説明

有機薄膜トランジスタ

【課題】誘電体層と半導体層の間の所定の構造の2つの界面層を有する、オン/オフ比や移動度の改良された薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】OTFT10は、誘電体層40と半導体層70の間に2つの界面層80,90があり、一方の界面層が、シロキサンポリマーまたはシルセスキオキサンポリマーから形成されており、他方の界面層が、式(I)のシランから形成されている。


式(I)
(上記式(I)中、R’は、約1個から約24個までの炭素原子を有するアルキルであり、R”は、約1個から約24個までの炭素原子を有するアルキル、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシルまたはアミノであり、Lは、ハロゲン、酸素、アルコキシ、ヒドロキシル、またはアミノであり、kは、1または2であり、mは、1、2または3である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さまざまな実施形態における、薄膜トランジスタ(「TFT」)などの電子デバイスにおける用途に適する組成物および方法に関する。本発明はまた、かかる組成物および方法を用いて製造される構成要素または層、ならびにかかる材料を含有する電子デバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT)は、例えば、センサ、イメージスキャナ、電子ディスプレイデバイスなどを含めた現代のエレクトロニクスにおける基本要素である。現在主流のシリコン技術を用いるTFT回路は、いくつかの用途、特に、高いスイッチング速度が不可欠ではないディスプレイ用のバックプレーンスイッチング回路などの大面積電子デバイス(例えば、アクティブマトリクス液晶モニタまたはテレビ)に対しては高価過ぎることがある。そのシリコン系TFT回路が高価な理由は、主として、大きな資本を必要とするシリコン製造設備ならびに厳格に制御された環境下での複雑な高温高真空の写真平版製造工程のためである。はるかに低い製造コストを有するだけでなく、物理的にコンパクトであり、軽量であり、柔軟性である等の力学的性質もアピールするTFTを製造することが一般に望まれている。
【0003】
TFTは、支持基板、3つの導電性電極(ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極)、チャネル半導体層、および該ゲート電極を該半導体層から分離する電気絶縁性のゲート誘電体層から一般に構成される。
【0004】
既知のTFTの性能を改良することが望ましい。性能は、少なくとも2つの特性、移動度およびオン/オフ比、によって測定することができる。移動度はcm/V・秒の単位で測定され、より高い移動度が望まれる。オン/オフ比は、オン状態におけるTFT中を流れる電流とオフ状態のTFT中をリークする電流量との間の比率である。一般的には高いオン/オフ比ほどより望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−243911号公報
【特許文献2】特開2008−042088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、さまざまの実施形態において、改良された性能を提供する、誘電体層と半導体層の間の所定の構造の2つの界面層を有する薄膜トランジスタを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
複数の実施形態において、薄膜トランジスタは、誘電体層、第1界面層、第2界面層、および半導体層を含み、前記第1界面層および前記第2界面層が、前記誘電体層と前記半導体層の間にあり、前記第1界面層が、シロキサンポリマーまたはシルセスキオキサンポリマーから形成されており、前記第2界面層が、式(I)のシランから形成されている、薄膜トランジスタである。
【0008】
【化1】


式(I)
【0009】
上記式(I)中、R’は、約1個から約24個までの炭素原子を有するアルキルであり、R”は、約1個から約24個までの炭素原子を有するアルキル、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、またはアミノであり、Lは、ハロゲン、酸素、アルコキシ、ヒドロキシル、またはアミノであり、kは、1または2であり、mは、1、2、または3である。
【0010】
R’は、約8個から約18個までの炭素原子を有するアルキルであり得る。
【0011】
式(I)のシランは、式R’SiXのシランであり得、この式中、R’は、約1個から約24個までの炭素原子を有するアルキルであり得、Xは、ハロゲンである。特定の実施形態において、R’はC1225であり、Xは塩素である。
【0012】
該第1界面層は、ポリ(メチルシルセスキオキサン)から形成することができる。該第1界面層は、また、厚さが約1ナノメートルから約100ナノメートルまでであってよい。
【0013】
該トランジスタは、1つだけの界面層を備えたトランジスタと比較して少なくとも50%または少なくとも100%増加した移動度を有する。
【0014】
該半導体層は、式(II)の部分を含むポリマーから形成することができる。
【0015】
【化2】


式(II)
【0016】
上記式(II)中、Rはアルキルである。
【0017】
式(I)のシランのR’および式(II)の部分のRは、同じであり得、約8個から約18個までの炭素原子を有する直鎖アルキルである。
【0018】
該半導体層は、式(III)の半導体を含むことができる。
【0019】
【化3】


式(III)
【0020】
上記式(III)中、RおよびRは、独立して、アルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリールから選択され、RおよびRは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリールから選択され、nは、2から10,000までである。
【0021】
いくつかの実施形態において、R、R、R、およびRは、互いに同じであり得、約8個から約18個までの炭素原子を有する直鎖アルキルである。
【0022】
他の実施形態において、式(I)のシランのR’およびR、R、R、およびRは、同じであり得、R、R、R、およびRは、特にC1225であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、該第1界面層は、該誘電体層と接しており、該第2界面層は、該半導体層と接している。
【0024】
他の実施形態において、薄膜トランジスタは、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、誘電体層、第1界面層、第2界面層、および半導体層を含み、前記誘電体層が、前記ゲート電極と前記半導体層の間に位置し、前記第1界面層および前記第2界面層が、前記誘電体層と前記半導体層の間であり、前記第1界面層が、ポリ(メチルシルセスキオキサン)から形成されており、前記第2界面層が、式C1225SiX(式中、Xは、Cl、OCH、およびそれらの混合物から選択される)のシランから形成されている、薄膜トランジスタである。
【0025】
さらなる実施形態には、本方法によって製造される界面層および/または薄膜トランジスタも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】OTFTの第1の例示的実施形態を示す図である。
【図2】OTFTの第2の例示的実施形態を示す図である。
【図3】OTFTの第3の例示的実施形態を示す図である。
【図4】OTFTの第4の例示的実施形態を示す図である。
【図5A】界面層の第1の描写である。
【図5B】界面層の第2の描写である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に開示されている構成要素、方法および装置のより完全な理解は、添付の図を参照することによって得ることができる。これらの図は、便利さおよび本開発を説明する容易さに基づく単なる概略図であり、それ故、デバイスまたはその構成要素の相対的な大きさおよび寸法を示し、かつ/または、例示的な実施形態の範囲を定義もしくは限定することは意図されていない。
【0028】
明確にさせるために具体的な用語が以下の説明においては使用されているが、これらの用語は、図面中で説明のために選択された実施形態の特定の構造のみを表すことを意図しており、その開示の範囲を定義もしくは限定することは意図されていない。以下の図面およびそれに伴う説明において、同じ数字表示は、同じ機能の構成要素を指すものと理解されたい。
【0029】
図1は、第1のOTFTの実施形態または構成を示す。そのOTFT10は、ゲート電極30および誘電体層40と接している基板20を含む。ここではゲート電極30は、基板20の内部に画かれているがこれは必要ではない。しかしながら、重要なのは、誘電体層40がゲート電極30を、ソース電極50、ドレイン電極60、および半導体層70から分離していることである。ソース電極50は、半導体層70と接している。ドレイン電極60もまた半導体層70と接している。半導体層70は、ソース電極50とドレイン電極60の上部および間に達している。界面層80,90は、誘電体層40と半導体層70の間に位置している。
【0030】
図2は、第2のOTFTの実施形態および構成を示す。OTFT10は、ゲート電極30および誘電体層40と接している基板20を含む。半導体層70は、誘電体層40を覆うようにまたはその上に配置されており、ソース電極50およびドレイン電極60からそれを分離している。界面層80,90は、誘電体層40と半導体層70の間に位置している。
【0031】
図3は、第3のOTFTの実施形態および構成を示す。OTFT10は、ゲート電極としても作用する基板20を含み、誘電体層40と接している。半導体層70は、誘電体層40を覆うようにまたはその上に配置されており、ソース電極50およびドレイン電極60からそれを分離している。界面層80,90は、誘電体層40と半導体層70の間に位置している。
【0032】
図4は、第4のOTFTの実施形態および構造を示す。OTFT10は、ソース電極50、ドレイン電極60、および半導体層70と接する基板20を含む。半導体層70は、ソース電極50およびドレイン電極60の上および間に達している。誘電体層40は、半導体層70の上部にある。ゲート電極30は、誘電体層40の上にあり、半導体層70とは接していない。界面層80および90は、誘電体層40と半導体層70の間に位置している。
【0033】
有機薄膜トランジスタにおける電荷輸送は、半導体層と誘電体層の間の界面で起こるので、この界面はTFTの特性を決定する重要な部分である。本明細書に開示のデバイスにおいては、この界面を改質するために誘電体層と半導体層の間に2つの界面層を設置する。1つの界面層は、シロキサンポリマーまたはシルセスキオキサンポリマーから形成される。他の界面層は、本明細書でさらに説明する式(I)のシランから形成される。
【0034】
第1界面層のシロキサンポリマーまたはシルセスキオキサンポリマーは、ここに示す一般的にそれぞれ式(A)または式(B)のものである。
【0035】
【化4】


式(A) 式(B)
【0036】
上記式(A)または式(B)中、Rは、水素、アルキル、およびアリールから選択され、qは、重合度であり、2から10,000までであり得る。特定の実施形態において、第1界面層は、ポリ(メチルシルセスキオキサン)から製造される。
【0037】
第1界面層は、典型的な堆積法、例えば、スピンコーティング、浸漬塗工法、ブレード塗工、印刷例えばインクジェット印刷など等のような液相法などによって塗布することができる。第1界面層の典型的な厚さは、約1ナノメートルから約100ナノメートルまでであり得、約1ナノメートルから約50ナノメートルまで、または約1ナノメートルから約20ナノメートルまでが挙げられる。複数の実施形態において、第1界面層は、架橋されており、殆どの有機溶媒、例えば、アルコール;ヘキサン、シクロヘキサン、およびヘプタンを含めた炭化水素;芳香族炭化水素例えばトルエンおよびキシレンなど;エーテル;エステル;塩素化溶媒例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、およびジクロロメタンなど、に対して高い抵抗を示す。第1界面層は、例えば、約80℃から約180℃までの温度で約5分から約1時間かけて熱的に架橋する。
【0038】
第2界面層は、式(I)のシランから形成される。
【0039】
【化5】


式(I)
【0040】
上記式(I)中、R’は、約1個から約24個までの炭素原子を有するアルキルであり、R”は、約1個から約24個までの炭素原子を有するアルキル、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、またはアミノであり、Lは、ハロゲン、酸素、アルコキシ、ヒドロキシル、またはアミノであり、kは、1または2であり、mは、1,2または3である。一般的に、R”およびLは脱離基であり、それによって該界面層の該シランからの形成を可能にする。
【0041】
式(I)のシランの典型的な例は、R’=CH、R”=CH、m=1、k=2、およびL=NHであるヘキサメチルジシラザン(HMDS)である。式(I)のいくつかの実施形態において、R’は、約8個から約18個の炭素原子、特に約12個の炭素原子を有するアルキルである。より具体的な実施形態において、式(I)の該シランは、式R’SiXのシランであり、式中、R’は、約1個から約24個までの炭素原子を有するアルキルであり、Xは、ハロゲン、OCHなどのアルコキシ、およびそれらの混合物である(この場合、m=1、k=1、L=R”=Xである)。通常、Xは塩素である。1つの具体的な実施形態において、R’は、C1225であり、Xは、塩素である。この特定のシランは、ドデシルトリクロロシランである。式R’SiXのその他の典型的なシランとしては、オクチルトリクロロシランおよびオクタデシルトリクロロシランが挙げられる。
【0042】
式(I)のシランは、基板と相互作用して界面層の表面から延びるアルキル側鎖を有するシラン化界面層を形成する。この理論に拘束はされないが、得られる界面層は、表面から延びるR’側鎖を有する個々のまたは相互連結したケイ素原子の形をとるものと考えられる。界面層の典型的な描写を図5Aおよび図5Bに示す。図5Aにおいては、その界面層は、HMDSから形成され、基板に共有結合した個々のケイ素原子の形をとるものと考えられる。ここでは、その側鎖はメチルである。図5Bにおいては、界面層は、相互連結したケイ素原子から形成される。ここでは、その相互連結は酸素原子に由来し、それが「シロキサン化」界面層を形成する。形成されたその界面層は、その側鎖がなおも相互作用し得るので、単分子層かそれとも多分子層であり得る。複数の実施形態において、式(I)のシランから形成されるその界面層は、約2オングストロームから約30オングストロームまでの厚さを有する単分子層である。他の複数の実施形態において、式(I)のシランから形成されるその界面層は、少なくとも10オングストロームから約100オングストロームまで、または少なくとも20オングストロームから約100オングストロームまでの全厚を有する多分子層である。
【0043】
式(I)のシランから形成される界面層は、シランと芳香族炭化水素および脂肪族炭化水素からなる群から選択される溶媒とを含むシラン溶液から形成することができる。典型的な炭化水素類としては、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ISOPAR G(エクソン・モービル社(ExxonMobil)から得られる)などが挙げられる。そのシラン溶液は、約30%から80%まで、特に約35%から60%までの相対湿度、約20℃から約80℃まで、特に約25℃から約60℃までの温度で、約10分から約60分まで、特に約20分から約30分までの時間にわたって場合によってエージングさせることができる。複数の実施形態において、そのシラン溶液はエージングさせる。そのシランの濃度は、約0.001Mから約0.5Mまで、または約0.01Mから0.1Mまでである。複数の実施形態において、その溶媒はトルエンであり、その濃度は、0.1Mである。次いで、親水性表面は、シラン溶液によりコートされて第2界面層を形成することができる。そのコーティングは、スピンコーティング、浸漬塗工法、バーコーティングなどによって実施することができる。とりわけ、該エージングステップは、得られる第2界面層の表面エネルギーを低下させる。このことは、より高くまで進行する水接触角において見ることができる。例えば、オクチルトリクロロシランを用いて、進行性の水接触角は、エージングステップ無しの90°からエージングステップ有りの100°まで増大した。この理論に拘泥されるものでないが、シラン分子は、エージングステップの間に互いに反応して水素結合を介してシランのネットワークを形成するものと考えられる。その水素結合したネットワークは、親水性表面のヒドロキシル基と反応して界面層を形成する。かくして、均一な界面層を、親水性表面の性質には全くまたは殆ど依存することなく得ることができる。
【0044】
その2つの界面層は、誘電体層および半導体層について、どちらかの順序であり得る。しかしながら、特定の実施形態においては、ポリシロキサン/ポリシルセスキオキサン界面層は、式(I)のシランから形成された界面層より誘電体層により接近している。他の実施形態においては、式(I)のシランから形成された界面層は、半導体層と接している。その2つの界面層の組合せは、個々の界面層それ自体の性能によって期待されるものを超えて、薄膜トランジスタの性能を相乗的に改良する。
【0045】
界面層を形成する方法は、(1)第1界面層を堆積するステップ、(2)その第1界面層を架橋するステップ、(3)その第1界面層の表面処理をしてその表面にヒドロキシル基を生じさせるステップ、(4)第2界面層を第1界面層の上に形成し、その第2界面層が第1界面層に化学的に結合するようにするステップ、を含み得る。実施形態において、第2界面層の形成前の第1界面層の表面処理は、プラズマ処理である。例えば、第1界面層の表面は、空気または酸素プラズマに、約2秒から約2分までの間さらす。
【0046】
半導体層は、半導体材料を含む。典型的な半導体材料としては、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、およびそれらの置換誘導体類のようなアセン類およびポリアセン類、ペリレン類、フラーレン類、半導体ポリマー類例えばトリアリールアミンポリマー類、ポリインドロカルバゾール、ポリカルバゾール、およびポリフルオレンなど、ポリチオフェン類およびそれらの置換誘導体類、ならびにフタロシアニン類例えば銅フタロシアニン類または亜鉛フタロシアニン類およびそれらの置換誘導体類が挙げられるがこれらには限定されない。
【0047】
半導体層は、約5nmから約1000nmまでの厚さ、特に約10nmから約100nmまでの厚さである。該半導体層は、任意の適当な方法によって形成することができる。しかしながら、該半導体層は、一般に、液体の組成物例えば分散液または溶液などから形成され、次いでトランジスタの基板上に堆積される。典型的な堆積方法としては、液相堆積法、例えば、スピンコーティング、浸漬塗工法、ブレード塗工、ロッドコーティング、スクリーン印刷、スタンピング、インクジェット印刷など、およびその他の当業界で周知の従来型の方法が挙げられる。
【0048】
いくつかの実施形態において、該半導体層は、式(II)の部分を含有するポリマーを含む。
【0049】
【化6】


式(II)
【0050】
上記式(II)中、Rはアルキルである。
【0051】
他の複数の実施形態において、該半導体層は、式(III)の半導体材料を含む。
【0052】
【化7】


式(III)
【0053】
上記式(III)中、RおよびRは、独立して、アルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリールから選択され、RおよびRは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリールから選択され、nは、2から10,000まで、好ましくは2から約100までである。特定の実施形態において、R、R、R、およびRは、互いに同じであり得、約8個から約18個までの炭素原子を有する直鎖アルキルである。より特定の実施形態において、R、R、RおよびRは、C1225である。
【0054】
理論に拘泥されるものではないが、式(III)の半導体材料のアルキル側鎖と結合している界面層中のアルキル側鎖は、電荷輸送(および結果として生じる電荷キャリア移動度)に役立つラメラ状シートの形成をもたらす。その結果、界面層および半導体材料中のアルキル側鎖については同じ長さのものであることが一般に望ましい。かくして、いくつかの実施形態において、式(I)のシランのR’と式(II)のモノマーのRは同じであり、約8個から約18個までの炭素原子を有する直鎖のアルキルである。その他においては、式(I)のシランのR’と、式(III)の材料のR、R、RおよびRは同一である。
【0055】
1つの具体例において、R、R、RおよびRは、それぞれC1225である。この特定の半導体はPBTBT−12として知られ、次式を有する。PBTBT−12は、2006年10月25日出願の、米国特許出願第11/586449号に開示されているようにして調製することができる。これによってその出願を、本願に引用して援用する。
【0056】
【化8】


PBTBT−12
【0057】
基板は、シリコン、ガラス板、プラスチックフィルムまたはシートが挙げられるがこれらには限定されない材料から成ることができる。構造的に柔軟なデバイス用にはプラスチック基板、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドシートなどを使用することができる。その基板の厚さは、約10マイクロメートルから10ミリメートルを超えるまでであり得、典型的な厚さは、特に柔軟なプラスチック基板については約50マイクロメートルから約5ミリメートルまで、ガラスまたはシリコンのような硬い基板については約0.5から約10ミリメートルまでである。
【0058】
ゲート電極は、導電性材料から成る。それは、薄い金属膜、導電性ポリマーフィルム、導電性インクまたはペーストから作製された導電性膜、あるいは基板それ自体、例えば高濃度にドープされたシリコンであり得る。ゲート電極材料の例としては、アルミニウム、金、銀、クロム、インジウムスズ酸化物、導電性ポリマー類、例えばポリスチレンスルホネートをドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)など、およびカーボンブラック/グラファイトまたは銀コロイドを含んでなる導電性インク/ペーストが挙げられるがこれらに限定されない。該ゲート電極は、金属または導電性金属酸化物の真空蒸着、スパッタリング、通常のリソグラフィーおよびエッチング、化学気相堆積法、スピンコーティング、鋳造または印刷、あるいはその他の堆積法によって調製することができる。該ゲート電極の厚さは、例えば、金属膜については約10から約500ナノメートルまで、導電性ポリマーについては、約0.5から約10マイクロメートルまで変動する。
【0059】
該誘電体層は、一般に、無機材料の膜、有機ポリマー膜、または有機−無機複合膜であり得る。誘電体層として適する無機材料の例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムジルコニウムなどが挙げられる。適当な有機ポリマーの例としては、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド類、ポリスチレン、ポリメタクリレート類、ポリアクリレート類、エポキシ樹脂などが挙げられる。該誘電体層の厚さは、使用される材料の誘電率に依存し、例えば、約10ナノメートルから約500ナノメートルまでであり得る。特に望ましい誘電体層は、酸化ケイ素からなる。該誘電体層は、例えば1センチメートル当たり約10−12ジーメンス(S/cm)未満である電導度を有することができる。該誘電体層は、ゲート電極の形成において記したような方法を含めた当業界で周知の従来型の方法を用いて形成される。
【0060】
ソース電極およびドレイン電極としての使用に適する典型的な材料としては、ゲート電極材料のもの、例えば、金、銀、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマー類、および導電性インクなどが挙げられる。具体的な実施形態において、該電極材料は、該半導体に対して低い接触抵抗を提供する。典型的な厚さは、例えば、約40ナノメートルから約1マイクロメートルまでであり、より具体的な厚さは、約100〜約400ナノメートルである。本明細書に開示のOTFTデバイスは、半導体チャネルを含有する。該半導体チャネルの幅は、例えば、約5マイクロメートルから約5ミリメートルまでとすることができ、具体的なチャネルの幅は約100マイクロメートル〜約1ミリメートルである。該半導体チャネルの長さは、例えば、約1マイクロメートルから約1ミリメートルまでとすることができ、より具体的なチャネルの長さは約5マイクロメートルから約100マイクロメートルまでである。
【0061】
該ソース電極は接地し、例えば、約0ボルト〜約80ボルトのバイアス電圧を該ドレイン電極にかけて、例えば約+10ボルト〜約−80ボルトの電圧をゲート電極にかけるときに半導体チャネルを渡って輸送される電荷キャリアを集める。該電極は、当業界で周知の従来型の方法を使用して形成または堆積することができる。
【0062】
所望により、バリア層を、該TFTを環境条件、例えば、その電気的性質を劣化し得る、光、酸素および湿気などから保護するために、該TFTの上に堆積させることもできる。かかるバリア層は、当業界で周知であり、単にポリマーからなるものであり得る。
【0063】
該OTFTのさまざまな構成要素は、図で見られるように任意の順序で基板上に堆積させることができる。用語「基板上に」とは、各構成要素が該基板に直接接触することを必要とするものと解釈すべきではない。その用語は、該基板に対する構成要素の位置を説明するものとして解釈すべきである。しかしながら、一般に、該ゲート電極および該半導体層は両方とも該誘電体層と接していなくてはならない。さらに、該ソース電極およびドレイン電極は両方とも該半導体層と接していなくてはならない。本明細書に開示の方法によって形成された半導体ポリマーは、有機薄膜トランジスタの任意の適切な構成要素に堆積させてそのトランジスタの半導体層を形成することができる。
【0064】
得られるトランジスタは、複数の実施形態において、約0.01cm/V・秒以上の移動度を有することができる。2つの界面層を有する本発明のトランジスタは、単一の界面層のみを有するトランジスタと比較して、少なくとも50%改良された移動度を有することができる。いくつかの実施形態において、その移動度の改良は少なくとも100%である。
【0065】
以下の実施例は、本明細書に開示の方法によって製造したOTFTを示す。該実施例は、単に説明のためであり、そこに示されている材料、条件、またはプロセスパラメータに関して本発明を限定することを意図するものではない。すべての部は、他に示されていない限り、重量パーセントである。
【実施例】
【0066】
[実施例1]
n−ドープしたシリコンが、ゲート電極として機能するn−ドープしたシリコンウエハーを、OTFTを作製するための基板として使用した。そのシリコンウエーハは、誘電体層として機能する100nmの厚さの酸化ケイ素の層を有した。
【0067】
そのウエーハ表面をプラズマ洗浄した。ポリ(メチルシルセスキオキサン)(PMSSQ)の第1界面層を、メチルイソブチルケトン(MIBK)中のPMSSQの希薄な溶液を1000rpmで60秒間スピンコーティングにより塗布し、続いて80℃で乾燥し、160℃で30分間熱架橋して約90nmの厚さの層を形成した。
【0068】
そのPMSSQで改質したウエーハを再びプラズマ洗浄した。そのPMSSQで改質したウエーハを、次にヘプタン中のドデシルトリクロロシラン(DTS)の0.1Mの溶液に室温で20分間浸して第2界面層を形成した。トルエンおよびイソプロパノールで洗浄した後、そのPMSSQおよびDTSで改質したウエーハを空気乾燥した。
【0069】
ジクロロベンゼン中の1重量%のPBTBT−12の溶液を、1.0μmのシリンジフィルタを通して濾過した。その温かい溶液を次に1000rpmで90秒間該第2界面層の上にスピンコートして半導体層を形成した。その溶媒を乾燥除去した後、金のソース/ドレイン電極をその半導体層の上のシャドーマスクを通して蒸着させ、OTFTデバイスを完成した。その改質したウエーハの全キャパシタンスは、15nF/cmであった。
【0070】
[比較例1]
実施例1と似ているがPMSSQ界面層のみを塗布することによって比較例1を製造した。
【0071】
[比較例2]
実施例1と似ているがDTS界面層のみを塗布することによって比較例2を製造した。
【0072】
[結果]
ケースレー(Keithley)4200−SCS計器により、暗闇中の周囲条件で該デバイスの特性を明らかにした。表1は、さまざまな試験したデバイスの組成およびそれらのデバイスについての移動度およびオン/オフ比のデータを示している。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例1は、最良の移動度およびオン/オフ比を有していた。移動度は特に予想外であり、移動度は比較例1より19倍も良好であり、比較例2より3倍を超えて良好であった。
【符号の説明】
【0075】
10 OTFT(有機薄膜トランジスタ)、20 基板、30 ゲート電極、40 誘電体層、50 ソース電極、60 ドレイン電極、70 半導体層、80,90 界面層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層、第1界面層、第2界面層、および半導体層を含む薄膜トランジスタであって、
前記第1界面層および前記第2界面層が、前記誘電体層と前記半導体層の間にあり、
前記第1界面層が、シロキサンポリマーまたはシルセスキオキサンポリマーから形成されており、
前記第2界面層が、式(I)のシランから形成されていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【化1】


式(I)
(上記式(I)中、R’は、約1個から約24個までの炭素原子を有するアルキルであり、R”は、約1個から約24個までの炭素原子を有するアルキル、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシルまたはアミノであり、Lは、ハロゲン、酸素、アルコキシ、ヒドロキシル、またはアミノであり、kは、1または2であり、mは、1、2または3である。)
【請求項2】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、誘電体層、第1界面層、第2界面層、および半導体層を含む薄膜トランジスタであって、
前記誘電体層が、前記ゲート電極と前記半導体層の間に位置し、
前記第1界面層および前記第2界面層が、前記誘電体層と前記半導体層の間であり、
前記第1界面層が、ポリ(メチルシルセスキオキサン)から形成されており、
前記第2界面層が、式C1225SiXのシランから形成されていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
(上記式中、Xは、Cl、OCH、およびそれらの混合物から選択される。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2010−98308(P2010−98308A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233486(P2009−233486)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】