説明

新規ナフトキノン化合物およびその医薬用途

【課題】細胞増殖抑制活性を有し、さらに耐性を獲得した癌細胞に対しても有効な新規抗癌剤およびそれに適した新規化合物を創製する。
【解決手段】下記一般式(1)


で表される新規なナフトキノン化合物、ならびにそれを用いた抗癌剤。(式中、Xは、水素原子もしくはメチルフェニル基、メトキシフェニル基、フリル基、ピリジル基等を、Yは、水素原子もしくは、フェニル基、ニトロフェニル基、メトキシフェニル基、ピリジル基等を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ナフトキノン化合物、ならびにその抗癌剤としての医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の治療には、多くの場合、抗癌剤を用いた化学療法が用いられる。抗癌剤には、癌細胞に対し選択的に殺す、またはその増殖を妨げるように作用し(細胞増殖抑制活性)、かつ、正常細胞に対しては悪影響を及ぼさないことが求められる。しかしながら、癌による死亡例は年々増加の一途をたどっており、有効な新しい抗癌剤の開発が切望されている。
【0003】
また現在、医療の現場では、癌患者に対して抗癌剤を投与する際、やがて抗癌剤が効かなくなり、抗癌剤の種類を変えたり多剤併用をしたり、挙句には、副作用回避のためやむを得ず投薬計画変更を余儀なくされることがしばしばある。癌細胞の耐性獲得については広く研究されており、抗癌剤に耐えた癌細胞がMDR−1(多剤耐性リン酸化糖タンパク質)を細胞表面に産生し、薬物を積極的に細胞外に汲み出す機能を獲得しその結果、抗癌剤が効かなくなることが確かめられている(たとえば、「ファルマシア」2003年5月号、p411−445(非特許文献1)、Biol. Pharm. Bull. 27(7)1070−1074(2004)(非特許文献2)などを参照。)。したがって、このようなMDR−1に対しても作用すると考えられる新しい抗癌剤の開発も求められている。
【非特許文献1】「ファルマシア」2003年5月号、p411−445
【非特許文献2】Biol. Pharm. Bull. 27(7)1070−1074(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、細胞増殖抑制活性を有し、さらに耐性を獲得した癌細胞に対しても有効な新規抗癌剤およびそれに適した新規化合物を創製することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
中国、東南アジアにおいて薬用植物として使われている白鶴霊芝(Rhinacanthus naustus(L.) Kurz)は、その薬理活性成分のうち、リナカンチンA〜リナカンチンQに至る15種類のナフトキノン骨格を有する天然物が単離されている。本発明者らは、そのうちのリナカンチンCに強い抗腫瘍活性が認められることに着目し、リナカンチンCの活性の本体がナフトキノン構造に由来することを見出し、リナカンチンC類縁体として当該構造を有する新規ナフトキノン化合物を創製し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0006】
本発明は、下記一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(上記一般式(1)中、Xは、水素もしくは下記化学式(x1)〜(x13)のいずれかで表される置換基、
【0009】
【化2】

【0010】
であり、Yは、水素もしくは下記化学式(y1)〜(y12)のいずれかで表される置換基、
【0011】
【化3】

【0012】
であり、上記Xおよび上記Yのいずれかが水素である)で表される、新規なナフトキノン化合物を提供する。
【0013】
また本発明のナフトキノン化合物は、上記Xが上記化学式(x1)、(x2)、(x3)、(x4)、(x5)、(x6)、(x8)または(x9)で表される置換基であり、上記Yが水素であるか、または、上記Xが水素であり、上記Yが上記化学式(y3)であることが好ましく、下記構造式で表わされる4−メトキシ−6−p−トリル−〔1,2〕ナフトキノンであることが特に好ましい。
【0014】
【化4】

【0015】
本発明は、上述した本発明のナフトキノン化合物を含む抗癌剤についても提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、細胞増殖抑制活性を有し、さらに耐性を獲得した癌細胞に対しても有効な新規抗癌剤およびそれに適した新規化合物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のナフトキノン化合物は、下記一般式(1)で表わされるものである。
【0018】
【化5】

【0019】
上記一般式中、Xは、水素もしくは下記の化学式(x1)〜(x13)のいずれかで表される置換基であり、Yは、水素もしくは下記の化学式(y1)〜(y12)のいずれかで表される置換基であり、XおよびYのいずれかが水素である。
【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

【0022】
具体的には、本発明のナフトキノン化合物には、以下の化合物(A1)〜(A13)、(B1)〜(B12)が包含される。
【0023】
【化8】

【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】
【化11】

【0027】
【化12】

【0028】
【化13】

【0029】
【化14】

【0030】
【化15】

【0031】
【化16】

【0032】
【化17】

【0033】
【化18】

【0034】
【化19】

【0035】
【化20】

【0036】
【化21】

【0037】
【化22】

【0038】
【化23】

【0039】
【化24】

【0040】
【化25】

【0041】
【化26】

【0042】
【化27】

【0043】
【化28】

【0044】
【化29】

【0045】
【化30】

【0046】
【化31】

【0047】
【化32】

【0048】
本発明のナフトキノン化合物は、上述した化合物(A1)〜(A13)、(B1)〜(B12)の中でも、後述する実験例にて立証されるように、子宮癌細胞であるHeLa細胞に対する高い細胞増殖抑制活性を示す(IC50が10μM以下)ことから、上記一般式(1)において、上記Xが上記化学式(x1)、(x2)、(x3)、(x4)、(x5)、(x6)、(x8)または(x9)で表される置換基であり、上記Yが水素である場合、または、上記Xが水素であり、上記Yが上記化学式(y3)である場合が好ましい。換言すると、上述した化合物(A1)、(A2)、(A3)、(A4)、(A5)、(A6)、(A8)、(A9)または(B3)が好ましい。
【0049】
さらに、上述した中でも、後述する実験例にて立証されるように、HeLa細胞に対し抗癌剤5−フルオロウラシル(5−FU)と同等の細胞増殖抑制活性を示す(IC50が3μM以下)ことから、上記一般式(1)において、上記Xが上記化学式(x1)で表される置換基であり、上記Yが水素である場合、換言すれば、下記構造式で示される4−メトキシ−6−p−トリル−〔1,2〕ナフトキノン(すなわち、上述した化合物(A1))が特に好ましい。
【0050】
【化33】

【0051】
なお、上述したように、医療の現場では、癌患者に対して抗癌剤を投与する際、癌細胞が抗癌剤に対する耐性を獲得し、やがて抗癌剤が効かなくなってしまうことが起こる。後述する実験例において立証するように、本発明のナフトキノン化合物は、ビンブラスチンに対する耐性を獲得した癌細胞Hvr100−6に対しても有効であり、細胞増殖抑制活性だけでなく、多剤耐性癌細胞中のリン酸化糖タンパク質(MDR−1)に対しても作用する新しい抗癌剤として有望であることが期待される。
【0052】
たとえば、上述した抗癌剤5−FUについて、本発明者らが、ビンブラスチンに対する耐性を獲得した癌細胞Hvr100−6に対するIC50を測定したところ、11.6±2.33μMであった(実験例にて後述)。これに対し、上述した化合物(A1)、(A2)、(A3)、(A4)、(A5)、(A6)、(A8)、(A9)または(B3)は、いずれも、Hvr100−6細胞に対し5−FUと同等以上の効果を示し(IC50が10以下)、さらに、上述した化合物(A1)は、5−FUと比較しても顕著な効果を示す(IC50が3以下)。
【0053】
本発明はまた、上述した本発明のナフトキノン化合物を含む抗癌剤についても提供する。本発明の抗癌剤は、上述したナフトキノン化合物を、医薬的に許容し得る塩の形態で含んでいてもよい。ここで、医薬的に許容し得る塩としては、たとえば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ホスホン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、ピルビン酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、ショウノウ酸塩などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
上述した一般式(1)で表されるナフトキノン化合物またはその医薬的に許容し得る塩を含む本発明の抗癌剤は、後述する実験例にて実証されるように、様々な癌細胞に対し強力な抗癌作用を示すものであり、化学療法による癌の治療または予防に好適に適用し得ることが期待される。ここで、本発明の抗癌剤が治療または予防の対象とする癌細胞としては、特に制限されるものではなく、たとえば、肝癌細胞、乳癌細胞、大腸癌細胞、白血病細胞、膀胱癌細胞、腎臓癌細胞、肺癌細胞、食道癌細胞、胆癌細胞、卵巣癌細胞、膵臓癌細胞、胃癌細胞、子宮頸癌細胞、甲状腺癌細胞、前立腺癌細胞、皮膚癌細胞などを挙げることができる。中でも、肝癌細胞、乳癌細胞、大腸癌細胞および白血病細胞から選ばれる少なくともいずれかに対し特に有効に作用し得る。
【0055】
本発明の抗癌剤は、上述した一般式(1)で表されるナフトキノン化合物またはその医薬上許容し得る塩をそのまま、または各種の医薬組成物として経口的または非経口的に投与され得る。医薬組成物とする場合の剤形としては特に制限されるものではなく、たとえば錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤、点滴剤などが挙げられる。上述した各剤形への製剤化は、当分野において従来より広く知られている適宜の方法を用いて行うことができ、本発明の効果を阻害しない範囲で従来公知の適宜の添加剤(たとえば賦形剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、懸濁化剤、等張化剤、乳化剤、吸収促進剤など)が添加されていてもよい。本発明の抗癌剤はまた、医薬上許容し得る担体を含んでいてもよく、このような担体としては、たとえば水、注射用蒸留水、生理食塩水、グルコース、フラクトース、白糖、マンニット、ラクトース、澱粉、コーン・スターチ、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、タルク、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、尿素、シリコーン樹脂、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの従来公知の適宜の担体を、本発明の効果を阻害しない範囲で製剤の種類に応じて選択して用いるでき、特に制限されるものではない。
【0056】
本発明の抗癌剤の投与量および投与回数は、治療または予防の対象とする癌細胞、投与経路、治療期間、患者の年齢、体重などに応じて適宜選択することができ、特に制限されるものではない。
【0057】
また本発明の抗癌剤は、単独投与しても有効な癌の治療または予防の効果を発揮するものであるが、本発明の効果を阻害しない範囲で、従来公知の適宜の他の抗癌剤と併用するようにしても勿論よい。この場合、本発明の抗癌剤の投与は、他の抗癌剤の投与前、同時、または投与後のいずれの時期に投与してもよい。
【0058】
以下、実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
<合成例1>
下記スキームにしたがって、化合物(A1)(4−メトキシ−6−p−トリル−〔1,2〕ナフトキノン)を合成した。
【0060】
【化34】

【0061】
(6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンの合成例)
1,2,4−トリメトキシナフタレン(2.18g、10mmol)をクロロホルム(16ml)に溶かし、氷冷した。上部に滴下ろうとを付け、その中に臭素(0.56ml、1.2当量)、クロロホルム(4.4ml)を入れて滴下した。氷冷下、攪拌を1時間行い、水を加えて分液ろうとに移した。クロロホルム層を分画し、水洗、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液で水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ひだろ過、濃縮を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム:ヘキサン=1:1)で精製を行い、6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレン(上記スキーム中、(1)の化合物)2.24g(75.5%)を得た。
1H−NMR(400MHz, CDCl3) δ3.90(s, 3H), 3.97(s, 3H), 4.00(s, 3H), 6.65(s, 1H), 7.53(dd, 1H, J=2.0, 9.0), 7.90(d, 1H, J=9.0), 8.30(d, 1H, J=2.0).
(6−p−トリル−1,2,4−トリメトキシナフタレンの合成例)
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムPd(PPh34(111mg、96μmol)をイオン性液体(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート)16mlに溶かし、減圧および超音波処理を繰り返し、脱気した。6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレン(2.38g、8mmol)を加え激しく攪拌した。室温から110℃までゆっくり加熱し、もう1度室温に戻してp−トリルボロン酸(1.2g、8.8mmol)を加え、次いで2M炭酸ナトリウム水溶液(8ml)を加え、さらに激しく攪拌した。再び110℃に加熱して10分から30分間攪拌した。反応液にエーテル(15ml)を加え分液ろうとへ移した。イオン性液体層をさらに15mlのエーテルで2回抽出した。エーテル層(45ml)は水洗し、飽和食塩水洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ひだろ過、濃縮を行った。得られた粗結晶はシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製すると2.37g(4.4mmol)96.4%の6−p−トリル−1,2,4−トリメトキシナフタレン(上記スキーム中、(2)の化合物)が紫色の結晶として得られた。
融点:120℃
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ2.40 (s, 3H), 3.95 (s, 3H), 4.00 (s, 3H), 4.01 (s, 3H), 6.66 (s, 1H), 7.27 (d, 1H, J = 8.0), 7.62 (d, 1H, J = 8.0), 7.75 (dd, 1H, J = 1.8, 8.7), 8.10 (d, 1H, J = 8.7), 8.35 (d, 1H, J = 1.8).
(4−メトキシ−6−p−トリル−〔1,2〕ナフトキノンの合成例)
6−p−トリル−1,2,4−トリメトキシナフタレン(2.37g、7.7mmol)をはかり、300mlのナス型フラスコに入れた。アセトニトリル128mlを加え氷冷した。攪拌下、硝酸第二セリウムアンモニウム水溶液12.7gを50mlの水を用いてゆっくり加えた。そのまま、氷冷下、30分間攪拌した。薄層クロマトグラフィによるチェック(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)を行い、原料消失後、クロロホルム、水を50mlずつ加えて分液ろうとへ移した。水層についてはクロロホルム50mlを用いてさらに2回抽出を行い、有機層を合わせて水洗を行い、無水硫酸マグネシウムにより乾燥後、ひだろ過、濃縮を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィによる精製の結果、p−キノン体(異性体)1.12g(52%)およびo−キノン体(目的物:4−メトキシ−6−p−トリル−〔1,2〕ナフトキノン)746mg(35%)が得られた。
融点:202℃
1H−NMR (400MHz, CDCl3)δ2.42(s, 3H), 3.92(s, 3H), 6.19(s, 1H), 7.30(d, 2H, J=8.0Hz), 7.60(d, 2H, J=8.0Hz), 7.91(dd, 1H, J=1.8Hz, J=8.0Hz), 8.18(d, 1H, J=8.0Hz), 8.31(d, 1H, J=1.8Hz).
<合成例2>
合成例1と同様にして6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに4−メトキシフェニルボロン酸を用いて6−(4−メトキシフェニル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例1と同様にして、化合物(A2)を合成した。
融点:油状
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.88 (s, 3H), 4.03 (s, 3H), 5.99 (s, 1H), 7.03 (d, 2H, J = 9.0), 7.62 (d, 2H, J = 9.0), 7.74 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 8.04 (d, 1H, J = 2.0), 8.15 (d, 1H, J = 8.0).
<合成例3>
合成例1と同様にして6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに3,4−ジメトキシフェニルボロン酸を用いて6−(3,4−ジメトキシフェニル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例1と同様にして、化合物(A3)を合成した。
融点:215℃
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ3.95 (s, 3H), 3.99 (s, 3H), 4.04 (s, 3H), 5.99 (s, 1H), 6.99 (d, 1H, J = 8.0), 7.15 (d, 1H, J = 2.0), 7.25 (dd, 1H, J =2.0, 8.0 ), 7.73 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 8.02 (d, 1H, J = 2.0), 8.14 (d, 1H, J = 8.0).
<合成例4>
合成例1と同様にして6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに2,3−ジメトキシフェニルボロン酸を用いて6−(2,3−ジメトキシフェニル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例1と同様にして、化合物(A4)を合成した。
融点:171℃
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ3.64 (s, 3H), 3.93 (s, 3H), 4.01 (s, 3H), 5.99 (s, 1H), 6.97 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 7.00 (dd, 1H, J =2.0, 8.0 ), 7.16 (t, 1H, J =8.0 ), 7.75 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 8.07 (d, 1H, J = 2.0), 8.16 (d, 1H, J =8.0).
<合成例5>
合成例1と同様にして6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに3,4−(メチレンジオキシ)フェニルボロン酸を用いて6−(3,4−(メチレンジオキシ)フェニル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例1と同様にして、化合物(A5)を合成した。
融点:201℃
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ4.04 (s, 3H), 5.99 (s, 1H), 6.04 (s, 2H), 6.93 (d, 1H, J = 8.0), 7.16 (m, 2H), 7.70 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 8.00 (d, 1H, J = 2.0), 8.15 (d, 1H, J = 8.0).
<合成例6>
合成例1と同様にして6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これにトランス−2−フェニルビニルボロン酸を用いて6−(トランス−2−フェニルビニル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例1と同様にして、化合物(A6)を合成した。
融点:油状
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ4.04 (s, 3H), 5.99 (s, 1H), 7.18 (d, 1H), 7.36 (m, 4H), 7.56 (m, 2H), 7.78 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 8.12 (d, 1H, J = 8.0), 8.22 (d, 1H, J = 2.0).
<合成例7>
合成例1と同様にして6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに3−フランボロン酸を用いて6−(3−フリル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例1と同様にして、化合物(A7)を合成した。
融点:油状
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ4.01 (s, 3H), 5.98 (s, 1H), 6.81 (m, 1H), 7.53 (m, 1H), 7.78 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 7.92 (m, 1H), 8.13 (d, 1H, J = 8.0), 8.17 (d, 1H, J = 2.0).
<合成例8>
合成例1と同様にして6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに3−ピリジンボロン酸を用いて6−(3−ピリジル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例1と同様にして、化合物(A8)を合成した。
融点:>240℃分解
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ4.06 (s, 3H), 6.04 (s, 1H), 7.48 (m, 1H), 7.80 (dd, 1H, J =2.0, 8.0), 8.00 (m, 1H), 8.09 (d, 1H, J = 2.0), 8.23 (d, 1H, J = 8.0), 8.70 (dd, 1H, J = 2.0, 5.0), 8.93 (d, 1H, J = 2.0).
<合成例9>
合成例1と同様にして6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに4−トリフルオロメチルフェニルボロン酸を用いて6−(4−トリフルオロメチルフェニル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例1と同様にして、化合物(A9)を合成した。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ4.05 (s, 3H), 6.03 (s, 2H), 7.76 (s, 4H), 7.82 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 8.09 (d, 1H, J = 2.0), 8.23 (d, 1H, J = 8.0).
<合成例10>
1,2,4−トリメトキシナフタレンのテトラヒドロフラン溶液を氷冷下n−ブチルリチウムを用いてリチオ化し、−78℃に冷やして1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンで処理し、2−ブロモ−1,3,4−トリメトキシナフタレンを94%の収率で得、これに、フェニルボロン酸を用いて3−フェニル−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は、合成例1と同様にして、化合物(B1)を合成した。
融点:油状
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ3.87 (s, 3H), 7.40 (m, 5H), 7.73 (dt, 1H, J = 1.0, 7.0), 7.80 (dt, 1H, J = 1.4, 8.0), 8.15 (dd, 1H, J = 1.4, 8.0), 8.20 (dd, 1H, J = 1.0, 7.0).
<合成例11>
合成例10と同様にして2−ブロモ−1,3,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに、3−ニトロフェニルボロン酸を用いて3−(3−ニトロフェニル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例10と同様にして、化合物(B2)を合成した。
融点:166℃
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.60 (s, 3H), 7.60 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.61 (m, 1H), 7.70 (m, 1H), 7.73 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.92 (dd, 1H, J = 1.0, 8.0), 8.15 (dd, 1H, J = 1.0, 8.0) 8.26 (m, 2H).
<合成例12>
合成例10と同様にして2−ブロモ−1,3,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに、2,3−ジメトキシフェニルボロン酸を用いて3−(2,3−ジメトキシフェニル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例10と同様にして、化合物(B3)を合成した。
融点:160℃
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.60 (s, 3H), 3.80 (s, 3H), 3.90 (s, 3H), 6.78 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 6.98 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 7.08 (t, 1H, J = 8.0), 7.55 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.69 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.90 (dd, 1H, J =1.0, 8.0 ), 8.12 (dd, 1H, J = 1.0, 8.0).
<合成例13>
合成例10と同様にして2−ブロモ−1,3,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに、p−トリルボロン酸を用いて3−p−トリル−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例10と同様にして、化合物(B4)を合成した。
融点:134℃
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ2.40 (s, 3H), 3.57 (s, 3H), 7.23 (m, 4H), 7.55 (m, 1H), 7.70 (m, 1H), 7.89 (m, 1H), 8.12 (m, 1H).
<合成例14>
合成例10と同様にして2−ブロモ−1,3,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに、3,4−(メチレンジオキシ)フェニルボロン酸を用いて3−(3,4−(メチレンジオキシ)フェニル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成した以外は合成例10と同様にして、化合物(B5)を合成した。
融点:170.5℃
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.64 (s, 3H), 6.00 (s, 2H), 6.83 (m, 3H), 7.55 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.70 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.89 (dd, 1H, J = 1.0, 8.0), 8.11 (dd, 1H, J = 1.0, 8.0).
<合成例15>
合成例10と同様にして2−ブロモ−1,3,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに、3−チオフェンボロン酸を用いて3−(チオフェン−3−イル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例10と同様にして、化合物(B6)を合成した。
融点:97℃
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ3.66 (s, 3H), 7.25 (dd, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.38 (dd, 1H, J = 2.0, 5.0), 7.52 (dd, 1H, J = 1.0, 3.0), 7.54 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.71 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.88 (m, 1H), 8.11 (m, 1H).
<合成例16>
合成例10と同様にして2−ブロモ−1,3,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに、3−ピリジルボロン酸を用いて、3−(3−ピリジル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例10と同様にして、化合物(B7)を合成した。
融点:147℃
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ3.61 (s, 3H), 7.40 (ddd, 1H, J = 1.0, 5.0, 8.0), 7.60 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.73 (m, 2H), 7.93 (m, 1H), 8.14 (dd, 1H, J =1.0, 8.0 ), 8.62 (m, 2H).
<合成例17>
合成例10と同様にして2−ブロモ−1,3,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに、4−ピリジルボロン酸を用いて、3−(4−ピリジル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例10と同様にして、化合物(B8)を合成した。
融点:>270℃分解
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.64 (s, 3H), 7.32 (m, 2H), 7.61 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.74 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.93 (dd, 1H, J = 1.0, 8.0), 8.14 (dd, 1H, J = 1.0, 8.0), 8.69 (m, 2H).
<合成例18>
合成例10と同様にして2−ブロモ−1,3,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに、4−トリフルオロメチルフェニルボロン酸を用いて、3−(4−トリフルオロメチルフェニル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成した以外は合成例10と同様にして、化合物(B9)を合成した。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ3.59 (s, 3H), 7.49 (d, 2H, J = 8.0), 7.60 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.70 (d, 2H, J = 8.0), 7.73 (dt, 1H, J = 1.0, 8.0), 7.92 (dd, 1H, J = 1.0, 8.0), 8.15 (dd, 1H, J = 1.0, 8.0).
<合成例19>
合成例1と同様にして6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これにフェニルボロン酸を用いて6−フェニル−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例1と同様にして、化合物(A10)を合成した。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ4.04 (s, 3H), 6.00 (s, 1H), 7.50 (m, 3H), 7.65 (m, 2H), 7.78 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 8.08 (d, 1H, J = 2.0), 8.17 (d, 1H, J = 8.0).
<合成例20>
合成例1と同様にして6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに3−ニトロフェニルボロン酸を用いて6−(3−ニトロフェニル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例1と同様にして、化合物(A11)を合成した。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ4.06 (s, 3H), 6.04 (s, 1H), 7.61 (m, 1H), 7.70 (m, 1H), 7.80 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 8.09 (d, 1H, J = 2.0), 8.22 (d, 1H, J = 8.0), 8.26 (m, 2H).
<合成例21>
合成例1と同様にして6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに3−チオフェンボロン酸を用いて6−(チオフェン−3−イル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例1と同様にして、化合物(A12)を合成した。
融点:油状
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ4.04 (s, 3H), 6.00 (s, 1H), 7.48 (m, 2H), 7.69 (dd, 1H, J = 1.5, 2.5), 7.78 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 8.07 (d, 1H, J = 1.5), 8.15 (d, 1H, J = 8.0).
<合成例22>
合成例1と同様にして6−ブロモ−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成し、これに4−ピリジルボロン酸を用いて6−(4−ピリジル)−1,2,4−トリメトキシナフタレンを合成したこと以外は合成例1と同様にして、化合物(A13)を合成した。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ4.06 (s, 3H), 6.05 (s, 1H), 7.58 (m, 1H), 7.84 (dd, 1H, J = 2.0, 8.0), 8.12 (d, 1H, J = 2.0), 8.22 (d, 1H, J = 8.0), 8.75 (m, 2H).
<実験例>
上述のようにして合成した化合物(A1)〜(A9)、(B1)〜(B9)について、以下の手順で実験を行った。
【0062】
子宮癌細胞であるHeLa細胞(大日本住友製薬(株)より入手)は、10%ウシ胎仔血清(FBS)および100mg/l 硫酸カナマイシンで補完されたダルベッコ修飾イーグル培地(DMEMに、グルコース(4.5g/l)、L−グルタミン(4mM)およびピルビン酸ナトリウム(1mM)を含む)からなる培養培地中で維持された。
【0063】
また、ビンブラスチンに対する耐性を獲得した癌細胞Hvr100−6は、上記HeLa細胞を用いて作製し、培養培地(5×106 cells/60mm dish)中での硫酸ビンブラスチンの濃度を段階的に上昇させることで確立した。FACSおよびRT−PCR解析により、多剤耐性癌細胞中のリン酸化糖タンパク質(MPR1)、MPR2および乳癌耐性タンパク(BCRP)を含む、関連する輸送体(transporter)の交代なしでのHVr100−6細胞におけるMDR1の誘導を確認した。得られたHvr100−6細胞は、100nM 硫酸ビンブラスチン中で維持された。
【0064】
これらの細胞株の両方(それぞれ4×104 cells/cm2および12×104 cells/cm2)を、培養フラスコ中に播種し、37℃で5%CO2−95%空気の加湿された大気中で成長させ、0.05%トリプシン−0.02%EDTAで3または4日毎に二次培養した。
【0065】
化合物(A1)〜(A9)、(B1)〜(B9)の抗増殖効果を、Cell Counting Kit(同人化学研究所製)を用いたWST−1(テトラゾン塩)比色分析アッセイによってHeLaおよびHvr100−6細胞中で評価した。細胞(1000 cells/well)を、0日目は化合物(A1)〜(A9)、(B1)〜(B9)なしの条件で100μlの培養培地中の96ウェルプレート上に播種し、1日目に様々な濃度の試験化合物を含む培養培地に交換した。化合物(A1)〜(A9)、(B1)〜(B9)は、その最大の濃度が1%(細胞の生存能力または成長に効果を有しない)とした。37℃での3日間のインキュベーションの後(4日目)、培養培地をWST−1試薬溶液(10μl WST−1溶液および100μl 培養培地)を含む100μlの培養培地に交換し、3時間後、製品マニュアルに従って、マイクロプレートリーダー(Sjeia Auto Reader II、三光純薬株式会社製)を用いて630nmの参照波長とともに450nmで測定した。
【0066】
また、化合物(A1)〜(A9)、(B1)〜(B9)のHeLa細胞、Hvr100−6細胞に対する50%成長阻害濃度(IC50)は、非線型最小二乗法(nonlinear-squares fitting method)(Winnonlin、Pharsight Corp)を用い、以下のsigmoid阻害効果モデルにしたがって算出した:E=Emax×〔1−Cγ/(Cγ+IC50γ)。EおよびEmaxは、生存の割合(コントロールの%)およびその最大値をそれぞれ示し、Cおよびγは、培地中の濃度およびsigmoidicity因子をそれぞれ示す。各シリーズの実験は、四重(in quadruplicate)に行われ、3つの顕著な数字に対し端数計算した後の標準偏差(SD)を算出した。
【0067】
結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
また、参考のため、公知の抗癌剤であるビンブラスチン(VLB)、パクリタキセル(TXL)、ダウノマイシン(DNR)、ドキソルビシン(DXR)、5−フルオロウラシル(5−FU)、シスプラチン(CDDP)およびシタラビン(Ara−C)についても、上述と同様にして、HeLa細胞、Hvr100−6細胞それぞれに対するIC50(VLB、TXL、DNR、DXRについてはnM、5−FU、CDDP、Ara−CについてはμM)を求めた。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
今回開示された実施の形態および実験例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(上記一般式(1)中、Xは、水素もしくは下記化学式(x1)〜(x13)のいずれかで表される置換基、
【化2】

であり、Yは、水素もしくは下記化学式(y1)〜(y12)のいずれかで表される置換基、
【化3】

であり、上記Xおよび上記Yのいずれかが水素である)
で表される、ナフトキノン化合物。
【請求項2】
上記一般式(1)において、上記Xが上記化学式(x1)、(x2)、(x3)、(x4)、(x5)、(x6)、(x8)または(x9)で表される置換基であり、上記Yが水素であるか、または、上記Xが水素であり、上記Yが上記化学式(y3)である、請求項1に記載のナフトキノン化合物。
【請求項3】
下記構造式で表わされる4−メトキシ−6−p−トリル−〔1,2〕ナフトキノンである、請求項2に記載のナフトキノン化合物。
【化4】

【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のナフトキノン化合物を含む抗癌剤。

【公開番号】特開2010−47557(P2010−47557A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215760(P2008−215760)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(599125249)学校法人武庫川学院 (24)
【出願人】(595115994)三國製薬工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】