時間計測回路およびデジタル位相同期回路
【課題】発振器の周期を基準として発振器の出力信号と基準信号との位相のずれを検出する。
【解決手段】多相化回路2は、差動発振信号P1、P2をM(Mは2以上の整数)分周することにより、位相が互いに180/M度ずつ異なる多相化信号S1〜SNを生成し、フリップフロップF1〜FNは、基準信号RCKの入力に同期して多相化信号S1〜SNをそれぞれ取り込み、デコーダ3は、フリップフロップF1〜FNの出力信号Q1〜QNをデコードする。
【解決手段】多相化回路2は、差動発振信号P1、P2をM(Mは2以上の整数)分周することにより、位相が互いに180/M度ずつ異なる多相化信号S1〜SNを生成し、フリップフロップF1〜FNは、基準信号RCKの入力に同期して多相化信号S1〜SNをそれぞれ取り込み、デコーダ3は、フリップフロップF1〜FNの出力信号Q1〜QNをデコードする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は時間計測回路およびデジタル位相同期回路に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル位相同期回路(ADPLL:All Digital Phase−Locked−loop)は、CMOSプロセスで形成することができるため、微細化が進むに従ってチップサイズを小さくできるとともに、高性能化および低電圧動作化を達成することができる。
【0003】
デジタル位相同期回路では、発振器の出力信号と基準信号との位相のずれを検出するため、時間計測回路(TDC:Time to Digital Converter)が用いられる。
【0004】
従来の時間計測回路では、発振器の出力信号と基準信号との位相のずれが遅延素子の遅延時間を単位として計算される。このため、従来の時間計測回路では、その時間分解能が1段分の遅延素子の遅延時間で制限される上に、1段分の遅延素子の遅延時間が発振器の周期を基準としていくつになるかを計算する規格化処理が必要となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US7564284
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの実施形態の目的は、発振器の周期を基準として発振器の出力信号と基準信号との位相のずれを検出することが可能な時間計測回路およびデジタル位相同期回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の時間計測回路によれば、多相化回路と、フリップフロップと、デコーダとが設けられている。多相化回路は、差動発振信号をM(Mは2以上の整数)分周することにより、位相が互いに180/M度ずつ異なる多相化信号を生成する。フリップフロップは、基準信号の入力に同期して前記多相化信号をそれぞれ取り込む。デコーダは、前記フリップフロップの出力信号をデコードする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1実施形態に係る時間計測回路の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、第2実施形態に係る時間計測回路に適用される多相化回路の概略構成を示すブロック図、図2(b)は、図2(a)の差動発振器1の出力波形を示すタイミングチャートである。
【図3】図3(a)は、第3実施形態に係る時間計測回路に適用される多相化回路の概略構成を示すブロック図、図3(b)は、図3(a)の多相化回路の出力波形を示すタイミングチャートである。
【図4】図4は、図3の2分周器12の構成例を示すブロック図である。
【図5】図5は、図4のラッチ回路21の構成例を示す回路図である。
【図6】図6は、第4実施形態に係る時間計測回路に適用される多相化回路の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7(a)および図7(b)は、図6の補間回路35の構成方法を示すブロック図である。
【図8】図8(a)は、図7(a)の補間回路31の概略構成を示す回路図、図8(b)および図8(c)は、図8(a)の補間回路31の入力波形を示す図、図8(d)〜図8(f)は、図8(a)の補間回路31の出力波形を示す図である。
【図9】図9(a)は、図6の多相化回路の概略構成を示すブロック図、図9(b)は、図9(a)の多相化回路の出力波形を示すタイミングチャート、図9(c)は、図9(b)の出力波形をジョンソンデータで表現した図、図9(d)は、図9(b)の出力波形をバイナリーデータで表現した図である。
【図10】図10は、第5実施形態に係る時間計測回路の概略構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、第6実施形態に係る時間計測回路の動作方法の一例を示すブロック図である。
【図12】図12は、第7実施形態に係る図10の時間計測回路の動作方法の一例を示すブロック図である。
【図13】図13は、第8実施形態に係る図10の時間計測回路の動作方法の一例を示すブロック図である。
【図14】図14は、図11〜図13の時間計測回路に適用されるスイッチ付インバータ回路の一例を示す回路図である。
【図15】図15は、図11〜図13の時間計測回路に適用されるスイッチ付インバータ回路のその他の例を示す回路図である。
【図16】図16(a)は、第9実施形態に係る時間計測回路に適用される補間回路の概略構成を示すブロック図、図16(b)〜図16(e)は、図16(a)の補間回路の出力波形を示す図である。
【図17】図17は、第10実施形態に係るデジタル位相同期回路の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る時間計測回路について図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(第1実施形態)
【0011】
図1は、第1実施形態に係る時間計測回路の概略構成を示すブロック図である。
図1において、時間計測回路4には、多相化回路2と、N(Nは2以上の整数)個のフリップフロップF1〜FNと、デコーダ3とが設けられている。そして、時間計測回路4は、差動発振器1に接続されている。
【0012】
そして、差動発振信号P1、P2が差動発振器1にて生成され、多相化回路2に出力される。そして、多相化回路2において、差動発振信号P1、P2がM(Mは2以上の整数)分周されることにより、位相が互いに180/M度ずつ異なる多相化信号S1〜SNが生成され、フリップフロップF1〜FNにそれぞれ出力される。そして、フリップフロップF1〜FNにおいて、基準信号RCKの立ち上がりエッジに同期して多相化信号S1〜SNがそれぞれ取り込まれることにより、出力信号Q1〜QNがデコーダ3に出力される。そして、デコーダ3において、フリップフロップF1〜FNの出力信号Q1〜QNがデコードされることにより、デジタルコードが生成される。なお、デコーダ3では、ジョンソンデータとして出力される出力信号Q1〜QNをバイナリーデータに変換することができる。
【0013】
ここで、差動発振信号P1、P2をM分周して多相化信号S1〜SNを生成することにより、差動発振信号P1、P2の周期を基準として多相化信号S1〜SNと基準信号RCKとの位相のずれを検出することが可能となる。このため、これらの信号の位相のずれの時間分解能が遅延素子の遅延時間で制限されることがなくなり、時間分解能を向上させることが可能となるとともに、多相化信号S1〜SNの立ち上がり時刻が差動発振信号P1、P2の周期を基準としていくつになるかを計算する規格化処理が不要となる。
【0014】
(第2実施形態)
図2(a)は、第2実施形態に係る時間計測回路に適用される多相化回路の概略構成を示すブロック図、図2(b)は、図2(a)の差動発振器1の出力波形を示すタイミングチャートである。なお、図2(b)では、差動発振信号P1、P2の周期を基準信号RCKの周期Tvcoで規格化した値で示した。
【0015】
なお、この第2実施形態は、図1の多相化回路2の多相化信号S1、S2として差動発振信号P1、P2を用いるようにしたものである。
図2(a)および図2(b)において、差動発振器1では、互いに位相が180度だけ異なる差動発振信号P1、P2が生成される。このため、差動発振信号P1、P2は、0[/Tvco]と1/2[/Tvco]で立ち上がりエッジを持つ多相化信号S1、S2として利用することができる。
【0016】
この多相化信号S1、S2は、差動発振信号P1、P2の周期を基準としているため、多相化信号S1、S2の立ち上がり時刻が差動発振信号P1、P2の周期を基準としていくつになるかを計算する規格化処理が不要となる。
【0017】
(第3実施形態)
図3(a)は、第3実施形態に係る時間計測回路に適用される多相化回路の概略構成を示すブロック図、図3(b)は、図3(a)の多相化回路の出力波形を示すタイミングチャートである。なお、この第3実施形態は、図1の差動発振器1の代わりに差動発振器11を用い、図1の多相化回路2として2分周器12を用いるようにしたものである。
図3(a)において、差動発振器11の発振周波数は差動発振器1の発振周波数の2倍に設定される。このため、差動発振器11では、差動発振信号P1、P2の周波数の2倍の差動発振信号P11、P12が生成される。そして、2分周器12には差動発振信号P11、P12が入力される。
【0018】
そして、2分周器12において、周期が差動発振信号P11、P12の周期の1/2で位相が互いに90度ずつ異なる多相化信号P21〜P24が生成される。ここで、多相化信号P21〜P24の90度の位相差は1/4[/Tvco]に対応するので、多相化信号P21〜P24は、0[/Tvco]、1/4[/Tvco]、2/4[/Tvco]および3/4[/Tvco]で立ち上がりエッジを持つようにできる。
【0019】
この多相化信号P21〜P24は、差動発振信号P11、P12の周期を基準としているため、多相化信号P21〜P24の立ち上がり時刻が差動発振信号P11、P12の周期を基準としていくつになるかを計算する規格化処理が不要となる。また、図3の構成では、図2の構成に比べて時間分解能を2倍に向上させることができる。
【0020】
図4は、図3の2分周器12の構成例を示すブロック図である。
図4において、2分周器12には、ラッチ回路21、22が設けられている。ここで、ラッチ回路21の非反転出力Qはラッチ回路22の非反転入力Dに入力され、ラッチ回路21の反転出力QBはラッチ回路22の反転入力DBに入力される。一方、ラッチ回路22の非反転出力Qはラッチ回路21の反転入力DBに入力され、ラッチ回路22の反転出力QBはラッチ回路21の非反転入力Dに入力される。
【0021】
そして、差動発振信号P11、P12の立ち上がりエッジに同期してラッチ回路21の出力がラッチ回路22に取り込まれ、ラッチ回路22の出力がラッチ回路21に取り込まれることで、ラッチ回路21から多相化信号P21、P23が出力され、ラッチ回路22から多相化信号P22、P24が出力される。
【0022】
図5は、図4のラッチ回路21の構成例を示す回路図である。なお、ラッチ回路22もラッチ回路21と同様に構成することができる。
図5において、ラッチ回路21には、抵抗R1、R2、電界効果トランジスタM1〜M6および電流源Gが設けられている。そして、電界効果トランジスタM1のドレインは抵抗R1を介して電源電位VDDに接続され、電界効果トランジスタM2のドレインは抵抗R2を介して電源電位VDDに接続されている。電界効果トランジスタM1、M2のソースは電界効果トランジスタM5のドレインに接続されている。
【0023】
電界効果トランジスタM3のドレインは、電界効果トランジスタM2のドレインおよび電界効果トランジスタM4のゲートに接続され、電界効果トランジスタM4のドレインは、電界効果トランジスタM1のドレインおよび電界効果トランジスタM3のゲートに接続されている。電界効果トランジスタM3、M4のソースは電界効果トランジスタM6のドレインに接続されている。電界効果トランジスタM5、M6のソースは電流源Gを介して接地されている。
【0024】
そして、電界効果トランジスタM1のゲートには非反転入力Dが入力され、電界効果トランジスタM2のゲートには反転入力DBが入力される。電界効果トランジスタM5のゲートには差動発振信号P11が入力され、電界効果トランジスタM6のゲートには差動発振信号P12が入力される。また、電界効果トランジスタM3のドレインからは反転出力Qが出力され、電界効果トランジスタM4のドレインからは非反転出力QBが出力される。
【0025】
差動発振信号P11が立ち上がると、反転入力DBおよび非反転入力Dのレベルに応じて電界効果トランジスタM1、M2のいずれか一方がオンする。次に、差動発振信号P12が立ち上がると、電界効果トランジスタM1、M2のオン状態に応じて、電界効果トランジスタM3、M4のいずれか一方がオンし、その状態が電界効果トランジスタM3、M4に保持されることで、反転出力Qおよび非反転出力QBが出力される。
【0026】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態に係る時間計測回路の概略構成を示すブロック図である。なお、この第4実施形態は、図1の差動発振器1の代わりに差動発振器11を用い、図1の多相化回路2として2分周器12および補間回路35を用いるようにしたものである。
【0027】
図6において、補間回路35では、位相が互いに90度ずつ異なる多相化信号P21〜P24の位相間が等間隔に補間されることにより、位相が互いに45度ずつ異なる多相化信号P31〜P38が生成される。この補間では、多相化信号P21〜P24の立ち上がりエッジの中間に新たな立ち上がりエッジが生成される。この補間は、位相の異なる多相化信号にて駆動された複数のインバータ出力を合成することにより実現することができる。この図6の構成では、図2の構成に比べて時間分解能を4倍に向上させることができる。
【0028】
図7(a)および図7(b)は、図6の補間回路35の構成方法を示すブロック図である。
図7において、4入力8出力の補間回路35は、2入力3出力の4個の補間回路31〜34を用いることで構成することができる。ここで、補間回路31には、多相化信号P21、P22が入力され、多相化信号P31〜P33が生成される。補間回路32には、多相化信号P22、P23が入力され、多相化信号P33〜P35が生成される。補間回路33には、多相化信号P23、P24が入力され、多相化信号P35〜P37が生成される。補間回路34には、多相化信号P24、P21が入力され、多相化信号P37、P38、P31が生成される。
【0029】
なお、多相化信号P33は補間回路31、32で重複して生成され、多相化信号P35は補間回路32、33で重複して生成され、多相化信号P37は補間回路33、34で重複して生成され、多相化信号P31は補間回路31、34で重複して生成される。重複して生成される多相化信号は、どれか1つを使用すればよい。
【0030】
図8(a)は、図7(a)の補間回路31の概略構成を示す回路図、図8(b)および図8(c)は、図8(a)の補間回路31の入力波形を示す図、図8(d)〜図8(f)は、図8(a)の補間回路31の出力波形を示す図である。なお、補間回路32〜34についても、補間回路31と同様に構成することができる。
図8(a)において、補間回路31には、インバータV1〜V4が設けられている。ここで、インバータV1、V2の入力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路31の入力端子IN1が設けられている。インバータV3、V4の入力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路31の入力端子IN2が設けられている。
【0031】
インバータV1の出力端子には補間回路31の出力端子OUT1が設けられている。インバータV4の出力端子には補間回路31の出力端子OUT3が設けられている。インバータV2、V3の出力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路31の出力端子OUT2が設けられている。
【0032】
そして、多相化信号P21として図8(b)の波形が入力端子IN1に入力され、多相化信号P22として図8(c)の波形が入力端子IN2に入力されたものとする。この場合、出力端子OUT1からは、図8(d)に示すように、図8(b)の波形の立ち上がりエッジEI1に応じた立ち下がりエッジEO1を持つ波形が出力される。出力端子OUT3からは、図8(f)に示すように、図8(c)の波形の立ち上がりエッジEI2に応じた立ち下がりエッジEO3を持つ波形が出力される。
【0033】
一方、出力端子OUT2からは、インバータV2、V3の出力を合成した波形が出力される。ここで、インバータV2には図8(b)の波形が入力され、インバータV3には図8(c)の波形が入力される。このため、インバータV2、V3の出力を合成した波形は、図8(e)に示すように、図8(d)の波形と図8(f)の波形とを平均した波形となり、図8(d)の波形と図8(f)の波形とを平均した波形の立ち下がりエッジEO2は、立ち下がりエッジEO1、EO3の中間になる。この時、インバータV1〜V4を構成するPチャンネル電界効果トランジスタとNチャンネル電界効果トランジスタの特性が理想的に対称であれば、立ち下がりエッジEO2は、立ち下がりエッジEO1、EO3の中央になる。
【0034】
この立ち下がりエッジEO2は、立ち下がりエッジEO1、EO3を基準として生成される。このため、立ち下がりエッジEO1、EO3が差動発振信号P11、P12の周期で規格化されていれば、立ち下がりエッジEO2も差動発振信号P11、P12の周期で規格化されるようになり、立ち下がりエッジEO2の時刻が差動発振信号P11、P12の周期を基準としていくつになるかを計算する規格化処理が不要となる。
【0035】
図9(a)は、図6の多相化回路の概略構成を示すブロック図、図9(b)は、図9(a)の多相化回路の出力波形を示すタイミングチャート、図9(c)は、図9(b)の出力波形をジョンソンデータで表現した図、図9(d)は、図9(b)の出力波形をバイナリーデータで表現した図である。
図9において、補間回路35からは、位相が互いに45度ずつ異なる多相化信号P31〜P38が出力される。
ここで、図1の差動発振器1の代わりに差動発振器11を用い、図1の多相化回路2として2分周器12および補間回路35を用いた場合、基準信号RCKの立ち上がりエッジが−1/8[/Tvco]と0[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘00001111’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘111’というバイナリーデータに変換される。
【0036】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが0[/Tvco]と1/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘10000111’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘000’というバイナリーデータに変換される。
【0037】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが1/8[/Tvco]と2/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘11000011’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘001’というバイナリーデータに変換される。
【0038】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが2/8[/Tvco]と3/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘11100001’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘010’というバイナリーデータに変換される。
【0039】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが3/8[/Tvco]と4/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘11110000’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘011’というバイナリーデータに変換される。
【0040】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが4/8[/Tvco]と5/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘01111000’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘100’というバイナリーデータに変換される。
【0041】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが5/8[/Tvco]と6/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘00111100’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘101’というバイナリーデータに変換される。
【0042】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが6/8[/Tvco]と7/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘00011110’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘110’というバイナリーデータに変換される。
【0043】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが7/8[/Tvco]と1[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘00001111’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘111’というバイナリーデータに変換される。
【0044】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが1[/Tvco]と9/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘10000111’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘000’というバイナリーデータに変換される。
【0045】
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態に係る時間計測回路の概略構成を示すブロック図である。
図10において、時間計測回路45には、2分周器12、補間回路35、41、42、フリップフロップ43およびデコーダ44が設けられている。
【0046】
補間回路41は、8入力16出力で構成され、位相が互いに45度ずつ異なる多相化信号P31〜P38から位相が互いに22.5度ずつ異なる多相化信号P41〜P56が生成される。
【0047】
補間回路42は、16入力32出力で構成され、位相が互いに22.5度ずつ異なる多相化信号P41〜P56から位相が互いに11.25度ずつ異なる多相化信号P61〜P92が生成される。
【0048】
フリップフロップ43は、図1のNを32にした時のフリップフロップF1〜F32に対応させることができる。デコーダ44は図1のデコーダ3に対応させることができる。
【0049】
この図10の構成では、図2の構成に比べて時間分解能を16倍に向上させることができる。時間分解能をさらに向上させるには、X(Xは2B、ただしBは2以上の整数)の入力2X出力の補間回路の後段に2X入力4X出力の補間回路を順次接続すればよい。
【0050】
(第6実施形態)
図11は、第6実施形態に係る時間計測回路の動作方法の一例を示すブロック図である。
図11において、時間計測回路45´には、図10の時間計測回路45の構成に予測回路46およびスイッチング制御部47が追加されている。また、時間計測回路45´には、図10の補間回路35、41、42の代わりに補間回路35´、41´、42´が設けられている。
【0051】
補間回路35´、41´、42´では、図8のインバータV1〜V4の代わりにスイッチ付きインバータが用いられる。このスイッチは、補間回路35´、41´、42´から出力される多相化信号P31〜P38、P41〜P56、P61〜P92の各相ごとにインバータ出力を停止させることができる。
【0052】
そして、予測回路46では、今回の基準信号RCKと多相化信号P61〜P92の比較結果に基づいて、次回の基準信号RCKの位相が予測される。そして、スイッチング制御部47では、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の前後の位相を生成する多相化信号P31〜P38、P41〜P56、P61〜P92のみが生成されるようにスイッチがオンオフ制御されることで、それ以外の多相化信号P31〜P38、P41〜P56、P61〜P92を生成するインバータの出力が停止される。
【0053】
例えば、予測回路46にて次回の基準信号RCKの位相が多相化信号P84、P85の立ち上がりエッジの間にくると予測された場合、多相化信号P35、P36、P52、P53、P84、P85を生成するインバータのみが動作され、それ以外の多相化信号を生成するインバータが停止される。
【0054】
これにより、次回の基準信号RCKとの位相のずれを検出するために不要なインバータを停止させることができ、時間計測回路45´の低消費電力化を図ることができる。
【0055】
(第7実施形態)
図12は、第7実施形態に係る図10の時間計測回路の動作方法の一例を示すブロック図である。
図12において、図11の例では、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の前後の位相を生成する多相化信号のみを生成させる方法について説明したが、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の周辺の位相を生成する多相化信号のみを生成させるようにしてもよい。
【0056】
例えば、予測回路46にて次回の基準信号RCKの位相が多相化信号P84、P85の立ち上がりエッジの間にくると予測された場合、多相化信号P35〜P38、P50〜P55、P80〜P89を生成するインバータのみを動作させ、それ以外の多相化信号を生成するインバータを停止させるようにしてもよい。
【0057】
これにより、全てのインバータを動作させる場合に比べて低消費電力化を図ることが可能となるとともに、雑音などの影響により予測回路46による予測が外れた場合においても、インバータを動作させている範囲内の誤差であれば、雑音の発生を防止することができる。
【0058】
(第8実施形態)
図13は、第8実施形態に係る図10の時間計測回路の動作方法の一例を示すブロック図である。
図13において、図12の例では、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の周辺の位相を生成する多相化信号のみを生成させる方法について説明したが、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の前後および上位ビットの位相を生成する多相化信号のみを生成させるようにしてもよい。
【0059】
例えば、予測回路46にて次回の基準信号RCKの位相が多相化信号P84、P85の立ち上がりエッジの間にくると予測された場合、多相化信号P31〜P38、P41、P43、P45、P47、P49、P51〜P53、P55、P61、P65、P69、P73、P77、P81、P84、P85、P89を生成するインバータのみを動作させ、それ以外の多相化信号を生成するインバータを停止させることで、3ビット分の精度を確保するようにしてもよい。
【0060】
これにより、全てのインバータを動作させる場合に比べて低消費電力化を図ることが可能となるとともに、雑音などの影響により予測回路46による予測が外れた場合においても、上位ビット分の精度は確保することができる。
【0061】
なお、図13の例では、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の前後および上位ビットの位相を生成する多相化信号のみを生成させる方法について説明したが、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の周辺および上位ビットの位相を生成する多相化信号のみを生成させるようにしてもよい。
【0062】
図14は、図11〜図13の時間計測回路に適用されるスイッチ付インバータ回路の一例を示す回路図である。
図14において、インバータには、電界効果トランジスタM11、M12が設けられている。そして、電界効果トランジスタM11のソースは電源電位VDDに接続され、電界効果トランジスタM11のドレインは電界効果トランジスタM12のドレインに接続され、電界効果トランジスタM11のソースは接地されている。
【0063】
また、電界効果トランジスタM11のゲートはスイッチSW3を介して電源電位VDDに接続され、電界効果トランジスタM12のゲートはスイッチSW4を介して接地されている。
【0064】
また、電界効果トランジスタM11のゲートとスイッチSW3との接続点にはスイッチSW1が接続され、電界効果トランジスタM12のゲートとスイッチSW4との接続点にはスイッチSW2が接続されている。
【0065】
そして、インバータ入力INに対してインバータ出力OUTを有効にする場合、スイッチSW1、SW2をオンするとともに、スイッチSW3、SW4をオフする。インバータ出力OUTを停止させる場合、スイッチSW1、SW2をオフするとともに、スイッチSW3、SW4をオンする。
【0066】
図15は、図11〜図13の時間計測回路に適用されるスイッチ付インバータ回路のその他の例を示す回路図である。
図15において、電界効果トランジスタM11のソースはスイッチSW5を介して電源電位VDDに接続され、電界効果トランジスタM12のソースはスイッチSW6を介して接地されている。
【0067】
そして、インバータ入力INに対してインバータ出力OUTを有効にする場合、スイッチSW5、SW6をオンする。インバータ出力OUTを停止させる場合、スイッチSW5、SW6をオフする。
【0068】
(第9実施形態)
図16(a)は、第9実施形態に係る時間計測回路に適用される補間回路の概略構成を示すブロック図、図16(b)〜図16(e)は、図16(a)の補間回路の出力波形を示す図である。
【0069】
図16において、この補間回路には、インバータV11〜V16が設けられている。なお、インバータV12、V15の駆動力はインバータV13、V14の駆動力の2倍、インバータV11、V16の駆動力はインバータV13、V14の駆動力の3倍に設定されている。
【0070】
ここで、インバータV11〜V13の入力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路の入力端子IN11が設けられている。インバータV14〜V16の入力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路の入力端子IN12が設けられている。
【0071】
インバータV11の出力端子には補間回路の出力端子OUT11が設けられている。インバータV16の出力端子には補間回路の出力端子OUT14が設けられている。インバータV12、V14の出力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路の出力端子OUT12が設けられている。インバータV13、V15の出力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路の出力端子OUT13が設けられている。
【0072】
そして、図8(b)の波形が入力端子IN11に入力され、図8(c)の波形が入力端子IN12に入力されたものとする。この場合、出力端子OUT11からは、図16(b)に示すように、図8(b)の波形の立ち上がりエッジEI1に応じた立ち下がりエッジEO11を持つ波形が出力される。出力端子OUT14からは、図16(e)に示すように、図8(c)の波形の立ち上がりエッジEI2に応じた立ち下がりエッジEO14を持つ波形が出力される。
【0073】
一方、出力端子OUT12からは、インバータV12、V14の出力を合成した波形が出力される。ここで、インバータV12には図8(b)の波形が入力され、インバータV14には図8(c)の波形が入力される。また、インバータV12の駆動力はインバータV14の駆動力の2倍である。このため、インバータV12、V14の出力を合成した波形は、図16(c)に示すように、図8(d)の波形と図8(f)の波形とを2:1の割合で平均した波形となり、図8(d)の波形と図8(f)の波形とを2:1の割合で平均した波形の立ち下がりエッジEO12は、立ち下がりエッジEO11、EO14の間を3等分する最初のエッジになる。
【0074】
また、出力端子OUT13からは、インバータV13、V15の出力を合成した波形が出力される。ここで、インバータV13には図8(b)の波形が入力され、インバータV15には図8(c)の波形が入力される。また、インバータV15の駆動力はインバータV13の駆動力の2倍である。このため、インバータV13、V15の出力を合成した波形は、図16(d)に示すように、図8(d)の波形と図8(f)の波形とを1:2の割合で平均した波形となり、図8(d)の波形と図8(f)の波形とを1:2の割合で平均した波形の立ち下がりエッジEO13は、立ち下がりエッジEO11、EO14の間を3等分する立ち下がりエッジEO12の次のエッジになる。
【0075】
この立ち下がりエッジEO12、EO13は、立ち下がりエッジEO11、EO14を基準として生成される。このため、立ち下がりエッジEO11、EO14が差動発振信号P11、P12の周期で規格化されていれば、立ち下がりエッジEO12、EO13も差動発振信号P11、P12の周期で規格化されるようになり、立ち下がりエッジEO12、EO13の時刻が差動発振信号P11、P12の周期を基準としていくつになるかを計算する規格化処理が不要となる。
【0076】
なお、図16(a)の例では、駆動力が1倍と2倍と3倍の6個のインバータV11〜V16を用いることにより、2入力4出力の補間回路を構成する方法について説明したが、駆動力の異なるインバータの出力の組み合わせを変えることにより、多相化信号の位相間にK(Kは3以上の整数)個以上のエッジを生成することができる。
【0077】
例えば、立ち下がりエッジEO12と立ち下がりエッジEO13の中央に立ち下がりエッジを形成するには、インバータV13、V14の接続点から出力を取り出せばよい。また、立ち下がりエッジEO11と立ち下がりエッジEO12の中央に立ち下がりエッジを形成するには、インバータV11、V12、V14の接続点から出力を取り出せばよい。また、立ち下がりエッジEO13と立ち下がりエッジEO14の中央に立ち下がりエッジを形成するには、インバータV13、V15、V16の接続点から出力を取り出せばよい。
【0078】
(第10実施形態)
図17は、第10実施形態に係るデジタル位相同期回路の概略構成を示すブロック図である。
図17において、デジタル位相同期回路には、時間計測回路51、ループフィルタ52およびデジタル制御発振器53が設けられ、デジタル制御発振器53には差動発振器54が設けられている。
【0079】
なお、時間計測回路51としては、例えば、時間計測回路4、45、45´の構成を用いることができる。差動発振器54は、例えば、差動発振器1、11として用いることができる。
【0080】
そして、時間計測回路51において、差動発振器54の差動発振信号CK、CKBと基準信号RCKとの位相のずれが検出され、その検出結果がループフィルタ52を介してデジタル制御発振器53に入力される。デジタル制御発振器53において、差動発振器54の差動発振信号CK、CKBと基準信号RCKとの位相のずれが小さくなるように差動発振器54の発振周波数が制御される。
【0081】
例えば、差動発振器54および時間計測回路51の多相化回路2として図9の構成が用いられている場合、基準信号RCKの立ち上がりエッジが2/8[/Tvco]と3/8[/Tvco]との間にあると、‘010’というバイナリーデータが時間計測回路51から出力される。そして、デジタル制御発振器53において、‘010’というバイナリーデータに基づいて差動発振器54の発振周波数が制御されることにより、差動発振器54の差動発振信号CK、CKBと基準信号RCKとの位相のずれが小さくされる。
【0082】
なお、このデジタル位相同期回路は、例えば、無線通信用LSIの局部発振信号を生成するために用いることができる。そして、基準信号RCKの周波数が40MHzである場合に、差動発振信号CK、CKBの発振周波数を2.42GHzに制御するものとすると、基準信号RCKの周期の間に差動発振信号CK、CKBの周期が平均して60.5サイクル分だけ入るように制御される。
【0083】
すなわち、時間計測回路51において、差動発振信号CK、CKBの60.5サイクルごとの位相と基準信号RCKの1サイクルの位相の差が検出される。そして、デジタル制御発振器53において、それらの位相の差が0になるように差動発振信号CK、CKBの発振周波数が制御される。
【0084】
ここで、例えば、mWiMAXの局部発振信号を生成するためにデジタル位相同期回路を用いる場合、PLLループ帯域域内の位相雑音は−100dBc/Hz以下が要求される。基準信号RCKの周波数が40MHzである場合、この位相雑音に対する要求を満たすには、0.03[/Tvco]以下の時間分解能(遅延時間にすると、12psec以下)が要求される。
【0085】
0.03[/Tvco]以下の時間分解能は、現在の無線通信用LSIで用いられる世代の製造プロセスで作製したインバータの遅延時間より小さいため、遅延素子の遅延時間を単位として発振器の出力信号と基準信号との位相のずれを計算する時間計測回路では達成できない。
【0086】
これに対して、例えば、時間計測回路51として図10の時間計測回路45を用いれば、0.03[/Tvco]以下の時間分解能を達成することができ、mWiMAXの仕様を満たすデジタル位相同期回路を作製することができる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1、11、54 差動発振器、2 多相化回路、12 2分周器、21、22 ラッチ回路、R1、R2 抵抗、M1〜M6、M11、M12 電界効果トランジスタ、G 電流源、31〜35、41、42 補間回路、V1〜V4、V11〜V16 インバータ、F1〜FN、43 フリップフロップ、3、44 デコーダ、46 予測回路、47 スイッチング制御部、SW1〜SW6 スイッチ、4、45、51 時間計測回路、52 ループフィルタ、53 デジタル制御発振器
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は時間計測回路およびデジタル位相同期回路に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル位相同期回路(ADPLL:All Digital Phase−Locked−loop)は、CMOSプロセスで形成することができるため、微細化が進むに従ってチップサイズを小さくできるとともに、高性能化および低電圧動作化を達成することができる。
【0003】
デジタル位相同期回路では、発振器の出力信号と基準信号との位相のずれを検出するため、時間計測回路(TDC:Time to Digital Converter)が用いられる。
【0004】
従来の時間計測回路では、発振器の出力信号と基準信号との位相のずれが遅延素子の遅延時間を単位として計算される。このため、従来の時間計測回路では、その時間分解能が1段分の遅延素子の遅延時間で制限される上に、1段分の遅延素子の遅延時間が発振器の周期を基準としていくつになるかを計算する規格化処理が必要となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US7564284
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの実施形態の目的は、発振器の周期を基準として発振器の出力信号と基準信号との位相のずれを検出することが可能な時間計測回路およびデジタル位相同期回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の時間計測回路によれば、多相化回路と、フリップフロップと、デコーダとが設けられている。多相化回路は、差動発振信号をM(Mは2以上の整数)分周することにより、位相が互いに180/M度ずつ異なる多相化信号を生成する。フリップフロップは、基準信号の入力に同期して前記多相化信号をそれぞれ取り込む。デコーダは、前記フリップフロップの出力信号をデコードする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1実施形態に係る時間計測回路の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、第2実施形態に係る時間計測回路に適用される多相化回路の概略構成を示すブロック図、図2(b)は、図2(a)の差動発振器1の出力波形を示すタイミングチャートである。
【図3】図3(a)は、第3実施形態に係る時間計測回路に適用される多相化回路の概略構成を示すブロック図、図3(b)は、図3(a)の多相化回路の出力波形を示すタイミングチャートである。
【図4】図4は、図3の2分周器12の構成例を示すブロック図である。
【図5】図5は、図4のラッチ回路21の構成例を示す回路図である。
【図6】図6は、第4実施形態に係る時間計測回路に適用される多相化回路の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7(a)および図7(b)は、図6の補間回路35の構成方法を示すブロック図である。
【図8】図8(a)は、図7(a)の補間回路31の概略構成を示す回路図、図8(b)および図8(c)は、図8(a)の補間回路31の入力波形を示す図、図8(d)〜図8(f)は、図8(a)の補間回路31の出力波形を示す図である。
【図9】図9(a)は、図6の多相化回路の概略構成を示すブロック図、図9(b)は、図9(a)の多相化回路の出力波形を示すタイミングチャート、図9(c)は、図9(b)の出力波形をジョンソンデータで表現した図、図9(d)は、図9(b)の出力波形をバイナリーデータで表現した図である。
【図10】図10は、第5実施形態に係る時間計測回路の概略構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、第6実施形態に係る時間計測回路の動作方法の一例を示すブロック図である。
【図12】図12は、第7実施形態に係る図10の時間計測回路の動作方法の一例を示すブロック図である。
【図13】図13は、第8実施形態に係る図10の時間計測回路の動作方法の一例を示すブロック図である。
【図14】図14は、図11〜図13の時間計測回路に適用されるスイッチ付インバータ回路の一例を示す回路図である。
【図15】図15は、図11〜図13の時間計測回路に適用されるスイッチ付インバータ回路のその他の例を示す回路図である。
【図16】図16(a)は、第9実施形態に係る時間計測回路に適用される補間回路の概略構成を示すブロック図、図16(b)〜図16(e)は、図16(a)の補間回路の出力波形を示す図である。
【図17】図17は、第10実施形態に係るデジタル位相同期回路の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る時間計測回路について図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(第1実施形態)
【0011】
図1は、第1実施形態に係る時間計測回路の概略構成を示すブロック図である。
図1において、時間計測回路4には、多相化回路2と、N(Nは2以上の整数)個のフリップフロップF1〜FNと、デコーダ3とが設けられている。そして、時間計測回路4は、差動発振器1に接続されている。
【0012】
そして、差動発振信号P1、P2が差動発振器1にて生成され、多相化回路2に出力される。そして、多相化回路2において、差動発振信号P1、P2がM(Mは2以上の整数)分周されることにより、位相が互いに180/M度ずつ異なる多相化信号S1〜SNが生成され、フリップフロップF1〜FNにそれぞれ出力される。そして、フリップフロップF1〜FNにおいて、基準信号RCKの立ち上がりエッジに同期して多相化信号S1〜SNがそれぞれ取り込まれることにより、出力信号Q1〜QNがデコーダ3に出力される。そして、デコーダ3において、フリップフロップF1〜FNの出力信号Q1〜QNがデコードされることにより、デジタルコードが生成される。なお、デコーダ3では、ジョンソンデータとして出力される出力信号Q1〜QNをバイナリーデータに変換することができる。
【0013】
ここで、差動発振信号P1、P2をM分周して多相化信号S1〜SNを生成することにより、差動発振信号P1、P2の周期を基準として多相化信号S1〜SNと基準信号RCKとの位相のずれを検出することが可能となる。このため、これらの信号の位相のずれの時間分解能が遅延素子の遅延時間で制限されることがなくなり、時間分解能を向上させることが可能となるとともに、多相化信号S1〜SNの立ち上がり時刻が差動発振信号P1、P2の周期を基準としていくつになるかを計算する規格化処理が不要となる。
【0014】
(第2実施形態)
図2(a)は、第2実施形態に係る時間計測回路に適用される多相化回路の概略構成を示すブロック図、図2(b)は、図2(a)の差動発振器1の出力波形を示すタイミングチャートである。なお、図2(b)では、差動発振信号P1、P2の周期を基準信号RCKの周期Tvcoで規格化した値で示した。
【0015】
なお、この第2実施形態は、図1の多相化回路2の多相化信号S1、S2として差動発振信号P1、P2を用いるようにしたものである。
図2(a)および図2(b)において、差動発振器1では、互いに位相が180度だけ異なる差動発振信号P1、P2が生成される。このため、差動発振信号P1、P2は、0[/Tvco]と1/2[/Tvco]で立ち上がりエッジを持つ多相化信号S1、S2として利用することができる。
【0016】
この多相化信号S1、S2は、差動発振信号P1、P2の周期を基準としているため、多相化信号S1、S2の立ち上がり時刻が差動発振信号P1、P2の周期を基準としていくつになるかを計算する規格化処理が不要となる。
【0017】
(第3実施形態)
図3(a)は、第3実施形態に係る時間計測回路に適用される多相化回路の概略構成を示すブロック図、図3(b)は、図3(a)の多相化回路の出力波形を示すタイミングチャートである。なお、この第3実施形態は、図1の差動発振器1の代わりに差動発振器11を用い、図1の多相化回路2として2分周器12を用いるようにしたものである。
図3(a)において、差動発振器11の発振周波数は差動発振器1の発振周波数の2倍に設定される。このため、差動発振器11では、差動発振信号P1、P2の周波数の2倍の差動発振信号P11、P12が生成される。そして、2分周器12には差動発振信号P11、P12が入力される。
【0018】
そして、2分周器12において、周期が差動発振信号P11、P12の周期の1/2で位相が互いに90度ずつ異なる多相化信号P21〜P24が生成される。ここで、多相化信号P21〜P24の90度の位相差は1/4[/Tvco]に対応するので、多相化信号P21〜P24は、0[/Tvco]、1/4[/Tvco]、2/4[/Tvco]および3/4[/Tvco]で立ち上がりエッジを持つようにできる。
【0019】
この多相化信号P21〜P24は、差動発振信号P11、P12の周期を基準としているため、多相化信号P21〜P24の立ち上がり時刻が差動発振信号P11、P12の周期を基準としていくつになるかを計算する規格化処理が不要となる。また、図3の構成では、図2の構成に比べて時間分解能を2倍に向上させることができる。
【0020】
図4は、図3の2分周器12の構成例を示すブロック図である。
図4において、2分周器12には、ラッチ回路21、22が設けられている。ここで、ラッチ回路21の非反転出力Qはラッチ回路22の非反転入力Dに入力され、ラッチ回路21の反転出力QBはラッチ回路22の反転入力DBに入力される。一方、ラッチ回路22の非反転出力Qはラッチ回路21の反転入力DBに入力され、ラッチ回路22の反転出力QBはラッチ回路21の非反転入力Dに入力される。
【0021】
そして、差動発振信号P11、P12の立ち上がりエッジに同期してラッチ回路21の出力がラッチ回路22に取り込まれ、ラッチ回路22の出力がラッチ回路21に取り込まれることで、ラッチ回路21から多相化信号P21、P23が出力され、ラッチ回路22から多相化信号P22、P24が出力される。
【0022】
図5は、図4のラッチ回路21の構成例を示す回路図である。なお、ラッチ回路22もラッチ回路21と同様に構成することができる。
図5において、ラッチ回路21には、抵抗R1、R2、電界効果トランジスタM1〜M6および電流源Gが設けられている。そして、電界効果トランジスタM1のドレインは抵抗R1を介して電源電位VDDに接続され、電界効果トランジスタM2のドレインは抵抗R2を介して電源電位VDDに接続されている。電界効果トランジスタM1、M2のソースは電界効果トランジスタM5のドレインに接続されている。
【0023】
電界効果トランジスタM3のドレインは、電界効果トランジスタM2のドレインおよび電界効果トランジスタM4のゲートに接続され、電界効果トランジスタM4のドレインは、電界効果トランジスタM1のドレインおよび電界効果トランジスタM3のゲートに接続されている。電界効果トランジスタM3、M4のソースは電界効果トランジスタM6のドレインに接続されている。電界効果トランジスタM5、M6のソースは電流源Gを介して接地されている。
【0024】
そして、電界効果トランジスタM1のゲートには非反転入力Dが入力され、電界効果トランジスタM2のゲートには反転入力DBが入力される。電界効果トランジスタM5のゲートには差動発振信号P11が入力され、電界効果トランジスタM6のゲートには差動発振信号P12が入力される。また、電界効果トランジスタM3のドレインからは反転出力Qが出力され、電界効果トランジスタM4のドレインからは非反転出力QBが出力される。
【0025】
差動発振信号P11が立ち上がると、反転入力DBおよび非反転入力Dのレベルに応じて電界効果トランジスタM1、M2のいずれか一方がオンする。次に、差動発振信号P12が立ち上がると、電界効果トランジスタM1、M2のオン状態に応じて、電界効果トランジスタM3、M4のいずれか一方がオンし、その状態が電界効果トランジスタM3、M4に保持されることで、反転出力Qおよび非反転出力QBが出力される。
【0026】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態に係る時間計測回路の概略構成を示すブロック図である。なお、この第4実施形態は、図1の差動発振器1の代わりに差動発振器11を用い、図1の多相化回路2として2分周器12および補間回路35を用いるようにしたものである。
【0027】
図6において、補間回路35では、位相が互いに90度ずつ異なる多相化信号P21〜P24の位相間が等間隔に補間されることにより、位相が互いに45度ずつ異なる多相化信号P31〜P38が生成される。この補間では、多相化信号P21〜P24の立ち上がりエッジの中間に新たな立ち上がりエッジが生成される。この補間は、位相の異なる多相化信号にて駆動された複数のインバータ出力を合成することにより実現することができる。この図6の構成では、図2の構成に比べて時間分解能を4倍に向上させることができる。
【0028】
図7(a)および図7(b)は、図6の補間回路35の構成方法を示すブロック図である。
図7において、4入力8出力の補間回路35は、2入力3出力の4個の補間回路31〜34を用いることで構成することができる。ここで、補間回路31には、多相化信号P21、P22が入力され、多相化信号P31〜P33が生成される。補間回路32には、多相化信号P22、P23が入力され、多相化信号P33〜P35が生成される。補間回路33には、多相化信号P23、P24が入力され、多相化信号P35〜P37が生成される。補間回路34には、多相化信号P24、P21が入力され、多相化信号P37、P38、P31が生成される。
【0029】
なお、多相化信号P33は補間回路31、32で重複して生成され、多相化信号P35は補間回路32、33で重複して生成され、多相化信号P37は補間回路33、34で重複して生成され、多相化信号P31は補間回路31、34で重複して生成される。重複して生成される多相化信号は、どれか1つを使用すればよい。
【0030】
図8(a)は、図7(a)の補間回路31の概略構成を示す回路図、図8(b)および図8(c)は、図8(a)の補間回路31の入力波形を示す図、図8(d)〜図8(f)は、図8(a)の補間回路31の出力波形を示す図である。なお、補間回路32〜34についても、補間回路31と同様に構成することができる。
図8(a)において、補間回路31には、インバータV1〜V4が設けられている。ここで、インバータV1、V2の入力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路31の入力端子IN1が設けられている。インバータV3、V4の入力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路31の入力端子IN2が設けられている。
【0031】
インバータV1の出力端子には補間回路31の出力端子OUT1が設けられている。インバータV4の出力端子には補間回路31の出力端子OUT3が設けられている。インバータV2、V3の出力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路31の出力端子OUT2が設けられている。
【0032】
そして、多相化信号P21として図8(b)の波形が入力端子IN1に入力され、多相化信号P22として図8(c)の波形が入力端子IN2に入力されたものとする。この場合、出力端子OUT1からは、図8(d)に示すように、図8(b)の波形の立ち上がりエッジEI1に応じた立ち下がりエッジEO1を持つ波形が出力される。出力端子OUT3からは、図8(f)に示すように、図8(c)の波形の立ち上がりエッジEI2に応じた立ち下がりエッジEO3を持つ波形が出力される。
【0033】
一方、出力端子OUT2からは、インバータV2、V3の出力を合成した波形が出力される。ここで、インバータV2には図8(b)の波形が入力され、インバータV3には図8(c)の波形が入力される。このため、インバータV2、V3の出力を合成した波形は、図8(e)に示すように、図8(d)の波形と図8(f)の波形とを平均した波形となり、図8(d)の波形と図8(f)の波形とを平均した波形の立ち下がりエッジEO2は、立ち下がりエッジEO1、EO3の中間になる。この時、インバータV1〜V4を構成するPチャンネル電界効果トランジスタとNチャンネル電界効果トランジスタの特性が理想的に対称であれば、立ち下がりエッジEO2は、立ち下がりエッジEO1、EO3の中央になる。
【0034】
この立ち下がりエッジEO2は、立ち下がりエッジEO1、EO3を基準として生成される。このため、立ち下がりエッジEO1、EO3が差動発振信号P11、P12の周期で規格化されていれば、立ち下がりエッジEO2も差動発振信号P11、P12の周期で規格化されるようになり、立ち下がりエッジEO2の時刻が差動発振信号P11、P12の周期を基準としていくつになるかを計算する規格化処理が不要となる。
【0035】
図9(a)は、図6の多相化回路の概略構成を示すブロック図、図9(b)は、図9(a)の多相化回路の出力波形を示すタイミングチャート、図9(c)は、図9(b)の出力波形をジョンソンデータで表現した図、図9(d)は、図9(b)の出力波形をバイナリーデータで表現した図である。
図9において、補間回路35からは、位相が互いに45度ずつ異なる多相化信号P31〜P38が出力される。
ここで、図1の差動発振器1の代わりに差動発振器11を用い、図1の多相化回路2として2分周器12および補間回路35を用いた場合、基準信号RCKの立ち上がりエッジが−1/8[/Tvco]と0[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘00001111’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘111’というバイナリーデータに変換される。
【0036】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが0[/Tvco]と1/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘10000111’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘000’というバイナリーデータに変換される。
【0037】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが1/8[/Tvco]と2/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘11000011’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘001’というバイナリーデータに変換される。
【0038】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが2/8[/Tvco]と3/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘11100001’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘010’というバイナリーデータに変換される。
【0039】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが3/8[/Tvco]と4/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘11110000’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘011’というバイナリーデータに変換される。
【0040】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが4/8[/Tvco]と5/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘01111000’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘100’というバイナリーデータに変換される。
【0041】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが5/8[/Tvco]と6/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘00111100’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘101’というバイナリーデータに変換される。
【0042】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが6/8[/Tvco]と7/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘00011110’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘110’というバイナリーデータに変換される。
【0043】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが7/8[/Tvco]と1[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘00001111’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘111’というバイナリーデータに変換される。
【0044】
基準信号RCKの立ち上がりエッジが1[/Tvco]と9/8[/Tvco]との間にあると、出力信号Q1〜Q8として‘10000111’というジョンソンデータがデコーダ3に出力され、‘000’というバイナリーデータに変換される。
【0045】
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態に係る時間計測回路の概略構成を示すブロック図である。
図10において、時間計測回路45には、2分周器12、補間回路35、41、42、フリップフロップ43およびデコーダ44が設けられている。
【0046】
補間回路41は、8入力16出力で構成され、位相が互いに45度ずつ異なる多相化信号P31〜P38から位相が互いに22.5度ずつ異なる多相化信号P41〜P56が生成される。
【0047】
補間回路42は、16入力32出力で構成され、位相が互いに22.5度ずつ異なる多相化信号P41〜P56から位相が互いに11.25度ずつ異なる多相化信号P61〜P92が生成される。
【0048】
フリップフロップ43は、図1のNを32にした時のフリップフロップF1〜F32に対応させることができる。デコーダ44は図1のデコーダ3に対応させることができる。
【0049】
この図10の構成では、図2の構成に比べて時間分解能を16倍に向上させることができる。時間分解能をさらに向上させるには、X(Xは2B、ただしBは2以上の整数)の入力2X出力の補間回路の後段に2X入力4X出力の補間回路を順次接続すればよい。
【0050】
(第6実施形態)
図11は、第6実施形態に係る時間計測回路の動作方法の一例を示すブロック図である。
図11において、時間計測回路45´には、図10の時間計測回路45の構成に予測回路46およびスイッチング制御部47が追加されている。また、時間計測回路45´には、図10の補間回路35、41、42の代わりに補間回路35´、41´、42´が設けられている。
【0051】
補間回路35´、41´、42´では、図8のインバータV1〜V4の代わりにスイッチ付きインバータが用いられる。このスイッチは、補間回路35´、41´、42´から出力される多相化信号P31〜P38、P41〜P56、P61〜P92の各相ごとにインバータ出力を停止させることができる。
【0052】
そして、予測回路46では、今回の基準信号RCKと多相化信号P61〜P92の比較結果に基づいて、次回の基準信号RCKの位相が予測される。そして、スイッチング制御部47では、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の前後の位相を生成する多相化信号P31〜P38、P41〜P56、P61〜P92のみが生成されるようにスイッチがオンオフ制御されることで、それ以外の多相化信号P31〜P38、P41〜P56、P61〜P92を生成するインバータの出力が停止される。
【0053】
例えば、予測回路46にて次回の基準信号RCKの位相が多相化信号P84、P85の立ち上がりエッジの間にくると予測された場合、多相化信号P35、P36、P52、P53、P84、P85を生成するインバータのみが動作され、それ以外の多相化信号を生成するインバータが停止される。
【0054】
これにより、次回の基準信号RCKとの位相のずれを検出するために不要なインバータを停止させることができ、時間計測回路45´の低消費電力化を図ることができる。
【0055】
(第7実施形態)
図12は、第7実施形態に係る図10の時間計測回路の動作方法の一例を示すブロック図である。
図12において、図11の例では、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の前後の位相を生成する多相化信号のみを生成させる方法について説明したが、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の周辺の位相を生成する多相化信号のみを生成させるようにしてもよい。
【0056】
例えば、予測回路46にて次回の基準信号RCKの位相が多相化信号P84、P85の立ち上がりエッジの間にくると予測された場合、多相化信号P35〜P38、P50〜P55、P80〜P89を生成するインバータのみを動作させ、それ以外の多相化信号を生成するインバータを停止させるようにしてもよい。
【0057】
これにより、全てのインバータを動作させる場合に比べて低消費電力化を図ることが可能となるとともに、雑音などの影響により予測回路46による予測が外れた場合においても、インバータを動作させている範囲内の誤差であれば、雑音の発生を防止することができる。
【0058】
(第8実施形態)
図13は、第8実施形態に係る図10の時間計測回路の動作方法の一例を示すブロック図である。
図13において、図12の例では、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の周辺の位相を生成する多相化信号のみを生成させる方法について説明したが、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の前後および上位ビットの位相を生成する多相化信号のみを生成させるようにしてもよい。
【0059】
例えば、予測回路46にて次回の基準信号RCKの位相が多相化信号P84、P85の立ち上がりエッジの間にくると予測された場合、多相化信号P31〜P38、P41、P43、P45、P47、P49、P51〜P53、P55、P61、P65、P69、P73、P77、P81、P84、P85、P89を生成するインバータのみを動作させ、それ以外の多相化信号を生成するインバータを停止させることで、3ビット分の精度を確保するようにしてもよい。
【0060】
これにより、全てのインバータを動作させる場合に比べて低消費電力化を図ることが可能となるとともに、雑音などの影響により予測回路46による予測が外れた場合においても、上位ビット分の精度は確保することができる。
【0061】
なお、図13の例では、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の前後および上位ビットの位相を生成する多相化信号のみを生成させる方法について説明したが、予測回路46にて予測された基準信号RCKの位相の周辺および上位ビットの位相を生成する多相化信号のみを生成させるようにしてもよい。
【0062】
図14は、図11〜図13の時間計測回路に適用されるスイッチ付インバータ回路の一例を示す回路図である。
図14において、インバータには、電界効果トランジスタM11、M12が設けられている。そして、電界効果トランジスタM11のソースは電源電位VDDに接続され、電界効果トランジスタM11のドレインは電界効果トランジスタM12のドレインに接続され、電界効果トランジスタM11のソースは接地されている。
【0063】
また、電界効果トランジスタM11のゲートはスイッチSW3を介して電源電位VDDに接続され、電界効果トランジスタM12のゲートはスイッチSW4を介して接地されている。
【0064】
また、電界効果トランジスタM11のゲートとスイッチSW3との接続点にはスイッチSW1が接続され、電界効果トランジスタM12のゲートとスイッチSW4との接続点にはスイッチSW2が接続されている。
【0065】
そして、インバータ入力INに対してインバータ出力OUTを有効にする場合、スイッチSW1、SW2をオンするとともに、スイッチSW3、SW4をオフする。インバータ出力OUTを停止させる場合、スイッチSW1、SW2をオフするとともに、スイッチSW3、SW4をオンする。
【0066】
図15は、図11〜図13の時間計測回路に適用されるスイッチ付インバータ回路のその他の例を示す回路図である。
図15において、電界効果トランジスタM11のソースはスイッチSW5を介して電源電位VDDに接続され、電界効果トランジスタM12のソースはスイッチSW6を介して接地されている。
【0067】
そして、インバータ入力INに対してインバータ出力OUTを有効にする場合、スイッチSW5、SW6をオンする。インバータ出力OUTを停止させる場合、スイッチSW5、SW6をオフする。
【0068】
(第9実施形態)
図16(a)は、第9実施形態に係る時間計測回路に適用される補間回路の概略構成を示すブロック図、図16(b)〜図16(e)は、図16(a)の補間回路の出力波形を示す図である。
【0069】
図16において、この補間回路には、インバータV11〜V16が設けられている。なお、インバータV12、V15の駆動力はインバータV13、V14の駆動力の2倍、インバータV11、V16の駆動力はインバータV13、V14の駆動力の3倍に設定されている。
【0070】
ここで、インバータV11〜V13の入力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路の入力端子IN11が設けられている。インバータV14〜V16の入力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路の入力端子IN12が設けられている。
【0071】
インバータV11の出力端子には補間回路の出力端子OUT11が設けられている。インバータV16の出力端子には補間回路の出力端子OUT14が設けられている。インバータV12、V14の出力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路の出力端子OUT12が設けられている。インバータV13、V15の出力端子は互いに接続され、この接続点には補間回路の出力端子OUT13が設けられている。
【0072】
そして、図8(b)の波形が入力端子IN11に入力され、図8(c)の波形が入力端子IN12に入力されたものとする。この場合、出力端子OUT11からは、図16(b)に示すように、図8(b)の波形の立ち上がりエッジEI1に応じた立ち下がりエッジEO11を持つ波形が出力される。出力端子OUT14からは、図16(e)に示すように、図8(c)の波形の立ち上がりエッジEI2に応じた立ち下がりエッジEO14を持つ波形が出力される。
【0073】
一方、出力端子OUT12からは、インバータV12、V14の出力を合成した波形が出力される。ここで、インバータV12には図8(b)の波形が入力され、インバータV14には図8(c)の波形が入力される。また、インバータV12の駆動力はインバータV14の駆動力の2倍である。このため、インバータV12、V14の出力を合成した波形は、図16(c)に示すように、図8(d)の波形と図8(f)の波形とを2:1の割合で平均した波形となり、図8(d)の波形と図8(f)の波形とを2:1の割合で平均した波形の立ち下がりエッジEO12は、立ち下がりエッジEO11、EO14の間を3等分する最初のエッジになる。
【0074】
また、出力端子OUT13からは、インバータV13、V15の出力を合成した波形が出力される。ここで、インバータV13には図8(b)の波形が入力され、インバータV15には図8(c)の波形が入力される。また、インバータV15の駆動力はインバータV13の駆動力の2倍である。このため、インバータV13、V15の出力を合成した波形は、図16(d)に示すように、図8(d)の波形と図8(f)の波形とを1:2の割合で平均した波形となり、図8(d)の波形と図8(f)の波形とを1:2の割合で平均した波形の立ち下がりエッジEO13は、立ち下がりエッジEO11、EO14の間を3等分する立ち下がりエッジEO12の次のエッジになる。
【0075】
この立ち下がりエッジEO12、EO13は、立ち下がりエッジEO11、EO14を基準として生成される。このため、立ち下がりエッジEO11、EO14が差動発振信号P11、P12の周期で規格化されていれば、立ち下がりエッジEO12、EO13も差動発振信号P11、P12の周期で規格化されるようになり、立ち下がりエッジEO12、EO13の時刻が差動発振信号P11、P12の周期を基準としていくつになるかを計算する規格化処理が不要となる。
【0076】
なお、図16(a)の例では、駆動力が1倍と2倍と3倍の6個のインバータV11〜V16を用いることにより、2入力4出力の補間回路を構成する方法について説明したが、駆動力の異なるインバータの出力の組み合わせを変えることにより、多相化信号の位相間にK(Kは3以上の整数)個以上のエッジを生成することができる。
【0077】
例えば、立ち下がりエッジEO12と立ち下がりエッジEO13の中央に立ち下がりエッジを形成するには、インバータV13、V14の接続点から出力を取り出せばよい。また、立ち下がりエッジEO11と立ち下がりエッジEO12の中央に立ち下がりエッジを形成するには、インバータV11、V12、V14の接続点から出力を取り出せばよい。また、立ち下がりエッジEO13と立ち下がりエッジEO14の中央に立ち下がりエッジを形成するには、インバータV13、V15、V16の接続点から出力を取り出せばよい。
【0078】
(第10実施形態)
図17は、第10実施形態に係るデジタル位相同期回路の概略構成を示すブロック図である。
図17において、デジタル位相同期回路には、時間計測回路51、ループフィルタ52およびデジタル制御発振器53が設けられ、デジタル制御発振器53には差動発振器54が設けられている。
【0079】
なお、時間計測回路51としては、例えば、時間計測回路4、45、45´の構成を用いることができる。差動発振器54は、例えば、差動発振器1、11として用いることができる。
【0080】
そして、時間計測回路51において、差動発振器54の差動発振信号CK、CKBと基準信号RCKとの位相のずれが検出され、その検出結果がループフィルタ52を介してデジタル制御発振器53に入力される。デジタル制御発振器53において、差動発振器54の差動発振信号CK、CKBと基準信号RCKとの位相のずれが小さくなるように差動発振器54の発振周波数が制御される。
【0081】
例えば、差動発振器54および時間計測回路51の多相化回路2として図9の構成が用いられている場合、基準信号RCKの立ち上がりエッジが2/8[/Tvco]と3/8[/Tvco]との間にあると、‘010’というバイナリーデータが時間計測回路51から出力される。そして、デジタル制御発振器53において、‘010’というバイナリーデータに基づいて差動発振器54の発振周波数が制御されることにより、差動発振器54の差動発振信号CK、CKBと基準信号RCKとの位相のずれが小さくされる。
【0082】
なお、このデジタル位相同期回路は、例えば、無線通信用LSIの局部発振信号を生成するために用いることができる。そして、基準信号RCKの周波数が40MHzである場合に、差動発振信号CK、CKBの発振周波数を2.42GHzに制御するものとすると、基準信号RCKの周期の間に差動発振信号CK、CKBの周期が平均して60.5サイクル分だけ入るように制御される。
【0083】
すなわち、時間計測回路51において、差動発振信号CK、CKBの60.5サイクルごとの位相と基準信号RCKの1サイクルの位相の差が検出される。そして、デジタル制御発振器53において、それらの位相の差が0になるように差動発振信号CK、CKBの発振周波数が制御される。
【0084】
ここで、例えば、mWiMAXの局部発振信号を生成するためにデジタル位相同期回路を用いる場合、PLLループ帯域域内の位相雑音は−100dBc/Hz以下が要求される。基準信号RCKの周波数が40MHzである場合、この位相雑音に対する要求を満たすには、0.03[/Tvco]以下の時間分解能(遅延時間にすると、12psec以下)が要求される。
【0085】
0.03[/Tvco]以下の時間分解能は、現在の無線通信用LSIで用いられる世代の製造プロセスで作製したインバータの遅延時間より小さいため、遅延素子の遅延時間を単位として発振器の出力信号と基準信号との位相のずれを計算する時間計測回路では達成できない。
【0086】
これに対して、例えば、時間計測回路51として図10の時間計測回路45を用いれば、0.03[/Tvco]以下の時間分解能を達成することができ、mWiMAXの仕様を満たすデジタル位相同期回路を作製することができる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1、11、54 差動発振器、2 多相化回路、12 2分周器、21、22 ラッチ回路、R1、R2 抵抗、M1〜M6、M11、M12 電界効果トランジスタ、G 電流源、31〜35、41、42 補間回路、V1〜V4、V11〜V16 インバータ、F1〜FN、43 フリップフロップ、3、44 デコーダ、46 予測回路、47 スイッチング制御部、SW1〜SW6 スイッチ、4、45、51 時間計測回路、52 ループフィルタ、53 デジタル制御発振器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動発振信号をM(Mは2以上の整数)分周することにより、位相が互いに180/M度ずつ異なる多相化信号を生成する多相化回路と、
基準信号の入力に同期して前記多相化信号をそれぞれ取り込むフリップフロップと、
前記フリップフロップの出力信号をデコードするデコーダとを備えることを特徴とする時間計測回路。
【請求項2】
前記多相化回路は、
前記差動発振信号を2分周することにより、位相が互いに90度ずつ異なる多相化信号を生成する2分周回路と、
位相の異なる多相化信号にて駆動された複数のインバータ出力を合成することにより、前記多相化信号の位相間を等間隔に補間する補間回路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の時間計測回路。
【請求項3】
前記補間回路は、駆動力の異なるインバータの出力の組み合わせを変えることにより、前記多相化信号の位相間にK(Kは3以上の整数)個以上のエッジが生成されるように補間することを特徴とする請求項2に記載の時間計測回路。
【請求項4】
前記補間により得られた前記多相化信号の各相ごとに前記インバータ出力を停止させるスイッチと、
今回の基準信号と多相化信号との比較結果に基づいて、次回の基準信号の位相を予測する予測回路と、
前記予測回路による予測結果に基づいて前記スイッチをオンオフ制御するスイッチング制御部とを備えることを特徴とする請求項2または3に記載の時間計測回路。
【請求項5】
差動発振信号の周期を基準として生成された多相化信号に基づいて、前記差動発振信号と基準信号との位相のずれを検出する時間計測回路と、
前記差動発振信号を生成する差動発振器が設けられ、前記時間計測回路による検出結果に基づいて前記差動発振信号の発振周波数を制御するデジタル制御発振器とを備えることを特徴とするデジタル位相同期回路。
【請求項1】
差動発振信号をM(Mは2以上の整数)分周することにより、位相が互いに180/M度ずつ異なる多相化信号を生成する多相化回路と、
基準信号の入力に同期して前記多相化信号をそれぞれ取り込むフリップフロップと、
前記フリップフロップの出力信号をデコードするデコーダとを備えることを特徴とする時間計測回路。
【請求項2】
前記多相化回路は、
前記差動発振信号を2分周することにより、位相が互いに90度ずつ異なる多相化信号を生成する2分周回路と、
位相の異なる多相化信号にて駆動された複数のインバータ出力を合成することにより、前記多相化信号の位相間を等間隔に補間する補間回路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の時間計測回路。
【請求項3】
前記補間回路は、駆動力の異なるインバータの出力の組み合わせを変えることにより、前記多相化信号の位相間にK(Kは3以上の整数)個以上のエッジが生成されるように補間することを特徴とする請求項2に記載の時間計測回路。
【請求項4】
前記補間により得られた前記多相化信号の各相ごとに前記インバータ出力を停止させるスイッチと、
今回の基準信号と多相化信号との比較結果に基づいて、次回の基準信号の位相を予測する予測回路と、
前記予測回路による予測結果に基づいて前記スイッチをオンオフ制御するスイッチング制御部とを備えることを特徴とする請求項2または3に記載の時間計測回路。
【請求項5】
差動発振信号の周期を基準として生成された多相化信号に基づいて、前記差動発振信号と基準信号との位相のずれを検出する時間計測回路と、
前記差動発振信号を生成する差動発振器が設けられ、前記時間計測回路による検出結果に基づいて前記差動発振信号の発振周波数を制御するデジタル制御発振器とを備えることを特徴とするデジタル位相同期回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−60431(P2012−60431A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201873(P2010−201873)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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