渉を防止するための切欠きが形成される場合でも、そのピストンの不要な変形を抑えることのできる、小型の動力伝達装置に好適な摩擦係合装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1ないし図3は、本発明に係る摩擦係合要素の第1の実施の形態を示す図であり、図1は、第1の実施の形態に係る摩擦係合要素の模式的な縦断面図、図2は第1の実施の形態の摩擦係合装置におけるピストンとその内方を切欠き部側から見た要部横断面図、図3は第1の実施の形態の摩擦係合装置を含む自動変速機の部分断面図である。
【0028】
まず、その構成について説明する。
【0029】
図1に模式的に示す本実施形態の摩擦係合装置10は、動力伝達装置である自動変速機内に設けられたものである。なお、自動変速機の全体の概略構成は、図5に示した公知のものと同様であり、車両のエンジンからの動力を変速機ケース内に収納された複数の回転要素を介して変速しつつ駆動車輪側に動力を伝達することができ、その変速用の複数の摩擦係合要素のうちの1つの変速用ブレーキが摩擦係合装置10となっている。
【0030】
摩擦係合装置10は、筒状のケース11と、このケース11の一端側(図1中の右端側)の内周部にスプライン嵌合することでケース11に対し軸方向変位可能にかつ回転方向には一体的に支持された複数の一方側の摩擦板12と、自動変速機内に設けられた複数のうちいずれか1つの回転要素13に軸方向変位可能にかつ回転方向には一体的に支持された他方側の摩擦板14と、シール部材16a、16bが装着されてケース11に摺動可能に収納された環状のピストン15と、ピストン15を図1中の左方側(ブレーキ解放側)に付勢するようケース11とピストン15の間に介装された付勢手段17と、を備えている。
【0031】
複数の一方側の摩擦板12はケース11に設けられたストッパ11aによって軸方向一方側への変位を所定位置で規制されるようになっており、一方側の摩擦板12と他方側の摩擦板14は、複数の一方側の摩擦板12によって他方側の摩擦板14を挟むように交互に配置されている。また、回転要素13は、自動変速機内の動力伝達経路の一部を形成するものである(詳細は後述する)。
【0032】
ピストン15は、ケース11との間に環状の油圧室20を形成する環状ピストン部15a(受圧部)と、この環状ピストン部15aからの推力によって一方側の摩擦板12および他方側の摩擦板14を摩擦係合させるように、複数の一方側の摩擦板12のうちピストン15に最も近接する1枚を軸方向一方側である押圧方向に押圧する筒状壁部15b(押圧部)とを有している。また、ケース11には図示しないリニアソレノイドバルブ等の油圧制御バルブからの作動油圧を油圧室20に導入する油路11hが形成されている。
【0033】
この摩擦係合装置10においては、油圧室20内の油圧が高いときにはピストン15が一方側の摩擦板12および他方側の摩擦板14を互いに圧接させるよう押圧して所定の摩擦係合状態とし、油圧室20内の油圧が低いときには一方側の摩擦板12および他方側の摩擦板14の摩擦係合状態を解くようになっている。このような摩擦係合動作やその解除動作自体は公知のものと同様であるので、詳述しない。
【0034】
図2に示すように、ピストン15には筒状壁部15b側をその周方向の一部で所定角度範囲にわたって切り欠いた切欠き部15cが形成されている。これによりピストン15は、筒状壁部15b側に切欠き部15cが形成された第1受圧区間A1と、この第1受圧区間A1以外の第2受圧区間A2とを有している。
【0035】
より具体的には、図3に示すように、ピストン15は、プレス加工された板金部材で構成されており、その板金部材にゴム弾性材料が加硫接着されることで、シール部材16a、16bがオイルシール機能を持つ一体膜状のシール部材16としてピストン15に装着されている。
【0036】
さらに、ピストン15の主要部をなす板金部材は、環状ピストン部15aをその内周側の底壁部としたものであり、筒状壁部15bは環状ピストン部15aの底壁部の外周から押圧方向(図3中右側)に屈曲するように連続して形成された略円筒状の押圧部となっている。そして、この筒状壁部15bの周方向の一部が略U字形状に切り欠かれることで、第1受圧区間A1における筒状壁部15b(筒状壁部)の軸方向の長さが第2受圧区間A2における筒状壁部15bの軸方向の長さより短くなっている。
【0037】
また、付勢手段17は、環状のピストン15と同心的に配置された環状の歯付き皿ばね状のリターンスプリング18(環状体、環状の板ばね)と、Cリング等のスナップリングからなるストップリング19とを含んで構成されている。
【0038】
リターンスプリング18は、環状のピストン15と同心的に配置された環状板部18aと、その環状板部18aの半径方向に延びるとともに周方向に離間する複数の台形の撓み腕部18bとを有している。また、環状板部18aは環状体をなすリターンスプリング18の一部として略円環状に形成されており、複数の撓み腕部18bはそれぞれ環状板部18aから放射方向に突出する片持ちの板ばね(弾性部材)となっている。
【0039】
ここで、環状体をなすリターンスプリング18の一定の周方向長さ当りの前記押圧方向への曲げ剛性は、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内でピストン15の第2受圧区間A2の範囲内よりも大きくなっている。
【0040】
具体的には、図2に示すように、環状の板ばねであるリターンスプリング18の環状板部18aが、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内においてピストン15の第2受圧区間A2の範囲内におけるよりも半径方向に幅広く、例えば撓み腕部18bの全長分に及ぶ程度に幅広くなっており、撓み腕部18bがピストン15の第1受圧区間A1の範囲内においてその全範囲に及ぶ程度に周方向に幅広くなっている。なお、図2中に仮想線(二点鎖線)で示すように、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内においてもリターンスプリング18を歯付形状として、リターンスプリング18の環状板部18aが、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内においてピストン15の第2受圧区間A2の範囲内におけるよりも半径方向に幅広く、複数の撓み腕部18bが、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内においてピストン15の第2受圧区間A2の範囲内におけるよりも周方向に幅広くなるようにしてもよい。
【0041】
この場合、ピストン15が一方側の摩擦板12および他方側の摩擦板14を押圧するとき、リターンスプリング18の複数の撓み腕部18bには撓みが生じるが、第1受圧区間A1における単位角度範囲当りの撓み腕部18bのばね定数は、第2受圧区間A2における単位角度範囲当りの撓み腕部18bのばね定数より大きくなる。
【0042】
また、ピストン15に加わる油圧が解放されているとき、第1受圧区間A1の撓み腕部18bに生じる単位角度範囲当りの反力は、第2受圧区間A2の撓み腕部18bに生じる単位角度範囲当りの反力と同等な程度に、あるいはそれよりわずかに小さい値に設定されている。一方、ピストン15にブレーキを係合させる油圧が加えられ、リターンスプリング18の複数の撓み腕部18bがピストン15により撓められるとき、第1受圧区間A1と第2受圧区間A2での撓み腕部18bのばね定数の相違から、第1受圧区間A1の撓み腕部18bに生じる単位角度範囲当りの反力は、第2受圧区間A2の撓み腕部18bに生じる単位角度範囲当りの反力より十分に大きくなる。
【0043】
前述のように本実施形態の摩擦係合装置10は、図3に部分断面を示す自動変速機の変速機構内に設けられている。この変速機構は、複数のプラネタリーギヤセットを備えた遊星歯車式のギヤトレーンで構成されたものであるが、同図にはその第1のプラネタリーギヤセットの周辺のみを図示している。
【0044】
図3に示す変速機構は、図外のタービンランナからの回転を入力する変速機入力軸31と、変速機入力軸31にスプライン結合したサンギヤ32と、サンギヤ32の周囲に複数設けられたピニオン33と、複数のピニオン33をサンギヤ32に噛合させた状態で自転可能にかつ周方向等間隔に保持するキャリア34と、複数のピニオン33に噛合するよう複数のピニオン33を取り囲むとともに回転要素13に支持されたリングギヤ35とを備えている。
【0045】
回転要素13は、上述のように、摩擦係合装置10の一方側の摩擦板12および他方側の摩擦板14が摩擦係合するときには、ブレーキとして機能する摩擦係合装置10によってケース11を介して自動変速機のケース1に締結される。したがって、リングギヤ35は回転要素13および摩擦係合装置10を介して選択的に自動変速機のケース1側からの拘束によってその回転を制限されるようになっている。
【0046】
そして、リングギヤ35の回転が拘束されたときには、リングギヤ35内で変速機入力軸31からの入力回転を受けたサンギヤ32の回転に応じてピニオン33が自転および公転し、キャリア34が入力回転を所定減速比で減速した回転を第2のプラネタリーギヤセット側の回転軸36に出力する。
【0047】
また、摩擦係合装置10の摩擦係合状態が解けてリングギヤ35が回転可能になるときには、リングギヤ35の回転により変速機入力軸31の入力回転に対するピニオン33の自転速度が減るとともにピニオン33の公転速度が増し、キャリア34から第2のプラネタリーギヤセット側の回転軸36に出力する回転数が増加するようになっている。このような遊星歯車式の変速機構の動作自体は、公知のものと同様である。
【0048】
ピストン15の内方には、図外の駆動輪側への出力要素となるカウンタドライブギヤ37が配置されており、これに噛合するカウンタドリブンギヤ38がピストン15の切欠き部15cを通してカウンタドライブギヤ37に噛合するようになっている。また、ピストン15の周壁の一部には切り起こされた回り止め用ストッパ部15sが設けられており、この回り止め用ストッパ部15sによりピストン15はケース11に対して軸方向移動のみ可能な状態で回転を規制されるようになっている。
【0049】
リターンスプリング18の環状板部18aは、プレス加工により鉤形断面の段付き形状に形成された環状ピストン部15aの外周縁部と筒状壁部15bの基端部との間の環状段付き面部15eに対し皿ばね状の外周縁部で係合しており、リターンスプリング18の複数の撓み腕部18bの内周側端部は、カウンタドライブギヤ37の側方に近接するケース11の円筒状のボス部11bの外周に、ストップリング19によって係止されている。
【0050】
なお、摩擦板12に近接するピストン15の筒状壁部15bの端部には、半径方向外側に曲げ加工されたフランジ15fとなっており、ピストン15はこのフランジ15f側から環状ピストン部15a側へと順次縮径されている。勿論、ピストン15の切欠き部15cが形成される円周方向の一部の範囲内には、フランジ15fは形成されず、フランジ15fは第2受圧区間A2の略全範囲に及ぶ略C字形状となっている。
【0051】
また、本実施形態では、リターンスプリング18の環状ピストン部15aおよび複数の撓み腕部18bのうち一方を第1受圧区間A1内において第2受圧区間A2内におけるよりも高剛性にして高剛性部分18cを設けるが、高剛性部分18cはリターンスプリング18の円周方向で180度位相がずれた位置に位置しつつ互いに対向するように、リターンスプリング18の中心を挟んで対向配置されており、ピストン15の油圧受圧時およびリターンスプリング18からの復帰力による復帰時のいずれにおいても、ピストン15に軸線の傾きが生じ難く、かつ、リターンスプリング18のピストン15内への組込みが180度回転した位置でも可能になるようになっている。
【0052】
複数の撓み腕部18bの間の略U時形状の複数の歯間溝部18dは図2中では高剛性部分18cの両側で幅狭くなり、他の部分ではそれより幅広くなっている。
【0053】
次に、作用について説明する。
【0054】
上述のように構成された本実施形態の摩擦係合装置10では、図示しない油圧制御バルブから油圧室20内に選択的に係合油圧が供給され、あるいは、その油圧が解放される。
【0055】
そして、油圧室20内に係合油圧が供給されたときには、ピストン15によって一方側の摩擦板12および他方側の摩擦板14に押圧力が加えられてこれら摩擦板12、14が摩擦係合状態(締結状態)となる。一方、油圧室20内の油圧が解放されたときには、一方側の摩擦板12および他方側の摩擦板14の摩擦係合状態が解除される。
【0056】
このような摩擦係合装置10の係合時には、ピストン15は、筒状壁部15bが存在する第2受圧区間A2では油圧室20側からの油圧による等分布の荷重と圧接状態の摩擦板12、14からの反力を受ける。一方、ピストン15の筒状壁部15b側の周壁の一部が略U字形に切り欠かれて切欠き部15cが形成されている第1受圧区間A1では、ピストン15が油圧室20側からの油圧による等分布の荷重を受けるが、圧接状態の摩擦板12、14からの反力を直接に受けない。したがって、ピストン15の第2受圧区間A2側の環状ピストン部15aおよび筒状壁部15bによって両持ち支持された第1受圧区間A1内の梁状の環状ピストン部15aおよび短軸長の筒状壁部15bに油圧力による押圧方向への曲げや応力の集中が生じ易くなる。
【0057】
これに対し、本実施形態では、リターンスプリング18が、第1受圧区間A1における単位角度範囲当りの撓み腕部18bのばね定数を、第2受圧区間A2における単位角度範囲当りの撓み腕部18bのばね定数より大きくしたものとなっていることから、切欠き部15cが存在するものの、リターンスプリング18を内方に重ねて配置したピストン15の剛性が相当に均一化される。したがって、第1受圧区間A1内における環状ピストン部15aおよび短軸長の筒状壁部15bの変形が有効に抑制され、第1受圧区間A1内における応力の集中が抑制されることになり、ピストン15がより小径のものとなっても、切欠き部15c付近に過度な歪みや変形が生じることがない。
【0058】
また、本実施形態では、付勢手段17が、環状の板ばねからなるリターンスプリング18を主要部としていることから、そのリターンスプリング18の形状設定によって第1受圧区間A1と第2受圧区間A2とで、その板ばねの一定の周方向長さ当りの押圧方向への曲げ剛性を容易に相違させることができ、このリターンスプリング18をピストン15の復帰力を発揮する板ばねとすることで、摩擦係合装置10の軸方向長さを短縮できる。
【0059】
さらに、リターンスプリング18の環状板部18aおよび複数の撓み腕部18bによって、付勢手段17が復帰力発生用の複数の弾性部材とそれらを支持する環状体を有する一体の板ばねに構成されているので、リターンスプリング18の環状板部18aおよび複数の撓み腕部18bのうち少なくとも一方を第1受圧区間A1と第2受圧区間A2とでは相違する形状として、そのリターンスプリング18の一定周方向長さ当りの押圧方向への曲げ剛性を容易に相違させることができるとともに、その低曲げ剛性部分と高曲げ剛性部分とを容易に識別できる。
【0060】
特に、リターンスプリング18の環状板部18aが、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内においてピストン15の第2受圧区間A2の範囲内におけるよりも半径方向に幅広くなっており、リターンスプリング18の複数の撓み腕部18bが、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内においてピストン15の第2受圧区間A2の範囲内におけるよりも周方向に幅広くなっているので、リターンスプリング18の一定の周方向長さ当りの押圧方向への曲げ剛性を第1受圧区間A1の範囲と第2受圧区間A2の範囲とで容易に相違させることができ、その高剛性部分18cを容易に識別でき、リターンスプリング18の組込み作業性が容易になる。
【0061】
また、ピストン15が、プレス加工された板金部材にシール部材16を一体に装着して構成されているので、薄肉化が容易になるとともに、ケース11内への組付け工数が低減され、装置の組立て作業の容易化と、比較的大径の環状部品でありながら軽量化と製造コストの低減が可能になる。
【0062】
しかも、第1受圧区間A1内でカウンタドライブギヤ37のカウンタドリブンギヤ38との噛合を可能にする切欠き形状を確保しながら、第1受圧区間A1において、環状ピストン部15aから筒状壁部15bへの曲げ部がリターンスプリング18の高剛性部分18cに沿って存在することになり、ピストン15を小要素化する場合にあってもその筒状壁部15bの切欠き付近における所要の曲げ剛性を得ることができる。
【0063】
このように、本実施形態の摩擦係合装置によれば、ピストン15の押圧部の一部が切り欠かれた第1受圧区間A1で、付勢手段17を構成するリターンスプリング18の高曲げ剛性部分18cによってピストン15の押圧方向への撓みが抑制され、ピストン15の第1受圧区間A1における応力の集中が抑制されるようにしているので、小要素化されたピストン15に他部材との干渉を防止するための切欠き部15cが形成される場合でも、そのピストン15の不要な変形や応力集中を抑えることのできる、小型の動力伝達装置に好適な摩擦係合装置を提供することができる。
【0064】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る摩擦係合装置のピストンとその内方を切欠き部側から見た要部横断面図である。
【0065】
なお、本実施形態の摩擦係合装置は、第1の実施の形態とは付勢手段の構成を相違させたもので、その付勢手段を構成するリターンスプリングの形状に応じて、ピストンの内周側の形状の一部を相違させたものとなっているが、他の構成については第1の実施の形態と同様であるので、同様な構成については図1から図3に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、以下、相違点についてのみ詳述する。
【0066】
本実施形態においては、ケース11とピストン15の間に介装されてピストン15をブレーキ解放側に付勢する付勢手段57が、環状のピストン15と同心的に配置された環状の歯付き皿ばね状のリターンスプリング58(環状体、環状の板ばね)を含んで構成されている。このリターンスプリング58は上述の実施形態におけるリターンスプリング18とは歯の向きが半径方向の内外で逆向きになっている。
【0067】
このリターンスプリング58は、環状のピストン15と同心的に配置された環状板部58aと、その環状板部58aの半径方向外側に延びるとともに周方向に離間する複数の台形の撓み腕部58b(弾性部材)とを有している。また、環状板部58aは環状体をなすリターンスプリング58の一部として略円環状に形成されており、複数の撓み腕部58bはそれぞれ環状板部58aから放射方向外側に向かって突出する片持ちの板ばねとなっている。
【0068】
また、リターンスプリング58の一定の周方向長さ当りの油圧作用方向(押圧方向)への曲げ剛性は、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内でピストン15の第2受圧区間A2の範囲内よりも大きくなっている。
【0069】
すなわち、図4に示すように、環状の板ばねであるリターンスプリング58の環状板部58aが、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内においてピストン15の第2受圧区間A2の範囲内におけるよりも半径方向に幅広く、例えば撓み腕部58bの全長に近い程度に幅広くなっており、撓み腕部58bがピストン15の第1受圧区間A1の範囲内においてその大半の範囲に及ぶ程度に周方向に幅広くなって、高剛性部分58cが形成されている。なお、図4中の高剛性部分58cに仮想線で示すように、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内においてもリターンスプリング58を歯付形状として、リターンスプリング58の環状板部58aが、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内において第2受圧区間A2の範囲内におけるよりも半径方向に幅広く、複数の撓み腕部58bが、ピストン15の第1受圧区間A1の範囲内においてピストン15の第2受圧区間A2の範囲内におけるよりも周方向に幅広くなるようにしてもよい。
【0070】
図4に示すリターンスプリング58の場合、ピストン15が一方側の摩擦板12および他方側の摩擦板14を押圧するときにはリターンスプリング58の複数の撓み腕部58bに撓みが生じるが、第1受圧区間A1における単位角度範囲当りの撓み腕部58b、すなわち高剛性部分58cのばね定数は、第2受圧区間A2における単位角度範囲当りの撓み腕部58bのばね定数より大きくなる。
【0071】
また、ピストン15に加わる油圧が解放されているときに、第1受圧区間A1の撓み腕部58bに生じる単位角度範囲当りの反力は、第2受圧区間A2の撓み腕部58bに生じる単位角度範囲当りの反力と同等な程度に、あるいはそれよりわずかに小さい値に設定されている。
【0072】
一方、ピストン15にブレークを係合させる油圧が加えられ、リターンスプリング58の複数の撓み腕部58bがピストン15により撓められるときには、第1受圧区間A1と第2受圧区間A2での撓み腕部58bのばね定数の相違から、第1受圧区間A1の撓み腕部58bに生じる単位角度範囲当りの反力は、第2受圧区間A2の撓み腕部58bに生じる単位角度範囲当りの反力より十分に大きくなるようになっている。
【0073】
なお、図4においては、リターンスプリング58の一対の高剛性部分58cの外端縁は、リターンスプリング58の外周半径より小さい半径で湾曲しており、ピストン15に係合油圧が加わるときに、リターンスプリング58の一対の高剛性部分58cの中央部が両端部(リターンスプリング18の外周方向)より先にピストン15に圧接するようになっている。また、他の複数の撓み腕部58bの外端縁はリターンスプリング58の外周半径と同一の半径で湾曲していてもよいし、高剛性部分58cの外端縁と同様により小さい半径で湾曲していてもよい。
【0074】
また、ピストン15の周方向における切欠き部15cの両端側近傍には、環状段付き面部15eおよび筒状壁部15bのうち少なくとも一方側からリターンスプリング側に突出した、リターンスプリング58の回転方向の位置決めおよびピストン補強用の一対の凸部15gが設けられている。
【0075】
本実施形態においても、摩擦係合装置10の係合時に、ピストン15の第2受圧区間A2側の環状ピストン部15aおよび筒状壁部15bによって両持ち支持された第1受圧区間A1内の梁状の環状ピストン部15aおよび短軸長の筒状壁部15bに油圧力による押圧方向への曲げや応力の集中が生じ易くなるのを防止すべく、リターンスプリング18が、第1受圧区間A1における単位角度範囲当りの撓み腕部18bのばね定数を、第2受圧区間A2における単位角度範囲当りの撓み腕部18bのばね定数より大きくしたものとなっているので、第1受圧区間A1内における環状ピストン部15aおよび短軸長の筒状壁部15bの変形が有効に抑制され、第1受圧区間A1内における応力の集中が抑制されることになり、上述の第1の実施の形態と同様な効果が得られる。
【0076】
なお、上述の各実施形態では、リターンスプリング18、58を歯付円環状の板ばねによって構成するものとしたが、本発明の付勢手段は、全体を板ばねで構成するものである必要はなく、高剛性の環状部材(筒状を含む)にその半径方向に延びる複数の板状もしくは腕状(板状以外の半径方向に一定の長さを有する形状)の弾性部材を装着したもの、あるいは、高剛性の環状部材がその半径方向に突出する複数の支持腕部を有し、それらの支持腕部にピストンを押圧する圧縮コイルばねを装着したようなものであってもよい。
【0077】
また、板ばねにより付勢手段を構成する場合に、環状部材に内外周一方側の歯状の撓み腕部を設けていたが同心の内方側および外方側の環状部材を複数の撓み腕部材で一体に連結したようなものであってもよい。
【0078】
さらに、上述の各実施形態においては、動力伝達装置を自動変速機としていたが、それと併用される副変速機やトランスファー装置のような動力伝達装置であって複数の平行軸とそのいずれかの軸線上に配置される摩擦係合要素とを装備するものであれば、本発明を適用できる。
【0079】
また、上述の各実施形態においては、リターンスプリングをピストンの復帰用の付勢手段としていたが、ピストンをブレーキ係合側またはクラッチ係合側に付勢する付勢手段としてもよく、その場合には、例えば図4に示すような外側に突出する歯を有する歯付き皿ばね状の板ばねがピストンとケースの間に画成される油圧室内に配置され、リターンスプリング58の回転方向の位置決めおよびピストン補強用の一対の凸部15gが環状ピストン部15aの油圧室20側に形成されることになる。
【0080】
以上説明したように、本発明に係る摩擦係合装置は、小要素化されたピストンに他部材との干渉を防止するための切欠きが形成される場合でも、そのピストンの不要な変形を抑えることのできる、小型の動力伝達装置に好適な摩擦係合装置を提供することができるという効果を奏するものであり、車両用動力伝達装置に装備される摩擦係合装置、特に他部材との干渉防止のために摩擦板押圧部側を部分的に切り欠いたピストンを備えている摩擦係合装置全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る摩擦係合要素の模式的な縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の摩擦係合装置におけるピストンとその内方を切欠き部側から見た要部横断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の摩擦係合装置を含む自動変速機の部分断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る摩擦係合装置のピストンとその内方を切欠き部側から見た要部横断面図である。
【図5】従来の車両用の動力伝達装置における平行軸歯車の軸配置の説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1 自動変速機のケース
10 摩擦係合装置
11 ケース
11b ボス部
11h 油路
12 摩擦板(一方側の摩擦板)
13 回転要素
14 摩擦板(他方側の摩擦板)
15 ピストン
15a 環状ピストン部(受圧部)
15b 筒状壁部(押圧部)
15c 切欠き部
15e 環状段付き面部
15f フランジ
16、16a、16b シール部材
17、57 付勢手段
18、58 リターンスプリング(環状体、環状の板ばね)
18a、58a 環状板部(環状の支持部材)
18b、58b 撓み腕部(複数の弾性部材)
18c、58c 高剛性部分
19 ストップリング
20 油圧室
31 変速機入力軸
32 サンギヤ
33 ピニオン
34 キャリア
35 リングギヤ
37 カウンタドライブギヤ(出力部材)
38 カウンタドリブンギヤ
A1 第1受圧区間
A2 第2受圧区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに支持された一方側の摩擦板と、
ケースに対し回転可能な回転要素に支持された他方側の摩擦板と、
前記ケースに摺動可能に収納されて前記ケースとの間に環状の油圧室を形成する受圧部と該受圧部からの推力により前記一方側の摩擦板および前記他方側の摩擦板を軸方向一方側の押圧方向に押圧する押圧部とを有する環状のピストンと、
前記ケースと前記ピストンの間に介装され、前記ピストンを軸方向他方側に付勢する弾性部材を有する付勢手段と、を備えた摩擦係合装置において、
前記ピストンが、前記押圧部側をその周方向の一部で切り欠いた第1受圧区間と該第1受圧区間以外の第2受圧区間とを有し、
前記付勢手段は、前記環状のピストンと同心的に配置された環状体を含んで構成され、該環状体の一定の周方向長さ当りの前記押圧方向への曲げ剛性が、前記ピストンの前記第1受圧区間の範囲内にて前記ピストンの前記第2受圧区間の範囲内におけるよりも大きくなっていることを特徴とする摩擦係合装置。
【請求項2】
前記付勢手段が、環状の板ばねによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の摩擦係合装置。
【請求項3】
前記環状の板ばねが、前記環状のピストンと同心的に配置された環状板部および該環状板部の半径方向に延びる複数の撓み腕部を有し、前記環状板部および前記複数の撓み腕部によって前記付勢手段の前記環状体および前記弾性部材が構成されていることを特徴とする請求項2に記載の摩擦係合装置。
【請求項4】
前記環状の板ばねの環状板部が、前記ピストンの前記第1受圧区間の範囲内にて前記ピストンの前記第2受圧区間の範囲内におけるよりも半径方向に幅広くなっていることを特徴とする請求項3に記載の摩擦係合装置。
【請求項5】
前記環状の板ばねの複数の撓み腕部が、前記ピストンの前記第1受圧区間の範囲内にて前記ピストンの前記第2受圧区間の範囲内におけるよりも周方向に幅広くなっていることを特徴とする請求項3に記載の摩擦係合装置。
【請求項6】
前記ピストンが、プレス加工された板金部材と、該板金部材に装着されたシール部材とによって構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のうちいずれか1の請求項に記載の摩擦係合装置。
【請求項7】
前記ピストンの板金部材が、前記受圧部に対応する底壁部と、該底壁部から前記押圧方向に屈曲するように形成された略円筒状の筒状壁部と、を有し、
前記筒状壁部の周方向の一部が略U字形状に切り欠かれることで、前記第1受圧区間における前記筒状壁部の軸方向の長さが前記第2受圧区間における前記筒状壁部の軸方向の長さより短くなっていることを特徴とする請求項6に記載の摩擦係合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−90999(P2010−90999A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261757(P2008−261757)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】