説明

析出板製造装置および析出板製造方法

【課題】 冷却体表面に凝固析出して生成される析出板の自壊による破片を適正処理し、析出板の生産に対して悪影響を及ぼすことを防止できる析出板製造装置および析出板製造方法を提供する。
【解決手段】 溶解炉24でシリコンを加熱して溶湯23にし、析出板生成の原板である冷却体25を、浸漬手段27によって溶湯中へ浸漬し溶湯中から引上げてシリコンを冷却体の表面に凝固析出させてシート状シリコン48を製造する。このシート状シリコンの製造に際し、冷却体25が溶湯上方位置から離反する方向へ搬送される搬送経路途中に設けられるバケット27が、冷却体から離脱して落下するシート状シリコンを受容する。バケットに受容された落下物は、落下物移動手段28によって、バケット内で収容容積が大きい方へ移動され、また必要に応じて落下物再投入手段29によって溶解炉内へ投入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、析出板製造装置および析出板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境に対する負荷を軽減するべく、化石燃料を用いる火力発電以外の、風力発電、波力発電などの発電方法が種々試みられている。なかでも最も注目され、実用化の先端に位置付けられているのが太陽電池による発電であり、この太陽電池には、その素材として多結晶シリコンが用いられている。
【0003】
太陽電池に用いられる多結晶シリコンを製造する従来の代表的な技術として、不活性ガス雰囲気中でリン(P)またはボロン(B)等のドーパントを添加した高純度シリコンを坩堝中で加熱溶融させ、この融液を鋳型に流し込んで冷却し、多結晶インゴットを得る鋳造方法がある(特許文献1参照)。
【0004】
太陽電池に使用されるシート状のシリコンは、上記のようにして得られる多結晶インゴットを、バンドソー等で小さなブロックに切断し、さらにワイヤソーまたは内周刃法などでスライスすることによって製造される。
【0005】
このような製造方法は、多結晶シリコンインゴットを得るための鋳造工程に加え、シート状シリコンの外形ブロックサイズに切断する工程と、高いコストを要するシート厚さにスライスするスライシング工程が必要なこと、またこのスライシング工程でワイヤまたは内周刃の厚み分以上の材料ロスを生じること等、太陽電池の製造コスト低減を図るうえで大きな障害になっている。
【0006】
このような問題を解決する従来技術に、スライシング工程を省略し、溶融シリコンに冷却体を浸漬させ、冷却体のシート生成面にシリコンを付着、凝固析出させるシート状のシリコンを製造する方法が提案されている(たとえば、特許文献2〜4参照)。
【0007】
図9は従来のシート状シリコン製造に用いられる析出板製造装置1の構成を簡略化して示す図であり、図10は析出板製造装置1におけるシート状シリコン製造の概要を説明する図である。以下図9および図10を参照し、溶融シリコンに冷却体を浸漬させ、冷却体のシート生成面にシリコンを付着、凝固析出させるシート状のシリコン製造方法を説明する。
【0008】
本背景技術では、析出板製造装置を用い、特にシート状シリコンを製造する例について説明を行うけれども、本発明の背景技術がシート状シリコンの製造のみに限定されるものではなく、たとえば、シリコン以外のシート状半導体または金属板の製造においても利用可能である。
【0009】
析出板製造装置1は、チャンバ2によって形成される処理空間3内に溶解炉4が配置される。溶解炉4には坩堝5が備えられ、坩堝5内にはシリコンを加熱溶解した溶湯6が収容される。また、処理空間3内には、冷却体7を溶湯6に浸漬させる浸漬手段8が設けられる。
【0010】
浸漬手段8は、不図示の搬送装置によって、チャンバ2の1側壁に形成される冷却体搬入口9を通して処理空間3内に搬入された冷却体7を保持することができる。浸漬手段8は、保持する冷却体7を、矢符15で示される方向、すなわち冷却体搬入口9付近から坩堝5に収容される溶湯6の上方位置まで搬送し、溶湯6に浸漬させ、冷却体7の表面にシリコンを凝固析出させる。その後、浸漬手段8は、冷却体7と冷却体7の表面に生成されたシート状シリコン11を、溶湯6から引上げ、さらに溶湯6の上方位置から離反させる矢符16で示す方向、すなわち冷却体搬入口9が形成される1側壁に対向する側壁に形成される冷却体搬出口10へ向けて搬送し、冷却体搬出口10を通して不図示の搬送装置へ受渡す。制御装置14は、析出板製造装置1の各部の動作を制御する。
【0011】
以上の一連のシート状シリコン製造の動作を複数回繰返すと、溶解炉4に備わる坩堝5に収容される溶湯6が減少し、シート状シリコン11の製造に支障が出る。その場合、一旦シート状シリコン11の製造を停止し、図示しないシリコンの溶解材料追加装置によって、析出板製造装置1の外部から追加のシリコンを、坩堝5内へ導入して溶解し、減少分の溶湯を補充する。
【0012】
このような従来技術で用いられる方法では、冷却体7が、溶解したシリコンの溶湯6内に浸漬され、その後溶湯6外に引上げられるので、冷却体7の表面に析出したシート状シリコン11は、析出およびその後の冷却過程における急激な温度変化により大きな内部応力を内包することが避けられない。
【0013】
シート状シリコンのサイズがある値以上の場合、冷却体表面に析出したシート状シリコン内部に発生した大きな応力は、シート状シリコンを破壊してしまう場合がある。一方、シート状シリコンのサイズが比較的小さい場合、内部応力の発生は大きな問題とはならない。一般的には、シート状シリコンのサイズが、一辺100mm以下の矩形であれば、内部応力による破壊はほとんど発生しない。
【0014】
しかしながら、近年、太陽電池用シート状シリコンのサイズは大きくなる傾向にあり、たとえば、現在生産されている多結晶太陽電池に使用されるシート状シリコンは、大きなものでは、一辺が150mm程度の矩形である。このような大きいサイズのシート状シリコンを、前述のように冷却体をシリコン溶湯に浸漬して製造する場合、内部応力によるシート状シリコンの破壊が比較的高い確率で発生する。
【0015】
図11および図12は、シート状シリコンが内部応力によって破壊した状態を示す図である。内部応力によって破壊したシート状シリコン11の破片11aは、冷却体7から離脱して落下し、シリコンを溶解する溶解炉4の周辺に堆積する。破壊し堆積したシート状シリコン11の破片11aが多くなると、冷却体7または凝固析出によって冷却体7表面に生成されたシート状シリコン11に接触し、シート状シリコン製造を阻害する要因となる。
【0016】
このような問題を解決する方法として、破壊して堆積したシート状シリコンの破片11aが、シート状シリコン製造を阻害する要因となる前に、堆積したシート状シリコンの破片11aを、析出板製造装置1の外部に排出してしまうことが考えられる。しかしながら、シート状シリコンの製造において、チャンバ2内部の処理空間3は、通常密閉された不活性ガス雰囲気に保たれているので、処理空間3内の不活性ガス雰囲気の環境を維持しつつ、堆積したシート状シリコンの破片11aを析出板製造装置1の外部に排出するためには、専用のロードロック室とゲートバルブとを設けることが必要である。この、専用のロードロック室は、一種の真空チャンバであり、これを付設することによる装置価格の大幅な上昇と、装置設置面積の増加という問題を招来する。
【0017】
また、このような凝固析出したシート状シリコンの自壊を防ぐことを目的として、冷却体をシート状シリコンに発生する内部応力が分散するような形状にしたり、仮にシート状シリコンが自壊しても目的とする製品が得られるように、製品寸法よりも外側部分にあらかじめ壊れやすい部分を設けておくなどの方法が考えられているけれども、完全に自壊を防ぐことは困難であり、やはり発生するシート状シリコンの破片の適正な処理が、重要な解決課題である。
【0018】
【特許文献1】特開平6−64913号公報
【特許文献2】特開平10−29895号公報
【特許文献3】特開2002−175996号公報
【特許文献4】特開2003−59849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、冷却体表面に凝固析出して生成される析出板の自壊による破片を適正処理し、析出板の生産に対して悪影響を及ぼすことを防止できる析出板製造装置および析出板製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、溶解対象物を加熱して溶湯にし、該溶湯を収容する溶解炉と、析出板生成の原板である冷却体を、溶湯の上方位置へ搬送し、溶湯中へ浸漬し、溶湯中から引上げて溶湯の上方位置から離反する方向へ搬送する浸漬手段とを備え、溶解対象物を冷却体の表面に凝固析出させて析出板を製造する析出板製造装置であって、
冷却体が溶湯上方位置から離反する方向へ搬送される搬送経路途中に設けられ、冷却体から離脱して落下する落下物を受容する落下物受容手段と、
落下物受容手段によって受容された落下物を落下物受容手段中で溶解炉から遠ざかる方向へ移動させる落下物移動手段と、
落下物受容手段によって受容される落下物を溶解炉内へ移動させる落下物再投入手段とを含むことを特徴とする析出板製造装置である。
【0021】
また本発明は、落下物受容手段は、
落下物を受容する受容面が、溶解炉に収容される溶湯の液面よりも高い位置になるように、かつ冷却体が溶湯上方位置から離反する方向へ搬送される搬送経路の終端部付近まで延び搬送経路の下方に位置して設けられることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、落下物受容手段は、
落下物を受容する受容面が、溶解炉から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように傾斜し、かつ受容面を含んでなる受容部が、溶解炉から遠くなるほど落下物を収容する容積が大きくなるように形成されることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、落下物受容手段は、落下物を受容する受容面の少なくとも一部が、カーボンまたは石英から成ることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、落下物移動手段は、落下物を受容する受容面が溶解炉から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように、落下物受容手段を傾動させる傾動手段を含むことを特徴とする。
【0025】
また本発明は、落下物受容手段は、落下物を受容する受容面が、溶解炉から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように傾斜し、
落下物移動手段は、少なくとも落下物を受容する受容面を振動させる振動フィーダーを含むことを特徴とする。
【0026】
また本発明は、落下物再投入手段は、落下物受容手段の落下物受容面が溶解炉へ近くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように、落下物受容手段を傾動させる傾動手段を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明は、溶解対象物を溶解炉で加熱して溶湯にし、析出板生成の原板である冷却体を、溶解炉に収容される溶湯の上方位置へ搬送し、溶湯中へ浸漬し、溶湯中から引上げて溶湯の上方位置から離反する方向へ搬送することによって、溶解対象物を冷却体の表面に凝固析出させて析出板を製造する析出板製造方法であって、
冷却体が溶湯上方位置から離反する方向へ搬送される途中で冷却体から離脱して落下する落下物を受容する工程と、
受容された落下物を、溶解炉から遠ざかる方向へ移動させる工程と、
受容された落下物を溶解炉内へ移動させる工程とを含むことを特徴とする析出板製造方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、析出板製造装置は、冷却体から落下する落下物を受容する落下物受容手段と、落下物受容手段によって受容された落下物を落下物受容手段中で溶解炉から遠ざかる方向へ移動させる落下物移動手段と、落下物受容手段によって受容される落下物を溶解炉内へ移動させる落下物再投入手段とを含んで構成される。このことによって、冷却体の表面に凝固析出して生成された析出板が自壊して冷却体から離脱落下した場合、該落下物を受止めて、一旦落下物を落下物受容手段中で溶解炉から遠ざかる方向へ移動させた後、溶湯の材料充填を行う際に溶解炉内に移動させることが可能となり、また析出板の破片が溶解炉周辺に堆積することを防止して、破片の堆積が析出板の生産に対して悪影響を及ぼすことを最小限にとどめることができる。
【0029】
また本発明によれば、落下物受容手段は、落下物を受容する受容面が、溶解炉に収容される溶湯の液面よりも高い位置になるように、かつ冷却体が溶湯上方位置から離反する方向へ搬送される搬送経路の終端部付近まで延び搬送経路の下方に位置して設けられる。このことによって、溶解炉周辺に落下する落下物を確実に漏らすことなく受容することができるとともに、受容した落下物を溶解炉へ再投入する際には重力の作用を利用して容易に投入することができる。
【0030】
また本発明によれば、落下物受容手段は、落下物を受容する受容面が、溶解炉から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように傾斜し、かつ受容面を含んでなる受容部が、溶解炉から遠くなるほど落下物を収容する容積が大きくなるように形成される。このことによって、受容した落下物を、溶解炉側へ落すことなく確実に落下物受容手段に収容することができる。
【0031】
また本発明によれば、落下物受容手段は、落下物を受容する受容面の少なくとも一部が、カーボンまたは石英から成るので、受容した落下物に対する重金属等の不純物混入を避けることができ、製造される析出板の品質を高品位に保つことができる。
【0032】
また本発明によれば、落下物移動手段は、落下物を受容する受容面が溶解炉から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように、落下物受容手段を傾動させる傾動手段を含んで構成される。このことによって、落下物を受容する落下物受容手段の受容面を、溶解炉から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように傾斜させるという簡単な動作で、溶解炉から遠ざかる方向へ落下物を移動させることができる。
【0033】
また本発明によれば、落下物受容手段は、落下物を受容する受容面が、溶解炉から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように傾斜し、落下物移動手段は、少なくとも落下物を受容する受容面を振動させる振動フィーダーを含むので、振動フィーダーで受容面を振動させるという簡単な動作で、溶解炉から遠ざかる方向へ落下物を移動させることができる。
【0034】
また本発明によれば、落下物再投入手段は、落下物受容手段の落下物受容面が溶解炉へ近くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように、落下物受容手段を傾動させる傾動手段を含んで構成されるので、傾動手段を駆動させるという簡単な動作で落下物を溶解炉内に移動させることができる。
【0035】
また本発明によれば、冷却体の表面に凝固析出して生成された析出板が自壊して冷却体から離脱落下した場合、該落下物を受止め、受止めた落下物を溶解炉から遠ざかる方向へ移動させ、受容された落下物を溶解炉内へ移動させることで、析出板の破片が溶解炉周辺に堆積することを防止し、破片の堆積が析出板の生産に対して悪影響を及ぼすことを最小限にとどめることができる析出板製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は本発明の実施の一形態である析出板製造装置20の構成を簡略化して示す上面図であり、図2は図1に示す析出板製造装置20による析出板製造の概要を示す側面方向から見た断面図である。
【0037】
析出板製造装置20は、溶解対象物を溶解炉24で加熱して溶湯23にし、析出板生成の原板である冷却体25を、溶湯23中へ浸漬し、溶湯23中から引上げて、溶解対象物を冷却体25の表面に凝固析出させて析出板を製造することに用いられる。本実施の形態では、溶解対象物としてシリコンを用い、冷却体25の表面上にシリコンを凝固析出させて析出板であるシート状シリコンを製造する場合について例示する。
【0038】
析出板製造装置20は、大略、チャンバ21と、チャンバ21が形成する内部空間である処理空間22内に設けられ、溶解対象物であるシリコンを加熱して溶湯23にし、該溶湯23を収容する溶解炉24と、シート状シリコン生成の原板である冷却体25を、溶湯23の上方位置へ搬送し、溶湯23中へ浸漬し、溶湯23中から引上げて溶湯23の上方位置から離反する方向へ搬送する浸漬手段26と、冷却体25が溶湯上方位置から離反する方向へ搬送される搬送経路途中に設けられ、冷却体25から離脱して落下する落下物であるシート状シリコン48の破片を受容する落下物受容手段27と、落下物受容手段27によって受容された落下物を落下物受容手段27中で溶解炉24から遠ざかる方向へ移動させる落下物移動手段28と、落下物受容手段27によって受容される落下物を溶解炉24内へ移動させる落下物再投入手段29とを含む構成である。
【0039】
チャンバ21は、外観が大略直方体形状を有し、内部が中空の構造体である。チャンバ21は、たとえば鋼製の躯体に図示を省くけれどもアルミナ(Al)などの断熱材が内張りされて、断熱かつ耐火構造を備える。このチャンバ21には、不図示の真空排気手段と不活性ガス供給手段とが付設され、これらによって、チャンバ21の処理空間22を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気に保つことができる。
【0040】
またチャンバ21の一方の側壁21aには、チャンバ21の外部にある不図示の搬送装置と、処理空間22内にある浸漬手段26との間で、冷却体25を受渡しするための冷却体搬入口31が形成される。この冷却体搬入口31には、不図示の開閉自在の扉が設けられ、扉の外方にはさらに副室チャンバが設けられる。この副室チャンバは、チャンバ21と同様に雰囲気調整が可能に構成され、冷却体搬入口31と反対側には開閉自在の扉が設けられる。したがって、搬送装置でチャンバ21まで搬送された冷却体25は、まず大気開放された副室チャンバ内へ搬入され、副室チャンバ内を雰囲気調整した後、さらに副室チャンバ内に備わる搬送手段によって冷却体搬入口31を通して浸漬手段26へ渡される。
【0041】
チャンバ21の前記一方の側壁21aに対向する他方の側壁21bには、冷却体搬入口31と対向する位置に冷却体25をチャンバ21の外部へ搬出するための冷却体搬出口32が形成される。
【0042】
冷却体25の搬送経路の下方かつ冷却体搬出口32の下端部付近であって処理空間22内に、処理空間22内で搬送される冷却体25を、冷却体搬出口32から搬出するために、浸漬手段26から受取り、チャンバ21外のもう一つの搬送手段に受渡す受渡部33が設けられる。この冷却体搬出口32にも、開閉自在の扉とその外方に副室チャンバが設けられる。浸漬手段26から受渡部33に一旦載置されたシート状シリコン48を有する冷却体25が、副室チャンバを介してもう一つの搬送手段に受渡しされる。
【0043】
本実施の形態では、溶解炉24は、高周波誘導溶解炉であり、溶解対象物であるシリコンが投入され溶解されてその溶湯23が収容される坩堝34と、坩堝34のまわりに巻きまわされる高周波誘導コイル35と、坩堝34と高周波誘導コイル35とを収容する炉体容器36と、不図示の高周波電源とを含む。
【0044】
坩堝34は、たとえばグラファイト製の有底直方体形状容器である。炉体容器36は、たとえば耐火煉瓦から成り、坩堝34とほぼ相似形の有底直方体形状容器である。炉体容器36と坩堝34および高周波誘導コイル35との間は、図では空隙であるけれども、実際にはここに断熱性および絶縁性の耐火物などが充填される。溶解炉24は、処理空間22内であって、チャンバ21の底板21c上に設置される。溶解炉24は、高周波電源から高周波誘導コイル35に高周波電流を流すことによって、グラファイト製の坩堝34および坩堝34内のシリコンに誘導電流が発生し、自ら発熱することを利用する装置である。
【0045】
浸漬手段26は、冷却体25を保持する保持ヘッド41と、保持ヘッド41が装着されて鉛直方向に延びて設けられる垂直アーム42と、垂直アーム42を鉛直方向に移動させる鉛直駆動部43と、垂直アーム42および保持ヘッド41を水平方向に移動させる水平駆動部44と、水平駆動部44が水平方向に走行する軌道部材45とを含む。
【0046】
軌道部材45は、たとえば金属製の細長い部材であり、処理空間22内において前記一方の側壁21aと他方の側壁21bとの両者に隣接する側壁もしくはチャンバ21の天板に装着され、坩堝34の上方空間を、冷却体搬入口31から冷却体搬出口32に向って延びるように設けられる。水平駆動部44は、軌道部材45に形成されるたとえば溝状の軌道に案内されて、垂直アーム42および保持ヘッド41を水平方向へ進退自在に移動させる。
【0047】
鉛直駆動部43は、垂直アーム42と垂直アーム42に装着される保持ヘッド41とを鉛直方向、すなわち坩堝34の上方に位置するときには、坩堝34に収容される溶湯23に近接離反するように移動させることができる。
【0048】
垂直アーム42に装着される保持ヘッド41は、ハンドリング機構を有し、ハンドリング機構の動作により冷却体25を把持し、また解放することができる。
【0049】
したがって、浸漬手段26は、以下の動作をすることができる。浸漬手段26は、水平駆動部44の動作によって、垂直アーム42と保持ヘッド41とが、冷却体搬入口31近傍まで移動し、冷却体搬入口31を通して冷却体25を受取って保持ヘッド41で保持し、再び水平駆動部44の動作によって、図2中矢符46で示す方向である冷却体搬入口31から坩堝34上方位置へ向って移動する。さらに浸漬手段26は、鉛直駆動部43の動作によって、垂直アーム42を下降させて保持ヘッド41に保持される冷却体25を坩堝34に収容される溶湯23中へ浸漬し、シリコンを冷却体25の表面に凝固析出させる。
【0050】
シリコンを冷却体25の表面に凝固析出させた後、冷却体25を図2中矢符47で示す方向へ搬送する。すなわち、再度鉛直駆動部43の動作によって垂直アーム42を上昇させて冷却体25を溶湯23から引上げ、坩堝34上方位置から冷却体搬出口32へ向って移動し、受渡部33上に凝固析出させたシート状シリコン48を有する冷却体25を一旦載置し、冷却体搬出口32を通して冷却体25を引渡す。
【0051】
本実施形態の落下物受容手段27は、バケット状に形成される部材である。したがって、ここでは落下物受容手段27をバケット27と呼ぶことがある。バケット27は、上面から見た形状が矩形を有し、側面から見た形状が三角形と長方形とを結合させた形状を有する。バケット27は、底板27aと、奥板27bと、底板27aおよび奥板27bに連接して側壁を構成する2枚の第1および第2側板27c1,27c2とを含んで構成される。また底板27aは、側面から見た形状が長方形部分の底を構成する水平底板27a1と、側面から見た形状が三角形部分の底を構成する傾斜底板27a2とを含む。
【0052】
バケット27の底板27aが、冷却体25から離脱して落下する落下物の受容面を構成する。ここで、落下物とは、冷却体25から離脱したシート状シリコン48の破片のことである。バケット27は、受容面である底板27aが、カーボンまたは石英によって形成される。なお、バケット27の奥板27b、第1および第2側板27c1,27c2も、カーボンまたは石英によって形成されることが好ましい。カーボンまたは石英で形成されることによって、落下したシート状シリコン48の破片に対する重金属等の不純物混入を避けることができるので、製造される析出板の品質を高品位に保つことができる。
【0053】
落下物受容手段であるバケット27は、冷却体25が搬送される方向の寸法が、坩堝34の周縁部に覆い被さる位置から搬送経路の終端部である受渡部33が設けられる付近まで延びる長さに形成され、また冷却体25が搬送される方向に垂直な方向の寸法(幅寸法)が、坩堝34の短辺側寸法とほぼ同じ長さになるように形成される。
【0054】
バケット27は、定常状態においては、落下物を受容する受容面である底板27aの少なくとも水平底板27a1が、溶解炉34に収容される溶湯23の液面よりも高い位置になるように、底板27aの傾斜底板27a2が、溶解炉34から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように傾斜して設けられる。このバケット27が落下したシート状シリコン48の破片を受容して収容することのできる容積は、溶解炉34から遠くなるほど大きくなるように、すなわち溶解炉34に近い側面形状が長方形の部分よりも、溶解炉34から遠い側面形状が三角形部分の方が大きくなるように形成される。
【0055】
バケット27には、バケット27に受容された破片をバケット27中で溶解炉34から遠ざかる方向へ移動させる落下物移動手段28が設けられる。本実施形態の落下物移動手段28は、バケット27を傾動させる第1傾動手段28である。
【0056】
バケット27は、傾斜底板27a2と奥板27bとが連接する連接部において、詳細を後述する落下物再投入手段29の回転フレーム部材65に角変位自在に支持され、ヒンジ構造51を成す。このヒンジ構造51部分は、バケット27が傾動する際の支点となるので、便宜上支点ヒンジ部51と呼ぶ。またバケット27には、バケット27の奥板27bの外方に臨む端部において、ヒンジ構造52を有するようにして第1傾動手段28が装着される。第1傾動手段28としては、たとえば空圧や油圧式のシリンダとピストンとを含んでなるユニットが好適に用いられる。このヒンジ構造52部分を、便宜上傾動ヒンジ部52と呼ぶ。
【0057】
第1傾動手段28の傾動ヒンジ部52と反対側は、上記回転フレーム部材65から水平方向にチャンバ21の側壁21bに向って延びるように形成される支持板53の遊端部53aにヒンジ構造を有するようにして装着される。
【0058】
第1傾動手段28は、前記バケット27が定常状態、すなわち底板27aの水平底板27a1が水平面と平行になり、底板27aの傾斜底板27a2が、溶解炉24から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように傾斜する状態にあるとき、シリンダ28aからピストンロッド28bを伸長させてある。したがって、第1傾動手段28のピストンロッド28bを、シリンダ28a内に退縮させるように駆動、すなわち図2中の矢符54方向に移動させるとき、バケット27は、支点ヒンジ部51を支点として、バケット27の水平底板27a1が坩堝34から離反する方向(図2の紙面に向って時計回り)に角変位移動する。
【0059】
バケット27が時計回りに角変位移動することによって、水平底板27a1は溶解炉24から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように傾斜し、傾斜底板27a2は溶解炉24から遠くなるほど鉛直方向の位置が一層低くなるように深く傾斜する。このことによって、バケット27で受容される落下物を、バケット27内で溶解炉24から遠ざかる方向へ移動、すなわち側部断面の形状が略三角形を有する収容容積の大きい側へ移動させることができる。したがって、バケット27で受容した落下物を、溶解炉24側へ落すことなく確実に収容し、かつバケット27の容積の大きい部分に相当量を収容することが可能になる。
【0060】
本実施形態では、落下物再投入手段29は、バケット27の落下物受容面である底板27aが溶解炉24へ近くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように、バケット27を傾動させる第2傾動手段61とその駆動源62とを含んで構成される。
【0061】
第2傾動手段61は、ベース板63と、ベース板63の上に設けられる回転支持部64と、回転支持部64に回転自在に支持される前記回転フレーム部材65と、ベース板63上で回転支持部64に対向する位置に形成される支持突起部66と、バランサ67とを含む。第2傾動手段61は、バケット27の幅方向両側に一対が設けられるけれども、互いにバケット27に関して対称であること以外は同一に構成されるので、一方のみで代表して構成を説明する。
【0062】
ベース板63は、略直方体形状の金属製の板部材であり、チャンバ21の底板21c上に、冷却体25の搬送方向に延びて設置される。ベース板63上に設けられる回転支持部64には、軸受部によって回転フレーム部材65が、角変位自在に支持される。
【0063】
回転フレーム部材65は、上面から見た形状も側面から見た形状もL字状の棒部材である。すなわち、回転フレーム部材65は、定常状態で、水平方向に延びる水平棒部65aと、水平棒部65aに連なり水平棒部65aに対して垂直に立上がって延びる垂直棒部65bと、垂直棒部65bに連なり垂直棒部65bから水平方向であってバケット27に向って延びる支持棒部65cとから成る。回転フレーム部材65の水平棒部65aには、水平棒部65aに対して直交する方向に軸線を有するようにして回転軸部材68が固着され、厳密には回転軸部材68が回転支持部64の軸受部に回転自在に支持される。
【0064】
回転フレーム部材65の支持棒部65cの先端部においてバケット27が角変位自在に支持され、上記の支点ヒンジ部51が構成される。回転フレーム部材65の水平棒部65aの一端部には、駆動源62の負荷トルクを軽減させるためのバランサ67が装着される。回転フレーム部材65の水平棒部65aのバランサ67が装着される一端部と反対側の他端部は、定常状態においては、ベース板63に回転支持部64に対向する位置にベース板63から突出するように形成される支持突起部66に当接して支持される。なお、回転フレーム部材65の水平棒部65aは、支持突起部66に単に当接して支持されるに過ぎないものであり、回転フレーム部材65が角変位移動するとき、随意に当接状態から離脱することができる。
【0065】
駆動源62は、電動機71と、電動機71を設置する電動機設置台72と、磁気シールユニット73と、伝達軸部材74と、2つの第1および第2カップリング75,76とを含んで構成される。電動機71は、チャンバ21の側壁に装着される電動機設置台72上に固定される。電動機71の回転駆動力は、その出力軸と、磁気シールユニット73の軸とを接続する第1カップリング75を介して伝達される。磁気シールユニット73は、電動機71の回転駆動力をチャンバ21内の第2傾動手段61に伝えるためにチャンバ21の側壁に形成される貫通孔77を封止するようにして装着される。
【0066】
磁気シールユニット73に伝達された回転駆動力は、さらに第2カップリング76で接続される伝達軸部材74に伝達され、伝達軸部材74は回転フレーム部材65の回転軸部材68に接続される。このことによって、電動機71の回転駆動力が回転フレーム部材65に伝達され、回転フレーム部材65が回転支持部64に支持される回転軸部材68の軸線まわりに、図2の紙面に向って反時計回りに角変位することができる。
【0067】
回転フレーム部材65の支持棒部65cの先端部にはバケット27が支持され、また支持棒部65cから水平に突出して形成される支持板53には落下物移動手段である第1傾動手段28が装着されているので、駆動源62を回転駆動させて回転フレーム部材65を図2の紙面に向って反時計周りに角変位移動させるとき、第1傾動手段28もろ共バケット27を、バケット27の落下物受容面である底板27aが溶解炉24へ近くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように、傾動させることができる。
【0068】
このことによって、バケット27で受容し、バケット27内に収容するシート状シリコン48の破片である落下物を、溶湯として再利用するために溶解炉24の坩堝34中へ再投入することが可能になる。
【0069】
なお、回転フレーム部材65を傾動させる角度は、バケット27の底板27a、特に傾斜底部27a2の傾斜角度によって適当な値が定まるので、一概に定めることはできないけれども、初期の水平状態から概ね角度30度程度まで傾斜されるようにすることが好ましい。
【0070】
析出板製造装置20には、さらに制御装置30が備えられる。制御装置30は、たとえば中央処理装置(CPU)を備える処理回路であり、溶解炉24の電源、浸漬手段26の各駆動部、落下物移動手段28、落下物再投入手段29などに電気的に接続され、制御装置30のメモリ部に予めストアされる装置全体の動作制御プログラムに従って、析出板製造に係る装置の全体動作を制御する。
【0071】
図3は析出板製造装置20に備わる落下物受容手段27の落下物受容の状態を示す図であり、図4は析出板製造装置20に備わる落下物移動手段28によって落下物を落下物受容手段27の中で移動させる状態を示す図であり、図5は析出板製造装置20に備わる落下物再投入手段29による落下物再投入の状態を示す図である。
【0072】
以下図3、図4および図5を参照し、冷却体25の表面で凝固析出後、熱履歴によって発生する内部応力によって自壊したシート状シリコン48から成る落下物48a(シート状シリコンの破片)の受容と再投入について説明する。
【0073】
溶湯23中へ浸漬された冷却体25を、シリコンの凝固析出によってシート状シリコン48が生成された後に溶湯23中から引上げ、図3中矢符47で示す溶湯23の上方位置から離反する方向へ搬送する途上において、シート状シリコン48に生じる内部応力によって、シート状シリコン48が自壊することがある。シート状シリコン48が自壊すると、シート状シリコン48の冷却体25に対する付着力が低下し、シート状シリコン48が破片48aとなり、冷却体25から離脱して落下する。析出板製造装置20では、図3中矢符47で示す搬送経路の下方に落下物受容手段であるバケット27が設けられるので、落下するシート状シリコン48の破片48aが、バケット27で受容され、その受容面すなわち底面27a上に堆積する。
【0074】
冷却体25をチャンバ21内に搬入し、冷却体25の表面でシート状シリコン48を生成して搬出する動作を継続すると、シート状シリコン48の自壊による破片48aの量が増大し、受容した破片48aがバケット27の底部27aに堆積されて山積みとなる。このような状態になると、冷却体25の表面上に生成されたシート状シリコン48を搬送する際、シート状シリコン48が山積み状態の破片48aに接触し、接触した衝撃で健全であるにも関らずシート状シリコン48自体が冷却体25から外れて落下する問題が生じる。
【0075】
しかしながら、本発明の析出板製造装置20では、落下物移動手段である第1傾動手段28を動作させて、バケット27を傾動させることによって、受容した破片48aを、バケット27の中で、溶解炉24から遠ざかる方向へ移動、すなわち収容容積の大きい方へ移動させることができる。バケット27の収容容積の大きい部分では、底板27aの傾斜底板27a2が鉛直方向下方に向って傾斜して形成されるので、相当量の破片48aを収容したとしても、冷却体25の表面上で形成されて搬送途中のシート状シリコン48に当るというトラブルを発生することがない。またバケット27を傾動させることによって、受容した破片48aをバケット27から坩堝34中へ落す、いわゆるこぼすことが防止される。
【0076】
バケット27に堆積した破片48aは、坩堝34内の溶湯23の量が減少して補充の必要が生じたとき、または堆積量が一定量に達したとき、シート状シリコン48の製造を一旦停止し、落下物再投入手段29を動作させて、バケット27を図5中矢符78で示す方向、すなわち紙面に向って反時計回り方向に角変位させて傾斜させることによって、破片48aに重力が作用し、図5中矢符79で示す鉛直方向に落下して坩堝34中に投入されて再度溶解される。
【0077】
坩堝34内への溶湯23の補充と落下物であるシート状シリコン48の破片48aの再投入は、たとえば次のようにして実行することができる。溶湯23の液面高さ検出器を設け、液面高さ検出器による検出値を、シリコンを補充しなければならない液面高さの限界値として予め定めてメモリにストアしてある値と制御装置30が比較し、検出値が該限界値以下になったとき、制御装置30がシート状シリコンの製造動作を停止し、落下物再投入手段29を動作させるとともに、不図示のシリコン補充装置を動作させる制御指令を出力することによって可能である。
【0078】
また堆積量が一定量に達した場合の坩堝34内へのシート状シリコン48の破片48aの再投入は、たとえば次のようにして実行することができる。バケット27に重量検出器を設け、重量検出器による検出値を、再投入動作をしなければならない臨界値として予め定めてメモリにストアしてある値と制御装置が比較し、検出値が該臨界値以上になったとき、制御装置30がシート状シリコンの製造動作を停止し、落下物再投入手段29を動作させる制御指令を出力することによって可能である。
【0079】
このように、析出板製造装置20では、シート状シリコン48の自壊した破片48aが処理されるので、シート状シリコン48の自壊した破片48aの過剰な堆積により浸漬手段26および冷却体25の動作に支障をきたさないようにすることができる。
【0080】
図6は本発明の実施の第2形態である析出板製造装置80の構成を簡略化して示す側面方向から見た断面図であり、図7は析出板製造装置80に備わる落下物移動手段81によって落下物を落下物受容手段27の中で移動させる状態を示す図であり、図8は析出板製造装置80に備わる落下物再投入手段29による落下物再投入の状態を示す図である。本実施の形態の析出板製造装置80は、実施の第1形態の析出板製造装置20に類似し、対応する部分については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0081】
析出板製造装置80において注目すべきは、落下物受容手段であるバケット27によって受容された落下物であるシート状シリコン48の破片48aを、バケット27中で溶解炉24から遠ざかる方向へ移動させる落下物移動手段81が振動フィーダーによって構成されることである。ここで、振動フィーダーとは、水平または傾斜した「樋状の構造物」に、機械的に上下運動の加わった振動を与え、搬送物を斜め前方に投出すようにして搬送物を移動する装置のことである。
【0082】
第1形態と同じ落下物受容手段であるバケット27が樋状構造物に相当する。バケット27は、受容面である底部27aのうち水平底部27a1が、溶解炉34から遠ざかるのに伴って鉛直方向の位置が低くなるように僅かに傾斜されて振動フィーダー81上に固定される。さらに振動フィーダー81は、回転フレーム部材65の支持棒部65cの上面に固定される。
【0083】
析出板製造装置80では、冷却体25から離脱したシート状シリコン48の破片48aをバケット27で受容し、その受容面である底部27a上に堆積する。シート状シリコン48の破片48aを受容するバケット27に対して、落下物移動手段である振動フィーダー81を作動させることによって、受容面である底部27a上の破片48aに振動を与え、バケット27の底部27aが傾斜して設けられていることと相俟って、振動を駆動力として破片48aをバケット27の中で溶解炉24から遠ざかる方向へ移動、すなわち収容容積が大きい方へ移動させることができる。すなわち実施の第1形態の析出板製造装置20における第1傾動手段28と同様の効果を奏することができる。
【0084】
また、坩堝34内の溶湯23の量が減少して補充の必要が生じたとき、またはバケット27における破片48aの堆積量が一定量に達したとき、シート状シリコン48の製造を一旦停止し、バケット27に堆積した落下物であるシート状シリコン48の破片48aを、落下物再投入手段29によってバケット27を振動フィーダー81もろ共傾動させて坩堝34内へ再投入することができる。
【0085】
以上に述べたように、本実施の形態では、析出板製造装置は、シート状シリコンの製造に用いられるけれども、これに限定されることなく、シート状の他の半導体、たとえばシート状ガリウム−ヒ素などの製造、またシート状金属の製造に用いられても良い。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の一形態である析出板製造装置20の構成を簡略化して示す上面図である。
【図2】図1に示す析出板製造装置20による析出板製造の概要を示す側面方向から見た断面図である。
【図3】析出板製造装置20に備わる落下物受容手段27の落下物受容の状態を示す図である。
【図4】析出板製造装置20に備わる落下物移動手段28によって落下物を落下物受容手段27の中で移動させる状態を示す図である。
【図5】析出板製造装置20に備わる落下物再投入手段29による落下物再投入の状態を示す図である。
【図6】本発明の実施の第2形態である析出板製造装置80の構成を簡略化して示す側面方向から見た断面図である。
【図7】析出板製造装置80に備わる落下物移動手段81によって落下物を落下物受容手段27の中で移動させる状態を示す図である。
【図8】析出板製造装置80に備わる落下物再投入手段29による落下物再投入の状態を示す図である。
【図9】従来のシート状シリコン製造に用いられる析出板製造装置1の構成を簡略化して示す図である。
【図10】析出板製造装置1におけるシート状シリコン製造の概要を説明する図である。
【図11】シート状シリコンが内部応力によって破壊した状態を示す図である。
【図12】シート状シリコンが内部応力によって破壊した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
20 析出板製造装置
21 チャンバ
23 溶湯
24 溶解炉
25 冷却体
26 浸漬手段
27 落下物受容手段
28 落下物移動手段
29 落下物再投入手段
30 制御装置
34 坩堝
35 高周波誘導コイル
81 振動フィーダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解対象物を加熱して溶湯にし、該溶湯を収容する溶解炉と、析出板生成の原板である冷却体を、溶湯の上方位置へ搬送し、溶湯中へ浸漬し、溶湯中から引上げて溶湯の上方位置から離反する方向へ搬送する浸漬手段とを備え、溶解対象物を冷却体の表面に凝固析出させて析出板を製造する析出板製造装置であって、
冷却体が溶湯上方位置から離反する方向へ搬送される搬送経路途中に設けられ、冷却体から離脱して落下する落下物を受容する落下物受容手段と、
落下物受容手段によって受容された落下物を落下物受容手段中で溶解炉から遠ざかる方向へ移動させる落下物移動手段と、
落下物受容手段によって受容される落下物を溶解炉内へ移動させる落下物再投入手段とを含むことを特徴とする析出板製造装置。
【請求項2】
落下物受容手段は、
落下物を受容する受容面が、溶解炉に収容される溶湯の液面よりも高い位置になるように、かつ冷却体が溶湯上方位置から離反する方向へ搬送される搬送経路の終端部付近まで延び搬送経路の下方に位置して設けられることを特徴とする請求項1記載の析出板製造装置。
【請求項3】
落下物受容手段は、
落下物を受容する受容面が、溶解炉から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように傾斜し、かつ受容面を含んでなる受容部が、溶解炉から遠くなるほど落下物を収容する容積が大きくなるように形成されることを特徴とする請求項1または2記載の析出板製造装置。
【請求項4】
落下物受容手段は、
落下物を受容する受容面の少なくとも一部が、カーボンまたは石英から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の析出板製造装置。
【請求項5】
落下物移動手段は、
落下物を受容する受容面が溶解炉から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように、落下物受容手段を傾動させる傾動手段を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の析出板製造装置。
【請求項6】
落下物受容手段は、落下物を受容する受容面が、溶解炉から遠くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように傾斜し、
落下物移動手段は、少なくとも落下物を受容する受容面を振動させる振動フィーダーを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の析出板製造装置。
【請求項7】
落下物再投入手段は、
落下物受容手段の落下物受容面が溶解炉へ近くなるほど鉛直方向の位置が低くなるように、落下物受容手段を傾動させる傾動手段を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の析出板製造装置。
【請求項8】
溶解対象物を溶解炉で加熱して溶湯にし、析出板生成の原板である冷却体を、溶解炉に収容される溶湯の上方位置へ搬送し、溶湯中へ浸漬し、溶湯中から引上げて溶湯の上方位置から離反する方向へ搬送することによって、溶解対象物を冷却体の表面に凝固析出させて析出板を製造する析出板製造方法であって、
冷却体が溶湯上方位置から離反する方向へ搬送される途中で冷却体から離脱して落下する落下物を受容する工程と、
受容された落下物を、溶解炉から遠ざかる方向へ移動させる工程と、
受容された落下物を溶解炉内へ移動させる工程とを含むことを特徴とする析出板製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−73635(P2007−73635A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256882(P2005−256882)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】