極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム
【課題】高効率で安定してEUV光を発生させることができるEUV光源装置用ドライバレーザシステムを安価に提供する。
【解決手段】このドライバレーザシステムは、MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザシステム3であって、単一のレーザ発振器301においてレーザ光を発生し、該レーザ光のパルス幅が所定の値まで短くなるようにレーザ光のパルス幅を制御して、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系304(1)及び304(2)並びに305(1)及び305(2)において該レーザ光を増幅するレーザシステム3と、複数のレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するようにレーザシステム3の動作タイミングを制御するレーザシステム制御装置4とを含む。
【解決手段】このドライバレーザシステムは、MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザシステム3であって、単一のレーザ発振器301においてレーザ光を発生し、該レーザ光のパルス幅が所定の値まで短くなるようにレーザ光のパルス幅を制御して、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系304(1)及び304(2)並びに305(1)及び305(2)において該レーザ光を増幅するレーザシステム3と、複数のレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するようにレーザシステム3の動作タイミングを制御するレーザシステム制御装置4とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外(EUV:extreme ultraviolet)光源装置において、ターゲットを照射するレーザ光を発生するレーザシステムと、その制御装置とによって構成される極端紫外光源装置用ドライバレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスの微細化に伴って光リソグラフィも微細化が急速に進展しており、次世代においては、100〜70nmの微細加工、更には50nm以下の微細加工が要求されるようになる。例えば、50nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光源と縮小投影反射光学系(reduced projection reflective optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光源としては、レーザビームをターゲットに照射することによって生成するプラズマを用いたLPP(laser produced plasma)光源と、放電によって生成するプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)光源と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)光源との3種類がある。これらの内でも、LPP光源は、プラズマ密度をかなり大きくできるので黒体輻射に近い極めて高い輝度が得られ、ターゲット物質を選択することにより必要な波長帯のみの発光が可能であり、ほぼ等方的な角度分布を持つ点光源であるので光源の周囲に電極等の構造物がなく、2πsteradianという極めて大きな捕集立体角の確保が可能であること等の利点から、数十ワット以上のパワーが要求されるEUVリソグラフィ用の光源として有力であると考えられている。
【0004】
従来より、LPP型のEUV光源においては、プラズマを生成するための励起用レーザとして、YAGレーザの多段増幅システムが有力候補として研究されてきた。一般に、EUV光源のスペックとしては、出力115W以上、繰り返し周波数7kHz〜10kHz以上が要求されるが、YAGレーザによるレーザシステムは、比較的取扱が容易であると共に、高い繰り返し周波数を得やすいからである。しかしながら、YAGレーザによるレーザシステムは高価であるため、産業用としてはあまり適切ではない。そのため、励起用レーザとして、比較的安価なガスレーザを用いることが検討されている。そのため、ガスレーザを用いて高い繰り返し周波数を実現できる増幅システムが望まれる。
【0005】
関連する技術として、特許文献1には、整形された放射線源が所望の周波数及び所望の形状で放射線を放射する整形プラズマ放電システムが開示されている。この特許文献1には、図12や図13に示されるように、レーザ増幅システムを含むプラズマ放電システムの形態も開示されている。しかしながら、システムを動作させる際における複数の増幅段の駆動タイミングやそれらの制御方法については示されていない。
【0006】
特許文献2には、高輝度軟X線を、デブリフリー且つすぐれたX線変換効率で作り出すために、バブルガスジェット装置で高真空チャンバに希ガスを噴出することによって希ガスクラスターを発生させ、高出力レーザ装置で希ガスクラスターに超短パルス高出力レーザを集光して照射し、軟X線を発生するレーザ励起X線発生装置が開示されている。この特許文献2においては、増幅器として、TEA(transversely exited atmospheric)ガスレーザの一種であるエキシマレーザが用いる例が開示されている。しかしながら、その際におけるエキシマレーザの制御方法については示されていない。また、EUV光源に要求される高繰り返し周波数に対する対応策についても示されていない。
【0007】
特許文献3には、EUV光発生のために用いられる高ピーク出力レーザ装置であって、光パルスを供給するための少なくとも3つのパルスレーザと、ターゲットのほぼ同じ位置のスポット上に、ほぼ同じタイミングでそれらのパルスを導く手段とを具備するレーザ装置等が開示されている。しかしながら、特許文献3には、レーザ増幅システムについての言及はなく、レーザ光の増幅や制御のための具体的な方法等についても示されていない。
【0008】
特許文献4には、X線を生成するために用いられるレーザシステムとして、塩化キセノンエキシマ増幅器と、塩化キセノンエキシマ前置増幅器と、塩化キセノンエキシマ前置増幅器及び塩化キセノンエキシマ増幅器に合わせてピコ秒シードパルスを生成する手段と、100×10−6cm2よりも小さいスポット領域上に出力パルスレーザビームをフォーカスする手段とを具備するレーザシステムが開示されている。特許文献4には、エキシマレーザを増幅器として用いるシステムにおいて、シードレーザと増幅器との同期方法について、詳しく開示されている。このシステムにおいては、パルストレインジェネレータによって増幅段における繰り返し制限を回避しているが、その際に、光学的な方法を用いているので(第4段の第48行〜第5段の第5行)、レーザが反射又は透過するときのエネルギーロスが懸念される。
【0009】
特許文献5には、1〜10ピコ秒の範囲のパルス幅を有する超短パルス列で、X線発生用ターゲットにフォーカスするレーザ光を供給することにより、レーザエネルギーのX線エネルギーへの変換効率を上げ、平均的なX線出力パワーを大きくすることができるレーザ励起X線源が開示されている。
【0010】
特許文献6には、露光雰囲気を制御したチャンバ内で、原版のパターンを基板に転写するX線露光装置において、パルス光を照射するための光源を制御する発光制御部と、基板上に照射されたパルス光量を検出する強度モニタ部と、検出されたパルス光量に基づき、チャンバ内における局所領域の露光雰囲気を変更して、照射されたパルス光の光量を制御する光量制御部とを有するX線露光装置が開示されている。
【0011】
特許文献7には、マイクロターゲットをマイクロターゲットパス上に分配する分配装置と、エネルギーパスに沿ってエネルギービームを放出するエネルギー源と、エネルギーパス内とマイクロターゲットパス内とに配置された照射ゾーン(マイクロターゲットパスは照射ゾーン内のエネルギーパスを横切っている)と、照射ゾーン内で生成されたラジエーションを受信するように構成されたビームラインと、照射ゾーンの下流においてマイクロペレットパスに沿う残渣(debris)除去装置とを備え、固体材料を含むマイクロターゲットを使用するラジエーション生成システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許US6,307,913B1号明細書(図12、図13)
【特許文献2】特開2001−68296号公報(第5頁、図7)
【特許文献3】米国特許US2004/22295A1号明細書
【特許文献4】米国特許US5,539,764号明細書
【特許文献5】米国特許US5,654,998号明細書
【特許文献6】特開2004−47518号公報
【特許文献7】特表2003−513418号公報
【概要】
【0013】
しかしながら、上記の特許文献1〜7のいずれにおいても、レーザ増幅システムにおける同期や出力を規定値に従って制御しており、動作中に変化する可能性があるターゲット物質の条件(噴射位置等)やEUV光の強度に対応できるものではない。また、原料や形状等が異なる様々なターゲット物質がある中で、現状では未だ支配的な方式が確立していないが、どのようなターゲット物質を用いた場合においても、ターゲット物質の種類に応じて効果的な反応を示すように、即座に対応できるシステムも構築されていない。即ち、EUV光源用ドライバレーザを効率的に稼動させることができるシステムやその制御方法は、未だに提案されていない。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る極端紫外光源装置用ドライバレーザシステムは、レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置において用いられるドライバレーザシステムであって、MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザ光出射手段であって、単一のレーザ発振器においてレーザ光を発生し、該レーザ光のパルス幅が所定の値まで短くなるようにレーザ光のパルス幅を制御して、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系において該レーザ光を増幅する上記レーザ光出射手段と、複数の放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するようにレーザ光出射手段の動作タイミングを制御する制御手段とを具備する。
【0015】
また、本発明の第2の観点に係る極端紫外光源装置用ドライバレーザシステムは、レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置において用いられるドライバレーザシステムであって、MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザ光出射手段であって、単一のレーザ発振器においてレーザ光を発生し、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系において該レーザ光を増幅する上記レーザ光出射手段と、複数の放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するようにレーザ光出射手段の動作タイミングを制御すると共に、発生した極端紫外光のエネルギーに関する情報に基づいて、複数のレーザ増幅系の各々から所定の強度を有するレーザ光が出射するようにレーザ光出射手段を制御する制御手段とを具備する。
【0016】
さらに、本発明の第3の観点に係る極端紫外光源装置用ドライバレーザシステムは、レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置において用いられるドライバレーザシステムであって、MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザ光出射手段であって、単一のレーザ発振器においてレーザ光を発生し、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系において該レーザ光を増幅する上記レーザ光出射手段と、複数の放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するようにレーザ光出射手段の動作タイミングを制御すると共に、射出されたターゲット物質の位置に関する情報に基づいて、レーザ光出射手段から出射したレーザ光がターゲット物質の所定の領域を照射するように、ターゲット物質を射出する手段を制御する制御手段とを具備する。
【0017】
本発明によれば、レーザ光出射手段において、複数の放電励起式ガスレーザ増幅系によりレーザ光を増幅し、それらの放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光を順次出射するので、EUV光源装置において必要とされる程度の高出力を有するレーザ光を、高い繰り返し周波数でターゲット物質に照射することが可能になる。また、所望のパルス幅を有するレーザ光を所望の繰り返し周波数で出射することができるので、ターゲット物質の種類や供給方式に応じて、EUV光変換効率の高い照射条件を安定して実現することができる。さらに、レーザ光出射手段の動作タイミングや出力エネルギーを、ターゲット物質の位置やEUV光エネルギーに関する情報に基づいて制御するので、様々な条件の変化に対応して、EUV光を安定して発生させることができる。そのような良好な性能を有すEUV光源装置用レーザドライブシステムにおいて、安価なガスレーザを用いることにより、EUV光源装置のコストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る露光システムの構成を示すブロック図である。
【図2】EUV光の発生原理を説明するための模式図である。
【図3】レーザシステムの第1の実施例を示すブロック図である。
【図4】図3に示すレーザシステムの具体的な構成を示す模式図である。
【図5】レーザシステムの第2の実施例を示すブロック図である。
【図6】レーザシステム制御装置の第1の実施例を示すブロック図である。
【図7】図6に示すレーザシステム制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】図6に示すレーザシステム制御装置の変形例を示すブロック図である。
【図9】レーザシステム制御装置の第2の実施例を示すブロック図である。
【図10】レーザシステム制御装置の第3の実施例を示すブロック図である。
【図11】図10に示すレーザシステム制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】レーザシステム制御装置の第4の実施例を示すブロック図である。
【図13】図12に示すレーザシステム制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】レーザシステム制御装置の第5の実施例を示すブロック図である。
【図15】レーザシステム制御装置の第6の実施例を示すブロック図である。
【図16】レーザシステム制御装置の第7の実施例を示すブロック図である。
【図17】レーザシステム制御装置の第8の実施例を示すブロック図である。
【図18】レーザシステム制御装置の第9の実施例を示すブロック図である。
【図19】短パルス化装置の第1の実施例を示す模式図である。
【図20】短パルス化装置の第2の実施例を示す模式図である。
【図21】短パルス化装置の第3の実施例を示す模式図である。
【図22】短パルス化装置の第4の実施例を示す模式図である。
【図23】レーザ光分岐装置の第1の実施例を示す模式図である。
【図24】レーザ光分岐装置の第2の実施例を示す模式図である。
【図25】レーザ光分岐装置の第3の実施例を示す模式図である。
【図26】増幅器の第1の実施例を示す模式図である。
【図27】増幅器の第2の実施例を示す模式図である。
【図28】増幅器の第3の実施例を示す模式図である。
【図29】増幅器の第4の実施例を示す模式図である。
【図30】増幅器の第5の実施例を示す模式図である。
【図31】増幅器の第6の実施例を示す模式図である。
【図32】ターゲットモニタ装置の第1の実施例を示す模式図である。
【図33】ターゲットモニタ装置の第2の実施例を示す模式図である。
【図34】ターゲットモニタ装置の第3の実施例を示す模式図である。
【図35】ターゲットモニタ装置の第4の実施例を示す模式図である。
【図36】ターゲットモニタ装置の第5の実施例を示す模式図である。
【図37】ターゲットモニタ装置の第6の実施例を示す模式図である。
【図38】ターゲット射出装置の一実施例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る極端紫外(extreme ultraviolet:EUV)光源装置及び露光機を含む露光システムの全体構成を示している。この露光システムは、EUV光の生成が行われるEUV光発生チャンバ1と、発生したEUV光の光量(強度)をモニタするEUV光モニタ装置2と、EUV光を発生させるためのレーザを出射するレーザシステム3と、レーザシステム制御装置4と、EUV発生チャンバ1にターゲット物質を供給するターゲット射出装置5と、射出されるターゲットをモニタするターゲットモニタ装置6と、ターゲット射出装置5を制御するターゲット制御装置7と、EUV光モニタ装置2の出力結果に基づいて各部を制御するEUV光源制御装置8と、EUV光発生チャンバ1において発生し、伝送光学系10を介して伝送されたEUV光を用いて半導体装置等に対して露光を行うと共に、この露光システム全体のマスターとして機能する露光機9とを含んでいる。
なお、本実施形態においては、ターゲットとして、キセノン(Xe)のドロップレット(液滴)を用いる場合を例として説明する。
【0020】
図2は、EUV光の発生原理を説明するための模式図である。図2に示すように、EUV光発生チャンバ1には、ターゲット噴射装置5の一部である噴射ノズル501と、レーザシステム3から出射したレーザ光を集光する集光光学系11と、レーザ光を透過させる窓12と、発生したEUV光を集光する集光ミラー13と、ターゲット回収筒14とが設けられている。
【0021】
噴射ノズル501は、チャンバ外から供給されるターゲット物質を所定の間隔で噴射する。なお、本実施形態においては、ターゲット物質として、液体のキセノン(Xe)を用いており、噴射ノズル501の上流には、気体のキセノンを加圧して冷却することにより液化する機構が設けられている。ターゲット射出装置5の構成については、後で詳しく説明する。
集光光学系11は、レーザシステム3から出射したレーザ光を集光する。それにより、レーザ光は、窓12を通過し、ドロップレットターゲット15の軌道に焦点を形成する。
【0022】
噴射ノズル501から噴射されたドロップレットターゲット15に、レーザ光を集光照射することにより、ターゲット物質がプラズマ化してEUV光が発生する。集光ミラー13は、表面に、例えば、13.5nmの光を高反射率で反射するMo/Si膜が形成された凹面鏡であり、発生したEUV光を反射することにより集光し、伝送光学系10に導く。なお、図2において、集光ミラー13は、紙面の手前方向にEUV光を集光する。
ターゲット回収筒14は、レーザ光が照射されずに、不要となったドロップレットターゲット15を回収する。
【0023】
再び、図1を参照すると、そのようにして生成されたEUV光は、伝送光学系10を介して露光機9に導光され、露光光として使用される。
EUV光モニタ装置2は、EUV光発生チャンバ1において発生したEUV光のエネルギーをモニタしており、それによって得られたエネルギー情報(EUVエネルギーモニタ値)を、レーザシステム制御装置4及びEUV光源制御装置8に出力する。
【0024】
レーザシステム3及びレーザシステム制御装置4は、EUV光を発生させるために用いられるレーザ光を供給するためのEUV光源装置駆動用ドライバレーザシステムを構成する。
レーザシステム3は、レーザシステム制御装置4の制御の下で、所定のパルス幅を有するレーザ光を射出する。また、後述するように、レーザシステム3には、出射したレーザ光のパルス間隔をモニタするパルス間隔モニタと、レーザ光のエネルギーをモニタするレーザエネルギーモニタとが設けられている。これらのモニタから出力されたモニタ値は、レーザシステム制御装置4にフィードバックされ、レーザシステムに供給される動作パラメータを算出する際に用いられる。また、レーザエネルギーモニタから出力されたモニタ値は、EUV光源制御装置8にもフィードバックされ、種々の指令値を算出する際に用いられる。
【0025】
レーザシステム制御装置4は、EUV光源制御装置8から供給された指令値に基づいて、レーザシステム3に含まれる構成要素に必要な動作パラメータを与えることにより、要求された強度及びパルス幅を有するレーザ光を、要求された時間間隔で射出させる。また、レーザシステム制御装置4は、レーザシステム3から出力されたレーザエネルギーモニタ値及びパルス間隔モニタ値に基づいて、レーザシステム3に含まれる構成要素に与えられる動作パラメータを修正する。さらに、レーザシステム制御装置4は、EUV光モニタ装置2から出力されたEUVエネルギーモニタ値を参照し、EUVエネルギーモニタ値が要求されている値に達しない場合に、ターゲットモニタ装置6から出力されたターゲット間隔モニタ値に基づいてレーザ発振間隔を調整する。その際に、レーザ発振間隔とドロップレットターゲットの射出間隔とが大きく異なる場合には、レーザシステム制御装置4は、ターゲット制御装置7に指令を出力することにより、ドロップレットターゲットの射出間隔を修正させる。また、レーザシステム制御装置4は、ターゲットモニタ装置6から出力されたターゲット位置モニタ値に基づいて、ドロップレットターゲットの射出位置を修正するよう、必要に応じてターゲット制御装置7に指令を出力する。
【0026】
ターゲット射出装置5は、ターゲット制御装置7の制御の下で、所定の径を有するドロップレットターゲットを、所定の間隔で所定の位置に射出する。
ターゲットモニタ装置6は、EUV光発生チャンバ1に射出されるドロップレットターゲットの位置間隔、望ましくは、中心位置間隔をモニタしており、そのモニタ結果(ターゲット間隔モニタ値)をレーザシステム制御装置4及びターゲット制御装置7に出力する。
【0027】
ここで、ドロップレットターゲットに対するレーザ光の照射タイミングがずれると、ドロップレットターゲットに照射されるレーザ光の領域(或いは、面積)が変化するので、発生するEUV光の光量が変化してしまう。そこで、ドロップレットターゲットの位置間隔をモニタし、そのモニタ値に基づいてレーザシステムにおけるレーザ光の出射タイミングを制御する。それにより、ドロップレットターゲットにおける最適な位置に、常にレーザ光を照射し、EUV光の発生量をほぼ一定に保つことができる。
【0028】
また、ターゲットモニタ装置6は、ドロップレットターゲットの射出位置(ターゲットの射出方向に対する面における位置ずれ)もモニタしており、そのモニタ結果(ターゲット位置モニタ値)をレーザシステム制御装置4及びターゲット制御装置7に出力する。
【0029】
ターゲット制御装置7は、EUV光源制御装置8から供給された指令値に基づいて、ターゲット射出装置5に含まれる構成要素に必要な動作パラメータ(例えば、噴射ノズル501の位置やターゲットの噴射速度等)を与えることにより、所定の径を有するターゲット物質を、所定の位置に、所定の時間間隔で射出させる。また、ターゲット制御装置7は、ターゲットモニタ装置6から出力されたターゲット間隔モニタ値及びターゲット位置モニタ値に基づいて、ターゲット射出装置5に含まれる構成要素に与えられる動作パラメータを修正する。さらに、ターゲット制御装置7は、レーザシステム制御装置4から出力された修正指令に基づいて、ターゲット射出装置5を制御する。
【0030】
EUV光源制御装置8は、露光機9から出力されたEUV光出力要求信号に対して必要な演算処理や変換処理を行った後、その要求信号に基づいて、レーザシステム制御装置4及びターゲット制御装置7に対して指令値を出力する。即ち、EUV光源制御装置8は、レーザシステム制御装置4に対して、レーザ光のエネルギー(強度)及びレーザ光の射出時間間隔(繰り返し周波数)に関する指令値を与え、ターゲット制御装置7に対して、形成すべきターゲットの径、ターゲットの射出位置、及び、ターゲットの射出間隔に関する指令値を与える。また、EUV光源制御装置8は、EUVモニタ装置2から出力されたEUVエネルギーモニタ値に基づいて、レーザシステム制御装置4及びターゲット制御装置7に与える指令値を修正する。このように、発生したEUV光のエネルギーをフィードバックして各部を制御することにより、高い安定性(例えば、0.3%、3σ over 50pulses)をもってEUV光を発生させることが可能になる。さらに、EUV光源制御装置8は、EUV光源モニタ装置から出力されたエネルギー情報や、EUV光発生チャンバ1内の真空度や、インターロックシステムの動作状態等の情報を、露光機9に出力する。
【0031】
露光機9は、EUV光源制御装置8に対して、EUV光出力要求信号を出力する。EUV光出力要求信号には、EUV光出力強度指令値と繰り返し周波数指令値とが含まれている。
【0032】
次に、図1に示すレーザシステム3の構成について、図3〜図5を参照しながら説明する。ここで、EUV光源においては、7kHz〜10kHz程度のレーザ繰り返し周波数と、100kW以上のレーザ出力とが要求される。以下に説明する本実施形態に係るレーザシステムは、安価なガスレーザを用いて、そのような要求を満たすように構成されている。
【0033】
また、本実施形態においては、レーザ増幅方式として、MOPA(master oscillator power amplifier)方式を採用している。ここで、EUV光源装置用ドライバとしてレーザを用いる場合に、レーザ波長や、ターゲット物質の種類や、その密度等の条件に応じて、最適なパルス幅が存在することが知られている。MOPA方式においては、パルス幅の情報が増幅後にも保存されるので、シード光のパルス幅を最適値とすることにより、様々なターゲット物質に対応させることが可能になる。
なお、レーザシステム3には、この他に、レーザエネルギーモニタ及びパルス間隔モニタが設けられるが、図3及び図5においては省略されている。
【0034】
図3は、図1に示すレーザシステム3の第1の実施例を示すブロック図である。このレーザシステム300は、レーザ発振器(OSC)301と、短パルス化装置302と、レーザ光分岐装置303と、2つの系統に分岐された増幅器(AMP)304(1)及び304(2)並びに305(1)及び305(2)とを含んでいる。以下において、増幅器304(1)及び304(2)をA系の増幅器とし、増幅器305(1)及び305(2)をB系の増幅器とする。
【0035】
本実施例においては、レーザ発振器301として、EUV光源が要求するレーザ繰り返し周波数と同等か、それより高い周波数で発振可能なレーザ発振器を用いている。
レーザ発振器301は、例えば、7kHz〜10kHz程度で発振可能なRF放電励起方式の炭酸ガス(CO2)レーザである。このレーザシステム300においては、後段に増幅器を設けているので、レーザ発振器301の出力は、例えば、数10μJ程度と低くても構わない。なお、レーザ発振器301としては、所定以上の繰り返し周波数で発振できれば、その他の様々な方式のものを用いることができる。例えば、固体レーザと色素レーザを組み合わせることにより、所望の波長を有するレーザ光を発振させても良い。
【0036】
短パルス化装置302は、レーザ発振器301から出射したレーザ光を、所望のパルス幅となるように短パルス化する。なお、所望のパルス幅を有するレーザ光を出射可能なレーザ発振器を用いる場合や、出射されたレーザのパルス幅が、レーザを照射されるターゲット物質に対して長すぎない場合には、短パルス化装置302を省略しても良い。
レーザ光分岐装置303は、短パルス化されたレーザ光を、A系及びB系の増幅器に交互に分岐する。
【0037】
ここで、本実施形態において、A系及びB系の2つの増幅系を設けている理由は、次の通りである。増幅器として、例えば、TEA励起方式を用いる場合には、数kHzの繰り返し周波数に対応することは可能であるが、EUV光源の要求値である7kHz〜10kHzに対応することが困難な場合がある。そこで、本実施形態におけるように、2つの増幅系を、例えば、4kHzで交互に動作させることにより、レーザシステム全体として、8kHzの繰り返し周波数でレーザ光を出射することができる。従って、本実施形態においては2つの増幅系を設けているが、各増幅器の繰り返し性能と、要求される繰り返し周波数とに基づいて、3つ以上の増幅系を並列して設け、それらを順次動作させるようにしても良い。
【0038】
増幅器304(1)及び304(2)、並びに、増幅器305(1)及び305(2)は、レーザ媒質として炭酸ガス(例えば、炭酸ガス)を用いている。各増幅系を、そのような増幅器による2段構成とすることにより、約10000倍の増幅率を得ることができる。それにより、例えば、レーザ発振器301から出射した数十μJのレーザ光は、数百mJまで増幅される。なお、この増幅段数についても、レーザ発振波長やレーザ媒質の種類に応じて変更しても良い。
【0039】
また、レーザシステム制御装置4は、エネルギー制御部401及び交互発振タイミング制御部402とを含んでいる。エネルギー制御部401は、EUVモニタ装置2から出力されたEUVエネルギーモニタ値と、EUV光源制御装置8から出力された指令値とに基づいて、レーザシステムにおけるレーザエネルギー出力を制御する。また、交互発振タイミング制御部402は、ターゲットモニタ装置6から出力されるターゲット間隔モニタ値と、EUV光源制御装置8から出力される指令値とに基づいて、ドロップレットターゲットの射出時間間隔とレーザ光の出射間隔とがほぼ等しくなるように、2つの増幅系からレーザ光を順次出射させるタイミングを制御する。このような制御機構により、均一な強度且つ安定したパルス間隔でEUV光を発生させることができる。なお、これらの制御機構の詳細については、後述する。
【0040】
図4は、図3に示すレーザシステム3の具体的な構成を示す模式図である。
レーザ発振器301は、エネルギー0.1mJ、パルス幅10nsのレーザ光を、繰り返し周波数8kHzで発振可能なRF放電励起CO2レーザである。なお、ドロップレットターゲットを用いる場合に、高いEUV変換効率を得るためには、パルス幅10ns程度のレーザ光を発生させることが望ましいが、レーザ発振器301によって短パルス発振が可能な場合には、図4に示す構成のように、短パルス化装置302(図3)を省略しても良い。
【0041】
本実施例において、レーザ光分岐装置303は、EO(electro optic)−Qスイッチ303aと、ポーラライザ(偏光素子)303bと、反射ミラー303cとを含んでいる。EO−Qスイッチとは、EO効果(電気光学効果)を利用した光学素子のことであり、ポッケルスセルとも呼ばれている。このEO−Qスイッチを所定の周期でスイッチングすることにより、それを通過した光の偏光面を周期的に切り替えることができる。なお、ポッケルスセルについては、後で詳しく述べる。ポーラライザ303bは、EO−Qスイッチ303aを通過したレーザ光の内、第1の偏光面を有する光を反射することにより、A系の増幅器304(1)〜304(3)に導くと共に、第2の偏光面を有するレーザ光を透過させる。第2の偏光面を有するレーザ光は、反射ミラー303cによって反射され、B系の増幅器305(1)〜305(3)に導かれる。
【0042】
A系の増幅器304(1)〜304(3)、並びに、B系の増幅器305(1)〜305(3)は、TEA型CO2媒質増幅器である。このような、レーザ発振器301とレーザ増幅器304(1)〜305(3)とによってレーザ光を出射するレーザシステムは、MOPA方式と呼ばれている。MOPA方式においては、レーザ発振器301から出射したレーザ光のパルス幅が保持されるという利点がある。
【0043】
例えば、レーザ発振器301から、繰り返し周波数8kHzで出射したエネルギー0.1mJ、パルス幅10nsのレーザ光は、レーザ光分岐装置303により、A系及びB系の増幅系に、パルスごとに交互に振り分けられる。それらのレーザ光は、各増幅系に含まれる3段の増幅器により、例えば、10mJ、100mJ、500mJと、順次増幅される。そして、A系の増幅器304(3)及びB系の増幅器305(3)から交互に出射したレーザ光を、図3に示す集光光学系11及び窓12を介して、EUV光発生チャンバ1に導く。それにより、ターゲット物質は、エネルギー500mJ、パルス幅10nsのレーザ光を、8kHzの繰り返し周波数で照射される。この場合には、500mJ×8kHz=4kWのレーザ出力が得られるので、キセノンのドロップレットターゲットのCO2波長域における変換効率を0.5%とすると、EUV発光点における出力は、4kW×0.5%=20W程度となる。なお、発生したEUV光を露光装置において使用するためには、さらに大きな出力が必要とされるので、実際には、各増幅系に、増幅段がさらに追加される。また、レーザシステムから出射するレーザ光の繰り返し周波数を高くしたい場合には、増幅系をさらに増やしても良い。例えば、3つの増幅系を設け、各増幅系を3kHzで順次駆動することにより、レーザシステム全体として9kHzでレーザ光を出射することが可能になる。なお、図4において、各増幅器におけるパス数は3つとなっているが、本実施例において、パス数はそれに限られるものではない。
【0044】
図5は、図1に示すレーザシステム3の第2の実施例を示すブロック図である。このレーザシステム310には、X系及びY系の2つのレーザ発振系が設けられている。X系のレーザ発振系は、レーザ発振器311と、短パルス化装置313と、増幅器(AMP)315(1)及び315(2)とを含んでおり、Y系のレーザ発振系は、レーザ発振器312と、短パルス化装置314と、増幅器(AMP)316(1)及び316(2)とを含んでいる。
【0045】
本実施例においては、X系及びY系からレーザ光が交互に出射するように、2つのレーザ発振器311及び312を同期して制御する。それにより、各レーザ発振器の繰り返し周波数が、EUV光源において要求される繰り返し周波数に満たない場合であっても、レーザシステム全体として、必要な繰り返し周波数でレーザ光を出射することが可能になる。例えば、レーザ発振器311及び312からレーザ光を4kHzの繰り返し周波数で交互に出射させることにより、結果として、レーザシステム310から8kHzの繰り返し周波数でレーザ光が出射する。
【0046】
なお、短パルス化装置313及び314、並びに、増幅器315(1)〜316(2)については、図3に示すのと同様のものを用いることができる。また、本実施例においても、各レーザ発振器の繰り返し性能と、要求される繰り返し周波数とに応じて、3つ以上のレーザ発振系を並列して設け、それらを順次動作させるようにしても良い。
【0047】
以上説明したレーザシステムの第1及び第2の実施例においては、CO2レーザの他にも、様々な波長のガスレーザを適用することができる。例えば、エキシマレーザ、Cu蒸気レーザ、アルゴンレーザ等のガスレーザを用いても良い。その際には、波長に応じて光学素子(例えば、レーザ光分岐装置303におけるEO−Qスイッチ等)を選択する必要がある。或いは、レーザ発振器301、311、312として、所望の波長でレーザ発振することができる固体レーザを、色素セル等と組み合わせて用いることも可能である。その場合には、固体レーザの繰り返し周波数が、EUV光源の要求値とレーザシステムの構成とに応じた値を満たしていることが必要となる。また、その際には、レーザ発振器から出射したレーザ光の波長と、増幅段における発振波長とを合わせておく必要がある。
【0048】
上記の第1及び第2の実施例においては、レーザ光の波長に自由度があり、また、パルス幅を調整することも可能である。そのため、キセノンガスターゲットや、キセノンジェット(噴流)ターゲットのように、様々な種類や状態のターゲットに対応することができる。また、ターゲットモニタ装置6によってターゲット間隔をモニタすることにより、ターゲットの最適照射部位に、安定性良くレーザ光を照射することができる。従って、上記の実施例は、キセノンドロップレットターゲットや、リチウム(Li)含有液体ドロップレットターゲットや、錫(Sn)含有液体ドロップレットターゲット等を用いる際にも適している。さらに、同様の理由から、錫又はリチウム含有物質の微小固体ターゲットを用いる場合においても、安定性の高いEUV光を発生することができる。
【0049】
次に、図1に示すレーザシステム制御装置4の構成について、図6〜図18を参照しながら説明する。なお、図6〜図18において、レーザシステム制御装置は、複数の機能ブロックによって表されているが、実際には、レーザシステム制御装置を1つのモジュールとして構成しても良いし、複数の機能ブロックの各々を1つのモジュールとし、複数のモジュールによってレーザシステム制御装置を構成しても良い。
【0050】
図6は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第1の実施例を示している。レーザシステム制御装置410は、交互発振タイミング制御部411と、短パルス化タイミング制御部412と、レーザ光分岐制御部413と、増幅タイミング制御部414及び415とを含んでいる。本実施例において、レーザシステム制御装置410は、レーザシステム320に含まれる各部の動作タイミングを制御する。
【0051】
また、本実施例において制御対象となるレーザシステム320は、図5に示すレーザシステム300に対して、増幅器304(2)及び305(2)から出射したレーザ光のパルス間隔をモニタするパルス間隔モニタ321をさらに設けたものである。パルス間隔モニタ321は、光路上の光の波形を検出する。パルス間隔モニタ321としては、例えば、ビームスプリッタを用いることにより光路から僅かな光を取り出し、PINフォトダイオードによって波形を検出する構成や、フォトンドラッグを含む構成等を用いることができる。後者は、CO2等の遠赤外線域の波長を検出する際に適切である。
【0052】
図7は、図6に示すレーザシステム制御装置410の動作を示すフローチャートである。図7のステップS101において、交互発振タイミング制御部411は、ターゲットモニタ装置5から出力されたターゲット間隔モニタ値Nt(kHz)を取得し、EUV光源制御装置8から出力された繰り返し指令値Nc(kHz)を取得する。
【0053】
次に、ステップS102において、交互発振タイミング制御部411は、ターゲット間隔モニタ値Ntと、繰り返し指令値Ncとのずれ|Nc−Nt|を算出し、そのずれが、所定値Nr1より小さいか否かを判定する。その結果、両者のずれが所定値Nr1より大きい場合には、ステップS103において、交互発振タイミング制御部411は、ターゲット制御装置5に、ターゲットの射出タイミングを修正するように要求するか、または、EUV光源制御装置8に、繰り返し指令値の修正を要求する。
【0054】
一方、ステップS102における判定の結果、ターゲット間隔モニタ値Ntと繰り返し指令値Ncとのずれが所定値Nr1より小さい場合に、ステップS104において、交互発振タイミング制御部411は、レーザの出射間隔がターゲット物質の射出間隔に合うように、レーザ繰り返し周波数を修正する。即ち、交互発振タイミング制御部411は、パルス間隔モニタ321から出力されたレーザ繰り返しモニタ値Npが、ターゲット間隔モニタ値Ntと等しくなるように、制御タイミング間隔をシフトさせる。それによって決定された値が、制御タイミングパルスとして各部に向けて出力され、動作タイミングの基準として用いられる。
【0055】
次に、ステップS105〜S108において、各部は、決定された制御タイミングパルスに基づいて、所定の処理を行う。即ち、ステップS105において、レーザシステム320のレーザ発振器301は、制御タイミングパルスに従ってレーザ発振する。
また、ステップS106において、短パルス化タイミング制御部412は、制御タイミングパルスに短パルス化動作遅延を付加して、短パルス化装置302に出力する。その際に、レーザ発振器301と短パルス化装置302との間に、無視できないジッタ(遅延時間の揺らぎ)がある場合には、遅延時間がジッタの中央値付近になるようにする。それにより、短パルス化装置302は、レーザ発振器301から出射したレーザ光について、設定されたタイミングで短パルス化を行う。
【0056】
さらに、ステップS107において、レーザ光分岐制御部413は、分岐タイミングの遅延演算を行い、それによって求められた遅延時間と制御タイミングパルスとに基づいて、分岐動作タイミングの演算を行う。それに応じて、レーザ光分岐装置303は、短パルス化されたレーザ光を、増幅器304(1)及び増幅器305(1)に所定のタイミングで振り分ける。
【0057】
ステップS108において、増幅タイミング制御部414及び415は、増幅タイミングの遅延演算を行い、それによって求められた遅延時間を各段の増幅器に与える。その際に、無視できないジッタ(遅延時間の揺らぎ)がある場合には、遅延時間がジッタの中央値付近になるようにする。それにより、各増幅器304(1)〜305(2)は、設定されたタイミングでレーザ光を増幅して射出する。
【0058】
図8は、図6に示す第1の実施例の変形例を示している。この変形例において制御対象となるレーザシステム320'は、図6に示すレーザシステム320におけるパルス間隔モニタ321を、レーザ光分岐装置303によって分岐された後、増幅される前のレーザ光をモニタする位置に配置したものである。
【0059】
このような配置は、増幅器304(1)〜305(2)における増幅タイミングがほぼ一定とみなせる場合に用いることができる。この変形例のように、増幅前の強度が弱い状態のレーザ光を検出することにより、パルス間隔モニタ321に含まれる光学素子の長寿命化を図ることができる。
【0060】
図9は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第2の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置420は、レーザシステム330に含まれる各部の動作タイミングを制御する。このレーザシステム330は、図5に示すレーザシステム310に対して、増幅器315(2)及び315(2)の後段にパルス間隔モニタ331をさらに付加したものである。
【0061】
レーザシステム制御装置420は、交互発振タイミング制御部421と、タイミング制御部422及び423と、短パルス化タイミング制御部424及び425と、増幅タイミング制御部426及び427とを含んでいる。交互発振タイミング制御部421は、図7のステップS101〜S104におけるのと同様に、ターゲット間隔モニタ値Ntと、繰り返し指令値Ncとに基づいて、制御タイミングパルスを求める演算を行い、その制御タイミングパルスを、タイミング制御部422及び423に交互に与える。タイミング制御部422は、与えられた制御タイミングパルスに従って、レーザ発振器311、短パルス化タイミング制御部424、及び、増幅タイミング制御部426の動作タイミングを制御し、タイミング制御部423は、レーザ発振器312、短パルス化タイミング制御部425、及び、増幅タイミング制御部427の動作タイミングを制御する。短パルス化タイミング制御部424及び425、増幅タイミング制御部426及び427は、第1の実施例と同様に、与えられた制御タイミングパルスに従って、短パルス化装置及び増幅器を制御する。
なお、本実施例においても、図8に示すレーザシステム300'と同様に、パルス間隔モニタ331を増幅器315(1)及び316(1)の前段に設けても良い。
【0062】
図10は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第3の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置430は、レーザシステム340から出射されるレーザ光のエネルギーを制御する。このレーザシステム340は、図3に示すレーザシステム300に対して、増幅器304(2)及び305(2)から出射したレーザ光のエネルギーをそれぞれモニタするレーザエネルギーモニタ307及び308をさらに設けたものである。
【0063】
図10に示すレーザシステム制御装置430は、エネルギー制御部431と、エネルギー調整部432及び433を含んでいる。エネルギー制御部431は、レーザエネルギーモニタ値に対応するEUVエネルギー値を表す内部テーブルを有しており、そのテーブルに基づいて、レーザシステム340の制御を行う。
【0064】
図11は、図10に示すレーザシステム制御装置430の動作を示すフローチャートである。図11のステップS201において、エネルギー制御部431は、レーザエネルギーモニタ307及び308からそれぞれレーザエネルギーモニタ値を取得し、EUV光源制御装置8からレーザエネルギー指令値を取得し、EUV光モニタ装置2からEUVエネルギーモニタ値を取得する。
【0065】
次に、ステップS202において、エネルギー制御部431は、レーザエネルギーモニタ値とレーザエネルギー指令値とを比較し、そのずれ量を補正するように、エネルギー調整部432及び433にそれぞれ調整量を指示する。それに応じて、エネルギー調整部432及び433は、増幅器304(2)及び305(2)から出射するレーザ光のエネルギーを調整する。
【0066】
ステップS203において、エネルギー制御部431は、内部テーブルを参照することにより、取得されたレーザエネルギーモニタ値に対応するEUVエネルギー値を求め、そのEUVエネルギー値とEUVエネルギーモニタ値とを比較する。
【0067】
ステップS203における比較の結果、EUVエネルギー値とEUVエネルギーモニタ値との差が一定量より大きい場合に、ステップS204において、エネルギー制御部431は、レーザ光の照射領域に対してターゲット物質の射出位置がずれているものと判断し、ターゲット制御装置7にターゲット射出位置の修正を要求する。
【0068】
一方、EUVエネルギー値とEUVエネルギーモニタ値との差が一定量以内である場合に、ステップS205において、エネルギー制御部431は、レーザエネルギーモニタ値とレーザエネルギー指令値とに基づいて、レーザエネルギーの調整量を算出する。
ステップS206において、エネルギー調整部432及び433は、算出された調整量に応じて、増幅器304(2)及び305(2)から出射するレーザ光のエネルギーを調整する。
【0069】
本実施例においては、最終段の増幅器304(2)及び305(2)を調整しているが、調整対象となる構成要素はそれらに限定されない。即ち、レーザシステムのその他の構成要素(増幅器やレーザ発振器)の内から、制御量や応答速度等を考慮して適切な段を制御するようにしても良い。
【0070】
図12は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第4の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置440は、レーザシステム340についてエネルギーを制御する。
図12に示すレーザシステム制御装置440は、エネルギー制御部441と、エネルギー調整部442〜444(2)と、短パルス化タイミング制御部445とを含んでいる。エネルギー調整部442、443(1)、443(2)、444(1)、及び、444(2)は、レーザシステム300のレーザ発振器301、増幅器304(1)、304(2)、305(1)、及び、305(2)について、それぞれエネルギー調整を行う。また、短パルス化タイミング制御部445は、短パルス化装置302に対して、短パルス化タイミングを、最適なタイミングからずらすことにより、レーザエネルギーを調整する。このように、レーザシステム340の各構成要素に対して調整を行うことにより、各構成要素の調整可能範囲を考慮しつつ、レーザシステム全体として、広い調整幅を得ることができる。なお、十分な調整範囲を確保できるのであれば、調整対象とする構成要素を減らしても良い。
【0071】
図13は、図12に示すレーザシステム制御装置440の動作を示すフローチャートである。図13のステップS301において、エネルギー制御部441は、レーザエネルギーモニタ307及び308からそれぞれレーザエネルギーモニタ値を取得し、EUV光源制御装置8からレーザエネルギー指令値を取得し、EUV光モニタ装置2からEUVエネルギーモニタ値を取得する。
【0072】
次に、ステップS302において、エネルギー制御部441は、レーザエネルギーモニタ値とレーザエネルギー指令値とを比較し、そのずれ量を補正するように、エネルギー調整部422〜444(2)及び433に調整量を配分する。なお、この配分方法については、後述するステップS305におけるのと同様である。エネルギー調整部422〜444(2)は、配分された調整量に基づいて、レーザ発振器301や増幅器304(1)〜305(2)から出射するレーザ光のエネルギーを調整する。
【0073】
ステップS303において、エネルギー制御部441は、内部テーブルを参照することにより、取得されたレーザエネルギーモニタ値に対応するEUVエネルギー値を求め、そのEUVエネルギー値とEUVエネルギーモニタ値とを比較する。
【0074】
ステップS303における比較の結果、EUVエネルギー値とEUVエネルギーモニタ値との差が一定量より大きい場合に、ステップS304において、エネルギー制御部441は、レーザ光の照射領域に対してターゲット物質の射出位置がずれているものと判断し、ターゲット制御装置7にターゲット射出位置の修正を要求する。
【0075】
一方、EUVエネルギー値とEUVエネルギーモニタ値との差が一定量以内である場合に、ステップS305において、エネルギー制御部441は、レーザエネルギーモニタ値とレーザエネルギー指令値とに基づいて、レーザエネルギーの調整量を算出すると共に、エネルギー調整部442〜445(2)及び短パルス化タイミング制御装置445への調整量の配分を決定する。配分方法としては、例えば、粗調整をレーザ発振器301において行った後で、微調整を最終段の増幅器304(2)及び305(2)において行う。そして、調整量がそれらの機器301、304(2)、305(2)における調整範囲を越える場合に、その他の増幅器304(1)及び305(1)及び短パルス化装置302において調整を行うようにする。その際に、レーザエネルギーモニタ値に加え、EUVエネルギーモニタ値を、レーザエネルギー値の制御に反映させても良い。
【0076】
ステップS306において、エネルギー調整部442及び443(1)〜444(2)は、レーザ発振器301及び増幅器304(1)〜305(2)から出射するレーザ光のエネルギーを調整する。また、短パルス化タイミング制御部445は、短パルス化装置302に対し、先に説明した制御タイミングパルスに短パルス化動作遅延を付加した信号に、さらに、エネルギー制御のためのシフト量を加えることにより、出射するレーザ光のエネルギーを変化させる。その際に、レーザ発振器301と短パルス化装置302との間に、無視できないジッタ(遅延時間の揺らぎ)がある場合には、遅延時間がジッタの中央値付近になるようにする。
【0077】
図14は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第5の実施例を示している。本実施例において、レーザシステム制御装置450は、レーザシステム350から出射するレーザ光のエネルギーを制御する。このレーザシステム350は、図3に示すレーザシステム300に対して、各段にレーザエネルギーモニタ351〜356(2)をさらに設けたものである。
【0078】
レーザシステム制御装置450は、図12に示すレーザシステム制御装置440におけるエネルギー制御部441の替わりに、エネルギー制御部451を有している。その他の構成については、図12に示すレーザシステム制御装置440と同様である。
【0079】
エネルギー制御部451は、各段に設けられたレーザエネルギーモニタ351〜356(2)から出力されたレーザエネルギーモニタ値を取得し、それらの値と、レーザエネルギー指令値及びEUVエネルギーモニタ値とに基づいて、エネルギー調整部442〜444(2)及び短パルス化タイミング制御部445に対して調整値を与える。
【0080】
本実施例におけるように、各段にレーザエネルギーモニタを設け、エネルギー調整部によってレーザシステムを集中して制御することにより、いずれかの段に異常が発生した場合に、異常を容易に検出することが可能になる。また、レーザエネルギーの調整時に、各段の調整範囲を全て使用することができるので、制御性の自由度を向上させることができる。
【0081】
図15は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第6の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置460は、レーザシステム360から出射するレーザ光のエネルギーを制御する。このレーザシステム360は、図3に示すレーザシステム300に対して、各段にレーザエネルギーモニタ361〜366(2)をさらに設けたものである。
【0082】
レーザシステム制御装置460は、エネルギー制御部461と、エネルギー調整部462及び463(1)〜464(2)と、短パルス化タイミング制御装置465とを有している。エネルギー制御部461は、レーザエネルギーモニタ363及び364から出力され、又は、レーザエネルギーモニタ361、362、365(1)〜366(2)から出力されてエネルギー調整部等を介して取得されたレーザエネルギーモニタ値と、EUV光源制御装置8から出力されたエネルギー指令値と、EUV光モニタ装置2から出力されたEUVエネルギーモニタ値とに基づいて、ターゲット制御装置7に対する制御を行うと共に、エネルギー調整部462及び463(1)〜464(2)、並びに、短パルス化タイミング制御装置465にそれぞれ与えられる調整値を設定する。
【0083】
エネルギー調整部462は、エネルギー制御部461から与えられた設定された調整値と、レーザ発振器301から出射したレーザ光のエネルギーをモニタするレーザエネルギーモニタ361の出力値とに基づいて、レーザ発振器301から出射するレーザ光のエネルギーを調整する。短パルス化タイミング制御部465は、与えられた調整値と、短パルス化装置362によって短パルス化されたレーザ光のエネルギーをモニタするレーザエネルギーモニタ362の出力値とに基づいて、短パルス化装置302の動作タイミングを制御する。エネルギー調整装置463(1)〜464(2)は、与えられた調整値と、制御対象である増幅器304(1)〜305(2)から出射したレーザ光のエネルギーをモニタするレーザエネルギーモニタ365(1)〜366(2)の出力値とに基づいて、増幅器304(1)〜305(2)から出射するレーザ光のエネルギーを調整する。
【0084】
このように、本実施例においては、各段に設けられたレーザエネルギーモニタの出力値に基づいて、エネルギー調整部及び短パルス化タイミング制御装置が、対応する構成要素について分散して制御を行う。それにより、レーザシステムの各構成要素にある程度自立性を持たせることができるので、新たに増幅段を増設し易くなると共に、各構成要素を個別にメンテナンスし易くなる。また、レーザ光を分岐直後のレーザエネルギーもモニタしているので、レーザ光分岐装置の機能判断も行うことができる。
【0085】
図16は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第7の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置470は、レーザシステム370から出射するレーザ光のエネルギーを制御する。このレーザシステム370は、図5に示すレーザシステム310に対して、レーザエネルギーモニタ371及び372をさらに設けたものである。
【0086】
レーザシステム制御装置470は、エネルギー制御部471と、レーザ発振器311及び312、並びに、増幅器315(1)〜316(2)から出射するレーザ光のエネルギーをそれぞれ調整するエネルギー調整部472及び473、並びに、476(1)〜477(2)と、短パルス化装置313及び314の動作タイミングをそれぞれ調整する短パルス化タイミング制御部474及び475とを含んでいる。エネルギー制御部471は、レーザエネルギーモニタ371及び371から出力されたレーザエネルギーモニタ値と、レーザエネルギー指令値と、EUVエネルギーモニタ値とに基づいて、エネルギー調整部472、473、及び、476(1)〜477(2)、及び、短パルス化タイミング制御部474及び475に対して調整値を与える。エネルギー調整部471の動作の詳細については、図14を用いて説明したものと同様である。
【0087】
図17は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第8の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置480は、レーザシステム380から出射するレーザ光のエネルギーを制御する。このレーザシステム380は、図5に示すレーザシステム310に対して、レーザエネルギーモニタ381〜386(2)をさらに設けたものである。レーザエネルギーモニタ381〜386(2)は、レーザシステム380の各段から出射したレーザ光のエネルギーをモニタすることにより、レーザエネルギーモニタ値を出力する。
【0088】
レーザシステム制御装置480は、図16に示すエネルギー制御部471の替わりに、エネルギー制御部481を有している。エネルギー制御部481は、レーザエネルギーモニタ381〜386(2)から出力されたレーザエネルギーモニタ値と、レーザエネルギー指令値及びEUVエネルギーモニタ値とに基づいて、エネルギー調整部472、473、及び、476(1)〜477(2)、及び、短パルス化タイミング制御部474及び475に対して調整値を与える。
【0089】
本実施例におけるように、各段にレーザエネルギーモニタを設け、エネルギー調整部によってレーザシステムを集中して制御することにより、いずれかの段に異常が発生した場合に、異常を容易に検出することが可能になる。また、レーザエネルギーの調整時に、各段の調整範囲を全て使用することができるので、制御性の自由度を向上させることができる。
【0090】
図18は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第9の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置490は、レーザシステム390から出射するレーザ光のエネルギーを制御する。このレーザシステム390は、図5に示すレーザシステム310に対して、レーザエネルギーモニタ391〜396(2)をさらに設けたものである。レーザエネルギーモニタ391〜396(2)は、レーザシステム390の各段から出射したレーザ光のエネルギーをモニタすることにより、レーザエネルギーモニタ値を出力する。
【0091】
レーザシステム490は、エネルギー制御部491と、エネルギー制御装置492及び493、並びに、496(1)〜497(2)と、タイミング制御装置494及び495とを含んでいる。エネルギー制御部491は、レーザエネルギーモニタ391〜396(2)から出力されたレーザエネルギーモニタ値と、レーザエネルギー指令値及びEUVエネルギーモニタ値とに基づいて、エネルギー調整部492、493、及び、496(1)〜497(2)、並びに、短パルス化タイミング制御部475に対して調整値を与える。
【0092】
エネルギー調整部492、493、及び、496(1)〜497(2)、並びに、短パルス化タイミング制御部475は、与えられた調整値と、制御対象である各部311〜316(2)から出射したレーザ光のエネルギーをモニタするレーザエネルギーモニタ391〜396(2)の出力値とに基づいて、各部311〜316(2)をそれぞれ制御する。
【0093】
このように、エネルギー調整部及び短パルス化タイミング制御装置が、各段に設けられたレーザエネルギーモニタの出力値に基づいて、制御対象である各構成要素について分散して制御を行う。それにより、レーザシステムの各構成要素にある程度自立性を持たせることができるので、新たに増幅段を増設し易くなると共に、各構成要素を個別にメンテナンスし易くなる。
【0094】
以上説明したレーザシステム制御装置4の第1〜第8の実施例においては、各構成要素として次に挙げる技術を用いることができる。
レーザ発振器や増幅器から出射したレーザ光のエネルギーを調整するエネルギー調整部としては、光学的、電気的、その他の作用によってエネルギーを変化させる方法及びそれを利用した機器や、それらの組み合わせを用いることができる。
【0095】
光学的なエネルギー調整方法としては、ビームアッテネータや可動プリズムを用いることによりレーザ光の反射率を変化させたり、波長板を用いてレーザ光を偏光させたり、フィルタを用いてレーザ光の透過率を変化させる機器を用いることができる。また、電気的なエネルギー調整方法としては、レーザ発振器や増幅器の充電電圧を調節する方法が挙げられる。さらに、その他の調整方法としては、レーザ発振器や増幅器のレーザ媒質のガス圧や、ガス組成や、ガス温度を調節することが考えられる。
【0096】
次に、レーザ光のエネルギーをモニタするレーザエネルギーモニタとしては、ビームサンプラとPINフォトダイオードとを組み合わせた検出装置や、ビームサンプラとCCDとを組み合わせた検出装置を用いることができる。或いは、波長が遠赤外線領域の場合には、温度センサを用いても良い。また、レーザ光の検出方法としては、各増幅系の最終段や、レーザ発振器や増幅器等を含む系統内の各段において、出射光の一部を検出装置に導光して測定する方法の他に、各段の漏れ光を検出する方法が挙げられる。
【0097】
また、発生したEUV光をモニタするEUVモニタ装置としては、X線付近の光を検出するEUVディテクタと光学フィルタとを組み合わせることにより、EUV光を直接的に検出することができる。また、レーザ光照射条件が同じであれば、ターゲット物質がプラズマ化することによって発生した光を構成するスペクトルの強度はほぼ一定であるので、露光のために利用される波長成分(例えば、13.5nm)以外の波長成分(アウトオブバンドと呼ばれる)を検出することにより、EUV光エネルギーを間接的に検出することも考えられる。例えば、EUVディテクタと光学フィルタとを用いて、アウトオブバンドの波長成分を検出することにより、予め知られているEUV光のスペクトル(強度比)に基づいて、所望の波長成分のエネルギーを求めることができる。或いは、EUV光発生チャンバにおいて生成されたプラズマの放射立体角とEUV光のエネルギーとの間には、一定の関係があるので、ピンホールカメラ等を用いてプラズマの光学イメージを取得することにより、EUV光のエネルギーを間接的に求めることも考えられる。さらに、それらの検出方法を組み合わせて用いても良い。
【0098】
ここで、EUV光発生チャンバ内において発生したEUV光は、凹面の反射面を有する集光ミラーにより、所定の方向に位置に集光される。そのため、EUV光をモニタする際には、集光ミラーの集光領域から外れた位置における光を検出することが望ましい。集光ミラーの集光領域内において光検出を行うと、検出に用いられた光の領域が影になってしまうからである。また、集光ミラーには、所望の波長成分(例えば、13.5nm)を高い反射率で反射するために、所定の被膜が施されている。そのため、集光ミラーを透過した光、即ち、EUV光以外の波長成分を検出することも考えられる。先にも述べたように、発生した光を構成する波長成分の強度比はほぼ一定と見られるからである。或いは、EUV光発生チャンバ内における輻射熱をモニタすることも考えられる。さらに、それらの検出位置を組み合わせても良い。
【0099】
図19〜図22は、図3又は図5に示すレーザシステム300において用いられる短パルス化装置302の具体的な構成を説明するための図である。図19〜図22において、レーザ媒質20a、リアミラー20b、及び、フロントミラー20c又は高反射ミラー20dを含むレーザ共振器は、連続発振ガスレーザ(continuous wave laser)、又は、パルス発振レーザである。
【0100】
図19は、短パルス化装置の第1の実施例を示す模式図である。本実施例においては、短パルス化装置を、ポッケルスセルを用いて構成している。ポッケルスセルとは、結晶に電界を印加することにより結晶の屈折率や異方性が変化するというEO効果(electro optic:電気光学効果)を利用した光学素子である。このポッケルスセルに印加される電界を制御することにより、それを透過する光の偏光面を所望の角度だけ回転させることができる。本実施例においては、ポッケルスセルにより、光の偏光面を90°回転させる。
【0101】
図19の(a)に示すように、短パルス化装置21は、偏光ビームスプリッタ21a及び21cと、ポッケルスセル(PC)21bとを含んでいる。偏光ビームスプリッタ21aは、p偏光を入射光の進行方向と同じ方向に出射し、s偏光を入射光とほぼ直角を為す方向(図の上方)に出射することにより、入射光をp偏光とs偏光とに分離する。また、図19の(b)は、レーザ共振器20から出射したレーザ光のパルス幅を示している。
【0102】
レーザ共振器20から出射したレーザ光の内、p偏光は、偏光ビームスプリッタ21aを透過し、ポッケルスセル21bに入射する。ポッケルスセル21bは、レーザ共振器20のレーザ光出射タイミングと同期して制御されており、所定のタイミングで、所定の時間(例えば、数ナノ秒)だけ活性化される。ポッケルスセル21bが活性化している間にそこを透過したレーザ光は、偏光面を90°回転させられる。このレーザ光(s偏光)は、偏光ビームスプリッタ21cによって反射され、図の上方に出射する。それにより、図19の(c)に示すように、短パルス化されたレーザ光を得ることができる。一方、ポッケルスセル21bが非活性化状態にあるときにそこを透過したp偏光は、偏光面を回転させられることなく、偏光ビームスプリッタ21cを透過する。
【0103】
図20は、短パルス化装置の第2の実施例を示す模式図である。本実施例においては、レーザ共振器の内部に短パルス化装置を配置している。図20に示すように、短パルス化装置22は、レーザ媒質20aと高反射ミラー20dの間に配置された偏光ビームスプリッタ22aと、ポッケルスセル22bと、λ/4波長板22cと、反射ミラー22dとを含んでいる。本実施例においては、ポッケルスセル22bにより、光の偏光面を45°回転させる。
【0104】
短パルス化装置22においてシード光を共振させている間には、ポッケルスセル22bは活性化されている。それにより、レーザ媒質20aから出射し、偏光ビームスプリッタ22aを透過したレーザ光(p偏光)の偏光面は、ポッケルスセル22bを透過することにより45°回転し、λ/4波長板22cを往復することにより90°(45°×2回)回転し、再びポッケルスセル22bを透過することにより、さらに45°回転する。それによりシード光は再びp偏光に戻り、レーザ媒質20aに入射する。このように、シード光を、レーザ媒質20aを介してリアミラー20bと高反射ミラー20dとの間を往復させることにより増幅させる。
【0105】
レーザ発振器から短パルスレーザ光を出射させる際には、ポッケルスセル22bを、所定のタイミング、所定の時間(例えば、数ナノ秒)だけ非活性化すれば良い。それにより、レーザ媒質20aから出射し、偏光ビームスプリッタ22aを透過したp偏光は、その偏光面を回転させられることなくポッケルスセル22bを透過し、λ/4波長板22cを往復することにより偏光面を90°回転されてs偏光となる。そして、そのs偏光は、偏光ビームスプリッタ22aによって図の上方に反射されるので、短パルス化されたレーザ光を得ることができる。
【0106】
本実施例によれば、共振器の内部においてレーザ光の偏光面を揃えるので、レーザエネルギーのロスを低減し、効率良く短パルスすることができる。なお、この場合には、共振器内におけるポッケルスセルの耐久性を考慮すると、パワーの大きな増幅器よりも前段に配置することが望ましい。
【0107】
図21は、短パルス化装置の第3の実施例を示す模式図である。図21の(a)に示す短パルス化装置23は、図20に示す短パルス化装置22に加えて、ポッケルスセル23a及び23b、並びに、偏光ビームスプリッタ23cを有している。ここで、レーザ光を短パルス化しても、図21の(b)に示すように、メインパルスの前後にテールが残ってしまう場合がある。このようなテールが存在すると、後段におけるレーザ光の増幅時に、ゲインを無駄に消費してしまうおそれがある。そのため、この実施例においては、それらのテールをカットするために、2つのポッケルスセル23a及び23bを設けている。これらのポッケルスセル23a及び23bは、活性化状態にされることにより、それを透過する光の偏光面を90°回転させる。
【0108】
ポッケルスセル23a及び23bは、パルス発振と同期して制御されており、所定の遅延時間をそれぞれ与えられて動作する。これらのポッケルスセル23a及び23bが共に非活性化状態の場合に、それらに入射したs偏光はそのまま透過し、s偏光のまま偏光ビームスプリッタ23cにより反射されて図の上方に出射する。テールがカットされたパルスを得るためには、まず、反射ミラー22dによって反射されたs偏光がポッケルスセル23aに入射する際に、メインパルス前のテールが通過したタイミングで、ポッケルスセル23aを活性化する。それにより、メインパルス及びそれに続くテールがp偏光となる。次に、メインパルスがポッケルスセル23bに入射する際に、メインパルスが通過したタイミングで、ポッケルスセル23bを活性化する。それにより、メインパルス後のテールが再びs偏光となる。それにより、メインパルス(p偏光)のみが偏光ビームスプリッタ23cを透過し、テールがカットされた短パルスを外部に取り出すことができる。一方、メインパルス前及び後のテール(s偏光)は、偏光ビームスプリッタ23cによって、図の上方に出射する。
【0109】
図22は、短パルス化装置の第4の実施例を示す模式図である。本実施例においては、短パルス化装置を、ゲルマニウム(Ge)素子を用いて構成している。ゲルマニウム素子とは、レーザ光を照射されることにより、表面の屈折率が変化する光学素子のことである。図22に示すように、短パルス化装置24は、偏光素子24aと、ゲルマニウム素子24bと、短パルスレーザ発振装置24cとを含んでいる。偏光素子24aは、レーザ媒質20aから出射したレーザ光の内、p偏光のみを透過させる。ゲルマニウム素子24bは、光軸に対してブリュースタ角を為すように配置されている。短パルスレーザ発振装置24cは、例えば、Nd:YAGレーザであり、短パルス化タイミングと同期して制御されている。
【0110】
レーザ媒質20aから出射し、偏光素子24aを透過したp偏光面を有するレーザ光は、ゲルマニウム素子24bを透過する。レーザ光を短パルス化する際には、短パルスレーザ装置24cから、ゲルマニウム素子24bに短パルスレーザ光を照射する。ゲルマニウム素子24bの表面においては、この短パルスレーザ光が照射されている間のみ、屈折率が変化し、それによってブリュースタ角が変化する。その結果、p偏光がゲルマニウム素子24bを透過できなくなり、図の矢印の方向に反射される。このようにして、レーザ光を短パルス化することができる。
【0111】
図23〜図25は、図3に示すレーザシステム300において用いられるレーザ光分岐装置302の構成を説明するための図である。
図23は、レーザ光分岐装置の第1の実施例を示す模式図である。本実施例においては、レーザ光分岐装置を、ビームスプリッタを用いて構成している。図23の(a)に示すように、レーザ分岐装置30は、レーザ発振器301から出射したレーザ光の内、一部を透過し、残りを反射するビームスプリッタ30aと、ビームスプリッタ30aから導かれたレーザ光を反射するミラー30bとを含んでいる。ビームスプリッタ30aを透過したレーザ光は、増幅器304(1)に入射し、ビームスプリッタ30a及びミラー30bによって反射されたレーザ光は、増幅器305(1)に入射する。また、A系の増幅器304(1)及びB系の増幅器305(1)は、レーザ発振器301のレーザ光出射タイミング(例えば、繰り返し周波数8kHz)と同期して、交互に活性化される。それにより、図23の(b)に示すように、A系の増幅器304(1)及びB系の増幅器305(1)から、増幅されたレーザ光が交互に(例えば、各々4kHz)出射する。このような構成を用いる場合には、レーザ分岐装置の動作タイミングを制御する必要がないという利点がある。
【0112】
図24は、レーザ光分岐装置の第2の実施例を示す模式図である。本実施例においては、レーザ光分岐装置を、ガルバノスキャナを用いて構成している。図24の(a)に示すように、レーザ分岐装置31は、レーザ発振器301から出射したレーザ光を反射するガルバノスキャナ31aと、ガルバノスキャナ31aによって導かれたレーザ光を反射するミラー31b及び31cとを含んでいる。ガルバノスキャナ31aは、レーザ発振器301のレーザ光出射タイミングと同期して動作を制御されており、ミラー31b及び31cの方向に、レーザ光を交互に反射する。それにより、図24の(b)に示すように、レーザ発振器301から出射したレーザ光は、1パルス毎に光路A及び光路Bに分岐される。そして、光路Aに分岐されたレーザ光は、A系の増幅器に導かれ、光路Bに分岐されたレーザ光は、B系の増幅器に導かれる。このような構成を用いる場合には、レーザ発振器から出射した全てのパルスが一様に増幅されるので、レーザエネルギーのロスを低減することができる。
【0113】
図25は、レーザ光分岐装置の第3の実施例を示す模式図である。本実施例においては、レーザ光分岐装置を、ポッケルスセル(PC)を用いて構成している。図25の(a)に示すように、レーザ分岐装置32は、ポッケルスセル32aと、ポーラライザ32bと、反射ミラー32cとを含んでいる。ポッケルスセル32aは、レーザ発振器301と同期して、活性化・非活性化を制御されている。また、ポーラライザ32bは、第1の偏光面を有するレーザ光を透過し、第2の偏光面を有するレーザ光を反射する。レーザ発振器301から出射したレーザ光がポッケルスセル32aを透過する際に、ポッケルスセル32aを活性化することにより、そのレーザ光の偏光面が第2の偏光面に回転する。その結果、レーザ光は、ポーラライザ32b及びミラー32cによって反射され、光路Bに導かれる。一方、次のレーザ光がポッケルスセル32aを透過する際には、ポッケルスセル32aは非活性化される。それにより、次のレーザ光はポーラライザ32bを透過し、光路Aに導かれる。このようにして、図21の(b)に示すように、レーザ発振器301から出射したレーザ光は、1パルス毎に光路A及び光路Bに分岐される。
このようなポッケルスセル32aは高速動作させることが可能なので、本実施例を用いる場合には、パルス間隔の制御精度を向上させることができる。
【0114】
以上説明したレーザ光分岐装置の第1〜第3の実施例においては、レーザ発振器から出射したレーザ光を2つの光路に分岐しているが、3つ以上に分岐する場合においても、同様の構成を用いることができる。
【0115】
図26〜図31は、図1に示すレーザシステム3において用いられる増幅器の構成を説明するための図である。
図26は、増幅器の第1の実施例を示す模式図であり、増幅器を、レーザチャンバ40内に配置された電極40aによって挟まれるレーザ放電部40bを側面方向から見た様子を示している。本実施例においては、チャンバウィンドウ40cの外側に複数枚の全反射ミラー40dを配置し、レーザ光(シード光)にレーザ放電部40cを複数回往復させることにより、レーザ光の強度を増幅している。例えば、図26に示すように、7枚の全反射ミラー40dを用いる場合には、4つのパスが形成される。
【0116】
図27は、増幅器の第2の実施例を示す模式図である。本実施例においては、2枚の高反射ミラー41a及び41bを用いることにより、レーザ放電部40bに複数のパスを形成している。図27に示すように、チャンバ40の外側には、2枚の高反射ミラー41a及び41bが向かい合うように配置されている。左側のチャンバウィンドウ40cからチャンバ40内に入射したレーザ光は、左右に配置された2枚の高反射ミラー41a及び41bによって反射され、レーザ放電部40bを複数回通過する。それにより、レーザ光は増幅され、チャンバ40外に取り出される。本実施例によれば、ミラーの枚数を減らすことができるので、光学系の調整を容易に行うことができると共に、コストを低く抑えることが可能になる。
【0117】
図28は、増幅器の第3の実施例を示す模式図である。本実施例において、レーザ光を反射するミラーは、チャンバ40内に配置されている。図28の(a)に示すように、チャンバ40には、チャンバウィンドウの替わりに、入力ミラー42a及び出力ミラー42bが取り付けられている。図28の(b)に示すように、入力ミラー42a及び出力ミラー42bにおいて、チャンバ40の内側を向く面の一部の領域には、反射防止コーティングが施されており、残りの領域には、高反射コーティングが施されている。また、入力ミラー42a及び出力ミラー42bのチャンバ40の外側を向く面の一部には、反射防止コーティングが施されている。
【0118】
入力ミラー42aの反射防止コーティング領域を透過してチャンバ40内に入射したレーザ光は、入力ミラー42a及び出力ミラー42bの高反射コーティング領域において反射され、レーザ放電部40bを複数回往復する。それにより、レーザ光は増幅され、出力ミラー42bの反射防止コーティング領域を透過してチャンバ40外に取り出される。
本実施例によれば、レーザ光がチャンバウィンドウを透過する際に生じるエネルギーロスを低減すると共に、省スペース化を図ることができる。
【0119】
図29は、増幅器の第4の実施例を示す模式図である。本実施例においては、凹面鏡を用いてレーザパスを形成している。図29は、レーザ放電部40b上方から見た様子を表している。なお、レーザ放電部40bを形成するための一方の電極は省略されている。図29の(a)に示すように、チャンバ40には、一方のチャンバウィンドウの替わりに、反射面に高反射コーティングが施された凹面鏡43aが配置されており、チャンバ40の外側には、凹面鏡43bが配置されている。図29の(b)に示すように、凹面鏡43bには、レーザ光を通過させるための空孔43cが形成されている。凹面鏡43bによりチャンバ40方向に導かれたレーザ光は、凹面鏡43a及び凹面鏡43bによって反射され、レーザ放電部40bを複数回往復する。それにより、レーザ光は増幅され、凹面鏡43bの空孔を通過して外部に取り出される。
【0120】
図29においては、凹面鏡43aとして、球面状の反射面を有するスフェリカルミラーを用いているが、放物面状の反射面を有する放物面ミラーや、円柱状の反射面を有するシリンドリカルミラーを用いても良い。また、凹面鏡43bについても、図29の(c)に示すように、スリットが形成されたスフェリカルミラーや、図29の(d)又は(e)に示すように、空孔又はスリットが形成されたシリンドリカルミラーを用いても良い。さらに、凹面鏡43bにおいては、空孔やスリットを形成する替わりに、その領域に反射防止コーティングを施すことにより、レーザ光の透過領域を形成しても良い。
【0121】
本実施例におけるように、ミラーの形状を工夫し、適切なミラー曲率を用いてレーザ光の焦点位置を調整することにより、チャンバウィンドウ面におけるレーザフルーエンスを変化させることができる。従って、チャンバウィンドウ面におけるレーザフルーエンスを低下させることにより、チャンバウィンドウ40cの長寿命化を図ることが可能になる。
以上説明した図26〜図29に示す実施例においては、レーザ発振器から出射したレーザ光(シード光)をコリメートして増幅段に入射させても良い。
【0122】
図30は、増幅器の第5の実施例を示す模式図である。本実施例においては、レーザ発振器と増幅器との間にコリメート部を配置している。コリメート部は、スフェリカル又は放物面の反射面を有する1枚以上の凹面鏡又はレンズを用いることによって構成することができる。例えば、図30の(a)には、2枚の凹面鏡44a及び44bを組み合わせたコリメート部44が示されており、図30の(b)には、凸レンズ45a及び凹レンズ45bを組み合わせたコリメート部45が示されている。
【0123】
ここで、レーザ発振器から出射した強度の比較的弱いレーザ光を増幅するときに、エネルギー密度が低いために十分な増幅効率を得られない場合がある。その場合には、この実施例におけるように、増幅段への入射光をコリメートすることにより、注入エネルギー密度を高くすることができるので、増幅効率を稼ぐことが可能になる。即ち、増幅段の増幅率はほぼ一定なので、元の注入エネルギーを高くすることにより、増幅後のレーザ出力をほぼ線形的に増加させることができる。
【0124】
図31は、増幅器の第6の実施例を示す模式図である。図31は、増幅器の一種である再生増幅器の構成を示すブロック図である。図31に示すように、増幅器46は、増幅ゲイン物質(レーザ媒質)46aと、ポーラライザ46b及び46cと、ポッケルスセル46d及び46eと、λ/4波長板46fと、反射ミラー46g及び46hとを含んでいる。増幅ゲイン物質46aには、レーザシステム制御装置4の制御の下で動作するパルス電源供給部47からパルス電源を与えられる。また、ポッケルスセル46d及び46eには、レーザシステム制御装置4の制御の下で動作するパルス供給部48a及び48bから、パルス信号がそれぞれ与えられる。ポッケルスセル46d及び46eは、非活性化状態にあるときには、光をそのまま透過させ、活性化状態にされることにより、そこを透過する光の偏光面を45°回転させる。また、λ/4波長板46fは、そこを透過する光の偏光面を1/4波長分(即ち、π/2=45°)だけ回転させる。
【0125】
このような再生増幅器46に、ある偏光面を有するレーザ光を入射する。このレーザ光は、ポーラライザ46b及び非活性化状態のポッケルスセル46dを透過し、波長板46fを透過することによって偏光面を45°回転させられる。そして、そのレーザ光は、反射ミラー46gによって反射され、再び波長板46fを透過することにより偏光面を45°回転させられ、非活性化状態のポッケルスセル46dを透過する。その結果、レーザ光は、最初の状態から90°回転させられたことになるので、ポーラライザ46bによって反射され、進行方向を変更される。さらに、レーザ光は、増幅ゲイン物質46aを通過することによって増幅される。次に、増幅されたレーザ光は、ポーラライザ46cによって反射され、非活性化状態のポッケルスセル46eを透過し、反射ミラー46hによって反射されて、再び、非活性化状態のポッケルスセル46eを透過する。そして、ポーラライザ46cによって発射されて、再び、増幅ゲイン物質46aを通過することにより、増幅される。
【0126】
次に、増幅されたレーザ光は、ポーラライザ46bによって反射され、活性化状態にされたポッケルスセル46d及び波長板46fを透過し、反射ミラー46によって反射され、再び、波長板46f及び活性化状態にされたポッケルスセル46dを透過する。それにより、レーザ光は、偏光面を45°ずつ4回、合計180°回転させられるので、再び、ポーラライザ46bによって反射され、増幅ゲイン物質46aの方向に導かれる。このように、レーザ光は、反射ミラー46gと反射ミラー46hとの間を、増幅ゲイン物質46aを介して複数回往復することにより増幅される。
【0127】
レーザ光が増幅ゲイン物質46aのゲインを十分に消費した後、増幅されたレーザ光を取り出す場合には、ポッケルスセル46eを活性化させる。それにより、増幅ゲイン物質46aを通過し、ポーラライザ46cによって反射されたレーザ光は、活性化状態のポッケルスセル46eを透過することにより、偏光面を45°回転させられ、反射ミラー46hによって反射された後で、活性化状態のポッケルスセル46eを再び透過する際に、さらに偏光面を45°回転させられる。それにより、レーザ光は、ポーラライザ46cによって反射された直後から、偏光面を90℃回転させられたことになるので、ポーラライザ46cを透過して増幅器46の外部に出射する。
【0128】
このような再生増幅器においては、増幅ゲインを無駄なく使用することができるので、高い増幅率を得ることができる。なお、一般に、ポッケルスセルは高いパワーの下では熱的に損傷を受けるおそれがあるので、このような再生増幅器は、比較的パワーの低い最初の段の増幅器として用いることが望ましい。
【0129】
図32〜図37は、図1に示すターゲットモニタ装置6の構成を説明するための図である。以下において、ターゲット物質の横位置とは、ターゲット物質に照射されるレーザ光の光軸及びターゲット物質の軌道に対して垂直方向におけるターゲット物質の位置のことをいい、ターゲット物質の奥行き位置とは、レーザ光の光軸方向におけるターゲット物質の位置のことをいう。
【0130】
図32は、ターゲットモニタ装置の第1の実施例を示す模式図である。図32の(a)に示すように、ターゲットモニタ装置60は、ラインセンサ60aと、波形処理装置60bと、照明装置60cとを含んでいる。ラインセンサ60aとしては、7kHz以上の動作に対応するために、高速ラインセンサを用いることが望ましい。波形処理装置60bは、ラインセンサ60aから出力された検出信号について所定の処理を行う。照明装置60cは、ターゲット物質の軌道の反対側からラインセンサ60aに向けて光を照射する。照明装置60cとしては、輝度の高い可視波長レーザ等を用いることが望ましい。
【0131】
図32の(a)に示すように、照明光によって照射された領域をターゲット物質が通過すると、ラインセンサ60aにターゲット物質の影が写される。図32の(b)は、ラインセンサ60aから出力された検出信号を時系列に表している。図32の(b)に示すように、図の上方から滴下するターゲット物質の影を表す波形の幅は、時間の経過と共に次第に大きくなり、ターゲット物質がラインセンサ60aの正面を通過するときに最大となり、その後、次第に小さくなる。従って、ターゲット物質の射出時間間隔を検出するためには、波形の幅がピークに達した時から、波形の幅が次のピークに達するまでの時間を測定すれば良い。また、径が知られている物体をターゲット物質の軌道に配置したときのラインセンサ60aの出力信号におけるチャンネル数と実際の物体の長さとを予め較正しておくことにより、ラインセンサ60aの出力信号に基づいて、ターゲット径、及び、ターゲット物質の横位置を検出することができる。さらに、そのようにして検出されたターゲット径と、ラインセンサ60aの出力信号において波形が消失してから波形の幅がピークに達し、再び波形が消失するまでの時間とに基づいて、ターゲット物質の射出速度を算出することができる。波形処理装置60bによって求められたターゲットの射出時間間隔、射出速度、位置、及び、ターゲット径等の情報は、図1に示すレーザシステム制御装置4に供給される。
【0132】
図33は、ターゲットモニタ装置の第2の実施例を示す模式図である。本実施例においては、2つのラインセンサを用いてターゲット物質を検出している。図33に示すように、ターゲットモニタ装置61は、2つのラインセンサ61a及び61b、波形処理装置61c、及び、2つの照明装置61d及び61eとを含んでいる。2つのラインセンサ61a及び61bは、所定の間隔だけ離して、平行に配置されている。また、2つの照明装置61d及び61eは、ラインセンサ61a及び61bに向けて、光をそれぞれ照射する。
【0133】
このように2つのラインセンサを用いることにより、射出されるターゲット物質の位置間隔を正確に測定することができる。ここで、2つのラインセンサの間隔をd(m)、ラインセンサ61aによって検出された波形がピークとなるときの時刻をT1、ラインセンサ61aによって検出された波形が、時刻T1後初めてピークとなるときの時刻をTn1、ラインセンサ61bによって検出された波形がピークとなるときの時刻をT2、ラインセンサ61bによって検出された波形が、時刻T2後初めてピークとなるときの時刻をTn2、ラインセンサ61aによって検出された波形の幅をL1(ch)、長さが既知である物体をラインセンサ61aによって検出した場合の較正値をR(m/ch)とする。ここで、測定を容易且つ確実に行うためには、2つのラインセンサの間隔dを、ターゲット物質の射出位置間隔よりも短くする必要がある。これらの値を用いることにより、ターゲット径Dt、ターゲット速度Vt、ターゲットの射出時間間隔Tt、ターゲットの射出位置間隔Ltは、次式によって表される。
【0134】
ターゲット径:Dt=L1×R (m)
ターゲット速度:Vt=d/(T2−T1) (m/s)
射出時間間隔:Tt=Tn1−T1 (s)、又は、Tt=Tn2−T2 (s)
射出位置間隔:Lt=Vt×Tt (m)
また、ターゲット物質の横位置は、ターゲット径Dtの計測時における波形のチャンネルによって表される。
【0135】
波形処理装置61cは、上記の式を用いてターゲット物質の時間又は位置間隔や、ターゲット物質の位置を求め、レーザシステム制御装置4に出力する。また、波形処理装置61cは、それ以外の測定値(例えば、ターゲット速度)をターゲット制御装置7やEUV光源制御装置8に出力することにより、それらの測定値を制御パラメータとして用いても良い。
【0136】
図34は、ターゲットモニタ装置の第3の実施例を示す模式図である。本実施例においては、ターゲット物質を異なる2つの方向から検出している。なお、図34の(a)〜(c)においては、ターゲット物質の進行方向をプラスZ方向としている。
図34の(a)に示すように、ターゲットモニタ装置62は、2つのラインセンサ62a及び62bと、波形処理装置62cと、2つのラインセンサ62a及び62bに向けて光をそれぞれ照射する照明装置62d及び62eとを含んでいる。ラインセンサ62a及び62bは、それらの計測軸が角度Θ(0<Θ<180)を為すように配置されている。この角度Θは、90°であることが望ましい。
【0137】
図34の(b)は、図34の(a)に示すターゲットモニタ装置62を、Z軸から見た図を示している。このように、2つの方向からターゲット物質を検出することにより、ターゲット物質の横位置だけでなく、奥行き位置を検出することができる。ここで、横位置とは、レーザ光の出射方向及びターゲット物質の射出方向の双方に垂直な軸上における位置のことであり、奥行き位置とは、レーザ光の出射方向における位置のことである。これらの情報は、ターゲット制御装置7に出力されることにより、ターゲット位置の補正に利用することができる。
【0138】
図34の(c)は、図34の(a)に示すターゲットモニタ装置62を、Y軸から見た図(XZ平面)を示している。図33において説明したのと同様の手法を用いることにより、距離dだけ離して配置されたラインセンサ62a及び62bからの検出信号に基づいて、ターゲット物質の射出位置間隔Lt等を求めることができる。
【0139】
ここで、図33又は図34に示すように、複数のラインセンサを用いてターゲットモニタ装置を構成する場合には、先にも述べたように、ラインセンサの間隔dをターゲット物質の射出位置間隔Ltよりも短くする必要がある。しかしながら、ラインセンサの大きさや、ターゲット径等の寸法の制約から、d<Ltという関係を満たせない場合がある。また、照明光の発散角が大きい場合や、ターゲット物質が非常に小さい場合には、ラインセンサをターゲット物質の近傍に配置する必要が生じる。そうしなければ、ラインセンサからの出力信号において、波形のS/N比が取れなくなってしまうからである。そのためには、サイズが小さいラインセンサを用いる必要があるが、実際に用意できるラインセンサの大きさについても制約が生じる。
【0140】
図35は、ターゲットモニタ装置の第4の実施例を示す模式図である。上記のような理由から、本実施例においては、照明装置からラインセンサに向けて照射される光の光路上に、レンズを含む光学系を配置している。即ち、照明装置63cから出射する照明光の光路上には凸レンズ63eが配置されており、それにより、照明光は、集光されてラインセンサ63aに入射する。一方、照明装置63dから出射する照明光の光路上には、凸レンズ63f及び反射ミラー63gが配置されており、凸レンズ63fによって集光された照明光が、反射ミラー63gによって進行方向を変更されてラインセンサ63bに入射する。ラインセンサ63a及び63bの検出信号は、波形処理装置63hに出力される。
【0141】
このように、レンズ等の光学系により照明光をコリメートしてラインセンサに入射させることにより、照明光の発散角を補正することができる。また、反射ミラー等の光学系を用いることにより、上記のd<Dtのような必要な条件を満たしつつ、ラインセンサの配置に自由度を持たせることができる。なお、図35においては、ラインセンサ63a及び63bに入射する照明光の光路に、2つのレンズ63e及び63fをそれぞれ配置しているが、それらのレンズの替わりに、シリンドリカル凸レンズのように2つの光路において兼用できる光学系を用いても良い。また、図35においては、照明光の光路上におけるターゲット物質とラインセンサ63a及び63bとの間にレンズ63e及び63fをそれぞれ配置しているが、照明装置63c及び63dとターゲット物質との間にレンズを配置しても良い。
【0142】
図36は、ターゲットモニタ装置の第5の実施例を示す模式図である。本実施例においては、2次元センサを用いてターゲット物質を検出している。図36の(a)に示すように、ターゲットモニタ装置64は、高速CCDカメラ64aと、画像処理装置64bと、照明装置64cとを含んでいる。
高速CCDカメラ64aは、照明装置64cから出射した照明光によって照射されたターゲット物質を撮像し、検出信号を出力する。図36の(b)は、出力された検出信号に基づいて生成されたターゲット物質の画像を示している。このような画像に基づいて、画像処理装置64bは、ターゲット射出位置間隔や、ターゲット物質の横位置等を算出する。それらの情報は、レーザシステム制御装置4等に出力され、レーザ光の出射時間間隔等を制御する際に用いられる。
【0143】
なお、図36の(a)に示すターゲットモニタ装置においては、撮像素子としてCCDを用いているが、その他にも、CMOSセンサのように、画像を2次元的に取得できるものであれば、どのような撮像素子を用いても構わない。また、図36に示すターゲットモニタ装置においても、図35に示すのと同様に、光路上に光学系を配置しても良い。それにより、使用されるCCDカメラのサイズに合わせて、照明光の径(幅)や光路を調節することができる。
【0144】
図37は、ターゲットモニタ装置の第6の実施例を示す模式図である。本実施例においては、2つの2次元センサを用いて、ターゲット物質を異なる2つの方向からターゲット物質を検出している。
図37の(a)に示すように、ターゲットモニタ装置65は、2つの高速CCDカメラ65a及び65bと、画像処理装置65cと、2つの照明装置65d及び65eとを含んでいる。高速CCDカメラ65a及び65bは、それらの計測軸が角度Θ(0<Θ<180)を為すように配置されている。なお、図37の(a)においては、Θ=90°となっている。
【0145】
図37の(b)は、高速CCDカメラ65aによって取得されたターゲット物質の画像を示しており、図37の(c)は、高速CCDカメラ65bによって取得されたターゲット物質の画像を示している。画像処理装置65cは、異なる2つの方向から撮影されたターゲット物質の画像に基づいて、ターゲット物質の射出位置間隔又は射出時間間隔や、ターゲット物質の横位置だけでなく、ターゲット物質の奥行き位置を検出することができる。それらの情報の内、ターゲット物質の射出時間間隔は、レーザシステム制御装置4に出力され、レーザ光の照射間隔を調整する際に用いられる。また、ターゲット物質の射出時間間隔及びターゲット物質の横位置及び奥行き位置は、ターゲット制御装置7に出力され、ターゲット物質の射出間隔及び射出位置を調整する際に用いられる。
【0146】
図38は、図1に示すターゲット射出装置5及びターゲット制御装置7の一実施例を示す模式図である。このターゲット射出装置5は、液体キセノンのドロップレットを射出する装置である。
図38に示すターゲット射出装置5は、圧力調整部50と、マスフローコントローラ51と、ベローズ配管52と、真空ステージ53と、液化室54と、冷凍機55と、ヒータ56と、温度センサ57と、加振装置58と、噴射ノズル59とを含んでいる。圧力調整部50は、外部からターゲット射出装置5内に高純度キセノンガスを供給する際に、ガス圧を調整する。
【0147】
また、ターゲット制御装置7は、制御部70と、圧力制御部71と、流量制御部72と、温度制御部73と、位置制御部74と、射出制御部75とを含んでいる。制御部70は、EUV光源制御装置8から供給されるターゲット径指令値及びターゲット射出間隔指令値に従って、それらの指令値によって規定されたドロップレットを射出するように、上記制御部71〜75に制御パラメータを振り分ける。また、制御部70は、レーザシステム制御装置4から供給されるターゲット間隔及びターゲット位置修正要求や、ターゲットモニタ装置6から供給されるターゲット間隔及びターゲット位置情報並びにターゲット径情報に基づいて、上記の制御パラメータを修正する。
【0148】
ターゲット射出装置5は、外部の高純度キセノンを導入する配管に接続されている。圧力調整器50は、圧力制御部71の制御の下で、ターゲット射出装置5におけるキセノンガスの圧力を調整する。また、マスフローコントローラ51は、流量制御部72の制御の下で、ターゲット射出装置5におけるキセノンガスの流量を調整する。
【0149】
ターゲット径及びターゲット射出間隔の値を変化させる等の目的で、加振装置58の振動周波数を急激に変化させる場合(例えば、1kHzから8kHz)には、圧力制御部71及び/又は流量制御部72は、それに伴ってキセノンガスの流量を増加させるように、圧力調整器50又はマスフローコントローラ51を制御する。また、その際に、圧力制御部71又は流量制御部72は、冷凍機55の冷却能力を一時的に変化させるよう、温度制御部73に指令を与えても良い。
【0150】
真空ステージ53は、位置制御部74の制御の下で、XY面(水平面)内を移動する。真空ステージ53には、液化室54及び噴射ノズル59が配置されており、それにより、噴射ノズル59の横位置及び奥行き位置が調整される。そのため、真空ステージ53の上流側には、液化室54にキセノンガスを供給するためのフレキシブルなベローズ配管が配置されている。
【0151】
液化室54においては、キセノンガスの液化が行われる。液化室54には、温度制御部73の制御の下で動作する冷凍機55が接続されており、それにより、液化室54に導入されたキセノンガスが液化される。また、液化室54には、ヒータ56及び温度センサが配置されている。温度制御部73は、温度センサ57のモニタ値に基づいてヒータ56を制御することにより、液化室54の内部及び噴射ノズル59の周辺を所定の温度に維持し、キセノンが凍結するのを防いでいる。
【0152】
このように、定常状態においては、液化室54の内部は一定の温度に保たれている。しかしながら、先に述べたように、ターゲット径等を変化させるために、キセノンの流量を急激に変化させる場合には、冷却能力が低下してしまうおそれがある。そのような場合に、温度制御部73は、圧力制御部50又は流量制御部51からの指令に従って、一時的に冷却能力が変化するように冷凍機55やヒータ56を制御する。それにより、ドロップレット生成における安定性が低下し、それが元に戻るまでの遅れ時間を、最小限に留めるようにしても良い。
【0153】
なお、本実施例においては、ターゲット物質として液体のキセノンを用いるため、液化室54を設けているが、水、エタノール、錫又はリチウム又はインジウム含有液体のように、液化する必要のないターゲット物質を用いる場合には、液化室54を省略しても良い。
【0154】
加振装置58は、ピエゾ素子を含んでおり、射出制御部75の制御の下で、噴射ノズル59に振動を与える。射出制御部75は、EUV光源制御装置8から与えらえらたターゲット径指令値及びターゲット射出間隔指令値とに基づいて、加振装置58における振動周波数及び振動ストロークを決定し、ピエゾ素子に所定の電圧信号を印加する。その際に、射出制御部75は、ターゲットモニタ装置6から出力されたターゲット間隔モニタ情報や、レーザシステム制御部4から出力されたターゲット間隔修正要求に基づいて、ピエゾ素子に与えられる電圧信号について、刻々と修正演算を行う。それにより、ドロップレットの射出間隔を、ターゲット射出間隔指令値に安定化させることができる。
【0155】
なお、ドロップレットの生成方式としては、噴射ノズルから吐出するターゲット噴流を所定の周波数で振動させて擾乱させることにより液滴化するコンティニュアス・ジェット(continuous jet)方式を用いても良いし、噴射ノズルからターゲット物質を必要なときだけ吐出させるドロップ・オン・デマンド(drop on demand)方式を用いても良い。
【0156】
射出制御部75は、ターゲットモニタ装置5やその他の検出装置から供給されるターゲット径情報に基づいて、ターゲットの径を制御しても良い。その場合には、噴射ノズル59から噴射するターゲット噴流の速度や径を調節すれば良い。また、ターゲット物質の位置情報を取得できる場合には、ターゲット物質の軌道がレーザシステムから出射するレーザ光の光軸上の焦点付近を通るように、真空ステージを調節すれば良い。
【符号の説明】
【0157】
1…EUV光発生チャンバ、2…EUV光モニタ装置、3、300、310、320、320'、330、340、350、360、370、380、390…レーザシステム、301、311、312…レーザ発振器、21〜24、302、313、314…短パルス化装置、30、31、32、303…レーザ光分岐装置、303a…EO−Qスイッチ、303b…ポーラライザ、303c…反射ミラー、304(1)、302(2)304(3)、305(1)、305(2)、305(3)、315(1)、315(2)、316(1)、316(2)…増幅器、306、317…パルス間隔モニタ、307、308、351〜356(2)、361〜366(2)371、372、381〜386(2)、391〜396(2)…レーザエネルギーモニタ、20a…レーザ媒質、20a…リアミラー、20c…フロントミラー、21a、21c、22a、23c…偏光ビームスプリッタ、21b、22b、23a、23b…ポッケルスセル、22c…波長板、22d…反射ミラー、24a…偏光素子、24b…ゲルマニウム素子、24c…短パルスレーザ発振装置、30a…ビームスプリッタ、30b、31b、31c、32c…ミラー、31a…ガルバノスキャナ、32a…ポッケルスセル(PC)、32b…ポーラライザ、40…レーザチャンバ、40a…電極、40b…レーザ放電部、40c…チャンバウィンドウ、40d…全反射ミラー、41a、41b…高反射ミラー、42a入力ミラー、42b…出力ミラー、43a、43b、44a、44b…凹面鏡、43c…空孔、45a…凸レンズ、46a…増幅ゲイン物質、46b、46c…ポーラライザ、46d、46e…ポッケルスセル(PC)、46f…波長板、46g、46h…反射ミラー、48a、48b…パルス供給部、4、410、420、430、440、450、460、470、480、490…レーザシステム制御装置、401、431、441、451、461、471、481、491…エネルギー制御部、402、411、421…交互発振タイミング制御部、412、424、425、445、465…短パルス化タイミング制御部、413…レーザ光分岐制御部、414、415、426、427…増幅タイミング制御部、422、423…タイミング制御部、432、433、442、443(1)、443(2)、444(1)、444(2)、462〜464(2)、472〜477(2)、491〜497(2)…エネルギー調整部、5…ターゲット射出装置、50…圧力調整部、51…マスフローコントローラ、52…ベローズ配管、53…真空ステージ、54…液化室、55…冷凍機、56…ヒータ、57…温度センサ、58…加振装置、59、501…噴射ノズル、6、60〜65…ターゲットモニタ装置、60a、61a、61b、62a、62b、63a、63b…ラインセンサ、60b、61c、62c…波形処理装置、60c、61d、61e、62d、62e、63c、63d、64c、65d、65e…照明装置、63e、63f…凸レンズ、63g…反射ミラー、64a、64b、65a、65b…高速CCDカメラ、64b、65c…画像処理装置、70…制御部、71…ターゲット制御部、72…圧力制御部、73…温度制御部、74…位置制御部、75…射出制御部、7…ターゲット制御装置、8…EUV光源制御装置、9…露光機、11…集光光学系、12…窓、13…集光ミラー、14…ターゲット回収筒、15…ドロップレットターゲット
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外(EUV:extreme ultraviolet)光源装置において、ターゲットを照射するレーザ光を発生するレーザシステムと、その制御装置とによって構成される極端紫外光源装置用ドライバレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスの微細化に伴って光リソグラフィも微細化が急速に進展しており、次世代においては、100〜70nmの微細加工、更には50nm以下の微細加工が要求されるようになる。例えば、50nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光源と縮小投影反射光学系(reduced projection reflective optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光源としては、レーザビームをターゲットに照射することによって生成するプラズマを用いたLPP(laser produced plasma)光源と、放電によって生成するプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)光源と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)光源との3種類がある。これらの内でも、LPP光源は、プラズマ密度をかなり大きくできるので黒体輻射に近い極めて高い輝度が得られ、ターゲット物質を選択することにより必要な波長帯のみの発光が可能であり、ほぼ等方的な角度分布を持つ点光源であるので光源の周囲に電極等の構造物がなく、2πsteradianという極めて大きな捕集立体角の確保が可能であること等の利点から、数十ワット以上のパワーが要求されるEUVリソグラフィ用の光源として有力であると考えられている。
【0004】
従来より、LPP型のEUV光源においては、プラズマを生成するための励起用レーザとして、YAGレーザの多段増幅システムが有力候補として研究されてきた。一般に、EUV光源のスペックとしては、出力115W以上、繰り返し周波数7kHz〜10kHz以上が要求されるが、YAGレーザによるレーザシステムは、比較的取扱が容易であると共に、高い繰り返し周波数を得やすいからである。しかしながら、YAGレーザによるレーザシステムは高価であるため、産業用としてはあまり適切ではない。そのため、励起用レーザとして、比較的安価なガスレーザを用いることが検討されている。そのため、ガスレーザを用いて高い繰り返し周波数を実現できる増幅システムが望まれる。
【0005】
関連する技術として、特許文献1には、整形された放射線源が所望の周波数及び所望の形状で放射線を放射する整形プラズマ放電システムが開示されている。この特許文献1には、図12や図13に示されるように、レーザ増幅システムを含むプラズマ放電システムの形態も開示されている。しかしながら、システムを動作させる際における複数の増幅段の駆動タイミングやそれらの制御方法については示されていない。
【0006】
特許文献2には、高輝度軟X線を、デブリフリー且つすぐれたX線変換効率で作り出すために、バブルガスジェット装置で高真空チャンバに希ガスを噴出することによって希ガスクラスターを発生させ、高出力レーザ装置で希ガスクラスターに超短パルス高出力レーザを集光して照射し、軟X線を発生するレーザ励起X線発生装置が開示されている。この特許文献2においては、増幅器として、TEA(transversely exited atmospheric)ガスレーザの一種であるエキシマレーザが用いる例が開示されている。しかしながら、その際におけるエキシマレーザの制御方法については示されていない。また、EUV光源に要求される高繰り返し周波数に対する対応策についても示されていない。
【0007】
特許文献3には、EUV光発生のために用いられる高ピーク出力レーザ装置であって、光パルスを供給するための少なくとも3つのパルスレーザと、ターゲットのほぼ同じ位置のスポット上に、ほぼ同じタイミングでそれらのパルスを導く手段とを具備するレーザ装置等が開示されている。しかしながら、特許文献3には、レーザ増幅システムについての言及はなく、レーザ光の増幅や制御のための具体的な方法等についても示されていない。
【0008】
特許文献4には、X線を生成するために用いられるレーザシステムとして、塩化キセノンエキシマ増幅器と、塩化キセノンエキシマ前置増幅器と、塩化キセノンエキシマ前置増幅器及び塩化キセノンエキシマ増幅器に合わせてピコ秒シードパルスを生成する手段と、100×10−6cm2よりも小さいスポット領域上に出力パルスレーザビームをフォーカスする手段とを具備するレーザシステムが開示されている。特許文献4には、エキシマレーザを増幅器として用いるシステムにおいて、シードレーザと増幅器との同期方法について、詳しく開示されている。このシステムにおいては、パルストレインジェネレータによって増幅段における繰り返し制限を回避しているが、その際に、光学的な方法を用いているので(第4段の第48行〜第5段の第5行)、レーザが反射又は透過するときのエネルギーロスが懸念される。
【0009】
特許文献5には、1〜10ピコ秒の範囲のパルス幅を有する超短パルス列で、X線発生用ターゲットにフォーカスするレーザ光を供給することにより、レーザエネルギーのX線エネルギーへの変換効率を上げ、平均的なX線出力パワーを大きくすることができるレーザ励起X線源が開示されている。
【0010】
特許文献6には、露光雰囲気を制御したチャンバ内で、原版のパターンを基板に転写するX線露光装置において、パルス光を照射するための光源を制御する発光制御部と、基板上に照射されたパルス光量を検出する強度モニタ部と、検出されたパルス光量に基づき、チャンバ内における局所領域の露光雰囲気を変更して、照射されたパルス光の光量を制御する光量制御部とを有するX線露光装置が開示されている。
【0011】
特許文献7には、マイクロターゲットをマイクロターゲットパス上に分配する分配装置と、エネルギーパスに沿ってエネルギービームを放出するエネルギー源と、エネルギーパス内とマイクロターゲットパス内とに配置された照射ゾーン(マイクロターゲットパスは照射ゾーン内のエネルギーパスを横切っている)と、照射ゾーン内で生成されたラジエーションを受信するように構成されたビームラインと、照射ゾーンの下流においてマイクロペレットパスに沿う残渣(debris)除去装置とを備え、固体材料を含むマイクロターゲットを使用するラジエーション生成システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許US6,307,913B1号明細書(図12、図13)
【特許文献2】特開2001−68296号公報(第5頁、図7)
【特許文献3】米国特許US2004/22295A1号明細書
【特許文献4】米国特許US5,539,764号明細書
【特許文献5】米国特許US5,654,998号明細書
【特許文献6】特開2004−47518号公報
【特許文献7】特表2003−513418号公報
【概要】
【0013】
しかしながら、上記の特許文献1〜7のいずれにおいても、レーザ増幅システムにおける同期や出力を規定値に従って制御しており、動作中に変化する可能性があるターゲット物質の条件(噴射位置等)やEUV光の強度に対応できるものではない。また、原料や形状等が異なる様々なターゲット物質がある中で、現状では未だ支配的な方式が確立していないが、どのようなターゲット物質を用いた場合においても、ターゲット物質の種類に応じて効果的な反応を示すように、即座に対応できるシステムも構築されていない。即ち、EUV光源用ドライバレーザを効率的に稼動させることができるシステムやその制御方法は、未だに提案されていない。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る極端紫外光源装置用ドライバレーザシステムは、レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置において用いられるドライバレーザシステムであって、MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザ光出射手段であって、単一のレーザ発振器においてレーザ光を発生し、該レーザ光のパルス幅が所定の値まで短くなるようにレーザ光のパルス幅を制御して、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系において該レーザ光を増幅する上記レーザ光出射手段と、複数の放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するようにレーザ光出射手段の動作タイミングを制御する制御手段とを具備する。
【0015】
また、本発明の第2の観点に係る極端紫外光源装置用ドライバレーザシステムは、レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置において用いられるドライバレーザシステムであって、MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザ光出射手段であって、単一のレーザ発振器においてレーザ光を発生し、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系において該レーザ光を増幅する上記レーザ光出射手段と、複数の放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するようにレーザ光出射手段の動作タイミングを制御すると共に、発生した極端紫外光のエネルギーに関する情報に基づいて、複数のレーザ増幅系の各々から所定の強度を有するレーザ光が出射するようにレーザ光出射手段を制御する制御手段とを具備する。
【0016】
さらに、本発明の第3の観点に係る極端紫外光源装置用ドライバレーザシステムは、レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置において用いられるドライバレーザシステムであって、MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザ光出射手段であって、単一のレーザ発振器においてレーザ光を発生し、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系において該レーザ光を増幅する上記レーザ光出射手段と、複数の放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するようにレーザ光出射手段の動作タイミングを制御すると共に、射出されたターゲット物質の位置に関する情報に基づいて、レーザ光出射手段から出射したレーザ光がターゲット物質の所定の領域を照射するように、ターゲット物質を射出する手段を制御する制御手段とを具備する。
【0017】
本発明によれば、レーザ光出射手段において、複数の放電励起式ガスレーザ増幅系によりレーザ光を増幅し、それらの放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光を順次出射するので、EUV光源装置において必要とされる程度の高出力を有するレーザ光を、高い繰り返し周波数でターゲット物質に照射することが可能になる。また、所望のパルス幅を有するレーザ光を所望の繰り返し周波数で出射することができるので、ターゲット物質の種類や供給方式に応じて、EUV光変換効率の高い照射条件を安定して実現することができる。さらに、レーザ光出射手段の動作タイミングや出力エネルギーを、ターゲット物質の位置やEUV光エネルギーに関する情報に基づいて制御するので、様々な条件の変化に対応して、EUV光を安定して発生させることができる。そのような良好な性能を有すEUV光源装置用レーザドライブシステムにおいて、安価なガスレーザを用いることにより、EUV光源装置のコストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る露光システムの構成を示すブロック図である。
【図2】EUV光の発生原理を説明するための模式図である。
【図3】レーザシステムの第1の実施例を示すブロック図である。
【図4】図3に示すレーザシステムの具体的な構成を示す模式図である。
【図5】レーザシステムの第2の実施例を示すブロック図である。
【図6】レーザシステム制御装置の第1の実施例を示すブロック図である。
【図7】図6に示すレーザシステム制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】図6に示すレーザシステム制御装置の変形例を示すブロック図である。
【図9】レーザシステム制御装置の第2の実施例を示すブロック図である。
【図10】レーザシステム制御装置の第3の実施例を示すブロック図である。
【図11】図10に示すレーザシステム制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】レーザシステム制御装置の第4の実施例を示すブロック図である。
【図13】図12に示すレーザシステム制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】レーザシステム制御装置の第5の実施例を示すブロック図である。
【図15】レーザシステム制御装置の第6の実施例を示すブロック図である。
【図16】レーザシステム制御装置の第7の実施例を示すブロック図である。
【図17】レーザシステム制御装置の第8の実施例を示すブロック図である。
【図18】レーザシステム制御装置の第9の実施例を示すブロック図である。
【図19】短パルス化装置の第1の実施例を示す模式図である。
【図20】短パルス化装置の第2の実施例を示す模式図である。
【図21】短パルス化装置の第3の実施例を示す模式図である。
【図22】短パルス化装置の第4の実施例を示す模式図である。
【図23】レーザ光分岐装置の第1の実施例を示す模式図である。
【図24】レーザ光分岐装置の第2の実施例を示す模式図である。
【図25】レーザ光分岐装置の第3の実施例を示す模式図である。
【図26】増幅器の第1の実施例を示す模式図である。
【図27】増幅器の第2の実施例を示す模式図である。
【図28】増幅器の第3の実施例を示す模式図である。
【図29】増幅器の第4の実施例を示す模式図である。
【図30】増幅器の第5の実施例を示す模式図である。
【図31】増幅器の第6の実施例を示す模式図である。
【図32】ターゲットモニタ装置の第1の実施例を示す模式図である。
【図33】ターゲットモニタ装置の第2の実施例を示す模式図である。
【図34】ターゲットモニタ装置の第3の実施例を示す模式図である。
【図35】ターゲットモニタ装置の第4の実施例を示す模式図である。
【図36】ターゲットモニタ装置の第5の実施例を示す模式図である。
【図37】ターゲットモニタ装置の第6の実施例を示す模式図である。
【図38】ターゲット射出装置の一実施例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る極端紫外(extreme ultraviolet:EUV)光源装置及び露光機を含む露光システムの全体構成を示している。この露光システムは、EUV光の生成が行われるEUV光発生チャンバ1と、発生したEUV光の光量(強度)をモニタするEUV光モニタ装置2と、EUV光を発生させるためのレーザを出射するレーザシステム3と、レーザシステム制御装置4と、EUV発生チャンバ1にターゲット物質を供給するターゲット射出装置5と、射出されるターゲットをモニタするターゲットモニタ装置6と、ターゲット射出装置5を制御するターゲット制御装置7と、EUV光モニタ装置2の出力結果に基づいて各部を制御するEUV光源制御装置8と、EUV光発生チャンバ1において発生し、伝送光学系10を介して伝送されたEUV光を用いて半導体装置等に対して露光を行うと共に、この露光システム全体のマスターとして機能する露光機9とを含んでいる。
なお、本実施形態においては、ターゲットとして、キセノン(Xe)のドロップレット(液滴)を用いる場合を例として説明する。
【0020】
図2は、EUV光の発生原理を説明するための模式図である。図2に示すように、EUV光発生チャンバ1には、ターゲット噴射装置5の一部である噴射ノズル501と、レーザシステム3から出射したレーザ光を集光する集光光学系11と、レーザ光を透過させる窓12と、発生したEUV光を集光する集光ミラー13と、ターゲット回収筒14とが設けられている。
【0021】
噴射ノズル501は、チャンバ外から供給されるターゲット物質を所定の間隔で噴射する。なお、本実施形態においては、ターゲット物質として、液体のキセノン(Xe)を用いており、噴射ノズル501の上流には、気体のキセノンを加圧して冷却することにより液化する機構が設けられている。ターゲット射出装置5の構成については、後で詳しく説明する。
集光光学系11は、レーザシステム3から出射したレーザ光を集光する。それにより、レーザ光は、窓12を通過し、ドロップレットターゲット15の軌道に焦点を形成する。
【0022】
噴射ノズル501から噴射されたドロップレットターゲット15に、レーザ光を集光照射することにより、ターゲット物質がプラズマ化してEUV光が発生する。集光ミラー13は、表面に、例えば、13.5nmの光を高反射率で反射するMo/Si膜が形成された凹面鏡であり、発生したEUV光を反射することにより集光し、伝送光学系10に導く。なお、図2において、集光ミラー13は、紙面の手前方向にEUV光を集光する。
ターゲット回収筒14は、レーザ光が照射されずに、不要となったドロップレットターゲット15を回収する。
【0023】
再び、図1を参照すると、そのようにして生成されたEUV光は、伝送光学系10を介して露光機9に導光され、露光光として使用される。
EUV光モニタ装置2は、EUV光発生チャンバ1において発生したEUV光のエネルギーをモニタしており、それによって得られたエネルギー情報(EUVエネルギーモニタ値)を、レーザシステム制御装置4及びEUV光源制御装置8に出力する。
【0024】
レーザシステム3及びレーザシステム制御装置4は、EUV光を発生させるために用いられるレーザ光を供給するためのEUV光源装置駆動用ドライバレーザシステムを構成する。
レーザシステム3は、レーザシステム制御装置4の制御の下で、所定のパルス幅を有するレーザ光を射出する。また、後述するように、レーザシステム3には、出射したレーザ光のパルス間隔をモニタするパルス間隔モニタと、レーザ光のエネルギーをモニタするレーザエネルギーモニタとが設けられている。これらのモニタから出力されたモニタ値は、レーザシステム制御装置4にフィードバックされ、レーザシステムに供給される動作パラメータを算出する際に用いられる。また、レーザエネルギーモニタから出力されたモニタ値は、EUV光源制御装置8にもフィードバックされ、種々の指令値を算出する際に用いられる。
【0025】
レーザシステム制御装置4は、EUV光源制御装置8から供給された指令値に基づいて、レーザシステム3に含まれる構成要素に必要な動作パラメータを与えることにより、要求された強度及びパルス幅を有するレーザ光を、要求された時間間隔で射出させる。また、レーザシステム制御装置4は、レーザシステム3から出力されたレーザエネルギーモニタ値及びパルス間隔モニタ値に基づいて、レーザシステム3に含まれる構成要素に与えられる動作パラメータを修正する。さらに、レーザシステム制御装置4は、EUV光モニタ装置2から出力されたEUVエネルギーモニタ値を参照し、EUVエネルギーモニタ値が要求されている値に達しない場合に、ターゲットモニタ装置6から出力されたターゲット間隔モニタ値に基づいてレーザ発振間隔を調整する。その際に、レーザ発振間隔とドロップレットターゲットの射出間隔とが大きく異なる場合には、レーザシステム制御装置4は、ターゲット制御装置7に指令を出力することにより、ドロップレットターゲットの射出間隔を修正させる。また、レーザシステム制御装置4は、ターゲットモニタ装置6から出力されたターゲット位置モニタ値に基づいて、ドロップレットターゲットの射出位置を修正するよう、必要に応じてターゲット制御装置7に指令を出力する。
【0026】
ターゲット射出装置5は、ターゲット制御装置7の制御の下で、所定の径を有するドロップレットターゲットを、所定の間隔で所定の位置に射出する。
ターゲットモニタ装置6は、EUV光発生チャンバ1に射出されるドロップレットターゲットの位置間隔、望ましくは、中心位置間隔をモニタしており、そのモニタ結果(ターゲット間隔モニタ値)をレーザシステム制御装置4及びターゲット制御装置7に出力する。
【0027】
ここで、ドロップレットターゲットに対するレーザ光の照射タイミングがずれると、ドロップレットターゲットに照射されるレーザ光の領域(或いは、面積)が変化するので、発生するEUV光の光量が変化してしまう。そこで、ドロップレットターゲットの位置間隔をモニタし、そのモニタ値に基づいてレーザシステムにおけるレーザ光の出射タイミングを制御する。それにより、ドロップレットターゲットにおける最適な位置に、常にレーザ光を照射し、EUV光の発生量をほぼ一定に保つことができる。
【0028】
また、ターゲットモニタ装置6は、ドロップレットターゲットの射出位置(ターゲットの射出方向に対する面における位置ずれ)もモニタしており、そのモニタ結果(ターゲット位置モニタ値)をレーザシステム制御装置4及びターゲット制御装置7に出力する。
【0029】
ターゲット制御装置7は、EUV光源制御装置8から供給された指令値に基づいて、ターゲット射出装置5に含まれる構成要素に必要な動作パラメータ(例えば、噴射ノズル501の位置やターゲットの噴射速度等)を与えることにより、所定の径を有するターゲット物質を、所定の位置に、所定の時間間隔で射出させる。また、ターゲット制御装置7は、ターゲットモニタ装置6から出力されたターゲット間隔モニタ値及びターゲット位置モニタ値に基づいて、ターゲット射出装置5に含まれる構成要素に与えられる動作パラメータを修正する。さらに、ターゲット制御装置7は、レーザシステム制御装置4から出力された修正指令に基づいて、ターゲット射出装置5を制御する。
【0030】
EUV光源制御装置8は、露光機9から出力されたEUV光出力要求信号に対して必要な演算処理や変換処理を行った後、その要求信号に基づいて、レーザシステム制御装置4及びターゲット制御装置7に対して指令値を出力する。即ち、EUV光源制御装置8は、レーザシステム制御装置4に対して、レーザ光のエネルギー(強度)及びレーザ光の射出時間間隔(繰り返し周波数)に関する指令値を与え、ターゲット制御装置7に対して、形成すべきターゲットの径、ターゲットの射出位置、及び、ターゲットの射出間隔に関する指令値を与える。また、EUV光源制御装置8は、EUVモニタ装置2から出力されたEUVエネルギーモニタ値に基づいて、レーザシステム制御装置4及びターゲット制御装置7に与える指令値を修正する。このように、発生したEUV光のエネルギーをフィードバックして各部を制御することにより、高い安定性(例えば、0.3%、3σ over 50pulses)をもってEUV光を発生させることが可能になる。さらに、EUV光源制御装置8は、EUV光源モニタ装置から出力されたエネルギー情報や、EUV光発生チャンバ1内の真空度や、インターロックシステムの動作状態等の情報を、露光機9に出力する。
【0031】
露光機9は、EUV光源制御装置8に対して、EUV光出力要求信号を出力する。EUV光出力要求信号には、EUV光出力強度指令値と繰り返し周波数指令値とが含まれている。
【0032】
次に、図1に示すレーザシステム3の構成について、図3〜図5を参照しながら説明する。ここで、EUV光源においては、7kHz〜10kHz程度のレーザ繰り返し周波数と、100kW以上のレーザ出力とが要求される。以下に説明する本実施形態に係るレーザシステムは、安価なガスレーザを用いて、そのような要求を満たすように構成されている。
【0033】
また、本実施形態においては、レーザ増幅方式として、MOPA(master oscillator power amplifier)方式を採用している。ここで、EUV光源装置用ドライバとしてレーザを用いる場合に、レーザ波長や、ターゲット物質の種類や、その密度等の条件に応じて、最適なパルス幅が存在することが知られている。MOPA方式においては、パルス幅の情報が増幅後にも保存されるので、シード光のパルス幅を最適値とすることにより、様々なターゲット物質に対応させることが可能になる。
なお、レーザシステム3には、この他に、レーザエネルギーモニタ及びパルス間隔モニタが設けられるが、図3及び図5においては省略されている。
【0034】
図3は、図1に示すレーザシステム3の第1の実施例を示すブロック図である。このレーザシステム300は、レーザ発振器(OSC)301と、短パルス化装置302と、レーザ光分岐装置303と、2つの系統に分岐された増幅器(AMP)304(1)及び304(2)並びに305(1)及び305(2)とを含んでいる。以下において、増幅器304(1)及び304(2)をA系の増幅器とし、増幅器305(1)及び305(2)をB系の増幅器とする。
【0035】
本実施例においては、レーザ発振器301として、EUV光源が要求するレーザ繰り返し周波数と同等か、それより高い周波数で発振可能なレーザ発振器を用いている。
レーザ発振器301は、例えば、7kHz〜10kHz程度で発振可能なRF放電励起方式の炭酸ガス(CO2)レーザである。このレーザシステム300においては、後段に増幅器を設けているので、レーザ発振器301の出力は、例えば、数10μJ程度と低くても構わない。なお、レーザ発振器301としては、所定以上の繰り返し周波数で発振できれば、その他の様々な方式のものを用いることができる。例えば、固体レーザと色素レーザを組み合わせることにより、所望の波長を有するレーザ光を発振させても良い。
【0036】
短パルス化装置302は、レーザ発振器301から出射したレーザ光を、所望のパルス幅となるように短パルス化する。なお、所望のパルス幅を有するレーザ光を出射可能なレーザ発振器を用いる場合や、出射されたレーザのパルス幅が、レーザを照射されるターゲット物質に対して長すぎない場合には、短パルス化装置302を省略しても良い。
レーザ光分岐装置303は、短パルス化されたレーザ光を、A系及びB系の増幅器に交互に分岐する。
【0037】
ここで、本実施形態において、A系及びB系の2つの増幅系を設けている理由は、次の通りである。増幅器として、例えば、TEA励起方式を用いる場合には、数kHzの繰り返し周波数に対応することは可能であるが、EUV光源の要求値である7kHz〜10kHzに対応することが困難な場合がある。そこで、本実施形態におけるように、2つの増幅系を、例えば、4kHzで交互に動作させることにより、レーザシステム全体として、8kHzの繰り返し周波数でレーザ光を出射することができる。従って、本実施形態においては2つの増幅系を設けているが、各増幅器の繰り返し性能と、要求される繰り返し周波数とに基づいて、3つ以上の増幅系を並列して設け、それらを順次動作させるようにしても良い。
【0038】
増幅器304(1)及び304(2)、並びに、増幅器305(1)及び305(2)は、レーザ媒質として炭酸ガス(例えば、炭酸ガス)を用いている。各増幅系を、そのような増幅器による2段構成とすることにより、約10000倍の増幅率を得ることができる。それにより、例えば、レーザ発振器301から出射した数十μJのレーザ光は、数百mJまで増幅される。なお、この増幅段数についても、レーザ発振波長やレーザ媒質の種類に応じて変更しても良い。
【0039】
また、レーザシステム制御装置4は、エネルギー制御部401及び交互発振タイミング制御部402とを含んでいる。エネルギー制御部401は、EUVモニタ装置2から出力されたEUVエネルギーモニタ値と、EUV光源制御装置8から出力された指令値とに基づいて、レーザシステムにおけるレーザエネルギー出力を制御する。また、交互発振タイミング制御部402は、ターゲットモニタ装置6から出力されるターゲット間隔モニタ値と、EUV光源制御装置8から出力される指令値とに基づいて、ドロップレットターゲットの射出時間間隔とレーザ光の出射間隔とがほぼ等しくなるように、2つの増幅系からレーザ光を順次出射させるタイミングを制御する。このような制御機構により、均一な強度且つ安定したパルス間隔でEUV光を発生させることができる。なお、これらの制御機構の詳細については、後述する。
【0040】
図4は、図3に示すレーザシステム3の具体的な構成を示す模式図である。
レーザ発振器301は、エネルギー0.1mJ、パルス幅10nsのレーザ光を、繰り返し周波数8kHzで発振可能なRF放電励起CO2レーザである。なお、ドロップレットターゲットを用いる場合に、高いEUV変換効率を得るためには、パルス幅10ns程度のレーザ光を発生させることが望ましいが、レーザ発振器301によって短パルス発振が可能な場合には、図4に示す構成のように、短パルス化装置302(図3)を省略しても良い。
【0041】
本実施例において、レーザ光分岐装置303は、EO(electro optic)−Qスイッチ303aと、ポーラライザ(偏光素子)303bと、反射ミラー303cとを含んでいる。EO−Qスイッチとは、EO効果(電気光学効果)を利用した光学素子のことであり、ポッケルスセルとも呼ばれている。このEO−Qスイッチを所定の周期でスイッチングすることにより、それを通過した光の偏光面を周期的に切り替えることができる。なお、ポッケルスセルについては、後で詳しく述べる。ポーラライザ303bは、EO−Qスイッチ303aを通過したレーザ光の内、第1の偏光面を有する光を反射することにより、A系の増幅器304(1)〜304(3)に導くと共に、第2の偏光面を有するレーザ光を透過させる。第2の偏光面を有するレーザ光は、反射ミラー303cによって反射され、B系の増幅器305(1)〜305(3)に導かれる。
【0042】
A系の増幅器304(1)〜304(3)、並びに、B系の増幅器305(1)〜305(3)は、TEA型CO2媒質増幅器である。このような、レーザ発振器301とレーザ増幅器304(1)〜305(3)とによってレーザ光を出射するレーザシステムは、MOPA方式と呼ばれている。MOPA方式においては、レーザ発振器301から出射したレーザ光のパルス幅が保持されるという利点がある。
【0043】
例えば、レーザ発振器301から、繰り返し周波数8kHzで出射したエネルギー0.1mJ、パルス幅10nsのレーザ光は、レーザ光分岐装置303により、A系及びB系の増幅系に、パルスごとに交互に振り分けられる。それらのレーザ光は、各増幅系に含まれる3段の増幅器により、例えば、10mJ、100mJ、500mJと、順次増幅される。そして、A系の増幅器304(3)及びB系の増幅器305(3)から交互に出射したレーザ光を、図3に示す集光光学系11及び窓12を介して、EUV光発生チャンバ1に導く。それにより、ターゲット物質は、エネルギー500mJ、パルス幅10nsのレーザ光を、8kHzの繰り返し周波数で照射される。この場合には、500mJ×8kHz=4kWのレーザ出力が得られるので、キセノンのドロップレットターゲットのCO2波長域における変換効率を0.5%とすると、EUV発光点における出力は、4kW×0.5%=20W程度となる。なお、発生したEUV光を露光装置において使用するためには、さらに大きな出力が必要とされるので、実際には、各増幅系に、増幅段がさらに追加される。また、レーザシステムから出射するレーザ光の繰り返し周波数を高くしたい場合には、増幅系をさらに増やしても良い。例えば、3つの増幅系を設け、各増幅系を3kHzで順次駆動することにより、レーザシステム全体として9kHzでレーザ光を出射することが可能になる。なお、図4において、各増幅器におけるパス数は3つとなっているが、本実施例において、パス数はそれに限られるものではない。
【0044】
図5は、図1に示すレーザシステム3の第2の実施例を示すブロック図である。このレーザシステム310には、X系及びY系の2つのレーザ発振系が設けられている。X系のレーザ発振系は、レーザ発振器311と、短パルス化装置313と、増幅器(AMP)315(1)及び315(2)とを含んでおり、Y系のレーザ発振系は、レーザ発振器312と、短パルス化装置314と、増幅器(AMP)316(1)及び316(2)とを含んでいる。
【0045】
本実施例においては、X系及びY系からレーザ光が交互に出射するように、2つのレーザ発振器311及び312を同期して制御する。それにより、各レーザ発振器の繰り返し周波数が、EUV光源において要求される繰り返し周波数に満たない場合であっても、レーザシステム全体として、必要な繰り返し周波数でレーザ光を出射することが可能になる。例えば、レーザ発振器311及び312からレーザ光を4kHzの繰り返し周波数で交互に出射させることにより、結果として、レーザシステム310から8kHzの繰り返し周波数でレーザ光が出射する。
【0046】
なお、短パルス化装置313及び314、並びに、増幅器315(1)〜316(2)については、図3に示すのと同様のものを用いることができる。また、本実施例においても、各レーザ発振器の繰り返し性能と、要求される繰り返し周波数とに応じて、3つ以上のレーザ発振系を並列して設け、それらを順次動作させるようにしても良い。
【0047】
以上説明したレーザシステムの第1及び第2の実施例においては、CO2レーザの他にも、様々な波長のガスレーザを適用することができる。例えば、エキシマレーザ、Cu蒸気レーザ、アルゴンレーザ等のガスレーザを用いても良い。その際には、波長に応じて光学素子(例えば、レーザ光分岐装置303におけるEO−Qスイッチ等)を選択する必要がある。或いは、レーザ発振器301、311、312として、所望の波長でレーザ発振することができる固体レーザを、色素セル等と組み合わせて用いることも可能である。その場合には、固体レーザの繰り返し周波数が、EUV光源の要求値とレーザシステムの構成とに応じた値を満たしていることが必要となる。また、その際には、レーザ発振器から出射したレーザ光の波長と、増幅段における発振波長とを合わせておく必要がある。
【0048】
上記の第1及び第2の実施例においては、レーザ光の波長に自由度があり、また、パルス幅を調整することも可能である。そのため、キセノンガスターゲットや、キセノンジェット(噴流)ターゲットのように、様々な種類や状態のターゲットに対応することができる。また、ターゲットモニタ装置6によってターゲット間隔をモニタすることにより、ターゲットの最適照射部位に、安定性良くレーザ光を照射することができる。従って、上記の実施例は、キセノンドロップレットターゲットや、リチウム(Li)含有液体ドロップレットターゲットや、錫(Sn)含有液体ドロップレットターゲット等を用いる際にも適している。さらに、同様の理由から、錫又はリチウム含有物質の微小固体ターゲットを用いる場合においても、安定性の高いEUV光を発生することができる。
【0049】
次に、図1に示すレーザシステム制御装置4の構成について、図6〜図18を参照しながら説明する。なお、図6〜図18において、レーザシステム制御装置は、複数の機能ブロックによって表されているが、実際には、レーザシステム制御装置を1つのモジュールとして構成しても良いし、複数の機能ブロックの各々を1つのモジュールとし、複数のモジュールによってレーザシステム制御装置を構成しても良い。
【0050】
図6は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第1の実施例を示している。レーザシステム制御装置410は、交互発振タイミング制御部411と、短パルス化タイミング制御部412と、レーザ光分岐制御部413と、増幅タイミング制御部414及び415とを含んでいる。本実施例において、レーザシステム制御装置410は、レーザシステム320に含まれる各部の動作タイミングを制御する。
【0051】
また、本実施例において制御対象となるレーザシステム320は、図5に示すレーザシステム300に対して、増幅器304(2)及び305(2)から出射したレーザ光のパルス間隔をモニタするパルス間隔モニタ321をさらに設けたものである。パルス間隔モニタ321は、光路上の光の波形を検出する。パルス間隔モニタ321としては、例えば、ビームスプリッタを用いることにより光路から僅かな光を取り出し、PINフォトダイオードによって波形を検出する構成や、フォトンドラッグを含む構成等を用いることができる。後者は、CO2等の遠赤外線域の波長を検出する際に適切である。
【0052】
図7は、図6に示すレーザシステム制御装置410の動作を示すフローチャートである。図7のステップS101において、交互発振タイミング制御部411は、ターゲットモニタ装置5から出力されたターゲット間隔モニタ値Nt(kHz)を取得し、EUV光源制御装置8から出力された繰り返し指令値Nc(kHz)を取得する。
【0053】
次に、ステップS102において、交互発振タイミング制御部411は、ターゲット間隔モニタ値Ntと、繰り返し指令値Ncとのずれ|Nc−Nt|を算出し、そのずれが、所定値Nr1より小さいか否かを判定する。その結果、両者のずれが所定値Nr1より大きい場合には、ステップS103において、交互発振タイミング制御部411は、ターゲット制御装置5に、ターゲットの射出タイミングを修正するように要求するか、または、EUV光源制御装置8に、繰り返し指令値の修正を要求する。
【0054】
一方、ステップS102における判定の結果、ターゲット間隔モニタ値Ntと繰り返し指令値Ncとのずれが所定値Nr1より小さい場合に、ステップS104において、交互発振タイミング制御部411は、レーザの出射間隔がターゲット物質の射出間隔に合うように、レーザ繰り返し周波数を修正する。即ち、交互発振タイミング制御部411は、パルス間隔モニタ321から出力されたレーザ繰り返しモニタ値Npが、ターゲット間隔モニタ値Ntと等しくなるように、制御タイミング間隔をシフトさせる。それによって決定された値が、制御タイミングパルスとして各部に向けて出力され、動作タイミングの基準として用いられる。
【0055】
次に、ステップS105〜S108において、各部は、決定された制御タイミングパルスに基づいて、所定の処理を行う。即ち、ステップS105において、レーザシステム320のレーザ発振器301は、制御タイミングパルスに従ってレーザ発振する。
また、ステップS106において、短パルス化タイミング制御部412は、制御タイミングパルスに短パルス化動作遅延を付加して、短パルス化装置302に出力する。その際に、レーザ発振器301と短パルス化装置302との間に、無視できないジッタ(遅延時間の揺らぎ)がある場合には、遅延時間がジッタの中央値付近になるようにする。それにより、短パルス化装置302は、レーザ発振器301から出射したレーザ光について、設定されたタイミングで短パルス化を行う。
【0056】
さらに、ステップS107において、レーザ光分岐制御部413は、分岐タイミングの遅延演算を行い、それによって求められた遅延時間と制御タイミングパルスとに基づいて、分岐動作タイミングの演算を行う。それに応じて、レーザ光分岐装置303は、短パルス化されたレーザ光を、増幅器304(1)及び増幅器305(1)に所定のタイミングで振り分ける。
【0057】
ステップS108において、増幅タイミング制御部414及び415は、増幅タイミングの遅延演算を行い、それによって求められた遅延時間を各段の増幅器に与える。その際に、無視できないジッタ(遅延時間の揺らぎ)がある場合には、遅延時間がジッタの中央値付近になるようにする。それにより、各増幅器304(1)〜305(2)は、設定されたタイミングでレーザ光を増幅して射出する。
【0058】
図8は、図6に示す第1の実施例の変形例を示している。この変形例において制御対象となるレーザシステム320'は、図6に示すレーザシステム320におけるパルス間隔モニタ321を、レーザ光分岐装置303によって分岐された後、増幅される前のレーザ光をモニタする位置に配置したものである。
【0059】
このような配置は、増幅器304(1)〜305(2)における増幅タイミングがほぼ一定とみなせる場合に用いることができる。この変形例のように、増幅前の強度が弱い状態のレーザ光を検出することにより、パルス間隔モニタ321に含まれる光学素子の長寿命化を図ることができる。
【0060】
図9は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第2の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置420は、レーザシステム330に含まれる各部の動作タイミングを制御する。このレーザシステム330は、図5に示すレーザシステム310に対して、増幅器315(2)及び315(2)の後段にパルス間隔モニタ331をさらに付加したものである。
【0061】
レーザシステム制御装置420は、交互発振タイミング制御部421と、タイミング制御部422及び423と、短パルス化タイミング制御部424及び425と、増幅タイミング制御部426及び427とを含んでいる。交互発振タイミング制御部421は、図7のステップS101〜S104におけるのと同様に、ターゲット間隔モニタ値Ntと、繰り返し指令値Ncとに基づいて、制御タイミングパルスを求める演算を行い、その制御タイミングパルスを、タイミング制御部422及び423に交互に与える。タイミング制御部422は、与えられた制御タイミングパルスに従って、レーザ発振器311、短パルス化タイミング制御部424、及び、増幅タイミング制御部426の動作タイミングを制御し、タイミング制御部423は、レーザ発振器312、短パルス化タイミング制御部425、及び、増幅タイミング制御部427の動作タイミングを制御する。短パルス化タイミング制御部424及び425、増幅タイミング制御部426及び427は、第1の実施例と同様に、与えられた制御タイミングパルスに従って、短パルス化装置及び増幅器を制御する。
なお、本実施例においても、図8に示すレーザシステム300'と同様に、パルス間隔モニタ331を増幅器315(1)及び316(1)の前段に設けても良い。
【0062】
図10は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第3の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置430は、レーザシステム340から出射されるレーザ光のエネルギーを制御する。このレーザシステム340は、図3に示すレーザシステム300に対して、増幅器304(2)及び305(2)から出射したレーザ光のエネルギーをそれぞれモニタするレーザエネルギーモニタ307及び308をさらに設けたものである。
【0063】
図10に示すレーザシステム制御装置430は、エネルギー制御部431と、エネルギー調整部432及び433を含んでいる。エネルギー制御部431は、レーザエネルギーモニタ値に対応するEUVエネルギー値を表す内部テーブルを有しており、そのテーブルに基づいて、レーザシステム340の制御を行う。
【0064】
図11は、図10に示すレーザシステム制御装置430の動作を示すフローチャートである。図11のステップS201において、エネルギー制御部431は、レーザエネルギーモニタ307及び308からそれぞれレーザエネルギーモニタ値を取得し、EUV光源制御装置8からレーザエネルギー指令値を取得し、EUV光モニタ装置2からEUVエネルギーモニタ値を取得する。
【0065】
次に、ステップS202において、エネルギー制御部431は、レーザエネルギーモニタ値とレーザエネルギー指令値とを比較し、そのずれ量を補正するように、エネルギー調整部432及び433にそれぞれ調整量を指示する。それに応じて、エネルギー調整部432及び433は、増幅器304(2)及び305(2)から出射するレーザ光のエネルギーを調整する。
【0066】
ステップS203において、エネルギー制御部431は、内部テーブルを参照することにより、取得されたレーザエネルギーモニタ値に対応するEUVエネルギー値を求め、そのEUVエネルギー値とEUVエネルギーモニタ値とを比較する。
【0067】
ステップS203における比較の結果、EUVエネルギー値とEUVエネルギーモニタ値との差が一定量より大きい場合に、ステップS204において、エネルギー制御部431は、レーザ光の照射領域に対してターゲット物質の射出位置がずれているものと判断し、ターゲット制御装置7にターゲット射出位置の修正を要求する。
【0068】
一方、EUVエネルギー値とEUVエネルギーモニタ値との差が一定量以内である場合に、ステップS205において、エネルギー制御部431は、レーザエネルギーモニタ値とレーザエネルギー指令値とに基づいて、レーザエネルギーの調整量を算出する。
ステップS206において、エネルギー調整部432及び433は、算出された調整量に応じて、増幅器304(2)及び305(2)から出射するレーザ光のエネルギーを調整する。
【0069】
本実施例においては、最終段の増幅器304(2)及び305(2)を調整しているが、調整対象となる構成要素はそれらに限定されない。即ち、レーザシステムのその他の構成要素(増幅器やレーザ発振器)の内から、制御量や応答速度等を考慮して適切な段を制御するようにしても良い。
【0070】
図12は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第4の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置440は、レーザシステム340についてエネルギーを制御する。
図12に示すレーザシステム制御装置440は、エネルギー制御部441と、エネルギー調整部442〜444(2)と、短パルス化タイミング制御部445とを含んでいる。エネルギー調整部442、443(1)、443(2)、444(1)、及び、444(2)は、レーザシステム300のレーザ発振器301、増幅器304(1)、304(2)、305(1)、及び、305(2)について、それぞれエネルギー調整を行う。また、短パルス化タイミング制御部445は、短パルス化装置302に対して、短パルス化タイミングを、最適なタイミングからずらすことにより、レーザエネルギーを調整する。このように、レーザシステム340の各構成要素に対して調整を行うことにより、各構成要素の調整可能範囲を考慮しつつ、レーザシステム全体として、広い調整幅を得ることができる。なお、十分な調整範囲を確保できるのであれば、調整対象とする構成要素を減らしても良い。
【0071】
図13は、図12に示すレーザシステム制御装置440の動作を示すフローチャートである。図13のステップS301において、エネルギー制御部441は、レーザエネルギーモニタ307及び308からそれぞれレーザエネルギーモニタ値を取得し、EUV光源制御装置8からレーザエネルギー指令値を取得し、EUV光モニタ装置2からEUVエネルギーモニタ値を取得する。
【0072】
次に、ステップS302において、エネルギー制御部441は、レーザエネルギーモニタ値とレーザエネルギー指令値とを比較し、そのずれ量を補正するように、エネルギー調整部422〜444(2)及び433に調整量を配分する。なお、この配分方法については、後述するステップS305におけるのと同様である。エネルギー調整部422〜444(2)は、配分された調整量に基づいて、レーザ発振器301や増幅器304(1)〜305(2)から出射するレーザ光のエネルギーを調整する。
【0073】
ステップS303において、エネルギー制御部441は、内部テーブルを参照することにより、取得されたレーザエネルギーモニタ値に対応するEUVエネルギー値を求め、そのEUVエネルギー値とEUVエネルギーモニタ値とを比較する。
【0074】
ステップS303における比較の結果、EUVエネルギー値とEUVエネルギーモニタ値との差が一定量より大きい場合に、ステップS304において、エネルギー制御部441は、レーザ光の照射領域に対してターゲット物質の射出位置がずれているものと判断し、ターゲット制御装置7にターゲット射出位置の修正を要求する。
【0075】
一方、EUVエネルギー値とEUVエネルギーモニタ値との差が一定量以内である場合に、ステップS305において、エネルギー制御部441は、レーザエネルギーモニタ値とレーザエネルギー指令値とに基づいて、レーザエネルギーの調整量を算出すると共に、エネルギー調整部442〜445(2)及び短パルス化タイミング制御装置445への調整量の配分を決定する。配分方法としては、例えば、粗調整をレーザ発振器301において行った後で、微調整を最終段の増幅器304(2)及び305(2)において行う。そして、調整量がそれらの機器301、304(2)、305(2)における調整範囲を越える場合に、その他の増幅器304(1)及び305(1)及び短パルス化装置302において調整を行うようにする。その際に、レーザエネルギーモニタ値に加え、EUVエネルギーモニタ値を、レーザエネルギー値の制御に反映させても良い。
【0076】
ステップS306において、エネルギー調整部442及び443(1)〜444(2)は、レーザ発振器301及び増幅器304(1)〜305(2)から出射するレーザ光のエネルギーを調整する。また、短パルス化タイミング制御部445は、短パルス化装置302に対し、先に説明した制御タイミングパルスに短パルス化動作遅延を付加した信号に、さらに、エネルギー制御のためのシフト量を加えることにより、出射するレーザ光のエネルギーを変化させる。その際に、レーザ発振器301と短パルス化装置302との間に、無視できないジッタ(遅延時間の揺らぎ)がある場合には、遅延時間がジッタの中央値付近になるようにする。
【0077】
図14は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第5の実施例を示している。本実施例において、レーザシステム制御装置450は、レーザシステム350から出射するレーザ光のエネルギーを制御する。このレーザシステム350は、図3に示すレーザシステム300に対して、各段にレーザエネルギーモニタ351〜356(2)をさらに設けたものである。
【0078】
レーザシステム制御装置450は、図12に示すレーザシステム制御装置440におけるエネルギー制御部441の替わりに、エネルギー制御部451を有している。その他の構成については、図12に示すレーザシステム制御装置440と同様である。
【0079】
エネルギー制御部451は、各段に設けられたレーザエネルギーモニタ351〜356(2)から出力されたレーザエネルギーモニタ値を取得し、それらの値と、レーザエネルギー指令値及びEUVエネルギーモニタ値とに基づいて、エネルギー調整部442〜444(2)及び短パルス化タイミング制御部445に対して調整値を与える。
【0080】
本実施例におけるように、各段にレーザエネルギーモニタを設け、エネルギー調整部によってレーザシステムを集中して制御することにより、いずれかの段に異常が発生した場合に、異常を容易に検出することが可能になる。また、レーザエネルギーの調整時に、各段の調整範囲を全て使用することができるので、制御性の自由度を向上させることができる。
【0081】
図15は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第6の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置460は、レーザシステム360から出射するレーザ光のエネルギーを制御する。このレーザシステム360は、図3に示すレーザシステム300に対して、各段にレーザエネルギーモニタ361〜366(2)をさらに設けたものである。
【0082】
レーザシステム制御装置460は、エネルギー制御部461と、エネルギー調整部462及び463(1)〜464(2)と、短パルス化タイミング制御装置465とを有している。エネルギー制御部461は、レーザエネルギーモニタ363及び364から出力され、又は、レーザエネルギーモニタ361、362、365(1)〜366(2)から出力されてエネルギー調整部等を介して取得されたレーザエネルギーモニタ値と、EUV光源制御装置8から出力されたエネルギー指令値と、EUV光モニタ装置2から出力されたEUVエネルギーモニタ値とに基づいて、ターゲット制御装置7に対する制御を行うと共に、エネルギー調整部462及び463(1)〜464(2)、並びに、短パルス化タイミング制御装置465にそれぞれ与えられる調整値を設定する。
【0083】
エネルギー調整部462は、エネルギー制御部461から与えられた設定された調整値と、レーザ発振器301から出射したレーザ光のエネルギーをモニタするレーザエネルギーモニタ361の出力値とに基づいて、レーザ発振器301から出射するレーザ光のエネルギーを調整する。短パルス化タイミング制御部465は、与えられた調整値と、短パルス化装置362によって短パルス化されたレーザ光のエネルギーをモニタするレーザエネルギーモニタ362の出力値とに基づいて、短パルス化装置302の動作タイミングを制御する。エネルギー調整装置463(1)〜464(2)は、与えられた調整値と、制御対象である増幅器304(1)〜305(2)から出射したレーザ光のエネルギーをモニタするレーザエネルギーモニタ365(1)〜366(2)の出力値とに基づいて、増幅器304(1)〜305(2)から出射するレーザ光のエネルギーを調整する。
【0084】
このように、本実施例においては、各段に設けられたレーザエネルギーモニタの出力値に基づいて、エネルギー調整部及び短パルス化タイミング制御装置が、対応する構成要素について分散して制御を行う。それにより、レーザシステムの各構成要素にある程度自立性を持たせることができるので、新たに増幅段を増設し易くなると共に、各構成要素を個別にメンテナンスし易くなる。また、レーザ光を分岐直後のレーザエネルギーもモニタしているので、レーザ光分岐装置の機能判断も行うことができる。
【0085】
図16は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第7の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置470は、レーザシステム370から出射するレーザ光のエネルギーを制御する。このレーザシステム370は、図5に示すレーザシステム310に対して、レーザエネルギーモニタ371及び372をさらに設けたものである。
【0086】
レーザシステム制御装置470は、エネルギー制御部471と、レーザ発振器311及び312、並びに、増幅器315(1)〜316(2)から出射するレーザ光のエネルギーをそれぞれ調整するエネルギー調整部472及び473、並びに、476(1)〜477(2)と、短パルス化装置313及び314の動作タイミングをそれぞれ調整する短パルス化タイミング制御部474及び475とを含んでいる。エネルギー制御部471は、レーザエネルギーモニタ371及び371から出力されたレーザエネルギーモニタ値と、レーザエネルギー指令値と、EUVエネルギーモニタ値とに基づいて、エネルギー調整部472、473、及び、476(1)〜477(2)、及び、短パルス化タイミング制御部474及び475に対して調整値を与える。エネルギー調整部471の動作の詳細については、図14を用いて説明したものと同様である。
【0087】
図17は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第8の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置480は、レーザシステム380から出射するレーザ光のエネルギーを制御する。このレーザシステム380は、図5に示すレーザシステム310に対して、レーザエネルギーモニタ381〜386(2)をさらに設けたものである。レーザエネルギーモニタ381〜386(2)は、レーザシステム380の各段から出射したレーザ光のエネルギーをモニタすることにより、レーザエネルギーモニタ値を出力する。
【0088】
レーザシステム制御装置480は、図16に示すエネルギー制御部471の替わりに、エネルギー制御部481を有している。エネルギー制御部481は、レーザエネルギーモニタ381〜386(2)から出力されたレーザエネルギーモニタ値と、レーザエネルギー指令値及びEUVエネルギーモニタ値とに基づいて、エネルギー調整部472、473、及び、476(1)〜477(2)、及び、短パルス化タイミング制御部474及び475に対して調整値を与える。
【0089】
本実施例におけるように、各段にレーザエネルギーモニタを設け、エネルギー調整部によってレーザシステムを集中して制御することにより、いずれかの段に異常が発生した場合に、異常を容易に検出することが可能になる。また、レーザエネルギーの調整時に、各段の調整範囲を全て使用することができるので、制御性の自由度を向上させることができる。
【0090】
図18は、図1に示すレーザシステム制御装置4の第9の実施例を示すブロック図である。本実施例において、レーザシステム制御装置490は、レーザシステム390から出射するレーザ光のエネルギーを制御する。このレーザシステム390は、図5に示すレーザシステム310に対して、レーザエネルギーモニタ391〜396(2)をさらに設けたものである。レーザエネルギーモニタ391〜396(2)は、レーザシステム390の各段から出射したレーザ光のエネルギーをモニタすることにより、レーザエネルギーモニタ値を出力する。
【0091】
レーザシステム490は、エネルギー制御部491と、エネルギー制御装置492及び493、並びに、496(1)〜497(2)と、タイミング制御装置494及び495とを含んでいる。エネルギー制御部491は、レーザエネルギーモニタ391〜396(2)から出力されたレーザエネルギーモニタ値と、レーザエネルギー指令値及びEUVエネルギーモニタ値とに基づいて、エネルギー調整部492、493、及び、496(1)〜497(2)、並びに、短パルス化タイミング制御部475に対して調整値を与える。
【0092】
エネルギー調整部492、493、及び、496(1)〜497(2)、並びに、短パルス化タイミング制御部475は、与えられた調整値と、制御対象である各部311〜316(2)から出射したレーザ光のエネルギーをモニタするレーザエネルギーモニタ391〜396(2)の出力値とに基づいて、各部311〜316(2)をそれぞれ制御する。
【0093】
このように、エネルギー調整部及び短パルス化タイミング制御装置が、各段に設けられたレーザエネルギーモニタの出力値に基づいて、制御対象である各構成要素について分散して制御を行う。それにより、レーザシステムの各構成要素にある程度自立性を持たせることができるので、新たに増幅段を増設し易くなると共に、各構成要素を個別にメンテナンスし易くなる。
【0094】
以上説明したレーザシステム制御装置4の第1〜第8の実施例においては、各構成要素として次に挙げる技術を用いることができる。
レーザ発振器や増幅器から出射したレーザ光のエネルギーを調整するエネルギー調整部としては、光学的、電気的、その他の作用によってエネルギーを変化させる方法及びそれを利用した機器や、それらの組み合わせを用いることができる。
【0095】
光学的なエネルギー調整方法としては、ビームアッテネータや可動プリズムを用いることによりレーザ光の反射率を変化させたり、波長板を用いてレーザ光を偏光させたり、フィルタを用いてレーザ光の透過率を変化させる機器を用いることができる。また、電気的なエネルギー調整方法としては、レーザ発振器や増幅器の充電電圧を調節する方法が挙げられる。さらに、その他の調整方法としては、レーザ発振器や増幅器のレーザ媒質のガス圧や、ガス組成や、ガス温度を調節することが考えられる。
【0096】
次に、レーザ光のエネルギーをモニタするレーザエネルギーモニタとしては、ビームサンプラとPINフォトダイオードとを組み合わせた検出装置や、ビームサンプラとCCDとを組み合わせた検出装置を用いることができる。或いは、波長が遠赤外線領域の場合には、温度センサを用いても良い。また、レーザ光の検出方法としては、各増幅系の最終段や、レーザ発振器や増幅器等を含む系統内の各段において、出射光の一部を検出装置に導光して測定する方法の他に、各段の漏れ光を検出する方法が挙げられる。
【0097】
また、発生したEUV光をモニタするEUVモニタ装置としては、X線付近の光を検出するEUVディテクタと光学フィルタとを組み合わせることにより、EUV光を直接的に検出することができる。また、レーザ光照射条件が同じであれば、ターゲット物質がプラズマ化することによって発生した光を構成するスペクトルの強度はほぼ一定であるので、露光のために利用される波長成分(例えば、13.5nm)以外の波長成分(アウトオブバンドと呼ばれる)を検出することにより、EUV光エネルギーを間接的に検出することも考えられる。例えば、EUVディテクタと光学フィルタとを用いて、アウトオブバンドの波長成分を検出することにより、予め知られているEUV光のスペクトル(強度比)に基づいて、所望の波長成分のエネルギーを求めることができる。或いは、EUV光発生チャンバにおいて生成されたプラズマの放射立体角とEUV光のエネルギーとの間には、一定の関係があるので、ピンホールカメラ等を用いてプラズマの光学イメージを取得することにより、EUV光のエネルギーを間接的に求めることも考えられる。さらに、それらの検出方法を組み合わせて用いても良い。
【0098】
ここで、EUV光発生チャンバ内において発生したEUV光は、凹面の反射面を有する集光ミラーにより、所定の方向に位置に集光される。そのため、EUV光をモニタする際には、集光ミラーの集光領域から外れた位置における光を検出することが望ましい。集光ミラーの集光領域内において光検出を行うと、検出に用いられた光の領域が影になってしまうからである。また、集光ミラーには、所望の波長成分(例えば、13.5nm)を高い反射率で反射するために、所定の被膜が施されている。そのため、集光ミラーを透過した光、即ち、EUV光以外の波長成分を検出することも考えられる。先にも述べたように、発生した光を構成する波長成分の強度比はほぼ一定と見られるからである。或いは、EUV光発生チャンバ内における輻射熱をモニタすることも考えられる。さらに、それらの検出位置を組み合わせても良い。
【0099】
図19〜図22は、図3又は図5に示すレーザシステム300において用いられる短パルス化装置302の具体的な構成を説明するための図である。図19〜図22において、レーザ媒質20a、リアミラー20b、及び、フロントミラー20c又は高反射ミラー20dを含むレーザ共振器は、連続発振ガスレーザ(continuous wave laser)、又は、パルス発振レーザである。
【0100】
図19は、短パルス化装置の第1の実施例を示す模式図である。本実施例においては、短パルス化装置を、ポッケルスセルを用いて構成している。ポッケルスセルとは、結晶に電界を印加することにより結晶の屈折率や異方性が変化するというEO効果(electro optic:電気光学効果)を利用した光学素子である。このポッケルスセルに印加される電界を制御することにより、それを透過する光の偏光面を所望の角度だけ回転させることができる。本実施例においては、ポッケルスセルにより、光の偏光面を90°回転させる。
【0101】
図19の(a)に示すように、短パルス化装置21は、偏光ビームスプリッタ21a及び21cと、ポッケルスセル(PC)21bとを含んでいる。偏光ビームスプリッタ21aは、p偏光を入射光の進行方向と同じ方向に出射し、s偏光を入射光とほぼ直角を為す方向(図の上方)に出射することにより、入射光をp偏光とs偏光とに分離する。また、図19の(b)は、レーザ共振器20から出射したレーザ光のパルス幅を示している。
【0102】
レーザ共振器20から出射したレーザ光の内、p偏光は、偏光ビームスプリッタ21aを透過し、ポッケルスセル21bに入射する。ポッケルスセル21bは、レーザ共振器20のレーザ光出射タイミングと同期して制御されており、所定のタイミングで、所定の時間(例えば、数ナノ秒)だけ活性化される。ポッケルスセル21bが活性化している間にそこを透過したレーザ光は、偏光面を90°回転させられる。このレーザ光(s偏光)は、偏光ビームスプリッタ21cによって反射され、図の上方に出射する。それにより、図19の(c)に示すように、短パルス化されたレーザ光を得ることができる。一方、ポッケルスセル21bが非活性化状態にあるときにそこを透過したp偏光は、偏光面を回転させられることなく、偏光ビームスプリッタ21cを透過する。
【0103】
図20は、短パルス化装置の第2の実施例を示す模式図である。本実施例においては、レーザ共振器の内部に短パルス化装置を配置している。図20に示すように、短パルス化装置22は、レーザ媒質20aと高反射ミラー20dの間に配置された偏光ビームスプリッタ22aと、ポッケルスセル22bと、λ/4波長板22cと、反射ミラー22dとを含んでいる。本実施例においては、ポッケルスセル22bにより、光の偏光面を45°回転させる。
【0104】
短パルス化装置22においてシード光を共振させている間には、ポッケルスセル22bは活性化されている。それにより、レーザ媒質20aから出射し、偏光ビームスプリッタ22aを透過したレーザ光(p偏光)の偏光面は、ポッケルスセル22bを透過することにより45°回転し、λ/4波長板22cを往復することにより90°(45°×2回)回転し、再びポッケルスセル22bを透過することにより、さらに45°回転する。それによりシード光は再びp偏光に戻り、レーザ媒質20aに入射する。このように、シード光を、レーザ媒質20aを介してリアミラー20bと高反射ミラー20dとの間を往復させることにより増幅させる。
【0105】
レーザ発振器から短パルスレーザ光を出射させる際には、ポッケルスセル22bを、所定のタイミング、所定の時間(例えば、数ナノ秒)だけ非活性化すれば良い。それにより、レーザ媒質20aから出射し、偏光ビームスプリッタ22aを透過したp偏光は、その偏光面を回転させられることなくポッケルスセル22bを透過し、λ/4波長板22cを往復することにより偏光面を90°回転されてs偏光となる。そして、そのs偏光は、偏光ビームスプリッタ22aによって図の上方に反射されるので、短パルス化されたレーザ光を得ることができる。
【0106】
本実施例によれば、共振器の内部においてレーザ光の偏光面を揃えるので、レーザエネルギーのロスを低減し、効率良く短パルスすることができる。なお、この場合には、共振器内におけるポッケルスセルの耐久性を考慮すると、パワーの大きな増幅器よりも前段に配置することが望ましい。
【0107】
図21は、短パルス化装置の第3の実施例を示す模式図である。図21の(a)に示す短パルス化装置23は、図20に示す短パルス化装置22に加えて、ポッケルスセル23a及び23b、並びに、偏光ビームスプリッタ23cを有している。ここで、レーザ光を短パルス化しても、図21の(b)に示すように、メインパルスの前後にテールが残ってしまう場合がある。このようなテールが存在すると、後段におけるレーザ光の増幅時に、ゲインを無駄に消費してしまうおそれがある。そのため、この実施例においては、それらのテールをカットするために、2つのポッケルスセル23a及び23bを設けている。これらのポッケルスセル23a及び23bは、活性化状態にされることにより、それを透過する光の偏光面を90°回転させる。
【0108】
ポッケルスセル23a及び23bは、パルス発振と同期して制御されており、所定の遅延時間をそれぞれ与えられて動作する。これらのポッケルスセル23a及び23bが共に非活性化状態の場合に、それらに入射したs偏光はそのまま透過し、s偏光のまま偏光ビームスプリッタ23cにより反射されて図の上方に出射する。テールがカットされたパルスを得るためには、まず、反射ミラー22dによって反射されたs偏光がポッケルスセル23aに入射する際に、メインパルス前のテールが通過したタイミングで、ポッケルスセル23aを活性化する。それにより、メインパルス及びそれに続くテールがp偏光となる。次に、メインパルスがポッケルスセル23bに入射する際に、メインパルスが通過したタイミングで、ポッケルスセル23bを活性化する。それにより、メインパルス後のテールが再びs偏光となる。それにより、メインパルス(p偏光)のみが偏光ビームスプリッタ23cを透過し、テールがカットされた短パルスを外部に取り出すことができる。一方、メインパルス前及び後のテール(s偏光)は、偏光ビームスプリッタ23cによって、図の上方に出射する。
【0109】
図22は、短パルス化装置の第4の実施例を示す模式図である。本実施例においては、短パルス化装置を、ゲルマニウム(Ge)素子を用いて構成している。ゲルマニウム素子とは、レーザ光を照射されることにより、表面の屈折率が変化する光学素子のことである。図22に示すように、短パルス化装置24は、偏光素子24aと、ゲルマニウム素子24bと、短パルスレーザ発振装置24cとを含んでいる。偏光素子24aは、レーザ媒質20aから出射したレーザ光の内、p偏光のみを透過させる。ゲルマニウム素子24bは、光軸に対してブリュースタ角を為すように配置されている。短パルスレーザ発振装置24cは、例えば、Nd:YAGレーザであり、短パルス化タイミングと同期して制御されている。
【0110】
レーザ媒質20aから出射し、偏光素子24aを透過したp偏光面を有するレーザ光は、ゲルマニウム素子24bを透過する。レーザ光を短パルス化する際には、短パルスレーザ装置24cから、ゲルマニウム素子24bに短パルスレーザ光を照射する。ゲルマニウム素子24bの表面においては、この短パルスレーザ光が照射されている間のみ、屈折率が変化し、それによってブリュースタ角が変化する。その結果、p偏光がゲルマニウム素子24bを透過できなくなり、図の矢印の方向に反射される。このようにして、レーザ光を短パルス化することができる。
【0111】
図23〜図25は、図3に示すレーザシステム300において用いられるレーザ光分岐装置302の構成を説明するための図である。
図23は、レーザ光分岐装置の第1の実施例を示す模式図である。本実施例においては、レーザ光分岐装置を、ビームスプリッタを用いて構成している。図23の(a)に示すように、レーザ分岐装置30は、レーザ発振器301から出射したレーザ光の内、一部を透過し、残りを反射するビームスプリッタ30aと、ビームスプリッタ30aから導かれたレーザ光を反射するミラー30bとを含んでいる。ビームスプリッタ30aを透過したレーザ光は、増幅器304(1)に入射し、ビームスプリッタ30a及びミラー30bによって反射されたレーザ光は、増幅器305(1)に入射する。また、A系の増幅器304(1)及びB系の増幅器305(1)は、レーザ発振器301のレーザ光出射タイミング(例えば、繰り返し周波数8kHz)と同期して、交互に活性化される。それにより、図23の(b)に示すように、A系の増幅器304(1)及びB系の増幅器305(1)から、増幅されたレーザ光が交互に(例えば、各々4kHz)出射する。このような構成を用いる場合には、レーザ分岐装置の動作タイミングを制御する必要がないという利点がある。
【0112】
図24は、レーザ光分岐装置の第2の実施例を示す模式図である。本実施例においては、レーザ光分岐装置を、ガルバノスキャナを用いて構成している。図24の(a)に示すように、レーザ分岐装置31は、レーザ発振器301から出射したレーザ光を反射するガルバノスキャナ31aと、ガルバノスキャナ31aによって導かれたレーザ光を反射するミラー31b及び31cとを含んでいる。ガルバノスキャナ31aは、レーザ発振器301のレーザ光出射タイミングと同期して動作を制御されており、ミラー31b及び31cの方向に、レーザ光を交互に反射する。それにより、図24の(b)に示すように、レーザ発振器301から出射したレーザ光は、1パルス毎に光路A及び光路Bに分岐される。そして、光路Aに分岐されたレーザ光は、A系の増幅器に導かれ、光路Bに分岐されたレーザ光は、B系の増幅器に導かれる。このような構成を用いる場合には、レーザ発振器から出射した全てのパルスが一様に増幅されるので、レーザエネルギーのロスを低減することができる。
【0113】
図25は、レーザ光分岐装置の第3の実施例を示す模式図である。本実施例においては、レーザ光分岐装置を、ポッケルスセル(PC)を用いて構成している。図25の(a)に示すように、レーザ分岐装置32は、ポッケルスセル32aと、ポーラライザ32bと、反射ミラー32cとを含んでいる。ポッケルスセル32aは、レーザ発振器301と同期して、活性化・非活性化を制御されている。また、ポーラライザ32bは、第1の偏光面を有するレーザ光を透過し、第2の偏光面を有するレーザ光を反射する。レーザ発振器301から出射したレーザ光がポッケルスセル32aを透過する際に、ポッケルスセル32aを活性化することにより、そのレーザ光の偏光面が第2の偏光面に回転する。その結果、レーザ光は、ポーラライザ32b及びミラー32cによって反射され、光路Bに導かれる。一方、次のレーザ光がポッケルスセル32aを透過する際には、ポッケルスセル32aは非活性化される。それにより、次のレーザ光はポーラライザ32bを透過し、光路Aに導かれる。このようにして、図21の(b)に示すように、レーザ発振器301から出射したレーザ光は、1パルス毎に光路A及び光路Bに分岐される。
このようなポッケルスセル32aは高速動作させることが可能なので、本実施例を用いる場合には、パルス間隔の制御精度を向上させることができる。
【0114】
以上説明したレーザ光分岐装置の第1〜第3の実施例においては、レーザ発振器から出射したレーザ光を2つの光路に分岐しているが、3つ以上に分岐する場合においても、同様の構成を用いることができる。
【0115】
図26〜図31は、図1に示すレーザシステム3において用いられる増幅器の構成を説明するための図である。
図26は、増幅器の第1の実施例を示す模式図であり、増幅器を、レーザチャンバ40内に配置された電極40aによって挟まれるレーザ放電部40bを側面方向から見た様子を示している。本実施例においては、チャンバウィンドウ40cの外側に複数枚の全反射ミラー40dを配置し、レーザ光(シード光)にレーザ放電部40cを複数回往復させることにより、レーザ光の強度を増幅している。例えば、図26に示すように、7枚の全反射ミラー40dを用いる場合には、4つのパスが形成される。
【0116】
図27は、増幅器の第2の実施例を示す模式図である。本実施例においては、2枚の高反射ミラー41a及び41bを用いることにより、レーザ放電部40bに複数のパスを形成している。図27に示すように、チャンバ40の外側には、2枚の高反射ミラー41a及び41bが向かい合うように配置されている。左側のチャンバウィンドウ40cからチャンバ40内に入射したレーザ光は、左右に配置された2枚の高反射ミラー41a及び41bによって反射され、レーザ放電部40bを複数回通過する。それにより、レーザ光は増幅され、チャンバ40外に取り出される。本実施例によれば、ミラーの枚数を減らすことができるので、光学系の調整を容易に行うことができると共に、コストを低く抑えることが可能になる。
【0117】
図28は、増幅器の第3の実施例を示す模式図である。本実施例において、レーザ光を反射するミラーは、チャンバ40内に配置されている。図28の(a)に示すように、チャンバ40には、チャンバウィンドウの替わりに、入力ミラー42a及び出力ミラー42bが取り付けられている。図28の(b)に示すように、入力ミラー42a及び出力ミラー42bにおいて、チャンバ40の内側を向く面の一部の領域には、反射防止コーティングが施されており、残りの領域には、高反射コーティングが施されている。また、入力ミラー42a及び出力ミラー42bのチャンバ40の外側を向く面の一部には、反射防止コーティングが施されている。
【0118】
入力ミラー42aの反射防止コーティング領域を透過してチャンバ40内に入射したレーザ光は、入力ミラー42a及び出力ミラー42bの高反射コーティング領域において反射され、レーザ放電部40bを複数回往復する。それにより、レーザ光は増幅され、出力ミラー42bの反射防止コーティング領域を透過してチャンバ40外に取り出される。
本実施例によれば、レーザ光がチャンバウィンドウを透過する際に生じるエネルギーロスを低減すると共に、省スペース化を図ることができる。
【0119】
図29は、増幅器の第4の実施例を示す模式図である。本実施例においては、凹面鏡を用いてレーザパスを形成している。図29は、レーザ放電部40b上方から見た様子を表している。なお、レーザ放電部40bを形成するための一方の電極は省略されている。図29の(a)に示すように、チャンバ40には、一方のチャンバウィンドウの替わりに、反射面に高反射コーティングが施された凹面鏡43aが配置されており、チャンバ40の外側には、凹面鏡43bが配置されている。図29の(b)に示すように、凹面鏡43bには、レーザ光を通過させるための空孔43cが形成されている。凹面鏡43bによりチャンバ40方向に導かれたレーザ光は、凹面鏡43a及び凹面鏡43bによって反射され、レーザ放電部40bを複数回往復する。それにより、レーザ光は増幅され、凹面鏡43bの空孔を通過して外部に取り出される。
【0120】
図29においては、凹面鏡43aとして、球面状の反射面を有するスフェリカルミラーを用いているが、放物面状の反射面を有する放物面ミラーや、円柱状の反射面を有するシリンドリカルミラーを用いても良い。また、凹面鏡43bについても、図29の(c)に示すように、スリットが形成されたスフェリカルミラーや、図29の(d)又は(e)に示すように、空孔又はスリットが形成されたシリンドリカルミラーを用いても良い。さらに、凹面鏡43bにおいては、空孔やスリットを形成する替わりに、その領域に反射防止コーティングを施すことにより、レーザ光の透過領域を形成しても良い。
【0121】
本実施例におけるように、ミラーの形状を工夫し、適切なミラー曲率を用いてレーザ光の焦点位置を調整することにより、チャンバウィンドウ面におけるレーザフルーエンスを変化させることができる。従って、チャンバウィンドウ面におけるレーザフルーエンスを低下させることにより、チャンバウィンドウ40cの長寿命化を図ることが可能になる。
以上説明した図26〜図29に示す実施例においては、レーザ発振器から出射したレーザ光(シード光)をコリメートして増幅段に入射させても良い。
【0122】
図30は、増幅器の第5の実施例を示す模式図である。本実施例においては、レーザ発振器と増幅器との間にコリメート部を配置している。コリメート部は、スフェリカル又は放物面の反射面を有する1枚以上の凹面鏡又はレンズを用いることによって構成することができる。例えば、図30の(a)には、2枚の凹面鏡44a及び44bを組み合わせたコリメート部44が示されており、図30の(b)には、凸レンズ45a及び凹レンズ45bを組み合わせたコリメート部45が示されている。
【0123】
ここで、レーザ発振器から出射した強度の比較的弱いレーザ光を増幅するときに、エネルギー密度が低いために十分な増幅効率を得られない場合がある。その場合には、この実施例におけるように、増幅段への入射光をコリメートすることにより、注入エネルギー密度を高くすることができるので、増幅効率を稼ぐことが可能になる。即ち、増幅段の増幅率はほぼ一定なので、元の注入エネルギーを高くすることにより、増幅後のレーザ出力をほぼ線形的に増加させることができる。
【0124】
図31は、増幅器の第6の実施例を示す模式図である。図31は、増幅器の一種である再生増幅器の構成を示すブロック図である。図31に示すように、増幅器46は、増幅ゲイン物質(レーザ媒質)46aと、ポーラライザ46b及び46cと、ポッケルスセル46d及び46eと、λ/4波長板46fと、反射ミラー46g及び46hとを含んでいる。増幅ゲイン物質46aには、レーザシステム制御装置4の制御の下で動作するパルス電源供給部47からパルス電源を与えられる。また、ポッケルスセル46d及び46eには、レーザシステム制御装置4の制御の下で動作するパルス供給部48a及び48bから、パルス信号がそれぞれ与えられる。ポッケルスセル46d及び46eは、非活性化状態にあるときには、光をそのまま透過させ、活性化状態にされることにより、そこを透過する光の偏光面を45°回転させる。また、λ/4波長板46fは、そこを透過する光の偏光面を1/4波長分(即ち、π/2=45°)だけ回転させる。
【0125】
このような再生増幅器46に、ある偏光面を有するレーザ光を入射する。このレーザ光は、ポーラライザ46b及び非活性化状態のポッケルスセル46dを透過し、波長板46fを透過することによって偏光面を45°回転させられる。そして、そのレーザ光は、反射ミラー46gによって反射され、再び波長板46fを透過することにより偏光面を45°回転させられ、非活性化状態のポッケルスセル46dを透過する。その結果、レーザ光は、最初の状態から90°回転させられたことになるので、ポーラライザ46bによって反射され、進行方向を変更される。さらに、レーザ光は、増幅ゲイン物質46aを通過することによって増幅される。次に、増幅されたレーザ光は、ポーラライザ46cによって反射され、非活性化状態のポッケルスセル46eを透過し、反射ミラー46hによって反射されて、再び、非活性化状態のポッケルスセル46eを透過する。そして、ポーラライザ46cによって発射されて、再び、増幅ゲイン物質46aを通過することにより、増幅される。
【0126】
次に、増幅されたレーザ光は、ポーラライザ46bによって反射され、活性化状態にされたポッケルスセル46d及び波長板46fを透過し、反射ミラー46によって反射され、再び、波長板46f及び活性化状態にされたポッケルスセル46dを透過する。それにより、レーザ光は、偏光面を45°ずつ4回、合計180°回転させられるので、再び、ポーラライザ46bによって反射され、増幅ゲイン物質46aの方向に導かれる。このように、レーザ光は、反射ミラー46gと反射ミラー46hとの間を、増幅ゲイン物質46aを介して複数回往復することにより増幅される。
【0127】
レーザ光が増幅ゲイン物質46aのゲインを十分に消費した後、増幅されたレーザ光を取り出す場合には、ポッケルスセル46eを活性化させる。それにより、増幅ゲイン物質46aを通過し、ポーラライザ46cによって反射されたレーザ光は、活性化状態のポッケルスセル46eを透過することにより、偏光面を45°回転させられ、反射ミラー46hによって反射された後で、活性化状態のポッケルスセル46eを再び透過する際に、さらに偏光面を45°回転させられる。それにより、レーザ光は、ポーラライザ46cによって反射された直後から、偏光面を90℃回転させられたことになるので、ポーラライザ46cを透過して増幅器46の外部に出射する。
【0128】
このような再生増幅器においては、増幅ゲインを無駄なく使用することができるので、高い増幅率を得ることができる。なお、一般に、ポッケルスセルは高いパワーの下では熱的に損傷を受けるおそれがあるので、このような再生増幅器は、比較的パワーの低い最初の段の増幅器として用いることが望ましい。
【0129】
図32〜図37は、図1に示すターゲットモニタ装置6の構成を説明するための図である。以下において、ターゲット物質の横位置とは、ターゲット物質に照射されるレーザ光の光軸及びターゲット物質の軌道に対して垂直方向におけるターゲット物質の位置のことをいい、ターゲット物質の奥行き位置とは、レーザ光の光軸方向におけるターゲット物質の位置のことをいう。
【0130】
図32は、ターゲットモニタ装置の第1の実施例を示す模式図である。図32の(a)に示すように、ターゲットモニタ装置60は、ラインセンサ60aと、波形処理装置60bと、照明装置60cとを含んでいる。ラインセンサ60aとしては、7kHz以上の動作に対応するために、高速ラインセンサを用いることが望ましい。波形処理装置60bは、ラインセンサ60aから出力された検出信号について所定の処理を行う。照明装置60cは、ターゲット物質の軌道の反対側からラインセンサ60aに向けて光を照射する。照明装置60cとしては、輝度の高い可視波長レーザ等を用いることが望ましい。
【0131】
図32の(a)に示すように、照明光によって照射された領域をターゲット物質が通過すると、ラインセンサ60aにターゲット物質の影が写される。図32の(b)は、ラインセンサ60aから出力された検出信号を時系列に表している。図32の(b)に示すように、図の上方から滴下するターゲット物質の影を表す波形の幅は、時間の経過と共に次第に大きくなり、ターゲット物質がラインセンサ60aの正面を通過するときに最大となり、その後、次第に小さくなる。従って、ターゲット物質の射出時間間隔を検出するためには、波形の幅がピークに達した時から、波形の幅が次のピークに達するまでの時間を測定すれば良い。また、径が知られている物体をターゲット物質の軌道に配置したときのラインセンサ60aの出力信号におけるチャンネル数と実際の物体の長さとを予め較正しておくことにより、ラインセンサ60aの出力信号に基づいて、ターゲット径、及び、ターゲット物質の横位置を検出することができる。さらに、そのようにして検出されたターゲット径と、ラインセンサ60aの出力信号において波形が消失してから波形の幅がピークに達し、再び波形が消失するまでの時間とに基づいて、ターゲット物質の射出速度を算出することができる。波形処理装置60bによって求められたターゲットの射出時間間隔、射出速度、位置、及び、ターゲット径等の情報は、図1に示すレーザシステム制御装置4に供給される。
【0132】
図33は、ターゲットモニタ装置の第2の実施例を示す模式図である。本実施例においては、2つのラインセンサを用いてターゲット物質を検出している。図33に示すように、ターゲットモニタ装置61は、2つのラインセンサ61a及び61b、波形処理装置61c、及び、2つの照明装置61d及び61eとを含んでいる。2つのラインセンサ61a及び61bは、所定の間隔だけ離して、平行に配置されている。また、2つの照明装置61d及び61eは、ラインセンサ61a及び61bに向けて、光をそれぞれ照射する。
【0133】
このように2つのラインセンサを用いることにより、射出されるターゲット物質の位置間隔を正確に測定することができる。ここで、2つのラインセンサの間隔をd(m)、ラインセンサ61aによって検出された波形がピークとなるときの時刻をT1、ラインセンサ61aによって検出された波形が、時刻T1後初めてピークとなるときの時刻をTn1、ラインセンサ61bによって検出された波形がピークとなるときの時刻をT2、ラインセンサ61bによって検出された波形が、時刻T2後初めてピークとなるときの時刻をTn2、ラインセンサ61aによって検出された波形の幅をL1(ch)、長さが既知である物体をラインセンサ61aによって検出した場合の較正値をR(m/ch)とする。ここで、測定を容易且つ確実に行うためには、2つのラインセンサの間隔dを、ターゲット物質の射出位置間隔よりも短くする必要がある。これらの値を用いることにより、ターゲット径Dt、ターゲット速度Vt、ターゲットの射出時間間隔Tt、ターゲットの射出位置間隔Ltは、次式によって表される。
【0134】
ターゲット径:Dt=L1×R (m)
ターゲット速度:Vt=d/(T2−T1) (m/s)
射出時間間隔:Tt=Tn1−T1 (s)、又は、Tt=Tn2−T2 (s)
射出位置間隔:Lt=Vt×Tt (m)
また、ターゲット物質の横位置は、ターゲット径Dtの計測時における波形のチャンネルによって表される。
【0135】
波形処理装置61cは、上記の式を用いてターゲット物質の時間又は位置間隔や、ターゲット物質の位置を求め、レーザシステム制御装置4に出力する。また、波形処理装置61cは、それ以外の測定値(例えば、ターゲット速度)をターゲット制御装置7やEUV光源制御装置8に出力することにより、それらの測定値を制御パラメータとして用いても良い。
【0136】
図34は、ターゲットモニタ装置の第3の実施例を示す模式図である。本実施例においては、ターゲット物質を異なる2つの方向から検出している。なお、図34の(a)〜(c)においては、ターゲット物質の進行方向をプラスZ方向としている。
図34の(a)に示すように、ターゲットモニタ装置62は、2つのラインセンサ62a及び62bと、波形処理装置62cと、2つのラインセンサ62a及び62bに向けて光をそれぞれ照射する照明装置62d及び62eとを含んでいる。ラインセンサ62a及び62bは、それらの計測軸が角度Θ(0<Θ<180)を為すように配置されている。この角度Θは、90°であることが望ましい。
【0137】
図34の(b)は、図34の(a)に示すターゲットモニタ装置62を、Z軸から見た図を示している。このように、2つの方向からターゲット物質を検出することにより、ターゲット物質の横位置だけでなく、奥行き位置を検出することができる。ここで、横位置とは、レーザ光の出射方向及びターゲット物質の射出方向の双方に垂直な軸上における位置のことであり、奥行き位置とは、レーザ光の出射方向における位置のことである。これらの情報は、ターゲット制御装置7に出力されることにより、ターゲット位置の補正に利用することができる。
【0138】
図34の(c)は、図34の(a)に示すターゲットモニタ装置62を、Y軸から見た図(XZ平面)を示している。図33において説明したのと同様の手法を用いることにより、距離dだけ離して配置されたラインセンサ62a及び62bからの検出信号に基づいて、ターゲット物質の射出位置間隔Lt等を求めることができる。
【0139】
ここで、図33又は図34に示すように、複数のラインセンサを用いてターゲットモニタ装置を構成する場合には、先にも述べたように、ラインセンサの間隔dをターゲット物質の射出位置間隔Ltよりも短くする必要がある。しかしながら、ラインセンサの大きさや、ターゲット径等の寸法の制約から、d<Ltという関係を満たせない場合がある。また、照明光の発散角が大きい場合や、ターゲット物質が非常に小さい場合には、ラインセンサをターゲット物質の近傍に配置する必要が生じる。そうしなければ、ラインセンサからの出力信号において、波形のS/N比が取れなくなってしまうからである。そのためには、サイズが小さいラインセンサを用いる必要があるが、実際に用意できるラインセンサの大きさについても制約が生じる。
【0140】
図35は、ターゲットモニタ装置の第4の実施例を示す模式図である。上記のような理由から、本実施例においては、照明装置からラインセンサに向けて照射される光の光路上に、レンズを含む光学系を配置している。即ち、照明装置63cから出射する照明光の光路上には凸レンズ63eが配置されており、それにより、照明光は、集光されてラインセンサ63aに入射する。一方、照明装置63dから出射する照明光の光路上には、凸レンズ63f及び反射ミラー63gが配置されており、凸レンズ63fによって集光された照明光が、反射ミラー63gによって進行方向を変更されてラインセンサ63bに入射する。ラインセンサ63a及び63bの検出信号は、波形処理装置63hに出力される。
【0141】
このように、レンズ等の光学系により照明光をコリメートしてラインセンサに入射させることにより、照明光の発散角を補正することができる。また、反射ミラー等の光学系を用いることにより、上記のd<Dtのような必要な条件を満たしつつ、ラインセンサの配置に自由度を持たせることができる。なお、図35においては、ラインセンサ63a及び63bに入射する照明光の光路に、2つのレンズ63e及び63fをそれぞれ配置しているが、それらのレンズの替わりに、シリンドリカル凸レンズのように2つの光路において兼用できる光学系を用いても良い。また、図35においては、照明光の光路上におけるターゲット物質とラインセンサ63a及び63bとの間にレンズ63e及び63fをそれぞれ配置しているが、照明装置63c及び63dとターゲット物質との間にレンズを配置しても良い。
【0142】
図36は、ターゲットモニタ装置の第5の実施例を示す模式図である。本実施例においては、2次元センサを用いてターゲット物質を検出している。図36の(a)に示すように、ターゲットモニタ装置64は、高速CCDカメラ64aと、画像処理装置64bと、照明装置64cとを含んでいる。
高速CCDカメラ64aは、照明装置64cから出射した照明光によって照射されたターゲット物質を撮像し、検出信号を出力する。図36の(b)は、出力された検出信号に基づいて生成されたターゲット物質の画像を示している。このような画像に基づいて、画像処理装置64bは、ターゲット射出位置間隔や、ターゲット物質の横位置等を算出する。それらの情報は、レーザシステム制御装置4等に出力され、レーザ光の出射時間間隔等を制御する際に用いられる。
【0143】
なお、図36の(a)に示すターゲットモニタ装置においては、撮像素子としてCCDを用いているが、その他にも、CMOSセンサのように、画像を2次元的に取得できるものであれば、どのような撮像素子を用いても構わない。また、図36に示すターゲットモニタ装置においても、図35に示すのと同様に、光路上に光学系を配置しても良い。それにより、使用されるCCDカメラのサイズに合わせて、照明光の径(幅)や光路を調節することができる。
【0144】
図37は、ターゲットモニタ装置の第6の実施例を示す模式図である。本実施例においては、2つの2次元センサを用いて、ターゲット物質を異なる2つの方向からターゲット物質を検出している。
図37の(a)に示すように、ターゲットモニタ装置65は、2つの高速CCDカメラ65a及び65bと、画像処理装置65cと、2つの照明装置65d及び65eとを含んでいる。高速CCDカメラ65a及び65bは、それらの計測軸が角度Θ(0<Θ<180)を為すように配置されている。なお、図37の(a)においては、Θ=90°となっている。
【0145】
図37の(b)は、高速CCDカメラ65aによって取得されたターゲット物質の画像を示しており、図37の(c)は、高速CCDカメラ65bによって取得されたターゲット物質の画像を示している。画像処理装置65cは、異なる2つの方向から撮影されたターゲット物質の画像に基づいて、ターゲット物質の射出位置間隔又は射出時間間隔や、ターゲット物質の横位置だけでなく、ターゲット物質の奥行き位置を検出することができる。それらの情報の内、ターゲット物質の射出時間間隔は、レーザシステム制御装置4に出力され、レーザ光の照射間隔を調整する際に用いられる。また、ターゲット物質の射出時間間隔及びターゲット物質の横位置及び奥行き位置は、ターゲット制御装置7に出力され、ターゲット物質の射出間隔及び射出位置を調整する際に用いられる。
【0146】
図38は、図1に示すターゲット射出装置5及びターゲット制御装置7の一実施例を示す模式図である。このターゲット射出装置5は、液体キセノンのドロップレットを射出する装置である。
図38に示すターゲット射出装置5は、圧力調整部50と、マスフローコントローラ51と、ベローズ配管52と、真空ステージ53と、液化室54と、冷凍機55と、ヒータ56と、温度センサ57と、加振装置58と、噴射ノズル59とを含んでいる。圧力調整部50は、外部からターゲット射出装置5内に高純度キセノンガスを供給する際に、ガス圧を調整する。
【0147】
また、ターゲット制御装置7は、制御部70と、圧力制御部71と、流量制御部72と、温度制御部73と、位置制御部74と、射出制御部75とを含んでいる。制御部70は、EUV光源制御装置8から供給されるターゲット径指令値及びターゲット射出間隔指令値に従って、それらの指令値によって規定されたドロップレットを射出するように、上記制御部71〜75に制御パラメータを振り分ける。また、制御部70は、レーザシステム制御装置4から供給されるターゲット間隔及びターゲット位置修正要求や、ターゲットモニタ装置6から供給されるターゲット間隔及びターゲット位置情報並びにターゲット径情報に基づいて、上記の制御パラメータを修正する。
【0148】
ターゲット射出装置5は、外部の高純度キセノンを導入する配管に接続されている。圧力調整器50は、圧力制御部71の制御の下で、ターゲット射出装置5におけるキセノンガスの圧力を調整する。また、マスフローコントローラ51は、流量制御部72の制御の下で、ターゲット射出装置5におけるキセノンガスの流量を調整する。
【0149】
ターゲット径及びターゲット射出間隔の値を変化させる等の目的で、加振装置58の振動周波数を急激に変化させる場合(例えば、1kHzから8kHz)には、圧力制御部71及び/又は流量制御部72は、それに伴ってキセノンガスの流量を増加させるように、圧力調整器50又はマスフローコントローラ51を制御する。また、その際に、圧力制御部71又は流量制御部72は、冷凍機55の冷却能力を一時的に変化させるよう、温度制御部73に指令を与えても良い。
【0150】
真空ステージ53は、位置制御部74の制御の下で、XY面(水平面)内を移動する。真空ステージ53には、液化室54及び噴射ノズル59が配置されており、それにより、噴射ノズル59の横位置及び奥行き位置が調整される。そのため、真空ステージ53の上流側には、液化室54にキセノンガスを供給するためのフレキシブルなベローズ配管が配置されている。
【0151】
液化室54においては、キセノンガスの液化が行われる。液化室54には、温度制御部73の制御の下で動作する冷凍機55が接続されており、それにより、液化室54に導入されたキセノンガスが液化される。また、液化室54には、ヒータ56及び温度センサが配置されている。温度制御部73は、温度センサ57のモニタ値に基づいてヒータ56を制御することにより、液化室54の内部及び噴射ノズル59の周辺を所定の温度に維持し、キセノンが凍結するのを防いでいる。
【0152】
このように、定常状態においては、液化室54の内部は一定の温度に保たれている。しかしながら、先に述べたように、ターゲット径等を変化させるために、キセノンの流量を急激に変化させる場合には、冷却能力が低下してしまうおそれがある。そのような場合に、温度制御部73は、圧力制御部50又は流量制御部51からの指令に従って、一時的に冷却能力が変化するように冷凍機55やヒータ56を制御する。それにより、ドロップレット生成における安定性が低下し、それが元に戻るまでの遅れ時間を、最小限に留めるようにしても良い。
【0153】
なお、本実施例においては、ターゲット物質として液体のキセノンを用いるため、液化室54を設けているが、水、エタノール、錫又はリチウム又はインジウム含有液体のように、液化する必要のないターゲット物質を用いる場合には、液化室54を省略しても良い。
【0154】
加振装置58は、ピエゾ素子を含んでおり、射出制御部75の制御の下で、噴射ノズル59に振動を与える。射出制御部75は、EUV光源制御装置8から与えらえらたターゲット径指令値及びターゲット射出間隔指令値とに基づいて、加振装置58における振動周波数及び振動ストロークを決定し、ピエゾ素子に所定の電圧信号を印加する。その際に、射出制御部75は、ターゲットモニタ装置6から出力されたターゲット間隔モニタ情報や、レーザシステム制御部4から出力されたターゲット間隔修正要求に基づいて、ピエゾ素子に与えられる電圧信号について、刻々と修正演算を行う。それにより、ドロップレットの射出間隔を、ターゲット射出間隔指令値に安定化させることができる。
【0155】
なお、ドロップレットの生成方式としては、噴射ノズルから吐出するターゲット噴流を所定の周波数で振動させて擾乱させることにより液滴化するコンティニュアス・ジェット(continuous jet)方式を用いても良いし、噴射ノズルからターゲット物質を必要なときだけ吐出させるドロップ・オン・デマンド(drop on demand)方式を用いても良い。
【0156】
射出制御部75は、ターゲットモニタ装置5やその他の検出装置から供給されるターゲット径情報に基づいて、ターゲットの径を制御しても良い。その場合には、噴射ノズル59から噴射するターゲット噴流の速度や径を調節すれば良い。また、ターゲット物質の位置情報を取得できる場合には、ターゲット物質の軌道がレーザシステムから出射するレーザ光の光軸上の焦点付近を通るように、真空ステージを調節すれば良い。
【符号の説明】
【0157】
1…EUV光発生チャンバ、2…EUV光モニタ装置、3、300、310、320、320'、330、340、350、360、370、380、390…レーザシステム、301、311、312…レーザ発振器、21〜24、302、313、314…短パルス化装置、30、31、32、303…レーザ光分岐装置、303a…EO−Qスイッチ、303b…ポーラライザ、303c…反射ミラー、304(1)、302(2)304(3)、305(1)、305(2)、305(3)、315(1)、315(2)、316(1)、316(2)…増幅器、306、317…パルス間隔モニタ、307、308、351〜356(2)、361〜366(2)371、372、381〜386(2)、391〜396(2)…レーザエネルギーモニタ、20a…レーザ媒質、20a…リアミラー、20c…フロントミラー、21a、21c、22a、23c…偏光ビームスプリッタ、21b、22b、23a、23b…ポッケルスセル、22c…波長板、22d…反射ミラー、24a…偏光素子、24b…ゲルマニウム素子、24c…短パルスレーザ発振装置、30a…ビームスプリッタ、30b、31b、31c、32c…ミラー、31a…ガルバノスキャナ、32a…ポッケルスセル(PC)、32b…ポーラライザ、40…レーザチャンバ、40a…電極、40b…レーザ放電部、40c…チャンバウィンドウ、40d…全反射ミラー、41a、41b…高反射ミラー、42a入力ミラー、42b…出力ミラー、43a、43b、44a、44b…凹面鏡、43c…空孔、45a…凸レンズ、46a…増幅ゲイン物質、46b、46c…ポーラライザ、46d、46e…ポッケルスセル(PC)、46f…波長板、46g、46h…反射ミラー、48a、48b…パルス供給部、4、410、420、430、440、450、460、470、480、490…レーザシステム制御装置、401、431、441、451、461、471、481、491…エネルギー制御部、402、411、421…交互発振タイミング制御部、412、424、425、445、465…短パルス化タイミング制御部、413…レーザ光分岐制御部、414、415、426、427…増幅タイミング制御部、422、423…タイミング制御部、432、433、442、443(1)、443(2)、444(1)、444(2)、462〜464(2)、472〜477(2)、491〜497(2)…エネルギー調整部、5…ターゲット射出装置、50…圧力調整部、51…マスフローコントローラ、52…ベローズ配管、53…真空ステージ、54…液化室、55…冷凍機、56…ヒータ、57…温度センサ、58…加振装置、59、501…噴射ノズル、6、60〜65…ターゲットモニタ装置、60a、61a、61b、62a、62b、63a、63b…ラインセンサ、60b、61c、62c…波形処理装置、60c、61d、61e、62d、62e、63c、63d、64c、65d、65e…照明装置、63e、63f…凸レンズ、63g…反射ミラー、64a、64b、65a、65b…高速CCDカメラ、64b、65c…画像処理装置、70…制御部、71…ターゲット制御部、72…圧力制御部、73…温度制御部、74…位置制御部、75…射出制御部、7…ターゲット制御装置、8…EUV光源制御装置、9…露光機、11…集光光学系、12…窓、13…集光ミラー、14…ターゲット回収筒、15…ドロップレットターゲット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置において用いられるドライバレーザシステムであって、
MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザ光出射手段であって、単一のレーザ発振器においてレーザ光を発生し、該レーザ光のパルス幅が所定の値まで短くなるようにレーザ光のパルス幅を制御して、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系において該レーザ光を増幅する前記レーザ光出射手段と、
前記複数の放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するように前記レーザ光出射手段の動作タイミングを制御する制御手段と、
を具備する極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム。
【請求項2】
レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置において用いられるドライバレーザシステムであって、
MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザ光出射手段であって、単一のレーザ発振器においてレーザ光を発生し、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系において該レーザ光を増幅する前記レーザ光出射手段と、
前記複数の放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するように前記レーザ光出射手段の動作タイミングを制御すると共に、発生した極端紫外光のエネルギーに関する情報に基づいて、前記複数のレーザ増幅系の各々から所定の強度を有するレーザ光が出射するように前記レーザ光出射手段を制御する制御手段と、
を具備する極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム。
【請求項3】
レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置において用いられるドライバレーザシステムであって、
MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザ光出射手段であって、単一のレーザ発振器においてレーザ光を発生し、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系において該レーザ光を増幅する前記レーザ光出射手段と、
前記複数の放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するように前記レーザ光出射手段の動作タイミングを制御すると共に、射出されたターゲット物質の位置に関する情報に基づいて、前記レーザ光出射手段から出射したレーザ光が前記ターゲット物質の所定の領域を照射するように、ターゲット物質を射出する手段を制御する制御手段と、
を具備する極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム。
【請求項4】
前記制御手段が、前記ターゲット物質の位置に関する情報と共に、発生した極端紫外光のエネルギーに関する情報に基づいて、前記レーザ光出射手段の動作タイミングを制御する、請求項3記載の極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム。
【請求項5】
前記制御手段が、前記ターゲット物質の射出間隔に関する情報に基づいて、前記複数のレーザ増幅系から出射したレーザ光が前記ターゲット物質の所定の領域を照射するように、前記レーザ光出射手段の動作タイミングを制御する、請求項1〜4のいずれか1項記載の極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム。
【請求項6】
前記制御手段が、前記ターゲット物質の射出間隔に関する情報に基づいて、ターゲット物質を射出する手段を制御する、請求項5記載の極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム。
【請求項1】
レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置において用いられるドライバレーザシステムであって、
MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザ光出射手段であって、単一のレーザ発振器においてレーザ光を発生し、該レーザ光のパルス幅が所定の値まで短くなるようにレーザ光のパルス幅を制御して、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系において該レーザ光を増幅する前記レーザ光出射手段と、
前記複数の放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するように前記レーザ光出射手段の動作タイミングを制御する制御手段と、
を具備する極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム。
【請求項2】
レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置において用いられるドライバレーザシステムであって、
MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザ光出射手段であって、単一のレーザ発振器においてレーザ光を発生し、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系において該レーザ光を増幅する前記レーザ光出射手段と、
前記複数の放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するように前記レーザ光出射手段の動作タイミングを制御すると共に、発生した極端紫外光のエネルギーに関する情報に基づいて、前記複数のレーザ増幅系の各々から所定の強度を有するレーザ光が出射するように前記レーザ光出射手段を制御する制御手段と、
を具備する極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム。
【請求項3】
レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置において用いられるドライバレーザシステムであって、
MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されたレーザ光出射手段であって、単一のレーザ発振器においてレーザ光を発生し、並列して配置された複数の放電励起式ガスレーザ増幅系において該レーザ光を増幅する前記レーザ光出射手段と、
前記複数の放電励起式ガスレーザ増幅系からレーザ光が順次出射するように前記レーザ光出射手段の動作タイミングを制御すると共に、射出されたターゲット物質の位置に関する情報に基づいて、前記レーザ光出射手段から出射したレーザ光が前記ターゲット物質の所定の領域を照射するように、ターゲット物質を射出する手段を制御する制御手段と、
を具備する極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム。
【請求項4】
前記制御手段が、前記ターゲット物質の位置に関する情報と共に、発生した極端紫外光のエネルギーに関する情報に基づいて、前記レーザ光出射手段の動作タイミングを制御する、請求項3記載の極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム。
【請求項5】
前記制御手段が、前記ターゲット物質の射出間隔に関する情報に基づいて、前記複数のレーザ増幅系から出射したレーザ光が前記ターゲット物質の所定の領域を照射するように、前記レーザ光出射手段の動作タイミングを制御する、請求項1〜4のいずれか1項記載の極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム。
【請求項6】
前記制御手段が、前記ターゲット物質の射出間隔に関する情報に基づいて、ターゲット物質を射出する手段を制御する、請求項5記載の極端紫外光源装置用ドライバレーザシステム。
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図30】
【図31】
【図38】
【図2】
【図4】
【図12】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図30】
【図31】
【図38】
【図2】
【図4】
【図12】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2011−14913(P2011−14913A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161562(P2010−161562)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2004−310410(P2004−310410)の分割
【原出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2004−310410(P2004−310410)の分割
【原出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
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