改善されたシリケート系蛍光体及びそれを用いたLEDランプ
【課題】光学スペクトルの紫外光領域及び青色光領域で励起できる、発光装置において光コンバーターとして使用される改善されたシリケート系蛍光体を提供すること。
【解決手段】改善されたシリケート系蛍光体は、種々の非水溶媒における特殊な処理過程により、改善された表面特性を有し、且つ改善された光学スペクトルを有するオルトシリケート蛍光体、メタシリケート蛍光体又はジシリケート蛍光体からなる群から選択される。このような発光体は、各色温度にほとんど到達でき、一般のシリケート蛍光体と比較して、発光強度と励起特性が著しく改善される。
【解決手段】改善されたシリケート系蛍光体は、種々の非水溶媒における特殊な処理過程により、改善された表面特性を有し、且つ改善された光学スペクトルを有するオルトシリケート蛍光体、メタシリケート蛍光体又はジシリケート蛍光体からなる群から選択される。このような発光体は、各色温度にほとんど到達でき、一般のシリケート蛍光体と比較して、発光強度と励起特性が著しく改善される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高演色性を有する高輝度発光装置に用いられる、改善された発光強度、改善された励起特性及び改善された表面特性を示すシリケート系蛍光体、及び前記蛍光体を用いたLEDランプに関する。
【背景技術】
【0002】
光学スペクトルの紫外光領域又は青色光領域における励起下で青緑光、黄緑光〜橙光を放射する蛍光体が、ここ数年重要性を増している。これは、これらの蛍光体が白色光発光装置に使用されることによるものである。とりわけ、セリウム賦活グラネート−蛍光体(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5)は、種々の用途に使用されているが、光学スペクトルにおける領域が欠けることにより生じる低演色性のため、一般的な照明用途には好適ではない。さらに、YAG:Ceは青色光でしか励起されず、その使用は、青色半導体チップによる励起を用いた用途に限定されている。したがって、主要な青色発光半導体チップは、複数の発光体と組み合わせて演色性を増加している(特許文献6及び特許文献7)。YAG:Ceの他に、高CRI用クロロシリケート蛍光体(特許文献8)が使用されているが、その発光強度は、YAG:Ceに対して10%でしかない。さらに、白色光発光装置が有機発光体により実現されることができるが、安定性が低いことから効率が悪く、それらの用途が限定されていることも知られている。
【0003】
さらに、長時間安定性も悪いいくつかの無機硫化物蛍光体(例えば、SrS:Eu)も使用されている(特許文献9及び特許文献10)。
【0004】
発光装置で高CRIを実現するために、主要な紫外線発光装置(300〜370nm)を、光学スペクトルの赤色、緑色及び青色領域(RGB成分)を放出する複数の蛍光体と組み合わせて使用している(特許文献11、特許文献12及び特許文献13)。
【0005】
この数年のうちに、白色LED用のシリケート蛍光体を用いたいくつかの特許及び刊行物が出現した(特許文献14、特許文献15及び特許文献16)。ガス放電ランプにこれらが使用されることは、周知である(非特許文献1)。さらに、この非特許文献2の刊行物では、体系的に(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu格子の均一固溶体を調べたと記載されている。LEDシリケート蛍光体は、それら自体又は混合物の形態で、青色又は紫外LED−ダイと組み合わせてYAG:Ce系に比較してCRIを高くしている。シリケート蛍光体に関する全ての特許及び文献では、YAG:Ce系と比較して効率及び輝度が低いことが示されている。
【0006】
この他に、感水性についての使用上の問題がある、いくつかの高バリウム含有蛍光体も記載されている。これらの欠点により、シリケート系蛍光体の効率を低下してしまう。
【特許文献1】WO98/12757
【特許文献2】WO0252615
【特許文献3】米国特許第5998925号
【特許文献4】ヨーロッパ特許第1271664号
【特許文献5】ヨーロッパ特許第862794号
【特許文献6】WO00/33389
【特許文献7】WO00/33390
【特許文献8】WO01/93341
【特許文献9】ヨーロッパ特許第1150361号
【特許文献10】米国特許第5598059号
【特許文献11】WO9839805
【特許文献12】WO9839807
【特許文献13】WO9748138
【特許文献14】WO02/11214
【特許文献15】WO02/054502
【特許文献16】米国特許第6255670号
【非特許文献1】K.H.Butler 「Fluorescent Lamp Phosphors(蛍光灯蛍光体)」Pennsylvania Univ.Press 1980年
【非特許文献2】T.L.Barry J.Electrochem.Soc.,1968,1181
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、励起性が改善されたシリケート系蛍光体、及びそれを用いたLEDランプを提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、発光強度が改善されたシリケート系蛍光体、及びそれを用いたLEDランプを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、感水性が抑制された改善されたシリケート系蛍光体、及びそれを用いたLEDランプを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、効率が増加した改善されたシリケート系蛍光体、及びそれを用いたLEDランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、洗浄工程からの水をほとんど除去するために特殊な湿式調製工程を用いた、発光効率を高めるための改善されたバルクおよび表面特性を有する蛍光体結晶を用いることにより、紫外光又は青色光の照射下でより高い輝度が得られる改善されたシリケート系蛍光体が提供される。
【0012】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、下記の実験式で表すことができる:
M’aM’’bM’’’c(Si1-zM’’’’z)d(Al,B,Ga,In)e(Sb,P,V,Nb,Ta)fO(a+b+c/2+2d+3e/2+5f/2-n/2)Xn:Eux
(式中、
M’は、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’は、Mg、Cd、Mn、Beからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’’は、周期表第1族から選択された一種以上の一価金属のイオンであり、
M’’’’は、Ti、Zr、Hf、Geからなる群から選択された一種以上の四価の元素であり、
Xは、電荷のバランスをとるためのF、Cl、Br、Iからなる群から選択された一種以上のイオンであり、そして
0.5≦a≦8であり、
0≦b≦5であり、
0≦c≦4であり、
0≦d≦10であり、
0≦e≦2であり、
0≦f≦2であり、
0≦n≦4であり、
0≦x≦0.5であり、
0≦z≦1である)。
【0013】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、下記の実験式で表すことができる:
M’aM’’bM’’’c(Si1-zM’’’’z)d(Al,B,Ga,In)e(Sb,P,V,Nb,Ta)fO(a+b+c/2+2d+3e/2+5f/2-n/2)Xn:Ry
(式中、
M’は、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’は、Mg、Cd、Mn、Beからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’’は、周期表第1族から選択された一種以上の一価金属のイオンであり、
M’’’’は、Ti、Zr、Hf、Geからなる群から選択された一種以上の四価の元素であり、
Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi、S、Sn、Sbからなる群から選択された一種以上の元素であり、
Xは、電荷のバランスをとるためのF、Cl、Br、Iからなる群から選択された一種以上のイオンであり、そして
0.5≦a≦8であり、
1≦b≦5であり、
0≦c≦4であり、
0≦d≦10であり、
0≦e≦2であり、
0≦f≦2であり、
0≦n≦4であり、
0≦y≦1であり、
0≦z≦1である)。
【0014】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、水溶性の有機非水性有機溶媒(アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類等)又はそれらの水性混合物又はそれらと追加の錯化剤との混合物を用いて製造されることを特徴とするものでよい。
【0015】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、有機溶媒の水性混合物又は純粋有機溶媒(アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、又はそれらと追加の錯化剤との混合物)中での湿式粉砕工程を用いて調製したことを特徴とするものでよい。
【0016】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、有機溶媒の水性混合物又は純粋有機溶媒(アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類、又はそれらと追加の錯化剤との混合物)中での湿式ふるい工程を用いて調製したことを特徴とするものでよい。
【0017】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類等の有機溶媒の水性混合物又は純粋有機溶媒又はそれらと追加の錯化剤との混合物中で、超音波ビームを照射することによる表面清浄工程を用いて調製したことを特徴とするものでよい。
【0018】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、水性混合物での洗浄後で且つ前記処理工程の終わりに乾燥する前に、アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類等の有機非水溶媒又はそれらと追加の錯化剤との混合物での処理をおこなって調製したことを特徴とするものでよい。
【0019】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で乾燥されることを特徴とするものでよい。
【0020】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、250〜500nmの放射線により励起できることを特徴とするものでよい。
【0021】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、単独で又は複数の発光体の混合物で発光装置に使用されることを特徴とするものでよい。
【0022】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、LEDに発光層として使用されることを特徴とするものでよい。
【0023】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂等の樹脂との反応を減少させる改善された表面品質を有することを特徴とするものでよい。
【0024】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、2マイクロメートル未満にまでサイズを減少させた部分を有するだけでなく、粒度分布がより小さいことにより、LEDにおいてより均一な層が得られることを特徴とするものでよい。
【0025】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、粒径が、20〜30μmであることを特徴とするものでよい。
【0026】
本発明によれば、紫外又は青色照射光を放射するLED素子と、
前記LED素子を封止する光透過性の封止樹脂であって、有機非水溶媒を用いた湿式粉砕工程を用いることにより調製され且つ前記光により励起される蛍光体結晶を含む封止樹脂と、
を含むLEDランプが提供される。
【0027】
本発明によれば、前記LEDランプは、前記蛍光体結晶の形成において、前記湿式粉砕を、前記有機非水溶媒中で超音波ビーム照射により実施するように構成する。
【0028】
本発明によれば、前記LEDランプは、前記封止樹脂が、前記LED素子を封止する第一封止樹脂と、前記第一封止樹脂上に積層された前記蛍光体結晶を含有する層状の第二封止樹脂とを含むように構成される。
【0029】
本発明によれば、前記LEDランプは、前記蛍光体結晶が、リードフレームに実装された前記LED素子を封止する前記封止樹脂に混合されているように構成される。
【0030】
本発明によれば、前記LEDランプは、前記蛍光体結晶が、無機材料基板に実装された前記LED素子を封止する前記封止樹脂に混合されているように構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を、添付図面を参照しながらより詳細に説明する。
励起光源からの放射の単一の蛍光体結晶への透過率及び変換された光の単一の蛍光体結晶からの透過率をより高めるためには、改善された蛍光体表面及び結晶構造が必要である。これは、極微量の融剤及び二次相(例えば、アルカリ土類塩化物)をまだ含有する前破砕した粗製蛍光体をいくつかの特殊な処理工程に附することにより達成される。本発明者等が検討した結果、感水性シリケート系蛍光体の取り扱いの特殊な方法、及び全てのシリケート系蛍光体を改善して、発光装置における量子収率及び輝度を高めるための特殊な方法を開発した。
【0032】
この改善は、感水性系を処理過程に附する際に過剰の水を避けることにより可能となる。とりわけ、バリウムリッチ組成物は、水により生じる輝度と表面品質の減少により大きな影響を受ける。これは、蛍光体結晶が加水分解されてアルカリ土類水酸化物とケイ酸とすることにより生じる。エタノールのような非水溶媒を単純有機ヒドロキシル基含有溶媒として使用すると、加水分解は観察されない。エタノールであっても、最後に残る極微量の融剤を溶解し、アルカリ土類水酸化物及び酸化物を懸濁することができる。水の代わりにエタノール中で湿式粉砕過程を実施すると、加水分解は観察されない。感水性蛍光体は安定であり、さらに部分的に水性の処理工程に附することによりもっと安定となる。これは、金属原子と溶媒とが錯体を形成することによるものと思われる。疎水性テールは、結晶表面を水分子から保護すると思われる。例えば、メタノール、プロパノール又はイソ−プロパノール、アセトン、メチル−エチル−ケトン、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類、アセトニトリル等のニトリル類、アミド類、エステル類又はエチレングリコール若しくはグリセロール等の有機ポリヒドロキシ化合物等の種々の有機溶媒を使用することができる。
【0033】
別の改善は、非水有機溶媒又はそれらの水性混合物中で湿式ふるい過程を実施することにより実現できる。懸濁した蛍光体を、ふるい上におき、ふるいを介して種々の振動をかけながら溶媒流を流して、蛍光体結晶をメッシュを通過させる。乾式ふるい過程と比較して、粒度分布は、極微細領域には大きなシグナルを示さない。このピークは、長時間の乾式ふるい過程中に蛍光体粒子が摩擦して生じると思われる。湿式ふるい過程において溶媒を流すことにより、蛍光体粒子はふるいのメッシュを通過するようになされる。
【0034】
通常の方法で調製したシリケート系蛍光体のSEM写真を、図1に示す。蛍光体表面に若干の小粒子だけでなく、鋭い外角が観察される。非水溶媒中で蛍光体結晶に超音波を照射し、デカンテーションし、乾燥する操作の後では、蛍光体表面は、これらの不純物が除去されて清浄になっていると思われる(図2)。励起及び発光スペクトルから、このような試料が大きく改善されたことが明らかである(図3及び図4)。
【0035】
すでに洗浄した蛍光体を、濾過過程後にアセトン、メタノール又はエタノールのような非水溶媒で処理して洗浄操作からの水のほとんどを除去することにより、励起及び発光スペクトルが極めて大きく改善される。この工程の後、蛍光体試料を、乾燥炉中、空気(CO2と接触)下又は好ましくはアルゴン又は窒素等の不活性ガス雰囲気下(例えば、アルカリ土類炭酸塩の再形成を回避するため)、30〜350℃で数時間乾燥する。これらにより、非水処理によりほとんど除去される水は、アルカリ土類ケイ酸塩と反応することができず、且つさらなる工程で、アルカリ土類炭酸塩と反応することができない。これにより発光スペクトル及び励起スペクトルの改善が、観察される(図5及び図6)。第二の点は、強力なガス流により、雰囲気中の溶媒又は水の分圧が減少し、乾燥工程がはやくなることである。その結果、加熱下で水がリンと接触する時間が最小となる。
【0036】
全ての改善されたシリケート系蛍光体のスペクトルでは第二相がなく、そして紫外光の励起下での寿命が増加する。また、全ての蛍光体試料は、水銀ランプ又は青色若しくは紫色LEDからの真空紫外領域からの青色光又は紫外光で励起できる。改善されたシリケート系蛍光体は、400〜530nm(図4、図6、図7及び図8)の領域での励起能が大きく増加している。
【実施例】
【0037】
本発明を、以下、実施例を参照してより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例には限定されない。
【0038】
原料、すなわち、カルシウム、ストロンチウム及び/又はバリウムの金属酸化物、酸化ユーロピウム、シリカ、二酸化ゲルマニウム、賦活剤並びに融剤の化学量論量を秤量し、均一に混合する。得られた混合物を、還元雰囲気(水素/窒素)下、蛍光体組成物に応じて1100〜1350℃で3〜20時間焼成した。金属酸化物とドーパントの比に応じて、緑色〜橙色の色を有する粗製蛍光物質を、予備破砕し、500μmのふるいでふるい分けした。
【0039】
図5は発光スペクトルを示し、図6は水溶性の非水溶媒を用いた処理操作により改善されたシリケート系蛍光体の励起スペクトルを示す。粗製イエローシリケート系蛍光体材料を、水洗し、蛍光体をガラスフリットを介して吸引し、アセトンに3回暴露させて蛍光体ケーキに残された極微量の水のほとんどを除去した後、蛍光体を、乾燥炉中、窒素下130℃で乾燥する。これにより、乾燥工程が非常に促進される。
【0040】
図3は発光スペクトルのグラフを示し、図4は非水溶媒中で超音波ビームを使用することにより改善されたシリケート系蛍光体の励起スペクトルのグラフである。粗製緑色シリケート蛍光体ケーキを、ジョーブレーカーで予備破砕する。さらに破砕するために、蛍光体を、攪拌下、エタノールに懸濁し、40kHzの超音波ビームを20分間照射する。エタノールを除去し、蛍光体を水/エタノール(v:v=1:1)で2回洗浄して最後に残った極微量の融剤を融解させる。乾燥炉中、130℃で6時間乾燥後、粒度分布及び顕微鏡での調査の結果、蛍光体単結晶のサイズがより小さく、蛍光体中の最微細粒子の量が大きく減少することが分かる。純水を用いた一般的な処理プロセス(図1)と比較して、SEMで検討すると、蛍光体結晶の表面が顕著に清浄化することが分かる(図2)。
【0041】
図9は発光スペクトルのグラフを示し、図7は水性又は純粋有機溶媒における湿式粉砕過程を適用することにより改善された黄緑シリケート系蛍光体の励起スペクトルのグラフを示す。粗製の黄緑シリケート蛍光体ケーキを、ジョーブレーカーで予備破砕する。さらに破砕するために、蛍光体1kgを、ジルコニア球1kgとともに、1Lのエタノールの入ったドラムに入れる。ドラムを、ローラーミルでゆっくりと3時間回転させる。得られた懸濁液を、水に入れて洗浄過程に附し、吸引し、エタノールですすいで極微量の水を除去し、乾燥炉中、130℃で一晩乾燥する。SEM写真から、穏やかに粉砕した蛍光体では、凝集物が数個しかないことが分かる(図10参照)。
【0042】
図8は励起を示した図であり、図11は洗浄過程の後、水性エタノール(95%)を用いた湿式ふるい工程に附し、その後蛍光体を吸引して採取し、不活性ガス雰囲気(アルゴン)下、130℃で5時間乾燥して得た、橙色シリケート系蛍光体材料の発光スペクトルを示す。これには、湿式ふるいは別の洗浄工程と同様であり、且つ有機溶媒が極微量の水を除去する利点がある。さらに、湿式ふるいは、ガーゼストレーナーにより乾式ふるい過程よりも顕著に早い。乾式過程では、蛍光体結晶が互いにこすられ、最も微細な粒子の量が顕著に増加する。最良の方法は、洗浄過程の開始時点で湿式ふるいをして処理操作全体についての非水性溶媒の利点が組み合わさって得られるようにすることである。
【0043】
以上をまとめると、全ての改善されたシリケート系蛍光体は、励起波長400〜550nmの領域での励起特性が著しく増加することが明らかである。公知のシリケート系に対して、励起波長464nmで最大50%の効率が生じる。得られた結果の本質的なものを、表1にまとめて示す。
【0044】
【表1】
【0045】
次に、本発明による改善されたシリケート系蛍光体を用いたLEDランプを説明する。
【0046】
図12に、本発明による第一の好ましい実施態様のLEDランプを示す。
【0047】
このLEDランプ1Bは、GaN系半導体化合物によって形成されて青色光(発光波長約460nm)を放射するフェイスアップ型のLED素子2を備えている。カップ部30を有する銅合金製リード部3Aを、LED素子2がカップ部30の底部31に固定されるように設ける。リード部3Aは、ワイヤ4によってLED素子2に電気的に接続されている。銅合金製リード部3Bは、ワイヤ4によってLED素子2の電極(図示せず)に電気的に接続されている。リード部3Aのカップ部30は、エポキシ樹脂5で封止されている。エポキシ樹脂5には、LED素子2から放射される青色光により励起される蛍光体51が含有されている。リード部3A、3B及びワイヤ4は、エポキシ樹脂等の封止樹脂6で一体的に封止されている。封止樹脂6は、半球状の光学形状面6Aが形成されている。
【0048】
LEDランプ1Bにおいて、蛍光体51は、図5に示す特性を有する改善された黄色シリケート系蛍光体であり、LED素子2からの青色光と蛍光体51からの黄色光が混合されて白色光が生じる。
【0049】
図13は、本発明による第二の好ましい実施態様のLEDランプを示す。このLEDランプ1Bは、SMD(Surface Mount Device)型のLEDランプであり、タングステン(W)によってパターン形成された配線部3C、3Dを有するセラミック基板9を備えている。無機材料の焼結体からなる本体80は、セラミック基板9と一体的に成形されており、凹部を有する。この凹部は、光放射方向に拡大された形状を有する側壁部80Aを有する。LED素子2は、Auバンプ40を介して、配線部3C及び3Dにおける、本体80の凹部の底部に露出した各部に電気的に接続している。LED素子2は、蛍光体51を含有するシリコーン樹脂90で封止されている。蛍光体51は、上記したシリケート系蛍光体から選択された一種以上の蛍光体からなっている。一方、LED素子2は、青色光及び/又はUV光を放射するLED素子である。
【0050】
図14は、本発明による第三の好ましい実施態様によるLEDランプである。このLEDランプ1Bは、図13に示すシリコーン樹脂90の表面部分において層状の波長変換部53を設けたことと、蛍光体51が波長変換部53に含有されていることを除いて、図13に示したLEDランプ1Bの構成と同じである。
【0051】
図15は、図12〜図14に示すLEDランプに使用することができるLED素子10を示す。このLED素子10は、サファイア基板101を備えている。AlNバッファ層102とn型GaNクラッド層103とが、サファイア基板101上にこの順序で設けられている。発光層を有する多層104が、n型GaNクラッド層103の上に設けられている。p型AlGaNクラッド層105とp型GaNコンタクト層106が、この順序で多層104上に設けられている。Auからなる薄膜電極107が、p型GaNコンタクト層106の上に設けられている。パッド電極108が、この薄膜電極107に接続されている。n側電極109が、n型GaNクラッド層103に接続されている。保護膜110が、パッド電極108とn側電極109を除いて、LED素子10の上面と側面に設けられている。AlNバッファ層102、n型GaNクラッド層103、多層104、p型AlGaNクラッド層105及びp型GaNコンタクト層106が、GaN系半導体層113を構成している。このGaN系半導体層113は、上記層を、サファイア基板101上に順次結晶成長させることにより形成される。
【0052】
LED素子10において、多層104における発光層は、青色光及び/又はUV光を放射する。放射されるこれらの光の波長は、発光層用半導体のバンドギャップエネルギーに逆比例する。
【0053】
本発明を、完全及び明確に開示した具体的な実施態様を参照して説明したが、添付の特許請求の範囲はこれらには限定されず、本明細書に記載の基本的教示の範囲内である当業者には明らかな全ての修正及び変更した構成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】通常の処理過程により調製した緑色シリケート系蛍光体試料のSEM写真である。
【図2】超音波ビームで処理した改善された緑色シリケート系蛍光体試料のSEM写真である。
【図3】2つの発光スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の緑色蛍光体(1)であり、他方は改善された緑色シリケート系蛍光体(2)である。
【図4】2つの励起スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の緑色蛍光体(1)であり、他方は改善された緑色シリケート系蛍光体(2)である。
【図5】2つの発光スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の黄色蛍光体(1)であり、他方は改善された黄色シリケート系蛍光体(2)である。
【図6】2つの励起スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の黄色蛍光体(1)であり、他方は改善された黄色シリケート系蛍光体(2)である。
【図7】2つの励起スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の黄緑色蛍光体(1)であり、他方は改善された黄緑色シリケート系蛍光体(2)である。
【図8】2つの励起スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の橙色蛍光体(1)であり、他方は改善された橙色シリケート系蛍光体(2)である。
【図9】2つの発光スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の黄緑色蛍光体(1)であり、他方は改善された黄緑色シリケート系蛍光体(2)である。
【図10】穏やかに湿式粉砕した黄緑色シリケート系蛍光体のSEM写真である。
【図11】2つの発光スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の橙色蛍光体(1)であり、他方は改善された橙色シリケート系蛍光体(2)である。
【図12】本発明の第一の好ましい実施態様によるLEDランプを示す断面図である。
【図13】本発明の第二の好ましい実施態様によるLEDランプを示す断面図である。
【図14】本発明の第三の好ましい実施態様によるLEDランプを示す断面図である。
【図15】本発明の第一〜第三の好ましい実施態様の一つによるLEDランプに使用されるLED素子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1B:LEDランプ
2:LED素子
3A:リード部
3B:リード部
3C:配線部
3D:配線部
4:ワイヤ
5:エポキシ樹脂
6:封止樹脂
6A:光学形状面
9:セラミック基板
10:LED素子
30:カップ部
31:底部
32:側壁部
40:Auバンプ
51:蛍光体
53:波長変換部
80:本体
80A:側壁部
90:シリコーン樹脂
101:サファイア基板
102:AlNバッファ層
103:n型GaNクラッド層
104:多層
105:p型AlGaNクラッド層
106:p型GaNコンタクト層
107:薄膜電極
108:パッド電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、高演色性を有する高輝度発光装置に用いられる、改善された発光強度、改善された励起特性及び改善された表面特性を示すシリケート系蛍光体、及び前記蛍光体を用いたLEDランプに関する。
【背景技術】
【0002】
光学スペクトルの紫外光領域又は青色光領域における励起下で青緑光、黄緑光〜橙光を放射する蛍光体が、ここ数年重要性を増している。これは、これらの蛍光体が白色光発光装置に使用されることによるものである。とりわけ、セリウム賦活グラネート−蛍光体(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5)は、種々の用途に使用されているが、光学スペクトルにおける領域が欠けることにより生じる低演色性のため、一般的な照明用途には好適ではない。さらに、YAG:Ceは青色光でしか励起されず、その使用は、青色半導体チップによる励起を用いた用途に限定されている。したがって、主要な青色発光半導体チップは、複数の発光体と組み合わせて演色性を増加している(特許文献6及び特許文献7)。YAG:Ceの他に、高CRI用クロロシリケート蛍光体(特許文献8)が使用されているが、その発光強度は、YAG:Ceに対して10%でしかない。さらに、白色光発光装置が有機発光体により実現されることができるが、安定性が低いことから効率が悪く、それらの用途が限定されていることも知られている。
【0003】
さらに、長時間安定性も悪いいくつかの無機硫化物蛍光体(例えば、SrS:Eu)も使用されている(特許文献9及び特許文献10)。
【0004】
発光装置で高CRIを実現するために、主要な紫外線発光装置(300〜370nm)を、光学スペクトルの赤色、緑色及び青色領域(RGB成分)を放出する複数の蛍光体と組み合わせて使用している(特許文献11、特許文献12及び特許文献13)。
【0005】
この数年のうちに、白色LED用のシリケート蛍光体を用いたいくつかの特許及び刊行物が出現した(特許文献14、特許文献15及び特許文献16)。ガス放電ランプにこれらが使用されることは、周知である(非特許文献1)。さらに、この非特許文献2の刊行物では、体系的に(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu格子の均一固溶体を調べたと記載されている。LEDシリケート蛍光体は、それら自体又は混合物の形態で、青色又は紫外LED−ダイと組み合わせてYAG:Ce系に比較してCRIを高くしている。シリケート蛍光体に関する全ての特許及び文献では、YAG:Ce系と比較して効率及び輝度が低いことが示されている。
【0006】
この他に、感水性についての使用上の問題がある、いくつかの高バリウム含有蛍光体も記載されている。これらの欠点により、シリケート系蛍光体の効率を低下してしまう。
【特許文献1】WO98/12757
【特許文献2】WO0252615
【特許文献3】米国特許第5998925号
【特許文献4】ヨーロッパ特許第1271664号
【特許文献5】ヨーロッパ特許第862794号
【特許文献6】WO00/33389
【特許文献7】WO00/33390
【特許文献8】WO01/93341
【特許文献9】ヨーロッパ特許第1150361号
【特許文献10】米国特許第5598059号
【特許文献11】WO9839805
【特許文献12】WO9839807
【特許文献13】WO9748138
【特許文献14】WO02/11214
【特許文献15】WO02/054502
【特許文献16】米国特許第6255670号
【非特許文献1】K.H.Butler 「Fluorescent Lamp Phosphors(蛍光灯蛍光体)」Pennsylvania Univ.Press 1980年
【非特許文献2】T.L.Barry J.Electrochem.Soc.,1968,1181
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、励起性が改善されたシリケート系蛍光体、及びそれを用いたLEDランプを提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、発光強度が改善されたシリケート系蛍光体、及びそれを用いたLEDランプを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、感水性が抑制された改善されたシリケート系蛍光体、及びそれを用いたLEDランプを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、効率が増加した改善されたシリケート系蛍光体、及びそれを用いたLEDランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、洗浄工程からの水をほとんど除去するために特殊な湿式調製工程を用いた、発光効率を高めるための改善されたバルクおよび表面特性を有する蛍光体結晶を用いることにより、紫外光又は青色光の照射下でより高い輝度が得られる改善されたシリケート系蛍光体が提供される。
【0012】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、下記の実験式で表すことができる:
M’aM’’bM’’’c(Si1-zM’’’’z)d(Al,B,Ga,In)e(Sb,P,V,Nb,Ta)fO(a+b+c/2+2d+3e/2+5f/2-n/2)Xn:Eux
(式中、
M’は、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’は、Mg、Cd、Mn、Beからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’’は、周期表第1族から選択された一種以上の一価金属のイオンであり、
M’’’’は、Ti、Zr、Hf、Geからなる群から選択された一種以上の四価の元素であり、
Xは、電荷のバランスをとるためのF、Cl、Br、Iからなる群から選択された一種以上のイオンであり、そして
0.5≦a≦8であり、
0≦b≦5であり、
0≦c≦4であり、
0≦d≦10であり、
0≦e≦2であり、
0≦f≦2であり、
0≦n≦4であり、
0≦x≦0.5であり、
0≦z≦1である)。
【0013】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、下記の実験式で表すことができる:
M’aM’’bM’’’c(Si1-zM’’’’z)d(Al,B,Ga,In)e(Sb,P,V,Nb,Ta)fO(a+b+c/2+2d+3e/2+5f/2-n/2)Xn:Ry
(式中、
M’は、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’は、Mg、Cd、Mn、Beからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’’は、周期表第1族から選択された一種以上の一価金属のイオンであり、
M’’’’は、Ti、Zr、Hf、Geからなる群から選択された一種以上の四価の元素であり、
Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi、S、Sn、Sbからなる群から選択された一種以上の元素であり、
Xは、電荷のバランスをとるためのF、Cl、Br、Iからなる群から選択された一種以上のイオンであり、そして
0.5≦a≦8であり、
1≦b≦5であり、
0≦c≦4であり、
0≦d≦10であり、
0≦e≦2であり、
0≦f≦2であり、
0≦n≦4であり、
0≦y≦1であり、
0≦z≦1である)。
【0014】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、水溶性の有機非水性有機溶媒(アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類等)又はそれらの水性混合物又はそれらと追加の錯化剤との混合物を用いて製造されることを特徴とするものでよい。
【0015】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、有機溶媒の水性混合物又は純粋有機溶媒(アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、又はそれらと追加の錯化剤との混合物)中での湿式粉砕工程を用いて調製したことを特徴とするものでよい。
【0016】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、有機溶媒の水性混合物又は純粋有機溶媒(アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類、又はそれらと追加の錯化剤との混合物)中での湿式ふるい工程を用いて調製したことを特徴とするものでよい。
【0017】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類等の有機溶媒の水性混合物又は純粋有機溶媒又はそれらと追加の錯化剤との混合物中で、超音波ビームを照射することによる表面清浄工程を用いて調製したことを特徴とするものでよい。
【0018】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、水性混合物での洗浄後で且つ前記処理工程の終わりに乾燥する前に、アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類等の有機非水溶媒又はそれらと追加の錯化剤との混合物での処理をおこなって調製したことを特徴とするものでよい。
【0019】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で乾燥されることを特徴とするものでよい。
【0020】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、250〜500nmの放射線により励起できることを特徴とするものでよい。
【0021】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、単独で又は複数の発光体の混合物で発光装置に使用されることを特徴とするものでよい。
【0022】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、LEDに発光層として使用されることを特徴とするものでよい。
【0023】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂等の樹脂との反応を減少させる改善された表面品質を有することを特徴とするものでよい。
【0024】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、2マイクロメートル未満にまでサイズを減少させた部分を有するだけでなく、粒度分布がより小さいことにより、LEDにおいてより均一な層が得られることを特徴とするものでよい。
【0025】
本発明によれば、改善されたシリケート系蛍光体は、粒径が、20〜30μmであることを特徴とするものでよい。
【0026】
本発明によれば、紫外又は青色照射光を放射するLED素子と、
前記LED素子を封止する光透過性の封止樹脂であって、有機非水溶媒を用いた湿式粉砕工程を用いることにより調製され且つ前記光により励起される蛍光体結晶を含む封止樹脂と、
を含むLEDランプが提供される。
【0027】
本発明によれば、前記LEDランプは、前記蛍光体結晶の形成において、前記湿式粉砕を、前記有機非水溶媒中で超音波ビーム照射により実施するように構成する。
【0028】
本発明によれば、前記LEDランプは、前記封止樹脂が、前記LED素子を封止する第一封止樹脂と、前記第一封止樹脂上に積層された前記蛍光体結晶を含有する層状の第二封止樹脂とを含むように構成される。
【0029】
本発明によれば、前記LEDランプは、前記蛍光体結晶が、リードフレームに実装された前記LED素子を封止する前記封止樹脂に混合されているように構成される。
【0030】
本発明によれば、前記LEDランプは、前記蛍光体結晶が、無機材料基板に実装された前記LED素子を封止する前記封止樹脂に混合されているように構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を、添付図面を参照しながらより詳細に説明する。
励起光源からの放射の単一の蛍光体結晶への透過率及び変換された光の単一の蛍光体結晶からの透過率をより高めるためには、改善された蛍光体表面及び結晶構造が必要である。これは、極微量の融剤及び二次相(例えば、アルカリ土類塩化物)をまだ含有する前破砕した粗製蛍光体をいくつかの特殊な処理工程に附することにより達成される。本発明者等が検討した結果、感水性シリケート系蛍光体の取り扱いの特殊な方法、及び全てのシリケート系蛍光体を改善して、発光装置における量子収率及び輝度を高めるための特殊な方法を開発した。
【0032】
この改善は、感水性系を処理過程に附する際に過剰の水を避けることにより可能となる。とりわけ、バリウムリッチ組成物は、水により生じる輝度と表面品質の減少により大きな影響を受ける。これは、蛍光体結晶が加水分解されてアルカリ土類水酸化物とケイ酸とすることにより生じる。エタノールのような非水溶媒を単純有機ヒドロキシル基含有溶媒として使用すると、加水分解は観察されない。エタノールであっても、最後に残る極微量の融剤を溶解し、アルカリ土類水酸化物及び酸化物を懸濁することができる。水の代わりにエタノール中で湿式粉砕過程を実施すると、加水分解は観察されない。感水性蛍光体は安定であり、さらに部分的に水性の処理工程に附することによりもっと安定となる。これは、金属原子と溶媒とが錯体を形成することによるものと思われる。疎水性テールは、結晶表面を水分子から保護すると思われる。例えば、メタノール、プロパノール又はイソ−プロパノール、アセトン、メチル−エチル−ケトン、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類、アセトニトリル等のニトリル類、アミド類、エステル類又はエチレングリコール若しくはグリセロール等の有機ポリヒドロキシ化合物等の種々の有機溶媒を使用することができる。
【0033】
別の改善は、非水有機溶媒又はそれらの水性混合物中で湿式ふるい過程を実施することにより実現できる。懸濁した蛍光体を、ふるい上におき、ふるいを介して種々の振動をかけながら溶媒流を流して、蛍光体結晶をメッシュを通過させる。乾式ふるい過程と比較して、粒度分布は、極微細領域には大きなシグナルを示さない。このピークは、長時間の乾式ふるい過程中に蛍光体粒子が摩擦して生じると思われる。湿式ふるい過程において溶媒を流すことにより、蛍光体粒子はふるいのメッシュを通過するようになされる。
【0034】
通常の方法で調製したシリケート系蛍光体のSEM写真を、図1に示す。蛍光体表面に若干の小粒子だけでなく、鋭い外角が観察される。非水溶媒中で蛍光体結晶に超音波を照射し、デカンテーションし、乾燥する操作の後では、蛍光体表面は、これらの不純物が除去されて清浄になっていると思われる(図2)。励起及び発光スペクトルから、このような試料が大きく改善されたことが明らかである(図3及び図4)。
【0035】
すでに洗浄した蛍光体を、濾過過程後にアセトン、メタノール又はエタノールのような非水溶媒で処理して洗浄操作からの水のほとんどを除去することにより、励起及び発光スペクトルが極めて大きく改善される。この工程の後、蛍光体試料を、乾燥炉中、空気(CO2と接触)下又は好ましくはアルゴン又は窒素等の不活性ガス雰囲気下(例えば、アルカリ土類炭酸塩の再形成を回避するため)、30〜350℃で数時間乾燥する。これらにより、非水処理によりほとんど除去される水は、アルカリ土類ケイ酸塩と反応することができず、且つさらなる工程で、アルカリ土類炭酸塩と反応することができない。これにより発光スペクトル及び励起スペクトルの改善が、観察される(図5及び図6)。第二の点は、強力なガス流により、雰囲気中の溶媒又は水の分圧が減少し、乾燥工程がはやくなることである。その結果、加熱下で水がリンと接触する時間が最小となる。
【0036】
全ての改善されたシリケート系蛍光体のスペクトルでは第二相がなく、そして紫外光の励起下での寿命が増加する。また、全ての蛍光体試料は、水銀ランプ又は青色若しくは紫色LEDからの真空紫外領域からの青色光又は紫外光で励起できる。改善されたシリケート系蛍光体は、400〜530nm(図4、図6、図7及び図8)の領域での励起能が大きく増加している。
【実施例】
【0037】
本発明を、以下、実施例を参照してより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例には限定されない。
【0038】
原料、すなわち、カルシウム、ストロンチウム及び/又はバリウムの金属酸化物、酸化ユーロピウム、シリカ、二酸化ゲルマニウム、賦活剤並びに融剤の化学量論量を秤量し、均一に混合する。得られた混合物を、還元雰囲気(水素/窒素)下、蛍光体組成物に応じて1100〜1350℃で3〜20時間焼成した。金属酸化物とドーパントの比に応じて、緑色〜橙色の色を有する粗製蛍光物質を、予備破砕し、500μmのふるいでふるい分けした。
【0039】
図5は発光スペクトルを示し、図6は水溶性の非水溶媒を用いた処理操作により改善されたシリケート系蛍光体の励起スペクトルを示す。粗製イエローシリケート系蛍光体材料を、水洗し、蛍光体をガラスフリットを介して吸引し、アセトンに3回暴露させて蛍光体ケーキに残された極微量の水のほとんどを除去した後、蛍光体を、乾燥炉中、窒素下130℃で乾燥する。これにより、乾燥工程が非常に促進される。
【0040】
図3は発光スペクトルのグラフを示し、図4は非水溶媒中で超音波ビームを使用することにより改善されたシリケート系蛍光体の励起スペクトルのグラフである。粗製緑色シリケート蛍光体ケーキを、ジョーブレーカーで予備破砕する。さらに破砕するために、蛍光体を、攪拌下、エタノールに懸濁し、40kHzの超音波ビームを20分間照射する。エタノールを除去し、蛍光体を水/エタノール(v:v=1:1)で2回洗浄して最後に残った極微量の融剤を融解させる。乾燥炉中、130℃で6時間乾燥後、粒度分布及び顕微鏡での調査の結果、蛍光体単結晶のサイズがより小さく、蛍光体中の最微細粒子の量が大きく減少することが分かる。純水を用いた一般的な処理プロセス(図1)と比較して、SEMで検討すると、蛍光体結晶の表面が顕著に清浄化することが分かる(図2)。
【0041】
図9は発光スペクトルのグラフを示し、図7は水性又は純粋有機溶媒における湿式粉砕過程を適用することにより改善された黄緑シリケート系蛍光体の励起スペクトルのグラフを示す。粗製の黄緑シリケート蛍光体ケーキを、ジョーブレーカーで予備破砕する。さらに破砕するために、蛍光体1kgを、ジルコニア球1kgとともに、1Lのエタノールの入ったドラムに入れる。ドラムを、ローラーミルでゆっくりと3時間回転させる。得られた懸濁液を、水に入れて洗浄過程に附し、吸引し、エタノールですすいで極微量の水を除去し、乾燥炉中、130℃で一晩乾燥する。SEM写真から、穏やかに粉砕した蛍光体では、凝集物が数個しかないことが分かる(図10参照)。
【0042】
図8は励起を示した図であり、図11は洗浄過程の後、水性エタノール(95%)を用いた湿式ふるい工程に附し、その後蛍光体を吸引して採取し、不活性ガス雰囲気(アルゴン)下、130℃で5時間乾燥して得た、橙色シリケート系蛍光体材料の発光スペクトルを示す。これには、湿式ふるいは別の洗浄工程と同様であり、且つ有機溶媒が極微量の水を除去する利点がある。さらに、湿式ふるいは、ガーゼストレーナーにより乾式ふるい過程よりも顕著に早い。乾式過程では、蛍光体結晶が互いにこすられ、最も微細な粒子の量が顕著に増加する。最良の方法は、洗浄過程の開始時点で湿式ふるいをして処理操作全体についての非水性溶媒の利点が組み合わさって得られるようにすることである。
【0043】
以上をまとめると、全ての改善されたシリケート系蛍光体は、励起波長400〜550nmの領域での励起特性が著しく増加することが明らかである。公知のシリケート系に対して、励起波長464nmで最大50%の効率が生じる。得られた結果の本質的なものを、表1にまとめて示す。
【0044】
【表1】
【0045】
次に、本発明による改善されたシリケート系蛍光体を用いたLEDランプを説明する。
【0046】
図12に、本発明による第一の好ましい実施態様のLEDランプを示す。
【0047】
このLEDランプ1Bは、GaN系半導体化合物によって形成されて青色光(発光波長約460nm)を放射するフェイスアップ型のLED素子2を備えている。カップ部30を有する銅合金製リード部3Aを、LED素子2がカップ部30の底部31に固定されるように設ける。リード部3Aは、ワイヤ4によってLED素子2に電気的に接続されている。銅合金製リード部3Bは、ワイヤ4によってLED素子2の電極(図示せず)に電気的に接続されている。リード部3Aのカップ部30は、エポキシ樹脂5で封止されている。エポキシ樹脂5には、LED素子2から放射される青色光により励起される蛍光体51が含有されている。リード部3A、3B及びワイヤ4は、エポキシ樹脂等の封止樹脂6で一体的に封止されている。封止樹脂6は、半球状の光学形状面6Aが形成されている。
【0048】
LEDランプ1Bにおいて、蛍光体51は、図5に示す特性を有する改善された黄色シリケート系蛍光体であり、LED素子2からの青色光と蛍光体51からの黄色光が混合されて白色光が生じる。
【0049】
図13は、本発明による第二の好ましい実施態様のLEDランプを示す。このLEDランプ1Bは、SMD(Surface Mount Device)型のLEDランプであり、タングステン(W)によってパターン形成された配線部3C、3Dを有するセラミック基板9を備えている。無機材料の焼結体からなる本体80は、セラミック基板9と一体的に成形されており、凹部を有する。この凹部は、光放射方向に拡大された形状を有する側壁部80Aを有する。LED素子2は、Auバンプ40を介して、配線部3C及び3Dにおける、本体80の凹部の底部に露出した各部に電気的に接続している。LED素子2は、蛍光体51を含有するシリコーン樹脂90で封止されている。蛍光体51は、上記したシリケート系蛍光体から選択された一種以上の蛍光体からなっている。一方、LED素子2は、青色光及び/又はUV光を放射するLED素子である。
【0050】
図14は、本発明による第三の好ましい実施態様によるLEDランプである。このLEDランプ1Bは、図13に示すシリコーン樹脂90の表面部分において層状の波長変換部53を設けたことと、蛍光体51が波長変換部53に含有されていることを除いて、図13に示したLEDランプ1Bの構成と同じである。
【0051】
図15は、図12〜図14に示すLEDランプに使用することができるLED素子10を示す。このLED素子10は、サファイア基板101を備えている。AlNバッファ層102とn型GaNクラッド層103とが、サファイア基板101上にこの順序で設けられている。発光層を有する多層104が、n型GaNクラッド層103の上に設けられている。p型AlGaNクラッド層105とp型GaNコンタクト層106が、この順序で多層104上に設けられている。Auからなる薄膜電極107が、p型GaNコンタクト層106の上に設けられている。パッド電極108が、この薄膜電極107に接続されている。n側電極109が、n型GaNクラッド層103に接続されている。保護膜110が、パッド電極108とn側電極109を除いて、LED素子10の上面と側面に設けられている。AlNバッファ層102、n型GaNクラッド層103、多層104、p型AlGaNクラッド層105及びp型GaNコンタクト層106が、GaN系半導体層113を構成している。このGaN系半導体層113は、上記層を、サファイア基板101上に順次結晶成長させることにより形成される。
【0052】
LED素子10において、多層104における発光層は、青色光及び/又はUV光を放射する。放射されるこれらの光の波長は、発光層用半導体のバンドギャップエネルギーに逆比例する。
【0053】
本発明を、完全及び明確に開示した具体的な実施態様を参照して説明したが、添付の特許請求の範囲はこれらには限定されず、本明細書に記載の基本的教示の範囲内である当業者には明らかな全ての修正及び変更した構成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】通常の処理過程により調製した緑色シリケート系蛍光体試料のSEM写真である。
【図2】超音波ビームで処理した改善された緑色シリケート系蛍光体試料のSEM写真である。
【図3】2つの発光スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の緑色蛍光体(1)であり、他方は改善された緑色シリケート系蛍光体(2)である。
【図4】2つの励起スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の緑色蛍光体(1)であり、他方は改善された緑色シリケート系蛍光体(2)である。
【図5】2つの発光スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の黄色蛍光体(1)であり、他方は改善された黄色シリケート系蛍光体(2)である。
【図6】2つの励起スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の黄色蛍光体(1)であり、他方は改善された黄色シリケート系蛍光体(2)である。
【図7】2つの励起スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の黄緑色蛍光体(1)であり、他方は改善された黄緑色シリケート系蛍光体(2)である。
【図8】2つの励起スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の橙色蛍光体(1)であり、他方は改善された橙色シリケート系蛍光体(2)である。
【図9】2つの発光スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の黄緑色蛍光体(1)であり、他方は改善された黄緑色シリケート系蛍光体(2)である。
【図10】穏やかに湿式粉砕した黄緑色シリケート系蛍光体のSEM写真である。
【図11】2つの発光スペクトルを比較したグラフであり、そのうちの一つは通常の橙色蛍光体(1)であり、他方は改善された橙色シリケート系蛍光体(2)である。
【図12】本発明の第一の好ましい実施態様によるLEDランプを示す断面図である。
【図13】本発明の第二の好ましい実施態様によるLEDランプを示す断面図である。
【図14】本発明の第三の好ましい実施態様によるLEDランプを示す断面図である。
【図15】本発明の第一〜第三の好ましい実施態様の一つによるLEDランプに使用されるLED素子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1B:LEDランプ
2:LED素子
3A:リード部
3B:リード部
3C:配線部
3D:配線部
4:ワイヤ
5:エポキシ樹脂
6:封止樹脂
6A:光学形状面
9:セラミック基板
10:LED素子
30:カップ部
31:底部
32:側壁部
40:Auバンプ
51:蛍光体
53:波長変換部
80:本体
80A:側壁部
90:シリコーン樹脂
101:サファイア基板
102:AlNバッファ層
103:n型GaNクラッド層
104:多層
105:p型AlGaNクラッド層
106:p型GaNコンタクト層
107:薄膜電極
108:パッド電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄工程からの水のほとんどを除去するために特殊な湿式調製工程を用いた、発光効率を高めるための改善されたバルクおよび表面特性を有する蛍光体結晶を用いることにより、紫外光又は青色光の照射下でより高い輝度が得られる改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項2】
下記の実験式で表される、請求項1に記載の改善されたシリケート系蛍光体:
M’aM’’bM’’’c(Si1-zM’’’’z)d(Al,B,Ga,In)e(Sb,P,V,Nb,Ta)fO(a+b+c/2+2d+3e/2+5f/2-n/2)Xn:Eux
(式中、
M’は、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’は、Mg、Cd、Mn、Beからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’’は、周期表第1族から選択された一種以上の一価金属のイオンであり、
M’’’’は、Ti、Zr、Hf、Geからなる群から選択された一種以上の四価の元素であり、
Xは、電荷のバランスをとるためのF、Cl、Br、Iからなる群から選択された一種以上のイオンであり、そして
0.5≦a≦8であり、
0≦b≦5であり、
0≦c≦4であり、
0≦d≦10であり、
0≦e≦2であり、
0≦f≦2であり、
0≦n≦4であり、
0≦x≦0.5であり、
0≦z≦1である)。
【請求項3】
下記の実験式で表される、請求項1に記載の改善されたシリケート系蛍光体:
M’aM’’bM’’’c(Si1-zM’’’’z)d(Al,B,Ga,In)e(Sb,P,V,Nb,Ta)fO(a+b+c/2+2d+3e/2+5f/2-n/2)Xn:Ry
(式中、
M’は、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’は、Mg、Cd、Mn、Beからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’’は、周期表第1族から選択された一種以上の一価金属のイオンであり、
M’’’’は、Ti、Zr、Hf、Geからなる群から選択された一種以上の四価の元素であり、
Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi、S、Sn、Sbからなる群から選択された一種以上の元素であり、
Xは、電荷のバランスをとるためのF、Cl、Br、Iからなる群から選択された一種以上のイオンであり、そして
0.5≦a≦8であり、
1≦b≦5であり、
0≦c≦4であり、
0≦d≦10であり、
0≦e≦2であり、
0≦f≦2であり、
0≦n≦4であり、
0≦y≦1であり、
0≦z≦1である)。
【請求項4】
水溶性の有機非水性有機溶媒(アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類等)又はそれらの水性混合物又はそれらと追加の錯化剤との混合物を用いて製造されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項5】
有機溶媒の水性混合物又は純粋有機溶媒(アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、又はそれらと追加の錯化剤との混合物)中での湿式粉砕工程を用いて調製したことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項6】
有機溶媒の水性混合物又は純粋有機溶媒(アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類、又はそれらと追加の錯化剤との混合物)中での湿式ふるい工程を用いて調製したことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項7】
アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類等の有機溶媒の水性混合物又は純粋有機溶媒又はそれらと追加の錯化剤との混合物中で、超音波ビームを照射することによる表面清浄工程を用いて調製したことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項8】
水性混合物での洗浄後で且つ前記処理工程の終わりに乾燥する前に、アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類等の有機非水溶媒又はそれらと追加の錯化剤との混合物での処理をおこなって調製したことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項9】
窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で乾燥されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項10】
250〜500nmの放射線により励起できることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項11】
単独で又は複数の発光体の混合物で発光装置に使用されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項12】
LEDに発光層として使用されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項13】
エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂等の樹脂との反応を減少させる改善された表面品質を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項14】
2マイクロメートル未満にまでサイズを減少させた部分を有するだけでなく、粒度分布がより小さいことにより、LEDにおいてより均一な層が得られることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項15】
粒径が、20〜30μmであることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項16】
紫外又は青色照射光を放射するLED素子と、
前記LED素子を封止する光透過性の封止樹脂であって、有機非水溶媒を用いた湿式粉砕工程を用いることにより調製され且つ前記光により励起される蛍光体結晶を含む封止樹脂と、
を含むLEDランプ。
【請求項17】
前記蛍光体結晶の形成において、前記湿式粉砕を、前記有機非水溶媒中で超音波ビーム照射により実施する、請求項16に記載のLEDランプ。
【請求項18】
前記封止樹脂が、前記LED素子を封止する第一封止樹脂と、前記第一封止樹脂上に積層された前記蛍光体結晶を含有する層状の第二封止樹脂とを含む、請求項16に記載のLEDランプ。
【請求項19】
前記蛍光体結晶が、リードフレームに実装された前記LED素子を封止する前記封止樹脂に混合されている、請求項16に記載のLEDランプ。
【請求項20】
前記蛍光体結晶が、無機材料基板に実装された前記LED素子を封止する前記封止樹脂に混合されている、請求項16に記載のLEDランプ。
【請求項21】
紫外又は青色照射光を放射するLED素子と、
上に前記LED素子を実装している支持体と、
前記LED素子を封止する光透過性の封止樹脂であって、有機非水溶媒を用いた湿式粉砕工程を用いることにより調製され且つ前記光により励起される蛍光体結晶を含む封止樹脂と、
を含むLEDランプ。
【請求項22】
前記支持体が、前記LED素子に電力を供給する第一リードと第二リードを有し、前記第一リードが、一端に凹部を有し、そこに前記LED素子が前記光透過性封止樹脂により封止されるように配置されている、請求項21に記載のLEDランプ。
【請求項23】
前記支持体が、前記LED素子に電力を供給する、上に配線パターンを有する絶縁基板を有し、前記LED素子が前記光透過性封止樹脂により封止されるように前記絶縁基板に実装されている、請求項21に記載のLEDランプ。
【請求項1】
洗浄工程からの水のほとんどを除去するために特殊な湿式調製工程を用いた、発光効率を高めるための改善されたバルクおよび表面特性を有する蛍光体結晶を用いることにより、紫外光又は青色光の照射下でより高い輝度が得られる改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項2】
下記の実験式で表される、請求項1に記載の改善されたシリケート系蛍光体:
M’aM’’bM’’’c(Si1-zM’’’’z)d(Al,B,Ga,In)e(Sb,P,V,Nb,Ta)fO(a+b+c/2+2d+3e/2+5f/2-n/2)Xn:Eux
(式中、
M’は、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’は、Mg、Cd、Mn、Beからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’’は、周期表第1族から選択された一種以上の一価金属のイオンであり、
M’’’’は、Ti、Zr、Hf、Geからなる群から選択された一種以上の四価の元素であり、
Xは、電荷のバランスをとるためのF、Cl、Br、Iからなる群から選択された一種以上のイオンであり、そして
0.5≦a≦8であり、
0≦b≦5であり、
0≦c≦4であり、
0≦d≦10であり、
0≦e≦2であり、
0≦f≦2であり、
0≦n≦4であり、
0≦x≦0.5であり、
0≦z≦1である)。
【請求項3】
下記の実験式で表される、請求項1に記載の改善されたシリケート系蛍光体:
M’aM’’bM’’’c(Si1-zM’’’’z)d(Al,B,Ga,In)e(Sb,P,V,Nb,Ta)fO(a+b+c/2+2d+3e/2+5f/2-n/2)Xn:Ry
(式中、
M’は、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’は、Mg、Cd、Mn、Beからなる群から選択された一種以上の元素であり、
M’’’は、周期表第1族から選択された一種以上の一価金属のイオンであり、
M’’’’は、Ti、Zr、Hf、Geからなる群から選択された一種以上の四価の元素であり、
Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi、S、Sn、Sbからなる群から選択された一種以上の元素であり、
Xは、電荷のバランスをとるためのF、Cl、Br、Iからなる群から選択された一種以上のイオンであり、そして
0.5≦a≦8であり、
1≦b≦5であり、
0≦c≦4であり、
0≦d≦10であり、
0≦e≦2であり、
0≦f≦2であり、
0≦n≦4であり、
0≦y≦1であり、
0≦z≦1である)。
【請求項4】
水溶性の有機非水性有機溶媒(アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類等)又はそれらの水性混合物又はそれらと追加の錯化剤との混合物を用いて製造されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項5】
有機溶媒の水性混合物又は純粋有機溶媒(アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、又はそれらと追加の錯化剤との混合物)中での湿式粉砕工程を用いて調製したことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項6】
有機溶媒の水性混合物又は純粋有機溶媒(アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類、又はそれらと追加の錯化剤との混合物)中での湿式ふるい工程を用いて調製したことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項7】
アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類等の有機溶媒の水性混合物又は純粋有機溶媒又はそれらと追加の錯化剤との混合物中で、超音波ビームを照射することによる表面清浄工程を用いて調製したことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項8】
水性混合物での洗浄後で且つ前記処理工程の終わりに乾燥する前に、アルコール類、ポリオール原料、ニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、エステル類等の有機非水溶媒又はそれらと追加の錯化剤との混合物での処理をおこなって調製したことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項9】
窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で乾燥されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項10】
250〜500nmの放射線により励起できることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項11】
単独で又は複数の発光体の混合物で発光装置に使用されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項12】
LEDに発光層として使用されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項13】
エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂等の樹脂との反応を減少させる改善された表面品質を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項14】
2マイクロメートル未満にまでサイズを減少させた部分を有するだけでなく、粒度分布がより小さいことにより、LEDにおいてより均一な層が得られることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項15】
粒径が、20〜30μmであることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の改善されたシリケート系蛍光体。
【請求項16】
紫外又は青色照射光を放射するLED素子と、
前記LED素子を封止する光透過性の封止樹脂であって、有機非水溶媒を用いた湿式粉砕工程を用いることにより調製され且つ前記光により励起される蛍光体結晶を含む封止樹脂と、
を含むLEDランプ。
【請求項17】
前記蛍光体結晶の形成において、前記湿式粉砕を、前記有機非水溶媒中で超音波ビーム照射により実施する、請求項16に記載のLEDランプ。
【請求項18】
前記封止樹脂が、前記LED素子を封止する第一封止樹脂と、前記第一封止樹脂上に積層された前記蛍光体結晶を含有する層状の第二封止樹脂とを含む、請求項16に記載のLEDランプ。
【請求項19】
前記蛍光体結晶が、リードフレームに実装された前記LED素子を封止する前記封止樹脂に混合されている、請求項16に記載のLEDランプ。
【請求項20】
前記蛍光体結晶が、無機材料基板に実装された前記LED素子を封止する前記封止樹脂に混合されている、請求項16に記載のLEDランプ。
【請求項21】
紫外又は青色照射光を放射するLED素子と、
上に前記LED素子を実装している支持体と、
前記LED素子を封止する光透過性の封止樹脂であって、有機非水溶媒を用いた湿式粉砕工程を用いることにより調製され且つ前記光により励起される蛍光体結晶を含む封止樹脂と、
を含むLEDランプ。
【請求項22】
前記支持体が、前記LED素子に電力を供給する第一リードと第二リードを有し、前記第一リードが、一端に凹部を有し、そこに前記LED素子が前記光透過性封止樹脂により封止されるように配置されている、請求項21に記載のLEDランプ。
【請求項23】
前記支持体が、前記LED素子に電力を供給する、上に配線パターンを有する絶縁基板を有し、前記LED素子が前記光透過性封止樹脂により封止されるように前記絶縁基板に実装されている、請求項21に記載のLEDランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−124422(P2006−124422A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310954(P2004−310954)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(304064894)ライテック−エルエルエル ゲー・エム・ベー・ハー (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(304064894)ライテック−エルエルエル ゲー・エム・ベー・ハー (2)
【Fターム(参考)】
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