説明

放電ランプ点灯装置

【課題】
放電ランプの動作モードに応じてフィラメント加熱電流を制御し、フィラメント加熱トランスの大型化を回避可能な放電ランプ点灯装置を提供する。
【解決手段】
電源DCと、インバータ手段INVと、放電ランプDLを含み、インバータ手段により付勢される共振回路系RCと、インバータ手段の出力を入力してフィラメント加熱電流を出力するフィラメント加熱トランスFTおよびインピーダンスを有していてフィラメント加熱トランスの入力を制御するスイッチング手段Q3を含み、放電ランプの動作モードに応じたフィラメント加熱電流が供給されるようにスイッチング手段がフィラメント加熱トランスに対する入力を制御するフィラメント加熱回路FHCとを具備し、フィラメント加熱回路と共振回路系の共振によってスイッチング手段のオン時にフィラメント加熱トランスに流れる直流電流を低減させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメント加熱トランスを備えた放電ランプ点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電灯を点灯するインバータ回路の出力端にコンデンサと予熱トランスおよびスイッチ手段からなる予熱回路を接続し、予熱回路の前記スイッチ手段を制御する予熱制御回路を備え、前記放電灯の調光点灯時に調光度合いに対応して前記制御回路から出力される予熱制御信号によってスイッチ手段を制御して前記放電灯のフィラメント電流を制御するようにした放電灯点灯装置は既知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−235619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された放電灯点灯装置のようにインバータ回路を用いて放電灯を高周波点灯する場合には、インバータ回路の出力端に放電灯およびその限流インピーダンスを含む共振回路系を接続し、この共振回路系を介して放電灯をインバータ回路に接続する。また、上記予熱回路のスイッチング手段として半導体スイッチを用いるのが一般的である。半導体スイッチ、特にMOS-FETでは、無視し得ない程度のインピーダンスを有しているものが多い。
【0005】
ところが、特許文献1に記載された放電灯点灯装置では、予熱回路のスイッチング手段をオンしている期間中に直流電流がインバータ回路の高周波出力に重畳して予熱回路に流入するので、コアの磁気飽和を回避する必要から予熱トランスが大型化する問題のあることが判明した。
【0006】
本発明者がこの問題の解決のために調査、検討の結果、上記直流電流重畳に伴って生じる問題は、前記共振回路系のインピーダンスとスイッチング手段のインピーダンスを含む入力端から見た上記予熱回路全体のインピーダンスとがスイッチング手段のオン時に過渡的な共振現象を呈することが原因していることを見出した。特許文献1に記載された放電灯点灯装置において、図9(a)に示すインバータ回路の出力電圧VHFの周波数が例えば50kHzで、図9(b)に示すように上記予熱回路のスイッチング手段のゲート駆動信号Vのオン、オフの周期Tが1秒、オンデューティ30%のときには、図9(c)に示すように予熱電流Iには過渡的な直流電流IDCがインバータ回路から出力される高周波電流に重畳して予熱トランスの1次巻線に流れる。
【0007】
本発明は、フィラメント加熱電流を放電ランプの動作モードに応じて所要の程度に制御するとともに、フィラメント加熱トランスの大型化を回避可能な放電ランプ点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放電ランプ点灯装置は、直流出力を生じる電源と;スイッチング素子を備え、電源の直流出力をスイッチング動作により交流に変換するインバータ手段と;フィラメント電極を備えた放電ランプを含み、インバータ手段の出力により付勢される共振回路系と;インバータ手段の出力を入力して放電ランプのフィラメント電極に対してフィラメント加熱電流を出力するフィラメント加熱トランスおよびインピーダンスを有していてフィラメント加熱トランスの入力を制御するスイッチング手段を含み、放電ランプの動作モードに応じたフィラメント加熱電流が供給されるようにスイッチング手段がフィラメント加熱トランスに対する入力を制御するフィラメント加熱回路と;を具備し、フィラメント加熱回路のインピーダンスと共振回路系のインピーダンスとの共振によってスイッチング手段のオン時にフィラメント加熱トランスに流れる直流電流を低減させるように構成したことを特徴としている。
【0009】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0010】
直流出力を生じる電源は、直流出力を生じるのであれば、具体的な構成は特段限定されない。したがって、例えば電池電源、キャパシタ、整流化直流電源などであることを許容する。また、インバータ手段に所望電圧の直流電圧を入力し、電源電圧変動を調整し、または調光したりするために、チョッパ回路などの直流−直流変換回路を含むことが許容される。
【0011】
インバータ手段は、スイッチング素子を備え、このスイッチング素子のスイッチング動作により直流を交流に変換する回路手段であるが、既知の各種回路方式のインバータを採用することができる。また、本発明において、インバータ手段の出力周波数は特段限定されない。しかし、蛍光ランプなどの放電ランプを高周波点灯すると発光効率が高くなるので、一般的には高周波が好適である。なお、出力電圧は、矩形波として出力するように構成されていることを許容する。また、放電ランプを調光するために、インバータ手段の出力周波数を可変に構成することが許容されている。
【0012】
また、インバータ手段は、既知のようにスイッチング手段を駆動する駆動回路および駆動回路を制御する制御回路を具備しているように構成することができる。なお、制御回路には、所望によりマイコンを用いることができる。
【0013】
共振回路系は、その中に点灯する放電ランプが接続され、かつインバータ手段の出力が印加されるように構成されている。そして、印加されたインバータ手段の出力を共振により波形変換するとともに、共振の程度を加減して放電ランプの動作モード、例えば予熱時、始動時および点灯時または調光時に応じた所要の電圧を放電ランプに印加するとともに、点灯時には放電ランプ電流に対して限流インピーダンスを作用させる。なお、上記波形変換としては、インバータ出力の矩形波電圧が放電ランプに印加される際には正弦波に変換されているように構成するのが一般的である。
【0014】
フィラメント加熱回路は、フィラメント加熱トランスおよびスイッチング手段を含んでいる。フィラメント加熱トランスは、インバータ手段の出力を入力して放電ランプのフィラメント電極に対してフィラメント加熱電流を出力する。
【0015】
スイッチング手段は、フィラメント加熱トランスの入力をオン・オフにより制御して放電ランプの動作モード、例えば予熱時、始動時および点灯時の動作段階や点灯モードすなわち全光時および調光時に応じた最適なフィラメント加熱電流を放電ランプのフィラメント電極に供給できるように制御する。なお、スイッチング手段を制御するには、例えばインバータ手段のマイコンを用いたり、専用の制御回路を配設したりすることができる。
【0016】
また、フィラメント加熱回路は、スイッチング手段の有する無視し得ないインピーダンスと共振回路系のインピーダンスとの共振によってスイッチング手段のオン時にフィラメント加熱トランスに流れる直流を低減するように構成されている。本発明において、直流を低減する構成は特段限定されないが、後述する発明の態様に示すように構成すると効果的である。
【0017】
なお、スイッチング手段の有するインピーダンスが無視し得ないとは、次のとおりである。すなわち、特許文献1のように単にフィラメント加熱電流をランプ電流に対して最適化するのみのための構成であると、スイッチング手段の有するインピーダンスと共振回路系のインピーダンスとが共振して過渡的な振動が生じるようなインピーダンスである。その結果、フィラメント加熱トランスの入力電流に直流電流が過渡的に重畳する。フィラメント加熱トランスに流れる電流に直流電流が重畳する場合、コアを大型のものにする必要がある。
【0018】
本発明において、フィラメント加熱回路は、フィラメント加熱トランスおよびスイッチング手段を含む他にコンデンサをフィラメント加熱トランスの1次巻線と直列に接続することができる。
【0019】
次に、本発明に含まれる主な態様について説明する。
【0020】
(第1の態様)
第1の態様は、入力端から見たフィラメント加熱回路のインピーダンスと共振回路系のインピーダンスとの共振によって生じる過渡的な直流電流における最初の振動波形のピーク位相までの間にスイッチング手段がオフするようにフィラメント加熱回路を構成している。なお、スイッチング手段のオン開始時点は、インバータ手段の出力電圧がフィラメント加熱回路の入力端間に印加される前および後のいずれであってもよい。
【0021】
スイッチング手段がオンしてフィラメント加熱トランスにフィラメント加熱回路のインピーダンスと共振回路系のインピーダンスとの共振による上記直流電流がピーク位相を超えて重畳すると、直流電流の実効値が大きくなる。これに対して、第1の態様においては、実効値が大きくなる前にスイッチング手段がオフするので、インバータ手段の出力に重畳する直流電流の実効値を小さな値に抑制することができる。
【0022】
(第2の態様)
第2の態様は、フィラメント加熱回路の入力端間にインバータ手段の出力電圧が印加される以前にスイッチング手段がオンし、かつ上記出力電圧が0になる以前にオフするようにフィラメント加熱回路を制御する。
【0023】
第2の態様においては、第1の態様におけるのと同様にインバータ手段の出力に重畳する直流電流の実効値を小さな値に抑制することができる。なお、スイッチング手段のオン・オフ制御は、インバータ手段の出力周波数と同期しているのが好ましいが、所望により非同期であってもよい。
【0024】
また、インバータ手段の出力電圧が印加される以前にスイッチング手段をオンさせるには、例えば以下のように構成すればよい。例えば、インバータ手段のスイッチング素子の駆動信号をマイコンでディジタル的に制御する場合、フィラメント加熱回路のスイッチング手段に供給する駆動信号を形成するためのマイコン内のカウンターのステップ数を、インバータ手段のスイッチング素子に供給する駆動信号を形成するためのステップ数より小さく設定する。また、三角波を所定位相でクランプして駆動信号をアナログ的に制御する場合、フィラメント加熱回路FHCのスイッチング手段Q3に供給するゲート信号用のクランプ電圧を、インバータ手段INVのスゥイッチング素子に対するゲート信号用のクランプ電圧より小さくする。
【0025】
(第3の態様)
第3の態様は、フィラメント加熱回路は、インバータ手段の出力電圧の立ち上がり時点を中心にしてその前後の位相を同時に変化させることにより、オンデューティを変化させて、放電ランプの調光度合いに応じてフィラメント加熱量が所要の値になるように構成されている。
【0026】
第3の態様においては、放電ランプの調光度合いに応じてフィラメント加熱量が所要の値にすることができるとともに、第2の態様におけるのと同様にインバータ手段の出力に重畳する直流電流の実効値を小さな値に抑制することができる。
【0027】
(第4の態様)
第4の態様は、フィラメント加熱回路のスイッチング手段がMOS-FETによって構成されている。
【0028】
MOS-FETは、そのドレイン−ソース間、ドレイン−ゲート間およびゲート−ソース間に静電容量を有しているので、例えば1000pF程度のインピーダンスを有しているものが使用されている。したがって、このようなインピーダンスのMOS-FETをフィラメント加熱回路のスイッチング手段として用いる場合、インバータ手段の出力周波数が例えば50kHz程度であると、共振回路系のインピーダンスとMOS-FETのインピーダンスとが共振して過渡的な直流電流がインバータ出力に重畳してフィラメント加熱トランスに流れる。
【0029】
そこで、本発明により第1ないし第3の態様を選択的に採用することにより、直流電流の重畳を効果的に抑制することが可能になる。
【0030】
(第5の態様)
第5の態様は、静電容量の値が例えば100pF程度と小さいMOS-FETを本発明におけるフィラメント加熱回路のスイッチング素子として採用する。
【0031】
第5の態様によれば、インピーダンスの小さいMOS-FETをスイッチング手段として採用するので、本発明および第1ないし第4の態様において第5の態様を導入する場合には、より一層直流電流の重畳を小さくすることができる。また、所望により上記MOS-FETをスイッチング手段として採用するだけで第1ないし第4の態様を採用しなくても、直流電流の重畳をある程度まで抑制する作用がある。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、フィラメント加熱電流を放電ランプの動作モードに対応して制御できるとともに、フィラメント加熱トランスに流れる直流電流を抑制したので、フィラメント加熱トランスの大型化を回避した放電ランプ点灯装置を提供することことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0034】
図1ないし図4は、本発明の放電ランプ点灯装置における第1の実施形態を示し、図1はブロック回路図、図2は回路図、図3はスイッチング手段の等価回路図、図4は各部の電圧、電流波形図である。なお、第1の実施形態は、本発明の第1の態様に対応している。
【0035】
本発明の放電ランプ点灯装置は、図1に示すように電源DC、インバータ手段INV、共振回路系RCおよびフィラメント加熱回路FHCを具備している。
【0036】
電源DCは、直流を出力して後述するインバータ手段INVに供給する。第1の形態において、電源DCは、整流化直流電源からなる。
【0037】
インバータ手段INVは、スイッチング動作を行うスイッチング素子を備え、直流を交流に変換する。第1の実施形態において、インバータ手段INVは、図2に示すように電源DCに対して直列接続され、かつ交互にスイッチングする一対のスイッチング素子Q1、Q2を備えたハーフブリッジ形インバータによって構成されている。なお、一対のスイッチング素子Q1、Q2は、図示を省略しているゲート駆動回路およびマイコンを主体とする制御回路によりスイッチングが制御される。
【0038】
そうして、インバータ手段INVは、電源電圧に等しい電圧の交流、例えば高周波交流電圧を出力する。
【0039】
共振回路系RCは、負荷回路を構成し、インバータ手段INVの出力がここに印加されるとともに、放電ランプDLが接続する。そして、共振により波形変換と放電ランプDLに印加する所要の電圧を形成する。第1の実施形態において、共振回路系RCは、図2に示すようにインダクタL1およびコンデンサC1、C2により構成されている。
【0040】
インダクタL1は、インバータ手段INVと放電ランプDLの間に直列に接続されていて、ランプ電流に対する限流インピーダンスとしても作用する。コンデンサC1は、インバータ手段INVと放電ランプDLの間に直列に接続されていて、主として直流カットコンデンサとして作用する。コンデンサC2は、放電ランプDLに並列接続すると同時にインダクタL1と直列に接続している。
【0041】
そうして、共振回路系RCの主としてインダクタL1とコンデンサC2とが直列共振し、その際にコンデンサC2の端子電圧が放電ランプDLの一対のフィラメント電極E、E間に印加される。また、共振回路系RCの共振の程度は、放電ランプDLの動作モードに応じてインバータ手段INVの出力周波数が変化されるのに伴って変化する。その結果、放電ランプDLの一対のフィラメント電極E、E間に印加される電圧が動作モードに応じて適切に変化する。
【0042】
なお、放電ランプDLは、好適には蛍光ランプからなり、放電容器と、その両端内部に封装された一対のフィラメント電極E、Eと、放電容器の内部に封入された放電媒体と、放電容器の内面に形成された蛍光体層とを具備している。
【0043】
フィラメント加熱回路FHCは、フィラメント加熱トランスFTおよびスイッチング手段Q3を含み、放電ランプDLの動作モードに対応して放電ランプDLに供給するフィラメント加熱電流を制御する。第1の実施形態において、フィラメント加熱回路FHCは、図2に示すようにフィラメント加熱トランスFT、スイッチング手段Q3およびコンデンサC3の直列回路ならびに制御回路CCを備えて構成されている。そして、上記直列回路は、インバータ手段INVの出力端間に接続している。
【0044】
フィラメント加熱トランスFTは、1次巻線wp、一対の2次巻線ws1、ws2およびコアKを具備している。1次巻線wpは、コアKに巻装され、その両端がスイッチング手段Q3およびコンデンサC3と直列に接続している。一対の2次巻線ws1、ws2は、コアKに巻装されて1次巻線wpにトランス結合しており、かつ放電ランプDLの一対のフィラメント電極E、Eのそれぞれ両端に接続している。
【0045】
そうして、1次巻線wpがコンデンサC3およびスイッチング手段Q3を経由してインバータ手段INVの出力端間に接続し、かつスイッチング手段Q3がオンすると、フィラメント加熱トランスFTが動作して一対の2次巻線ws1、ws2の両端間にフィラメント加熱電圧が誘起されるので、一対のフィラメント電極E、Eにフィラメント加熱電流が流れる。
【0046】
第1の実施形態において、スイッチング手段Q3は、MOS-FETからなる。スイッチング手段Q3のMOS-FETは、図3に示すようにドレインD−ソースS間に静電容量CD−S、ドレインD−ゲートG間に静電容量CD−G、ゲートG−ソースS間に静電容量CG−Sを有していて、そのためドレインD−ソースS間における上記各静電容量の合成値に等しい静電容量CFETを有している。したがって、スイッチング手段Q3は、上記静電容量CFETおよびインバータ手段INVの出力周波数に基づいたインピーダンスを有していることになる。
【0047】
制御回路CCは、ランプ電流検出回路ID、フィラメント電流検出回路IDおよびスイッチング制御回路SCからなる。ランプ電流検出回路IDは、放電ランプDLに流れるランプ電流を検出する。フィラメント電流検出回路IDは、フィラメント電極Eに流入するフィラメント電流を検出する。スイッチング制御回路SCは、ランプ電流検出回路IDおよびフィラメント電流検出回路IDの検出出力に基づいて所要のフィラメント加熱量を判定するフィラメント加熱量判定回路および所要のフィラメント加熱量に対応するゲート駆動信号を発生してスイッチング手段Q3に供給するゲート駆動回路を含んでいる。
【0048】
次に、第1の実施形態における回路動作について説明する。
【0049】
図4に示す波形図おいて、(a)はインバータ手段INVの高周波出力電圧VHFの波形、(b)はスイッチング手段Q3のゲート駆動信号VGQ3の波形、(c)はフィラメント加熱電流Iの波形をそれぞれ示している。図4(b)および(c)から理解できるように、第1の実施形態では、フィラメント加熱回路FHCが、図4(b)に示すスイッチング手段Q3のオン期間を、図4(c)理解できるように高周波出力により流れる電流に重畳する直流電流IDCが、スイッチング手段Q3のインピーダンスと共振回路系RCのインピーダンスとの共振に伴う過渡的な振動波形の最初の半サイクルにおいて、そのピーク位相に達するまでの短い期間にのみ流れるように限定的する。なお、スイッチング手段Q3のスイッチング周期は、インバータ手段INVのスイッチング周期の10倍程度に設定されている。
【0050】
このため、高周波出力電圧VHFに重畳する直流電流の実効値が大きくなる前にゲート駆動信号VGQ3がオフして上記直流電流が遮断されるので、重畳する直流電流の実効値が低減する。なお、上記直流電流が途中で遮断されない場合には、スイッチング手段Q3がオンした瞬間から流れ始め、減衰振動をして順次低減してく。
【0051】
他方、フィラメント加熱量は、スイッチング制御回路SCがランプ電流検出回路IDおよびフィラメント電流検出回路IDの検出出力に応じて最適なフィラメント加熱電流が供給されるように図4(b)に示すスイッチング手段Q3のゲート駆動信号VGQ3のオンデューティを変化することで、スイッチングの周期に無関係に制御できる。
【0052】
したがって、第1の実施形態によれば、ランプ電流検出回路IDおよびフィラメント電流検出回路VD直流電流の低減とフィラメント加熱量の最適化を両立できることが理解できる。
【0053】
以下、図5ないし図8を参照して本発明のその他の実施形態について説明する。なお、各図において、図4と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0054】
図5は、本発明の放電ランプ点灯装置における第2の実施形態を示す各部の電圧、電流波形図である。本実施形態は、第1の実施形態における変形例に相当する。
【0055】
すなわち、第2の実施形態は、フィラメント加熱回路FHCのスイッチング手段Q3のスイッチング周期がインバータ手段INVのスイッチング周期の5倍程度に小さく設定されている。このため、直流電流が流れる時間が第1の実施形態に比較してさらに短縮されるので、直流電流の重畳がなお一層低減する。
【0056】
図6は、本発明の放電ランプ点灯装置における第3の実施形態を示す各部の電圧、電流波形図である。本実施形態は、本発明の第2の態様に対応する。
【0057】
すなわち、第2の実施形態は、フィラメント加熱回路FHCのスイッチング手段Q3をインバータ手段INVの出力電圧がオンする以前にオンさせる。
【0058】
そうして、第3の実施形態によれば、直流電流の発生する期間が短くなるので、直流電流の重畳が低減する。
【0059】
図7は、本発明の放電ランプ点灯装置における第4の実施形態を示す各部の電圧、電流波形図である。本実施形態は、第3の実施形態における変形例に相当する。
【0060】
すなわち、第4の実施形態は、フィラメント加熱回路FHCのフィラメント加熱量を放電ランプDLの動作モードに応じて最適化させるように制御するときに、スイッチング手段Q3のオンするタイミングを変化させてオンデューティを調節する。図7(b)はスイッチング手段Q3のオンデューティが比較的小さい状態であるが、図中の矢印に示すようにオンのタイミング位相を前に進めることで、図7(c)に示すようにオンデューティを拡大させることができる。
【0061】
そうして、第4の実施形態によれば、直流電流の発生する期間が短い状態に一定に維持されながらスイッチング手段Q3のオンデューティを変化させることができるので、フィラメント加熱量が変化しても直流電流の重畳が低減した状態で一定に保持することができる。
【0062】
図8は、本発明の放電ランプ点灯装置における第5の実施形態を示す各部の電圧、電流波形図である。本実施形態は、本発明の第3の態様に対応する。
【0063】
すなわち、第5の実施形態は、フィラメント加熱回路FHCのフィラメント加熱量を放電ランプDLの調光度合いに応じて最適化させるように制御するものである。そして、図8(b)の位相軸においてそれぞれ反対方向を向いた矢印のように、インバータ手段INVの出力電圧における立ち上がり時点の位相を中心として、その進み方向にスイッチング手段Q3のオンのタイミング変化させるのと同時に、その遅れ方向にオフのタイミングを変化させて、スイッチング手段Q3のオンデューティを設定する。これにより、最適なフィラメント加熱量に制御することができる。
【0064】
そうして、第5の実施形態によれば、直流電流の発生する期間が比較的短い状態に維持されながらスイッチング手段Q3のオンデューティを調光度合いに応じて最適値にすることができるので、調光度合いに応じてフィラメント加熱量を最適な状態に制御すると同時に直流電流の重畳を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の放電ランプ点灯装置における第1の実施形態を示すブロック回路図
【図2】同じく回路図
【図3】同じくスイッチング手段の等価回路図
【図4】同じく各部の電圧、電流波形図
【図5】本発明の放電ランプ点灯装置における第2の実施形態を示す各部の電圧、電流波形図
【図6】本発明の放電ランプ点灯装置における第3の実施形態を示す各部の電圧、電流波形図
【図7】本発明の放電ランプ点灯装置における第4の実施形態を示す各部の電圧、電流波形図
【図8】本発明の放電ランプ点灯装置における第5の実施形態を示す各部の電圧、電流波形図
【図9】特許文献1に記載された放電灯点灯装置における各部の電圧、電流波形図
【符号の説明】
【0066】
DC…電源、INV…インバータ手段、RC…共振回路系、FHC…フィラメント加熱回路、Q1、Q2…スイッチング素子、DL…放電ランプ、L1…インダクタ、C1、C2…コンデンサ、FT…フィラメント加熱トランス、CC…制御回路、SC…スイッチング制御回路、ID…ランプ電流検出回路、ID…フィラメント電流検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流出力を生じる電源と;
スイッチング素子を備え、スイッチング素子のスイッチング動作によって電源の直流出力を交流に変換するインバータ手段と;
フィラメント電極を備えた放電ランプが接続され、インバータ手段の出力が印加される共振回路系と;
インバータ手段の出力を入力して放電ランプのフィラメント電極に対してフィラメント加熱電流を出力するフィラメント加熱トランスおよびインピーダンスを有していてフィラメント加熱トランスの入力を制御するスイッチング手段を含み、放電ランプの動作モードに応じたフィラメント加熱電流が供給されるようにスイッチング手段がフィラメント加熱トランスに対する入力を制御するフィラメント加熱回路と;
を具備し、フィラメント加熱回路のインピーダンスと共振回路系のインピーダンスとの共振によってスイッチング手段のオン時にフィラメント加熱トランスに流れる直流電流を低減させるように構成したことを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項2】
フィラメント加熱回路のスイッチング手段は、入力端から見たフィラメント加熱回路のインピーダンスと共振回路系のインピーダンスとの共振によってフィラメント加熱トランスに流れる直流電流のピーク位相までの間にオフするように構成されていることを特徴とする請求項1記載の放電ランプ点灯装置。
【請求項3】
フィラメント加熱回路は、その入力端間にインバータ手段の出力電圧が印加される以前にスイッチング手段がオンし、かつ上記出力電圧が0になる以前にオフするように制御されることを特徴とする請求項1または2記載の放電ランプ点灯装置。
【請求項4】
フィラメント加熱回路は、インバータ手段の出力電圧の立ち上がり時点を中心にしてその前後の位相を同時に変化させることにより、オンデューティを変化させて、放電ランプの調光度合いに応じてフィラメント加熱量が所要の値になるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の放電ランプ点灯装置。
【請求項5】
フィラメント加熱回路のスイッチング手段は、MOS-FETであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の放電ランプ点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−299585(P2007−299585A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125588(P2006−125588)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】