説明

有機ケイ素化合物含有重合性液晶組成物

【課題】本発明の目的は支持基材との密着性に優れた液晶フィルムを得るための重合性液晶組成物を提供することであり、そしてこの重合性液晶組成物からなる配向が制御された液晶層、この重合性液晶組成物を硬化して得られる液晶フィルム、およびこのフィルムを用いた光学補償フィルムを提供することである。
【解決手段】重合性液晶化合物と1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物とを含有する重合性液晶組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ケイ素化合物を含有する重合性液晶組成物およびこれから得られる液晶フィルムに関する。更に、このフィルムを用いた光学素子および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光重合性を持つ液晶を用いた偏光板や位相差板等の、光学素子への応用が提案されている。これらの光学素子は、光学異方性を有する重合性液晶を液晶状態で重合し固定化することによって得られる。重合性液晶は、液晶状態において適切な配向制御を行った後、その配向状態を保持したまま重合させることができる。従って、液晶骨格の配向状態をホモジニアス配向、チルト配向、ホメオトロピック配向またはツイスト配向等の配向状態で固定化することにより、種々の光学異方性を有する重合体を得ることができる。以下において、上記の配向状態を示すことを、簡略化して「ホモジニアス配向を有する」、「チルト配向を有する」、「ホメオトロピック配向を有する」、または「ツイスト配向を有する」と記すことがある。
【0003】
ホモジニアス配向を有する重合体は、例えば、1/2波長板、1/4波長板、または、他の光学機能を有するフィルムと組み合わせて使用できる。チルト配向を有する重合体は、例えば、TN(Twisted Nematic)モードにおける視野角補償板に応用できる。ホメオトロピック配向を有する重合体は、例えば、他の光学機能を有するフィルムと組み合わせることにより、偏光板の視野角特性を改善することができる。ホメオトロピック配向を有する重合体は、光軸の方向がn方向にあり、光軸方向の屈折率がその直交する方向の屈折率より大きいため、屈折率楕円体では、ポジティブC−プレートに分類される。このポジティブC−プレートは、他の光学機能を有するフィルムと組み合わせることによって、水平配向した液晶モードいわゆるIPS(In-Plane Switching)モード等の光学補償、例えば偏光板の視野角特性の改善用に応用できる。
【0004】
ツイスト配向を有する重合体、つまり、正の複屈折を有する重合性液晶分子を主体としたコレステリック液晶の重合体は、螺旋のピッチ(P)によって種々の光学素子に応用できる。可視光を対象とした場合、Pが波長より十分に大きい場合は、例えば、旋光子の機能を用いてヘッドアップディスプレイやプロジェクターに応用すること、または複屈折の機能を用いてSTN(Super Twisted Nematic)モードにおける光学補償に応用することができる。Pが波長と同程度の場合、選択反射を利用した装飾部材などの意匠分野、偽造防止技術、液晶表示素子に用いるカラーフィルターあるいは輝度上昇フィルムに応用できる(非特許文献1参照)。螺旋軸に垂直な面についての可視光域の屈折率は((ne+no)/2)0.5で表され、螺旋軸方向についての可視光域の屈折率はnoに等しい(非特許文献2参照)。このような光学的特性を有する光学フィルムは、ネガティブC−プレートと呼ばれる。ネガティブC−プレートは、光軸がn方向にあるものであり、光軸方向の屈折率がその直交する方向の屈折率(n、n)より小さいものである(n<n=n)。従って、屈折率がn>n=nとなるような光学異方性媒体がネガティブC−プレートにより光学的に補償される。光学異方性媒体のうち、特にネマティック液晶では、液晶の配向方向が液晶セル平面に対して垂直に配向している領域を有するものならばネガティブC−プレートにより補償されるので、液晶表示素子のうちVA(Vertically Aligned)、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensated Birefringence)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)などの表示素子における視野角特性改善に適した光学補償板となる。現在、圧縮したポリマーフィルムあるいはプラーナー配向した負の複屈折を有するディスコチック液晶を利用したフィルム(特許文献1参照)が光学補償板に用いられている。正の複屈折を有する液晶分子からなるコレステリック液晶の重合体を利用することによって、屈折率異方性値およびその波長分散の設計の自由度が広がる。ネガティブC−プレートは、種々の光学補償層と組み合わせて用いることもできる。
【0005】
上記いずれの用途に対しても、光学異方性膜をセルの内部に設けることもできるし、セルの外部に設けることもできる。セルの内部に設ける方式の例は、特許文献2に記載されている。セルの外部に設ける方式の例は、特許文献3に記載されている。セルの外部に設ける場合、重合性液晶材料は、TAC(トリアセチルセルロース)、ノルボルネン類の重合体等のフィルムを支持基材として、その上に積層される場合がある。
【0006】
重合性液晶の重合体をセルの内部に設ける場合は十分な耐熱性が要求され、セルの外部に設ける場合はその支持基材との良好な密着性および十分な耐熱・耐湿性が求められる。両方の場合に共通して、光重合性液晶には、重合前の特性として、室温で広いネマチック相を有し、良好な配向性を示し、大気中でのUV照射による速硬性を有することが望まれている。更に、重合後の特性として、光学設計に応じた適切なΔnを有し、透明性を有し、耐熱性および耐湿性に優れていることが必要である。そして、このような重合体が得られる光重合性液晶組成物の開発が望まれている。これらの特性のうち、特に重合体フィルムをセルの外部に設ける場合の支持基材に対するその密着性、耐熱性、あるいは均一配向性に問題があり、十分に満足できていないのが現状であった。特に、ホメオトロピック配向では、長鎖アルキル基を有する界面活性剤、カップリング剤、金属錯体等をガラス等の支持基材に塗布する手段が非特許文献3、特許文献4、特許文献5、および特許文献6などに開示されているが、これらの手段を利用しても、ホメオトロピック配向の均一性および安定性は不十分であった。
【0007】
【非特許文献1】Y. Hisatake et al, Asia Display/IDW '01 LCT8-2
【非特許文献2】W. H. de Jeu, Physical Properties of Liquid Crystalline Materials, Gordon and Breach, New York(1980)
【非特許文献3】季刊 化学総説 No.22 液晶の化学 日本化学会編 p.99〜100(1994)
【特許文献1】特開2002−6138
【特許文献2】特開2001−222009
【特許文献3】特開2002−372623
【特許文献4】特開2003−211465号公報
【特許文献5】特開平10−319408号公報
【特許文献6】特開平11−240890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、支持基材との密着性、耐熱性または均一配向性に優れた液晶フィルムを得るための重合性液晶組成物を提供することである。更に、本発明は、この重合性液晶組成物からなる配向が制御された液晶層、この重合性液晶組成物を重合して得られる液晶フィルム、およびこのフィルムを用いた光学補償フィルムを提供することを目的とする。そして、この光学補償フィルムを含む液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなどの画像表示装置を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の重合性液晶化合物を重合性液晶組成物の成分として用い、この重合性液晶組成物に1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物を添加することが、重合性液晶化合物の配向形態の制御に有効であり、そしてこの重合性液晶組成物から得られる液晶フィルムが支持基材との密着性に優れていることを知った。すなわち、支持基材となるフィルムやガラス基板等の表面処理を行わなくとも重合性液晶化合物の配向形態を制御でき、同時に支持基材との密着性あるいは均一配向性に優れた液晶フィルムを得ることができることを知った。また、上記重合性液晶組成物をラビング等の機械的な表面処理、あるいは化学的な表面処理を行った支持基材へ塗布した場合にも、同様な効果が得られることを知った。本発明は下記の構成を有する。
【0010】
[1] 重合性液晶化合物と1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物とを含有する重合性液晶組成物。
【0011】
[2] 式(1)で示される重合性液晶化合物と1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物とを含有する重合性液晶組成物:


ここに、Wは水素、1〜25個の炭素原子を有するアルキル、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル、ハロゲン、シアノ、または−(G−Sp)−Pであり;これらのアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−または−C≡C−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Pは重合性の基であり;Spは1〜20個の炭素原子を有するアルキレンであり、このアルキレンにおいて、炭素原子数が2以上であるときには、隣接しない−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;Gは単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−SO−O−、−O−SO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−(CHO−、−O(CH−、−CH=CH−CHO−、−OCH−CH=CH−、−(CH−CFO−、または−OCF−(CH−であり;rは0または1であり;そして、MGは式(2)で示されるメソゲン骨格である:


ここに、TおよびTは独立して、任意の−CH=が−N=で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、任意の−CH−が−O−または/および−S−で置き換えられてもよく、そして隣り合わない2つの炭素が架橋されてもよい1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルであり;これらの環における任意の水素はハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−NO、または1〜7個の炭素原子を有するアルキルで置き換えられてもよく;この1〜7個の炭素原子を有するアルキルにおいて、任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Gは単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO−O−、−O−SO−、−OCF−、−CFO−、−CF=CF−、−CFCF2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−CHO−、−OCH−CH=CH−、−CONH−、−NHCO−、−(CH−COO−、−OCO−(CH−、−(CH−、−O(CH2−、−(CH2O−、または−O(CH2O−であり;これらの基中のaは1〜20の整数であり;そして、fは0〜4の整数であり、fが2〜4であるとき、複数のTはそれぞれ異なっていても同じであってもよく、複数のGもそれぞれ異なっていても同じであってもよい。
【0012】
[3] 1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物と、Wが1〜10個の炭素原子を有するアルキル、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ、−OCF、−CN、フッ素または−(G−Sp)−Pであり;そしてPがアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、CH=C(CF)−COO−、CH=CF−COO−、ビニルオキシ、マレイミド基またはビニルカルボニルである重合性液晶化合物とを含有する、[2]項に記載の重合性液晶組成物。
【0013】
[4] 1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物と、Wが1〜10個の炭素原子を有するアルキル、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ、−OCF、−CN、フッ素または−(G−Sp)−Pであり;Pがアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、CH=C(CF)−COO−、CH=CF−COO−、ビニルオキシ、マレイミド基またはビニルカルボニルであり;Gが単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−CHO−、−OCH−CH=CH−、−(CH−CFO−、または−OCF−(CH−であり;Spが1〜20個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレンにおいて、炭素原子数が2以上であるときには、隣接しない−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そしてGが単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−(CH−COO−、−OCO−(CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CHCH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−OCH−または−CHO−である重合性液晶化合物とを含有する、[2]項に記載の重合性液晶組成物。
【0014】
[5] 1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物と、Wが1〜10個の炭素原子を有するアルキル、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ、−OCF、−CN、フッ素または−(G−Sp)−Pであり;Pがアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、CH=C(CF)−COO−、またはCH=CF−COO−であり;Gが単結合または−O−であり;Spが2〜10個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレンにおいて、隣接しない−CH−は−O−で置き換えられてもよく;Gが単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−(CH−COO−、−OCO−(CH−、−CHCH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−OCH−または−CHO−である重合性液晶化合物とを含有する、[2]項に記載の重合性液晶組成物。
【0015】
[6] 1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物と、Wが1〜10個の炭素原子を有するアルキル、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ、−OCF、−CN、フッ素または−(G−Sp)−Pであり;Pがアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、CH=C(CF)−COO−、またはCH=CF−COO−であり;Gが単結合または−O−であり;Spが4〜8個の炭素原子を有するアルキレンであり;Gが単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−(CH−COO−、−OCO−(CH−、−CHCH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−OCH−または−CHO−であり;rが1であり;そしてfが0〜2の整数である重合性液晶化合物とを含有する、[2]項に記載の重合性液晶組成物。
【0016】
[7] 1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物が式(3)で示される化合物である、[2]〜[6]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物:


ここに、Rは水素または1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基であり;Rは1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基であり;Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキレンであり、このアルキレン中の隣り合わない1〜2個の−CH−は−O−、−NH−、−CH=CH−、−CONH−、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキレンまたは6〜10個の炭素原子を有するアリーレンで置き換えられてもよく、そしてこのアリーレンの任意の水素は1〜4個の炭素原子を有するアルキルで置き換えられてもよく;そして、nは0〜2の整数である。
【0017】
[8] Rが水素または1〜3個の炭素原子を有する炭化水素基であり;Rが1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基であり;そして、Rが1〜12個の炭素原子を有するアルキレンであり、このアルキレン中の隣り合わない1〜2個の−CH−は−O−、−NH−、−CONH−、または6〜10個の炭素原子を有するアリーレンで置き換えられてもよく、そしてこのアリーレンの任意の水素は1〜4個の炭素原子を有するアルキルで置き換えられてもよい、[7]項に記載の重合性液晶組成物。
【0018】
[9] Rが水素または1〜3個の炭素原子を有する炭化水素基であり;Rが1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基であり;そして、Rが1〜12個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレン中の隣り合わない1〜2個の−CH−は−O−、−NH−またはフェニレンで置き換えられてもよい、[7]項に記載の重合性液晶組成物。
【0019】
[10] Rが水素または1〜3個の炭素原子を有する炭化水素基であり;Rが1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基であり;そして、Rが3〜12個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレン中の隣り合わない1〜2個の−CH−は−O−または−NH−で置き換えられてもよい、[7]項に記載の重合性液晶組成物。
【0020】
[11] 1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物が式(4)で示される化合物である、[2]〜[6]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物:


ここに、RおよびRは独立して1〜4個の炭素原子を有するアルキル、またはフェニルであり;Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキレンであり、このアルキレンにおいて任意の−CH−は−O−またはフェニレンで置き換えられてもよく;このフェニレンの任意の水素は1〜4個の炭素原子を有するアルキルで置き換えられてもよく;Mは単結合またはフェニレンであり;そして、mは0〜10の整数である。
【0021】
[12] RおよびRが独立して1〜4個の炭素原子を有するアルキル、またはフェニルであり;そして、Rが1〜10個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレン中の任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい、[11]項に記載の重合性液晶組成物。
【0022】
[13] RおよびRが独立して1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり;そして、Rが1〜10個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレン中の任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい、[11]項に記載の重合性液晶組成物。
【0023】
[14] RおよびRがメチルまたはエチルであり;そして、Rが1〜10個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレン中の任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい、[11]項に記載の重合性液晶組成物。
【0024】
[15] 1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物が式(5)で示される構成単位を有するシルセスキオキサン誘導体である、[2]〜[6]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物:


ここに、R、RおよびRは独立して、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルケニル、6〜10個の炭素原子を有するアリール、または7〜10個の炭素原子を有するアリールアルキルであり;R10は1〜4個の炭素原子を有するアルキル、CHCO−、CH=CHCO−、またはCH=C(CH)CO−であり;zは0または0.05〜2.0であり;(y1+y2)は、z=0のとき0.1〜2.0であり、z≠0のとき0.05〜2.0であり、そしてy2は0またはy1の3倍以下であり;(y1+y2+z)は0.1〜3.0であり;そしてR11は、炭素原子数が1〜8であり、そして隣り合わない1〜2個の−CH−が−O−または−NH−で置き換えられてもよいアルキレンである。
【0025】
[16] RおよびRがメチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチルまたはフェニルであり、R10が1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、そしてR11が−CH−である、[15]項に記載の重合性液晶組成物。
【0026】
[17] 1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物の使用量が、重合性液晶化合物に対する重量比で0.0001〜0.30である、[1]〜[16]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【0027】
[18] [1]〜[17]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物を基板上に直接塗布して得られる重合性液晶層。
【0028】
[19] 基板がガラス基板である、[18]項に記載の重合性液晶層。
【0029】
[20] 基板がプラスチック基板である、[18]項に記載の重合性液晶層。
【0030】
[21] 基板が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース、トリアセチルセルロース、トリアセチルセルロースの部分鹸化物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびノルボルネン樹脂から選ばれるいずれか1つを用いて得られるプラスチック基板である、[18]項に記載の重合性液晶層。
【0031】
[22] 基板が機械的、物理的または化学的に表面処理されたものである、[18]〜[21]のいずれか1項に記載の重合性液晶層。
【0032】
[23] 表面処理がラビング処理である、[22]項に記載の重合性液晶層。
【0033】
[24] 表面処理がコロナ処理またはプラズマ処理である、[22]項に記載の重合性液晶層。
【0034】
[25] 表面処理が重合体を用いる被覆処理である、[22]項に記載の重合性液晶層。
【0035】
[26] 表面処理が、分子鎖中にカルボキシル基、水酸基およびアミノ基から選択される少なくとも1つの極性基を有する重合体を用いる被覆処理である、[22]項に記載の重合性液晶層。
【0036】
[27] 表面処理が、ポリイミド系重合体の溶液を用いる被覆処理である、[22]項に記載の重合性液晶層。
【0037】
[28] 表面処理が、ポリアミック酸、ポリアミック酸アミド、ポリアミック酸エステル、可溶性ポリイミドおよびポリアミドイミドから選ばれる少なくとも1つの溶液を用いる被覆処理である、[22]項に記載の重合性液晶層。
【0038】
[29] 表面処理が、ポリアミック酸およびポリアミック酸アミドのどちらかの溶液を用いる被覆処理である、[22]項に記載の重合性液晶層。
【0039】
[30] 表面処理が、ポリアミック酸、ポリアミック酸アミド、ポリアミック酸エステル、可溶性ポリイミドおよびポリアミドイミドから選ばれる少なくとも2つの溶液を用いる被覆処理である、[22]項に記載の重合性液晶層。
【0040】
[31] 表面処理が、1種類のポリアミック酸のみの溶液、または2種類のポリアミック酸の溶液を用いる被覆処理である、[22]項に記載の重合性液晶層。
【0041】
[32] 表面処理が、アミノ基を有するトリアルコキシシランの加水分解物の溶液を用いる被覆処理である、[22]項に記載の重合性液晶層。
【0042】
[33] 表面処理が、重合体を用いて被覆処理し、さらにラビング処理するものである、[22]項に記載の重合性液晶層。
【0043】
[34] 重合性液晶層中の液晶骨格の配向状態がホメオトロピック配向である、[18]〜[33]のいずれか1項に記載の重合性液晶層。
【0044】
[35] 重合性液晶層中の液晶骨格の配向状態がチルト配向である、[18]〜[33]のいずれか1項に記載の重合性液晶層。
【0045】
[36] 重合性液晶層中の液晶骨格の配向状態がホモジニアス配向である、[18]〜[33]のいずれか1項に記載の重合性液晶層。
【0046】
[37] 重合性液晶層中の液晶骨格の配向状態がツイスト配向である、[18]〜[33]のいずれか1項に記載の重合性液晶層。
【0047】
[38] [18]〜[37]のいずれか1項に記載の重合性液晶層を重合させて得られる液晶フィルム。
【0048】
[39] [38]項に記載の液晶フィルムの少なくとも1つを有する光学補償素子。
【0049】
[40] [38]項に記載の液晶フィルムの少なくとも1つと偏光板とを有する光学素子。
【0050】
[41] [39]項に記載の光学補償素子を液晶セルの内面または外面に有する液晶表示装置。
【0051】
[42] [40]項に記載の光学素子を液晶セルの内面または外面に有する液晶表示装置。
[43] 式(MA−116)で示される化合物、式(MA−163)、式(MA−213)、式(MA−217)および式(MA−228)のいずれか1つで示される化合物、並びに式(3−1)、式(4−1−3)および式(5−1)のいずれか1つで示される化合物を含有する重合性液晶組成物:








【発明の効果】
【0052】
有機ケイ素化合物を含む本発明の重合性液晶組成物から、様々な支持基材との密着性が向上した液晶ポリマーが得られる。さらに支持基材上の配向処理の有無や重合性液晶組成物中の有機ケイ素化合物の含有量を調整することにより、液晶骨格の配向状態を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
本発明で用いる用語について説明する。液晶骨格の配向状態が支持基材(基板)平面と成す角度を「チルト角」とする。チルト角が一方の界面から他方の界面にかけて一様にゼロに近く、特に0〜5°である配向状態を「ホモジニアス配向」と称する。ここで、界面は、配向層を備えた支持基材界面または自由界面である。チルト角が一方の界面から他方の界面にかけて5〜85°の範囲で一定、または0〜90°の範囲で連続的に変化する配向状態を「チルト配向」と称する。チルト角が一方の界面から他方の界面にかけて一様に85〜90°である配向状態を「ホメオトロピック配向」と称する。また、配向状態がねじれ構造を有し、かつその螺旋軸が界面に対してほぼ垂直である配向状態を「ツイスト配向」と称する。「重合性液晶層」は、重合性液晶組成物を塗布して得られる層またはこの組成物の塗膜を乾燥して得られる層を意味する。
【0054】
「液晶性」の意味は、液晶相を有することだけに限定されない。それ自体は液晶相を持たなくても、他の液晶化合物と混合したときに、液晶組成物の成分として使用できる特性も、「液晶性」の意味に含まれる。「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示すが、個数が0である場合を含まない。任意のAがBまたはCで置き換えられてもよいという表現は、任意のAがBで置き換えられる場合および任意のAがCで置き換えられる場合に加えて、任意のAがBで置き換えられると同時に、残りのAのうちの任意のAがCで置き換えらる場合をも含むことを意味する。例えば、任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルなどが含まれる。なお、本発明においては、連続する2つの−CH−が−O−または−S−で置き換えられて、−O−O−、−O−S−または−S−S−になることは好ましくない。アクリレートおよびメタクリレートの総称として、「(メタ)アクリレート」を用いることがある。特に断らずにアルキルと記述するときは、直鎖アルキルと分岐アルキルの両方を含むアルキルを意味する。アルケニル、アルキレンおよびアルケニレンについても同様である。例えば、ブチルはn−ブチル、2−メチルプロピルおよび1,1−ジメチルエチルのいずれであってもよい。ハロゲンは、フッ素、塩素または臭素を意味する。シクロアルキルおよびシクロアルケニルには、通常の環状基の他、架橋構造の環状基も包含される。以下の説明では、式(1)で表される重合性液晶化合物を化合物(1)と称することがある。他の式で表される化合物についても同様に簡略化して称することがある。
【0055】
本発明の重合性液晶組成物は必須成分として重合性液晶化合物を含有する。重合性液晶化合物の例は式(1)で示される化合物である。


式(1)におけるWは、水素、1〜25個の炭素原子を有するアルキル、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル、ハロゲン、シアノ、または−(G−Sp)−Pである。これらのアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−または−C≡C−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。Wの好ましい例は、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ、−OCF、−CN、フッ素および−(G−Sp)−Pである。
【0056】
Pは重合性の基である。Pの好ましい例はアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、CH=C(CF)−COO−、CH=CF−COO−、ビニルオキシ、マレイミド基、およびビニルカルボニルである。Pのより好ましい例はアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、CH=C(CF)−COO−、およびCH=CF−COO−である。
【0057】
Spは1〜20個の炭素原子を有するアルキレンである。このアルキレンの炭素原子数が2以上であるときは、隣接しない−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。より好ましいSpは、炭素原子数が1〜20個であり、炭素原子数が2以上であるときに、隣接しない−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンである。さらに好ましいSpは、炭素原子数が2〜10個であり、隣接しない−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンである。そして、特に好ましいSpは炭素原子数が4〜8個のアルキレンである。
【0058】
Gは単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−SO−O−、−O−SO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−O(CH−、−CH=CH−CHO−、−OCH−CH=CH−、または−OCF−(CH−である。なお、これらの基は左側の遊離基でSPと結合する。Gの好ましい例は単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−CHO−、−OCH−CH=CH−、−(CH−CFO−、および−OCF−(CH−である。Gの特に好ましい例は単結合および−O−である。そして、rは0または1であり、1が好ましい。
【0059】
式(1)におけるMGは、式(2)で示されるメソゲン骨格である。


式(2)におけるTおよびTは環構造の基である。これらは独立して、任意の−CH=が−N=で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、任意の−CH−が−O−または/および−S−で置き換えられてもよく、そして隣り合わない2つの炭素が架橋されてもよい1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルである。これらの環における任意の水素はハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−NO2、または1〜7個の炭素原子を有するアルキルで置き換えられてもよい。この1〜7個の炭素原子を有するアルキルにおいて、任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0060】
式(2)におけるGは結合基である。Gは単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO−O−、−O−SO−、−CHCH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CF=CF−、−CFCF2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−CHO−、−OCH−CH=CH−、−CONH−、−NHCO−、−(CH−COO−、−OCO−(CH−、−(CH−、−O(CH2−、−(CH2O−、または−O(CH2O−であり、aは1〜20の整数である。Gの好ましい例は単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−(CH−COO−、−OCO−(CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CHCH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−OCH−および−CHO−である。Gのより好ましい例は単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−(CH−COO−、−OCO−(CH−、−CHCH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−OCH−および−CHO−である。
【0061】
式(2)におけるfは0〜4の整数である。fが2〜4であるとき、複数のTはそれぞれ異なる環であっても同じ環であってもよく、複数のGはそれぞれ異なる結合基であっても同じ結合基であってもよい。そして、好ましいfは0〜3である。
【0062】
重合性液晶化合物の具体例を次に示す。


【0063】


【0064】


【0065】


【0066】


【0067】


【0068】


【0069】


【0070】


【0071】


【0072】


【0073】


【0074】


【0075】


【0076】


【0077】

【0078】


【0079】


【0080】


【0081】


【0082】


【0083】


【0084】


【0085】


【0086】


【0087】



【0088】


【0089】


【0090】


【0091】


【0092】


【0093】


【0094】


【0095】


【0096】


【0097】


【0098】
これらの例において、1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの好ましい立体配置はトランスである。上記の化合物は、有機合成化学における公知の手法を適宜組み合わせることにより合成することができる。出発物質に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニック・シンセシーズ(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。下記の文献にも、それぞれの合成方法が記載されている。
Polymer, vol.34, No.8, p.1736-(1993):化合物(VEグループ)
WO 01/53248A1パンフレット:化合物(MAグループ)
【0099】
1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物の最初の好ましい例は、式(3)で示される化合物である。


式(3)において、Rは水素または1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基である。Rは1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基である。炭化水素基の好ましい例は、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびアリールアルキルである。Rの好ましい例は水素および1〜3個の炭素原子を有するアルキルである。Rの好ましい例は1〜4個の炭素原子を有するアルキルである。
【0100】
式(3)におけるRは1〜20個の炭素原子を有するアルキレンである。このアルキレン中の隣り合わない1〜2個の−CH−は、−O−、−NH−、−CH=CH−、−CONH−、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキレンまたは6〜10の炭素原子を有するアリーレンで置き換えられてもよい。このアリーレンの任意の水素は1〜4個の炭素原子を有するアルキルで置き換えられてもよい。Rの好ましい例は1〜12個の炭素原子を有するアルキレンであり、このアルキレン中の隣り合わない1〜2個の−CH−は−O−、−NH−、−CONH−、または6〜10個の炭素原子を有するアリーレンで置き換えられてもよく、そしてこのアリーレンの任意の水素は1〜4個の炭素原子を有するアルキルで置き換えられてもよい。Rのより好ましい例は、炭素原子の数が1〜12個であって、隣り合わない1〜2個の−CH−が−O−、−NH−またはフェニレンで置き換えられてもよいアルキレンである。Rの特に好ましい例は、炭素原子の数が3〜12個であって、隣り合わない1〜2個の−CH−が−O−または−NH−で置き換えられてもよいアルキレンである。なお、R中のSiに直結する−CH−が−O−で置き換えられる場合は含まれない。式(3)におけるnは0〜2の整数である。化合物(3)の具体例を次に示す。
【0101】





【0102】


【0103】
上記の例のうちより好ましい例は、化合物(3−1)〜化合物(3−7)および化合物(3−11)〜化合物(3−16)である。
【0104】
1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物の2番目の好ましい例は、式(4)で示される化合物である。


式(4)において、RおよびRは独立して1〜4個の炭素原子を有するアルキル、またはフェニルである。RまたはRの好ましい例は1〜4個の炭素原子を有するアルキルである。RまたはRのより好ましい例はメチル、エチルまたはフェニルであり、特に好ましい例はメチルおよびエチルである。Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキレンである。このアルキレン中の任意の−CH−は−O−またはフェニレンで置き換えられてもよい。このフェニレンの任意の水素は1〜4個の炭素原子を有するアルキルで置き換えられてもよい。Rの好ましい例は、炭素原子の数が1〜10個であり、任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンである。Mは単結合またはフェニレンである。そして、mは0〜10の整数である。
【0105】
化合物(4)の好ましい例を次に示す。以下の例における番号は、RおよびRがメチルであり、mが1であり、Mが単結合であり、そしてHN−R−が以下に示す基である化合物の番号である。
N−CH− (4−1−1)
N−(CH− (4−1−2)
N−(CH− (4−1−3)
N−(CH− (4−1−4)
N−CO(CH− (4−1−5)
N−CO(CH− (4−1−6)
N−(CHO(CH− (4−1−7)
N−(CHO(CH− (4−1−8)
N−(CHO(CH− (4−1−9)
N−(CHO(CH− (4−1−10)
N−(CHO(CH− (4−1−11)
N−(CHO(CH− (4−1−12)
N−(CHO(CH− (4−1−13)
N−(CHO(CH− (4−1−14)
N−Ph−O− (4−1−15)
N−Ph−C− (4−1−16)
N−Ph−O(CH− (4−1−17)
N−Ph−O(CH− (4−1−18)
N−CH−Ph−O(CH− (4−1−19)
N−CH−Ph−O(CH− (4−1−20)
N−Ph−CHO(CH− (4−1−21)
N−Ph−CHO(CH− (4−1−22)
N−Ph−CO(CH− (4−1−23)
N−Ph−CO(CH− (4−1−24)
N−Ph(CH)−O(CH− (4−1−25)
N−Ph(CH)−O(CH− (4−1−26)
これらの例において、Phはフェニレンであり、Ph(CH)はメチルフェニレンである。
【0106】
が−(CH−である場合には、RおよびRはメチル、エチルまたはフェニルであることが好ましい。RおよびRがメチルであり、Rが−(CH−であるときには、分子量が最大30,000程度の化合物(4)も用いることができる。このような重合体はジメチルシロキサンとの共重合体であってもよい。mが0であり、Mが単結合であり、そしてRおよびRがメチルである場合には、HN−R−の好ましい例はHN−Ph−O−である。RおよびRがメチルであり、mが1であり、そしてMがフェニレンである場合の好ましい例は下記の化合物(4−2−1)である。


【0107】
上記の例のうち好ましい例は、化合物(4−1−1)〜化合物(4−1−14)および化合物(4−2−1)である。
【0108】
1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物の3番目の好ましい例は、式(5)で示される構成単位を有するシルセスキオキサン誘導体である。以下の説明では、式(5)で示される構成単位を有するシルセスキオキサン誘導体を化合物(5)と称することがある。


式(5)において、R、RおよびRは独立して、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルケニル、6〜10個の炭素原子を有するアリール、または7〜10個の炭素原子を有するアリールアルキルである。R10は1〜4個の炭素原子を有するアルキル、CHCO−、CH=CHCO−、またはCH=C(CH)CO−である。zは0または0.05〜2.0である。(y1+y2)は、z=0のとき0.1〜2.0であり、z≠0のとき0.05〜2.0であり、そしてy2は0またはy1の3倍以下である。(y1+y2+z)は0.1〜3.0である。この範囲は0.1〜2.5が好ましく、0.1〜2.0がより好ましい。そしてR11は、炭素原子数が1〜8であり、そして隣り合わない1〜2個の−CH−が−O−または−NH−で置き換えられてもよいアルキレンである。
【0109】
11の好ましい例は−CH−である。RまたはRの好ましい例はメチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチルおよびフェニルであり、メチルが最も好ましい。RおよびRは異なる基の組み合わせであってもよいが、同一の基であることが好ましい。Rの好ましい例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ビニル、プロペニル、5−ヘキセニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−6−イル、フェニル、フェニルメチル、フェニルエチル、およびメチルフェニルである。R10の好ましい例は1〜4個の炭素原子を有するアルキルである。そして、好ましいZは0である。
【0110】
化合物(5)はラダー型のポリシルセスキオキサン誘導体である。この化合物は、下記の式(5−H)で示される構成単位を有するSi−H基含有ポリシルセスキオキサンを原料として用いることにより得られる。そして、化合物(5−H)は、特開2003−119288に記載されている方法を参考にして製造することができる。即ち、化合物(5−H)は、1モルのRSiClとyモルのH−Si(R)−Clの混合物にzモルのR10OHを反応させた後、(3+y−z)/2倍モル量の水を添加して加水分解縮合させることによって得られる。式(5−H)において、zは0または0.05〜2.0であり、yはz=0のとき0.1〜2.0であり、z≠0のとき0.05〜2.0である。(y+z)は0.1〜3.0であり、0.1〜2.5であることが好ましく、そして0.1〜2.0であることがより好ましい。式(5−H)におけるその他の記号は、式(5)におけるそれぞれの記号と同じ意味を有する。


【0111】
化合物(3)〜化合物(5)は、単独で用いてもよいし、これらの複数の化合物を組み合わせて用いてもよい。このとき、化合物(3)〜化合物(5)の使用量は、重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の量に対する重量比で0.0001〜0.30である。有機ケイ素化合物がこのように非常に少ない割合であっても本発明の効果が認められる。この比率の好ましい範囲は0.005〜0.20であり、より好ましい範囲は0.01〜0.20である。更に好ましい範囲は0.015〜0.15であり、特に好ましい範囲は0.03〜0.15である。この割合で有機ケイ素化合物を用いることにより、支持基材との密着性に優れた液晶フィルムを形成させることができる。
【0112】
本発明の重合性液晶組成物は、さらに光学活性化合物を含有することができる。このような重合性液晶組成物は、キラルネマチック相を有する。光学活性化合物は、螺旋構造を誘起する目的のために添加される。光学活性化合物の選択条件は、螺旋構造を誘起することおよびベースとなる重合性液晶組成物と適切に混合できることである。光学活性化合物の例は、以下に示す(Op−1)〜(Op−19)である。
【0113】


【0114】


【0115】


【0116】




これらの式において、Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキルであり、Meはメチルであり、そして*が添えられた炭素は不斉炭素である。
【0117】
光学活性化合物は重合性化合物および非重合性化合物のどちらでもよい。耐熱性および耐溶剤性を考慮した場合には、重合性化合物の方が好適である。さらに、ねじり力(HTP:ヘリカル・ツイスティング・パワー)が大きい光学活性化合物の方が螺旋ピッチを短くする上で好適である。ねじり力の大きな化合物の代表例がDE10221751号公報で開示されている。特に好適な化合物は上記の化合物(Op−14)〜化合物(Op−19)である。このうち、化合物(Op−14)〜化合物(Op−16)は重合性化合物であり、化合物(OP−1)〜化合物(OP−13)、および化合物(Op−17)〜化合物(Op−20)は非重合性化合物である。ここで、化合物(Op−17)〜化合物(Op−19)の末端の−Cに重合性の基を導入すれば、有用な重合性を持つ光学活性化合物となる。
【0118】
本発明の重合性液晶組成物は、非重合性液晶性化合物を含有することができる。このような化合物を添加することによって、重合物の光学特性に温度特性(温度追従性能)を付与することもできる。非重合性液晶性化合物の具体例は、液晶化合物データベース「LiqCryst」(商品名、LCI Publisher GmbH (Hamburg, Germany))に記載されている。
【0119】
重合性液晶組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において上記の重合性液晶化合物以外の重合性化合物を配合することができる。この重合性化合物は液晶性でなくてもよい。非液晶性の重合性化合物の好ましい使用量は、通常は組成物全量を基準とする割合で40wt%以下である。この割合のより好ましい範囲は30wt%以下であり、更に好ましい範囲は20wt%以下である。組成物の液晶性が保たれ、液晶層が層分離しないためには、この割合が40wt%以下であることが好ましい。液晶性でない重合性化合物の例は、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂などである。ポリエステル(メタ)アクリレートは、多価アルコールと一塩基酸または多塩基酸とのポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる。ポリウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られる。エポキシ樹脂の例は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪酸系エポキシ樹脂、脂環式系エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂などである。
【0120】
非液晶性の重合性化合物の好ましい例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、スチレン、o−、m−またはp−クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールメチルビニルエーテル、テトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロペンである。
【0121】
重合体の被膜形成能をより高めるために、多官能アクリレートを組成物に添加することもできる。好ましい多官能アクリレートは、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールEO付加トリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、トリスアクリロキシエチルフォスフェート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールAグリシジルジアクリレート、およびポリエチレングリコールジアクリレートである。
【0122】
重合性液晶組成物の重合速度を最適化するために、公知の光重合開始剤を用いてもよい。光重合開始剤の好ましい添加量は、組成物全量を基準とする割合で、0.01〜5wt%である。より好ましい割合は0.01〜1wt%である。光重合開始剤の例は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュアー1173)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュアー651)、イルガキュアー500、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー1300、イルガキュアー819、イルガキュアー1700、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、ダロキュアー4265、イルガキュアー784、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、および2,4−ジエチルキサントンとp−ジメチルアミノ安息香酸メチルとの混合物である。上記のダロキュアーおよびイルガキュアーはどちらもチバ・スペシャリティー・ケミカル(株)から販売されている商品の名称である。
【0123】
重合性液晶組成物には、保存時の重合開始を防止するために重合防止剤を添加することができる。公知の重合防止剤を使用できるが、その好ましい例は、2,5−ジ(t−ブチル)ヒドロキシトルエン(BHT)、ハイドロキノン、メチルブルー、ジフェニルピクリン酸ヒドラジド(DPPH)、ベンゾチアジン、4−ニトロソジメチルアニリン(NIDI)、o−ヒドロキシベンゾフェノンなどである。
【0124】
重合性液晶組成物の保存性を向上させるために、酸素阻害剤を添加することもできる。組成物内で発生するラジカルは雰囲気中の酸素と反応しパーオキサイドラジカルを与え、重合性化合物との好ましくない反応が促進される。これを防ぐ目的で酸素阻害剤を添加することが好ましい。酸素阻害剤の例はリン酸エステル類である。
【0125】
以下の説明では、重合性液晶組成物から得られる本発明の液晶フィルムを単に液晶フィルムと称することがある。液晶フィルムは、次のようにして形成させることができる。まず、重合性液晶組成物を支持基板上に塗布して塗膜を形成させる。つぎに、その塗膜に光照射して重合性液晶組成物を重合させ、塗膜中の組成物が液晶状態で形成するネマチック配向を固定化する。使用できる支持基材の例は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース、トリアセチルセルロースおよびその部分鹸化物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノルボルネン樹脂などのプラスチックフィルムである。このノルボルネン樹脂の好ましい例は、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂である。この樹脂はシクロオレフィンを主骨格としてなり、炭素―炭素二重結合を実質的に有しないものである。熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂の例は、日本ゼオン(株)製のゼオネックスおよびゼオノア、並びにJSR(株)製のアートンである。なお、これらのフィルム上には、重合性液晶組成物に含まれる溶剤に侵されないような保護層を形成してもよい。重合性液晶組成物に含まれる溶剤に侵されるような支持基材も、保護層を形成させれば本発明において用いることができる。保護層として用いられる材料の例はポリビニルアルコールである。さらに、保護層と支持基材の密着性を高めるためにアンカーコート層を形成させてもよい。このようなアンカーコート層は保護層と支持基材の密着性を高めるものであれば、無機系、有機系のいずれの材料であっても何ら問題はない。
【0126】
これらのプラスチックフィルムは、一軸延伸フィルムであってよく、二軸延伸フィルムであってもよい。これらのプラスチックフィルムは、例えば、コロナ処理やプラズマ処理などの親水化処理、または疎水化処理などの表面処理を施したものであってもよい。また、プラスチックフィルムは積層フィルムであってもよい。プラスチックフィルムに代えて、表面にスリット状の溝をつけたアルミニウム、鉄、銅などの金属基板や、表面をスリット状にエッチング加工したアルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、フリントガラスなどのガラス基板などを用いることもできる。
【0127】
重合性液晶組成物の配向を制御するために支持基材の表面を重合体により被覆処理してもよい。重合体としては、重合体分子鎖中にカルボキシル基、水酸基およびアミノ基から選択された少なくとも1つの極性基を有するものであればよく、好ましくはポリイミド系重合体、あるいはアミノ基を有するトリアルコキシシランの加水分解物が用いられる。ポリイミド系重合体の溶液をポリイミド系ワニスと称することがある。アミノ基を有するトリアルコキシシランの加水分解物を水溶性シルセスキオキサンと称することがある。
【0128】
ポリイミド系ワニスを塗布して支持基材上を表面処理する場合、加熱することによってこのワニス中の溶剤を除去し、重合体の被膜を形成させる。このときの温度の好ましい範囲は50℃〜250℃である。支持基材上に形成されたポリイミド系重合体の被膜には、重合性液晶組成物の塗膜形成に先立って、ラビング等による物理的、機械的な表面処理が行われてもよい。ホメオトロピック配向の重合性液晶層および液晶フィルムを形成する場合はラビング等の表面処理を行わない場合が多いが、配向欠陥等を防止する点でラビング処理を行ってもよい。ラビング処理には任意の方法が採用できるが、通常はレーヨン、綿、ポリアミドなどの素材からなるラビング布を金属ロールなどに捲き付け、支持基材または重合体被膜に接した状態でロールを回転させながら移動させる方法、ロールを固定したまま支持基材側を移動させる方法などが採用される。
【0129】
支持基材上に重合体の被膜を形成することができるポリイミド系ワニスは、ポリアミック酸、ポリアミック酸アミド、ポリアミック酸エステル、可溶性ポリイミド、ポリアミドイミドなどの重合体成分を溶剤に溶解した状態のワニス組成物である。このワニス組成物を支持基材上に塗布したのち、乾燥すると重合体の被膜が形成される。重合体被膜を構成する重合体成分は、ランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体であってもよく、複数種の重合体成分を併用してもよい。
【0130】
重合体被膜を形成するために好ましいポリイミド系重合体は、アミド結合、イミド結合、イミド化反応残基であるカルボキシル基、またはこのカルボキシル基がアミド化された基もしくはこのカルボキシル基がエステル化された基を有する重合体である。このような重合体の好ましい例は、ポリアミック酸、ポリアミック酸アミド、およびポリアミック酸エステルである。しかしながら本発明においては、これらの好ましい重合体の他、ポリアミック酸の脱水反応などによって得られる可溶性ポリイミド、またはポリアミドイミドを用いることもできる。これらのうち、より好ましいものは、ポリアミック酸およびポリアミック酸アミドであり、最も好ましいものはポリアミック酸である。
【0131】
上記のポリアミック酸、ポリアミック酸アミド、ポリアミック酸エステル、可溶性ポリイミド、またはポリアミドイミドを得るために用いるテトラカルボン酸二無水物は、芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合した芳香族系(複素芳香環系を含む)、芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合していない脂肪族系(複素環系を含む)のいずれの群に属するものであってもよい。
【0132】
本発明で用いられる芳香族系テトラカルボン酸二無水物の具体例は、以下のとおりである。


【0133】
本発明で用いられる脂肪族系テトラカルボン酸二無水物の具体例は、以下のとおりである。


【0134】


【0135】
これらの中で、式1、式2、式13、式17、式18、式19、式20、式27、式28、および式29のいずれかで表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。式1、式13、式17、式19、式20、および式29のいずれかで表されるテトラカルボン酸二無水物がさらに好ましい。
【0136】
本発明で用いられるテトラカルボン酸二無水物はこれらに限定されない。本発明の目的が達成される範囲内であれば、上記以外のテトラカルボン酸二無水物を選択することができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0137】
上記のテトラカルボン酸二無水物と組み合わせて反応させるジアミンの具体例は以下のとおりである。下記の具体例中におけるnは1〜20の整数である。Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。シクロヘキサン環およびベンゼン環の任意の水素は、ハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい。
【0138】


【0139】


【0140】


【0141】


【0142】


【0143】


【0144】
これらの中で、式5、式6、式9、式10、式11、式12、式13、式14、式15、式16、式17、式18、式19、式20、式30、式35、式39、式40、式41、式42、式43、および式56のいずれかで表されるジアミンが好ましい。直鎖状のアルキレンを有するジアミンの中では、式12、式13、式14、式15、式16、式17、式18、式19および式20のいずれかで表されるジアミンが更に好ましい。芳香族ジアミンの中では、式39においてnが2〜10であるジアミン、ベンゼン環のメタ位にアミノを有する式6または式43で表されるジアミン、ベンゼン環の3,3’−位にアミノを有する式10、式13、式16および式20のいずれかで表されるジアミン、およびベンゼン環の3,4’−位にアミノを有する式11または式14で表されるジアミンがさらに好ましい。これらのジアミンを用いることにより、均一なホメオトロピック配向が得られやすく、そして重合性液晶の均一塗工が容易になる。
【0145】
ステロイド骨格の側鎖を有するジアミンも用いることができる。このようなジアミンの例は、コレステリル、アンドロステリル、β−コレステリル、エピアンドロステリル、エリゴステリル、エストリル、11−α−ヒドロキシメチルステリル、11−α−プロゲステリル、ラノステリル、メチルテストロステリル、ノレチステリル、プレグネノニル、β−シトステリル、スチグマステリル、テストステリル、および酢酸コレステロ−ルエステルである。
【0146】
上記のジアミンと併用することができるその他のジアミンとして、シロキサン結合を有するシロキサン系ジアミンを挙げることができる。このシロキサン系ジアミンの好ましい例は式(A)で表されるジアミンである。


式中、R15およびR16はそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、R17はメチレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンである。xは1〜6の整数であり、yは1〜10の整数である。なお、本発明で用いることができるシロキサン系ジアミンは上記の例に限定されない。
【0147】
本発明で用いられるジアミンは上記の例に限定されない。本発明の目的が達成される範囲内であれば、上記以外のジアミンも選択することができる。これらのジアミンは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0148】
本発明で用いられるジアミンについても前述したテトラカルボン酸二無水物と同様に、芳香環に直接アミノ基が結合した芳香族系(複素芳香環系を含む)、芳香環に直接アミノ基が結合していない脂肪族系(複素環系を含む)のいずれの群に属するものであってもよい。
【0149】
これらのテトラカルボン酸二無水物およびジアミン以外に、ポリアミック酸または可溶性ポリイミドの反応末端を形成するためのモノアミン化合物、または/およびモノカルボン酸無水物を併用することも可能である。ガラス等の支持基材への密着性をよくするために、アミノシリコン化合物を使用することもできる。
【0150】
アミノシリコン化合物の例は、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリエトキシシラン、メタアミノフェニルトリメトキシシラン、メタアミノフェニルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、およびアミノプロピルトリエトキシシランである。
【0151】
本発明で用いられるポリアミック酸、ポリアミック酸アミド、ポリアミック酸エステル、可溶性ポリイミド、またはポリアミドイミドの分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、好ましくは10,000〜500,000、さらに好ましくは20,000〜200,000である。
【0152】
本発明で用いられるポリイミド系ワニス中の重合体成分の濃度は、特に限定されないが0.1〜40重量%が好ましい。このワニスを支持基材上に塗布するときには、膜厚調整のため含有されている重合体成分を予め溶剤により希釈する操作が必要とされることがある。重合体成分の濃度が40重量%以下であるとワニスの粘度が最適となり、膜厚調整のためにワニスを希釈する必要があるときに、ワニスに対して溶剤を容易に混合できるため好ましい。スピンナ−法や印刷法のときには膜厚を良好に保つために、通常10重量%以下とすることが多い。その他の塗布方法、例えばディッピング法やインクジェット法ではさらに低濃度とすることもあり得る。一方、重合体成分の濃度が0.1重量%以上であると、得られる重合体被膜の膜厚が最適となり易い。従って重合体成分の濃度は、通常のスピンナ−法や印刷法などでは0.1重量%以上、好ましくは0.5〜10重量%である。しかしながら、該ワニスの塗布方法によっては、さらに希薄な濃度で使用してもよい。
【0153】
本発明で用いられるポリイミド系ワニスにおいて前記重合体成分と共に用いられる溶剤は、重合体成分を溶解する能力を持った溶剤であれば適用可能である。このような溶剤は、ポリアミック酸、ポリアミック酸アミド、ポリアミック酸エステル、可溶性ポリイミド、ポリアミドイミドなどの高分子成分の製造工程や用途方面で通常使用されている溶剤を広く含み、使用目的に応じて、適宜選択できる。これらの溶剤の例は以下のとおりである。非プロトン性極性有機溶剤の例は、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、およびγ−ブチロラクトンである。塗布性改善などを目的とした他の溶剤の例は、乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、マロン酸ジアルキル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、およびグリコールモノエーテルの有機酸エステルである。これらの中で、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどを特に好ましく用いることができる。
【0154】
本発明で用いられるポリイミド系ワニスは、必要により各種の添加剤を含むことができる。例えば、塗布性の向上を望むときにはかかる目的に沿った界面活性剤を、帯電防止の向上を必要とするときは帯電防止剤を、また支持基材との密着性の向上を望むときにはシランカップリング剤やチタン系のカップリング剤を配合してもよい。
【0155】
ワニス塗布工程での塗布方法としてはスピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法などが一般に知られている。これらの方法は本発明においても同様に適用可能である。また、乾燥工程および脱水・閉環反応に必要な加熱処理を施す工程の方法として、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法などが一般に知られている。これらの方法も本発明において同様に適用可能である。
【0156】
ポリイミド系ワニスの脱水・閉環反応(イミド化反応)率は、ポリイミド系重合体の被膜をラビング処理する場合においては、機械的な強度の面からイミド化率は45%〜95%、より好ましくは50%〜90%、さらに好ましくは50%〜80%の範囲である。ホメオトロピック配向において、ラビング処理を行わなくてもよい場合は、イミド化率は低くてもよく、90%〜0%、より好ましくは60%〜0%、さらに好ましくは20%〜0%の範囲であってもよい。ガラスと比べて耐熱温度が比較的低いプラスチックの場合は、ワニス塗布後の乾燥工程を溶剤の蒸発が可能な範囲内の比較的低温で実施することが好ましい。
【0157】
水溶性シルセスキオキサンを塗布して支持基材上を表面処理する場合、まず、支持基材上にアミノ基を有するシルセスキオキサンの水溶液を塗布して、50℃〜150℃の温度範囲で乾燥させることにより重合体被膜を形成させる。形成した被膜をさらにラビング処理する場合には、被膜の機械的な強度の観点から乾燥温度は80℃〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0158】
水溶性シルセスキオキサンは、次のアミノ基を有するトリアルコキシシランを用いて、国際公開パンフレット02/26749号に記載の方法にしたがって製造することができる。即ち、アミノアルキル(またはアルコキシ)シラン1モルと、水1.5〜10モルとを反応させ、この反応において副生する揮発性有機成分を4wt%以下まで溜去することによって水溶性シルセスキオキサンが得られる。アミノアルキルトリアルコキシシランの好ましい例は、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、および3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランである。
【0159】
3−アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解物として、チッソ(株)より販売されているSF330を用いてもよく、この化合物の部分加水分解物であるMS3301、MS3302、MS3201、MS3202等を用いることもできる。これらはいずれもチッソ(株)より販売されている。同様な化合物として、チッソ(株)より販売されているシルセスキオキサンオリゴマー水溶液であるWSA−7011、WSA−9911、WSA−7021等も用いることができる。製膜性の観点から、テトラアルコキシシランをブレンドしてもよい。
【0160】
本発明の重合性液晶組成物には、塗布を容易にするためまたは液晶相の配向を制御するために、本発明の効果を損なわない範囲で界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤の例はイミダゾリン、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族または芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基と親水性基とを有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基と親油性基とを有するオリゴマー、およびパーフルオロアルキル基を有するウレタンである。界面活性剤の添加量は、重合性液晶化合物に対する重量比で、2×10−5〜0.05、さらに好ましくは1×10−4〜0.01の範囲である。
【0161】
支持基材には、塗膜形成に先立って、ラビング等による機械的な表面処理が行われてもよい。ホメオトロピック配向の重合性液晶層を形成させる場合、およびこの重合性液晶層を重合させてホメオトロピック配向の液晶フィルムを形成する場合は、通常ラビングのような表面処理を行わなくてもよいが、配向欠陥を防止する目的でラビング処理を行ってもよい。ホモジニアス配向、チルト配向、またはツイスト配向の重合性液晶層を形成させる場合、およびこれらのいずれかの重合性液晶層を重合させてそれぞれの配向を固定化させた液晶フィルムを形成する場合は、通常ラビング処理が施される。そのラビング処理は支持基材に直接施されていてもよく、または支持基材上に予め重合体被膜を設け、その重合体被膜にラビング処理を施してもよい。ラビング処理の方法は前述のとおりである。支持基材の種類によっては、その表面に酸化ケイ素を傾斜蒸着して配向能を付与することもできる。
【0162】
液晶フィルムを製造する際には、重合性液晶組成物をそのまま用いてもよいが、これに溶剤を加えてから塗布したり成形したりした後に、溶剤を除去して薄膜を製造してもよい。溶剤の好ましい例は、ベンゼン、トルエン、ヘプタン、キシレン、メシチレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、酢酸エチル、乳酸アルキル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、THF、クロロホルム、1,4−ジオキサン、ビス(メトキシエチル)エーテル、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸エチル、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、エタノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、およびPGMEAである。これらは単独でまたは複数の混合溶剤として用いることができる。
【0163】
均一な膜厚を得るための塗布方法の例は、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法およびダイコート法である。特に、塗布時に液晶組成物にせん断応力がかかるワイヤーバーコート法等を、ラビング等による基板の表面処理を行わないで液晶組成物の配向を制御する場合に用いてもよい。
【0164】
有機ケイ素化合物を重合性液晶組成物中に均一に分散させるために溶剤を用いて希釈してもよい。このような溶剤は有機ケイ素化合物を溶解させる能力を持っていればよく、目的に応じた選択をすればよい。なお、好ましい溶剤の例は、エーテル(THFなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アルコール(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、メトキシメチルアルコールなど)、酢酸エステル(酢酸エチル、酢酸メチルなど)、クロロホルム、およびアセトニトリルである。
【0165】
溶剤を用いる場合には、塗布後に溶剤を除去して、基板上に膜厚の均一な重合性液晶層、即ち重合性液晶組成物の層を形成させる。溶剤除去の条件は特に限定されない。溶剤がおおむね除去され、重合性液晶組成物の塗膜の流動性がなくなるまで乾燥すればよい。室温での風乾、ホットプレートでの乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹き付けなどを利用して溶剤を除去することができる。重合性液晶組成物に用いる化合物の種類と組成比によっては、塗膜を乾燥する過程で、塗膜中の重合性液晶組成物のネマチック配向が完了していることがある。従って、乾燥工程を経た塗膜は、後述する熱処理工程を経由することなく、重合工程に供することができる。しかしながら、塗膜中の液晶分子の配向をより均一化させるためには、乾燥工程を経た塗膜を熱処理し、その後に光重合処理することが好ましい。
【0166】
塗膜を熱処理する際の温度および時間、光照射に用いられる光の波長、光源から照射する光の量などは、重合性液晶組成物に用いる化合物の種類と組成比、光重合開始剤の添加の有無やその添加量などによって、好ましい範囲が異なる。従って、以下に説明する塗膜の熱処理の温度および時間、光照射に用いられる光の波長、および光源から照射する光の量についての条件は、あくまでもおよその範囲を示すものである。
【0167】
塗膜の熱処理は、重合性液晶組成物の液晶相転移点以上で行われる。熱処理方法の一例は、前記重合性液晶組成物がネマチック液晶相を示す温度まで塗膜を加温して、塗膜中の重合性液晶組成物にネマチック配向を形成させる方法である。重合性液晶組成物がネマチック液晶相を示す温度範囲内で、塗膜の温度を変化させることによってネマチック配向を形成させてもよい。この方法は、上記温度範囲の高温域まで塗膜を加温することによって塗膜中にネマチック配向を概ね完成させ、次いで温度を下げることによってさらに秩序だった配向にする方法である。上記のどちらの熱処理方法を採用する場合でも、熱処理温度は室温〜120℃である。この温度の好ましい範囲は室温〜80℃であり、より好ましい範囲は室温〜70℃である。熱処理時間は5秒〜2時間である。この時間の好ましい範囲は10秒〜40分であり、より好ましい範囲は20秒〜20分である。重合性液晶組成物からなる層の温度を所定の温度まで上昇させるためには、熱処理時間を5秒以上にすることが好ましい。生産性を低下させないためには、熱処理時間を2時間以内にすることが好ましい。このようにして本発明の重合性液晶層が得られる。
【0168】
重合性液晶層中に形成された重合性液晶組成物のネマチック配向状態は、この重合性液晶組成物を光照射により重合することによって固定化される。光照射に用いられる光の波長は特に限定されない。電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)などを利用することができる。通常は、紫外線または可視光線を用いればよい。波長の範囲は150〜500nmである。好ましい範囲は250〜450nmであり、より好ましい範囲は300〜400nmである。光源の例は、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などである。光源の好ましい例は、メタルハライドランプやキセノンランプ、および高圧水銀ランプである。光源と重合性液晶層との間にフィルターなどを設置して特定の波長領域のみを通すことにより、照射光源の波長領域を選択してもよい。光源から照射する光量は、2〜5000mJ/cm2である。光量の好ましい範囲は10〜3000mJ/cm2であり、より好ましい範囲は100〜2000mJ/cm2である。光照射時の温度条件は、上記の熱処理温度と同様に設定されることが好ましい。
【0169】
本発明の重合性液晶層、およびこれを光や熱などにより重合させた液晶フィルムを様々な光学素子に用いる場合、または液晶表示装置に用いる光学補償素子として適用する場合には、厚み方向におけるチルト角の分布の制御が極めて重要となる。
【0170】
チルト角を制御する方法の一つは、重合性液晶組成物に用いる液晶性化合物の種類や組成比などを調整する方法である。この重合性液晶組成物に他の成分を添加することによっても、チルト角を制御することができる。液晶フィルムのチルト角は、重合性液晶組成物に加える溶剤の種類や重合性液晶組成物溶液中の溶質濃度、他の成分の1つとして加える界面活性剤の種類や添加量などによっても制御することができる。支持基材または重合体被膜の種類やラビング条件、重合性液晶組成物の塗膜の乾燥条件や熱処理条件などによっても、液晶フィルムのチルト角を制御することができる。さらに、配向後の光重合工程での照射雰囲気や照射時の温度なども液晶フィルムのチルト角に影響を与える。即ち、液晶フィルムの製造プロセスにおけるほとんど全ての条件が多少なりともチルト角に影響を与えると考えてよい。従って、重合性液晶性組成物の最適化と共に、液晶フィルムの製造プロセスの諸条件を適宜選択することにより、任意のチルト角にすることができる。
【0171】
ホメオトロピック配向は、チルト角が基板界面から自由界面にかけて一様に85°〜90°に分布している。この配向状態は、1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物を添加した本発明の重合性液晶組成物を配向制御膜を形成させた支持基材表面上に塗布することによって得られる。本発明においては、支持基材表面が極性を有するときには、この支持基材表面に配向制御膜を形成させずに、本発明の重合性液晶組成物をその表面に直接塗布する場合にもホメオトロピック配向が得られやすい。特に、1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物を重合性液晶組成物に添加し、安定してホメオトロピック配向を得る場合は、有機ケイ素化合物の添加量を3〜10wt%程度にすることが好ましい。1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物は、アルコキシシラン、直鎖状の(ポリ)シロキサン、またはラダー型のシルセスキオキサンのいずれであってもよい。均一な配向性および良好な塗布性を発現させるためには、アルコキシシランおよび直鎖状の(ポリ)シロキサンがより好ましく、アルコキシシランが特に好ましい。
【0172】
アルコキシシランの好ましい例は、化合物(3−1)〜化合物(3−7)および化合物(3−11)〜化合物(3−16)である。直鎖状の(ポリ)シロキサン好ましい例は、化合物(4−1−1)〜化合物(4−1−14)、および化合物(4−2−1)である。ラダー型のシルセスキオキサンの好ましい例は、式(5)において、R11が−CH−であり、RおよびRがメチルであり、Rがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ビニル、プロペニル、5−ヘキセニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−6−イル、フェニル、フェニルメチル、フェニルエチルおよびメチルフェニルのいずれかであり、そしてZが0である化合物である。
【0173】
ホメオトロピック配向の均一性および支持基材との密着性を両立する点から有機ケイ素化合物を単独、または複数種の有機ケイ素化合物を併用して用いてもよい。有機ケイ素化合物は重合性液晶組成物に直接、または溶剤等で希釈して添加することができる。また、重合性液晶化合物の種類または重合性液晶組成物の組成によっては上記方法においても安定したホメオトロピック配向を得にくい場合がある。この場合はホモジニアス配向性または、チルト配向性が強いと考えられるため、その場合は有機ケイ素化合物の添加量を増加させたり、または該重合性化合物を必要最小量まで減らすなどの最適化により安定したホメオトロピック配向が得られる。このようなホメオトロピック配向は支持基材の表面がラビング等により処理されていなくても得ることができる。ラビング処理を行わないで塗膜した際に配向欠陥等が生じたりする場合にはラビング処理等を行うと均一なホメオトロピック配向が得られる。
【0174】
一方、垂直配向剤を支持基材上に形成する場合は、オクタデシルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤、レシチン、クロム錯体、垂直配向用のポリイミド系配向膜などの利用が挙げられる。さらに電場や磁場などを用いてチルト角を制御することも可能である。配向欠陥の無いホメオトロピック配向を得るために、支持基材の表面をラビングのような機械的手段を用いて配向処理してもよい。
【0175】
チルト配向は、基材の表面をラビングのような機械的手段を用いて配向処理した後、本発明の有機ケイ素化合物の添加量を少なくした重合性液晶組成物を用いた場合に得ることができる。この配向状態では、チルト角が一方の界面から他方の界面にかけて大きくなり、他方の界面において45°〜90°の配向状態である。安定した配向状態を得るためには有機ケイ素化合物の添加量を重合性液晶化合物に対する重量比で0.01〜0.03程度にすることが好ましい。一方、例えば側鎖を有するポリイミド系またはポリアミド酸系の配向膜形成剤を用いて、上記と同様に処理した基材に塗布した場合も同様のチルト配向を得ることができる
【0176】
ホモジニアス配向は、基材の表面をラビングのような機械的手段を用いて配向処理した後、有機ケイ素化合物の添加量をさらに少なくした重合性液晶組成物を用いた場合に得ることができる。安定したホモジニアス配向を得るためには、有機ケイ素化合物の使用量を重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物に対する重量比で0.001〜0.03程度にすることが好ましい。一方、例えば側鎖のないポリイミド系またはポリアミド酸系の配向剤を用いて、上記と同様に配向処理した基材に塗布した場合も同様のホモジニアス配向を得ることができる。
【0177】
上記の各配向形態の液晶フィルムの耐熱性は、構成される重合性液晶化合物の構造を適宜選択することにより向上する場合がある。本発明においては、2官能型の重合性液晶化合物において、特にメソゲン骨格の代表的な結合基であるエステル基をアルキルエステル基、アルキルエーテル基、フルオロアルキルエーテル基、アルキル基等とした場合に耐熱性が向上することが認められる。好ましいものとしては、MA−66〜70、MA−88、MA−113、MA−122、MA−128、MA−132、MA−145、MA−147、MA−152、MA−154、MA−155、MA−202〜203、MA−216〜237、VE−19〜20、VE−24などである。
【0178】
液晶フィルムの厚さは、目的とする素子に応じたレタデーションや液晶フィルムの複屈折率によって適当な厚さが異なる。従って、その範囲を厳密に決定することはできないが、好ましい液晶フィルムの厚さは、一応0.05〜50μmである。そして、より好ましい範囲は0.1〜20μmであり、さらに好ましい範囲は0.5〜10μmである。液晶フィルムの好ましいヘイズ値は1.5%以下であり、好ましい透過率は80%以上である。より好ましいヘイズ値は1.0%以下であり、より好ましい透過率は95%以上である。透過率については、可視光領域でこれらの条件を満たすことが好ましい。
【0179】
液晶フィルムは、液晶表示素子(特に、アクティブマトリックス型およびパッシブマトリックス型の液晶表示素子)に適用する光学補償素子として有効である。この液晶フィルムを光学補償膜として使用するのに適している液晶表示素子の型の例は、TN型(ツィステッド・ネマティック)、STN型(スーパー・ツィステッド・ネマティック)、ECB型(電気的に制御された複屈折)、OCB型(光学的に補償された複屈折)、DAP型(整列相の変形効果)、CSH型(カラー・スーパー・ホメオトロピック)、VAN/VAC型(垂直配向したネマチック/コレステリック)、OMI型(光学モード干渉)、SBE型(超複屈折効果)などである。さらにゲスト−ホスト型、IPS型(イン・プレーン・スイッチング)、強誘電性型、反強誘電性型などの表示素子用の位相レターダーとして、この液晶フィルムを使用することもできる。なお、液晶フィルムに求められるチルト角の厚み方向の分布や厚みなどのパラメーターの最適値は、補償すべき液晶表示素子の種類とその光学パラメーターに強く依存するので、素子の種類によって異なる。
【0180】
液晶フィルムは、偏光板などと一体化した光学素子としても使用することができ、この場合は液晶セルの外側に配置させられる。しかしながら、光学補償素子としての液晶フィルムは、セルに充填された液晶への不純物の溶出がないかまたは少ないので、液晶セルの内部に配置させることも可能である。重合性液晶組成物を使用する際にフォトリソグラフィー技術を適用すれば、液晶表示素子の青、緑、赤などの波長域の異なる画素ごとに、または1画素を分割して区分された所定の領域に、光学パラメーターの異なる液晶フィルムから成る光学補償層を配置することができる。例えば、特開2001−222009公報に開示されている方法を応用すれば、1画素を反射表示部と、液晶フィルムからなる1/4λ板を配置した透過表示部に分割することによって、光利用効率が改善された半透過反射型液晶表示素子を構築することができる。即ち、液晶表示素子の表示性能を更に向上させることが可能である。
【0181】
重合性液晶組成物に非重合性の低分子液晶を加えた混合物は、高分子分散型液晶表示素子またはホログラフィック高分子分散型液晶表示素子にすることができる。光重合性組成物に強誘電性液晶または反強誘電性液晶を加えた混合物は、高分子安定化強誘電性液晶表示素子または高分子安定化反強誘電性液晶表示素子にすることができる。これらの素子に関する素子自体の具体的な構築方法は以下の文献に記載されている。
特開平6−340587号公報.
IDW '98, P.105, 1998.
J. of Photopoly. Sci. Technol., 295-300, 13(2),(2000).
【0182】
光学活性化合物を含む重合性液晶組成物は、液晶骨格が螺旋を描くように規則的にねじれて配向している。そしてその螺旋ピッチの長さにより、得られる機能が異なる。螺旋ピッチの長さが数μm程度である場合、旋光子としての機能を有し、TN型やSTN型の光学補償素子への適用が可能である。
【0183】
螺旋ピッチの長さが可視光域程度になると、例えば、螺旋構造のねじれの方向が右である場合、液晶フィルムは、no×P<λ<ne×P(noは液晶層の常光に対する屈折率、neは液晶層の異常光に対する屈折率、Pは螺旋ピッチの長さ)の範囲の波長λを持つ右回りの円偏光のみを選択的に反射して、それ以外の波長を持つ右回りの円偏光や、全ての波長の左回りの円偏光を全て透過する。即ち、ある特定の波長の右円偏光と左円偏光を選択的に分離することが可能である。さらに、反射波長域は、入射光と相互作用する有効螺旋ピッチに依存するため、反射光および透過光の着色は視野角により変化する。
【0184】
このような反射光および透過光の着色を利用すれば、装飾部材などの意匠用途に応用することができる。液晶表示素子に用いるカラーフィルターへの応用も可能である。さらに、反射光および透過光が独特の金属光沢を有すること、視野角により色調が変化すること、そしてこのような光学特性を通常の複写機では複製できないことなどを考慮すると、偽造防止用途へ液晶フィルムを応用することも可能である。
【0185】
このような円偏光分離機能を応用して、液晶表示素子における光利用効率を改善することも可能である。例えば、螺旋構造を有し円偏光分離機能を発現する液晶フィルムをバックライトと偏光板で挟み、液晶フィルムと偏光板の間に、1/4λ板を挿入する。この表示素子においては、バックライトから出射された非偏光光が可視光の全波長域において効率よく直線偏光に変換され、偏光板における光の吸収を軽減できるので、光の利用効率が改善され液晶表示素子の輝度が向上する。
【0186】
液晶骨格が螺旋構造を有し、これによって円偏光分離機能を発現する液晶フィルムを、液晶セルの内面に設置することも可能である。Asia Display/IDW '01 P.129,2001などの文献に開示されている方法を応用する例を次に示す。まず、入射光を印加電圧に応じて1/2λずらす液晶セルを用意し、これの片側内面に液晶フィルムを設置する。次に、この液晶セルを向きが互いに相反する2枚の円偏光板で挟み、液晶フィルム側にバックライトを配置する。即ち、この液晶表示素子においては、1枚目の円偏光板、液晶セル、液晶フィルム(但し、液晶セル内面に設置)、2枚目の円偏光板、およびバックライトがこの順に重ねられている。このとき、液晶フィルムにおける液晶骨格の螺旋の向きと液晶フィルムの層数を、バックライト側の円偏光板と同じ向きの円偏光について、半分は反射し半分は透過するように調整すれば、高い透過率と反射率の半透過反射液晶表示素子が実現される。
【0187】
上記の用途においては、全可視光領域(波長350〜750nmの領域)で円偏光分離機能が発現されることが望まれることがある。これを実現するためには、重合性液晶組成物またはこれを重合した液晶フィルムにおいて、膜厚方向に螺旋ピッチが連続的に変化するようにすればよい。これを解決するための1つの方法は、膜厚方向における光学活性化合物の濃度分布を連続的に変化させることである。具体的には、重合性液晶組成物と紫外線に対する反応性の異なる光学活性化合物を添加して、紫外線を照射し、重合させる。これによって膜厚方向に光学活性化合物の濃度分布が生じ、螺旋ピッチを連続的に変化させることが可能である。もう1つの方法は、照射する紫外線強度や紫外線吸収色素の添加により、光学活性化合物の濃度分布を調整することである。さらに、螺旋ピッチの長さが異なる光重合性組成物を重合させた液晶フィルムを積層させることによっても、螺旋ピッチを連続的に変化させることが可能である。円偏光分離機能は、可視光領域のみならず、紫外線領域(100〜350nm)または近赤外線領域(750〜1500nm)に適用することも可能である。この円偏光分離機能を応用した紫外線または近赤外線の反射フィルター等の応用も可能である。
【0188】
螺旋ピッチの長さが可視光より十分に短い、例えば250nm程度以下の場合には、螺旋軸に垂直な面についての可視光域の屈折率は((ne+no)/2)0.5で表され、螺旋軸方向についての可視光域の屈折率はnoに等しく、このような光学的特性を有する光学フィルムは、ネガティブC−プレートと呼ばれる。このフィルムは液晶表示素子のうちVAN型、VAC型、OCB型などの表示素子に適した光学補償膜となる。
【0189】
光学活性化合物の使用量は、これを含有する重合性液晶組成物の螺旋ピッチが上記の目的に適うような量でなければならない。この含有量は、設定する螺旋ピッチと光学活性化合物のHTP(螺旋誘起力)の大きさによって決まるが、通常は重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物に対する重量比で0.50以下である。その好ましい比率は0.30以下である。このような系においても本発明における有機ケイ素化合物を添加することができる。支持基材との密着性を改善する場合に好ましい有機ケイ素化合物の添加量は、重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物に対する重量比で0.001〜0.10である。
【0190】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例で行った評価法を次に示す。
(1)重合条件:大気中または窒素雰囲気下において、室温で250Wの超高圧水銀灯を用いて30mW/cm(365nm)の強度の光を30秒間照射。
(2)基板と重合体フィルムの密着性:密着性は、JIS K5400 8.5.2の碁盤目テープ法に準じて、試験片に1mmの碁盤目を100個作り、セロテープ(登録商標)によりピーリング試験を行った。そして、碁盤目の剥離状態を観察し、次の条件で評価した。
○:剥がれなかった碁盤目の個数91〜100
△:剥がれなかった碁盤目の個数51〜90
×:剥がれなかった碁盤目の個数0〜50
(3)液晶配向状態の確認:回転可能な偏光子および検光子で回転/傾斜ステージを挟んだ光学系を用いて、得られた液晶フィルムを回転/傾斜ステージに設置し、フィルム面に対して垂直方向から傾斜させながらレタデーションを測定し確認した。ホメオトロピック配向およびツイスト配向の均一性は、2枚の偏光板をクロスニコルの状態にし、その間に液晶フィルムを入れ、正面から観察した場合に、液晶の配向欠陥由来の光りぬけが目視で確認されないとき(暗視野)を均一配向の状態とした。ホモジニアス配向、およびチルト配向の均一性は、2枚の偏光板をクロスニコルの状態にし、その間に液晶フィルムを入れ、フィルムを面内で回転させて暗視野とした場合に、液晶の配向欠陥由来の光りぬけが目視で確認されないときを均一配向の状態とした。支持基材にはケン化処理したTACフィルム、未ケン化処理TACフィルム、あるいはガラスを用いた。評価サンプルは、未ラビング処理のケン化処理TACフィルム、またはラビング処理のケン化処理TACフィルム上に塗膜・配向させ、上記重合条件下で重合させることによって得た。なお、実施例2〜14では、支持基材上に直接塗工を行う場合の配向性、密着性を評価し、実施例16〜20では、支持基材上に樹脂皮膜を形成した場合の配向性の評価を行った。
(4)ポリイミド系ワニスの分子量の測定にはGPCを用い、ポリスチレンを標準溶液とし、溶出液としてDMFを用いた。実施例において用いる記号の意味は次の通りであり、化学式中のMeはメチルである。
DDM:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
CBDA:シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BC:ブチルセロソルブ
【実施例1】
【0191】
<重合性液晶組成物(1)の調製>
[MIX1]


上記の組成物MIX1に対して重量比0.03の重合開始剤イルガキュアー907および重量比0.06の化合物(3−1)を添加した。この組成物にトルエンを加えて、トルエン75重量%の溶液とした。


【実施例2】
【0192】
実施例1で得られた重合性液晶組成物をスピンコートによりラビング等の表面処理を行っていないケン化処理TACフィルムに塗布し、60℃で3分間加熱することで溶剤を除去し、紫外線により窒素気流下で重合させることにより均一なホメオトロピック配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムをフィルム面に対して垂直方向から傾斜させながらレタデーションを測定した結果を図1に示した。ピーリング試験による評価は○であり、支持基材であるケン化処理TACフィルムとの密着性に優れていた。
【実施例3】
【0193】
化合物(3−1)の添加量をMIX1に対する重量比で0.1とした以外は実施例1と同様にして重合性液晶組成物を調整した。得られた重合性液晶組成物を用い、実施例2と同様にして均一なホメオトロピック配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムのレタデーションの傾斜角依存性は実施例2と同様の傾向であった。ピーリング試験による評価は○であり、ケン化処理TACフィルムとの密着性に優れていた。
【実施例4】
【0194】
化合物(3−1)の添加量をMIX1に対する重量比で0.1とした以外は実施例1と同様にして重合性液晶組成物を調整した。得られた重合性液晶組成物を用い、ケン化処理TACフィルム上をラビング処理した以外は実施例2と同様にして、均一なホメオトロピック配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムのレタデーションの傾斜角依存性は実施例2と同様の傾向であった。ピーリング試験による評価は○であり、このケン化処理TACフィルムとの密着性に優れていた。
【実施例5】
【0195】
化合物(3−1)の添加量をMIX1に対する重量比で0.01とした以外は実施例1と同様にして重合性液晶組成物を調整した。得られた重合性液晶組成物を用い、ケン化処理TACフィルム上をラビング処理した以外は実施例2と同様にして、均一なチルト配向を有する光学フィルムを得た。フィルム面に対して垂直方向からラビング方向に傾斜させながらレタデーションを測定した結果を図2に示した。ピーリング試験による評価は○であり、このTACフィルムとの密着性に優れていた。
【実施例6】
【0196】
化合物(3−1)の添加量をMIX1に対する重量比で0.005とした以外は実施例1と同様にして重合性液晶組成物を調整した。得られた重合性液晶組成物を用い、ケン化処理TACフィルム上をラビング処理した以外は実施例2と同様にして、均一なホモジニアス配向を有する光学フィルムを得た。フィルム面に対して垂直方向からラビング方向に傾斜させながらレタデーションを測定した結果を図3に示した。ピーリング試験による評価は○であり、このTACフィルムとの密着性に優れていた。
【実施例7】
【0197】
下記の有機ケイ素化合物(4−1−3)を用い、その添加量をMIX1に対する重量比で0.1とした以外は実施例1と同様にして重合性液晶組成物を調整した。得られた組成物を用いた以外は実施例2と同様にして、均一なホメオトロピック配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムのレタデーションの傾斜角依存性は実施例2と同様の傾向であった。ピーリング試験による評価は○であり、ケン化処理TACフィルムとの密着性に優れていた。


【実施例8】
【0198】
ケン化処理TACフィルム上をラビング処理した以外は実施例7と同様にして、均一なチルト配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムのレタデーションの傾斜角依存性は実施例5と同様の傾向であった。ピーリング試験による評価は○であり、このTACフィルムとの密着性に優れていた。
【実施例9】
【0199】
式(5−1)で示される構成単位を有し、数平均分子量Mnが1600である有機ケイ素化合物(以下、化合物(5−1)とする。)を用い、これをTHFに溶解して50重量%濃度の溶液とした。このTHF溶液を化合物(5−1)の比率がMIX1に対する重量比で0.1になるように添加した以外は実施例1と同様にして重合性液晶組成物を得た。この組成物を用いた以外は実施例2と同様にして、均一なホメオトロピック配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムのレタデーションの傾斜角依存性は実施例2と同様の傾向であった。ピーリング試験による評価は○であり、ケン化処理TACフィルムとの密着性に優れていた。


【実施例10】
【0200】
化合物(5−1)の比率を0.01になるようにし、そしてケン化処理TACフィルム上をラビング処理した以外は実施例9と同様にして、均一なチルト配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムのレタデーションの傾斜角依存性は実施例5と同様の傾向であった。ピーリング試験による評価は○であり、このTACフィルムとの密着性に優れていた。
【0201】
[比較例1]
有機ケイ素化合物を添加しないこと以外は実施例1と同様にして重合性液晶組成物を調製した。この組成物を用い、ケン化処理TACフィルムの表面をラビング処理した以外は実施例2と同様にして、均一なホモジニアス配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムのレタデーションの傾斜角依存性は実施例6と同様の傾向であった。ピーリング試験による評価は×であり、このTACフィルムとの密着性に問題があった。
【実施例11】
【0202】
<重合性液晶組成物−2の調製>
[MIX2]


上記の組成物MIX2に対して重量比0.03の重合開始剤イルガキュアー907および重量比0.03の有機ケイ素化合物(3−1)を添加した。この組成物にトルエンを加えて、トルエン75重量%の溶液とした。このようにして得られた重合性液晶組成物を用い、ケン化処理TACフィルムをラビングした以外は実施例2と同様にして、均一なツイスト配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムをフィルム面に対して垂直方向から傾斜させながらレタデーションを測定した結果を図4に示した。ピーリング試験による評価は○であり、このTACフィルムとの密着性に優れていた。
【0203】
[比較例2]
MIX2に有機ケイ素化合物(3−1)を添加しないこと以外は実施例11と同様にして、ツイスト配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムのレタデーションの傾斜角依存性は、実施例11と同様の傾向であった。ピーリング試験による評価は×であり、ケン化処理TACフィルムとの密着性に問題があった。
【実施例12】
【0204】
<重合性液晶組成物−3の調製>
[MIX3]



上記の組成物MIX3に対して重量比0.03の重合開始剤イルガキュアー907および重量比0.1の有機ケイ素化合物(3−1)を添加した。この組成物にトルエンを加えて、トルエン75重量%の溶液とした。このようにして得られた重合性液晶組成物を用いた以外は実施例2と同様にして、均一なホメオトロピック配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムのレタデーションの傾斜角依存性は実施例2と同様の傾向であった。ピーリング試験による評価は○であり、ケン化処理TACフィルムとの密着性に優れていた。
【実施例13】
【0205】
<重合性液晶組成物−4の調製>
[MIX4]



上記の組成物MIX4に対して重量比0.03の重合開始剤イルガキュアー907および重量比0.1の有機ケイ素化合物(3−1)を添加した。この組成物にトルエンを加えて、トルエン75重量%の溶液とした。このようにして得られた重合性液晶組成物を、重合性液晶組成物−4とする。重合性液晶組成物−4を用いた以外は実施例2と同様にして、均一なホメオトロピック配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムのレタデーションの傾斜角依存性は実施例2と同様の傾向であった。ピーリング試験による評価は○であり、ケン化処理TACフィルムとの密着性に優れていた。
【実施例14】
【0206】
<重合性液晶組成物−5の調製>
[MIX5]



上記の組成物MIX5に対して重量比0.03の重合開始剤イルガキュアー907および重量比0.1の有機ケイ素化合物(3−1)を添加した。この組成物にトルエンを加えて、トルエン75重量%の溶液とした。このようにして得られた重合性液晶組成物を用いた以外は実施例2と同様にして、均一なホメオトロピック配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムのレタデーションの傾斜角依存性は実施例2と同様の傾向であった。ピーリング試験による評価は○であり、ケン化処理TACフィルムとの密着性に優れていた。
【0207】
[比較例3〜5]
有機ケイ素化合物(3−1)を添加しないこと以外は実施12〜14と同様にして重合性液晶組成物を調製した。この組成物を用い、ケン化処理TACフィルムの表面をラビング処理した以外は実施例12〜14と同様にして行い、ホモジニアス配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムのレタデーションの傾斜角依存性は実施例6と同様の傾向であった。ピーリング試験による評価は×であり、このTACフィルムとの密着性に問題があった。
【0208】
実施例2〜14および比較例1〜5を表1にまとめた。
<表1>

(注1)有機ケイ素化合物の添加量は重合性液晶化合物に対する重量比を示す。
(注2)表面処理の有無の欄で、○はラビング処理を実施したことを示す。
【実施例15】
【0209】
<ポリアミック酸ワニスの調製(1)>
200ml−4つ口フラスコにDDM(3.02g;1.52×10−2mol)および脱水NMP(54.0g)を仕込み、乾燥窒素気流下で攪拌して溶解させ、溶液温度を5℃に下げた。これに、CBDA(2.98g;1.52×10−2mol)を加えて30時間反応させた。このとき、反応系の温度は特にコントロールしなかった。最後に、BC(40.0g)を加えて、重合体成分の濃度が6.0重量%のポリアミック酸ワニスを調製した。これをポリアミック酸ワニスA1とする。なお、本発明の実施例では、粘度をチェックしながら増粘反応を進行させた。そして、粘度の増加が少なくなった時点でBCを添加して、増粘反応の進行を止めた。BCを添加後、加熱することによってワニスの粘度を調整し、55〜65mPa・sになったところで加熱操作を停止した。粘度の測定にはE型粘度計を使用し、25℃で測定した。そして、得られたワニスは低温にて保存した。得られたポリアミック酸の重量平均分子量は50,000であった。なお、重量平均分子量は、島津製作所製GPC測定装置(クロマトパックC−R7A)を用いてカラム温度50℃にて測定した。
【実施例16】
【0210】
実施例15で得られたポリアミック酸ワニスA1をスピンコート法によりガラス基板上に塗布し、80℃で3分間予備焼成した後、90℃で5分間加熱することで重合体被膜を形成した。次に重合性液晶組成物−4をスピンコート法によりラビング等の表面処理を行っていない重合体被膜上に塗布し、実施例2と同様の方法で硬化させ光学フィルムを得た。2枚の偏光板をクロスニコル状態にして、得られた光学フィルムを挟んだところ暗視野で均一なホメオトロピック配向を有する光学フィルムであり、この光学フィルムをフィルム面に対して垂直方向から傾斜させながらレタデーションを測定したところ、図1と同様な結果であった。
【実施例17】
【0211】
ポリアミック酸ワニスの焼成条件を210℃で30分としたこと以外は実施例16と同様にして、均一なホメオトロピック配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムをフィルム面に対して垂直方向から傾斜させながらレタデーションを測定したところ、図1と同様な結果であった。
【0212】
[比較例6および7]
有機ケイ素化合物(3−1)を添加しないこと以外は実施16〜17と同様にして重合性液晶組成物からの硬化フィルムを得たが、液晶は配向しなかった。
【実施例18】
【0213】
チッソ(株)より販売されているSF330を希釈して25%水溶液として用い、これを支持基材であるケン化処理TACフィルム上にスピンコートにより塗布し、その後100℃で3分間乾燥して配向制御膜を形成した。次に重合性液晶組成物−4をスピンコート法によりラビング等の表面処理を行っていない重合体被膜上に塗布し、実施例2と同様の方法で硬化させ光学フィルムを得た。2枚の偏光板をクロスニコル状態にして、得られた光学フィルムをはさんだところ暗視野で均一なホメオトロピック配向を有する光学フィルムであり、この光学フィルムをフィルム面に対して垂直方向から傾斜させながらレタデーションを測定したところ、図1と同様な結果であった。
【実施例19】
【0214】
ケン化処理TACフィルムを未ケン化処理TACフィルムに変えたこと以外は実施例18と同様にして、均一なホメオトロピック配向を有する光学フィルムを得た。この光学フィルムをフィルム面に対して垂直方向から傾斜させながらレタデーションを測定したところ、図1と同様な結果であった。
【0215】
[比較例8]
有機ケイ素化合物(3−1)を添加しないこと、および未ケン化処理TACフィルム上にSF330を塗工しないこと以外は実施例19と同様にして重合性液晶組成物からの硬化フィルムを得たが、液晶は配向しなかった。
【0216】
実施例16〜19および比較例6〜8を表2にまとめた。
<表2>

(注)TAC−1はケン化処理TACフィルムを示し、TAC−2は未ケン化処理TACフィルムを示す。
【0217】
上記の実施例および比較例の結果から、本発明の重合性液晶組成物から得られた光学フィルムが支持基材であるケン化処理TACフィルムとのよい密着性を有することがわかる。さらに支持基材の配向処理の有無や有機ケイ素化合物の含有量を調整すること、あるいは支持基材の表面を特定の樹脂で被覆処理することにより、支持基材の種類によらず液晶骨格の配向状態を制御することができることもわかる。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明により、密着性、耐熱性、配向均一性に優れた液晶フィルムを得ることができ、支持基材となるフィルムやガラス基板等に対する密着性向上のための表面処理を簡略化できる。本発明はラビング等の機械的な表面処理を行った支持基材にも適用することができ、支持基材の表面処理の有無や有機ケイ素化合物の含有量を調整することにより、液晶骨格の配向状態を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】実施例2で得られた光学フィルムについて、フィルム面に対して垂直方向から傾斜させながらレタデーションを測定した結果。
【図2】実施例5で得られた光学フィルムについて、フィルム面に対して垂直方向からラビング方向に傾斜させながらレタデーションを測定した結果。
【図3】実施例6で得られた光学フィルムについて、フィルム面に対して垂直方向からラビング方向に傾斜させながらレタデーションを測定した結果。
【図4】実施例11で得られた光学フィルムについて、フィルム面に対して垂直方向から傾斜させながらレタデーションを測定した結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性液晶化合物と1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物とを含有する重合性液晶組成物。
【請求項2】
式(1)で示される重合性液晶化合物と1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物とを含有する重合性液晶組成物:


ここに、Wは水素、1〜25個の炭素原子を有するアルキル、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル、ハロゲン、シアノ、または−(G−Sp)−Pであり;これらのアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−または−C≡C−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Pは重合性の基であり;Spは1〜20個の炭素原子を有するアルキレンであり、このアルキレンにおいて、炭素原子数が2以上であるときには、隣接しない−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;Gは単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−SO−O−、−O−SO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−(CHO−、−O(CH−、−CH=CH−CHO−、−OCH−CH=CH−、−(CH−CFO−、または−OCF−(CH−であり;rは0または1であり;そして、MGは式(2)で示されるメソゲン骨格である:


ここに、TおよびTは独立して、任意の−CH=が−N=で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、任意の−CH−が−O−または/および−S−で置き換えられてもよく、そして隣り合わない2つの炭素が架橋されてもよい1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルであり;これらの環における任意の水素はハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−NO、または1〜7個の炭素原子を有するアルキルで置き換えられてもよく;この1〜7個の炭素原子を有するアルキルにおいて、任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Gは単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO−O−、−O−SO−、−OCF−、−CFO−、−CF=CF−、−CFCF2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−CHO−、−OCH−CH=CH−、−CONH−、−NHCO−、−(CH−COO−、−OCO−(CH−、−(CH−、−O(CH2−、−(CH2O−、または−O(CH2O−であり;これらの基中のaは1〜20の整数であり;そして、fは0〜4の整数であり、fが2〜4であるとき、複数のTはそれぞれ異なっていても同じであってもよく、複数のGもそれぞれ異なっていても同じであってもよい。
【請求項3】
1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物と、Wが1〜10個の炭素原子を有するアルキル、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ、−OCF、−CN、フッ素または−(G−Sp)−Pであり、そしてPがアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、CH=C(CF)−COO−、CH=CF−COO−、ビニルオキシ、マレイミド基またはビニルカルボニルである重合性液晶化合物とを含有する、請求項2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項4】
1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物と、Wが1〜10個の炭素原子を有するアルキル、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ、−OCF、−CN、フッ素または−(G−Sp)−Pであり、Pがアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、CH=C(CF)−COO−、CH=CF−COO−、ビニルオキシ、マレイミド基またはビニルカルボニルであり;Gが単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−CHO−、−OCH−CH=CH−、−(CH−CFO−、または−OCF−(CH−であり;Spが1〜20個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレンにおいて、炭素原子数が2以上であるときには、隣接しない−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そしてGが単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−(CH−COO−、−OCO−(CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CHCH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−OCH−または−CHO−である重合性液晶化合物とを含有する、請求項2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項5】
1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物と、Wが1〜10個の炭素原子を有するアルキル、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ、−OCF、−CN、フッ素または−(G−Sp)−Pであり;Pがアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、CH=C(CF)−COO−、またはCH=CF−COO−であり;Gが単結合または−O−であり;Spが2〜10個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレンにおいて、隣接しない−CH−は−O−で置き換えられてもよく;Gが単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−(CH−COO−、−OCO−(CH−、−CHCH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−OCH−または−CHO−である重合性液晶化合物とを含有する、請求項2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項6】
1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物と、Wが1〜10個の炭素原子を有するアルキル、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ、−OCF、−CN、フッ素または−(G−Sp)−Pであり;Pがアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、CH=C(CF)−COO−、またはCH=CF−COO−であり;Gが単結合または−O−であり;Spが4〜8個の炭素原子を有するアルキレンであり;Gが単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−(CH−COO−、−OCO−(CH−、−CHCH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−OCH−または−CHO−であり;rが1であり;そしてfが0〜2の整数である重合性液晶化合物とを含有する、請求項2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項7】
1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物が式(3)で示される化合物である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物:


ここに、Rは水素または1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基であり;Rは1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基であり;Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキレンであり、このアルキレン中の隣り合わない1〜2個の−CH−は−O−、−NH−、−CH=CH−、−CONH−、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキレンまたは6〜10個の炭素原子を有するアリーレンで置き換えられてもよく、そしてこのアリーレンの任意の水素は1〜4個の炭素原子を有するアルキルで置き換えられてもよく;そして、nは0〜2の整数である。
【請求項8】
が水素または1〜3個の炭素原子を有する炭化水素基であり;Rが1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基であり;そして、Rが1〜12個の炭素原子を有するアルキレンであり、このアルキレン中の隣り合わない1〜2個の−CH−は−O−、−NH−、−CONH−、または6〜10個の炭素原子を有するアリーレンで置き換えられてもよく、そしてこのアリーレンの任意の水素は1〜4個の炭素原子を有するアルキルで置き換えられてもよい、請求項7に記載の重合性液晶組成物。
【請求項9】
が水素または1〜3個の炭素原子を有する炭化水素基であり;Rが1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基であり;そして、Rが1〜12個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレン中の隣り合わない1〜2個の−CH−は−O−、−NH−またはフェニレンで置き換えられてもよい、請求項7に記載の重合性液晶組成物。
【請求項10】
が水素または1〜3個の炭素原子を有する炭化水素基であり;Rが1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基であり;そして、Rが3〜12個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレン中の隣り合わない1〜2個の−CH−は−O−または−NH−で置き換えられてもよい、請求項7に記載の重合性液晶組成物。
【請求項11】
1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物が式(4)で示される化合物である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物:


ここに、RおよびRは独立して1〜4個の炭素原子を有するアルキル、またはフェニルであり;Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキレンであり、このアルキレンにおいて任意の−CH−は−O−またはフェニレンで置き換えられてもよく;このフェニレンの任意の水素は1〜4個の炭素原子を有するアルキルで置き換えられてもよく;Mは単結合またはフェニレンであり;そして、mは0〜10の整数である。
【請求項12】
およびRが独立して1〜4個の炭素原子を有するアルキル、またはフェニルであり;そして、Rが1〜10個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレン中の任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい、請求項11に記載の重合性液晶組成物。
【請求項13】
およびRが独立して1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり;そして、Rが1〜10個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレン中の任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい、請求項11に記載の重合性液晶組成物。
【請求項14】
およびRがメチルまたはエチルであり;そして、Rが1〜10個の炭素原子を有するアルキレンであって、このアルキレン中の任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい、請求項11に記載の重合性液晶組成物。
【請求項15】
1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物が式(5)で示される構成単位を有するシルセスキオキサン誘導体である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物:


ここに、R、RおよびRは独立して、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルケニル、6〜10個の炭素原子を有するアリール、または7〜10個の炭素原子を有するアリールアルキルであり;R10は1〜4個の炭素原子を有するアルキル、CHCO−、CH=CHCO−、またはCH=C(CH)CO−であり;zは0または0.05〜2.0であり;(y1+y2)は、z=0のとき0.1〜2.0であり、z≠0のとき0.05〜2.0であり、そしてy2は0またはy1の3倍以下であり;(y1+y2+z)は0.1〜3.0であり;そしてR11は、炭素原子数が1〜8であり、そして隣り合わない1〜2個の−CH−が−O−または−NH−で置き換えられてもよいアルキレンである。
【請求項16】
およびRがメチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチルまたはフェニルであり、R10が1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、そしてR11が−CH−である、請求項15に記載の重合性液晶組成物。
【請求項17】
1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物の使用量が、重合性液晶化合物に対する重量比で0.0001〜0.30である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物を基板上に直接塗布して得られる重合性液晶層。
【請求項19】
基板がガラス基板である、請求項18に記載の重合性液晶層。
【請求項20】
基板がプラスチック基板である、請求項18に記載の重合性液晶層。
【請求項21】
基板が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース、トリアセチルセルロース、トリアセチルセルロースの部分鹸化物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびノルボルネン樹脂から選ばれるいずれか1つを用いて得られるプラスチック基板である、請求項18に記載の重合性液晶層。
【請求項22】
基板が機械的、物理的または化学的に表面処理されたものである、請求項18〜21のいずれか1項に記載の重合性液晶層。
【請求項23】
表面処理がラビング処理である、請求項22に記載の重合性液晶層。
【請求項24】
表面処理がコロナ処理またはプラズマ処理である、請求項22に記載の重合性液晶層。
【請求項25】
表面処理が重合体を用いる被覆処理である、請求項22に記載の重合性液晶層。
【請求項26】
表面処理が、分子鎖中にカルボキシル基、水酸基およびアミノ基から選択される少なくとも1つの極性基を有する重合体を用いる被覆処理である、請求項22に記載の重合性液晶層。
【請求項27】
表面処理が、ポリイミド系重合体の溶液を用いる被覆処理である、請求項22に記載の重合性液晶層。
【請求項28】
表面処理が、ポリアミック酸、ポリアミック酸アミド、ポリアミック酸エステル、可溶性ポリイミドおよびポリアミドイミドから選ばれる少なくとも1つの溶液を用いる被覆処理である、請求項22に記載の重合性液晶層。
【請求項29】
表面処理が、ポリアミック酸およびポリアミック酸アミドのどちらかの溶液を用いる被覆処理である、請求項22に記載の重合性液晶層。
【請求項30】
表面処理が、ポリアミック酸、ポリアミック酸アミド、ポリアミック酸エステル、可溶性ポリイミドおよびポリアミドイミドから選ばれる少なくとも2つの溶液を用いる被覆処理である、請求項22に記載の重合性液晶層。
【請求項31】
表面処理が、1種類のポリアミック酸のみの溶液、または2種類のポリアミック酸の溶液を用いる被覆処理である、請求項22に記載の重合性液晶層。
【請求項32】
表面処理が、アミノ基を有するトリアルコキシシランの加水分解物の溶液を用いる被覆処理である、請求項22に記載の重合性液晶層。
【請求項33】
表面処理が、重合体を用いて被覆処理し、さらにラビング処理するものである、請求項22に記載の重合性液晶層。
【請求項34】
重合性液晶層中の液晶骨格の配向状態がホメオトロピック配向である、請求項18〜33のいずれか1項に記載の重合性液晶層。
【請求項35】
重合性液晶層中の液晶骨格の配向状態がチルト配向である、請求項18〜33のいずれか1項に記載の重合性液晶層。
【請求項36】
重合性液晶層中の液晶骨格の配向状態がホモジニアス配向である、請求項18〜33のいずれか1項に記載の重合性液晶層。
【請求項37】
重合性液晶層中の液晶骨格の配向状態がツイスト配向である、請求項18〜33のいずれか1項に記載の重合性液晶層。
【請求項38】
請求項18〜37のいずれか1項に記載の重合性液晶層を重合させて得られる液晶フィルム。
【請求項39】
請求項38に記載の液晶フィルムの少なくとも1つを有する光学補償素子。
【請求項40】
請求項38に記載の液晶フィルムの少なくとも1つと偏光板とを有する光学素子。
【請求項41】
請求項39に記載の光学補償素子を液晶セルの内面または外面に有する液晶表示装置。
【請求項42】
請求項40に記載の光学素子を液晶セルの内面または外面に有する液晶表示装置。
【請求項43】
式(MA−116)で示される化合物、式(MA−163)、式(MA−213)、式(MA−217)および式(MA−228)のいずれか1つで示される化合物、並びに式(3−1)、式(4−1−3)および式(5−1)のいずれか1つで示される化合物を含有する重合性液晶組成物:










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−126757(P2006−126757A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329158(P2004−329158)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】