検査方法及び検査システム
【課題】 記憶手段に記憶されたマスタ画像と該マスタ画像に基づいて作成された印刷物又は版とを比較し、印刷物又は版の良否を検査する検査方法及び検査システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 マスタ画像のデータを記憶手段3に記憶させ、被検査対象物を、読取装置2により光学的に読み取った被検査画像データを記憶手段6に記憶させ、前記読取装置2に特有の誤差因子を少なくとも含む補正要素と前記マスタ画像データとに基づき、少なくとも前記被検査対象物を前記読取装置2で読み取ったときのデータを想定した第1想定画像データを作成させ、前記第1想定画像データの画像と当該画像に対応する被検査画像データの画像とを比較して良否を判定する。
【解決手段】 マスタ画像のデータを記憶手段3に記憶させ、被検査対象物を、読取装置2により光学的に読み取った被検査画像データを記憶手段6に記憶させ、前記読取装置2に特有の誤差因子を少なくとも含む補正要素と前記マスタ画像データとに基づき、少なくとも前記被検査対象物を前記読取装置2で読み取ったときのデータを想定した第1想定画像データを作成させ、前記第1想定画像データの画像と当該画像に対応する被検査画像データの画像とを比較して良否を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、マスタ画像に基づいて作成された印刷物又は版の良否を判定するための検査方法及び検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物の欠陥を検出するときには、基準となる印刷物のマスタ画像のデータを記憶手段に記憶させておき、ラインセンサで検査対象の印刷物を撮影し、この撮影した印刷物のライン画像からエリア画像を作成し、印刷物画像のエリア画像の濃度レベルと、当該エリア画像に対応するマスタ画像のエリア画像の濃度レベルとを比較し、両画像の濃度レベルの差が許容値を超える部分があれば、当該部分を欠陥箇所として判定し、さらに当該欠陥箇所の形状及び面積を解析し、重欠陥もしくは軽欠陥であるかの最終判定をするシート状印刷物の欠陥検出方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、印刷方法としては、原稿のデジタルデータ化、コストの削減化、出稿から印刷までのスピード化等の影響によって、DTP(Desk Top Publishing)や、CTP(Computer To Plate)によって、作成されたマスタデータ(デジタルデータ)から版を直接作成し、この版から印刷物が印刷する方法が一般的になってきている。
【0004】
そこで、文字、画像、イラスト等の編集して所定の位置にレイアウトしたデジタルデータ(レイアウトデータ)を検査する装置として、修正前の旧バージョンのRIP展開後の画像データと、修正後の新バージョンのRIP展開後の画像データとを比較し、その差異点を表示するデジタル検版装置がある(例えば、特許文献2参照。)。このデジタル検版装置は、製版する前に、修正箇所が確実に修正されているかの確認ができるだけでなく、新たな不良箇所の存在等も確認することができるものである。
【特許文献1】特開平6−201611号公報
【特許文献2】特開平7−219202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、DTPによって作成されたマスタデータ(レイアウトデータ)から、版を直接作成するときには、誤字、文字化け(機種依存文字の文字化け(例えば、丸数字が正確に表示されない。)、文字の重複(例えば、「ABC」の文字の上に「EFG」の文字が被っている状態。)、フォントの相違等)等の不具合が発生していた。
前記特許文献2記載のデジタル検版装置では、修正前の画像データと修正後の画像データを比較しているが、マスタデータとの比較は行っておらず、RIP展開のときに上述の文字化け等の不具合を検出することはできないものであった。そのため、マスタデータの内容がRIP展開されているか否かは、人によって検査する必要性があった。
一方、前記特許文献1記載の欠陥検出方法では、既に印刷されている印刷物を基準として他の印刷物を検査しているため、最初に基準となる印刷物とマスタデータとの比較する必要性があった。
【0006】
さらに、上述の文字化け等の不具合以外にも、カラー印刷においては、紙の種類、紙の製造メーカ、インクの種類、インクの製造メーカ、印刷機、印圧、温度、湿度、印刷速度等の要因によって印刷色が異なることが知られており、印刷したときに適切な色となるようにすることも重要である。そこで、オフセット印刷に於ける色再現に関しては「オフセット枚葉印刷色標準"Japan Color 色再現印刷 2001"(社団法人 日本印刷学会)」に、色再現の条件が提示されている。
しかしながら、上記刊行物に提示されている条件でオフセット印刷を行ったとしても、マスタデータ(デジタルデータ)から印刷物を得るためには、マスタデータのRIP展開、C(Cyan)M(Magenta)Y(Yellow)K(Black)へのデータ変換、製版等の各工程で生じる不良要因によって、色の違い、色間ズレ等が発生している。しかし、これらの不良は各工程に於ける不良要因の相乗作用によって発生することもあり、工程毎の検査で検出することは困難であり、マスタデータと比較する必要性があった。
さらに、マスタデータ(デジタルデータ)で表現可能な色空間と、印刷処理で表現可能な色空間とは、完全に一致していない。したがって、単にマスタデータの色と正常な印刷物の色とを比較しても、双方には色の相違が発生するので、マスタデータと印刷物(被検査対象物)のデータとを比較すると良品も不良と判定する。
【0007】
また、上述のようにマスタデータと印刷物や版を比較するときは、印刷物や版を読取装置で読み取る必要性があるが、読取装置で読み取った画像は全て同じにはならずに読取装置の光源やセンサの素子によって読み取った画像の色や形状が異なるため、読み取った画像とマスタデータとを比較しても正確な検査とはならなかった。
【0008】
本願発明は係る問題に鑑み、記憶手段に記憶されたマスタ画像と該マスタ画像に基づいて作成された印刷物又は版とを比較し、印刷物又は版の良否を検査する検査方法及び検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明に係る検査方法は、マスタ画像に基づき、印刷物又は印刷物の版からなる被検査対象物の良否を判定する検査方法であって、前記マスタ画像のデータを記憶手段に記憶させ、前記被検査対象物を、読取装置により光学的に読み取り、読み取った被検査対象物の被検査画像データを記憶手段に記憶させ、前記読取装置に特有の誤差因子を少なくとも含む補正要素と前記マスタ画像データとに基づき、少なくとも前記被検査対象物を前記読取装置で読み取ったときのデータを想定した第1想定画像データを作成させ、前記第1想定画像データの画像と当該画像に対応する被検査画像データの画像とを比較して良否を判定する。
又は、前記マスタ画像のデータを記憶手段に記憶させ、前記被検査対象物を、読取装置により光学的に読み取り、読み取った被検査対象物の被検査画像データを記憶手段に記憶させ、前記読取装置に特有の誤差因子を少なくとも含む補正要素と前記被検査画像データとに基づき、少なくとも前記読取装置による誤差がない状態のデータを想定した第2想定画像データを作成させ、前記第2想定画像データの画像と当該画像に対応するマスタ画像とを比較して良否を判定する。
また、本願発明に係る検査システムは、マスタ画像に基づき、印刷物又は印刷物に版からなる被検査対象物の良否を判定する検査システムであって、前記被検査対象物を光学的に読み取るための読取装置を設け、前記マスタ画像のデータを記憶するマスタ画像データ記憶手段と、前記読取装置で読み取った被検査対象物の画像データを記憶する被検査画像データ記憶手段と、前記読取装置に特有の誤差因子のデータを少なくとも含む補正要素データを予め記憶する補正要素データ記憶手段と、前記補正要素データと前記マスタ画像データとに基づき、少なくとも被検査対象物を前記読取装置で読み取ったときのデータを想定した第1想定画像データを作成する、若しくは、前記補正要素データと前記被検査画像データとに基づき、少なくとも前記読取装置による誤差がない状態のデータを想定した第2想定画像データを作成する想定画像データ作成手段と、前記第1想定画像データの画像と当該画像に対応する被検査画像データの画像とを比較して良否を判定する、若しくは、前記第2想定画像データと当該画像に対応するマスタ画像とを比較して良否を判定する比較判定手段とを備えることを特徴とするものである。
したがって、マスタ画像と印刷物又は版の被検査対象物とを比較するときに、第1想定画像データ又は第2想定画像データを作成することにより、読取装置等の誤差因子によって生じる変化を想定し、それぞれの比較対象となる被検査画像データ又はマスタ画像データと比較することができるので、正確な比較検査を行うことができる。つまり、画像サイズの変化(例えば、縦、横の比率の変化)、歪み、読み取りの欠陥(例えば、ラインセンサで読み取ったときのラインの欠陥)、色誤差等の読取装置によって画像データに変化が生じても不良と判定することがない。かつ、補正要素以外の画像データの変化に対する良否判定ができる。
【0010】
前記被検査対象物は印刷物のときには、前記補正要素には前記読取装置に特有の誤差因子と前記印刷物の印刷の処理に特有の誤差因子が含まれ、前記第1想定画像データは、前記補正要素に基づき印刷処理したものを前記読取装置で読み取ったときのデータを想定し、前記第2想定画像データは、前記補正要素に基づき読取装置による誤差と印刷処理による誤差がないデータを想定するようにしてもよい。
【0011】
また、前記マスタ画像データ及び被検査画像データは、多階調の画像データであり、前記補正要素に基づいて多階調の第1想定画像データ若しくは多階調の第2想定画像データを作成させ、比較する双方の画像の濃度レベル差が許容値の範囲内であるか否かにより良否を判定してもよい。
【0012】
前記被検査対象物は多面付けなされており、前記第1想定画像データと前記被検査画像データとを比較するときには、当該被検査画像データの中から当該第1想定画像データの画像が含まれる位置を検出し、当該検出した位置の画像と前記第1想定画像データの画像とを比較する、又は、前記マスタ画像データと前記第2想定画像データとを比較するときには、当該第2想定画像データの中から当該マスタ画像データの画像が含まれる位置を検出し、当該検出した位置の画像とマスタ画像とを比較してもよい。
【0013】
また、本願発明に係る検査方法は、マスタ画像に基づき、印刷物の版からなる被検査対象物の良否を判定する被検査方法であって、前記マスタ画像のデータを記憶手段に記憶させ、前記単又は複数の版を、読取装置により光学的に読み取り、読み取った版の被検査画像データを記憶手段に記憶させ、前記読取装置に特有の誤差因子と前記版を用いて印刷したときに特有の誤差因子とを含む補正要素と、前記マスタ画像データとに基づき、前記版を用いて印刷したときの状態を想定した第3想定画像データと、前記マスタ画像データと前記補正要素とに基づき読取装置で読み取ったときの状態及び印刷したときの状態を想定した第4想定画像データとを作成させ、前記第3想定画像データの画像と当該画像に対応する第4想定画像データの画像とを比較して良否を判定する。
また、本願発明に係る検査システムは、マスタ画像に基づき、印刷物の版からなる被検査対象物の良否を判定する検査システムであって、前記単又は複数の版を光学的に読み取るための読取装置を設け、前記マスタ画像のデータを記憶するマスタ画像データ記憶手段と、前記読取装置で読み取った版の画像データを記憶する被検査画像データ記憶手段と、前記読取装置に特有の誤差因子のデータと、前記版を用いて印刷したときに特有の誤差因子のデータとを含む補正要素データを記憶する補正要素データ記憶手段と、前記マスタ画像データと前記補正要素データに基づき、前記版を用いて印刷したときの状態を想定した第3想定画像データを作成する第3想定画像データ作成手段と、前記マスタ画像データと前記補正要素データとに基づき、読取装置で読み取ったときの状態及び印刷したときの状態を想定した第4想定画像データを作成する第4想定画像データ作成手段と、前記第3想定画像データの画像と当該画像に対応する第4想定画像データの画像とを比較して良否を判定する比較判定手段とを備えることを特徴とするものである。
したがって、マスタ画像と版とを比較するときに、第3想定画像データと第4想定画像データを作成することにより、読取装置等の誤差因子によって生じる変化を想定し、それぞれの比較対象となる被検査画像データ又はマスタ画像データと比較することができるので、正確な比較検査を行うことができる。つまり、画像サイズの変化(例えば、縦、横の比率の変化)、歪み、読み取りの欠陥(例えば、ラインセンサで読み取ったときのラインの欠陥)、色誤差等の読取装置によって画像データに変化が生じても不良と判定することがない。かつ、補正要素以外の画像データの変化に対する良否判定ができる。また、複数の版から印刷された状態を想定し検査するので、版のズレによって発生する色間ズレの検査ができるようになる。
【0014】
また、前記マスタ画像データ及び被検査画像データは、多階調の画像データであり、前記補正要素に基づいて多階調の第3想定画像データと多階調の第4想定画像データとを作成させ、比較する双方の画像の濃度レベル差が許容値の範囲内であるか否かにより良否を判定してもよい。
【0015】
また、前記被検査対象物は多面付けされており、前記第3想定画像データの中から前記第4想定画像データが含まれる位置を検出し、当該検出した位置の画像と前記第4想定画像データの画像とを比較してもよい。
【0016】
また、前記2つの画像を比較して不良箇所を検出したときの前記被検査画像を表示部に表示してもよい。
【0017】
また、前記被検査対象物は、カラー印刷物又はカラー印刷物に用いられる複数の版であり、前記補正要素には、読取装置に特有のカラープロファイル、又は、印刷処理に特有のカラープロファイルのいずれか一方を少なくとも含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上にしてなる本願発明に係る検査方法及び検査システムは、実際に読取処理を行った被検査画像データと、マスタ画像データに基づき読取処理を行ったと想定した第1想定画像データとを比較しているので、読取処理を行った後のデータ同士を比較することができる。又は、実際に読取処理を行った被検査画像データに基づき読取処理によって発生した誤差がない状態を想定した第2想定画像データと、マスタ画像とを比較しているので、読取処理によって発生する誤差のないデータ同士を比較することができる。つまり、読取処理以外によって発生する差異を検出することができるので、例えば、文字化け、版キズ、インク飛び等の検査をすることができる。
【0019】
また、被検査対象物が印刷物のときには、実際に印刷処理を行った被検査画像データと、マスタ画像データに基づき印刷処理を行ったと想定した第1想定画像データとを比較しているので、印刷処理を行った後のデータ同士を比較することができる。又は、実際に印刷処理を行った被検査画像データに基づき印刷処理によって発生した誤差がない状態を想定した第2想定画像データと、マスタ画像とを比較しているので、印刷処理によって発生する誤差のないデータ同士を比較することができる。つまり、前記読取処理と印刷処理以外によって発生する差異を検出することができる。
【0020】
また、マスタ画像データと被検査画像データとが多階調データであるので、第1想定画像データ又は第2想定画像データと比較するときに、濃度レベルの差に基づいて良否判定を行うことができる。
【0021】
また、被検査対象物が多面付けされているときには、多面付けされている画像と、マスタ画像データ又は第1想定画像データとを比較するので、多面付けされている各画像の検査を行うことができる。
【0022】
また、複数の版によって印刷された後に読取処理された状態を想定した第3想定画像データと、マスタ画像データから印刷処理と読取処理とを行ったときを想定した第4想定画像データとを比較しているので、印刷の処理と読取処理の双方を行ったときの状態を想定して比較している。したがって、文字化け、版キズ、インク飛び等の検査だけでなく、版同士のズレがないかどうかを検査することができる。
【0023】
また、不良箇所を検出したときに、当該不良箇所を表示部に表示するので、校正作業が容易になる。
【0024】
また、読取装置に特有のカラープロファイル、又は、印刷処理に特有のカラープロファイルが補正要素に含まれるので、色に関する検査も行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本願発明に係る検査方法及び検査システムの実施例を、図面に基づいて説明する。
本願発明の検査方法及び検査システムは、印刷物または印刷物の版からなる被検査対象物を、読取装置で光学的に読み取ったデータと、DTP等によって作成されたデータとを比較し、版キズ、文字化け、インク飛び、色違い、色ズレ等の欠陥を検出するものである。
【0026】
以下に示す実施例に於ける、補正要素としては、少なくとも読取装置に特有の誤差因子(以下、読取誤差と称す。)が含まれる。
前記読取誤差は、読取装置の光源、センサの素子、センサからの出力信号に基づく画像処理等の読取装置によって決定されるものである。具体的には、画像サイズの変化(例えば、縦、横の比率の変化)、歪み、読み取りの欠陥(例えば、ラインセンサで読み取ったときのラインの欠陥)、色要素の変化、画像の解像度等である。
【0027】
また、補正要素としては、印刷物の印刷の処理に特有の誤差因子(以下、印刷誤差と称す。)も含まれる。
前記印刷誤差は、紙の種類、紙の製造メーカ、インクの種類、インクの製造メーカ、印刷機、印圧、温度、湿度、印刷速度等によって決定されるものである。これらによって、仕上がりの色、インクの定着状態(例えば、にじみ具合等)が変化する。
【実施例1】
【0028】
実施例1は、図1,2に示しているように、印刷物を読取装置で読み取ったときのデータと、マスタ画像データに印刷処理と読取処理を行ったときを想定した第1想定画像データとを比較して印刷物の良否判定を行うものである。
【0029】
図1は、実施例1における検査システムの概要を示したブロック図である。本願発明に係る検査システム1は、マスタ画像データ記憶手段3、補正要素データ記憶手段4、想定画像データ作成手段5、被検査画像データ記憶手段6、比較判定手段7、表示手段8とを備えている。また、印刷物の画像を読み取る読取装置2と、欠陥箇所が表示される表示部9とが設けられている。
【0030】
前記マスタ画像データ記憶手段3は、DTPによって作成されたマスタ画像データ(デジタルデータ)を記憶する手段であり、このデータが検査の基準となる。マスタ画像データとしては、1bitデータ、モノクロ多階調データ、カラーデータ等である。
【0031】
前記補正要素データ記憶手段4は、予め単又は複数の補正要素データを記憶する手段である。補正要素データとは、印刷処理によって発生する印刷誤差データ、読取処理によって発生する読取誤差データである。印刷誤差データとは、予め設定された印刷時の条件(例えば、印刷時に使用する紙の種類、紙の製造メーカ、インクの種類、インクの製造メーカ、印刷機、印圧等)で印刷したときに、印刷前の状態から印刷後の状態を導くことができるデータである。具体的な一例としては、印刷前のデータと印刷後のデータとを対応させたルックアップテーブル(Look Up Table(LUT))のデータである。なお、印刷がカラー印刷のときには、カラープロファイルと呼ばれるデータがこの印刷誤差データに含まれる。
また、読取誤差データとは前記読取装置2により印刷物を読み取ったときに、読み取り前の状態から読み取り後の状態を導くことができるデータである。このデータの具体的な一例としては、読み取り前の状態と読み取り後の状態を対応させたルックアップテーブルのデータである。
【0032】
前記想定画像データ作成手段5は、前記マスタ画像データ記憶手段3に記憶されているマスタ画像データと、前記補正要素データ記憶手段4に記憶されている補正要素データ(印刷誤差データと読取誤差データ)に基づき、マスタ画像データを予め設定された印刷条件で印刷した状態を想定した後に、前記読取装置2で読み取った状態を想定した第1想定画像データを作成する手段である。この想定画像データ作成手段5で作成されるデータは、前記被検査画像データ記憶手段6で記憶されるデータ形式(例えば、1bit画像(モノクロ)、多階調モノクロ画像(グレースケール)、多階調カラー画像等)と同じ形式のデータに変換される。
【0033】
前記被検査画像データ記憶手段6は、読取装置2によって読み取られた被検査対象物の画像データを記憶する手段である。前記読取装置2がデジタルカメラ等であれば、撮影した画像のデータを被検査画像データ記憶手段6に記憶し、読取装置2がスキャナ等のラインセンサであれば、該センサによって読み取られたライン画像を結合させて、エリア画像とした被検査画像データを記憶する。被検査画像データとしては、多階調の画像データで撮影した画像データである。被検査対象物がカラー印刷であれば多階調カラー画像とし、モノクロ印刷であれば多階調モノクロ画像若しくは1bit画像とする。
【0034】
前記比較判定手段7は、前記被検査画像データ記憶手段6に記憶されている被検査画像データと、前記想定画像データ作成手段5によって作成された第1想定画像データとを比較してその差異が予め設定された許容値の範囲内であるか否かを判定する手段である。前記第1想定画像データと被検査画像データとが多階調データのときには、双方の画像の濃度レベルの差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。
【0035】
前記表示手段8は、前記比較判定手段7で不良箇所を検出したときに図11に示すように、不良箇所の領域を含む被検査画像を表示する手段である。表示する形式としては、不良箇所31,…,31,32と判定した箇所を囲む不良領域表示枠30を表示してもよいし、不良箇所のみを点滅や塗りつぶして表示する。
【0036】
つぎに、図2を用いて印刷物の検査方法に関して説明する。
ここでは、カラーのマスタ画像データ10に基づいて、カラー印刷された印刷物11を検査するときについて述べる。印刷物11は、校正刷紙として印刷されたものであり、この検査によって、更なる校正の有無を判定する。
まず、印刷処理するときの印刷用紙の種類、印刷機、インクの種類等の印刷条件に起因する前記印刷誤差データと、印刷物を読取処理するときの読取装置2の光源、センサの素子等の読取装置に起因する前記読取誤差データとを入力(選択)しておく。印刷誤差データは、印刷条件の異なった複数のルックアップテーブルを予め作成しておき、この中から印刷条件が一致するルックアップテーブルのデータを選択する。同様に読取誤差データも、最適なルックアップテーブルを選択する。
さらに、マスタ画像データ10に基づいて印刷物(校正刷紙)11を作成する。印刷物11を作成するには、マスタ画像データ10をCTP工程で製版したり、フィルムに焼きつけて製版し、この版から印刷物(校正刷紙)11を作成する。
【0037】
そして、印刷物11を読取装置2で読み取り、読み取った画像の被検査画像データ13を記憶する。
また、マスタ画像データ10と前記印刷誤差データとから、印刷したときのデータを想定し、この想定したデータと読取誤差データとから印刷したものを読み取ったときを想定した第1想定画像データ12を作成する。
【0038】
双方の画像データが作成されると、この2つの画像データの濃度レベル差を検出し、この2つのデータの濃度レベル差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。
濃度レベルの比較方法としては、マスタ画像データのエリア画像と被検査画像データのエリア画像とを所定の大きさの領域に分割し、対応する分割画像の双方の濃度レベルを比較して欠陥部分を検出する方法がある。また、マスタ画像データと第1被検査画像データとの画像の解像度が同じときには、対応する画素毎に濃度レベルを比較して欠陥部分を検出する方法もある。さらに、その他の公知方法によって検出することもできる。
そして、許容値を超える箇所があれば図11に示すように、不良箇所を表示部9に表示させて、修正箇所を作業者に提示する。
【0039】
上述のように、本願発明の検査方法は、実際に印刷処理と読取処理を行った被検査画像データ13と、マスタ画像データ10に基づき印刷処理と読取処理を行った後を想定した第1想定画像データ12とを比較しているので、印刷処理や読取処理を行った後のデータ同士を比較している。したがって、読取処理と印刷処理によって発生する誤差以外の相違点を検出するので、形状(例えば、縦横の比率、模様の形状)や色の検査を正確に行うことができる。また、第1想定画像データ12は、印刷処理と読取処理による誤差を考慮にしているが、誤字、文字化け(機種依存文字の変化、文字の重複、フォントの相違等)、版キズ、インク飛び、文字欠け等の欠陥を検出することができる。
【実施例2】
【0040】
実施例2は、図3,4に示しているように、印刷物を読取装置で読み取ったときのデータに対して、読み取り前の状態を想定し、更に印刷処理の誤差がない状態のデータを想定し、この想定したデータとマスタ画像データとを比較して印刷物の良否判定を行うものである。
【0041】
図3は、実施例2及び後述する実施例4に於ける検査システムの概要を示したブロック図である。実施例2における検査システム1は、実施例1と同様に、マスタ画像データ記憶手段3、補正要素データ記憶手段4、想定画像データ作成手段5、被検査画像データ記憶手段6、比較判定手段7、表示手段8とを備えている。また、印刷物の画像を読み取る読取装置2と、欠陥箇所が表示される表示部9とが設けられている。
なお、前記読取装置2、マスタ画像データ記憶手段3、被検査画像データ記憶手段6、表示手段8、表示部9は、実施例1のそれぞれと同じなので説明を省略する。
【0042】
前記補正要素データ記憶手段4は、実施例1と同様に単又は複数の補正要素データを予め記憶する手段であり、印刷処理によって発生する印刷誤差データと、読取処理によって発生する読取誤差データとを記憶する。しかし、実施例2の印刷誤差データは、予め設定された印刷時の条件で印刷したときに、印刷後の状態から印刷前の状態のデータを導くことができるデータである。具体的な一例としては、印刷後のデータと印刷前のデータとを対応させたルックアップテーブルのデータであり、実施例1においてのデータ変換の逆の変換が可能なデータである。
同様に、読取誤差データとは、前記読取装置2により印刷物を読み取ったときに、読み取り後の状態から読み取り前の状態を導くことができるデータであり、実施例1においてのデータ変換の逆の変換が可能なデータである。
【0043】
前記想定画像データ作成手段5は、前記被検査画像データ記憶手段6に記憶されている被検査画像データと、前記補正要素データ記憶手段4に記憶されている補正要素データとに基づき、被検査画像データを読取装置で読取処理を行う前のデータを想定した後に、印刷処理の誤差のない状態を想定した第2想定画像データを作成する手段である。なお、その他の点については、実施例1と同様の機能を備えているので説明を省略する。
【0044】
前記比較判定手段7は、前記マスタ画像データ記憶手段3に記憶されているマスタ画像データと、前記想定画像データ作成手段5によって作成された第2想定画像データとを比較して、その差異が予め設定された許容値の範囲内であるか否かを判定する手段である。なお、その他に関しては、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0045】
つぎに、図4を用いて印刷物の検査方法に関して説明する。
ここでは、カラーのマスタ画像データ10に基づいて、カラー印刷された印刷物11を検査するときについて述べる。印刷物11は、校正刷紙として印刷されたものであり、この検査によって、更なる校正の有無を判定する。
前記マスタ画像データ10及び印刷物11に関しては、実施例1と同様であるので説明は省略する。また、印刷物11の印刷条件や読取装置2に基づいて、前記補正要素データ記憶手段4から、印刷誤差データと読取誤差データとを入力(選択)しておく。
【0046】
印刷物11を読取装置2で読み取り、被検査画像データ13として記憶する。そして、この被検査画像データ13と読取誤差データとから読取装置2によって読み取る前の印刷物データを想定し、この想定したデータと印刷誤差データとから印刷する前のデータを想定した第2想定画像データ14を作成する。そして、この第2想定画像データ14と前記マスタ画像データ10の濃度レベル差を検出し、レベル差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。この許容値の範囲を超えたときには、図11に示すように、結果箇所の画像を表示部に表示する。
【0047】
実施例1は、マスタ画像データ10から第1想定画像データ12を作成し、被検査画像データ13と比較して良否判定をする方法であったが、実施例2では、被検査画像データ13から第2想定画像データ14を作成し、マスタ画像データ10と比較して良否判定を行っている。実施例1及び実施例2の双方は、形状(例えば、縦横の比率、模様の形状)や色の検査を正確に行うことができる。また、誤字、文字化け(機種依存文字の変化、文字の重複、フォントの相違等)、版キズ、インク飛び、文字欠け等の欠陥を検出することができる。
【実施例3】
【0048】
実施例3は、図1,5に示しているように、版16を読取装置2で読み取ったときのデータと、マスタ画像データ15に読取処理を行ったときを想定したデータとを比較し、版16の良否判定を行うものである。
【0049】
図1は、実施例3及び前記実施例1に於ける検査システムの概要を示したブロック図である。実施例3に於ける検査システムは、実施例1と同様に、マスタ画像データ記憶手段3、補正要素データ記憶手段4、想定画像データ作成手段5、被検査画像データ記憶手段6、比較判定手段7、表示手段8とを備えている。また、版の画像を読み取る読取装置2と、欠陥箇所が表示される表示部9とが設けられている。
なお、前記読取装置2、マスタ画像データ記憶手段3、被検査画像データ記憶手段6、表示手段8、表示部9は、実施例1のそれぞれと同じなので説明を省略する。
【0050】
前記補正要素データ記憶手段4は、実施例1と同様に単又は複数の補正要素データを予め記憶する手段であり、読取処理によって発生する読取誤差データを記憶する。当該読取誤差データは、印刷物と版との相違はあるが、実施例1における読取誤差データとほぼ同じであり、読取装置2により版を読み取ったときに、読み取り前の状態から読み取り後の状態を導くことができるデータである。
【0051】
前記想定画像データ作成手段5は、前記マスタ画像データ記憶手段3に記憶されているマスタ画像データと、前記補正要素データ記憶手段4に記憶されている読取誤差データ(補正要素データ)に基づき、マスタ画像15を読取装置2で読み取った状態を想定した第1想定画像データ17を作成する手段である。なお、その他の点については、実施例1と同様の機能を備えているので説明を省略する。
【0052】
前記比較判定手段7は、前記被検査画像データ記憶手段6に記憶されている被検査画像データ18と、前記想定画像データ作成手段5によって作成された第1想定画像データ17とを比較して、その差異が予め設定された許容値の範囲内であるか否かを判定する手段である。なお、その他に関しては、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0053】
つぎに、図5を用いて印刷物の版の検査方法に関して説明する。
ここでは、マスタ画像データ10に基づいて、黒色のみで印刷された印刷物の版16を検査するときについて述べる。版16は、オフセット印刷で使用される版であり、この検査によって当該版の良否判定を行う。
前記マスタ画像データ10は、実施例1とほぼ同様であるので説明は省略する。また、読取装置2に基づいて、前記補正要素データ記憶手段4から読取誤差データを予め入力(選択)しておく。
【0054】
版16の検査を行うときには、当該版16を読取装置2で読み取り被検査画像データ18を記憶する。
また、マスタ画像データ15と前記読取誤差データとから、版16を読取装置で読み取ったときのデータを想定した第1想定画像データ17を作成する。
そして、この第1想定画像データ17と前記被検査画像データ18の濃度レベル差を検出し、レベル差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。この許容値の範囲を超えたときには、図11に示すように、結果箇所の画像を表示部9に表示する。
【0055】
上述のように、本願発明の検査方法は、実際に読取処理を行った被検査画像データ18と、マスタ画像データ15に基づき読取処理を行ったときを想定した第1想定画像データ17とを比較しているので、読取処理を行った後のデータ同士を比較している。したがって、形状(例えば、縦横の比率、模様の形状)の検査を正確に行うことができる。また、第1想定画像データ17は、読取処理による誤差を考慮にしているので、読取誤差以外の相違点を検出できる。つまり、誤字、文字化け(機種依存文字の変化、文字の重複、フォントの相違等)、版キズ、文字欠け等の欠陥を検出することができる。
【実施例4】
【0056】
実施例4は、図3,6に示しているように、版16を読取装置2で読み取ったときの被検査画像データ18から読取誤差のない状態を想定した第2想定画像データ19を想定し、この想定したデータと、マスタ画像データ15とを比較し、版の良否判定を行うものである。
【0057】
図3は、実施例4及び前記実施例2に於ける検査システムの概要を示したブロック図である。実施例4に於ける検査システムは、実施例2と同様に、マスタ画像データ記憶手段3、補正要素データ記憶手段4、想定画像データ作成手段5、被検査画像データ記憶手段6、比較判定手段7、表示手段8とを備えている。また、印刷物の画像を読み取る読取装置2と、欠陥箇所が表示される表示部9とが設けられている。
なお、前記読取装置2、マスタ画像データ記憶手段3、被検査画像データ記憶手段6、表示手段8、表示部9は、実施例2のそれぞれと同じなので説明を省略する。
【0058】
前記補正要素データ記憶手段4は、実施例2と同様に単又は複数の補正要素データを予め記憶する手段であり、読取処理によって発生する読取誤差データを記憶する。当該読取誤差データは、印刷物と版との相違はあるが、実施例2における読取誤差データとほぼ同じであり、前記読取装置2により印刷物を読み取ったときに、読み取り後の状態から読み取り前の状態を導くことができるデータであり、実施例3においてのデータ変換の逆の変換が可能なデータである。
【0059】
前記想定画像データ作成手段5は、前記被検査画像データ記憶手段6に記憶されている被検査画像データ18と、前記補正要素データ記憶手段4に記憶されている読取誤差データ(補正要素データ)に基づき、被検査画像データ18を読取装置で読取処理を行う前のデータを想定した第2想定画像データ19を作成する手段である。なお、その他の点については、実施例2と同様の機能を備えているので説明を省略する。
【0060】
前記比較判定手段7は、前記マスタ画像データ記憶手段3に記憶されているマスタ画像データ15と、前記想定画像データ作成手段5によって作成された第2想定画像データ19とを比較して、その差異が予め設定された許容値の範囲内であるか否かを判定する手段である。なお、その他に関しては、実施例2と同様であるので説明を省略する。
【0061】
つぎに、図6を用いて印刷物の版の検査方法に関して説明する。
ここでは、マスタ画像データ15に基づいて、黒色のみで印刷された印刷物の版16を検査するときについて述べる。版16は、オフセット印刷で使用される版であり、この検査によって当該版の良否判定を行う。
前記マスタ画像データ15は、実施例2とほぼ同様であるので説明は省略する。また、読取装置2に基づいて、前記補正要素データ記憶手段4から読取誤差データを予め入力(選択)しておく。
【0062】
版16の検査を行うときには、当該版16を読み取って、被検査画像データ18を記憶し、この被検査画像データ18と前記読取誤差データとから、読取装置2によって読み取る前のデータを想定した第2想定画像データ19を作成する。
そして、この第2想定画像データ19と前記マスタ画像データ15との濃度レベル差を検出し、レベル差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。この許容値の範囲を超えたときには、図11に示すように、結果箇所の画像を表示部に表示する。
【0063】
上述のように、本願発明の検査方法は、実際に読取処理を行った被検査画像データ18と、被検査画像データ18に基づき読取処理を行う前の状態を想定した第2想定画像データ17とを比較しているので、読取処理を行う前のデータ同士を比較している。したがって、形状(例えば、縦横の比率、模様の形状)の検査を正確に行うことができる。また、第1想定画像データ17は、印刷処理と読取処理による誤差を考慮にしているが、誤字、文字化け(機種依存文字の変化、文字の重複、フォントの相違等)、版キズ、文字欠け等の欠陥を検出することができる。
【実施例5】
【0064】
実施例5は、図7,8に示しているように、複数の版を読取装置2で読み取ったときの被検査画像データ26から各版を用いて印刷した状態を想定した第3想定画像データ27と、マスタ画像データに印刷処理と読取処理とを行ったときを想定した第4想定画像データ25とを比較して版24(24C,24M,24Y,24K)の良否判定を行うものである。
【0065】
図7は、実施例5に於ける検査システムの概要を示したブロック図である。実施例5に於ける検査システムは、マスタ画像データ記憶手段3、補正要素データ記憶手段4、被検査画像データ記憶手段6、比較判定手段7、表示手段8、第3想定画像データ作成手段20、第4想定画像データ作成手段21とを備えている。また、印刷物の画像を読み取る読取装置2と、欠陥箇所が表示される表示部9とが設けられている。
なお、前記読取装置2、マスタ画像データ記憶手段3、被検査画像データ記憶手段6、表示手段8、表示部9は、実施例1のそれぞれとほぼ同じなので説明を省略する。
【0066】
前記補正要素データ記憶手段4は、予め単又は複数の補正要素データを記憶する手段である。補正要素データとは、印刷処理によって発生する印刷誤差データ、読取処理によって発生する読取誤差データ、及び分版された各版を用いて1つの印刷物を印刷するときの印刷処理によって発生する合成印刷誤差データである。
印刷誤差データとは、予め設定された印刷時の条件(例えば、印刷時に使用する紙の種類、紙の製造メーカ、インクの種類、インクの製造メーカ、印刷機、印圧等)で印刷したときに、印刷前の状態から印刷後の状態を導くことができるデータである。具体的な一例としては、印刷前のデータと印刷後のデータとを対応させたルックアップテーブル(Look Up Table(LUT))のデータである。なお、印刷がカラー印刷のときには、カラープロファイルと呼ばれるデータがこの印刷誤差データに含まれる。
また、読取誤差データとは前記読取装置2により印刷物を読み取ったときに、読み取り前の状態から読み取り後の状態を導くことができるデータである。このデータの具体的な一例としては、読み取り前の状態と読み取り後の状態とを対応させたルックアップテーブルのデータである。
また、合成印刷誤差データとは、例えば、カラー印刷において図9に示すように、CMYKの4つの版24C,24M,24Y,24Kに分版し、この4つの版を使用してカラー印刷物28を印刷したときに、印刷前の4つの版の被検査画像データからそれらを合成してカラー印刷物28の状態を導くことができるデータである。このデータの具体的な一例としては、印刷前の各版の状態と各版で印刷した後の状態を対応させたルックアップテーブルのデータである。
【0067】
前記第3想定画像データ作成手段20は、前記マスタ画像データ記憶手段3に記憶されているマスタ画像23と、前記補正要素データ記憶手段4に記憶されている補正要素データ(印刷誤差データと読取誤差データ)に基づき、予め設定された印刷条件でマスタ画像23を印刷した状態を想定した後に、印刷されたものを前記読取装置2で読み取った状態を想定した第3想定画像データ27を作成する手段である。
【0068】
前記第4想定画像データ作成手段21は、前記被検査画像データ記憶手段6に記憶されている被検査画像データ26と、前記補正要素データ記憶手段4に記憶されている補正要素データ(合成印刷誤差データ)に基づき、印刷前に分版された版の状態からそれらを合成して印刷した状態を想定する手段である。
【0069】
前記比較判定手段22は、前記第3想定画像データ作成手段20で作成された第3想定画像データ27と、前記第4想定画像データ作成手段21によって作成された第4想定画像データ25とを比較してその差異が予め設定された許容値の範囲内であるか否かを判定する手段である。前記第3想定画像データと第4想定画像データとが多階調データのときには、双方の画像の濃度レベルの差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。
【0070】
つぎに、図8、9を用いて複数の版の検査方法に関して説明する。
ここでは、カラーのマスタ画像データ23に基づいて、CMYKの4つの版24C,24M,24Y,24Kに分版した各版を検査するときについて述べる。
まず、印刷処理するときの印刷用紙の種類、印刷機、インクの種類等の印刷条件に起因する前記印刷誤差データと、印刷物を読取処理するときの読取装置2の光源、センサの素子等の読取装置に起因する前記読取誤差データとを入力(選択)しておく。印刷誤差データは、印刷条件の異なった複数のルックアップテーブルを予め作成しておき、この中から印刷条件が一致するルックアップテーブルのデータを選択する。同様に読取誤差データ及び合成印刷誤差データも、最適なルックアップテーブルを選択する。
さらに、マスタ画像データ23に基づいて、CMYKの4つの版24を作成する。版24を作成するには、マスタ画像データ23をCTP工程で製版したり、フィルムに焼きつけて製版する。
【0071】
そして、版24C,24M,24Y,24Kを読取装置2で読み取った被検査画像データ26,…,26を各版毎に記憶する。各版毎に記憶した被検査画像データ26,…,26と、前記合成印刷誤差データとに基づいて、図9に示すような印刷物28を想定した第3想定画像データを作成する。つまり、図9のように、シアン版24Cには「I」と「J」、マゼンタ版24Mには「J」と「K」、イエロー版24Yには「I」と「K」、ブラック版24Kには「L」の文字(デザイン)が製版されている。そして、この4つの版から印刷物28の状態を想定する。つまり、「I」(29G)が緑色、「J」(29B)が青色、「K」が赤色、「L」が黒色に印刷される状態を想定する。
【0072】
また、マスタ画像データ23と前記印刷誤差データとから、印刷したときのデータを想定し、この想定したデータと読取誤差データとから印刷したものを読み取ったときのデータを想定した第4想定画像データ21を作成する。
【0073】
双方の画像データが作成されると、この2つの画像データの濃度レベル差を検出し、この2つのデータの濃度レベル差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。
濃度レベルの比較方法としては、マスタ画像データのエリア画像と被検査画像データのエリア画像とを所定の大きさの領域に分割し、対応する分割画像の双方の濃度レベルを比較して欠陥部分を検出する方法がある。また、マスタ画像データと第1被検査画像データとの画像の解像度が同じときには、対応する画素毎に濃度レベルを比較して欠陥部分を検出する方法もある。さらに、その他の公知の方法によって検出することもできる。
そして、許容値を超える箇所があれば図11に示すように、不良箇所を表示部に表示させて、修正箇所を作業者に提示する。
【0074】
上述のように、本願発明の検査方法は、複数の版24,…,24を読み取った被検査画像データ26からそれらを印刷処理したときを想定した第3想定画像データと、
マスタ画像データ23に基づき印刷処理と読取処理を行ったと想定した第4想定画像データ25とを比較しているので、印刷処理や読取処理を行った後のデータ同士を比較している。したがって、形状(例えば、縦横の比率、模様の形状)や色の検査を正確に行うことができる。また、第4想定画像データ25は、印刷処理と読取処理による誤差を考慮にしているので、印刷処理と読取処理以外の相違点を検出することができる。したがって、誤字、文字化け(機種依存文字の変化、文字の重複、フォントの相違等)、版キズ、インク飛び、文字欠け等の欠陥を検出することができる。さらに、複数の版から印刷された状態を想定しているので、色間ズレの検査を行うこともできる。
【0075】
なお、実施例1〜5では、被検査対象物の印刷物や版は、1面だけ配置されていたが、図10に示すように、印刷物や版が多面付けされていてもよい。図10では(a)で示しているマスタ画像Mが、被検査画像データFに6面F1,…,F6配置されている。このように多面付けされているときには、例えば、被検査画像データFの中から「○」を探し出し、探し出した位置から、各検査対象領域F1,…,F6の位置をそれぞれ計算する。さらに、当該F1,…,F6の中から他の模様の「□」を1つずつ探し、その位置を計算する。そして、この計算した位置に基づき、マスタ画像Mを被検査画像データF上で移動させて比較することで、多面付けの印刷物や版でも検査することができる。
【0076】
また、実施例1〜5で良否検査で不良箇所が検出されたときには、図11に示すように、不良箇所31,…,31,32と共に、この不良箇所を囲む不良領域表示枠30を表示させて不良箇所を提示する。なお、不良箇所31,…,31,32を塗りつぶしたり、点滅させて不良箇所を提示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1及び3の検査システムを説明したのブロック図である。
【図2】実施例1の検査方法の説明図である。
【図3】実施例2及び4の検査システムを説明したのブロック図である。
【図4】実施例2の検査方法の説明図である。
【図5】実施例3の検査方法の説明図である。
【図6】実施例4の検査方法の説明図である。
【図7】実施例5の検査システムを説明したブロック図である。
【図8】実施例5の検査方法の説明図である。
【図9】4つの版から印刷物を印刷した状態を説明した図である。
【図10】(a)はマスタ画像データを説明した図であり、(b)は多面付けされた被検査対象物のデータを説明した図である。
【図11】不良箇所を表示した状態を説明した図である。
【符号の説明】
【0078】
1 検査システム
2 読取装置
3 マスタ画像データ記憶手段
4 補正要素データ記憶手段
5 想定画像データ作成手段
6 被検査画像データ記憶手段
7 比較判定手段
8 表示手段
9 表示部
10 マスタ画像データ
11 印刷物
12 第1想定画像データ
13 被検査画像データ
14 第2想定画像データ
15 マスタ画像データ
16 版
17 第1想定画像データ
18 被検査画像データ
19 第2想定画像データ
20 第3想定画像データ作成手段
21 第4想定画像データ作成手段
22 比較判定手段
23 マスタ画像データ
24 版
24Y イエロー版
24C シアン版
24K ブラック版
24M マゼンタ版
25 第4想定画像データ
26 被検査画像データ
27 第3想定画像データ
28 カラー印刷物
30 不良領域表示枠
31,32 不良箇所
F 被検査画像データ
F1〜F6 各検査対象領域
M マスタ画像
【技術分野】
【0001】
本願発明は、マスタ画像に基づいて作成された印刷物又は版の良否を判定するための検査方法及び検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物の欠陥を検出するときには、基準となる印刷物のマスタ画像のデータを記憶手段に記憶させておき、ラインセンサで検査対象の印刷物を撮影し、この撮影した印刷物のライン画像からエリア画像を作成し、印刷物画像のエリア画像の濃度レベルと、当該エリア画像に対応するマスタ画像のエリア画像の濃度レベルとを比較し、両画像の濃度レベルの差が許容値を超える部分があれば、当該部分を欠陥箇所として判定し、さらに当該欠陥箇所の形状及び面積を解析し、重欠陥もしくは軽欠陥であるかの最終判定をするシート状印刷物の欠陥検出方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、印刷方法としては、原稿のデジタルデータ化、コストの削減化、出稿から印刷までのスピード化等の影響によって、DTP(Desk Top Publishing)や、CTP(Computer To Plate)によって、作成されたマスタデータ(デジタルデータ)から版を直接作成し、この版から印刷物が印刷する方法が一般的になってきている。
【0004】
そこで、文字、画像、イラスト等の編集して所定の位置にレイアウトしたデジタルデータ(レイアウトデータ)を検査する装置として、修正前の旧バージョンのRIP展開後の画像データと、修正後の新バージョンのRIP展開後の画像データとを比較し、その差異点を表示するデジタル検版装置がある(例えば、特許文献2参照。)。このデジタル検版装置は、製版する前に、修正箇所が確実に修正されているかの確認ができるだけでなく、新たな不良箇所の存在等も確認することができるものである。
【特許文献1】特開平6−201611号公報
【特許文献2】特開平7−219202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、DTPによって作成されたマスタデータ(レイアウトデータ)から、版を直接作成するときには、誤字、文字化け(機種依存文字の文字化け(例えば、丸数字が正確に表示されない。)、文字の重複(例えば、「ABC」の文字の上に「EFG」の文字が被っている状態。)、フォントの相違等)等の不具合が発生していた。
前記特許文献2記載のデジタル検版装置では、修正前の画像データと修正後の画像データを比較しているが、マスタデータとの比較は行っておらず、RIP展開のときに上述の文字化け等の不具合を検出することはできないものであった。そのため、マスタデータの内容がRIP展開されているか否かは、人によって検査する必要性があった。
一方、前記特許文献1記載の欠陥検出方法では、既に印刷されている印刷物を基準として他の印刷物を検査しているため、最初に基準となる印刷物とマスタデータとの比較する必要性があった。
【0006】
さらに、上述の文字化け等の不具合以外にも、カラー印刷においては、紙の種類、紙の製造メーカ、インクの種類、インクの製造メーカ、印刷機、印圧、温度、湿度、印刷速度等の要因によって印刷色が異なることが知られており、印刷したときに適切な色となるようにすることも重要である。そこで、オフセット印刷に於ける色再現に関しては「オフセット枚葉印刷色標準"Japan Color 色再現印刷 2001"(社団法人 日本印刷学会)」に、色再現の条件が提示されている。
しかしながら、上記刊行物に提示されている条件でオフセット印刷を行ったとしても、マスタデータ(デジタルデータ)から印刷物を得るためには、マスタデータのRIP展開、C(Cyan)M(Magenta)Y(Yellow)K(Black)へのデータ変換、製版等の各工程で生じる不良要因によって、色の違い、色間ズレ等が発生している。しかし、これらの不良は各工程に於ける不良要因の相乗作用によって発生することもあり、工程毎の検査で検出することは困難であり、マスタデータと比較する必要性があった。
さらに、マスタデータ(デジタルデータ)で表現可能な色空間と、印刷処理で表現可能な色空間とは、完全に一致していない。したがって、単にマスタデータの色と正常な印刷物の色とを比較しても、双方には色の相違が発生するので、マスタデータと印刷物(被検査対象物)のデータとを比較すると良品も不良と判定する。
【0007】
また、上述のようにマスタデータと印刷物や版を比較するときは、印刷物や版を読取装置で読み取る必要性があるが、読取装置で読み取った画像は全て同じにはならずに読取装置の光源やセンサの素子によって読み取った画像の色や形状が異なるため、読み取った画像とマスタデータとを比較しても正確な検査とはならなかった。
【0008】
本願発明は係る問題に鑑み、記憶手段に記憶されたマスタ画像と該マスタ画像に基づいて作成された印刷物又は版とを比較し、印刷物又は版の良否を検査する検査方法及び検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明に係る検査方法は、マスタ画像に基づき、印刷物又は印刷物の版からなる被検査対象物の良否を判定する検査方法であって、前記マスタ画像のデータを記憶手段に記憶させ、前記被検査対象物を、読取装置により光学的に読み取り、読み取った被検査対象物の被検査画像データを記憶手段に記憶させ、前記読取装置に特有の誤差因子を少なくとも含む補正要素と前記マスタ画像データとに基づき、少なくとも前記被検査対象物を前記読取装置で読み取ったときのデータを想定した第1想定画像データを作成させ、前記第1想定画像データの画像と当該画像に対応する被検査画像データの画像とを比較して良否を判定する。
又は、前記マスタ画像のデータを記憶手段に記憶させ、前記被検査対象物を、読取装置により光学的に読み取り、読み取った被検査対象物の被検査画像データを記憶手段に記憶させ、前記読取装置に特有の誤差因子を少なくとも含む補正要素と前記被検査画像データとに基づき、少なくとも前記読取装置による誤差がない状態のデータを想定した第2想定画像データを作成させ、前記第2想定画像データの画像と当該画像に対応するマスタ画像とを比較して良否を判定する。
また、本願発明に係る検査システムは、マスタ画像に基づき、印刷物又は印刷物に版からなる被検査対象物の良否を判定する検査システムであって、前記被検査対象物を光学的に読み取るための読取装置を設け、前記マスタ画像のデータを記憶するマスタ画像データ記憶手段と、前記読取装置で読み取った被検査対象物の画像データを記憶する被検査画像データ記憶手段と、前記読取装置に特有の誤差因子のデータを少なくとも含む補正要素データを予め記憶する補正要素データ記憶手段と、前記補正要素データと前記マスタ画像データとに基づき、少なくとも被検査対象物を前記読取装置で読み取ったときのデータを想定した第1想定画像データを作成する、若しくは、前記補正要素データと前記被検査画像データとに基づき、少なくとも前記読取装置による誤差がない状態のデータを想定した第2想定画像データを作成する想定画像データ作成手段と、前記第1想定画像データの画像と当該画像に対応する被検査画像データの画像とを比較して良否を判定する、若しくは、前記第2想定画像データと当該画像に対応するマスタ画像とを比較して良否を判定する比較判定手段とを備えることを特徴とするものである。
したがって、マスタ画像と印刷物又は版の被検査対象物とを比較するときに、第1想定画像データ又は第2想定画像データを作成することにより、読取装置等の誤差因子によって生じる変化を想定し、それぞれの比較対象となる被検査画像データ又はマスタ画像データと比較することができるので、正確な比較検査を行うことができる。つまり、画像サイズの変化(例えば、縦、横の比率の変化)、歪み、読み取りの欠陥(例えば、ラインセンサで読み取ったときのラインの欠陥)、色誤差等の読取装置によって画像データに変化が生じても不良と判定することがない。かつ、補正要素以外の画像データの変化に対する良否判定ができる。
【0010】
前記被検査対象物は印刷物のときには、前記補正要素には前記読取装置に特有の誤差因子と前記印刷物の印刷の処理に特有の誤差因子が含まれ、前記第1想定画像データは、前記補正要素に基づき印刷処理したものを前記読取装置で読み取ったときのデータを想定し、前記第2想定画像データは、前記補正要素に基づき読取装置による誤差と印刷処理による誤差がないデータを想定するようにしてもよい。
【0011】
また、前記マスタ画像データ及び被検査画像データは、多階調の画像データであり、前記補正要素に基づいて多階調の第1想定画像データ若しくは多階調の第2想定画像データを作成させ、比較する双方の画像の濃度レベル差が許容値の範囲内であるか否かにより良否を判定してもよい。
【0012】
前記被検査対象物は多面付けなされており、前記第1想定画像データと前記被検査画像データとを比較するときには、当該被検査画像データの中から当該第1想定画像データの画像が含まれる位置を検出し、当該検出した位置の画像と前記第1想定画像データの画像とを比較する、又は、前記マスタ画像データと前記第2想定画像データとを比較するときには、当該第2想定画像データの中から当該マスタ画像データの画像が含まれる位置を検出し、当該検出した位置の画像とマスタ画像とを比較してもよい。
【0013】
また、本願発明に係る検査方法は、マスタ画像に基づき、印刷物の版からなる被検査対象物の良否を判定する被検査方法であって、前記マスタ画像のデータを記憶手段に記憶させ、前記単又は複数の版を、読取装置により光学的に読み取り、読み取った版の被検査画像データを記憶手段に記憶させ、前記読取装置に特有の誤差因子と前記版を用いて印刷したときに特有の誤差因子とを含む補正要素と、前記マスタ画像データとに基づき、前記版を用いて印刷したときの状態を想定した第3想定画像データと、前記マスタ画像データと前記補正要素とに基づき読取装置で読み取ったときの状態及び印刷したときの状態を想定した第4想定画像データとを作成させ、前記第3想定画像データの画像と当該画像に対応する第4想定画像データの画像とを比較して良否を判定する。
また、本願発明に係る検査システムは、マスタ画像に基づき、印刷物の版からなる被検査対象物の良否を判定する検査システムであって、前記単又は複数の版を光学的に読み取るための読取装置を設け、前記マスタ画像のデータを記憶するマスタ画像データ記憶手段と、前記読取装置で読み取った版の画像データを記憶する被検査画像データ記憶手段と、前記読取装置に特有の誤差因子のデータと、前記版を用いて印刷したときに特有の誤差因子のデータとを含む補正要素データを記憶する補正要素データ記憶手段と、前記マスタ画像データと前記補正要素データに基づき、前記版を用いて印刷したときの状態を想定した第3想定画像データを作成する第3想定画像データ作成手段と、前記マスタ画像データと前記補正要素データとに基づき、読取装置で読み取ったときの状態及び印刷したときの状態を想定した第4想定画像データを作成する第4想定画像データ作成手段と、前記第3想定画像データの画像と当該画像に対応する第4想定画像データの画像とを比較して良否を判定する比較判定手段とを備えることを特徴とするものである。
したがって、マスタ画像と版とを比較するときに、第3想定画像データと第4想定画像データを作成することにより、読取装置等の誤差因子によって生じる変化を想定し、それぞれの比較対象となる被検査画像データ又はマスタ画像データと比較することができるので、正確な比較検査を行うことができる。つまり、画像サイズの変化(例えば、縦、横の比率の変化)、歪み、読み取りの欠陥(例えば、ラインセンサで読み取ったときのラインの欠陥)、色誤差等の読取装置によって画像データに変化が生じても不良と判定することがない。かつ、補正要素以外の画像データの変化に対する良否判定ができる。また、複数の版から印刷された状態を想定し検査するので、版のズレによって発生する色間ズレの検査ができるようになる。
【0014】
また、前記マスタ画像データ及び被検査画像データは、多階調の画像データであり、前記補正要素に基づいて多階調の第3想定画像データと多階調の第4想定画像データとを作成させ、比較する双方の画像の濃度レベル差が許容値の範囲内であるか否かにより良否を判定してもよい。
【0015】
また、前記被検査対象物は多面付けされており、前記第3想定画像データの中から前記第4想定画像データが含まれる位置を検出し、当該検出した位置の画像と前記第4想定画像データの画像とを比較してもよい。
【0016】
また、前記2つの画像を比較して不良箇所を検出したときの前記被検査画像を表示部に表示してもよい。
【0017】
また、前記被検査対象物は、カラー印刷物又はカラー印刷物に用いられる複数の版であり、前記補正要素には、読取装置に特有のカラープロファイル、又は、印刷処理に特有のカラープロファイルのいずれか一方を少なくとも含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上にしてなる本願発明に係る検査方法及び検査システムは、実際に読取処理を行った被検査画像データと、マスタ画像データに基づき読取処理を行ったと想定した第1想定画像データとを比較しているので、読取処理を行った後のデータ同士を比較することができる。又は、実際に読取処理を行った被検査画像データに基づき読取処理によって発生した誤差がない状態を想定した第2想定画像データと、マスタ画像とを比較しているので、読取処理によって発生する誤差のないデータ同士を比較することができる。つまり、読取処理以外によって発生する差異を検出することができるので、例えば、文字化け、版キズ、インク飛び等の検査をすることができる。
【0019】
また、被検査対象物が印刷物のときには、実際に印刷処理を行った被検査画像データと、マスタ画像データに基づき印刷処理を行ったと想定した第1想定画像データとを比較しているので、印刷処理を行った後のデータ同士を比較することができる。又は、実際に印刷処理を行った被検査画像データに基づき印刷処理によって発生した誤差がない状態を想定した第2想定画像データと、マスタ画像とを比較しているので、印刷処理によって発生する誤差のないデータ同士を比較することができる。つまり、前記読取処理と印刷処理以外によって発生する差異を検出することができる。
【0020】
また、マスタ画像データと被検査画像データとが多階調データであるので、第1想定画像データ又は第2想定画像データと比較するときに、濃度レベルの差に基づいて良否判定を行うことができる。
【0021】
また、被検査対象物が多面付けされているときには、多面付けされている画像と、マスタ画像データ又は第1想定画像データとを比較するので、多面付けされている各画像の検査を行うことができる。
【0022】
また、複数の版によって印刷された後に読取処理された状態を想定した第3想定画像データと、マスタ画像データから印刷処理と読取処理とを行ったときを想定した第4想定画像データとを比較しているので、印刷の処理と読取処理の双方を行ったときの状態を想定して比較している。したがって、文字化け、版キズ、インク飛び等の検査だけでなく、版同士のズレがないかどうかを検査することができる。
【0023】
また、不良箇所を検出したときに、当該不良箇所を表示部に表示するので、校正作業が容易になる。
【0024】
また、読取装置に特有のカラープロファイル、又は、印刷処理に特有のカラープロファイルが補正要素に含まれるので、色に関する検査も行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本願発明に係る検査方法及び検査システムの実施例を、図面に基づいて説明する。
本願発明の検査方法及び検査システムは、印刷物または印刷物の版からなる被検査対象物を、読取装置で光学的に読み取ったデータと、DTP等によって作成されたデータとを比較し、版キズ、文字化け、インク飛び、色違い、色ズレ等の欠陥を検出するものである。
【0026】
以下に示す実施例に於ける、補正要素としては、少なくとも読取装置に特有の誤差因子(以下、読取誤差と称す。)が含まれる。
前記読取誤差は、読取装置の光源、センサの素子、センサからの出力信号に基づく画像処理等の読取装置によって決定されるものである。具体的には、画像サイズの変化(例えば、縦、横の比率の変化)、歪み、読み取りの欠陥(例えば、ラインセンサで読み取ったときのラインの欠陥)、色要素の変化、画像の解像度等である。
【0027】
また、補正要素としては、印刷物の印刷の処理に特有の誤差因子(以下、印刷誤差と称す。)も含まれる。
前記印刷誤差は、紙の種類、紙の製造メーカ、インクの種類、インクの製造メーカ、印刷機、印圧、温度、湿度、印刷速度等によって決定されるものである。これらによって、仕上がりの色、インクの定着状態(例えば、にじみ具合等)が変化する。
【実施例1】
【0028】
実施例1は、図1,2に示しているように、印刷物を読取装置で読み取ったときのデータと、マスタ画像データに印刷処理と読取処理を行ったときを想定した第1想定画像データとを比較して印刷物の良否判定を行うものである。
【0029】
図1は、実施例1における検査システムの概要を示したブロック図である。本願発明に係る検査システム1は、マスタ画像データ記憶手段3、補正要素データ記憶手段4、想定画像データ作成手段5、被検査画像データ記憶手段6、比較判定手段7、表示手段8とを備えている。また、印刷物の画像を読み取る読取装置2と、欠陥箇所が表示される表示部9とが設けられている。
【0030】
前記マスタ画像データ記憶手段3は、DTPによって作成されたマスタ画像データ(デジタルデータ)を記憶する手段であり、このデータが検査の基準となる。マスタ画像データとしては、1bitデータ、モノクロ多階調データ、カラーデータ等である。
【0031】
前記補正要素データ記憶手段4は、予め単又は複数の補正要素データを記憶する手段である。補正要素データとは、印刷処理によって発生する印刷誤差データ、読取処理によって発生する読取誤差データである。印刷誤差データとは、予め設定された印刷時の条件(例えば、印刷時に使用する紙の種類、紙の製造メーカ、インクの種類、インクの製造メーカ、印刷機、印圧等)で印刷したときに、印刷前の状態から印刷後の状態を導くことができるデータである。具体的な一例としては、印刷前のデータと印刷後のデータとを対応させたルックアップテーブル(Look Up Table(LUT))のデータである。なお、印刷がカラー印刷のときには、カラープロファイルと呼ばれるデータがこの印刷誤差データに含まれる。
また、読取誤差データとは前記読取装置2により印刷物を読み取ったときに、読み取り前の状態から読み取り後の状態を導くことができるデータである。このデータの具体的な一例としては、読み取り前の状態と読み取り後の状態を対応させたルックアップテーブルのデータである。
【0032】
前記想定画像データ作成手段5は、前記マスタ画像データ記憶手段3に記憶されているマスタ画像データと、前記補正要素データ記憶手段4に記憶されている補正要素データ(印刷誤差データと読取誤差データ)に基づき、マスタ画像データを予め設定された印刷条件で印刷した状態を想定した後に、前記読取装置2で読み取った状態を想定した第1想定画像データを作成する手段である。この想定画像データ作成手段5で作成されるデータは、前記被検査画像データ記憶手段6で記憶されるデータ形式(例えば、1bit画像(モノクロ)、多階調モノクロ画像(グレースケール)、多階調カラー画像等)と同じ形式のデータに変換される。
【0033】
前記被検査画像データ記憶手段6は、読取装置2によって読み取られた被検査対象物の画像データを記憶する手段である。前記読取装置2がデジタルカメラ等であれば、撮影した画像のデータを被検査画像データ記憶手段6に記憶し、読取装置2がスキャナ等のラインセンサであれば、該センサによって読み取られたライン画像を結合させて、エリア画像とした被検査画像データを記憶する。被検査画像データとしては、多階調の画像データで撮影した画像データである。被検査対象物がカラー印刷であれば多階調カラー画像とし、モノクロ印刷であれば多階調モノクロ画像若しくは1bit画像とする。
【0034】
前記比較判定手段7は、前記被検査画像データ記憶手段6に記憶されている被検査画像データと、前記想定画像データ作成手段5によって作成された第1想定画像データとを比較してその差異が予め設定された許容値の範囲内であるか否かを判定する手段である。前記第1想定画像データと被検査画像データとが多階調データのときには、双方の画像の濃度レベルの差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。
【0035】
前記表示手段8は、前記比較判定手段7で不良箇所を検出したときに図11に示すように、不良箇所の領域を含む被検査画像を表示する手段である。表示する形式としては、不良箇所31,…,31,32と判定した箇所を囲む不良領域表示枠30を表示してもよいし、不良箇所のみを点滅や塗りつぶして表示する。
【0036】
つぎに、図2を用いて印刷物の検査方法に関して説明する。
ここでは、カラーのマスタ画像データ10に基づいて、カラー印刷された印刷物11を検査するときについて述べる。印刷物11は、校正刷紙として印刷されたものであり、この検査によって、更なる校正の有無を判定する。
まず、印刷処理するときの印刷用紙の種類、印刷機、インクの種類等の印刷条件に起因する前記印刷誤差データと、印刷物を読取処理するときの読取装置2の光源、センサの素子等の読取装置に起因する前記読取誤差データとを入力(選択)しておく。印刷誤差データは、印刷条件の異なった複数のルックアップテーブルを予め作成しておき、この中から印刷条件が一致するルックアップテーブルのデータを選択する。同様に読取誤差データも、最適なルックアップテーブルを選択する。
さらに、マスタ画像データ10に基づいて印刷物(校正刷紙)11を作成する。印刷物11を作成するには、マスタ画像データ10をCTP工程で製版したり、フィルムに焼きつけて製版し、この版から印刷物(校正刷紙)11を作成する。
【0037】
そして、印刷物11を読取装置2で読み取り、読み取った画像の被検査画像データ13を記憶する。
また、マスタ画像データ10と前記印刷誤差データとから、印刷したときのデータを想定し、この想定したデータと読取誤差データとから印刷したものを読み取ったときを想定した第1想定画像データ12を作成する。
【0038】
双方の画像データが作成されると、この2つの画像データの濃度レベル差を検出し、この2つのデータの濃度レベル差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。
濃度レベルの比較方法としては、マスタ画像データのエリア画像と被検査画像データのエリア画像とを所定の大きさの領域に分割し、対応する分割画像の双方の濃度レベルを比較して欠陥部分を検出する方法がある。また、マスタ画像データと第1被検査画像データとの画像の解像度が同じときには、対応する画素毎に濃度レベルを比較して欠陥部分を検出する方法もある。さらに、その他の公知方法によって検出することもできる。
そして、許容値を超える箇所があれば図11に示すように、不良箇所を表示部9に表示させて、修正箇所を作業者に提示する。
【0039】
上述のように、本願発明の検査方法は、実際に印刷処理と読取処理を行った被検査画像データ13と、マスタ画像データ10に基づき印刷処理と読取処理を行った後を想定した第1想定画像データ12とを比較しているので、印刷処理や読取処理を行った後のデータ同士を比較している。したがって、読取処理と印刷処理によって発生する誤差以外の相違点を検出するので、形状(例えば、縦横の比率、模様の形状)や色の検査を正確に行うことができる。また、第1想定画像データ12は、印刷処理と読取処理による誤差を考慮にしているが、誤字、文字化け(機種依存文字の変化、文字の重複、フォントの相違等)、版キズ、インク飛び、文字欠け等の欠陥を検出することができる。
【実施例2】
【0040】
実施例2は、図3,4に示しているように、印刷物を読取装置で読み取ったときのデータに対して、読み取り前の状態を想定し、更に印刷処理の誤差がない状態のデータを想定し、この想定したデータとマスタ画像データとを比較して印刷物の良否判定を行うものである。
【0041】
図3は、実施例2及び後述する実施例4に於ける検査システムの概要を示したブロック図である。実施例2における検査システム1は、実施例1と同様に、マスタ画像データ記憶手段3、補正要素データ記憶手段4、想定画像データ作成手段5、被検査画像データ記憶手段6、比較判定手段7、表示手段8とを備えている。また、印刷物の画像を読み取る読取装置2と、欠陥箇所が表示される表示部9とが設けられている。
なお、前記読取装置2、マスタ画像データ記憶手段3、被検査画像データ記憶手段6、表示手段8、表示部9は、実施例1のそれぞれと同じなので説明を省略する。
【0042】
前記補正要素データ記憶手段4は、実施例1と同様に単又は複数の補正要素データを予め記憶する手段であり、印刷処理によって発生する印刷誤差データと、読取処理によって発生する読取誤差データとを記憶する。しかし、実施例2の印刷誤差データは、予め設定された印刷時の条件で印刷したときに、印刷後の状態から印刷前の状態のデータを導くことができるデータである。具体的な一例としては、印刷後のデータと印刷前のデータとを対応させたルックアップテーブルのデータであり、実施例1においてのデータ変換の逆の変換が可能なデータである。
同様に、読取誤差データとは、前記読取装置2により印刷物を読み取ったときに、読み取り後の状態から読み取り前の状態を導くことができるデータであり、実施例1においてのデータ変換の逆の変換が可能なデータである。
【0043】
前記想定画像データ作成手段5は、前記被検査画像データ記憶手段6に記憶されている被検査画像データと、前記補正要素データ記憶手段4に記憶されている補正要素データとに基づき、被検査画像データを読取装置で読取処理を行う前のデータを想定した後に、印刷処理の誤差のない状態を想定した第2想定画像データを作成する手段である。なお、その他の点については、実施例1と同様の機能を備えているので説明を省略する。
【0044】
前記比較判定手段7は、前記マスタ画像データ記憶手段3に記憶されているマスタ画像データと、前記想定画像データ作成手段5によって作成された第2想定画像データとを比較して、その差異が予め設定された許容値の範囲内であるか否かを判定する手段である。なお、その他に関しては、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0045】
つぎに、図4を用いて印刷物の検査方法に関して説明する。
ここでは、カラーのマスタ画像データ10に基づいて、カラー印刷された印刷物11を検査するときについて述べる。印刷物11は、校正刷紙として印刷されたものであり、この検査によって、更なる校正の有無を判定する。
前記マスタ画像データ10及び印刷物11に関しては、実施例1と同様であるので説明は省略する。また、印刷物11の印刷条件や読取装置2に基づいて、前記補正要素データ記憶手段4から、印刷誤差データと読取誤差データとを入力(選択)しておく。
【0046】
印刷物11を読取装置2で読み取り、被検査画像データ13として記憶する。そして、この被検査画像データ13と読取誤差データとから読取装置2によって読み取る前の印刷物データを想定し、この想定したデータと印刷誤差データとから印刷する前のデータを想定した第2想定画像データ14を作成する。そして、この第2想定画像データ14と前記マスタ画像データ10の濃度レベル差を検出し、レベル差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。この許容値の範囲を超えたときには、図11に示すように、結果箇所の画像を表示部に表示する。
【0047】
実施例1は、マスタ画像データ10から第1想定画像データ12を作成し、被検査画像データ13と比較して良否判定をする方法であったが、実施例2では、被検査画像データ13から第2想定画像データ14を作成し、マスタ画像データ10と比較して良否判定を行っている。実施例1及び実施例2の双方は、形状(例えば、縦横の比率、模様の形状)や色の検査を正確に行うことができる。また、誤字、文字化け(機種依存文字の変化、文字の重複、フォントの相違等)、版キズ、インク飛び、文字欠け等の欠陥を検出することができる。
【実施例3】
【0048】
実施例3は、図1,5に示しているように、版16を読取装置2で読み取ったときのデータと、マスタ画像データ15に読取処理を行ったときを想定したデータとを比較し、版16の良否判定を行うものである。
【0049】
図1は、実施例3及び前記実施例1に於ける検査システムの概要を示したブロック図である。実施例3に於ける検査システムは、実施例1と同様に、マスタ画像データ記憶手段3、補正要素データ記憶手段4、想定画像データ作成手段5、被検査画像データ記憶手段6、比較判定手段7、表示手段8とを備えている。また、版の画像を読み取る読取装置2と、欠陥箇所が表示される表示部9とが設けられている。
なお、前記読取装置2、マスタ画像データ記憶手段3、被検査画像データ記憶手段6、表示手段8、表示部9は、実施例1のそれぞれと同じなので説明を省略する。
【0050】
前記補正要素データ記憶手段4は、実施例1と同様に単又は複数の補正要素データを予め記憶する手段であり、読取処理によって発生する読取誤差データを記憶する。当該読取誤差データは、印刷物と版との相違はあるが、実施例1における読取誤差データとほぼ同じであり、読取装置2により版を読み取ったときに、読み取り前の状態から読み取り後の状態を導くことができるデータである。
【0051】
前記想定画像データ作成手段5は、前記マスタ画像データ記憶手段3に記憶されているマスタ画像データと、前記補正要素データ記憶手段4に記憶されている読取誤差データ(補正要素データ)に基づき、マスタ画像15を読取装置2で読み取った状態を想定した第1想定画像データ17を作成する手段である。なお、その他の点については、実施例1と同様の機能を備えているので説明を省略する。
【0052】
前記比較判定手段7は、前記被検査画像データ記憶手段6に記憶されている被検査画像データ18と、前記想定画像データ作成手段5によって作成された第1想定画像データ17とを比較して、その差異が予め設定された許容値の範囲内であるか否かを判定する手段である。なお、その他に関しては、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0053】
つぎに、図5を用いて印刷物の版の検査方法に関して説明する。
ここでは、マスタ画像データ10に基づいて、黒色のみで印刷された印刷物の版16を検査するときについて述べる。版16は、オフセット印刷で使用される版であり、この検査によって当該版の良否判定を行う。
前記マスタ画像データ10は、実施例1とほぼ同様であるので説明は省略する。また、読取装置2に基づいて、前記補正要素データ記憶手段4から読取誤差データを予め入力(選択)しておく。
【0054】
版16の検査を行うときには、当該版16を読取装置2で読み取り被検査画像データ18を記憶する。
また、マスタ画像データ15と前記読取誤差データとから、版16を読取装置で読み取ったときのデータを想定した第1想定画像データ17を作成する。
そして、この第1想定画像データ17と前記被検査画像データ18の濃度レベル差を検出し、レベル差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。この許容値の範囲を超えたときには、図11に示すように、結果箇所の画像を表示部9に表示する。
【0055】
上述のように、本願発明の検査方法は、実際に読取処理を行った被検査画像データ18と、マスタ画像データ15に基づき読取処理を行ったときを想定した第1想定画像データ17とを比較しているので、読取処理を行った後のデータ同士を比較している。したがって、形状(例えば、縦横の比率、模様の形状)の検査を正確に行うことができる。また、第1想定画像データ17は、読取処理による誤差を考慮にしているので、読取誤差以外の相違点を検出できる。つまり、誤字、文字化け(機種依存文字の変化、文字の重複、フォントの相違等)、版キズ、文字欠け等の欠陥を検出することができる。
【実施例4】
【0056】
実施例4は、図3,6に示しているように、版16を読取装置2で読み取ったときの被検査画像データ18から読取誤差のない状態を想定した第2想定画像データ19を想定し、この想定したデータと、マスタ画像データ15とを比較し、版の良否判定を行うものである。
【0057】
図3は、実施例4及び前記実施例2に於ける検査システムの概要を示したブロック図である。実施例4に於ける検査システムは、実施例2と同様に、マスタ画像データ記憶手段3、補正要素データ記憶手段4、想定画像データ作成手段5、被検査画像データ記憶手段6、比較判定手段7、表示手段8とを備えている。また、印刷物の画像を読み取る読取装置2と、欠陥箇所が表示される表示部9とが設けられている。
なお、前記読取装置2、マスタ画像データ記憶手段3、被検査画像データ記憶手段6、表示手段8、表示部9は、実施例2のそれぞれと同じなので説明を省略する。
【0058】
前記補正要素データ記憶手段4は、実施例2と同様に単又は複数の補正要素データを予め記憶する手段であり、読取処理によって発生する読取誤差データを記憶する。当該読取誤差データは、印刷物と版との相違はあるが、実施例2における読取誤差データとほぼ同じであり、前記読取装置2により印刷物を読み取ったときに、読み取り後の状態から読み取り前の状態を導くことができるデータであり、実施例3においてのデータ変換の逆の変換が可能なデータである。
【0059】
前記想定画像データ作成手段5は、前記被検査画像データ記憶手段6に記憶されている被検査画像データ18と、前記補正要素データ記憶手段4に記憶されている読取誤差データ(補正要素データ)に基づき、被検査画像データ18を読取装置で読取処理を行う前のデータを想定した第2想定画像データ19を作成する手段である。なお、その他の点については、実施例2と同様の機能を備えているので説明を省略する。
【0060】
前記比較判定手段7は、前記マスタ画像データ記憶手段3に記憶されているマスタ画像データ15と、前記想定画像データ作成手段5によって作成された第2想定画像データ19とを比較して、その差異が予め設定された許容値の範囲内であるか否かを判定する手段である。なお、その他に関しては、実施例2と同様であるので説明を省略する。
【0061】
つぎに、図6を用いて印刷物の版の検査方法に関して説明する。
ここでは、マスタ画像データ15に基づいて、黒色のみで印刷された印刷物の版16を検査するときについて述べる。版16は、オフセット印刷で使用される版であり、この検査によって当該版の良否判定を行う。
前記マスタ画像データ15は、実施例2とほぼ同様であるので説明は省略する。また、読取装置2に基づいて、前記補正要素データ記憶手段4から読取誤差データを予め入力(選択)しておく。
【0062】
版16の検査を行うときには、当該版16を読み取って、被検査画像データ18を記憶し、この被検査画像データ18と前記読取誤差データとから、読取装置2によって読み取る前のデータを想定した第2想定画像データ19を作成する。
そして、この第2想定画像データ19と前記マスタ画像データ15との濃度レベル差を検出し、レベル差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。この許容値の範囲を超えたときには、図11に示すように、結果箇所の画像を表示部に表示する。
【0063】
上述のように、本願発明の検査方法は、実際に読取処理を行った被検査画像データ18と、被検査画像データ18に基づき読取処理を行う前の状態を想定した第2想定画像データ17とを比較しているので、読取処理を行う前のデータ同士を比較している。したがって、形状(例えば、縦横の比率、模様の形状)の検査を正確に行うことができる。また、第1想定画像データ17は、印刷処理と読取処理による誤差を考慮にしているが、誤字、文字化け(機種依存文字の変化、文字の重複、フォントの相違等)、版キズ、文字欠け等の欠陥を検出することができる。
【実施例5】
【0064】
実施例5は、図7,8に示しているように、複数の版を読取装置2で読み取ったときの被検査画像データ26から各版を用いて印刷した状態を想定した第3想定画像データ27と、マスタ画像データに印刷処理と読取処理とを行ったときを想定した第4想定画像データ25とを比較して版24(24C,24M,24Y,24K)の良否判定を行うものである。
【0065】
図7は、実施例5に於ける検査システムの概要を示したブロック図である。実施例5に於ける検査システムは、マスタ画像データ記憶手段3、補正要素データ記憶手段4、被検査画像データ記憶手段6、比較判定手段7、表示手段8、第3想定画像データ作成手段20、第4想定画像データ作成手段21とを備えている。また、印刷物の画像を読み取る読取装置2と、欠陥箇所が表示される表示部9とが設けられている。
なお、前記読取装置2、マスタ画像データ記憶手段3、被検査画像データ記憶手段6、表示手段8、表示部9は、実施例1のそれぞれとほぼ同じなので説明を省略する。
【0066】
前記補正要素データ記憶手段4は、予め単又は複数の補正要素データを記憶する手段である。補正要素データとは、印刷処理によって発生する印刷誤差データ、読取処理によって発生する読取誤差データ、及び分版された各版を用いて1つの印刷物を印刷するときの印刷処理によって発生する合成印刷誤差データである。
印刷誤差データとは、予め設定された印刷時の条件(例えば、印刷時に使用する紙の種類、紙の製造メーカ、インクの種類、インクの製造メーカ、印刷機、印圧等)で印刷したときに、印刷前の状態から印刷後の状態を導くことができるデータである。具体的な一例としては、印刷前のデータと印刷後のデータとを対応させたルックアップテーブル(Look Up Table(LUT))のデータである。なお、印刷がカラー印刷のときには、カラープロファイルと呼ばれるデータがこの印刷誤差データに含まれる。
また、読取誤差データとは前記読取装置2により印刷物を読み取ったときに、読み取り前の状態から読み取り後の状態を導くことができるデータである。このデータの具体的な一例としては、読み取り前の状態と読み取り後の状態とを対応させたルックアップテーブルのデータである。
また、合成印刷誤差データとは、例えば、カラー印刷において図9に示すように、CMYKの4つの版24C,24M,24Y,24Kに分版し、この4つの版を使用してカラー印刷物28を印刷したときに、印刷前の4つの版の被検査画像データからそれらを合成してカラー印刷物28の状態を導くことができるデータである。このデータの具体的な一例としては、印刷前の各版の状態と各版で印刷した後の状態を対応させたルックアップテーブルのデータである。
【0067】
前記第3想定画像データ作成手段20は、前記マスタ画像データ記憶手段3に記憶されているマスタ画像23と、前記補正要素データ記憶手段4に記憶されている補正要素データ(印刷誤差データと読取誤差データ)に基づき、予め設定された印刷条件でマスタ画像23を印刷した状態を想定した後に、印刷されたものを前記読取装置2で読み取った状態を想定した第3想定画像データ27を作成する手段である。
【0068】
前記第4想定画像データ作成手段21は、前記被検査画像データ記憶手段6に記憶されている被検査画像データ26と、前記補正要素データ記憶手段4に記憶されている補正要素データ(合成印刷誤差データ)に基づき、印刷前に分版された版の状態からそれらを合成して印刷した状態を想定する手段である。
【0069】
前記比較判定手段22は、前記第3想定画像データ作成手段20で作成された第3想定画像データ27と、前記第4想定画像データ作成手段21によって作成された第4想定画像データ25とを比較してその差異が予め設定された許容値の範囲内であるか否かを判定する手段である。前記第3想定画像データと第4想定画像データとが多階調データのときには、双方の画像の濃度レベルの差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。
【0070】
つぎに、図8、9を用いて複数の版の検査方法に関して説明する。
ここでは、カラーのマスタ画像データ23に基づいて、CMYKの4つの版24C,24M,24Y,24Kに分版した各版を検査するときについて述べる。
まず、印刷処理するときの印刷用紙の種類、印刷機、インクの種類等の印刷条件に起因する前記印刷誤差データと、印刷物を読取処理するときの読取装置2の光源、センサの素子等の読取装置に起因する前記読取誤差データとを入力(選択)しておく。印刷誤差データは、印刷条件の異なった複数のルックアップテーブルを予め作成しておき、この中から印刷条件が一致するルックアップテーブルのデータを選択する。同様に読取誤差データ及び合成印刷誤差データも、最適なルックアップテーブルを選択する。
さらに、マスタ画像データ23に基づいて、CMYKの4つの版24を作成する。版24を作成するには、マスタ画像データ23をCTP工程で製版したり、フィルムに焼きつけて製版する。
【0071】
そして、版24C,24M,24Y,24Kを読取装置2で読み取った被検査画像データ26,…,26を各版毎に記憶する。各版毎に記憶した被検査画像データ26,…,26と、前記合成印刷誤差データとに基づいて、図9に示すような印刷物28を想定した第3想定画像データを作成する。つまり、図9のように、シアン版24Cには「I」と「J」、マゼンタ版24Mには「J」と「K」、イエロー版24Yには「I」と「K」、ブラック版24Kには「L」の文字(デザイン)が製版されている。そして、この4つの版から印刷物28の状態を想定する。つまり、「I」(29G)が緑色、「J」(29B)が青色、「K」が赤色、「L」が黒色に印刷される状態を想定する。
【0072】
また、マスタ画像データ23と前記印刷誤差データとから、印刷したときのデータを想定し、この想定したデータと読取誤差データとから印刷したものを読み取ったときのデータを想定した第4想定画像データ21を作成する。
【0073】
双方の画像データが作成されると、この2つの画像データの濃度レベル差を検出し、この2つのデータの濃度レベル差が許容値の範囲内であるか否かを判定する。
濃度レベルの比較方法としては、マスタ画像データのエリア画像と被検査画像データのエリア画像とを所定の大きさの領域に分割し、対応する分割画像の双方の濃度レベルを比較して欠陥部分を検出する方法がある。また、マスタ画像データと第1被検査画像データとの画像の解像度が同じときには、対応する画素毎に濃度レベルを比較して欠陥部分を検出する方法もある。さらに、その他の公知の方法によって検出することもできる。
そして、許容値を超える箇所があれば図11に示すように、不良箇所を表示部に表示させて、修正箇所を作業者に提示する。
【0074】
上述のように、本願発明の検査方法は、複数の版24,…,24を読み取った被検査画像データ26からそれらを印刷処理したときを想定した第3想定画像データと、
マスタ画像データ23に基づき印刷処理と読取処理を行ったと想定した第4想定画像データ25とを比較しているので、印刷処理や読取処理を行った後のデータ同士を比較している。したがって、形状(例えば、縦横の比率、模様の形状)や色の検査を正確に行うことができる。また、第4想定画像データ25は、印刷処理と読取処理による誤差を考慮にしているので、印刷処理と読取処理以外の相違点を検出することができる。したがって、誤字、文字化け(機種依存文字の変化、文字の重複、フォントの相違等)、版キズ、インク飛び、文字欠け等の欠陥を検出することができる。さらに、複数の版から印刷された状態を想定しているので、色間ズレの検査を行うこともできる。
【0075】
なお、実施例1〜5では、被検査対象物の印刷物や版は、1面だけ配置されていたが、図10に示すように、印刷物や版が多面付けされていてもよい。図10では(a)で示しているマスタ画像Mが、被検査画像データFに6面F1,…,F6配置されている。このように多面付けされているときには、例えば、被検査画像データFの中から「○」を探し出し、探し出した位置から、各検査対象領域F1,…,F6の位置をそれぞれ計算する。さらに、当該F1,…,F6の中から他の模様の「□」を1つずつ探し、その位置を計算する。そして、この計算した位置に基づき、マスタ画像Mを被検査画像データF上で移動させて比較することで、多面付けの印刷物や版でも検査することができる。
【0076】
また、実施例1〜5で良否検査で不良箇所が検出されたときには、図11に示すように、不良箇所31,…,31,32と共に、この不良箇所を囲む不良領域表示枠30を表示させて不良箇所を提示する。なお、不良箇所31,…,31,32を塗りつぶしたり、点滅させて不良箇所を提示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1及び3の検査システムを説明したのブロック図である。
【図2】実施例1の検査方法の説明図である。
【図3】実施例2及び4の検査システムを説明したのブロック図である。
【図4】実施例2の検査方法の説明図である。
【図5】実施例3の検査方法の説明図である。
【図6】実施例4の検査方法の説明図である。
【図7】実施例5の検査システムを説明したブロック図である。
【図8】実施例5の検査方法の説明図である。
【図9】4つの版から印刷物を印刷した状態を説明した図である。
【図10】(a)はマスタ画像データを説明した図であり、(b)は多面付けされた被検査対象物のデータを説明した図である。
【図11】不良箇所を表示した状態を説明した図である。
【符号の説明】
【0078】
1 検査システム
2 読取装置
3 マスタ画像データ記憶手段
4 補正要素データ記憶手段
5 想定画像データ作成手段
6 被検査画像データ記憶手段
7 比較判定手段
8 表示手段
9 表示部
10 マスタ画像データ
11 印刷物
12 第1想定画像データ
13 被検査画像データ
14 第2想定画像データ
15 マスタ画像データ
16 版
17 第1想定画像データ
18 被検査画像データ
19 第2想定画像データ
20 第3想定画像データ作成手段
21 第4想定画像データ作成手段
22 比較判定手段
23 マスタ画像データ
24 版
24Y イエロー版
24C シアン版
24K ブラック版
24M マゼンタ版
25 第4想定画像データ
26 被検査画像データ
27 第3想定画像データ
28 カラー印刷物
30 不良領域表示枠
31,32 不良箇所
F 被検査画像データ
F1〜F6 各検査対象領域
M マスタ画像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ画像に基づき、印刷物又は印刷物の版からなる被検査対象物の良否を判定する検査方法であって、
前記マスタ画像のデータを記憶手段に記憶させ、
前記被検査対象物を、読取装置により光学的に読み取り、読み取った被検査対象物の被検査画像データを記憶手段に記憶させ、
前記読取装置に特有の誤差因子を少なくとも含む補正要素と前記マスタ画像データとに基づき、少なくとも前記被検査対象物を前記読取装置で読み取ったときのデータを想定した第1想定画像データを作成させる、若しくは、前記読取装置に特有の誤差因子を少なくとも含む補正要素と前記被検査画像データとに基づき、少なくとも前記読取装置による誤差がない状態のデータを想定した第2想定画像データを作成させ、
前記第1想定画像データの画像と当該画像に対応する被検査画像データの画像とを比較して良否を判定する、若しくは、前記第2想定画像データの画像と当該画像に対応するマスタ画像とを比較して良否を判定することを特徴とする検査方法。
【請求項2】
前記被検査対象物は印刷物であり、
前記補正要素には、前記読取装置に特有の誤差因子と前記印刷物の印刷の処理に特有の誤差因子が含まれ、
前記第1想定画像データは、前記補正要素に基づき印刷処理したものを前記読取装置で読み取ったときのデータを想定してなり、
前記第2想定画像データは、前記補正要素に基づき読取装置による誤差と印刷処理による誤差がないデータを想定してなる請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
前記マスタ画像データ及び被検査画像データは、多階調の画像データであり、
前記補正要素に基づいて多階調の第1想定画像データ若しくは多階調の第2想定画像データを作成させ、
比較する双方の画像の濃度レベル差が許容値の範囲内であるか否かにより良否を判定する請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記被検査対象物は多面付けなされており、
前記第1想定画像データと前記被検査画像データとを比較するときには、当該被検査画像データの中から当該第1想定画像データの画像が含まれる位置を検出し、当該検出した位置の画像と前記第1想定画像データの画像とを比較してなる、
又は、前記マスタ画像データと前記第2想定画像データとを比較するときには、当該第2想定画像データの中から当該マスタ画像データの画像が含まれる位置を検出し、当該検出した位置の画像とマスタ画像とを比較してなる請求項1〜3のいずれかに記載の検査方法。
【請求項5】
マスタ画像に基づき、印刷物の版からなる被検査対象物の良否を判定する被検査方法であって、
前記マスタ画像のデータを記憶手段に記憶させ、
前記単又は複数の版を、読取装置により光学的に読み取り、読み取った版の被検査画像データを記憶手段に記憶させ、
前記読取装置に特有の誤差因子と前記版を用いて印刷したときに特有の誤差因子とを含む補正要素と、前記マスタ画像データとに基づき、前記版を用いて印刷したときの状態を想定した第3想定画像データと、前記マスタ画像データと前記補正要素とに基づき読取装置で読み取ったときの状態及び印刷したときの状態を想定した第4想定画像データとを作成させ、
前記第3想定画像データの画像と当該画像に対応する第4想定画像データの画像とを比較して良否を判定することを特徴とする検査方法。
【請求項6】
前記マスタ画像データ及び被検査画像データは、多階調の画像データであり、
前記補正要素に基づいて多階調の第3想定画像データと多階調の第4想定画像データとを作成させ、
比較する双方の画像の濃度レベル差が許容値の範囲内であるか否かにより良否を判定する請求項5記載の検査方法。
【請求項7】
前記被検査対象物は多面付けされており、
前記第3想定画像データの中から前記第4想定画像データが含まれる位置を検出し、当該検出した位置の画像と前記第4想定画像データの画像とを比較してなる請求項5又は6に記載の検査方法。
【請求項8】
前記2つの画像を比較して不良箇所を検出したときの前記被検査画像を表示部に表示してなる請求項1〜7に記載の検査方法。
【請求項9】
前記被検査対象物は、カラー印刷物又はカラー印刷物に用いられる複数の版であり、
前記補正要素には、読取装置に特有のカラープロファイル、又は、印刷処理に特有のカラープロファイルのいずれか一方を少なくとも含んでなる請求項1〜8に記載の検査方法。
【請求項10】
マスタ画像に基づき、印刷物又は印刷物に版からなる被検査対象物の良否を判定する検査システムであって、
前記被検査対象物を光学的に読み取るための読取装置を設け、
前記マスタ画像のデータを記憶するマスタ画像データ記憶手段と、
前記読取装置で読み取った被検査対象物の画像データを記憶する被検査画像データ記憶手段と、
前記読取装置に特有の誤差因子のデータを少なくとも含む補正要素データを予め記憶する補正要素データ記憶手段と、
前記補正要素データと前記マスタ画像データとに基づき、少なくとも被検査対象物を前記読取装置で読み取ったときのデータを想定した第1想定画像データを作成する、若しくは、前記補正要素データと前記被検査画像データとに基づき、少なくとも前記読取装置による誤差がない状態のデータを想定した第2想定画像データを作成する想定画像データ作成手段と、
前記第1想定画像データの画像と当該画像に対応する被検査画像データの画像とを比較して良否を判定する、若しくは、前記第2想定画像データと当該画像に対応するマスタ画像とを比較して良否を判定する比較判定手段とを備えることを特徴とする検査システム。
【請求項11】
マスタ画像に基づき、印刷物の版からなる被検査対象物の良否を判定する検査システムであって、
前記単又は複数の版を光学的に読み取るための読取装置を設け、
前記マスタ画像のデータを記憶するマスタ画像データ記憶手段と、
前記読取装置で読み取った版の画像データを記憶する被検査画像データ記憶手段と、
前記読取装置に特有の誤差因子のデータと、前記版を用いて印刷したときに特有の誤差因子のデータとを含む補正要素データを記憶する補正要素データ記憶手段と、
前記マスタ画像データと前記補正要素データに基づき、前記版を用いて印刷したときの状態を想定した第3想定画像データを作成する第3想定画像データ作成手段と、
前記マスタ画像データと前記補正要素データとに基づき、読取装置で読み取ったときの状態及び印刷したときの状態を想定した第4想定画像データを作成する第4想定画像データ作成手段と、
前記第3想定画像データの画像と当該画像に対応する第4想定画像データの画像とを比較して良否を判定する比較判定手段とを備えることを特徴とする検査システム。
【請求項1】
マスタ画像に基づき、印刷物又は印刷物の版からなる被検査対象物の良否を判定する検査方法であって、
前記マスタ画像のデータを記憶手段に記憶させ、
前記被検査対象物を、読取装置により光学的に読み取り、読み取った被検査対象物の被検査画像データを記憶手段に記憶させ、
前記読取装置に特有の誤差因子を少なくとも含む補正要素と前記マスタ画像データとに基づき、少なくとも前記被検査対象物を前記読取装置で読み取ったときのデータを想定した第1想定画像データを作成させる、若しくは、前記読取装置に特有の誤差因子を少なくとも含む補正要素と前記被検査画像データとに基づき、少なくとも前記読取装置による誤差がない状態のデータを想定した第2想定画像データを作成させ、
前記第1想定画像データの画像と当該画像に対応する被検査画像データの画像とを比較して良否を判定する、若しくは、前記第2想定画像データの画像と当該画像に対応するマスタ画像とを比較して良否を判定することを特徴とする検査方法。
【請求項2】
前記被検査対象物は印刷物であり、
前記補正要素には、前記読取装置に特有の誤差因子と前記印刷物の印刷の処理に特有の誤差因子が含まれ、
前記第1想定画像データは、前記補正要素に基づき印刷処理したものを前記読取装置で読み取ったときのデータを想定してなり、
前記第2想定画像データは、前記補正要素に基づき読取装置による誤差と印刷処理による誤差がないデータを想定してなる請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
前記マスタ画像データ及び被検査画像データは、多階調の画像データであり、
前記補正要素に基づいて多階調の第1想定画像データ若しくは多階調の第2想定画像データを作成させ、
比較する双方の画像の濃度レベル差が許容値の範囲内であるか否かにより良否を判定する請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記被検査対象物は多面付けなされており、
前記第1想定画像データと前記被検査画像データとを比較するときには、当該被検査画像データの中から当該第1想定画像データの画像が含まれる位置を検出し、当該検出した位置の画像と前記第1想定画像データの画像とを比較してなる、
又は、前記マスタ画像データと前記第2想定画像データとを比較するときには、当該第2想定画像データの中から当該マスタ画像データの画像が含まれる位置を検出し、当該検出した位置の画像とマスタ画像とを比較してなる請求項1〜3のいずれかに記載の検査方法。
【請求項5】
マスタ画像に基づき、印刷物の版からなる被検査対象物の良否を判定する被検査方法であって、
前記マスタ画像のデータを記憶手段に記憶させ、
前記単又は複数の版を、読取装置により光学的に読み取り、読み取った版の被検査画像データを記憶手段に記憶させ、
前記読取装置に特有の誤差因子と前記版を用いて印刷したときに特有の誤差因子とを含む補正要素と、前記マスタ画像データとに基づき、前記版を用いて印刷したときの状態を想定した第3想定画像データと、前記マスタ画像データと前記補正要素とに基づき読取装置で読み取ったときの状態及び印刷したときの状態を想定した第4想定画像データとを作成させ、
前記第3想定画像データの画像と当該画像に対応する第4想定画像データの画像とを比較して良否を判定することを特徴とする検査方法。
【請求項6】
前記マスタ画像データ及び被検査画像データは、多階調の画像データであり、
前記補正要素に基づいて多階調の第3想定画像データと多階調の第4想定画像データとを作成させ、
比較する双方の画像の濃度レベル差が許容値の範囲内であるか否かにより良否を判定する請求項5記載の検査方法。
【請求項7】
前記被検査対象物は多面付けされており、
前記第3想定画像データの中から前記第4想定画像データが含まれる位置を検出し、当該検出した位置の画像と前記第4想定画像データの画像とを比較してなる請求項5又は6に記載の検査方法。
【請求項8】
前記2つの画像を比較して不良箇所を検出したときの前記被検査画像を表示部に表示してなる請求項1〜7に記載の検査方法。
【請求項9】
前記被検査対象物は、カラー印刷物又はカラー印刷物に用いられる複数の版であり、
前記補正要素には、読取装置に特有のカラープロファイル、又は、印刷処理に特有のカラープロファイルのいずれか一方を少なくとも含んでなる請求項1〜8に記載の検査方法。
【請求項10】
マスタ画像に基づき、印刷物又は印刷物に版からなる被検査対象物の良否を判定する検査システムであって、
前記被検査対象物を光学的に読み取るための読取装置を設け、
前記マスタ画像のデータを記憶するマスタ画像データ記憶手段と、
前記読取装置で読み取った被検査対象物の画像データを記憶する被検査画像データ記憶手段と、
前記読取装置に特有の誤差因子のデータを少なくとも含む補正要素データを予め記憶する補正要素データ記憶手段と、
前記補正要素データと前記マスタ画像データとに基づき、少なくとも被検査対象物を前記読取装置で読み取ったときのデータを想定した第1想定画像データを作成する、若しくは、前記補正要素データと前記被検査画像データとに基づき、少なくとも前記読取装置による誤差がない状態のデータを想定した第2想定画像データを作成する想定画像データ作成手段と、
前記第1想定画像データの画像と当該画像に対応する被検査画像データの画像とを比較して良否を判定する、若しくは、前記第2想定画像データと当該画像に対応するマスタ画像とを比較して良否を判定する比較判定手段とを備えることを特徴とする検査システム。
【請求項11】
マスタ画像に基づき、印刷物の版からなる被検査対象物の良否を判定する検査システムであって、
前記単又は複数の版を光学的に読み取るための読取装置を設け、
前記マスタ画像のデータを記憶するマスタ画像データ記憶手段と、
前記読取装置で読み取った版の画像データを記憶する被検査画像データ記憶手段と、
前記読取装置に特有の誤差因子のデータと、前記版を用いて印刷したときに特有の誤差因子のデータとを含む補正要素データを記憶する補正要素データ記憶手段と、
前記マスタ画像データと前記補正要素データに基づき、前記版を用いて印刷したときの状態を想定した第3想定画像データを作成する第3想定画像データ作成手段と、
前記マスタ画像データと前記補正要素データとに基づき、読取装置で読み取ったときの状態及び印刷したときの状態を想定した第4想定画像データを作成する第4想定画像データ作成手段と、
前記第3想定画像データの画像と当該画像に対応する第4想定画像データの画像とを比較して良否を判定する比較判定手段とを備えることを特徴とする検査システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−33247(P2007−33247A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217280(P2005−217280)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000109200)ダックエンジニアリング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000109200)ダックエンジニアリング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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