説明

断熱ボード及びその成形金型

【課題】 発泡樹脂層の厚みを薄く成形した場合であっても、薄肉部に破損等の不良が発生するのを抑制することができる断熱ボードを提供することを課題とすると共に、前記断熱ボードの製造に用いる成形金型を提供することを課題とする。
【解決手段】 発熱体を嵌め込み可能に構成された嵌込凹部が一方の面に形成された発泡樹脂層を備える断熱ボードであって、前記嵌込凹部が形成されて発泡樹脂層の厚みが薄くなった薄肉部を補強する補強シートが少なくとも薄肉部に対応する領域に積層されていることを特徴とする断熱ボード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体を載置可能に構成された断熱ボード及びその成形金型に関し、特に、発泡樹脂層を備える断熱ボード及びその成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の床下や壁内等に施工される断熱材として、断熱ボードが用いられている。特に、スチレン系樹脂等の発泡樹脂層からなる断熱ボードは、軽量であると共に優れた断熱性能を有することから市場で広く用いられている。例えば、発熱体(具体的には、温水や温油等の熱媒体が流れる配管や電熱線等)と組み合わされて床暖房設備の一部として用いられている。
【0003】
具体的には、前記断熱ボードは、発泡樹脂層の一方の面に発熱体を嵌め込み可能に構成された嵌込凹部が形成され、該嵌込凹部に発熱体が嵌め込まれた状態で床下に敷設されて床暖房設備の一部として用いられている(特許文献1参照)。かかる構成の断熱ボードには、嵌込凹部が形成されることによって発泡樹脂層の厚みが他の部分よりも薄くなった薄肉部が形成されている。該薄肉部は、発泡樹脂層の他の部分よりも強度が低くなるため、断熱ボードの製造時や施工時(例えば、嵌込凹部に発熱体を嵌め込んだ際)に、薄肉部に破損や変形等の不良が発生してしまう場合がある。このため、断熱ボード全体の厚み(発泡樹脂層全体の厚み)を厚くすることで薄肉部の厚みも厚くし、薄肉部の強度の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−47332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、住宅等の室内空間を少しでも広く確保するために、断熱ボードが施工される空間を極力狭くするよう設計がなされている。これに伴い、断熱ボード自体の厚みも極力薄く成形する必要性が生じている。このため、上記のように発熱体と組み合わされて用いられる断熱ボードは、発熱体の安定性を確保する観点から嵌込凹部の深さを浅くすることができないため、発泡樹脂層の前記一方の面に対向する他方の面側の厚みを薄く成形し、断熱ボード全体の厚みが薄くなるように成形されている。
【0006】
しかしながら、前記他方の面側の厚みが薄くなるように成形されることで、薄肉部の厚みが更に薄くなり、その強度がより脆弱なものとなってしまう。このため、断熱ボードの製造時や施工時に、薄肉部に破損等の不良が発生し易くなり、厚みの薄い断熱ボードを製造することが困難となってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、発泡樹脂層の厚みを薄く成形した場合であっても、薄肉部に破損等の不良が発生するのを抑制することができる断熱ボードを提供することを課題とすると共に、該断熱ボードの製造に用いる成形金型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる断熱ボードは、発熱体を嵌め込み可能に構成された嵌込凹部が一方の面に形成された発泡樹脂層を備える断熱ボードであって、前記嵌込凹部が形成されて発泡樹脂層の厚みが薄くなった薄肉部を補強する補強シートが少なくとも薄肉部に対応する領域に積層されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成の断熱ボードによれば、前記嵌込凹部が形成されて発泡樹脂層の厚みが薄くなった薄肉部を補強する補強シートが少なくとも薄肉部に対応する領域に積層されていることで、発泡樹脂層の厚みが薄く成形された際の薄肉部の強度低下が抑制され、断熱ボード全体の厚みを薄く成形することが可能となる。
【0010】
具体的には、前記嵌込凹部を備える断熱ボードの厚みを薄く成形する場合には、嵌込凹部が形成された発泡樹脂層の他方の面側の厚みを薄く成形する必要があるが、薄肉部の厚みが更に薄くなってその強度が脆弱なものとなってしまう。このため、厚みの薄い断熱ボードを発泡樹脂層のみで成形した場合には、薄肉部に破損等の不良が発生してしまう可能性があり、厚みの薄い断熱ボードを形成することは困難となる。しかしながら、発泡樹脂層の薄肉部に対応する領域に補強シートが積層されていることで、発泡樹脂層の厚みを薄く成形することによって薄肉部の厚みが更に薄く成形された場合であっても、補強シートによって薄肉部が補強されているため、薄肉部の強度低下を抑制することができる。これにより、断熱ボードの製造時や施工時における薄肉部の不良(破損や変形等)の発生を抑制することができ、厚みの薄い断熱ボードを成形することが可能となる。
【0011】
また、本発明にかかる断熱ボードは、前記発泡樹脂層が、熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂粒子を用いて形成されることが好ましい。また、前記補強シートが、熱可塑性樹脂がシート状に成形されてなることが好ましい。また、前記熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系樹脂からなることが好ましい。また、前記補強シートを形成する熱可塑性樹脂が、耐衝撃性ポリスチレンからなることが好ましい。
【0012】
また、本発明にかかる断熱ボードは、前記発泡樹脂層と補強シートとが熱溶着されてなることが好ましい。
【0013】
かかる構成の断熱ボードによれば、発泡樹脂層と補強シートとが熱溶着されてなることで、補強シートが積層された面において、発泡樹脂層内の空隙が発泡樹脂層の外部と連通するのを防止することができる。これにより、発熱体の熱が発泡樹脂層内の空隙を伝って補強シートが積層された面側へ逃げてしまうことを抑制することができる。
【0014】
本発明にかかる成形金型は、雄型と雌型とから形成される成形空間で上記断熱ボードを成形する成形金型であって、前記成形空間に配置された補強シートを雄型及び雌型の少なくとも一方に固定可能に構成された固定手段を備えることを特徴とする。
【0015】
かかる構成の成形金型によれば、成形空間に配置された補強シートを雄型及び雌型の少なくとも一方に固定する固定手段を備えることで、成形空間に配置された補強シートの位置を固定することができ、断熱ボードを成形する際の補強シートの位置を安定させることができる。
【0016】
具体的には、発泡樹脂層を形成する材料を成形空間に充填する際には、空気の圧力によって材料を成形空間に送り込むこととなるため、補強シートが成形空間中で固定されていない場合には、空気の圧力や材料との接触によって補強シートの位置がズレてしまったり、補強シートの下に材料が入り込んでしまったりといった不具合が生じる場合がある。このため、安定した品質の断熱ボードを得ることが困難となってしまう。これに対し、固定手段によって雄型及び雌型の少なくとも一方に補強シートを固定可能であることで、材料を充填した際にも補強シートの位置が固定され、上記のような不具合が生じるのを防止することができる。これにより、安定した品質の断熱ボードを得ることが可能となる。
【0017】
また、本発明にかかる成形金型は、前記固定手段が、成形空間が形成された状態において、雄型及び雌型の少なくとも一方から成形空間へ突出するように形成された型内突起から構成され、該型内突起は、前記補強シートを貫通した状態で補強シートと嵌合可能に構成されていることが好ましい。
【0018】
かかる構成の成形金型によれば、前記固定手段が雄型及び雌型の少なくとも一方から成形空間へ突出する型内突起から構成され、該型内突起が前記補強シートを貫通した状態で嵌合可能に構成されていることで、補強シートを貫通するように型内突起を差し込んで嵌合させることができるため、容易に型内突起と補強シートとを固定することができる。これにより、補強シートを雄型又は雌型に容易に固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、発泡樹脂層の厚みを薄く成形した場合であっても、薄肉部に破損等の不良が発生するのを抑制することができ、厚みの薄い断熱ボードを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態にかかる断熱ボードを示した斜視図。
【図2】本実施形態にかかる断熱ボードにおける発泡樹脂層と補強シートとを示した図。
【図3】(a)は、本実施形態にかかる断熱ボードの製造に用いる成形金型の雄型及び雌型の断面図、(b)は、前記成形金型の雌型を示した平面図。
【図4】本実施形態にかかる成形金型内で断熱ボードが成形された状態を示した断面図。
【図5】他の実施形態にかかる断熱ボードを示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図1〜4を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態にかかる断熱ボード1は、発熱体と共に住宅等の床下や壁内等に施工され、暖房設備の一部として用いられるものである。具体的には、断熱ボード1は、前記発熱体を一方の面に載置可能に構成された発泡樹脂層2と、該発泡樹脂層2に積層されて発泡樹脂層を補強する補強シート3とから構成されている。前記発熱体としては、温水や温油等の熱媒体が流通する配管や電力によって発熱する電熱線等を用いることができる。
【0023】
前記発泡樹脂層2は、熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂粒子が熱成形されたものである。前記熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等からなるものを用いることができる。
【0024】
また、前記発泡樹脂層2は、前記発泡樹脂粒子が一枚の板状となるように熱成形されたものである。本実施形態においては、発泡樹脂層2は、平面視四角形状(詳しくは、平面視長方形状)に成形されている。また、発泡樹脂層2の全体の厚みとしては、特に限定されるものではないが、後述する嵌込凹部21に発熱体を嵌め込んだ際に、発熱体の断面形状の略全体が発泡樹脂層2の厚み内に収まるような厚みであることが好ましい。
【0025】
また、発泡樹脂層2は、一方の面に発熱体を載置可能に構成されている。具体的には、発泡樹脂層2は、その一方の面に発熱体を嵌め込み可能に構成された嵌込凹部21が形成されている。該嵌込凹部21は、発熱体の形状に対応した形状となるように形成されている。具体的には、嵌込凹部21は、発熱体の断面形状に沿った断面形状を有し、発熱体が嵌め込まれた状態で、発熱体の断面形状の略全体が嵌込凹部21の内側に収容されるように構成されている。
【0026】
また、前記嵌込凹部21は、発熱体として前記配管や電熱線のように長尺状のものを用いた場合には、発熱体が床下等に施工される際の経路に沿った溝状に形成されている。これにより、断熱ボード1は、発熱体を嵌込凹部21の内側で保護することができると共に、発熱体が施工された際の経路を維持することが可能となっている。
【0027】
また、前記発泡樹脂層2には、前記嵌込凹部21が形成されることによって形成された薄肉部22を備えている。該薄肉部22は、嵌込凹部21が形成されることで発泡樹脂層2の厚みが他の部分よりも薄くなった領域であり、嵌込凹部21に沿って形成されている。薄肉部22の厚みhとしては、0.5〜4.2mmとなるものである。なお、薄肉部22の厚みhとは、嵌込凹部21の頂点部と、発泡樹脂層2の前記一方の面に対向する他方の面との間の間隔のことをいう。
【0028】
前記補強シート3は、発泡樹脂層2に積層されて発泡樹脂層2の強度を補強するように構成されている。具体的には、補強シート3は、少なくとも薄肉部22に対応する領域に積層されている。より詳しくは、補強シート3は、一枚のシート状に形成され、発泡樹脂層2の他方の面の全面を覆うようにして積層されている。本実施形態においては、補強シート3は、発泡樹脂層2の他方の面と同一形状(即ち、平面視四角形状、より詳しくは、平面視長方形状)に形成され、発泡樹脂層2の他方の面の全面を覆うように積層されている。補強シート3の厚みとしては、特に限定されるものではなく、0.3〜1.5mm程度のものを用いることが好ましい。
【0029】
また、補強シート3を形成する素材としては、特に限定されるものではないが、発泡樹脂層2を構成する樹脂と同種の樹脂を用いることが好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等を用いることが好ましい。また、発泡樹脂層2(具体的には、薄肉部22)を効果的に補強する観点から、補強シート3は、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)からなる材料を用いて形成されることが特に好ましい。
【0030】
また、補強シート3は、後述する成形金型Aに固定可能に構成されている。具体的には、補強シート3は、その端部が成形金型Aと係合するように構成されている。より詳しくは、補強シート3は、その端部に複数の貫通孔31を備え、該貫通孔31に後述する型内突起A30が差し込まれることで、貫通孔31と型内突起A30とが嵌合するように構成されている。本実施形態においては、貫通孔31は、平面視四角形状の補強シート3の角部(即ち、4カ所)に設けられている。
【0031】
前記発泡樹脂層2及び補強シート3は、接着された状態で積層されている。発泡樹脂層2と補強シート3とを接着する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、発泡樹脂層2と補強シート3とが熱によって軟化することで熱溶着されてもよく、或いは、発泡樹脂層2と補強シート3との間に接着剤が配置されて接着されてもよい。
【0032】
次に、断熱ボード1を成形する際に用いる成形金型Aについて説明する。該成形金型Aは、雄型A1と雌型A2とから形成される成形空間において、発泡樹脂層2を成形すると共に、発泡樹脂層2と補強シート3とが積層されるように構成されたものである。
【0033】
前記雄型A1は、その内部に高温の水蒸気を導入可能な空間(図示せず)を備え、該空間に導入された高温の水蒸気を成形空間内へ噴霧可能に構成されている。具体的には、雄型A1は、成形空間が形成された状態(以下、型閉状態と記す)において、雌型A2と間隔を空けて対向する雄型成形面A10を備え、該雄型成形面A10に形成された複数の噴霧孔(図示せず)から前記水蒸気が噴霧されるように構成されている。また、雄型成形面A10には、前記嵌込凹部21に対応した形状の凸部(図示せず)が形成され、該凸部によって前記嵌込凹部21が成形されると共に、薄肉部22が形成されるように構成されている。
【0034】
一方、前記雌型A2は、雄型A1と同様に、その内部に高温の水蒸気を導入可能な空間(図示せず)を備え、該空間に導入された高温の水蒸気を成形空間内へ噴霧可能に構成されている。具体的には、雌型A2は、型閉状態において、雄型A1(具体的には、雄型成形面A10)と間隔を空けて対向する雌型成形面A20を備え、該雌型成形面A20に形成された複数の噴霧孔(図示せず)から前記水蒸気が噴霧されるように構成されている。
【0035】
また雌型A2は、補強シート3を固定可能に構成された固定手段A3を備えている。具体的には、雌型A2は、補強シート3を前記雌型成形面A20に固定可能に構成された固定手段A3を備えている。該固定手段A3は、雌型成形面A20に備えられ、補強シート3に形成された貫通孔31と係合するように構成されている。具体的には、固定手段A3は、型閉状態において、雌型成形面A20の端部から成形空間へ突出するように形成された複数の型内突起A30から構成されている。該型内突起A30は、補強シート3が雌型成形面A20上に配置された際に、貫通孔31に対応する位置に設けられている。また、型内突起A30は、前記貫通孔31に挿通可能に構成され、貫通孔31に挿通された状態で、貫通孔31と嵌合するように構成されている。具体的には、型内突起A30は、その頭頂部から基端部に向かって拡径するように形成され、基端部における断面積が貫通孔31の面積と略等しく、又は、僅かに大きくなるように構成されている。これにより、貫通孔31に型内突起A30が差し込まれた状態で貫通孔31が型内突起A30の基端部に位置するように補強シートが配置されることで、貫通孔31と型内突起A30とが接触して嵌合し、補強シート3が雌型成形面A20上に固定されることとなる。本実施形態においては、型内突起A30は、平面視四角形状の雌型成形面A20の角部(即ち、4カ所)に備えられ、平面視四角形状の補強シート3の角部を固定するように構成されている。
【0036】
上記成形金型Aを用いて断熱ボード1を成形する際には、雌型成形面A20上に補強シート3を配置すると共に、貫通孔31に型内突起A30を差し込んで嵌合し、補強シート3を雌型A2に固定する。そして、雄型A1と雌型A2とを組み合わせて成形空間を形成し、該成形空間に発泡樹脂粒子を充填する。この際、発泡樹脂粒子は、補強シート3の上に全て充填されることとなる。この状態において、成形空間内に高温の水蒸気を噴霧することで、発泡樹脂粒子が熱と水分とによって発泡成形されて発泡樹脂層2が成形されると共に、熱によって軟化した発泡樹脂層2と補強シート3とが熱溶着されることとなる。これにより、発泡樹脂層2の一方の面に嵌込凹部21が形成されると共に、発泡樹脂層2に薄肉部22が形成され、さらに他方の面には補強シート3が積層された断熱ボード1を得ることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る断熱ボードによれば、発泡樹脂層の厚みを薄く成形した場合であっても、薄肉部に破損等の不良が発生するのを抑制することができ、厚みの薄い断熱ボードを得ることができる。
【0038】
即ち、前記断熱ボード1は、前記嵌込凹部21が形成されて発泡樹脂層2の厚みが薄くなった薄肉部22を補強する補強シート3が少なくとも薄肉部22に対応する領域に積層されていることで、発泡樹脂層2の厚みを薄く成形することによって薄肉部22の厚みが更に薄く成形された場合であっても、補強シート3によって薄肉部22が補強されているため、薄肉部22の強度低下を抑制することができる。これにより、断熱ボード1の製造時や施工時における薄肉部22の不良(破損や変形等)の発生を抑制することができ、厚みの薄い断熱ボード1を成形することが可能となる。
【0039】
また、前記断熱ボード1は、前記発泡樹脂層2と補強シート3とが熱溶着されてなることで、補強シート3が積層された面において、発泡樹脂層2内の空隙が発泡樹脂層2の外部と連通するのを防止することができる。これにより、発熱体の熱が発泡樹脂層2内の空隙を伝って補強シート3が積層された面側へ逃げてしまうことを抑制することができる。
【0040】
また、前記成形金型Aによれば、成形空間に配置された補強シート3を雄型A1及び雌型A2の少なくとも一方に固定する固定手段A3を備えることで、補強シート3を成形空間に配置した状態で雄型A1及び雌型A2の少なくとも一方に固定することでき、断熱ボード1を成形する際の補強シート3の位置を安定させることができる。これにより、成形空間に発泡樹脂粒子を充填する際の空気の圧力や発泡樹脂粒子との接触によって、補強シート3の位置がズレてしまったり、補強シート3の下に発泡樹脂粒子が入り込んでしまったりといった不具合が生じるのを防止することができる。
【0041】
また、前記成形金型Aによれば、前記固定手段A3が型内突起A30から構成され、該型内突起A30が前記補強シート3を貫通した状態で嵌合可能に構成されていることで、補強シート3を貫通するように型内突起A30を差し込んで嵌合させることができるため、容易に型内突起A30と補強シート3とを固定することができる。これにより、補強シート3を雄型A1又は雌型A2に容易に固定することが可能となる。
【0042】
なお、本発明に係る断熱ボードは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態では、固定手段A3が雌型A2に備えられているが、これに限定されるものではなく、雄型A1に備えられてもよい。具体的には、固定手段A3は、雄型成形面A10から成形空間に突出するように備えられてもよい。かかる場合には、嵌込凹部21を成形する凸部が雌型成形面A20に形成されてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、型内突起A30が4ヶ所で補強シート3を固定しているが、これに限定されるものではなく、補強シート3を確実に固定可能であれば、一か所で固定してもよく、または5ヶ所以上で固定してもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、発泡樹脂層2の他方の面に補強シート3が積層されているが、これに限定されるものではなく、例えば、発泡樹脂層2の一方の面側に補強シート3がさらに積層されてもよい。具体的には、図5に示すように、薄肉部22が形成された領域において、発泡樹脂層2の他方の面に対向する面に補強シート3がさらに積層されてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、発泡樹脂層2の他方の面に補強シート3が積層されているが、これに限定されるものではなく、例えば、嵌込凹部21の内側に配置された補強シート3のみが薄肉部22に積層されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…断熱ボード、2…発泡樹脂層、3…補強シート、21…嵌込凹部、22…薄肉部、31…貫通孔、A…成形金型、A1…雄型、A10…雄型成形面、A2…雌型、A20…雌型成形面、A3…固定手段、A30…型内突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を嵌め込み可能に構成された嵌込凹部が一方の面に形成された発泡樹脂層を備える断熱ボードであって、
前記嵌込凹部が形成されて発泡樹脂層の厚みが薄くなった薄肉部を補強する補強シートが少なくとも薄肉部に対応する領域に積層されていることを特徴とする断熱ボード。
【請求項2】
前記発泡樹脂層は、熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂粒子を用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載の断熱ボード。
【請求項3】
前記補強シートは、熱可塑性樹脂がシート状に成形されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱ボード。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、ポリスチレン系樹脂からなることを特徴とする請求項2又は3に記載の断熱ボード。
【請求項5】
前記補強シートを形成する熱可塑性樹脂は、耐衝撃性ポリスチレンからなることを特徴とする請求項3に記載の断熱ボード。
【請求項6】
前記発泡樹脂層と補強シートとが熱溶着されてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の断熱ボード。
【請求項7】
雄型と雌型とから形成される成形空間で請求項1乃至6のいずれか一つに記載の断熱ボードを成形する成形金型であって、
前記成形空間に配置された補強シートを雄型及び雌型の少なくとも一方に固定可能に構成された固定手段を備えることを特徴とする成形金型。
【請求項8】
前記固定手段は、成形空間が形成された状態において、雄型及び雌型の少なくとも一方から成形空間へ突出するように形成された型内突起から構成され、該型内突起は、前記補強シートを貫通した状態で補強シートと嵌合可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載の成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−230054(P2010−230054A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76560(P2009−76560)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】