説明

検出システム及び検出方法、並びに制御装置及び制御方法

【課題】クランク軸の回転角度を精度良くかつ短時間で検出するために用いる信号を出力できる検出システム及び検出方法、並びにクランク軸の回転角度を短時間で精度良く検出できるだけでなく、エンジンを短時間で精度良く制御できる制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】
クランク軸に設けられたロータの回転方向に所定の回転角度毎に形成された第1歯と第1歯と異なる形状の第2歯との通過を検出する検出装置から第1歯の通過を表す第1信号と第1歯又は第2歯の通過を表す第2信号とを取得する取得部と、取得部が取得した第1信号と第2信号とに基づいて第2歯の通過を判定する判定処理と、判定処理で判定した第2歯の通過に基づいて第2歯の形成されたロータが設けられたクランク軸の回転角度を検出する検出処理とを実行する制御部とを備える。これによれば、回転角度を短時間で精度良く検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを構成するクランクの回転角度を検出する検出システム及び検出方法、並びにクランクの回転角度に基づいてエンジンを制御する制御装置及び制御方法に関する。
【0002】
従来より、乗用車等の車両に搭載されるエンジンは、例えば、燃費の効率に優れた車両の運転を実現するため、制御装置であるECU(Electronic Control Unit)によって動作制御が行われている。また、例えば、車両が排出する二酸化炭素及び排気ガスの量を削減する目的でエンジンのアイドリングを停止するために、ECUによってエンジンの停止及び始動が制御されている。このECUは、エンジンの状態を表す情報として、エンジンを構成するクランクの回転角度を表す情報を用いてエンジンの動作を制御している。
【0003】
このため、精度良くエンジンを制御するために、ECUがエンジンの動作制御に用いるクランクの回転角度を、クランク軸の回転速度の変化に応じて精度良く判定できるクランク角判定装置が知られるに至った(例えば、特許文献1)。
【0004】
このクランク角判定装置は、エンジンを構成するクランク軸の回転に応じて等間隔のパルス信号を発生させると共に、パルス信号の発生間隔であるパルス間隔が所定のクランク角で変化するパルス信号発生手段と、パルス間隔の変化を基準にしてクランク角を判定するクランク角判定手段とを備えることを特徴としている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−38773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のクランク角判定装置は、クランクに設けられたロータに形成された歯の通過に伴ってパルス信号発生手段が出力するパルス信号のパルス間隔の変化を用いて、クランク角度を検出する。このため、例えば、エンジン回転数が変化するとパルス信号発生手段のパルス間隔が変化してしまうため、精度良く短時間でクランクの回転角度を検出できないという問題があった。また、このクランク角判定装置は、他の間隔よりも長いパルス間隔を回転角度の検出における基準として用いている。この基準となる長いパルス間隔において、このクランク角判定装置は、パルス信号に基づくクランクの回転角度の正確な更新を行うことができず、精度良くエンジンを制御できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、エンジンを構成するクランク軸の回転角度を精度良くかつ短時間で検出するために用いる信号を出力できる検出システム及び検出方法、並びにクランク軸の回転角度を短時間で精度良く検出できるだけでなく、エンジンを短時間で精度良く制御できる制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る検出システムは、クランク軸の回転方向に所定の回転角度毎に形成された磁性を有する第1歯と、第1歯と異なる形状の磁性を有する歯であって、クランク軸の回転角度を検出するために用いる第2歯とを有するクランク軸に設けられたロータと、ロータの回転による形状の異なった第1歯と第2歯との通過が引き起こす磁界の変化の違いに基づいて、第1歯と第2歯との通過を検出すると共に、検出した第1歯の通過を表す第1信号と、第1歯又は第2歯の通過を表す第2信号とを出力する検出装置とを備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成において、検出装置は、磁界の変化により抵抗値が変化する第1磁気抵抗と第2磁気抵抗とを有し、第1歯の高さは、第2歯の高さよりも高く、第1磁気抵抗は、第1歯の第2歯よりも高い部分の通過がもたらす磁界の変化により抵抗値を変化させて、第1歯の通過を表す第1信号を生成し、第2磁気抵抗は、第1歯と第2歯との通過がもたらす磁界の変化により抵抗値を変化させて、第1歯又は第2歯の通過を表す第2信号を生成する構成を採用できる。
【0010】
上記構成において、検出装置は、磁界の変化により抵抗値が変化する第1磁気抵抗と第2磁気抵抗とを有し、第1歯の厚さは、第2歯の厚さよりも厚く、第1磁気抵抗は、第1歯の第2歯よりも厚い部分の通過がもたらす磁界の変化により抵抗値を変化させて、第1歯の通過を表す第1信号を生成し、第2磁気抵抗は、第1歯と第2歯との通過がもたらす磁界の変化により抵抗値を変化させて、第1歯又は第2歯の通過を表す第2信号を生成する構成を採用できる。
【0011】
本発明に係る制御装置は、クランク軸に設けられたロータの回転方向に所定の回転角度毎に形成された第1歯と第1歯と異なる形状の第2歯との通過を検出する検出装置から、第1歯の通過を表す第1信号と第1歯又は第2歯の通過を表す第2信号とを取得する取得部と、取得部が取得した第1信号と第2信号とに基づいて、第2歯の通過を判定する判定処理と、判定処理で判定した第2歯の通過に基づいて、第2歯の形成されたロータが設けられたクランク軸の回転角度を検出する検出処理と、検出処理で検出したクランク軸の回転角度に基づいて、クランク軸を有するエンジンを制御するエンジン制御処理とを実行する制御部とを備えることを特徴としている。
【0012】
上記構成において、制御部は、取得部が取得した第2信号に基づいて、検出処理で検出した回転角度を更新する更新処理を更に実行することを特徴としている。
【0013】
上記構成において、制御部は、取得部が第1歯の通過を表す第1信号を取得した場合に、第1歯又は第2歯の通過を表す第2信号を取得したか否かに基づいて、検出装置の異常を検出する第1異常検出処理と、第1異常検出処理で検出した異常を通知するようエンジンを有する車両の異常を通知する通知装置を制御する通知制御処理とを更に実行する構成を採用できる。
【0014】
上記構成において、制御部は、取得部が取得した第1信号と第2信号とが表す第2歯の通過と、第2歯がロータに形成された位置とに基づいて、検出装置の異常を検出する第2異常検出処理と、第2異常検出処理で検出した異常を通知するようエンジンを有する車両の異常を通知する通知装置を制御する通知制御処理とを更に実行する構成を採用できる。
【0015】
本発明に係る検出方法は、クランク軸の回転方向に所定の回転角度毎に形成された磁性を有する第1歯と、第1歯と異なる形状の磁性を有する歯であって、クランク軸の回転角度を検出するために用いる第2歯とを有するクランク軸に設けられたロータの回転による形状の異なった第1歯と第2歯との通過が引き起こす磁界の変化の違いに基づいて、第1歯と第2歯との通過を検出ステップと、検出ステップで検出した第1歯の通過を表す第1信号と、第1歯及び第2歯の通過を表す第2信号とを出力する出力ステップとを備えることを特徴としている。
【0016】
本発明に係る制御方法は、クランク軸に設けられたロータの回転方向に所定の回転角度毎に形成された第1歯と第1歯と異なる形状の第2歯との通過を検出する検出装置から、第1歯の通過を表す第1信号と第2歯の通過を表す第2信号とを取得する取得ステップと、取得ステップで取得した第1信号と第2信号とに基づいて、第2歯の通過を判定する判定ステップと、判定ステップで判定した第2歯の通過に基づいて、第2歯の形成されたロータが設けられたクランク軸の回転角度を検出する検出ステップと、
検出ステップで検出したクランク軸の回転角度に基づいて、クランク軸を有するエンジンを制御するエンジン制御ステップとを備えることを特徴としている。
できる。
【発明の効果】
【0017】
これらの構成によれば、所定の回転角度毎に形成された第1歯の通過を表す第1信号のみならず、エンジンを構成するクランク軸の回転角度を検出するために用いる第2歯の通過をも表す第2信号を用いて、第1歯及び第2歯の形成されたロータが設けられたクランク軸の回転角度を短時間で精度良く検出できるだけでなく、エンジンを短時間で精度良く制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の制御装置を備える制御システムの一実施形態を示す構成図である。
図1に示す制御システム1は、車両に搭載される。車両は、例えば、乗用車、バス、及びトラック等の自動車で構成される。また、原動機付自転車、軽車両、及びトロリーバス、並びに鉄道車両で構成される実施例を採用できる。また、制御システム1は、船舶、航空機、並びに人工衛星、及び宇宙ステーション等の宇宙機に搭載される構成を採用できる。また更に、制御システム1は、車両又は船舶等に搭載されずに使用される構成を採用できる。
【0020】
図1に示す制御システム1は、エンジン110、本件発明に係る制御装置であるエンジン制御ECU120(Electronic Control Unit)、吸気バルブECU131、始動制御ECU132、エアコンECU133、ABS(Anti-Lock Braking System)ECU134、電動パワーステアリングECU135、及びエアバッグECU136、メータECU137、スタータ140、及び通知装置150で構成される。
【0021】
エンジン110及びエンジン制御ECU120については後述する。
吸気バルブECU131からメータECU137は、後述するエンジン制御ECU120と同様に、電子制御装置で構成される。吸気バルブECU131からメータECU137は、エンジン制御ECU120に接続する。吸気バルブECU131からメータECU137は、例えば、CAN(Controller Area Network)又はLIN(Local Interconnect Network)プロトコルを用いて、車載通信網(以下、車載ネットワークと図示する)を介して接続する他のECUと、車両の制御に必要な情報の通信を行う。
【0022】
吸気バルブECU131は、エンジン110及びエンジン制御ECU120に接続する。吸気バルブECU131は、エンジン制御ECU120が検出するクランク軸の回転角度に基づいて、エンジン110を構成するシリンダに設けられた吸気バルブの開閉を制御する。始動制御ECU132は、エンジン制御ECU120から受信した信号に基づいてスタータ140の始動を制御する。尚、エアコンECU133、ABSECU134、電動パワーステアリングECU135、及びエアバッグECU136は、エンジン制御ECU120から受信するエンジン110の状態を表す情報に基づいて、不図示のエアコン、ABS、電動パワーステアリング、及びエアバッグを制御する。
【0023】
メータECU137は、車載ネットワーク及び通知装置150に接続する。メータECU137は、車載ネットワークを介して接続するエンジン制御ECU120から受信するエンジンの状態を表す情報を通知装置150が通知するよう制御する。具体的には、メータECU137は、エンジン制御ECU120から受信する情報に基づいて、例えば、メータである通知装置150の表示を制御する。特に、メータECU137は、エンジン制御ECU120が検出した異常を表示して通知するよう通知装置150を制御する。
【0024】
スタータ140は、例えば、スタータモータ等の原動機で構成される。スタータ140は、エンジン110及び始動制御ECU132に接続する。スタータ140は、始動制御ECU132が供給を制御する電源を用いてエンジン110を始動させる。
通知装置150は、例えば、メータ表示パネル又はMILランプ等の表示装置、若しくはクラクション等の警笛又はスピーカ等の音声出力装置で構成される。通知装置150は、メータECU137に接続する。通知装置150は、メータECU137に制御されて、車両に生じた異常を通知する。具体例としては、通知装置150は、クラクションを鳴らす、MILランプを点灯させる、又は所定の通知音を出力する等して車両に生じた異常を通知する。また、通知装置150は、MILランプを点滅させて点灯させる構成を採用できる。
【0025】
エンジン110は、例えば、レシプロエンジン、ロータリーエンジンで構成される。また、エンジン110は、例えば、ロケットエンジン、タービンエンジン、及びガスタービンエンジン、若しくは蒸気機関で構成される実施例を採用できる。エンジン110は、エンジン制御ECU120、吸気バルブECU131、及びスタータ140に接続する。エンジン110は、スタータ140によりクランク軸を回転させられる。また、エンジン110は、回転させられたクランク軸の回転角度を検出するための信号をエンジン制御ECU120へ出力する。その後、エンジン110は、出力した信号により検出された回転角度に基づいたタイミングで吸気するよう吸気バルブECU131に制御されて始動する。また始動後においても、エンジン110は、吸気バルブECU131に吸気を制御されて車両が駆動するための動力を発生させる。
【0026】
ここで図2を参照して、従来のエンジン及び従来のエンジン制御装置の構成について説明した後に、本件発明を構成するエンジン110及び本件発明のエンジン制御装置120について説明する。図2(a)は、従来のエンジン10の一構成例を表す図である。尚、図2(a)は、図2(b)をA−A方向から表した側面図である。
図2に示すエンジン10は、クランク軸11、従来のロータ12、及び従来の検出装置13で構成される。
【0027】
クランク軸11には、ロータ12が設けられ、端部においてスタータ40に接続している。クランク軸11は、エンジン10を始動する場合に、スタータ40により回転させられる。
ロータ12は、クランク軸11に設けられ、クランク軸11の回転と共に回転する。ロータ12は、クランク軸11の回転方向に、例えば、10クランクアングル(以下単に、CAと記載する)等といった所定の回転角度毎に形成された磁性を有する歯12aと、歯12aを欠く欠歯部分12bとを有する。尚、欠歯部分12bは、例えば、2つの歯を連続して欠く部分である。この欠歯部分に欠く歯を、以下単に、欠歯という。この欠歯は、例えば、「130」CA及び「140」CAの位置に2つ設けられ、ロータ12が設けられたクランク軸11の回転角度を検出するために用いられる。
検出装置13は、例えば、MRE(磁気抵抗素子:Magnetic Resistance Element)センサで構成される。検出装置13は、ロータ12の回転による歯の通過が引き起こす磁界の変化に基づいて歯の通過を検出すると共に、検出した歯の通過を表す信号を出力する。
【0028】
ここで図3を参照して、従来の検出装置13が出力する信号について説明を行う。図3は、従来の検出装置13が出力する信号の一例を表す図である。
図3(a)は、検出装置13を通過する歯を概念的に表す図である。つまり、図3(a)は、時刻t1、t2、t5、及びt6において、ロータ12に形成された歯が検出装置113を通過し、時刻t3及びt4において歯12aが通過しなかった(つまり、欠歯部分12bが通過した)ことを表す。
【0029】
図3(b)は、検出装置13が出力する信号を表す図である。図3(b)は、縦軸で電圧を、横軸で時間を表す。つまり、図3(b)は、歯が検出装置13を通過した時刻t1、t2、t5、及びt6において、検出装置13が検出した歯12aの通過を表す信号を表し、欠歯部分12bが通過した時刻t3及びt4において歯の通過を表す信号を表さない。よって、欠歯部分12bが通過した場合に検出装置13が信号を出力する信号間隔は、そうで無い場合の約3倍の長さとなる。
【0030】
ここで図2に戻り、従来のエンジン制御ECU20について引き続き説明を行う。
従来のエンジン制御ECU20は、波形整形回路21及びマイコン22で構成される。波形整形回路21は、ハードウェア回路で構成される。波形整形回路21は、NEコネクタを介して検出装置13に接続し、NE36ポートを介してマイコン22に接続する。波形整形回路21は、検出装置13が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換する。具体的には、図3(b)及び(c)に示す様に、波形整形回路21は、検出装置13が出力する電気信号の電圧波形が所定の閾値Vthを上回る場合に値「1」のデジタル信号(つまり、「HI」の信号)を出力し、所定の閾値1を下回る場合に値「0」のデジタル信号(つまり、「LO」の信号)を出力する。
【0031】
よって、従来のマイコン22は、欠歯部分が通過する場合に波形整形回路21が歯の通過を表す信号を出力しないため、波形整形回路21の信号間隔の変化に基づいて欠歯部分の通過を判定していた。また、従来のマイコン22は、欠歯部分の判定結果に基づいて、欠歯部分を有するロータ12が設けられたクランク軸11の回転角度を検出していた。特に、従来のマイコン22は、回転角度の検出精度を向上させるために、波形整形回路21が出力する信号の出力間隔に基づいて検出した回転角度を仮の回転角度とし、仮の回転角度を用いて予測される欠歯部分の通過を出力間隔に基づいて再度検出した場合に、仮の回転角度を本確定していた。更に、従来のマイコン22は、波形整形回路21から歯の通過を表す信号を受信する度に本確定した回転角度を更新すると共に、更新した回転角度に基づいてエンジン10を制御していた。
【0032】
よって、従来のマイコン22を備えるエンジン制御ECU20では、エンジンの回転数が変化すると波形整形回路21の出力する信号の出力間隔が変化するため、精度良く欠歯部分の通過を判定できないだけでなく、精度良く回転角度を検出できないという問題があった。また、従来のエンジン制御ECU20では、仮の回転角度を用いて予測される欠歯部分の通過を再度検出した場合に仮の回転角度を本確定していたため、短時間で精度良く回転角度を検出できないという問題があった。このため、従来のエンジン制御ECU20では、例えば、エコランの一環として、アイドリング・ストップを行う場合に、エンジン10を短時間で始動するよう制御できず、始動性が向上しないという問題があった。尚、エコランとは、燃費が良く(つまり、エコノミーな)、かつ地球環境に優しい(つまり、エコロジーな)走行をいう。更に、従来のエンジン制御ECU20では、欠歯部分12bの通過期間は波形整形回路21が信号を出力しないため、回転角度の更新を精度良くすることができないという問題があった。つまり、従来のエンジン制御ECU20では、実際の回転角度と更新した回転角度との誤差が大きくなり易く、更新した回転角度に基づいてエンジン10を精度良く制御できないという問題があった。
【0033】
よって、図4を参照して、上記問題を解決する本件発明に係るエンジン110及びエンジン制御装置120の構成について説明を行う。尚、重複した説明を避けるため、以下主に、従来のエンジン10及びエンジン制御装置20との差異について主に説明する。図4(a)は、エンジン110の一構成例を表す図である。
図4に示すエンジン110は、本発明に係る検出システム2で構成される。検出システム2は、クランク軸111、ロータ112、及び検出装置113で構成される。検出システム2は、エンジン制御装置120に接続する。
【0034】
ロータ112は、クランク軸111の回転方向に所定の回転角度毎に形成された磁性を有する第1歯112aと、第1歯112aと異なる形状の磁性を有する歯であって、クランク軸111の回転角度を検出するために用いられる第2歯112bとを有する。具体的には、図4(b)に示すように、第1歯112aの高さは第2歯112bの高さよりも高く、第1歯112aと第2歯112bとはそれぞれ異なる形状を有する。また、第2歯112bは、従来のロータ12の欠歯に代わって設けられた歯であり、「700」CA及び「710」CAの位置に形成されている。
【0035】
検出装置113は、ロータ112の回転による形状の異なった第1歯112aと第2歯112bとの通過が引き起こす磁界の変化の違いに基づいて、第1歯112aと第2歯112bとの通過を検出すると共に、検出した第1歯112aの通過を表す第1信号と、第1歯112a及び第2歯112bの通過を表す第2信号とを出力する。ここで、検出装置113は、磁界の変化により抵抗値が変化する第1磁気抵抗113aと第2磁気抵抗113bとを有する。第1磁気抵抗113aは、第1歯112aの第2歯112bよりも高い部分の通過がもたらす磁界の変化により抵抗値を変化させて、第1歯112aの通過を表す第1信号を生成する。また、第2磁気抵抗113bは、第1歯112aと第2歯112bとの通過がもたらす磁界の変化により抵抗値を変化させて、第1歯112a又は第2歯112bの通過を表す第2信号を生成する。
【0036】
具体的には、図4(a)及び(b)に示す様に、検出装置113は、ロータ112の正面又は背面であって、ロータ112が有する歯と対向する位置に設置される。また、図4(c)に示す様に、第1磁気抵抗113aは、第1歯112aの第2歯112bよりも高い部分の通過により磁界が変化する位置に設置されている。一方、第2磁気抵抗113aは、第1歯112aと第2歯112bとの通過により磁界が変化する位置に設置されている。つまり、第1磁気抵抗113aは、第2磁気抵抗113aよりも高い位置(つまり、クランク軸から遠い位置)に設置されている。
【0037】
ここで図5を参照して、本発明に係る検出装置113が出力する第1信号及び第2信号について説明を行う。図5は、検出装置113が出力する信号の一例を表す図である。
図5(a)は図3(a)と同様であり、図5(b)は図3(b)と同様であるため、重複した説明を省略する。ここで、図5(b)のみならず図4(c)をも再度参照して、検出装置113が出力する信号について説明を行う。
図4(c)に示す検出装置113を構成する第1磁気抵抗113a及び第2磁気抵抗113bは電気的に接続している。第磁気抵抗113aの片端は第2磁気抵抗113bに接続しており、他の片端には「Vin」の電圧が加えられている。また、第2磁気抵抗素子113bの片端は接地しており、他の片端は第1磁気抵抗素子113aに接続している。検出装置113は、互いに接続する第1磁気抵抗素子113a及び第2磁気抵抗素子113bの端に加えられる電圧により定まる電気信号を出力する。
【0038】
具体的には、検出装置113は、図5(b)に示す電気信号を出力する。先ず、第1歯の通過について具体的に説明を行う。
検出装置113は、ロータ112に形成された背の高い第1歯112aが通過する前には、所定の電圧を有する電子信号を出力している。次に、第1歯112aが通過を開始すると、第1歯112aが有する磁性により第1磁気抵抗素子113aの抵抗値が減少し、検出装置113が出力する電気信号の電圧が「VIn」付近まで上昇する。この信号電圧が所定の電圧から「VIn」付近まで上昇する信号を第1信号という。その後、第2磁気抵抗素子113bの抵抗値も減少するため、検出装置113が出力する電気信号の電圧が「GND(グラウンド)」付近まで下降する。この信号電圧が所定の電圧から「GND」付近まで下降する信号を第2信号という。次に、第1歯112aが通過を終了すると、第1歯112aの有する磁性の影響を失った第1磁気抵抗素子113aの抵抗値が増加した後に、第2磁気抵抗素子113bの抵抗値が増加する。よって、検出装置113が出力する電気信号の電圧が第1歯112aの通過前の電圧まで回復する。これにより、検出装置113は、時刻t1、t2、t5、及びt6において、図5(b)に示すような第1歯112aの通過を表す信号を出力する。
【0039】
次に、第2歯112bの通過について具体的に説明を行う。
検出装置113は、ロータ112に形成された背の低い第2歯112bが通過する前には、第1歯112aの通過前と同様に、所定の電圧を有する電子信号を出力している。次に、第2歯112bが通過を開始すると、第1歯112aの通過と異なり、検出装置113が出力する電気信号の電圧が上昇しない(つまり、第1信号を出力しない)。これは、第1磁気抵抗113aが、背の低い第2歯112bの通過による磁界の変化に影響が少ない位置に設置されているため、第2歯112bの通過により抵抗値が減少しないためである。よって、検出装置113が出力する電気信号の電圧が「VIn」付近まで上昇することは無い。その後、検出装置113が出力する電気信号の電圧が「GND」付近まで下降する(つまり、第2信号を出力する)。これは、第2磁気抵抗113bが、背の低い第2歯112bの通過による磁界の変化に影響を受けて抵抗値を減少させるためである。次に、第2歯112bが通過を終了すると、第2歯112bの有する磁性の影響を失った第2磁気抵抗素子113bの抵抗値が増加するため、検出装置113が出力する電気信号の電圧が第2歯112bの通過前の電圧まで回復する。これにより、検出装置113は、時刻t3及びt4において、図5(b)に示すような第2歯112bの通過を表す信号を出力する。
【0040】
この構成によれば、所定の回転角度毎に形成された第1歯112aの通過を表す第1信号のみならず、クランク軸111の回転角度を検出する基準となる第2歯112b又は第1歯112aの通過を表す第2信号をも出力するため、クランク軸111の回転角度を短時間で精度良く検出するために用いる信号を出力できる。またこの構成によれば、1つの第2信号によって第1歯112a及び第2歯112bの両歯の通過を表すことができると共に、第1信号により第1歯の通過のみを表すことができる。このため、第1信号によってクランク軸111の回転角度を検出できるだけでなく、第2信号によって検出した回転角度を精度良く更新できる。更にこの構成によれば、検出装置113は、ロータ112の正面又は背面に設置されるため、ロータ112の回転に伴って飛散する飛散物による検出装置113の破壊を防止できる。また更に、検出装置113は、ロータ112に形成された第1歯112aと第2歯112bとの高さの相違を用いて、第1歯112aの通過を表す第1信号と第2歯112bの通過を表す第2信号とを出力するため、ロータ112の肉厚を薄くできる。
【0041】
ここで、図6を参照して、エンジン110の他例について説明する。図6(a)は、エンジンの他構成例を表す図である。尚、図6(a)から(c)は、図4(a)から(c)と同様であるので、以下主に、相違点について説明する。
図6(a)に示すエンジン210は、図4のエンジン110と同様に、クランク軸211、ロータ212、及び検出装置213で構成される。ここで、図6(b)に示すように、ロータ212が有する第1歯212aの高さと第2歯212bの高さとは、図4のロータ112が有する歯112a及び112bと異なり、ほぼ等しい高さである。しかし、図6(c)に示すように、第1歯212aの厚さは第2歯212bの厚さよりも厚い。
【0042】
検出装置213は、図4の検出装置113と同様に、第1磁気抵抗213aと第2磁気抵抗213bとを有する。第1磁気抵抗113aは、第1歯212aの第2歯212bよりも厚い部分の通過がもたらす磁界の変化により抵抗値を変化させて、第1歯212aの通過を表す第1信号を生成する。また、第2磁気抵抗113bは、第1歯212aと第2歯212bとの通過がもたらす磁界の変化により抵抗値を変化させて、第1歯212a及び第2歯212bの通過を表す第2信号を生成する。
【0043】
具体的には、図6(a)及び(b)に示す様に、検出装置213は、ロータ212の側面であって、ロータ112が有する歯212a及び212bと対向する位置に設置される。また、図6(c)に示す様に、第1磁気抵抗213aは、第1歯212aの第2歯212bよりも長い部分の通過により磁界が変化する位置に設置されている。一方で、第2磁気抵抗213bは、第1歯212aと第2歯212bとの通過により磁界が変化する位置に設置されている。つまり、第1磁気抵抗213aは、第2磁気抵抗213bよりも背面側(又は正面側)に設置されている。尚、第1磁気抵抗213a及び第2磁気抵抗213bが生成する第1信号及び第2信号については、図5を参照して説明した信号と同様であるので、説明を省略する。
【0044】
この構成によれば、検出装置113は、ロータ112に形成された第1歯112aと第2歯112bとの厚みの相違を用いて、第1歯112aの通過を表す第1信号と第2歯112bの通過を表す第2信号とを出力するため、ロータ112の直径を短くできる。
【0045】
ここで図1に戻り、制御システムの構成について引き続き説明を行う。
エンジン制御ECU120は、エンジン110、吸気バルブECU131、始動制御ECU132、エアコンECU133からエアバッグECU136、及びメータECU137に接続する。エンジン制御ECU120は、エンジン110を構成する検出装置113が出力する信号を用いてエンジン110を構成するクランク軸111の回転角度を検出すると共に、検出した回転角度に基づいてエンジン110を制御するよう吸気バルブECU131からエアバッグECU136を制御する。また、エンジン制御ECU120は、クランク軸111に設置されたロータ112に形成された第1歯及び第2歯の通過に伴って検出装置113が出力する信号と、ロータ112に第1歯及び第2歯が形成された位置とに基づいて、検出装置113の異常を検出する。次に、エンジン制御ECU120は、検出した異常を通知装置150に通知させるようメータECU137を制御する。
【0046】
ここで、図4を再度参照して、エンジン制御ECU120の構成について説明を行う。尚、重複した説明をさけるため、従来のエンジン制御ECU20との相違点について、以下主に説明を行う。
エンジン制御ECU120は、2つの波形整形回路121a及び121b、並びにマイコン122で構成される。波形整形回路121aは、NE36ポート1を介してマイコン22に接続し、波形整形回路121bは、NE36ポート2を介してマイコン22に接続する。
ここで、波形整形回路121aは、図5(c)に示す様に、検出装置113が出力する電気信号の電圧波形が所定の所定の閾値Vth1を上回る場合に(第1信号に相当する)値「1」のデジタル信号を出力し、所定の閾値Vth1を下回る場合に値「0」のデジタル信号を出力する。一方で、波形整形回路121bは、図5(d)に示す様に、検出装置113が出力する電気信号の電圧波形が所定の所定の閾値Vth2を下回る場合に(第2信号に相当する)値「1」のデジタル信号を出力し、所定の閾値Vth2を上回る場合に値「0」のデジタル信号を出力する。
【0047】
マイコン122は、波形整形回路121a及び121b、吸気バルブECU131、及び通知装置150に接続する。マイコン122は、ソフトウェア処理である制御処理を実行することで、波形整形回路121a及び121bが出力する第1信号及び第2信号を用いて、マイコン122に接続する各装置を制御する。
【0048】
ここで図7を参照して、ソフトウェア処理を実行するために用いるマイコン122のハードウェア構成について説明する。図7は、マイコン122の一構成例を表すハードウェア構成図である。
図7に示すマイコン122は、CPU(Central Processing Unit)等の制御部122a、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等のメモリである読出専用記憶装置122b、DRAM(Dynamic RAM)又はSRAM(Static RAM)等の揮発性メモリ及びNVRAM(Non Volatile RAM)等の不揮発性メモリである読書可能記憶装置122c、及び入出力部131dで構成される。尚、制御部122a、読出専用記憶装置122b、読書可能記憶装置122c、及び入出力部131dは互いにバスによって情報の授受が可能なように接続している。
【0049】
ソフトウェア処理は、制御部122aが、読出専用記憶装置122bに格納したプログラムを読み込み、読み込んだプログラムが表すソフトウェア処理の実行手順に従って演算を行うことにより実現される。尚、読書可能記憶装置122cには、制御部122aが行った演算の結果を表す情報が書き込まれる。また、必要に応じて入出力部131dは、接続する波形整形回路121a及び121bが入力する信号を制御部122aの演算対象とする情報として入力すると共に、制御部122aの演算結果を吸気バルブECU131又は通知装置150へ出力する。
【0050】
ここで、図8を参照して、制御部122aがソフトウェア処理を実行することで実現する機能に着目して、エンジン制御ECU120の構成について説明を行う。図8は、エンジン制御ECU120の一構成例を表す機能ブロック図である。
エンジン制御ECU120は、取得部120e、判定部120f、検出部120g、更新部120h、エンジン制御部120i、第1異常検出部120j、第2異常検出部120k、及び通知制御部120lで構成される。
【0051】
取得部120eは、例えば、波形整形回路121a及び121bで実現される。取得部120eは、検出装置113、判定部120f、更新部120h、第1異常検出部120j、及び第2異常検出部120kに接続する。取得部120eは、検出装置113から第1信号と第2信号とを取得すると共に、取得した第1信号と第2信号とを判定部120f、更新部120h、第1異常検出部120j、及び第2異常検出部120kへ出力する。
【0052】
判定部120fは、制御部122aが判定処理を実行することで実現される。判定部120fは、取得部120e及び検出部120gに接続する。判定部120fは、取得部120eが取得した第1信号と第2信号とに基づいて、第2歯112bの通過を判定すると共に、判定結果を検出部120gへ出力する。具体的には、判定部120fは、取得部120eから第2信号を取得するが、第1信号を取得しない場合に、第2歯112bが検出装置113を通過したと判定する。
【0053】
検出部120gは、制御部122aが検出処理を実行することで実現される。検出部120gは、判定部120f及び更新部120hに接続する。検出部120gは、判定部120fで判定した第2歯112bの通過に基づいて、第2歯112bが形成されたロータ112が設けられたクランク軸111の回転角度を検出すると共に、検出した検出結果を更新部120hへ出力する。ここで、第2歯112bは、「700」CA及び「710」CAの位置に設けられ、回転角度は、「0」CAから「710」CAで表される。このため検出部120gは、2番目の第2歯112bが通過したと判定すると、回転角度を「710」CAの次の角度「0」CAとして検出する。尚、第2歯112bの位置は、例えば、読出専用記憶装置122bが記憶する構成を採用できる。
【0054】
この構成によれば、所定の回転角度毎に形成された第1歯112aの通過を表す第1信号のみならず、クランク軸111の回転角度を検出するために用いる第2歯112bの通過をも表す第2信号を用いて、第1歯112a及び第2歯112bが形成されたロータ112の設けられたクランク軸111の回転角度を短時間で精度良く検出できるだけでなく、エンジンを短時間で精度良く制御できる。つまり、エンジンの回転数が変化することで信号の出力間隔が変化しても、従来の欠歯に代わって設けられた第2歯112bの通過をも表す第2信号を用いて回転角度を検出するため、精度良く回転角度を検出できる。
【0055】
更新部120hは、制御部122aが更新処理を実行することで実現される。更新部120hは、取得部120e、検出部120g、及びエンジン制御部120iに接続する。更新部120hは、取得部120eが取得した第2信号に基づいて、検出部120gで検出した回転角度を更新する。
この構成によれば、第1歯112aのみならず第2歯112bの通過をも表す第2信号を用いて、クランク軸111の回転角度を更新するため、精度良くエンジン110を制御できる。つまり、第2信号は、従来の欠歯に代わって設けられた第2歯112bの通過をも表すため、実際の回転角度と更新した回転角度との誤差が生じ難く、更新した回転角度に基づいてエンジン110を精度良く制御できる。
【0056】
エンジン制御部120iは、制御部122aがエンジン制御処理を実行することで実現される。エンジン制御部120iは、更新部120h及び吸気バルブECU131に接続する。エンジン制御部120iは、更新部120hが更新したクランク軸111の回転角度に基づいて、クランク軸111を有するエンジン110を制御する。具体的には、燃料と空気とを混合した混合気の吸気タイミング、吸気した混合気の点火タイミング、点火により発生した排気ガスの排気タイミング等を吸気バルブECU131等を介して制御する。
【0057】
この構成によれば、所定の回転角度毎に形成された第1歯112aの通過を表す第1信号のみならず、クランク軸111の回転角度を算出する基準となる第2歯112bの通過を表す第2信号をも用いて、第1歯112a及び第2歯112bが形成されたロータ112の設けられたクランク軸111の回転角度を短時間で精度良く検出できるだけでなく、エンジン110を短時間で精度良く制御できる。
【0058】
第1異常検出部120jは、制御部122aが第1異常検出処理を実行することで実現される。第1異常検出部120jは、取得部120e及び通知制御部120lに接続する。第1異常検出部120jは、取得部120eが第1歯112aの通過を表す第1信号を取得した場合に、第1歯112a又は第2歯112bの通過を表す第2信号を取得したか否かに基づいて、検出装置113の異常を検出すると共に、検出結果を通知制御部120lへ出力する。尚、第1異常検出処理については後に詳細に説明を行う。
【0059】
この構成によれば、第1信号と第2信号とが表す第1歯112aの通過に基づいて、通過を検出する検出装置113の異常を検出するため、精度良く異常を検出して通知できる。
【0060】
第2異常検出部120kは、制御部122aが第2異常検出処理を実行することで実現される。第2異常検出部120kは、取得部120e及び通知制御部120lに接続する。第2異常検出部120kは、取得部120eが取得した第1信号と第2信号とが表す第2歯112bの通過と、第2歯112bがロータ112に形成された位置とに基づいて、検出装置113の異常を検出すると共に、検出結果を通知制御部120lへ出力する。尚、第1異常検出部120j及び第2異常検出部120kが検出する検出装置113の異常は、検出装置113自身の異常のみならず、検出装置113とエンジン制御装置120とを結ぶ線路の断線等の検出装置113に関する異常を含む。また、第2異常検出処理については、後に詳細に説明を行う。
【0061】
通知制御部120lは、制御部122aが通知制御処理を実行することで実現される。通知制御部120lは、第1異常検出部120j、第2異常検出部120k、及び車載ネットワークを介して通知装置150に接続する。通知制御部120lは、第1異常検出部120j又は第2異常検出部120kが検出した異常を通知するよう通知装置150を制御する。具体例としては、制御部122aは、異常の内容、異常の発生した時刻、異常の検出に用いた第1信号及び第2信号、及び異常の発生した時刻における回転角度のいずれか1つ以上をメータECUへ送信することで、通知装置150の通知を制御する。また、通知制御部120lは、メータECUへ送信する情報を、ダイアグ記録として不揮発性メモリ等の読書可能記憶装置122cに記録する構成を採用できる。
【0062】
この構成によれば、第1信号と第2信号とが表す第1歯112aの通過に基づいて、第1歯112aの通過を検出する検出装置113の異常を検出するため、精度良く異常を検出して通知できる。また、この構成によれば、第1歯112a及び第2歯112bがロータ112に形成された位置と、検出した第1歯112a及び第2歯112bの通過とに基づいて、通過を検出する検出装置113の異常を検出するため、精度良く異常を検出して通知できる。
【0063】
次に、図9を参照して、エンジン制御ECU120が実行する制御処理について概説する。図9は、エンジン制御ECU120が実行する制御処理の一例について概説するための図である。尚、図9(a)及び(b)は、図5(c)及び(d)と同様の内容を表すため、説明を省略する。
【0064】
図9(c)は、エンジン制御ECU120が記憶する、検出装置113の異常を検出するために用いるカウンタAの時間遷移を表す図である。カウンタAは、エンジン制御ECU120が図9(a)に示す第1信号を取得すると値「1」だけインクリメントされ、かつ図9(b)に示す第2信号を取得すると値「0」にクリアされる。ここで、背の高い第1歯112aが検出装置113を通過すると、第1磁気抵抗112a及び第2磁気抵抗112bの抵抗値が変化するため、正常な検出装置113は、第1信号を出力した後に、第2信号を出力する。よって、エンジン制御ECU120は、第1信号を検出装置113から取得してカウンタAを値「0」にクリアし、その後に第2信号を取得すると値「1」にインクリメントすることで、次回に第1信号を取得した場合にカウンタAが値「0」であるいか否かで検出装置113に生じた異常を検出することができる(第1異常検出処理)。
【0065】
また、第2歯112bが検出装置113を通過すると第2磁気抵抗の抵抗値のみが変化するため、正常な検出装置113は、第2信号のみを出力する。よって、第2歯112bが検出装置113を通過すると、エンジン制御ECU120は、第2信号を取得してカウンタAを値「1」だけインクリメントする。ここで、ロータ112は、2つの連続した第2歯112bを有する。よって、エンジン制御ECU120は、第2信号を取得した場合に、カウンタAが値「3」よりも大きいと判断すると、検出装置113に生じた異常を検出する(第2異常検出処理)。
【0066】
図9(d)は、エンジン制御ECU120が記憶する、回転角度を表すカウンタBの時間遷移を表す図である。回転角度は、「0」CAから「710」CAで表されるため、カウンタBは「0」から「71」の値を取り得る。エンジン制御ECU120は、第1歯又は第2歯の通過を表す第2信号を取得すると、カウンタBの値を「1」だけインクリメントする。
【0067】
次に、図10及び11を参照して、エンジン制御ECU120が実行する制御処理について説明を行う。尚、制御処理は、第1信号を検出装置113から取得した場合に実行する第1割込処理と、第2信号を検出装置113から取得した場合に実行する第2割込処理とで構成される。図10は、エンジン制御ECU120が実行する第1割込処理の一例を表すフローチャートである。
【0068】
先ず、エンジン制御ECU120は、カウンタAの値が「0」であるか否かを判断する(ステップS01)。エンジン制御ECU120は、カウンタAの値が「0」であると判断する場合にはステップS03の処理を、そうでない場合にはステップS02の処理を実行する。
ステップS01において、カウンタAの値が「0」でないと判断した場合には、エンジン制御ECU120は、異常カウンタBを値「0」にクリアする(ステップS02)。カウンタAの値が「0」でないということは、前回に第1信号を取得した後に第2信号を取得したことを表すため、エンジン制御ECU120は、検出装置113が正常であると判断するためである。
ステップS01において、カウンタAの値が「0」であると判断した場合には、エンジン制御ECU120は、第1異常検出処理で異常を検出した回数を表す異常カウンタBをインクリメントする(ステップS03)。尚、ステップS01からS03の処理が、第1異常検出部120jを実現するための第1異常検出処理に相当する。
【0069】
ステップS02又はS03を実行した後に、エンジン制御ECU120は、後述する第2割込処理を構成する第2異常検出処理で異常を検出した回数を表す異常カウンタAが、異常確定回数を超えたか否かを判断する(ステップS04)。尚、異常確定回数とは、第1異常検出処理又は第2異常検出処理における異常の検出回数に基づいて、異常が生じたと確定するために十分な検出回数をいう。本実施例では、異常確定回数は、例えば、3回であるとして説明するが、これに限定される訳ではない。より好適な値は、理論又は実験によって当業者が容易に定めることができる。エンジン制御ECU120は、異常カウンタAが異常確定回数を超えたと判断する場合にはステップS06の処理を、そうでない場合にはステップS05の処理を実行する。
ステップS04において、異常カウンタAが異常確定回数を超えないと判断した場合には、エンジン制御ECU120は、異常カウンタBが異常確定回数を超えたか否かを判断する(ステップS05)。エンジン制御ECU120は、異常カウンタBが異常確定回数を超えたと判断する場合にはステップS06の処理を、そうでない場合にはステップS07の処理を実行する。
【0070】
ステップS04又はS05において、異常カウンタA又は異常カウンタBが異常確定回数を超えたと判断した場合には、エンジン制御ECU120は、センサ異常処理を実行する(ステップS06)。尚、センサ異常処理は、例えば、上記の通知制御部120lを実現するための通知制御処理を含む。また、センサ異常処理は、異常の検出された検出装置113の検出動作を停止するよう制御する処理を含む。具体的には、検出装置113へ供給する電力を停止する、又は検出装置113に対して検出動作を停止するよう命じる命令を送信する構成を採用できる。この構成によれば、異常が生じた検出装置113が出力する異常な信号に基づいてエンジン110に対する異常な制御を行うことを防止できる。
【0071】
ステップS05において、異常カウンタBが異常確定回数を超えないと判断した場合、又はステップS06を実行した後に、エンジン制御ECU120は、カウンタAを値「0」にクリアする(ステップS07)。その後、エンジン制御ECU120は、第1割込処理の実行を終了する。
【0072】
次に図11を参照して、エンジン制御ECU120が実行する第2割込処理について説明を行う。図11は、エンジン制御ECU120が実行する第2割込処理の一例を表すフローチャートである。
先ず、エンジン制御ECU120は、カウンタAを値「1」だけインクリメントする(ステップS11)。次に、エンジン制御ECU120は、カウンタAが値「1」であるか否かを判断する(ステップS12)。エンジン制御ECU120は、カウンタAが値「1」であると判断する場合にはステップS13の処理を、そうでない場合にはステップS14の処理を実行する。
【0073】
ステップS12において、カウンタAが値「1」であると判断した場合には、エンジン制御ECU120は、検出装置133が正常であると判断する(ステップS13)。第1歯が検出装置133を通過する通常タイミングにおいては、エンジン制御ECU120は、検出装置133から第1信号の後に第2信号を取得するため、第1割込処理で値「0」にクリアされたカウンタAを第2割込処理で値「1」へインクリメントするからである。
【0074】
ステップS12において、カウンタAが値「1」でないと判断した場合には、エンジン制御ECU120は、カウンタAが値「2」であるか否かを判断する(ステップS14)。エンジン制御ECU120は、カウンタAが値「2」であると判断する場合にはステップS15の処理を、そうでない場合にはステップS17の処理を実行する。
【0075】
ステップS14において、カウンタAが値「2」であると判断した場合には、エンジン制御ECU120は、検出装置133が正常であると判断する(ステップS15)。これは、最初の欠歯の代わりに形成された第2歯が検出装置133を通過する欠歯1タイミングにおいて、エンジン制御ECU120は、検出装置133から第2信号のみを取得するため、前回の第2割込処理で値「1」にインクリメントしたカウンタAを、今回の処理で更にインクリメントするからである。
ステップS13又はS15を実行した後に、エンジン制御ECU120は、回転角度を表すカウンタBを値「1」だけインクリメントする(ステップS16)。第1歯及び第2歯は、「10」CA毎にロータ112に形成されているからである。
【0076】
ステップS14において、カウンタAが値「2」でないと判断した場合には、エンジン制御ECU120は、カウンタAが値「3」であるか否かを判断する(ステップS17)。エンジン制御ECU120は、カウンタAが値「3」であると判断する場合にはステップS18の処理を、そうでない場合にはステップS21の処理を実行する。
【0077】
ステップS17において、カウンタAが値「3」であると判断した場合には、エンジン制御ECU120は、検出装置133が正常であると判断する(ステップS18)。これは、2番目の欠歯の代わりに形成された第2歯が検出装置133を通過する欠歯2タイミングにおいては、前回の第2割込処理で値「2」にしたカウンタAを、今回の処理で更にインクリメントするからである。
ステップS18を実行した後に、エンジン制御ECU120は、回転角度を表すカウンタBを値「0」にクリアする(ステップS19)。2番目の第2歯は、回転角度が「710」CAの位置に形成されており、回転角度の値は「0」CAから「710」CAを繰り返すためである。
ステップS16又はステップS19を実行した後に、エンジン制御ECU120は、異常カウンタAを値「0」にクリアする(ステップS20)。第2異常検出処理により異常を検出しなかったためである。尚、ステップS12からS18の処理が第2異常検出部120kを実現するための第2異常検出処理に相当する。
【0078】
ステップS17において、カウンタAが値「3」でないと判断した場合には、エンジン制御ECU120は、異常カウンタAを値「1」だけインクリメントする(ステップS21)。本実施例において、ロータ112には、第2歯112bが2個連続した位置に形成されており、検出装置113が正常である場合には、カウンタAは値「3」を超えることがないためである。
【0079】
ステップS20又はS21を実行した後に、エンジン制御ECU120は、異常カウンタAが異常確定回数を超えたか否かを判断する(ステップS22)。エンジン制御ECU120は、異常カウンタAが異常確定回数を超えたと判断する場合にはステップS24の処理を、そうでない場合にはステップS23の処理を実行する。
【0080】
ステップS22において、異常カウンタAが異常確定回数を超えないと判断した場合には、エンジン制御ECU120は、異常カウンタBが異常確定回数を超えたか否かを判断する(ステップS23)。エンジン制御ECU120は、異常カウンタBが異常確定回数を超えたと判断する場合にはステップS24の処理を、そうでない場合には第2割込処理の実行を終了する。
【0081】
ステップS22又はS23において、異常カウンタA又は異常カウンタBが異常確定回数を超えたと判断した場合には、エンジン制御ECU120は、センサ異常処理を実行する(ステップS24)。その後、エンジン制御ECU120は、第2割込処理の実行を終了する。
【0082】
ここで、本件発明に係る制御方法は、エンジン制御装置120を用いて実施できる。また、本件発明に係る検出方法は、検出システム2を用いて実施できる。
また、エンジン制御装置120が実行するプログラムは、磁気ディスクや光ディスク、半導体メモリ、その他の記録媒体に格納して配布したり、ネットワークを介して配信したりすることにより提供できる。
更に、エンジン制御装置120がソフトウェア処理を実行することで実現する機能の一部又は全部は、ハードウェア回路を用いて実現することができる。逆に、エンジン制御装置120がハードウェア回路を用いて実現する機能の一部又は全部は、ソフトウェア処理を実行することで実現することができる。
【0083】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の制御装置を備える制御システムの一実施形態を示す構成図である。
【図2】従来のエンジンの一構成例を表す図である。
【図3】従来の検出装置が出力する信号の一例を表す図である。
【図4】本発明に係るエンジンの一構成例を表す図である。
【図5】本発明に係る検出装置が出力する信号の一例を表す図である。
【図6】本発明に係るエンジンの他構成例を表す図である。
【図7】マイコンの一構成例を表すハードウェア構成図である。
【図8】エンジン制御ECUの一構成例を表す機能ブロック図である。
【図9】エンジン制御ECUが実行する制御処理の一例について概説するための図である。
【図10】エンジン制御ECUが実行する第1割込処理の一例を表すフローチャートである。
【図11】エンジン制御ECUが実行する第2割込処理の一例を表すフローチャートの一部である。
【符号の説明】
【0085】
1…制御システム 2…検出システム
110…エンジン 111…クランク軸
112…ロータ 112a…第1歯
112b…第2歯 113…検出装置(MREセンサ)
113a…磁気抵抗素子(MRE) 113b…磁気抵抗素子(MRE)
120…エンジン制御ECU 120e…取得部
120f…判定部 120g…検出部
120h…更新部 120i…エンジン制御部
120j…第1異常検出部 120k…第2異常検出部
120l…通知制御部 121a…波形整形回路
121b…波形整形回路 122…マイコン
122a…実行部(PCU) 122b…読出専用記憶装置
122c…読書可能記憶装置 122d…入出力部
13…検出装置(MREセンサ) 131…吸気バルブECU
132…始動制御ECU 140…スタータ
150…通知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを構成するクランク軸の回転方向に所定の回転角度毎に形成された磁性を有する第1歯と、前記第1歯と異なる形状の磁性を有する歯であって、前記クランク軸の回転角度を検出するために用いる第2歯とを有する前記クランク軸に設けられたロータと、
前記ロータの回転による形状の異なった前記第1歯と前記第2歯との通過が引き起こす磁界の変化の違いに基づいて、前記第1歯と前記第2歯との通過を検出すると共に、検出した前記第1歯の通過を表す第1信号と、前記第1歯又は前記第2歯の通過を表す第2信号とを出力する検出装置とを備える検出システム。
【請求項2】
前記検出装置は、磁界の変化により抵抗値が変化する第1磁気抵抗と第2磁気抵抗とを有し、
前記第1歯の高さは、前記第2歯の高さよりも高く、
前記第1磁気抵抗は、前記第1歯の前記第2歯よりも高い部分の通過がもたらす磁界の変化により抵抗値を変化させて、前記第1歯の通過を表す前記第1信号を生成し、
前記第2磁気抵抗は、前記第1歯と前記第2歯との通過がもたらす磁界の変化により抵抗値を変化させて、前記第1歯又は前記第2歯の通過を表す前記第2信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記検出装置は、磁界の変化により抵抗値が変化する第1磁気抵抗と第2磁気抵抗とを有し、
前記第1歯の厚さは、前記第2歯の厚さよりも厚く、
前記第1磁気抵抗は、前記第1歯の前記第2歯よりも厚い部分の通過がもたらす磁界の変化により抵抗値を変化させて、前記第1歯の通過を表す前記第1信号を生成し、
前記第2磁気抵抗は、前記第1歯と前記第2歯との通過がもたらす磁界の変化により抵抗値を変化させて、前記第1歯又は前記第2歯の通過を表す前記第2信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の検出システム。
【請求項4】
クランク軸に設けられたロータの回転方向に所定の回転角度毎に形成された第1歯と前記第1歯と異なる形状の第2歯との通過を検出する検出装置から、前記第1歯の通過を表す第1信号と前記第1歯又は前記第2歯の通過を表す第2信号とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した第1信号と第2信号とに基づいて、前記第2歯の通過を判定する判定処理と、
前記判定処理で判定した前記第2歯の通過に基づいて、前記第2歯の形成された前記ロータが設けられたクランク軸の回転角度を検出する検出処理と、
前記検出処理で検出した前記クランク軸の回転角度に基づいて、前記クランク軸を有するエンジンを制御するエンジン制御処理と、
を実行する制御部とを備える制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記取得部が取得した第2信号に基づいて、前記検出処理で検出した回転角度を更新する更新処理を更に実行することを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記取得部が前記第1歯の通過を表す第1信号を取得した場合に、前記第1歯又は前記第2歯の通過を表す第2信号を取得したか否かに基づいて、前記検出装置の異常を検出する第1異常検出処理と、
前記第1異常検出処理で検出した異常を通知するよう前記エンジンを有する車両の異常を通知する通知装置を制御する通知制御処理とを更に実行することを特徴とする請求項4又は5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記取得部が取得した第1信号と第2信号とが表す前記第2歯の通過と、前記第2歯がロータに形成された位置とに基づいて、前記検出装置の異常を検出する第2異常検出処理と、
前記第2異常検出処理で検出した異常を通知するよう前記エンジンを有する車両の異常を通知する通知装置を制御する通知制御処理とを更に実行することを特徴とする請求項4又は5に記載の制御装置。
【請求項8】
エンジンを構成するクランク軸の回転方向に所定の回転角度毎に形成された磁性を有する第1歯と、前記第1歯と異なる形状の磁性を有する歯であって、前記クランク軸の回転角度を検出するために用いる第2歯とを有する前記クランク軸に設けられたロータの回転による形状の異なった前記第1歯と前記第2歯との通過が引き起こす磁界の変化の違いに基づいて、前記第1歯と前記第2歯との通過を検出ステップと、
前記検出ステップで検出した前記第1歯の通過を表す第1信号と、前記第1歯及び前記第2歯の通過を表す第2信号とを出力する出力ステップとを備える検出方法。
【請求項9】
クランク軸に設けられたロータの回転方向に所定の回転角度毎に形成された第1歯と前記第1歯と異なる形状の第2歯との通過を検出する検出装置から、前記第1歯の通過を表す第1信号と前記第2歯の通過を表す第2信号とを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した第1信号と第2信号とに基づいて、前記第2歯の通過を判定する判定ステップと、
前記判定ステップで判定した前記第2歯の通過に基づいて、前記第2歯の形成された前記ロータが設けられたクランク軸の回転角度を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出した前記クランク軸の回転角度に基づいて、前記クランク軸を有するエンジンを制御するエンジン制御ステップとを備える制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−85331(P2010−85331A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256857(P2008−256857)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】