説明

放電灯点灯装置および照明器具

【課題】カタホリシス現象を回避しつつ複雑な制御をすることなくストライエーションおよび光のちらつきを防止できる放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】インバータ制御部73が、周期性を有さず蛍光ランプ15のランプ電流ILの包絡線のリップルが変化するようにインバータ回路52をランダム動作させる。蛍光ランプ15に直流電圧を印加せずにカタホリシス現象を回避しつつ、例えば直流電圧の向きを変えたり直流電圧を変調させたりするなどの複雑な制御をすることなくストライエーションおよび光のちらつきを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を高周波電圧に変換して放電ランプを点灯させるインバータ回路を有する放電灯点灯装置およびこれを備えた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の放電灯点灯装置は、放電ランプに直流電圧を高周波電圧に変換してこの放電ランプを点灯させるインバータ回路と、このインバータ回路と放電ランプとの間に接続されたLC共振回路などとを備えている。インバータ回路は、例えば対をなすスイッチング素子を備えたハーフブリッジ型のものなどがあり、スイッチング素子をデューティ制御することによりスイッチング動作させ、所定周波数の高周波電圧を、共振回路を介して放電ランプに印加することが可能である。
【0003】
このような放電灯点灯装置において、例えばインバータ回路の動作周波数を一定とすると、特にアルゴンなどの原子量が大きい不活性ガスを封入した放電ランプでは、管壁に縞模様が現れて管に沿って移動する、いわゆるストライエーションが発生する。このストライエーションは、光のちらつきなどの不快感を与えるため、例えば対をなすスイッチング素子のオンデューティを非対称に設定することで、放電ランプに直流バイアスを与えることで、視角上ストライエーションを認識できないようにする構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、放電ランプを外部からの調光信号に応じて調光制御する放電灯点灯装置では、例えば高周波専用の放電ランプを深く調光すると、この放電ランプに流れるランプ電流の包絡線(エンベロープ)は平坦であるにも拘らず、光にちらつきが発生することがある。このような光のちらつきを低減するために、インバータの動作周波数を周期的に変調させる構成が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平6−283286号公報(第3−4頁、図1)
【特許文献2】特開平8−264295号公報(第4−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された放電灯点灯装置では、与えられた直流バイアスによって、水銀の偏りに起因する明るさの低下、いわゆるカタホリシス現象が生じるおそれがある。
【0006】
したがって、このようなカタホリシス現象を回避しつつストライエーションや光のちらつきを防止するためには、直流バイアスの向きを変えたり、直流バイアスを変調させたり、周波数制御で点灯をさせたりするなど、放電ランプの点灯制御が複雑になるという問題点を有している。
【0007】
また、直流バイアスを与えると、放電ランプのランプ寿命末期を検出することが容易でなくなるなどの問題も生じる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、カタホリシス現象を回避しつつ複雑な制御をすることなくストライエーションおよび光のちらつきを防止できる放電灯点灯装置およびこれを備えた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の放電灯点灯装置は、直流電圧を高周波電圧に変換して放電ランプを点灯させるインバータ回路と;このインバータ回路を周期性を有さず放電ランプのランプ電流の包絡線のリップルが変化するように動作させる制御手段と;を具備しているものである。
【0010】
放電ランプは、例えば蛍光ランプなどの低圧水銀放電灯が好適であるが、これに限定されるものではない。
【0011】
インバータ回路は、例えば対をなすスイッチング素子を備えたハーフブリッジ型などのものが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0012】
制御手段は、例えばインバータ回路の動作周波数を予め設定された高周波電圧の周波数より低いまたは高い周波数で間欠的にオン、オフするPWM変化方式などを採用することができる。
【0013】
所定期間とは、例えばインバータ回路の動作周波数の毎サイクル、あるいは数サイクル毎などとする。
【0014】
請求項2記載の放電灯点灯装置は、請求項1記載の放電灯点灯装置において、放電ランプに流れるランプ電流を検出する電流検出手段を具備し、制御手段は、電流検出手段により検出したランプ電流に応じた動作周波数でインバータ回路を動作させるための目標値を周期性を有さないように変動させて設定し、その目標値に近付けるようにインバータ回路を制御するものである。
【0015】
電流検出手段は、例えば放電ランプ内に実質的に流れるランプ電流を検出するものである。
【0016】
請求項3記載の放電灯点灯装置は、請求項2記載の放電灯点灯装置において、制御手段は、周期性を有さないように変動させる目標値の設定に乱数を用いるものである。
【0017】
請求項4記載の放電灯点灯装置は、請求項1記載の放電灯点灯装置において、放電ランプに流れるランプ電流を検出する電流検出手段を具備し、制御手段は、電流検出手段により検出したランプ電流に応じた動作周波数でインバータ回路を動作させるための目標値を設定し、この目標値に近付けるように設定するインバータ回路の利得を、周期性を有さないように変動させてインバータ回路を制御するものである。
【0018】
請求項5記載の放電灯点灯装置は、請求項4記載の放電灯点灯装置において、制御手段は、インバータ回路の利得を、電流検出手段で検出したランプ電流の包絡線が平坦となるための目標利得よりも大きい値とするものである。
【0019】
請求項6記載の照明器具は、放電ランプが取り付けられる器具本体と;放電ランプを点灯制御する請求項1ないし5いずれか一記載の放電灯点灯装置と;を具備しているものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の放電灯点灯装置によれば、制御手段が、周期性を有さず放電ランプのランプ電流の包絡線のリップルが変化するようにインバータ回路を動作させることで、直流電圧を印加せずにカタホリシス現象を回避しつつ、例えば直流電圧の向きを変えたり直流電圧を変調させたりするなどの複雑な制御をすることなくストライエーションおよび光のちらつきを防止できる。
【0021】
請求項2記載の放電灯点灯装置によれば、請求項1記載の放電灯点灯装置の効果に加えて、制御手段が、電流検出手段により検出したランプ電流に応じた動作周波数でインバータ回路を動作させるための目標値を、周期性を有さないように変動させて設定し、その目標値に近付けるようにインバータ回路を制御することで、インバータ回路を、周期性を有さず放電ランプのランプ電流の包絡線のリップルが変化するように容易に動作させることができる。
【0022】
請求項3記載の放電灯点灯装置によれば、請求項2記載の放電灯点灯装置の効果に加えて、制御手段が、周期性を有さないように変動させる目標値の設定に乱数を用いることで、目標値を容易に変動させることができる。
【0023】
請求項4記載の放電灯点灯装置によれば、請求項1記載の放電灯点灯装置の効果に加えて、制御手段が、電流検出手段により検出したランプ電流に応じた動作周波数でインバータ回路を動作させるための目標値を設定し、この目標値に近付けるように設定するインバータ回路の利得を、周期性を有さないように変動させてインバータ回路を制御することで、インバータ回路を、周期性を有さず放電ランプのランプ電流の包絡線のリップルが変化するように容易に動作させることができる。
【0024】
請求項5記載の放電灯点灯装置によれば、請求項4記載の放電灯点灯装置の効果に加えて、制御手段が、インバータ回路の利得を、電流検出手段で検出したランプ電流の包絡線が平坦となるための目標利得よりも大きい値とすることで、インバータ回路を、周期性を有さず放電ランプのランプ電流の包絡線のリップルが変化するように動作させるための利得を容易に得ることができる。
【0025】
請求項6記載の照明器具によれば、請求項1ないし5いずれか一記載の放電灯点灯装置を備えることで、それぞれの効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0027】
図1ないし図5に第1の実施の形態を示し、図1は放電灯点灯装置を示す回路図、図2は放電灯点灯装置の要部を模式的に示す説明図、図3は放電灯点灯装置を備えた照明器具を示す斜視図、図4は放電灯点灯装置の電源部の動作を示すグラフ、図5は放電灯点灯装置のランプ電流を示すグラフである。
【0028】
図3に示すように、照明器具11は器具本体12を有しており、この器具本体12の下面には反射面13が形成され、この反射面13の長手方向の両端にはランプソケット14,14が装着され、これらランプソケット14,14間には、放電ランプとしての直管型の蛍光ランプ15が電気的かつ機械的に取り付けられている。また、この器具本体12内には、図1に示す放電灯点灯装置16(以下、単に点灯装置16という)が収納されている。
【0029】
蛍光ランプ15は、直管状のバルブBの両端部に電極であるフィラメントFLa,FLbが封装されている。
【0030】
バルブBは、管径が例えば25.5mm、すなわちT8型以下に設定されたガラス管であり、内面に、3波長発光形の図示しない蛍光体が塗布されている。また、このバルブB内には、放電ガスとして、水銀と、希ガス、例えばアルゴンとクリプトンとの混合ガスが封入されている。
【0031】
そして、図1に示すように、点灯装置16は、商用交流電源eを整流平滑するフィルタ部50および電源部51にインバータ回路52が接続され、このインバータ回路52の出力端には、共振回路53を介して蛍光ランプ15のフィラメントFLa,FLbが接続されている。また、インバータ回路52と共振回路53との接続部には、蛍光ランプ15のフィラメントFLa,FLbの予熱回路55が接続されている。さらに、電源部51、インバータ回路52および予熱回路55には、制御装置(処理装置)としての回路制御手段であるMPU56が接続され、このMPU56は、制御電源部57から給電されている。また、MPU56には、外部操作などに応じて調光信号DIMを出力する調光信号部58が接続されている。そして、フィルタ部50、電源部51、インバータ回路52、共振回路53、予熱回路55および制御電源部57により、蛍光ランプ15を動作させる主回路MCが構成されている。
【0032】
フィルタ部50は、商用交流電源eに接続されたコモンモードトランスTrと、このコモンモードトランスTrに接続された高周波成分を遮断するコンデンサC1とを備え、このコンデンサC1側が電源部51に接続されている。
【0033】
電源部51は、入力電流I0と入力電圧V0との位相を合わせる、いわゆる臨界モードの力率改善(PFC)機能を備えた昇圧チョッパ電源であり、フィルタ部50側に全波整流素子REC1が接続され、この全波整流素子REC1の出力側には、昇圧チョッパ回路59が接続されている。この昇圧チョッパ回路59は、全波整流素子REC1の出力側に、インバータ回路52との間に昇圧用のトランスであるチョッパチョークL1と逆阻止用のダイオードD1との直列回路が接続されているとともに、チョッパチョークL1とダイオードD1のアノードとの接続点にスイッチング素子としての第1スイッチング素子、すなわちチョッピング用スイッチング素子である電界効果トランジスタ(FET)Q1が並列に接続されて、かつ、ダイオードD1のカソードとインバータ回路52との接続点に、平滑用のコンデンサである電解コンデンサC2が並列に接続されている。
【0034】
チョッパチョークL1は、一次巻線L1aと二次巻線L1bとを有し、一次巻線L1aが全波整流素子REC1の出力側とダイオードD1のアノードとの間に接続されているとともに、二次巻線L1bの一端側がグランド電位に接続され、他端側が検出用の抵抗R1を介してMPU56に接続されている。
【0035】
電界効果トランジスタQ1は、ドレイン端子がチョッパチョークL1とダイオードD1のアノードとの接続点に接続されているとともに、ソース端子に抵抗R2が接続され、かつ、制御端子であるゲート端子がMPU56に接続され、チョッパチョークL1に流れるチョーク電流と電界効果トランジスタQ1に流れるスイッチング電流IQとに基づいてMPU56によりスイッチング駆動される。
【0036】
また、インバータ回路52は、電源部51に対して、第2スイッチング素子としてのインバータ用スイッチング素子である電界効果トランジスタQ2,Q3が直列に接続された、いわゆるハーフブリッジ形のものである。
【0037】
電界効果トランジスタQ2,Q3は、制御端子であるゲート端子がドライバ部としてのハイサイドドライバ65を介してMPU56に接続されており、このハイサイドドライバ65から供給される信号によってオンオフが制御される。
【0038】
ハイサイドドライバ65は、MPU56から供給される調光用のPWM信号Pに応じて、数十kHz〜200kHz程度の周波数で電界効果トランジスタQ2,Q3を交互にオンオフする(スイッチング駆動する)ことで、電界効果トランジスタQ3のドレイン−ソース間に所定の高周波交流を発生させるものである。
【0039】
共振回路53は、電界効果トランジスタQ3の両端間に、直流成分を遮断するコンデンサC3と共振用巻線(共振用インダクタ)L2とを直列に介して共振用コンデンサC4が並列に接続されている。
【0040】
予熱回路55は、予熱用トランスL3、コンデンサC5、予熱用スイッチング素子としての電界効果トランジスタQ4および電流検出用の抵抗R3の直列回路を備え、コンデンサC5と電界効果トランジスタQ4との接続点と電界効果トランジスタQ2のソース端子との間に、ダイオードD2が接続されている。
【0041】
予熱用トランスL3は、一次巻線L3aと、第1二次巻線L3bおよび第2二次巻線L3cとが対向配置されており、一次巻線L3aは、電界効果トランジスタQ2,Q3の接続点と共振用コンデンサC4との間に接続され、各二次巻線L3b,L3cは、コンデンサC6,C7を介してそれぞれ蛍光ランプ15のフィラメントFLa,FLbに接続されている。
【0042】
電界効果トランジスタQ4は、制御端子であるゲート端子がMPU56に接続され、このMPU56から供給される予熱用PWM信号PPによりスイッチング制御される。
【0043】
そして、MPU56は、ディジタル処理を行う、いわゆるマイコンなどであり、図示しない記憶手段としてのROM、RAM、インターフェースであるI/Oポート、動作クロックを生成するクロック生成部などをそれぞれ有し、内部に、蛍光ランプの点灯状態を検出する電流検出手段としての状態検出部71、昇圧チョッパ回路59の制御用のチョッパ制御部72、ハイサイドドライバ65の制御用の制御手段としてのインバータ制御部73、予熱回路55の制御用の予熱回路制御部74などを備え、例えばこれら状態検出部71、チョッパ制御部72、インバータ制御部73および予熱回路制御部74などが、ソフトウェア処理部分を共有することで一体となっている。
【0044】
状態検出部71は、放電電流すなわちランプ電流ILおよび放電電圧すなわちランプ電圧VLを、それぞれピーク位相に同期したタイミングで検出し、これらランプ電流ILおよびランプ電圧VLに対応したディジタルの周波数データに変換する演算手段であるA/D変換器の機能を有しており、A/D変換したランプ電流ILおよびランプ電圧VLをインバータ制御部73あるいは予熱回路制御部74などに出力するものである。
【0045】
チョッパ制御部72は、電源部51のPFC制御用に電界効果トランジスタQ1をスイッチングするためのスイッチングパルスSPを生成し、入力電圧V0と入力電流I0との位相を合わせて力率を改善する力率改善部である。
【0046】
インバータ制御部73は、状態検出部71により検出した動作状態に基づいてインバータ回路52の電界効果トランジスタQ2,Q3の動作制御用のPWM信号Pを生成する信号生成部すなわち調光信号生成部の機能を有するソフトウェア部である。
【0047】
ここで、インバータ制御部73は、図2に模式的に示すように、ランプ電圧VLおよび調光信号DIMなどに応じてランプ電流ILの設定目標値IT0を設定する目標値設定部81と、乱数Rを発生させる乱数発生部82と、これら目標値設定部81により設定された設定目標値IT0と乱数発生部82により発生させた乱数Rとを加算して目標値IT1を出力する加算器83と、この加算器83により出力された目標値IT1と状態検出部71により検出したランプ電流ILとの差分Δ1を算出する減算器84と、この減算器84から出力された差分Δ1に基づいて、この差分Δ1に対応する利得Gを得るための動作周波数fに対応するPWM信号Pを設定する増幅器85とを備えている。そして、この増幅器85から出力されたPWM信号Pにより、ハイサイドドライバ65は、動作周波数fでインバータ回路52を動作させるように駆動される。
【0048】
乱数発生部82は、例えば乱数列、あるいは所定のプログラムなどに基づいて、周期性を有さない乱数Rを任意に発生させることが可能である。このとき、この発生させる乱数は、上限および下限がそれぞれ設定され、その平均値で制御される。なお、乱数としては、その平均値の分布がどのようなものでも用いることが可能である。また、この乱数発生部82は、例えば調光信号DIMに応じて乱数Rを発生させる場合と乱数Rを発生させない(動作しない)場合とが切り替えられる。例えば、調光信号DIMにより、所定の調光度以下に設定された場合、本実施の形態では蛍光ランプ15の全光点灯時の所定の60%以下の調光度に設定されたときに、乱数発生部82が乱数Rを発生させ、かつ、調光信号DIMにより設定される調光度に応じて、乱数Rの上限および下限などを任意に設定するように構成されている。
【0049】
加算器83は、乱数発生部82により発生された乱数Rを設定目標値IT0に加算することで、目標値IT1を、インバータ回路52をランプ電流ILに対応した本来の動作周波数で動作させるために必要な目標値に対して歪ませるものである。したがって、インバータ制御部73によりインバータ回路52の動作が制御されることで、ランプ電流ILは、目標とするランプ電流に対してランダムに歪んだ状態となる。すなわち、目標となるランプ電流に対するランプ電流ILの歪み率は、調光信号DIMにより設定された調光度に応じて乱数発生部82での乱数Rの上限および下限などが任意に設定されることで、調光度に応じて任意に設定可能となっている。
【0050】
また、インバータ制御部73は、インバータ回路52の電界効果トランジスタQ2,Q3のデューティ比を略1:1に設定し、インバータ回路52から出力される電圧を、1サイクルの正負のピーク値が略等しくなるようにする。
【0051】
ROMには、MPU56の各部により実行される各種プログラムが予め格納されている。
【0052】
RAMには、状態検出部71などにより検出した各種ディジタル値がそれぞれに割り当てられた領域に記憶される。
【0053】
予熱回路制御部74は、予熱回路55の電界効果トランジスタQ4のスイッチングを制御するためのもので、予熱回路55の予熱電流IPを検出する予熱状態検出部であり、予熱回路55の予熱電流IPを監視しつつ、例えば状態検出部71で検出したランプ電流ILおよびランプ電圧VLの少なくともいずれか一方の変化に追従するように最適予熱条件すなわち目標値を設定し、予熱電流IPが目標値に近付くように、予熱回路55の電界効果トランジスタQ4のゲート端子に供給する予熱用PWM信号PPを生成する。
【0054】
制御電源部57は、MPU56および主回路MCを制御して蛍光ランプ15を駆動させる制御回路CCを駆動するための電源を供給する部分であり、例えば5Vの電源電圧から3.3Vあるいは1.8VなどのいわゆるVDDを生成する部分である。
【0055】
調光信号部58は、調光信号DIMに対応する信号を出力するための調光信号部91と、この調光信号部91から出力された信号を全波整流して調光信号DIMとしてMPU56のインバータ制御部73に出力する全波整流素子REC2とを備えている。
【0056】
次に、上記第1の実施の形態の動作を説明する。
【0057】
図示しない起動用回路などにより電界効果トランジスタQ1がオンされると、チョッパチョークL1(ダイオードD1)に直線的に増加する電流が流れることで、このチョッパチョークL1の二次巻線L1bにチョーク電流Iが流れ、チョッパチョークL1に電磁的エネルギが蓄積される。同時に、電界効果トランジスタQ1のオンによるスイッチング電流IQによって抵抗R2により生じる電圧がMPU56に入力されると、オフのスイッチングパルスSPがチョッパ制御部72から電界効果トランジスタQ1のゲート端子に供給されてこの電界効果トランジスタQ1がオフされることで、チョッパチョークL1に蓄積された電磁的エネルギが放出され、チョッパチョークL1(ダイオードD1)に直線的に減少する電流が流れる。
【0058】
この動作の繰り返しにより、図4に示すように、入力電圧V0の波形すなわち全波整流されたサイン波形である基準波形SWを包絡線として出力電流I1が形成される。
【0059】
電源部51により生成された出力電圧V1は、インバータ回路52の電界効果トランジスタQ2,Q3をインバータ制御部73がハイサイドドライバ65を所定の周波数および所定のオンデューティでオンオフ動作させることで、高周波交流電圧に変換される。
【0060】
この高周波交流電圧により、共振回路53が共振して共振電流が流れ、予熱回路制御部74で生成された所定の周波数の予熱用PWM信号PPにより電界効果トランジスタQ4がスイッチング動作された予熱回路55の予熱用トランスL3の各二次巻線L3b,L3cにそれぞれ予熱電流IPが流れて、蛍光ランプ15のフィラメントFLa,FLbを予熱する。
【0061】
そして、フィラメントFLa,FLbの予熱によりフィラメントFLa,FLb間に所定の始動電圧が印加されて蛍光ランプ15が点灯(始動)し、この蛍光ランプ15が定常点灯される。
【0062】
このとき、点灯装置16では、状態検出部71によって検出されたランプ電流ILに基づき、このランプ電流ILが所定の目標値IT1となるようにフィードバック制御がなされる。
【0063】
上記のように点灯した蛍光ランプ15を調光する場合には、点灯装置16のハイサイドドライバ65にインバータ制御部73からPWM信号Pを入力してインバータ回路52の駆動周波数を可変する。インバータ回路52の駆動周波数を増加、あるいは減少させることで、インバータ回路52からの高周波電力が抑制、あるいは増加されて、ランプ電流ILが抑制、あるいは増加され、蛍光ランプ15が調光される。
【0064】
このインバータ回路52の駆動周波数、すなわちPWM信号Pの周波数は、インバータ制御部73において、例えば調光信号部58から出力された調光信号DIMおよび状態検出部71により検出したランプ電流ILなどに基づいて設定される。
【0065】
これらの制御は、調光信号DIMにより設定される調光度に応じてその制御内容が切り替えられる。
【0066】
例えば、調光信号DIMによって60%より大きい調光度に設定された場合には、乱数発生部82が動作せず、インバータ制御部73において、ランプ電圧VLおよび調光信号DIMなどに応じて目標値設定部81によりランプ電流ILの設定目標値IT0を設定すると、この設定目標値IT0がそのまま目標値IT1となり、この目標値IT1と、状態検出部71により検出したランプ電流ILとの差分Δ1を減算器84により算出し、この差分Δ1に基づいて、この差分Δ1に対応する利得Gを得るための動作周波数fに対応するPWM信号Pを増幅器85で設定する。
【0067】
一方、調光信号DIMによって60%以下の調光度に設定された場合には、インバータ制御部73において、ランプ電圧VLおよび調光信号DIMなどに応じて目標値設定部81によりランプ電流ILの設定目標値IT0を設定し、この設定目標値IT0と乱数発生部82で発生させた乱数Rとを加算器83により加算して目標値IT1とし、この目標値IT1と、状態検出部71により検出したランプ電流ILとの差分Δ1を減算器84により算出し、この差分Δ1に基づいて、この差分Δ1に対応する利得Gを得るための動作周波数fに対応するPWM信号Pを増幅器85で設定する。
【0068】
なお、PWM信号Pによる周波数制御は、インバータ回路52の動作周波数の毎サイクル、あるいは所定周期以内の数サイクル毎に行われ、蛍光ランプ15の点灯状態がPWM信号Pの周波数に即座に反映される。
【0069】
また、予熱回路55では、状態検出部71で検出したランプ電流IL、ランプ電圧VL、あるいは周囲の温度変化などに追従するように予熱回路制御部74により設定された目標値に予熱電流IPが近付くように生成した予熱用PWM信号PPによって電界効果トランジスタQ4がスイッチング動作されることで、蛍光ランプ15の種類や製造過程でのばらつきなどによって変化する点灯中の予熱量を最適化する。
【0070】
以上のように、インバータ制御部73が、例えば図5に示すように、周期性を有さず蛍光ランプ15のランプ電流ILの包絡線(エンベロープ)のリップルが変化するように、所定周期毎に異なる動作周波数、換言すれば一定の周期性を有する不自然な動作周波数の変動でなく自然にランダムに変動する動作周波数でインバータ回路52をランダム動作(ランプ電流ILを故意に自然に歪ませた安定点灯動作)させることで、蛍光ランプ15に直流電圧(直流バイアス)を印加せずにカタホリシス現象を回避しつつ、例えば直流電圧の向きを変えたり直流電圧を変調させたりするなどの複雑な制御をすることなくストライエーションおよび光のちらつきを防止できる。
【0071】
具体的に、インバータ制御部73が、状態検出部71により検出したランプ電流ILに応じた動作周波数でインバータ回路52を動作させるための目標値IT1を、周期性を有さないように所定周期毎に変動させて設定し、その目標値IT1に近付けるようにインバータ回路52を制御することで、インバータ回路52を、周期性を有さず所定周期毎に異なる動作周波数で容易に動作させることができる。
【0072】
特に、高周波専用で用いる蛍光ランプ15においては、光のちらつきが発生しやすく、また、バルブBの管径がT8以下と、比較的細い蛍光ランプ15においては、カタホリシス現象やストライエーションが生じやすいので、上記のようにインバータ回路52をランダム動作させるように設定することで、高周波専用で用いられ、かつ、比較的細い蛍光ランプ15であっても、複雑な制御を必要とすることなくカタホリシス現象やストライエーションおよび光のちらつきなどを確実に防止できる。
【0073】
また、インバータ制御部73が、周期性を有さないように変動させる目標値IT1の設定に乱数Rを用いることで、目標値IT1を容易にランダムに変動させることができる。特に、ディジタル回路であるMPU56の乱数発生部82においては、プログラムなどを用いることで、擬似的な乱数をアナログ回路と比較して容易に発生させることができる。
【0074】
さらに、乱数発生部82では、乱数の上限と下限とをそれぞれ設定してその平均値で制御することにより、蛍光ランプ15が不点になったり、破損したりすることを防止できる。
【0075】
そして、インバータ制御部73が、インバータ回路52の動作周波数の1サイクルでのインバータ回路52からの出力電圧のピーク値の正負が略等しくなるようにインバータ回路52を制御することで、蛍光ランプ15に直流電圧を与えないようにし、この直流電圧に起因する蛍光ランプ15のカタホリシス現象、すなわち水銀の偏りにより直管型の蛍光ランプ15の一端側が明るく他端側が暗くなるなどの現象を防止できる。
【0076】
また、蛍光ランプ15には直流電圧が印加されていないので、蛍光ランプ15のランプ電圧VLなどを介して、寿命末期の検出も可能となる。
【0077】
さらに、上記構成は、例えば直流電圧の向きを変えたり直流電圧を変調させたりするなどの複雑な制御を必要としないため、MPU56の構成およびプログラムなども簡略化でき、小型化や製造コストの低減なども可能となる。
【0078】
そして、インバータ制御部73は、インバータ回路52の電界効果トランジスタQ2,Q3のデューティ比を略1:1に設定し、インバータ回路52から出力される電圧を、1サイクルの正負のピーク値が略等しくなるようにすることで、蛍光ランプ15に対して直流電圧が印加されないように確実に抑制できる。
【0079】
また、調光信号DIMにより所定の調光度に設定された際に乱数発生部82が乱数Rを発生させてインバータ回路52をランダム動作させるようにインバータ制御部73が制御するため、特に調光時に発生しやすいカタホリシス現象やストライエーションおよび光のちらつきなどを、調光時でも確実に防止できる。
【0080】
さらに、調光信号DIMにより設定された調光度に応じてランプ電流ILの歪み率を可変させることにより、深い調光を行った際でも、カタホリシス現象やストライエーションおよび光のちらつきなどを確実に防止できる。
【0081】
そして、インバータ回路52をランダム動作させることにより、このインバータ回路52の電界効果トランジスタQ2,Q3の切り替えなどにより発生する雑音も周期性を有さずに特定の周波数に集中せず広い周波数帯域に分布するので、聴覚上の雑音を低減できる。
【0082】
次に、図6に第2の実施の形態を示し、図6は放電灯点灯装置の要部を模式的に示す説明図である。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0083】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、インバータ制御部73により設定される利得Gをランダムに変動させるものである。
【0084】
すなわち、インバータ制御部73は、例えば調光信号DIMにより60%以下の調光度に設定された場合には、目標値設定部81で設定された設定目標値IT0と状態検出部71で検出したランプ電流ILとの差分Δ2が減算器84により算出され、この差分Δ2に対応する目標利得G0を得るための目標動作周波数f0に対応する目標PWM信号P0と、乱数発生部82により発生させた乱数Rとが加算器93により加算されることで、目標PWM信号P0に対して歪んだ目標値であるPWM信号Pを出力することにより、ハイサイドドライバ65を介して、目標動作周波数f0と異なる動作周波数fでインバータ回路52をランダム動作させるように構成されている。
【0085】
ここで、乱数発生部82により発生させる乱数Rは、状態検出部71で検出したランプ電流ILの包絡線が平坦となるためのインバータ回路52の目標利得G0よりも大きい利得Gを得るためのPWM信号Pを得られるように設定されている。
【0086】
この結果、インバータ制御部73が、周期性を有さず蛍光ランプ15のランプ電流ILの包絡線のリップルが変化するようにインバータ回路52をランダム動作させるなど、上記第1の実施の形態と同様の構成を有することにより、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0087】
また、具体的に、インバータ制御部73が、状態検出部71により検出したランプ電流ILに応じた動作周波数でインバータ回路52を動作させるための設定目標値IT0を設定し、この設定目標値IT0に近付けるように設定するインバータ回路52の利得Gを、周期性を有さないように変動させるようにPWM信号Pをランダムに変動させてインバータ回路52を制御することで、インバータ回路52を、周期性を有さず蛍光ランプ15のランプ電流ILの包絡線のリップルが変化するように容易に動作させることができる。
【0088】
さらに、インバータ制御部73が、インバータ回路52の利得Gを得るためのPWM信号Pを、状態検出部71で検出したランプ電流ILの包絡線が平坦となるための目標利得G0よりも大きい利得Gを得られるものとすることで、インバータ回路52をランダム動作させるための利得Gを容易に得ることができる。
【0089】
なお、上記各実施の形態において、インバータ制御部73は、例えば蛍光ランプ15に印加される直流電圧を検出し、この直流電圧が0となるように電界効果トランジスタQ2,Q3のデューティを設定してもよい。
【0090】
また、フィルタ部50、電源部51、共振回路53および予熱回路55などの各種回路は、上記構成に限定されるものではない。
【0091】
さらに、照明器具11は、調光信号DIMにより調光できるものでなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施の形態の放電灯点灯装置を示す回路図である。
【図2】同上放電灯点灯装置の要部を模式的に示す説明図である。
【図3】同上放電灯点灯装置を備えた照明器具を示す斜視図である。
【図4】同上放電灯点灯装置の電源部の動作を示すグラフである。
【図5】同上放電灯点灯装置のランプ電流を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施の形態の要部を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0093】
11 照明器具
12 器具本体
15 放電ランプとしての蛍光ランプ
16 放電灯点灯装置
52 インバータ回路
71 電流検出手段としての状態検出部
73 制御手段としてインバータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を高周波電圧に変換して放電ランプを点灯させるインバータ回路と;
このインバータ回路を周期性を有さず放電ランプのランプ電流の包絡線のリップルが変化するように動作させる制御手段と;
を具備していることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
放電ランプに流れるランプ電流を検出する電流検出手段を具備し、
制御手段は、電流検出手段により検出したランプ電流に応じた動作周波数でインバータ回路を動作させるための目標値を周期性を有さないように変動させて設定し、その目標値に近付けるようにインバータ回路を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
制御手段は、周期性を有さないように変動させる目標値の設定に乱数を用いる
ことを特徴とする請求項2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
放電ランプに流れるランプ電流を検出する電流検出手段を具備し、
制御手段は、電流検出手段により検出したランプ電流に応じた動作周波数でインバータ回路を動作させるための目標値を設定し、この目標値に近付けるように設定するインバータ回路の利得を、周期性を有さないように変動させてインバータ回路を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
制御手段は、インバータ回路の利得を、電流検出手段で検出したランプ電流の包絡線が平坦となるための目標利得よりも大きい値とする
ことを特徴とする請求項4記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
放電ランプが取り付けられる器具本体と;
放電ランプを点灯制御する請求項1ないし5いずれか一記載の放電灯点灯装置と;
を具備していることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−289555(P2009−289555A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140091(P2008−140091)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】