説明

有機薄膜トランジスタ、有機発光素子及び有機発光ディスプレイ

有機薄膜トランジスタの製造方法は、ソース電極及びドレイン電極を設ける工程と、前記ソース電極及びドレイン電極上に自己組織化薄膜層を形成する工程と、前記ソース電極とドレイン電極との間のチャネル領域内に、溶媒と有機半導体材料とを含む溶液を塗布する工程とを有し、前記自己組織化薄膜層の材料は、電荷を受容又は供与することによって有機半導体材料を化学的にドーピングするドーパント部分と、前記ドーパント部分に結合し且つ前記ソース電極と前記ドレイン電極とに選択的に結合する別個の連結部分とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタ及びその製造方法に関する。また、本発明は、有機発光素子及びその製造方法に関する。さらに、本発明は、有機薄膜トランジスタと有機発光素子とを有する有機発光ディスプレイ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタは主に、バイポーラ接合トランジスタと電界効果トランジスタの2つのタイプに分類することができる。これら2つのタイプは、3つの電極と、これら電極間においてチャネル領域に設けられる半導体材料とを備えた共通の構造を有している。バイポーラ接合トランジスタの3つの電極は、エミッタ、コレクタ、ベースとして知られている。一方、電界効果トランジスタでは、ソース、ドレイン、ゲートとして知られている。バイポーラ接合トランジスタは、エミッタ−コレクタ間電流がベース−エミッタ間電流によって制御されるため、電流制御素子と呼称されることもある。これに対し、電界効果トランジスタは、ソース−ドレイン間電流がゲート−ソース間電圧によって制御されるため、電圧制御素子と呼称されることもある。
【0003】
また、トランジスタは、正電荷担体(正孔)を伝導させる半導体材料から構成されるか、又は負電荷担体(電子)を伝導させる半導体材料から構成されるかによって、p型とn型に分類することができる。半導体材料は、電荷を受容し、伝導させ、供与する能力によって選択される。半導体材料の正孔又は電子を受容し、伝導させ、供与する能力は、半導体材料にドーピングを行うことによって増大させることができる。ソース電極及びドレイン電極に使用される材料もまた、正孔又は電子を受容し、注入する能力によって選択される。例えば、p型トランジスタ素子の場合は、正孔を受容し、伝導させ、供与することに優れた半導体材料を選択し、且つ正孔を注入すること、また該半導体材料から正孔を受容することに優れたソース/ドレイン電極材料を選択することによって形成することができる。電極のフェルミ準位と半導体材料のHOMO準位を可及的に整合させることによって、正孔注入及び受容能力を増大させることができる。一方、n型トランジスタ素子の場合は、電子を受容し、伝導させ、供与することに優れた半導体材料を選択し、且つ該半導体材料に電子を注入し、また該半導体材料から電子を受容することに優れたソース/ドレイン電極材料を選択することによって形成することができる。電極のフェルミ準位と半導体材料のLUMO準位を可及的に整合させることによって、電子注入及び受容能力を増大させることができる。
【0004】
複数の構成要素を薄膜状に積層してトランジスタを形成することで薄膜トランジスタが形成される。そのような素子において、半導体材料として有機材料を使用したものは、有機薄膜トランジスタとして公知である。
【0005】
有機薄膜トランジスタにおいては、様々な構成が知られている。そのような素子の1つとして、絶縁ゲート型電界効果トランジスタが挙げられる。このトランジスタは、ソース電極及びドレイン電極と、それら電極間のチャネル領域に設けられた半導体材料と、該半導体材料の近傍に設けられたゲート電極と、チャネル領域において該ゲート電極と該半導体材料との間に設けられた絶縁層とを備える。
【0006】
そのような有機薄膜トランジスタの一例が、図1に示されている。図示された構造は、(図示されていない)基板上に積層される。該構造は、ソース電極及びドレイン電極2、4を有し、これら電極は、電極間に位置するチャネル領域6によって互いに離間している。有機半導体(OSC)8はチャネル領域6に形成され、ソース及びドレイン電極2、4の少なくとも一部を覆うように延在してもよい。誘電体材料からなる絶縁層10は、有機半導体8の上に形成され、ソース及びドレイン電極2、4の少なくとも一部を覆うように延在してもよい。最後に、ゲート電極12が、絶縁層10の上に積層される。ゲート電極12は、チャネル領域6の上方に位置し、ソース及びドレイン電極2、4の少なくとも一部を覆うように延在してもよい。
【0007】
上述の構造は、ゲートが素子の最上部に位置するためトップゲート型有機薄膜トランジスタとして知られている。又は、素子の底部にゲートを設けるいわゆるボトムゲート型有機薄膜トランジスタも知られている。
【0008】
上述のボトムゲート型有機薄膜トランジスタの一例を、図2に示す。図1の構造と図2の構造との関係を明確化するため、対応する要素については同一の参照符号を用いている。図2に示されるボトムゲート構造は、基板1上に形成されたゲート電極12と、該ゲート電極12上に形成された誘電体材料の絶縁層10とを備える。ソース及びドレイン電極2、4は、誘電体材料の該絶縁層10上に形成される。ソース及びドレイン電極2、4は、ゲート電極上においてチャネル領域6を介して離間している。有機半導体(OSC)8は、チャネル領域6に形成される。有機半導体8は、ソース及びドレイン電極2、4の少なくとも一部の上に延在してもよい。
【0009】
有機薄膜トランジスタにおける課題の1つとして、ソース及びドレイン電極と有機半導体(OSC)との間で良好なオーム接触を確保することがある。これを実現するには、薄膜トランジスタをONした際に接触抵抗を最小にする必要がある。p−チャネル素子において取出し障壁及び注入障壁を最小にするための典型的な方法として、OSCのHOMO準位と良好に整合する仕事関数を有するソース及びドレイン電極材料を選択することが挙げられる。例えば、一般的に知られるOSCの多くは、金の仕事関数と良好に整合するHOMO準位を有している。従って、金は、ソース及びドレイン電極として比較的良好な材料となる。同様に、n−チャネル素子において取出し障壁及び注入障壁を最小にするための典型的な方法としては、OSCのLUMO準位と良好に整合する仕事関数を有するソース及びドレイン電極材料を選択することが挙げられる。
【0010】
上述の構成における問題の1つに、OSCのHOMO/LUMOと良好に整合するエネルギ準位の仕事関数を有する材料が比較的少ないという問題がある。そのような材料の多くは、例えば金のように高価であり、及び/又は、成膜によってソース及びドレイン電極を形成することが困難な場合もある。また、適切な材料が入手できる場合であっても、所望のOSCに対して当該材料が完全に整合しない可能性がある。さらに、OSCを変更する場合、ソース及びドレイン電極に用いる材料も変更しなければならない場合がある。
【0011】
よく知られた解決策として、ソース及びドレイン電極上に自己組織化双極子薄膜層(thin self-assembled dipole layer)を設けてエネルギ準位の整合を改善する方法がある。理論により限定されるものではないが、自己組織化双極子薄膜層による電磁場が、ソース/ドレイン電極材料のエネルギ準位、及び/又はソース/ドレイン電極近傍のOSCのエネルギ準位をシフトさせ、これにより、OSCとソース/ドレイン材料との間のエネルギ準位整合が改善される。
【0012】
自己組織化双極子層の使用により、ソース/ドレイン材料とOSCとの間のエネルギ準位の整合を改善することはできるが、この技術による該エネルギ準位のシフト量は、僅かに十分の数eVに過ぎない。従って、ソース及びドレイン電極に用いられる材料の種類はかなり制限される。もしソース及びドレインに対して広範囲な種類の材料を使用できれば好都合であり、その場合、プロセス互換性を基準に材料を選択できるようになる。別の問題として、自己整合化双極子薄膜層がソース/ドレイン電極上だけでなく、チャネル領域内にも形成される場合、チャネル領域内のOSCの動作特性が影響を受けてしまうという不都合がある。
【0013】
有機薄膜トランジスタ動作を改善するため、従来技術において、いくつかの方法が提案された。
【0014】
米国特許出願公開第2005/133782号明細書では、有機半導体とソース/ドレイン電極表面との間における電荷輸送を容易にするため、ベンゾニトリルやテトラシアノキノジメタン(TCNQ)のような置換されたベンゾニトリルを用いてソース/ドレインパラジウム金属にドーピングを行うことが開示されている。OSC及び/又はソース・ドレインのエネルギ準位を電磁場効果によってわずかだけ変化させる上述の双極子層と違い、ベンゾニトリルは、電子を受容することでOSCを化学的にドーピングする(p型ドーピング)。従って、電極近傍のOSCの伝導度が増加し、電荷輸送は、上述の双極子層を用いる場合よりも大幅に改善される。
【0015】
米国特許出願公開第2005/133782号明細書では、ニトリルは、ソース/ドレイン金属に結合するように特別に設計された基による官能基化をすることなく、直接使用される。米国特許出願公開第2005/133782号明細書には、ドーパントニトリル基はそれ自身でソース/ドレインパラジウム金属に結合し、ソース/ドレインに連結したドーパントニトリル基を残留させてチャネルには残留させないように、未結合のドーパントは洗浄により除去されることが明記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/133782号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、有機薄膜トランジスタにおけるソース/ドレイン電極と有機半導体材料との間で良好なオーム接触を確保するために、改善された有機薄膜トランジスタ及び改善されたソース/ドレイン電極処理方法を提供することにある。
【0018】
図6は、有機発光素子の構造を示す。該有機発光素子は、透明なガラス又はプラスチック基板100と、例えばインジウムスズ酸化物からなるアノード102と、カソード104とを備える。アノード102とカソード104との間には、有機発光層103が設けられる。
【0019】
動作に際し、正孔は、アノードを介して素子に注入され、電子は、カソードを介して素子に注入される。正孔と電子は、有機発光層において結合して、励起子(エキシトン)を形成し、放射崩壊を起こして発光する(光検出素子では、この過程と逆のことが起こる)。
【0020】
例えば、電荷輸送層、電荷注入層又は電荷ブロック層のような別の層をアノード102とカソード104との間に設けてもよい。
【0021】
特に、ドーピングされた有機材料で形成された導電性正孔注入層105をアノード2と有機発光層3との間に設けて、アノードから半導体ポリマー層への正孔注入をアシストすることが望ましい。ドーピングされた有機正孔注入材料としては、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)、特に欧州特許第0901176号及び第0947123号に開示されているポリスチレンスルホン酸(PSS)をドーピングしたPEDT、又は米国特許第5723873号及び第5798170号に開示されているポリアニリン等が挙げられる。
【0022】
さらにまた、半導体正孔輸送層106を導電性正孔注入層105と有機発光層103との間に設けることが望ましい。正孔輸送層106は、5.5eV以下のHOMO準位を有するものであることが好ましく、4.8〜5.5eVのHOMO準位を有するものであることが一層好ましい。
【0023】
有機発光層3とカソード4との間に電子輸送層が存在する場合、該電子輸送層は、3〜3.5eVの範囲にLUMO準位を有するものであることが好ましい。
【0024】
素子のボトム電極を、アノードではなくカソードとすることによって、図示された素子の構造を逆にすることもできる。
【0025】
本発明のある一実施形態の目的は、ボトム電極と、該ボトム電極上に設けられた有機半導体材料との間で良好なオーム接触を確保するために、改善された有機発光素子及び有機発光素子における改善されたボトム電極処理方法を提供することにある。
【0026】
アクティブマトリックス型有機発光ディスプレイは、ディスプレイ画素を構成する有機発光素子のマトリックスを備える。各有機発光素子は、上述したように、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に設けられた有機発光層とを有する。
【0027】
アクティブマトリックス型有機発光ディスプレイの画素は、画素に流れる電流をメモリ要素によって変化させることによって、発光状態と非発光状態との間をスイッチングさせることができる。該メモリ要素は一般に、蓄積コンデンサとトランジスタとを備える。
【0028】
本発明のある一実施形態の目的は、共通の基板上に薄膜トランジスタと有機発光素子を設けることで形成される改善されたアクティブマトリックス型有機発光ディスプレイ及び該ディスプレイの改善された製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の第1の一実施形態によれば、有機薄膜トランジスタの製造方法であって、
ソース電極及びドレイン電極を設ける工程と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に自己組織化薄膜層を形成する工程と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のチャネル領域内に、溶媒と有機半導体材料とを含む溶液を塗布する工程と、
を有し、
前記自己組織化薄膜層の材料は、電荷を受容又は供与することによって有機半導体材料を化学的にドーピングするドーパント部分と、前記ドーパント部分に結合し且つ前記ソース電極と前記ドレイン電極とに選択的に結合する別個の連結部分とを備える有機薄膜トランジスタの製造方法が提供される。
【0030】
ドーパント部分と、別個の連結部分とを使用することにより、選定されたOSCに対して良好な電荷輸送を実現するために、ドーパント部分を選択できるようになり、さらに、(ボトムゲート型素子における)チャネル誘電体や(トップゲート型素子における)ソース−ドレイン間の基板表面ではなく、選ばれたソース/ドレイン材料に対して選択的に結合させるために連結部分を選択できるようになる。
【0031】
このような構成によって、米国特許出願公開第2005/133782号明細書に開示されている構成、すなわち、電荷輸送及びソース/ドレイン電極への結合を実現するためにドーパント部分を選択する構成が改善される。特に、本発明において、良好なドーパントであるが、ある特定のソース/ドレイン電極材料には結合しないか又は結合する性質を有しないドーパント部分を選択する際、選択の自由度が広がる。さらに、ソース/ドレイン電極に対して選択的に結合するがドーパントの性質を有しない連結部分を選択する際にも選択の自由度が広がる。例えば、米国特許出願公開第2005/133782号明細書に開示されているベンゾ−ニトリルドーパントは、ある特定のOSC材料に対してp型ドーパントとして用いることが可能であり、且つパラジウムに対して連結する性質を有するが、該ベンゾ−ニトリルドーパントは、別のOSC材料に対しては適せず(例えば、該ベンゾ−ニトリルドーパントは、n型OSC材料のn型ドーピングには使用できない)、また、別の種類のソース/ドレイン材料に対しては選択的に結合しない場合もある。一方、本発明では、電荷輸送特性及び任意のOSCやソース/ドレイン材料に対する選択連結特性の両方に対して最適化された材料からなる自己組織化薄膜層が提供される。
【0032】
本発明によれば、ソース/ドレインコンタクト及びこの層が提供することになる関連する金属トラッキング(metal tracking)を形成する際、幅広い種類の材料を使用することが可能となる。材料は、該材料の仕事関数が所定のOSCエネルギ準位に整合するかどうかという要求を考慮せずに、導電率及びプロセス利便性によって選択することができる。従って、金(及びパラジウム)のような一般に用いられるソース/ドレイン電極を、パターニング加工し易い低コストの材料に置き換えることができる。
【0033】
さらに、金のような重金属は、有機薄膜トランジスタの動作中、OSC中に拡散する傾向にあり、OSCの機能特性に悪影響を与えることが見出されてきている。本発明によれば、このような拡散による悪影響のないソース/ドレイン材料を選択できるようになる。
【0034】
さらに、ドーパント部分及び別個の連結部分を使用することで、溶液から形成されたOSCに対して良好な電荷輸送が実現されることがわかった。理論に制限されるわけではないが、OSC膜を乾燥して良好なドーピングとなるようにOSCを形成する際、連結部分によって、ドーパント部分がOSC溶液内に突出すると考えられる。
【0035】
該連結部分は、例えば1以上の共有結合によって、ソース/ドレイン電極に化学的に結合してもよい。さらに、該連結部分は、例えば1以上の共有結合によって、ドーパント部分に化学的に結合してもよい。例えば、連結部分は、該連結部分がソース及びドレイン材料と反応して脱離する際にソース及びドレインとの間に結合を形成する脱離基を備えてもよい。例えば、連結部分は、シリル基、チオール基、アミン基、リン酸基のうちの少なくとも1つを備えてもよい。勿論、連結部分は、ソース及びドレイン電極の表面に対する結合特性(この特性は電極材料に依存する)に基づいて選択してもよい。例えば、チオールは、金や銀に対する結合に特に適している。シランは、酸化物(例えば、酸化された表面を有する金属からなるSD電極)に対する結合に適している。
【0036】
このような構成により、ドーパント部分はソース/ドレイン電極と強力に結合する。従って、動作中におけるソース/ドレインからの拡散を防止し、また、チャネル領域のような他の領域から余分なドーパントを除去する際の洗浄工程において、電極領域のドーパント部分が除去されてしまうことを防止できる。
【0037】
ドーパント部分は、有機半導体材料から電子を受容して前記有機半導体材料をp型ドーピングする電子受容部分であってもよい。電子を受容し易くするため、p型ドーパントのLUMO準位は−4.3eVより小さいことが好ましい。電子を供与するため、p型ドーパントと共に用いられる有機半導体材料のHOMO準位は−5.5eV以上がよい。p型チャネル素子においては、ドーパントのLUMO準位は−4.3eVより小さく、有機半導体材料のHOMO準位は−5.5eV以上であることが最も好ましい。
【0038】
これら負の値に関する誤解を避けるため、文言「−5.5eV以上」には、−5.4eVが含まれ且つ−5.6eVが含まれず、また、文言「−4.3eVより小さい」には、−4.4eVが含まれ且つ−4.2eVは含まれないこととする。
【0039】
−5.5eV以上のHOMO準位を有する有機半導体材料と、−4.3eVより小さいLUMO準位を有するドーパントとを組み合わせたものは、ソース及びドレインの接触領域が導電構造となることがわかった。理論に束縛されるわけではないが、−5.5eV以上のHOMO準位を有する有機半導体材料は良好な正孔輸送・注入特性を示し、同時に、−4.3eVより小さいLUMO準位を有するドーパントはそのような有機半導体材料から電子を容易に受容し、有機半導体材料内に自由正孔を生成すると考えられる。
【0040】
p型ドーパントの場合、有機半導体材料のHOMO準位は、ドーパントのLUMO準位よりも高いことが好ましい。この場合、有機半導体材料のHOMOからドーパントのLUMOへの電子輸送が改善される。しかしながら、有機半導体材料のHOMOがドーパントのLUMOより僅かに小さい場合ならば、電荷輸送が起こることが認められる。
【0041】
p型素子における有機半導体材料のHOMO準位は、4.6eV〜5.5eVの範囲にあることが好ましい。これにより、電極から有機半導体材料を介する正孔注入・輸送が向上する。
【0042】
ドーパントは、プロトン酸ドーピング剤のようなイオン種ではなく、電荷中性ドーパントであることが好ましく、任意に置換されたテトラシアノキノヂメタン(TCNQ)であれば最も好ましい。電極近傍に高濃度の酸があると、電極がエッチングされ電極材料が溶出し、積層されている有機半導体材料が劣化する可能性がある。さらに、酸は、有機半導体材料と反応し、素子性能にとって不都合である電荷分離を引き起こす。従って、TCNQのような電荷中性ドーパントが好ましい。
【0043】
有機半導体材料を、例えばインクジェット印刷によって形成できるようにするため、該有機半導体材料は、溶液からの成膜が可能なものであることが好ましい。溶液からの成膜が可能な材料としては、ポリマー、デンドリマー、小分子が挙げられる。
【0044】
任意に置換されたTCNQは、フッ素化誘導体、例えばテトラフルオロ−テトラシアノキノヂメタン(F4−TCNQ)であることが好ましい。この誘導体は、電子受容において特に優れている。
【0045】
該構成物の伝導率は、電極近傍において10-6S/cm〜10-2S/cmの範囲にあることが好ましい。しかしながら、該伝導率は、ある特定の用途にとって望ましい導電率に基づいて、ドーパント濃度を変えることにより、又は異なる有機半導体材料やドーパントを用いることにより容易に変更することができる。
【0046】
上述したp型チャネル素子に対する別の特徴としては、ドーパント部分は、有機半導体材料に電子を供与して該有機半導体材料をn型ドーピングする電子供与部分であってもよい。
【0047】
連結部分とドーパント部分との間に、スペーサ基を設けてもよい。該スペーサ基を用いることにより、良好なドーピングとなるようにOSC中にドーパント部分を良好に配置することができる。さらに、スペーサ基によって、OSCが形成される表面における柔軟性が得られ、該表面上へのOSC膜の形成がより改善される。スペーサ基は、アルキレン鎖、例えばC1−C20アルキレン鎖であるとよい。異なる長さのスペーサ基を用いることによって、ソース電極及びドレイン電極に接近するにつれてドーパント部分の濃度が増加するように、ドーパント部分の濃度勾配を形成してもよい。
【0048】
ボトムゲート型素子の場合、有機誘電体材料を利用して、誘電体層の化学的性質とソース・ドレイン電極の化学的性質との間に大きな違いをもたせ、連結部分のソース・ドレイン電極に対する選択結合を促進するようにしてもよい。
【0049】
同様に、トップゲート型素子の場合、有機基板を利用して、誘電体層の化学的性質とソース・ドレイン電極の化学的性質との間に大きな違いをもたせ、連結部分のソース・ドレイン電極に対する選択結合を促進するようにしてもよい。
【0050】
他の構成において、誘電体層又は基板を処理することによって、前記連結部分の、誘電体層又は基板に対してではなく、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に対する選択的結合性を高めてもよい。
【0051】
本発明の別の一実施形態によれば、上述した方法に従って形成された有機薄膜トランジスタが提供される。該有機薄膜トランジスタは、ソース及びドレイン電極と、該電極間のチャネル領域内に設けられて溶液からの成膜が可能な有機半導体材料とを備え、該ソース及びドレイン電極上には自己組織化薄膜層が設けられ、該自己組織化薄膜層の材料は、電荷を受容又は供与することによって該有機半導体材料を化学的にドーピングするドーパント部分と該ドーパント部分に結合し、該ソース及びドレイン電極に対して選択的に結合する別個の連結部分とを備える。
【0052】
本発明のまた別の一実施形態によれば、発光素子の製造方法であって、
基板上に第1電極を設ける工程と、
前記第1電極上に自己組織化薄膜層を形成する工程と、
前記自己組織化薄膜層上に、溶媒と有機電荷輸送半導体材料とを含む溶液を塗布する工程と、
前記有機電荷輸送半導体材料の層上に有機発光材料を設ける工程と、
前記有機発光材料上に第2電極を設ける工程と、
を有し、
前記自己組織化薄膜層の材料は、電荷を受容又は供与することよって有機電荷輸送半導体材料を化学的にドーピングするドーパント部分と前記ドーパント部分及び前記第1電極に結合する別個の連結部分とを備える発光素子の製造方法が提供される。
【0053】
本発明のこの態様においては、発光ディスプレイにはボトム電極が設けられ、該ボトム電極上には、ドーパント部分と、別個の連結部分とを備えた自己組織化層が設けられる。半導体材料が該自己組織化層上に設けられ、該ドーパント部分が該ボトム電極近傍の該半導体材料をドーピングし、導電電荷注入層を形成する。ドーパント部分が電極に結合することにより、半導体材料が電極近傍において一層強力にドーピングされるため、アノードから該アノード上に形成された発光材料への電荷注入に有利となる。従って、本発明では、従来技術で使用される別々にドーピングされる導電電荷注入層と半導体電荷輸送層との代替となるものが提供される。
【0054】
ドーパント部分、連結部分、スペーサ部分は、上述したように、本発明の有機薄膜トランジスタの実施形態と関連させてもよい。
【0055】
本発明のさらに別の一実施形態によれば、上述の方法に従って形成された発光デバイスが提供される。該発光ディスプレイは、基板と、該基板上に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた第2電極と、該第1電極と該第2電極との間の設けられた有機発光材料と、該第1電極と該有機発光材料との間に設けられた有機電荷輸送半導体材料の層とを備え、該第1電極上には、自己組織化薄膜層が設けられ、該自己組織化薄膜層の材料は、電荷を受容又は供与することによって該有機電荷輸送半導体材料を化学的にドーピングするドーパント部分と、該ドーパント部分及び該第1電極に結合する別個の連結部分とを備える。
【0056】
本発明のさらにまた別の一実施形態によれば、上述した態様に従って形成された複数の薄膜トランジスタと複数の発光素子とを備えたアクティブマトリックス型有機発光ディスプレイが提供される。特に好ましい実施形態において、該有機発光素子のボトム電極及び該有機薄膜トランジスタのソース/ドレイン電極は、単一の工程でドーピングされる。該ドーピングは、共通の材料を使用してもよいし、又は混合ドーパントを用いた共ドーピングを単一の工程で行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】周知のトップゲート型有機薄膜トランジスタの構造を示す図である。
【図2】周知のボトムゲート型有機薄膜トランジスタの構造を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る有機薄膜トランジスタの構造を示す図である。
【図4】図3の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの製造過程を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る自己組織化層を示す概略図である。
【図6】周知の有機発光素子の構造を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る有機発光素子の構造を示す図である。
【図8】共通の基板上に形成されている最中の有機薄膜トランジスタと有機発光素子とを示す図である。
【図9】共通の基板上に形成された有機薄膜トランジスタと有機発光素子とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、添付の図面を参照して本発明の例を詳細に説明する。
【0059】
図3は、本発明の一実施形態に係るボトムゲート型有機薄膜トランジスタを示す。この構造は、図2の従来技術における構造と類似しており、明確化するため、同一の要素に対しては同一の参照符号を用いる。図3の構造における重要な相違は、ソース及びドレイン電極2、4上に自己組織化薄膜層14が設けられることである。この自己組織化薄膜層14の材料は、電荷を受容又は供与することにより有機半導体材料に対して化学的にドーピングを行うドーパント部分と、該ドーパント部分とソース及びドレイン電極とに結合する別個の連結部分(separate attachment moiety)とを有する。
【0060】
図4は、自己組織化層14の概略図である。ソース−ドレイン材料が、例えば、金や銀等である場合には、チオール連結基を有するドーパントを用いることができる。典型的なドーパント分子としては、TCNQ又はF4TCNQが挙げられる。F4TCNQは、深いLUMO準位を有しており、一般的なOSC材料にとって、より有効なドーパント(電子受容体)である。
【0061】
図3に示されるボトムゲート型構成は、図5に示される方法によって形成される。なお、図5においては、概略断面図を示している。
1.ゲートを成膜してパターニング加工し、12を形成する(例えば、ITOがコーティングされた基板のパターニング加工)。
2.誘電体を成膜してパターニング加工し、10を形成する(例えば、架橋可能且つフォトパターニング可能な誘電体)。
3.ソース−ドレイン材料を成膜してパターニング加工し、2、4を形成する(例えば、金をフォトリソグラフィ技術で加工)。
4.ソース−ドレインに表面処理を施して14を形成する。表面処理基は、基板を自己組織化単一層材料の溶液に浸漬することによって、又は希薄溶液からスピンコートすることによって塗布することができる。余分な(付着しなかった)材料は、洗浄することによって除去される。疎水性の有機誘電体を使用すると選択的となり、連結基がチャネル領域に対して結合することを防止することができる。チャネル領域にドーピングされた場合、OFF状態の薄膜トランジスタにおいて電流がソースからドレインに向かって流れるであろう。(なお、ゲートバイアスを印加することでトランジスタをOFFするデプレッション型薄膜トランジスタを作製する場合、この効果は、チャネル領域のOSCのドーピングを制御するための望ましい方法となりうる。)
5.OSC8を積層する(例えば、溶液から成膜可能なポリマーをインクジェット印刷によって成膜する)。
6.ドーパント分子とOSCが、互いの接触部位16において相互作用を営む。深いLUMO準位を有するアクセプタドーパントの場合、電子がOSCからドーパントに向かって移動し、OSC導電領域が局在化する。これにより、ソース及びドレイン接点における電荷の注入及び取出しが改善される。
【0062】
この技術は、トップゲート型素子に対しても適用可能である。この場合、まず、ソース−ドレイン層が形成されてパターニング加工される。そして、OSC、ゲート誘電体及びゲートを形成する前に、ソース−ドレイン層に対して表面処理が施される。ドーパントに対する連結部分は、ソース−ドレインチャネル領域に露出した基板に結合しないようなものが選択される。
【0063】
ドーパントの結合を避けるため、特定の場所に対して処理を行ってもよい。この処理は、選択性が直接実現できない場合、チャネル領域への結合法を回避するために必要となるであろう。
【0064】
ソース−ドレイン金属を露呈させる必要がある場合(例えば、次に形成される導電層に対して電気的に接続するような場合)、ドーパント層を除去するようにすればよい(この除去は、例えば、光反応性連結基に対する直接フォトパターニング加工や、レーザアブレーション等により実施し得る)。又は、ドーパント層が必要となる場所を規定するため、表面パターニング加工を事前に行うようにしてもよい。又は、ドーパント層が薄く、十分な導電性を示すのであれば、ドーパントは、煩雑な導電ビア形成を行うことなくそのままにしてもよい。
【0065】
有機薄膜トランジスタに対する前述の技術は、電荷注入を改善するために、有機発光素子においても採用することが可能である。背景技術において説明された図6は、従来技術に係る有機発光素子の構造を示す。本発明の一態様によれば、導電性電荷注入材料105及び半導体電荷輸送材料106の独立した層は、図7に示されるように、上方側に半導体材料が設けられた自己組織化層150に置き換えられる。この自己組織化層150の材料は、ドーパント部分と、別個の連結部分とを備える。ドーパント部分は、ボトム電極102に近接する側の半導体材料106をドーピングし、半導体領域をその上に残した状態で、導電性電荷注入領域を形成する。ドーパント部分が電極102に連結することにより、半導体材料は、電極に近接する側で一層強くドーピングされる。これは、アノードから該アノード上に設けられた発光材料103への電荷注入に有利である。さらに、ドーパント部分がボトム電極102と結合するので、従来技術、特に、有機発光素子に使用される材料に対して悪影響を与えることが見出されている強酸PEDT−PSSを導電性正孔注入材料として使用する際において問題となっている現象、すなわち、使用中の素子への拡散が起こらない。
【0066】
半導体電荷輸送材料がドーピングされる度合いは、連結部分とドーパント部分との間にスペーサを用いることにより制御される。種々のスペーサ長を有する複数のドーパント分子の混合物を用いることにより、半導体材料中におけるドーパントの濃度勾配を制御することができる。さらに、互いに別個のドーパント部分と連結部分とを使用することにより、ある特定の半導体材料に適切なドーパントと、る特定の電極材料に適切な連結部分とをそれぞれ選択できるようになるので、素子設計の自由度が向上する。
【0067】
本明細書に記載された有機薄膜トランジスタ及び有機発光素子は、アクティブマトリックス型有機発光ディスプレイにおいて用いることができる。アクティブマトリックス型有機発光ディスプレイでは、有機発光素子が、有機薄膜トランジスタによって駆動されるディスプレイのサブピクセルを構成する。特に好ましい実施形態において、有機発光素子のボトム電極及び有機薄膜トランジスタのソース/ドレイン電極は、単一の工程でドーピングされる。該ドーピングは共通の材料を用いてもよいし、又は混合ドーパントを用いて共ドーピングを単一工程で行ってもよい。図8は、共通の基板上に形成された有機薄膜トランジスタと有機発光素子とを有する製造中のディスプレイの一部を示す。図8(a)の構造は、ゲート200及びアノード202を成膜・パターニング加工、例えば、ITOが形成された基板をパターニング加工することによって形成される。次に、例えば、架橋可能且つフォトパターニング加工可能な誘電体である誘電体材料204が成膜・パターニング加工される。さらに、ソース−ドレイン材料206、208を成膜・パターニング加工、例えば、金層を成膜した後、フォトリソグラフィを用いてパターニング加工される。そして、バンク材料210を成膜・パターニング加工してバンク構造を形成し、有機薄膜トランジスタ及び有機発光素子のそれぞれに対応するウェル部分212、214を形成する。
【0068】
図8(a)及び図8(b)に示された重要な工程は、ドーパント部分と、別個の連結部分とを有する材料216、218からなる自己組織化層を、有機薄膜トランジスタのソース及びドレイン上、及び有機発光素子のアノード上に形成する工程である。上述したように、連結部分は、ドーパント部分に結合するとともに、ソース/ドレイン及びアノードに選択的に結合する。特に好ましい構成において、有機発光素子のアノードと有機薄膜トランジスタのソース/ドレイン電極は、単一の工程でドーピングされる。ドーピングは、共通の材料を用いてもよい。又は、混合ドーパントを用いた共ドーピングを利用してもよい。混合ドーパントのうちの1つはソース/ドレインに選択的に結合し、他のドーパントはアノードに選択的に結合する。
【0069】
ドーピング工程の後、有機薄膜トランジスタ及び有機発光素子における残りの層が、図9に示されるように成膜される。すなわち、有機半導体材料220が、有機薄膜トランジスタのソース−ドレイン間のチャネル領域に成膜される。さらに、有機電荷輸送半導体材料222、発光材料224、カソード226が成膜され、有機発光ディスプレイが形成される。
【0070】
以上、上述した技術が、有機薄膜トランジスタ、有機発光素子、アクティブマトリックス型有機発光ディスプレイに応用し得ることを示した。しかしながら、本発明を好適な実施形態を参照して説明してきたが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、いかなる変形や変更も可能であることは当業者であれば理解できよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機薄膜トランジスタの製造方法であって、
ソース電極及びドレイン電極を設ける工程と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に自己組織化薄膜層を形成する工程と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のチャネル領域内に、溶媒と有機半導体材料とを含む溶液を塗布する工程と、
を有し、
前記自己組織化薄膜層の材料は、電荷を受容又は供与することによって有機半導体材料を化学的にドーピングするドーパント部分と、前記ドーパント部分に結合し且つ前記ソース電極と前記ドレイン電極とに選択的に結合する別個の連結部分とを備えることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法において、前記自己組織化薄膜層は、自己組織化単一層であることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法において、前記連結部分は、1以上の共有結合によって、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に化学的に結合することを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法において、前記連結部分は、1以上の共有結合によって、前記ドーパント部分に化学的に結合することを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法において、前記連結部分がドーパント部分ではないことを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法において、前記連結部分は、シリル基、チオール基、アミン基、リン酸基のうちの少なくとも1つであることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法において、前記有機半導体材料は、溶液から成膜可能なものであることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法において、前記ソース電極及び前記ドレイン電極近傍のドーピングされた有機半導体材料の伝導率は、10-6S/cm〜10-2S/cmの範囲にあることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法において、前記ドーパント部分は、電荷中性ドーパントであることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法において、前記ドーパント部分は、前記有機半導体材料から電子を受容して前記有機半導体材料をp型ドーピングする電子受容部分であることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の製造方法において、前記ドーパントのLUMO準位が、−4.3eVよりも小さいことを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11記載の製造方法において、前記有機半導体材料のHOMO準位が、−5.5eV以上であることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の製造方法において、前記有機半導体材料のHOMO準位が、前記ドーパントのLUMO準位よりも高いことを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の製造方法において、前記有機半導体材料のHOMO準位が、−4.6eV〜−5.5eVの範囲にあることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項に記載の製造方法において、前記ドーパントは、置換されたテトラシアノキノジメタン(TCNQ)であることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の製造方法において、前記置換されたTCNQは、フッ素化誘導体であることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法において、前記ドーパント部分は、前記有機半導体材料に電子を供与して前記有機半導体材料をn型ドーピングする電子供与部分であることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の製造方法において、前記連結部分と前記ドーパント部分との間に、スペーサ基が設けられることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の有機薄膜トランジスタの製造方法において、前記スペーサ基は、アルキレン鎖、好ましくはC1−C20アルキレン鎖であることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項20】
請求項18又は19記載の製造方法において、異なる長さのスペーサ基を用いることによって、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に接近するにつれてドーパント部分の濃度が増加するような濃度勾配を形成することを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の製造方法において、前記有機薄膜トランジスタは、基板上に設けられたゲート電極と、前記ゲート電極上に設けられた誘電体材料の層と、前記誘電体材料の上に設けられた前記ソース電極及び前記ドレイン電極とを備えたボトムゲート型素子であることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項22】
請求項21記載の有機薄膜トランジスタの製造方法において、前記誘電体材料が有機誘電体材料であることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項23】
請求項21又は22記載の製造方法において、前記誘電体材料の層を処理することによって、前記連結部分の前記ソース電極及び前記ドレイン電極に対する選択的結合性を高めることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項24】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の製造方法において、前記有機薄膜トランジスタは、基板上に前記ソース及び前記ドレイン電極が設けられ、前記ソース電極及び前記ドレイン電極上及び前記ソース電極と前記ドレイン電極間の前記チャネル領域内に前記有機半導体材料が設けられ、前記有機半導体材料上に誘電体材料が設けられ、前記誘電体材料上にゲート電極が設けられるトップゲート型素子であることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項25】
請求項24記載の製造方法において、前記基板が有機誘電体材料からなることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項26】
請求項24又は25記載の製造方法において、前記基板を処理することによって、前記連結部分の前記ソース電極及び前記ドレイン電極に対する選択的結合性を高めることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項27】
発光素子の製造方法であって、
基板上に第1電極を設ける工程と、
前記第1電極上に自己組織化薄膜層を形成する工程と、
前記自己組織化薄膜層上に、溶媒と有機電荷輸送半導体材料とを含む溶液を塗布する工程と、
前記有機電荷輸送半導体材料の層上に有機発光材料を設ける工程と、
前記有機発光材料上に第2電極を設ける工程と、
を有し、
前記自己組織化薄膜層の材料は、電荷を受容又は供与することよって有機電荷輸送半導体材料を化学的にドーピングするドーパント部分と前記ドーパント部分及び前記第1電極に結合する別個の連結部分とを備えることを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項28】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法に従って複数の薄膜トランジスタを形成する工程と、請求項27記載の方法に従って複数の発光素子を形成する工程とを備えたアクティブマトリックス型有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項29】
請求項28記載の製造方法において、前記有機発光素子の前記第1電極と前記有機薄膜トランジスタの前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、単一の工程でドーピングされることを特徴とするアクティブマトリックス型有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項30】
請求項29記載の製造方法において、前記有機発光素子の前記第1電極と前記有機薄膜トランジスタの前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、共通のドーパントを用いてドーピングされることを特徴とするアクティブマトリックス型有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項31】
請求項29記載の製造方法において、前記有機発光素子の前記第1電極と前記有機薄膜トランジスタの前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、混合ドーパントを用いてドーピングされることを特徴とするアクティブマトリックス型有機発光ディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−531055(P2010−531055A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512658(P2010−512658)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057517
【国際公開番号】WO2009/000683
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(599046298)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】