撮像装置
【課題】外部からの入射波による影響を低減し、撮像された対象者画像の鮮明さを向上させることが可能な撮像装置を提供すること。
【解決手段】被投影面6上に投影された対象者6の画像を撮像する撮像手段2と、被投影面6と撮像手段2との間の光路L2上に設けられ、被投影面6の対象者D側からの入射波L2による反射波L2及び被投影面6の対象者D側とは反対側からの入射波L4を透過又は反射させた状態である第1の偏光状態を実現する第1の偏光手段22Aと、被投影面6と撮像手段2との間の光路L2上に設けられ、被投影面6の反対側からの入射波L4を透過又は反射させた状態である第2の偏光状態を実現する第2の偏光手段22Bとを備える構成とする。第1の偏光状態での撮像画像と、第2の偏光状態での撮像画像との差分画像を生成し、被投影面の反対側からの入射波を考慮して、画像の鮮明さを向上させる。
【解決手段】被投影面6上に投影された対象者6の画像を撮像する撮像手段2と、被投影面6と撮像手段2との間の光路L2上に設けられ、被投影面6の対象者D側からの入射波L2による反射波L2及び被投影面6の対象者D側とは反対側からの入射波L4を透過又は反射させた状態である第1の偏光状態を実現する第1の偏光手段22Aと、被投影面6と撮像手段2との間の光路L2上に設けられ、被投影面6の反対側からの入射波L4を透過又は反射させた状態である第2の偏光状態を実現する第2の偏光手段22Bとを備える構成とする。第1の偏光状態での撮像画像と、第2の偏光状態での撮像画像との差分画像を生成し、被投影面の反対側からの入射波を考慮して、画像の鮮明さを向上させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用表示装置として、表示装置から発した光を運転者の前方に映し出して表示像を表示することにより、運転者に対して種々の情報を報知するヘッドアップディスプレイがある。このヘッドアップディスプレイでは、運転者が視認できるように表示像の表示位置を調整する必要があり、表示像の表示位置は運転者の眼の位置に応じて調整される。運転者の眼の位置は、運転者の体格や体勢などに応じて変わるため、運転者の正しい眼の位置を検出し、検出された眼の位置に応じて表示像の表示位置が調整される。
【0003】
表示像の表示位置を調整可能なヘッドアップディスプレイとして、特開2008−155720号公報(特許文献1)に記載された技術がある。特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイは、利用者(運転者)に向けて赤外線を照射する赤外線照射手段、及び利用者を反射した赤外線を感受して利用者を撮像する赤外線カメラを備えている。特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイでは、複数の赤外線カメラによって利用者を撮像し、撮像された複数の顔画像に基づいて眼球位置の3次元座標を算出することで、眼球位置を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−155720号公報
【特許文献2】特開平11−95156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、外部から強い太陽光が車室内へ入射した場合には、運転者の画像が不鮮明になり運転者の画像の認識が困難になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、外部から入射する入射波による影響を低減し、撮像された対象者の画像の鮮明さを向上させることが可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による撮像装置は、被投影面上に投影された対象者の画像を撮像する撮像手段と、被投影面と撮像手段との間の光路上に設けられ、被投影面の対象者側からの入射波による反射波及び被投影面の対象者側とは反対側からの入射波を、透過又は反射させた状態である第1の偏光状態を実現する第1の偏光手段と、被投影面と撮像手段との間の光路上に設けられ、被投影面の反対側からの入射波を透過又は反射させた状態である第2の偏光状態を実現する第2の偏光手段と、第1の偏光状態で撮像された第1の撮像画像と第2の偏光状態で撮像された第2の撮像画像との差分画像を取得する差分画像取得手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
このような撮像装置では、被投影面上に投影された対象者の画像を撮像する撮像手段と、被投影面と撮像手段との間の光路上に設けられ、被投影面の対象者側からの入射波による反射波及び被投影面の対象者側とは反対側からの入射波を透過又は反射させた状態である第1の偏光状態を実現する第1の偏光手段と、被投影面と撮像手段との間の光路上に設けられ、被投影面の反対側からの入射波を透過又は反射させた状態である第2の偏光状態を実現する第2の偏光手段とを備えている。ここで、本発明では、第1の偏光状態で撮像された第1の撮像画像と、第2の偏光状態で撮像された第2の撮像画像との差分画像を取得することができるので、第1の撮像画像に映り込んだ対象者画像及び被投影面の反対側からの入射波による画像のうち、第2の撮像画像に映り込んだ被投影面の反対側からの入射波による画像を取り除くことが可能となる。これにより、被投影面の反対側からの入射波を考慮することができ、被投影面の反対側からの入射波による影響を低減して、対象者画像の鮮明さを向上させることができる。
【0009】
また、車両用撮像装置として、被投影面を有するウインドシールド上に投影された対象者である運転者の画像を撮像する撮像手段と、ウインドシールドと撮像手段との間の光路上に設けられ、ウインドシールドの運転者側からの入射波による反射波及びウインドシールドの運転者側とは反対側からの入射波を、透過又は反射させた状態である第1の偏光状態を実現する第1の偏光手段と、ウインドシールドと撮像手段との間の光路上に設けられ、ウインドシールドの反対側からの入射波を透過又は反射させた状態である第2の偏光状態を実現する第2の偏光手段と、を備える構成が好適である。これにより、第1の撮像画像に映り込んだ運転者画像及び車室外からの入射光による画像のうち、第2の撮像画像に映り込んだ車室外からの入射光による画像を取り除くことが可能となる。その結果、車両外部からの入射光を考慮することができ、入射光として強い太陽光が車両外部から入射した場合であっても太陽光による影響を低減して運転者画像を撮像することができるため、撮像される運転者画像が不鮮明になることを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の撮像装置によれば、外部から入射する入射光を考慮しているため、撮像される対象者画像の鮮明さを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置を備えた車両用表示装置を示すブロック構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る撮像装置を備えた車両用表示装置の模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るカメラ部をウインドシールドの上方から示す平面図である。
【図4】入射角と反射率との関係を示すグラフである。
【図5】S偏光画像を撮影する第1カメラに入射されるS偏光波の光路、及び虚像光路を示す図である。
【図6】S偏光画像、P偏光画像、及び差分画像を示す模式図である。
【図7】P偏光画像を撮影する第2カメラに入射されるP偏光波の光路、及び虚像光路を示す図である。
【図8】HUD−ECUで実行される虚像表示位置の自動調整処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】画像処理部で実行される画像処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】追跡演算部で実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】ミラーの駆動制御と、表示光路との関係を説明するための概略斜視図である。
【図12】画像処理部で実行される運転姿勢判別処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態に係る撮像装置を備えた車両用表示装置について詳細に説明する。また、本実施形態の説明においては、「位置」の基準を車両の位置とする。また、本実施形態における運転者の眼球は、運転者の両眼の眼球とする。
【0013】
まず、図1〜図3を参照しながら、本実施形態に係る撮像装置を備えた車両用表示装置の構成を説明する。図1〜図3に示す車両用表示装置Mは、所謂ヘッドアップディスプレイ(以下、「HUD」という。)であり、車両に搭載され、車両の運転者Dの視界内に表示像を表示するものである。図1に示すように、車両用表示装置Mは、カメラ部(撮像手段)2、表示部3、ミラー4、ミラー駆動部5、及びHUD−ECU10を備えている。カメラ部2、表示部3、及びミラー駆動部5は、それぞれがHUD−ECU10に電気的に接続されている。また、HUD−ECU10には、イグニッションボタン9が電気的に接続されている。
【0014】
図2では、車両の運転者Dが車両前方を見ながら車両を運転する様子を示している。図2に示すように、車両用表示装置Mは、本装置の主要部となるHUD本体1内に、上記のカメラ部2、表示部3、ミラー4、ミラー駆動部5、及びHUD−ECU10を収容している。HUD本体1は、ウインドシールド6の下方に設けられたダッシュボード7内に配置されている。ダッシュボード7の天板7aには、開口部7bが設けられ、HUD本体1は、開口部7bの下側に配置されている。
【0015】
表示部3は、例えば液晶ディスプレイなどであり、HUD−ECU10からの信号を受信して表示像を表示するものである。ミラー4は、表示部3の正面側に配置され、表示部3から投射された表示像をウィンドシールドガラス6に向けて反射させるものである。ミラー4は、例えば凹面鏡であり、表示部3とは反対側へ窪むように湾曲する反射面を有している。ミラー駆動部5は、ミラー4を駆動制御するものであり、例えば、モータ、ラック&ピニオン、ガイドレールなどを備え、ミラー4の角度、位置を調整するものである。ミラー駆動部5は、HUD−ECU10によって算出された表示光路L1を形成するようにミラー4を駆動制御する。
【0016】
HUD−ECU10は、表示部3から発せられた光が、ブリュースター角を外した角度でウインドシールド6に入射し、ウインドシールド6で反射した光が運転者Dの眼の位置に入射する表示光路を形成するように、ミラー駆動部5を制御する。
【0017】
カメラ部2は、ウインドシールド6で反射した運転者Dの顔画像を撮像するものである。カメラ部2は、ウインドシールド6に映った運転者Dの虚像を用いて運転者Dを撮影する。カメラ部2は、第1カメラ21A、第2カメラ21B、第1偏光板22A、第2偏光板22Bを備えている。これらの第カメラ21A、第2カメラ21B、第1偏光板22A及び第2偏光板22Bは、ダッシュボード7の開口部7bに対応するように配置されている。
【0018】
第1カメラ21A及び第2カメラ21Bは、ブリュースター角(もしくはブリュースター角近傍の角度)でウインドシールド6に映り込んだ運転者Dの虚像の反射光路(以下、「虚像光路」という。)L2上に設置されている。図4は、入射角と反射率との関係を示すグラフである。図4に示すように、ブリュースター角で入射した光が反射すると、反射光のP偏光成分がゼロになる。カメラ部2は、この特性を利用して、運転者Dの虚像を撮影する。
【0019】
第1偏光板22Aは、S偏光成分の光のみを透過させる偏光板であり、第1カメラ21Aに入射する虚像光路L2上に設けられている。第1偏光板22Aは、例えば、第1カメラ21Aの直前に配置されている。この第1偏光板22Aは、第1の偏光手段に相当するものであり、ウインドシールド6と第1カメラ21Aとの間の虚像光路L2上に設けられ、車室内からの反射波及び車室外からの入射波を透過又は反射する第1の偏光状態とする機能を有するものである。
【0020】
第2偏光板22Bは、P偏光成分の光のみを透過させる偏光板であり、第2カメラ22Bに入射する虚像光路L2上に設けられている。第2偏光板22Bは、例えば、第2カメラ21Bの直前に配置されている。この第2偏光板22Bは、第2の偏光手段に相当するものであり、ウインドシールド6と第2カメラ21Bとの間の虚像光路L2上に設けられ、車室外からの入射波L2を透過又は反射する第2の偏光状態とする機能を有するものである。
【0021】
次に、HUD−ECU10について説明する。HUD−ECU10は、演算処理を行うCPU、記憶部となるROM及びRAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成されている。HUD−ECU10では、記憶部に記憶されたプログラムを実行することで、画像処理部30、追跡演算部40、表示制御部50が構築される。
【0022】
画像処理部31は、カメラ部2から入力された画像信号を受信して画像処理を行うものであり、S偏光画像及びP偏光画像を用いて差分画像を取得する差分画像取得部31、差分画像を用いて運転者Dの頭部の特徴点を検出する特徴点検出部32、運転者Dの顔向きを検出する顔向き検出部33、運転者Dの左右の瞳の位置を検出する瞳位置検出部34を有する。追跡演算部40は、表示光路を算出する表示光路算出部41、ミラー駆動部5を制御する駆動制御部42を有する。
【0023】
次に、S偏光画像の撮影方法について説明する。図5に示すように、車室内からのS偏光波L3がウインドシールド6に入射し、ウインドシールド6に運転者Dの虚像が映し出される。車室内からのS偏光波L3がウインドシールド6に入射する際の角度は、ブリュースター角(もしくはブリュースター角近傍の角度)とされている。そして、車室内からのS偏光波L3は、ウインドシールド6で反射して、カメラ部2へ向かう。このとき、ウインドシールド6で反射するS偏光波L3と、車室外から入射してウインドシールド6を透過するS偏光波L4とが重なり、虚像光路L2に沿って進み開口部7bを通過する。開口部7bを通過したS偏光波(L3,L4)は、第1偏光板22Aを透過して、第1カメラ21Aによって撮影される。そのとき、第1偏光板22Aは、図6(A)に示す状態になっており、S偏光成分の光のみを通過させる。第1カメラ21Aは、図6(B)に示すように、運転者Dと車室外の景色Sとが重なった画像であるS偏光画像を撮影する。
【0024】
次に、P偏光画像の撮影方法について説明する。図7に示すように、車室外からのP偏光波L5がウインドシールド6に入射し、ウインドシールド6を透過して、開口部7bを通過する。開口部7bを通過したP偏光波は、第2偏光板22Bを透過して、第2カメラ21Bによって撮影される。そのとき、第2偏光板22Bは、図6(C)に示す状態になっており、P偏光成分の光のみを通過させる。第2カメラ22Bは、図6(D)に示すように、景色Sのみの画像であるP偏光画像を撮影する。
【0025】
次に、運転者の状態(体格)虚像表示位置の自動調整方法について説明する。図8は、虚像表示位置の自動調整処理における手順を示すフローチャートである。なお、ステップをSと略記することがある。まず、運転者DによってイグニッションボタンがON操作(電源投入)されると、車両表示装置Mの電源も投入される(S1)。
【0026】
電源が投入されると、HUD−ECU10の表示制御部50は、HUDの虚像Vとしてブート画面を表示するために、表示部3にブート画面を投影する(S2)。
【0027】
駆動制御部42は、ミラー駆動部5を制御してミラー4を駆動し、ミラー4を初期状態の位置に設定し(S3)、ミラー4の位置が初期状態に設定されると、表示制御部50はブート画面を消去する(S4)。
【0028】
次に、表示制御部50は、HUDの虚像VとしてHUDの通常画面を表示するために、表示部3に通常表示を投影する(S5)。HUDの通常画面としては、例えば、スピード表示、ナビゲーション情報表示などがある。
【0029】
ここで、HUD−ECU10は、運転者Dの状態(体格)に合わせて、運転者DがHUDの虚像Vを常に視認することができるようにするため、画像処理(S6)、追跡演算処理(S7)を行う。「画像処理」、「追跡演算処理」については、後述する。
【0030】
続くステップ8では、HUD−ECU10は、イグニッションボタン9のOFFを検出したか否かを判定する。HUD−ECU10は、イグニッションボタン9のOFF状態を検出した場合には、処理を終了し、イグニッションボタン9のOFF状態を検出しない場合には、ステップ5〜ステップ8の処理を順次繰り返す。
【0031】
次に、画像処理部における画像処理について説明する。図9は、画像処理部における処理手順を示すフローチャートである。画像処理部30に電源が投入されると、画像処理部30は、第1カメラ21Aから出力されたS偏光画像(図6(B)参照)を入力し、第2カメラ21Bから出力されたP偏光画像(図6(D)参照)を入力する。
【0032】
次に、画像処理部30は、S偏光画像とP偏光画像の補正を行う(S11)。画像処理部30は、第1カメラ21A又は第2カメラ21Bの何れか一方の位置を基準として、ウインドシールド6の曲率を考慮して画像補正を行う。具体的には、第1カメラ21Aの位置を基準とした場合、第2カメラ21Bで撮影されたP偏光画像を、第1カメラ21Aの位置で撮影したように、画像処理により補正する。なお、画像補正における基準位置は、その他の位置でもよい。
【0033】
続いて、画像処理部30の差分画像取得部31は、S偏光画像とP偏光画像の差分画像を取得する(S12)。これにより、差分画像取得部31は、図6(E)に示すように、差分画像として、運転者Dのみの虚像画像を取得することができる。
【0034】
次に、画像処理部30の特徴点検出部32は、ステップ12で取得した差分画像を用いて画像処理を行うことにより、運転者Dの頭部における特徴点の位置を検出する(S13)。ここで、特徴点としては、例えば、鼻、目、耳、口、眉毛、あご、額などがある。
【0035】
続いて、画像処理部30の顔向き検出部33は、運転者Dの頭部における特徴点の位置に基づいて、運転者Dの顔の向きを検出する(S14)。次に、画像処理部30の瞳位置検出部34は、運転者Dの頭部における特徴点の位置に基づいて、運転者Dの左右の瞳の位置を特定(推定)する(S15)。
【0036】
そして、画像処理部30は、ステップ15で推定された左右の瞳の位置に基づいて中心部を算出しアイボックスの中心位置を決定する。次に、画像処理部30は、アイボックスの中心位置が決定されたか否かを判定する(S16)。アイボックスの中心位置が決定された場合には、ここでの処理を終了してステップ7の追跡演算処理を実行し、アイボックスの中心位置が検出されなかった場合には、ステップ11〜ステップ16の処理を順次繰り返す。
【0037】
次に、追跡演算部における追跡演算処理について説明する。図10は、追跡演算部における処理手順を示すフローチャートである。ステップ7の画像処理でアイボックスの中心位置を検出すると、追跡演算部40の表示光路算出部41は、HUD光源(表示部3)からアイボックス中心位置までの光路を算出する(S21)。ここでいう「光路」は、図2に示す表示光路L1である。
【0038】
続いて、追跡演算部40の駆動制御部42は、ステップ22で算出された表示光路に適合するように、ミラー駆動部5を制御して、ミラー4の角度を調整する(S22)。図11は、ミラーの駆動制御と、表示光路との関係を説明するための概略斜視図である。例えば、表示光路L1bでのアイボックスの位置より、アイボックスの位置を高く調整する場合には、表示光路L1bを表示部3側へ傾斜させて表示光路L1aとする。一方、表示光路L1bでのアイボックスの位置より、アイボックスの位置を低く調整する場合には、表示光路L1bを表示部3とは反対側へ傾斜させて表示光路L1cとする。
【0039】
このような本実施形態に車両用表示装置では、表示光路L1がブリュースター角を外した角度でウインドシールド6に入射しているため、運転者Dが偏光サングラスを着用しているか否かに関わらず、運転者Dはフラットな虚像Vを視認することが可能となる。また、太陽光のような強烈な光がウインドシールド6からカメラ部2に入射した場合においても、S偏光画像とP偏光画像の差分画像を生成することで太陽光の影響が抑制された画像を取得することができる。そのため、太陽光の影響を抑制して、運転者画像を正面から撮像することができる。
【0040】
このように、ウインドシールド6で反射した運転者Dの虚像を偏光板22A,22B及びカメラ21A,21Bを用いて撮像することにより、運転者Dに緊張感を与えず、正面から撮影することで、運転者の目の位置を検出し、確実なアイポイントの位置を把握し、自動調整することが可能なHUDを実現することができる。
【0041】
次に、本発明の撮像装置の変形例1について説明する。例えば、偏光板22A,22Bに減光フィルタを重ね合わせて用いることができる。外部から入射する太陽光が強い場合には、減光フィルタを偏光板22A,22Bに重ね合わせて使用することで、太陽光による影響を一層低減させることが可能である。上述の画像処理部31によって、S偏光画像とP偏光画像に基づいて差分画像を取得する際に、減光フィルタを用いた場合には、減光フィルタを用いていない場合と比較して、差分画像におけるコントラストが大きくなるため、運転者Dの頭部の特徴点位置を検出し易くなるという利点がある。
【0042】
次に、本発明の撮像装置の変形例2について説明する。上述の画像処理では、例えば、鼻、目、耳、口、眉毛、あご、額などの頭部にある特徴点の位置に基づいて、アイボックスの中心位置を算出しているが、頭部以外の体の形状、位置に基づいて、アイボックスの中心の位置を算出してもよい。例えば、差分画像を用いて運転者Dの肩の形状を検出し運転者の体格を判定して、アイボックスの中心点の位置を検出してもよい。
【0043】
また、上述の画像処理において、運転者の運転姿勢を判別する処理を実行してもよい。図12は、画像処理部で実行される運転姿勢判別処理の手順を示すフローチャートである。図12に示す運転姿勢判別処理は、ステップ15の瞳位置検出が実行された後であり、ステップ16のアイボックスの中心位置決定処理が実行される前に実行される。
【0044】
運転姿勢判別処理では、まず、ステップ14で検出された運転者Dの顔向きと、ステップ15で検出された左右の瞳の位置とに基づいて、運転者Dの視線位置(運転者Dが見ている方向)を検出する(S31)。
【0045】
次に、画像処理部30は、ステップ31で検出した視線位置に基づいて、運転者Dの脇見判定を行う(S32)。運転者Dの視線位置が予め設定されている範囲内に収まっているか否かの判定を行うことで、脇見判定を行う。例えば、画像処理部30は、基準となる視線位置(例えば自車両の進行方向の前方)と、検出された運転者Dの視線位置との角度が判定閾値以上であるか否かの判定を行う。基準の視線位置と運転者Dの視線位置との角度が判定閾値以上である場合には、脇見運転であると判定しステップ33に進み、基準の視線位置と運転者Dの視線位置との角度が判定閾値以上であると判定されなかった場合には、脇見運転であると判定せずステップ34に進む。
【0046】
ステップ33では、画像処理部30は、表示制御部50に警告信号を出力し、表示部3に警告画像を表示させる。警告画像の表示を行うことで、運転者Dに、脇見運転を止めるよう注意喚起を行う。
【0047】
続く、ステップ34では、画像処理部30は、ステップ14で検出された運転者Dの顔向き、ステップ15で検出された左右の瞳の位置、ステップ31で検出された視線方向に基づいて、覚醒判定を行う(S34)。予め設定された判定条件である判定閾値以上である場合に、覚醒度が低いと判定し、ステップ35に進み、判定閾値以上であると判定されなかった場合には、覚醒度が高いと判定し、ステップ35の処理を実行せずに、運転姿勢判別処理を終了する。
【0048】
ステップ35では、画像処理部30は、表示制御部50に警告信号を出力し、表示部3に警告画像を表示させる。警告画像の表示を行うことで、運転者Dに、注意喚起を行う。また、警告画像の表示とは別に、警告音を発することで、運転者Dに注意喚起を行ってもよい。運転姿勢判別処理の終了後、ステップ16に進み、アイボックスの中心位置決定を行う。このような運転姿勢判別処理を行うことで、運転者Dの状態に応じて、警告を発することが可能となる。
【0049】
次に、本発明の撮像装置の変形例3について説明する。上記の撮像装置では、第1偏光板22Aを用いてS偏光画像を取得する第1カメラ21Aと、第2偏光板22Bを用いてP偏光画像を取得する第2カメラ21Bとを備える構成としているが、1枚の偏光板及び1台のカメラを備える撮像装置としてもよい。このような撮像装置では、偏光板の位置を変更する駆動装置を備え、偏光板の回転位置を90度回転移動させて、図6(A)に示す状態と、図6(C)に示す状態とを切替可能な構成とする。また、他の方法として、電気的に、第1の偏光状態、及び第2の偏光状態を作り出す構成としてもよい。そして、カメラ部においては、所定の間隔毎にストロボ信号が出力され、このストロボ信号を受信したカメラでは、画像の撮影が行われる。偏光部においては、ストロボ信号に応じて、第1の偏光状態及び第2の状態を交互に作り出すようにする。このような構成とすることで、1枚の偏光板及び1台のカメラを用いて、運転者Dの画像を撮影することができる。
【0050】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるもではない。第1の偏光手段は、被投影面(ウインドシールド6)の対象者(運転者D)側からの入射波による反射波及び被投影面の対象者側とは反対側からの入射波(太陽光)を、反射させた状態である第1の偏光状態を実現するものでもよい。第2の偏光手段は、被投影面の反対側からの入射波を反射させた状態である第2の偏光状態を実現するものでもよい。
【0051】
また、撮像装置は、車両用搭載されるものでもよく、例えば飛行機などその他の乗り物に搭載されて、その乗り物を操縦する操縦者を撮像するものでもよい。また、例えば、屋外で使用される表示装置に搭載される撮像装置として、コンバイナに反射した対象者の虚像を撮像するものでもよい。また、屋内で使用される表示装置と共に、本発明の撮像装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0052】
M…車両用表示装置(ヘッドアップディスプレイユニット)、1…HUD本体、2…カメラ部、21A…第1カメラ、21B…第2カメラ、22A…第1偏光板、22A…第2偏光板、3…表示部、4…ミラー、5…ミラー駆動部、6…ウインドシールド、10…HUD−ECU、30…画像処理部、31…差分画像取得部、32…特徴点検出部、33…顔向き検出部、34…瞳位置検出部、40…追跡演算部、41…表示光路算出部、42…駆動制御部、50…表示制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用表示装置として、表示装置から発した光を運転者の前方に映し出して表示像を表示することにより、運転者に対して種々の情報を報知するヘッドアップディスプレイがある。このヘッドアップディスプレイでは、運転者が視認できるように表示像の表示位置を調整する必要があり、表示像の表示位置は運転者の眼の位置に応じて調整される。運転者の眼の位置は、運転者の体格や体勢などに応じて変わるため、運転者の正しい眼の位置を検出し、検出された眼の位置に応じて表示像の表示位置が調整される。
【0003】
表示像の表示位置を調整可能なヘッドアップディスプレイとして、特開2008−155720号公報(特許文献1)に記載された技術がある。特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイは、利用者(運転者)に向けて赤外線を照射する赤外線照射手段、及び利用者を反射した赤外線を感受して利用者を撮像する赤外線カメラを備えている。特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイでは、複数の赤外線カメラによって利用者を撮像し、撮像された複数の顔画像に基づいて眼球位置の3次元座標を算出することで、眼球位置を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−155720号公報
【特許文献2】特開平11−95156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、外部から強い太陽光が車室内へ入射した場合には、運転者の画像が不鮮明になり運転者の画像の認識が困難になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、外部から入射する入射波による影響を低減し、撮像された対象者の画像の鮮明さを向上させることが可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による撮像装置は、被投影面上に投影された対象者の画像を撮像する撮像手段と、被投影面と撮像手段との間の光路上に設けられ、被投影面の対象者側からの入射波による反射波及び被投影面の対象者側とは反対側からの入射波を、透過又は反射させた状態である第1の偏光状態を実現する第1の偏光手段と、被投影面と撮像手段との間の光路上に設けられ、被投影面の反対側からの入射波を透過又は反射させた状態である第2の偏光状態を実現する第2の偏光手段と、第1の偏光状態で撮像された第1の撮像画像と第2の偏光状態で撮像された第2の撮像画像との差分画像を取得する差分画像取得手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
このような撮像装置では、被投影面上に投影された対象者の画像を撮像する撮像手段と、被投影面と撮像手段との間の光路上に設けられ、被投影面の対象者側からの入射波による反射波及び被投影面の対象者側とは反対側からの入射波を透過又は反射させた状態である第1の偏光状態を実現する第1の偏光手段と、被投影面と撮像手段との間の光路上に設けられ、被投影面の反対側からの入射波を透過又は反射させた状態である第2の偏光状態を実現する第2の偏光手段とを備えている。ここで、本発明では、第1の偏光状態で撮像された第1の撮像画像と、第2の偏光状態で撮像された第2の撮像画像との差分画像を取得することができるので、第1の撮像画像に映り込んだ対象者画像及び被投影面の反対側からの入射波による画像のうち、第2の撮像画像に映り込んだ被投影面の反対側からの入射波による画像を取り除くことが可能となる。これにより、被投影面の反対側からの入射波を考慮することができ、被投影面の反対側からの入射波による影響を低減して、対象者画像の鮮明さを向上させることができる。
【0009】
また、車両用撮像装置として、被投影面を有するウインドシールド上に投影された対象者である運転者の画像を撮像する撮像手段と、ウインドシールドと撮像手段との間の光路上に設けられ、ウインドシールドの運転者側からの入射波による反射波及びウインドシールドの運転者側とは反対側からの入射波を、透過又は反射させた状態である第1の偏光状態を実現する第1の偏光手段と、ウインドシールドと撮像手段との間の光路上に設けられ、ウインドシールドの反対側からの入射波を透過又は反射させた状態である第2の偏光状態を実現する第2の偏光手段と、を備える構成が好適である。これにより、第1の撮像画像に映り込んだ運転者画像及び車室外からの入射光による画像のうち、第2の撮像画像に映り込んだ車室外からの入射光による画像を取り除くことが可能となる。その結果、車両外部からの入射光を考慮することができ、入射光として強い太陽光が車両外部から入射した場合であっても太陽光による影響を低減して運転者画像を撮像することができるため、撮像される運転者画像が不鮮明になることを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の撮像装置によれば、外部から入射する入射光を考慮しているため、撮像される対象者画像の鮮明さを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置を備えた車両用表示装置を示すブロック構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る撮像装置を備えた車両用表示装置の模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るカメラ部をウインドシールドの上方から示す平面図である。
【図4】入射角と反射率との関係を示すグラフである。
【図5】S偏光画像を撮影する第1カメラに入射されるS偏光波の光路、及び虚像光路を示す図である。
【図6】S偏光画像、P偏光画像、及び差分画像を示す模式図である。
【図7】P偏光画像を撮影する第2カメラに入射されるP偏光波の光路、及び虚像光路を示す図である。
【図8】HUD−ECUで実行される虚像表示位置の自動調整処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】画像処理部で実行される画像処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】追跡演算部で実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】ミラーの駆動制御と、表示光路との関係を説明するための概略斜視図である。
【図12】画像処理部で実行される運転姿勢判別処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態に係る撮像装置を備えた車両用表示装置について詳細に説明する。また、本実施形態の説明においては、「位置」の基準を車両の位置とする。また、本実施形態における運転者の眼球は、運転者の両眼の眼球とする。
【0013】
まず、図1〜図3を参照しながら、本実施形態に係る撮像装置を備えた車両用表示装置の構成を説明する。図1〜図3に示す車両用表示装置Mは、所謂ヘッドアップディスプレイ(以下、「HUD」という。)であり、車両に搭載され、車両の運転者Dの視界内に表示像を表示するものである。図1に示すように、車両用表示装置Mは、カメラ部(撮像手段)2、表示部3、ミラー4、ミラー駆動部5、及びHUD−ECU10を備えている。カメラ部2、表示部3、及びミラー駆動部5は、それぞれがHUD−ECU10に電気的に接続されている。また、HUD−ECU10には、イグニッションボタン9が電気的に接続されている。
【0014】
図2では、車両の運転者Dが車両前方を見ながら車両を運転する様子を示している。図2に示すように、車両用表示装置Mは、本装置の主要部となるHUD本体1内に、上記のカメラ部2、表示部3、ミラー4、ミラー駆動部5、及びHUD−ECU10を収容している。HUD本体1は、ウインドシールド6の下方に設けられたダッシュボード7内に配置されている。ダッシュボード7の天板7aには、開口部7bが設けられ、HUD本体1は、開口部7bの下側に配置されている。
【0015】
表示部3は、例えば液晶ディスプレイなどであり、HUD−ECU10からの信号を受信して表示像を表示するものである。ミラー4は、表示部3の正面側に配置され、表示部3から投射された表示像をウィンドシールドガラス6に向けて反射させるものである。ミラー4は、例えば凹面鏡であり、表示部3とは反対側へ窪むように湾曲する反射面を有している。ミラー駆動部5は、ミラー4を駆動制御するものであり、例えば、モータ、ラック&ピニオン、ガイドレールなどを備え、ミラー4の角度、位置を調整するものである。ミラー駆動部5は、HUD−ECU10によって算出された表示光路L1を形成するようにミラー4を駆動制御する。
【0016】
HUD−ECU10は、表示部3から発せられた光が、ブリュースター角を外した角度でウインドシールド6に入射し、ウインドシールド6で反射した光が運転者Dの眼の位置に入射する表示光路を形成するように、ミラー駆動部5を制御する。
【0017】
カメラ部2は、ウインドシールド6で反射した運転者Dの顔画像を撮像するものである。カメラ部2は、ウインドシールド6に映った運転者Dの虚像を用いて運転者Dを撮影する。カメラ部2は、第1カメラ21A、第2カメラ21B、第1偏光板22A、第2偏光板22Bを備えている。これらの第カメラ21A、第2カメラ21B、第1偏光板22A及び第2偏光板22Bは、ダッシュボード7の開口部7bに対応するように配置されている。
【0018】
第1カメラ21A及び第2カメラ21Bは、ブリュースター角(もしくはブリュースター角近傍の角度)でウインドシールド6に映り込んだ運転者Dの虚像の反射光路(以下、「虚像光路」という。)L2上に設置されている。図4は、入射角と反射率との関係を示すグラフである。図4に示すように、ブリュースター角で入射した光が反射すると、反射光のP偏光成分がゼロになる。カメラ部2は、この特性を利用して、運転者Dの虚像を撮影する。
【0019】
第1偏光板22Aは、S偏光成分の光のみを透過させる偏光板であり、第1カメラ21Aに入射する虚像光路L2上に設けられている。第1偏光板22Aは、例えば、第1カメラ21Aの直前に配置されている。この第1偏光板22Aは、第1の偏光手段に相当するものであり、ウインドシールド6と第1カメラ21Aとの間の虚像光路L2上に設けられ、車室内からの反射波及び車室外からの入射波を透過又は反射する第1の偏光状態とする機能を有するものである。
【0020】
第2偏光板22Bは、P偏光成分の光のみを透過させる偏光板であり、第2カメラ22Bに入射する虚像光路L2上に設けられている。第2偏光板22Bは、例えば、第2カメラ21Bの直前に配置されている。この第2偏光板22Bは、第2の偏光手段に相当するものであり、ウインドシールド6と第2カメラ21Bとの間の虚像光路L2上に設けられ、車室外からの入射波L2を透過又は反射する第2の偏光状態とする機能を有するものである。
【0021】
次に、HUD−ECU10について説明する。HUD−ECU10は、演算処理を行うCPU、記憶部となるROM及びRAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成されている。HUD−ECU10では、記憶部に記憶されたプログラムを実行することで、画像処理部30、追跡演算部40、表示制御部50が構築される。
【0022】
画像処理部31は、カメラ部2から入力された画像信号を受信して画像処理を行うものであり、S偏光画像及びP偏光画像を用いて差分画像を取得する差分画像取得部31、差分画像を用いて運転者Dの頭部の特徴点を検出する特徴点検出部32、運転者Dの顔向きを検出する顔向き検出部33、運転者Dの左右の瞳の位置を検出する瞳位置検出部34を有する。追跡演算部40は、表示光路を算出する表示光路算出部41、ミラー駆動部5を制御する駆動制御部42を有する。
【0023】
次に、S偏光画像の撮影方法について説明する。図5に示すように、車室内からのS偏光波L3がウインドシールド6に入射し、ウインドシールド6に運転者Dの虚像が映し出される。車室内からのS偏光波L3がウインドシールド6に入射する際の角度は、ブリュースター角(もしくはブリュースター角近傍の角度)とされている。そして、車室内からのS偏光波L3は、ウインドシールド6で反射して、カメラ部2へ向かう。このとき、ウインドシールド6で反射するS偏光波L3と、車室外から入射してウインドシールド6を透過するS偏光波L4とが重なり、虚像光路L2に沿って進み開口部7bを通過する。開口部7bを通過したS偏光波(L3,L4)は、第1偏光板22Aを透過して、第1カメラ21Aによって撮影される。そのとき、第1偏光板22Aは、図6(A)に示す状態になっており、S偏光成分の光のみを通過させる。第1カメラ21Aは、図6(B)に示すように、運転者Dと車室外の景色Sとが重なった画像であるS偏光画像を撮影する。
【0024】
次に、P偏光画像の撮影方法について説明する。図7に示すように、車室外からのP偏光波L5がウインドシールド6に入射し、ウインドシールド6を透過して、開口部7bを通過する。開口部7bを通過したP偏光波は、第2偏光板22Bを透過して、第2カメラ21Bによって撮影される。そのとき、第2偏光板22Bは、図6(C)に示す状態になっており、P偏光成分の光のみを通過させる。第2カメラ22Bは、図6(D)に示すように、景色Sのみの画像であるP偏光画像を撮影する。
【0025】
次に、運転者の状態(体格)虚像表示位置の自動調整方法について説明する。図8は、虚像表示位置の自動調整処理における手順を示すフローチャートである。なお、ステップをSと略記することがある。まず、運転者DによってイグニッションボタンがON操作(電源投入)されると、車両表示装置Mの電源も投入される(S1)。
【0026】
電源が投入されると、HUD−ECU10の表示制御部50は、HUDの虚像Vとしてブート画面を表示するために、表示部3にブート画面を投影する(S2)。
【0027】
駆動制御部42は、ミラー駆動部5を制御してミラー4を駆動し、ミラー4を初期状態の位置に設定し(S3)、ミラー4の位置が初期状態に設定されると、表示制御部50はブート画面を消去する(S4)。
【0028】
次に、表示制御部50は、HUDの虚像VとしてHUDの通常画面を表示するために、表示部3に通常表示を投影する(S5)。HUDの通常画面としては、例えば、スピード表示、ナビゲーション情報表示などがある。
【0029】
ここで、HUD−ECU10は、運転者Dの状態(体格)に合わせて、運転者DがHUDの虚像Vを常に視認することができるようにするため、画像処理(S6)、追跡演算処理(S7)を行う。「画像処理」、「追跡演算処理」については、後述する。
【0030】
続くステップ8では、HUD−ECU10は、イグニッションボタン9のOFFを検出したか否かを判定する。HUD−ECU10は、イグニッションボタン9のOFF状態を検出した場合には、処理を終了し、イグニッションボタン9のOFF状態を検出しない場合には、ステップ5〜ステップ8の処理を順次繰り返す。
【0031】
次に、画像処理部における画像処理について説明する。図9は、画像処理部における処理手順を示すフローチャートである。画像処理部30に電源が投入されると、画像処理部30は、第1カメラ21Aから出力されたS偏光画像(図6(B)参照)を入力し、第2カメラ21Bから出力されたP偏光画像(図6(D)参照)を入力する。
【0032】
次に、画像処理部30は、S偏光画像とP偏光画像の補正を行う(S11)。画像処理部30は、第1カメラ21A又は第2カメラ21Bの何れか一方の位置を基準として、ウインドシールド6の曲率を考慮して画像補正を行う。具体的には、第1カメラ21Aの位置を基準とした場合、第2カメラ21Bで撮影されたP偏光画像を、第1カメラ21Aの位置で撮影したように、画像処理により補正する。なお、画像補正における基準位置は、その他の位置でもよい。
【0033】
続いて、画像処理部30の差分画像取得部31は、S偏光画像とP偏光画像の差分画像を取得する(S12)。これにより、差分画像取得部31は、図6(E)に示すように、差分画像として、運転者Dのみの虚像画像を取得することができる。
【0034】
次に、画像処理部30の特徴点検出部32は、ステップ12で取得した差分画像を用いて画像処理を行うことにより、運転者Dの頭部における特徴点の位置を検出する(S13)。ここで、特徴点としては、例えば、鼻、目、耳、口、眉毛、あご、額などがある。
【0035】
続いて、画像処理部30の顔向き検出部33は、運転者Dの頭部における特徴点の位置に基づいて、運転者Dの顔の向きを検出する(S14)。次に、画像処理部30の瞳位置検出部34は、運転者Dの頭部における特徴点の位置に基づいて、運転者Dの左右の瞳の位置を特定(推定)する(S15)。
【0036】
そして、画像処理部30は、ステップ15で推定された左右の瞳の位置に基づいて中心部を算出しアイボックスの中心位置を決定する。次に、画像処理部30は、アイボックスの中心位置が決定されたか否かを判定する(S16)。アイボックスの中心位置が決定された場合には、ここでの処理を終了してステップ7の追跡演算処理を実行し、アイボックスの中心位置が検出されなかった場合には、ステップ11〜ステップ16の処理を順次繰り返す。
【0037】
次に、追跡演算部における追跡演算処理について説明する。図10は、追跡演算部における処理手順を示すフローチャートである。ステップ7の画像処理でアイボックスの中心位置を検出すると、追跡演算部40の表示光路算出部41は、HUD光源(表示部3)からアイボックス中心位置までの光路を算出する(S21)。ここでいう「光路」は、図2に示す表示光路L1である。
【0038】
続いて、追跡演算部40の駆動制御部42は、ステップ22で算出された表示光路に適合するように、ミラー駆動部5を制御して、ミラー4の角度を調整する(S22)。図11は、ミラーの駆動制御と、表示光路との関係を説明するための概略斜視図である。例えば、表示光路L1bでのアイボックスの位置より、アイボックスの位置を高く調整する場合には、表示光路L1bを表示部3側へ傾斜させて表示光路L1aとする。一方、表示光路L1bでのアイボックスの位置より、アイボックスの位置を低く調整する場合には、表示光路L1bを表示部3とは反対側へ傾斜させて表示光路L1cとする。
【0039】
このような本実施形態に車両用表示装置では、表示光路L1がブリュースター角を外した角度でウインドシールド6に入射しているため、運転者Dが偏光サングラスを着用しているか否かに関わらず、運転者Dはフラットな虚像Vを視認することが可能となる。また、太陽光のような強烈な光がウインドシールド6からカメラ部2に入射した場合においても、S偏光画像とP偏光画像の差分画像を生成することで太陽光の影響が抑制された画像を取得することができる。そのため、太陽光の影響を抑制して、運転者画像を正面から撮像することができる。
【0040】
このように、ウインドシールド6で反射した運転者Dの虚像を偏光板22A,22B及びカメラ21A,21Bを用いて撮像することにより、運転者Dに緊張感を与えず、正面から撮影することで、運転者の目の位置を検出し、確実なアイポイントの位置を把握し、自動調整することが可能なHUDを実現することができる。
【0041】
次に、本発明の撮像装置の変形例1について説明する。例えば、偏光板22A,22Bに減光フィルタを重ね合わせて用いることができる。外部から入射する太陽光が強い場合には、減光フィルタを偏光板22A,22Bに重ね合わせて使用することで、太陽光による影響を一層低減させることが可能である。上述の画像処理部31によって、S偏光画像とP偏光画像に基づいて差分画像を取得する際に、減光フィルタを用いた場合には、減光フィルタを用いていない場合と比較して、差分画像におけるコントラストが大きくなるため、運転者Dの頭部の特徴点位置を検出し易くなるという利点がある。
【0042】
次に、本発明の撮像装置の変形例2について説明する。上述の画像処理では、例えば、鼻、目、耳、口、眉毛、あご、額などの頭部にある特徴点の位置に基づいて、アイボックスの中心位置を算出しているが、頭部以外の体の形状、位置に基づいて、アイボックスの中心の位置を算出してもよい。例えば、差分画像を用いて運転者Dの肩の形状を検出し運転者の体格を判定して、アイボックスの中心点の位置を検出してもよい。
【0043】
また、上述の画像処理において、運転者の運転姿勢を判別する処理を実行してもよい。図12は、画像処理部で実行される運転姿勢判別処理の手順を示すフローチャートである。図12に示す運転姿勢判別処理は、ステップ15の瞳位置検出が実行された後であり、ステップ16のアイボックスの中心位置決定処理が実行される前に実行される。
【0044】
運転姿勢判別処理では、まず、ステップ14で検出された運転者Dの顔向きと、ステップ15で検出された左右の瞳の位置とに基づいて、運転者Dの視線位置(運転者Dが見ている方向)を検出する(S31)。
【0045】
次に、画像処理部30は、ステップ31で検出した視線位置に基づいて、運転者Dの脇見判定を行う(S32)。運転者Dの視線位置が予め設定されている範囲内に収まっているか否かの判定を行うことで、脇見判定を行う。例えば、画像処理部30は、基準となる視線位置(例えば自車両の進行方向の前方)と、検出された運転者Dの視線位置との角度が判定閾値以上であるか否かの判定を行う。基準の視線位置と運転者Dの視線位置との角度が判定閾値以上である場合には、脇見運転であると判定しステップ33に進み、基準の視線位置と運転者Dの視線位置との角度が判定閾値以上であると判定されなかった場合には、脇見運転であると判定せずステップ34に進む。
【0046】
ステップ33では、画像処理部30は、表示制御部50に警告信号を出力し、表示部3に警告画像を表示させる。警告画像の表示を行うことで、運転者Dに、脇見運転を止めるよう注意喚起を行う。
【0047】
続く、ステップ34では、画像処理部30は、ステップ14で検出された運転者Dの顔向き、ステップ15で検出された左右の瞳の位置、ステップ31で検出された視線方向に基づいて、覚醒判定を行う(S34)。予め設定された判定条件である判定閾値以上である場合に、覚醒度が低いと判定し、ステップ35に進み、判定閾値以上であると判定されなかった場合には、覚醒度が高いと判定し、ステップ35の処理を実行せずに、運転姿勢判別処理を終了する。
【0048】
ステップ35では、画像処理部30は、表示制御部50に警告信号を出力し、表示部3に警告画像を表示させる。警告画像の表示を行うことで、運転者Dに、注意喚起を行う。また、警告画像の表示とは別に、警告音を発することで、運転者Dに注意喚起を行ってもよい。運転姿勢判別処理の終了後、ステップ16に進み、アイボックスの中心位置決定を行う。このような運転姿勢判別処理を行うことで、運転者Dの状態に応じて、警告を発することが可能となる。
【0049】
次に、本発明の撮像装置の変形例3について説明する。上記の撮像装置では、第1偏光板22Aを用いてS偏光画像を取得する第1カメラ21Aと、第2偏光板22Bを用いてP偏光画像を取得する第2カメラ21Bとを備える構成としているが、1枚の偏光板及び1台のカメラを備える撮像装置としてもよい。このような撮像装置では、偏光板の位置を変更する駆動装置を備え、偏光板の回転位置を90度回転移動させて、図6(A)に示す状態と、図6(C)に示す状態とを切替可能な構成とする。また、他の方法として、電気的に、第1の偏光状態、及び第2の偏光状態を作り出す構成としてもよい。そして、カメラ部においては、所定の間隔毎にストロボ信号が出力され、このストロボ信号を受信したカメラでは、画像の撮影が行われる。偏光部においては、ストロボ信号に応じて、第1の偏光状態及び第2の状態を交互に作り出すようにする。このような構成とすることで、1枚の偏光板及び1台のカメラを用いて、運転者Dの画像を撮影することができる。
【0050】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるもではない。第1の偏光手段は、被投影面(ウインドシールド6)の対象者(運転者D)側からの入射波による反射波及び被投影面の対象者側とは反対側からの入射波(太陽光)を、反射させた状態である第1の偏光状態を実現するものでもよい。第2の偏光手段は、被投影面の反対側からの入射波を反射させた状態である第2の偏光状態を実現するものでもよい。
【0051】
また、撮像装置は、車両用搭載されるものでもよく、例えば飛行機などその他の乗り物に搭載されて、その乗り物を操縦する操縦者を撮像するものでもよい。また、例えば、屋外で使用される表示装置に搭載される撮像装置として、コンバイナに反射した対象者の虚像を撮像するものでもよい。また、屋内で使用される表示装置と共に、本発明の撮像装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0052】
M…車両用表示装置(ヘッドアップディスプレイユニット)、1…HUD本体、2…カメラ部、21A…第1カメラ、21B…第2カメラ、22A…第1偏光板、22A…第2偏光板、3…表示部、4…ミラー、5…ミラー駆動部、6…ウインドシールド、10…HUD−ECU、30…画像処理部、31…差分画像取得部、32…特徴点検出部、33…顔向き検出部、34…瞳位置検出部、40…追跡演算部、41…表示光路算出部、42…駆動制御部、50…表示制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被投影面上に投影された対象者の画像を撮像する撮像手段と、
前記被投影面と前記撮像手段との間の光路上に設けられ、前記被投影面の対象者側からの入射波による反射波及び前記被投影面の前記対象者側とは反対側からの入射波を、透過又は反射させた状態である第1の偏光状態を実現する第1の偏光手段と、
前記被投影面と前記撮像手段との間の光路上に設けられ、前記被投影面の前記反対側からの入射波を透過又は反射させた状態である第2の偏光状態を実現する第2の偏光手段と、
前記第1の偏光状態で撮像された第1の撮像画像と前記第2の偏光状態で撮像された第2の撮像画像との差分画像を取得する差分画像取得手段とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記被投影面を有するウインドシールド上に投影された前記対象者である運転者の画像を撮像する前記撮像手段と、
前記ウインドシールと前記撮像手段との間の光路上に設けられ、前記ウインドシールドの前記運転者側からの入射波による反射波及び前記ウインドシールの前記運転者側とは反対側からの入射波を、透過又は反射させた状態である前記第1の偏光状態を実現する前記第1の偏光手段と、
前記ウインドシールと前記撮像手段との間の光路上に設けられ、前記ウインドシールの前記反対側からの入射波を透過又は反射させた状態である前記第2の偏光状態を実現する前記第2の偏光手段と、を備えることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項1】
被投影面上に投影された対象者の画像を撮像する撮像手段と、
前記被投影面と前記撮像手段との間の光路上に設けられ、前記被投影面の対象者側からの入射波による反射波及び前記被投影面の前記対象者側とは反対側からの入射波を、透過又は反射させた状態である第1の偏光状態を実現する第1の偏光手段と、
前記被投影面と前記撮像手段との間の光路上に設けられ、前記被投影面の前記反対側からの入射波を透過又は反射させた状態である第2の偏光状態を実現する第2の偏光手段と、
前記第1の偏光状態で撮像された第1の撮像画像と前記第2の偏光状態で撮像された第2の撮像画像との差分画像を取得する差分画像取得手段とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記被投影面を有するウインドシールド上に投影された前記対象者である運転者の画像を撮像する前記撮像手段と、
前記ウインドシールと前記撮像手段との間の光路上に設けられ、前記ウインドシールドの前記運転者側からの入射波による反射波及び前記ウインドシールの前記運転者側とは反対側からの入射波を、透過又は反射させた状態である前記第1の偏光状態を実現する前記第1の偏光手段と、
前記ウインドシールと前記撮像手段との間の光路上に設けられ、前記ウインドシールの前記反対側からの入射波を透過又は反射させた状態である前記第2の偏光状態を実現する前記第2の偏光手段と、を備えることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−152883(P2011−152883A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16748(P2010−16748)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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