説明

検出対象のパラメータ検出方法及び検出装置

【課題】 検出対象のパラメータを簡単に、正確に検出することができる検出対象のパラメータ検出方法及び検出装置を提供する。
【解決手段】 検光子13の透過軸方向が入射面に対して任の角度ω傾き、偏光子11の透過軸方向が入射面に対して0°及び90°傾いている時の透過光強度に基づいて比rを求める。また、検光子13の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾き、偏光子11の透過軸方向が入射面に対して任意の角度α傾いている時の透過光強度を、相異なる少なくとも2つ以上のωとαの組み合わせに対して検出する。そして、検出した複数の透過光強度と比rに基づいて検出対象12のリタデーションや厚さを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複屈折特性を有する検出対象のパラメータ(検出対象の液晶層のリタデーションや厚さ)を検出する、検出対象のパラメータ検出方法及び検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置を構成する液晶表示素子(以下、「液晶セル」という)として、液晶分子の長軸方向が基板面に対してほぼ平行な方向に配向している液晶セル、例えばツイステッドネマテイック(Twisted Nematic:TN)型、スーパーツイステッドネマティック(Super Twisted Nematic:STN)型、IPS(In-Plane Switching)型の液晶セルや、液晶分子の長軸方向が基板面の法線にほぼ平行な方向、すなわち、基板面に対してほぼ垂直な方向に配向している(Vertical Alignment;VA)液晶セル(以下、「VAセル」という)が知られている。
VAセルは、高いコントラスト比と広い視野角を有するため、液晶テレビや液晶モニタ等に広く採用されている。
液晶セルの表示性能は、液晶セルの液晶層の厚さに大きく依存する。このため、液晶セルの液晶層の厚さの管理が重要である。
液晶セルの液晶層の厚さは、液晶セルの液晶層の厚さと複屈折率の積で表される液晶層のリタデーションを検出し、検出した液晶層のリタデーションを複屈折率で除算することによって求めることができる。
液晶分子の長軸方向が基板面に対してほぼ平行な方向に配向している液晶セルの液晶層のリタデーションは、液晶セルの基板面に垂直に光を入射し、液晶セルを透過した光の偏光状態を解析することにより検出することができる。
しかしながら、VAセルは、液晶分子の長軸方向が基板面に対して垂直な方向に配向されている。したがって、VAセルの基板面に垂直に光を入射しても、液晶分子は光学的には等方的に振る舞うため、VAセルを透過した光の偏光状態は変化しない。つまり、VAセルの基板面に垂直に光を入射する方法を用いることができない。
そこで、VAセルの基板面に斜めに光を入射し、VAセルを透過した光の偏光状態を解析することによって、VAセルの液晶層の厚さを検出する方法が提案されている。(非特許文献1、非特許文献2、特許文献1参照)
【非特許文献1】Hiap Liew Ong,ジャーナルオブアプライドフィジクス,第71巻1号,1992年,140頁〜144頁
【非特許文献2】Hiap Liew Ong,ジャーナルオブアプライドフィジクス,第70巻4号,1991年,2023頁〜2030頁
【特許文献1】国際公開第WO01/022029号公報
【0003】
例えば、特許文献1に記載の方法では、発光装置、偏光子、検光子、検出装置の順に各要素を配置した測定系を用いる。検出対象のリタデーションを検出する時には、まず、検出対象を、偏光子と検光子の間に配置する。次に、検出対象の遅相軸を偏光子の透過軸方向に対して45°の方向に向けた状態で、偏光子の透過軸方向と検光子の透過軸方向を平行にした時の透過光強度(検出装置の検出信号)Iparaと、偏光子の透過軸方向と検光子の透過軸方向を直交させた時の透過光強度Icrossを測定する。そして、測定した透過光強度IparaとIcrossを用いて、[式1]により、検出対象のリタデーションRを求める。
【数13】

[式1]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶セルの基板面の法線に平行に、すなわち、液晶セルの基板面に垂直に光を入射する場合には、界面(例えば、空気−ガラス界面)での光の透過率は、入射光の偏光方向によって変化しない。すなわち、透過率の偏光方向依存性は発生しない。
しかしながら、液晶セルの基板面に斜めに光を入射する場合には、界面での光の透過率は、入射する光の偏光方向によって変化する。すなわち、透過率の偏光方向依存性が発生する。
このため、VAセルの基板面に斜めに光を入射させる方法を用いてVAセルの液晶層のリタデーションを検出する場合には、VAセルの液晶層のリタデーションの検出精度を高めるために透過率の偏光方向依存性を考慮する必要がある。
前記した特許文献1に記載の方法では、このような透過率の偏光方向依存性を考慮していないため、液晶層のリタデーションを正確に検出することができない。従って、液晶層の厚さも正確に検出することができない。
また、前記した特許文献1に記載の方法では、常光屈折率と異常光屈折率の平均値を複屈折率として用いている。液晶層の厚さは、検出した液晶層のリタデーションを複屈折率で除算することで得られるが、平均値は近似値であるため、特許文献1に記載の方法では、液晶層の厚さを正確に検出することができない。
前記した非特許文献2には、透過率の偏光方向依存性を考慮する方法が記載されているが、空気−ガラス界面での透過率しか考慮していない。ここで、実際の液晶セルには、ガラス基板、カラーフィルタ、透明電極等が設けられている。液晶セルの透過率を知るためには、液晶セルの全ての部材の透過率を事前に把握する必要があり、現実的ではない。さらに、薄膜材料は、膜を形成する際の条件によって屈折率等の光学特性が変化するため、透過率を事前に把握することが困難である。このため、非特許文献2に記載の方法を応用しても、液晶層のリタデーションを正確に検出することができない。
前記した非特許文献1には、このような透過率の偏光方向依存性を考慮しなくても、液晶層のリタデーションを正確に検出することが可能な方法が記載されている。しかし、光の透過率が極小になるという条件を使用するため、測定領域内でリタデーションが分布している場合には、液晶層のリタデーションを正確に検出することができない。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、簡単で、正確に検出対象のリタデーションや厚さというパラメータを検出することができる、検出対象のパラメータ検出方法及び検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの検出対象のパラメータ検出方法である。
請求項1に記載のパラメータ検出方法では、検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾けられ、偏光方向が入射面と平行である直線偏光が検出対象に入射された時の透過光強度I(ω,0°)と、偏光方向が入射面に対して90°傾けられた直線偏光が検出対象に入射された時の透過光強度I(ω,90°)を検出する。
次に、検出した透過光強度I(ω,0°)とI(ω,90°)を用いて、以下の式により比rを算出する。
【数14】

次に、検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾き、直線偏光の偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている時の透過光強度I(ω,α)を、相異なる少なくとも2つ以上の(ω,α)の組み合わせに対して検出し、検出した透過光強度I(ω,α)から、以下の式に基づいて検出対象のリタデーションRを求める、
【数15】

ここで、Iは検光子の透過率で規格化した入射光の強度であり、Tpはp偏光に対する検出対象の透過率であり、λは入射光の波長である。
本発明は、検出対象の基板面に斜めに光を入射し、検出対象を透過した光の強度を用いて検出対象のパラメータ(検出対象の液晶層のリタデーションや厚さ)を検出する場合に好適に用いることができる。
検出対象には、VAセル等の複屈折特性を有する素子が含まれる。
「入射面」は、入射光の進行方向と検出対象の法線を含む面である。
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの検出対象のパラメータ検出方法である。
請求項2に記載の検出対象のパラメータ検出方法では、偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている直線偏光が検出対象に入射され、検光子の透過軸方向が入射面に平行である時の透過光強度I(0°,α)と、検光子の透過軸方向が入射面に対して90°傾いている時の透過光強度I(90°,α)を検出する。
次に、検出した透過光強度I(0°,α)とI(90°,α)を用いて、以下の式により比rを算出する。
【数16】

次に、検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾き、直線偏光の偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている時の透過光強度I(ω,α)を、相異なる少なくとも2つの(ω,α)の組み合わせに対して検出し、検出した透過光強度I(ω,α)から、以下の式に基づいて、検出対象のリタデーションRを求める。
【数17】

また、本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの検出対象のパラメータ検出方法である。
請求項3に記載の検出対象のパラメータ検出方法では、検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾けられ、偏光方向が入射面に対して角度α傾いている直線偏光が検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)を、相異なる少なくとも3つ以上のαに対して検出する。
そして、検出した少なくとも3つ以上の透過光強度I(ω,α)と、以下の式を用いて変数A、B、Cを求める。
【数18】

次に、求めた変数A、B、Cを用いて、以下の式により検出対象のリタデーションRを求める。
【数19】

透過光強度I(ω,α)と前記式を用いて変数A、B、Cを求める方法としては、例えば、最小二乗法を用いることができる。
また、本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりの検出対象のパラメータ検出方法である。
請求項4に記載の検出対象のパラメータ検出方法では、検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾けられ、偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている直線偏光が検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)と、偏光方向が入射面に対して角度α(=α+90°)傾いている直線偏光が検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)と、偏光方向が入射面に対して角度α(=α+45°)傾いている直線偏光が検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)を検出する。
そして、検出した透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を用いて、以下の式により検出対象のリタデーションRを求める。
【数20】

また、本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりの検出対象のパラメータ検出方法である。
請求項5に記載の検出対象のパラメータ検出方法では、検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾けられ、偏光方向が入射面に対して角度α傾いている直線偏光が検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)と、偏光方向が入射面に対して角度α(=α+90°)傾いている直線偏光が検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)と、偏光方向が入射面に対して角度α(=α+135°)傾いている直線偏光が検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)を検出する。
そして、検出した透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を用いて、以下の式により前記検出対象のリタデーションRを求める。
【数21】

また、本発明の第6発明は、請求項6に記載されたとおりの検出対象のパラメータ検出方法である。
請求項6に記載の検出対象のパラメータ検出方法では、偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている直線偏光が検出対象に入射され、検光子の透過軸方向が入射面に対して角度ω傾いている時の透過光強度I(ω,α)を、相異なる少なくとも3つ以上のωに対して検出する。
そして、検出した少なくとも3つ以上の透過光強度I(ω,α)と以下の式を用いて変数A、B、Cを求める。
【数22】

次に、求めた変数A、B、Cを用いて、以下の式により検出対象のリタデーションRを求める。
【数23】

透過光強度I(ω,α)と前記式を用いて変数A、B、Cを求める方法としては、例えば、最小二乗法を用いることができる。
また、本発明の第7発明は、請求項7に記載されたとおりの検出対象のパラメータ検出方法である。
請求項7に記載の検出対象のパラメータ検出方法では、偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている直線偏光が検出対象に入射し、検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾いている時の透過光強度I(ω,α)と、検光子の透過軸方向が入射面に対して角度ω(=ω+90°)傾いている時の透過光強度I(ω,α)と、検光子の透過軸方向が入射面に対して角度ω(=ω+45°)傾いている時の透過光強度I(ω,α)を検出する。
そして、検出した透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を用いて、以下の式により検出対象のリタデーションRを求める。
【数24】

また、本発明の第8発明は、請求項8に記載されたとおりの検出対象のパラメータ検出方法である。
請求項8に記載の検出対象のパラメータ検出方法では、偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている直線偏光が検出対象に入射し、検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾いている時の透過光強度I(ω,α)と、検光子の透過軸方向が入射面に対して角度ω(=ω+90°)傾いている時の透過光強度I(ω,α)と、検光子の透過軸方向が入射面に対して角度ω(=ω+135°)傾いている時の透過光強度I(ω,α)を検出する。
そして、検出した透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を用いて、以下の式により前記検出対象のリタデーションRを求める。
【数25】

また、本発明の第9発明は、請求項9に記載されたとおりの検出対象のパラメータ検出方法である。
請求項9に記載の検出対象のパラメータ検出方法では、検出対象のリタデーションRに基づいて検出対象の厚さdを求める。
検出対象のリタデーションRに基づいて検出対象の厚さdを求める方法としては、検出対象のリタデーションRを検出対象の複屈折率で除算する方法を用いることができる。
また、本発明の第10発明は、請求項10に記載されたとおりの検出対象のパラメータ検出装置である。
請求項10に記載の検出対象のパラメータ検出装置は,発光装置、偏光子、検出対象、検光子、検出装置、処理装置を備えている。
発光装置としては、単色光を照射する発光装置が用いられる。
偏光子及び検光子は、透過軸方向が、光の進行方向に平行な軸を回転軸として回転可能である。偏光子及び検光子を回転させる駆動機構としては、偏光子や検光子を手動で回転させる手動式の駆動機構を用いることもできるし、偏光子や検光子を電動機等の駆動源により回転させる駆動機構を用いることもできる。さらに、各透過光強度を検出する際に、偏光子や検光子の駆動機構に設けられている駆動源を処理装置によって制御することもできる。
検出対象は、検光子を透過した光が基板面の法線に対して傾いた角度で入射するように配置される。例えば、検光子を支持する支持部を光の入射方向に対して傾けて配置する方法や、駆動機構により支持部を回転させる方法を用いることができる。
検出装置は、検光子を透過した光の強度を透過光強度として検出する。
処理装置は、検出装置で検出された透過光強度を入力し、請求項1〜10のいずれかに記載の方法を用いて検出対象のリタデーションRや厚さdを求める。
【発明の効果】
【0006】
請求項1及び請求項2に記載の検出対象のパラメータ検出方法を用いれば、検出対象に対し斜めに光を入射することによる透過率の偏光方向依存性を考慮しているため、検出対象に斜めに光を入射する場合でも、検出対象のパラメータを正確に検出することができる。また、各部材の屈折率や透過率を把握する必要がないため、処理が簡単である。
請求項3に記載の検出対象のパラメータ検出方法を用いれば、請求項1及び2に記載の検出対象のパラメータ検出方法と同様に、検出対象のパラメータを簡単に、正確に検出することができる。また、請求項1及び2に記載の検出対象のパラメータ検出方法のように、透過光強度の比rを求めるために、検光子の透過軸方向あるいは入射光の偏光方向を特定の方向に設定する必要がなく、検光子の透過軸方向及び入射光の偏光方向を任意に設定することができる。これにより、検光子の透過軸方向や入射光の偏光方向の調整が容易であり、作業時間を短縮することができる。
請求項4及び請求項5に記載の検出対象のパラメータ検出方法を用いれば、請求項1及び2に記載の検出対象のパラメータ検出方法と同様に、検出対象のパラメータを簡単に、正確に検出することができる。また、請求項3に記載の検出対象のパラメータ検出方法と比較して、変数A、B、Cを求める処理が不要である。これにより、処理装置の処理が簡単となり、検出対象のパラメータの検出時間を短縮することができる。
請求項6に記載の検出対象のパラメータ検出方法を用いれば、請求項1及び2に記載の検出対象のパラメータ検出方法と同様に、検出対象のパラメータを簡単に、正確に検出することができる。また、請求項1及び2に記載の検出対象のパラメータ検出方法のように、透過光強度の比rを求めるために、検光子の透過軸方向あるいは入射光の偏光方向を特定の方向に設定する必要がなく、検光子の透過軸方向及び入射光の偏光方向を任意に設定することができる。これにより、検光子の透過軸方向や入射光の偏光方向の調整が容易であり、作業時間を短縮することができる。
請求項7及び請求項8に記載の検出対象のパラメータ検出方法を用いれば、請求項1及び2に記載の検出対象のパラメータ検出方法と同様に、検出対象のパラメータを簡単に、正確に検出することができる。また、請求項6に記載の検出対象のパラメータ検出方法と比較して、変数A、B、Cを求める処理が不要である。これにより、処理装置の処理が簡単となり、検出対象のパラメータの検出時間を短縮することができる。
請求項9に記載の検出対象のパラメータ検出方法を用いれば、検出対象の液晶層の厚さを簡単に、正確に検出することができる。
請求項10に記載の検出対象のパラメータ検出装置を用いれば、検出対象のパラメータを簡単な構成で、容易に、正確に検出することができる。
また、請求項1〜9に記載の検出対象のパラメータ検出方法及び請求項10に記載の検出対象のパラメータ検出装置を用いれば、透過光強度から計算により、検出対象のパラメータを求めることができるため、検出対象のパラメータが測定領域内で分布している場合でも、その分布を容易に求めることができる。
【0007】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
以下では、液晶分子の長軸方向が基板面の法線に平行な方向に配向されている、すなわち、基板面に垂直な方向に配向されているVAセルを検出対象とし、VAセルのパラメータである液晶層のリタデーションや厚さを検出する場合について説明する。
なお、VAセルの液晶層以外は等方的であり、リタデーションを持たないと仮定する。また、液晶セル以外を検出対象とする場合でも、リタデーションを持つ層は1層のみとする。ただし、遅相軸が入射面内に有り、全体のリタデーションが各層のリタデーションの和になる場合には、それらの層を全て合わせて1層とみなす。
【0008】
まず、以下の実施の形態で用いる、検出対象のパラメータ検出装置(以下、単に「パラメータ検出装置」という)を図1に示す。なお、図1に示すパラメータ検出装置の座標系を図2に示す。
図1において、紙面の左右方向をx軸(右方向を正)、紙面の上下方向をz軸(上方向を正)、紙面に垂直な方向をy軸(紙面の裏側方向が正)とする。そして、光の進行方向をz軸の正の方向とし、x軸が入射面内に存在する右手系の座標系を用いている。
なお、本明細書では、「入射面」は、入射光の進行方向とVAセル12の基板面の法線を含む面を意味し、図1では、紙面に相当する。
偏光子、検光子の透過軸方向及び入射光の直線偏光の方向はxy面内での回転角度で指定し、x軸正の方向を0°、x軸正の方向がy軸の正の方向へ向かう回転方向を正とする。
【0009】
図1に示すパラメータ検出装置は、発光装置10、偏光子11、VAセル12、検光子13、検出装置14、処理装置15を有している。各装置は、発光装置10から照射される光の進行方向(図1では、z軸方向)に沿って配置されている。
発光装置10は、パラメータ検出用の単色光を照射する。発光装置10は、単色光を照射する光源(例えば、レーザ)により構成することができる。また、発光装置10は、一定の波長範囲の多色光を照射する多色光源(例えば、ハロゲンランプ)と、多色光を単色化する単色化手段(例えば、分光器や干渉フィルタ)により構成することもできる。
偏光子11は、発光装置11から照射された光の中から、透過軸方向の直線偏光のみを透過する。検光子13は、VAセル12を透過した光の中から、透過軸方向の直線偏光のみを透過する。偏光子11及び検光子13としては、グラントムソンプリズム等の偏光プリズムや、ポラロイドフィルム等の偏光フィルムを用いることができる。
偏光子11や検光子13は、透過軸方向が、光の進行方向(z軸)に平行な軸を回転軸としてxy面内で回転可能に配置される。例えば、偏光子11や検光子13を、駆動機構11aや13aにより回転する支持部により支持する。駆動機構11aや13aとしては、支持部を手動で回転させる手動式の駆動機構や、ステッピングモータ等の駆動源により支持部を回転させる駆動機構を用いることができる。さらに、駆動源は、手動スイッチにより制御してもよいし、処理回路15によって制御してもよい。処理装置15によって制御可能に構成すると、作業を自動化することができ、作業時間を短縮することができる。
【0010】
検出対象12は、光が斜めに入射するように配置される。例えば、検出対象12を支持する支持部を、入射光の進行方向に対して傾けた状態で配置する。あるいは、y軸(図1では、紙面の表裏方向)に平行な軸を回転軸として回転可能な支持部を設ける、支持部は、駆動機構12aにより、手動あるいは駆動源によって駆動される。駆動源を処理装置15によって制御可能に構成すると、作業を自動化することができ、作業時間を短縮することができる。
液晶分子がVAセルの基板面の法線に平行に配向していれば、図1に示すようにVAセル12を配置すると、液晶層の遅相軸(液晶分子の長軸方向)は、必ず入射面に含まれる。液晶分子がVAセルの基板面の法線に対して傾いていたり、あるいは、検出対象が液晶セルでなくても、その遅相軸がその表面の法線に対して平行でない場合には、その遅相軸方向が入射面に含まれるように検出対象を配置するものとする。
なお、駆動機構11a、12a、13aには、偏光子11、検出対象12、検光子13の回転位置を検出あるいは判別可能な回転位置検出器を設けるのが好ましい。
検出装置14としては、フォトダイオードや光電子増倍管等の、入射した光の強度に比例する信号を検出信号として出力するものが用いられる。なお、検出信号が入射光の強度に比例しない場合には、検出信号と入射光の強度との関係を予め求めておき、検出信号が入射光の強度に比例するように補正を行う。
【0011】
発光装置10から放射された光は、透過軸方向が入射面に対して角度αの方向に傾けられている偏光子11により、角度αの方向の直線偏光となる。
偏光子11を透過した直線偏光は、VAセル12の基板面に入射すると、s偏光とp偏光に別れて伝播する。s偏光は、入射面に対して垂直な方向の直線偏光であり、p偏光は、入射面に平行な方向の直線偏光である。
VAセル12に入射する前の直線偏光の電場ベクトル<E>は、[式2]で表される。なお、本明細書では、[<>]はベクトルを表す記号として用いている。
【数26】

[式2]
ここで、E、Eは、p偏光及びs偏光の電場の大きさである。Eは、入射光の電場ベクトルの大きさ(振幅)である。p偏光とは入射面で振動する直線偏光であり、s偏光とは入射面とは直交する方向(つまりp偏光と直交する方向)に振動する直線偏光である。<e>、<e>は、p偏光及びs偏光の偏光方向の単位ベクトルである。VAセル12に入射する前であるため、<e>及び<e>は、それぞれx軸及びy軸に平行である。
【0012】
界面通過直後の電場ベクトル<E>は、[式3]で表される。
【数27】

[式3]
ここで、t10、t10は、p偏光及びs偏光に対する振幅透過率である。
【0013】
界面で屈折が生じるため、<e>≠<e>であり、<e>は、x軸と平行でなくなるが、xz面内には含まれる。一方、<e>=<e>であり、y軸に平行のままである。
各偏光成分の大きさだけに注目すれば、この最初の界面を透過した後の光の電場の振幅は、[式4]で表される。
【数28】

[式4]
【0014】
その他の界面、例えばガラス−カラーフィルタ界面や透明電極−配向膜界面などでの光の電場の変化も、同様な方法で記述できる。
いま、入射側の空気−セル最表面の界面を1番目の界面として、i番目の界面を考える。ここで、i番目の界面は、[i−1]番目の媒質(0番目が入射側の空気)とi番目の媒質の界面とする。
<e>、<e>をi番目の媒質中でのp偏光及びs偏光の偏光方向の単位ベクトルとすると、i番目の媒質での電場ベクトル<E>は、[式5]で表される。
【数29】

[式5]
【0015】
i番目の界面を通過直後の電場ベクトル<Ei+1>は、[式6]となる。
【数30】

[式6]
ここで、ti+1,i、ti+1,iは、i番目の界面でのp偏光及びs偏光に対する振幅透過率である。
【0016】
界面で屈折が生じるため、<ei+1>≠<e>であり、<ei+1>は、x軸と平行ではないが、xz面内には含まれる。一方、<ei+1>=<e>=<e>であり、y軸に平行のままである。
各偏光成分の大きさだけに注目すれば、この界面を透過した後の光の電場の振幅は、[式7]で表される。
【数31】

[式7]
[式7]は大きさだけに注目しているが、偏光状態を記述するには、s偏光とp偏光の間の相対的な位相差も考慮する必要がある。
ここでは、液晶層以外は光学的に等方と想定しているため、s偏光とp偏光の間に位相差は発生しない。つまり、位相差まで考慮しても、[式7]により光の透過を記述することができる。
【0017】
液晶内では、光は常光と異常光に別れて伝播する。しかしながら、図1に示したように、遅相軸が入射面に存在する場合には、常光は、s偏光、すなわち、入射面に垂直な方向の直線偏光であり、異常光は、p偏光、すなわち、入射面内でs偏光と直交する方向の直線偏光である。
したがって、VAセル12を構成するガラス等の各媒質中を伝播してきたs偏光はそのまま常光として、p 偏光は異常光として液晶内を伝播する。このため、液晶層の界面での透過率も、[式7]と同様の形式で表すことができる。
【0018】
ただし、液晶層は異方性を示し、リタデーションを持つ。すなわち、偏光方向で屈折率が異なり、常光と異常光(s偏光とp偏光)の間に位相差が発生する。
液晶層をl番目の媒質とし、常光の屈折率をneff、異常光の屈折率をneffとすると、液晶層を通過し、[l+1]番目の媒質に入射する直前の光の電場ベクトル<E>の成分E、Eは、[式8]となる。
【数32】

[式8]
ここで、dは液晶層の厚さであり、λは入射光の波長である。
【0019】
eff、neffは、[式9]で表される。
【数33】

[式9]
ここで、Θは、入射光とVAセル表面の法線との間の角度である(図1、図2参照)。θは、VAセル表面の法線と液晶層の遅相軸の間の角度である。n、nは、液晶材料の屈折率であり、電場が液晶分子の長軸方向に平行な方向及び直交する方向の直線偏光に対するものである。
VAセルの場合、液晶分子の長軸方向はVAセル表面の法線に平行(基板面に垂直)に配向されているため、θ=0である。
従って、[式9]は[式10]となる。
【数34】

[式10]
【0020】
液晶層を通過した光は、その後何回か等方性媒質間の界面を通過し、最後にVAセルの外部、つまり空気へ出射する。
以上の過程による入射光の偏光状態の変化は、出射光の電場ベクトルを<E>とすると(液晶層及びVAセルの両側の空気も含めて[m+1]層の媒質層があったとする)、<E>は、[式11]で表される。
【数35】

[式11]
ここで、t、tは、p偏光及びs偏光に対するVAセル全体の振幅透過率であり、[式12]で表される各界面での振幅透過率の積である。
【数36】

[式12]
【0021】
透過軸が角度ωの方向を向いた(透過軸方向が入射面に対して角度ω傾けられている)検光子13を介して、この出射光の強度I(ω,α)を検出装置14で検出する場合、I(ω,α)は[式13]で表される。
なお、本明細書では、I(ω,α)は、入射光の偏光方向(偏光子11の透過軸方向)を入射面から角度αの方向に向け、検光子13の透過軸方向を入射面から角度ωの方向に向けた時の、透過光強度(検出装置14の検出信号)を示す。
【数37】

[式13]
ここで、Iは、検光子13の透過率で規格化した出射光の強度である。T=t、T=tは、p偏光、s偏光に対するVAセル12の透過率である。Δneff=neff−neffは、VAセル12の液晶層の複屈折率である。また、[R=Δneff・d]は、VAセル12の液晶層のリタデーションである。
【0022】
液晶層のリタデーションRは、検出装置14で検出される透過光強度を用い、[式13]により、液晶層のリタデーションRを変数として解析することにより求めることができる。
ここで、[式13]は、p偏光、s偏光に対するVAセル12の透過率T、Tを含んでいる。このため、透過光強度を用いて、[式13]から液晶層のリタデーションを求めるには、このVAセル12の透過率T、Tの具体的な値が必要である。
しかしながら、VAセル12の透過率T、Tの具体的な値を事前に得るためには、VAセル12の全ての部材の透過率を事前に把握しておく必要がある。実際のVAセル12には、ITO製の透明電極やカラーフィルタ等の部材を有しており、全ての部材の透過率を事前に把握することは現実的でない。また、薄膜部材は、膜の製造条件によって屈折率などの光学特性が変化するため、事前に把握することが自体が現実的でない。
本発明では、VAセル12の透過率T、Tの値を必要とすることなく、液晶層のリタデーションR、したがって、液晶層の厚さdを正確に検出することができる解析方法を提案する。
【0023】
以下に、図1及び図2に示すパラメータ検出装置を用いて、検出対象のパラメータ(本実施の形態では、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さd)を検出する方法の実施の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態では、入射面に対する検光子13の透過軸方向の傾き角度ω(以下、「検光子13の透過軸方向ω」という)を任意の角度に設定し、入射面に対する偏光子11の透過軸方向の傾き角度α(以下、「偏光子11の透過軸方向α」という)を、入射面に平行(α=0°)及び直交(α=90°)とした時の透過光強度の比rを利用して、VAセル12(検出対象)のパラメータを検出する。
【0024】
検光子13の透過軸方向ωを任意の角度ωに設定する(検光子13の透過軸方向を角度ωの方向に向ける)とともに、偏光子11の透過軸方向αを0°に設定した(偏光子11の透過軸方向を0°に向けた)時の透過光強度(検出装置14の検出信号)をI(ω,0°)とする。
また、検光子13の透過軸方向ωを前記の任意の角度ωに設定するとともに、偏光子11の透過軸方向αを90°に設定した時の透過光強度をI(ω,90°)とする。
そして、透過光強度I(ω,0°)とI(ω,90°)を用いて、[式14]により、比rを求める。
【数38】

[式14]
【0025】
偏光子11の透過軸方向を任意の角度αに、検光子13の透過軸方向を任意の角度ωに設定した時の透過光強度I(ω,α)は、[式14]の比rを用いて、[式15]で表される。
【数39】

[式15]
ここで、偏光子11の透過軸方向αと検光子13の透過軸方向ωのすくなくとも一方が異なる、少なくとも2つ以上の組み合わせ(相異なる少なくとも2つ以上の組み合わせ)に対する透過光強度、例えば、任意の角度αと任意の角度ωの組み合わせ(ω,α)に対する透過光強度I(ω,α)と、任意の角度αと任意の角度ωの組み合わせ(ω,α)に対する透過光強度I(ω,α)との比は、[式16]で表される。
【数40】

[式16]
なお、(ω,α)の相異なる組み合わせの選択方法としては、αのみが異なる組み合わせ、例えば、(ω,α)の組み合わせと(ω,α)の組み合わせを選択する方法や、ωのみが異なる組み合わせ、例えば、(ω,α)の組み合わせと(ω,α)の組み合わせを選択する方法を用いることができる。ω≠ω、α1≠αでも構わない。
【0026】
[式16]は、VAセル12の液晶層の透過率T、Tを含んでいない。また、α、α、ω、ω、ωは既知であり、入射光の波長λも既知である。すなわち、[式16]では、変数はVAセル12の液晶層のリタデーションRのみである。
したがって、I(ω,α)とI(ω,α)を検出装置14により検出(測定)し、検出(測定)したI(ω,α)とI(ω,α)を用いて、[式16]により、VAセル12の液晶層のリタデーションRを求めることができる。
なお、[液晶層のリタデーションR=Δneff・d]であり、液晶層の複屈折率Δneffは、[式9]、[式10]に示されているように、液晶層の常光に対する常光屈折率nと異常光に対する異常光屈折率neで表される。
したがって、[式16]により求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率Δneffで除算することによって、VAセル12の液晶層の厚さdを求めることができる。
以上では、[式14]で比rの具体的に値を求めた。しかしながら、[式15]あるいは[式16]中のrに[式14]を代入した数式を使用することにより、rの具体的な値を求める必要がなくなる。
また、[式15]中の未知な変数は、リタデーションRと係数I・Tの2つである。このため、検光子13の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾き、偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている時の透過光強度I(ω,α)を、ωあるいはαの少なくとも一方が異なる、少なくとも2つ以上のωとαの組み合わせ(ω,α)に対して検出し、検出した透過光強度I(ω,α)を[式15]による計算値と比較することにより、液晶層のリタデーションRを求めることができる。比較には、例えば、最小二乗法を用いることができる。
【0027】
本実施の形態の手順を以下に説明する。
(ステップ1)
VAセル12を、図1に示すパラメータ検出装置に、入射光の進行方向に対して角度Θ傾けて設置する。
例えば、VAセル12を図1に示すパラメータ検出装置の支持部(図示省略)に配設する。そして、駆動装置12aにより、y軸に平行な軸を回転軸として支持部を回転させ、入射光の進行方向(z軸方向)とVAセル12の基板面の法線方向との間の角度をΘに設定する。
あるいは、入射光の進行方向に対して角度Θ傾けられている支持部にVAセル12を支持させる(配設)。この場合には、駆動装置12aは省略することができる。
【0028】
(ステップ2)
検光子13の透過軸方向を任意の角度ωの方向に向けた状態で、偏光子11の透過軸方向を0°の方向に向けた時の透過光強度I,0°)と、偏光子11の透過軸方向を90°の方向に向けた時の透過光強度I,90°)を検出する。
例えば、駆動装置13aにより、z軸(光の進行方向)に平行な軸を回転軸としてxy平面内で検光子13を回転させ、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度ωに設定する。
この状態で、駆動装置11aにより、z軸(光の進行方向)に平行な軸をを回転軸としてxy平面内で偏光子11を回転させ、偏光子11の透過軸方向αを0°に設定する。そして、この時の検出装置14の検出信号を透過光強度I,0°)とする。
さらに、駆動装置11aにより偏光子11を回転させ、偏光子11の透過軸方向αを90°に設定する。そして、この時の検出装置14の検出信号を透過光強度I,90°)とする。
(ステップ3)
ステップ2で検出した透過光強度I,0°)と,90°)を用いて、[式17]により比rを求める。
【数41】

[式17]
【0029】
(ステップ4)
偏光子11の透過軸方向を任意の角度αの方向に、検光子13の透過軸方向を任意の角度ωの方向に向けた時の透過光強度I,α)と、偏光子11の透過軸方向を任意の角度α2の方向に、検光子13の透過軸方向を任意の角度ωの方向に向けた時の透過光強度I,α)を検出する。なお、αとα及びωとωは、少なくとも一方が異なっていればよい。
例えば、駆動装置11aにより、z軸(光の進行方向)に平行な軸を回転軸として偏光子11を回転させ、偏光子11の透過軸方向αを任意の角度αに設定する。
この状態で、駆動装置13aにより、z軸(光の進行方向)に平行な軸を回転軸として検光子13を回転させ、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度ωに設定する。そして、この時の検出装置14の検出信号を透過光強度I,α)とする。
さらに、駆動装置11aにより偏光子11を回転させ、偏光子11の透過軸方向αを任意の角度αに設定する。
この状態で、駆動装置13aにより回転させ、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度ωに設定する。そして、この時の検出装置14の検出信号を透過光強度I,α)とする。
【0030】
(ステップ5)
ステップ4で検出した透過光強度I,α)とI,α)を用い、[式18]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを求める。
【数42】

[式18]
(ステップ6)
VAセル12の液晶層の厚さdを求める場合には、ステップ5で求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率(Δneff=neff−neff)([式9]、[式10]参照)で除算する。
【0031】
以上では、ω、αの少なくとも一方が異なる、少なくとも2つ以上のωとαの組み合わせ(ω,α)に対する透過光強度を用い、[式15]や[式16]により、VAセルの液晶層のリタデーションを求めたが、[式15]や[式16]より簡単な式は用いて液晶層のリタデーションを求めることもできる。
以下に、簡単な式を用いて液晶層のリタデーションを検出することができる検出方法を説明する。
まず、[式14]で求めた比rから、[式19]を用いて角度γを求める。
【数43】

[式19]
【0032】
ここで、偏光子11の透過光方向を[式19]で求めた角度γの方向に向け、検光子13の透過軸方向を角度ωの方向に向けた時の透過光強度I(ω,γ)は、[式20]で表される。
【数44】

[式20]
これにより、偏光子11の透過軸方向αを角度γに、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度ωに設定した時の透過光強度I(ω,γ)と、偏光子11の透過軸方向αを角度γに、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度ω(≠ω)に設定した時の透過光強度I(ω,γ)との比は、[式21]で表される。
【数45】

[式21]
【0033】
また、検光子13の透過軸方向を[式19]で求めた角度γの方向に向け、偏光子11の透過軸方向を角度αの方向に向けた時の透過光強度I(γ,α)は、[式22]で表される。
【数46】

[式22]
これにより、検光子13の透過軸方向ωを角度γに、偏光子11の透過軸方向αを任意の角度αに設定した時の透過光強度I(γ、α)と、検光子13の透過軸方向ωを角度γに、偏光子11の透過軸方向αを任意の角度αに(≠α)設定した時の透過光強度I(γ,α)との比は、[式23]で表される。
【数47】

[式23]
【0034】
このように、偏光子11の透過軸方向あるいは検光子13の透過軸方向を、[式19]で求められる角度γの方向に向けた状態で、検光子13の透過軸方向を相異なる少なくとも2つ以上の任意の角度に設定した時の透過光強度、あるいは、偏光子11の透過軸方向を相異なる少なくとも2つ以上の任意の角度に設定した時の透過光強度を用いることにより、[式15]や[式16]より簡略な[式20]〜[式23]を用いて液晶層のリタデーションRを求めることができる。
【0035】
第1の実施の形態は、VAセル12に斜めに光を入射させる場合のVAセル12の透過率T、Tを考慮しているので、VAセル12の透過率に偏光依存性がある場合でも(T≠T)、VAセルの液晶層のリタデーションRや厚さdを正確に検出することができる。一方、[式16]や[式21]、[式23]から明らかなように、第1の実施の形態では、これらの透過率T、Tの値を必要とせずに、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さdを求める(検出する)ことができる。
したがって、VAセル12のパラメータである、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さdを簡単に、正確に検出することができる。
【0036】
[第2の実施の形態]
偏光子の透過軸方向をα、検光子の透過軸方向をωとした時の透過光強度を表す[式13]は、αとωを入れ替えても全く変化しない。すなわち、第1の実施の形態で説明した偏光子を検光子に、検光子を偏光子に置き換えることができる。
第2の実施の形態では、偏光子11の透過軸方向αを任意の角度に設定し、検光子13の透過軸方向ωを、入射面に平行(ω=0°)及び直交(ω=90°)に設定した時の透過光強度の比rを利用して、VAセル12(検出対象)のパラメータを検出する。
【0037】
偏光子11の透過軸方向αを任意の角度αに設定する(偏光子11の透過軸方向を角度αの方向に向ける)とともに、検光子13の透過軸方向ωを0°に設定した(検光子13の透過軸方向を0°の方向に向けた)時の透過光強度(検出装置14の検出信号)をI(0°,α)とする。
また、偏光子11の透過軸方向αを前記の任意の角度αに設定するとともに、検光子13の透過軸方向ωを90°に設定した時の透過光強度をI(90°,α)とする。
そして、透過光強度I(0°,α)とI(90°,α)を用いて、[式24]により、比rを求める。
【数48】

[式24]
【0038】
偏光子11の透過軸方向を任意の角度αに、検光子13の透過軸方向を任意の角度ωに設定した時の透過光強度I(ω、α)は、[式24]で求められるrを用いて、[式25]で表される。
【数49】

[式25]
ここで、偏光子11の透過軸方向αと検光子13の透過軸方向ωのすくなくとも一方が異なる、少なくとも2つ以上の組み合わせ(相異なる少なくとも2つ以上の組み合わせ)に対する透過光強度、例えば、任意の角度αと任意の角度ωの組み合わせ(ω,α)に対する透過光強度I(ω,α)と、任意の角度αと任意の角度ωの組み合わせ(ω,α)に対する透過光強度I(ω,α)との比は、[式26]で表される。
【数50】

[式26]
なお、(ω,α)の相異なる組み合わせの選択方法としては、αのみが異なる組み合わせ、例えば、(ω,α)の組み合わせと(ω,α)の組み合わせを選択する方法や、ωのみが異なる組み合わせ、例えば、(ω,α)の組み合わせと(ω,α)の組み合わせを選択する方法を用いることができる。ω≠ω、α1≠αでも構わない。
【0039】
[式26]は、[式16]と同様に、VAセル12の液晶層の透過率T、Tを含んでいない。このため、[式26]では、変数はVAセル12の液晶層のリタデーションRのみである。
したがって、I(ω,α)とI(ω,α)を検出装置14により検出し、検出したI(ω,α)とI(ω,α)を用いて、[式26]により、VAセル12の液晶層のリタデーションRを求めることができる。
また、[式26]により求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率Δneffで除算することによって、VAセル12の液晶層の厚さdを求めることができる。
以上では、[式24]でrの具体的に値を求めた。しかしながら、[式25]あるいは[式26]中のrに[式24]を代入した数式を使用することにより、rの具体的な値を求める必要がなくなる。
また、[式25]中の未知な変数は、リタデーションRと係数I・Tの2つである。このため、検光子13の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾き、直線偏光の偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている時の透過光強度I(ω,α)を、ωあるいはαの少なくとも一方が異なる、少なくとも2つ以上のωとαの組み合わせ(ω、α)に対して検出し、検出した透過光強度I(ω、α)を[式25]による計算値と比較することにより、液晶層のリタデーションRを求めることができる。比較には、例えば、最小二乗法を用いることができる。
【0040】
本実施の形態の手順を以下に説明する。
(ステップ1)
VAセル12を、図1に示すパラメータ検出装置に、入射光の進行方向(z軸方向)に対して角度Θ傾けて設置する。
(ステップ2)
偏光子11の透過軸方向αを任意の角度αに設定した状態で、検光子13の透過軸方向ωを0°に設定した時の透過光強度I(0°,α)と、検光子13の透過軸方向ωを90°に設定した時の透過光強度I(90°,α)を検出する。
(ステップ3)
ステップ2で検出した透過光強度I(0°,α)とI(90°,α)を用いて、[式27]により比rを求める。
【数51】

[式27]
【0041】
(ステップ4)
偏光子11の透過軸方向αを任意の角度αに、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度ωに設定した時の透過光強度I,α)と、偏光子11の透過軸方向ωを任意の角度αに、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度ωに設定した時の透過光強度I,α)を検出する。なお、αとα及びωとωは、少なくとも一方が異なっていればよい。
(ステップ5)
ステップ4で検出した透過光強度I,α)とI,α)を用い、[式28]により、VAセル12の液晶層のリタデーションRを求める。
【数52】

[式28]
(ステップ6)
VAセル12の液晶層の厚さdを求める場合には、ステップ5で求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率(Δneff=neff−neff)で除算する。
【0042】
以上では、ω、αの少なくとも一方が異なる、少なくとも2つ以上ωとαの組み合わせ(ω,α)に対する透過光強度を用い、[式25]や[式26]により、VAセルの液晶のリタデーションRを求めたが、[式25]や[式26]より簡略な式を用いて液晶層のリタデーションRを求めることもできる。
以下に、簡単な式を用いて液晶層のリタデーションを検出する検出方法を説明する。
まず、[式24]で求めた比rから、[式29]を用いて角度γを求める。
【数53】

[式29]
【0043】
ここで、偏光子11の透過光方向を[式29]で求めた角度γの方向に向け、検光子13の透過軸方向を角度ωの方向に向けた時の透過光強度I(ω,γ)は、[式22]で表される。
これにより、偏光子11の透過軸方向を角度γに、検光子13の透過軸方向を任意の角度ωに設定した時の透過光強度I(ω,γ)と、偏光子11の透過軸方向を角度γに、検光子13の透過軸方向を任意の角度ω(≠ω)に設定した時の透過光強度I(ω,γ)との比は、[式19]で表される。
【0044】
また、検光子13の透過軸方向を角度γの方向に向け、偏光子11の透過軸方向を角度αの方向に向けた時の透過光強度I(γ,α)は、[式20]で表される。
これにより、検光子13の透過軸方向を角度γに、偏光子11の透過軸方向を任意の角度αに設定した時の透過光強度I(γ、α)と、検光子13の透過軸方向を角度γに、偏光子11の透過軸方向を任意の角度α(≠α)に設定した時の透過光強度I(γ,α)との比は、[式23]で表される。
【0045】
このように、偏光子11の透過軸方向あるいは検光子13の透過軸方向を、[式29]で求められる角度γの方向に向けた状態で、検光子13の透過軸方向を相異なる少なくとも2つ以上の任意の角度に設定した時の透過光強度、あるいは、偏光子11の透過軸方向を相異なる少なくとも2つ以上の任意の角度に設定した時の透過光強度を用いることにより、[式25]や[式26]より簡略な[式20]〜[式23]を用いて液晶層のリタデーションRを求めることができる。
【0046】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様に、VAセル12に斜めに光を入射させる場合のVAセル12の透過率T、Tを考慮しているので、VAセル12の透過率に偏光依存性がある場合でも(T≠T)、VAセルの液晶層のリタデーションRや厚さdを正確に検出することができる。その上、これらの透過率T、Tの値を必要とせずに、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さdを求めることができる。
したがって、VAセル12のパラメータである、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さを簡単に、正確に検出することができる。
【0047】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態または第2の実施の形態では、透過光強度の比rを求めるために、検光子13の透過軸方向ωあるいは偏光子11の透過軸方向αを特定の方向に設定したが、偏光子11の透過軸方向αや検光子13の透過軸方向ωの設定操作を容易にすることもできる。
第3の実施の形態では、偏光子11の透過軸方向αを任意の角度に設定した状態で、検光子13の透過軸方向ωを、任意の相異なる3つ以上の角度に設定した時の透過光強度を用いて、VAセル12の液晶層のリタデーションRを直接検出する。
【0048】
偏光子1の透過軸方向をα、検光子13の透過軸方向をωとした時の透過光強度を表す[式13]は、[式30]のように書き換えることができる。
【数54】

[式30]
【0049】
[式30]では、偏光子11の透過軸方向α、検光子13の透過軸方向ωは既知であるが、I・T、I・T、R、A、B、Cが未知である。
ここで、3つの変数A、B、Cは、偏光子11の透過軸方向αを任意の角度に設定した状態で、検光子13の透過軸方向ωを、少なくとも3つ以上の相異なる角度に設定した時の透過光強度と[式31]を比較することによって求めることができる。例えば、検光子13の透過軸方向ωを3つの異なる角度ω、ω、ω(i=1,2,3)]に設定した時の3つの透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)[I(ω,α)(i=1,2,3)]と[式31]を比較することによって変数A、B、Cを求めることができる。比較方法としては、例えば、最小二乗法を用いることができる。
【数55】

[式31]
そして、求めた変数A、B、Cを用いて、[式32]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを求めることができる。
【数56】

[式32]
【0050】
なお、検光子13の透過軸方向ωを3つの透過軸方向ω〜ωに設定した時の3つの透過光強度を用いて3つの変数A、B、Cを求める場合、3つの透過軸方向ω〜ωの中に45°と135°が同時に含まれていると、3つの透過光強度だけでは3つの変数A、B、Cを求めることができない。この場合には、検光子13の透過軸方向ωを4つ以上の角度に設定した時の4つ以上の透過光強度を用いる。
また、偏光子11の透過軸方向αを0°あるいは90°に設定すると、変数Cが常に「0」となる。このため、偏光子11の透過軸方向αは、0°及び90°以外の角度に設定する必要がある。
【0051】
本実施の形態の手順を以下に説明する。
(ステップ1)
VAセル12を、図1に示すパラメータ検出装置に、入射光の進行方向に対して角度Θ傾けて設置する。
(ステップ2)
偏光子11の透過軸方向αを0°及び90°以外の任意の角度に設定した状態で、検光子13の透過軸方向ωを異なる3つの角度ω、ω、ω(45°と135°を同時に含まない)に設定した時の透過光強度I,α)、I,α)、I,α)を検出する。
(ステップ3)
ステップ2で検出した透過光強度I,α)(i=1,2,3)と[式33]で表される透過光強度I,α)(i=1,2,3)を比較することによって、変数A、B、Cを求める。
【数57】

[式33]
(ステップ4)
ステップ3で求めた変数A、B、Cを用いて、[式34]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを求める。
【数58】

[式34]
(ステップ5)
VAセル12の液晶層の厚さdを求める場合には、ステップ4で求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率(Δneff=neff−neff)で除算する。
【0052】
第3の実施の形態は、第1及び第2の実施の形態と同様に、VAセル12に斜めに光を入射させる場合のVAセル12の透過率T、Tを考慮しているので、VAセル12の透過率に偏光依存性がある場合でも(T≠T)、VAセルの液晶層のリタデーションRや厚さdを正確に検出することができる。その上、これらの透過率T、Tの値を必要とせずに、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さdを求めることができる。
したがって、VAセル12のパラメータである、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さを簡単に、正確に検出することができる。
また、第3の実施の形態は、第1の実施の形態と比べて、偏光子11の透過軸方向αや検光子13の透過軸方向ωを任意の角度に設定することができる。
このため、偏光子11の透過軸方向αや検光子13の透過軸方向ωの設定が容易であり、透過光強度の検出時間を短縮することができる。
【0053】
[第4の実施の形態]
第3の実施の形態では、検光子13の透過軸方向ωを3以上の異なる角度ω(i=1,2,3,・・・)に設定した時の透過光強度I(ω,α)(i=1,2,3,・・・)を用いて変数A、B、Cを求めたが、角度ωとして適切な角度を用いることにより変数A、B、Cを求める処理を省略することができる。
第4の実施の形態では、偏光子11の透過軸方向αを任意の角度に設定した状態で、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度ωに設定した時の透過光強度I(ω、α)と、検光子の透過軸方向ωを角度ω(=ω+90°)に設定した時の透過光強度I(ω、α)と、検光子の透過軸方向ωを角度ω(=ω+45°)に設定した時の透過光強度I(ω、α)を用いて、VAセル12の液晶層のリタデーションRを直接検出する。
【0054】
偏光子の透過光強度を任意の角度αに設定した状態で、検光子13の透過光強度ωを任意の角度ω、ω=ω+90°、ω=ω+45°、ω=ω+135°に設定した時の透過光強度をI(ω、α)、I(ω、α)、I(ω、α)、I(ω、α)とすると、[式30]は[式35]で表される。
【数59】

[式35]
【0055】
したがって、3つの透過光強度I(ω、α)、I(ω、α)、I(ω、α)を用いて、[式36]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを直接求めることができる。
【数60】

[式36]
また、[式36]により求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率Δneffで除算することによって、VAセル12の液晶層の厚さdを求めることができる。
【0056】
本実施の形態の手順を以下に説明する。
(ステップ1)
VAセル12を、図1に示すパラメータ検出装置に、入射光の進行方向に対して角度Θ傾けて設置する。
(ステップ2)
偏光子11の透過軸方向αを0°及び90°以外の任意の角度に設定した状態で、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度ωに設定した時の透過光強度I、α)と、検光子の透過軸方向ωを角度ω(=ω+90°)に設定した時の透過光強度I、α)と、検光子の透過軸方向ωを角度ω(=ω+45°)に設定した時の透過光強度I、α)を検出する。
(ステップ3)
ステップ2で検出した透過光強度I、α)、I、α)、I、α)を用いて、[式37]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを求める。
【数61】

[式37]
(ステップ4)
VAセル12の液晶層の厚さdを求める場合には、ステップ3で求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率(Δneff=neff−neff)で除算する。
【0057】
[第5の実施の形態]
第4の実施の形態では、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度ω、ω=ω+90°、ω=ω+45°に設定することにより変数A、B、Cを求める処理を省略したが、検光子13の透過軸方向ωをこれ以外の角度に設定することによっても変数A、B、Cを求める処理を省略することができる。
第5の実施の形態では、偏光子11の透過軸方向を任意の角度αに設定した状態で、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度ω、ω=ω+90°、ω=ω+135°に設定した時の透過光強度を用いて、VAセル12の液晶層のリタデーションRを直接検出する。
【0058】
偏光子の透過光強度を任意の角度αに設定した状態で、検光子13の透過光強度ωを任意の角度ω、ω=ω+90°、ω=ω+45°、ω=ω+135°に設定した時の透過光強度をI(ω、α)、I(ω、α)、I(ω、α)、I(ω、α)とすると、[式30]は[式35]で表される。
したがって、3つの透過光強度I(ω、α)、I(ω、α)、I(ω、α)を用いて、[式38]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを直接求めることができる。
【数62】

[式38]
また、[式38]により求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率Δneffで除算することによって、VAセル12の液晶層の厚さdを求めることができる。
【0059】
本実施の形態の手順を以下に説明する。
(ステップ1)
VAセル12を、図1に示すパラメータ検出装置に、入射光の進行方向に対して角度Θ傾けて設置する。
(ステップ2)
偏光子11の透過軸方向を0°及び90°以外の任意の角度αに設定した状態で、検光子13の透過軸方向を任意の角度ωに設定した時の透過光強度I、α)と、検光子の透過軸方向をω(=ω+90°)に設定した時の透過光強度I、α)と、検光子の透過軸方向をω(=ω+135°)に設定した時の透過光強度I、α)を検出する。
(ステップ3)
ステップ2で検出した透過光強度I、α)、I、α)、I、α)を用いて、[式39]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを求める。
【数63】

[式39]
(ステップ4)
VAセル12の液晶層の厚さdを求める場合には、ステップ3で求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率(Δneff=neff−neff)で除算する。
【0060】
第4及び第5の実施の形態は、第1〜第3の実施の形態と同様に、VAセル12に斜めに光を入射させる場合のVAセル12の透過率T、Tを考慮しているので、VAセル12の透過率に偏光依存性がある場合でも(T≠T)、VAセルの液晶層のリタデーションRや厚さdを正確に検出することができる。その上、これらの透過率T、Tの値を必要とせずに、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さdを求めることができる。
したがって、VAセル12のパラメータである、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さを簡単に、正確に検出することができる。
また、第4及び第5の実施の形態は、第3の実施の形態と比べて、変数A,B、Cを求める必要がないため、処理装置15の処理が簡単になる。
【0061】
[第6の実施の形態]
偏光子の透過軸方向をα、検光子の透過軸方向をωとした時の透過光強度を表す[式13]は、αとωを入れ替えても全く変化しない。すなわち、第3の実施の形態で説明した偏光子を検光子に、検光子を偏光子に置き換えることができる。
第6の実施の形態では、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度に設定した状態で、偏光子11の透過軸方向αを、任意の異なる3以上の角度に設定した時の透過光強度を用いて、VAセル12の液晶層のリタデーションRを直接検出する。
【0062】
偏光子11の透過軸方向をα、検光子13の透過軸方向をωとする。第3の実施の形態では検光子13の透過軸方向ωを変化させたが、偏光子11の透過軸方向αを変化させるとすると、透過光強度を表す[式19]は、[式40]のように書き換えることができる。
【数64】

[式40]
[式40]では、偏光子11の透過軸方向α、検光子13の透過軸方向ωは既知であるが、I・T、I・T、R、A、B、Cが未知である。
ここで、3つの変数A、B、Cは、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度に設定した状態で、偏光子11の透過軸方向αを、少なくとも3つ以上の異なる角度に設定した時の透過光強度と[式41]を比較することによって求めることができる。例えば、偏光子11の透過軸方向ωを3つの異なる角度α、α、α(i=1,2,3)]に設定した時の3つの透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)[I(ω,α)(i=1,2,3)]と[式41]を比較することによって変数A、B、Cを求めることができる。比較方法としては、例えば、最小二乗法を用いることができる。
【数65】

[式41]
そして、求めた変数A、B、Cを用いて、[式32]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを求めることができる。
【0063】
なお、偏光子11の透過軸方向αを3つの透過軸方向α〜αに設定した時の3つの透過光強度を用いて3つの変数A、B、Cを求める場合、3つの透過軸方向α〜αの中に45°と135°が同時に含まれていると、3つの透過光強度だけでは3つの変数A、B、Cを求めることができない。この場合には、偏光子11の透過軸方向αを4つ以上の角度に設定した時の4つ以上の透過光強度を用いる。
また、検光子13の透過軸方向ωを0°あるいは90°に設定すると、変数Cが常に「0」となる。このため、検光子13の透過軸方向ωは、0°及び90°以外の角度に設定する必要がある。
【0064】
本実施の形態の手順を以下に説明する。
(ステップ1)
VAセル12を、図1に示すパラメータ検出装置に、入射光の進行方向に対して角度Θ傾けて設置する。
(ステップ2)
検光子13の透過軸方向ωを0°及び90°以外の任意の角度に設定した状態で、偏光子11の透過軸方向αを異なる3つの角度α、α、α(45°と135°を同時に含まない)に設定した時の透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を検出する。
(ステップ3)
ステップ2で検出した透過光強度I(ω,α)(i=1,2,3)と[式42]で表される透過光強度I(ω,α)(i=1,2,3)を比較することによって、変数A、B、Cを求める。
【数66】

[式42]
(ステップ4)
ステップ3で求めた変数A、B、Cを用いて、[式34]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを求める。
(ステップ5)
VAセル12の液晶層の厚さdを求める場合には、ステップ4で求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率(Δneff=neff−neff)で除算する。
【0065】
第6の実施の形態は、第3の実施の形態と同様に、VAセル12に斜めに光を入射させる場合のVAセル12の透過率T、Tを考慮しているので、VAセル12の透過率に偏光依存性がある場合でも(T≠T)、VAセルの液晶層のリタデーションRや厚さdを正確に検出することができる。その上、これらの透過率T、Tの値を必要とせずに、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さdを求めることができる。
したがって、VAセル12のパラメータである、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さdを簡単に、正確に検出することができる。
また、第6の実施の形態は、第2の実施の形態と比べて、偏光子11の透過軸方向αや検光子13の透過軸方向ωを任意の角度に設定することができる。
このため、偏光子11の透過軸方向αや検光子13の透過軸方向ωの設定が容易であり、透過光強度の検出時間を短縮することができる。
【0066】
[第7の実施の形態]
第6の実施の形態では、偏光子11の透過軸方向αを3以上の異なる角度α(i=1,2,3、・・・)に設定した時の透過光強度I(ω,α)(i=1,2,3、・・・)を用いて変数A、B、Cを求めたが、角度αとして適切な角度を用いることにより変数A、B、Cを求める処理を省略することができる。
第7の実施の形態では、検光子13の透過軸方向ω任意の角度に設定した状態で、偏光子11の透過軸方向αを角度α、角度α=α+90度、α=α+45°に設定した時の透過光強度を用いて、VAセル12の液晶層のリタデーションRを直接検出する。
【0067】
検光子13の透過光強度ωを任意の角度に設定した状態で、偏光子11の透過軸方向αを任意の角度α、α=α+90度、α=α+45°、α=α+135度に設定した時の透過光強度をI(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)とすると、[式30]は[式43]で表される。
【数67】

[式43]
【0068】
したがって、3つの透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を用いて、[式44]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを直接求めることができる。
【数68】

[式44]
また、[式44]により求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率Δneffで除算することによって、VAセル12の液晶層の厚さdを求めることができる。
【0069】
本実施の形態の手順を以下に説明する。
(ステップ1)
VAセル12を、図1に示すパラメータ検出装置に、入射光の進行方向に対して角度Θ傾けて設置する。
(ステップ2)
検光子13の透過軸方向ωを0°及び90°以外の任意の角度に設定した状態で、偏光子11の透過軸方向αを任意の角度αに設定した時の透過光強度I(ω,α)と、偏光子11の透過軸方向αを角度α(=α+90°)に設定した時の透過光強度I(ω,α)と、偏光子11の透過軸方向αを角度α(=α+45°)に設定した時の透過光強度I(ω,α)を検出する。
(ステップ3)
ステップ2で検出した透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を用いて、[式45]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを求める。
【数69】

[式45]
(ステップ4)
VAセル12の液晶層の厚さdを求める場合には、ステップ3で求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率(Δneff=neff−neff)で除算する。
【0070】
[第8の実施の形態]
第7の実施の形態では、偏光子11の透過軸方向を任意の角度α、α=α+90°、α=α+45°に設定することにより変数A、B、Cを求める処理を省略したが、偏光子11の透過軸方向αをこれ以外の角度に設定することによっても変数A、B、Cを求める処理を省略することができる。
第8の実施の形態では、検光子13の透過軸方向ωを任意の角度に設定した状態で、偏光子11の透過軸方向を任意の角度α、α=α+90°、α=α+135°に設定した時の透過光強度を用いて、VAセル12の液晶層のリタデーションRを直接検出する。
【0071】
検光子13の透過光強度ωを任意の角度に設定した状態で、偏光子11の透過光強度αを任意の角度α、α=α+90°、α3=α1+45°、α=α+135°に設定した時の透過光強度をI(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)とすると、[式30]は[式43]で表される。
したがって、3つの透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を用いて、[式46]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを直接求めることができる。
【数70】

[式46]
また、[式46]により求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率Δneffで除算することによって、VAセル12の液晶層の厚さdを求めることができる。
【0072】
本実施の形態の手順を以下に説明する。
(ステップ1)
VAセル12を、図1に示すパラメータ検出装置に、入射光の進行方向に対して角度Θ傾けて設置する。
(ステップ2)
検光子13の透過軸方向ωを0°及び90°以外の任意の角度に設定した状態で、偏光子11の透過軸方向αを任意の角度αに設定した時の透過光強度I(ω,α)と、偏光子11の透過軸方向αを角度α(=α+90°)に設定した時の透過光強度I(ω,α)と、偏光子11の透過軸方向αを角度α(=α1+135°)に設定した時の透過光強度I(ω,α)を検出する。
(ステップ3)
ステップ2で検出した透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を用いて、[式47]によりVAセル12の液晶層のリタデーションRを求める。
【数71】

[式47]
(ステップ4)
VAセル12の液晶層の厚さdを求める場合には、ステップ3で求めたVAセル12の液晶層のリタデーションRを、VAセル12の液晶層の複屈折率(Δneff=neff−neff)で除算する。
【0073】
第7及び第8の実施の形態は、第1〜第6の実施の形態と同様に、VAセル12に斜めに光を入射させる場合のVAセル12の透過率T、Tを考慮しているので、VAセル12の透過率に偏光依存性がある場合でも(T≠T)、VAセルの液晶層のリタデーションRや厚さdを正確に検出することができる。その上、これらの透過率T、Tの値を必要とせずに、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さdを求めることができる。
したがって、VAセル12のパラメータである、VAセル12の液晶層のリタデーションRや厚さを簡単に、正確に検出することができる。
また、第7及び第8の実施の形態は、第6の実施の形態と比べて、変数A,B、Cを求める必要がないため、処理装置15の処理が簡単になる。
【0074】
本発明を用いて検出対象の各透過光強度を検出し、検出した各透過光強度を用いて検出対象のリタデーション及び厚さを検出した実験例を説明する。
[実験例1]
検出対象として、以下のようにして作製したVAセルを用いた。
透明電極として、片面に、直径約1cmの円形の透明電極を有する、約3cm角のガラス基板を用いた。ガラス基板の透明電極側には、液晶分子を、ガラス基板の法線に平行に配向させるためのポリイミド膜が設けられている。そして、2枚のガラス基板を、透明電極側が対向するように接着した。ここで、直径4.5μmの樹脂製のビーズを混入した紫外線硬化性接着剤をガラス基板の周囲の内側5mm程度の部分に塗布し、紫外線を照射して硬化させることにより2枚のガラス基板を接着したので、ガラス基板間には、ビーズの径に対応する間隙が形成されている。このガラス基板の間隙に、液晶材料を毛細管現象を利用して注入することによってVAセルを作製した。
発光装置10は、ハロゲンランプと、波長λが546nmの単色光を透過する干渉フィルタにより構成した。
偏光子11及び検光子13は、偏光フィルムを使用した。
検出装置14は、CCDカメラを使用した。
前記した方法で作製したVAセルを、偏光子11と検光子13の間に、入射光の入射角(VAセル12の基板面の法線と入射光の入射方向との間の角度)Θが30°になるように設置した。
【0075】
この状態で、偏光子11の透過軸方向αを45°に設定し(偏光子11の透過軸方向を45°の方向に向け)、検光子13の透過軸方向ωを0°に設定した(検光子13の透過軸方向を0°の方向に向けた)時の透過光強度(検出装置14の検出信号)I(0°,45°)を検出した。また、偏光子11の透過軸方向αを45°に設定し、検光子13の透過軸方向ωを90°に設定した時の透過光強度I(90°,45°)を検出した。
そして、検出したI(0°,45°)とI(90°,45°)を用い、[式27]により比rを求めたところ、r=0.665が得られた。
次に、偏光子11の透過軸方向αを、rを用いて[式29]により求められる角度[γ=50.8°]に設定し、検光子13の透過軸方向ωを45°に設定した時の透過光強度I(45°,α)を検出した。また、偏光子11の透過軸方向αを、前記角度[γ=50.8°]に設定し、検光子13の透過軸方向ωを135°に設定した時の透過光強度I(135°,α)を検出した。
そして、検出したI(45°,α)とI(135°,α)を用い、[式48]により、VAセルの液晶層のリタデーションRを求めたところ、R=40.4nmが得られた。
【数72】

[式48]
また、VAセルの液晶材料の異常光屈折率n=1.5633、常光屈折率n=1.4776及び入射角Θ=30°を用いて、[式10]によりVAセルの液晶層の複屈折率Δneffを求めた。そして、[式48]で求めたVAセルの液晶層のリタデーションR=40.4nmを、VAセルの液晶層の複屈折率Δneffで除算することによって、VAセルの液晶層の厚さd=4.23μmが得られた。
【0076】
[実験例2]
実験例1の測定を行った後、VAセルを動かさずに、続けて実験例2の測定を行った。
角度γを求めるところまでは実験例1と同じ手順で行ったところ、r=0.670が得られた。
検光子13の透過軸方向ωを、rを用いて[式29]によりで求められる角度[γ=50.7°]に設定し、偏光子11の透過軸方向αを45°に設定した時の透過光強度I(ω,45°)を測定した。また、検光子13の透過軸方向ωを、前記角度[γ=50.7°]に設定し、偏光子11の透過軸方向αを135°に設定した時の透過光強度I(ω,135°)を測定した。
そして、検出したI(ω,45°)とI(ω,135°)を用い、[式49]によりVAセルの液晶層のリタデーションRを求めたところ、R=40.3nmが得られた。
また、実験例1と同じ手順でVAセルの液晶層の厚さdを求めたところ、d=4.22μmが得られた。
【数73】

[式49]
【0077】
[実験例3]
実験例1と同じVAセルを使用し、VAセルを動かさずに、実験例1、2の測定を行った後、続けて実験例2の測定を行った。
検光子13の透過軸方向ωを45°に設定し、偏光子11の透過軸方向αを0°に設定した時の透過光強度I(45°,0°)を検出した。また、検光子13の透過軸方向ωを45°に設定し、偏光子11の透過軸方向αを90°に設定した時の透過光強度I(45°,90°)を検出した。
検出したI(45°,0°)とI(45°,90°)を用い、[式17]により比rを求めたところ、r=0.665が得られた。
次に、偏光子11の透過軸方向αを、rを用いて[式29]により求められる角度[γ=50.8°]に設定し、検光子13の透過軸方向ωを45°に設定した時の透過光強度I(45°,α)を検出した。また、偏光子11の透過軸方向αを、前記角度[γ=50.8°]に設定し、検光子13の透過軸方向ωを135°に設定した時の透過光強度I(135°,α)を検出した。
そして、検出したI(45°,α)とI(135°,α)を用い、[式49]により、VAセルの液晶層のリタデーションRを求めたところ、R=40.3nmが得られた。
また、実験例1と同じ手順でVAセルの液晶層の厚さdを求めたところ、d=4.22μmが得られた。
【0078】
[実施例4]
実験例3の測定を行った後、VAセルを動かさずに、続けて実験例4の測定を行った。
角度γを求めるところまでは実験例4と同じ手順で行ったところ、r=0.660が得られた。
次に、検光子13の透過軸方向ωを、rを用いて[式29]から求められる]角度[50.9°]に設定し、偏光子11の透過軸方向αを45°に設定した時の透過光強度I(ω,45°)を検出した。また、検光子13の透過軸方向ωを、前記角度[50.9°]に設定し、偏光子11の透過軸方向αを135°に設定した時の透過光強度I(ω,135°)を検出した。
そして、検出したI(ω,45°)とI(ω,135°)を用い、[式49]により、VAセルの液晶層のリタデーションRを求めたところ、R=40.5nmが得られた。
また、実験例1と同じ手順でVAセルの液晶層の厚さdを求めたところ、d=4.24μmが得られた。
【0079】
実験例1〜4は、同じVAセルの同じ場所を連続的に測定した。
そして、各実験例1〜4では、VAセルのリタデーションR及び厚さdとしてほぼ等しい値が得られた。
【0080】
[比較例1]
液晶層の透過率の異方性を考慮した本発明を用いて検出対象のリタデーションや厚さを検出した場合の検出精度を確認するために、回転検光子法を用いて検出対象のリタデーションや厚さを検出した。
実験例4の測定を行った後、VAセルを動かさずに、続けて比較例の測定を行った。
偏光子11の透過軸方向αを45°に設定し、検光子13の透過軸方向ωを45°に設定した時の透過光強度I(45°,45°)を検出した。また、偏光子11の透過軸方向αを45°に設定し、検光子13の透過軸方向ωを135°に設定した時の透過光強度I(135°,45°)を検出した。
そして、検出した、I(45°,45°)とI(135°,45°)を用い、[式50]により、VAセルの液晶層のリタデーションRを求めたところ、R=43.8nmが得られた。
【数74】

[式50]
また、実験例1と同じ手順でVAセルの液晶層の厚さdを求めたところ、d=4.58μmが得られた。
【0081】
比較例の検出結果と、液晶層の透過率の異方性を考慮した実験例1〜4の検出結果を比較すると、同じVAセルの同じ場所を測定したにもかかわらず、比較例の検出結果は、実験例1〜4の検出結果と異なっている。
【0082】
[実験例5]
比較例の測定を行った後、VAセルを動かさずに、続けて実験例5の測定を行った。
偏光子11の透過軸方向αを45°に設定し、検光子13の透過軸方向ωを、10°間隔で0°から90°までの範囲内で設定した時の透過光強度I(ω,45°)(ω=0°、10°、20°・・・80°、90°)を検出した。
そして、検出したI,45°)と[式51]のI(ω,45°)を、最小二乗法を用いて比較することによって、変数A、B、Cを求めたところ、A=24605、B=17227、C=18412(任意単位)が得られた。
【数75】

[式51]
次に、求めた変数A、B、Cを用いて、[式34]により、VAセルの液晶層のリタデーションRを求めたところ、R=40.3nmが得られた。
また、実験例1と同じ手順でVAセルの液晶層の厚さdを求めたところ、d=4.22μmが得られた。
【0083】
[実験例6]
実験例5の測定を行った後、VAセルを動かさずに、続けて実験例6の測定を行った。
偏光子11の透過軸方向αを45°に設定し、検光子13の透過軸方向ωを0°、45°、90°に設定した時の透過光強度I(0°,45°)、I(45°,45°)、I(90°,45°)を検出した。
そして、検出したI(0°,45°)、I(45°,45°)、I(90°,45°)を用い、[式52]により、VAセルの液晶層のリタデーションRを求めたところ、R=40.4nmが得られた。
【数76】

[式52]
また、実験例1と同じ手順でVAセルの液晶層の厚さdを求めたところ、d=4.2
3μmが得られた。
【0084】
[実験例7]
実験例6の測定を行った後、VAセルを動かさずに、続けて実験例7の測定を行った。
偏光子11の透過軸方向αを45°に設定し、検光子13の透過軸方向ωを0°、90°、135°に設定した時の透過光強度I(0°,45°)、I(90°,45°)、I(135°,45°)を検出した。
そして、検出したI(0°,45°)、I(90°,45°)、I(135°,45°)を用い、[式53]により、VAセルの液晶層のリタデーションRを求めたところ、R=40.4nmが得られた。
【数77】

[式53]
また、実験例1と同じ手順でVAセルの液晶層の厚さdを求めたところ、d=4.2
3μmが得られた。
【0085】
[実験例8]
実験例7の測定を行った後、VAセルを動かさずに、続けて実験例8の測定を行った。
検光子13の透過軸方向ωを45°に設定し、偏光子11の透過軸方向αを、10°間隔で0°から90°までの範囲内で設定した時の透過光強度I(45°,α)(α=0°、10°、20°・・・80°、90°)を検出した。
そして、検出したI(45°,α)と[式54]のI(45°,α)を、最小二乗法を用いて比較することによって、変数A、B、Cを求めたところ、A=24857、B=17650、C=18711(任意単位)が得られた。
【数78】

[式54]
次に、求めた変数A、B、Cを用いて、[式34]により、VAセルの液晶層のリタデーションRを求めたところ、R=40.5nmが得られた。
また、実験例1と同じ手順でVAセルの液晶層の厚さdを求めたところ、d=4.2
4μmが得られた。
【0086】
[実施例9]
実験例8の測定を行った後、VAセルを動かさずに、続けて実験例9の測定を行った。
検光子13の透過軸方向ωを45°に設定し、偏光子11の透過軸方向αを0°、45°、90°に設定した時の透過光強度I(45°,0°)、I(45°,45°)、I(45°,90°)を検出した。
そして、検出した透過光強度I(45°,0°)、I(45°,45°)、I(45°,90°)を用いて、[式55]により、VAセルの液晶層のリタデーションRを求めたところ、R=40.6nmが得られた。
【数79】

[式55]
また、実験例1と同じ手順でVAセルの液晶層の厚さdを求めたところ、d=4.2
5μmが得られた。
【0087】
[実施例10]
実験例9の測定を行った後、VAセルを動かさずに、続けて実験例10の測定を行った。
検光子13の透過軸方向ωを45°に設定し、偏光子11の透過軸方向αを0°、90°、135°に設定した時の透過光強度I(45°,0°)、I(45°,90°)、I(45°,135°)を検出した。
そして、検出した透過光強度I(45°,0°)、I(45°,90°)、I(45°,135°)を用いて、[式56]により、VAセルの液晶層のリタデーションRを求めたところ、R=40.6nmが得られた。
【数80】

[式56]
また、実験例1と同じ手順でVAセルの液晶層の厚さdを求めたところ、d=4.2
5μmが得られた。
【0088】
[実験例5]〜[実験例10]は、[実験例1]〜[実験例4]と同じVAセルの同じ場所を連続的に測定した。
そして、[実験例5]〜[実験例10]で検出したVAセルの液晶層のリタデーションR及び厚さdは、[実施例1]〜[実施例4]で検出した値とほぼ等しい値であり、比較例とは異なる値であった。
【0089】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
例えば、VAセルのパラメータであるリタデーションや厚さを検出したが、本発明は、VAセルに限定されず、光学的一軸媒質と同じ光学特性を示す検出対象のパラメータであるリタデーションや厚さを検出するパラメータ検出装置として用いることができる。
また、パラメータ検出装置は、図1に示した構成のものに限定されず、前記した各透過光強度を検出することができ、あるいは、各透過光強度に基づいて検出対象のパラメータであるリタデーションや厚さを検出することができればよい。
また、前記した各透過光強度の検出順序や、検出対象のリタデーションや厚さを検出する各ステップの順序は、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の検出対象のパラメータ検出装置の一実施の形態を示す図である。
【図2】図1に示すパラメータ検出装置の座標系を説明する図で有る。
【符号の説明】
【0091】
10 発光装置
11 偏光子
12 VAセル(検出対象)
13 検光子
14 検出装置
15 処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複屈折特性を有する検出対象に直線偏光を入射し、前記検出対象及び検光子を透過した光の透過光強度に基づいて前記検出対象のパラメータを検出する、検出対象のパラメータ検出方法であって、
前記検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾き、偏光方向が入射面に平行である直線偏光が前記検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,0)を検出し、
前記検光子の透過軸方向が入射面に対して前記任意の角度ω傾き、偏光方向が入射面に対して90°傾いている直線偏光が前記検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,90°)を検出し、
前記検出した透過光強度I(ω,0°)とI(ω,90°)を用いて、以下の式により比rを算出し、
【数1】

前記検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾き、直線偏光の偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている時の透過光強度I(ω,α)を、相異なる少なくとも2つ以上の(ω,α)の組み合わせに対して検出し、
当該検出した少なくとも2つ以上の透過光強度I(ω、α)と以下の式を用いて前記検出対象のリタデーションRを求める、
【数2】

(I;入射光の強度,Tp;p偏光に対する検出対象の透過率,λ;入射光の波長)
ことを特徴とする検出対象のパラメータ検出方法。
【請求項2】
複屈折特性を有する検出対象に直線偏光を入射し、前記検出対象及び検光子を透過した光の透過光強度に基づいて前記検出対象のパラメータを検出する、検出対象のパラメータ検出方法であって、
偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている直線偏光が前記検出対象に入射し、前記検光子の透過軸方向が入射面に平行である時の透過光強度I(0°,α)を検出し、
偏光方向が入射面に対して前記任意の角度α傾いている直線偏光が前記検出対象に入射し、前記検光子の透過軸方向が入射面に対して90°傾いている時の透過光強度I(90°,α)を検出し、
前記検出した透過光強度I(0°,α)とI(90°,α)を用いて、以下の式により比rを算出し、
【数3】

前記検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾き、直線偏光の偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている時の透過光強度I(ω,α)を、相異なる少なくとも2つ以上の(ω,α)の組み合わせに対して検出し、
当該検出した少なくとも2つ以上の透過光強度I(ω、α)と以下の式を用いて前記検出対象のリタデーションRを求める、
【数4】

(I;入射光の強度,Tp;p偏光に対する検出対象の透過率,λ;入射光の波長)
ことを特徴とする検出対象のパラメータ検出方法。
【請求項3】
複屈折特性を有する検出対象に直線偏光を入射し、前記検出対象及び検光子を透過した光の透過光強度に基づいて前記検出対象のパラメータを検出する、検出対象のパラメータ検出方法であって、
前記検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾き、偏光方向が入射面に対して角度α傾いている直線偏光が前記検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)を、相異なる少なくとも3つ以上のαに対して検出し、
前記検出した少なくとも3つ以上の透過光強度I(ω,α)と以下の式を用いて変数A、B、Cを求め、
【数5】

求めた変数A、B、Cを用いて、以下の式により前記検出対象のリタデーションRを求める、
【数6】

ことを特徴とする検出対象のパラメータ検出方法。
【請求項4】
複屈折特性を有する検出対象に直線偏光を入射し、前記検出対象及び検光子を透過した光の透過光強度に基づいて前記検出対象のパラメータを検出する、検出対象のパラメータ検出方法であって、
前記検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾き、
偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている直線偏光が前記検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)と、
偏光方向が入射面に対して角度α(=α+90°)傾いている直線偏光が前記検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)と、
偏光方向が入射面に対して角度α(=α+45°)傾いている直線偏光が前記検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)を検出し、
前記検出した透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を用いて、以下の式により前記検出対象のリタデーションRを求める、
【数7】

ことを特徴とする検出対象のパラメータ検出方法。
【請求項5】
複屈折特性を有する検出対象に直線偏光を入射し、前記検出対象及び検光子を透過した光の透過光強度に基づいて前記検出対象のパラメータを検出する、検出対象のパラメータ検出方法であって、
前記検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾き、
偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている直線偏光が前記検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)と、
偏光方向が入射面に対して角度α(=α+90°)傾いている直線偏光が前記検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)と、
偏光方向が入射面に対して角度α(=α+135°)傾いている直線偏光が前記検出対象に入射している時の透過光強度I(ω,α)を検出し、
前記検出した透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を用いて、以下の式により前記検出対象のリタデーションRを求める、
【数8】

ことを特徴とする検出対象のパラメータ検出方法。
【請求項6】
複屈折特性を有する検出対象に直線偏光を入射し、前記検出対象及び検光子を透過した光の透過光強度に基づいて前記検出対象のパラメータを検出する、検出対象のパラメータ検出方法であって、
偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている直線偏光が前記検出対象に入射し、前記検光子の透過軸方向が入射面に対して角度ω傾いている時の透過光強度I(ω,α)を、相異なる少なくとも3つ以上のωに対して検出し、
前記検出した少なくとも3つ以上の透過光強度I(ω,α)と以下の式を用いて変数A、B、Cを求め、
【数9】

求めた変数A、B、Cを用いて、以下の式により前記検出対象のリタデーションRを求める、
【数10】

ことを特徴とする検出対象のパラメータ検出方法。
【請求項7】
複屈折特性を有する検出対象に直線偏光を入射し、前記検出対象及び検光子を透過した光の透過光強度に基づいて前記検出対象のパラメータを検出する、検出対象のパラメータ検出方法であって、
偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている直線偏光が前記検出対象に入射し、
前記検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾いている時の透過光強度I(ω,α)と、
前記検光子の透過軸方向が入射面に対して角度ω(=ω+90°)傾いている時の透過光強度I(ω,α)と、
前記検光子の透過軸方向が入射面に対して角度ω(=ω+45°)傾いている時の透過光強度I(ω,α)を検出し、
前記検出した透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を用いて、以下の式により前記検出対象のリタデーションRを求める、
【数11】

ことを特徴とする検出対象のパラメータ検出方法。
【請求項8】
複屈折特性を有する検出対象に直線偏光を入射し、前記検出対象及び検光子を透過した光の透過光強度に基づいて前記検出対象のパラメータを検出する、検出対象のパラメータ検出方法であって、
偏光方向が入射面に対して任意の角度α傾いている直線偏光が前記検出対象に入射し、
前記検光子の透過軸方向が入射面に対して任意の角度ω傾いている時の透過光強度 I(ω,α)と、
前記検光子の透過軸方向が入射面に対して角度ω(=ω+90°)傾いている時の透過光強度I(ω,α)と、
前記検光子の透過軸方向が入射面に対して角度ω(=ω+135°)傾いている時の透過光強度I(ω,α)を検出し、
前記検出した透過光強度I(ω,α)、I(ω,α)、I(ω,α)を用いて、以下の式により前記検出対象のリタデーションRを求める、
【数12】

ことを特徴とする検出対象のパラメータ検出方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の検出対象のパラメータ検出方法であって、
検出した前記検出対象のリタデーションRに基づいて前記検出対象の厚さdを求める、
ことを特徴とする検出対象のパラメータ検出方法。
【請求項10】
光源と、
前記光源から照射された光の中から透過軸方向の直線偏光を透過し、当該透過軸方向が前記光源から発光された光の進行方向に平行な軸を回転軸として回転可能な偏光子と、
前記偏光子を透過した光が、基板面の法線に対して傾いた角度で入射するように配置された検出対象と、
前記検出対象を透過した光の中から、透過軸方向の直線偏光を透過し、当該透過軸方向が前記検出対象を透過した光の進行方向に平行な軸を回転軸として回転可能な検光子と、
前記検光子を透過した光の強度を透過光強度として検出する検出装置と、
前記検出装置で検出した透過光強度を入力する処理装置を備え、
前記処理装置は、請求項1〜9のいずれかに記載の方法を用いて前記検出対象のリタデーションRと厚さdの少なくとも一方を求める、
ことを特徴とする検出対象のパラメータ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−90820(P2006−90820A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276203(P2004−276203)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(596028756)名菱テクニカ株式会社 (4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】