説明

攪拌装置、その異常判定方法及び分析装置

【課題】表面弾性波素子の容器からの剥離や容器における液体の欠如等を含む異常を容易に判定可能な攪拌装置、その異常判定方法及び分析装置を提供すること。
【解決手段】液体を保持した容器5に設けられ、液体に向けて音波を発生する表面弾性波素子27と、表面弾性波素子を駆動する駆動部24,25とを備え、液体を音波によって攪拌する攪拌装置20、その異常判定方法及び分析装置。攪拌装置20は、表面弾性波素子から反射される反射電力を検出する検出回路26と、検出回路が検出した反射電力をもとに異常の有無を判定する判定部23aとを備え、判定部は、駆動時に表面弾性波素子から反射される駆動時反射電力と、同一駆動周波数における表面弾性波素子の基準反射電力との差が所定値を超えた場合に異常であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌装置、その異常判定方法及び分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置で用いる攪拌装置は、いわゆるキャリーオーバーを回避するため、表面弾性波素子を用いて容器に保持された液体を非接触で攪拌するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この攪拌装置は、共振周波数を有する電力を供給して表面弾性波素子を駆動し、容器に保持された液体を攪拌する。
【0003】
【特許文献1】特開2005−257406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された攪拌装置は、電力を供給する電送路の断線や表面弾性波素子自体に生ずる断線等の故障がある場合、電気的な特性を測定することによって故障を検出することは可能である。但し、特許文献1の攪拌装置は、表面弾性波素子の容器からの剥離や容器における液体の欠如等を含む異常の検出が難しく、分析装置で用いるうえで改善が必要であった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、表面弾性波素子の容器からの剥離や容器における液体の欠如等を含む異常を容易に判定可能な攪拌装置、その異常判定方法及び分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、本発明者は、表面弾性波素子の特性について鋭意検討を加えた。その結果、表面弾性波素子は、電気回路における回路定数の不整合により電源に一部の電力が反射される反射現象が発生する。この反射現象によって発生する反射電力は、表面弾性波素子の駆動周波数が共振周波数の場合に最小であり、駆動周波数が共振周波数から離れるのに従って大きくなる周波数特性を有している。
【0007】
一方、表面弾性波素子は、攪拌装置で使用する場合、容器、例えば、キュベットの壁面に音響整合層を兼ねる接着剤によって接着される。表面弾性波素子は、通常、駆動に伴って自己発熱し、発熱量は印加される電力と駆動周波数に依存する。このとき、攪拌装置は、表面弾性波素子のキュベット壁面への接着状態やキュベットが保持した液体の量を含む物理的特性に変化がなければ、接着剤や壁面を通じた熱の伝導率に大きな変化はない。このため、駆動に伴って表面弾性波素子が自己発熱した際における駆動時反射電力は、自己発熱前の基準反射電力に関する初期周波数特性を保持した状態で変化し、表面弾性波素子の温度変化は一定の範囲内に収まる。
【0008】
しかし、表面弾性波素子のキュベットからの剥離や、キュベットにおける液体の欠如等の異常があると、攪拌装置は、表面弾性波素子の作動によって生じた音波のエネルギーのキュベット側や液体への伝達が遮断されてしまう。このため、攪拌装置は、このエネルギー伝達の遮断によって表面弾性波素子自体が過剰に発熱し、同じ駆動周波数における反射電力が大きくなるように変化する。従って、攪拌装置は、自己発熱前の基準反射電力に関する初期周波数特性を予め測定しておき、駆動時反射電力と同一駆動周波数における基準反射電力との差を比較すれば、表面弾性波素子側における異常の有無を判定することができるという事実を見出した。
【0009】
本発明は、上述の事実に基づいてなされたものであり、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る攪拌装置は、液体を保持した容器に設けられ、前記液体に向けて音波を発生する音波発生手段と、前記音波発生手段を駆動する駆動手段とを備え、前記液体を前記音波によって攪拌する攪拌装置であって、前記音波発生手段から反射される反射電力を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した反射電力をもとに異常の有無を判定する判定手段と、を備え、前記判定手段は、駆動時に前記音波発生手段から反射される駆動時反射電力と、同一駆動周波数における前記音波発生手段の基準反射電力との差が所定値を超えた場合に異常であると判定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、表面弾性波素子であることを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項3に係る攪拌装置の異常判定方法は、液体を保持した容器に設けられ、前記液体に向けて音波を発生する音波発生手段と、前記音波発生手段を駆動する駆動手段とを備え、前記液体を前記音波によって攪拌する攪拌装置の異常判定方法であって、前記音波発生手段の基準反射電力に関する初期周波数特性を検出する工程と、駆動時に前記音波発生手段から反射される駆動時反射電力を検出する工程と、前記駆動時反射電力と、同一駆動周波数における前記基準反射電力との差を求め、この差が所定値を超えた場合に異常であると判定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る攪拌装置の異常判定方法は、上記の発明において、前記音波発生手段は、表面弾性波素子であることを特徴とする。
【0013】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項5に係る分析装置は、複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置であって、前記攪拌装置を用いて前記複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の攪拌装置は、判定手段が、音波発生手段の駆動時反射電力と、同一駆動周波数における基準反射電力との差が所定値を超えた場合に異常であると判定し、本発明の攪拌装置の異常判定方法は、駆動時反射電力と、同一駆動周波数における基準反射電力との差を求め、この差が所定値を超えた場合に異常であると判定する。また、本発明の分析装置は、前記攪拌装置を用いて複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析するので、表面弾性波素子の容器からの剥離や容器における液体の欠如等を含む異常を容易に判定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の攪拌装置、その異常判定方法及び分析装置にかかる実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の攪拌装置を用いて分析を行う実施の形態1にかかる自動分析装置の概略構成図である。図2は、図1に示す自動分析装置で使用する攪拌装置の概略構成を反応容器の斜視図と共に示すブロック図である。図3は、反応容器に取り付けた表面弾性波素子のそれぞれ基準反射電力、正常な場合の駆動時反射電力及び異常な場合の駆動時反射電力に関する周波数特性図である。
【0016】
自動分析装置1は、図1に示すように、試薬テーブル2,3、キュベットホイール4、検体容器移送機構8、分析光学系12、洗浄機構13、制御部15及び攪拌装置20を備えている。
【0017】
試薬テーブル2,3は、図1に示すように、それぞれ周方向に配置される複数の試薬容器2a,3aを保持し、駆動手段に回転されて試薬容器2a,3aを周方向に搬送する。このとき、試薬テーブル2には、第一試薬を保持した試薬容器2aが配置され、試薬テーブル3には、第二試薬を保持した試薬容器3aが配置されている。
【0018】
キュベットホイール4は、図1に示すように、周方向に沿って反応容器5を配置する複数のホルダが周方向に形成され、図示しない駆動手段によって矢印で示す方向に回転されて反応容器5を搬送する。キュベットホイール4は、各ホルダの下部に対応する位置に半径方向に対向する測光孔4aが周方向に沿って前記ホルダと同じ間隔で形成されている。反応容器5は、近傍に設けた試薬分注機構6,7によって試薬テーブル2,3の試薬容器2a,3aから試薬が分注される。キュベットホイール4は、一周期で反時計方向に(1周−1キュベット)/4分回転し、四周期で時計方向に反応容器5の1個分回転する。
【0019】
反応容器5は、分析光学系12から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂から成形された液体の保持部5aを有する四角筒状の容器である。反応容器5は、側壁5bに音響整合層を兼ねる接着剤等によって取り付けた表面弾性波素子22(図2参照)が攪拌装置20によって駆動される。
【0020】
試薬分注機構6,7は、それぞれ水平面内を矢印方向に回動するアーム6a,7aに試薬を分注するプローブ6b,7bが設けられ、洗浄水によってプローブ6b,7bを洗浄する洗浄手段を有している。
【0021】
検体容器移送機構8は、図1に示すように、フィーダ9に配列した複数のラック10を矢印方向に沿って1つずつ移送する移送手段であり、ラック10を歩進させながら移送する。ラック10は、検体を収容した複数の検体容器10aを保持している。ここで、検体容器10aは、検体容器移送機構8によって移送されるラック10の歩進が停止するごとに、水平方向に回動するアーム11aとプローブ11bとを有する検体分注機構11によって検体が各反応容器5へ分注される。このため、検体分注機構11は、洗浄水によってプローブ11bを洗浄する洗浄手段を有している。
【0022】
分析光学系12は、試薬と検体とが反応した反応容器5内の液体試料を分析するための分析光(340〜800nm)を出射するもので、図1に示すように、発光部12a,分光部12b及び受光部12cを有している。発光部12aから出射された分析光は、反応容器5内の液体試料を透過し、分光部12bと対向する位置に設けた受光部12cによって受光される。受光部12cは、制御部15と接続されている。
【0023】
洗浄機構13は、ノズル13aによって反応容器5内の液体試料を吸引して排出した後、ノズル13aによって洗剤や洗浄水等の洗浄液等を繰り返し注入し、吸引することにより、分析光学系12による分析が終了した反応容器5を洗浄する。
【0024】
制御部15は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、発光部12aの出射光量と受光部12cが受光した光量に基づく反応容器5内の液体試料の吸光度に基づいて検体の成分濃度等を分析する部分であり、例えば、マイクロコンピュータ等が使用される。制御部15は、図1に示すように、キーボード等の入力部16及びディスプレイパネル等の表示部17と接続されている。
【0025】
入力部16は、制御部15へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。入力部16は、攪拌装置20の表面弾性波素子27に入力する駆動信号の周波数を切り替える操作等にも使用される。表示部17は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0026】
攪拌装置20は、図2に示すように、攪拌制御部21と表面弾性波素子27とを有しており、表面弾性波素子27は攪拌制御部21によって作動が制御される。攪拌制御部21は、制御部15を介して入力部16から入力される液体試料の検査項目、液体試料の性状又は液量等の情報に基づいて表面弾性波素子27に出力する駆動信号の周波数を変更し、通信回路22、制御部23、信号発生回路24、増幅回路25及び検出回路26を備えている。
【0027】
通信回路22は、制御部15との間で制御信号を送受信すると共に、オンラインネットワークを介して自動分析装置1をメーカーのホストコンピュータに接続してデータ等を送受信する
【0028】
制御部23は、メモリとタイマを内蔵した電子制御手段(CPU)が使用され、自己発熱前の基準反射電力と駆動時の反射電力とをもとに表面弾性波素子27の反応容器5からの剥離や反応容器5における液体試料の欠如等を含む異常を判定する判定部23aを有している。制御部23は、通信回路22、信号発生回路24、増幅回路25及び検出回路26の作動を制御する。このとき、制御部23は、信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号の電圧や電流を制御する。制御部23は、信号発生回路24の作動を制御することにより、例えば、表面弾性波素子27が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。また、制御部23は、内蔵したタイマに従って信号発生回路24が発振する高周波信号の周波数を変化させることができる。
【0029】
信号発生回路24は、制御部23から入力される制御信号に基づいて発振周波数を変更可能な発振回路を有しており、100〜160MHzの信号を発生して2分周し、50〜80MHzの駆動信号を表面弾性波素子27へ出力する。増幅回路25は、信号発生回路24と共に表面弾性波素子27を駆動する駆動手段を構成しており、信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号を予め設定した増幅率で増幅する。
【0030】
検出回路26は、カプラと、増幅回路25で増幅されて出力される駆動信号の電力を検出し、電力データとして判定部23aへ出力するディテクと、表面弾性波素子27の振動子27bから反射される反射電力を検出し、反射電力データとして判定部23aへ出力するディテクとを有している。このようにして検出回路26から出力された電力データや反射電力データは、判定部23aに記憶される。
【0031】
表面弾性波素子27は、図2に示すように、圧電基板27aの表面に櫛型電極(IDT)からなる振動子27bが形成されている。振動子27bは、攪拌制御部21から入力された駆動信号を表面弾性波(音波)に変換する発音部であり、振動子27bを構成する複数のフィンガーが圧電基板27aの長手方向に沿って配列されている。また、表面弾性波素子27は、一組の入力端子27cによって攪拌制御部21との間が接続されている。振動子27bは、入力端子27cとの間がバスバー27dによって接続されている。表面弾性波素子27は、エポキシ樹脂等の音響整合層を介して反応容器5の側壁5bに取り付けられる。
【0032】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール4によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器5に試薬分注機構6,7が試薬容器2a,3aから試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器5は、検体分注機構11によってラック10に保持された複数の検体容器10aから検体が順次分注される。そして、キュベットホイール4が停止する都度、一組の入力端子27cを介して攪拌制御部21から駆動信号が出力される。このため、反応容器5は、分注された試薬と検体が攪拌装置20によって順次攪拌されて反応する。自動分析装置1においては、通常、試薬の量に比べて検体の量が少なく、攪拌によって液体中に生ずる一連の流れによって反応容器5に分注された少量の検体が多量の試薬に引き込まれて検体と試薬との反応が促進される。
【0033】
このようにして検体と試薬が反応した反応液は、キュベットホイール4が再び回転したときに分析光学系12を通過し、発光部12aから出射された光束が透過する。このとき、反応容器5内の試薬と検体の反応液は、受光部12cで側光され、制御部15によって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器5は、洗浄機構13によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0034】
このとき、攪拌装置20においては、判定部23aが表面弾性波素子27の反応容器5からの剥離や反応容器5における液体試料の欠如等を含む異常を判定する。即ち、表面弾性波素子27は、電気回路における回路定数の不整合により印加した電力の一部が振動子27bによって反射されて攪拌制御部21に戻る反射現象が発生する。この反射現象によって発生する基準反射電力WIは、図3に実線で示すように、表面弾性波素子27の駆動周波数が共振周波数frの場合に最小であり、駆動周波数が共振周波数frから離れるのに従って大きくなる初期周波数特性を有している。
【0035】
一方、表面弾性波素子27は、通常、作動に伴って自己発熱し、発熱量は印加される電力と駆動周波数に依存する。このとき、攪拌装置20は、表面弾性波素子27の反応容器5の側壁5bへの接着状態や反応容器5が保持した液体試料の量を含む物理的特性に変化がなければ、接着剤や側壁5bを通じた熱の伝導率に大きな変化はない。このため、表面弾性波素子27が正常な状態で自己発熱した際の駆動時反射電力WNは、図3に点線で示すように、自己発熱前の基準反射電力WIに関する初期周波数特性を保持した状態で変化し、表面弾性波素子27の温度変化は一定の範囲内に収まる。
【0036】
しかし、表面弾性波素子27の反応容器5からの剥離や、反応容器5における液体試料の欠如等の異常があると、攪拌装置20は、表面弾性波素子27の作動によって生じた音波エネルギーの反応容器5側や液体試料への伝達が遮断されてしまう。このため、このエネルギー伝達の遮断によって表面弾性波素子27が過剰に発熱する。この過剰に発熱した異常な場合の駆動時反射電力WANは、図3に二点鎖線で示すように、共振周波数frにおける駆動時反射電力WNに比べて大きくなるように変化する。従って、攪拌装置20は、自己発熱前の基準反射電力WIに関する初期周波数特性を予め測定して制御部23に記憶させておき、駆動時反射電力と同一駆動周波数における基準反射電力WIとの差を判定部23aによって算出して比較すれば、表面弾性波素子側における異常の有無を判定することができる。
【0037】
このとき、図3に示すように、表面弾性波素子27の共振周波数frにおいて、駆動時反射電力WNと基準反射電力WIとの差ΔWNは、二点鎖線で示す駆動時反射電力WANと基準反射電力WIとの差ΔWANに比べて小さい。このため、本発明の攪拌装置20においては、駆動時に測定される表面弾性波素子27の駆動時反射電力と同一駆動周波数における基準反射電力WIとの差に関して予め閾値Tを決め、判定部23aに記憶させておく。そして、駆動時反射電力と、同一駆動周波数における基準反射電力WIとの差が閾値Tを超えた場合に、判定部23aは、表面弾性波素子27の反応容器5からの剥離や、反応容器5における液体試料の欠如等の異常があると判定する。
【0038】
以下、攪拌制御部21によって実行される上述の異常の判定に関する一連の工程を、フローチャートを参照して以下に説明する。先ず、攪拌制御部21は、表面弾性波素子27の自己発熱前の基準反射電力WIの初期周波数特性を検出する(ステップS102)。この初期周波数特性は、自動分析装置1に攪拌装置20を組み付けた後、或いは攪拌装置20の組立後、表面弾性波素子27の駆動周波数を変化させながら振動子27bによって反射され戻って来る反射電力を検出回路26によって検出し、反射電力データとして判定部23aに出力し記憶させておく。
【0039】
次に、攪拌制御部21は、反応容器5が保持した液体試料を攪拌する際に表面弾性波素子27から反射される駆動時反射電力を検出回路26によって検出する(ステップS104)。検出回路26によって検出した駆動時反射電力は、反射電力データとして判定部23aに出力し記憶させておく。ここで、前記初期周波数特性の検出は、自動分析装置1や攪拌装置20の組立直後等に行われる操作であるのに対し、駆動時反射電力の検出は、自動分析装置1や攪拌装置20を使用して検体を実際に分析する際に行われる操作である。次いで、攪拌制御部21は、駆動時反射電力と同一駆動周波数における基準反射電力WIとの差を算出する(ステップS106)。駆動時反射電力と基準反射電力WIとの差は、記憶している反射電力データをもとに判定部23aが算出する。
【0040】
しかる後、攪拌制御部21は、駆動時反射電力と基準反射電力WIとの差が閾値Tを超えた否かを判定部23aによって判定する(ステップS108)。判定の結果、駆動時反射電力と基準反射電力WIとの差が閾値Tを超えた場合(ステップS108,Yes)、判定部23aは、異常であると判定する(ステップS110)。この場合、判定部23aは、その旨を制御部15へ出力し、制御部15を介して表示部17に表示する共に、制御部15を介して自動分析装置1の作動を停止させる。
【0041】
一方、判定の結果、駆動時反射電力と基準反射電力WIとの差が閾値Tを超えていない場合(ステップS108,No)、判定部23aは、異常と判定することなく、ステップS104に戻り、攪拌制御部21は、引き続く新たな検体に関する駆動時反射電力を検出する。以上のステップを繰り返すことにより、攪拌装置20は、表面弾性波素子27の反応容器5からの剥離や、反応容器5における液体試料の欠如等の異常を容易に判定することができる。
【0042】
なお、自動分析装置1は、試薬テーブルが2つの場合について説明したが、試薬テーブルは1つであってもよい。また、本発明の自動分析装置は、自動分析装置1を1ユニットとして複数ユニット組み合わせた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の攪拌装置を用いて分析を行う実施の形態1にかかる自動分析装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す自動分析装置で使用する攪拌装置の概略構成を反応容器の斜視図と共に示すブロック図である。
【図3】反応容器に取り付けた表面弾性波素子のそれぞれ基準反射電力、正常な場合の駆動時反射電力及び異常な場合の駆動時反射電力に関する周波数特性図である。
【図4】攪拌装置の攪拌制御部によって実行される異常の判定に関する一連の工程を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1 自動分析装置
2,3 試薬テーブル
4 キュベットホイール
5 反応容器
6,7 試薬分注機構
8 検体容器移送機構
9 フィーダ
10 ラック
11 検体分注機構
12 分析光学系
13 洗浄機構
15 制御部
16 入力部
17 表示部
20 攪拌装置
21 攪拌制御部
22 通信回路
23 制御部
23a 判定部
24 信号発生回路
25 増幅回路
26 検出回路
27 表面弾性波素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を保持した容器に設けられ、前記液体に向けて音波を発生する音波発生手段と、前記音波発生手段を駆動する駆動手段とを備え、前記液体を前記音波によって攪拌する攪拌装置であって、
前記音波発生手段から反射される反射電力を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した反射電力をもとに異常の有無を判定する判定手段と、
を備え、
前記判定手段は、駆動時に前記音波発生手段から反射される駆動時反射電力と、同一駆動周波数における前記音波発生手段の基準反射電力との差が所定値を超えた場合に異常であると判定することを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記音波発生手段は、表面弾性波素子であることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
液体を保持した容器に設けられ、前記液体に向けて音波を発生する音波発生手段と、前記音波発生手段を駆動する駆動手段とを備え、前記液体を前記音波によって攪拌する攪拌装置の異常判定方法であって、
前記音波発生手段の基準反射電力に関する初期周波数特性を検出する工程と、
駆動時に前記音波発生手段から反射される駆動時反射電力を検出する工程と、
前記駆動時反射電力と、同一駆動周波数における前記基準反射電力との差を求め、この差が所定値を超えた場合に異常であると判定する工程と、
を含むことを特徴とする攪拌装置の異常判定方法。
【請求項4】
前記音波発生手段は、表面弾性波素子であることを特徴とする請求項3に記載の攪拌装置の異常判定方法。
【請求項5】
複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置であって、請求項1又は2に記載の攪拌装置を用いて前記複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析することを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−20197(P2008−20197A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189565(P2006−189565)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】