説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】専門的な知識や技量を持たない者であっても、奥行き感及び現実感がある映像を簡便に撮影できる撮像装置を提供する。
【解決手段】本発明の撮像装置は、少なくとも焦点距離と絞り値を含む撮影パラメータを変更可能な光学系を有するカメラと、前記カメラで撮影した映像の表示に利用される表示装置の情報として、前記表示装置の視距離とその視距離から見たときの前記表示装置の画角とを特定するために必要な情報、を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段で取得した表示装置の情報から前記表示装置の視距離と画角を求め、前記カメラの画角が前記表示装置の画角に合い、かつ、前記カメラの被写界深度が前記表示装置の視距離から無限遠の範囲を含むように、前記カメラの撮影パラメータを制御する制御手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムコーダなどの撮像装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カムコーダを初めとする撮像装置やFPD(フラットパネルディスプレイ)と呼ばれる表示装置が普及し、誰でも簡単に動画を撮影し、大画面で視聴することが可能になってきた。しかし、ほとんどのユーザは映像技術に関する専門的な知識を持たないため、撮影した映像は、映像中の被写体が現実のサイズと大きく異なっていたり、映像の画角と現実の見え方とが大きく異なるものとなる場合がほとんどである。また、焦点距離、ピント、絞り、撮像時間(シャッタ速度)などが適切に設定されず、撮影者の見たい箇所がはっきりと写っていないという問題もしばしば見られる。このような映像は、特に大画面の表示装置で視聴する場合に、奥行きや現実味の乏しい映像として感じられてしまう。
【0003】
映像の現実感を高める技術の例として、特許文献1には、撮影者がカメラの撮影画角を調整することなく、被写体を常に表示装置に等身大で表示可能な映像通信システムが開示されている。このシステムでは、映像送信側ユーザX及び映像受信側ユーザYの視聴位置を検出し、検出したX・Yの視聴位置情報に基づき、カメラの撮影画角を制御する。そして、撮影したユーザの映像を背景と合成し、映像受信側の表示装置に等身大表示する。ただし、この技術は、TV会議システムのような双方向映像通信における臨場感を高めることを目的としたものであり、任意の被写体を対象として奥行き感や現実感のある映像を簡単に撮影するという目的には適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−193796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、専門的な知識や技量を持たない者であっても、奥行き感及び現実感がある映像を簡便に撮影できる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、少なくとも焦点距離と絞り値を含む撮影パラメータを変更可能な光学系を有するカメラと、前記カメラで撮影した映像の表示に利用される表示装置の情報として、前記表示装置の視距離とその視距離から見たときの前記表示装置の画角とを特定するために必要な情報、を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段で取得した表示装置の情報から前記表示装置の視距離と画角を求め、前記カメラの画角が前記表示装置の画角に合い、かつ、前記カメラの被写界深度が前記表示装置の視距離から無限遠の範囲を含むように、前記カメラの撮影パラメータを制御する制御手段と、を有する撮像装置を提供する。
【0007】
本発明の第2態様は、少なくとも焦点距離と絞り値を含む撮影パラメータを変更可能な光学系を有するカメラを備えた撮像装置の制御方法であって、前記カメラで撮影した映像の表示に利用される表示装置の情報として、前記表示装置の視距離とその視距離から見たときの前記表示装置の画角とを特定するために必要な情報、を取得するステップと、取得した表示装置の情報から前記表示装置の視距離と画角を求め、前記カメラの画角が前記表
示装置の画角に合い、かつ、前記カメラの被写界深度が前記表示装置の視距離から無限遠の範囲を含むように、前記カメラの撮影パラメータを制御するステップと、を有する撮像装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、専門的な知識や技量を持たない者であっても、奥行き感及び現実感がある映像を簡便に撮影することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態の撮像装置の主要部分のブロック図
【図2】本発明の第2の実施形態の撮像装置の主要部分のブロック図
【図3】本発明の第4の実施形態の撮像装置の主要部分のブロック図
【図4】本発明の第5の実施形態の撮像装置の主要部分のブロック図
【図5】撮像装置の画角と表示装置の画角を合わせた場合の撮影を模式的に示す図
【図6】図5(a)(b)に対応する映像の例を示す図
【図7】撮像装置の画角と表示装置の画角が合っていない場合の撮影を模式的に示す図
【図8】図7(a)〜(c)に対応する映像の例を示す図
【図9】各TV方式における標準視距離と標準視距離における水平画角を示す表
【図10】標準視距離より手前に近接対象物がある場合の撮影を模式的に示す図
【図11】図10(a)(b)に対応する映像の例を示す図
【図12】撮像装置の画角と表示装置の画角を合わせた場合の被写界深度を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、撮影者の技量によらず奥行き感、現実感のある表示を行うことのできる映像を撮影できるカムコーダ等の撮像装置を提供する。特に本発明は、大面積かつ高精細の表示装置での視聴に適した映像を簡便に撮影できる撮像装置を提供する。以下では、まず大面積かつ高精細の表示装置での視聴に適した映像について説明し、その後、本発明の撮像装置の好適な実施の形態について説明する。
【0011】
(大面積表示装置と輻輳、調節)
大面積かつ高精細の表示装置は、奥行き感や現実感のある表示を実現しやすい。その理由は、輻輳及び調節の矛盾が少なくなるからである。輻輳の矛盾とは、輻輳(両目の角度)により感じる距離と表示された絵の内容から認識される距離との不一致をいい、調節の矛盾とは、表示された絵の内容から認識される距離に目のピントを調節したときに表示画面からピントが外れてしまうことをいう。
【0012】
HDTV方式では標準視距離として表示装置の画面高さの3倍の距離が推奨されている。例えば55インチクラスの表示装置であれば、標準視距離は約2mとなる。この距離は輻輳で(つまり両目の角度から)対象物までの距離を認知できる限界に近い距離であり、2mより遠くの対象物は輻輳による距離認知は困難となる。すなわち、観測者が表示装置に表示された映像を見るとき両目の角度(輻輳)は表示画面に合うが、表示画面までの距離が2mを超えると、輻輳により感じる距離と表示された絵の内容から認識する距離との違いを観測者は感じにくくなるのである。
【0013】
また、人間の目のピント合わせである調節についても、表示画面までの距離が2mを超えると、矛盾が出にくくなる。観測者の目が絵の内容から認識した距離にピントを合わせても、表示画面までの距離が2mを超えていると、表示画面の位置も目の被写界深度内に入り表示画面にもピントが合うからである。
【0014】
(奥行き感・現実感)
大面積かつ高精細の表示装置に表示する場合と、小面積や低精細の表示装置に表示する場合とでは、観測者に奥行きや現実味を感じさせやすい映像に違いがある。
【0015】
従来、カメラの被写界深度を浅くし、注目する対象物に対してのみ焦点を合わせ、他の背景にあたる部分をぼかすことによって、注目する対象物を背景に対して浮かび上がらせることで奥行き感を表現する手法が行われていた。これは、映画撮影ではシャロー・フォーカスと呼ばれている技法であり、一般にポートレート写真を撮る際に使用される撮影技法でもある。この技法により、撮影者は表現したい対象物(主対象物)を効果的に浮かび上がらせることができる。この技法は、小面積の表示装置(例えば、被写体である主対象物より画面が小さい表示装置)の場合に、効果的である。
【0016】
しかしながら、本発明者が、近年開発されている大面積、高精細表示装置を用い確認したところ、シャロー・フォーカスによる映像は奥行きや現実味を感じにくいこと、また、以下の3つの撮影の技法により奥行き感・現実感が増大することがわかった。
【0017】
第一の技法として、表示される対象物の大きさが現実の対象物と同じであることによって、奥行き感・現実感が生じることがわかった。
カムコーダ等の撮像装置で撮影した映像を表示装置で見る場合、大きさを同じにすることというのは、対象物ひとつひとつの視野角を合わすことを意味する。本明細書では、撮像装置のカメラの撮影範囲である角度、表示装置を観測者が見たときに観測者から見た表示画面の角度を画角(撮像装置の画角、表示装置の画角)と呼ぶことにする。一方、撮影される対象物の撮像装置のカメラから見た角度、表示された対象物の観測者から見た角度を視野角と呼ぶことにする。
【0018】
第二の技法として、表示される対象物の全てにピントが合っている状態(すなわちはっきり見える状態)になるように撮影することによって、奥行き感・現実感が生じることがわかった。
従来のシャロー・フォーカス技法で撮影した場合、撮影者の表現したい対象物(主対象物)ははっきり見えるが、主対象物以外の対象物はボケて見える。このような映像を大面積の表示装置で表示すると、奥行き感や現実感が無くなることがわかった。これは、表示画面が大きくなると、主対象物以外のボケた部分の面積が非常に大きくなるために、作り物の映像であると感じやすくなり、現実感が小さくなるからと思われる。このように映像全体にピントが合っているほうが奥行きや現実味を感じることができるというのは、大面積かつ高精細の表示装置で映像を観測する場合の特徴の一つである。
【0019】
第三の技法として、表示装置を観測者が見る距離(標準視距離)より手前にある対象物を排除して撮影することによって、奥行き感・現実感が増すことがわかった。
観測者は、表示装置の額縁を基準にして映像中の対象物の距離を認識している。言い換えると、観測者は、額縁と同じ距離にある表示画面の表面に配置されているガラス等の透過性部材の向こう側に、映像中の対象物が存在すると無意識に認識している。そのため、標準視距離より手前の対象物が写っている映像を表示した場合、ガラス等の透過性部材の向こう側にそれよりも手前にある物が見える、という違和感が生じる。したがって、標準視距離より手前にある物を撮影対象物から除外することで、観測者の違和感を無くし、奥行き感・現実感を増大することができる。よりわかりやすく説明するために例えれば、観測者は実在する表示装置の額縁を窓枠として認識し、表示されている映像を窓ガラス越しに見える景色として認識している。この認識に適合するような映像信号の場合、奥行き感・現実感が増大する。逆に対象物の大きさや位置関係より明らかに窓ガラスより手前にあると認識された対象物に対しては、観測者の認識と現実との矛盾が生じ、奥行き感・現実
感が減少するのである。
【0020】
以上より、撮像装置の画角を表示装置の画角に合わせ、表示する対象物が全てピントの合った状態になるようにし、標準視距離より手前にある対象物を排除した状態で撮影を行うとよい。これにより、対象物の大きさが現実の大きさに見え、観測者がどの対象物を注視しても現実のようにはっきり見え、表示画面の手前に対象物があるという違和感の無い、映像が得られる。この映像を大画面表示装置に表示することで、奥行き感・現実感のある映像表現が実現できる。さらに、前述した様に、大面積表示装置を標準視距離で見ることで輻輳及び調節の矛盾を少なくできる点も、奥行き感・現実感を高めることに役立っている。
【0021】
(画角)
前述したように、奥行き感・現実感を出すためには、撮像装置の画角を表示装置の画角に合わせる必要がある。
【0022】
図5(a)(b)に撮像装置の画角と表示装置の画角を合わせた場合の撮影を模式的に示す。図5(a)において、100aはカムコーダ等の撮像装置、101aは撮像装置の画角を示す線、110aは標準視距離(L1)に位置する対象物、110bは中景である距離に位置する対象物、110cは遠景である距離に位置する対象物、110dは無限遠の距離に位置する対象物である。図5(b)において200aは観測者の目、201aは標準視距離(L1)に表示画面を設置したときの表示装置の画角を示す線、300は表示装置、301は表示画面を示す。表示装置300の画角201aは、表示画面301の大きさと標準視距離(L1)から決まる。
【0023】
図6(a)は、図5(a)の撮像装置の位置に観測者の目を置いたときに見える映像の例を示し、図6(b)は、図5(b)の状態で観測者に見える表示画面の映像の例を示している。
図6(a)において、110は撮像装置100aの画角で決まる撮影領域を示す四角形である。他の番号については前述したとおりであり、説明は省略する。撮影領域を示す四角形110は観測者の目に見えるものではないが、図6(b)の表示装置300の表示画面との対比の目安となるので、便宜的に記載している。図6(b)において、310は表示装置300の表示画面の外形、310a〜310dはそれぞれ対象物110a〜110dに対応している。表示装置300を見る観測者は、撮像装置100aの位置に観測者の目を置いたときと同じ視野角で色々な対象物を見ることができる。このように、撮像装置110aの画角を表示装置300の画角に合わせることで、観測者は、表示装置300に表示される対象物を、撮像装置110aの位置から実際に目で見たときと同じ大きさの対象物として認識できる。
【0024】
次に、図7(a)(b)(c)に撮像装置の画角と表示装置の画角が合っていない場合の撮影を模式的に示す。図7(a)において、101aは表示装置300の標準視距離(L1)における画角201aと同じ画角を示す線であり、101bは表示装置300の画角201aよりも狭い画角を示す線である。撮像装置100aの光学系の焦点距離を変えることで画角を変化させることができる。図7(b)(c)において、201aは標準視距離(L1)に表示画面301を設置したときの表示装置300の画角を示す線である。また、201bは撮像装置100aの画角101bと同じ表示装置300の画角を示す線である。画角201bに設定するには、表示装置300を標準視距離(L1)よりも遠い距離L2に設置する。他の番号については、前述と変わらないので説明を省略する。
【0025】
図8(a)は、図7(a)の撮像装置の位置に観測者の目を置いたときに見える映像の例を示し、図8(b)は、図7(b)の状態で観測者に見える表示画面の映像の例、図8
(c)は、図7(c)の状態で観測者に見える表示画面の映像の例を示している。
【0026】
画角101bで撮影した映像信号を、図7(b)のように標準視距離(L1)にある表示装置300で表示すると、撮像装置と表示装置の画角が異なることになる。この場合は、図8(b)に示すように、各対象物310a〜310dは現実の対象物110a〜110dとは異なる大きさに見える。この例では、撮像装置の画角のほうが表示装置に比べて小さいため、映像上の対象物が現実よりも大きく見える。
【0027】
一方、画角101bで撮影した映像信号を、図7(c)のように距離L2にある表示装置300で表示した場合は、図8(c)に示すように映像中の対象物310a〜310dが現実の対象物110a〜110dと同じ大きさに見える。しかしながら、例えば、観測者は経験や視野角等から映像中の対象物310aが距離L1の位置に存在するように認識する一方で、距離L2の位置にある窓ガラス(表示画面301)の向こう側に対象物310aが存在するようにも見えるため、認識と見え方の間で矛盾が生じる。
【0028】
また、前述した例とは逆に、撮像装置の画角を広くして撮影を行うとともに、表示装置を標準視距離(L1)より近づけることで撮像装置と表示装置の画角を合わせた場合には、次のような問題が発生する。まず、表示装置を標準視距離(L1)より近くで見るため、表示装置の画素が見えてしまい現実感の低下を招く。また、観測者と表示装置の距離が近づくため、前述した輻輳・調節の矛盾が顕著になり、奥行き感、現実感が阻害されるとともに、観測者の疲労を招いてしまう。
【0029】
以上、説明したように、撮影した対象物が実際の大きさに見えるためには、標準視距離における表示装置の画角に撮像装置の画角を合わすことが重要である。
【0030】
表示装置の標準視距離は、TV方式により異なる。図9は、SDTV(標準)、HDTV(ハイビジョン)、ディジタルシネマ(4K2K)、スーパーハイビジョン(8K4K)それぞれのTV方式において、推奨されている標準視距離と、その標準視距離から求めた水平方向の画角を示している。図中のHは、表示画面の高さを示している。このようにTV方式によって標準視距離および画角が異なることから、映像を表示する予定の表示装置の情報(例えば表示画面サイズと標準視距離の情報)を撮像装置に与え、撮像時の画角を制御すると好適である。
【0031】
(撮影範囲、表示範囲)
次に、撮影範囲、表示範囲について説明する。ここでは、奥行き方向の撮影範囲、表示範囲について考える。
【0032】
図10(a)(b)に撮像装置の画角と表示装置の画角を合わせた場合の撮影を模式的に示す。図10(a)に示すように、標準視距離(L1)よりも手前に対象物110eが存在している。図11(a)は、図10(a)の撮像装置の位置に観測者の目を置いたときに見える映像の例であり、図11(b)は、図10(b)の状態で観測者に見える表示画面の映像の例である。撮像装置の画角と表示装置の画角は同じであるので、表示映像における各対象物310a〜310eは、現実の対象物110a〜110eと同じ大きさに見えている。
【0033】
ところで前述したように、観測者は表示映像を見るときに、表示装置300の額縁(枠)を基準にして現実の距離を認識し、表示画面301よりも遠くに対象物が存在するように見えないと不自然さを感じる。図11(b)の例では、4つの対象物310a〜310dは表示画面301よりも遠くにあるため問題はない。しかしながら、対象物310eについては、観測者は、経験、視野角、他の対象物との関係などから、対象物310eが対
象物310aよりも近くにあると認識するため、現実の距離感との間で矛盾を感じてしまう。表示映像がこのような矛盾を生むと、奥行き感や現実感を減少させてしまう。
逆に言えば、撮像装置の画角と観測者が見る表示画面の画角を合わせた上で、撮影時に、標準視距離(L1)より近い位置に存在する対象物を取り除いて撮影することによって、奥行き感・現実感のある映像を作ることができる。
【0034】
(被写界深度)
前述したように、奥行き感・現実感を出すためには、映像中のほとんどの部分にピントが合っていることが望ましい。
図12(a)(b)(c)は撮像装置の画角と表示装置の画角を合わせた場合の被写界深度を説明するための模式的な図である。図12(b)は、標準視距離がL1である表示装置300の例であり、図12(c)は、表示装置300の表示画面301よりもサイズの小さい表示画面311を持つ表示装置310の例である。標準視距離は表示画面の高さの倍数で規定されているため、表示装置310の標準視距離L3は表示装置300の標準視距離L1よりも小さくなる。なお、標準視距離は、TV方式の画素数と画素が認識できなくなる距離に基づき決められている。
以上より、撮像装置に対して映像を表示する予定の表示装置の情報(標準視距離)を与え、撮像時の被写界深度を制御すると好適である。具体的には、被写界深度が標準視距離から無限遠の範囲となるように制御する。例えば表示装置300を用いて表示するならば標準視距離はL1であるため、撮像装置の被写界深度はL1から無限遠(図12(a)の範囲A)となるように設定する。また、表示装置310を用いて表示する場合、標準視距離はL3であるため、撮像装置の被写界深度はL3から無限遠(図12(a)の範囲C)となるように設定する。
【0035】
(照明)
その他の奥行き感・現実感を出す技法として、照明による効果がある。
照明が対象物に対して斜め上から当たっている場合、対象物の表面の凹凸の影がはっきり現れる。それにより対象物の表面の凹凸感がはっきりわかり、奥行き感・現実感が増す。このようにひとつひとつの対象物の表面の凹凸がはっきり見えることにより、対象物の立体感が拡大されるばかりで無く、例えば表面の凹凸模様の大きさを手がかりとして対象物自体の大きさが確定でき、各々の対象物の大きさから遠近関係がはっきり認知できる。これらの理由によって、観測者の奥行き感・現実感が増す。
一方、正面からの照明であると、対象物の凹凸の陰は出ないため、撮影された映像は立体感の無いものとなる。
このように、撮影時の照明の当たり具合によって、撮影した映像信号を見た観測者が感じる奥行き感・現実感は異なるものとなる。
【0036】
(撮像時のボケ)
表示映像において対象物が不自然にボケていると、奥行き感・現実感が減少する。
一般的な撮像装置では、CCDやCMOSなどの半導体素子で作られた撮像素子により光を電気信号に変換し、電気信号を撮像時間内で積分して、1フレームの映像信号を生成する。撮像時間は例えば1フレーム時間と同じ1/60秒に設定されており、その間に動いた対象物はボケることになる。この撮像時のボケは、モーションブラー(動きぶれ)と呼ばれる。
このような撮像時のボケを少なくする方法としては、撮像時間を短くする(シャッタ速度を速くする)方法がある。
【0037】
(インパルス型ディスプレイとホールド型ディスプレイ)
表示装置を大別すると、各画素の発光時間が非常に短いインパルス型ディスプレイと、各画素の発光が1フレーム時間のあいだ持続されるホールド型ディスプレイとに分けられ
る。CRTや線順次駆動を行うFEDやSED(Surface−conduction
Electron−emitter Display)は、インパルス型ディスプレイであり、TFTを用いアクティブマトリクスを形成した液晶表示装置はホールド型ディスプレイである。
【0038】
前述したように、撮像時間を短くすることで、動いている対象物のボケ(動きぶれ)を小さくすることができる。そのような映像をインパルス型ディスプレイで表示すれば、対象物のボケが少ない、奥行き感・現実感の高い映像が得られる。しかしながら、ホールド型ディスプレイにおいては、特にフレームレートが高くない場合に顕著となるが、ボケのない画像が連続して切り替わって見える妨害感(例えば映画を見ているようにカクカク動くような妨害感)が現れることがある。そのため、ホールド型ディスプレイで表示することが予定されている場合は、撮像時間は短くしないほうが好適である。さらにいうと、撮像装置の撮像時間を表示装置の画素が発光している時間(ホールド時間と呼ぶ)と同等にするのが一般的な対象物の動きでは好適である。
近年、LCDにおいて、バックライトの発光時間を短くしたり、黒サブフレームを挿入したりすることで、LCDの表示特性をインパルス型ディスプレイに近づける方法が提案されている。本発明で、そのようなLCDは、インパルス型ディスプレイの範疇として考える。
【0039】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態として、撮像装置が通信回線を通じて表示装置の情報を受け取り、その情報に基づき撮影を行う例を示す。
【0040】
(撮像装置の構成)
本発明の第1の実施形態の主要部分のブロック図を図1に示す。図1において、1は、カムコーダ等の撮像装置である。2はカムコーダの動作を制御するカムコーダコントローラ、3は映像信号を記録する記録媒体である。記録媒体としては、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどがあるが、本発明ではどのような記録媒体を用いてもよい。4はOSD(On Screen Display)回路、5は撮像装置1に付属する小さな表示
装置すなわちモニタである。100はビデオカメラであり、110は被写体である対象物である。10aは記録媒体3に記録されている映像を出力する映像出力端子、10bは表示装置の情報を取得する情報入力端子である。30は表示装置、31は表示装置30の表示画面、32は表示装置30の制御を行うTVコントローラである。39aは撮像装置1の記録媒体3に記録されている映像を入力する映像入力端子であり、映像出力端子10aに接続される。39bは、表示装置30の情報を出力する情報出力端子であり、撮像装置1の情報入力端子10bに接続される。本実施形態では、ビデオカメラ100が本発明のカメラに対応し、カムコーダコントローラ2が本発明の情報取得手段と制御手段の2つの機能に対応する。ただしこの構成は一例であり、もちろん機能ごとに独立のハードウエアを用意してもかまわない。
【0041】
(撮影手順)
本実施形態の撮像装置による、好適な撮影手順は以下のとおりである。
第1のステップとして、撮像装置1は表示装置30の情報を取得する。初めに撮像装置1と表示装置30を撮影者は接続する。すなわち、映像出力端子10aと映像入力端子39a、情報出力端子39bと情報入力端子10bを接続する。目的としては撮像装置1が表示装置30の情報を取得することであり、少なくとも、情報出力端子39bと情報入力端子10bが接続できていれば良い。例えば、近年、普及しているHDMI規格を利用した接続では、映像信号と制御情報信号が1つのコネクタで接続される。この第1のステップにより、カムコーダコントローラ2は、表示装置30の情報として、例えば、画面サイズ、標準視距離、インパルス型ディスプレイかホールド型ディスプレイかの情報を得る。
【0042】
第2のステップとして、撮像装置1のカムコーダコントローラ2は、第1のステップで取得した表示装置30の情報を元に、ビデオカメラ100の焦点距離、ピント位置、絞り値を設定する。そして、撮影者は撮像装置1を用いて対象物110を撮影する。
【0043】
第3のステップとして以下を行う。撮影した映像を表示装置30で再生して見る場合、第1のステップと同様に、撮像装置1と表示装置30を接続する。目的としては撮像装置1が映像信号を表示装置30に出力することであるため、少なくとも映像出力端子10aと映像入力端子39aが接続できていれば良いが、表示装置30の情報も取得する場合は、情報出力端子39bと情報入力端子10bも接続する。このように、撮影した映像を表示装置30で見る場合においても表示装置30の情報を取得することによって、対象となる表示装置30の情報が更新できる。
【0044】
このようなステップを行うことによって、常に最新の表示装置30の情報をカムコーダコントローラ2は取得し、撮像装置1のビデオカメラ100の設定を最適に行うことができる。これによって奥行き感、現実感がある映像信号が撮影できる。
【0045】
(撮影パラメータの制御)
次に、ステップ2におけるカムコーダコントローラ2によるビデオカメラ100の焦点距離、ピント位置、絞り値の制御について更に具体的に説明する。
【0046】
カムコーダコントローラ2は、撮像装置1の画角を標準視距離での表示装置30の画角に合わせるための焦点距離を計算し、ビデオカメラ100に焦点距離を設定する。なお、ビデオカメラ100の光学系は例えばズームレンズであり、既知の機構及び方法により焦点距離や絞り値などの撮影パラメータが変更可能なものである。
【0047】
表示装置の表示画面の対角の長さをddとすると、標準視距離Ltypから表示画面を見たときの表示画面の対角の長さで決まる表示装置の画角θは、
θ=2・tan−1((dd/2)/Ltyp) ・・・・・式1)
と、求まる。よって、表示装置30の情報として、表示画面の対角の長さddと標準視距離Ltypを取得すれば、式1)により標準視距離での表示装置30の画角θを計算できる。
【0048】
ここで、表示画面の高さ(垂直方向の長さ)をH、幅(水平方向の長さ)をxdとすると、
dd=(xd+H1/2 ・・・・・式2)
である。また、HDTV方式など画面のアスペクト比が16:9の場合は、
dd=2.04・H ・・・・・式3)
となり、NTSC方式など画面アスペクト比が4:3の場合は、
dd=1.67・H ・・・・・式4)
となる。よって、対角の長さddの代わりに、表示画面の高さHと幅xd、あるいは、表示画面の高さHと画面アスペクト比を表示装置30から取得し、式1)〜式4)により表示装置30の画角θを計算することもできる。また、図9に示したように、TV方式ごとに推奨の標準視距離が画面高さHに対する倍率で規定されているので、TV方式を特定する情報、あるいは、画面高さHに対する倍率を、表示装置の情報として取得してもよい。
【0049】
例えば、表示装置30がHDTV方式である場合、標準視距離Ltypは、
Ltyp=3・H ・・・・・式5)
であるから、式1)と式3)より、表示装置30の画角θは、
θ=2・tan−1((2.04・H/2)/(3・H)) ・・・・・式6)
となり、
θ=37.6° ・・・・・式7)
と求まる。
【0050】
前述しているように、標準視距離Ltypから表示画面を見たときの表示画面の対角の長さで決まる表示装置の画角θと、ビデオカメラ100の画角が同じとなるように焦点距離fを設定することによって、奥行き感・現実感がある映像の撮影が可能となる。
sdを撮像素子の対角の長さ、fを光学系の焦点距離とすると、
f=sd/{2・tan(θ/2)} ・・・・・式8)
となる焦点距離を設定すればよい。
例えば、撮像素子がAPS−Cと呼ばれている画像フォーマットの大きさとほぼ同じ幅(約22mm)を持つ大きさとすると、撮像素子の対角の長さsdは約25.2mmとなるので、約37mmにズームレンズの焦点距離を設定すると良い。
【0051】
次に、被写界深度について説明する。前述したように、被写界深度は標準視距離Ltypから無限遠の範囲に設定されていれば良い。
被写界深度は具体的にはビデオカメラ100の絞り値に深く関係する。無限遠が被写界深度の後端ぎりぎりに入るような被写体までのピント位置(過焦点距離)をLh、レンズの焦点距離をf、レンズの絞り値をF、許容錯乱円の直径をδとすると、過焦点距離Lhは、
Lh=f/(δ・F) ・・・・・式9)
である。
【0052】
許容錯乱円については設計者がカムコーダの仕様(TV方式)から決定する。一般的なHDTV方式の場合、撮像素子の対角の長さの2000分の1程度の長さに選ぶと良い。前述したAPS−Cと呼ばれるフォーマットの撮像素子の対角の長さsdは、約25.2mmとなるので、許容錯乱円を約12.6μmとするのが好適である。
【0053】
許容錯乱円以内にピントが合っている被写体までの距離(近点距離)Lminは、過焦点距離の半分であるので、
Lmin=f/(2・δ・F) ・・・・・式10)
となる。
【0054】
標準視距離Ltypより遠くの対象物に全てピントが合うようにするには、近点距離Lminを標準視距離Ltypより短かくすることが必要となる。すなわち、
F≧f/(2・δ・Ltyp) ・・・・・式11)
となるF値を設定すればよい。
【0055】
例えば、表示画面が対角55インチの表示装置を使ってHDTV方式の映像信号を観測者が見た場合を想定する。対角55インチの表示装置の標準視距離Ltypは205cmであり、前述したAPS−Cと呼ばれるフォーマットの撮像素子では式11)から絞り値Fは26.5となる。
さらに、例えば、ビデオカメラで広く使用されている2/3インチサイズ(8.8mm×6.6mm)の撮像素子の大きさと同じ幅(8.8mm)を持つ撮像素子では、対角55インチの表示装置の標準視距離Ltypは205cmであるので、絞り値Fは11となる。
両方の場合において、許容錯乱円以内にピントが合っている被写体までの距離(近点距離)Lminを撮像装置のピント位置(過焦点距離)の半分とし、さらに、近点距離Lminを標準視距離Ltypと決め設定しているので、撮像装置のピント位置(過焦点距離)は410cmに設定すればよい。
【0056】
表示画面が小さくなり標準視距離が短くなると、同じ撮像装置の画角であっても被写界深度が浅くなる。また、撮像素子の大きさが大きくなると、同じ撮像装置の画角であっても被写界深度が浅くなる。よってこの場合に、標準視距離から無限遠の範囲にピントを合わせようとすると、絞り値を大きくする必要がある。しかしながら、絞り値を大きくした場合、回折の影響でピントが甘くなる(解像度が低下する)現象があるため、必要以上に絞り値を大きくすることはできない。また絞り値を大きくした場合、撮像素子に入射する光量は少なくなり、したがって撮影した映像信号のS/N比が悪くなる問題があり必要以上に絞り値を大きくすることはできない。すなわち、映像品質の観点から、絞り値には所定の上限値(許容限界)が存在する。
【0057】
そこで、絞り値が上限値を超える場合は、カムコーダコントローラ2は、撮影者により指定された主対象物にピントを合わせることを優先するとよい。映像を見る者は主対象物を注視する可能性が高いため、少なくとも主対象物にピントが合っていれば、他の部分のピントがやや甘くても問題にならないことが多いからである。具体的には、カムコーダコントローラ2は、少なくとも主対象物にピントが合い、かつ、絞り値が上限値に収まるように(つまり、回折現象による解像度低下と光量不足によるS/N比低下が許容範囲に収まる程度に)、撮影パラメータを設定する。この場合、撮影者が手動でピント調整を行って主対象物にピントを合わせることもできるし、タッチパネル式のモニタ5に表示された映像上で撮影者に主対象物を指定させ、カムコーダコントローラ2が指定された主対象物に自動でピントを合わせるようにしてもよい。ここで、主対象物にピントを合わせるとは、主対象物が少なくとも被写界深度の範囲内に含まれる(近点距離が主対象物の距離より小さい)ようにすることを意味するが、主対象物の距離に過焦点距離を合わせるようにすることも好適である。
【0058】
以上述べたように、本発明の第1の実施形態によれば、撮影した映像が表示される表示装置30の情報に基づいて、カムコーダコントローラ2が適切な撮影パラメータを自動で設定する。よって、専門的な知識や技量を持たない撮影者であっても、撮像装置1の画角と表示装置30の画角が合い、かつ、標準視距離から無限遠の範囲にピントが合っている映像、すなわち奥行き感・現実感のある映像を簡単に撮影することができる。
【0059】
なお、第1の実施形態では、撮像装置1と表示装置30をHDMI規格のケーブルで接続する例を挙げたが、撮像装置1と表示装置30の間の接続(情報通信)はこれに限られない。例えば、HDMI以外のケーブルによる有線通信でもよいし、無線LAN、ブルーツース、赤外線通信などの無線通信でもよい。無線通信の場合は、情報入力端子10bの代わりに無線通信部を設ける。
【0060】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態として、カメラからの距離が標準視距離よりも小さい範囲に存在する物(近接対象物)を撮影対象から除外するための機能について説明する。
【0061】
図2は、第2の実施形態の撮像装置の主要部分のブロック図である。この撮像装置1は、対象物までの距離を計測する距離センサ6を有している。距離センサ6は、例えば赤外線・超音波などを照射し、その反射波が戻るまでの時間や受光角度により距離を検出するセンサである。本実施形態の距離センサ6は、撮像装置1に最も近い対象物の距離を算出し、その情報をカムコーダコントローラ2に出力する。その他の構成は第1の実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0062】
表示装置30から取得した画面サイズ、標準視距離などの情報に基づいて、カムコーダコントローラ2がビデオカメラ100の焦点距離、ピント位置、絞り値など撮影パラメー
タを制御する、という基本的な動作は第1の実施形態の動作と同じである。これに加え、第2の実施形態では、カムコーダコントローラ2は、距離センサ6の出力から標準視距離より近くに対象物が存在するか否かを判断し、標準視距離より近くに存在する近接対象物が検出された場合には、撮影者に対して注意を促す情報を出力する。例えば、OSD回路4により「被写体を○m以上離してください。」のようなメッセージをビデオカメラ100の映像信号に重畳し、モニタ5に表示すればよい。前述したように、標準視距離よりも手前の対象物が写っている映像は、観測者に違和感を生じさせる。本発明の第2の実施形態では、この違和感が生じるシーンを撮影者に知らせるための情報を出力することで、撮影者に被写体や構図の変更を促すのである。もちろんモニタ5の画面以外でも、音や振動や他の方法で標準視距離より近くに対象物があることを撮影者に知らせても良い。
【0063】
図2では、距離センサ6とカムコーダコントローラ2により、近接対象物を検出する検出手段を構成したが、検出手段の構成はこれに限られない。例えば、撮影前にビデオカメラ100の焦点を最近点から無限遠まで変化させ、画像信号の微分値からそれぞれの焦点距離における対象物の有無を判定する方法によっても、近接対象物を検出することが可能である。
【0064】
本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、専門的な知識や技量を持たない撮影者であっても、撮像装置1の画角と表示装置30の画角が合い、かつ、標準視距離から無限遠の範囲にピントが合っている映像、すなわち奥行き感・現実感のある映像を簡単に撮影することができる。さらに、標準視距離より手前の対象物が検出された場合に撮影者に注意情報を出力するので、観測者に違和感を生じさせる映像が撮影されることを未然に防ぐことができる。
【0065】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態を示す。第3の実施形態の構成は図1あるいは図2の構成と同じである。第1の実施形態、第2の実施形態と同様に、撮影装置の画角と表示装置の画角をあわすこと、観測者が注視する対象物はピントが合っている状態にすることによって、奥行き感・現実感のある映像が撮影できる。
【0066】
さらに第3の実施形態では、表示装置30の種類(ホールド型ディスプレイまたはインパルス型ディスプレイ)の情報をカムコーダコントローラ2は受信し、表示装置30に最適なビデオカメラ100の撮像素子の撮像時間を設定する。すなわち、インパルス型ディスプレイの場合は第1の撮像時間に設定し、ホールド型ディスプレイの場合は第1の撮像時間よりも長い第2の撮像時間に設定する。第1の撮像時間は、例えば1フレーム時間の数分の1あるいは数百分の1程度に設定すればよく、第2の撮像時間は、例えば1フレーム時間と同じ1/60秒程度に設定すればよい。さらに、インパルス型ディスプレイとホールド型ディスプレイの情報以外にも、1フレームの中で画素が発光を維持しているホールド時間情報を受け取り、撮像素子の撮像時間をホールド時間と同じ値に設定しても好適である。
【0067】
第3の実施形態により、表示装置の動画表示特性に応じて適切な撮像時間が設定されるため、インパルス型ディスプレイにおいては、動きぶれの無いはっきりとした動画を見ることができ、ホールド型ディスプレイにおいては、自然な動きの動画を見ることができる。したがって、静止している対象物だけでなく、動く対象物であっても奥行き感・現実感のある映像を簡単に撮影できる。
【0068】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。第4の実施形態は、表示装置の情報を入手する手段が第1の実施形態と異なる方式である。
【0069】
図3に本発明の第4の実施形態の主要部分のブロック図を示す。図3において、7は、カムコーダ等の撮像装置1に実装されているユーザインターフェイス手段である。その他の構成は図1の構成と同じであるので、説明は省略する。第1の実施形態と異なる点は、第4の実施形態は、表示装置30の情報を撮影者が入力する点である。本実施形態では、ユーザインターフェイス手段7およびカムコーダコントローラ2が本発明の情報取得手段に対応する。
【0070】
ユーザインターフェイス手段7は、例えば、スイッチ、又は、リモコンとリモコン受光部、又は、モニタ5の表示面にある透明なタッチパネルにより構成することができる。例えば、カムコーダコントローラ2は、「表示画面の大きさは?」「表示画面の視距離は?」などの質問を音声出力するかモニタ5に表示し、撮影者に表示装置30の情報(表示画面の大きさ、標準視距離など)をユーザインターフェイス手段7により入力させる。表示装置の情報入力は撮像装置1の起動のたびに実行してもよいが、通常は表示装置の情報が変わる頻度は非常に少ないと考えられるため、初回起動時のみ表示装置の情報入力を必須にし、以降は必要に応じて設定メニューで撮影者が設定内容を変更できるような仕組みにすると好適である。このようなユーザインターフェイス手段7を設けることによって、表示装置30が撮像装置1に情報が出せない型式のものであっても、表示装置30の必要な情報を撮像装置1が取得することができる。
【0071】
さらに、撮像装置1で表示装置30を撮影することにより表示画面のサイズ、標準視距離を自動認識させることもできる。例えば、カムコーダコントローラ2が、「映像を表示する表示装置の画面を、いつもの視距離から撮影してください。」のような指示を音声出力又はモニタ5に表示する。そして撮影者は被写体を撮影する前に、撮像装置1を用い標準視距離の位置から表示装置30の表示画面を撮影する。このとき、オートフォーカスにより表示装置30の表示画面に対してピント位置を合わせる。カムコーダコントローラ2は、映像信号の記録は行わず、オートフォーカスの情報から標準視距離(撮像装置1から表示画面までの距離)を求める。なお距離センサを用いたアクティブ方式のオートフォーカスの場合には、距離センサから得られる測距情報から直接、標準視距離を求めてもよい。さらに、カムコーダコントローラ2は、表示画面全体が画角に収まるようにズームを広角側に設定して撮影を行い、その映像を解析することにより、映像中の表示画面の視野角と先に求めた標準視距離とから表示画面のサイズを求める。なお、表示画面のサイズの代わりに、直接、表示装置の画角を計算してもよい。また、撮像装置1のズームを広角側から望遠側に調整しながら、表示画面全体が撮像された画面と同じになった焦点距離を画角のあった焦点距離として直接決定しても良い。
このようにして算出された表示装置30の情報は、撮像装置1に記憶される。この方法によれば、撮影者が表示装置30のサイズ等を知らなくても、簡単かつ正確に表示装置30の情報を撮像装置1に設定することが可能となる。
【0072】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態を説明する。第5の実施形態は、第4の実施形態と同様に、表示装置の情報を入手する手段が第1の実施形態と異なる方式である。
【0073】
図4に本発明の第5の実施形態の主要部分のブロック図を示す。本実施形態の表示装置30は、記録媒体33のIFを備えており、記録媒体33に記録されている映像信号の読み込み・表示や、記録媒体33への情報の書き込みが可能である。その他の構成は第1の実施形態と同じであるので、説明は省略する。ここで記録媒体3と記録媒体33が同じ種類の記録媒体であることが好適であり、さらに半導体メモリで構成されたメモリカードであると好適である。本実施形態では、記録媒体3およびカムコーダコントローラ2が本発明の情報取得手段に対応する。
【0074】
図4において、表示装置30に設置されている記録媒体33にTVコントローラ32は表示装置30の情報を書き込む。その後、記録媒体33は、撮影者により表示装置30から撮像装置1に移される(図4では記録媒体3と示している)。カムコーダコントローラ2は記録媒体3から表示装置30の情報を読み込み、前述したようにビデオカメラ100の撮影パラメータの設定を行う。撮像装置1が撮影した映像信号は記録媒体3に記録さる。観測者が撮影された映像を見る際は、記録媒体3を表示装置30に装着し(図4では記録媒体33で示す)、表示する。
【0075】
本発明の第5の実施形態によれば、映像信号を記録する記録媒体33に表示装置30が表示装置の情報を記録することによって、新たな情報通信用のケーブルやインターフェイスを必要とすることなく、撮像装置1に対して表示装置30の情報を与えることができる。
【0076】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態では、奥行き感・現実感が出る撮影の設定について示してきた。本発明により技量のない撮影者であっても、奥行き感・現実感がある映像を簡便に撮影できる。しかしながら、このようなカムコーダを初めとする撮像装置1による撮影では、ある意味、芸術性が重んじられる映像も必要である。すなわち、本発明で撮影した映像信号のみを観測者が見た場合、常に、同じような感じで見える映像となり、観測者は飽きてしまう。そのため、本発明の撮影方法は、カムコーダ等の撮像装置の1つのモードとして実装するとよい。
【0077】
また、表示装置30の情報が取得できない場合に、撮影した映像信号がおかしなものとならないように、カムコーダコントローラ2は予め記憶している表示装置のデフォルト情報を暫定的に用いて、ビデオカメラ100の撮影パラメータの設定を行うと良い。一例として、HDTV方式の場合は、表示画面の大きさが55インチまたは42インチのサイズであり、視距離が3・Hをデフォルト情報として記憶していると良い。
【0078】
前述した様に、照明が対象物に対して斜め上から当たっている場合、対象物の表面の凹凸の影がはっきり現れ、対象物の表面の凹凸感がはっきりわかり、奥行き感・現実感が増す。そのため、撮像装置1に照明光の方向を検出するセンサを設け、光源の方向を検出して、被写体に対して斜めに照明が当たる場合に、OSD回路4により「照明光の方向が良好である」旨のメッセージを映像信号に重畳し、モニタ5に表示するとよい。具体的には、光の入射方向が撮像装置1の光軸方向に対して所定の角度以上傾いている場合(例えば45度以上)に、光の入射方向が良好であると判断すればよい。なお、被写体に対する光の入射方向と撮像装置1に対する光の入射方向は同じとみなせばよい。一方、光の入射方向が撮像装置の光軸方向に対して所定の角度未満の場合は、照明光の方向が悪く、対象物の表面の凹凸がはっきり現れないと判断し、「他の方向から対象物を撮影すると良い」等の注意を促すメッセージをOSD回路4により映像信号に重畳しモニタ5で表示すると良い。これらのメッセージは、音声や他の情報提示手段により出力しても構わない。このようにすることによって、技量のない撮影者であっても、良好な照明条件で撮影ができ、奥行き感・現実感のある映像を簡便に得ることができる。照明光の方向を検出するセンサとしては、例えば、開口部から入射する光を2次元の受光素子アレイで検知し、各素子の受光強度の分布から光の入射方向を判定する方式のセンサを用いることができるが、もちろん他の方式のセンサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1:撮像装置、2:カムコーダコントローラ、30:表示装置、100:ビデオカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも焦点距離と絞り値を含む撮影パラメータを変更可能な光学系を有するカメラと、
前記カメラで撮影した映像の表示に利用される表示装置の情報として、前記表示装置の視距離とその視距離から見たときの前記表示装置の画角とを特定するために必要な情報、を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段で取得した表示装置の情報から前記表示装置の視距離と画角を求め、前記カメラの画角が前記表示装置の画角に合い、かつ、前記カメラの被写界深度が前記表示装置の視距離から無限遠の範囲を含むように、前記カメラの撮影パラメータを制御する制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記カメラの被写界深度が前記表示装置の視距離から無限遠の範囲を含むように前記カメラの撮影パラメータを設定すると、絞り値が所定の上限値を超えてしまう場合には、
前記制御手段は、撮影者により指定された映像中の主対象物が少なくとも被写界深度に含まれ、かつ、絞り値が上限値に収まるように、前記カメラの撮影パラメータを設定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記カメラからの距離が前記表示装置の視距離よりも小さい範囲に存在する近接対象物を検出する検出手段を有し、
前記制御手段は、前記検出手段によって近接対象物が検出された場合に、撮影者に対して注意を促す情報を出力する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記カメラは、第1の撮像時間による撮影と前記第1の撮像時間よりも長い第2の撮像時間による撮影が可能なカメラであり、
前記情報取得手段は、前記表示装置の情報として、前記表示装置がインパルス型ディスプレイであるかホールド型ディスプレイであるかを特定する情報を取得し、
前記制御手段は、前記表示装置がインパルス型ディスプレイである場合は前記カメラの撮像時間を前記第1の撮像時間に設定し、前記表示装置がホールド型ディスプレイである場合は前記カメラの撮像時間を前記第2の撮像時間に設定する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記情報取得手段は、前記表示装置から、有線通信または無線通信によって、前記表示装置の情報を受信することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記情報取得手段は、前記表示装置の情報が記録された記録媒体から、前記表示装置の情報を読み込むことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記情報取得手段は、撮影者に前記表示装置の情報を入力させることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記情報取得手段は、撮影者に前記カメラを用いて前記表示装置の表示画面を撮影させ、前記表示画面に対するピント位置から前記表示装置の視距離を求めるとともに、撮影した映像を解析することにより前記表示画面のサイズを求める
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
照明光の入射方向を検出するセンサと、
前記センサにより検出された照明光の入射方向が前記カメラの光軸方向に対して所定の角度以上傾いている場合に、照明光の方向が良好である旨の情報を撮影者に対して提示する情報提示手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
少なくとも焦点距離と絞り値を含む撮影パラメータを変更可能な光学系を有するカメラを備えた撮像装置の制御方法であって、
前記カメラで撮影した映像の表示に利用される表示装置の情報として、前記表示装置の視距離とその視距離から見たときの前記表示装置の画角とを特定するために必要な情報、を取得するステップと、
取得した表示装置の情報から前記表示装置の視距離と画角を求め、前記カメラの画角が前記表示装置の画角に合い、かつ、前記カメラの被写界深度が前記表示装置の視距離から無限遠の範囲を含むように、前記カメラの撮影パラメータを制御するステップと、
を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−80412(P2012−80412A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225047(P2010−225047)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】